説明

タングステン錯体、メタセシス反応用触媒および環状オレフィン開環重合体の製造方法

【課題】例えば、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合するにあたり、良好に制御された重合を行うための触媒の成分などとして有用なタングステン錯体と、そのタングステン錯体を含んでなるメタセシス反応用触媒を提供すること。
【解決手段】式(1)で表されるタングステン錯体。


(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。Xは、独立に、ハロゲン原子、アリーロキシ配位子、アルコキシ配位子、およびアルキル配位子から選択される配位子である。nは1〜3の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン錯体とその製造方法、およびメタセシス反応用触媒とその触媒を用いる環状オレフィン開環重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1に示されているように、六塩化タングステンや五塩化モリブデンなどの金属ハロゲン化物とテトラフェニルスズやテトラ(n−ブチル)スズなどの有機スズ化合物とから得られる重合触媒や、オキシ四塩化タングステンやオキシ四塩化モリブデンなどの金属オキシハロゲン化物とトリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどの有機アルミニウム化合物とから得られる重合触媒などのいわゆるチーグラー型重合触媒が開環メタセシス重合用の触媒として広く知られている。
【0003】
上記したようなチーグラー型重合触媒は高い重合活性を示すものであるが、複数種の活性種が混在した触媒であるため、重合反応の制御が困難であり、環状オレフィン化合物の開環メタセシス重合に用いると、トルエンなどの炭化水素溶媒に不溶な不溶分を含む重合体を生じ易いという問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K.J.Ivan,J.C.Mol編、“Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization”、 ACADEMIC PRESS(TOKYO)、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、例えば、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合するにあたり、良好に制御された重合を行うための触媒の成分などとして有用なタングステン錯体と、そのタングステン錯体を含んでなるメタセシス反応用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するα−ジケトンをタングステン化合物に配位させて得られる新規なタングステン錯体が、メタセシス反応用触媒として用いることができ、しかも、環状オレフィン化合物の開環メタセシス重合用触媒として用いると、重合反応が良好に制御されて、容易に不溶分を含まない重合体を得ることができることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
かくして、本発明によれば、下記の式(1)で表されるタングステン錯体が提供される。
【0008】
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。Xは、独立に、ハロゲン原子、アリーロキシ配位子、アルコキシ配位子、およびアルキル配位子から選択される配位子である。nは1〜3の整数である。)
【0009】
また、本発明によれば、上記のタングステン錯体、および上記のタングステン錯体以外の有機金属化合物からなる助触媒を含んでなるメタセシス反応用触媒が提供される。
【0010】
また、上記のメタセシス反応用触媒では、助触媒が、下記の式(2)で表される有機金属化合物であることが好ましい。
【0011】
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子および炭素数1〜4のアルキル基から選択される基である。)
【0012】
さらに、本発明によれば、上記のメタセシス反応用触媒の存在下で、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合させる、環状オレフィン開環重合体の製造方法が提供される。
【0013】
また、さらに、本発明によれば、上記のタングステン錯体の製造方法であって、ヘキサハロタングステンに、上記の式(2)で表される化合物および下記の式(3)で表される化合物を反応させることを特徴とするタングステン錯体の製造方法が提供される。
【0014】
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合するにあたり、良好に制御された重合を行うための触媒の成分などとして有用なタングステン錯体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、タングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリドのX線結晶解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタングステン錯体は、下記の式(1)で表される、少なくとも1つのα−ジケトネート配位子を有し、タングステンを中心金属とする錯体である。
【化4】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。Xは、独立に、ハロゲン原子、アリーロキシ配位子、アルコキシ配位子、およびアルキル配位子から選択される配位子である。nは1〜3の整数である。)
【0018】
式(1)において、RおよびRで表される基は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。RおよびRで表される基として、好ましく用いられる基としては、炭素数1〜24のアルキル基および炭素数6〜24のアリール基から選択される基を挙げることができる。RおよびRは同一の基であっても、互いに異なる基であってもよく、また、1分子中にRおよびRがそれぞれ複数存在する場合(すなわち、式(1)においてnが2または3の場合)も、それぞれのRおよびRは、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。
