説明

タンパク質の安定な液体処方物および凍結乾燥処方物

本発明はN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合した遊離チオール基少なくとも1つを有する安定なタンパク質誘導体、例えば抗体、抗体フラグメントまたはペプチドおよびそのような誘導体の調製方法に関する。更に又そのようなタンパク質またはその誘導体を含む安定な液体薬学的処方物およびそのようなタンパク質を含む安定な凍結乾燥薬学的処方物を提供する。本発明は又、抗体の安定なFab’フラグメントを作製する方法、および、薬学的処方物の1つ以上の用量を傷害組織に適用することを含む傷害または癌性の組織の新脈管形成を制御する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般的に免疫学および薬学的処方物の分野に関する。特に、安定化分子に連結したチオール基1つ以上を有する抗体またはそのフラグメントまたはペプチドのようなタンパク質を含む安定な液体および凍結乾燥の薬学的処方物に関する。タンパク質、例えば抗体は、代表的に遊離チオール基およびさらなる安定化成分または賦形剤を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
抗体およびポリペプチドは、種々の疾患(例えば癌、自己免疫疾患、心臓障害および感染性疾患が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために現在使用されている最も重要な治療用のタンパク質の1つである。
【0003】
癌の処置における典型的な必要性は、正常組織を害することなく癌組織に特異的である処置に関するものである。従って、抗体および抗体フラグメント、例えば抗原結合Fabフラグメントは、それらが他の分子によって典型的には与えられない特異性を有しているため、その特異性は非常に望ましいものである。
【0004】
例えば、増殖中の腫瘍は高レベルの新脈管形成活性を特徴とする。新脈管形成性の血管系は、腫瘍組織を破壊または抑制し正常組織は未損傷のまま存続させるための化学療法分子により、必要に応じて標的化される多くのアップレギュレートされた細胞表面マーカー、例えばインテグリンを有している。例えば化学療法分子は、必要に応じて、腫瘍細胞に特異的に結合し、正常組織は未損傷のまま存続させる抗体または抗体フラグメントに結合される。
【0005】
小型ペプチドもまた癌、例えばメラノーマの治療において使用される。プロテオグリカンNG2/HMに結合するペプチドはメラノーマ関連抗原であり、その発現はメラノーマ細胞の増殖能力を増大させるが、それを用いてメラノーマ細胞を標的化することができる。例えば腫瘍における新脈管形成性血管系を選択的に標的化する非抗体ペプチドを記載した特許文献1を参照のこと。
【0006】
腫瘍増殖を抑制する別の方法は、プロテインC系をブロックする化合物に関する。例えば抗プロテインCまたは抗活性化プロテインC抗体を必要に応じて使用して、プロテインC経路を破損させる。これは生来の抗凝固経路をブロックし、腫瘍毛細管内の微細血管血栓症をもたらす。この経路において、腫瘍以外の部位で血栓症の合併症が起こる場合には、抑制作用を迅速に逆にする必要があり得る。従って、完全長の抗体よりも短い半減期を有するFabまたはFab’フラグメントが好ましい。例えばEsmonの特許文献2を参照のこと。
【0007】
より短い半減期は他の治療、例えば新脈管形成術のような処置中の血塊形成または凝血を防止する場合にも望ましい。例えば、アメリカ合衆国における主要な死因である心臓血管疾患は、現在、抗血栓抗体およびポリペプチドを用いて治療されている。このような医薬としては、ヘパリン、アスピリン、インテグリリン(環状ヘプタペプチド)、抗GP−IIb/IIIa抗体などが挙げられる。代表的には、過剰な出血が起こった場合に作用を逆転または停止させることができるようにこれらの医薬においてはより短い半減期が望ましい。従って、抗体Fab’フラグメントおよび小型ペプチドは、それらが完全長のタンパク質または抗体よりも短い半減期を有していることから、このような処置のために有用である。
【0008】
通常存在する抗体(免疫グロブリン)は、ジスルフィド結合で一緒に連結された重鎖2本および軽鎖2本を含み、各軽鎖は重鎖の一方にジスルフィド結合で連結されている。各鎖はN末端可変ドメイン(VHまたはVL)およびそのC末端の定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列されてこれとジスルフィド結合し、そして軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列されている。重鎖定常領域は、(N末端からC末端の方向に)CH1、ヒンジ、CH2およびCH3領域を含む。
【0009】
抗体は、種々の抗原結合フラグメントに分割またはフラグメント化することができる。大部分の抗体分子はパパイン消化により重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(CH1)で2量化された軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメインを含有する2つのFabフラグメントおよび残余のFcドメインが形成される。各Fabフラグメントは代表的には単一の抗原結合フラグメントを含む。
【0010】
Fab’フラグメントは、それらが抗体ヒンジ領域に由来するシステイン1つ以上を含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個のさらなる残基を含む点においてFabフラグメントとは異なっている。Fab’−SHは、本明細書中においては定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を含有するFab’フラグメントについて使用される表記である。パパインによる抗体の消化により生成するF(ab’)抗体フラグメントは、最初にヒンジシステインを介してジスルフィド結合されるFab’−SHフラグメントの対として生成する。以下に記載するように、Fab’−SHフラグメントは、代表的には、例えば特定の状況下において抗体のパパイン消化により形成される。しかしながら露出した遊離チオール基の存在に起因して、Fab’−SHフラグメントは代表的には液体処方物中では安定ではない。
【0011】
実際、ヒトの使用を意図した多くのタンパク質およびペプチド調製物が、調製物の使用の前のタンパク質の変性、凝集および他の変化を防止するために安定化剤を必要とする。このことは、遊離チオール基1つ以上を含有するタンパク質の場合、そのような分子は特に酸化および凝集を起こしやすいため、特に問題となる。
【0012】
タンパク質中のシステインの酸化は分子内および分子間のジスルフィド結合の形成をもたらし、そして、ジスルフィド連結タンパク質凝集を生じさせる場合がある(例えば非特許文献1;非特許文献2を参照のこと)。システインの酸化は又、ジスルフィド結合並びにタンパク質の他の残基に更に酸化的損傷をもたらす可能性がある反応性酸素物質種の生成をもたらす。
【0013】
液体処方物中のシステインの酸化を防止するために使用される一部のストラテジーは酸化過程を開始するために金属イオンを使用できなくするEDTAのような金属キレート剤の使用を包含する(例えば非特許文献3を参照のこと)。他の一般的に使用されている薬学的抗酸化剤もまたシステインの酸化を防止する(例えば非特許文献4;Adami,Mらの特許文献3を参照のこと)。システイン酸化は又タンパク質含有溶液のpHを低下させることによりスフフィドリル基(pKa8.5)をプロトン化し、酸化反応を開始させる金属イオンとのその反応を抑制することにより低下させることもできる(例えば非特許文献5を参照のこと)。
【0014】
穏やかな還元剤として作用する賦形剤、例えばシステインの添加もまた、例えばタンパク質分子中のシステインの酸化に起因するジスルフィド連結凝集物の形成を低減するために必要に応じて使用される。しかしながら、この方法は、混合されたジスルフィド結合が反応性還元剤とタンパク質中の遊離チオール基との間に形成される場合が多いため、液体タンパク質含有処方物の開発においては限定的な用途しかない。凝集を防止するための穏やかな還元剤としてのシステインの使用は、極めて水溶性が低く経時的に沈殿する傾向があるシスチンの形成をもたらす遊離システインの酸化の可能性のために、更に限定的なものとなる。
【0015】
他の既存の方法はタンパク質の安定な誘導体を作製し、次に誘導体を適切な医薬品溶液に処方することである。1つの例においては、チオール基を親水性重合体に結合させる(特許文献4)か、または、ヒドラジンに連結させる(特許文献5)ことにより安定な誘導体を形成する。遊離チオール基を含有する抗体フラグメント、例えばFab’フラグメントはポリエチレングリコール(PEG)分子に連結することにより安定化され、例えばPEG化抗体とする(例えば非特許文献6を参照のこと)。遊離チオール基は又必要に応じてニトロシル化および/またはs−ニトロソ化を解して安定化される(例えば非特許文献7を参照のこと)。
【0016】
液体処方物中の反応性遊離チオールを有するタンパク質を安定化させるために使用できる選択肢が限られているため、安定化のための他の選択肢、例えば凍結乾燥が文献に記載されている(例えば非特許文献8を参照のこと)。しかしながら、別の安定化方法がなお生物学的医薬品に対して必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,528,481号明細書
【特許文献2】米国特許第6,423,313号明細書
【特許文献3】国際公開第92/01442号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,210,707号明細書
【特許文献5】米国特許第6,576,746号明細書
【非特許文献1】J.Biol.Chem.、1992年、第267巻、p.11307−11315
【非特許文献2】Free Radical Biol.Med.、1989年、第7巻、p.659−673
【非特許文献3】Pharm.Res.10、1993年、第649−659巻
【非特許文献4】Biotechnol.Appl.Biochem.、2000年、第32巻、p.145−154
【非特許文献5】Biophys.J.、1995年、第68巻、p.2218−2223
【非特許文献6】Chapman,A.P.ら、Advanced Drug Delivery Reviews、2002年、第54巻、p.531−545
【非特許文献7】Sumbayev V.V.ら、FEBS Letters、2003年、第535巻、p.106−112
【非特許文献8】Rodney PearlmanおよびY.John Wang編、「Formulation,Characterization and Stability of Protein Drugs,Case Histories」、Pharmaceutical Biotechnology、1996年、第9巻、Plemum Press、NY
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ペプチドおよび抗体の医薬品の重要性および例えば液体処方物中の遊離チオールを有するタンパク質を安定化させるために使用される選択肢が限定されていることから、これ等のタンパク質を安定化させるための別の薬剤および方法の必要性がなお明確に存続している。例えば増大した生物学的安定性のタンパク質医薬品の必要性が存在していると提唱している新脈管形成の抑制のためのフィブロネクチン結合ポリペプチドを記載している米国特許6,475,488を参照できる。本発明はこれ等の必要性および他の事柄を後述するとおり充足するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明は安定な液体および凍結乾燥タンパク質組成物およびそのような組成物の調製方法を提供する。例えば遊離チオール基を含むタンパク質をスルフィドリル反応性分子、例えばN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合させることにより例えば液体処方物中のタンパク質を安定化させる。
【0019】
1つの局面において、本発明はタンパク質を含む組成物であって、タンパク質がN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合したチオール基を含む上記組成物を提供する。1つの実施形態において、タンパク質は抗体、抗体フラグメント、例えばFab’フラグメントを含む。本発明の代表的な抗体はIgG4抗体のFab’フラグメントを含む。別の実施形態において、本発明のタンパク質はインテグリン、例えばα5β1またはα4β1インテグリンまたは抗凝固タンパク質またはペプチド、例えばReopro(登録商標)、インテグリリンなど、および心臓障害の治療に使用されるペプチド、例えばウロジラチン、ネシリチド等に結合する抗体を含む。1つの実施形態において、本発明は配列番号1および/または2のアミノ酸配列を有する抗α5β1インテグリン抗体および/またはそのFab’フラグメントを含む。
【0020】
別の局面において、本発明はタンパク質またはタンパク質誘導体および薬学的に受容可能なキャリアを含む安定な液体または凍結乾燥の薬学的処方物であって、タンパク質がN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合したチオール基を含む上記薬学的処方物を提供する。本発明の代表的なタンパク質は抗体、例えばIgG4抗体、抗体フラグメント、例えばFab’フラグメント、抗凝固タンパク質およびペプチド等を包含するがこれ等に限定されない。例えば本発明の1つの薬学的処方物はα5β1インテグリンに結合する抗体フラグメント、例えば配列番号1に示す重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体を含む。
【0021】
別の局面において、本発明はタンパク質組成物、例えば安定化剤、例えばN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合したタンパク質を調製するための方法を提供する。この方法は代表的には本発明のタンパク質、例えば遊離チオール基を有する抗体または抗凝固ペプチドを例えばナトリウムテトラチオネートの存在下にN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインと共にインキュベートすることにより安定化剤をタンパク質のチオール基に結合することを含む。
【0022】
例えば本発明はN−アセチル−L−システインに抗体のFab’フラグメントを結合させる方法を提供する。本発明の代表的な方法はパパインで抗体を消化することによりFab’フラグメントを生成することを包含し、ここでFab’フラグメントは遊離チオール基を含む。次にFab’フラグメントを代表的にはナトリウムテトラチオネートの存在下にN−アセチル−L−システイと共にインキュベートすることにより遊離チオール基を介してFab’フラグメントにN−アセチル−L−システインを結合させる。その他の工程、例えばFab’フラグメントの精製もまた本発明において提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
液体および凍結乾燥された処方物中のFab’−SH抗体フラグメントのような遊離チオールを有するタンパク質の安定性の問題に着目して、本発明は安定化剤、例えばスルヒドリル反応性安定化分子を遊離チオールの結合のために利用する。従って本発明は例えば医薬品において使用するための安定化されたタンパク質誘導体および安定化されたタンパク質誘導体を調製する方法を提供する。
【0024】
