説明

タンニンと組み合わせてLactobacillusplantarum株を含有する組成物、並びに、新規Lactobacillusplantarum株

本発明は、タンニンと組み合わせて、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillusの1又はそれ以上のタンナーゼ産生株を含有する組成物に関する。Lactobacillus plantarumの新規なタンナーゼ産生株はaである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症特性を有し、且つ、in vivoにおける腸微生物叢への影響及びin vitroにおける保存特性を制御する組成物に関し、該組成物は、ヒト腸粘膜に付着する明白な能力を有するLactobacillus plantarumの任意の新規なタンナーゼ産生株を含有する。
【背景技術】
【0002】
タンニン(水溶液からタンパク質を沈殿し得る水溶性フェノール性産物として定義される)は天然に存在する化合物である。タンニンの2つのクラス、没食子酸及びエラグ酸から誘導される加水分解性タンニン、並びに、縮合型タンニンすなわち、プロアントシアニジン(これらは、フラバノールのオリゴマー及びポリマーである)が存在する。タンニンは、多数の微生物の成長を妨げ、微生物の攻撃に対して耐性がある。(Chung, K.T., et al. (1998), Tannins and human health:A review. Critical Reviews in Food Science and Nutrition 38:421−464)。糸状菌類(moulds)及び酵母及び数種の好気性細菌は、通常タンニンを分解するのに最適であるが、例えば、胃腸管中で嫌気的な分解も起こる(Bhat, T.K., et al. (1998), Microbial degradation of tannins − A current perspective. Biodegradation 9: 343−357)。
【0003】
タンニンは、栄養阻害物質(antinutrients)として知られ、すなわち、それらは、身体が消化された栄養物を新たな生体物質に変換する効率を低下させる。しかしながら、タンニンの健康に有利な効果(例えば、抗発ガン性作用、血圧を低下させる及び免疫応答を調節する能力)も報告されてきた。これらの効果は、タンニンの抗酸化(antoxidative)特性に起因しているかも知れない(Chung et al. 1998)。報告された抗発ガン特性を有する有効な抗酸化タンニンは、エラグ酸である。非常に高い抗酸化能を有するタンニンの別のタイプは、例えばブドウやオリーブに存在するプロアントシアニジンである。このように、植物由来の食品中に様々な濃度で存在するタンニンは、ヒトの健康に大きな影響をもつ。タンニンはガン形成及び抗栄養活性を伴い得るので、大量のタンニンを摂取することは望ましくないが、少量の正しい種類のタンニンの摂取は、代謝酵素、免疫調節又はその他の機能に影響を及ぼすことにより、ヒトの健康に有利であり得る(Chung et al. 1998)。
【0004】
しかしながら、胃腸管において産生されるような多くのタンニンの嫌気分解産物もまた、健康に有利な効果をもつ化合物を生成し得る(Bhat et al. 1998)。このような分解化合物は、例えば、フェニルプロピオン酸又はフェニル酢酸の誘導体である(Bhat et al. 1998)。GI管に吸収されるとき、これらの化合物は、抗炎症作用を示す。これらの化合物は、また、タンニンからの他の分解産物とともに、GI管における広範囲の抗微生物作用を有し、不要なバクテリアを抑制する。
先行技術
ほとんどのLactobacillus種がタンニンを分解することができないが、密接に関係する種L.plantarum、L.pentosus及びL.paraplantarumの株はタンナーゼ活性を有し得る(Osawa, R., et al. (2000), Isolation of tannin−degrading lactobacilli from humans and fermented foods, Applied and Environmental Microbiology 66:3093−3097)。
【0005】
幾つかのLactobacillus plantarum株は、マンノースの存在によってブロックされるメカニズムによって、ヒト上皮細胞に接着する特有の能力を有する(Adlerberth, I., et al., (1996), A mannose−specific adherence mechanism in Lactobacillus plantarum conferring binding to the human colonic cell line HT−29. Applied and Environmental Microbiology 62:2244−2251)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
ヒトの腸粘膜に付着する能力を有し且つタンナーゼを産生する能力を有するLactobacillus plantarumの株が、タンニンを分解するときに、胃腸(GI)管における有害なバクテリアに対抗する(counteract)化合物を産生し、GI管において吸収されるときに、抗炎症作用を示すことが今や見出された。
発明の説明
