説明

タンク

【課題】粉粒体積載容積を確保しつつタンク重量を軽減することが可能なタンクを提供する。
【解決手段】タンク1が円錐台形の前方筒2および後方筒2を大径開口同士2a,3a同士を突き合せた形状に形成されるようにしたので、粉粒体を積載することができないデッドスペースの容積を小さくすることが可能となり、その分、タンクを小さくすることが可能となる。したがって、粉粒体積載容積を確保しつつタンク重量を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉粒体運搬車に搭載されるタンクの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
およそ粉粒体運搬車にあっては、セメント、小麦粉、その他の粉粒体を運搬する必要性から架台にタンクを搭載しており、タンクから粉粒体を排出するには、タンク内に圧縮空気を送り込んで粉粒体を流動化させて排出口から排出するようにしている。
【0003】
したがって、タンク内には、タンクの両端から中央部に向けて下方へ傾斜する布製のスライドベルトと、スライドベルトと直交する方向に傾斜するスライド板と、タンク外方からタンク壁を貫通してスライドベルトの最下方部位に対し所定の間隔を空けて配置されるパイプ状の排出口とが設けられており、スライドベルトの下方からタンク内に圧縮空気を送り込むことで粉粒体と空気とを混合して流動化を可能とするとともに、スライドベルトおよびスライド板の傾斜を利用して粉粒体をタンク中央部へ集合させて、排出口から粉粒体を効率よく排出することができるようになっている(たとえば、特許文献1,2,3参照)。
【特許文献1】特開昭58−170641号公報
【特許文献2】特開平9−315569号公報
【特許文献3】特開平11−208360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような粉粒体運搬車にあっては、車両が積載可能な積載重量から車両重量およびタンク等の重量を除いた重量が最大積載量となるが、近年、車両重量が増加の一途をたどっていることから、粉粒体の最大積載量を確保するためにはタンク重量の軽量化が要望されている。
【0005】
しかしながら、従来の粉粒体運搬車のタンクTは、図4に示すように、基本的に、円筒中央部Cの両端に円錐台形あるいは偏心円錐台形の前後の筒A,Bを接合して構成されているが、スライドベルトSとタンクTの下面との間に圧縮空気の通路を形成する必要があることおよび構造上の理由から、上述のスライドベルトSとスライド板WとタンクTの下面との間には粉粒体を貯留することが不可能なデッドスペースDが形成される。
【0006】
このデッドスペースDの容積が小さければ小さい程、タンクTの粉粒体積載効率が改善されることになるが、現行タンクTの形状では、デッドスペースの容積を小さくするには限界があり、したがって、従来の粉粒体運搬車のタンクTでは、タンク重量の軽減を図ることが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、粉粒体積載容積を確保しつつタンク重量を軽減することが可能なタンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、粉粒体運搬車に搭載されて粉粒体を貯留するタンクにおいて、円錐台形の前方筒および後方筒を備えて、前方筒および後方筒の大径開口同士を突き合せた形状に形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉粒体を積載することができないデッドスペースの容積を小さくすることが可能であるから、タンクの粉粒体積載効率を向上することができ、その分、タンクを小さくすることが可能となる。
【0010】
したがって、本発明のタンクによれば、粉粒体積載容積を確保しつつタンク重量を軽減することが可能となるのである。また、タンク重量を軽減できるので、材料費が低減されて経済性にも優れる。
【0011】
さらに、溶接部の総延長(溶接部の総合長さ)を短くすることができるので、タンクの製造が容易となり製造コストが低減され、タンクを構成する鋼板の強度低下を招くことが無く、さらには、不完全溶接等によって接合部位に微小隙間が形成されてしまう心配が少なくなるので、タンクの信頼性も飛躍的に向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。図1は、一実施の形態における粉粒体運搬車のタンクの正面図である。図2は、一実施の形態における粉粒体運搬車のタンクの縦断面図である。図3は、一実施の形態における粉粒体運搬車のタンクの斜視図である。
【0013】
一実施の形態におけるタンク1は、図1から図3に示すように、偏心円錐台形の前方筒2と後方筒3とを備えて、前方筒2および後方筒3の大径開口2a,3a同士を突き合せた形状に形成され、前方筒2の前後方向に沿う上縁2bおよび後方筒3の前後方向に沿う上縁3bが同一直線上に配置されて水平とされ、前方筒2の前後方向に沿う下縁2cおよび後方筒3の前後方向に沿う下縁3cのみが傾斜するようになっている。なお、このタンク1は、図示はしないが従来のタンクと同様に、粉粒体運搬車のシャシフレームに搭載される。