本発明の好ましいタンパク質は例えば抗体、抗体フラグメントおよびペプチドを包含する。本発明の分子は代表的にはN−アセチル−L−システイン(NAC)分子、システイン(CYS)分子またはN−エチル−マレイミド(NEM)分子のような安定化剤に目的の分子中の遊離チオールを結合することにより安定化される。遊離チオールは必要に応じてタンパク質分子の末端にあり、そしてポリペプチド鎖に内在化されたもの、およびタンパク質分子の疎水性コア内に埋没しているものを包含する。タンパク質のコア内に埋没しているものは、例えば変性剤、例えば尿素または塩酸グアニジンを用いて部分的に展開することにより安定化剤への結合のために埋没チオールを露出させる。
【0025】
好ましい実施形態においてはタンパク質はIgG4抗体であり、より好ましくはキメラまたはヒト化抗体またはそのフラグメントである。例えばタンパク質は必要に応じてインテグリン、例えばα5β1インテグリン、α4β1インテグリン等に結合する抗体、またはそのような抗体のFab’−SHフラグメントである。他の実施形態においては、タンパク質はウロジラチン、ネシリチド、インテグリリン等のようなペプチドである。
【0026】
本発明の安定化剤はN−アセチル−L−システイン(NAC)、システイン(CYS)およびN−エチル−マレイミド(NEM)または本発明のタンパク質が例えばジスルフィド結合を介して結合する他のスルヒドリル反応性分子を包含する。例えばN−アセチル−L−システイン(NAC)は食品中の添加物として一般的に使用されている分子である。これは強力な抗酸化剤であり、錠剤、カプセル、粉末、顆粒または非水性溶液中の懸濁液のような患者への経腸的な投与のための認可された不活性成分である(例えば米国特許第4,920,122号;同第6,207,190号;および同第6,689,385号を参照のこと)。Waterman K.らもまた液体および固体の処方物の両方における抗酸化剤としてのNACの使用を開示している(Waterman K.ら、Pharmaceutical Development and Technology 7(1):1−32(2002))。
【0027】
本発明によれば、NAC、NEMおよび/またはCYSもまた必要に応じて遊離チオールへの結合を行うことなく液体または凍結乾燥処方物においてタンパク質を安定化させるための賦形剤として使用される。この方法は、ジスルフィド連結凝集物の形成を低減または抑制することにより凍結乾燥過程の開始前の液体処方物中、および、凍結乾燥された生成物中の遊離チオールを有するタンパク質の安定化を可能にする。本発明の方法および組成物を以下の更に詳細に説明する。
【0028】
本明細書においては、「タンパク質誘導体」という用語はNAC、NEM、CYSまたは他のスルヒドリル反応性分子に結合されたチオール基を有するタンパク質を指す。「タンパク質」とは本明細書においては、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ポリペプチド、ペプチド等を包含する。例えば、本発明のペプチドは代表的には約5〜約50アミノ酸である。更に又、本発明のタンパク質は必要に応じて天然に存在するタンパク質または非天然存在のタンパク質である。
【0029】
「薬学的処方物」という用語は当該分野で知られた生理学的に受容可能な賦形剤およびキャリアの溶液を指す。特定の薬学的処方物を使用するための適切な投薬および投与の用法を開発するための方法は当該分野でよく知られている。本発明の薬学的処方物はタンパク質またはタンパク質誘導体が物理的、化学的および生物学的に安定に存続できるようにする。
【0030】
本発明の意味において使用される「安定な」(または「安定性」)とは、タンパク質組成物が保存時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的安定性を維持することを意味する。所定の時間に渡るタンパク質の安定性および温度安定性を測定するための種々の分析手法は当該分野でよく知られており、そして例えば“Peptide and Protein Drug Delivery”, 247−301, Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker, Inc.,New York, N.Y.,Pubs.(1991)およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)に記載されている。安定性は必要に応じて例えば選択された時間に渡り選択された温度に曝露した後に測定する。
【0031】
タンパク質、例えば抗体、抗体フラグメント、ポリペプチドまたはペプチドは、例えば色および/または透明性に関する目視による試験において、またはUV光散乱、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(size exclusion chromatography)(SEC)、SDS−PAGEまたは他の当該分野で知られた方法で測定した場合に凝集、沈殿および/または変性が有意に増大していない場合に薬学的処方物中で「物理的安定性を維持する」とする。タンパク質変性は又、必要に応じて、三次構造を測定するために蛍光を用いるか、二次および三次構造の変化を測定する円偏光二色性スペクトル分析(CDスペクトル分析)を用いるか、および/または、二次構造を測定するためにFTIRを用いることにより、評価される。
【0032】
タンパク質、例えば抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドは、それが有意な化学的改変を示さない場合に薬学的処方物中で「その化学的安定性を維持する」ものとする。化学的安定性は必要に応じてタンパク質の化学的に改変された形態を検出および/または定量することにより評価される。化学的改変は必要に応じて代表的にはサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー、SDS−PAGEおよび/またはマトリックス支援レーザー脱着イオン化/飛行時間型質量スペクトル(MALDI/TOF MS)および当該分野でよく知られた他の分析方法を用いて評価される大きさの変化(例えば切片または切片化)を包含する。他の型の化学的改変はイオン交換クロマトグラフィーで評価できる電荷の改変(例えば脱アミド化の結果として生じる)を包含する。切片化/脱アミド化および/または異性化はCIEFプロファイルの変化をもたらす。脱アミド化および/または異性化もまた当該分野でよく知られたイソアスパラギン酸形成をもたらす。
【0033】
タンパク質、例えば抗体、抗体フラグメント、ポリペプチドまたはペプチドは、所定の時点におけるタンパク質の生物学的活性が薬学的処方物の調製時に示された生物学的活性の所定の範囲内にある場合に、薬学的処方物中で「その生物学的活性を維持する」ものとする。タンパク質が抗体である場合は、抗体の生物学的活性は必要に応じて、例えば抗原結合試験により測定する。
【0034】
「安定な液体処方物」または「安定な凍結乾燥処方物」は、冷蔵庫温度、例えば約2℃〜約8℃において、少なくとも約12ヶ月、好ましくは約2年間、そしてより好ましくは約3年間;または室温、例えば約22℃〜約28℃において、少なくとも約3ヶ月、好ましくは約6ヶ月、そして更に好ましくは約1年間、タンパク質の有意な物理的、化学的または生物学的な変化を示さないタンパク質、例えば本明細書に記載した抗体またはそのフラグメントまたはタンパク質誘導体を含む液体処方物または凍結乾燥処方物を含む。安定性の基準は以下の通り、即ち、SEC−HPLCにより測定した場合にタンパク質単量体の分解が約10%以下、そして好ましくは約5%以下であるものとする。好ましくは、溶液は目視による分析により無色または透明〜僅かに乳光色のままである。処方物の濃度、pHおよび浸透圧は約±10%の変化を越えないものとする。力価は代表的には対照値の約70〜130%、好ましくは80〜120%とする。タンパク質の切片化は約10%以下、好ましくは約5%以下とする。タンパク質凝集は約10%以下、好ましくは約5%以下とする。
【0035】
「緩衝液」という用語は溶液のpHを例えば許容範囲に維持する物質を包含し、例えばクエン酸ナトリウム、コハク酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、ヒスチジン、リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、TRIS(登録商標)(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミン等を包含する。好ましい緩衝液は約5.0〜約8.0の範囲のpHを有し;そして好ましくは約6.0〜7.0のpHを有する。この範囲にpHを制御する緩衝物質の例はコハク酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、リン酸塩および他の有機酸の緩衝物質である。
【0036】
「凍結乾燥」という用語はまず「予備凍結乾燥された(pre−lyophilized)」液体形態にあり、その後、真空環境において凍結して昇華させることにより氷または凍結溶媒が除去された物質を指す。凍結乾燥過程において、賦形剤を予備凍結乾燥された液体処方物内に含有させることにより、例えば凍結乾燥された生成物の保存時の安定性が増強される。
【0037】
「増量剤」という用語は凍結乾燥された生成物に別の構造を付与する(例えば薬学的に受容可能なケーキ状物とすること)ことができる物質を包含する。一般的に使用されている増量剤はマンニトール、グリシン、乳糖、スクロース等を包含する。薬学的に受容可能なケーキ状物を与えるほかに、増量剤は又、代表的には凍結乾燥された組成物に有用な性質を付与し、例えば崩壊温度を改変したり、凍結解凍時の保護となったり、長時間保存におけるタンパク質安定性を更に増強させるなどの働きを有する。これ等の物質は又張力調節剤としても機能できる。
【0038】
「低温保護剤」という用語は一般的に凍結が誘導する負担に対抗してタンパク質またはタンパク質誘導体を安定化させる物質を包含する。それらは又代表的には一次および二次乾燥、および長期間の製品保存に間の保護も与える。このような低温保護剤の例は、デキストランおよびポリエチレングリコールのような重合体;スクロース、グルコース、トレハロースおよび乳糖のような糖類;ポリソルベートのような界面活性剤;およびグリシン、アルギニン、セリン等のようなアミノ酸である。
【0039】
「凍結乾燥保護剤」という用語は、恐らくは不定形のガラス状のマトリックスを与えることにより、そして、水素結合を介してタンパク質またはタンパク質誘導体に結合することにより、例えば乾燥過程の間に除去される水分子を置き換えて、乾燥または「脱水」の過程(一次および二次乾燥サイクル)の間にタンパク質に安定性を与える物質を包含する。これにより、タンパク質のコンホーメーションが維持され、凍結乾燥サイクルの間のタンパク質の分解を最小限とし、そしてタンパク質またはタンパク質誘導体の長期安定性を向上させる。例示されるものはポリオール類または糖類、例えばスクロースおよびトレハロースである。
【0040】
「希釈再調製時間」とは例えば粒子非含有の清澄な溶液を得るために液体で凍結乾燥処方物を再水和させるために必要な時間である。
【0041】
「等張」という用語はヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を目的処方物が有することを意味する。等張性の処方物は一般的に約270〜320mOsmの浸透圧を有する。圧力において僅かに低張性の浸透圧は約250〜269mOsmであり、僅かな高張性は約328〜350mOsmである。浸透圧は例えば蒸気圧または氷凍結型浸透圧計を用いて測定する。
【0042】
本発明の処方物において有用な張力調節剤は例えば塩類、例えばNaCl、KCl、MgCl、CaCl等であり、浸透圧を制御するために使用する。更に又、低温保護剤/凍結乾燥保護剤および/または増量剤、例えばスクロース、マンニトール、グリシンおよび他のものは張力調節剤として機能することができる。
【0043】
(I.タンパク質およびその製造方法)
タンパク質はアミノ酸残基の重合体である。本明細書においては、「タンパク質」という用語は天然に存在するアミノ酸およびその重合体、並びに、アミノ酸残基1つ以上が天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸重合体、並びに修飾された残基を含有するアミノ酸重合体および非天然存在のアミノ酸重合体を包含する。
【0044】
アミノ酸は天然に存在するおよび合成のアミノ酸、並びにアミノ酸類縁体および天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸模倣物を包含する。天然に存在するアミノ酸は遺伝子コードによりコードされるもの、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸類縁体は天然に存在するアミノ酸と同様の基本的化学構造、例えば水素に結合したα炭素、カルボキシ基、アミノ基およびR基を有する化合物を包含する。このような類縁体は例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを包含する。このような類縁体は必要に応じて修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を含むが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。「アミノ酸模倣物」とはアミノ酸の全体的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学物質をさす。
【0045】
本発明に包含されるタンパク質は分泌タンパク質、膜貫通タンパク質または細胞内タンパク質を包含する全種類のタンパク質を包含する。好ましいタンパク質は例えば癌または心不全の治療において使用するための抗体またはそのフラグメントまたはペプチドを含む。
【0046】
本発明により提供される安定化方法および組成物から利益を被ることができる現在使用可能な抗体医薬品は例えばトラスツズマブ、(Herceptin(登録商標)、Genentech,Inc);オマリズマブ、(Xolair(登録商標))エファリズマブ(RaptivaTM、Genentech,Inc);ベバシズマブ(AvastinTM、Genentech,Inc);ダクリズマブ(Zanapax(登録商標)、Roche);パリビズマブ(Synagis(登録商標)、MedImmune,Inc);ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、パリビズマブ(Synagis(登録商標))およびゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標)、Wyeth)を包含する。更に又、開発の種々の段階にある以下の治療用製品、即ちエプラツズマブ(Vitaxin(登録商標))、アポリズマブ(Zamyl(登録商標))およびラベツズマブ(CEA−Cide(登録商標))も本発明の方法および組成物において必要に応じて使用される。
【0047】
別の好ましい本発明のタンパク質はポリペプチド、例えば米国特許第6,239,101号(Esmonら)に記載の抗凝固ポリペプチドを含む。例えばエプチフィバチド(Integrelin(登録商標))は血小板糖タンパク質IIb/IIIaを選択的にブロックする静脈内環状ヘプタペプチドである。これは可逆的に血小板に結合し、短い半減期を有する。冠動脈新脈管形成、心筋梗塞および狭心症において患者の治療に有効であることが示されている。
【0048】
アブシキシマブ(Reopro(登録商標))Centocor B.V.)はキメラヒトネズミモノクローナル抗体7E3のFabフラグメントである。この抗体はヒト血小板の糖タンパク質IIb/IIIa受容体に結合し、血小板凝集を抑制する。これは又血小板上のビトロネクチンαvβ3受容体に結合する。Reopro(登録商標)は血小板凝集を抑制することにより血塊形成を防止することにより冠動脈新脈管形成に関連する合併症を低減する多受容体拮抗剤である。
【0049】
心不全に対する身体の正常な応答の一部として心臓により分泌されるヒトB型ナトリウム排泄増加性ペプチド(hBNP)と称される天然のヒトペプチドは別のペプチド医薬品、例えば内因性ヒトペプチドの組み換え型であるNatrecor(登録商標)(ネシリチド)の基本である。Natrecor(登録商標)は急性心不全の治療において使用される。