本発明は、タンニンと組み合わせて、ヒトの腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus spp.の1又はそれ以上のタンナーゼ産生株を含有する組成物に関する。前記組成物は、抗微生物及び抗炎症作用を有する化合物をin vivo産生し、且つ、保存効果を有する化合物をin vitro産生する。
【0007】
本発明は、また、タンニン及びキャリアと組み合わせた、Lactobacillusの1又はそれ以上のタンナーゼ産生株を含有する組成物にも関する。
【0008】
キャリアの例としては、オートミール粥、乳酸発酵食品、レジスタントスターチである。バクテリアの増殖を改善し且つ抗炎症性又は保存性の誘導体の産生を高めるために、組成物に食物繊維が添加され得る。フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクツロース、マルトデキストリン、β−グルカン及びグァーガムのような食物繊維もまた、キャリアとして使用され得る。
【0009】
本発明は、特に、ほぼ純粋なタンニン画分、例えば、エラグ酸、プロアントシアニジン及びアントシアニジンなどのフラボノイド又はリグナン、或いは、タンニンに富む食品成分、例えば、オート麦、大麦、紅いコーリャン(red sorghum)、松の木の内部の樹皮から作られたミール及び、ブドウ、柑橘類、コケモモ、ブルーベリー、ブラックカラント、クランベリー、イチゴ、ラズベリー、及びローズヒップからのジュース又は抽出物と共に、Lactobacillusのタンナーゼ産生株を含有する食品組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、ほぼ純粋なタンニン画分、例えば、エラグ酸、プロアントシアニジン及びアントシアニジンのようなフラボノイド又はリグナン、或いは、タンニンの任意の他の薬学的に許容されるソースと共に、Lactobacillusのタンナーゼ産生株を含有する薬学的組成物に関する。
【0011】
本発明の組成物の予防又は治療効果を達成するために、タンニンの含量は、好ましくは、一日当たり約500−1000mgである。例えば、ローズヒップ粉末の場合、これは、おおよそ100gに相当し、或いは、ローズヒップスープの形態で4リットルである。
【0012】
タンニンは、水溶液からタンパク質を沈殿し得る様々な分子量の水溶性フェノール性産物である。タンニンの2つのクラス、没食子酸及びエラグ酸から誘導される加水分解性タンニン、並びに、縮合型タンニン、すなわち、フラバノールのオリゴマー及びポリマーであるプロアントシアニジンが存在する。
【0013】
いわゆる縮合型、あるいは、非加水分解性タンニンは、加水分解性タンニンよりも、微生物分解に対する耐性が高い。タンニンは、通常、ブドウ、リンゴ、バナナ、ブラックベリー、クランベリー、ラズベリー、イチゴ、オリーブ、豆類、コーリャン、オオムギ(barely)及びシコクビエ(finger millets))のグレイン、コカ、茶、及びコーヒーのような果実及び種子中に見られる。
【0014】
本発明の組成物は、キャリアが食品である食品組成物であり得る。薬学的組成物においては、キャリアは、治療的に許容されるキャリアであるべきである。組成物は、GI由来の感染症(GI derived infections)、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、癌又は心臓血管疾患のような結果として起こる将来の疾患を予防するために健康手段(keep-fit measure)を改善するよう、或いは、例示した疾患を和らげるため、平均的な消費者に与えられる。
【0015】
本発明の薬学的組成物は、経口投与され得る、例えば、懸濁液、タブレット、カプセル及び粉末に処方され得る。前記製剤は、浣腸としても投与され得る。
【0016】
本発明は、特に、Lactobacillus plantarum 299、DSM 6595、及びLactobacillus plantarum 299v、DSM 9843を除外する(disclaiming)、Applied and Environmental Microbiology, Vol. 59, No. 4, April 1993, p1251−1252においてOsawaとWalshによって記載される方法によって測定されるタンナーゼ活性を有することを特徴とする、ヒトの腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株に関する。
【0017】
好ましいタンナーゼ産生株は、Lactobacillus plantarum種に属し、胃腸(GI)管において生存する能力を有する。この文脈における生存とは、株が、暫くの間、GI管において代謝し且つ増殖する(生きる)能力を有することを意味する。
【0018】
好ましい局面に従って、本発明は、全て2002年の11月28日にDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに寄託され且つ寄託番号が与えられた以下の新規な株、すなわち、Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312、Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313及びLactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316、並びに、本質的に同じREAパターンを有するその変異株に関する。