【0019】
式(1)において、RおよびRで表される基の具体例としては、炭素数1〜24のアルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基が挙げられ、炭素数6〜24のアリール基の具体例として、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、メシチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
また、RおよびRで表される基は、互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。その場合、タングステンに配位する、二重結合で結合された2つの炭素原子と共に形成する脂環構造の具体例としては、シクロブタジエニル環構造、シクロペンテニル環構造、シクロヘキセニル環構造、シクロヘプテニル環構造、ノルボルネン環構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
式(1)において、Xで表される配位子は、ハロゲン原子、アリーロキシ配位子、アルコキシ配位子、およびアルキル配位子から選択される配位子であり、なかでも特に好ましく用いられる配位子は、ハロゲン原子である。なお、Xで表される配位子が存在する場合(すなわち、式(1)においてnが1または2の場合)、Xで表される配位子は複数存在することとなるが、それらは、同一の配位子であっても、互いに異なる配位子であってもよい。
【0022】
式(1)において、Xで表される配位子の具体例としては、ハロゲン原子の具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、アリーロキシ配位子の具体例として、フェノキシ配位子が挙げられ、アルコキシ配位子の具体例として、メトキシ配位子、エトキシ配位子、イソプロピルオキシ配位子、ターシャリブトキシ配位子が挙げられ、アルキル配位子としては、エチル配位子、ブチル配位子、ベンジル配位子、ネオペンチル配位子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
式(1)において、n(すなわちタングステンに配位するα−ジケトネート配位子の数)は、1〜3の整数であり、好ましくは1または2である。また、タングステンに配位するXで表される配位子の数は、(6−2n)個である。
【0024】
式(1)で表される本発明のタングステン錯体を得る方法は、特に限定されないが、次に述べる本発明のタングステン錯体の製造方法によれば、好適に本発明のタングステン錯体を得ることができる。すなわち、本発明のタングステン錯体の製造方法は、ヘキサハロタングステンに、下記の式(2)で表される化合物および下記の式(3)で表される化合物を反応させることにより、式(1)で表される本発明のタングステン錯体を得るものである。
【0025】
【化5】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子および炭素数1〜4のアルキル基から選択される基である。)
【0026】
【化6】

(式中、RおよびRは、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。)
【0027】
本発明のタングステン錯体の製造方法で用いられる、ヘキサハロタングステンとしては、例えば、六塩化タングステンおよび六フッ化タングステンを挙げることができるが、なかでも六塩化タングステンが好適である。
【0028】
ヘキサハロタングステンに反応させる式(2)で表される化合物は、有機ケイ素化合物である。式(2)において、R〜Rで表される基は、それぞれ、水素原子および炭素数1〜4のアルキル基から選択される基である。R〜Rは同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。
【0029】
式(2)で表される化合物は、公知の方法に従って合成することが可能であり、例えば、特開2006−51489号公報や、J.Organomet.Chem.1976,112(1),p.49−59に記載された方法により合成することができる。一般式(2)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては、3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1,2−ジメチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1,5−ジメチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジメチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1,2,4−トリメチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1,2,4,5−テトラメチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1−エチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1−tert−ブチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1−イソプロピル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエンが挙げられる。なかでも、3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン、1,4−ジメチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエンが好ましく用いられ、その中でも1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエンが最も好ましく用いられる。
【0030】
