説明

タンタル及びニオブ化合物及び化学蒸着(CVD)のための前記化合物の使用

【課題】従来の欠点を有しないか、又は少なくとも実質的に改善された窒化タンタル及び窒化ニオブ薄膜をCVD法で成膜するための新規な前駆物質を提供する。
【解決手段】下記一般式(II)で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な新規タンタル及びニオブ化合物、化学蒸着を用いてタンタル又はニオブを含有する層を堆積するための前記化合物の使用及びこの方法により製造されたタンタル又はニオブを含有する層に関する。
【背景技術】
【0002】
Siマイクロエレクトロニクスにおける使用のためのTa及びTa−Nをベースとする混合系層は、目下、プラズマをベースとする堆積法(物理蒸着PVD)により製造される。なお一層高度に集積された回路、例えば構造化された表面上の対応する層堆積のための極端な要求に関して、PVD法は、技術的な実現可能性の限界に次第に達してきている。これらの用途のためには、特別なCVD法による原子層の精度の堆積までに至った化学的気相堆積(化学蒸着、CVD)、いわゆる原子層堆積法(ALD)が次第に使用されてきている。これらのCVD法のためには、それぞれの所望の層について、個々の元素の相応する化学的な出発物質がもちろん入手可能でなければならない。
【0003】
目下、ハロゲン化物、例えば、TaCl5、TaBr5(国際公開(WO)第2000065123号パンフレット(A1)、A.E. Kaloyeros他, J. Electrochem. Soc. 146 (1999), p.170-176又はK. Hieber, Thin Solid Films 24 (1974), p.157-164参照)は、CVDのTaをベースとする層構造に主に使用される。これは多様な欠点を伴う。第一に、それらの腐食性のために、ハロゲンラジカルは、複雑な層構造の製造のためにしばしば望ましくない;第二に、ハロゲン化タンタルは、高融点固体としてそれらの低い揮発性及びそれらの困難な加工性のために欠点を有する。単純なタンタル(V)アミド、例えば、Ta(N(CH325も提案されている(例えばFix他, Chem. Mater. 5 (1993), p.614-619参照)。しかしながら、単純な前記アミドを用いて、一般的に、Ta対Nの特定の分解比のみを確立することができ、このことは層中の個々の元素濃度を正確に制御することを困難にする。しばしば、窒化Ta(V)膜は形成され(例えばFix他参照:Ta35)、かつ所望の電気伝導性窒化Ta(III)層(TaN)は形成されない。そのうえ、この出発物質を用いて製造された膜は極めて頻繁に、高く、望ましくない炭素濃度を示す。Tsai他, Appl. Phys. Lett. 67(8)、(1995)、p.1128-1130は故に、600℃でのTaNのCVDにおけるt−BuN=Ta(NEt23を提案する。その相対的に低い揮発性のために、この化合物は、高いプラント温度を必要とし、故に、集積回路のための典型的な製造方法と極めて適合性でない。その他の、類似のタンタルアミドイミドも提案されていた(例えばChiu他, J. Mat. Sci. Lett. 11 (1992), p.96-98参照)が、しかしそれを用いて、別の反応性ガスを用いない場合に、窒化タンタル層中で高い炭素含量が発生された。最近、別の窒化タンタル前駆物質が、例えばBleau他, Polyhedron 24(3), (2005), p.463-468により提案されており、前記前駆物質はそれらの複雑さ及び高価な製造のために最初から欠点を有し、又は必然的にTaSiN(窒化タンタルではない)をまねくか又はさらに加えて、明記されていない窒素源を必要とする特別なシクロペンタジエニル化合物が提案されている(Kamepalli他、米国特許出願公開第2004142555号明細書(A1)、優先権2003年01月16日、ATMI, Inc.)。米国特許(US)第6 593 484号明細書(Kojundo Chemicals Laboratory Co., Ltd., Japan)は、適した特別なタンタルアミドイミドを提案するが、しかし挙げられた合成は困難であり、かつ再現性に乏しい。Fischer他、Dalton Trans. 2006, 121-128には、タンタル、ハフニウム及びジルコニウムの混合ヒドラジド−アミド/イミド錯体及びCVDにおけるそれらの適性が記載されているが、しかし、生じた堆積生成物中のTa:N比に関して何ら指摘されていない。J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1990, 1087-1091には、トリクロロビス(トリメチルヒドラジド)錯体が記載されているが、しかし、CVDにおけるその使用の指摘は存在しない。
【特許文献1】国際公開(WO)第2000065123号パンフレット(A1)
【特許文献2】米国特許出願公開第2004142555号明細書(A1)
【特許文献3】米国特許(US)第6 593 484号明細書
【非特許文献1】A.E. Kaloyeros他, J. Electrochem. Soc. 146 (1999), p.170-176
【非特許文献2】K. Hieber, Thin Solid Films 24 (1974), p.157-164
【非特許文献3】Fix他, Chem. Mater. 5 (1993), p.614-619
【非特許文献4】Tsai他, Appl. Phys. Lett. 67(8)、(1995)、p.1128-1130
【非特許文献5】Chiu他, J. Mat. Sci. Lett. 11 (1992), p.96-98
【非特許文献6】Bleau他, Polyhedron 24(3), (2005), p.463-468
【非特許文献7】Fischer他、Dalton Trans. 2006, 121-128
【非特許文献8】J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1990, 1087-1091
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
故に、前記の欠点を有しないか、又は少なくとも実質的な改善を提供するTaN層のための別の新規前駆物質へのかなりの認識できる需要が存在する。一部の用途のためには、対応する用途のためにより適している代替前駆物質も望まれうる。
【0005】
故に、本発明の課題は、そのような前駆物質を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これらの前提条件を満たす、式(I)の2つの一価ヒドラジド配位子を有するタンタル錯化合物に関する。ヒドラジド配位子は、一般式
【化1】

