説明

タンパク質の処方

【課題】貯蔵および輸送において安定な凍結乾燥タンパク質処方を提供することが本発明の目的である。
【解決手段】本発明は安定な凍結乾燥タンパク質処方はリオプロテクタント(好ましくはスクロースまたはトレハロースのような糖)を用いて調製され得るという発見に基づくが、該凍結乾燥処方はプレ凍結乾燥処方におけるタンパク質濃度より有意に高い(例えば約2-40倍高い、好ましくは3-10倍高いそして最も好ましくは3-6倍高い)タンパク質濃度を持つ安定な再構成処方を生ずるために再構成され得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結乾燥されたタンパク質の処方に向けられている。特に皮下投与に適した安定な再構成処方を生ずるために、希釈液を用いて再構成し得る安定な凍結乾燥タンパク質処方に関する。
【背景技術】
【0002】
関連開示の説明
ここ十年の間バイオテクノロジーの進歩は、組換えDNA法を用いて製薬学的応用に対する様々なタンパク質の生産を可能にしている。タンパク質は伝統的な有機製剤または無機製剤よりも大きく複雑なため(すなわち複雑な三次元構造に加えて複数の官能基を持っている)、該タンパク質の処方は固有の問題を提起する。タンパク質を生物学的に活性なままにするために、処方は少なくともタンパク質のアミノ酸のコア配列の構造的完全性をそのままに保ち、その一方で同時にタンパク質の複数の官能基を分解から保護しなければならない。タンパク質にとっての分解経路は、化学的な不安定性(すなわち結合形成によるタンパク質の修飾または新しい化学的物質を生ずる切断を含むいかなる工程)または物理的不安定性(すなわちタンパク質のより高次の構造の変化)を含み得る。化学的不安定性は脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離またはジスルフィド交換から生じ得る。物理的不安定性は例えば変性、凝集、沈降または吸着から生じ得る。三つの最も共通なタンパク質分解経路は、タンパク質の凝集、脱アミド化および酸化である。Cleland等,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377(1993)。
凍結乾燥は興味あるタンパク質調製物から水を除去するために用いるタンパク質の共通に用いられる保存法である。凍結乾燥は乾燥した物質を最初凍結させ、それから氷または凍結した溶媒を真空環境で昇華することによって除去する工程である。賦形剤は凍結乾燥工程の間安定性を促進しおよび/または貯蔵における凍結乾燥生産物の安定性を改善するためにプレ凍結乾燥処方に含まれ得る。Pikal,M.Biopharm.3(9)26-30(1990)およびArakawa等.Pharm.Res.8(3):285-291(1991)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Cleland等,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377(1993)
【非特許文献2】Pikal,M.Biopharm.3(9)26-30(1990)
【非特許文献3】Arakawa等.Pharm.Res.8(3):285-291(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯蔵および輸送において安定な凍結乾燥タンパク質処方を提供することが本発明の目的である。皮下投与に適した安定な再構成タンパク質処方を提供することが本発明のさらなる目的である。ある実施態様においては、少なくとも患者に投与される一定期間安定な複数回使用処方を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は安定な凍結乾燥タンパク質処方はリオプロテクタント(好ましくはスクロースまたはトレハロースのような糖)を用いて調製され得るという発見に基づくが、該凍結乾燥処方はプレ凍結乾燥処方におけるタンパク質濃度より有意に高い(例えば約2-40倍高い、好ましくは3-10倍高いそして最も好ましくは3-6倍高い)タンパク質濃度を持つ安定な再構成処方を生ずるために再構成され得るものである。特にプレ凍結乾燥処方におけるタンパク質濃度は5mg/mL以下であろうが、再構成処方におけるタンパク質濃度は一般的に50mg/mL以上である。再構成処方における該高タンパク質濃度は、処方が皮下投与に向けられている場合特に有用であると考えられる。再構成処方においては大変高タンパク質濃度であるにもかかわらず、再構成処方は少なくとも約30日間2-8℃で安定である(すなわちタンパク質の化学的または物理的不安定性の有意な容認できないレベルを示さない)ことが見出されている。ある実施態様においては、再構成処方は等張性である。再構成における該等張性処方を達成するために比較的低濃度のリオプロテクタントを使用するにもかかわらず、凍結乾燥処方におけるタンパク質は、凍結乾燥および貯蔵において物理的および化学的安定性と安全性を本質的に保持したままであることがここで発見された。
【0006】
防腐剤を含む希釈液(注射のための静菌水(BWFI)のような)を用いて再構成される場合、再構成処方は複数回使用処方として用いられ得る。該処方は例えば患者が慢性内科疾患を治療するためにタンパク質の頻繁な皮下投与を必要としている場合有用である。複数回使用処方の長所は患者に対する使用の容易性を促進し、バイアル内容物の全部の使用を可能にするために無駄を省き、複数投与量が一つのバイアルに詰め込まれるため製品に対する有意なコスト節約という結果になる(より低充填コストと低輸送コスト)ことである。
【0007】
ここで記述されている実験結果に基づき、一側面として本発明は、少なくとも約50mg/mLの量のタンパク質と希釈液を含む安定な等張性再構成処方を提供し、該再構成処方はタンパク質とリオプロテクタントの凍結乾燥混合物から調製され、再構成処方におけるタンパク質濃度は凍結乾燥前の混合物におけるタンパク質濃度より約2-40倍高い。
【0008】
もう一つの実施態様として、本発明は少なくとも約50mg/mLの量の抗体と希釈液を含む安定な等張性再構成処方を提供し、該再構成処方は抗体とリオプロテクタントの凍結乾燥混合物から調製され、再構成処方における抗体濃度は凍結乾燥前の混合物における抗体濃度より約2-40倍高い。
【0009】
前述のパラグラフの凍結乾燥処方におけるリオプロテクタント:タンパク質の割合は、例えば選択されるタンパク質とリオプロテクタントの両者に依存し、同様に望ましいタンパク質濃度および再構成処方の等張性に依存する。高タンパク質濃度等張性再構成処方を生ずるためのフルレングス抗体(タンパク質として)およびトレハロースまたはスクロース(リオプロテクタントとして)の場合には、割合は例えば約100-1500モルトレハロース:1モル抗体であろう。
【0010】
一般的にタンパク質およびリオプロテクタントのプレ凍結乾燥処方はさらに、処方におけるタンパク質に依存して適切なpHで処方を提供するバッファーを含むであろう。この目的のため、以下に示すようにリオプロテクタントの性質を持つヒスチジンバッファーの使用が望ましいことが見出されている。
【0011】
処方はさらに、再構成タンパク質の凝集を減少し、再構成処方における微粒子の形成を減少し得ることがここで観察されている界面活性剤(例えばポリソルベート)を含み得る。界面活性剤は必要であればプレ凍結乾燥処方、凍結乾燥処方および/または再構成処方(しかし好ましくはプレ凍結乾燥処方)に加えられ得る。
【0012】
本発明はさらに、再構成処方におけるタンパク質濃度が少なくとも50mg/mLであるような希釈液中のタンパク質およびリオプロテクタントの凍結乾燥混合物を再構成することを含む安定な等張性再構成処方の調製法を提供し、再構成処方におけるタンパク質濃度は凍結乾燥前混合物におけるタンパク質濃度より約2-40倍高い。
【0013】
またさらなる実施態様においては、本発明は(a)タンパク質およびリオプロテクタントの混合物を凍結乾燥することおよび(b)再構成処方が等張性で安定であり、少なくとも約50mg/mLのタンパク質濃度をもつような希釈液で(a)工程の凍結乾燥混合物を再構成することの各工程を含む処方の調製法を提供する。例えば再構成処方におけるタンパク質濃度は、約80mg/mLから約300mg/mLであろう。一般的に再構成処方におけるタンパク質濃度は、凍結乾燥の前の混合物におけるタンパク質濃度より約2-40倍高い。
【0014】
(a)タンパク質およびリオプロテクタントの凍結乾燥混合物を含む容器および(b)少なくとも約50mg/mLの再構成処方におけるタンパク質濃度にする希釈液を用いた凍結乾燥混合物を再構成する説明書を含む製造物もまたここで提供される。製造物はさらに、希釈液(例えば芳香族アルコールを含む注射のための静菌水(BWFI))を含む第二の容器を含むであろう。
【0015】
本発明はさらに、哺乳動物にここで開示される再構成処方の治療上の有効量を投与することを含む哺乳動物の治療法を提供し、ここで哺乳動物は処方におけるタンパク質を用いた治療を必要とする疾患を持っている。例えば処方は皮下に投与されるであろう。
【0016】
以下に詳細を記述する実験に見出されるように一つの有用な抗HER2抗体プレ凍結乾燥処方は、約5-40mg/mL(例えば20-30mg/mL)の量の抗HER2および約10-100mM(例えば40-80mM)の量のスクロースまたはトレハロース、バッファー(例えばヒスチジン,pH6またはコハク酸,pH5)および界面活性剤(例えばポリソルベート)を含むことが見出された。凍結乾燥処方は少なくとも3ヶ月40℃で安定であり、少なくとも6ヶ月30℃で安定であることが見出された。抗HER2処方は少なくとも約30日2-8℃で安定である約10-30mg/mLの量の抗HER2を含む静脈投与に適した処方を生ずるために希釈液を用いて再構成され得る。より高い抗HER2抗体の濃度が望ましい場合(例えば抗体の皮下投与が患者に対する投与の企図された方法である場合)、凍結乾燥処方は50mg/mL以上のタンパク質濃度を持つ安定な再構成処方を生ずるために再構成されるであろう。
ここで発明された一つの望ましい抗IgE抗体プレ凍結乾燥処方は、約5-40mg/mL(例えば20-30mg/mL)の量の抗IgEおよび約60-300mM(例えば80-170mM)の量のスクロースまたはトレハロース、バッファー(例えばヒスチジン,pH6)および界面活性剤(ポリソルベートのような)を含む。凍結乾燥抗IgE処方は少なくとも1年30℃で安定である。この処方は少なくとも1年2-8℃で安定である静脈投与に適した約15-45mg/mL(例えば15-25mg/mL)の量の抗IgEを含む処方を生ずるために再構成され得る。代わりに処方におけるより高い抗IgE濃度が必要である場合、凍結乾燥処方は50mg/mL以上の抗IgE濃度を持つ安定な処方を生ずるために再構成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はrhuMAbHER2の安定性に対する再構成容量の影響を表す。凍結乾燥処方は25mg/mLのタンパク質、60mMトレハロース、5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0および0.01%Tween20(商標)を含むプレ再構成処方から調製された。凍結乾燥塊は40℃でインキュベートされ、それから4.0(○)または20.0(●)mLのBWFIを用いて再構成された。再構成処方における完全なタンパク質の画分は、天然サイズ排除クロマトグラフィーによって測定され、凝集物を含む全ピークエリアに相関的な天然タンパク質のピークエリアとして定義された。
【図2】図2は凍結乾燥rhuMAbHER2の安定性に対するトレハロース濃度の影響を表す。タンパク質は5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0(丸印)または5mMヒスチジン,pH6.0(四角印)および60mM(360モル比)から200mM(1200モル比)の範囲のトレハロース濃度に25mg/mLで凍結乾燥された。凍結乾燥タンパク質は30日(塗りつぶした記号)または91日(塗りつぶしていない記号)のそれぞれで40℃でインキュベートされた。完全なタンパク質の量は20mLBWFIを用いた凍結乾燥タンパク質の再構成後に測定した。
【図3】図3は40℃で貯蔵された凍結乾燥rhuMAbHER2の長期的安定性に対するトレハロース濃度の影響を表す。タンパク質は5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0、0.01%Tween20(商標)、60mMトレハロース(■)または5mMヒスチジン,pH6.0、0.01%Tween20(商標)、60mMトレハロース(□)のそれぞれに25mg/mLで、あるいは10mMコハク酸ナトリウム,pH5.0、0.2%Tween20(商標)、250mMトレハロース(●)に21mg/mLで凍結乾燥された。凍結乾燥タンパク質は40℃でインキュベートされ、それから20mLのBWFIで再構成された。完全なタンパク質の量は再構成後測定された。
【図4】図4は38.4mMマンニトール(7mg/mL)、20.4mMスクロース(7mg/mL)、5mMヒスチジン,pH6.0、0.01%Tween20(商標)において凍結乾燥されたrhuMAbHER2の安定性を表す。凍結乾燥タンパク質は40℃でインキュベートされ、それから4.0mL(○)または20mL(●)のそれぞれのBWFIを用いて再構成された。完全なタンパク質の量は再構成後測定された。
【図5】図5は5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0、60mMトレハロース、0.01%Tween20(商標)において凍結乾燥された再構成rhuMAbHER2の安定性を表す。サンプルは4.0mL(四角印)または20.0mL(丸印)のそれぞれのBWFI(20mL:0.9%ベンジルアルコール;4mL:1.1%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃(塗りつぶした記号)または25℃(塗りつぶしていない記号)で貯蔵された。天然のタンパク質の%はカチオン交換クロマトグラフィーによって測定されたような全ピークエリアと相関的な天然の(分解されていない)タンパク質のピークエリアとして定義された。
【図6】図6は5mMヒスチジン,pH6.0、60mMトレハロース、0.01%Tween20において凍結乾燥された再構成rhuMAbHER2の安定性を表す。サンプルは4.0mL(四角印)または20.0mL(丸印)のそれぞれのBWFI(20mL:0.9%ベンジルアルコール;4mL:1.1%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃(塗りつぶした記号)または25℃(塗りつぶしていない記号)で貯蔵された。天然のタンパク質の%はカチオン交換クロマトグラフィーによって測定されたような全ピークエリアと相関的な天然の(分解されていない)タンパク質のピークエリアとして定義された。