ヘキサハロタングステンに反応させる、式(3)で表される化合物は、α−ジケトン化合物であり、式(1)で表されるタングステン錯体のα−ジケトネート配位子となるものである。式(3)において、RおよびRで表される基は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。本発明のタングステン錯体の製造方法で用いる式(3)で表される化合物のRおよびRで表される基は、目的とする式(1)で表されるタングステン錯体のRおよびRで表される基に応じて選択すればよい。
【0031】
式(3)で表される化合物の具体例としては、2,3−ブタンジオン、3,4−ヘキサジオン、1,2−シクロヘプタンジオン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン、ベンジル、2,2’−ジクロロベンジル、4,4’−ジメチルベンジル、3,3’−ジメトキシベンジル、カンファーキノンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
ヘキサハロタングステンに、式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物を反応させるためには、それぞれの化合物を混合すればよい。これらの化合物を混合させると、まず、ヘキサハロタングステンと式(2)で表される化合物との当モル反応により2電子還元されたタングステン種が生成し、これが式(3)で表される化合物1分子と反応することで、タングステンにα−ジケトネート配位子が導入される。必要に応じて、この反応を繰り返させることにより、式(1)で表されるタングステン錯体を得ることができる。それぞれの成分を混合する方法は、特に限定されないが、それぞれの成分を有機溶媒に溶解または分散させて混合する方法が好適である。それぞれの混合順序は特に限定されず、任意の順で混合すればよい。
【0033】
それぞれの成分を溶解または分散させるために用いる有機溶媒は、それぞれの成分を溶解または分散させることが可能であって、反応に影響しないものであれば、特に限定されない。用いられうる有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素などを挙げることができる。これらのなかでも、芳香族炭化水素またはエーテルが好ましく用いられる。なお、それぞれの成分の有機溶媒中の濃度は、特に限定されない。
【0034】
ヘキサハロタングステンに、式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物を反応させるにあたり、それぞれの成分の比率は特に限定されないが、式(2)で表される化合物のヘキサハロタングステンに対する割合は、1〜10モル倍が好ましく、1〜8モル倍がより好ましく、1〜3モル倍が特に好ましい。この割合が小さすぎると、未反応のヘキサハロタングステンが残ってメタセシス反応用触媒として用いる場合に、反応の選択性に悪影響を与えるおそれがあり、この割合が大きすぎると、未反応の式(2)で表される化合物が副反応を引き起こすおそれがある。また、式(2)で表される化合物に対する式(3)で表される化合物の割合は、1〜3モル倍が好ましく、1〜2モル倍がより好ましく、1〜1.5モル倍が特に好ましい。この割合が小さすぎると、還元されたタングステン種が残って、メタセシス反応用触媒として用いる場合に、触媒の活性に悪影響を与えるおそれがあり、この割合が大きすぎると、未反応の式(3)で表される化合物が副反応を引き起こすおそれがある。
【0035】
反応温度は特に限定されないが、通常−100℃〜100℃の範囲であり、−80℃〜80℃の範囲であることが好ましく、−70℃〜70℃の範囲であることがより好ましい。反応温度が低すぎると反応の進行が遅くなりすぎ、反応温度が高すぎると副反応が起こったり、生成物が分解したりするおそれがある。なお、0℃以下の低温度で各成分を混合した後、その後、0℃を越える温度に上げて反応を行うことも好ましい。反応時間は、特に限定されないが、通常1分間〜1週間の間で選択される。
【0036】
反応によって得られる式(1)で表されるタングステン錯体は、これが不溶な有機溶媒、例えば、ペンタンやヘキサンなどの飽和炭化水素に反応液を加えて析出させたり、反応に用いた溶媒を留去したりして回収することができる。また、回収されるタングステン錯体は、ヘキサンなどの飽和炭化水素を用いて再結晶して単離・精製することができる。そして、単離・精製したタングステン錯体は、例えばH−NMR測定、元素分析、単結晶X線構造解析などにより、その構造を同定することができる。
【0037】
例えば以上のようにして得られる、本発明のタングステン錯体は、このタングステン錯体以外の有機金属化合物からなる助触媒と組み合わせて用いることにより、高い活性を備えるメタセシス反応用触媒として用いることができる。すなわち、本発明のメタセシス反応用触媒は、本発明のタングステン錯体、および前記タングステン錯体以外の有機金属化合物からなる助触媒を含んでなるものである。
【0038】
本発明のメタセシス反応用触媒において、本発明のタングステン錯体と組み合わせる助触媒として用いられる有機金属化合物は、本発明のタングステン錯体と組み合わせて用いることにより、メタセシス反応活性を示すものであれば特に限定されないが、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期表第1、2、12、13または14族の有機金属化合物が好適に用いられる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物または有機スズ化合物が好ましく用いられ、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物または有機ケイ素化合物が特に好ましく用いられる。
【0039】
