説明

タンパク質から細胞性免疫応答を得る方法

【課題】改善された純度、安定性および免疫原性を有する、効果的で、安全かつコスト効率的なワクチンを提供すること。
【解決手段】タンパク質粒子抗原および薬学的に受容可能な賦形剤を含むワクチン組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、脊椎動物被験体における細胞性免疫応答を生じる方法が、開示される。1つの実施形態において、このタンパク質粒子は、ウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、トリタンパク質および哺乳動物タンパク質からなる群より選択されるタンパク質より形成され、ここで、このタンパク質は、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質B(HSV gB2)、C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的に、免疫原性因子に関し、そして選択された抗原に対する免疫応答を増強する因子に関する。特に、本発明は、細胞性免疫応答を誘発する抗原としてのタンパク質粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
減弱した病原体またはサブユニットタンパク質抗原を含む多くのワクチン処方物が、開発されてきた。慣用的なワクチン組成物は、しばしば細胞性(cell−mediated)免疫応答および体液性免疫応答を増強する免疫学的なアジュバントを含む。例えば、投与される抗原を吸収および/または沈殿し、そして注射部位で抗原を残存し得る蓄積アジュバントは、頻繁に使用される。代表的な蓄積アジュバントは、アルミニウム化合物および油中水エマルジョンを含む。しかし、免疫原性を増加するにもかかわらず、蓄積アジュバントは、皮下または筋肉内に注射される場合、しばしば重篤な持続性の局所反応(例えば、肉芽腫、膿瘍および瘢痕)を引き起こす。他のアジュバント(例えば、リポ多糖)は、注射の際の発熱性応答および/またはライター症状(関節の不快感および時折の前部ブドウ膜炎、関節炎および尿道炎が普遍化された、インフルエンザ様の症状)を誘発し得る。サポニン(例えば、Quillaja saponaria)はまた、種々の疾患に対するワクチン組成物中の免疫学的アジュバントとして使用されてきた。
【0003】
より特異的には、フロイント完全アジュバント(CFA)は、基礎実験において多くの免疫原と首尾よく使用されてきた強力な免疫刺激性因子である。CFAは、3つの成分を含む:鉱油、乳化剤、および殺菌された放線菌(例えば、Mycobacterium tuberculosis)。アジュバントとして効果的であるにもかかわらず、CFAは、主に放線菌成分の存在に起因して重篤な副作用(痛み、膿瘍形成および発熱を含む)を生じる。従って、CFAは、ヒトおよび獣医のワクチンにおいて使用されていない。
【0004】
フロイント不完全アジュバント(IFA)は、CFA同様であるが、細菌成分を含まない。IFAは、米国において使用が認可されていないが、他国でインフルエンザおよびポリオウイルスに対するヒトワクチン、ならびに狂犬病、イヌジステンパーおよび口蹄疫に対する獣医ワクチンに使用されてきた。しかし、IFAに使用される油および乳化剤の両方がマウスにおいて腫瘍を生じ得るという証拠を示す。
【0005】
このようなアジュバントの存在にもかかわらず、慣用的ワクチンは、しばしば、標的化された病原体に対する妥当な防御を提供し損なう。この点に関して、細胞内病原体(例えば、多くのウイルス)に対するワクチン接種が、免疫系の細胞性および体液性の両面(arm)を標的化すべきであるという証拠が増えてきている。より特異的には、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、細胞性病原体(例えば、ウイルスおよび悪性細胞によって産生される腫瘍特異的抗原)に対する細胞性免疫疾患において重要な役割を担う。CTLは、感染細胞によって提示されるMHCクラスI分子と組合せてウイルス決定基を認識することによって、ウイルス感染した細胞の細胞傷害性を媒介する。タンパク質の細胞内発現は、MHCクラスIのプロセシングおよびCTLに対する抗原性ペプチドの提示について必須である。しかし、殺菌または減弱したウイルスでの免疫は、しばしば細胞内感染を防止するために必要なCTLを産生し損なう。さらに、顕著な遺伝的異質性および/またはHIVまたはインフルエンザのような免疫逃避改変体の選択を容易にする迅速な変異速度を提示するウイルスに対する慣用的なワクチン接種技術は、問題がある。従って、ワクチン接種についての代替の技術が開発されてきた。
【0006】
抗原に吸収されたかまたはカプセル化された微粒子キャリアが、これらの問題を回避するもくろみおよび妥当な免疫応答を誘発するもくろみにおいて使用されてきた。このようなキャリアは、選択された抗原の多コピーを免疫系に提示し、そして局所リンパ節における抗原の捕捉および保持を促進する。これらの粒子は、マクロファージによって食菌され得、そしてサイトカインの放出を通じて抗原提示を増強し得る。粒子キャリアの例は、ポリメチルメタクリレートポリマー由来ならびにポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチドコグリコリド)(PLGとして公知)由来のポリマー粒子を含む。他のより毒性の系よりも顕著な利点を示すが、抗原含有PLG粒子は、いくつかの欠点を被る。例えば、粒子キャリアの大規模生産および製造は、この粒子キャリアを製造する際に使用されるポリマーの高コストに起因して問題であり得る。
【0007】
リポソームはまた、これらの問題を克服するための試みにおいて使用されてきた。リポソームは、薬学的因子を捕捉するために使用される脂質成分(例えば、リン脂質)から形成される顕微鏡的ベジクルである。薬物送達系としてのリポソームの使用は上記の問題のいくつかを軽減するが、リポソームは、貯蔵および使用の間に弱い安定性を示し、リポソームの大規模生産および製造は問題がある。
【0008】
国際公開番号WO98/50071は、ウイルス様粒子(VLP)と投与された抗原の免疫応答を増強するためのアジュバントとしてのVLPの使用を記載する。St.Clairらは、体液性応答および細胞性応答を増強するためのタンパク質結晶の使用を記載する(St.Clair,Nら、Applied Biol.Sci.,96:9469−9474,1999)。
【0009】
上記のアジュバントおよび抗原提示系においても、改善された純度、安定性および免疫原性を有する、効果的で、安全かつコスト効率的なワクチンが引き続き必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本明細書中で本発明者らは、驚くことに、タンパク質粒子が細胞性免疫応答を生じる自己持続性の免疫原性因子であることを見出した。特に、活性成分はまた、送達系である。すなわち、タンパク質粒子は、抗原および送達系として働く。さらに、本発明者らは、このタンパク質粒子が以下のいくつかの利点を有することを見出した:(i)製造の容易さ、(ii)これらが、存在する因子よりも製造するためにコスト効率的であること、(iii)これらが、優れた免疫応答を提供すること、および(iv)これらが、減少した毒性を有し、そして他のワクチン処方物で観察される所望されない副作用を排除すること。次いで、従って、本発明は、主にこのようなタンパク質粒子の抗原としての使用に関する。
【0011】
1つの実施形態において、本発明は、選択された第一抗原および薬学的に受容可能な賦形剤を含む免疫原性組成物に関する。ここで、この選択された第一抗原は、タンパク質粒子であり、そしてさらに、このタンパク質粒子抗原は、細胞性免疫応答を生じ得る。好ましい実施形態において、このタンパク質粒子は、ウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、トリタンパク質および哺乳動物タンパク質からなる群より選択されるタンパク質より形成される。より好ましい実施形態において、このタンパク質は、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質B(HSV gB2)、C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質である。
【0012】
別の実施形態において、この免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含み、このアジュバントは、このタンパク質粒子内にカプセル化されているか、このタンパク質粒子上に吸着されているかもしくは結合体化されているか、または、タンパク質粒子と混合されている。
【0013】
さらなる実施形態において、この免疫原性組成物は、第二抗原をさらに含み、この第二抗原は第一抗原、すなわちタンパク質粒子とは異なる。この第二抗原は、可溶性抗原または中性抗原であり得、タンパク質粒子上に結合体化され得るか、またはキャリアと結合され得る(例えば、この第二抗原は、キャリア中にカプセル化され得るか、キャリア上に吸着もしくは結合体化され得るか、またはキャリアと混合され得る)。特定の好ましい実施形態において、キャリアは、以下を含むがこれらに限定されない:タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)、ポリマー粒子キャリアおよび不活性ウイルス粒子。より好ましい実施形態において、キャリアは、ポリマー粒子を含み、ここで、このポリマー粒子は、ポリ(α−キドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、およびポリアンヒドリドからなる群より選択されるポリマーを含む。
【0014】
代替の実施形態において、本発明は、選択された第一抗原および薬学的に受容可能な賦形剤を含む免疫原性組成物に関し、ここで、この選択された第一抗原は、タンパク質粒子であり、そしてさらに、このタンパク質粒子は、以下の工程を包含するプロセスによって製造される:
(a)タンパク質の水溶液を提供する工程;
(b)このタンパク質の水溶液に沈殿剤を添加し、生じた混合物を攪拌してこのタンパク質粒子を形成させる工程;
(c)安定化処理によってこのタンパク質粒子を安定化する工程;および
(d)この水溶液からこのタンパク質粒子を回収する工程。
【0015】
代替の実施形態において、水溶液は、工程(a)において酸をさらに含み、この酸は、酢酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、塩酸または乳酸である。好ましい実施形態において、沈殿剤は、油、炭化水素またはコアセルベーション剤を含む。さらなる好ましい実施形態において、安定化処理は、加熱処理または化学的架橋剤での処理を含む。
【0016】
