説明

タンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤

【課題】優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有し、かつ安全性の高いタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤の提供。
【解決手段】クルミ科に属する常緑高木植物である黄杞葉からの抽出物及び/又は熱帯アジア原産のスイレン科ハス属に属する多年性水生植物であるハス胚芽からの抽出物を有効成分として含有させるタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物に由来する成分を含有するタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の加齢に伴う老化や光老化との関係で、角層カルボニル化タンパク質の研究が盛んに行われている。カルボニル化タンパク質としては、一般に、タンパク質におけるLys、Arg、Proといったアミノ酸残基のNH基が直接酸化されてカルボニル基となった結果生成されるものと、脂質が酸化して過酸化脂質、さらには分解して反応性の高いアルデヒドとなり、それがタンパク質と結合することで生成されるものとがある(特許文献1参照)。
【0003】
皮膚においては、タンパク質が直接的に酸化される場合、また皮膚表面の皮脂がフリーラジカルによって酸化し、過酸化脂質が生成されることでタンパク質の酸化は開始される場合があると考えられる。いったん過酸化脂質が生成されると、酸化は連鎖的に進行し、肌表面に刺激を与えるだけにとどまらず、角質層の奥まで入り込んで細胞にダメージを与える。
【0004】
また、皮膚の最表層である角層は角質細胞からなり、その85%がタンパク質であるケラチンから構成されている。近年、このケラチンが、日常的に皮膚が受ける酸化的ストレス(紫外線、タバコの煙)等によってカルボニル化されることが知られている(非特許文献1参照)。通常、ケラチンは水分子を多く取り込んでいるが、カルボニル化されることによって水分子を排除してしまい、カルボニル化された後のケラチンは水分子を取り込むことができなくなり、さらに、このことが皮膚を乾燥させ、皮膚の外観を損なうことが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
このように角層中のカルボニル化タンパク質が増加することによって、肌の透明性・保水性が失われるとともに(特許文献3参照)、肌の柔軟性・弾力性が失われてしまうことが知られている(特許文献4参照)。
【0006】
このようにして、皮脂、皮膚タンパク質のカルボニル化は、潤い、張り、明るさ等を維持することのできる、肌本来が有する機能をことごとく低下させると考えられ、外界の影響による角層タンパク質のカルボニル化が、肌の透明感の低下の一因と考えられている(非特許文献2参照)。
【0007】
したがって、表皮の角層タンパク質のカルボニル化を予防したり、そのカルボニル化度を低減させたりすることが、肌の透明感の向上に必要とされる。すなわち、タンパク質のカルボニル化を抑制することは、角質細胞の保水性の向上や、肌の透明感の向上に有用であると考えられる。
【0008】
また、加齢に伴い、カルボニル化タンパク質等の異常タンパク質が増加し、その異常タンパク質の生体内における蓄積が、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体病、トリプレットリピート病、筋萎縮性側索硬化症、白内障、動脈硬化、糖尿病性腎症等の多くの疾患に関与していることが知られている(特許文献5)。したがって、タンパク質のカルボニル化を防止・抑制することで、カルボニル化タンパク質に起因する疾患の予防、治療又は改善に有用であると考えられる。
【0009】
このように、肌の透明感を向上すること、タンパク質のカルボニル化を抑制することのできる物質は、非常に有用であることが考えられる。しかしながら、現在までのところ、かかる作用を有し、かつ安全性が高く、皮膚外用剤、美容用飲食品、研究用試薬等の成分として広く利用可能な優れた物質は、未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−340935号公報
【特許文献2】特開2004−107269号公報
【特許文献3】特開2005−249672号公報
【特許文献4】特開2006−349372号公報
【特許文献5】特許第4255432号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jens J. Thiele et al., THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY, Vol.113, No.3, 1999年, p.335, 339
【非特許文献2】Ichiro Iwai et al., J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn., Vol.42, No.1, 2008年, p.16-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、第1に、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有し、かつ安全性の高いタンパク質のカルボニル化抑制剤を提供することを目的とする。また、本発明は、第2に、優れた肌の透明感向上作用を有し、かつ安全性の高い肌の透明感向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤は、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有し、かつ安全性の高いタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤は、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物を有効成分として含有する。
【0016】
ここで、本実施形態において「抽出物」には、上記植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0017】
本実施形態において、黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物を製造するために使用する抽出原料は、黄杞(学名:Engelhardtia chrysolepis Hance)及びハス(学名:Nelumbo nucifera Gaertn.)である。
【0018】
黄杞(Engelhardtia chrysolepis Hance)は、クルミ科に属する常緑高木植物である。黄杞は古来より甘茶の一種として飲用されており、安全性の高い植物である。黄杞は、中国の南部から台湾にわたる地域で自生しており、これらの地域から容易に入手可能である。抽出原料として使用し得る黄杞の構成部位としては、枝部、葉部、枝葉部等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0019】
ハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)は、熱帯アジア原産のスイレン科ハス属に属する多年性水生植物である。ハスはわが国では地下茎の部分が蓮根として食されており、安全性の高い植物である。ハスは、ヨーロッパ東南部、オーストラリア北部、アジア東部などに分布しており、また池や水田、堀等に栽培され、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用するハスの構成部位は、胚芽である。ハス胚芽とは、ハスの種子の中にある緑色で棒状の胚芽のことである。
【0020】
黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物のそれぞれに含有されるタンパク質のカルボニル化抑制作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、上記植物からこの作用を有する抽出物を得ることができる。
【0021】
例えば、上記植物を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、タンパク質のカルボニル化抑制作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0022】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0023】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0024】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0025】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0026】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0027】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでもタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0028】
上記のようにして得られる抽出物は、特有の匂いと味とを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚外用剤、美容用飲食品等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0029】
以上のようにして得られる黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物は、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有しているため、この作用を利用して、タンパク質のカルボニル化抑制剤の有効成分として使用することができる。また、黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物は、そのタンパク質のカルボニル化抑制作用を通じて、肌の透明感を向上させることができるため、肌の透明感向上剤の有効成分としても使用することができる。
【0030】
さらに、生体内のタンパク質がカルボニル化することでカルボニル化タンパク質が生成され、当該カルボニル化タンパク質が生体内に蓄積されると、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体病、トリプレットリピート病、筋萎縮性側索硬化症、白内障、動脈硬化、糖尿病性腎症等の疾患が発症すると考えられている。そのため、黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物が有する優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を利用して、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物をタンパク質のカルボニル化に起因する上記疾患の予防・治療剤の有効成分として使用することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物のうちのいずれか一方を上記有効成分として用いてもよいし、両者を混合して上記有効成分として用いてもよい。黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、これらの抽出物が有するタンパク質のカルボニル化抑制作用の程度等により適宜調整すればよい。
【0032】
本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤は、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物のみからなるものでもよいし、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物を製剤化したものでもよい。
【0033】
本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤における黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0034】
黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物は、他の組成物(例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0035】
なお、本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤は、必要に応じて、タンパク質のカルボニル化抑制作用を有する他の天然抽出物等を、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0036】
本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
【0037】
また、本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤又は肌の透明感向上剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0038】
本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤は、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物が有するタンパク質のカルボニル化抑制作用を通じて、角層タンパク質のカルボニル化を抑制することができ、これにより、肌のくすみ等、肌の透明感の低下を抑制して美肌効果を得ることができる。また、本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤は、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物が有するタンパク質のカルボニル化抑制作用を通じて、タンパク質のカルボニル化に起因する疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体病、トリプレットリピート病、筋萎縮性側索硬化症、白内障、動脈硬化、糖尿病性腎症等)を予防・治療することができる。ただし、本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤は、これらの用途以外にもタンパク質のカルボニル化抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0039】
