説明

タンタル電解コンデンサ及びその製造方法

【課題】一つの側面として、陰極端子の強度を確保しつつ、等価直列抵抗が低減することができるタンタル電解コンデンサを提供することが目的である。
【解決手段】タンタル電解コンデンサ10は、コンデンサ素子12、陽極端子14、及び、陰極端子16を備えている。コンデンサ素子12は、タンタル焼結体20を有する素子本体22と、この素子本体22から突出する突出部26を有するタンタルワイヤ24とを備えており、陽極端子14は、タンタルワイヤ24の突出部26と接続されている。また、陰極端子16は、素子本体22を収容すると共に突出部26が導出された開口34を有する箱体とされている。そして、この陰極端子16は、素子本体22の外面22Aと導電性接着剤40により接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、タンタル電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサ素子と、このコンデンサ素子のタンタルワイヤと接続された陽極端子と、コンデンサ素子の素子本体と接続された陰極端子とを備えたタンタル電解コンデンサが知られている。また、このタンタル電解コンデンサのなかには、陰極端子がメッキで形成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−94363号公報
【特許文献2】特開2008−91389号公報
【特許文献3】特開2003−45753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、陰極端子がメッキで形成された場合、陰極端子の強度が低下する虞がある。また、この種のタンタル電解コンデンサでは、等価直列抵抗(ESR)が低減されることが望まれる。
【0005】
本願の開示する技術は、上記事情に鑑みて成されたものであり、一つの側面として、陰極端子の強度を確保しつつ、等価直列抵抗を低減することができるタンタル電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の開示するタンタル電解コンデンサは、コンデンサ素子、陽極端子、及び、陰極端子を備えている。コンデンサ素子は、タンタル焼結体を有する素子本体と、この素子本体から突出する突出部を有するタンタルワイヤとを備えており、陽極端子は、タンタルワイヤの突出部と接続されている。また、陰極端子は、素子本体を収容すると共に突出部が導出された開口を有する箱体とされている。そして、この陰極端子は、素子本体の外面と導電性接着剤により接着されている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示するタンタル電解コンデンサによれば、陰極端子の強度を確保しつつ、等価直列抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】タンタル電解コンデンサの側面断面図である。
【図2】複数のコンデンサ素子を陽極電極フレームに接続した状態を示す平面図である。
【図3】陽極電極フレームに接続された複数のコンデンサ素子の各々を箱型の陰極端子に挿入する様子を説明する平面図である。
【図4】タンタル電解コンデンサの第一変形例を示す側面断面図である。
【図5】タンタル電解コンデンサの第二変形例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する技術の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1に示されるように、本願の開示する技術の一実施形態に係るタンタル電解コンデンサ10は、コンデンサ素子12、陽極端子14、陰極端子16、及び、モールド樹脂18を備えている。
【0011】
コンデンサ素子12は、タンタル焼結体20を有するブロック状の素子本体22と、直線丸棒状のタンタルワイヤ24とを備えている。タンタル焼結体20の表面には、特に図示しないが、例えば、誘電体酸化被膜層、導電性高分子層、カーボン層、及び、銀ペースト層などの複数の層が順に積層されている。
【0012】
タンタルワイヤ24の基部24Aは、素子本体22に埋め込まれており、このタンタルワイヤ24における基部24Aよりも先端側の部分は、素子本体22から突出する突出部26とされている。
【0013】
陽極端子14は、導電性を有する板金製とされている。この陽極端子14は、概略C字状に折り曲げられており、接続部28、折曲部30、及び、端子部32を有している。接続部28は、突出部26に沿って延びており、この突出部26と例えばスポット溶接等により接続されている。
【0014】
