説明

タンパク質からエンドトキシンを除去するための方法

タンパク質からエンドトキシンを除去するための方法が開示される。本方法を使用することによって作製される産物もまた開示される。本方法は、例えば、エンドトキシンフリーのラクトフェリンを産生するために使用することができる。本方法によって、牛乳由来のラクトフェリンを商業的な量で産生することができ、かつエンドトキシンフリーのラクトフェリンを、創傷治癒の改善を含む様々な治療用途のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年7月10日出願の、先の米国仮出願第60/948,839号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、タンパク質からエンドトキシンを除去するための方法に関する。より具体的には、本発明は、エンドトキシンに結合するタンパク質からエンドトキシンを除去するための方法、およびそのプロセスによって産生される産物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
「エンドトキシン」という語は、グラム陰性細菌の外膜に会合するリポ多糖複合体に言及するために最も一般的に使用されるが、様々な微生物が「エンドトキシン様」成分を有する。エンドトキシンは、細胞死の促進、ならびに炎症促進性サイトカインおよび一酸化窒素の誘発を含む、細胞および組織に対する様々な負の効果に関連する。体内における十分なレベルでは、エンドトキシンは生命を脅かす状態である「毒素ショック」を引き起こし得る。Nakagawaら(Nakagawa, Y. et al. “Endotoxin Contamination in Wound Dressings Made of Natural Biomaterials, J. Biomed. Mater. Res. Part B: Appl. Biomater. 66B: 347-355, 2003(非特許文献1))は、9種の異なる天然の創傷被覆材中へのエンドトキシン混入によって、ウサギにおいて発熱が起こり得ることを実証した。
【0004】
タンパク質からエンドトキシンを除去するために、様々な方法が開発されている。しかしながら、これらの方法は、エンドトキシンフリーの組成物の大量産生には向いていない。長年の間、完全なエンドトキシンの除去は、通常そのプロセスの間に基質タンパク質が大量に損失されることをともなってのみ達成されていた。より最近では、基質タンパク質の有意な回収を伴うエンドトキシン除去の増加のための製品が開発されているが、今日まで、これらの製品およびそれらが基づく方法は、エンドトキシンフリーのタンパク質の費用効果の高い様式での大量産生には適していなかった。Naidu(米国特許第7,125,963号(特許文献1))によって記載されるようないくつかの方法は、エンドトキシン除去に対する複数段階の、複数試薬のアプローチを利用する。一部の製品に関しては、これらの試薬の一部の使用、例えば大量に使用される際に高価になり得る洗浄剤/界面活性剤の使用を限定することが望ましい。したがって、そのような方法は、一部の産物の調製に関して極めて高価である可能性がある。
【0005】
ラクトフェリンは、タンパク質のトランスフェリンファミリーに属する多機能タンパク質である。それは80 kDaのタンパク質で、主に、乳汁および粘膜分泌物中に見出される。ラクトフェリンは、鉄、ヘパリン、プロテオグリカン、DNA、オリゴデオキシヌクレオチドおよびLPS(エンドトキシン)に結合する。28位〜34位のループ領域およびN末端の4個のアルギニン(残基2位〜5位)の二つのLPS結合部位が、ラクトフェリン中に同定されている。エンドトキシンの生物学的効果に対するラクトフェリンの有効性が実証されている。しかしながら、ラクトフェリンは容易にエンドトキシンに結合し、結合したエンドトキシンを除去してラクトフェリンが提供し得る全体的利益を改善することが望ましいと考えられる。さらに、大量の様々な異なるタンパク質から、とりわけエンドトキシンに結合するタンパク質からエンドトキシンを除去するための方法を開発することは、有益であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,125,963号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nakagawa, Y. et al. “Endotoxin Contamination in Wound Dressings Made of Natural Biomaterials, J. Biomed. Mater. Res. Part B: Appl. Biomater. 66B: 347-355, 2003
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タンパク質組成物からエンドトキシンを除去するための方法、および該方法によって作製される(精製される)産物に関する。特定の局面において、本発明は、タンパク質からエンドトキシンを除去するための方法であって、以下の段階を含む方法に関する:陽イオン交換レジンにタンパク質を結合させる段階、界面活性剤の添加なしで低イオン強度の(すなわち、低塩の)溶液を使用して、結合したタンパク質からエンドトキシンを溶出する段階、および高塩、酸、または他の適切な組成物等の、高イオン強度の溶液を使用してレジンからタンパク質を溶出する段階。特定の局面において、本方法は、溶出されたタンパク質を濾過する段階、および限外濾過段階の産物を乾燥させる段階をさらに含んでもよい。本方法はまた、結合したエンドトキシンを有するタンパク質、低イオン強度の溶液、および高イオン強度の溶液を陽イオン交換カラムにアプライするためにフラクタル分配を使用する段階も含んでもよい。
