説明

タンク輸送用トレーラ

【課題】簡易な構造の輸送コンテナにより、流動性を有する貨物を保冷した状態で長距離輸送可能とすることにある。
【解決手段】このタンク輸送用トレーラは、トラクタにより牽引されて走行するシャーシフレームを有し、シャーシフレームにはコンテナ本体22が固定される。コンテナ本体22の内部に形成された冷蔵室37内には、牛乳が貯留されるタンク体21が収容される。冷蔵室37は冷却器により冷却される。タンク体21の注入口28とコンテナ本体22の開口部57との間には注入用ダクト58が設けられており、蓋部27aと注入用ハッチ56とを開放した状態のもとで、タンク体21の内部に貨物が注入され、そのときには注入用ダクト58により貨物が冷蔵室37内に飛散することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性を有する貨物をタンク内に保冷した状態で輸送するために用いられるタンク輸送用トレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体などの流動性を有する貨物を輸送する際にはタンクローリが用いられている。タンクローリは流動性を有する貨物を貯留するタンク体を備えており、タンク体の上部に形成されたマンホールから貨物がタンク体の内部に注入され、タンク体の下部に形成された吐出コックから貨物が吐出される。タンク体には、内壁と外壁との間に断熱材が設けられた断熱式のタンク体と、薄肉形状の外壁のみにより形成された非断熱式のタンク体とがあり、品質保持のために所定の温度以下に保つ必要がある乳または乳製品等の貨物を輸送する場合には断熱式のタンク体が用いられる。
【0003】
例えば、各農場から集められた牛乳は、工場で貯留されて約3℃に冷やされた後に断熱式のタンク体に注入され、タンクローリにより各地へ運搬される。しかしながら、このような断熱式のタンク体を用いただけでは牛乳の温度上昇を確実に防止することができず、牛乳をタンクローリで長距離輸送することが困難となっていた。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、冷却装置を備えたタンクローリが記載されている。このタンクローリでは、タンク体の内壁と断熱材との間に流路(ダクト)が形成されており、冷却装置から流路に冷却された空気を供給してタンク体に貯留された牛乳を冷却することで、牛乳を保冷した状態で長距離輸送することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−106450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなタンク体を有するタンクローリにより牛乳等の液状製品を輸送するために、タンク体の内壁と断熱材との間に流路を形成するようにした場合には、タンク体の内壁と断熱材との間の狭い空間に、タンク体の内壁に沿って流路を円弧状に形成する必要がある。そのため、タンク体の構造が複雑となり、タンク体の製造が困難となっていた。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構造の輸送コンテナにより、流動性を有する貨物を保冷した状態で長距離輸送可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のタンク輸送用トレーラは、流動性を有する貨物をタンク内に保冷した状態で輸送するタンク輸送用トレーラであって、走行車輪を有し、トラクタにより牽引されて走行するシャーシフレームと、床材、天井壁、および前後左右の側壁を有し、前記シャーシフレームに固定されるとともに内部に冷蔵室を形成するコンテナ本体と、前記冷蔵室内に収容されて前記コンテナ本体との間で断熱用の空間を形成するとともに前記貨物を貯溜するタンク体と、前記コンテナ本体と前記タンク体との間に設けられ、前記タンク体の上部に形成された注入口と当該注入口に対応させて前記天井壁に形成された開口部とを連通させるとともに前記注入口および前記開口部を前記冷蔵室と区画する注入用ダクトと、前記タンク体に設けられ、前記注入口を開閉する蓋部と、前記コンテナ本体に設けられ、前記開口部を開閉する注入用ハッチと、前方の前記側壁に取り付けられ、前記コンテナ本体の内面と前記タンク体の外面との間で前記冷蔵室内の上方側の左右両隅に形成された空間に冷却された空気を供給する冷却器とを有し、前記蓋部と前記注入用ハッチとを開放した状態のもとで、前記注入用ダクトを介して前記貨物を前記タンク体の内部に注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンテナ輸送用トレーラのシャーシフレームにはコンテナ本体が固定され、このコンテナ本体の内部の冷蔵室にはタンク体が収容される。