【図7】図7は5mMヒスチジン,pH6.0、38.4mMマンニトール、20.4mMスクロース、0.01%Tween20において凍結乾燥された再構成rhuMAbHER2の安定性を表す。サンプルは4.0mL(四角印)または20.0mL(丸印)のそれぞれのBWFI(20mL:0.9%ベンジルアルコール;4mL:1.1%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃(塗りつぶした記号)または25℃(塗りつぶしていない記号)で貯蔵された。天然のタンパク質の%はカチオン交換クロマトグラフィーによって測定されたような全ピークエリアと相関的な天然の(分解されていない)タンパク質のピークエリアとして定義された。
【図8】図8は10mMコハク酸ナトリウム,pH5.0、250mMトレハロース、0.2%Tween20において凍結乾燥された再構成rhuMAbHER2の安定性を表す。サンプルは20.0mLのBWFI(0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃(●)または25℃(○)で貯蔵された。天然のタンパク質の%はカチオン交換クロマトグラフィーによって測定されたような全ピークエリアと相関的な天然の(分解されていない)タンパク質のピークエリアとして定義された。
【図9】図9はpH5からpH7の範囲のバッファー内に10mMのバッファー濃度および5mg/mLの抗体濃度で処方されたrhuMAbE25の凝集を表す。サンプルは凍結乾燥され、時間0および2-8℃での貯蔵の4週、8週および52週後にアッセイされた。バッファーはリン酸カリウムpH7.0(○);リン酸ナトリウムpH7.0(□);ヒスチジンpH7.0(◇);コハク酸ナトリウムpH6.5(●);コハク酸ナトリウムpH6.0(■);コハク酸ナトリウムpH5.5(◆);およびコハク酸ナトリウムpH5.0(▲)であった。
【図10】図10は5mMヒスチジンバッファーのpH6およびpH7の両方で凍結乾燥し、以下のような貯蔵に引き続いてアッセイした。バッファーは2-8℃で貯蔵したpH6.0(○);25℃で貯蔵したpH6(□);40℃で貯蔵したpH6(◇);2-8℃で貯蔵したpH7(●);25℃で貯蔵したpH7(■);40℃で貯蔵したpH7(◆)であった。
【図11】図11は275mM(等張性)の濃度で加えられたリオプロテクタントを用いた10mMコハク酸ナトリウムで処方された5mg/mLのrhuMAbE25の凝集を表す。リオプロテクタントはコントロールのリオプロテクタントなし(○);マンニトール(□);ラクトース(◇);マルトース(●);トレハロース(■);およびスクロース(◆)であった。サンプルは凍結乾燥され、時間0および2-8℃での貯蔵の4週、8週および52週後にアッセイされた。
【図12】図12は275mM(等張性)の濃度で加えられたリオプロテクタントを用いた10mMコハク酸ナトリウムで処方された5mg/mLのrhuMAbE25の凝集を表す。リオプロテクタントはコントロールのリオプロテクタントなし(○);マンニトール(□);ラクトース(◇);マルトース(●);トレハロース(■);およびスクロース(◆)であった。サンプルは凍結乾燥され、時間0および40℃での貯蔵の4週、8週および52週後にアッセイされた。
【図13】図13は等張性濃度(すなわち275mM)のラクトースを用いたpH6のヒスチジンバッファーで凍結乾燥され、2-8、25または40℃で24週貯蔵され、20mg/mLに再構成された20mg/mLのrhuMAbE25の疎水性インターラクションクロマトグラフィーを表す。
【図14】図14はpH6のヒスチジンバッファーで凍結乾燥され、2-8、25または40℃で24週貯蔵され、20mg/mLに再構成された20mg/mLのrhuMAbE25の疎水性インターラクションクロマトグラフィーを表す。
【図15】図15は等張性濃度(すなわち275mM)のスクロースを用いたpH6のヒスチジンバッファーで凍結乾燥され、2-8、25または40℃で24週貯蔵され、20mg/mLに再構成された20mg/mLのrhuMAbE25の疎水性インターラクションクロマトグラフィーを表す。
【図16】図16は5mMヒスチジンpH6.0に20mg/mLで処方されたrhuMAb25に対する糖濃度の影響を表す。スクロース(●)及びトレハロース(□)を0から2010(等張性)(以下の表1参照)の範囲のモル比で処方に加えた。サンプルは凍結乾燥され、50℃での貯蔵の12週後にアッセイされた。
【表1】

【図17】図17は85mMスクロース(○);85mMトレハロース(□);161mMスクロース(◆)または161mMトレハロース(▲)を用いた5mMヒスチジンpH6における25mg/mLで処方されたrhuMAbE25の凝集を表す。サンプルは凍結乾燥され、2-8℃で貯蔵されおよび引き続き等張性(340mM)および高張性(644mM)の糖濃度を用いた20mMヒスチジンpH6において100mg/mLの抗体に対し0.9%のベンジルアルコールで再構成された。
【図18】図18は85mMスクロース(○);85mMトレハロース(□);161mMスクロース(◆)または161mMトレハロース(▲)を用いた5mMヒスチジンpH6における25mg/mLで処方されたrhuMAbE25の凝集を表す。サンプルは凍結乾燥され、30℃で貯蔵されおよび引き続き等張性(340mM)および高張性(644mM)の糖濃度を用いた20mMヒスチジンpH6において100mg/mLの抗体に対し0.9%のベンジルアルコールで再構成された。
【図19】図19は85mMスクロース(○);85mMトレハロース(□);161mMスクロース(◆)または161mMトレハロース(▲)を用いた5mMヒスチジンpH6における25mg/mLで処方されたrhuMAbE25の凝集を表す。サンプルは凍結乾燥され、50℃で貯蔵されおよび引き続き等張性(340mM)および高張性(644mM)の糖濃度を用いた20mMヒスチジンpH6において100mg/mLの抗体に対し0.9%のベンジルアルコールで再構成された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
「タンパク質」なる語は鎖の長さが三次および/または四次構造の高次レベルを生ずるのに十分であるアミノ酸配列を意味する。これは該構造を持たない「ペプチド」または他の小分子量薬剤と区別される。典型的にはここでのタンパク質は少なくとも約15-20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量をもつであろう。
【0019】
ここでの定義を用いて包含されるタンパク質の例としては、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA-鎖;インスリンB-鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;VIIIC因子、IX因子、組織因子およびフォンビルブラント因子のような凝固因子;プロテインCのような抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼまたは組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)のようなプラスミノーゲンアクチベーター;ボンバジン;トロンビン;腫瘍壊死因子-αおよび-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンのような血清アルブミン;ミューラー管抑制物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連性ペプチド;DNアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子に対する受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマトイド因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)のような神経栄養因子;ニューロトロフィン-3,-4,-5または-6(NT-3,NT-4,NT-5またはNT-6)またはNGF-βのような神経細胞成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGFおよびbFGFのような繊維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-αおよびTGF-β1,TGF-β2,TGF-β3,TGF-β4またはTGF-β5を含むTGF-βのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I);インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3,CD4,CD8,CD19およびCD20のようなCDタンパク質;エリトロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);オステオインダクティブ因子;免疫毒素;骨誘導因子(BMP);インターフェロン-α,-βおよび-γのようなインターフェロン;例えばM-CSF,GM-CSFおよびG-CSFのようなコロニー刺激因子(CSF);例えばIL-1からIL-10のインターロイキン(IL);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);例えばAIDSエンベロープの一部のようなウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレッシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;および上記リストのポリペプチドのいずれかの生物学的に活性な断片または変異体のような哺乳動物タンパク質を含む。
【0020】
処方されるタンパク質は好ましくは本質的に精製されており、望ましくは本質的に均質である(すなわち混合したタンパク質等からフリーである)。「本質的に精製された」タンパク質とは、構成物の全重量に基づいて少なくとも約90%のタンパク質重量から成り、好ましくは少なくとも約95%の重量からなる構成物を意味する。「本質的に均質な」タンパク質とは、構成物の全重量に基づいて少なくとも約99%のタンパク質重量から成る構成物を意味する。
【0021】
ある実施態様においては、タンパク質は抗体である。抗体は例えば上記記載の分子のいずれに対しても結合してもよい。本発明に包含される抗体の例示的な分子ターゲットは、CD3,CD4,CD8,CD19,CD20およびCD34のようなCDタンパク質;EGF受容体,HER2,HER3,またはHER4受容体のようなHER受容体ファミリーのメンバー;LFA-1,Mol,pl50,95,VLA-4,ICAM-1,VCAMおよびα及びβサブユニットのそれぞれを含むαv/β3インテグリン(例えば抗CD11a,抗CD18または抗CD11b抗体)のような細胞接着分子;VEGFのような増殖因子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;プロテインC等を含む。
【0022】
「抗体」なる語は最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を持つフルレングス抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を持つ抗体構成物、二重特異性抗体、ディアボディーおよび抗体断片(例えばFab,F(ab')およびFv)と同様に単一鎖分子を特別にカバーする。
【0023】
ここで用いられている「モノクローナル抗体」なる語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体をいう、すなわち集団に含まれている個々の抗体は、少量存在しているであろう潜在的に自然に生じ得る突然変異を除いて等しいものである。モノクローナル抗体は高い特異性をもち、単一の抗原部位に対して向けられている。さらに典型的に異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むありきたりの(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体には抗原上の単一の決定基に対して向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマカルチャーによって合成されるという利点があり、他の免疫グロブリンによって混合されていない。緩和された「モノクローナル」なる語は、実質的に均質な抗体の集団から得られるような抗体の性質を示し、いかなる特定の方法による抗体の生産を必要とするように構成されるものではない。例えば本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、Kohler等,Nature,256:495(1975)に最初に記述されたハイブリドーマ法によって作製され得るし、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号参照)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClackson等,Nature,352:624-628(1991)およびMarks等,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記述されている方法を用いるファージ抗体ライブラリーからも単離し得る。
【0024】
モノクローナル抗体はH鎖および/またはL鎖の一部が特定の種由来の抗体内の相当する配列と等しいまたは同一源でありあるいは特定の抗体のクラスまたはサブクラスに属し、その一方で鎖(類)の残りの部分がもう一種由来の抗体の相当する配列と等しいまたは同一源でありあるいはもう一種の抗体のクラスまたはサブクラスに属する「キメラ」抗体をここで特別に含み、同様に望ましい生物学的活性を示す範囲で該抗体の断片をも含む(米国特許第4,816,567号;Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。
【0025】
非ヒト(例えばネズミ)抗体の「ヒト化」形態とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含むそれらの断片(Fv,Fab,Fab',F(ab')または他の抗体の抗原結合部分配列)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は受容者の相補性決定領域(CDR)由来の残基が望ましい特異性、アフィニティーおよび力量を持つマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(提供者抗体)のCDR由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。ある例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が相当する非ヒト種残基によって置換されている。さらにヒト化抗体は受容者抗体にもインポートCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基をも含み得る。これらの修飾は抗体の能力をさらに精密にし最適化するためになされる。一般的にヒト化抗体は少なくとも一つ、典型的には二つの可変領域の実質的に全てを含み、可変領域内の非ヒト種免疫グロブリンのものに相当するCDR領域の全てまたは実質的に全ておよびFR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものであろう。ヒト化抗体はまた最適には典型的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むであろう。さらなる詳細については、Jones等,Nature,321:522-525(1986);Reichmann等,Nature,332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)参照。ヒト化抗体は抗体の抗原結合領域が興味ある抗原を用いて免疫化されたマカークザルによって生産された抗体由来であるPrimatized(商標)抗体を含む。