【0009】
一つの局面において、本発明は、ラクトフェリン、ラクトフェリシン、ラクトペルオキシダーゼ、および/または他のエンドトキシン結合タンパク質からエンドトキシンを除去するための方法、ならびに該方法によって産生されるエンドトキシンフリーのラクトフェリン(EFL)等の、エンドトキシンフリーの産物に関する。乳汁または乳汁成分から単離される場合に、そのような産物はまた、例えば、グリコマクロペプチド、増殖因子、または他のタンパク質、脂質等の望ましい性質を有するさらなる乳汁由来の因子、とりわけエンドトキシン結合活性またはエンドトキシン中和活性を有する牛乳由来の物質も含んでもよい。本発明の組成物はまた、銀を含む抗菌組成物を任意で補充されたEFLおよびキシリトールも含んでもよい。
【0010】
本発明はまた、治療的有効量のエンドトキシンフリーの牛乳由来ラクトフェリンを含む組成物を投与する段階を含む、急性創傷を処置するための方法、および慢性創傷を含むバイオフィルムに関連する疾患状態を処置するための方法にも関する。
【0011】
方法はまた、例えば活性型ラクトフェリン、キシリトール、抗菌銀組成物またはそれらの組み合わせ等の、さらなる活性物質を投与する段階を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】タンパク質組成物からエンドトキシンを除去するための本方法の一つの態様を説明するフローチャートである。
【図2】x軸上に示されたラクトフェリン産物に対する24時間の曝露後に実施されたXTTアッセイの結果を図解する棒グラフである(培養液および血清および産物)。
【図3】1%の低エンドトキシンラクトフェリン(左)および1%の中程度エンドトキシンラクトフェリン(右)に曝露された細胞の写真である。培養液はウシ胎児血清を含んでいた。
【図4】2%の低エンドトキシンラクトフェリン(左)および2%の中程度エンドトキシンラクトフェリン(右)に曝露された細胞の写真である。培養液はウシ胎児血清を含んでいた。
【図5】3%の低エンドトキシンラクトフェリン(左)および3%の中程度エンドトキシンラクトフェリン(右)に曝露された細胞の写真である。培養液は仔ウシ血清を含んでいた。
【図6】対照として処置された細胞の写真である(EpiLife(登録商標)および1%ウシ胎児血清、ラクトフェリン添加なし)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本発明者らは、タンパク質からエンドトキシンを除去するための新規の方法を開発した。本方法は、洗浄剤/界面活性剤の使用を必要とせず、かつ現在利用可能な方法とは異なり、費用効果の高い様式でのキログラム量のエンドトキシンフリーのタンパク質の産生に適している。本発明の本方法は、例えば、乳汁または乳汁成分から大量の(例えば、キログラム量の)ウシラクトフェリンを産生するために容易に使用することが可能である。本発明者らは、ラクトフェリンからエンドトキシンを除去するために本方法を使用しており、それによりエンドトキシンフリーのラクトフェリン(EFL)産物を産生している。本明細書に使用される、「エンドトキシンフリーの」という語は、1ミリグラムのタンパク質当たり約20エンドトキシン単位(EU/mg)未満、より好ましくは、約10 EU/mg未満、さらにより好ましくは約1 EU/mg未満を含むラクトフェリン組成物を記載することが意図され、したがって、現在の市販の市場におけるラクトフェリン単離物と比較して、本組成物は実質的にエンドトキシンフリーである。本発明のプロセスによって作製される産物中に含まれるものは、例えば、スイートホエイから作製された、約0〜約20 EU/mgを有する産物、約0〜約15 EU/mgを有する産物、約0〜約10 EU/mgを有する産物、約0〜約5 EU/mgを有する産物、および1 EU/mg未満を有する産物である。例えば、現在利用可能な市販の製品は、乳汁に由来する場合、少なくとも約20 EU/mgのラクトフェリンを有する可能性があり、スイートホエイに由来する場合、少なくとも約250 EU/mgのラクトフェリンを有する可能性がある。乳汁に由来するEFL産物に関して、「エンドトキシンフリーの」とは、1 EU/mg以下を有するEFL産物を含むことが意図される。
【0014】
乳汁および乳汁成分から単離されたラクトフェリンを含む市販の製品は、多数の会社によって産生されている。しかしながら、そのようなラクトフェリン製品はラクトフェリンに会合する多量のエンドトキシンを含有し、それはとりわけ創傷処置との関係において考慮される場合に重大であることが、それらの製品の試験によって実証されている(表1を参照のこと)。本発明の方法は、牛乳および/または一つもしくは複数の乳汁成分から大量のEFLを産生することが可能な手段を提供し、例えば、それによって、市場において現在利用可能な牛乳由来のラクトフェリン製品と比べ、有意により低いエンドトキシンレベルを有し、かつ創傷環境に生存する細胞に対してより有益な効果を提供することが実証されている、産物が得られる。
【0015】
(表1)市販の乳汁由来のラクトフェリン単離物中のラクトフェリンに会合するエンドトキシンのレベル

【0016】