[式中、
1、R2及びR3は互いに独立して、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル基、しかし同時にメチルではない、C5−〜C12−シクロアルキル基、C6−〜C10−アリール基、1−アルケニル、2−アルケニル、3−アルケニル又はトリオルガノシリル基−SiR3(ここでRはC1−〜C4−アルキル基を表す)を表す]で示される配位子である。
【0007】
さらに本発明は、例えば、伝導性窒化ニオブ層(NbN)のためのCVD前駆物質として適している、類似のニオブ化合物に関する。
【0008】
本発明は、一般式(II)
【化2】

[式中、
MはNb又はTaを表し、
1、R2及びR3は、互いに独立して、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル基、しかし同時にメチル基ではない、C5−〜C12−シクロアルキル基、C6−〜C10−アリール基、1−アルケニル、2−アルケニル又は3−アルケニル基、トリオルガノシリル基−SiR3(ここでRはC1−〜C4−アルキル基を表す)を表し、
4、R5、R6は、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲンを表すか、O−R8(ここでR8は置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基又は−SiR3を表す)を表すか、BH4を表すか、置換又は非置換のアリル基を表すか、インデニル基を表すか、置換又は非置換のベンジル基を表すか、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基を表すか、CH2SiMe3を表すか、擬ハロゲン化物、例えば、−N3を表すか、シリルアミド−N(SiMe32を表すか、−NR910(ここでR9及びR10は互いに独立して、同じか又は異なり、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基、−SiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHを表す)を表すか、又は−NR1−NR23(ヒドラジド(1))(ここでR1、R2及びR3は互いに独立して、R1、R2及びR3の前記の意味を有する)を表し、
又はR4及びR5は一緒になって、=N−R7(ここでR7は置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基又は−SiR3)を表す]で示される化合物に関する。
【0009】
ここで、他に記載されていない限り、置換は、C1−〜C4−アルコキシ又はジ(C1−〜C4−アルキル)アミノ基での置換の意味であると理解される。
【0010】
非晶質及び/又は結晶質の形での、タンタル及びニオブを含有する金属、金属合金、酸化物、窒化物及び炭化物及びそれらの混合物及び/又は化合物は、本発明によるタンタル及びニオブ化合物から、CVD、ALD(原子層堆積法)及び熱分解を用いて製造されることができる。そのような混合物及び化合物は、例えば、キャパシタにおける誘電層及びトランジスタにおけるゲート、マイクロ波セラミックス、圧電セラミックス、熱的及び化学的なバリヤー層、拡散バリヤー層、硬質コーティング、電気伝導層、反射防止層、光学層及びIRミラー用の層として、使用される。タンタル酸Li及びニオブ酸Liは、光学材料の一例である。電極用の電気伝導性及び耐食性の層の例は、タンタル及び/又はニオブを含有するチタン及びルテニウム混合酸化物である。本発明によるタンタル及びニオブ化合物は、粉末の製造のための火炎熱分解用の前駆物質としても適している。
【0011】
一般式(III)
【化3】

[式中、
MはTa又はNbを表し、
1は、C1−〜C5−アルキル、C5−〜C6−シクロアルキル又は置換又は非置換のフェニル基又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)を表し、
2及びR3は、同じC1−〜C5−アルキル又はC5−〜C6−シクロアルキル基又は置換又は非置換のフェニル基又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)を表し、
7は、C1−〜C5−アルキル、C5−〜C6−シクロアルキル又は置換又は非置換のフェニル基又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)を表し、かつ
6は、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲン基を表すか、BH4を表すか、置換又は非置換のアリル基を表すか、インデニル基を表すか、置換又は非置換のベンジル基を表すか、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基を表すか、C1−〜C12−オキシアルキル基を表すか、又は基−NR910(ここでR9及びR10は互いに独立して、同じか又は異なり、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基、−SiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHを表す)を表す]で示される化合物が好ましい。
【0012】
一般式(IV)
【化4】