【0026】
「安定な」処方とはその中でタンパク質が貯蔵に対して物理的および化学的な安定性および完全性を実質的に保持したままであるものをいう。タンパク質の安定性を測定する様々な分析的方法が本分野で利用されており、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee編,Marcel Dekker,Inc.,New York,Pubs.(1991)およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)にレビューされている。安定性は選択された時間の期間選択された温度で測定され得る。迅速なスクリーニングに対しては、処方は2週間から1ヶ月間40℃で保たれ、その期間で安定性が測定される。処方を2-8℃で貯蔵する場合、一般的には処方は少なくとも1ヶ月30℃または40℃で安定であるべきでありおよび/または少なくとも2年2-8℃で安定であるべきである。処方を30℃で貯蔵する場合、一般的には処方は少なくとも2年30℃で安定であるべきでありおよび/または少なくとも6ヶ月40℃で安定であるべきである。例えば凍結乾燥および貯蔵に引き続く凝集の程度は、タンパク質の安定性の指標として用いられ得る(ここの実施例参照)。例えば「安定な」処方とは、タンパク質の約10%より低いものが、好ましくは約5%より低いものが処方の凝集とし存在することをいうであろう。他の実施態様においては、凍結乾燥処方の凍結乾燥および貯蔵に引き続く凝集形成のいかなる増大をも測定され得る。例えば「安定な」凍結乾燥処方とは、凍結乾燥処方が少なくとも1年2-8℃で貯蔵された場合、凍結乾燥処方における凝集の増大が約5%より低いもの、好ましくは約3%より低いものであろう。他の実施態様においては、タンパク質処方の安定性は生物学的活性アッセイを用いて測定され得る(例えば以下の実施例2を参照)。
【0027】
「再構成」処方とは再構成処方においてタンパク質を分散させるような希釈液において凍結乾燥タンパク質処方を溶解することによって調製されるものである。本発明のある実施態様において、興味あるタンパク質を用いて治療される患者に対する投与(例えば非経口投与)に適した再構成処方は、皮下投与に適したものであろう。
【0028】
「等張性」なる語は、興味ある処方が本質的にヒトの血液と同じ浸透圧であることを意味する。等張性処方は一般的に約250から350mOsmの浸透圧であろう。等張性は例えば蒸気圧または製氷型浸透圧計を用いて測定され得る。
【0029】
「リオプロテクタント」なる語は、興味あるタンパク質と組み合わせた場合、凍結乾燥および後の貯蔵に対してタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を有意に防止または減少する分子をいう。例示的なリオプロテクタントとしては、スクロースまたはトレハロースのような糖;グルタミン酸一ナトリウムまたはヒスチジンのようなアミノ酸;ベタインようなメチルアミン;硫酸マグネシウムのような親液性の塩;例えばグリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールのような三水素以上の化合物の糖アルコールのようなポリオール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;Pluronics;およびそれらの組み合わせが含まれる。好ましいリオプロテクタントはトレハロースまたはスクロースのような非還元糖である。
【0030】
リオプロテクタントは「安定化するのに十分な量」でプレ凍結乾燥処方に加えられ、その量はリオプロテクタントの安定化するのに十分な量の存在下でタンパク質の凍結乾燥に引き続き、タンパク質が本質的に凍結乾燥および貯蔵に対して物理的及び化学的安定性および完全性を保持したままであることを意味する。
【0031】
ここで興味ある「希釈液」なる語は、製薬学的に受け入れられる(ヒトへの投与に対して安全で非毒性な)ものであり、再構成処方の調製に対して有用であるものである。例示的な希釈液としては、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌塩水溶液、リンガー溶液またはブドウ糖溶液が含まれる。
【0032】
「防腐剤」なる語は、例えば再構成処方における本質的に細菌の活動を減少させるために希釈液に加えられ、それゆえ複数回使用再構成処方の生産を容易にし得る化合物である。防腐剤候補の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長い原子連鎖を含む化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)および塩化ベンゼトニウムが含まれる。防腐剤の他のタイプとしては、フェノールのような芳香族アルコール、ブチルおよびベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラペンのようなアルキルパラペン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールが含まれる。ここで最も好ましい防腐剤はベンジルアルコールである。
【0033】
「膨張試薬」とは、凍結乾燥混合物に量を与え、凍結乾燥塊の物理的構造に寄与する化合物である(例えば多孔質構造を維持する本質的に均質な凍結乾燥塊の生産を容易にする)。例示的な膨張試薬としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびキソルビトールが含まれる。
【0034】
「治療」なる語は治療上の治療および予防法の両者を含む。治療の必要なものは、既に疾患に罹患しているものと同様に疾患を防ぐべきものも含む。
【0035】
治療の目的たる「哺乳動物」なる語は、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等のような家畜および農場の動物、そして動物園、スポーツまたはペットの動物を含む哺乳動物に分類されるいかなる動物をも含む。好ましくは哺乳動物はヒトである。
【0036】
「疾患」なる語はタンパク質を用いた治療が有益であるいかなる病気をもいう。これには問題となる疾患に哺乳動物を罹りやすくする病理学上の病気を含む慢性または急性の疾患または病気が含まれる。ここで治療される疾患の非限定的な例としては、ガンおよびアレルギーが含まれる。
【0037】
II.本発明を実施する方法
A.タンパク質調製
処方されるタンパク質は合成法(組換え法およびタンパク質合成またはこれらの方法の組み合わせのような)を含む本分野でよく確立されている方法を用いて調製され、またはタンパク質の内生のソースから単離されてもよい。本発明のある実施態様においては、選択されるタンパク質は抗体である。抗体の生産法は以下のようなものである。
【0038】
(i)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は一般的に適切な抗原とアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹膜内(ip)注射により動物において作られる。適切な抗体を免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビターと、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基で接合する)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基で接合する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOClまたはRおよびR1が異なるアルキル基であるR1N=C=NRのような二官能試薬または誘導化試薬を用いて接合することは有用であろう。
【0039】
動物は1mgまたは1μgのペプチドまたは接合物(ウサギまたはマウスそれぞれに対して)を3ボリュームのフロイント完全アジュバントと接合することによって抗原、免疫原性の共役物または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後動物を複数部位の皮下注射によってフロイント完全アジュバントでの初めのペプチドまたは共役物の量の1/5から1/10を用いて追加免疫する。7から14日後動物から採血し、抗体力価のため血液をアッセイする。力価が安定水準に達するまで動物を追加免疫する。好ましくは同じ抗原の共役物だが、異なるタンパク質とおよび/または異なる架橋試薬で接合された共役物を用いて追加免疫される。共役物はまたタンパク質融合のような組換え細胞カルチャーでも作製され得る。ミョウバンのような凝集試薬もまた免疫応答を促進するために適して用いられる。
【0040】
(ii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均質な抗体の集団から得られる、すなわち集団に含まれる個々の抗体は少量存在する潜在的に自然に生じ得る突然変異を除いて等しいものである。それゆえ緩和した「モノクローナル」なる語は別個の抗体の混合物ではないような抗体の性質を示す。
【0041】
例えばモノクローナル抗体はKohler等,Nature,256:495(1975)に最初に記述されたハイブリドーマ法を用いて作製され得、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。
【0042】
ハイブリドーマ法では、マウスや他の適当なホスト動物、ハムスターのようなものが、免疫化に用いられたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を生産するまたは生産を可能にするリンパ球を導き出すために上述のように免疫化される。代わりに、リンパ球をin vitroで免疫化しうる。それからハイブリドーマ細胞を形成するためにポリエチレングリコールのような適当な融合試薬を用いて、リンパ球をミエローマ細胞と融合する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0043】
それゆえハイブリドーマ細胞は、非融合の元となるミエローマ細胞の成育と生存を阻害する一つかそれ以上の物質を好ましくは含む適当な培地において、接種されそして成育される。例えばもし元となるミエローマ細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠失していたならば、ハイブリドーマに対する培地は典型的には、HGPRT欠失細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0044】
好ましいミエローマ細胞は効率よく融合し、選択された抗体生産細胞による抗体の安定な高レベルの生産を維持し、そしてHAT培地のような培地に感受性なものである。これらの中から好ましいミエローマ細胞系は、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍由来のもののようなネズミミエローマ系、およびAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2細胞である。ヒトミエローマおよびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系もまたヒトモノクローナル抗体の生産のために記述されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur等,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0045】
ハイブリドーマ細胞が成育している培地は、抗原に対して向けられるモノクローナル抗体の生産のためアッセイされる。好ましくはハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、または放射性免疫検定法(RIA)あるいは固相酵素免疫検定法(ELISA)のようなin vitro結合アッセイによって測定される。
【0046】
モノクローナル抗体の結合アフィニティーは、例えばMunson等,Anal.Biochem.107:220(1980)のスキャッチャード分析によって測定される。
【0047】
ハイブリドーマ細胞が望ましい特異性、アフィニティーおよび/または活性の抗体を生産することを同定された後、該クローンを限界希釈法によってサブクローン化し、標準的な方法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))によって成育させる。この目的のために適当な培地は、例えばD-MEMまたはRPMI-1640培地である。加えてハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍のようにin vivoで成育させることもできる。
【0048】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーのようなありきたりの免疫グロブリン精製法によって、培地、腹水分泌液または血清から適当に分離される。
【0049】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、ありきたりの方法を用いて容易に単離されシークエンスされる(例えばネズミ抗体のH鎖とL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)。本発明のハイブリドーマ細胞は該DNAの好ましいソースとしても役に立つ。一度単離されると、DNAを発現ベクターにつなぎ、それからそれを組換えホスト細胞においてモノクローナル抗体の合成を得るために、大腸菌、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはさもなければ免疫グロブリンタンパク質を生産しないミエローマ細胞のようなホスト細胞にトランスフェクトする。抗体をコードするDNAの細菌での組換え発現についてのレビュー論説は、Skerra等,Curr.Opinion in Immunol.5:256-262(1993)およびPluckthun Immunol.Revs.130:151-181(1992)を含む。
【0050】