【0050】
上記したものは本明細書に記載した方法を用いて必要に応じて安定化される種々のペプチド、ポリペプチドおよび抗体である。以下の詳細な説明を参照することにより多くの他のタンパク質が本明細書に記載した組成物および方法を用いて必要に応じて安定化されることは当業者の知る通りである。
【0051】
本発明の天然に存在するタンパク質は当該分野でよく知られた方法、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィーにより単離および精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製手法である。他の精製手法、例えばイオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上クロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSETTM上のクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)上のクロマトグラフィー、クロマト電気泳動、SDS−PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿も使用される。
【0052】
本発明のタンパク質は又必要に応じて組み換え生産される。本発明のタンパク質をコードするDNA分子を種々の発現ベクターと共に使用することにより、例えば原核生物または真核生物の細胞内でタンパク質を発現する。発現ベクターおよび組み換えDNAは当該分野でよく知られている(例えばAusubel、上出およびGene Expression Systems(Fernandes&Hoeffler,eds,1999)参照)。本発明のタンパク質は代表的には、目的のタンパク質、例えば抗凝固タンパク質をコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された宿主細胞をタンパク質の発現を誘導または誘発する適切な条件下に培養することにより製造される。タンパク質の発現に適切な条件は発現ベクターおよび宿主細胞の選択に応じて変動し、そして慣習的な実験または最適化により当業者が容易に確認できるものである。適切な宿主細胞は酵母、細菌、原始細菌、カビ、昆虫および動物の細胞、例えば哺乳類細胞を包含する。特に有利なものは、サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)および他の酵母、E.coli、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)、Sf9細胞、C129細胞、293細胞、アカパンカビ属(Neurospora)、BHK、CHO、COS、HeLa細胞、HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、NS0細胞、THP1細胞(マクロファージ細胞系統)および種々の他のヒト細胞および細胞系統である。組み換え生産されたタンパク質は又必要に応じて、例えば上記または当該分野で知られた何れかの手法により精製される。
【0053】
好ましい実施形態においては、本発明のタンパク質はチオール基1個以上を含有し、これはタンパク質の如何なるドメインまたは領域にも位置することができる。1つの局面において、チオール基は露出しており、即ち、例えばNAC、NEMまたはCYSと反応してよいようにタンパク質の表面に存在する。本発明の別の局面において、チオール基は隠蔽、例えばタンパク質の何れかの折り畳み三次元構造内に埋没している。そのような場合は、タンパク質は尿素または塩酸グアニジンのような変性剤により部分的に展開することにより例えば隠蔽されたチオール基をNAC、NEMまたはCYS等と反応するために使用できるようにする。次に変性剤は代表的には除去することにより、例えば抗インテグリン抗体のようなタンパク質を折り戻してその活性な(またはネイティブの)三次元構造とする。
【0054】
(II.抗体およびその調製方法)
本発明に従って安定化される代表的なタンパク質は抗体を含む。本発明の目的のためには、「抗体」という用語は特定の抗原と免疫学的に反応する免疫グロブリン分子を包含し、そしてポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方を包含する。用語は又、ヒト化(例えばヒト化ネズミ抗体)、霊長類化またはキメラの抗体およびヘテロ結合抗体(例えば二重特異性抗体)のような遺伝子操作された形態も包含する。「抗体」という用語は又、抗原結合形態または抗原結合能力を有するフラグメントを包含する抗体の部分(例えばFab’、Fab’−SH、F(ab’)、Fab、FvおよびrIgG)を包含する。Pierce Catalog and Handbook,1994−1995(Pierce Chemical Co.,Rockford, IL)も参照できる。更に例えばKuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York(1998)も参照できる。用語は又組み換え1本鎖Fvフラグメント(scFv)も指す。更に又、「抗体」という用語は2価または二重特異性の分子、ダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディを包含する。2価または二重特異性の分子は例えばKostelnyら、(1992)J Immunol 148:1547,Pack and Pluckthun(1992)Biochemistry 31:1579,Hollingerら、1993,上出、Gruberら、(1994)J Immunol:5368,Zhuら、(1997)Protein Sci6:781,Huら、(1996)Cancer Res.56:3055,Adamsら、(1993)Cancer Res.53:4026およびMcCartneyら、(1995)Protein Eng.8:301に記載されている。
【0055】
特定の抗原と免疫学的に反応する(即ち抗原に結合する)抗体は、例えばHuseら、Science 246:1275−1281(1989);Wardら、Nature 341:544−546(1989);およびVaughanら、Nature Biotech.14:309−314(1996)を参照しながらファージまたは同様のベクターにおける組み換え抗体のライブラリからの選択など、組み換え方法により、或いは、抗原または抗原をコードするDNAで動物を免疫化することにより、作製することができる。
【0056】
代表的には、免疫グロブリンは重鎖および軽鎖を含む。各重鎖および軽鎖は定常領域および可変領域を含有する(領域は又「ドメイン」とも称する)。軽鎖および重鎖の可変領域は「相補性決定領域」即ち「CDR」とも称される3つの超可変領域で中断された4つの「フレームワーク」領域を有する。種々の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は種内では比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、代表的には構成要素の軽鎖および重鎖の複合的フレームワーク領域は三次元空間内にCDRを位置づけて配置させる働きを有する。
【0057】
「V」という用語はFv、scFv、Fab’−SHまたはFabの重鎖を包含する抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「V」に言及する場合は、Fv、scFv、dsFv、Fab’−SHまたはFabの軽鎖を包含する抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0058】
CDRは抗原のエピトープへの抗体またはそのフラグメントの結合に主に関与するものである。各鎖のCDRは代表的には、N末端から出発して順次番号付けされるCDR1、CDR2およびCDR3と称され、そしてやはり代表的には特定のCDRが位置する鎖により識別される。即ち、VCDR3はそれが存在する抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、VCDR1はそれが存在する抗体の軽鎖の可変ドメインに位置する。
【0059】
「1本鎖Fv」または「scFv」という用語は伝統的な2本鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが連結して1つのポリペプチド鎖を形成している抗体を指す。代表的にはリンカーペプチドを2本の鎖の間に挿入することにより適切な折り畳みと活性な抗原結合部位の形成を可能にする。
【0060】
本発明の抗体、例えば抗インテグリン抗体は必要に応じてキメラ抗体である。「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が異なる、または改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、または、キメラ抗体新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤等に連結されるように、定常領域またはその部分が改変、置き換えまたは交換されているか;または、(b)可変領域またはそのv/vが、異なる、または改変された抗原特異性を有する可変領域で改変、置き換えまたは交換されている免疫グロブリン分子である。好ましい実施形態においてはキメラ抗体の可変領域はマウスから誘導され、定常領域は人から誘導される。キメラ抗体を作製するためには、2つの異なる種から誘導された部分(例えばヒト定常領域およびネズミ可変または結合領域)を従来の手法により化学的に連結するか、または、遺伝子工学の手法により単一のコンティグタンパク質として調製することができる。キメラ抗体の軽鎖および重鎖の両方のタンパク質をコードするDNA分子をコンティグタンパク質として発現することができる。キメラ抗体の作製方法は米国特許第5,677,427号;米国特許第6,120,767号;米国特許第6,329,508号に開示されており、これ等の各々は全体が参考として本明細書中に援用される。
【0061】
本発明の好ましい抗体はヒト化抗体である。「ヒト化抗体」とは非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小の配列を含有する免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体はそれ自体のネイティブのCDRが所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギ等のような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含する。一部の場合において、相当する非ヒト残基はヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を置き換える。ヒト化抗体は又必要に応じてレシピエント抗体中およびインポートされたCDRまたはフレームワーク配列内の何れにも存在しない残基を含む。代表的には、ヒト化抗体は少なくとも1つ、そして代表的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのうち全てまたは実質的に全てのCDR領域は非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、そしてフレームワーク(FR)領域の実質的に全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は代表的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含むことが最適である。ヒト化方法および抗体に関しては、Queen等の米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号(これ等の各々は全体が参考として本明細書中に援用される)を参照できる。更に又Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Riechmannら、Nature 332:323−329(1988);およびPresta, Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照できる。抗体のヒト化は又、例えばWinterおよび共同研究者の方法(Jonesら,Nature 321:522−525(1986); Riechmannら,Nature 332:323−327(1988);またはVerhoeyenら、Science 239:1534−1536(1988))に従って、ヒト抗体の相当する配列とげっ歯類CDRまたはCDR配列とを置き換えることにより実施することもできる。米国特許第5,585,089号も参照できる。
【0062】
本発明の実施において有用な抗体はまた必要に応じて完全ヒト抗体である。完全ヒト抗体は必要に応じて種々の手法により製造される。一例はトリオーマ法である。基本的な方法およびこの方法で使用するための例示される細胞融合の相手、SPAZ−4はOestbergら、Hybridoma 2:361−367(1983);Oestbergの米国特許第4,634,664号;およびEngleman等の米国特許第4,634,666号に記載されている(これ等の各々は全体が参考として本明細書中に援用される)。完全ヒト抗体はまた必要に応じてヒト免疫グロブリン遺伝子座の少なくともセグメントをコードするトランスジーンを有する非ヒトトランスジェニック動物から製造される。これらの特性を有する動物の作製および特性は例えば各々の全体が参考として本明細書中に援用されるLonberg等のWO93/12227:米国特許第5,545,806号;およびKucherlapatiらのWO91/10741;米国特許第6,150,584号に詳細に記載されている。
【0063】
種々の組み換え抗体ライブラリ手法もまた完全ヒト抗体の製造のために必要に応じて利用される。例えば1つの方法はHuseら、Science 246:1275−1281(1989)に記載されている一般的プロトコルに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリをスクリーニングすることである。このライブラリから、代表的にはあらかじめ選択されている抗原またはそのフラグメントへの結合により、抗体またはそのフラグメントを選択する。次にこのような抗体(または抗体の結合フラグメント)をコードする配列をクローニングし、そして増幅させる。Huseにより記載されたプロトコルはファージディスプレイ技術と組み合わせるとより効率的になる。例えばDowerら、WO91/17271およびMcCaffertyら、WO92/01047;米国特許第5,969,108号を参照できる(これらの各々は全体が参考として本明細書中に援用される)。これらの方法において、ファージのライブラリはそのメンバーがその外面に種々の抗体をディスプレイするように作製する。抗体は通常はFv、scFVまたはFab’−SHフラグメントとしてディスプレイされる。所望の特異性を有する抗体をディスプレイするファージは、抗原またはそのフラグメントへの結合により選択する。
【0064】
真核生物リボソームは必要に応じて抗体のライブラリをディスプレイするための手段として使用され、それは各々の全体が参考として本明細書中援用されるCoia Gら、J.Immunol.Methods 1:254(1−2):191−7(2001);Hanes J.ら、Nat.Biotechnol.18 (12):1287−92(2000);Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95(24):14130−5(1998); Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 94(10):4937−42(1997)に記載されている通り、α5β1のような標的抗原に対してスクリーニングすることにより選択してよい。
