説明

タンパク質の安定性の増加についての選択を伴うリボソームディスプレイ又はmRNAディスプレイ方法

RNA発現系を用いた翻訳及び選択を適用することにより、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を提供する方法であって、翻訳過程で2以上の安定性選択圧が同時に適用され;選択過程で2以上の安定性選択圧が同時に適用され;又は翻訳過程で少なくとも1つの安定性選択圧が適用され、選択過程でも継続して適用され、かつ、選択過程で少なくとも1つの安定性選択圧がさらに適用される、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性が改善されたポリペプチド変異体を選択、取得又は産生する方法に関する。本発明はさらに、例えば治療のための、選択後の変異体の製造及び使用に関する。
【0002】
本発明は、in vitro翻訳及びRNAのような遺伝子型と所望のポリペプチドのようなコードされた表現型との共有結合又は非共有結合を取り入れるディスプレイ技術を使用することにより、親ポリペプチドと比べ改善された安定性を有し、かつ、機能活性を保持するポリペプチド変異体を選択する。
【背景技術】
【0003】
リボソームディスプレイ又はポリソームディスプレイ及び選択には、核酸ライブラリーの構築、結合のスクリーニング、及び所望の結合単位の同定が含まれる。ライブラリーは、多様な配列のDNAプールを合成することにより作製され、その後転写され、mRNAのプールを作製する。In vitro翻訳を利用してコードされたポリペプチド又は提示されたタンパク質が産生され、固定化した標的抗原を用いて所望の結合相互作用が選択される。該結合単位をコードするmRNAを使用してcDNAを作製することができ、その後cDNAを増幅させることができ、このプロセスを繰り返すことにより、バインダーをコードする遺伝子についてこの集団を濃縮し得る。選択されたタンパク質は、後にそれぞれのコード配列のクローニング及びDNA配列決定により同定され得る。
【0004】
当該技術は、広範にレビューされている(Hanesら, (2000) Meth. Enzymol. 328, 403-430; Pluckthunら, (2000) Adv. Prot. Chem. 55, 367-403; Lipovsek及びPluckthun (2004) J. Immunological Methods 290, 51-67)。
【0005】
これらの技術は、抗体フラグメント、ペプチド、並びにβ-ラクタマーゼやアンキリン反復タンパク質のようなペリプラズムタンパク質及び細胞質タンパク質を含む様々なタンパク質のディスプレイのために使用されている。
【0006】
ポリソーム複合体からのmRNAの回収は、抗体及び固定化オリゴチミジンを使用してマウス免疫グロブリンL-鎖をコードするmRNAを捕捉するプロトコールを記載した論文において、1973年に初めて報告された(Schechter (1973) PNAS USA 70, 2256-2260)。ポリソーム免疫沈降法プロトコールはPayvar及びSchimkeにより改良され(Eur. J. Biochem. (1979) 101, 271-282)、HLA-DR抗原の重鎖のcDNAクローンがモノクローナル抗体を用いたポリソームの免疫沈降法を行った後に取得された(PNAS USA (1982) 79, 1844-1848)。リボソームディスプレイによる抗体ライブラリーの作製は、Kawasakiにより提唱され特許された(米国特許番号5,643,768及び米国特許番号5,658,754、EP-B-0494955)。
【0007】
真核性翻訳系又は原核性翻訳系のいずれかを用いたリボソームディスプレイの様々な使用例が利用されてきた。大腸菌(E.coli)抽出物を用いたペプチドリガンドの選択は、Mattheakisらにより初めて立証された(PNAS USA (1994) 91, 9022-9026及びMethods Enzymol (1996) 267, 195-207)。この研究グループは、所与の抗体の既知のペプチドエピトープと類似するペプチドリガンドが、選択基質として抗体を用いることにより選択されることを実証した。前立腺特異抗原と結合する高親和性ペプチドリガンドが、コムギ胚芽抽出物翻訳系を用いたペプチドライブラリーからポリソーム選択を利用することにより、同定されている(Gersukら, (1997) Biotech and Biophys. Res. Com. 232, 578-582)。