好ましい実施形態において、タンパク質粒子は、細胞性免疫応答を生じ得;そしてウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、トリタンパク質および哺乳動物タンパク質からなる群より選択されるタンパク質より形成される。より好ましい実施形態において、このタンパク質は、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質B(HSV gB2)、C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質である。特定の好ましい実施形態において、この細胞性免疫応答は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答であり得る。別の実施形態において、免疫原性組成物またはワクチン組成物は、上記のようなアジュバントおよび/または第二抗原をさらに含み、ここで、タンパク質粒子は、抗原および/またはアジュバントとして機能し得る。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、上記のようなタンパク質粒子を含む免疫原性組成物またはワクチン組成物を脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、脊椎動物被験体において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生じる方法に関する。このタンパク質粒子は、脊椎動物被験体において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生じるために効果的な量で投与される。このタンパク質粒子は、アジュバントおよび/また第二抗原の前にか、後にか、あるいは同時に、合わせて投与され得る。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、上記のタンパク質粒子を含む治療的に有効量の免疫原性組成物またはワクチン組成物を、脊椎動物被験体に投与する工程を包含する免疫方法に関する。
【0019】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、本発明の記載に基づいて当業者が容易に行う。
【0020】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)選択された第一抗原および薬学的に受容可能な賦形剤を含む免疫原性組成物であって、該選択された第一抗原がタンパク質粒子である、組成物。
(項目2)前記タンパク質粒子が細胞性免疫応答を生じ得る、項目1に記載の免疫原性組成物。
(項目3)前記細胞性免疫応答が細胞傷害性Tリンパ球応答である、項目2に記載の免疫原性組成物。
(項目4)前記タンパク質粒子が、ウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、トリタンパク質および哺乳動物タンパク質からなる群より選択されるタンパク質より形成される、項目2に記載の免疫原性組成物。
(項目5)前記タンパク質が、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質B(HSV gB2)、C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質である、項目4に記載の免疫原性組成物。
(項目6)前記HCVタンパク質が、HCVコアタンパク質E1、E2、NS3、NS4、またはNS5である、項目5に記載の免疫原性組成物。
(項目7)前記HIVタンパク質が、gp120、gp160、gp41、p24gagまたはp55gagである、項目5に記載の免疫原性組成物。
(項目8)アジュバントをさらに含む、項目2に記載の免疫原性組成物。
(項目9)前記アジュバントがMF59、LT−K63またはLT−R72である、項目8に記載の免疫原性組成物。
(項目10)前記アジュバントが、前記タンパク質粒子内にカプセル化されている、項目8に記載の免疫原性組成物。
(項目11)前記アジュバントが、前記タンパク質粒子上に吸着されているかまたは結合体化されている、項目8に記載の免疫原性組成物。
(項目12)第二抗原をさらに含む項目2に記載の免疫原性組成物であって、該第二抗原は前記タンパク質粒子とは異なる、組成物。
(項目13)項目12に記載の免疫原性組成物であって、前記第二抗原は、キャリア上に吸着されているか、またはキャリア内にカプセル化されており、該キャリアは、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体、ポリマー粒子および不活性ウイルス粒子からなる群より選択される、組成物。
(項目14)前記ポリマー粒子が、ポリ(α−キドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、およびポリアンヒドリドからなる群より選択されるポリマーを含む、項目13に記載の免疫原性組成物。
(項目15)前記第二抗原が、前記タンパク質粒子上に結合体化されている、項目12に記載の免疫原性組成物。
(項目16)選択された第一抗原および薬学的に受容可能な賦形剤を含む免疫原性組成物であって、該選択された第一抗原がタンパク質粒子であって、さらに、該タンパク質粒子が以下の工程:
(a)タンパク質の水溶液を提供する工程;
(b)該タンパク質の水溶液に沈殿剤を添加し、生じた混合物を攪拌して該タンパク質粒子を形成させる工程;
(c)安定化処理によって該タンパク質粒子を安定化する工程;および
(d)該水溶液から該タンパク質粒子を回収する工程、
を包含するプロセスによって製造される、組成物。
(項目17)前記タンパク質粒子が細胞性免疫応答を生じ得る、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目18)前記細胞性免疫応答が細胞傷害性Tリンパ球応答である、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目19)前記タンパク質粒子が、ウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、トリタンパク質および哺乳動物タンパク質からなる群より選択されるタンパク質より形成される、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目20)前記タンパク質が、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質B(HSV gB2)、C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質である、項目19に記載の免疫原性組成物。
(項目21)前記HCVタンパク質が、HCVコアタンパク質E1、E2、NS3、NS4、またはNS5である、項目20に記載の免疫原性組成物。
(項目22)前記HIVタンパク質が、gp120、gp160、gp41、p24gagまたはp55gagである、項目20に記載の免疫原性組成物。
(項目23)工程(a)における前記水溶液が酸をさらに含む、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目24)前記酸が、酢酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、塩酸または乳酸である、項目23に記載の免疫原性組成物。
(項目25)前記沈殿剤が、油、炭化水素またはコアセルベーション剤を含む、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目26)前記安定化処理が、加熱処理または化学的架橋剤での処理を含む、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目27)前記安定化処理が加熱処理である、項目26に記載の組成物。
(項目28)アジュバントをさらに含む、項目16に記載の免疫原性組成物。
(項目29)前記アジュバントがMF59、LT−K63またはLT−R72を含む、項目28に記載の免疫原性組成物。
(項目30)第二抗原をさらに含む項目16に記載の免疫原性組成物であって、該第二抗原は前記タンパク質粒子とは異なる、組成物。
(項目31)項目30に記載の免疫原性組成物であって、前記第二抗原は、キャリア上に吸着されているか、またはキャリア内にカプセル化されており、該キャリアは、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体、ポリマー粒子および不活性ウイルス粒子からなる群より選択される、組成物。
(項目32)前記ポリマー粒子が、ポリ(α−キドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、およびポリアンヒドリドからなる群より選択されるポリマーを含む、項目31に記載の免疫原性組成物。
(項目33)前記第二抗原が、前記タンパク質粒子上に結合体化されている、項目30に記載の免疫原性組成物。
(項目34)選択された第一抗原を提供する工程、および該第一抗原を薬学的に受容可能な賦形剤と混合する工程を包含する、免疫原性組成物を調製する方法であって、該第一抗原は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生じ得るタンパク質粒子である、方法。
(項目35)前記免疫原性組成物を第二抗原と混合する工程をさらに包含する、項目34に記載の方法であって、前記第二抗原が前記タンパク質粒子とは異なる、方法。
(項目36)脊椎動物被験体において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生じる方法であって、該方法は、免疫学的に有効量の項目1〜7および項目16〜27のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を、該脊椎動物被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目37)アジュバントを前記タンパク質粒子と同時投与する工程をさらに包含する、項目36に記載の方法。
(項目38)第二抗原を前記タンパク質粒子と合わせて投与する工程をさらに包含する、項目37に記載の方法であって、該第二抗原が該タンパク質粒子とは異なる、方法。
(項目39)前記第二抗原が投与される前に、前記タンパク質粒子が前記脊椎動物被験体に投与される、項目38に記載の方法。
(項目40)前記第二抗原が投与される後に、前記タンパク質粒子が前記脊椎動物被験体に投与される、項目38に記載の方法。
(項目41)前記第二抗原が投与されるのと同時に、前記タンパク質粒子が前記脊椎動物被験体に投与される、項目38に記載の方法。
(項目42)脊椎動物被験体において細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生じるための医薬の製造における、項目1〜33のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、標的の特異的溶解パーセントに対するオボアルブミン(OVA)、OVAタンパク質粒子、およびPLG/OVAタンパク質粒子の効果を示す。