【0019】
新規な株は、健常成人の結腸粘膜から分離され且つRogosa寒天上で培養することによって選択された。株は、続いて、REAによって特徴付けられた。
【0020】
別の局面に従って、本発明は、また、心臓血管疾患、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、胃腸感染症、糖尿病、癌、アルツハイマー病、又は、自己免疫原因(auto−immune origin)を伴う疾患の予防的又は治療的処置のための薬剤の調製のための、タンニンと組み合わせた、Lactobacillus plantarumのタンナーゼ産生株の使用に関する。タンナーゼ産生株の例としては、新規なHEAL 9、HEAL 19及びHEAL 99株だけでなく、以前から知られているLactobacillus plantarum 299、DSM 6595、及びLactobacillus plantarum 299v、DSM 9843株も挙げられる。
【0021】
本発明の組成物に使用されるタンナーゼ産生バクテリアの量は、好ましくは、10cfu/一日用量よりも少なくない。
【0022】
別の局面に従って、本発明は、食品を保存するための、タンニンと合わせたLactobacillusのタンナーゼ産生株の使用に関する。タンナーゼ産生株の例としては、新規なHEAL 9、HEAL 19及びHEAL 99株だけでなく、以前から知られているLactobacillus plantarum 299、DSM 6595、及びLactobacillus plantarum 299v、DSM 9843株も挙げられる。前記株は、タンニンの分解から、食品中に、直接、保存物質(preservatives)を産生する。タンニンは、タンニンの純粋な画分を製品に補充するか、又は、タンニンに富む天然のあまり定義されていないサプリメント(例えば、ローズヒップ、紅いコーリャン又は松の内部の樹皮から作られたミール)を製品に補充することによって、確保され得る。
【0023】
タンニンおよびLactobacillus株を利用するタンニンの混合物は、治療目的のため、又は、心臓血管疾患、メタボリック症候群、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、胃腸感染症、又は自己免疫原因を伴う疾患に対する危険因子を減らすための健康維持作用(keep−fit action)として、与えられる。
【0024】
L. plantarum HEAL 9、HEAL 19 及びHEAL 99株は、Lactobacillus plantarum 299v、DSM 9843株よりも、ヒトの結腸粘膜細胞に付着する高い能力を有する。
【実施例】
【0025】
実験的
株の単離
42の異なる新たに分離されたLactobacillus株を試験し、タンナーゼを産生する(即ち、タンニンを分解する)能力について、よく知られているプロバイオティックな参考株Lactobacillus plantarum 299v、DSM 9843と比較した。該株は、下記の第1表に列挙している。
スクリーニング方法
タンナーゼ活性を検出するために適用される方法は、Osawa及びWalsh(1993)によって以前に記載されている。検出原理は、以下の手順によってタンニンの分解(メチルガレート)を測定することである:
被験バクテリウムを、37℃にて2dの間MRS寒天(Merck, Darmstadt, Germany)上で嫌気的に培養し、次いで、細胞を回収し、5mlの0.9% (w/v)NaCl中に懸濁する。細胞懸濁液を遠心し、細胞を10mlの0.9%NaClに再懸濁し、620nmにて吸光度を測定する(標準として0.9% NaCl溶液)。細胞懸濁液を、吸光度が0.1〜0.6になるまで希釈する(分光光度計,Pharmacia LOB, Novaspec II)。遠心後、細胞を1mlメチルガレート緩衝液(3.7g/lメチルガレート[Aldrich Chemical Company, Inc., Milwaukee, WI, USA]、4.5g/l NaHPO、pH=5.0[フィルター滅菌された])中に再懸濁し、試験管を24hの間37℃にてインキュベートする。440nmにおける吸光度の測定(標準としてNaHCO緩衝液)の前に、1mlのNaHCO緩衝液(1リットル当たり42g NaHCO、pH=8.6)を添加し、溶液を室温にて1hの間インキュベートする。懸濁液の色を目視により測定する。
【0026】
色は、陽性のタンナーゼ活性に伴って茶色又は緑色に等級付けされた。タンナーゼ活性の定量値は、メチルガレートとのインキュベーションの開始における細胞懸濁液の吸光度(A620;細胞の量)と、メチルガレートとの24hのインキュベーション後の吸光度(A440;アルカリ条件において酸素に暴露した後の遊離没食子酸の呈色)との比によって得られた。
【0027】
タンナーゼ活性を有するLactobacillus株についてのスクリーニング結果を第1表に示す。被験株の大多数は、タンナーゼ活性を有していなかった。しかしながら、11の株は、陽性であり、第1表に示す。
【0028】
第1表.異なるLactobacillus株におけるタンナーゼ活性
【0029】
【表1】

【0030】
陽性タンナーゼ活性は、アルカリ条件において酸素に長時間暴露した後に細胞懸濁液中の遊離没食子酸の緑色〜茶色の呈色として示される。