本実施形態の肌の透明感向上剤は、黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物が有するタンパク質のカルボニル化抑制作用を通じて、角層タンパク質のカルボニル化を抑制することができ、これにより、肌の透明感を向上させることができる。ただし、本実施形態の肌の透明感向上剤は、これらの用途以外にもタンパク質のカルボニル化抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0040】
なお、本実施形態の肌の透明感向上剤、及びタンパク質のカルボニル化抑制剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル等)に対して適用することもできる。
【0041】
本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤は、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、例えば、皮膚外用剤に配合するのに好適である。
【0042】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0043】
また、本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤は、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有するとともに、経口的に摂取した場合の安全性にも優れているため、例えば、美容用飲食品に配合するのに好適である。ここで、美容用飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0044】
さらに、本実施形態のタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤は、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有するので、タンパク質のカルボニル化に関連する疾患の研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【実施例】
【0045】
以下、試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例に何ら限定されるものではない。なお、本試験例においては、黄杞葉からの抽出物として黄杞葉エキスパウダー(丸善製薬社製,試料1)を、またハス胚芽からの抽出物としてハス胚芽エキスパウダー(丸善製薬社製,試料2)を使用した。
【0046】
〔試験例1〕角層タンパク質のカルボニル化抑制作用試験
上記黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物(試料1及び試料2)について、下記の方法により、角層タンパク質のカルボニル化抑制作用を試験した。
【0047】
頬部粘着テープ(製品名:角質チェッカー,アサヒバイオメッド社製)を上腕内側部に押し付けて角層(角質細胞)を採取した。上記試料(試料1及び試料2)を50容量%エタノール水溶液に溶解させた溶液0.02mLを20μmol/L次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬社製)水溶液0.98mLに添加した試料溶液(試料濃度は下記表1を参照)に、37℃で、16時間当該粘着テープを浸漬して、角層タンパク質のカルボニル化処理をし、カルボニル化レベルを以下の方法で評価した。
【0048】
0.1mol/Lの2-morpholinoethane sulfonic acid-Na(pH5.5)緩衝溶液で20μmol/Lの濃度になるように調整した蛍光ヒドラジド(fluorescein-5-thiosemicarbazide,AnaSpec社製)に上記粘着テープを浸漬させて、カルボニル化処理によりカルボニル化された角層タンパク質の当該カルボニル基をラベル化した。
【0049】
上記粘着テープを撮像し(撮影装置:蛍光顕微鏡オリンパスIX71,オリンパス社製)、得られた観察画像を解析して(解析ソフト:ImageJ,National Institute of Health社製)、角層面積あたりの蛍光輝度をカルボニル化レベルとした。また、コントロールとして、試料を添加していない20μmol/L次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬社製)水溶液に上記粘着テープを浸漬し、角層タンパク質をカルボニル化処理したものについて、同様に試験した。
【0050】
得られた結果から、下記式により角層タンパク質のカルボニル化抑制率(%)を算出した。
カルボニル化抑制率(%)={(A−B)/(A−C)}×100
式中、Aは「次亜塩素酸ナトリウム添加、試料無添加時の蛍光輝度」を表し、Bは「次亜塩素酸ナトリウム添加、試料添加時の蛍光輝度」を表し、Cは「次亜塩素酸ナトリウム無添加、試料無添加時の蛍光輝度」を表す。
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、上記黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物(試料1及び試料2)は角層タンパク質のカルボニル化抑制作用を有することが判明し、上記黄杞葉からの抽出物及びハス胚芽からの抽出物(試料1及び試料2)が肌の透明感向上作用を有することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のタンパク質のカルボニル化抑制剤及び肌の透明感向上剤は、優れたタンパク質のカルボニル化抑制作用を有し、かつ安全性にも優れるため、皮膚外用剤又は美容用飲食品の配合成分、研究用試薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするタンパク質のカルボニル化抑制剤。
【請求項2】
黄杞葉からの抽出物及び/又はハス胚芽からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする肌の透明感向上剤。

【公開番号】特開2012−41276(P2012−41276A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181064(P2010−181064)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】