【図2】図2は、gB2タンパク質処方物、gB2タンパク質粒子およびPLG/gB2タンパク質粒子のCTL活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、そうでないことが示されなければ、当該分野の技術内のウイルス学、化学、生化学、組換え技術、免疫学および薬理学の従来法を採用する。このような技法は文献中に詳細に説明されている。例えば、Virology、第3版、第I巻および第II巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編、1996);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Pennsylvania;Mack Publishing Company、1990);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press、Inc.);Handbook of Experimental Immunology、第I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986、Blackwell Scientific Publications);Sambrookら、Molecular Cloning;A Laboratory Mannual(第2版、1989);およびDNA Cloning:A Practical Approach、第I巻および第II巻(D.Glover編)を参照のこと。
【0023】
本明細書および添付の請求項で用いられるとき、単数形の「a」、「an」、「the」は、内容が明確に他であることを示さなければ、複数形の参照を含む。
【0024】
(A.定義)
本発明を記載することにおいて、以下の用語が採用され、そして以下に示されるように規定されることが意図される。
【0025】
本明細書で用いるとき、用語「タンパク質粒子」は、タンパク質から作製される粒子をいい、ここで、用語「タンパク質」は、ペプチド、ポリペプチド、金属タンパク質、糖タンパク質およびリポタンパク質をいう。好適な実施形態では、タンパク質粒子を形成する粒子は、制限されずに、アルブミン、ゼラチン、ゼイン、カゼイン、コラーゲンおよびフィブリノーゲンのような、制限されずに、ウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、鳥類タンパク質、哺乳動物タンパク質および真核生物タンパク質を含む。より好適な実施形態では、タンパク質粒子を形成するタンパク質は、制限されずに、HSV−1およびHSV−2糖タンパク質gB、gDおよびgHのような1型および2型単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のタンパク質;CMV gBおよびgHを含むサイトメガロウイルス(CMV)由来のタンパク質;A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む肝炎ウイルスファミリー由来のタンパク質;種々の遺伝子サブタイプのHIV単離物HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4、HIV−2のメンバーを含むような、HIV由来のgp120、gp160、gp41、p24gagおよびp55gagエンベロープタンパク質;サル免疫不全ウイルス(SIV)由来のタンパク質;Neisseria meningitidis(A、B、C、Y)、B型Hemophilus influenza(HIB)、Helicobacter pylori由来のタンパク質;ヒト血清アルブミンおよび卵白アルブミンを含む。特定のタンパク質粒子を生産する方法は、当該分野で公知であり、そして以下により詳細に論議される。
【0026】
このタンパク質粒子は、以下の物理的特徴をもっている。このタンパク質粒子は、ほぼ約150nm〜約10μm、好ましくは約200nm〜約4μm、より好ましくは約250nm〜約3μmである。一般に、このタンパク質粒子は形状が球状であり、そして約200nm〜約10μm、好ましくは約500nm〜約5μm、より好ましくは約1μm〜約3μmの直径を所有する。一般に、このタンパク質粒子は、タンパク質を変性および架橋すること、次いでこの架橋されたタンパク質の安定化によって得られる。特定のタンパク質粒子を生産する方法は、以下により詳細に論議される。
【0027】
いくつかの検出技法を、タンパク質がタンパク質粒子の形態をとったことを確認するために用い得る。このような技法は、電子顕微鏡、X線結晶学などを含む。例えば、Bakerら、Biophys.J.(1991)60:1445−1456;Hagenseeら、J.Virol.(1994)68:4503−4505を参照のこと。例えば、低温電子顕微鏡法が、問題のタンパク質粒子調製物のガラス化された水溶性試料について実施され、そして適切な曝露条件下で像が記録され得る。
【0028】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基をいい、そしてこの産物の最小長さは制限されない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、マチルマーなどはこの定義に含まれる。その完全長タンパク質およびそのフラグメントの両方がこの定義に包含される。この用語はまた、タンパク質が抗原として作用し、そしてCTL応答を惹起し得る限り、ネイティブな配列に対する欠失、付加および置換(一般に性質は保存されている)のような改変をも含む。
【0029】
好適な置換は、性質が保存されているもの、すなわち、それらの側鎖が関連するアミノ酸のファミリー内で起こるような置換である。詳細には、アミノ酸は一般に4つのファミリーに分割される;(1)酸性−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、しばしば、芳香族アミノ酸として分類される。例えば、イソロイシンまたはバリンでロイシンを、グルタミン酸でアスパラギン酸を、セリンでスレオニンを隔離して置換すること、または構造的に関連したアミノ酸でアミノ酸を同様に保存的置換することが、生物学的な活性に主要な影響を有しないことは合理的に予測可能である。参照分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、タンパク質の免疫原性に実質的に影響しないマイナーなアミノ酸置換を所有するタンパク質は、それ故、参照ポリペプチドの定義内である。
【0030】
タンパク質粒子(すなわち、選択された第1の抗原)は、第2の抗原がこのタンパク質粒子内に包括されないか、および/または第2の抗原およびこれらタンパク質粒子が融合タンパク質として一緒に発現されないとき、選択された第2の抗原とは「別個」である。しかし、タンパク質粒子は、第2の抗原がタンパク質粒子の表面に共有結合しないか、その中に包括されないか、またはそれに吸着されない限り、第2の抗原とタンパク質粒子との間に緩い物理的会合がある場合でさえ、選択された第2の抗原から「別個」である。
【0031】
「抗原」は、以下に規定するように、免疫学的応答を惹起する1つ以上のエピトープ(直線状、立体配置的またはその両方)を含む分子をいう。この用語は、用語「免疫原」と交換可能に用いられる。通常、B細胞エピトープは、少なくとも約5のアミノ酸を含むが、3〜4アミノ酸程度であり得る。CTLエピトープのようなT細胞エピトープは、少なくとも約7〜9のアミノ酸を含み、そしてヘルパーT細胞エピトープは少なくとも約12〜20アミノ酸を含む。用語「抗原」は、サブユニット抗原、すなわち別個であり、そして本質的に抗原が会合している全有機体とは別々である抗原、および殺傷された、弱毒化されたかもしくは不活性化された細菌、ウイルス、真菌、寄生虫もしくはその他の微生物の両方を示す。抗イディオタイプ抗体のような抗体、またはそのフラグメント、および抗原または抗原決定基を模倣し得る合成ペプチドミモトープもまた、本明細書で用いられるような抗原の定義の基に捕捉される。同様に、遺伝子治療およびDNA免疫化適用におけるような、抗原または抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドもまた、本明細書の抗原の定義内に含まれる。
【0032】
本発明の目的には、抗原は、以下により詳細に記載されるように、いくつかの既知のウイルス、細菌、寄生虫およひ真菌の任意のもの由来であり得る。この用語はまた、任意の種々の腫瘍抗原を意図する。さらに、本発明の目的には、「抗原」は、タンパク質が、本明細書に規定されるような免疫学的応答を惹起する能力を維持する限り、ネイティブな配列に対する、欠失、付加および置換(一般に性質上保存的)のような改変を含むポリヌクレオチドおよびタンパク質をいう。これらの改変は、部位特異的変異誘発によるように用意され得るか、またはこの抗原を産生する宿主の変異によるように偶然であり得る。
【0033】
用語「H.pylori溶解物」は、1つ以上のH.pylori抗原を含むI型またはII型H.pylori全菌体由来の抽出物または溶解物を意味する。したがって、この用語は、いくつかのH.pylori抗原を含む粗抽出物、および唯一または2〜3のこのような抗原を含む粗溶解物由来の比較的精製された組成物を示す。このような溶解物は、当該分野で周知の技法を用いて調製される。
【0034】
このような溶解物に存在し得る代表的な抗原は、単独または組み合わせて、H.pyloriのアドヘシン(adhesin)由来の1つ以上の抗原、例えば、制限されずに、20kDa α−アセチル−ノイラミニルラクトース結合性繊維状赤血球凝集素(HpaA)、ホスファチジル−エタノールアミンおよびガングリオテトラオシルセラミドを結合する63kDaタンパク質、およびふさ状繊毛様構造を含む。これらの抗原の記載については、例えば、Telfordら、Trends in Biotech.(1994)12:420−426を参照のこと。上記の溶解物中に存在し得るその他の抗原は、主要鞭毛抗原(flagellin)であるFlaAおよび小数鞭毛抗原であるFalBのような種々の鞭毛抗原の任意由来であるエピトープを含む。これに関し、H.pyloriの鞭毛は、FalAおよびFlaBから構成され、各々は約53kDaの分子量をもつ。別の代表的な抗原は、この細菌の外膜およびペリプラズム空間に会合するH.pyloriウレアーゼを含む。このホロ酵素は、それぞれ、26.5kDa(UreA)および61kDa(UreB)の2つのサブユニットからなる大複合体である。このホロ酵素由来のエピトープは、これらサブユニットのいずれか、または3つの組み合わせで存在し得、そして本明細書の「ウレアーゼ」の定義の下に捕捉され得る。上記溶解物中に存在し得るかまたはさらに精製された形態で用いられ得る別の代表的な抗原は、「hsp60」として知られるH.pyloriヒートショックタンパク質を含む。hsp60のDNAおよび対応するアミノ酸配列は既知である。例えば、1993年9月16日に公開された国際公開番号WO93/18150を参照のこと。示された完全長hsp60抗原は、約546アミノ酸および約58kDaの分子量を有する。VacAおよびCagA抗原もまた,このような溶解物中に存在し得る。上記溶解物はまた、本明細書中に詳細に記載されていないその他の抗原もまた含み得ることが理解される。