【0065】
抗体ライブラリは又必要に応じて、標的抗原に対するヒト抗体およびそれらをコードする核酸を得る目的のために酵母細胞の表面にディスプレイされる。この方法は参考として全体が本明細書中に援用されるYeungら、Biotechnol.Prog.18(2):212−20(2002);Boeder,E.T.ら、Nat.Biotechnol.15(6):553−7(1997)に記載されている。或いは、ヒト抗体ライブラリは細胞内で発現させ、そして酵母ツーハイブリッド系を介してスクリーニングする(参考として全体が本明細書中に援用されるWO0200729A2を参照のこと)。
【0066】
本発明の抗体は必要に応じて、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて更に精製することができ、例えばプロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製手法である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適正は代表的には抗体に存在する何れかの免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプにより変動する。プロテインAは必要に応じてヒト¡、¡または¡重鎖に基づく抗体を精製するために使用される(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。全てのマウスアイソタイプおよびヒト¡に対するアフィニティーリガンドとしてはプロテインGが推奨される(Gussら、EMBO J.5:1567−1575(1986))。アフィニティーリガンドが結合するマトリックスは代表的にはアガロースであるが、別のマトリックスも必要に応じて使用される。例えば、機械的に安定なマトリックス、例えば制御された細孔を有するガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンを用いれば、アガロースを用いる場合よりも速い流束および短い処理時間が可能となる。抗体がCH3ドメインを含む場合は、BakerbondABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)を精製のために使用できる。回収すべき抗体に応じて、他のタンパク質精製手法、例えばイオン交換樹脂上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSETTM上のクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)上のクロマトグラフィー、クロマト電気泳動、SDS−PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿も使用される。
【0067】
本発明の抗体は代表的にはヒト、ニワトリ、ヤギおよびげっ歯類(例えばラット、マウス、ハムスターおよびウサギ)、例えば人抗体を生産するように遺伝子操作されたトランスジェニックげっ歯類(例えば各々の全体が参考として本明細書中に援用されるLonberg等のWO93/12227:米国特許第5,545,806号;およびKucherlapatiらのWO91/10741;米国特許第6,150,584号を参照のこと)を包含するがこれらに限定されない種から誘導される。
【0068】
本発明の抗体は全ての型の定常領域を含む抗体、例えばIgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEおよび何れかのアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgG4を包含し、IgG4が好ましいアイソタイプである。抗体の軽鎖は必要に応じてカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖である。抗体は代表的には少なくとも10−1、10−1、10−1、10−1または1010−1の結合親和性でそのエピトープに結合する。
【0069】
好ましい実施形態においては、本発明の抗体または抗体フラグメントはα5β1インテグリンの少なくとも1つのサブユニットに特異的に結合するα5β1インテグリンに対する抗体である。抗体の結合特異性は必要に応じて当該分野で知られた方法、例えば同時免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ、ラジオ免疫沈降、酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、ドットブロットまたはウエスタンブロット試験、阻害または競合試験およびサンドイッチ試験により評価する。免疫学的およびイムノアッセイの操作法については例えばBasic and Clinical Immunology(Stites&Terr eds.,7th ed.1991)を参照できる。
【0070】
本発明の抗体は必要に応じて種々の形態、例えばα5β1インテグリンまたはそのフラグメントに対する例えばモノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、完全ヒトおよび/または二重特異性の抗体において提供される。これらの抗体は代表的には当該分野で知られた、および/または、上記した何れかの方法により作製される。
【0071】
本発明の抗α5β1インテグリン抗体は好ましくはα5β1インテグリンの生物学的活性少なくとも1つ、例えば受容体結合活性、シグナリング誘導およびα5β1により誘導される細胞応答を中和する。好ましくは、このような中和抗体はα5β1のそのシグナリング分子への結合と競合することができるか、或いは、結合を完全にブロックさえする。このような抗体は好ましくは腫瘍の新脈管形成を抑制および/または増殖内皮細胞死を誘導する。
【0072】
好ましい実施形態においては、α5β1インテグリン抗体は2003年11月26日に出願された米国特許出願10/724,274(公開番号US2005/0054834A1、参考として全体が本明細書中に援用される)に開示されているものであり、これは抗相手インテグリン抗体M200を開示しており、これは高親和性のキメラIgG4抗体である(ヒトIgG4定常領域を有する)。M200は以下の重鎖アミノ酸配列:
【0073】
【化1−1】

KEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQ
【0074】
【化1−2】

を含む。
【0075】
M200はまた以下の軽鎖アミノ酸配列:
【0076】
【化2】

を含む。
【0077】
米国特許出願10/724,274はまたF200、即ちM200のFab’フラグメントを開示している。
【0078】
(III.Fab’−SHフラグメントおよびその調製方法)
1つの実施形態において、本発明のタンパク質は抗体のFab’−SHフラグメントを含む。Fab’−SHフラグメントを製造する新しい方法も本発明により提供される。特に、好ましくは約6.0〜約8.0、より好ましくは約7.0のpHにおいて、還元剤の存在下または非存在下、固定化された形態または好ましくは溶液中の何れかにおいて、ペプシンまたはパパインの何れかにより原料抗体を消化する。反応は代表的には約15°C〜約50°C、好ましくは約30°C〜40°C、そして最も好ましくは約37°Cで行う。原料抗体がIgG4型である場合は、消化酵素パパインが代表的には好ましい。パパイン/抗体の比(重量)は代表的には約1:10〜1:10、好ましくは約1:10〜1:10、そしてより好ましくは約1:10である。消化は約1〜100時間、好ましくは約1〜10時間、そしてより好ましくは約3〜4時間行う。当該分野で知られた種々の還元剤、例えばDTT、システイン、β−メルカプトエチルアミンおよびN−アセチル−L−システインを必要に応じて消化において使用する。還元剤の濃度は代表的には約0.1〜100mM、好ましくは約1〜50mM、そしてより好ましくは約1〜20mMである。
【0079】
好ましい実施形態においては、原料抗体はIgG4クラスの抗体、好ましくはキメラまたはヒト化IgG4抗体である。より好ましい実施形態においては、抗体はM200(配列番号1〜2により与えられる)またはHuMV833である。HuMV833はヒト化抗VEGF抗体である。図1はIgG4抗体のパパイン消化の模式図である。パパインは2つの重鎖内ジスルフィド結合の間で切断する。C230−C230ジスルフィド結合の還元は230位における露出した遊離チオール基を有するFab’フラグメントの放出のために必要である。
【0080】
当該分野で代表的に使用されている固定化パパインではなく、本発明では消化過程においては可溶性パパインを好ましく使用する。固定化パパインは保存料としてアジ化ナトリウムを含有する場合が多く、これは臨床薬製造のためには問題となる場合が多い。本明細書に開示した可溶性パパインの使用はこの問題を回避する。可溶性パパインを使用することの別の利点は低パパイン/抗体比で抗体を消化することである。例えば可溶性パパインをパパインが抗体に対して1:10000の比(重量)(例えば100ppm)で用いた場合、M200は3時間で99%消化される。これとは対照的に、固定化パパインを使用した場合は、同じ消化効率を達成するためには1:5のパパイン/抗体比が必要である。可溶性パパインを使用することの別の利点はそれがカチオン交換樹脂(CEX)から容易に除去される点である。更にまた、可溶性パパインは暗所4〜8°Cにおいてアジ化ナトリウム非含有の保存料中に保存した場合、13ヶ月の活性損失は50%未満である。
【0081】
可溶性パパインは必要に応じて抗体精製に使用されるプロテインAとマトリックスの間の連結のタンパク質分解性の消化を誘発し、これによりプロテインAを溶液中に放出させる。結果として、本発明の方法は代表的には更に潜在的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィーの前に消化後混合物を精製する工程を含む。例えば、カチオン交換クロマトグラフィーを必要に応じて使用してパパイン、残留還元剤、未消化原料抗体、Fcおよび他の不純物を除去する。その後代表的には痕跡量の未消化抗体を除去するための追加的後工程としてプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用する。プロテインA精製後の抗体フラグメントは必要に応じて例えば当該分野でよく知られた方法を用いて限外濾過/透析濾過緩衝液交換および処方物に付す。
【0082】
上記した通り製造されたFab’フラグメント、例えばナタリズマブのフラグメントまたはM200のフラグメントは後に詳述する安定化剤を用いて誘導体化されるのに適した状態にある。
【0083】
(IV.タンパク質誘導体およびその調製方法)
本発明はジスルフィド結合を介してNAC分子、NEM分子またはCYS分子に結合したチオール基少なくとも1つを有する安定なタンパク質誘導体を含む組成物を提供する。方法は代表的には好ましくはナトリウムテトラチオネートの存在下にNAC、NEMまたはCYSのような分子にタンパク質の遊離チオール基を結合することを含む。
【0084】
一部の実施形態においては、誘導体化されたタンパク質は抗体またはそのフラグメントを含む。好ましい実施形態においては、抗体はインテグリン分子、例えばα5β1インテグリンに特異的に結合する。好ましい抗体は上記したM200である。より好ましくは、タンパク質は抗体の、より好ましくはインテグリンに結合する抗体のFab’−SHフラグメント、例えばα5β1インテグリンに結合するM200抗体のFab’−SHフラグメント、または、α4β1インテグリンに結合するナタリズマブのFab’−SHフラグメントである。他の抗体、抗体フラグメント、例えば新脈管形成を抑制する抗体フラグメントおよびペプチド、例えば抗凝固ペプチドの安定な誘導体を作製する方法も提供される。
【0085】
本発明のタンパク質誘導体は必要に応じて遊離チオール基を有するタンパク質をNAC、CYSまたはNEMとともに、少なくとも約1分、約5分、約10分または約30分または約1〜約5時間、そして好ましくは約30〜60分インキュベートすることにより形成する。NAC、CYSまたはNEMの濃度は代表的には約0.10〜100mM、好ましくは1〜50mM、そしてより好ましくは10〜40mMである。一部の実施形態においては、反応はナトリウムテトラチオネート(NTT)により促進され、これは必要に応じて約1〜100mM、好ましくは約1〜50mM、より好ましくは約10〜30mMの濃度でタンパク質とNAC、CYSまたはNEMの混合物に添加し、インキュベーションは約1分〜数時間、好ましくは約1分〜1時間、より好ましくは約30分間、約4°C〜40°C、好ましくは概ね室温、例えば約22°C〜約28°Cで行なう。反応によりタンパク質の遊離チオール基にNAC、CYSまたはNEMが付加される。好ましい実施形態においては、得られたタンパク質誘導体を更に精製し、本明細書に記載する通り濃縮する。
【0086】
誘導体化すべきタンパク質が抗体、例えばIgG4抗体、キメラまたはヒト化抗体である場合には、原料抗体は代表的にはNACの存在下にパパイン溶液で消化する。NACは還元剤として作用できるが、可溶性パパインを使用する場合は消化に必要ではない。消化後、ナトリウムテトラチオネート(NaTT)を必要に応じて反応混合物に添加することにより例えばM200の軽鎖および重鎖の間のC230−C230ジスルフィド結合の還元から生じた遊離チオールと反応させ、これにより反応性のスルフェニルチオスルフェート中間体を形成し、これと別のスルヒドリル、好ましくはNACが結合してジスルフィド結合を形成する。Fab’NACと称される生成した分子は代表的には溶液中、例えば単純なリン酸塩緩衝液中であっても安定である。好ましいFab’−SHフラグメントはM200または新脈管形成を抑制するか他の態様で直接腫瘍細胞を殺傷する別の抗体のFab’SHフラグメントである。M200抗体から本発明の方法により製造されたFab’NacはF200Fab’NACと称し、48184.4ダルトン(約48kD)の分子量を有する。
【0087】
安定なFab’−SH誘導体を製造するための1つの好ましい方法は下記工程:
1)例えばパパイン溶液を用いて好ましくはNACの存在下上記した通り抗体を消化すること;
2)ナトリウムテトラチオネート(NaTT)の存在下にFab’−NAC分子を生成すること;
3)例えばカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)およびプロテインAクロマトグラフィーによりFab’Nac分子を精製すること;
4)精製されたFab’Nac分子を例えば限外濾過を用いて濃縮すること;および、
5)濃縮されたFab’Nac分子を処方物緩衝液中に透析濾過すること;
を包含する。
【0088】
生成されたタンパク質誘導体(例えばFab’NAC)の安定性は必要に応じて、例えば当該分野で知られた方法、例えばHPLCまたはLC−MS(液体クロマトグラフィー質量スペクトル分析)により試験する。HPLCは必要に応じて単量体の比率、凝集塊および切片の形成を時間と保存温度の関数として評価するために使用される。遊離チオールを有する抗体の場合は、主要な分解経路は代表的には経時的な2量体形成である。LC−MSは生成したタンパク質誘導体(例えば2量体形成)の安定性を時間と保存温度の関数として評価するために使用してよい。代表的には、Fab’NAC分子は単一の同種の物質種として残存し、単一の同種の物質種に関する予測分子量を有する。
【0089】
本発明の組成物を含む処方物、例えばタンパク質またはタンパク質誘導体を含む組成物は好ましくはタンパク質またはタンパク質誘導体がその物理的、化学的および生物学的活性を経時的に、そして所定の温度において維持できるようにする。処方物は好ましくは冷蔵庫、例えば約2°C〜8°Cにおいて少なくとも約1年、および、室温、例えば約23°C〜約27°Cにおいて約3ヶ月安定である。好ましくは、タンパク質誘導体を含有する処方物は冷蔵庫温度(約2〜8°C)で1年保存後、または室温(約23〜27°C)で約3ヶ月後、または約37°Cで約1ヵ月後、タンパク質2量体約5%未満を有する。好ましい実施形態においては、形成された単量体タンパク質誘導体の分子量は、冷蔵庫温度(約2〜8°C)で1年保存後、または室温(約23〜27°C)で約3ヶ月後、または約37°Cで約1ヵ月後、本質的に全く変化しない。