ラクトフェリン等のタンパク質からエンドトキシンを除去するための以前に記載された方法は、例えば、結合したエンドトキシンのラクトフェリンからの分離を促進するために界面活性剤の使用に依存していた。しかしながら、界面活性剤は高価であり、商業的な量のエンドトキシンフリーのタンパク質を作製するために大規模のプロセスが必要とされる場合には、タンパク質からエンドトキシンを除去する界面活性剤の使用は極めて高価である。本発明者らは、陽イオン交換カラムに強固に結合したタンパク質からエンドトキシンを溶出するために使用される低イオン強度(例えば、低塩)の溶液と、それに続く高イオン強度(例えば、高塩、酸等)の溶液を用いたタンパク質の溶出とを併用することによって、界面活性剤の必要性が除去されることを見出している。低塩の溶液は、例えば0.01〜0.5モル濃度の塩溶液を含む場合があり、いくつかの態様においては、例えば0.25〜0.35モル濃度の塩溶液を含む場合がある。イオン交換法に関して、そのような溶液を作製し、かつ適切なイオン強度、モル濃度等を選択するための方法は、当業者に公知である。
【0017】
ラクトフェリンは、鉄、ヘパリン、プロテオグリカン、DNA、オリゴデオキシヌクレオチドおよびLPS(エンドトキシン)を含む多数の化合物に結合する。28位〜34位のループ領域およびN末端の4個のアルギニン(残基2位〜5位)の二つのLPS結合部位が、ラクトフェリン中に同定されている。エンドトキシンの生物学的効果に対するラクトフェリンの有効性は、実証されている。ラクトフェリンは、慢性創傷におけるバイオフィルム再構成の阻害に関してとりわけ効果的であり、かつ本発明の組成物は、バイオフィルム形成およびバイオフィルム再構成の双方を阻害するための方法において使用することが可能である。そのような組成物はまた、バイオフィルムがまだ発達していない急性創傷のための効果的な処置も提供する可能性があり、これは、EFL以外のラクトフェリン組成物によって提供されるエンドトキシンは、初代ヒトケラチノサイトにとって有害であり、かつ実際に創傷治癒を遅延させ得る炎症反応に対して誘発効果を引き起こすことが公知であるためである。したがって、非EFL組成物は、EFL組成物ほど迅速な創傷治癒応答を提供しない可能性がある。
【0018】
エンドトキシンをタンパク質から除去するための方法は、以下の段階を含む:結合したエンドトキシンを有するタンパク質を含む液体組成物を陽イオン交換システムに通して陽イオン交換レジンにタンパク質を結合させる段階、例えば低塩溶液等の低イオン強度の溶液を使用して、タンパク質からエンドトキシンを溶出する段階、例えば高塩溶液、一つまたは複数の酸等の、高イオン強度の溶液を使用して陽イオン交換レジンからタンパク質を溶出する段階、任意で、それに続いて、溶出されたタンパク質を濾過する段階およびタンパク質を乾燥させる段階。タンパク質を乾燥させる段階は、凍結乾燥、噴霧乾燥等の当業者に公知の方法を使用して達成されてもよい。濾過は、例えば、当業者に公知の限外濾過法を使用して遂行されてもよい。いくつかの態様において、陽イオン交換レジンにタンパク質を結合させる段階は、BioRad、Amalgamated Research, Inc.等により製造され、かつ/または市販されているもの等の陽イオン交換カラムを使用して遂行されてもよい。本発明者らは、プロセスの効率を最大化するためには精製されるタンパク質に強固に結合する陽イオン交換レジンを選択することを推奨する。
【0019】
本方法は、以下に続く実施例に従って遂行されてもよい。プロセス条件が示唆されるが、限定することを意図するものではなく、これは、使用される陽イオン交換システム、使用される限外濾過システム/方法等に依存してこれらのプロセス条件を改変することは、十分に当業者の技術の範囲内のことであるためである。本発明者らは、潜在的な微生物の混入増殖を限定するために、全てのプロセスを華氏40度以下で遂行することを提案する。このプロセスはまた、図1中のフローチャートによって図解され得る。簡単に言うと、フラクタル分配ヘッドを有し、かつおよそ9.5 Lのカラム容量を有する300 mm×200 mm ARiカスタムイオン交換カラム(Amalgamated Research, Inc.)等のイオン交換カラムを、一時間当たり400〜500リットルの流速で少なくとも3以上のカラム容量の苛性剤(0.2 N)を添加し、続いて下向流または流動の無い状態の後、pHが約8未満に達するまで一時間当たり50〜400リットルの流速で流れるよう緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、1%、pH6〜7.5)を添加することによって、ローディングの準備をする。続いて、1モル濃度、80〜100 mS/cmの溶液として塩を添加し、1以上(好ましくは2)のカラム容量の間、流速を一時間当たり約50〜400リットルに調整し、一時間当たり50〜500リットルの流速で水をカラムに流す。上記の全ての段階の間、ARi 300 mm×200 mm等のカラムに関して、一時間当たり300リットルの流速が推奨される。当業者に公知であるように、様々なカラムサイズを使用することが可能であり、かつそれに応じて容量が調整される。
【0020】