助触媒として用いられうる有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウム化合物としては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリドなどを挙げることができる。有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウム、アルキルアルコキシアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハライドを挙げることができ、さらに、これらの有機アルミニウムと水との反応によって得られる従来公知のアルミノキサンを挙げることができる。有機ケイ素化合物としては、前述の式(2)で示される有機ケイ素化合物やトリエチルシランを挙げることができる。有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。これらのなかでも、前述の式(2)で示される有機ケイ素化合物を助触媒として用いることにより、より良好に反応が制御されたメタセシス反応用触媒を得ることができる。
【0040】
助触媒として用いる有機金属化合物の量は、用いる有機金属化合物の種類によって異なるが、式(1)で表されるタングステン錯体の中心金属に対して、0.1〜10,000モル倍であることが好ましく、0.2〜5,000モル倍であることがより好ましく、0.5〜2,000モル倍であることが特に好ましい。この量が少なすぎると、触媒活性が十分でないものとなるおそれがあり、この量が多すぎると、触媒が副反応を引き起こし易いものとなるおそれがある。
【0041】
本発明のメタセシス反応用触媒は、各種のメタセシス反応に適用できるものであるが、なかでも、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合させるための、開環メタセシス重合用触媒として好適に用いることができる。本発明のメタセシス反応用触媒を開環メタセシス重合用触媒として用いることにより、環状オレフィンの開環重合を良好に制御して行うことができ、得られる環状オレフィン開環重合体を不溶分を含まない重合体とすることが容易となる。
【0042】
本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法は、本発明のメタセシス反応用触媒の存在下で、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合させるものである。本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法において、単量体として用いる環状オレフィン化合物は、特に限定されず、例えば、ノルボルネン類、ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン類、ヘキサシクロヘプタデセン類、単環のシクロアルケン類などを用いることができる。これらのなかでも、ノルボルネン類、ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン類が、取り扱いが容易である点で好ましく、そのなかでも、ノルボルネン類、ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体が特に好ましい。
【0043】
単量体として用いられうるノルボルネン類の具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネンなどの無置換またはアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネンなどの芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイトなどの酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類などが挙げられる。
【0044】
単量体として用いられうるノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体としては、環構造が5員環であるジシクロペンタジエン類、芳香環を有するノルボルネン誘導体などを挙げることができる。ジシクロペンタジエン類の具体的例としては、ジシクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンの5員環部分の二重結合を飽和させたトリシクロ[4.3.12,5.0]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,5.0]ウンダ−3−エンなどを挙げることができる。芳香環を有するノルボルネン誘導体としては、テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[6.6.12,5.01,6.08,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、などを挙げることができる。
【0045】
単量体として用いられうるテトラシクロドデセン類の具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセンなどの無置換またはアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセンなどの環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセンなどの芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、などの酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセンなどのハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセンなどのけい素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類などが挙げられる。
【0046】
単量体として用いられうるヘキサシクロヘプタデセン類の具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセンなどの無置換またはアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセンなどの環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセンなどの芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセンなどの酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセンなどのハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセンなどのけい素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類などが挙げられる。