タンク体には、乳等のように流動性を有する貨物が貯溜される。タンク体の上部に形成された注入口とコンテナ本体の天井壁に形成された開口部との間には注入用ダクトが設けられており、この注入用ダクトにより開口部と注入口は、冷蔵室から区画されている。これにより、開口部および注入口を介してコンテナ本体の外部からタンク体の内部に牛乳等の貨物を注入する際には、貨物が冷蔵室内にこぼれてしまうことが防止される。
【0010】
冷蔵室は冷却器により冷却されるので、トレーラにより運搬中にタンク体に貯留された牛乳等の貨物を保冷することができ、貨物の品質を劣化させることなく、貨物を長距離輸送することが可能となる。また、タンク体の外面全体が冷蔵室内の冷却された空気により覆われるため、タンク体に貯留された貨物を効率良く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態であるタンク輸送用トレーラを示す左側面図である。
【図2】タンク体を示す左側面図である。
【図3】タンク体を示す平面図である。
【図4】図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【図5】トレーラに固定されるタンクコンテナの左側面図である。
【図6】タンクコンテナの平面図である。
【図7】タンクコンテナの正面図である。
【図8】タンクコンテナの背面図である。
【図9】図5におけるB−B線に沿う概略断面図である。
【図10】床材の詳細を示す断面図である。
【図11】固定台を示す左側面図である。
【図12】固定台を示す平面図である。
【図13】図12におけるC−C線に沿う断面図である。
【図14】冷却器を示すシステム図である。
【図15】冷蔵室内の空気の流れを示す説明図である。
【図16】氷設置台を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はトラクタ11とトレーラ12との連結車両を示しており、この連結車両はトレーラ12のみに荷台が設けられたセミトレーラ型となっている。トレーラ12は車両前後方向に延びるシャーシフレーム13を有しており、シャーシフレーム13の後端側に複数の走行車輪14が設けられている。トレーラ12は、シャーシフレーム13の前端部に設けられたキングピン15によりトラクタ11のカプラ16に連結されており、トラクタ11に牽引されて走行車輪14により追従走行する。
【0013】
トレーラ12のシャーシフレーム13には、図1に示されるように、タンクコンテナ(輸送用コンテナ)20が固定され、タンクコンテナ20はトレーラ12により運搬される。但し、タンクコンテナ20をフルトレーラ型の連結車両やトラックなど他の車両の荷台に取り付けて運搬するようにしても良い。タンクコンテナ20は、牛乳が貯留されるミルクタンクとしてのタンク体21と、タンク体21を収容する箱形状のコンテナ本体22と、コンテナ本体22に取り付けられる冷却器23とを有している。
【0014】
以下において、タンクコンテナ20が車両の荷台に固定された状態のもとでの車両前後方向および車両左右方向をタンクコンテナ20の前後方向および左右方向とする。また、コンテナ本体22の内部に向かう方向を内側方向、コンテナ本体22の外部に向かう方向を外側方向とする。図2はタンク体を示す左側面図であり、図3はタンク体を示す平面図である。図4は図2におけるA−A線に沿う断面図である。
【0015】