【0035】
用語「VacA抗原」は、I型H.pyloriのサイトトキシンとして知られる抗原由来である上記のような抗原を意味する。このVacAタンパク質は、組織培養中の上皮細胞において空胞形成を誘導し、そしてマウスに経口投与されたとき、広範な組織損傷および潰瘍形成を引き起こす。VacAのDNAおよび対応するアミノ酸配列は公知であり、そして例えば、1993年9月16日に公開された国際公開番号WO93/18150中に記載されている。VacA抗原の遺伝子は、約90〜100kDaの活性分子にプロセッシングされる約140kDaの前駆体をコードする。次に、この分子は、ゆっくりとタンパク質分解により切断され、インタクトな90kDa分子と同時精製される2つのフラグメントを生じる。Telfordら、Trends in Biotech.(1994)12:420〜426を参照のこと。したがって、本明細書で記載される「VacA抗原」の定義は、I型H.pylori感染をもつ個体からの生物学的試料中に存在する抗体との特異的反応性を保持する、前駆体タンパク質、およびプロセッシングされた活性分子、そのタンパク質分解的フラグメント、またはそれらの部分若しくはムテインを含む。
【0036】
用語「CagA抗原」は、I型H.pyloriのサイトトキシン会合免疫優性抗原由来である上記で規定される抗原を意味する。CagAは細菌表面上で発現される。CagAのDNAおよび対応するアミノ酸配列は公知である。例えば、1993年9月16日に公開された国際公開番号WO93/18150を参照のこと。これに記載された完全長CagA抗原は、約128kDaの推定分子量をもつ約1147アミノ酸を含む。ネイティブタンパク質は、プロリンが豊富なアミノ酸配列の繰り返しをコードする102bp DNAセグメントの可変数の繰り返しの存在に起因する株間サイズの変動を示す。Covacciら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:5791〜5795を参照のこと。したがって、報告されたCagAの分子量は、約120〜135kDaの範囲である。これ故、本明細書で用いられるとき「CagA抗原」の定義は、I型H.pyroli感染をもつ個体からの生物学的試料中の抗体と反応する能力を保持する、種々のCagA改変体、そのフラグメントおよびそのムテインの任意を含む。例えば、図3に示されるCagAポリペプチドは、268アミノ酸の短縮型タンパク質であり、そして完全長分子の中に含まれるGlu−748〜Glu−1015を含む。さらに、本明細書で用いる「CagA抗原」の定義は、H.pylori抗原のNapタンパク質を含む。H.pyloriのnapタンパク質の記載およびその精製するための方法については、例えば、PCT IB99/00695を参照のこと。
【0037】
「精製された」タンパク質またはポリペプチドは、組換えによるかもしくは合成的に生産されるか、またはその天然宿主から単離されたタンパク質であり、その結果、組成物中に存在するタンパク質の量は、粗調製物中に存在するより実質的に高い。一般に、精製されたタンパク質は、少なくとも約50%均一、そしてより好ましくは少なくとも約80%〜90%均一である。
【0038】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」は、目的の組成物中に存在する抗原に対する被験体中の体液性および/または細胞性免疫応答の発達である。本発明の目的には、「体液性免疫応答」は、抗体分子により媒介される免疫応答をいい、その一方「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/またはその他の白血球細胞により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な局面は、細胞溶解性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合性複合体(MHC)によりコードされ、そして細胞の表面上で発現されるタンパク質と会合して提示されているペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導補助し、かつ促進する。細胞性免疫の別の局面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を含む。ヘルパーT細胞は、細胞表面上にMHC分子と会合しているペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激して補助するように作用し、かつその活性を集める。「細胞性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカイン、およびCD4+およびCD8+T細胞由来のものを含む、活性化T細胞および/またはその他の白血球細胞により産生されるようなその他の分子の産生をいう。
【0039】
細胞性免疫応答を惹起する免疫原性組成物またはワクチンを、細胞表面でMHC分子と会合する抗原の提示によって脊椎動物被検体を感作するために供し得る。細胞に媒介された免疫応答は、細胞表面に抗原を提示する細胞で、または近傍で起こる。さらに、抗原特異的Tリンパ球を、免疫化宿主の将来の保護を可能にするために生成し得る。
【0040】
特定の抗原が、細胞媒介免疫学的応答を刺激する能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイによるか、または感作された被験体における抗原に特異的なTリンパ球をアッセイすることによるような多くのアッセイにより測定され得る。このようなアッセイは、当該分野で周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993)151:4189〜4199;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994)24:2369〜2376を参照のこと。
【0041】
従って、本明細書で用いられるとき、免疫学的応答は、CTLの産生、および/またはヘルパーT細胞の産生を刺激し得るものであり得る。目的の抗原はまた、抗体媒介免疫応答を惹起し得る。これ故、免疫学的応答は、以下の効果の1つ以上を含み得る;例えば、限定されないでB細胞による抗体の産生;および/またはサプレッサーT細胞の活性化および/または目的の組成物またはワクチン中に存在する抗原(単数または複数)に特異的に惹起されるγδT細胞の活性化。これらの応答は、伝染力を中和し、および/または抗体−補体、または免疫化宿主に対する保護を提供する抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介するために供され得る。このような応答は、当該分野で周知の標準的な免疫アッセイおよび中和アッセイを用いて測定され得る。
【0042】
本発明のタンパク質粒子抗原を含む免疫原性またはワクチン組成物、またはアジュバントおよび/または本発明のタンパク質粒子抗原とともに同時投与される第2の抗原は、それが、異なる送達システム(例えば、抗原が可溶性タンパク質として投与されるか、抗原含有粒子状キャリア(例えば、抗原がPLG粒子上に吸着されるか、またはその中にカプセル化される)として投与される)を用いて投与された抗原の等量によって惹起される免疫応答より免疫応答を惹起するより大きい能力を所有するとき、「増大された免疫原性」を提示する。従って、免疫原性またはワクチン組成物は、「増大された免疫原性」を提示し得る。なぜなら、この抗原はより強力に免疫原性であるか、またはこの抗原が投与される被験体における免疫応答を達成するために抗原のより低い用量またはより少ない用量ですむからである。このような増強された免疫原性は、タンパク質粒子組成物および抗原コントロールを動物に投与すること、および上記に記載のような標準的なアッセイを用いてこの2つに対する抗体力価および/または細胞媒介性免疫を比較することによって測定され得る。
【0043】
本発明の目的には、タンパク質粒子抗原の「有効量」は、投与されるとき免疫学的応答を惹起するか、同時投与された抗原に対する免疫学的応答を増強するその量である。
【0044】
「脊椎動物被験体」により、制限されずに、ヒトおよびチンパンジーおよびその他のエイプおよびサル種のような非ヒト脊椎動物;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマを含む家畜動物;イヌおよびネコのような家畜動物;マウス、ラットおよびモルモットのようなげっ歯類を含む実験室動物;ニワトリ、七面鳥およびその他のキジ類のトリ、アヒル、ガチョウなどのような家畜、野生および狩猟鳥を含むトリを含む、亜門脊索動物の任意のメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢を示すものではない。従って、成体および新生個体の両方を含むことが意図される。上記のシステムは、上記の脊椎動物種の任意における使用に意図される。なぜなら、これら脊椎動物のすべての免疫系は同様に作動するからである。
【0045】
「薬学的に受容可能」または「薬理学的に受容可能」は、生物学的またはそうでなければ所望されなくはない物質を意味し、すなわち、この物質は、任意の所望されない生物学的影響を引き起こすか、またはそれが含まれる組成物の任意の成分と有害な様式で相互作用することなく、タンパク質粒子処方物とともに個体に投与され得る。
【0046】
「生理学的pH」または「生理学的範囲のpH」は、約7.2〜8.0を含む、より代表的には約7.2〜7.6を含む範囲のpHを意味する。
【0047】
本明細書で用いられる「処置」は、(i)伝統的ワクチンにおけるような、感染または再感染の予防、(ii)症状の軽減または除去、および(iii)問題の病原体の実質的または完全な除去のいずれかをいう。
【0048】
処置は予防的(感染の前)または治療的(感染後)に行われ得る。
【0049】
(B.一般的方法)
本発明の中心は、タンパク質粒子が投与される場合、脊椎動物被験体においてタンパク質粒子が体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を増強する抗原として働き得るという驚くべき知見である。タンパク質粒子は、自己持続性である。すなわち、タンパク質粒子は、抗原であり、ならびに活性成分についての送達系である。従って、本発明は、タンパク質粒子の形態で目的の抗原が細胞性免疫応答を誘発するためにキャリア粒子上に吸着されたりキャリア粒子内に捕捉される必要がないので、キャリア(例えば、PLGなどを含むポリマー)の使用を必要としない。さらに、この系は抗原のカプセル化に依存しないので、抗原サイズは、限定されない。従って、本発明の系は、広範な種々の抗原に有用であり、そして多くの感染を予防および/または処置するための強力な道具を提供する。