折曲部30は、接続部28からタンタルワイヤ24の径方向外側へ向けて折り曲げられており、素子本体22の外面22Aのうち突出部26が突出された一端面22A1とタンタルワイヤ24の軸方向に対向されている。端子部32は、折曲部30から素子本体22の側へ折り曲げられており、接続部28とタンタルワイヤ24の径方向に対向されている。この端子部32における接続部28と反対側の面は、図示しない実装基板と接続される陽極側の接続面32Aとされている。
【0015】
陰極端子16は、導電性を有する金属製とされている。この陰極端子16は、開口34を有する直方形の箱体とされており、周壁部36と底壁部38とを有している。この箱型とされた陰極端子16には、素子本体22が収容されており、この陰極端子16の開口34からは突出部26が導出されている。
【0016】
周壁部36は、素子本体22の外面22Aのうち外周面22A2を覆っており、底壁部38は、素子本体22の外面22Aのうち上述の一端面22A1と反対側の他端面22A3を覆っている。周壁部36の外周面36Aのうち接続面32Aとタンタルワイヤ24の軸方向に並ぶ面は、図示しない実装基板と接続される陰極側の接続面36Bとされている。なお、この接続面36Bを含む陰極端子16の外面の全体には、半田による実装のためのスズメッキ等が施されている。
【0017】
また、この箱型とされた陰極端子16は、この陰極端子16に収容された素子本体22の外面22Aと導電性接着剤40により接着されている。より具体的には、周壁部36は、素子本体22における外周面22A2と導電性接着剤40(接着部40A)により接着されており、底壁部38は、素子本体22における他端面22A3と導電性接着剤40(接着部40B)により接着されている。この導電性接着剤40には、例えば、熱硬化性を有するものが使用される。
【0018】
モールド樹脂18は、陰極端子16に対する突出部26側に設けられており、上述の突出部26及び接続部28を被覆している。また、このモールド樹脂18は、陰極端子16の開口34を塞いでいる。上述の周壁部36における接続面36Bを含む外周面36Aと、底壁部38の外面38Aとは、モールド樹脂18に被覆されずに外部に露出されている。
【0019】
次に、上述のタンタル電解コンデンサ10を製造する方法の一例について説明する。
【0020】
図2に示されるように、先ず、陽極端子14を複数有する陽極端子フレーム50が用意される。また、タンタル焼結体20にタンタルワイヤ24を組み付けた複数のタンタル焼結素子52が用意される。そして、陽極端子フレーム50における陽極端子14の各々に、複数のタンタル焼結素子52の各々における突出部26が例えばスポット溶接等により接続される。この工程は、陽極端子接続工程の一例である。
【0021】
続いて、複数のタンタル焼結素子52の各々におけるタンタル焼結体20の表面に、例えば、誘電体酸化被膜、電解質や導電性高分子層、カーボン層、及び、銀ペースト層などの複数の層が順に積層される。そして、これにより、複数のコンデンサ素子12が形成される。この工程は、コンデンサ素子形成工程の一例である。
【0022】
また、図3に示されるように、複数の箱型の陰極端子16が整列された状態で、これら複数の陰極端子16の内面に導電性接着剤40が塗布される。そして、陽極端子フレーム50に取り付けられた複数のコンデンサ素子12の各々における素子本体22が、複数の陰極端子16にそれぞれ収容される。これにより、複数の素子本体22の外面と複数の陰極端子16とが導電性接着剤40によりそれぞれ接着される。
【0023】
このとき、より具体的には、図1に示されるように、周壁部36は、素子本体22における外周面22A2と導電性接着剤40(接着部40A)により接着される。また、底壁部38は、素子本体22における他端面22A3と導電性接着剤40(接着部40B)により接着される。この工程は、陰極端子接続工程の一例である。
【0024】
なお、導電性接着剤40は、素子本体22の陰極端子16への挿入時にはみ出さない程度に少なめとされても良いし、複数の陰極端子16の内部に充填される程度に多めとされていても良い。また、素子本体22の陰極端子16への挿入時に導電性接着剤40がはみ出した場合には、導電性接着剤40が硬化する前に、このはみ出した分が取り除かれても良い。また、この導電性接着剤40は、完全硬化状態とされても良いし、機械的応力を緩和させるために半硬化状態とされても良い。
【0025】
そして、導電性接着剤40が硬化された後、上述のようにして陽極端子14及び陰極端子16が取り付けられた複数のコンデンサ素子12が金型にセットされる。また、この金型において複数のコンデンサ素子12にモールド樹脂18(図1参照)がそれぞれ形成される。この工程は、モールド樹脂形成工程の一例である。
【0026】
次いで、図3に示される陽極端子フレーム50が適宜箇所で分割される等により、この陽極端子フレーム50から複数の陽極端子14が分離される。そして、これにより、複数のタンタル電解コンデンサ10(図1参照)が得られる。この工程は、陽極端子分離工程の一例である。以上の要領で、上述のタンタル電解コンデンサ10は製造される。