【0090】
本発明のFab’NACまたはペプチド−NAC(本明細書に記載した方法を用いてNACで安定化されたペプチド)分子はまた好ましくは親タンパク質、例えば抗体と同じ、例えばその抗原に対する結合特異性を保持している。結合特異性は代表的には当該分野で知られた手法、例えば免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ、ラジオ免疫沈降、酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、ドットブロットまたはウエスタンブロット試験およびサンドイッチ試験により調べる。
【0091】
本発明のFab’NACまたはペプチド−NAC(本明細書に記載した方法を用いて安定化されたペプチド)はまた好ましくは親タンパク質、例えば抗体またはペプチドと同じ、例えばその抗原に対する結合親和性を保持している。Fab’NACまたはペプチド−NACの結合親和性は必要に応じてスカッチャード(Scatchard)分析により、BIAcoreを用いた表面プラズモン共鳴により、または、当該分野で知られた何れか他の方法により測定される。
【0092】
結合特異性および結合親和性を保持していることのほかに、Fab’NACおよびペプチド−NACはその親タンパク質の望ましい生物学的活性も保持している。例えば好ましい実施形態においてはF200Fab’NACは例えば参考として本明細書中に援用される2003年11月26日に出願された特許公開US2005/0054834A1において開示されている通り、霊長類の眼においてインビトロおよび脈絡膜血管新生(CNV)における脈管形成を抑制するその能力により示される通り(その親抗体M200の作用と同様)新脈管形成を抑制する。
【0093】
例えば処方物において同じ生物学的特異性および生物学的活性を有し、そして増強された安定性を付与されているため、本発明の組成物は現在使用できるものよりも良好な進歩したタンパク質医薬品を提供する。
【0094】
(V.薬学的処方物)
本発明はまた遊離チオール基1個以上を含み、好ましくはNAC、CYSまたはNEMのような分子に結合したチオール基を有するタンパク質誘導体を含むタンパク質組成物の安定な液体および/または凍結乾燥された薬学的処方物に関する。好ましくは、タンパク質は抗体(より好ましくはIgG4クラス)、抗体フラグメント、例えばFab’フラグメント、またはペプチド、例えば抗凝固ペプチドであり、上記した分子に結合するために使用できる遊離チオール基1個以上を有する。好ましい実施形態においては、抗体フラグメントはキメラまたはヒト化抗体のFab’−SHフラグメント、例えばM200または腫瘍の増殖および/または新脈管形成を抑制する他の抗体のFab’−SHフラグメントである。
【0095】
本発明の薬学的処方物は好ましくは薬学的に受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア中に溶解した、上記説明したもののようなタンパク質またはタンパク質誘導体、またはその混合物を含む。種々の水性キャリア、例えば注射用水(WFI)またはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等で緩衝および/または塩化ナトリウム、塩化カリウム等のような塩を含有する水を必要に応じて使用する。キャリアはまた必要に応じて薬学的に受容可能な賦形剤、例えばヒト血清アルブミン、ポリソルベート80、糖類またはアミノ酸を含有する。本発明に従って処方物されたタンパク質またはタンパク質誘導体は非経腸投与に特に適しており、そして必要に応じて静脈内注入により、または、硝子体内、皮下、筋肉内、静脈内、包膜内、脳室内または滑膜内注射により投与され、硝子体内注射が好ましい投与経路である。非経腸投与可能な処方物の調製方法は当業者のよく知る通りであり、そしてより詳細には例えば参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science(15thEd.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1980)に記載されている。
【0096】
(A.安定な液体処方物)
1つの局面において、本発明はタンパク質またはタンパク質誘導体1個以上を含む安定な液体薬学的処方物に関する。代表的には、処方物の前に、上記した通りタンパク質の遊離チオール基にNAC、CYSまたはNEMのような分子を結合させてタンパク質を安定化させることにより、安定なタンパク質誘導体を精製する。形成されたタンパク質誘導体は本発明の薬学的処方物中で安定である。
【0097】
本発明の安定な液体処方物は例えば上記した通り、変性、切片形成または凝集塊の形成を最小限にする。タンパク質またはタンパク質誘導体が抗体または抗体フラグメントまたはその誘導体である場合には、処方物は経時的なその免疫反応性(例えば抗原に結合する能力)の維持を支援する。好ましくは、処方物は中性付近のpH(pH5.00〜8.00)を有する緩衝液中に本明細書に記載した抗体、抗体フラグメントおよび好ましくはその誘導体を含有する滅菌された薬学的に受容可能な液体処方物を含む。処方物中のタンパク質の濃度は代表的には少なくとも約1、2、5、10、20、50mg/ml、好ましくは約1〜80mg/mlであり、そして好ましくは更にpH5.00〜8.00の緩衝物質を含む。この範囲にpHを制御できる緩衝物質の例はクエン酸塩、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、ヒスチジン、リン酸塩および他の有機性の緩衝物質を包含する。クエン酸塩(pKa6.0)が代表的には皮下注射用の好ましい緩衝物質である。好ましい緩衝物質は約10〜50mMのクエン酸ナトリウムを含む。別の好ましい緩衝物質はN被覆した約30〜70mMのヒスチジン緩衝物質を含む。
【0098】
一部の実施形態においては、処方物は界面活性剤も含む。例示される界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、例えばポリソルベート(例えばポリソルベート20、80、例えばTWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80)またはポロキサマー(例えばポロキサマー188)を包含する。添加する界面活性剤の量は代表的にはそれがタンパク質またはタンパク質誘導体の凝集を低減および/または処方物中の粒子の形成を最小限化および/または処方物を含有する容器への吸着を低減することに寄与するようなものである。界面活性剤は代表的には約0.005%〜約0.5%、好ましくは約0.01%〜約0.1%、より好ましくは約0.01%〜約0.05%、そして最も好ましくは約0.02%〜約0.04%の量で処方物中に存在する。
【0099】
処方物の張力はまた処方物に塩1種以上を添加することによっても調節される。好ましい塩は塩化ナトリウムである。タンパク質を脱アミド化から保護するMgClも必要に応じて処方物に添加される。タンパク質とともに一般的に使用されているEDTAの処方物もまた本発明の処方物に包含される。
【0100】
本発明の好ましい処方物は約5〜50mM、好ましくは約20〜40mMの濃度のクエン酸ナトリウムおよび約80〜200mM、好ましくは約80〜120mMの濃度の塩化ナトリウムを含む緩衝物質を含む。
【0101】
例示される液体処方物は約20mg/ml以上の濃度のタンパク質またはタンパク質誘導体、約40mMのクエン酸ナトリウム(pH6.0)および約90mMの塩化ナトリウムを含む。好ましい液体処方物は約20mg/ml以上の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたはその誘導体、約20〜60mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)、約0.05%のTween80および約75〜150mMのNaClを含む。処方物は又必要に応じて例えばタンパク質に結合していない遊離のNAC、CYSまたはNEMを含有する。好ましくは、タンパク質は抗体、抗体フラグメントまたはペプチド、またはより好ましくはその誘導体、そして最も好ましくはFab’−NACまたはペプチド−NAC(NACに結合したペプチド)である。最も好ましい実施形態においては、抗体フラグメント誘導体は本明細書に記載したF200Fab’−NACである。
【0102】
本発明の処方物はタンパク質またはタンパク質誘導体がその物理的、化学的および生物学的活性を保持するように製造する。処方物は好ましくは冷蔵庫温度、例えば約2℃〜約8℃において、少なくとも約1年間、そして室温、例えば約22℃〜約28℃において、約6ヶ月安定である。
【0103】
製品の安定性を評価するための分析方法は当該分野で周知の方法、例えばUVスペクトル分析、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)、SDS−PAGE、カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)、液体クロマトグラフィー質量スペクトル分析(LC/MS)、バイオアナライザー、HIC等を包含する。
【0104】
(B.安定な凍結乾燥処方物)
別の局面において、本発明は本明細書に記載したタンパク質またはタンパク質誘導体を含む安定な凍結乾燥処方物に関する。凍結乾燥は活性成分を含有する医薬品の製造において、その生物学的活性を温存するために頻繁に使用される凍結乾燥の工程である。方法では一般的に予め凍結された液体試料を真空中で消化させること(これにより氷および/または他の凍結溶媒を除去する)、およびこれにより粉末またはケーキ様の物質の形態において非溶媒の成分を未損傷のまま残存させることを行なう。凍結乾燥した生成物は長期間、そしてより高い温度で、生物学的活性を損失することなく保存でき、そして適切な希釈剤を添加することにより粒子非含有の溶液に容易に希釈再調製できる。適切な希釈剤は凍結乾燥された粉末が完全に溶解する生理学的に許容される液体の何れかである。水、特に滅菌された発熱物質非含有の水が好ましい希釈剤である。凍結乾燥の利点は長期間の保存によりタンパク質の不安定性をもたらす種々の水関連の分子事象を大きく低減する水準にまで水分量を低下させる点である。凍結乾燥された処方物はまた出荷の物理的応力に対してより容易に耐容することができる。希釈再調製された製品は粒子を含有していないため、予め濾過することなく投与することができる。
【0105】
安定な凍結乾燥されたタンパク質またはタンパク質誘導体含有処方物の開発において代表的に使用される基準は、以下の通り、即ち、凍結乾燥中のタンパク質の展開が好ましくは最小限化され;ガラス転移点(Tg)は好ましくは製品の保存温度より高値であり;残留水分が好ましくは低値(約1質量%未満)であり;好ましい貯蔵寿命が室温、例えば22〜28℃において少なくとも約3ヶ月、好ましくは約6ヶ月、より好ましくは約1年であり;希釈再調製の時間が好ましくは短く、例えば約5分未満、好ましくは約2分未満、より好ましくは約1分未満であり;凍結乾燥された製品を希釈再調製する場合に再調製された試料は代表的には例えば約28℃において少なくとも約48時間安定であることとする。
【0106】
本発明の安定な凍結乾燥処方物は代表的にはタンパク質またはタンパク質誘導体および必要に応じて安定化剤として遊離のNACを含む。タンパク質またはタンパク質誘導体を含有する凍結乾燥前された液体処方物に遊離のNACを添加することは、凍結乾燥前の短時間約2〜8℃における液体処方物中のジスルフィド結合凝集塊の形成を良好に防止できるようにする。タンパク質またはタンパク質誘導体は約0.1〜100mM、好ましくは約1〜50mM、より好ましくは約1〜5mM、そして最も好ましくは約1〜2.5mMの濃度でNACを含む処方物中において安定である。凍結乾燥前された液体処方物中のNACの濃度は好ましくは約50mM、20mMまたは5mM未満であり、好ましい範囲は約1mM〜2.5mMである。
【0107】
凍結乾燥前された液体処方物中のタンパク質またはタンパク質誘導体は好ましくは少なくとも約1、2、5、10、20または50mg/ml、好ましくは約1〜10mg/mlの濃度である。
【0108】
pH5.00〜8.00、好ましくは約6.00の緩衝物質を代表的には処方物中で使用する。この範囲にpHを制御する緩衝物質の例はクエン酸塩、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、ヒスチジン、リン酸塩および他の有機性の緩衝物質である。好ましい緩衝物質は約1〜10mM、好ましくは約5mMのヒスチジン緩衝物質である。
【0109】
張力付与剤および低温保護剤/凍結乾燥保護剤として機能するポリオールもまた必要に応じて凍結乾燥処方物中に含有させる。好ましい実施形態においては、ポリオールは非還元糖、例えばスクロースまたはトレハロースであり、これらは凍結乾燥処方物を粒子非含有の溶液とする希釈再調製時間を低減する役割も果たす。ポリオールは処方物の所望の張力に応じて代表的には変動する量において処方物に添加してよい。希釈再調製後の凍結乾燥処方物は好ましくは等張性であるが、高張性または低張性の処方物もまた適している場合がある。凍結乾燥前された処方物中のスクロースのようなポリオールの適切な濃度は約100〜300mMの範囲、好ましくは約80〜200mMの範囲である。
本発明の凍結乾燥された処方物はまた良好なケーキ特性を与えるマンニトールのような増量剤も含有してよい。このような物質はまた処方物の張力に寄与するものであり、そして、凍結−解凍の負担から保護し、長期安定性を向上させる。好ましい増量剤は約10〜55mM、好ましくは約20〜45mMの濃度のマンニトールである。
【0110】
他の張力調節剤、例えば塩類(例えばNaCl、KCl、MgCl、CaCl等)を必要に応じて凍結乾燥前処方物に添加することにより、例えば浸透圧を制御することができる。
【0111】
好ましい予備凍結乾燥処方物は代表的には約10mg/ml以上のIgG型の抗体(好ましくはIgG4型抗体、より好ましくはキメラまたはヒト化IgG4抗体)またはそのフラグメントまたはペプチド、約5mMのヒスチジン(pH6.0)、約0.005〜0.03%のポリソルベート20または80、および約80〜130mMのスクロースおよび10〜55mMのマンニトールを含む溶液を含む。好ましい抗体フラグメントはFab’−SHフラグメントである。上記した予備凍結乾燥処方物を凍結乾燥して乾燥した安定な粉末を形成し、これはヒトに投与するために適する粒子非含有の溶液に容易に希釈再調製できる。好ましくは、試料は一次乾燥サイクルを開始する前に約−40℃で約3時間凍結保存する。好ましい一次乾燥サイクルは約10時間約150mTorrの圧力において約−20℃で実施する。好ましい二次乾燥サイクルは約8時間約150mTorrの圧力において約20℃で実施する。
【0112】
タンパク質が抗体または抗体フラグメントまたはその誘導体または生物学的活性ペプチドである場合は、凍結乾燥処方物は抗体またはペプチドの生物学的活性(例えば結合特異性および結合親和性)を安定化し、例えば最終製品において例えばヒト被験体への投与を意図するタンパク質が物理的および化学的に分解されることを防止する。
【0113】
(VI.診断および治療の用途)