【0050】
抗原としての使用のためのタンパク質粒子は、適切な条件下で粒子を形成する能力を有するほとんど任意のタンパク質、またはタンパク質もしくはそのフラグメントの組み合わせから形成され得る。特に、本発明のタンパク質粒子は、以下に詳細に記載されるように、精製されたタンパク質の化学的沈殿によってか、化学的架橋剤の使用によってか、また加熱安定化によってかのいずれかで形成され得る。さらに、本発明のタンパク質粒子は、VLPとは構造的に異なる。タンパク質粒子は、以下の物理学的特性を有する。このタンパク質粒子は、ほぼ約150nm〜約10μm、好ましくは約200nm〜約4μm、より好ましくは約250nm〜約3μmである。一般に、このタンパク質粒子は形状が球状であり、そして約200nm〜約10μm、好ましくは約500nm〜約5μm、より好ましくは約1μm〜約3μmの直径を所有する。
【0051】
対照的に、ウイルス様粒子(VLP)は、適切な発現系においてタンパク質の組換え発現に際して自発的に形成し得る。一般に、VLPは、同種マトリクス(例えば、膜)内に形成され得、そして発現系から選択され得る。さらに、VLPは、およそ約50nmで、球状の形状であり、そして約40nm〜約100nmの直径を有する。しかし、VLPから自然発生するタンパク質はほとんどない。
【0052】
本発明の特定の利点は、免疫原性を増強する(例えば、脊椎動物被験体における細胞性免疫応答を生じることによって)タンパク質の能力である。細胞性免疫応答を誘発するための本発明のタンパク質粒子の能力は、広範な種々の病原体による感染に対する強力な道具を提供する。従って、本発明のタンパク質粒子は、ワクチン組成物中に組み込まれ得る。
【0053】
本発明のさらなる利点は、タンパク質粒子が、製造するためによりコスト効率的であり、優れた免疫応答を提供し、そしてポリマー粒子(例えば、PLG−微粒子)と比較した場合に毒性および他の所望されない副作用が減弱されたという知見である。従って、本発明の系は、広範な種々の抗原に有用であり、そして多くの感染を予防および/または処置するための強力な道具を提供する。
【0054】
抗原としての使用のためのタンパク質粒子は、タンパク質(例えば、ペプチド、ポリペプチド、メタロタンパク質、糖タンパク質およびリポタンパク質)から形成され得る。好ましい実施形態において、タンパク質粒子を形成するタンパク質は、以下を含むがこれらに限定されない:ウイルスタンパク質、真菌タンパク質、細菌タンパク質、トリタンパク質、哺乳動物タンパク質および真核生物タンパク質。より好ましい実施形態において、タンパク質粒子を形成するタンパク質は、以下を含むがこれらに限定されない:ヘルペス単純ウイルス(HSV)1型および2型由来のタンパク質(例えば、HSV−1およびHSV−2の糖タンパク質gB、gDおよびgH)を含むヘルペスウイルスファミリー由来のタンパク質;CMV gBおよびgHを含むサイトメガロウイルス(CMV)由来のタンパク質;A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む肝炎ウイルスファミリー由来のタンパク質;種々の遺伝子サブタイプのHIV単離物(例えば、HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4、HIV−2のメンバーを含む)HIV由来のgp120、gp160、gp41、p24gagおよびp55gagのエンベロープタンパク質を含むタンパク質;サル免疫不全ウイルス(SIV)由来のタンパク質;Neisseria meningitidis(A、B、C、Y)由来のタンパク質、B型Hemophilus influenza(HIB)由来のタンパク質、Helicobacter pylori由来のタンパク質;ヒト血清アルブミンおよび卵白アルブミン(以下により完全に記載される)。代替の実施形態において、タンパク質粒子は、1つ以上のタンパク質の組合せか、またはタンパク質と第二抗原との組み合わせから形成され得、ここで、この第二抗原は、このタンパク質とは異なる。
【0055】
従って、抗原は、広範な種類のウイルス、細菌、真菌、植物、原生動物および他の寄生生物に由来し得る。例えば、本発明は、ヘルペスウイルスファミリーに由来する広範な種類のタンパク質(単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型(例えば、HSV−1およびHSV−2 gB、gD、gH、VP16およびVP22)由来のタンパク質;水痘‐帯状疱疹ウイルス(VZV)由来の抗原;エプスタイン‐バーウイルス(EBV)由来の抗原;ならびにサイトメガロウイルス(CMV)由来の抗原(CMV gBおよびgHを含む);ならびに他のヒトヘルペスウイルス由来の抗原(例えば、HHV6およびHHV7)を含む)に対する免疫応答を刺激するために用途を見出す。(例えば、サイトメガロウイルスの含有物をコードするタンパク質の概説については、Cheeら、Cytomegaloviruses(J.K.McDougall編、Springer−Verlag 1990)125−169頁;種々のHSV−1によりコードされるタンパク質の議論については、McGeochら、J.Gen.Virol.(1988)69:1531−1574;HSV−1およびHSV−2 gBおよびgDタンパク質の議論については米国特許第5,171,568号、およびEBVゲノムにおけるタンパク質コード配列の同定については、Baerら、Nature(1984)310:207−211;ならびにVZVの概説についてはDavisonおよびScott、J.Gen.Viol.(1986)67:1759−1816を参照のこと)。
【0056】
さらに、ウイルスの肝炎ファミリー(A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルスを含む)由来の抗原に対する免疫応答もまた、タンパク質粒子を使用して都合よく増強され得る。例示によって、HCVゲノムは、いくつかのウイルスタンパク質(E1(Eとしても知られる)およびE2(E2/NS1としても知られる)、NS3、NS4、NS5など)をコードし、そしてこれらは本発明との使用を見出す(HCVタンパク質(E1およびE2を含む)の議論については、Houghtonら、Hepatology(1991)14:381−388を参照のこと)。HDV由来のδ抗原もまた、本発明の粒子系とともに使用され得る(δ抗原の議論については、米国特許第5,389,528号を参照のこと)。
【0057】
同様に、インフルエンザウイルスは、本発明が特に有用であるウイルスの別の例である。具体的には、インフルエンザAのエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、免疫応答を惹起するために特に興味深い。インフルエンザAの多数のHAサブタイプが同定されている(Kawaokaら、Virology(1990)179:759−767;Websterら、「Antigenic variation among type A influenza virues」、127−168頁、P.PaleaseおよびD.W.Kingsbury(編)、Genetics of influenza viruses.Springer−Verlag,New York)。したがって、これらの抗原は、タンパク質粒子として投与された場合、免疫応答を惹起し得る。あるいは、これらの抗原の任意のものに対する免疫応答は、それらが本発明のタンパク質粒子抗原とともに同時投与された場合、増強され得る。
【0058】
本発明のタンパク質粒子組成物中にて使用される特定の目的のための他の抗原には、ヒトパピローマウイルス(HPV)(例えば、E6およびE7を含む種々の初期タンパク質の1つ以上)、ダニ媒介脳炎ウイルス、HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとしても知られる)(HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLA1、HIVMN単離体からの抗原(例えば、gp120、gp41、gp160、gag、およびpol)を含むがこれらに限定されない)に由来する抗原およびポリペプチドが含まれる(種々のHIV単離体のエンベロープ遺伝子配列の比較については、Myersら、Los Alamos Database,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico(1992);Myersら、Human Retroviruses and Aids,1990,Los Alamos,New Mexico:Los Alamos National Laboratory;およびModrowら、J.Virol.(1987)61:570−578を参照のこと)。
【0059】
特に好ましいウイルス抗原は、とりわけ、Picornaviridae(例えば、ポリオウイルスなど);Caliciviridae;Togaviridae(風疹ウイルス、デングウイルスなど);Flaviviridae;Coronaviridae;Reoviridae;Birnaviridae;Rhabodoviridae(例えば、狂犬病ウイルスなど);Filoviridae;Paramyxoviridae(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど);Orthomyxoviridae(例えば、A、B、およびC型インフルエンザウイルスなど);Bunyaviridae;Arenaviridae;Retroviradae(例えば、HTLV−I;HTLV−II;HIV−1;HVI−2);サル免疫不全ウイルス(SIV)のファミリーのメンバー由来のタンパク質であるが、これらに限定されない。これらおよびその他のウイルスの記載については、例えば、Virology、第3版(W.K.Joklik編、1988);Fundamental Virology,第二版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編、1991を参照のこと。
【0060】
特に好ましい細菌抗原は、ジフテリア、破傷風、百日咳、髄膜炎、およびその他の病原性状態を引き起こす生物に由来し、これらには、Corynebacterium diphtheriae、Clostridium tetani、Bordetella pertusis、Neisseria meningitidis(Meningococcus A、B、C、YおよびW135血清型(MenA、B、C、YおよびW135)を含む)、B型Haemophilus influenza(Hib)、およびHelicobacter pyloriが含まれるが、これらに限定されない。寄生性抗原の例には、マラリアおよびライム病を引き起こす生物由来のものが含まれる。
【0061】