タンク体21は、図2および図3に示すように、円筒形状の胴部21aの両端にそれぞれ皿形状の鏡板21bを固定した有底円筒形状の容器であり、内部に牛乳が貯留されるタンク室25を形成している。タンク体21の長手方向(前後方向)中央部には、タンク室25を2つの貯留槽25a,25bに区画する皿形状の鏡板21cが固定されており、牛乳をそれぞれの貯留槽25a,25b内に区分して貯留することができるようになっている。本実施の形態においては、タンク室25を2つの貯留槽25a,25bに区画するようにしたが、タンク室25を1つの貯留槽により形成したり、タンク室25を3つ以上の貯留槽に区画したりしても良い。
【0016】
タンク体21を形成する複数の胴板や鏡板21b,21cは耐食性に優れたステンレス鋼等の薄肉板材からなり、胴板や鏡板21b,21cを介してタンク体21の内部と外部との間で熱伝達可能な非断熱式のタンク体21となっている。それぞれの胴板や鏡板21b,21cの溶接箇所には環状の補強リブ26が固定されており、十分な耐久性を備えるようにタンク体21の補強が施されている。
【0017】
タンク体21の上部には、それぞれの貯留槽25a,25bに対応させて2つのマンホール部27が設けられており、貯留槽25a,25bを上方側に開口する円孔形状の注入口28がマンホール部27に形成されている。マンホール部27は注入口28を開閉する蓋部27aを備えており、マンホール部27が開口されると注入口28から貯留槽25a,25b内に牛乳を注入することが可能となり、マンホール部27が閉塞されると貯留槽25a,25bが密閉される。
【0018】
また、タンク体21の下部には、それぞれの貯留槽25a,25bに対応させて2つの吐出口29が形成されている。図4に示すように、吐出口29はタンク体21の左方側に開口するように設けられており、連通管30を介して貯留槽25a,25bにそれぞれ連通されている。この吐出口29に取り付けられた開閉コック31を開操作することで、貯留槽25a,25b内に貯留された牛乳が吐出口29からタンク体21の外部へ吐出されるようになっている。
【0019】
なお、本実施の形態においては、タンク体21を断面円形状の円筒状に形成するようにしたが、これに限定されず、タンク体21を断面楕円形状の円筒状に形成するようにしても良い。
【0020】
図5はタンクコンテナの左側面図であり、図6はタンクコンテナの平面図である。図7はタンクコンテナの正面図であり、図8はタンクコンテナの背面図である。図9は図5におけるB−B線に沿う概略断面図である。
【0021】
コンテナ本体22は、その下方に位置させてタンク体21が載置される床材34と、床材34の前後左右に固定された側壁35と、それぞれの側壁35の上端を渡すように設けられた天井壁36とを備えた直方体形状をしており、内部にタンク体21が収容される冷蔵室37を形成している。図8に示すように、後方の側壁35つまり後壁には観音開き状のバックドア38が開閉自在に設けられており、バックドア38を開けた状態でその開口部からタンク体21が冷蔵室37内に積み降ろしされる。
【0022】
コンテナ本体22の各隅には隅金具40が装着されており、それぞれの隅金具40よりも長手方向内側に位置させて隅金具41が装着されている。隅金具40,41には吊り上げ及び固定用の係合孔42がそれぞれ形成されており、この係合孔42を車両の荷台に設けられたツイストロックピンに係合させることにより、コンテナ本体22が車両の荷台に固定される。
【0023】
本実施の形態においては、図5に示すように、コンテナ本体22の長手方向両側にそれぞれ設けられた隅金具41の相互間の距離Lを20フィートの貨物コンテナに対応させて形成している。これにより、20フィートの貨物コンテナを積載可能な既存の車両に対して、コンテナ本体22を固定することが可能となっている。このコンテナ本体22の長手方向寸法は任意に変更可能であり、コンテナ本体22の長手方向両側にそれぞれ設けられた隅金具40,41の相互間の距離を20フィートや40フィートの貨物コンテナに対応させて形成することで、既存のコンテナ運搬用車両に対してコンテナ本体22を固定することが可能となる。したがって、貨物コンテナと同様に扱って、車両へのタンクコンテナ20の積み降ろしを容易に行うことができる。
【0024】