[式中、
7は、C1−〜C5−アルキル基、非置換又はC1−〜C5−アルキル基1〜3個により置換されたC6−〜C10−アリール基、又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)からなる群からの基を表し、かつ
6は、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲン基を表すか、BH4を表すか、置換又は非置換のアリル基を表すか、インデニル基を表すか、置換又は非置換のベンジル基を表すか、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基を表すか、C1−〜C12−オキシアルキル基を表すか、又は基−NR910(ここでR9及びR10は互いに独立して、同じか又は異なり、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基、−SiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHを表す)を表す]で示される化合物が特に好ましい。
【0013】
一般式(V)
【化5】

[式中、
9及びR10は互いに独立して、C1−〜C5−アルキル基、非置換又はC1〜C5−アルキル基1〜3個により置換されたC6〜C10−アリール基、又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHからなる群からの同じか又は異なる基を表し、かつ
7は、C1−〜C5−アルキル基、非置換又はC1−〜C5−アルキル基1〜3個により置換されたC6〜C10−アリール基、又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)からなる群からの基を表す]で示される化合物が極めて特に好ましい。
【0014】
式(VI)〜(X)
【化6】

[式中、MはTa又はNbを表す]で示される化合物が、同様に極めて特に好ましい。
【0015】
その都度タンタル化合物(M=Ta)が極めて特に好ましい。
【0016】
アルキル又はアルコキシは、その都度独立して、直鎖状、環状又は分枝鎖状のアルキル又はアルコキシ基を表し、その際、前記基は、場合によりさらに置換されていてよい。同じことは、トリアルキルシリル又はモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基のアルキル部分又はモノアルキルヒドラジン又はジアルキルヒドラジン又はモノアルキルシラン、ジアルキルシラン、トリアルキルシラン又はテトラアルキルシランのアルキル部分にも当てはまる。
【0017】
本発明に関連してC1〜C4−アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルを表し、C1〜C5−アルキルはさらに加えて、例えば、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル又は1,2−ジメチルプロピルを表し、C1〜C6−アルキルはさらに加えて、例えば、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル又は1−エチル−2−メチルプロピルを表し、C1〜C12−アルキルはさらに加えて、例えば、n−ヘプチル及びn−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルを表す。
【0018】
1−アルケニル、2−アルケニル及び3−アルケニルは、例えば、上記のアルキル基に対応するアルケニル基を表す。C1〜C4−アルコキシは、例えば、上記のアルキル基に対応するアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ又はt−ブトキシを表す。
【0019】
5〜C12−シクロアルキルは、例えば、置換又は非置換の単環式、二環式又は三環式のアルキル基を表す。シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ピナニル、アダマンチル、異性体メンチル類、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルは、例として挙げることができる。シクロペンチル及びシクロヘキシルがC5〜C6−シクロアルキルとして好ましい。
【0020】
アリールは、その都度独立して、骨格炭素原子6〜14個、好ましくは6〜10個を有する芳香族基を表し、前記芳香族基中、一環当たり0個の骨格炭素原子、1個の骨格炭素原子又は2又は3個の骨格炭素原子は、窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子により置換されていてよいが、しかし好ましくは、骨格炭素原子6〜14個、好ましくは6〜10個を有する炭素環式芳香族基を表す。
【0021】
置換又は非置換のC6〜C10−アリールの例はフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、o−、p−、m−トリル又はナフチルである。
【0022】
さらに、炭素環式芳香族基又はヘテロ芳香族基は、一環当たり5個までの同じか又は異なる置換基により置換されていてよく、前記置換基は、フッ素、シアノ、C1〜C12−アルキル、C1〜C12−フルオロアルキル、C1〜C12−フルオロ−アルコキシ、C1〜C12−アルコキシ及びジ(C1〜C8−アルキル)アミノからなる群から選択される。
【0023】
本発明による化合物は、一般式(XI)
【化7】

[式中、R1、R2及びR3は、前記の意味を有し、かつXは、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲン又は一般式(I)の配位子のいずれかである]で示されるヒドラジド配位子前駆物質のマグネシウム誘導体を、一般式(XII)
【化8】