さらなる実施態様として、抗体はMcCafferty等,Nature,348:552-554(1990)に記述されている方法を用いて生産された抗体ファージライブラリーより単離され得る。Clackson等,Nature,352:624-628(1991)およびMarks等,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)は、ファージライブラリーを用いたそれぞれネズミおよびヒト抗体の単離を記述している。後の出版物はチェーンシャッフリング(Marks等,Bio/Technology,10:779-783(1992))による高アフィニティー(nMの範囲)のヒト抗体の生産を記述しているが、同様に大変大きなファージライブラリーを構築するストラテジーとして組み合わせ感染およびin vivo組換えもある(Waterhouse等,Nuc.Acids.Res.,21:2265-2266(1993))。それゆえ、これらの方法はモノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に代わる実行可能な選択肢である。
【0051】
DNAはまた、相同のネズミ配列の代わりにヒトH鎖およびL鎖定常ドメインのコード配列で置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、あるいは非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列を免疫グロブリンコード配列に共有結合でつなぐことによって修飾し得る。
【0052】
典型的には上記非免疫グロブリンポリペプチドは抗体の定常ドメインによって置換され、それらは抗原に特異性を持つ一つの抗原結合部位と、異なる抗原に特異性をもつもう一つの抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作り出すために、抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインで置換される。
【0053】
キメラまたはハイブリッド抗体はまた架橋試薬を含むものを含む合成タンパク質化学における既知の方法を用いてin vitroで調製されうる。例えば免疫毒素が、ジスルフィド交換反応を用いてまたはチオエーテル結合を形成することによって構築されうる。この目的のため適した試薬の例として、イミノチオレート及びメチル1-4-メルカプトブチリミデートが含まれる。
【0054】
(iii)ヒト化抗体およびヒト抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は本分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体は非ヒトであるソースからそれに導入された一つかそれ以上のアミノ酸残基をもつ。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート残基」として示され、典型的には「インポート」可変ドメインから由来している。ヒト化は本質的に、Winterと共同研究者(Jones等,Nature 321:522-525(1986);Riechmann等,Nature 332:323-327(1988);Verhoeyen等,Science 239:1534-1536(1988))の方法にしたがって実施され、ネズミCDRまたはCDR配列を、相当するヒト抗体の配列で置換することによってなされる。したがって該「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、そこでは実質的に完全なヒト可変ドメインより短い部分が、相当する非ヒト種由来の配列で置換されている。実際問題として、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基および可能ないくつかのFR残基がネズミ抗体の相似性の部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0055】
ヒト化抗体を作製する場合に用いられるL鎖とH鎖の両方のヒト可変領域の選択は、抗原性を減少する上で大変重要である。「ベスト-フィット」法と呼ばれる方法にしたがって、ネズミ抗体の可変ドメインの配列が既知のヒト可変ドメイン配列の完全なライブラリーからスクリーニングされる。それからネズミのものに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためにヒトフレームワーク(FR)として受け入れられる(Sims等,J.Immunol,151:2296(1993);Chothia等,J.Mol.Biol.196:901(1987))。もう一つの方法は、L鎖とH鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを用いる。同様のフレームワークはいくつかの異なるヒト化抗体のためにも用いられ得る(Carter等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:4285(1992);Presta等,J.Immunol.151:2623(1993))。
【0056】
抗体は抗原に対する高アフィニティーおよび他の好ましい生物学的性質を保持したまま免疫化されることがさらに重要である。この目的を達成するため好ましい方法にしたがって、もととなるおよびヒト化配列の三次元モデルを用いてもととなる配列および様々な概念上のヒト化産物の分析の過程によって、ヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、公に入手可能であり当業者には親しまれている。選択された免疫グロブリン配列の候補の可能な三次元構造を描写し表示するコンピュータープログラムも入手可能である。これらの表示を見ることによって、免疫グロブリン配列の候補の機能において残基の考え得る役割の分析、すなわち抗原に結合する場合に免疫グロブリン候補の能力に影響する残基の解析が可能となる。この方法では、FR残基が、標的抗原(類)に対する増大したアフィニティーのような望ましい抗体特性を達成するための受容者配列およびインポート配列から選択され結合され得る。一般的にCDR残基は直接にそして最も実質的に抗原結合を影響する部位に含まれる。
【0057】
代わりに、免疫化により内因性の免疫グロブリン生産の不存在下でヒト抗体のフルレパートリーを生産することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を生産することが現代では可能である。例えば、キメラで生殖系列ミュータントマウスの抗体H鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合体性欠失が、内因性抗体生産の完全な阻害を引き起こすことが記述されている。該生殖系列ミュータントマウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列のトランスファーは、抗原チャレンジによりヒト抗体の生産を引き起こすであろう。例えばJakobovits等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90:2551(1993);Jakobovits等,Nature 362:255-258(1993);Bruggermann等,Year in Immuno.7:33(1993)参照。ヒト抗体もまたファージ-ディスプレーライブラリーから由来され得る(Hoogenboom等,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks等,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991))。
【0058】
(iv)二重特異性抗体
二重特異性抗体(BsAbs)とは少なくとも二つの異なるエピトープに対する結合特異性を持つ抗体である。該抗体はフルレングス抗体または抗体断片より由来され得る(例えばF(ab')二重特異性抗体)。
【0059】
二重特異性抗体を作成する方法は本分野で知られている。伝統的なフルレングス二重特異性抗体の生産は、二つの免疫グロブリンH鎖-L鎖ペアの共同発現に基づいており、そこでは二つのH鎖は異なる特異性をもつ(Millstein等,Nature 305:537-539(1983))。免疫グロブリンH鎖とL鎖のランダムな識別のため、これらのハイブリドーマ(クアッドローマ)は10種類の異なる抗体分子の混合物を潜在的に生産し、その中の一種だけが正しい二重特異性抗体なのである。正しい分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィー工程によりなされるが、むしろ煩わしく、生産性は低い。同様の方法はWO 93/08829およびTraunecker等,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に記述されている。
【0060】
異なるアプローチにしたがうと、望ましい結合特異性を持つ抗体可変ドメイン(抗体抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。好ましくは融合は、少なくともヒンジ部、CH2およびCH3領域を含む免疫グロブリンH鎖定常領域となされる。L鎖との結合に必要な部位を含む第一のH鎖定常領域(CH1)を融合物の少なくとも一つに存在させるのも好ましい。免疫グロブリンH鎖融合物をコードするDNAおよび必要であれば免疫グロブリンL鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに組み込み、適したホスト生物内に共同してトランスフェクトする。構築に用いられる非等量割合の三つのポリペプチド鎖が最適条件収率を提供すると、これにより実施態様における三つのポリペプチド断片の相互の性質を調製する大きな柔軟性が提供される。しかしながら、等量割合で少なくとも二つのポリペプチド鎖の発現が高い収率を引き起こした場合、またはその割合が特定の重要性を持たない場合、一つの発現ベクターに二つまたは三つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を組み込むことが可能である。
【0061】
このアプローチの好ましい実施態様によると、二重特異性抗体は一つの腕の第一の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリンH鎖と、もう一方の腕のハイブリッド免疫グロブリンH鎖-L鎖ペア(第二の結合特異性を提供する)より成る。この非対称の構造は、二重特異性分子の半分だけを占める免疫グロブリンL鎖の存在が選別の容易な方法を提供するように、望まない免疫グロブリン鎖の組み合わせから望ましい二重特異性化合物を選別するのを容易にすることが見出された。このアプローチは1994年3月3日に印刷されたWO 94/04690に記述されている。二重特異性抗体を生産することのさらなる詳細については、例えばSuresh等,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照。
【0062】
二重特異性抗体は架橋された抗体または「ヘテロ接合」抗体を含む。例えばヘテロ接合における抗体の一つはアビジンで接合され、他方はビオチンで接合され得る。該抗体は例えば、望まない細胞に対して免疫系細胞の標的にするため(米国特許第4,676,980号)またはHIV感染の治療のため(WO 91/00360;WO 92/00373)提案されている。ヘテロ接合抗体はいかなる便利な架橋法を用いてでも作製されうる。適した架橋試薬は本分野でよく知られており、たくさんの架橋法と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0063】
抗体断片から二重特異性抗体を生産する方法もまた文献に記載されている。以下の方法もまた二重特異性の必要がない二価抗体の生産のために用いられ得る。例えば大腸菌から回収したFab'断片を二価抗体を形成するためにin vitroで化学的に結合し得る。Shalaby等,J.Exp.Med.,175:217-225(1992)参照。
【0064】
組換え細胞カルチャーから直接に二価抗体断片を作製し単離する様々な方法もまた記述されている。例えば二価ヘテロ二量体はロイシンジッパーを用いて生産し得る。Kostelny等,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により二つの異なる抗体のFab'部分に結合した。抗体ホモ二量体をモノマーを形成するためにヒンジ領域で還元し、それから抗体ヘテロ二量体を形成するために再酸化した。Hollinger等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)に記述されている「ディアボディー」法は、二重特異性/二価抗体断片を作製するための代わりとなるメカニズムを提供している。断片はあまりに短くて同じ鎖上の二つのドメインの間をペアリングすることができないリンカーによって、L鎖可変ドメイン(V)と結合したH鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、一つの断片のVおよびVドメインは、もう一つの断片の相補的なVおよびVドメインとペアーを無理矢理作らされ、それゆえ二つの抗原結合部位が形成される。単一鎖Fv(sFv)を使用することによる二重特異性/二価抗体断片を作製するもう一つのストラテジーもまた報告されている。Gruber等,J.Immunol.,152:5368(1994)参照。
【0065】
B.凍結乾燥処方の調製
上述のように興味あるタンパク質の調製後、「プレ凍結乾燥処方」が生産される。プレ凍結乾燥処方において存在するタンパク質の量は、望ましい投与量容量、投与形態(類)等を考慮に入れて決定される。選択されたタンパク質が完全な抗体(抗IgE抗体または抗HER2抗体のような)の場合、約2mg/mLから約50mg/mL、好ましくは約5mg/mLから約40mg/mLそして最も好ましくは約20-30mg/mLが例示的な最初のタンパク質濃度である。タンパク質は一般的に溶液中に存在する。例えばタンパク質は約4-8の、好ましくは約5-7のpHであるpH緩衝溶液中に存在するであろう。例示的なバッファーとしてはヒスチジン、リン酸、Tris、クエン酸、コハク酸および他の有機酸を含む。バッファー濃度は例えば処方の(例えば再構成処方の)バッファーおよび望ましい等張性に依存して、約1mMから約20mM、または約3mMから約15mMの範囲であり得る。好ましいバッファーはヒスチジンであり、以下に示すようにこれはリオプロテクタントの性質を持ち得る。コハク酸はもう一つの有用なバッファーであると示された。
【0066】
リオプロテクタントはプレ凍結乾燥処方に加えられる。好ましい実施態様として、リオプロテクタントはスクロースまたはトレハロースのような非還元糖である。プレ凍結乾燥処方におけるリオプロテクタントの量は、一般的に再構成において結果としての処方が等張性であるように用いられる。しかしながら高張性再構成処方もまた適していよう。加えてリオプロテクタントの量は、凍結乾燥においてタンパク質の分解/凝集の受け入れられない量が生じるようなあまりに低い量ではあってはならない。リオプロテクタントが糖(スクロースまたはトレハロースのような)でありタンパク質が抗体である場合、プレ凍結乾燥処方における例示的なリオプロテクタント濃度は約10mMから約400mM、好ましくは約30mMから約300mM、最も好ましくは約50mMから約100mMである。