より好ましい実施形態において、細菌抗原はH.pyloriに由来する。H.pylori細菌は、特異的タンパク質の存在または非存在に基づいて、2つのグループ(I型およびII型)に分割される。例えば、I型およびII型の両方の細菌は、ウレアーゼおよび多数のアドヘシンを産生する。一方、H.pylori I型株は、VacAおよびCagAを産生する。(国際公開第WO93/18150,1993年9月16日公開)。したがって、本発明の組成物は、1つ以上のVacA、CagA、H.pyloriウレアーゼ、上記のようなH.pylori溶解物、H.pylori熱ショックタンパク質hsp60などを含み得る。例えば、広範に基づくワクチンは、H.pyloriのI型に特異的な抗原(VacAおよびCagA)ならびにH.pyloriのI型およびII型に共通の抗原(例えば、ウレアーゼ)を含有し得る(本明細書において使用するためのH.pylori抗原のさらなる議論については、国際公開第WO93/18150、1993年9月16日公開、およびWO98/27432、1998年6月25日公開を参照のこと)。
【0062】
代替の実施形態において、好ましい細菌抗原は、Neisseria meningitidisに由来する。髄膜炎菌は、莢膜および細胞壁抗原の免疫学的特徴に基づいて、血清学的グループに分けられる。現在認識されている血清群には、A、B、C、D、W−135、X、Y、Z、および29Eが含まれる。莢膜ポリサッカライドに基づくワクチンは、血清型A(MenA)、B(MenB)、C(MenC)、Y(MenY)、およびW135(MenW135)によって引き起こされる髄膜炎菌の疾患に対して開発されている。(本明細書における使用のためのMenB抗原のさらなる議論については、国際公開第WO98/08543、1998年3月5日公開;WO98/08874、1998年3月5日公開、WO99/10372、1999年3月4日公開;US99/09346、IB98/01665、およびIB99/00103を参照のこと)。
【0063】
上記の生物に由来する抗原の組み合わせは、単一のワクチンについて多数の病原に対する免疫を惹起するのに、都合よく使用され得る。例えば、特に好ましい組み合わせは、細菌毒素に由来する非毒性の変異体キャリア(例えば、CRM197として知られるジフテリア毒素の非毒性変異体)に結合体化したMenCおよびHib由来の細菌表面オリゴヌクレオチドサッカライドの組み合わせである。この結合体は、細菌の髄膜炎を防止するために有用であり、そして国際公開第WO96/14086、1996年5月17日公開に記載されている。
【0064】
さらに、本明細書に記載される方法は、種々の悪性癌を処置するための手段を提供する。例えば、本発明のシステムは、問題の癌(例えば、活性化癌遺伝子、胎児抗原、または活性化マーカー)に特異的である特定のタンパク質に対する体液性および細胞媒介性の免疫応答の両方を増強するために使用され得る。このような腫瘍抗原には、とりわけ、任意の種々のMAGE(黒色腫結合抗原E)(MAGE1、2、3、4、など(Boon,T. Scientific American(1993年3月):82−89));任意の種々のチロシナーゼ;MART1(T細胞によって認識される黒色腫抗原)、変異体ras;変異体p53;p97黒色腫抗原;CEA(癌胎児性抗原)が含まれる。
【0065】
本発明が、広範な種々の抗原に対する免疫応答を増大させるために使用され得、したがって、多数の疾患を処置または予防するために使用され得ることは容易に明らかである。
【0066】
広範な種々のタンパク質由来の粒子を形成するための方法および適切な条件は、当該分野で公知である。例えば、懸濁液架橋プロセスにおいて、タンパク質の溶液は、混合し得ない液体または油相に添加される。そのタンパク質は、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン(メチルエチルケトン、アセトンなど)、グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、またはアミド溶媒(例えば、アセトアミド)のような適切な溶媒(5%から約90%までの間の水を含む)中に溶解される。沈降剤は、タンパク質溶液にタンパク質粒子を形成するために添加される。鉱油、シリコーン油、または植物油のような油;炭化水素(ヘキサン、へプタン、ドデカン、および高沸点石油エーテル);およびコアセルベーション剤(例えば、アセトン、エタノール、イソプロパノールなど)は、沈降剤として有用である。タンパク質粒子は、高速攪拌によって分散され、そして安定化処理(例えば、熱処理または化学架橋剤での処理による)を使用して安定化される。特に、安定化は、約30℃〜約150℃の温度、好ましくは、約35℃〜約120℃、より好ましくは、約40℃〜約100℃への懸濁液の過熱によって達成される。あるいは、そのタンパク質粒子は、化学架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド、ブタジオンなど)での処理によって安定化される。例えば、WO96/10992;Polymers in Controlled Drug Delivery、Illum,L.およびDavis、S.S.編(Wright、1987)第三章、25頁;Torrado,J.J.ら、International Journal of Pharmaceutics(1989)51:85−93;Chen,G.Q.ら、Journal of Microencapsulation,(1994)11(4);395−407を参照のこと。
【0067】
特に、タンパク質の水溶液は、好ましくは、約0.1〜約20%のタンパク質溶液、より好ましくは、約0.5〜約10%、そしてさらにより好ましくは、約1〜約5%のタンパク質溶液が、pHが約1〜約6、好ましくは、約1.5〜約5、より好ましくは、約2〜約4になるまで、酸により処理され、ここで、その酸には、酢酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、塩酸、乳酸などが含まれるがこれらに限定されない。その溶液は、高速で攪拌され、好ましくは、約1,000〜約25,000rpm、より好ましくは、約2,000〜約15,000、さらにより好ましくは、約5,000〜約10,000rpmで、約1分〜約60分間、好ましくは、約5〜約45分、より好ましくは、約10〜約30分間、攪拌される。コアセルベーション剤は、攪拌溶液に添加されて、タンパク質粒子を形成し、そしてその混合物は、約1分〜約60分間、好ましくは、約5〜約45分間、より好ましくは、約10〜約30分間攪拌される。コアセルベーション剤には、アセトン、エタノール、イソプロパノールなどが含まれるが、これらに限定されない。そのコアセルベーション剤は、必要に応じて、蒸発され、そしてそのタンパク質粒子は、その混合物を約30〜約70℃、好ましくは、約35〜約65℃、より好ましくは、約40〜約60℃に、約1分間〜約60分間、好ましくは、約5〜約45分間、より好ましくは、約10分〜約30分間、約1,000〜約25,000rpmで、より好ましくは、約2,000〜約15,000rpmで、さらにより好ましくは、約5,000〜約10,000rpmで攪拌しながら、加熱することによって安定化される。そのタンパク質粒子は、例えば、Malvern Master整粒器において整粒される。
【0068】
代替のプロセスにおいて、そのタンパク質の水溶液は、上記のように、沈殿剤(例えば、鉱油、シリコーン油、または植物油、および/または炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、ドデカン、および高沸点石油エーテル))に添加される。そのエマルジョンは、高速、好ましくは、約1,000〜約25,00rpm、より好ましくは、約2,000〜約15,000、さらにより好ましくは、約5,000〜約10,000rpmで、約1分間〜約60分間、好ましくは、約5分間〜約45分間、より好ましくは、約10分間〜約30分間、攪拌される。その混合物は、約30℃〜約70℃、より好ましくは、約35℃〜約65℃、より好ましくは、約40℃〜約60℃で、約1分間〜約60分間、好ましくは、約5分間〜約45分間、より好ましくは、約10分間〜約30分間、約1,000〜約25,000rpm、より好ましくは、約2,000rpm〜約15,000、さらにより好ましくは、約5,000〜約10,000rpmで攪拌しながら加熱されて、そのタンパク質粒子を安定化する。その混合物を遠心分離し、そしてそのタンパク質を回収する。そのタンパク質粒子を、例えば、Malvern Master整粒器で整粒する。
【0069】
一旦得られると、本発明のタンパク質粒子は、アジュバントおよび/または選択された二次抗原を必要に応じて含む免疫原性組成物またはワクチン組成物に組み込まれ得る。そのアジュバントおよび/または二次抗原は、そのタンパク質粒子組成物の投与と同時に、その直前に、またはそれに引き続いてのいずれかで、別々に投与され得る。そのワクチン組成物は、感染の処置および/または予防の両方のために使用され得る。さらに、タンパク質粒子を含有する本発明の処方物は、インビボで産生された選択された二次抗原の活性を増強させるために、すなわち、DNA免疫化と組み合わせて、使用され得る。
【0070】
タンパク質粒子抗原は、1つ以上の選択された病原体に対して、またはそれ由来するサブユニット抗原に対して、脊椎動物被験体を免疫するための、あるいは1つまたはいくつかの抗原に対する免疫応答をプライムするための組成物において使用され得る。タンパク質粒子抗原とともに二次抗原として投与され得る抗原には、タンパク質、ポリペプチド、抗原性タンパク質フラグメント、オリゴサッカライド、多糖などが含まれる。同様に、所望の抗原をコードするオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、インビボ発現のためのタンパク質粒子抗原とともに投与され得る。
【0071】
上記に説明したように、タンパク質粒子処方物は、目的の二次抗原を含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば、そのタンパク質粒子は、適切なタンパク質および抗原の組み合わせから形成され得るか、またはその抗原は、同じかまたは異なる部位でタンパク質粒子組成物とは別々に投与され得る。いずれにしても、1つ以上の選択された抗原は、免疫応答がそれが投与される個体において生成され得るように、「治療有効量]で投与される。必要な正確な量は、とりわけ処置されるべき被験体;処置されるべき被験体の年齢および一般的状態;抗体を合成する、および/または細胞媒介免疫応答を上げるその被験体の免疫系の能力;所望の保護の程度;処置されるべき状態の重篤度;選択された特定の抗原およびその投与の態様のような要因に依存して変化する。適切な有効量は、当業者により容易に決定され得る。したがって、「治療有効量」は、慣用的な試験によって決定され得る相対的に広い範囲に入る。一般に、抗原の「治療有効」量は、約0.1μg〜約1000μg、より好ましくは、約1μg〜約100μgのオーダーの量である。
【0072】