[式中、
MはTa又はNbを表し、
Lは、脂肪族又は芳香族のアミン、ヘテロ環式アミン、好ましくはピリジン、エーテル、ハロゲン化物、好ましくは塩化物、又はニトリル、好ましくはアセトニトリルから選択される錯配位子を表すが、しかしその際、L2は存在しなくてもよい、かつ
4、R5及びR6は、前記の意味を有する]で示されるTa又はNb錯体と、適した溶剤中で、好ましくは−20℃〜120℃の温度で反応させることによって、単純な方法で製造されることができる。
【0024】
適した溶剤は、例えば、エーテル、例えば、THF、ジエチルエーテル又は1,2−ジメトキシエタン、双極性非プロトン性溶剤、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又は第三級アミン、ハロゲン化された脂肪族又は芳香族の炭化水素、例えばCH2Cl2、CHCl3又はクロロベンゼン、又は脂肪族又は芳香族の炭化水素、例えば、トルエン、ペンタン、ヘキサン、等、及びこれらの混合物又は場合により別の溶剤との混合物である。一般式(XII)[M(R4)(R5)(R6)Cl22]のTa又はNb錯体は、一般的に知られた方法により、単離された形で又はその場で(in-situ)、製造されることができる。
【0025】
式(XI)のマグネシウム化合物の代わりに、場合により、ヒドラジド配位子のその他の金属誘導体、例えばアルカリ金属塩、例えばリチウムの誘導体を使用することも可能である。
【0026】
さらに、本発明によるヒドラジド錯体を、配位子の交換により本発明によるその他の化合物へ変換することができる。例えばイミノ配位子は、対応するアミンの反応により別の配位子と交換されることができる。
【0027】
最後に、例えば、ハロゲン配位子を依然として含有する本発明によるヒドラジド錯体は、アミンのアルカリ金属塩、例えば、リチウムアミドを用いて、本発明によるその他のヒドラジド錯体へ変換されることができる。
【0028】
本発明による化合物の単離のためには、溶剤は、例えば減圧下に留去することにより、除去され、かつ洗浄又はその後の乾燥によるさらなる精製を続けることができる。適したそのような方法は当業者に知られている。
【0029】
さらに本発明は、化学蒸着を用いる窒化タンタル(TaN)層又は窒化ニオブ(NbN)層のための前駆物質としての一般式(II)による化合物の使用及びそれに応じて一般式(II)の化合物から製造されたTaN又はNbN層に関する。好ましくは一般式(III)の化合物、特に好ましくは一般式(IV)の化合物及び極めて特に好ましくは式(VI)〜(X)の化合物が、この方法において使用されるべきである。ここでは基の定義は前記の定義に対応する。
【0030】
さらに本発明は、多様な基について前記の定義を有する一般式(II)又は好ましくは一般式(III)の化合物から製造されるTaN又はNbN層を有する基板に関する。
【0031】
本発明による化合物は、次の技術的利点を有する:
1)Ta(III)又はNb(III)層のためのCVDに適した脱離基としてのヒドラジド配位子の導入は、基板コーティング中への望ましくないC組み込みの危険を減少させる。
【0032】
2)N出発物質、例えばヒドラジン誘導体(1,1−ジメチルヒドラジン又はt−ブチルヒドラジン)及びアンモニアとの組合せで、層組成の目標とした変更がCVDの場合に可能である。
【0033】
3)2つのヒドラジド配位子を用いることにより、堆積された層中のTa又はNbの酸化状態の形成が、Ta(III)又はNb(III)化合物の方向へ目標とした方法で促進されることができる。
【0034】
本発明はまた、化学蒸着(CVD)を用い、その後の処理工程:適した基板、例えば、Siウェーハ又はSiをベースとする集積回路の製造のために典型的に使用されるような、さらに表面構造化された個々の又は多重の層を既に有するSiウェーハは、CVD設備中へ導入され、層堆積のために適した、250℃〜700℃の範囲内の温度に加熱される工程を有する、層中での定義された方法でのそれぞれの元素の特定の濃度を確立するための、場合により別の化合物と混合した、Ta又はNbを含有する層の堆積のための本発明によるTa及びNb化合物の使用に関する。キャリヤーガスは、定義された濃度の出発物質で負荷されており、その際、不活性ガス、例えば、N2及び/又はArを、気化した不活性溶剤、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン又は酢酸ブチルとの組合せでも、キャリヤーガスとして使用することが可能であり、かつ反応性の、例えば還元性のガス、例えば、H2を添加することも可能である。負荷されたキャリヤーガスは、露出の定義された期間にわたって、加熱された基板の表面上へ導通され、その際、出発物質のそれぞれの濃度及び露出の期間は、相互に適合されるが、但し、所定の層厚及び所定の組成を有するTa又はNbを含有する層が基板の表面上に、非晶質、ナノ結晶質、微結晶質又は多結晶質の形のいずれかで形成される。
【0035】
露出の典型的な期間は、堆積速度に応じて、例えば、数秒ないし数分又は数時間である。典型的な堆積速度は、例えば、0.1nm/sec〜1nm/secであってよい。しかしながら、その他の堆積速度も可能である。典型的な層厚は、例えば、0.1〜100nm、好ましくは0.5〜50nm、特に好ましくは1〜10nmである。
【0036】
CVD技術において、純粋なTa又はNb金属層(Ta又はNbに富む単一層)、Ta又はNbに富む層並びにTa−N又はNb−Nを含有する混合層の製造のための、一般式(II)、好ましくは一般式(III)〜(X)による出発物質に加えて、次の出発物質はまた、以下にN出発物質とも呼ぶTa−N又はNb−Nを含有する混合系層のN濃度を目標とした方法で確立するために有利には使用される:アンモニア(NH3)又はモノ(C1〜C12−アルキル)ヒドラジン、特にt−ブチルヒドラジン(tBu−NH−NH2)、及び/又は1,1−ジ(C〜C−アルキル)−ヒドラジン、特に1,1−ジメチルヒドラジン((CH32N−NH2)、その際、アルキル基は線状又は分枝鎖状であってよい。特に、その後の高温加熱工程において、製造された混合系層の安定性に影響を与えるために、形成された層の再結晶挙動に影響を与えるために、CVD堆積において別の元素を混合することは有利でありうる。Siをベースとする集積回路における使用のためには、元素Siはこのためには特に適している。上記で論じた出発物質に加えて、以下にSi出発物質とも呼ぶSiのための次の出発物質は、Ta(又はNb)−N−Siを含有する混合系層の製造のためのCVD技術において有利には使用される:シラン(SiH4)及び/又はジシラン(Si26)及び/又はモノ(C1〜C12−アルキル)シラン、特にt−ブチルシラン(tBuSiH3)、及び/又はジ(C1〜C12−アルキル)シラン、特にジ−t−ブチルシラン(tBu2SiH2)、及び/又はトリ(C1〜C12−アルキル)シラン、特にトリエチルシラン((C23SiH)、及び/又はテトラ(C1〜C12−アルキル)シラン、特にテトラエチルシラン((C254Si)、その際、アルキル基は、線状又は分枝鎖状であってよい。
【0037】
原則的には、出発物質の正確な濃度は、CVD法におけるそれぞれの出発物質の熱分解特性に依存する。出発物質は、次のモル比で好ましくは使用される:N出発物質/Ta又はNb出発物質 0〜20 000、Si出発物質/Ta又はNb出発物質 0〜100。基板の表面温度は、300℃〜600℃の範囲に好ましくは調節される。キャリヤーガス及び出発物質の全圧は、10hPa〜1000hPaの範囲内の圧力に好ましくは調節され、その際、キャリヤーガスの分圧に対する全ての出発物質の総和の分圧の比は、0.0001〜0.5である。堆積速度は、好ましくは0.05nm/min〜50nm/minである。
【0038】
本発明によるタンタル及びニオブ化合物は、それらの高い誘電率を考慮してマイクロエレクトロニクスにとって興味深い酸化タンタル(Ta25)層又は酸化ニオブ(Nb25)層のための前駆物質としても適している。
【0039】
次の例は、本発明を例により説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0040】
次の例において、省略形及び省略された化合物名は、次の構造を表す:
tBu = t−ブチル
tBuN = t−ブチルイミノ = tBu−N=
Me = メチル
Py = ピリジン
Bz = ベンジル。
【0041】
本発明によらない前駆物質の製造の例
前駆物質例A:HN(SiMe3)NMe2の製造
1,1−ジメチルヒドラジン60ml(47g、0.78mmol)をペンタン500ml中に装入し、クロロトリメチルシラン50ml(43g、0.40mmol)をゆっくりと添加した。完全に添加した後に、反応溶液を3時間、還流下に加熱し、ついでろ過した。ろ過残留物をペンタン60mlで洗浄し、合一したろ液をアルゴン下に蒸留した。二番目の留分(99℃)により、無色液体42.12g(0.32mmol;81%)が得られた。
【0042】
【数1】