続いて、市販の組成物の一つの例であり、かつBioferrin 2000として販売されている(Glanbia Nutritionals, Inc., Monroe, Wisconsin)液体ラクトフェリン組成物(5〜10%)をカラムにローディングする。液体ラクトフェリン組成物は、例えばスイートホエイ、乳汁および/もしくは乳汁成分を含む様々な起源に由来するか、またはそれらから得られてもよく、かつ金属飽和型(ホロ)ラクトフェリンおよび金属フリーの(アポ)ラクトフェリン等の様々な形態のラクトフェリンを包含する可能性がある。他のタンパク質および乳汁由来の物質もまた、液体ラクトフェリン組成物中に包含されてもよいが、そのような組成物は、好ましくは濃縮されたラクトフェリン組成物または精製されたラクトフェリン組成物であろう。上に記載されたカラムに関して、推奨されるのは10リットルであるが、1.5〜20リットルの液体ラクトフェリン組成物をカラムにローディングする。流速を、一時間当たり50〜400リットル(一時間当たり100リットルが推奨される)の下向流に調整する。続いて一時間当たり50〜400リットルの流速で、1以上のカラム容量の水をカラムに流す。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、本明細書において記載される陽イオン交換法等におけるイオン交換を介してのエンドトキシンの除去に関して、フラクタル分配によってさらなる利益が提供されると確信する。
【0021】
次に、低塩溶液(28〜37 mS/cm)をカラムに添加し、低塩溶液が2以上のカラム容量でカラムを流れるように、流量を一時間当たり50〜400リットル(一時間当たり150リットルが推奨される)に調整する。続いて、1以上のカラム容量(1.4が推奨される)で高塩溶液(80〜100 mS/cm)を添加し、一時間当たり50〜400リットル(一時間当たり200リットルが推奨される)に流量を調整する。続いて、1以上のカラム容量で、かつ一時間当たり50〜400リットルの流速(一時間当たり360リットルが推奨される)で水をカラムに流し、それに続いて一時間当たり50〜400リットルの流速で(300 L/hrが好ましい)、1以上のカラム容量の間、クエン性(0.5%クエン酸)の上向流を流す。クエン性上向流に続いて、一時間当たり50〜400リットル(好ましくは一時間当たり300リットル)の流速で3以上のカラム容量のクエン性下向流が続く。
【0022】
続いて、一時間当たり50〜400リットル(400 L/hr)の流速で少なくとも2カラム容量の水を使用して水を流し、それに続いて一時間当たり50〜400リットル(300 L/hr)の容量で、1以上のカラム容量の間、高塩溶液(80〜100 mS/cm)を添加する。続いて、少なくとも2カラム容量の水をカラムに流す。エンドトキシンフリーのタンパク質(ラクトフェリン)を、無菌バケツ、ステンレス鋼タンク等の適切な容器に収集する。
【0023】
続いてイオン交換システム由来の産物は、限外濾過に供される。簡単に言うと、満杯になるまでかまたは所望のバッチ量が達成されるまで、イオン交換システムからのエンドトキシンが減少した産物を、冷却されたバランスタンク中に移す。限外濾過システム(10 kDaメンブレン)を、40°F以下で操作する。産物を約4%の固体に濃縮し、続いて貯留物の伝導率が8.0 mS/cm未満になるまで、ダイアフィルトレーション水を添加する。エンドトキシンフリーの容器中に液体を排出し、約40°F未満の温度で保持する。少なくとも30分〜1時間の間循環させるEcolab AC-55-5酸性清浄剤(500 ml/25 gal)を使用して、限外濾過装置を清浄する。清浄するために、苛性剤を、少なくとも6時間、好ましくは12時間の間、0.2 Mで循環させて使用する。次に、pHが8.0未満になるまで、エンドトキシンフリーの水(0.2 EU/ml)を用いてシステムをリンスする(Flow Solutions AB3NFZ7PH4システムを使用して、水濾過を遂行する。)。
【0024】
凍結乾燥産物に関して、少なくとも6時間、好ましくは12時間以上の間、全ての産物の接触表面を0.2 Mの苛性剤を用いて浸漬せねばならず、それに続いて、産物に接触する前に、エンドトキシンフリーの水を用いて徹底的にリンスする。産物を乾燥させるための適切な方法は、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥および他の方法を含む当業者に公知の方法の中から選択されてもよい。結果として得られる粉末は、一つまたは複数の適切なエンドトキシンフリーの容器中に梱包されてもよい。
【0025】
様々な起源からのLFの精製および単離のための方法は、例えば、米国特許第4,190,576号;同第4,436,658号;同第4,467,018号;同第4,668,771号;同第4,791,193号;同第4,997,914号;同第5,087,369号;同第5,149,647号;同第5,169,936号;同第5,179,197号;同第5,516,675号;同第5,571,896号;同第5,596,082号;同第5,756,680号;同第5,849,885号;同第5,861,491号;同第5,919,913号;同第6,010,698号;同第6,096,870号および同第6,268,487号中に記載されている。本方法における使用のための液体ラクトフェリン組成物は、任意のラクトフェリン含有組成物を含んでもよいが、好ましくは濃縮された濃度の(すなわち、2%より高い)ラクトフェリンを含む。ラクトフェリンは、乳汁から直接的に単離されてもよく、または例えば、ホエイおよび/もしくはホエイタンパク質単離物等の乳汁成分から単離されてもよい。業界用語ではそのようなラクトフェリン産物は「濃縮されている」か、または「実質的に精製されている」と見なされるであろう。そのような組成物はまた、ラクトペルオキシダーゼ、増殖因子、カルシウム、および他の組成物を含む乳汁または乳汁単離物中に見出される他の化合物も包含してもよい。
【0026】