図9に示すように、床材34および天井壁36は相互に平行に配置された図示しない複数の水平骨材を備えており、水平骨材の内側に内装板43が装着されるとともに水平骨材の外側に外装板44が装着されたフレーム構造をしている。同様に、前後左右の側壁35は相互に平行に配置された図示しない複数の垂直骨材を備えており、垂直骨材の内側に内装板43が装着されるとともに垂直骨材の外側に外装板44が装着されたフレーム構造をしている。これら内装板43と外装板44との間にはウレタンフォーム等の断熱材45が設けられており、コンテナ本体22は冷蔵コンテナや冷凍コンテナとして用いられる断熱式のコンテナとなっている。つまり、前述したバックドア38においても、内装板と外装板との間に断熱材が設けられている。なお、断熱材45としてはウレタンフォームに限られることはなく、他の断熱材を用いるようにしても良い。
【0025】
図10は床材の詳細を示す断面図であり、コンテナ本体22の床材34には床搬送装置としての複数のローラ搬送ユニット46が設けられている。ローラ搬送ユニット46は、コンテナ本体22の長手方向に延びるとともに冷蔵室37の床面34aに向けて上方側に開口する断面略コの字形状の搬送レール47と、搬送レール47内に収容される複数のローラコンベア48とを備えている。ローラコンベア48は、ジャッキ等の押し上げ手段を用いて、床面34aから上方に突出する搬送位置と搬送レール47内に収容される退避位置との間で上下動自在に設けられている。このローラコンベア48を搬送位置に押し上げ操作することで、タンク体21を床材34上でコンテナ本体22の長手方向(前後方向)に容易に移動させることが可能となり、ローラ搬送ユニット46によりタンク体21を冷蔵室37内に安全かつスムーズに積み降ろしすることができるようになっている。
【0026】
このタンク体21は固定台50により支持された状態で冷蔵室37内に積み込まれ、固定台50を床材34に固定することでタンク体21がコンテナ本体22に固定されている。図11は固定台を示す左側面図であり、図12は固定台を示す平面図である。図13は図12におけるC−C線に沿う断面図である。
【0027】
図12に示すように、固定台50は、タンク体21の左右両側面に沿って前後方向に延びる一対の縦梁材51aと、一対の縦梁材51aの長手方向両端部を相互に連結する一対の横梁材51bとからなる略矩形状のフレーム体51を有している。一対の縦梁材51aの相互間には、タンク体21に設けられた補強リブ26に対応させて複数の支持脚材52が固定されている。支持脚材52には、図9に示すように、上方側に開口する円弧状受け部52aが形成されており、それぞれの補強リブ26が支持脚材52の円弧状受け部52aに嵌合されることにより、タンク体21が固定台50に支持されている。
【0028】
この固定台50は、フレーム体51を床材34上に載置した状態で、図13に示すように、複数のUボルト53によりフレーム体51を床材34に締結することによってコンテナ本体22に固定されている。なお、図12に示すように、一対の縦梁材51aのうち左側の縦梁材51aは、コンテナ本体22の内部に形成された後述する吐出用ダクト63に干渉しないように、その長手方向の一部が切り欠かれた形状をしている。
【0029】
タンク体21が冷蔵室37内に収容された状態のもとでは、図9に示すように、断面矩形状のコンテナ本体22の内面と断面円形状のタンク体21の外面との間で、タンク体21の外面全体を取り囲むように所定の空間が形成されている。特に、冷蔵室37内の上方側の左右両隅および下方側の左右両隅には、それぞれ広い空間54a,54bが形成されることとなる。
【0030】
コンテナ本体22の天井壁36には、図6に示すように、タンク体21に形成されたマンホール部27の注入口28に対応させて2つの注入用ハッチ56が開閉自在に設けられている。注入用ハッチ56には、コンテナ本体22の内部を上方側に開口する矩形状の開口部57が形成されており、注入用ハッチ56は開口部57を開閉する蓋部56aを備えている。この注入用ハッチ56の蓋部56aにはウレタンフォーム等からなる図示しない断熱材が内装されている。
【0031】