本発明のタンパク質およびタンパク質誘導体、例えば安定化タンパク質は必要に応じて種々の治療上および非治療上の目的のために使用される。タンパク質またはタンパク質誘導体が抗体または抗体フラグメントまたはその誘導体(例えばFab’−NAC)である場合は、それらは必要に応じてアフィニティー精製試薬として使用される。それらは又、特定の細胞、組織または血清中の目的の抗原の発現を検出するような診断試験においても有用である。診断用途の場合、タンパク質または誘導体は代表的には検出可能な部分、例えば放射性同位体、蛍光標識および種々の酵素基質標識で標識される。誘導体は又必要に応じて、何れかの知られた試験法、例えば競合結合試験、直接および間接的サンドイッチ試験および免疫沈降において使用される。誘導体はまたインビボの診断試験においても有用である。一般的に、誘導体はこの様式において使用される場合は放射性核種により標識され、これにより抗原またはそれを発現する細胞がイムノシンチグラフィーを用いて位置特定できるようにする。
【0114】
細胞活性に対抗する保護、またはその検出において誘導体と共に使用するため、または、選択された細胞表面受容体の存在または疾患の診断のためのキットも提供される。標識または毒素に結合してよい、または未結合であってよい誘導体は、緩衝物質、例えばTris、リン酸塩、炭酸塩等、安定化剤、殺菌剤、不活性タンパク質、例えば血清アルブミン等、および、使用説明書セットとともにキット内に含まれる。一般的に、これ等の物質は活性な抗体の量に基づいて約5重量%未満で存在し、そして通常は抗体濃度にやはり基づいて少なくとも約0.001重量%の総量で存在する。頻繁には、不活性の膨張剤または賦形剤を含有させることにより活性成分を希釈することが望ましく、その場合には賦形剤は全組成物の約1〜99重量%で存在してよい。修飾された抗体に結合できる第2の抗体を試験に用いる場合は、これは通常は別のバイアル内に存在させる。第2の抗体は代表的には、標識に結合し、上記した抗体誘導体を用いて同様の態様で処方する。
【0115】
本発明の薬学的処方物は種々の治療用途を有する。処方物は必要に応じて癌、炎症性状態、例えば喘息または炎症性腸疾患、自己免疫疾患、冠動脈疾患、心不全、多発性硬化症、感染性疾患等を包含するがこれ等に限定されない疾患または障害に罹患した、またはその素因のある患者を治療するために使用される。
【0116】
必要に応じて治療される癌の型は、例えば乳癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、黒色腫、造血系癌、例えば白血病、リンパ腫および骨髄腫、および種々の型の頭部および頚部の癌を包含する。本発明の処方物を用いて治療してよい自己免疫疾患は、例えばアジソン病、耳の自己免疫疾患、眼の自己免疫疾患、例えばブドウ膜炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患、クローン病、糖尿病(I型)、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギヤン−バレー症候群、ハシモト病(Hashimoto’s disease)、溶血製貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、骨粗鬆症、乾癬、慢性関節リューマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、潰瘍性結腸炎、血管炎等を包含する。
【0117】
例えば腫瘍の増殖は新脈管形成に依存している。腫瘍内の新脈管形成(即ち新しい血管の増殖)は前新脈管形成性の成長因子(例えばFGF、VEGF、PDGF等)の1つ以上の放出が内皮細胞を局所的に活性化する場合に開始する。次にこれ等の活性化された内皮細胞は、例えばα5β1インテグリン受容体を介して細胞外マトリックス内のフィブロネクチンに結合することにより新しい血管を発生させる。インテグリンα5β1は腫瘍血管新生においてアップレギュレートされ、そしてそのリガンドであるフィブロネクチンは悪性基底上皮においてリッチ化される。α5β1とフィブロネクチンとの間の相互作用をブロックする分子は、VEGFの新脈管形成特性を妨害する物質と同様にインビトロおよびインビボの腫瘍新脈管形成を抑制することがわかっている。腫瘍の転移は標的組織に遊走してこれを侵襲する内皮細胞および癌細胞の能力に依存している。インテグリンは細胞外マトリックスの成分に直接結合するため細胞の遊走および侵入に必須である。フィブロネクチンに特異的に結合するインテグリンα5β1はヒト腫瘍生検試料において血管上でアップレギュレートされる。M200およびF200はα5β1受容体の強力な抑制剤であり、このため、新脈管形成、および、腫瘍の増殖、転移、および、新脈管形成および血管新生が関与する種々の自己免疫および炎症性の障害を促進する細胞遊走過程を抑制する。
【0118】
更に又M200およびF200は参考として全体が本明細書中に援用される米国特許出願公開US2005/0054843A1およびUSSN10/830,956に開示される通り脈絡膜血管新生(サル眼における)および黄斑変性(ウサギ眼における)のインビボのモデルにおいて有効であることが解っている。即ち、本発明の処方物は哺乳類眼の網膜、水晶体および/または角膜に関わる眼科障害、特に血管新生または創傷治癒のモジュレーションの関与する障害のための治療薬として必要に応じて使用される。網膜の障害の最も重要なものは、黄斑の孔部および変性(特に加齢関連の黄斑変性)、脈絡膜の新生血管形成、網膜下の新生血管形成、網膜剥離および傷害(特にRPE)、急性網膜壊死症候群(ARN)、外傷性網脈絡膜症または挫傷(プルチャーの網膜症)、網膜浮腫および虚血に関連する障害(例えば網膜血管炎およびイールズ病および全身エリテマトーデスに関連する閉塞)、ブドウ膜炎および糖尿病性網膜症である。水晶体の最も重要な障害は代謝疾患または薬剤の副作用に関連する白内障および屈折過誤である。角膜の最も重要な障害は角膜の不全に関連するものであり、例えば角膜の潰瘍、角膜手術(例えばレーザー手術または角膜移植)に関連する創傷および瘢痕、およびドライアイおよび/またはシェーグレン症候群の帰結である。
【0119】
フィブロネクチンへのα5β1インテグリンの結合は細胞接着過程の部分として解明されている。即ち、本発明の安定なF200処方物は必要に応じて細胞の接着に関連する疾患および状態、例えば関節炎、喘息、アレルギー、成人呼吸窮迫症候群、心臓血管疾患、血栓症または有害な血小板凝集、同種移植片拒絶、新生物性疾患、乾癬、多発性硬化症、CNS炎症、クローン病、潰瘍性結腸炎、糸球体腎炎および関連の炎症性の腎疾患、糖尿病、眼の炎症(例えばブドウ膜炎)、アテローム性動脈硬化症、炎症性および自己免疫性の疾患の研究、診断、治療または予防において使用される。
【0120】
処方物は何れかの適切な手段、例えば非経腸、皮下、腹腔内、肺内および鼻内、硝子体内、包膜内、脳室内または滑膜内、そして局所的免疫抑制治療のために必要であれば、患部内への投与により投与される。非経腸注入は筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与を包含する。更に又、タンパク質またはタンパク質誘導体は特に誘導体の漸減用量を用いたパルス注入により適宜投与される。
【0121】
処方物は必要に応じて予防的および/または治療的な投与のために使用される。治療用途の場合は、処方物はすでに特定の疾患に罹患した患者に対し、状態およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与される。これを達成するための量は「治療有効量」と定義される。この用途のために有効な量は状態の重症度および患者自身の免疫系の全体的状況により異なるが、一般的には用量当たり治療用タンパク質約0.0001〜約100mg/kgの範囲であり、患者当たり約1〜10mgの用量がより一般的に使用される。
【0122】
予防用途においては、処方物は疾患に対する患者の体制を増強するために疾患状況に既にあるのではない患者に対して投与される。そのような量は「予防有効量」と定義される。この用途においては、厳密な量はやはり患者の健康の状況および免疫の全体的水準に応じて異なるが、一般的には用量当たり約0.1〜100mg、特に患者当たり約1〜10mgの用量である。
【0123】
処方物の単回または複数回の投与は必要に応じて治療担当医により選択される投薬の量およびパターンを用いて実施される。何れの場合においても、薬学的処方物は患者を効果的に治療するのに十分な本発明のタンパク質または誘導体の量を提供するものでなければならない。
【0124】
処方物中の治療薬がα5β1インテグリンに対する抗体または抗体のFab’−SHフラグメント(例えばF200)または抗体および/またはFab’−SHフラグメントの誘導体である場合は、本発明は例えば動物モデルにおいて新脈管形成をモジュレートする薬効を測定するための方法を提供する。これ等の方法は安全で効果的な治療用量を決定するための本発明によるα5β1インテグリンに対する抗体のFab’の誘導体を含む処方物のスクリーニングを可能にする。
【0125】
新生血管形成の事象が関与する病理学的状態(例えば傷害または腫瘍の増殖)は本発明の処方物を用いた治療に感受性を示す。新脈管形成により部分的に特徴付けられる腫瘍は本発明のタンパク質またはタンパク質誘導体、より好ましくは本発明のFab’−NAC分子を用いた治療に感受性を示す。腫瘍は良性、例えば血管腫、奇形腫等であることができ、または、悪性、例えば癌腫、肉腫、グリア芽細胞腫、星状細胞腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫等であることができる。本発明の方法を用いて診断される悪性腫瘍は例えば癌腫、例えば肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌、膵臓癌および卵巣癌;グリア芽細胞腫;および肉腫、例えば骨肉腫およびカポジ肉腫を包含するが、腫瘍は少なくとも部分的には新しく形成される血管によるα5β1の発現を伴う新脈管形成を特徴とする。
【0126】
本発明は又組織および動物モデル系を用いて本発明の処方物を試験するための方法を提供する。好ましい実施形態においては、組織に傷害を与えて患部を形成し、そして脈絡膜の新生血管形成を誘発させてよい。或いは動物または組織を種々の手段の1つにより露出させ、例えば発癌性物質またはイオン化放射線照射に曝露することにより腫瘍形成を誘導してよい。傷害は何れかの適切な手段により、例えば機械的、化学的または生物学的な手段により行ってよい。例示される機械的傷害手段は切開、穿刺または締結を包含する。化学的手段には、壊死、アポトーシスまたは細胞同士の接触の消失を誘発する薬剤を組織に適用することが包含される。生物学的手段は感染性の物質、例えばウィルス、細菌またはプリオンを用いた処理を包含する。好ましい患部形成方法はレーザーの使用である。組織の傷害が可能な何れかのレーザーを必要に応じて使用し、好ましい型はCOガスレーザーであり、そして最も好ましい型はIRIS Medical(登録商標)ポータブルスリットランプアダプター付のOcuLightGL(532nm)レーザーフォトコアギュレーターである。他のレーザー光源もまたそれらが300〜700マイクロワットのレーザー光および200μm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは約50〜約100μmの直径、そして最も好ましくは約75〜25μmの直径の患部を発生することができる限り適している。代表的にはレーザー光は1秒未満の時間組織に適用する。通常は約0.5秒未満、より好ましくは約0.1秒未満、最も好ましくは約0.05秒未満である。
【0127】
本発明の処方物、例えばα5β1インテグリンに対する抗体のFab’フラグメントまたはその誘導体を含む処方物は、必要に応じて治療すべき領域に直接投与され、例えば直接新生物腫瘍内に、病理学的状態が眼に関わるものであれば点眼液または硝子体内注射により眼内に;或いは、状態が関節に関わるものであれば滑膜内に投与される。
【0128】
臨床的に該当する進行のモニタリングは本発明の別の特徴である。標的組織をモニタリングすることは当該分野で知られた何れかの適切な方法で行われる。好ましい方法は顕微鏡観察、核磁気共鳴、X線等を包含する。眼の組織の場合は、後眼房の間接的眼内検査および眼の前区の生態顕微鏡検査を代表的には使用する。脈絡膜の新生血管形成の範囲をモニタリングする好ましい方法はフルオレセイン染料を静脈注射し、フルオレセイン血管造影により標的組織を調べることである。
【0129】
新規な新脈管形成を抑制または防止する場合の本明細書に記載したもののような抗α5β1インテグリン抗体のFab’−SHフラグメントまたはその誘導体の有効性をスクリーニングする好ましい方法は、動物の網膜に患部を形成し、患部に誘導体を適用し、そして次に適切な対照実験と相対比較した場合の損傷を受けた組織における新規な新脈管形成の進行をモニタリングすることによる。
【0130】
本発明のα5β1インテグリンに結合するFab’フラグメント誘導体は、α5β1インテグリン発現に関連する新脈管形成を低減または抑制する場合に有用であるか、または、Fab’−SHフラグメントまたはその誘導体を含有する薬学的処方物は必要に応じて少なくとも部分的に新脈管形成を特徴とする何れかの病理学的状態を治療するために使用される。
【0131】
α5β1インテグリン発現に関連する新脈管形成は例えば糖尿病性網膜症に罹患した個体の網膜において局所的生じるか、または、全身性に、例えば慢性関節リューマチまたは悪性新生物形成に罹患した個体においてより全身性に生じる場合がある。新脈管形成の領域は局在するか、または、より全身性に分散する場合があるため、部分的にはこの要因に基づいて、本発明の治療用抗体、抗体フラグメントまたはその誘導体の投与の特定の経路および方法を当業者は選択する。
【0132】
例えば、α5β1インテグリン発現に関連する新脈管形成が網膜に局在する糖尿病性網膜症に離間した個体においては、抗α5β1インテグリン抗体、抗体フラグメントまたはその誘導体は眼に直接投与できる点眼薬または硝子体内注射として用いるのに好都合な薬学的処方物に処方する。一方、転移癌に離間した個体においては、薬学的処方物内の薬剤は静脈内、経口、または、薬剤を全身的に分布させる別の方法により投与されるように処方する。即ち、本発明の処方物は必要に応じて種々の経路、例えば静脈内、経口または治療すべき領域に直接、例えば新生物腫瘍内に直接;病理学的状態が眼に関わる場合は点眼液または硝子体内注射により;または、状態が関節に関わる場合は滑膜内に;または、病理学的状態が中枢神経系にかかわる場合は包膜内または脳室内に投与される。
【0133】
本発明の処方物を投与する好ましい方法は理学的状態に関与している経皮、静脈内または病理学的状態に関与している関節または組織への直接の注射の使用による。例えば網膜組織が損傷を受けているか、または、他の態様で病理学的状況にある場合、本発明の処方物は罹患眼内に硝子体内注射される。本発明の1つの実施形態においては、処方物の一方の眼への投与は両眼において臨床的に有益な効果をもたらす(両眼が傷害または疾患を有すると推定)。新しく形成された血管は「漏出性」であり、第1の眼に適用された抗体、抗体フラグメントまたは誘導体を血流中に移行させ、そこでそれらは第2の眼にまで輸送される。この態様において眼に適用されれば、用量は好ましくは5μM未満、より好ましくは約0.5〜2μM、そして最も好ましくは約0.1〜1.0μMである。適応症に応じて、投与は所定の領域または期間に渡って投与される多用量の形態で行う。多用量フォーマットにおける投薬量は全て同一であるか、独立して決定して適用してよい。この結果はまた傷害組織の新規の新脈管形成を抑制または防止する本発明の治療用処方物の有効量の全身適用(例えば静脈内注射による)を含む新規の新脈管形成に関連する患部の治療の別の方法をもたらす。
【0134】
疾患の治療において有用な他の抗体およびペプチドもまた上記した薬学的処方物において必要に応じて使用される。別の抗体およびペプチドの治療薬については、例えば米国特許第6,475,488号、同第6,528,481号、同第6,423,313号、同第6,239,101号、同第6,902,522号および同第6,841,354号を参照できる。
【実施例】
【0135】
以下の実施例は説明を目的とするのみであり、限定するものではない。例えば抗体およびペプチドの全てを実施例において説明するわけではないが、遊離チオール基を有する如何なるタンパク質、ペプチドまたは抗体にも同じ方法が適用される。必要に応じて変更するが本質的に同じかまたは同様の結果をもたらす種々の厳密ではないパラメーターは当業者が容易に理解できる。