【0014】
また、前方筒2の小径開口2dには、碗型の鏡板4が接続されて、当該小径開口2dは鏡板4によって閉塞され、さらに、後方筒3の小径開口3dにも、碗型の鏡板5が接続されて、当該小径開口3dは鏡板5によって閉塞されている。
【0015】
また、タンク1の上部には、粉粒体をタンク1内へ投入するために使用されるハッチ6が設けられ、さらに、その中央部下方に外方から貫通される粉粒体排出用のパイプ7が取付けられている。
【0016】
さらに、タンク1内には、前方筒2の前後方向に沿う下縁2cおよび後方筒3の前後方向に沿う下縁3cに間隔hを持って沿うように配置されてタンク1の両端から中央部へ向けて下方に傾斜するスライドベルト8と、スライドベルト8と直行する方向に傾斜するスライド板9とが設けられ、このスライドベルト8とスライド板9とタンク1の下面との間に圧縮空気の通路をなすデッドスペース10が形成されている。
【0017】
このようにタンク1が形成されることにより、特別な手段を講じることなく、タンク1内に設置されるスライドベルト8を前方筒2の前後方向に沿う下縁2cおよび後方筒3の前後方向に沿う下縁3cに沿わせて配置することが可能となり、デッドスペース10の厚みである間隔hを均一に薄くすることが可能となり、図2に示すように、デッドスペース10の容積を従来タンクに比較して小さくすることができる。
【0018】
よって、本発明のタンク1にあっては、デッドスペース10の容積を小さくすることが可能であるから、タンク1の粉粒体積載効率を向上することができ、その分、タンク1を小さくすることが可能となる。
【0019】
したがって、本発明のタンク1によれば、粉粒体積載容積を確保しつつタンク重量を軽減することが可能となるのである。また、タンク重量を軽減できるので、材料費が低減されて経済性にも優れる。
【0020】
さらに、タンク1は、偏心円錐台形の前方筒2と後方筒3の大径開口2a,3a同士を突き合せて溶接することで製造することが可能であるから、少なくとも中央の筒と前後の二つの筒を溶接しなければならない従来の粉粒体運搬車のタンクに比較して、溶接部の総延長(溶接部の総合長さ)を少なくともタンク外周長さ分は短くすることができるので、タンク1の製造が容易となり製造コストが低減される。
【0021】
そしてまた、タンク1の溶接部の総延長を従来タンクに比較して短くすることが可能であるから、その分、タンク1を構成する鋼板の強度低下を招くことが無く、さらには、不完全溶接等によって接合部位に微小隙間が形成されてしまう心配が少なくなるので、タンク1の信頼性も飛躍的に向上することになる。
【0022】
なお、本実施の形態のタンク1にあっては、前方筒2と後方筒3とが偏心円錐台形とされ、前方筒2の前後方向に沿う上縁2bおよび後方筒3の前後方向に沿う上縁3bが同一直線上に配置されて水平とされていることから、前方筒2の前後方向に沿う下縁2cおよび後方筒3の前後方向に沿う下縁3cがタンク1の中央部へ向けて下方へ傾斜するようになっている。したがって、スライドベルト8の傾斜角を粉粒体排出に最適な角度に設定しつつ、スライドベルト8を前方筒2の前後方向に沿う下縁2cおよび後方筒3の前後方向に沿う下縁3cに沿わせることができ、デッドスペース10の容積をより小さくすることができる。
【0023】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施の形態における粉粒体運搬車のタンクの正面図である。
【図2】一実施の形態における粉粒体運搬車のタンクの縦断面図である。
【図3】一実施の形態における粉粒体運搬車のタンクの斜視図である。
【図4】従来の粉粒体運搬車のタンクの縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 タンク
2 前方筒
3 後方筒
2a 前方筒における大径開口
3a 後方筒における大径開口
2b 前方筒における上縁
3b 後方筒における上縁
2c 前方筒における下縁
3c 後方筒における上縁
2d 前方筒における小径開口
3d 後方筒における小径開口
4,5 鏡板
6 ハッチ
7 パイプ
8 スライドベルト
9 スライド板
10 デッドスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体運搬車に搭載されて粉粒体を貯留するタンクにおいて、円錐台形の前方筒および後方筒を備えて、前方筒および後方筒の大径開口同士を突き合せた形状に形成されてなるタンク。
【請求項2】
前方筒および後方筒が偏心円錐台形とされるとともに、前方筒と後方筒の前後方向に沿う上縁が同一直線上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−132896(P2008−132896A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321374(P2006−321374)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】