図9に示すように、タンク体21が冷蔵室37内に収容された状態のもとでコンテナ本体22の注入用ハッチ56およびタンク体21のマンホール部27が開口されると、開口部57および注入口28を介してコンテナ本体22の外部からタンク体21の貯留槽25a,25b内に牛乳を注入することが可能となる。一方、コンテナ本体22の注入用ハッチ56が閉塞されると、コンテナ本体22の内部がコンテナ本体22の外部に対して断熱される。
【0032】
また、コンテナ本体22の内部には、注入用ハッチ56の開口部57とタンク体21の注入口28と連通する注入用ダクト58が設けられている。注入用ダクト58は、コンテナ本体22の注入用ハッチ56およびタンク体21のマンホール部27を取り囲むように形成されており、注入用ハッチ56の開口部57およびタンク体21の注入口28が注入用ダクト58により冷蔵室37と区画されている。この注入用ダクト58を設けることにより、開口部57および注入口28を介してコンテナ本体22の外部からタンク体21の貯留槽25a,25b内に牛乳を注入する際に、牛乳が冷蔵室37内にこぼれてしまうことが防止されている。
【0033】
コンテナ本体22の天井壁36には、その外面に足場59が図6に示すように設けられている。足場59は、注入用ハッチ56の蓋部56aの開閉を妨げないように注入用ハッチ56まわりに位置させて形成されている。この足場59は、十分な強度を備えるとともにほぼ平坦に形成されたコンテナ本体22の天井壁36に設けられているため、作業者は足場59上で安全に作業を行うことができる。
【0034】
コンテナ本体22の左側の側壁35には、図5に示すように、タンク体21に形成された吐出口29に対応させて2つの吐出用ハッチ61が開閉自在に設けられている。吐出用ハッチ61には、コンテナ本体22の内部を左方側に開口する矩形状の開口部62が形成されており、吐出用ハッチ61は開口部62を開閉する扉部61aを備えている。この吐出用ハッチ61の扉部61aにはウレタンフォーム等からなる図示しない断熱材が内装されている。
【0035】
タンク体21が冷蔵室37内に収容された状態のもとでコンテナ本体22の吐出用ハッチ61を開口するとともにタンク体21の開閉コック31が開操作されると、吐出口29および開口部62を介してタンク体21の貯留槽25a,25b内からコンテナ本体22の外部へ牛乳を吐出することが可能となる。一方、吐出用ハッチ61が閉塞されると、コンテナ本体22の内部がコンテナ本体22の外部に対して断熱される。
【0036】
また、コンテナ本体22の内部には、図9に示すように、吐出用ハッチ61の開口部62とタンク体21の吐出口29とを連通する吐出用ダクト63が設けられている。吐出用ダクト63は、コンテナ本体22の吐出用ハッチ61およびタンク体21の吐出口29を取り囲むように形成されており、吐出用ハッチ61の開口部62およびタンク体21の吐出口29が吐出用ダクト63により冷蔵室37と区画されている。この吐出用ダクト63を設けることにより、吐出口29および開口部62を介してタンク体21の貯留槽25a,25b内からコンテナ本体22の外部へ牛乳を吐出する際に、牛乳が冷蔵室37内にこぼれてしまうことが防止されている。
【0037】
コンテナ本体22の左右の側壁35には、コンテナ本体22の長手方向中央部の下方側に位置させて庫内清掃用ドア65が開閉自在に設けられている。庫内清掃用ドア65は、冷蔵室37を左右方向側に開口する矩形状の開口部66を開閉するための扉部65aを備えている。また、コンテナ本体22の前方の側壁35つまり前壁には、図7に示すように、その下方側に位置させて2つの庫内清掃用ドア67が開閉自在に設けられている。庫内清掃用ドア67は、冷蔵室37を前方側に開口する矩形状の開口部68を開閉するための扉部67aを備えている。これら庫内清掃用ドア65,67の扉部65a,67aにはウレタンフォーム等からなる図示しない断熱材が内装されており、庫内清掃用ドア65,67を開けることにより冷蔵室37内の清掃等を行うことができるようになっている。
【0038】
このコンテナ本体22には、前方の側壁35の上方側に位置させて、冷蔵室37内に冷却された空気を供給するための冷却器23が取り付けられている。図14は冷却器を示すシステム図であり、図15は冷蔵室内の空気の流れを示す説明図である。
【0039】