三重複合体の収率を向上させるために設計された大腸菌翻訳系を用いるもので、ジスルフィド結合を形成させる機能性抗体フラグメントの選択が報告された(Hanes及びPluckthun, PNAS USA (1997) 94, 4937-4942)。それ以降、この実験セットを利用して、マウスライブラリー由来の抗体が選択されてきた。また、PCRエラーと選択の複合効果を利用した選択において、親和性成熟が生じることが示された。解離定数が約10-11MのscFvフラグメントが得られた(Hanesら, PNAS USA (1998) 95, 14130-50)。ウサギ網状赤血球溶解物の抽出物を利用して、混在した集団から抗体の特異性が濃縮されることも実証されている(He及びTaussig (1997) NAR, 5132-5234)。
【0008】
mRNAディスプレイは、リボソームディスプレイと同様に、mRNAとコードされたポリペプチドとの複合体を基本的選択ユニットとして使用する。リボソームディスプレイとmRNAディスプレイとを区別するものは、mRNAとタンパク質間の共有結合の性質である。該結合は小さなアダプター分子、通常ピューロマイシンを介してなされる(Nemotoら, (1997) FEBS Lett 414:405; Roberts及びSzostak, (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 12297; Takahashiら, (2003) Trends Biochem. Sci. 28:159)。mRNAディスプレイは、リボソームディスプレイが行われる通常の温度である4℃には制限されない。通常、選択が行われる際の温度は、タンパク質標的の安定性により制限をうける。そのため、mRNAディスプレイは、ペプチド及び抗体のアフィニティー選択に使用されてきた(Lipovsek及びPluckthun, (2004) J Immunological Methods 290:51-97を参照されたい)。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、in vitro翻訳及びRNAのような遺伝子型と所望のポリペプチドのようなコードされた表現型との共有結合又は非共有結合を取り入れるディスプレイ技術を適用して、親ポリペプチドと比べ改善された安定性と保持された機能活性を有する対象ポリペプチド変異体を選択する方法を提供する。本発明の方法は、過去にはリボソーム又はmRNAディスプレイのいずれにおいても使用されなかった数多くの特長を取り入れる。
【0010】
本発明の実施形態では、2以上の安定性選択圧が適用され、特別には2以上の安定性選択圧を同時に適用して、安定なポリペプチドを選択させる。
【0011】
安定性選択圧は、in vitro翻訳及びRNAのような遺伝子型と所望のポリペプチドのようなコードされた表現型との共有結合又は非共有結合を取り入れるディスプレイ技術において利用することができ、変異体ポリペプチドをその安定性に基づいて選択させる任意のファクターであり得る。安定性は、一般に、折りたたみ状態及び活性状態で存在するための分子の性質により規定され得る。安定性選択圧は、ポリペプチドが正しくフォールディングするのを妨害又は阻害するので、該ポリペプチドは活性状態又は完全な活性状態に達し得ない。安定性選択圧は、ポリペプチドが折りたたみ状態及び活性状態を維持する能力に影響を与え得る。安定性選択圧は、何らかの方法で、折りたたみ状態及び活性状態のポリペプチドと、そうでない状態のポリペプチドとを区別することができる。
【0012】
例えば、安定性選択圧は、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)又はチオシアネート(例えば、チオシアン酸ナトリウム)のような化学変性剤であり得る。安定性選択圧は、ジチオスレイトール(DTT)、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール又はグルタチオンのような還元剤であり得る。安定性選択圧は、pH又は温度、特に高温のような物理的変性剤であり得る。選択圧は、タンパク質を分解させることができるプロテアーゼ又は酵素であり得る。選択圧は、シャペロンの枯渇又は小分子タンパク質折りたたみインヒビターであり得る。
【0013】
安定性選択圧は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の使用であり得る。