同様に、そのタンパク質粒子抗原は、二次抗原が上記のように規定された「増強された免疫原性」を提示する量で存在する。増強された免疫応答を惹起するために有効である量は、当業者により容易に決定され得る。
【0073】
その組成物は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどのような1つ以上の「薬学的に受容可能な賦形剤またはビヒクル」をさらに含有し得る。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤)、生物学的緩衝液などは、このよなビヒクルに存在し得る。生物学的緩衝液は、薬理学的に受容可能であり、そして所望のpH(すなわち、生理学的範囲のpH)を有するアジュバント処方物を提供する実質的に任意の溶液であり得る。緩衝液の例には、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、Tris緩衝化生理食塩水、Hanks緩衝化生理食塩水、増殖培地(例えば、イーグルの最小必須培地(「MEM」)など)が含まれる。
【0074】
二次抗原は、必要に応じてキャリアと結合される(例えば、その抗原は、キャリア内に、またはキャリアに結合してカプセル化され得る)。ここで、そのキャリアは、それ自体、その組成物を受けている個体に対して有害な抗体の産生を誘導しない分子である。適切なキャリアは、代表的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)、ポリマー粒子キャリア、不活性ウイルス粒子などのような大きなゆっくりと代謝される高分子である。さらに、これらのキャリアは、さらなる免疫刺激剤として機能し得る。さらに、その抗原は、細菌毒素(例えば、ジフテリア、破傷風、コレラなど)に結合体化され得る。ポリマー粒子キャリアには、滅菌可能な、非毒性の、かつ生分解性の材料から形成される粒子キャリアが含まれる。このような材料には、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトンン、ポリオルトエステル、およびポリ無水物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明との使用のための微小粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、特に、ポリ(ラクチド)(「PLA」)、またはD,L−ラクチドおよびグリコライドまたはグリコール酸のコポリマー(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(「PLG」または「PLGA」)、またはD,L−ラクチドおよびカプロラクトンのコポリマーから誘導される。微小粒子は、種々の分子量を有し、そしてPLGのようなコポリマーの場合には、種々のラクチド:グリコリド比を有する任意の種々のポリマー性出発物質から誘導され得、その選択は、同時に投与される二次抗原に部分的に依存する選択事項である。(本明細書において使用される粒子性キャリアのさらなる議論については、共願による米国特許出願第09/124,533号(1998年7月29日出願を参照のこと)。
【0075】
アジュバント/二次抗原は、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれかにより、タンパク質粒子の表面に結合体化され得る(例えば、Bioconjugate Techniques,Greg,T.Hermanson編、ACADEMIN PRESS,NEW YORK、1996を参照のこと)。例えば、タンパク質間(すなわち、タンパク質粒子−二次抗原)結合体化は、標準的なプロトコルを使用しての結合のためにスルホ−SMCCリンカー(スルホスクシンイミジルエステル)を使用して行われ得る。
【0076】
アジュバントはまた、薬学的組成物の効力を増強するために使用され得る。このようなアジュバントには、以下が含まれるが、これらに限定されない:(1)アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど);(2)水中油エマルジョン処方物(ムラミルペプチド(以下を参照のこと)または細菌細胞壁成分のような他の特異的免疫刺激剤を含むかまたは含まない)(例えば、(a)マイクロフルイダイザー(例えば、モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidecs,Newton,MA)を使用する1ミクロン未満の粒子に処方された5% スクアレン、0.5% Tween80、および0.5% Span85(必要に応じて、種々の量のMTP−PE(以下を参照のこと)を含有するが、必ずしも必要ではない。)を含有するMF59(国際公開第WO90/14837)、(b)1ミクロン未満のエマルジョンにマイクロフルイダイズしたか、またはより大きな粒径のエマルジョンを生成するためにボルテックスされるかのいずれかで、10%スクアラン、0.4% Tween80、5% プルロニックボロックポリマーL121、およびthr−MDP(以下を参照のこと)を含有するSAF、ならびに(c)2%スクアラン、0.2%Tween80、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM)からなる群から選択されるおよび1つ以上の細菌細胞壁成分を含有するRibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immmunochem,Hamilton,MT)(本明細書において使用される適切な1ミクロン未満の水中油エマルジョンのさらなる議論については、国際公開WO99/30739(1999年6月24日公開)を参照のこと);(3)サポニンアジュバント(例えば、StimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA)が使用され得るか、またはそれから生成される粒子(例えば、ISCOM(免疫刺激複合体);(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン(インターロイキン(IL−1、IL−2など)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)など;(6)細菌ADPリボシル化トキシン(例えば、コレラ毒素(CT)、百日咳(PT)、またはE.coli熱不安定性トキシン(LT)(特にLT−K63)(ここで、63位の野生型アミノ酸はリジンは置換されている。)、LT−R72(ここで、72位の野生型アミノ酸は、アルギニンで置換されている。)、CpGファミリーの分子に由来するアジュバントであるCT−S109(ここで、109位の野生型アミノ酸は、セリンで置換されている。)、CpGモチーフを含むCpGジヌクレオチドおよび合成オリゴヌクレオチド(例えば、Kriegら、Nature、374:546(1995)およびDavisら、J.Immunol.,160:870−876(1998)を参照のこと)、およびPT−K9/G129(ここで、9位の野生型アミノ酸は、リジンで、129位はグリシンで置換されている)(例えば、国際公開WO93・13202およびWO92・19265を参照のこと)の解毒化変異体;ならびに(7)その組成物の効力を増強するための免疫刺激剤として作用する他の物質。
【0077】
ムラミルペプチドとしては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタメート(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホルリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)など。
【0078】
一旦処方されると、本発明の組成物は、非経口的に投与される(例えば、注射)。この組成物は、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内のいずれかで注射され得る。他の投与形態としては、経口および肺の投与、坐剤、粘膜塗布および桂皮適用が挙げられる。投薬処置としては、単回投与スケジュールまたは多数回投与スケジュールであり得る。多数回投与スケジュールは、ワクチン接種の最初の経過が1〜10回の別個の投与であり得、続いて次の時間間隔で他の投与量が与えられ、免疫応答を維持および/または強化するように選択され得(例えば、第二の用量について1〜4ヵ月)、そして必要である場合数ヵ月後に次の用量が与えられ得るスケジュールである。投与レジメンはまた、少なくとも部分的に、被験体の必要によって判定され、そして実施者の判断に依存する。さらに、疾患の予防が所望されるとき、そのワクチンは、概して、目的の病原因子への初回感染の前に投与される。処置(例えば、症状または再発の減少)が所望されるとき、そのワクチンは、概して、初回感染の後に投与される。
【実施例】
【0079】
C.実験
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、例示の目的でのみ提供され、そしていかなる様式においても、本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0080】
使用される数値に関する正確さを保障する努力を行った(例えば、量、温度)が、いくつかの実験誤差および偏差は、当然、許容されるべきである。
【0081】
(実施例1:スモールオボアルブミン(OVA)タンパク質粒子)
オボアルブミン(OVA、200mg)を、蒸留水(10ml)に溶解して、2%タンパク質溶液を形成した。乳酸(100μl)を、pHが約4.5〜5.0に低下するまでそのOVA溶液に加えた。その溶液を磁性スターラーで1500rpmで10分間にわたり攪拌した。アセトン(25ml)をこの攪拌溶液に加え、そしてその混合物を10分間にわたり攪拌させた。この混合物を、5000rpmで攪拌しながら30分間で70℃加熱して、タンパク質粒子を安定化させた。ついで、このタンパク質粒子をMalvern Masterサイザー(sizer)で将来の使用のためにサイズ調整した(そのタンパク質粒子は、約250nmであった)。
【0082】
(実施例2:ラージオボアルブミン(OVA)タンパク質粒子の調製)
オボアルブミン(OVA,200mg)を、蒸留水(10ml)に溶解して、2%タンパク質溶液を形成させた。乳酸(100μl)を、pHが約4.5〜5.0に低下するまでOVA溶液に加えた。この溶液を、500rpmで10分間にわたって磁性スターラーで攪拌した。アセトン(25ml)をこの攪拌溶液に加え、そしてこの混合物を10分間攪拌させた。この混合物を70℃に加熱し、そして30分間にわたり500rpmで攪拌して、タンパク質粒子を安定化させた。そのタンパク質粒子を凍結乾燥し、ついでMalvern Masterサイザー中でサイズ処理し、そしてデシケーター中で将来の使用のために保存した(そのタンパク質粒子は約2.5μmであった)。
【0083】
(実施例3:スモールgB2タンパク質粒子の調製)