【0136】
(実施例1)
(パパイン消化によるFab’−SH抗体フラグメントの形成)
キメラ抗α5β1インテグリン抗体、M200(参考として全体が本明細書中に援用される2003年11月26日出願の米国特許出願公開US2005/0054834A1に記載)またはヒト化抗VEGFIgG4抗体(HuMV833−PDL)(共にIgG4抗体)をpH7.0の20mMリン酸ナトリウムおよび20mMN−アセチル−L−システインに緩衝液交換した。酵素/抗体比1:10000の可溶性パパイン酵素を添加した。混合物を3時間37°Cで回転させた。消化後、混合物を精製してFcフラグメントおよび未消化のIgGを除去し、精製されたFab’−SH抗体フラグメントを残存させた。液体クロマトグラフィー質量スペクトル分析(LC−MS)によればHuMV833およびM200の主要切断部位は同一であった。HuMV833の主要切断部位はS226とC227の間にあった。M200の相当する切断部位はS232とおよびC233の間にあり、これは切断されれば遊離チオール基を有するFab’−SHフラグメントをもたらす(図1)。これ等の結果は、パパインが相補性決定領域(CDR)の組成に関わらずIgG4抗体の2つのジスルフィド結合の間で切断し、そして遊離チオールを含有する分子をもたらすことを示している。
【0137】
(実施例2)
(M200の安定なFab’誘導体の製造)
消化、消化後の化学処理および処方物を含む3つの主要な工程によりFab’誘導体を製造した。各段階に関して還元剤の種類、消化後の処理の種類および処方物の種類を含む種々の条件を試験することにより誘導体の安定な処方物を作製する最適方法を開発した。実験条件の異なる組み合わせを含有する3種の別個のマトリックスを設計し、実験を以下の通り実施した。表1は2つの他の実験マトリックスの代表であるマトリックス#3の条件および結果を総括するものである。
【0138】
一般的な実験操作法は以下の通りとし、即ち、抗体M200[配列番号1および2]をpH7.0の20mMリン酸ナトリウム中に緩衝液交換し;酵素/抗体比1:10000で可溶性パパイン酵素を添加し;NAC、CS、NEM、β−MEA(β−メルカプトエチルアミン)またはジチオスレイトール(DTT)を含む還元剤を所定濃度(表1の「消化還元剤」の欄による)において反応混合物に添加した。混合物を3〜4時間37°Cで回転させた。消化後、例えばNACまたはNEMまたはCYSの遊離チオールへの付加のような化学反応を促進する例えばナトリウムテトラチオネート(NaTT)のような化学処理剤を所定濃度(表1参照)で添加し、室温で30分間インキュベートした。次にこの調製物を例えばNAC含有または非含有のpH7.4の20mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウムを含む溶液(PBS)に緩衝液交換した(表1参照)。
【0139】
精製のためのカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)およびプロテインAクロマトグラフィーおよび濃縮のための限外濾過;および処方物緩衝液への透析濾過を含むその後の下流の工程を周知の方法に従って実施することにより所望の処方物における精製されたF200Fab’NACを得た。
【0140】
タンパク質誘導体の安定性は、処方物中数日の後にLC−MSまたはHPLCにより分析した。得られた処方物中で測定されたFab’2量体の低パーセントは高安定性を示していた。表1に示す通りFab’NAC(F200Fab’NAC)およびFab’−NEM(F200Fab’−NEM)に関する処方物中で測定されたFab’2量体の低パーセントは他の誘導体と比較して高安定性を示していた。条件1、2および8を用いて誘導体を製造した場合には8日後のFab’2量体の量は2%未満であった。HPLC分析によれば、条件8を用いて形成されたF200Fab’NAC分子は4℃、25℃および37℃において処方物中8日間安定であり、処方物中に存在する2量体は5%未満であった。LC−MSを用いた場合F200Fab’NAC分子は48184.4ダルトンの予測分子量を有する単一の物質種であることが解った。
表1:マトリックス#3の条件および結果
【0141】
【表1】

(実施例3)
(F200Fab’NACを含む処方物の安定性試験)
上記した通り製造したF200Fab’NAC分子を40mMクエン酸ナトリウム、90mM塩化ナトリウム、0.05%Tween80を含むpH6.0の処方物中20mg/mlの濃度で保存した。
【0142】
サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)を用いることにより処方物中3ヶ月まで5℃、25°Cおよび37℃においてF200Fab’NACの安定性を調べた。F200Fab’NAC2量体のパーセントおよび切片形成のパーセントに相当するデータを12週間の期間に渡り(0、1、2、4、8および12週の時点)、そして5℃、25°Cおよび37℃それぞれにおいて測定した。
【0143】
12週間の期間に渡り、5℃で保存した試料のパーセント2量体量には最小限の変化のみ観察された(即ち2量体は1%未満であった)。25℃および37℃の試料は12週間でそれぞれ2.57%および7.23%のパーセント2量体量を有していた。測定したF200Fab’NAC単量体のパーセントは処方物中3ヶ月の期間に渡り5℃において処方物中98%超を示していた。同様に、パーセント単量体は25℃および37℃12週間後でそれぞれ97.91および92.61であった。更に又、切片(即ち完全な分子量に満たないF200Fab’NACタンパク質)の極めて低いパーセント(例えば0.10〜0.25%)が5℃、25°Cおよび37℃において観察され、そして12週間の期間に渡り僅か最小限だけ上昇したのみであった。これ等のデータは処方物が約5℃の保存温度で約1年間の貯蔵寿命を有するために十分安定であることを示唆している。
【0144】
カチオン交換クロマトグラフィー(CEX)プロファイルもまた測定し、5℃、25°Cおよび37℃それぞれにおける3ヶ月保存期間にわたるF200Fab’NAC単量体のパーセントを求めた。5℃においては、約15.5分においてF200Fab’NACの単量体のピークのプロファイルのアイソフォーム分布では極めて最小の変化が観察されたのみであった。25および37℃でインキュベートした試料については、分解物のピークは約26.3分において成長することが観察された。分解物の濃度は温度および時間の関数として増大した。このピークはSECにおいて観察された2量体成分に相当する可能性がある。
【0145】
F200Fab’NACの安定性は又、還元および非還元SDS−PAGEにより評価した。5℃、25°Cおよび37℃それぞれにおいて処方物中3ヶ月の後、F200Fab’NACを含有する試料を還元および非還元SDS−PAGEのゲル上で2連で泳動した。非還元SDS−PAGEは温度の関数として約100kDの凝集バンドの増大を示した。これ等の結果は高い温度で凝集の増大をやはり示した上記SEC測定と合致している。凝集バンドの質量は約100KDに相当し、これは形成した凝集物が2量体であることを示唆している。試料中の遊離軽鎖夾雑物が非還元ゲルにおいて観察された。還元ゲルは主に軽鎖バンドの質量に相当する単一のバンドを示していた。軽鎖および重鎖のフラグメントの質量は極めて近似しているため、両方の成分は概ね同時流出していると考えられた。
【0146】
LC−MS試験も実施し、5℃、25°Cおよび37℃における3ヶ月にわたる処方物中においてF200Fab’NACの安定性を更に確認した。観察されたLC/MSスペクトルプロファイルおよび分子量データによれば、生成物は十分均質であり、単一のNAC分子とブロックしているFab’より構成されていた。分子中の遊離軽鎖の存在と同様、2個のNAC分子とブロックしているFab’も低値で観察された。6ヵ月後において、LC−MSによれば温度および時間の関数としのFab’−232−NAC(F200Fab’NAC)分子の質量の変化は最小限のみであった。データは、遊離チオールとNAC分子の間の結合の形成が凝集に対してFab’−SHを安定化させていることを強力に示唆している。
【0147】
更に又、フィブロネクチンへのM200の結合と相対比較しながら競合的ELISA試験によりフィブロネクチンへのF200Fab’NACの結合能力を調べた。5℃、25°Cおよび37℃において保存した試料につき12週間の期間に渡り収集したデータによれば、F200Fab’NACは12週間試験全体を通してM200に匹敵するフィブロネクチンへの結合特異性および親和性を保持していた。
【0148】
総括すれば、データは未誘導体化F200Fab’よりもFab’NAC誘導体が有意に高安定性であることを示している。2mg/mlの低濃度であっても、F200Fab’(NAC誘導体化を伴わない)は2週間未満において25および37℃で有意な凝集を示した。更に、5℃では増大した凝集形成が観察された。一方、Fab’NAC誘導体は5℃において20mg/mlの濃度では凝集の水準は最小限の変化を示しており、25℃および37℃のより高温ではかなり高値の安定性を示すと考えられた。
【0149】
(実施例4)
(F200Fab’CYSを含む処方物の安定性試験)
NACの代わりにCYSを用いた以外はF200Fab’NACを製造する場合に使用した操作法に従ってF200Fab’CYSを形成した。M200のFab’フラグメント(5.0mg/ml)を5mMシステインを用いながらPBS中に透析した。100mMのNaTTの量をPBS溶液に添加し、溶液を約30分間室温でインキュベートした。反応後の混合物をPBS溶液を用いて透析した。F200Fab’Cys誘導体の安定性は5℃および25℃において4週間にわたりサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(上記)を用いてモニタリングした。2量体のパーセントの最小限の変化(〜1%以下の変化)がF200Fab’CYSまたはF200Fab’NACを含有する試料において5℃および25℃の両方において4週間の期間に渡り観察された。データはF200Fab’CYSが5℃および25℃において少なくとも1ヶ月までリン酸塩緩衝液処方物中安定であることを示している。
【0150】
(実施例5)
(F200Fab’NACの凍結乾燥処方物の安定性試験)
10mg/mlのF200Fab’NAC、1mM〜5mMのN−アセチル−L−システイン、5mMヒスチジン、90mMスクロース、40mMマンニトールおよび0.005%Tween80を含む凍結乾燥前液体処方物を製造した。次に液体調製物を凍結し、凍結乾燥させた。凍結乾燥処方物を充填容量の半量で希釈再調整し、約20mg/mlの凍結乾燥後濃度とした。LC−MSおよびHPLCを用いて希釈再調製後の2量体および凝集のパーセントを検出した。データは添加NACの1.0〜2.5mM濃度において最小限の凝集(即ち0.10〜約0.36%未満)であることを示していた。希釈再調製後2週間まで5℃および25℃の両方において1mMのNACを用いた場合に凝集のパーセントの最小限の変化が観察され、F200Fab’NACが凍結乾燥処方物を安定化させていたことを示している。同様の結果が2.5mMおよび5mMのNACを処方物が含んでいた場合にも観察された。
【0151】
F200Fab’NACが凍結乾燥前の液体処方物中で安定であるかどうかを調べるために、上記液体処方物の安定性を36日間の期間に渡り5℃でモニタリングした。36日後、単量体95%超が5℃の処方物中に観察され、処方物が凍結乾燥前にかなり安定であることを示していた。
【0152】
(実施例6)
(F200Fab’NACの結合特異性)
F200Fab’NACがその親抗体M200の結合特異性を保持しているか否かを調べるために、M200およびF200Fab’NACの組織分布をウサギ眼において以下に記載する通り調べた。
【0153】
ウサギ24匹を各群12匹となるように2群に分けた。第1群においては、125I−F200Fab’(NAC)を獣医眼科による各動物の両眼への50μl/眼(10μCi含有する100μg)の瞬時硝子体内注射により動物に投与した。第2群においては、125I−M200を獣医眼科による各動物の両眼への50μl/眼(10μCi含有する300μg)の瞬時硝子体内注射により動物に注射した。投与の前に、キシラジン(5mg/kg)の筋肉内(IM)注射、次いでケタミン(25mg/kg)のIM注射により動物を麻酔した。1%Betadine(登録商標)眼科用溶液で洗浄することにより眼を調整した。次に、眼を0.9%滅菌食塩水で洗浄した。投薬前に局所麻酔剤を各眼に点眼した。投薬後は局所抗生物質を各眼に点眼した。
【0154】
注射した動物から得た組織試料の放射能は固体シンチレーション計数(SSC)を用いて分析した。末端血液試料の放射能を分析した。連続血清試料は少量ずつに細分し、放射能測定、トリクロロ酢酸(TCA)沈殿およびELISA用とした。末端血液を遠心分離してバフィーコートおよび血漿の放射能を分析した。硝子体液の試料を採取し、少量ずつに細分し、放射能測定、TCA沈殿およびELISA用とした。全血、血漿、血清および硝子体液の試料はサンプルサイズが許す限り2連で分析した。全ての甲状腺および眼の組織は硝子体液を除き単一の試料として分析した。全試料を少なくとも5分間計数した。
【0155】
F200Fab’NACおよびM200の組織分布は注射後4時間、および1、4、7、14および21日に検査した。代表的には2匹を各時点において屠殺した。各時点において4眼を評価した。
【0156】
504時間(3週間)の試験期間に渡り、測定したF200Fab’NACの組織分布は角膜、房水、水晶体、硝子体液ワイプ物、網膜、RPE、脈絡および強膜を含む眼の種々の位置においてM200と同様であった。更に又、眼組織中の一次的な分布も同様であった。例えばM200およびF200Fab’NACの両方につき、硝子体液中濃度は減少前4時間に最高値となったのに対し、RPE中では共に減少前24時間に最高値となった。
【0157】
更に又、望ましくない結晶付着または何れの炎症兆候も注射後には観察されなかった。これ等のデータはF200Fab’NACは十分な耐容性を有し、試験したウサギにおいて硝子体内注射後に眼の背部にまで到達可能であることを示している。
【0158】
(実施例7)
(進行黄斑変性(AMD)のウサギモデルにおけるF200Fab’−NACの効果)
VEGFおよびbFGFの両方のためのヒドロンペレット系持続放出システムは硝子体内移植後のウサギにおいて鮮紅色非可逆網膜新生血管形成(NV)をもたらし(例えばWongら、“Intravitreal VEGF and bFGF produce florid neovascularization and hemorrhage in the rabbit(ウサギにおいて硝子体内VEGFおよびbFGFは鮮紅色新生血管形成および出血をもたらす)”,Current Eye Research 22:140−147(2001))、そして脈絡膜上移植後の脈絡膜新生血管形成(CNV)をもたらす(例えばCarvalhoら、“Stimulation of choroidal neovascularization in the rabbit through sustained release of VEGF and bFGF(VEGFおよびbFGFの持続放出によるウサギの脈絡膜新生血管形成の刺激)”、Fifth Annual Vision Research Conference,April 2001, Satellite Symposium of ARVO,Fort Lauderdale, Floridaのポスター展示参照)ことがわかっている。
【0159】
脈絡膜新生血管形成(CNV)は滲出性の進行黄斑変性(AMD)の特徴である。即ちウサギの硝子体内VEGFペレットにより誘導されたCNVはAMD治療の薬効を試験するための良好な全動物モデルとなる。
【0160】