【0031】
**タンナーゼ活性は、メチルガレートとの24hインキュベーションの開始における細胞懸濁液の620nmにおける吸光度(A620)と、メチルガレートとのインキュベーション後の440nmにおける吸光度(A440)との比として表される。
【0032】
3つのタンナーゼ陽性L. plantarum株は、よく知られているプロバイオティック株Lactobacillus plantarum 299v、DSM 9843よりも高いタンナーゼ活性を有する(即ち、L. plantarum HEAL 9、L. plantarum HEAl 19及びL. plantarum HEAL 99)。これらは、健常人の腸粘膜から分離された。
REAによるゲノタイプの同定
株は、「Stahl M, Molin G, Persson A, Ahrne S & Stahl S, International Journal of Systematic Bacteriology, 40:189−193, 1990」に従い、さらに、Johansson, M−L, et al., International Journal of Systematic Bacteriology 45:670−675, 1995によって開発された制限エンドヌクレアーゼ分析−REA−を通じて染色体DNAの切断パターンについて調べられた。概略的に、REAは、下記のとおり記載され得る。染色体DNAを研究されている株から調製し、そして、制限エンドヌクレアーゼによって切断させる。0.75μgの各DNAを、別々に、37℃にて、4hの間、10ユニットのEcoRI及びHind IIIで消化した;各エンドヌクレアーゼを別々に使用した。切断されたDNAフラグメントを、サブマージ水平アガローススラブゲル(submerged horizontal agarose slab gels)を用いたゲル電気泳動によって、サイズに応じて分離した。ゲルは、150mlの0.9%アガロース(ultrapure DNA grade; low electro−endo osmosis; BioRad Laboratories, Richmond, USA)からなり、スラブゲル(150×235mm)としてキャストした。0.2μgの高分子量DNAマーカー(Bethesda Research Laboratories, MD, USA)、並びに、0.5μgのDNA分子量マーカーVI(Roche, Germany)を標準として使用した。最小のバンドゆがみ及び最大の鮮明さは、Ficollローディングバッファー(2gのFicoll、8mlの水、0.25%のブロモフェノール)中のサンプルDNAをアプライすることによって達成された。
【0033】
約6−8℃にて、18hの間、40Vの定圧でゲルを泳動した。泳動時間の間、緩衝液(89mM Tris、23mM HPO、2mM EDTAナトリウム、pH8.3)を再循環させた。その後、エチジウムブロマイド(2μg/ml)中で20分間ゲルを染色し、蒸留水で脱染し、UVトランスルミネーター(UVP Inc., San Gabriel, USA)を用いて302nmにて視覚化し、写真を撮った。ゲル電気泳動を行うこの方法は、十分に広く分布し且つ1.2×10の分子量まで比較的十分に分離されたバンドを与えた。
【0034】
分析の結果は、図に示される。
【0035】
HT−29細胞への付着
ヒト粘膜から単離された合計32のL. plantarum株を、マンノース特異的結合を有するヒト結腸癌腫細胞系HT−29の腸上皮細胞への付着について、試験した(Wold, A, et al, Infection and Immunity, Oct. 1988, p. 2531−2537により記載された方法)。ヒトの腺癌細胞系HT−29の細胞を、10%の胎児ウシ血清、2mMのL−グルタミン及び50ig/mlのゲンタマイシン(Sigma Chemical Co., Saint Louis, Mo, USA)を補充したEagle’s培地中で培養した。細胞がコンフルエンス(confluence)に達した数日後、それらをEDTA含有緩衝液(0.54mM)で引き離し、洗浄し、5×10/mlでHank’s平衡塩溶液(HBSS)中に懸濁した。バクテリアを回収し、洗浄し、そして、5×10/mlでHBSS中に懸濁した(597nmにおける1.5の2×光学濃度)。細胞、バクテリア、HBSSを比率1:1:3で混合し、4ECにて30分間、逆さまに回転させながら(end−over−end rotation)インキュベートした。氷冷PBSで細胞を1回洗浄し、中性緩衝ホルマリンで固定化した(Histofix, Histolab, Gotebrog, Sweden)。少なくとも40の細胞の各々に付着したバクテリアの数を、干渉コントラスト顕微鏡(interference contrast microscopy)(500×倍率、Nicon Optophot、干渉コントラスト装置(Bergstrom Instruments, Goteborg, Sweden)を備える)を用いて測定し、1細胞当たりのバクテリアの平均数を計算した。
【0036】
3つのHEAL株を除く全ての株は、0.3−14の値を有していた(塩溶液における付着;メチル−マンノシドの存在下において対応する値は、それぞれ、0.5及び2.4である。)。ほとんどの株が、10よりも低い値を有していた。結果を下記の第2表に示す。
第2表
【0037】
【表2】

【0038】
実験マウスモデルにおける試験