【0014】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、生体分子をそれらの表面疎水性の違いに基づいて分離するための技術である。HIC技術は、タンパク質精製方法の一部としてだけでなく、タンパク質のコンフォメーション変化の検出に関する分析ツールとしても使用されてきた(Queirozら, (2001) J. Biotech. 87, 143-159; Fulton及びVanderburgh (1996) Biomolecule Chromatography PerSeptive Biosystemsでレビューされる)。HICは、HICマトリックスとタンパク質分子間の疎水性吸引力に基づくものである。HICマトリックスは、疎水性ポリマー骨格(例えば、架橋デキストラン又はアガロース)と結合した小さな非極性基(ブチル、オクチル又はフェニル)で構成される。多くのタンパク質は、一般に親水性であると考えられるが、HICマトリックスと相互作用するのに十分な数の疎水基も有する。HICは、タンパク質の三次構造内に正常に埋め込まれたが、誤ったフォールディングが原因で露出した非極性基と相互作用するのに十分な程に感度が高い。相互作用の強さは、マトリックスのタイプ、塩の種類と濃度、pH、添加剤及び温度に依存する。
【0015】
本明細書に記載の本発明者の研究は、少なくとも2つの選択圧(例えば、DTT、HIC及び高温)を同時に使用することにより、リボソームディスプレイ又はmRNAディスプレイのようなディスプレイ技術を用いて、治療用タンパク質の薬理学的特徴を改善し、特別には有効期間内の安定性を改善することを初めて立証する。
【0016】
少なくとも2つの選択圧を、特に同時に使用することが、単一の選択圧を使用すること又は逐次的に選択圧を使用することと比べて有利なのは、その方がより汎用的でかつ頑強であるからである。本発明者の経験によれば、幾つかのタンパク質は1つの選択圧単独に対しては感受性がない、すなわち、1つの選択圧単独によっては顕著に不安定化されないが、2つの選択圧、特に同時に適用した場合には感受性がある。例えば、DTTはそれ単独では不十分であり得、特定のタイプのタンパク質、例えばジスルフィド結合を有するタンパク質に対してのみ有用であることを本発明者は見出している。したがって、選択を利用する本発明は、よりストリンジェントな選択方法及び安定性に基づいた任意のタンパク質の選択を可能にする。
【0017】
本発明の方法では、ポリペプチド変異体をコードする遺伝子のライブラリーが構築され得る。ポリペプチド変異体は、その変異体の産生時に安定性選択圧に供され得、例えばDTTの存在下でそれらを翻訳することにより、安定性選択圧に供される。安定性選択圧は、ポリペプチドの翻訳過程、新生ポリペプチドのフォールディング過程及び/又は後続のポリペプチドのフォールディングにおいて作用し得る。
【0018】
ポリペプチドの産生過程、すなわち新生ポリペプチドの翻訳及びフォールディング過程で使用され得る安定性選択圧には、DTT、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、シャペロンの枯渇、pH、及び小分子タンパク質フォールディングインヒビターが含まれる。シャペロンは、ポリペプチドのフォールディングを補助するために作用する。したがって、シャペロンの枯渇はポリペプチドの正しく折りたたむ能力に影響を与える。シャペロンは、免疫沈降法(IP)を用いることにより、細胞を含まない抽出物で枯渇させることができる。GroEL/GroES、DnaJ、DnaKのような全ての主要なシャペロンに対する抗体は購入することができ、リボソームディスプレイ系の特定成分をIPに基づいて除去するために使用可能である。同様の手法により、細胞を含まない抽出物からホスファターゼを除去することでATPの存在比を向上させ、その結果として発現収率が向上することが立証されている(Shenら (1998) Biochem. Eng. J. 2: 23-28)。また、フォールディングは特別に設計された小分子により阻害され得る(Gestwickiら (2004) Science 306:865-869)。小分子タンパク質フォールディングインヒビターは、タンパク質の正しいフォールディングを妨害又は阻害することができる任意の小分子であり得る。
【0019】