冷却器23はフロン等の冷媒を用いたヒートポンプ式であり、冷媒を圧縮して送り出す圧縮機70と、冷媒を液化させて熱を外部へ放出させる放熱器71と、冷媒を膨張させる膨張弁72と、外部から熱を吸収して冷媒を蒸発させる蒸発器73とを有している。これら圧縮機70、放熱器71、膨張弁72および蒸発器73は、冷媒が循環される配管74により接続されている。
【0040】
この冷却器23では、圧縮機70で圧縮された冷媒が放熱器71に送られ、コンテナ本体22の外部へ熱を放出して冷媒が液体となる。そして、冷媒が膨張弁72により減圧されて蒸発器73に送られ、冷蔵室37内の空気から熱を吸収して冷媒が蒸発し、再び圧縮機70に戻る。このような冷凍サイクルによって、冷却器23に吸い込まれた冷蔵室37内の空気A1が冷却され、冷却された空気A2が冷却器23に設けられた送風機75により冷蔵室37内へ吹き出される。
【0041】
図15に示すように、冷蔵室37内には、冷却器23の吹出口23aの上方側に対向するように、案内板(案内部材)77が取り付けられている。案内板77は、その中央部から左右両側に向かうにつれて後方側に傾斜する略くの字形状に形成されている。この案内板77により、吹出口23aの上方側から冷蔵室37内に吹き出される冷却された空気は、断面矩形状のコンテナ本体22の内面と断面円形状のタンク体21の外面との間で冷蔵室37内の上方側の左右両隅に形成された空間54aに案内される。つまり、案内板77は、冷却器23から吹き出される冷却された空気を冷蔵室37内の前方側に形成された空間54aに案内する。
【0042】
また、冷蔵室37内には、冷却器23の吹出口23aの下方側に連通する案内ダクト78が設けられている。案内ダクト78は吹出口23aの下方側から吹き出される冷却された空気を案内する管状をしており、吹出口23aの下方側から左右両側に延びるとともに、その両端部からそれぞれ冷蔵室37の長手方向中央部まで延びて後方側に開口している。この案内ダクト78により、吹出口23aの下方側から案内ダクト78内に吹き出される冷却された空気は、断面矩形状のコンテナ本体22の内面と断面円形状のタンク体21の外面との間で冷蔵室37内の上方側の左右両隅に形成された空間54aに案内される。つまり、案内ダクト78は、冷却器23から吹き出される冷却された空気を冷蔵室37内の後方側に形成された空間54aに案内する。
【0043】
案内ダクト78の出口付近に位置させて、冷蔵室37の長手方向中央部には、冷蔵室37内の上方側の左右両隅に形成された空間54aにそれぞれファン79が設けられている。このファン79は、案内ダクト78により案内される冷却された空気を、冷蔵室37内の後方側に形成された空間54aに向けて送風するように、冷蔵室37内の上方側に空気の流れを生じさせるようになっている。
【0044】
これにより、図15に矢印で示すように、冷却器23から冷蔵室37内に供給される空気が冷蔵室37の上方側を流れ、冷却器23に戻る空気が冷蔵室37の下方側を流れるように、冷却された空気が冷蔵室37内で循環される。すなわち、冷却器23から冷蔵室37内に供給される冷却された空気は、冷蔵室37内の上方側の左右両隅に形成された空間54aをコンテナ本体22の前方側から後方側へ向けて流れ、後方の側壁35に沿って下方側に流れる。そして、冷蔵室37内の下方側の左右両隅に形成された空間54bをコンテナ本体22の後方側から前方側へ向けて流れ、再び冷却器23に吸い込まれる。
【0045】
このようにして冷蔵室37内を循環する冷却された空気は、タンク体21の外壁つまり胴部21aや鏡板21bを介して、貯留槽25a,25b内に貯留された牛乳を冷却する。このとき、貯留槽25a,25b内に貯留された牛乳はタンク体21の下方側に比べて上方側の方が温度が高くなるが、タンク体21の上面と天井壁36の内面との間に冷却された空気が流れる空間が形成されているため、効率良く牛乳の冷却を行うことが可能となっている。なお、冷却器23により冷却される冷蔵室37の室温は、タンク体21内に貯留された牛乳が約3℃に保冷されるような温度に保持されている。
【0046】
この冷却器23から冷蔵室37内に吹き出される冷却された空気の温度は、吹出口23a付近では氷点下となる。そのため、図5に示すように、冷却器23から冷蔵室37内に吹き出される冷却された空気がタンク体21に直接当たらないように、冷却器23の吹出口23aに対向させてタンク体21には遮蔽板80が取り付けられている。この遮蔽板80により、タンク体21が凍りついてしまうことが防止されている。