【0043】
前駆物質例B:[Mg(N(SiMe3)NMe2)Br]の製造
Mg 4.21g(173mmol)を三つ口フラスコ中で真空中で加熱し、ジエチルエーテル600mlを添加した。2−ブロモブタン24.8ml(31.2g;228mmol)を、セプタムを経て滴加した。マグネシウムの溶解後に、HN(SiMe3)NMe2 23.0g(174mmol)を滴加した。この懸濁液を12時間撹拌し、20mbarでその体積の2/3に濃縮してから、無色固体をろ別し、乾燥させた。
【0044】
【数2】

【0045】
前駆物質例C:[Mg(N(SiMe3)NMe2)Cl]の製造
Mg 1.0g(41.14mmol)を三つ口フラスコ中で真空中で加熱し、ジエチルエーテル60mlを添加した。1−クロロブタン5.6ml(4.9g;53.2mmol)を、セプタムを経て添加した。マグネシウムの溶解後に、HN(SiMe3)NMe2 5.8g(43.8mmol)を、セプタムを経て滴加した。この懸濁液を12時間撹拌し、20mbarでその体積の2/3に濃縮してから、無色固体をろ別し、乾燥させた。
【0046】
【数3】

【0047】
前駆物質例D:[Ta(tBuN)(tBuNH)Cl2・2Py]の製造
CH2Cl2 50ml中のtBuNH2 61.3ml(587mmol)を、氷冷しながら、CH2Cl2 200ml中のTaCl5 21.0g(58.7mmol)の懸濁液に滴加した。ついで反応混合物を23℃に加熱し、4h撹拌した。得られた懸濁液を氷浴で再び冷却し、CH2Cl2 50ml中のピリジン23.7ml(294mmol)の溶液を添加した。23℃で4h撹拌した後、ヘキサン150mlを反応混合物に添加し、得られた溶液を、セライトを経てろ過した。この残留物を、1:1 CH2Cl2/ヘキサン各100mlで2回、無色になるまで洗浄した。合一した溶液から、20mbarで全ての揮発性成分を除去し、残留物をヘキサンで洗浄し、乾燥させた。淡黄色の微結晶質生成物、収量25.9g(理論の84%)、融点>120℃(分解)。
【0048】
【数4】