HSVgB2抗原(4.2mg)を蒸留水中で溶解し(2ml)、そしてその溶液を磁性スターラーで1500rpmで攪拌した。アセトン(2.5ml)を攪拌溶液に加え、そしてその混合物を20分間攪拌させた。ついで、その混合物を70℃に加熱し、そして25分間にわたり攪拌させてそのタンパク質粒子を安定化させた。この混合物を30,000×gで遠心分離し、そしてそのタンパク質粒子を収集した。そのタンパク質粒子を凍結乾燥し、ついでMalvern Masterサイザーで将来の使用のためにサイズ処理した(そのタンパク質粒子は、約350nmであった)。
【0084】
(実施例4:ラージgB2タンパク質粒子の調製)
HSVgB2抗原(4.2mg)を蒸留水(2ml)中に溶解し、そしてその溶液を磁性スターラーで750rpmで攪拌した。アセトン(2.5ml)を攪拌溶液に加え、そしてその混合物を20分間にわたり攪拌した。ついで、この混合物を、70℃に加熱し、そして25分間にわたり攪拌させてそのタンパク質を安定化させた。この混合物を30,000×gで遠心分離し、そしてそのタンパク質粒子を収集した。このタンパク質粒子を凍結乾燥し、ついで、Malvern Masterサイザーで将来の使用のためにサイズ処理した(そのタンパク質粒子は約5μmであった)。
【0085】
(実施例5:PLGタンパク質粒子の調製)
PLG(ポリ(ラクチド−コ−グリコリド))タンパク質粒子をポリビニルアルコール(PVA)を用いて以下のように作製した。使用した溶液:
(1)ジクロロメタン中の6% RG 503 PLG(Boehringer Ingelheim)
(2)水中の8%ポリビニルアルコール(PVA)(ICN)。
【0086】
特に、そのタンパク質粒子を、10mlのポリマー溶液を40mlのPVA溶液と併せること、および3分間にわたり、Omniベンチトップホモジナイザーで10mmプローブを用いて10Krpmで使用して、ホモジナイズすることによって作製した。そのエマルジョンを一晩溶媒エバポレーションのために攪拌させた。形成したタンパク質粒子を水を用いて4回遠心分離により洗浄し、そして凍結乾燥した。ついで、そのタンパク質をMalvern Masterサイザー中で将来の使用のためにサイズ処理した。
【0087】
(実施例6:溶媒エバポレーション技術を用いたPLG OVA−捕捉タンパク質粒子の調製)
15mlガラス試験管中に1mlの10mg/mlのOVAおよび20mlの5%w;wPLG(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド)を、ジクロロメタン中に、50:50モル比のラクチド:グリコリド(MW平均=70〜100kDa)(Medisorb Technologies International)に入れた。この溶液を、ハンドヘルドホモジナイザーを用いて2分間にわたりホモジナイズした。このホモジネートを80mlの10%ポリビニルアルコール(PVA)(12〜23kDa)に100mlガラスビーカー中に加えた。これを2分間にわたり10,000rpmで、20mmの直径の発電機を備えたベンチスケールのホモジナイザーを用いてホモジナイズした。この溶液を、その溶媒がエバポレートされるまで磁性スターラーバーを用いて室温で中程度の速度で攪拌した。タンパク質粒子を水中に再懸濁し、そして水で何回か洗浄し、遠心分離機を用いて洗浄の間にタンパク質粒子をペレット化した。タンパク質粒子を乾燥剤(Dririte CaSO4)の存在下で減圧下で乾燥させた。平均の容積サイズを、レーザー拡散測定により0.9μmであると決定した。タンパク質粒子のタンパク質含量は、0.8%w:wであるとアミノ酸組成分析により判定した。
【0088】
(実施例7:オボアルブミンの免疫原性(OVA)タンパク質粒子
上記のように生成した、オボアルブミン、PLG/OVAタンパク質粒子、スモールOVAタンパク質粒子(250nm)およびラージOVAタンパク質粒子(2500nm)をマウスに皮下投与した(用量=10μg)。この動物を1Mおよび28日間でブーストした。血清を、最後の免疫の後2週間で収集し、そしてCTL活性を以下に記載されるようにアッセイした:Doe et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93:8578−8583。
【0089】
リンパ球培養物を以下のように調製した。免疫したマウスからの脾臓細胞(sc)を、1ウェルあたり5×106細胞で24ウェルのディッシュで培養した。これらの細胞のうち、1×106を、EG7(オボアルブミンをトランスフェクトしたEL4)およびEL4タンパク質からの合成エピトープペプチドに、37℃で1時間10μMの濃度で感作させ、洗浄し、そして培養培地の2ml(熱非働化ウシ胎仔血清、5×10-5M 2メルカプトエタノール、抗生物質および5%インターロイキン−2(Rat T−Stim、Collaborative Biomedical Products、Bedford、MA)を補充した[50% RPMI 1640および50% α−MEM(GIBCO)])中に残りの4×106の未処理のscをとともに同時培養した。細胞に、3日目および5日目に1mlの新鮮な培養培地を与え、そして細胞傷害性を6日目にアッセイした。
【0090】
細胞傷害性細胞アッセイを、以下のとおり実施した。51Cr放出アッセイにおいて用いられたEG7(オボアルブミンでトランスフェクトしたEL4)およびEL4の標的細胞は、クラスI MHC分子は発現するがクラスII MHC分子は発現しない。約1×106の標的細胞を、50μCi(1Ci=37GBq)の51Crおよび合成オボアルブミンペプチド(1μm)を含む200μlの培地中で、60分間にわたりインキュベートし、そして3回洗浄した。エフェクター(E)細胞を、5×103標的(T)細胞とともに、96ウェルの丸底組織培養プレート中で4時間、種々のE/T比で200μlの培養培地中で培養した。二連のウェルの平均cpmを使用して、51Crの%比放出を算出した。
【0091】
図1に示されるように、スモールOVAタンパク質およびラージOVAタンパク質の粒子は、CTL応答を惹起し、そしてスモールOVAタンパク質粒子は、ラージOVAタンパク質粒子に匹敵する活性を有した。両方の型のOVAタンパク質粒子は、PLG/OVAタンパク質粒子およびオボアルブミンの単独の処方物よりもより活性であった。
【0092】
(実施例8:溶媒エバポレーション技術を用いたPLG gB2捕捉タンパク質粒子の調製)
15mlのガラス試験管中に、0.5mlの5mg/ml gB2および5ml 6%w:wPLG((poly D、L−ラクチド−コ−グリコリド)を、ジクロロメタン中に、50:50モル比のラクチド対グリコリドで、MW平均=70−100kDa(Medisorb Technologies International)で入れた。この溶液を、2分間にわたり、ハンドヘルドホモジナイザーを用いて高いrpmでホモジナイズした。このホモジネートを、100mlのガラスビーカー中の20mlの8%ポリビニルアルコール(PVA)(12−23kDa)へと加えた。この混合物を、2分間にわたり、10,000rpmで、20mm直径の発電機を備えたベンチスケールのホモジナイザーを用いてホモジナイズした。この溶液を、中程度の速度で、磁性スターラーバーを用いて室温で、溶媒がエバポレートされるまで攪拌した。タンパク質粒子を、水中に再懸濁し、そして何回か水で洗浄し、遠心分離機を用いて、洗浄の間にタンパク質粒子をペレット化した。タンパク質粒子を、(Dririte CaSO4)の存在下で減圧下で乾燥させた。平均の容積サイズを、レーザー拡散測定により0.9μmであると決定した。タンパク質粒子のタンパク質含量は、0.5%w:wであるとアミノ酸組成分析により判定した。
【0093】
(実施例9:Gb2タンパク質粒子の免疫原性)
上記のように生成したgB2タンパク質粒子、PLG gB2捕捉タンパク質粒子、ならびに随伴するタンパク質粒子なし(陰性コントロール)およびワクシニアgag−polコントロールなし(陽性コントロール)のgB2単独を、マウスに皮下投与した(用量=5μg)。動物を、7日目および14日目でブーストした。血清を最後の免疫の後2週間で収集し、そしてCTL活性を、以下に記載されるようにアッセイした:Doe et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93:8578−8583。
【0094】
リンパ球培養物を以下のように調製した。免疫したマウスからの脾臓細胞(sc)を、1ウェルあたり5×106細胞で24ウェルのディッシュで培養した。これらの細胞のうち、1×106を、HIV−1SF2タンパク質からの合成エピトープペプチドに、37℃で1時間10μMの濃度で感作させ、洗浄し、そして培養培地の2ml(熱非働化ウシ胎仔血清、5×10-5M 2メルカプトエタノール、抗生物質および5%インターロイキン−2(Rat T−Stim,Collaborative Biomedical Products、Bedford、MA)を補充した[50% RPMI 1640および50% α−MEM(GIBCO)])中に残りの4×106の未処理のscをとともに同時培養した。細胞に、3日目および5日目に1mlの新鮮な培養培地を与え、そして細胞傷害性を6日目にアッセイした。
【0095】
細胞傷害性細胞アッセイを以下のとおりに行った:51Cr放出アッセイにおいて使用されたSvBALB(H−2d)(SvB)およびMC57(H−2b)標的細胞は、クラスI MHC分子は発現するがクラスII MHC分子は発現しない。約1×106の標的細胞を、50μCi(1Ci=37Gbq)の51Crおよび合成HIV−1ペプチド(1mM)を含む200μlの培地中で、60分間にわたりインキュベートし、そして3回洗浄した。エフェクター(E)細胞を、5×103標的(T)細胞とともに、96ウェルの丸底組織培養プレート中で4時間、種々のE/T比で200μlの培養培地中で培養した。二連のウェルの平均cpmを使用して、51Crの%比放出を算出した。
【0096】
図2に示されるように、gB2タンパク質の粒子は、沸くシニアコントロールよりも活性ではなく、PLG/gB2タンパク質粒子およびgB2の単独の処方物よりもより活性であった。
【0097】
従って、新規タンパク質粒子抗原の組成物およびこれらを作製するための方法が開示される。本発明の好ましい実施形態がいくらか詳細に記載されているが、明らかな改変が添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116796(P2011−116796A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−63393(P2011−63393)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2001−529742(P2001−529742)の分割
【原出願日】平成12年10月10日(2000.10.10)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】