【0047】
単量体として用いられうる単環のシクロアルケンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,4−シクロオクタジエン、シクロデセンなどを挙げることが出来る。
【0048】
単量体として用いる環状オレフィン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法では、重合反応を有機溶媒中で行うことが好ましい。用いる有機溶媒は、重合体が所定の条件で溶解もしくは分散し、重合に影響しないものであれば、特に限定されない。用いられうる有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル;アニソール、フェネトールなどの芳香族エーテルなどの有機溶媒を挙げることができるが、なかでも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル、または芳香族エーテルを用いることが好ましい。
【0050】
本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法において、触媒の使用量は特に限定されるものではないが、(式(1)で表されるタングステン錯体中のタングステン原子:単量体として用いる環状オレフィン化合物)のモル比として、通常1:10〜1:2,000,000、好ましくは1:20〜1,000,000、より好ましくは1:50〜1:500,000の範囲である。触媒の使用量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。また、重合を有機溶媒中で行う場合の単量体として用いる環状オレフィン化合物の濃度は、溶液中1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%であることが特に好ましい。この濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎると、重合後の溶液粘度が高くなりすぎて重合が飽和してしまうおそれがある。
【0051】
重合反応は、環状オレフィン化合物と触媒とを混合することにより開始させることができる。重合温度は特に制限はないが、通常−30℃〜200℃の範囲であり、好ましくは0℃〜180℃の範囲である。重合時間にも特に制限はないが、通常、1分間〜100時間の範囲で選択すればよい。
【0052】
重合反応を行うにあたっては、得られる環状オレフィン開環重合体の分子量を調整するために、重合系にビニル化合物またはジエン化合物を添加してもよい。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などを挙げることができる。分子量調整に用いるジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、または1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエンを挙げることができる。添加するビニル化合物またはジエン化合物の量は目的とする分子量に応じて、単量体として用いる環状オレフィン化合物に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択すればよい。
【0053】
本発明の環状オレフィン開環重合体の製造方法によって得られる環状オレフィン開環重合体は、常法に従って、重合溶液から回収すればよい。また、得られる環状オレフィン開環重合体については、必要に応じて、常法に従って、重合体中に含まれる炭素−炭素二重結合の一部または全部を水素化してもよい。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
【0055】
〔重合体の分子量〕
重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(島津製作所社製、「LC−10A分析システム」)で、カラムとしてShodex社製「KF−806L」(カラム温度40℃)、検出器として示差屈折率検出器(島津製作所社製、「RID 10A」)、溶媒としてテトラヒドロフランをそれぞれ用いて、ポリスチレン換算値として求めた。
〔NMR測定〕
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、「AVANCE III−400 spectrometers」)を用いて測定した。
〔単結晶X線構造解析の測定〕
CCD検出器(リガク社製、「Mercury」)を搭載した単結晶X線回析装置(リガク社製、「AFC7R」)により、Mo−Kα線(λ=0.71075Å)を用いて、−160℃で測定を行った。なお、解析データ処理は「Crystal Clear」(リガク社製)により、また、構造解析は「Crystal Structure 4.0」(リガク社製)により行った。
【0056】
〔実施例1〕(タングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリドの合成と同定)