【0067】
リオプロテクタントに対するタンパク質の割合は、タンパク質およびリオプロテクタントのそれぞれの組み合わせに対して選択される。選択されたタンパク質として抗体、高タンパク質濃度を用いた等張性再構成処方を生ずるためのリオプロテクタントとして糖(例えばスクロースまたはトレハロース)の場合、抗体に対するリオプロテクタントのモル比は1モル抗体に対して約100から約1500モルリオプロテクタント、好ましくは約200から約1000モルのリオプロテクタント、例えば1モル抗体に対して約200から約600モルのリオプロテクタントである。
【0068】
本発明の好ましい実施態様として、プレ凍結乾燥処方に界面活性剤を加えることが望ましいことが見出されている。代わりにまたは加えて、界面活性剤は凍結乾燥処方および/または再構成処方に加えてもよい。例示的な界面活性剤としては、ポリソルベート(例えばポリソルベート20または80)のような非イオン性界面活性剤;ポロキサマー(例えばポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウレル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグリコシド;ラウリル-,ミリスチル-,リノレイル-またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-,ミリスチル-,リノレイル-またはステアリル-サルコシン;リノレイル-,ミリスチル-,またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-,コカミドプロピル-,リノールアミドプロピル-,ミリスタミドプロピル-,パルミドプロピル-またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えばラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-,パルミドプロピル-またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-または二ナトリウムメチルオレイル-タウレート;およびMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,New Jersey)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールそしてエチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例えばPluronics,PF68等)が含まれる。加えられる界面活性剤の量は、再構成タンパク質の凝集を減少し再構成後の微粒子の形成を最小化するような量である。例えば界面活性剤は約0.001-0.5%、好ましくは約0.005-0.05%の量でプレ凍結乾燥処方に存在するであろう。
【0069】
本発明のある実施態様においては、リオプロテクタント(スクロースまたはトレハロースのような)および膨張試薬(例えばマンニトールまたはグリシン)の混合物が、プレ凍結乾燥処方の調製において用いられる。膨張試薬は過度の孔等を形成することなく均一な凍結乾燥塊の生産を可能にするであろう。
【0070】
Remington's Pharmaceutical Sciences,第16版、Osol,A.編(1980)に記述されているような他の製薬学的に受け入れられるキャリアー、賦形剤または安定剤も、もしそれらが処方の望ましい特性に有害に影響しなければ、プレ凍結乾燥処方(および/または凍結乾燥処方および/または再構成処方)に含まれるであろう。受け入れられるキャリアー、賦形剤または安定剤は用いられる投与量および濃度で受容者に非毒性であり、付加的な緩衝試薬;防腐剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAのようなキレート試薬;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);ポリエステルのような生分解性ポリマー;および/またはナトリウムのような塩形成カウンターイオンを含む。
【0071】
ここでいう処方はまた治療される特定の症状に対して必要な一つより多いタンパク質を含み、好ましくはそれらは他のタンパク質に有害に影響しない相補的な活性を持ったものがよい。例えば単一の処方でHER2受容体またはIgEに結合する二つ以上の抗体を提供することは望ましいであろう。さらに抗HER2および抗VEGF抗体を一つの処方で組み合わせ得る。該タンパク質は企図された目的に対して有効な量で組み合わせて適したように存在する。
【0072】
in vivo投与で用いられる処方は滅菌されていなければならない。これは凍結乾燥および再構成の前またはそれらに引き続いて滅菌濾過メンブレンを通して濾過することで容易に成し遂げられる。代わりに完全な混合物の滅菌性は例えば約30分約120℃でタンパク質を除いた材料をオートクレーブすることによって成し遂げられる。
【0073】
タンパク質、リオプロテクタントおよび他の随意の成分を共に混ぜた後、処方は凍結乾燥される。Hull50(商標)(Hull,USA)またはGT20(商標)(Leybold-Heraeus,Germany)凍結乾燥器のような多くの異なる凍結乾燥器がこの目的のために入手可能である。凍結乾燥は処方を凍結しその後一次の乾燥に適した温度で凍結内容物から氷を昇華することによって成し遂げられる。このコンディションの下では、生産物の温度は処方の共融点または崩壊温度より低い。典型的には、約50から250mTorrの範囲の適した圧力で、一次乾燥の設定温度は約-30から25℃(もし生産物が一次乾燥の間凍ったままであったならば)の範囲であろう。サンプルを入れる容器(例えばガラスバイアル)の処方、サイズまたは型、および液体の容量は主に乾燥に必要とされる時間に依存し、それは数時間から数日(例えば40-60時間)の範囲であり得る。二次乾燥段階は、主に容器の型とサイズそして用いられるタンパク質のタイプに依存して約0-40℃で実施される。しかしながら二次乾燥段階は必ずしも必要でないであろうことがここで見出された。例えば凍結乾燥の完全な水分除去相を通じた設定温度は、約15-30℃(例えば約20℃)であろう。二次乾燥に必要とされる時間および圧力は、例えば温度および他のパラメーターに依存して適した凍結乾燥塊を生産するものであろう。二次乾燥時間は生産物中の望ましい残余の水分レベルに依存し、典型的には少なくとも約5時間(例えば10-15時間)かかる。圧力は一次乾燥段階の間用いられたものと同じであろう。凍結乾燥コンディションは処方およびバイアルサイズに依存して変わり得る。
ある実施例では、タンパク質の再構成が移し替える作業を避けるために、その中で実施される容器内でタンパク質処方の凍結乾燥がなされることが望ましいであろう。この実施例の容器は例えば3,5,10,20,50または100ccバイアルであろう。
【0074】
一般的な主張として、凍結乾燥によって水分含有量が約5%より低い、好ましくは約3%より低い凍結乾燥処方を生ずるであろう。
【0075】
C.凍結乾燥処方の再構成
望ましい段階では、典型的には患者にタンパク質が投与される場合には、凍結乾燥処方は再構成処方におけるタンパク質濃度が少なくとも50mg/mL、例えば約50mg/mLから約400mg/mL、より好ましくは約80mg/mLから約300mg/mL、最も好ましくは約90mg/mLから約150mg/mLであるように希釈液を用いて再構成され得る。再構成処方における該高タンパク質濃度は、再構成処方の皮下投与が企図されている場合特に有用であると考えられる。しかしながら静脈投与のような他の投与経路に対しては、再構成処方における低濃度のタンパク質が望ましい(例えば再構成処方における約5-50mg/mL,または約10-40mg/mLのタンパク質)。ある実施態様においては、再構成処方におけるタンパク質濃度はプレ凍結乾燥処方のものより有意に高い。例えば再構成処方におけるタンパク質濃度は、プレ凍結乾燥処方のものの約2-40倍、好ましくは3-10倍、最も好ましくは3-6倍(例えば少なくとも3倍または少なくとも4倍)であろう。
【0076】
一般的に再構成は完全な水和を確定するために約25℃の温度で実施されるが、他の温度も必要であれば用いられ得る。再構成に必要とされる時間は、例えば希釈液のタイプ、防腐剤(類)およびタンパク質の量に依存するであろう。例示的な希釈液としては、滅菌水、注射のための静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌塩水溶液、リンガー溶液またはブドウ糖溶液が含まれる。希釈液は任意に防腐剤を含む。例示的な防腐剤は上記したが、ベンジルまたはフェノールアルコールのような芳香族アルコールが好ましい防腐剤である。用いられる防腐剤の量は、タンパク質および防腐剤の効力テストを用いて適合性に対する異なる防腐剤濃度を評価して決定される。例えば、防腐剤が芳香族アルコール(ベンジルアルコールのような)であれば、約0.1-2.0%、好ましくは約0.5-1.5%、最も好ましくは約1.0-1.2%の量で存在し得る。
【0077】
好ましくは再構成処方はサイズにおいて10μm以下であるバイアル当たり6000粒子より少ないものを含む。
【0078】
D.再構成処方の投与
再構成処方はタンパク質を用いた治療が必要な哺乳動物、好ましくはヒトに対して、巨丸剤のような静脈投与または一定期間の継続的な点滴、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節内、骨液包内、鞘内、経口、局所的または吸入などの経路によって既知の方法に適合して投与される。
【0079】
好ましい実施態様として、再構成処方は皮下(すなわち皮膚の下部)投与により哺乳動物に投与される。該目的のために、処方はシリンジを用いて注射されるであろう。しかしながら、注射装置(例えばInject-ease(商標)およびGenject(商標)装置);インジェクターペン(GenPen(商標)のような);無針装置(例えばMediJector(商標)およびBioJector(商標));および皮下パッチ投与システムのような処方の投与のための他の装置も入手可能である。
【0080】
タンパク質の適した投与量(「治療上の有効量」)は例えば治療される病気、病気のひどさおよび進行、タンパク質が予防の目的と治療の目的とどちらのために投与されるか、以前の治療、患者の臨床上の病歴およびタンパク質に対する応答、そしてかかっている医師の裁量に依存するであろう。タンパク質は患者に対して一回または連続的に適した回数で投与され、患者に対して診断以後のいかなる時期にでも投与されるであろう。タンパク質はそれ単独の治療または問題となっている病気を治療するために有用な他の薬剤や治療と共に投与されるであろう。
【0081】
選択されたタンパク質が抗体である場合、例えば一回以上に分けられた投与であっても、約0.1から20mg/kgが患者に対する投与のための最初の候補の投与量である。しかしながら他の投与量群も有用であろう。この治療の進行はありきたりの方法で容易にモニターしうる。
【0082】
抗HER2抗体の場合、抗体の治療上の有効量はHER2受容体の大量発現によって特徴付けられるガンを治療または予防するために投与され得る。抗HER2抗体の再構成処方は胸部、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸および/または膀胱の各ガンを治療するために用いられ得る。例えば抗HER2抗体は管ガン種in situ(DCIS)を治療するために用いられ得る。抗HER2抗体の例示的な投与量は一回以上の分けられた投与に対して1-10mg/kgの範囲にある。
【0083】
抗IgE処方の使用は、例えばIgE介在性アレルギー性疾患、寄生虫の感染、間質性膀胱炎および喘息の治療または予防を含む。治療される疾患に依存して、抗IgE抗体の治療上の有効量(例えば約1-15mg/kg)が患者に投与される。
【0084】
E.製造品
本発明のもう一つの実施態様として、本発明の凍結乾燥処方を含み、その再構成および/または使用のための説明書を提供する製造品が提供される。製造品は容器を含む。適した容器は例えばビン、バイアル(例えば二重チェンバーバイアル)、シリンジ(二重チェンバーシリンジのような)およびテストチューブを含む。容器はガラスまたはプラスチックのような様々な物質から形成され得る。容器には凍結乾燥処方および容器が再構成および/または使用のための説明書の存在を示すための、またはそれと関連したラベルが入っている。例えばラベルは凍結乾燥処方が上記したようなタンパク質濃度に再構成されることを示すであろう。さらにラベルは処方が皮下投与に有用であるまたはそれを企図していることを示すであろう。処方が入っている容器は、再構成処方の繰り返しの投与(例えば2-6回の投与)を許容する複数回使用バイアルであるかもしれない。製造品はさらに適した希釈液(例えばBWFI)を含む第二の容器を含むかもしれない。希釈液および凍結乾燥処方の混合により、再構成処方における最終タンパク質濃度は一般的に少なくとも50mg/mLであろう。さらに製造品は他のバッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジおよび使用のための説明書を含むパッケージを含む商業的な観点および使用者の観点から望ましい他の物質をも含む。
【0085】
本発明は以下の実施例を参考としてより深く理解し得るであろう。しかしながら以下の実施例は本発明の範囲を制限するつもりで構成されるべきではない。全ての引用文献は参考として取り込まれる。
【実施例】
【0086】
(実施例1:抗HER2処方)
HER2原ガン遺伝子産物(p185HER2)の大量発現は、様々な進行性ヒト悪性腫瘍と関連している。muMAb4D5として知られているネズミモノクローナル抗体は、p185HER2の細胞外ドメイン(ECD)に対して向けられている。muMAb4D5分子は免疫原性を減少しおよびそれのヒトエフェクター機能をサポートさせることによって、その臨床上の効力を改良する試みにおいてヒト化されている(WO92/22653参照)。本実施例はWO92/22653に記述されているフルレングスヒト化抗体huMAb4D5-8を含む凍結乾燥処方の進展を記述する。
【0087】
凍結乾燥処方の進展において、初めに賦形剤およびバッファーが凍結乾燥および再構成の後のタンパク質の安定性を測定することによってスクリーニングされる。各処方における凍結乾燥タンパク質もまた、その貯蔵寿命を越える潜在的なタンパク質の安定性を測定するため加速された安定性の研究を受ける。これらの加速された研究は通常提案された貯蔵コンディションを越える温度で実施され、それからデータはアレニウス速度論を仮定した分解反応のための活性化エネルギーを評価するために用いられる(Cleland等,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377(1993))。そして活性化エネルギーは提案された貯蔵コンディションで予期されるタンパク質処方の貯蔵寿命を計算するために用いられる。