【0027】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
以上詳述したように、本実施形態に係るタンタル電解コンデンサ10によれば、陰極端子16が箱体とされている。従って、例えば、陰極端子がメッキで形成された場合に比して、陰極端子16の強度を確保することができる。
【0029】
しかも、陰極端子16がコンデンサ素子12の素子本体22を収容する箱体とされることにより、素子本体22の外面22Aと陰極端子16との接続面積を大きく確保することができる。また、陰極端子16における実装基板との接続面36Bの接続面積も大きく確保することができる。これにより、等価直列抵抗を低減することができる。
【0030】
特に、周壁部36は、素子本体22における外周面22A2と導電性接着剤40(接着部40A)により接着され、底壁部38は、素子本体22における他端面22A3と導電性接着剤40(接着部40B)により接着されている。従って、素子本体22の外面22Aと陰極端子16との接続面積が大きく確保されているので、等価直列抵抗をより効果的に低減することができる。
【0031】
また、陰極端子16が箱体とされることにより、素子本体22における外周面22A2は、周壁部36によって覆われ、素子本体22における他端面22A3は、底壁部38によって覆われている。従って、素子本体22や導電性接着剤40を保護することができるので、素子本体22や導電性接着剤40の劣化を抑制することができる。これにより、タンタル電解コンデンサ10の耐久性を向上させることができる。
【0032】
また、タンタルワイヤ24における突出部26と、陽極端子14における突出部26との接続部28とは、モールド樹脂18によって被覆されている。従って、この突出部26及び接続部28も保護することができる。また、このモールド樹脂18は、陰極端子16に対する突出部26側に設けられることで、周壁部36における接続面36Bを含む外周面36Aと、底壁部38の外面38Aとを露出させている。従って、モールド樹脂18の体積が少ないので、タンタル電解コンデンサ10を小型化することができると共に低コスト化することができる。
【0033】
また、このモールド樹脂18は、箱型の陰極端子16における開口34を塞いでいるので、この陰極端子16の内側に異物が入り込むことを抑制することができる。
【0034】
また、陰極端子16が実装基板に半田付けされる場合でも、この陰極端子16は箱体とされているので、半田付けの熱による機械的応力によって陰極端子16が変形されることを抑制することができる。これにより、素子本体22に作用する機械的応力を緩和することができるので、素子本体22の外面22Aと陰極端子16との剥離を抑制することができる。
【0035】
また、このように陰極端子16が箱体とされていると、陰極端子16の熱容量が大きくなるため、素子本体22、ひいては、タンタル電解コンデンサ10全体の熱が上昇することを抑制することができる。
【0036】
また、このタンタル電解コンデンサ10は、上述のように等価直列抵抗が低減されている。従って、このタンタル電解コンデンサ10が例えばCPUを有する回路に使用される場合でも、このCPUにおいて大電流が使用される状況下において、コンデンサの数を増加させずに安定した電圧を得ることできる。これにより、CPUの安定した動作を確保することができる。
【0037】
また、このタンタル電解コンデンサ10が複数用いられる場合でも、合成抵抗が低減されるので、使用するコンデンサの数を減らすことができる。これにより、回路の面積を縮小することができると共に、回路を高密度化することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るタンタル電解コンデンサ10の製造方法によれば、素子本体22を陰極端子16に挿入すれば良いので、陰極端子16と、コンデンサ素子12及び陽極端子14との位置決めが容易である。従って、タンタル電解コンデンサ10を容易に製造することができる。これにより、陰極端子16の強度を確保しつつ、等価直列抵抗が低減されたタンタル電解コンデンサ10を市場に安価に提供することが可能になる。
【0039】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0040】
上記実施形態において、モールド樹脂18は、例えば、図4に示されるように形成されていても良い。すなわち、この変形例において、モールド樹脂18は、タンタルワイヤ24における突出部26、及び、陽極端子14における接続部28に加え、周壁部36の外周面36Aのうち接続面36Bを除く残余面36A1、及び、底壁部38の外面38Aを被覆している。つまり、このモールド樹脂18は、周壁部36の外周面36Aのうち接続面36Bを除く残余面36A1を覆う被覆部18Aと、底壁部38の外面38Aを覆う被覆部18Bとを有している。このようにモールド樹脂18が形成されていると、このモールド樹脂18により、突出部26及び接続部28に加えて陰極端子16も保護することができる。