一つの局面において、乳汁由来のラクトフェリン産物(MDLF)は、約15 mg/100 g〜約40 mg/100 gの鉄含量を有し得る少なくとも約10%のウシラクトフェリンを含む。他の局面において、該MDLFは、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%のラクトフェリンを含む可能性がある。MDLFの一部の形態はまた、ラクトフェリンのアポラクトフェリン形態も含む可能性があり、約0 mg/100 g〜約15 mg/100 gの鉄濃度を提供する。一部の態様において、アポラクトフェリンは、約4 mg/100 g〜約15 mg/100 gの鉄濃度を含む可能性がある。
【0027】
Bioferrin(登録商標)1000(Glanbia Nutritionals, Inc.)は、新鮮なスイートホエイ由来のウシアポラクトフェリンを含む、天然の、生物学的に活性のある乳汁由来のタンパク質産物である。それは当業者に公知の分画分離技術を使用して単離され、90パーセントより多いタンパク質を含み、総タンパク質の90%より多く(例えば、95%)が、主にアポラクトフェリン形態(<15 mg鉄/100 g)のラクトフェリンを含む。Bioferrin(登録商標)2000は、100グラムの産物当たり鉄が約15〜40 mgのレベルで存在することを除き、類似の産物である。
【0028】
アポラクトフェリン形態および/またはより高鉄分の形態のウシラクトフェリンを含む組成物は、エンドトキシンフリーの産物を産生するために、本発明の方法において使用されてもよい。一般に創傷治療に関して、双方の形態が有効であることが実証されているが、アポラクトフェリン形態はさらなる利益を提供する可能性がある。エンドトキシンは、大腸菌(Escherichia coli)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等のグラム陰性細菌が死滅する際に放出されるリポ多糖産物である。標準的な創傷治療法を用いて処置することが困難な創傷は、一般に、微生物の混合集団を含まない場合と比べ頻繁に、確立されたバイオフィルムを含む。バイオフィルム内でのエンドトキシンの産生は、少なくともおよそ1000単位/cm2であることが報告されている(Rioufol, C. et al. J. Hosp Infect. (1999)43: 203-209)。Center for Biofilm Engineering at Montana State Universityでなされた研究によって、血液透析チューブに関連するバイオフィルムの対数減少は、エンドトキシンレベルの線形的減少に相関することが実証されている。Montana State’s CBEでなされたさらなる研究によって、主に緑膿菌を含むバイオフィルムは、1平方センチメートルのバイオフィルム当たりおよそ3,100〜6,200(平均4,300)エンドトキシン単位を産生することも実証された。慢性創傷は、炎症促進性サイトカインの増加、マトリックスメタロプロテアーゼの増加、低レベルのマトリックスメタロプロテアーゼ組織阻害因子、および低レベルの増殖因子サイトカイン、ならびに創床を構成する細胞(老化細胞)での受容体の分解を特徴とする。これらの特徴の多くは、エンドトキシンに関連している。創傷環境において、エンドトキシンは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の産生を刺激するTNF-αおよびインターロイキン等の炎症性媒介物質の産生を刺激することが見出されている。未治癒創傷は、増殖因子、細胞性受容体、および健康な組織の他の構成成分の分解に寄与する可能性があるMMPレベル増加の長期化に関連している。細菌性エンドトキシンは、創傷張力強度を減少させ、コラーゲン沈着および架橋を減少させ、かつ外科的創傷の披裂に関連している(Metzger, Z. et al. (2002) J. Endod. 28(1): 30-33.)。急性創傷に関して、とりわけ本発明のEFL産物は特に有益である可能性があり、これは、そのような産物は、創傷治癒プロセスを遅延させ得る、創傷組織における細胞死および望ましくない免疫応答の可能性を限定すると考えられるためである。
【0029】
本発明はまた、前述の方法によって作製されるエンドトキシンフリーのラクトフェリン(EFL)も提供する。組換えDNA技術法を介して作製されるかまたは乳汁から単離される、ヒトもしくは動物起源のラクトフェリンタンパク質組成物は、本発明の方法によって精製されてもよい。ラクトフェリンが利益を提供することが示唆されているがラクトフェリンに結合したエンドトキシンの効果がとりわけ望ましくない用途に関して、EFLはとりわけ効果的である可能性がある。本発明のEFLは、洗口剤、磨歯剤、栄養ドリンク剤、食品、例えばクリーム、ゲル、包帯および他の創傷治療製品等の創傷治療製品、抗老化剤、にきび薬、および他の使用を含む様々な用途に関して使用されるクリーム、ローションおよびゲル等の化粧製品中に組み入れられてもよい。EFLは、急性創傷および/または慢性創傷の処置のために使用されてもよい。EFLは、全ての上述の使用および他の使用に関して、キシリトール、抗生物質、抗酸化物質、ならびにEFL組成物が処方される創傷治療、口腔治療、および/または皮膚治療等の特定の目的に関して選択される他の物質等の、他の活性物質と組み合わせて提供されてもよい。
【0030】