【0088】
初期のスクリーニング研究においては、いくつかの凍結乾燥組換えヒト化抗HER2抗体(rhuMAbHER2)処方の安定性が5℃(提案された貯蔵コンディション)および40℃(加速された安定性コンディション)でインキュベーションの後研究された。液体状態においては、rhuMAbHER2は脱アミド化(L鎖の30Asn)および環状イミド中間体、スクシンイミドを経たイソアスパラギン酸形成(H鎖の102Asp)によって分解することが観察された。脱アミド化はpH5.0で最小化され、その結果分解は主としてスクシンイミドで生じた。pH6.0ではわずかに増大した脱アミド化が液体タンパク質処方で観察された。それゆえ凍結乾燥処方は(a)5または10mMコハク酸バッファー,pH5.0または(b)5または10mMヒスチジンバッファー,pH6.0で研究された。両バッファーとも界面活性剤ポリソルベート20(Tween20(商標))を含み、それは再構成タンパク質の凝集の可能性を減少し、再構成後の微粒子の形成を最小化するために用いられた。これらのバッファーは様々な糖と共におよび糖なしで用いられた。タンパク質は5.0,21.0または25.0mg/mLでバッファー中で処方された。それからこれらのバッファーは凍結乾燥され、5℃および40℃で2週間後タンパク質の安定性を評価された。凍結乾燥器内では、バイアルはおよそ5時間、-55度の設定温度で凍結され、5℃の設定温度および30時間150mTorrで一次乾燥が引き続き、1-2%の残余の水分への乾燥は20℃の設定温度で10時間の二次乾燥を用いて達成された。凍結乾燥でのこのタンパク質の主な分解経路は凝集であり、それゆえタンパク質の安定性は完全な天然のタンパク質の回収を測定するために天然サイズ排出クロマトグラフィーによって評価された(以下の表2の完全なタンパク質の%)。
【0089】
凍結乾燥タンパク質における様々なリオプロテクタント糖の安定化効果は、10mMコハク酸ナトリウム,pH5.0(表2)において測定された。高糖濃度(250-275mM)および低タンパク質濃度(5.0mg/mL)では、トレハロースおよびラクトースは40℃で2週間貯蔵された凍結乾燥タンパク質の凝集に対してタンパク質を安定化させた。しかしながらラクトースは還元糖であるが、40℃でのより長期間の貯蔵ではタンパク質と反応することが観察された。ソルビトールまたはマンニトールのそれぞれを含む5.0mg/mLのタンパク質の処方は、40℃で2週間の貯蔵後凝集したタンパク質を生じた。高タンパク質濃度(21.0mg/mL)では、マンニトールを含むまたはソルビトールまたはグリシンと組み合わせたマンニトールを含む処方は、凍結乾燥および両コンディションでの貯蔵の後凝集したタンパク質を含んだ。対照的に、トレハロースおよびスクロースは両貯蔵コンディションでの凝集を防いだ。
【0090】
250mMトレハロースおよび250mMラクトース処方は、長期間の安定性のため評価された。40℃で9ヶ月または5℃で12ヶ月の後、トレハロース処方では完全なタンパク質の%に何の変化もなかった。ラクトース処方では完全なタンパク質の%は40℃で3ヶ月または25℃で6ヶ月の後一定(最初と同じ)のままであった。トレハロース処方は完全なタンパク質の%に有意な変化なくコントロールされた室温(15-30℃)で貯蔵可能であった。
【0091】
マンニトールを含む10mMヒスチジン,pH6.0での処方は、マンニトールを含む10mMコハク酸処方,pH5.0より2週間40℃での貯蔵の後、より少ない凝集したタンパク質を含んだ。この結果はヒスチジン単独によって貢献される安定化効果と関連があろう。しかしながら40℃で2週間の貯蔵の後、ヒスチジン単独またはヒスチジン/マンニトール処方に対して有意な凝集があった。ヒスチジン処方においてマンニトールの容量と同等のスクロース(それぞれ10mg/mL)を添加することは、両貯蔵コンディションにおける凝集に対してタンパク質を安定化させた。マンニトールと共にグリシンを使用することは、タンパク質の安定性を改善しない一方、スクロース/グリシン処方はスクロース/マンニトール処方と同じ安定性を示した。これらの結果はさらにスクロースは貯蔵の間凍結乾燥タンパク質の凝集を防ぐのに有用であることを示した。
【0092】
【表2】

【0093】
a. 完全なタンパク質の画分は天然サイズ排除HPLCおよび凝集を含む全ピークエリアと相関的な天然タンパク質のピークエリアによって測定した(TSK3000SWXLカラム,TosoHaas,1.0mL/分のフローレート;リン酸緩衝生理食塩水を用いた溶出;214および280nmで検出)。タンパク質処方は凍結乾燥の前(液体、5℃)および凍結乾燥と2週間5℃または40℃での貯蔵の後分析した。
b. 5mg/mLタンパク質を含む処方は蒸留水(20mL,5.0mg/mLタンパク質)を用いて再構成され、21mg/mLタンパク質を含む処方は注射のための静菌水(BWFI,0.9%ベンジルアルコール;20mL,20mg/mLタンパク質)を用いて再構成された。
【0094】
高タンパク質濃度の投与はしばしば容量の制限(1.5ml以下)および投与量の必要性(100mg以上)のため皮下投与が必要とされる。しかしながら高タンパク質濃度(50mg/mL以上)はしばしば高濃度ではタンパク質が工程の間凝集する傾向があり取り扱い(例えば注入)および滅菌濾過が困難となるため、製造工程において成し遂げるのに困難が生じる。代わりに凍結乾燥工程は、タンパク質の濃度を許容するための方法を提供するであろう。例えばタンパク質はある容量(Vf)でバイアルに満たされそれから凍結乾燥される。そして凍結乾燥タンパク質はもともとの容量より小さい容量(Vr)の水または防腐剤(例えばBWFI)を用いて再構成され(例えばVr=0.25Vf)、その結果再構成溶液においてより高いタンパク質濃度を達成する。この工程はまたバッファーおよび賦形剤の濃縮もまた達成する。皮下投与の場合には溶液は等張性が望ましい。
【0095】
凍結乾燥rhuMAbHER2におけるトレハロースの量は、100mg/mLタンパク質を生ずるために再構成で等張性溶液を生産するため減少された。トレハロースの安定化効果は25.0mg/mLタンパク質(表3)での5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0および5mMヒスチジン,pH6.0の濃度の関数として測定された。60から200mMのトレハロース濃度では、40℃で4週間凍結乾燥タンパク質のインキュベーションの後有意な凝集はなかった。これらの処方は20mLの注射のための静菌水(BWFI,USP,0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成された。40℃で4週間のインキュベーションの後、4mLのBWFI(100mg/mLタンパク質)を用いた50mMトレハロース処方の再構成(5mMコハク酸ナトリウム)は凝集形成のわずかな増大をもたらした。保存された再構成処方は無菌性にもかかわらず同じバイアルからの有益な複数回の吸出を提供した。滅菌針が用いられた場合、これらの処方は単一のバイアルから複数投与を可能にするであろう。
【0096】
【表3】

【0097】
a. 完全なタンパク質の画分は天然サイズ排除HPLCおよび凝集を含む全ピークエリアと相関的な天然タンパク質のピークエリアによって測定した(TSK3000SWXLカラム,TosoHaas,1.0mL/分のフローレート;リン酸緩衝生理食塩水を用いた溶出;214および280nmで検出)。タンパク質処方は凍結乾燥の前(液体、5℃)および凍結乾燥と4週間5℃または40℃での貯蔵の後分析した。処方は注射のための静菌水(BWFI,USP,0.9%w/wベンジルアルコール;20mL,22mg/mLタンパク質)を用いて再構成された。
b. 100mg/mLタンパク質を生ずるために4mLのBWFI(0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成された。
c. 100mg/mLタンパク質を生ずるために4mLのBWFI(1.1%ベンジルアルコール)を用いて再構成された。
d. 5℃または40℃で2週間インキュベートされ、それから22mg/mLタンパク質を生ずるために20mLのBWFI(0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成されたサンプル。
【0098】
現在ではrhuMAbHER2は胸部ガンの治療に対する治療法としての研究の下にある。タンパク質は患者に対して一週間に2mg/kgで投与される。これらの患者の平均体重は65kgなので、平均の毎週の投与量は130mgのrhuMAbHER2である。皮下投与のために1.5mL以下の注射容量で十分耐性であり、それゆえrhuMAbHER2の毎週の皮下投与のためのタンパク質濃度はおよそ100mg/mL(130mg平均投与量/1.5mL)であろう。上述したようにこの高タンパク質濃度は安定な形態で製造し維持するのが困難である。この高タンパク質濃度を達成するために、(a)5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0または(b)5mMヒスチジン,pH6.0に処方されたrhuMAbHER2は、60mMトレハロース、0.01%Tween20(商標)において25mg/mLで凍結乾燥された。凍結乾燥は50ccバイアル内に18mLのタンパク質処方を満たすことによって実施された。凍結乾燥器内でバイアルはおよそ5時間、-55度の設定温度で凍結され、引き続き5℃の設定温度および30時間150mTorrで一次乾燥され、20℃の設定温度で10時間の二次乾燥により残余水分が1-2%の乾燥が達成された。偽薬(タンパク質のない処方)を含むバイアルに置かれた熱電対は、バイアル中の生産物が一次乾燥を通じて-10℃より低く維持されていることを示した。凍結乾燥の間連続的にストップさせる研究により、一時乾燥後の残余水分は通常10%より低いことが明らかとなった。
【0099】
それから凍結乾燥タンパク質は濃縮タンパク質溶液を生ずるために4または20mLのBWFI(0.9または1.1%ベンジルアルコール)のそれぞれを用いて再構成された:
(a) 4mL:102mg/mLrhuMAbHER2、245mMトレハロース、21mMコハク酸ナトリウム,pH5.0または21mMヒスチジン,pH6.0、0.04%Tween20(商標);
(b) 20mL:22mg/mLrhuMAbHER2、52mMトレハロース、4mMコハク酸ナトリウム,pH5.0または4mMヒスチジン,pH6.0、0.009%Tween20(商標)。
【0100】
凍結乾燥処方を40℃で4週間貯蔵し22mg/mLタンパク質に再構成した後、凝集タンパク質の量は減少させたトレハロース濃度を用いるとわずかに増大することが明らかとなった。凍結乾燥タンパク質の安定性は再構成の容量によっては影響を受けなかった。図1に示すように、40℃での凍結乾燥タンパク質のインキュベーションの後の完全なタンパク質の量は、60mMトレハロース、5mMコハク酸ナトリウム,pH5.0、0.01%Tween20(商標)処方が4または20mLのそれぞれで再構成されても同じであった。
【0101】
表3に示されている結果はトレハロース濃度とタンパク質の安定性の間に関係が存在することを提示した。さらにこの関係を評価するために、コハク酸ナトリウムおよびヒスチジンのそれぞれにおいて処方された異なる濃度のトレハロースを含む処方を、40℃で91日間インキュベートした。そして安定性を各濃度のトレハロースにおけるタンパク質のモル比に対するトレハロースの関数として測定した。図2に示されているように、タンパク質の安定性は両処方におけるトレハロース濃度の減少に伴って明白に減少した。コハク酸とヒスチジンという二つのバッファーの間ではっきりとした相違はなく、これらの処方はこれらのコンディションの下での主要な安定剤はトレハロースであることを提示している。加えてこれら両処方に対する完全なタンパク質の観察された減少は、その貯蔵寿命を通して2-8℃で貯蔵された処方に対する低トレハロースでさえ受け入れられるであろう。しかしながらコントロールされた室温(30℃が最高の温度である)での安定性が必要であるならば、より高いトレハロース濃度(トレハロース:タンパク質が600:1以上)が生産物についての安定性特性(すなわち貯蔵の2年後に残っている完全なタンパク質の量についての特性)に依存して必要であろう。典型的にはコントロールされた室温での貯蔵コンディションは、40℃で6ヶ月間の安定性を必要とするであろうし、それは30℃で2年間の貯蔵と同等である。
【0102】
図3に示されているように、250mMトレハロース処方は40℃で6ヶ月後において変化しないが、一方60mMトレハロース処方は両方でより不安定であった。そして貯蔵寿命の終わりでの生産物特性が例えば天然サイズ排除クロマトグラフィーにおいて98%より大きい完全なタンパク質を要求するなら、60mMトレハロース処方は冷蔵貯蔵を必要とする。
【0103】
以前のスクリーニング研究においては、スクロースもまた凍結乾燥およびその後の貯蔵の後のrhuMAbHER2の凝集を防ぐことが観察された。皮下投与のための再構成の後の等張性溶液を達成するために(処方の成分およびタンパク質のおよそ4倍の濃度)、スクロース濃度は有意に減少されなければならない。スクリーニング研究で用いられたスクロースおよびマンニトール(膨張試薬)の等量の濃度は、タンパク質の凝集を妨げた。より低い濃度のスクロースおよびマンニトール(等量の濃度)がrhuMAbHER2の潜在的な皮下処方として選択された。タンパク質溶液(25mg/mLタンパク質、5mMヒスチジン,pH6.0、38.4mM(7mg/mL)マンニトール、20.4mM(7mg/mL)スクロース、0.01%Tween20(商標))を、一次乾燥サイクルを54時間に伸長することを除いて60mMトレハロース処方と同様の方式で凍結乾燥した。40℃で4週間後、4.0または20.0mLのBWFIを用いた再構成の後凝集の量においてわずかな増大があった(表3)。凝集したタンパク質の量は22または100mg/mLタンパク質での再構成で同じであった(図4)。60mMトレハロース処方と同様に、マンニトール/スクロース処方も40℃で時間をかけるとより少ない完全なタンパク質を生じた。この処方でのタンパク質に対するスクロースのモル比は、1に対して120であり、マンニトール/スクロースの組み合わせは同じ濃度の安定化のための糖でトレハロース単独よりもより有効であろう(図2および図4)。
【0104】
以前の実施例においては、凍結乾燥rhuMAbHER2処方の安定性は温度の関数として測定された。これらの研究はトレハロースおよびマンニトール/スクロース処方が高温(40℃)での凍結乾燥状態におけるタンパク質の分解を妨げることを示した。しかしながらこれらの実施例は再構成および貯蔵後のタンパク質の安定性に注意を向けていなかった。一度BWFIを用いて再構成されると、凍結乾燥rhuMAbHER2処方は薬剤の複数回の投与に用いられ得る。特にバイアル構成(450mgrhuMAbHER2)は平均的な患者に対して3回の投与量を提供するようにデザインされている(一回の投与量当たり130mgrhuMAbHER2)。薬剤は毎週投与されるので、バイアルは再構成の後少なくとも3週間貯蔵されるであろう。rhuMAbHER2が再構成の後安定なままであることを確かめるために、再構成rhuMAbHER2処方についての安定性の研究が5℃および25℃で実施された。