【0041】
また、陽極端子14は、図5に示されるように、タンタルワイヤ24における突出部26とねじれの位置関係にある平板状の端子板62と、この端子板62と突出部26とを接続するブロック状の台座64とを有していても良い。なお、この図5に示される変形例において、端子板62における突出部26と反対側の面は、陽極側の接続面62Aとされている。また、台座64は、陽極端子14における突出部26との接続部の一例であり、突出部26と共にモールド樹脂18によって被覆されている。
【0042】
以上、本願の開示する技術の一実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 タンタル電解コンデンサ
12 コンデンサ素子
14 陽極端子
16 陰極端子
18 モールド樹脂
20 タンタル焼結体
22 素子本体
22A 外面
22A1 一端面
22A2 外周面
22A3 他端面
24 タンタルワイヤ
26 突出部
28 接続部
32 端子部
32A 接続面
34 開口
36 周壁部
36A 外周面
36A1 残余面
36B 接続面
38 底壁部
38A 外面
40 導電性接着剤
50 陽極端子フレーム
52 タンタル焼結素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル焼結体を有する素子本体と、前記素子本体から突出する突出部を有するタンタルワイヤとを備えたコンデンサ素子と、
前記突出部と接続された陽極端子と、
前記素子本体を収容すると共に前記突出部が導出された開口を有する箱体とされると共に、前記素子本体の外面と導電性接着剤により接着された陰極端子と、
を備えたタンタル電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陰極端子は、
前記素子本体の外面のうち外周面を覆う周壁部と、
前記素子本体の外面のうち前記突出部が突出された一端面と反対側の他端面を覆う底壁部とを有している、
請求項1に記載のタンタル電解コンデンサ。
【請求項3】
前記周壁部は、前記素子本体における前記外周面と前記導電性接着剤により接着され、
前記底壁部は、前記素子本体における前記他端面と前記導電性接着剤により接着されている、
請求項2に記載のタンタル電解コンデンサ。
【請求項4】
前記陰極端子に対する前記突出部側に設けられて、前記周壁部における実装基板との接続面を含む外周面と、前記底壁部の外面とを露出させると共に、前記突出部と、前記陽極端子における前記突出部との接続部とを被覆するモールド樹脂を備えた、
請求項2又は請求項3に記載のタンタル電解コンデンサ。
【請求項5】
前記突出部、前記陽極端子における前記突出部との接続部、前記周壁部の外周面のうち実装基板との接続面を除く残余面、及び、前記底壁部の外面を被覆するモールド樹脂を備えた、
請求項2又は請求項3に記載のタンタル電解コンデンサ。
【請求項6】
前記モールド樹脂は、前記開口を塞いでいる、
請求項4又は請求項5に記載のタンタル電解コンデンサ。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載のタンタル電解コンデンサを製造するために、前記陽極端子を複数有する陽極端子フレームにおける複数の前記陽極端子の各々に、前記タンタル焼結体に前記タンタルワイヤを組み付けた複数のタンタル焼結素子の各々における前記突出部を接続する陽極端子接続工程と、
前記複数のタンタル焼結素子の各々における前記タンタル焼結体の表面に複数の層を形成して複数の前記コンデンサ素子を形成するコンデンサ素子形成工程と、
前記陽極端子フレームに取り付けられた複数の前記コンデンサ素子の各々における前記素子本体を、複数の前記陰極端子にそれぞれ収容すると共に、複数の前記素子本体の外面と複数の前記陰極端子とを前記導電性接着剤によりそれぞれ接着する陰極端子接続工程と、
前記陽極端子及び前記陰極端子が取り付けられた複数の前記コンデンサ素子に前記モールド樹脂をそれぞれ形成するモールド樹脂形成工程と、
前記陽極端子フレームから複数の前記陽極端子を分離させて、複数の前記タンタル電解コンデンサを得る陽極端子分離工程と、
を備えたタンタル電解コンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105892(P2013−105892A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248786(P2011−248786)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)