方法
15匹のBalb/Cマウスを5つのグループに分け(1グループ当たり3匹のマウス)、通常の食物、ローズヒップ粉末(タンニンに富む)及びタンナーゼ陽性株Lactobacillus plantarum 299vの異なる組み合わせを与えた。成分を水と混合し、かゆ状の堅さ(mushy consistency)にした。グループ1及び2には、通常のマウス用の食物を与え、グループ3は、ローズヒップ粉末(1日当たり1.6g)を補充した通常の食物を摂取し、グループ4は、L. plantarum 299v(1回用量当たり1010バクテリア)を補充した通常の食物を摂取し、グループ5は、ローズヒップ粉末とL. plantarum 299vの両方を補充した通常の食物を摂取した。マウスには、虚血/再灌流障害を誘導する前の6〜8日間、1日当たり1回食物を与えた。該障害は、以下の切開プロトコールに従ってなされた:マウスは、麻酔のため、皮下に、0.15mlのケタミン/キシラジン溶液(それぞれ、7.85 mg/ml及び2.57 mg/ml)を与えられた。正中腹部切開を行い、上腸間膜動脈を非外傷性血管ループ(atraumatic vessel loops)及び止血鉗子を用いて閉塞させた(occluded)。急速輸液(fluid resuscitation)のため、腹膜腔へ1.0ml PBSを注入した。血管ループと止血鉗子を取除く前に30分間動脈を閉塞させ、即座の再灌流について組織を観察した。次いで、腹部をrunning vicryl 3-0縫合糸を用いて閉じた。動物を麻酔から目覚めさせ、ウォーミングパッドから移動させ、ケージの中に戻した。4h15min後、動物に再び麻酔薬を与え、下記の順番で組織及び便サンプルを採取し、予め重量測定しておいた試験管に入れた:肝組織、腸骨腸間膜組織(ilium mesentery tissue)及びバクテリアのサンプリングのための盲腸便(cecum stool)、さらに、脂質過酸化についての比色アッセイのための盲腸及び腸骨組織、さらに、組織学的検査のための盲腸及び腸骨組織。細菌学的評価のためのサンプルを、重量測定し、凍結媒体中に入れ、直ぐに−70℃にて凍結した。比色アッセイのためのサンプル(LPO586)を、PBSでリンスし、重量測定し、ホモジナイズし、分注し(aliquoted)、直ぐに−70℃にて凍結した。
【0039】
分析方法
3dの間37℃にてRogosa−agar(Merck, Darmstadt, Germany)、24hの間37℃にてVRBD−agar(Merck, Darmstadt, Germany)、及び、3dの間37℃にてBrain heart infusion agar (BHI; Oxoid, Basingstoke, Hampshire, England)上での嫌気的インキュベーション(BBL Gas Pak Plus, Becton Dickinson and Company, Sparks, MD, USA)による生菌数測定(viable count)により、細菌学的評価を行った。BHI上での生菌数測定は、好気的にも行われた。
【0040】
脂質過酸化についての比色アッセイを、スペクトロフォトメーター及び分析キットBioxytech(登録商標)LPO−586TM (OxisResearchTM, Oxis Health Products, Inc.,Portland)の助けを借りて行った。製造元の説明書に従って、分析を行った。
【0041】
脂質過酸化は、細胞障害の十分に確立されたメカニズムであり、細胞及び組織における酸化ストレスの指標として使用される。脂質過酸化物は、不安定であり且つ分解して、反応性のカルボニル化合物を含む複雑な一連の化合物を形成する。多価不飽和脂肪酸過酸化物は、分解すると、マロンジアルデヒド(MDA)及び4−ヒドロキシアルケナール(HAE)を生成する。MDAの測定は、脂質過酸化の指標として使用され得る。LPO−586TMは、MDAを定量するように設計された比色アッセイであり、45℃におけるMDAとの発色試薬(N−メチル−2−フェニルインドール)の反応に基づく。1分子のMDAは、2分子のN−メチル−2−フェニルインドールと反応し、586nmで最大吸光度を伴う安定な発色団を生成する。
【0042】
結果
結腸組織1g当たりのマロンジアルデヒド(MDA)として測定される脂質過酸化は、別個に処理されたマウスにおいて測定され、その結果は、第3表に示される。虚血/再灌流は、MDAを増大させた。食物中のローズヒップ粉末(グループ3)又はL. plantarum 299v(グループ4)を用いたマウスの前処理は、陽性コントロール(グループ2)と比べ、MDAを減少させた。しかしながら、ローズヒップ粉末及びL. plantarum 299vの併用された前処理の効果は、はるかに明白にMDAを減少させた(グループ5)。
【0043】
第3表.マウスにおける虚血/再灌流障害後の脂質過酸化
【0044】
【表3】

【0045】
生菌数の結果を第4表に示す。虚血/再灌流障害は、BHI及びRogosa agar上での生菌数を10倍増大させた(グループ1とグループ2との比較)。ローズヒップ粉末単独(グループ3)は、結果的に、他の摂食代替物(feeding alternative)よりも低い生菌数であった。L. plantarum 299v及びローズヒップ粉末の両方を与えられたグループ(グループ5)は、より少ない腸内細菌(Enterobacteriacea)を除けば、ローズヒップ粉末を与えていない虚血/再灌流障害グループ(グループ2及び4)と同じ生菌数を示した。しかしながら、乳酸桿菌(lactobacilli)の生育を可能にする基質上での生菌数は、ここで(グループ5)、L. plantarum 299vで優位であった。