【0047】
また、冷蔵室37内には、床材34の四隅に位置させて氷設置台82が設けられている。図16は氷設置台を示す斜視図である。氷設置台82は、氷83が収容される氷収容部82aと、氷収容部82aの下側に取り付けられた排水容器82bとを有している。氷収容部82aは、氷収容部82aに収容された氷83により周囲の空気が冷却されやすいように金網状に形成されており、氷収容部82aに収容された氷83が溶けると、溶けた水が排水容器82b内に貯留される。排水容器82bにはドレン84が設けられており、ドレン84を開操作することで排水容器82b内に溜まった水が排水される。
【0048】
このように、本実施の形態のタンクコンテナ20においては、冷却器23により冷却された空気が供給される冷蔵室37内にタンク体21を収容するようにしている。これにより、車両による運搬中にタンク体21に貯留された牛乳を保冷することができ、牛乳の品質を劣化させることなく、牛乳を長距離輸送することが可能となる。また、タンク体21の外面全体が冷蔵室37内の冷却された空気により覆われるため、つまりタンク体21の外面と冷却された空気との接触面積が広くとられているため、タンク体21に貯留された牛乳を効率良く冷却することができる。
【0049】
さらに、断面矩形状のコンテナ本体22の内面と断面円形状のタンク体21の外面との間で、冷蔵室37内の上方側の左右両隅に形成された空間54aに、冷却器23から冷却された空気を供給するようにしている。これにより、冷却器23から供給される冷却された空気を淀みなく、冷蔵室37内で循環させることができる。また、冷却された空気が供給される空間54aをコンテナ本体22の内面とタンク体21の外面との間で形成するようにしたので、従来のようにタンク体21の内壁と断熱材との間に流路を形成する必要がない。したがって、タンクコンテナ20を簡易な構造とすることができ、タンク体21の製造が容易となるとともに、タンク体21を薄肉形状とすることによりタンク体21の軽量化を図ることができる。
【0050】
さらに、コンテナ本体22に注入用ハッチ56および吐出用ハッチ61を設けるようにしたので、タンク体21を冷蔵室37内に収容した状態でタンク体21内に牛乳を注入したり、タンク体21内から牛乳を吐出したりすることが可能となる。これにより、タンク体21内に牛乳を注入する際やタンク体21内から牛乳を吐出する際に、タンク体21を冷蔵室37内に積み降ろしする必要がなく、牛乳の注入時および吐出時の作業性を向上させることができる。
【0051】
さらに、コンテナ本体22内にタンク体21を収容するようにしたので、コンテナ本体22の天井壁36に足場59を設けることが可能となる。これにより、平坦な足場スペースを広く確保するとともに足場59に十分な強度を持たせることができ、作業者が足場59上で安全に作業することが可能となる。また、従来のようにタンク体の上部に足場を設ける場合に比べて、タンク体21に足場を設けない分、タンク体21の製造が容易となるとともに、十分な耐久性を持たせた状態でタンク体21を薄肉化することが可能となり、タンク体21の軽量化を図ることができる。
【0052】
また、本実施の形態のタンクコンテナ20においては、冷却器23から供給される冷却された空気を、冷蔵室37内の前方側に形成された空間54aに案内する案内板77と、冷蔵室37内の後方側に形成された空間54aに案内する案内ダクト78とを設けるようにしている。これにより、冷却された空気を冷蔵室37内の後方側まで確実に循環させることができ、タンク体21に貯留された牛乳をむらなく保冷することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態のタンクコンテナ20においては、冷却器23から冷蔵室37内に供給される空気が流れる流路を、冷却器23に戻る空気が流れる流路よりも上方側に設けるようにしている。これにより、タンク体21に貯留された牛乳が温度上昇しやすいタンク体21の上部に沿って温度の低い空気が流れるため、タンク体21に貯留された牛乳を効率良く冷却することができる。また、冷却器23は、冷蔵室37内から吸い込まれた空気を冷却して冷蔵室37内に吹き出すことを繰り返すので、冷蔵室37内の空気が効率良く冷却され、冷却器23の仕事量を低減することができる。