高純度アルゴンで置換した攪拌機付きガラス反応器に、六塩化タングステンを500mgと、4,4’−ジメチルベンジル300mgと、トルエン10mLを加えた。この混合溶液を−78℃ に冷却し、1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン0.36mLを添加した。得られた溶液を室温下で1時間攪拌することにより反応させた。反応は速やかに進行し、溶液が黒紫色から紫色に変化した。1時間経過後、溶媒を減圧留去し、固体をヘキサン10mLにて3回洗浄し、濃い紫色固体を617mg得た。収率は87%だった。この固体について、H−NMRおよび13C−NMRを測定したところ、得られたスペクトルは以下の通りであった。H−NMR(400MHz,C,308K)δ3.93(s,6H,PhCH),5.35(d,J=8.0Hz,4H,ortho−H),7.18(d,J=8.8Hz,4H,meta−H)。13C−NMR(100MHz,CDCl,308K)δ17.5(CCH),105.3(ipso−Ar),121.4(ortho−Ar),145.9(meta−Ar),155.7(para−Ar),192.6(O−C)。また、得られた紫色の固体についてヘキサンを用いて再結晶を行うことにより、単結晶を得て、そのX線結晶構造解析を行った。その結果(ORTEP図)を図1に示す。以上の結果より、得られた固体は、α−ジケトンである4,4’−ジメチルベンジルの2個の酸素原子の両方がタングステンにイオン結合で配位し、α−ジケトン構造に含まれていた2個の炭素原子の結合が二重結合となったタングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリドであると同定した。
【0057】
〔実施例2〕(タングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリド/1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエンによるノルボルネンの開環メタセシス重合1)
攪拌機付きガラス反応器に、実施例1で得られたタングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリド56.4mg(0.10mmol)を入れ、さらに、ノルボルネン941mg(10mmol)およびトルエン4mLを添加して攪拌することにより均一な溶液とした。この溶液を攪拌しながら、さらに1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエン23.8mg(0.10mmol)をトルエンに溶解した溶液0.5mLを添加することにより、重合反応を開始させた。室温で3時間反応させたところ、透明の溶液となった。この溶液に大量のメタノールを添加することにより重合反応を停止した上で重合体を析出させ、それを濾過により回収した。重合体(ノルボルネンの開環重合体)の収率は94%で、得られた重合体をトルエンに溶解すると、全て溶解して均一の溶液となった。また、得られた重合体についてGPC測定を行ったところ、重合体の数平均分子量は330,000、分散比は1.8であり、GPCの溶出曲線は正規分布を示した。
【0058】
〔実施例3〕(タングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリド/1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエンによるノルボルネンの開環メタセシス重合2)
重合反応前の溶液に、連鎖移動剤として1−ヘキセンを8.4mg(0.10mmol)さらに添加したこと以外は、実施例2と同様にして、重合反応を行って重合体を回収し、そのGPC測定を行った。重合体(ノルボルネンの開環重合体)の収率は81%で、得られた重合体をトルエンに溶解すると、全て溶解して均一の溶液となった。また、重合体の数平均分子量は43,000、分散比は1.8であり、GPCの溶出曲線は正規分布を示した。
【0059】
〔比較例〕(六塩化タングステン/トリエチルアルミニウムによるノルボルネンの開環メタセシス重合)
タングステン(4,4’−ジメチルベンジル)テトラクロリドに代えて、六塩化タングステン39.7mg(0.10mmol)を用い、1−メチル−3,6−ビス(トリメチルシリル)−1,4−シクロヘキサジエンに代えて、トリエチルアルミニウム11.4mg(0.10mmol)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、重合反応を行って重合体を回収し、そのGPC測定を行った。重合体(ノルボルネンの開環重合体)の収率は98%であった。また、得られた重合体をトルエンに溶解させたところ、一部がトルエンに溶解しない不溶分として観察された。重合体の数平均分子量は428,000、分散比は8.4であったが、GPCの溶出曲線は複数のピークが重なったものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表されるタングステン錯体。
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。Xは、独立に、ハロゲン原子、アリーロキシ配位子、アルコキシ配位子、およびアルキル配位子から選択される配位子である。nは1〜3の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載のタングステン錯体、および前記タングステン錯体以外の有機金属化合物からなる助触媒を含んでなるメタセシス反応用触媒。
【請求項3】
助触媒が、下記の式(2)で表される有機金属化合物である請求項2に記載のメタセシス反応用触媒。
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子および炭素数1〜4のアルキル基から選択される基である。)
【請求項4】
請求項2または3に記載のメタセシス反応用触媒の存在下で、環状オレフィン化合物を開環メタセシス重合させる、環状オレフィン開環重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法であって、ヘキサハロタングステンに、上記の式(2)で表される化合物および下記の式(3)で表される化合物を反応させることを特徴とするタングステン錯体の製造方法。
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜24のアルキル基および置換基を有していてもよい炭素数6〜24のアリール基から選択される基であり、RとRとが互いに結合して脂環構造を形成していてもよい。)

【図1】
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【公開番号】特開2013−14562(P2013−14562A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150118(P2011−150118)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】