牛乳由来のラクトフェリンおよび/またはホエイ由来のラクトフェリンを含む組成物は、安全で、極めて効果的で、豊富でかつ入手可能な局所的な創傷治療剤を提供することが、近年示されている。本発明の組成物は、創傷治癒のために必要であることが公知の細胞種である初代ヒトケラチノサイトの細胞生存率を促進する点において、現在市販のウシラクトフェリン組成物より優れていることが、本発明者らによって示されている。図2〜8に図解されるように、「低エンドトキシン」(すなわち、およそ400 EU/mg)組成物および「中程度エンドトキシン」(すなわち、およそ0.40 EU/mg)組成物が、培養液に添加される血清の存在下または非存在下でケラチノサイト培養において比較される場合、中程度のエンドトキシン産物の添加によって、血清の存在下および非存在下の双方において有意な細胞死が引き起こされるが、低エンドトキシン産物が添加される培養液において細胞生存率は維持される。急性創傷治療に関して、この差異はとりわけ有益である可能性がある。急性創傷と慢性創傷との有意な差異は、慢性創傷は一般に細菌性バイオフィルムの存在に関連することである。細菌由来のエンドトキシンは、一般に創傷治癒プロセスを遅延させると考えられている、細胞効果および免疫学的効果のカスケードを引き起こす。ラクトフェリンは創傷治癒を促進するが、ヒトラクトフェリンは、一般に、高価である可能性がありかつエンドトキシンが付随しているタンパク質を得る可能性もある組換えDNA法に由来せねばならず、より容易に利用可能なエンドトキシン源を提供するウシラクトフェリンもまた、結合したエンドトキシンを付随している可能性が高い。本発明の方法によって精製されるウシラクトフェリンは、パウダー、ゲル、クリーム、軟膏、包帯、または他の組成物/産物を介しての急性創傷への適用に関してとりわけ効果的な創傷治療組成物を提供し、これは、この形態のラクトフェリンは、創傷環境中にエンドトキシンを導入せず、かつ本明細書において記載される実験によって実証されるように、ケラチノサイト細胞死に寄与しないためである。
【0031】
EFLとより高いエンドトキシン産物との本発明者らの比較の結果に基づき、慢性創傷および急性創傷における治癒を改善するための方法、ならびにコンタクトレンズに関連する角膜炎、眼内炎、中耳炎、慢性扁桃炎、慢性鼻副鼻腔炎、火傷、褥瘡性潰瘍、手術部位感染、糖尿病性足部潰瘍、炎症性腸疾患、消化性潰瘍、術後感染症に関連する表面傷、および膣炎を含むがこれらに限定されない、バイオフィルム形成およびバイオフィルム再構成に関連する状態におけるバイオフィルム形成およびバイオフィルム再構成を減少させるための方法も、本明細書で提供される。例えば、米国特許第6,455,687号において、ヒトに関する様々な使用が記載されている。本発明のELFもまた、ヒトラクトフェリンに関して同定されている治療用途のための使用に適している。バイオフィルム確立およびバイオフィルム再構成に関連するこれらの状態ならびに他の状態に関して、EFLを含む組成物は、点眼薬、点耳薬、経口スプレー、ロゼンジ、迅速溶解性条片、鼻腔用スプレー、鼻腔洗浄液、軟膏、クリーム、ゲル、包帯成分、錠剤、カプレット、カプセル、液体、ならびに適切な賦形剤、着香料、着色料、およびさらなる活性物質をさらに含む可能性がある他の使用に適する組成物として提供されてもよく、かつ投与されてもよい。
【0032】
エンドトキシンフリーのラクトフェリン組成物は、とりわけエンドトキシン感受性であり得る組織への適用にとりわけ適しており、かつ本発明の方法によって作製される本発明のエンドトキシンフリーのラクトフェリン組成物は、整形外科用インプラント、義眼、コンタクトレンズおよび子宮内避妊器具等の、組織中に移植される可能性がある器具に適用されてもよい。
【0033】
ラクトフェリンはまた、ウイルス感染に対する予防物質として有益であることが実証されている。その目的のため、例えば錠剤、発泡錠、舌等の上に配置されてもよいプルランから作製されるもののような経口条片等の治療剤の投与のための様々な媒体を介して経口投与が提供されてもよく、または例えば鼻腔用スプレーおよび/もしくは咽頭スプレーを介して提供されてもよい。本発明のEFL組成物は、鼻腔用スプレーとしての使用のためにとりわけ有益である可能性がある。エンドトキシンに対する免疫応答に関する動物モデルであるラットにおいて、吸入されたエンドトキシンは、ラット鼻腔内および気管支気道内において用量依存的な応答を引き起こす(Gordon, T. and J.R. Harkema, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., Vol. 10, No. 2, p.177-183 (1994))。したがって本発明のEFL組成物は、鼻のエンドトキシン曝露に関連し得る粘液分泌および関連する不快感を回避する一方で、呼吸器へのウイルス感染に対する予防的使用のための鼻腔用スプレーにおける使用のために、ラクトフェリンを提供する可能性がある。
【0034】
様々な態様において、EFLを含む組成物はまた、急性創傷または慢性創傷への適用に関して、例えば保湿剤、ハイドロコロイドゲル、生理食塩水組成物、中鎖デキストラン(例えば、ハチミツ)等の、創傷への局所的適用のための少なくとも一つのさらなる物質も含む可能性がある。例えば、DuoDerm(登録商標)Hydroactive Dressings(Bristol-Myers Squibb, Princeton, NJ)等の市販の組成物は、適切な量のEFL(Bioferrin(登録商標), Glanbia Nutritionals, Inc., Monroe, WI)が混合される主薬として使用され得る。創傷治療に適した保湿剤は当業者に公知であり、かつそのような物質の多くが市販されている。