F200Fab’NACおよびM200は、このウサギモデルにおいて、出血の程度の眼底写真の評点付け、および以下に記載する方法に従ったフルオレセイン血管造影法(FA)により測定したフルオレセインの漏出により評価した場合に、CNVを抑制することがわかっている(2004年4月23日出願の米国特許出願10/830,956にも開示されている)。成熟雄性および雌性のダッチベルトウサギ(N=50)において、限定的結膜角膜周囲切開を上側四分円において行い、その後4mmの全厚強膜切開を同心状に縁部より3mm後方に作製した。脈絡膜を切開しないように注意した。VEGFおよびFGFの各々20μgを含有するヒドロンインプラント(Wongら、“Intravitreal VEGF and bFGF produce florid neovascularization and hemorrhage in the rabbit”,Current Eye Research 22:140−147(2001)参照)を、脈絡膜と強膜の間に毛様体剥離用スパーテルを通過させることにより作製した上脈絡膜空間内に静置されるように可能な限り後方に入れた。
【0161】
クエン酸塩緩衝液中のM200(600mg)およびF200Fab’NAC(200mg)の硝子体内注射を移植日(第0日)および第15日の両方の時点において30ゲージの針を用いて縁部後方2mmに行った。静脈内(I.V.)M200(10mg/kg)を第0および15日に投与した。眼底写真、OCTおよびフルオレセイン血管造影図(FA)を1、2、3、4および8週間後に行った。
【0162】
眼底写真およびFAの臨床等級付けは尺度0、1(軽度)、2(中等度)、3(中等重度)および4(重度)において2人の覆面等級付者により実施した。一般的に、眼底写真より深色および/または暗色の発赤の領域により示される増大した出血はより高い評点をもたらす。画像に関する臨床等級付け評点は各眼底写真の横に記載する。動物は第4週(N=40)および第8週(N=10)に眼球摘出し、組織学的検討に付した。
【0163】
VEGF/bFGFヒドロンインプラントは高い浸透度において頑健で持続性のモデルをもたらし、CNVを有するウサギは75%であった。CNVのこの頑健なウサギモデルにおいて、移植対照眼8点中5点(62.5%)は第4週までにCNVを発生させた。
【0164】
M200およびF200Fab’NACを用いた治療はVEGF/bFGFインプラントによる網膜下の出血を有意に抑制した。治療期間の過程を通じて撮影した眼底写真の臨床等級付けによればプラセボと比較して投与群で網膜下出血の有意な抑制があった。硝子体内M200については、第1〜4週でそれぞれp=0.130、0.03、0.003、0.001であった。硝子体内F200Fab’NACについては、第1〜4週でp=0.042、0.004,0.002、0であった。静脈内M200については、第1〜4週でp=0.009、0.001、0.005、0であった。FA画像の等級付けもまたCNVの抑制の経口を示していた。興味深いことに、親mAb、M200はI.V.経路で投与した場合にCNVの有意な抑制を示したが、硝子体内M200はF200Fab’NACよりも薬効が低値であった。
【0165】
上記本発明は明確化と理解のために説明および例示により詳述したが、記述は本発明を限定する意図はない。本明細書の開示内容に鑑みれば、添付する特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく特定の変更および改変が可能であることは当業者の知る通りである。例えば上記した全ての手法および組成は種々の組み合わせにおいて使用してよい。本出願において引用した全ての刊行物、特許、特許出願または他の文書は、各々個々の刊行物、特許、特許出願または他の文書が全ての目的のために援用されることが個別に示されるように、同じ範囲まで全ての目的のために参考として全体が本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は露出した遊離チオール基を有するFab’フラグメントF200を生成するM200(配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体)抗体のパパイン消化の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含む組成物であって、該タンパク質がN−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合したチオール基を含む、組成物。
【請求項2】
前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメントまたはペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体フラグメントが、Fab’フラグメントを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Fab’フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFab’フラグメントを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体または抗体フラグメントが、インテグリンに結合する、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体、抗体フラグメントまたはペプチドが、新脈管形成を抑制する、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3またはα4β1インテグリンを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体フラグメントが、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む抗体のFab’フラグメントを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが、抗凝固ペプチドを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記タンパク質が、トラスツズマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ベバシズマブ、ダクリズマブ、パリビズマブ、ナタリズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、エプラツズマブ、アポリズマブ、ラベツズマブ、ヒトB型ナトリウム排泄増加性ペプチド、ネシリチドまたはウロジラチンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を含む、液体処方物または凍結乾燥処方物。
【請求項13】
タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む安定な液体薬学的処方物であって、該タンパク質が、N−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに結合したチオール基を含む、薬学的処方物。
【請求項14】
前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメントまたはペプチドを含む、請求項13に記載の薬学的処方物。
【請求項15】
前記抗体フラグメントが、Fab’フラグメントを含む、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項16】
前記Fab’フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFab’フラグメントを含む、請求項15に記載の薬学的処方物。
【請求項17】
前記抗体または抗体フラグメントが、インテグリンに結合する、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項18】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3またはα4β1インテグリンを含む、請求項17に記載の薬学的処方物。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項20】
前記抗体フラグメントが、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む抗体のFab’フラグメントを含む、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項21】
前記ペプチドが、抗凝固ペプチドを含む、請求項14に記載の薬学的処方物。
【請求項22】
前記タンパク質が、トラスツズマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ベバシズマブ、ダクリズマブ、パリビズマブ、ナタリズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、エプラツズマブ、アポリズマブ、ラベツズマブ、ヒトB型ナトリウム排泄増加性ペプチド、ネシリチドまたはウロジラチンを含む、請求項13に記載の薬学的処方物。
【請求項23】
タンパク質を含む安定な凍結乾燥薬学的処方物であって、該タンパク質が、N−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインに連結したチオール基を含む、薬学的処方物。
【請求項24】
前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメントまたはペプチドを含む、請求項23に記載の薬学的処方物。
【請求項25】
前記抗体フラグメントが、Fab’フラグメントを含む、請求項24に記載の薬学的処方物。
【請求項26】
前記Fab’フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFab’フラグメントを含む、請求項25に記載の薬学的処方物。
【請求項27】
前記抗体または抗体フラグメントが、インテグリンに結合する、請求項24に記載の薬学的処方物。
【請求項28】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3またはα4β1インテグリンを含む、請求項27に記載の薬学的処方物。
【請求項29】
前記抗体が、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む、請求項24に記載の薬学的処方物。
【請求項30】
前記抗体フラグメントが、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む抗体のFab’フラグメントを含む、請求項24に記載の薬学的処方物。
【請求項31】
前記ペプチドが、抗凝固ペプチドを含む、請求項24に記載の薬学的処方物。
【請求項32】
前記タンパク質が、トラスツズマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ベバシズマブ、ダクリズマブ、パリビズマブ、ナタリズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、エプラツズマブ、アポリズマブ、ラベツズマブ、ヒトB型ナトリウム排泄増加性ペプチド、ネシリチドまたはウロジラチンを含む、請求項23に記載の薬学的処方物。
【請求項33】
組成物を調製するための方法であって、該方法は、以下:
ナトリウムテトラチオネートの存在下において安定化因子と共にタンパク質をインキュベートする工程であって、ここで、該タンパク質は、遊離チオール基を含み、そして該安定化因子は、N−アセチル−L−システイン、N−エチル−マレイミドまたはシステインを含み、これにより該安定化因子を該タンパク質の該チオール基に結合させる、工程を包含する、方法。
【請求項34】
前記タンパク質が、抗体、抗体フラグメントまたはペプチドを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体フラグメントが、Fab’フラグメントを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記Fab’フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFab’フラグメントを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体または抗体フラグメントが、インテグリンに結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3またはα4β1インテグリンを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体が、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体フラグメントが、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を含む抗体のFab’フラグメントを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記ペプチドが、抗凝固ペプチドを含む、請求項34に記載の薬学的処方物。
【請求項42】
前記タンパク質が、トラスツズマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ベバシズマブ、ダクリズマブ、パリビズマブ、ナタリズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、エプラツズマブ、アポリズマブ、ラベツズマブ、ヒトB型ナトリウム排泄増加性ペプチド、ネシリチドまたはウロジラチンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
抗体のFab’フラグメントをN−アセチル−L−システインに結合する方法であって、該方法は、以下:
a)該抗体をパパインで消化することにより、該抗体のFab’フラグメントを生成する工程であって、ここで、該Fab’フラグメントは、遊離チオール基を含む、工程;
b)該Fab’フラグメントをナトリウムテトラチオネートの存在下においてN−アセチル−システインと共にインキュベートすることにより、該遊離チオール基を介して該N−アセチル−システインを該Fab’フラグメントに結合する工程、
を包含する、方法。
【請求項44】
前記Fab’フラグメントを精製する工程を更に包含する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記Fab’フラグメントが、インテグリンに結合する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3またはα4β1インテグリンを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、配列番号1の重鎖アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖アミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記Fab’フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFab’フラグメントを含む、請求項43に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−512349(P2008−512349A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518366(P2007−518366)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/022902
【国際公開番号】WO2006/004736
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(500533422)ピーディーエル バイオファーマ,インコーポレイティド (18)
【Fターム(参考)】