【0049】
本発明による例
例1:[Ta(N(SiMe3)NMe22Cl3]の製造
[Ta(NtBu)Cl3Py2](前駆物質例D) 5.2g(9.94mmol)をCH2Cl2 30ml中に装入し、HN(SiMe3)NMe2(前駆物質例A)2.9g(21.86mmol)を添加してから、撹拌を10時間行った。橙色の懸濁液をろ過し、残留物をトルエン4mlで洗浄した。合一したろ液を真空中で乾燥させ、蒸発の際の残留物をヘキサン100mlで温浸した。これをろ別し、真空中で乾燥させた。
【0050】
【数5】

【0051】
例2:[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Cl]の製造
a)[Ta(NtBu)Cl3Py2](前駆物質例D) 4.0g(7.7mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe22] 2.2g(3.86mmol)を−78℃に冷却してから、THF 40mlを添加した。この混合物を4時間撹拌し、ついで23℃にした。12時間後、揮発性成分を20mbarで除去し、残留物をヘキサン40mlで温浸した。この懸濁液をろ過し、残留物をヘキサン40mlで2回洗浄した。合一したろ液を蒸発乾固させ、蒸発の際の残留物を昇華させた(10-3mbar、70℃)。
【0052】
収量:3.53g(6.42mmol、83%)。
【0053】
b)THF 10mlを、[Ta(NtBu)Cl3Py2](前駆物質例D) 1.0g(1.93mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe2)Cl](前駆物質例C) 740mg(3.87mmol)に−78℃で添加した。この反応混合物を4時間撹拌し、ついで23℃にした。12時間後、溶剤を除去し、残留物をヘキサン30mlで抽出した。ろ過残留物をヘキサン各5mlで2回洗浄し、合一したろ液を真空中で乾燥状態にした。橙色の残留物を昇華させた(10-3mbar、70℃)。
【0054】
【数6】

【0055】
例3:[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Cl]の製造
THF 300mlを、[Nb(NtBu)Cl3Py2](前駆物質例Dに類似して製造) 21.38g(49.9mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe2)Cl](前駆物質例C) 19.18g(100.4mmol)に−78℃で添加した。この反応混合物を4時間後に23℃にし、さらに8時間撹拌した。この懸濁液を蒸発乾固させ、ヘキサン250mlで抽出した。ろ過残留物をヘキサン100mlで2回洗浄し、合一したろ液から、揮発性成分を20mbarで除去した。橙色の油状物を蒸留した(10-3mbar、130℃)。
【0056】
収量:17.3g(37.4mmol、76%)。
【0057】
【数7】

【0058】
例4:[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br]の製造
THF 300mlを、[Ta(NtBu)Cl3Py2](前駆物質例D) 33.5g(64.8mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe2)Br](例B) 30.6g(129.9mmol)に−50℃で添加した。4時間後、混合物を23℃に加熱し、さらに10時間撹拌した。この懸濁液から、揮発性成分を20mbarで除去し、ヘキサン300mlで抽出した。ろ過残留物をヘキサン各200mlで2回洗浄してから、合一したろ液を乾燥状態にした。蒸発の際の残留物を昇華させた(10-3mbar、70℃)。
【0059】
収量:26.04g(43.8mmol、68%)、僅かに汚染されていた。
【0060】
【数8】

【0061】
例5:[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br]の製造
THF 5mlを、[Nb(NtBu)Cl3Py2](前駆物質例Dに類似して製造) 150mg(0.35mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe2)Br](前駆物質例B) 255mg(1.08mmol)に−78℃で添加し、この混合物を4時間後に室温に加熱した。12時間後、混合物を蒸発乾固させ、ヘキサン15mlで抽出した。ろ過残留物をヘキサン5mlで2回洗浄し、ろ液から、揮発性成分を除去した。橙色の油状物を蒸留した(10-3mbar、120℃)。
【0062】
【数9】

【0063】
例6:[Ta(NC65)(N(SiMe3)NMe22Cl]の製造
[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br](例4)669mg(1.21mmol)及びペンタフルオロアニリン224mg(1.22mmol)をヘキサン5ml中に溶解させた。この混合物を60℃で18時間撹拌した。この生成物を反応溶液から−20℃で沈殿させた。連続した濃縮及び−20℃での沈殿により、生成物620mg(0.94mmol、77%)が得られた。
【0064】
【数10】

【0065】
例7:[Nb(NC65)(N(SiMe3)NMe22Cl]の製造
[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br](例5) 1.5g(3.2mmol)をトルエン15ml中に溶解させ、ペンタフルオロアニリン603mg(3.2mmol)に添加した。この混合物を60℃で18時間撹拌した。この生成物を反応溶液から−20℃で沈殿させた。連続した濃縮及び−20℃での沈殿により、生成物1.02g(1.79mmol、55%)が得られた。
【0066】
【数11】