【0046】
第4表 マウスにおける虚血/再灌流障害後の盲腸におけるバクテリア叢
【0047】
【表4】

【0048】
結論
ローズヒップ中のタンニンは、障害マウスの腸におけるバクテリアの総量(total load)を減少させたが、マウスがローズヒップと同時にL. plantarum 299vを投与された場合、その減少は緩和され、タンニンにより誘導される減少がL. plantarum 299vによって満たされた。このように、タンニンは、プロバイオティックな株にとって有利になるように、腸微生物叢のバランスを支えている。脂質の過酸化は、ローズヒップ粉末の投与によって緩和されたが、この効果は、ローズヒップ粉末と共にL. plantarum 299vが存在することによって高められた。
【0049】
L. plantarum HEAL 9、HEAL 19及びHEAL 99株は、L. plantarum 299vよりも高いタンナーゼ活性を有し、さらに、ヒト結腸粘膜細胞へ付着する能力が、L. plantarum 299vよりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図は、制限酵素EcoRIを用いて株Lactobacillus plantarum HEAL 9(レーン2)、HEAL 19(レーン3)、299v (レーン4)及びHEAL 99(レーン5)の染色体DNAを切断させることによって得られた分離DNAフラグメントを示す。高分子量DNAマーカー(BRL)及びDNA分子量マーカーVI(Roche)をスタンダード(レーン1)として用いた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンと組み合わせて、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種の1又はそれ以上のタンナーゼ産生株を含有する、組成物。
【請求項2】
さらにキャリアを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
食品組成物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
薬学的組成物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
Lactobacillus plantarumのタンナーゼ産生株を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
Lactobacillus plantarum 299、DSM 6595、及びLactobacillus plantarum 299v、DSM 9843を除外し、OsawaとWalshによって記載される方法によって測定されるタンナーゼ活性を有することを特徴とする、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株。
【請求項7】
Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312、又は、本質的に同じREA−パターンを有するその変異株である、請求項6に記載のタンナーゼ産生株。
【請求項8】
Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313、又は、本質的に同じREA−パターンを有するその変異株である、請求項6に記載のタンナーゼ産生株。
【請求項9】
Lactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316、又は、本質的に同じREA−パターンを有するその変異株である、請求項6に記載のタンナーゼ産生株。
【請求項10】
心臓血管疾患、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、胃腸感染症、癌、アルツハイマー病、又は自己免疫原因を伴う疾患(diseases with an autoimmune origin)の予防的又は治療的処置のための薬剤の調製のための、タンニンと組み合わせた、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株の使用。
【請求項11】
Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312、Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313、Lactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316、及び、本質的に同じREA−パターンを有するその変異株からなる群より選択されるタンナーゼ産生株の、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
食品の保存のための、タンニンと組み合わせた、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株の使用。
【請求項13】
Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312、Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313、Lactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316、Lactobacillus plantarum 299v、DSM 9843、及び、本質的に同じREA−パターンを有するその変異株からなる群より選択されるタンナーゼ産生株の、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
新規食品の製造のための、タンニンと組み合わせた、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンと組み合わせて、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種の1又はそれ以上のタンナーゼ産生株を含有する、組成物。
【請求項2】
さらにキャリアを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
食品組成物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
薬学的組成物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
Lactobacillus plantarumのタンナーゼ産生株を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
Lactobacillus plantarum 299、DSM 6595、及びLactobacillus plantarum 299v、DSM 9843を除外し、OsawaとWalshによって記載される方法によって測定される6.2より大きい定量的タンナーゼ活性を有することを特徴とする、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種の分離されたタンナーゼ産生株。
【請求項7】
Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312である、請求項6に記載の分離されたタンナーゼ産生株。
【請求項8】
Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313である、請求項6に記載の分離されたタンナーゼ産生株。
【請求項9】
Lactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316である、請求項6に記載の分離されたタンナーゼ産生株。
【請求項10】
心臓血管疾患、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、胃腸感染症、癌、アルツハイマー病、又は自己免疫原因を伴う疾患(diseases with an autoimmune origin)の予防的又は治療的処置のための薬剤の調製のための、タンニンと組み合わせた、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株の使用。
【請求項11】
Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312、Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313、Lactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316からなる群より選択されるタンナーゼ産生株の、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
食品の保存のための、タンニンと組み合わせた、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株の使用。
【請求項13】
Lactobacillus plantarum HEAL 9、DSM 15312、Lactobacillus plantarum HEAL 19、DSM 15313、Lactobacillus plantarum HEAL 99、DSM 15316、Lactobacillus plantarum 299v、DSM 9843からなる群より選択されるタンナーゼ産生株の、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
新規食品の製造のための、タンニンと組み合わせた、ヒト腸粘膜に付着する能力を有するLactobacillus plantarum又は密接に関係するLactobacillus種のタンナーゼ産生株の使用。

【公表番号】特表2006−521817(P2006−521817A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507999(P2006−507999)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000509
【国際公開番号】WO2004/087893
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(500045257)プロビ エービー (6)
【Fターム(参考)】