【0054】
また、本実施の形態のタンクコンテナ20においては、冷蔵室37内に氷83を配置するようにしている。これにより、万一、冷却器23が故障した場合でも、氷83により冷蔵室37内の空気を冷却することで、タンク体21内に貯留された牛乳を保冷することが可能となる。また、コンテナ本体22の外部の気温が高い時には、冷却器23による冷却に加えて、冷蔵室37内に氷83を配置することで冷蔵室37の室温を早期に下げることができる。なお、氷設置台82に氷83を設置する際や、排水容器82b内に溜まった水を排水する際には、庫内清掃用ドア67やバックドア38を開けて行われる。
【0055】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前記実施の形態においては、タンク体21に牛乳を貯留するようにしたが、他の流動性を有する貨物を貯留するようにしても良い。その場合には、タンク体21内に貯留された貨物が最適な温度となるように冷蔵室37の室温が設定される。但し、タンク体21に貯留される貨物として、品質保持のために所定の温度以下に保つ必要がある乳または乳製品(例えば、牛乳、生乳、山羊乳、濃縮牛乳、生クリームなど)を保冷した状態で長距離輸送するために、本発明のタンクコンテナ20は好適である。
【符号の説明】
【0056】
11 トラクタ
12 トレーラ
13 シャーシフレーム
14 走行車輪
20 タンクコンテナ
21 タンク体
22 コンテナ本体
23 冷却器
28 注入口
29 吐出口
34 床材
35 側壁
36 天井壁
37 冷蔵室
45 断熱材
54a 空間
56 注入用ハッチ
61 吐出用ハッチ
77 案内板
78 案内ダクト
79 ファン
80 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する貨物をタンク内に保冷した状態で輸送するタンク輸送用トレーラであって、
走行車輪を有し、トラクタにより牽引されて走行するシャーシフレームと、
床材、天井壁、および前後左右の側壁を有し、前記シャーシフレームに固定されるとともに内部に冷蔵室を形成するコンテナ本体と、
前記冷蔵室内に収容されて前記コンテナ本体との間で断熱用の空間を形成するとともに前記貨物を貯溜するタンク体と、
前記コンテナ本体と前記タンク体との間に設けられ、前記タンク体の上部に形成された注入口と当該注入口に対応させて前記天井壁に形成された開口部とを連通させるとともに前記注入口および前記開口部を前記冷蔵室と区画する注入用ダクトと、
前記タンク体に設けられ、前記注入口を開閉する蓋部と、
前記コンテナ本体に設けられ、前記開口部を開閉する注入用ハッチと、
前方の前記側壁に取り付けられ、前記コンテナ本体の内面と前記タンク体の外面との間で前記冷蔵室内の上方側の左右両隅に形成された空間に冷却された空気を供給する冷却器とを有し、
前記蓋部と前記注入用ハッチとを開放した状態のもとで、前記注入用ダクトを介して前記貨物を前記タンク体の内部に注入することを特徴とするタンク輸送用トレーラ。
【請求項2】
請求項1記載のタンク輸送用トレーラにおいて、前記貨物は乳または乳製品であることを特徴とするタンク輸送用トレーラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−131569(P2012−131569A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109162(P2011−109162)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2010−282993(P2010−282993)の分割
【原出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000229357)日本トレクス株式会社 (27)
【出願人】(510334837)三ッ輪物流株式会社 (2)
【Fターム(参考)】