【0105】
皮下投与のために、処方は100mg/mL(4mLBWFI)に再構成された。この高タンパク質濃度では、タンパク質は22mg/mLタンパク質(20mLBWFI)に再構成された静脈投与量より凝集に影響されやすいであろう。以前の実施例から4つのrhuMAbHER2処方を凝集(完全なタンパク質のロス)のため評価した。表4から表6に示されているように、22および100mg/mLタンパク質で再構成された処方に対する安定性において相違はなかった。さらにこれらの処方は5℃で90日までそして25℃で30日まで完全にタンパク質の完全性を維持し、再構成タンパク質は少なくとも90日間冷蔵して貯蔵可能であることを示した。以前の実施例の凍結乾燥タンパク質の安定性とは異なり、処方におけるトレハロース濃度はタンパク質の安定性に影響しなかった(表7)。
【0106】
【表4】

【0107】
サンプルは4.0または20.0mLのBWFI(1.1%または0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃または25℃で貯蔵された。完全なタンパク質の%は天然サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された天然ピークエリアの画分として定義された。ND=検出無し。
【0108】
【表5】

【0109】
サンプルは4.0または20.0mLのBWFI(1.1%または0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃または25℃で貯蔵された。完全なタンパク質の%は天然サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された天然ピークエリアの画分として定義された。ND=検出無し。
【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
サンプルは20.0mLのBWFI(0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成され、それから5℃または25℃で貯蔵された。完全なタンパク質の%は天然サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された天然ピークエリアの画分として定義された。ND=検出無し。
【0113】
以前に言及したように、水溶液中のrhuMAbHER2に対する主な分解経路は、脱アミド化またはスクシンイミド形成である。脱アミド化またはスクシンイミド形成のためにロスした天然のタンパク質を4つの再構成rhuMAbHER2処方について評価した。
【0114】
rhuMAbHER2脱アミド化およびスクシンイミド形成の分析は、カチオン交換クロマトグラフィーを用いて実施された。Bakerbond Wide-Pore Carboxy Sulfon(CSX)カラム(4.6×250mm)を、1mL/分のフローレートで用いた。移動相バッファーは(A)0.02Mリン酸ナトリウム,pH6.9および(B)0.02Mリン酸ナトリウム,pH6.9、0.2MNaClであった。それからクロマトグラフィーを以下のように40℃で実施した:
【0115】
【表8】

【0116】
ピーク溶出は214nmでモニターし、75μgのタンパク質を各分析で流した。
【0117】
再び22および100mg/mLタンパク質で再構成された処方の安定性において相違はなかった(図5から図7)。タンパク質の分解は各処方に対して5℃より25℃で迅速であり、分解の割合は5℃で貯蔵した全ての処方に対して比較できた。ヒスチジンを含む処方はコハク酸処方より25℃でわずかに増大した分解割合を示した。処方におけるトレハロースの割合は、各温度で分解割合に影響しなかった(図5および図8)。これらの結果はこれら4つの処方が企図された使用期間(BWFIでの再構成後30日)冷蔵貯蔵コンディション(5℃)の下で許容される分解の割合を提供することを示した。
【0118】
複数回使用処方は米国での使用に対するUS Pharmacopeia(USP)によって記述された防腐剤効力テストをパスした。25mg/mLタンパク質、5mMヒスチジン,pH6.0、60mMトレハロース、0.01%Tween20(商標)より成るrhuMAbHER2凍結乾燥処方は、0.9から1.5%w/wの間の濃度での20mLのベンジルアルコールを用いて再構成された。1.3%w/w以上の濃度に対しては、再構成溶液は室温(〜25℃)でのオーバーナイトでのインキュベーションの後濁った。標準的なBWFI溶液(0.9%ベンジルアルコール)を用いた再構成では、一貫して防腐剤チャレンジテストをパスしないという結果となった。しかしながら1.0または1.1%ベンジルアルコールを用いた再構成は両方が処方と両立でき、防腐剤チャレンジテストにパスした。溶液に対する製造者の特性は±10%の範囲を必要とし、それゆえ凍結乾燥処方は1.1%のベンジルアルコール(1.1±0.1%)を用いて再構成される。
【0119】
rhuMAbHER2処方に対する単一工程凍結乾燥サイクルが創り出された。単一工程凍結乾燥サイクルでは、25mg/mLのrhuMAbHER2、60mMトレハロース、5mMヒスチジン,pH6および0.01%ポリソルベート20が、20℃の設定温度で150mTorrの圧力で凍結乾燥された。47時間後凍結乾燥塊の残余水分含有量は5%より少なかった。凍結乾燥サイクルは二次乾燥ステップを除去することによって製造工程を簡易化するのに有用であると考えられる。
【0120】
(実施例2:抗IgE処方)
IgE抗体はマスト細胞上の特異的な高アフィニティー受容体に結合し、マスト細胞脱顆粒およびヒスタミンのようなメディエーターの放出を引き起こし、該メディエーターはアレルギーと関連する症状を生ずる。この故に高アフィニティー受容体に対するIgEの結合をブロックする抗IgE抗体は、アレルギーの治療において潜在的な治療上の価値がある。これらの抗体は一度IgEが受容体に結合したらIgEに結合してはならないが、それはこの事がヒスタミン放出を引き起こすであろうからである。この実施例はPresta等,J.Immunology,151:2623-2632(1993)に記述されているフルレングスヒト化抗IgE抗体MaE11を含む凍結乾燥処方の進展を記述する。
【0121】
物質: Tween20(商標)を含まない高く精製されたrhuMAbE25(組換えヒト化抗IgE抗体MaE11)を以下に記述する処方において用いた。Spectra/Por7透析メンブレンをSpectrum(Los Angeles,CA)から購入した。この研究で用いられる他の全ての試薬は商業的に得られ、分析的な品質をなした。処方バッファーおよびクロマトグラフィー移動相は、容積定量フラスコ内でMilli-Q水を用いて適した量のバッファーおよび塩を混ぜることによって調製した。
【0122】
処方: E25 S Sepharoseプールを指定したような処方バッファー内で透析した。透析は2-8℃で48時間以上で最低で4×2Lのバッファー交換を伴った。透析に引き続いて、リオプロテクタントを必要とされる処方のいくつかに等張性濃度で加えた。透析に引き続くタンパク質濃度は1.60のモル吸光率を用いたUV分光器で測定した。透析したタンパク質を適した処方バッファーを用いて所定の処方濃度に希釈し、0.22μmMillex-GVフィルター(Millipore)を用いて滅菌濾過し、前もって洗浄しオートクレーブしたガラスバイアル内に分配した。このバイアルをシリコーン処理したテフロン(登録商標)の凍結乾燥化用の栓を用いてふたをし、以下のコンディションを用いて凍結乾燥した:E25処方を80℃/時で-55℃で凍結し、バイアル内容物を4時間凍結したままにした。設定温度は一次乾燥のため10℃/時で25℃に勾配をなした。凍結乾燥塊の残余水分が1-2%になるように、一次乾燥を25℃、50μチェンバー真空圧で39時間で実施した。凍結乾燥に引き続いて、各処方のバイアルからt=0の分析を取り除いて、残りのバイアルを-70℃,2-8℃,25℃,30℃(コントロールされた室温)40℃および50℃を含む様々な温度で容器に入れた。
【0123】
クロマトグラフィー: 天然サイズ排除クロマトグラフィーをBio-Rad Bio-Select(商標)SEC 250-5カラム(300×7.8mm)を用いて実施した。カラムを平衡化し、ダイオード配列検出器を装備したHewlett Packard 1090L HPLCを用いて0.5mL/分のフローレートでPBSを流した。チログロブリン(670kd)、ガンマグロブリン(158kd)、オボアルブミン(44kd)そしてシアノコバラミン(1.35kd)より成る分子量スタンダード(Bio-Rad,Inc.)をカラムを較正するために用いた。サンプル積載量は25μgであり、タンパク質はTurbochrom 3 ソフトウェアー(PE Nelson,Inc.)を用いて214nmでUV吸収をモニターすることによって検出した。
疎水性インターラクションクロマトグラフィー: E25抗体のF(ab')断片をTosoHaas Butyl-NPR カラム(3.5×4.6mm)およびダイオード配列検出器を装備したHewlett Packard 1090L HPLCを用いてクロマトグラフィーにかけた。溶出バッファーAは20mMTris、2M硫酸アンモニウム、20%(v/v)グリセロール,pH8.0であり、一方溶出バッファーBは20mMTris、20%(v/v)グリセロール,pH8.0であった。10%溶出バッファーBを用いて最低20分1.0mL/分のフローレートでカラムを平衡化した。サンプル積載量は5μgであり、タンパク質はTurbochrom 3 データ捕捉ソフトウェアー(PE Nelson,Inc.)を用いて214nmでUV吸収をモニターすることによって検出した。サンプルの注入に引き続いて、カラムを1分間10%バッファーBで維持し、それから20分10%から62%のバッファーBの直線勾配を形成した。カラムを5分間100%バッファーBを用いて洗浄し、連続的なサンプル注入の間最低20分10%バッファーBを用いて再平衡化した。
【0124】
抗体結合活性: IgE受容体結合阻害アッセイ(IE25:2)をPresta等,上記参照に記述されているようにアッセイ希釈液(リン酸緩衝生理食塩水、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20、0.01%Thimerosol)内に20μg/mLおよび30μg/mLに希釈したサンプルで実施した。それから各希釈液を三重でアッセイし、その結果に活性濃度を生ずるために適した希釈ファクターを掛けた。6つのアッセイの結果の平均をとった。該アッセイはIgEに競合的に結合し、それゆえELISAプレートに固定化された高アフィニティー受容体へのIgEの結合を妨げるrhuMAbE25の能力を測定した。その結果をUV吸収分光器で測定し特異的活性として報告されたように、抗体濃度によって割った。以前の実験でこのアッセイは安定性を示していることが示されている。
【0125】
微粒子アッセイ: 凍結乾燥rhuMAbE25の再構成バイアルを、およそ7mLの容量を成し遂げるために貯めた。1mLのサンプル内に存在する2から80μmの範囲のサイズの粒子数のカウントをHiac/Roycoモデル8000カウンターを用いて測定した。カウンターは最初1mLのサンプルで3回洗浄し、1mLのサンプルの測定を三重で実施した。器械は10μm以上であるmL当たりの粒子数および25μm以上であるmL当たりの粒子数を測定した。
【0126】
抗IgE抗体においての処方の進展の最初のステップは、生産物の凍結乾燥および貯蔵に適したバッファーとpHを決定することであった。5.0mg/mLの濃度で抗体はpH5.0からpH6.5の範囲の10mMコハク酸バッファーおよびpH7.0のリン酸ナトリウム、リン酸カリウムそしてヒスチジンバッファー内に処方された。図9は増大した抗体の凝集が凍結乾燥の前後両方でより高いpH処方で観察されたことを示す。例外はpH7のヒスチジン処方であり、それでは凝集における増大が2-8℃での貯蔵で観察されなかった。図10はpH6およびpH7の両方で5mMヒスチジンバッファーで凍結乾燥され、2-8℃,25℃および40℃で1年間貯蔵されたrhuMAbE25を示す。各アッセイの時間点および貯蔵温度で、pH6処方はpH7で処方された抗体より少ない凝集を示していた。これらの結果はpH6でのヒスチジンは抗体の凝集を妨げるために特に有用なバッファー系であることを示す。
【0127】
リオプロテクタントのスクリーニングを容易にするため、抗IgE抗体をリオプロテクタントの存在下または不存在下でpH5でコハク酸ナトリウム内に処方した。等張性濃度で加えられた潜在的なリオプロテクタントを、3つのカテゴリーに分類した:
(a) 非還元単糖類(すなわちマンニトール);
(b) 還元二糖類(すなわちラクトースおよびマルトース);そして
(c) 非還元二糖類(すなわちトレハロースおよびスクロース)。
【0128】
1年間の2-8℃および40℃での貯蔵に引き続く処方の凝集は、図11および図12に示されている。2-8℃での貯蔵では、単糖類処方(マンニトール)はバッファーコントロールと同様の割合で凝集したが、一方二糖類を含む処方は凝集をコントロールする点において等しく有効であった(図11)。40℃での貯蔵に引き続く結果は迅速に凝集した(それは凍結乾燥塊の褐色化と相関した)スクロース処方を除いて同様であった。これは酸性pHおよび高温の両方で貯蔵に引き続くスクロースの分解によって引き起こされることが後に示された。
【0129】
ラクトースと共にpH6でヒスチジンバッファー内に処方された抗体の疎水性インターラクションクロマトグラフィーは、抗体が40℃で6ヶ月引き続いた貯蔵で変性することを示す(図13)。クロマトグラフィーピークは広がって、保有時間が減少する。これらの変化は図14および図15のそれぞれに示されているように、バッファーコントロールおよび同様のコンディションの下で貯蔵されたスクロース処方では観察されない。さらに等電点電気泳動は、ラクトースで処方され25℃および40℃で貯蔵された抗体のpIでは酸性のシフトを示した。これは還元糖が抗体に対するリオプロテクタントとして適さないことを示す。
【0130】
50℃で12週間引き続いた貯蔵で、様々な濃度のスクロースおよびトレハロースと共なるpH6での5mMヒスチジンバッファー内における20mg/mLの濃度での抗IgEの凍結乾燥処方の凝集が図16に示されている。糖濃度が抗体のモル当たり500モルの糖より大きい場合、両糖とも凝集に対する同様の保護効果を持つ。これらの結果から、スクロースおよびトレハロースの両者の等張性及び高張性処方はさらなる進展として同定された。処方は比較的低濃度の抗体で凍結乾燥の前に満たされるためデザインされ、凍結乾燥生産物は0.9%ベンジルアルコールを含む注射のための静菌水(BWFI)を用いて満たされるより少ない容量で再構成される。これは皮下投与の前に迅速に抗体の濃縮を可能にし、潜在的な複数回使用処方のために防腐剤を含み、一方で長期間の保存においてタンパク質と防腐剤の間の相互作用を避ける。
【0131】