【0035】
創傷治癒組成物、および該組成物を投与することによって創傷を治癒する方法は、ELFおよびキシリトールを含んでもよい。そのような組成物はまた、任意で、抗生物質等の抗菌剤、保湿剤、または創傷治癒の速度を改善する他の物質、ならびに賦形剤およびEFL/キシリトールの局所的適用を促進するための組成物を含んでもよい。
【0036】
本発明の組成物は、銀の抗菌調製物を含む組成物および器具と共に容易に使用される場合がある。組成物は、例えばEFLまたはEFL-A、キシリトール、およびActicoat(登録商標)(Smith and Nephew, Memphis, Tennessee)等の銀製品を含んでもよい。Acticoat(登録商標)は、例えば、銀被覆された高密度ポリエチレン(HDPE)メッシュの上層と下層との間にラミネートされたレーヨン/ポリエステル不織布コアとして、抗菌銀を提供する可能性がある。Acticoat(登録商標)Moisture Control(Smith and Nephew, Memphis, Tennessee)は、ナノ結晶形態中に銀を含むフォームドレッシングである。Johnson and Johnsonによって販売されるActisorb(登録商標)Silver製品は、銀で充填された活性炭布を含む(1平方cmの布当たり33μgの銀)。Arglaes(登録商標)製品(Giltech Ltd., UK)はまた、パウダー、フィルムドレッシング、または他の創傷適用用調製物からの銀イオンの放出のためのポリマーを提供する。本発明の組成物は、そのような製品中に組み入れられてもよく、またはそのような製品と組み合わせて使用されてもよい。本発明によって記載される組成物の使用を伴う銀製品の使用を増やす一つの利点は、創傷治癒に対する効果の改善を達成する一方で、より少ない銀を製品中に組み入れることが可能になることである。本明細書において使用される場合に、銀を含有する創傷被覆材に関しては、組成物および器具の双方が包含され、かつ織布もしくは不織布またはポリマー、アルジネート、フォーム、パウダー、ゲル、クリーム、液体、創傷充填剤、および創傷への銀組成物の効率的な送達のために適切であると当業者によって判断される他の薬学器具または医療器具が包含されてもよい。
【0037】
活性型ラクトフェリンおよび活性型ラクトフェリンを産生するための方法は、米国特許第6,172,040号においてNaiduによって記載されている。Naiduは、ラクトフェリンの鉄結合能力を増加させるための、ラクトフェリンが容易に結合する基質へのラクトフェリンの固定化を記載している。EFLとの組み合わせにおける活性型形態のラクトフェリンを含む組成物はまた、効果的な創傷治療組成物も提供する可能性がある。
【0038】
急性創傷の治療に関して、本発明の方法によって作製された本発明のEFL組成物はまた、創傷治癒を増加させるために包帯に適用されてもよい。
【0039】
本発明の組成物は、ヒトおよび/または動物に投与されてもよく、かつそのような組成物の使用のための方法はまた、ヒトおよび/または動物にも適している。
【0040】
本発明は、以下に続く非限定的な実施例によってさらに記載され得る。
【0041】
実施例
実施例1−EFLの調製
上に記載されるように、イオン交換を実施した。表2および3は、本明細書において記載される方法によって得られた結果を示す。
【0042】
(表2)個々のイオン交換ロット

【0043】
(表3)リムルス変形細胞(Limulus Amoebocyte)アッセイの一日平均の結果

【0044】
実施例2−ケラチノサイトスクラッチアッセイにおける産物比較、培養液中に血清なし
初代ヒトケラチノサイトを24ウェルプレート中に播種し、90〜95%のコンフルエンスまで増殖させた。200マイクロリットルのピペットチップを使用して、ウェルの中央にひっかき傷を作製した。HEPES緩衝生理食塩水を用いてプレートを洗浄し、画像化した(T=0)。300マイクロリットルの産物(標準的な市販のウシラクトフェリン産物=中程度エンドトキシン、本発明の方法によって産生された産物=低エンドトキシン)を対応するウェルに添加し、細胞を5% CO2、37℃でインキュベートした。24時間間隔で、吸引によって培養液および産物を除去し、緩衝生理食塩水を用いて細胞を洗浄し、産物を含む新鮮な培養液に置換した。洗浄および培養液/産物の交換の後、細胞をインキュベータに戻した。アッセイを72時間後に終了させた。試験産物は、細胞培養液中の1%の低エンドトキシン産物(EFL)、細胞培養液中の2%の低エンドトキシン産物(EFL)、細胞培養液中の1%の高エンドトキシン産物(市販製品、単離されたラクトフェリン、エンドトキシン除去法の使用なし)、および対照(細胞培養液のみ)を含んだ。細胞培養液は、ウシ胎仔血清/ウシ胎児血清を含まなかった。
【0045】
ひっかき傷領域の閉鎖に関して細胞を観察した場合に、依然としてひっかき傷領域のいずれも閉鎖されていなかったが、より顕著な効果としては、高エンドトキシンのラクトフェリンで処置された細胞は、エンドトキシンがラクトフェリンに結合しかつおそらくそれにより中和されているが、死滅しているかまたは急速に死に向かっている状態であったことが示された。
【0046】