【0067】
例8:[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Bz]の製造
トルエン8mlを、[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br](例4) 500mg(0.84mmol)及びBzK 127mg(0.97mmol)に0℃で添加した。1時間後、この混合物を室温に加熱し、17時間撹拌した。この懸濁液を真空中で乾燥させ、ヘキサン20mlで抽出した。このろ液を蒸発乾固させ、昇華させた(70℃、10-3mbar)。
【0068】
【数12】

【0069】
例9:[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Bz]の製造
トルエン15ml中のBzK 512mg(3.9mmol)の溶液を、[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22)Br](例5) 1.57g(3.3mmol)に0℃で添加した。1時間後、この混合物を室温に加熱し、17時間撹拌した。揮発性成分を20mbarで除去し、蒸発の際の残留物をヘキサン20mlで抽出した。このろ液を濃縮し、生成物を−20℃で沈殿させた。収量:1.43g(2.77mmol、81%)。さらに精製するために、生成物を、90℃(10-3mbar)で昇華させることができる。
【0070】
【数13】

【0071】
例10:[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22)(NMe2)]の製造
トルエン300mlを、[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22)Br](例4) 30.32g(50.9mmol)及びLiNMe2 2.86g(56.1mmol)の混合物に0℃で添加した。1時間後、撹拌を23℃で10時間行った。この反応混合物をろ過し、残留物をヘキサン150mlで洗浄した。合一したろ液を蒸発乾固させ、残留物を昇華させた(90℃、10-3mbar)。
【0072】
【数14】

【0073】
例11:本発明によるTaを含有するCVD層の製造
常用の前処理後に、Siウェーハ(製造者:Wacker、Virginia Semiconductor又はG-Material)をCVD装置(製造者Aixtron AGの型式Aix 200)中へ挿入した。まず最初に、Siウェーハのための熱的な加熱工程を、精製目的のために常用の方法で不活性キャリヤーガス流中で750℃で行った。ついでウェーハを500℃の基板温度に冷却した。本発明によるTa出発物質の層を、こうして得られた表面上に堆積させた。このためには、N2の不活性ガス流を、多様な出発物質で負荷した。次のものを出発物質として使用した:[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22(NMe2)](例10)及び1,1−ジメチルヒドラジン、その際、1,1−ジメチルヒドラジンは、CVDに適している純度で商業的に入手可能である(例えばAkzo Nobel HPMOから)。
【0074】
本発明によるTaを含有する層の製造のためには、例えば、100hPaのCVD反応器の全圧で次の条件を選択した:[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22(NMe2)](例10) 0.00005hPa、1,1−ジメチルヒドラジン3hPa。故にN/Ta比は60 000として選択された。ついで、100hPaの全圧で負荷されたN2キャリヤーガス流を、500℃に加熱したSiウェーハの表面上へ4hの期間にわたり導通させた。85nmの厚さを有する本発明による層が得られた。露出の期間の終了後、CVD設備を、所望の別の層の堆積条件に切り替えるか、又は層を不活性キャリヤーガス流下に冷却し、CVD反応器から取り除いた。
【0075】
例12:[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22(NMe2)]の製造
トルエン15ml中のLiNMe2 164mg(3.3mmol)の溶液を、[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22)Br](例5) 1.5g(3.2mmol)に0℃で添加した。1時間後、撹拌を23℃で10時間行った。この反応混合物をろ過し、蒸発の際のろ液の残留物を昇華させた(100℃、10-3mbar)。
【0076】
【数15】

【0077】
例13:[Ta(NtBu)(N(H)tBu)(N(SiMe3)NMe22]の製造
a)トルエン5mlを、[Ta(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br](例4) 306mg(0.54mmol)及びLiN(H)tBu 55mg(0.69mmol)に0℃で添加した。30分後、混合物を23℃にし、さらに10時間撹拌した。この懸濁液をろ過し、残留物をヘキサン5mlで洗浄した。合一したろ液を蒸発乾固させ、昇華させた(100℃、10-3mbar)。収量:220mg(0.36mmol、67%)。
【0078】
b)THF 20mlを、[Ta(NtBu)(N(H)tBu)Cl2Py2](例D) 4.0g(7.23mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe2)Br](例B) 3.4g(14.44mmol)に−78℃で添加した。1時間後、この混合物を室温に加熱し、さらに12時間撹拌した。この懸濁液から、揮発性成分を20mbarで除去し、残留物をヘキサン40mlで抽出した。ろ過残留物をヘキサン10mlで2回洗浄した。合一したろ液を蒸発乾固させ、昇華させた(100℃、10-3mbar)。
【0079】
【数16】