等張性処方: 25mg/mLでの抗IgEは抗体のモル当たり500モルの糖と共にpH6で5mMヒスチジンバッファー内に処方されたが、これは85mMの糖濃度に等しい。この処方は満たされたものより4倍少ない容量でBWFI(0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成される。これは240mMの等張性糖濃度を用いたpH6での20mMヒスチジン内に100mg/mLの抗体という結果となる。
【0132】
高張性処方: 25mg/mLでの抗IgEは抗体のモル当たり1000モルの糖と共にpH6で5mMヒスチジンバッファー内に処方されたが、これは161mMの糖濃度に等しい。この処方は満たされたものより4倍少ない容量でBWFI(0.9%ベンジルアルコール)を用いて再構成される。これは644mMの等張性糖濃度を用いたpH6での20mMヒスチジン内に100mg/mLの抗体という結果となる。
【0133】
36週間以上の等張性および高張性処方に貯蔵に引き続いた抗体の凝集の比較が図17から図19に示されている。2-8℃の貯蔵ではでは凝集における変化は等張性および高張性処方のそれぞれで観察されない(図17)。コントロールされた室温(30℃)での貯蔵では、増大した凝集は高張性処方では観察されないが、一方で等張性処方では1から2%の凝集の増大が生ずる(図18)。最後に50℃での貯蔵に引き続いて、高張性処方では最小化した増大が観察され、等張性トレハロース処方では4%の凝集の増大か生じ、等張性スクロース処方では12%の凝集の増大が生ずる(図19)。これらの結果は等張性処方は30℃以上の温度での貯蔵において抗体の安定性を維持するために必要とされる最小限の量の糖を含むことを示す。
【0134】
等張性および高張性処方における抗IgEの結合活性を、IgE受容体阻害アッセイにおいて測定した。等張性および高張性のスクロースおよびトレハロース処方の結合活性は本質的に、36週間以上の-70℃,2-8℃,30℃および50℃での貯蔵に引き続いて変化しないことがわかった。
【0135】
タンパク質の凍結乾燥処方は不溶性凝集物または微粒子を含むことが知られている(Cleland等,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,10(4):307-377(1993))。よって85mMおよび161mMのスクロースおよびトレハロースを添加した5mMヒスチジン,pH6内に25mg/mLの濃度で凍結乾燥された抗体の微粒子アッセイを実施した。0.005%,0.01%および0.02%の濃度で処方にポリソルベート20を加えた。サンプルを凍結乾燥し、340mMおよび644mMの糖と共に20mMヒスチジン,pH6内に100mg/mLの抗体の再構成に引き続いてアッセイした。再構成に引き続くポリソルベート20の濃度は0.02%,0.04%および0.08%であった。
【0136】
以下の表9は等張性および高張性のスクロースおよびトレハロース処方由来の10μm以上および25μm以上のサイズの粒子数を示す。ポリソルベート20を凍結乾燥の前に0.005%,0.01%および0.02%の濃度で処方に加えた。その結果は処方へのTween20(商標)の添加が各サイズ範囲でテストされた粒子数を有意に減少することを示す。少容量注射に対するUS Pharmacopia(USP)特性は、容器当たりの10μm以上の粒子が6000以下であり、25μm以上の粒子が600以下である(Cleland等,上記参照)。ポリソルベート20を添加すると高張性及び等張性処方の両方がこの特性をパスする。
【0137】
【表9】

【0138】
抗IgE抗体の皮下投与に有用であると考えられるこの抗体の進展した処方(143mgバイアルのrhuMAbE25の等張性処方)が以下の表10に示されている。10ccバイアルを0.01%ポリソルベート20と共にpH6.0で5mMヒスチジンで処方された25mg/mLの濃度のrhuMAbE25の5.7mLで満たす。抗体に対する糖のモル比が1に対して500になるように85mMの濃度でスクロースをリオプロテクタントとして加える。バイアルを凍結乾燥し、満杯の容量の4分の1または1.2mLまで0.9%ベンジルアルコールを用いて再構成する。処方における成分の最終濃度は0.04%ポリソルベート20および340mMスクロース(等張性)および0.9%ベンジルアルコールを用いてpH6で20mMヒスチジン内に100mg/mLrhuMAbE25になるように4倍まで増大させる。抗体の凝集に対して示された保護効果のため、処方はpH6でヒスチジンバッファーを含む。製薬産業での以前の使用のため、スクロースをリオプロテクタントとして加えた。糖の濃度は再構成において等張性処方を生ずるために選択された。最後にポリソルベート20を不溶性凝集物の形成を防ぐために加える。
【0139】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約50mg/mLの量のタンパク質および希釈液を含む安定な等張性再構成処方であり、その再構成処方はタンパク質およびリオプロテクタントの凍結乾燥混合物から調製され、そこでは再構成処方内のタンパク質濃度が凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度の約2-40倍高い処方。
【請求項2】
リオプロテクタントがスクロースまたはトレハロースである請求項1の処方。
【請求項3】
さらにバッファーを含む請求項1の処方。
【請求項4】
バッファーがヒスチジンまたはコハク酸である請求項3の処方。
【請求項5】
さらに界面活性剤を含む請求項1の処方。
【請求項6】
少なくとも約50mg/mLの量の抗体および希釈液を含む安定な等張性再構成処方であり、その再構成処方は抗体およびリオプロテクタントの凍結乾燥混合物から調製され、そこでは再構成処方内の抗体濃度が凍結乾燥前の混合物中の抗体濃度の約2-40倍高い処方。
【請求項7】
抗体が抗IgE抗体または抗HER2抗体である請求項6の処方。
【請求項8】
等張性である請求項6の処方。
【請求項9】
再構成処方におけるタンパク質の濃度が少なくとも50mg/mLであるように希釈液中のタンパク質およびリオプロテクタントの凍結乾燥混合物を再構成することを含む安定な等張性再構成処方の調製法で、そこでは再構成処方内のタンパク質濃度が凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度の約2-40倍高い処方。
【請求項10】
(a) タンパク質およびリオプロテクタントの混合物の凍結乾燥:
(b) 再構成処方が等張性で安定であり、少なくとも約50mg/mLのタンパク質濃度であるような希釈液中で(a)工程の凍結乾燥混合物を再構成すること
の各工程を含む処方の調製法。
【請求項11】
再構成処方におけるタンパク質濃度が約80mg/mLから約300mg/mLである請求項10の方法。
【請求項12】
再構成処方におけるタンパク質濃度が凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度の約2-40倍高い請求項10の方法。
【請求項13】
凍結乾燥が全体の凍結乾燥工程を通じて約15-30℃で維持された設定温度で実施される請求項10の方法。
【請求項14】
(a) タンパク質およびリオプロテクタントの凍結乾燥混合物が入っている容器;および
(b) 少なくとも約50mg/mLの再構成処方におけるタンパク質濃度にする希釈液を用いて凍結乾燥混合物を再構成するための説明書
を含む製造品。
【請求項15】
さらに希釈液が入っている第二の容器を含む請求項14の製造品。
【請求項16】
希釈液が芳香族アルコールを含む注射のための静菌水(BWFI)である請求項15の製造品。
【請求項17】
リオプロテクタントおよび抗体の凍結乾燥混合物を含む処方で、そこではリオプロテクタント:抗体のモル比が約100-1500モルリオプロテクタント:1モル抗体である処方。
【請求項18】
処方におけるタンパク質を用いた治療の必要がある疾患を持つ哺乳動物を治療するための薬剤の調製における請求項1の処方の使用。
【請求項19】
処方が皮下投与のためである請求項18記載の使用。
【請求項20】
約5-40mg/mLの量の抗HER2抗体、約10-100mMの量のスクロースまたはトレハロース、バッファーおよび界面活性剤を含む処方。
【請求項21】
さらに膨張試薬を含む請求項20の処方。
【請求項22】
凍結乾燥され少なくとも6ヶ月30℃で安定な請求項20の処方。
【請求項23】
再構成処方における抗HER2抗体濃度が約10-30mg/mLであるように希釈液を用いて再構成され、そこでは再構成処方が少なくとも約30日間2-8℃で安定である請求項20の処方。
【請求項24】
約5-40mg/mLの量の抗IgE抗体、約80-300mMの量のスクロースまたはトレハロース、バッファーおよび界面活性剤を含む処方。
【請求項25】
凍結乾燥され少なくとも1年約30℃で安定である請求項24の処方。
【請求項26】
再構成処方におけるタンパク質の濃度が少なくとも50mg/mLであるように希釈液中で、混合物中で糖:タンパク質のモル比が100-600モル:1モルであるタンパク質および糖の凍結乾燥混合物を再構成する工程を含む安定な等張性再構成処方の調製法で、再構成処方内のタンパク質濃度が凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度の2-40倍高い調製法。
【請求項27】
(a) 混合物中で糖:タンパク質のモル比が100-600モル:1モルであるタンパク質および糖の混合物を凍結乾燥する工程:
(b) 再構成処方が等張性で安定であり、少なくとも50mg/mLのタンパク質濃度であるように希釈液中で(a)工程で得られた凍結乾燥混合物を再構成する工程
を含む処方の調製法。
【請求項28】
再構成処方におけるタンパク質濃度が80mg/mLから300mg/mLである請求項27の方法。
【請求項29】
再構成処方におけるタンパク質濃度が凍結乾燥前の混合物中のタンパク質濃度の2-40倍高い請求項27または28の方法。
【請求項30】
凍結乾燥が全体の凍結乾燥工程を通じて15-30℃で維持された設定温度で実施される請求項27から29のいずれか一項の方法。
【請求項31】
糖がスクロースまたはトレハロースである請求項26から30のいずれか一項の方法。
【請求項32】
さらにバッファーを加える工程を含む請求項26から31のいずれか一項の方法。
【請求項33】
バッファーがヒスチジンまたはコハク酸である請求項32の方法。
【請求項34】
さらに界面活性剤を加える工程を含む請求項26または33のいずれか一項の処方。
【請求項35】
再構成処方における抗体の濃度が少なくとも50mg/mLであるように希釈液中で、混合物中で糖:抗体のモル比が100-600モル:1モルである抗体および糖の凍結乾燥混合物を再構成する工程を含む安定な再構成処方の調製法で、再構成処方内の抗体濃度が凍結乾燥前の混合物中の抗体濃度の2-40倍高い調製法。
【請求項36】
抗体が抗IgE抗体または抗HER2抗体である請求項35の方法。
【請求項37】
さらに再構成処方を等張性とする工程を含む請求項35または36の方法。
【請求項38】
(a) 混合物中で糖:タンパク質のモル比が100-600モル:1モルであるタンパク質および糖の凍結乾燥混合物が入っている容器;および
(b) 少なくとも50mg/mLの再構成処方におけるタンパク質濃度にする希釈液を用いて凍結乾燥混合物を再構成するための説明書
を含む、請求項1の方法を実施するための製造品。
【請求項39】
さらに希釈液が入っている第二の容器を含む請求項38の製造品。
【請求項40】
希釈液が芳香族アルコールを含む注射のための静菌水である請求項39の製造品。
【請求項41】
安定な等張性再構成処方が、処方におけるタンパク質を用いた治療の必要がある疾患を持つ哺乳動物を治療するために使用される請求項26の方法。
【請求項42】
処方が皮下投与用である請求項41記載の方法。
【請求項43】
5-40mg/mLの量の抗IgE抗体、80-300mMの量のスクロースまたはトレハロース、バッファーおよび界面活性剤を含む処方の凍結乾燥混合物を、希釈液中で再構成する工程を含む安定な再構成処方の調製法。
【請求項44】
抗体がモノクローナル抗体である請求項35の方法。
【請求項45】
糖が非還元糖である請求項26の方法。
【請求項46】
糖が二糖類である請求項26の方法。
【請求項47】
糖が非還元二糖類である請求項46の方法。
【請求項48】
安定な再構成処方が、処方における抗体がHER2受容体に結合し、HER2受容体の大量発現によって特徴付けられるガンを治療するために使用される請求項35の方法。
【請求項49】
処方が皮下投与用である請求項48記載の方法。
【請求項50】
糖:抗体のモル比が200-600モル:1モルである請求項35の方法。
【請求項51】
希釈液が滅菌水または滅菌塩水溶液である請求項39の製造品。
【請求項52】
再構成処方におけるモノクローナル抗体の濃度が50から400mg/mLであるように希釈液中で、混合物中で糖:モノクローナル抗体のモル比が200-600モル:1モルであるモノクローナル抗体ならびにスクロースおよびトレハロースからなる群から選択される糖の凍結乾燥混合物を再構成する工程を含む安定な再構成処方の調製法で、再構成処方内のモノクローナル抗体濃度が凍結乾燥前の混合物中のモノクローナル抗体濃度の2-40倍高い調製法。
【請求項53】
抗体が、HER2受容体に結合する抗体であって、子宮内膜、肺、結腸および膀胱ガンからなる群から選択されるガンを治療するために使用される請求項35の方法。
【請求項54】
抗体が、HER2受容体に結合する抗体であって、HER2受容体の大量発現によって特徴付けられるガンを治療するために使用され、皮下投与される抗体である、請求項35の方法。
【請求項55】
ガンが胸部、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸および膀胱ガンからなる群から選択される請求項54の方法。
【請求項56】
(a) 希釈液中で、50mg/mLから400mg/mLの量の、哺乳動物においてHER2受容体と結合する抗体と、糖との凍結乾燥混合物を再構成する工程であって、再構成処方内の抗体濃度が凍結乾燥前の混合物中の抗体濃度の2-40倍高い工程;および
(b) (a)工程で得られた再構成処方を使用して薬剤を調製する工程
を含む、哺乳動物中でのHER2受容体の大量発現によって特徴付けられるガンを治療するための薬剤の調製法。
【請求項57】
処方が皮下投与用である請求項56記載の方法。
【請求項58】
哺乳動物がヒトである請求項56または57の方法。
【請求項59】
抗体が、HER2受容体に結合する抗体であって、非浸潤性乳癌を治療するために使用される請求項35の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−256205(P2011−256205A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−202957(P2011−202957)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2007−135911(P2007−135911)の分割
【原出願日】平成8年7月23日(1996.7.23)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】