XTTアッセイを以下のように遂行した。72時間後、産物および培養液をプレートから除去し、HBSを用いて細胞を洗浄し、300マイクロリットルの各々の細胞培養液に加えて60マイクロリットルのXTTを各ウェルに添加した。対照として、培養液に加えてXTTを含むが細胞を含まない二つのウェルを使用した。XTTアッセイは、生存細胞においてより高いことが予測されるミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性によりXTTのテトラゾリウム環が切断されてオレンジ色のホルマザン結晶が生じ、培養液がピンク色からオレンジ色に変化するのを計測する。4時間後に培養液を試料採取し、各試料に関して490 nmでの吸光度を計測した。続いてトリパンブルー色素排除試験法によって細胞生存率をアッセイした。
【0047】
実施例3−培養された初代ヒトケラチノサイトにおける産物比較、血清が添加されている
初代ヒトケラチノサイトを24ウェルプレート中に播種し、70%のコンフルエンスまで増殖させた。HEPES緩衝生理食塩水を用いてプレートを洗浄し、画像化した(T=0)。300マイクロリットルの産物(標準的な市販のウシラクトフェリン製品=中程度エンドトキシン、本発明の方法によって産生された産物=低エンドトキシン)を対応するウェルに添加し、細胞を5% CO2、37℃でインキュベートした。試験された試料は、1%の低エンドトキシンラクトフェリンおよび培養液、2%の低エンドトキシンラクトフェリンおよび培養液、3%の低エンドトキシンラクトフェリンおよび培養液、1%の中程度エンドトキシンラクトフェリンおよび培養液、2%の中程度エンドトキシンラクトフェリンおよび培養液、3%の中程度エンドトキシンラクトフェリンおよび培養液、ならびに、対照(細胞培養液のみ)であった。24時間で培養液/産物を除去し、細胞を洗浄し、300マイクロリットルの新鮮な培養液に加えて60マイクロリットルのXTTを添加した。細胞をさらに4時間インキュベートし、続いて試料を採取し、490 nmで吸光度を計測した。測定値は、対照値(細胞培養液およびXTT)をブランクとした。結果を図2に示す。
【0048】
図3〜6に示されるように、中程度エンドトキシン産物の適用後に観察されたものに対して、低エンドトキシン産物の細胞への適用によって細胞生存率が有意に増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、タンパク質に結合したエンドトキシンを除去するための方法:
a)タンパク質を陽イオン交換レジンに結合させる段階;
b)界面活性剤の添加なしで、低イオン強度の溶液を使用してエンドトキシンを溶出する段階;および
c)高イオン強度の溶液を用いてタンパク質を溶出する段階。
【請求項2】
前記低イオン強度の溶液が、0.01〜0.5モル濃度の塩溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記低イオン強度の溶液が、0.25〜0.35モル濃度の塩溶液である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記高イオン強度の溶液が、高塩溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
溶出されたタンパク質を濾過し、かつ溶出されたタンパク質を乾燥させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
以下の段階を含む方法により、結合したエンドトキシンをタンパク質から除去することによって作製される、エンドトキシンフリーのタンパク質産物:
a)陽イオン交換レジンにタンパク質を結合させる段階;
b)界面活性剤の添加なしで、低イオン強度の溶液を使用してエンドトキシンを溶出する段階;および
c)高イオン強度の溶液を用いてタンパク質を溶出する段階。
【請求項7】
前記低イオン強度の溶液が、0.01〜0.5モル濃度の塩溶液である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記低イオン強度の溶液が、0.25〜0.35モル濃度の塩溶液である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
前記高イオン強度の溶液が、高塩溶液である、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
急性創傷または慢性創傷における治癒を改善するための方法であって、エンドトキシンフリーのウシラクトフェリンを含む組成物を創傷に適用する段階を含む、方法。
【請求項11】
前記創傷が急性創傷である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ヒトまたは動物におけるバイオフィルムに関連する疾患状態を処置するための方法であって、治療的有効量のエンドトキシンフリーのウシラクトフェリンを、ヒトまたは動物に投与する段階を含む、方法。
【請求項13】
前記エンドトキシンフリーのウシラクトフェリンが、鼻腔用スプレー、鼻腔洗浄液、経口スプレー、創傷治療ゲル、包帯、点眼薬、点耳薬および軟膏からなる群の中から選択される媒体を介して投与される、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−533201(P2010−533201A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516255(P2010−516255)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/069713
【国際公開番号】WO2009/009706
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(510010562)
【Fターム(参考)】