【0080】
例14:[Nb(NtBu)(N(H)tBu)(N(SiMe3)NMe22]の製造
a)トルエン15mlを、[Nb(NtBu)(N(SiMe3)NMe22Br](例5) 1.52g(3.29mmol)及びLiN(H)tBu 256mg(3.21mmol)の混合物に0℃で添加した。30分後、この混合物を23℃に加熱し、10時間撹拌した。この懸濁液をろ過し、残留物をヘキサン5mlで2回洗浄した。このろ液を合一し、乾燥状態にした。蒸発の際の残留物を昇華させた(100℃、10-3mbar)。収量:1.08g(2.16mmol、67%)。
【0081】
b)THF 200mlを、[Nb(NtBu)(N(H)tBu)Cl2Py2](例Dに類似して製造)10.0g(21.6mmol)及び[Mg(N(SiMe3)NMe2)Br](例B)10.1g(43.0mmol)に−78℃で添加した。1時間後、この混合物を23℃にし、12時間撹拌した。この懸濁液を蒸発乾固させ、ヘキサン200mlで抽出した。この残留物をヘキサン50mlで2回洗浄した。合一したろ液から、揮発性成分を20mbarで除去し、昇華させた(100℃、10-3mbar)。
【0082】
【数17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)
【化1】

[式中、
MはNb又はTaを表し、
1、R2及びR3は、互いに独立して、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル基、しかし同時にメチル基ではない、C5−〜C12−シクロアルキル基、C6−〜C10−アリール基、1−アルケニル、2−アルケニル又は3−アルケニル基、トリオルガノシリル基−SiR3(ここでRはC1−〜C4−アルキル基を表す)を表し、
4、R5、R6は、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲンを表すか、O−R8(ここでR8は置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基又は−SiR3を表す)を表すか、BH4を表すか、置換又は非置換のアリル基を表すか、インデニル基を表すか、置換又は非置換のベンジル基を表すか、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基を表すか、CH2SiMe3を表すか、擬ハロゲン化物、例えば−N3を表すか、シリルアミド−N(SiMe32を表すか、−NR910(ここでR9及びR10は、互いに独立して、同じか又は異なり、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基、−SiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHを表す)を表すか、又は−NR1−NR23(ヒドラジド(1))(ここでR1、R2及びR3は、互いに独立して、R1、R2及びR3の前記の意味を有する)を表し、
又はR4及びR5は一緒になって、=N−R7(ここでR7は置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基又は−SiR3を表す)を表す]で示される化合物。
【請求項2】
一般式(III)
【化2】

[式中、
MはTa又はNbを表し、
1は、C1−〜C5−アルキル、C5−〜C6−シクロアルキル又は置換又は非置換のフェニル基又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)を表し、
2及びR3は、同じC1−〜C5−アルキル又はC5−〜C6−シクロアルキル基又は置換又は非置換のフェニル基又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)を表し、
7は、C1−〜C5−アルキル、C5−〜C6−シクロアルキル又は置換又は非置換のフェニル基又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)を表し、かつ
6は、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲン基を表すか、BH4を表すか、置換又は非置換のアリル基を表すか、インデニル基を表すか、置換又は非置換のベンジル基を表すか、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基を表すか、C1−〜C12−オキシアルキル基を表すか又は基−NR910(ここでR9及びR10は、互いに独立して、同じか又は異なり、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基、−SiR(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHを表す)を表す]で示される化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
一般式(IV)
【化3】

[式中、
7は、C1−〜C5−アルキル基、非置換又はC1−〜C5−アルキル基1〜3個により置換されたC6−〜C10−アリール基、又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)からなる群からの基を表し、かつ
6は、Cl、Br及びIからなる群からのハロゲン基を表すか、BH4を表すか、置換又は非置換のアリル基を表すか、インデニル基を表すか、置換又は非置換のベンジル基を表すか、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基を表すか、C1−〜C12−オキシアルキル基を表すか、又は基−NR910(ここでR9及びR10は、互いに独立して、同じか又は異なり、置換又は非置換のC1−〜C12−アルキル、C5−〜C12−シクロアルキル又はC6−〜C10−アリール基、−SiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHを表す)を表す]で示される化合物である、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
一般式(V)
【化4】

[式中、
9及びR10は互いに独立して、C1−〜C5−アルキル基、非置換又はC1〜C5−アルキル基1〜3個により置換されたC6〜C10−アリール基、又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)、又はHからなる群からの同じか又は異なる基を表し、かつ
7は、C1−〜C5−アルキル基、非置換又はC1−〜C5−アルキル基1〜3個により置換されたC6〜C10−アリール基、又はSiR3(ここでRはC1〜C4−アルキルを表す)からなる群からの基を表す]で示される化合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
一般式(VI)〜(X)
【化5】

[式中、MはTa又はNb、好ましくはTaを表す]から選択される化合物である、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
化学蒸着法を用いてタンタル又はニオブを含有する層を製造するための前駆物質としての、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項7】
化学蒸着法を用いて窒化タンタル(TaN)層又は窒化ニオブ(NbN)層を製造するための前駆物質としての、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項8】
請求項7又は8により製造された、層。
【請求項9】
化学蒸着法を用いて請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物から製造された層を有する、基板。

【公開番号】特開2008−88160(P2008−88160A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−209995(P2007−209995)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】