2つの選択圧が、変異体を産生する全プロセス(例えば、翻訳過程)及び選択(例えば、結合又は生物学的活性による選択)において、同時に適用される。好ましくは、1以上の選択圧が該過程の選択パートで適用され、より好ましくは2以上の選択圧が選択パートで適用される。該過程の翻訳パートでは、1以上の選択圧が存在し得、該過程の選択パートでは1以上の選択圧が存在し得る。
【0020】
選択をすることにより、より安定で、かつ、変わらずコグネイト(cognate)リガンド、受容体又は特異的結合対メンバーと結合する変異体が得られる。変異体は、2以上の安定性選択圧と共に、同時にインキュベートされる。本発明の方法では、使用される安定性選択圧、好ましくは同時に使用される安定性選択圧は、例えばHIC及び高温であり得る。改良された活性変異体は、それらとコグネイトリガンド、受容体又は特異的結合対メンバーを介して捕捉される。選択圧は、活性変異体の捕捉過程で存在し得、又はそれらのコグネイトリガンド、受容体又は特異的結合対メンバーと共に変異体をインキュベートする前に、除去され得る。
【0021】
使用され得る安定性選択圧には、DTT、グルタチオン、TCEP、メルカプトエタノール、尿素、GuHCl、チオシアン酸ナトリウム、プロテアーゼ、HIC及び高温が含まれる。
【0022】
HICは、疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックス又は任意の他の好適な疎水性マトリックス、例えば逆相クロマトグラフィーで使用されるマトリックスを使用し得る。例えば、HICに好適なマトリックスはbutyl-SepaharoseTM (Amersham)である。
【0023】
「高温」とは、ディスプレイ技術が通常行われる温度よりも高く、タンパク質を少なくとも一部不安定にする温度を意味する。
【0024】
例えば、本明細書で記載のとおり、リボソームディスプレイは通常、リボソーム/mRNA/ポリペプチド複合体の安定性を保証するために4℃で実施される。したがって、リボソームディスプレイを用いた方法における「高温」とは、4℃を超える温度である。例えば、「高温」は約15℃であり得、又は室温以上であり得、約20℃〜約30℃を含む任意の温度を意味する。高温は、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29若しくは30℃であり得、又は約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29若しくは約30℃であり得る。好ましくは、高温は25℃又は約25℃である。好ましくは、本発明の方法は、室温、好ましくは約25℃で実施されるHICを使用する。
【0025】
また、本明細書に記載のとおり、mRNAディスプレイは通常、約25℃で実施される。したがって、mRNAディスプレイを用いた方法における高温は、25℃を超える温度である。そのような温度は、25-30℃、25-35℃、30-35℃、25-40℃、30-40℃、35-40℃、25-50℃、30-50℃、若しくは35-50℃であり得、又は25、30、35、40、45又は50℃であり得るか、約25、約30、約35、約40、約45又は約50℃であり得る。
【0026】
好ましくは、安定性選択圧として機能するためには、高温はディスプレイ方法の通常の実施温度より少なくとも20℃高い温度である。
【0027】
還元剤DTTをリボソームディスプレイにおける選択圧として使用して、ジスルフィド架橋を有するタンパク質の安定性を改善することは、Jermutusら, (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98: 75-80で開示されている。
【0028】
選択前にHICを使用して、折りたたまれていないペプチド及び誤って折りたたまれたペプチドをランダム配列ライブラリーから除去することは、Keefe及びSzostak (2001) Nature 410: 715-718、並びにMatsuura及びPluckthun (2003) FEBS Letters 539: 24-38により開示されている。
【0029】
選択圧としてのプロテアーゼの使用が、開示されている(Matsuura及びPluckthun 2004 FEBS Letters 539: 24-38)。
【0030】
25℃でGuHClを使用するmRNAディスプレイの使用は、Chaput及びSzostak (2004) Chem Biol 11: 865-874で開示されている。
【0031】
したがって、選択圧はリボソームディスプレイ及びmRNAディスプレイにおいて、単独又は逐次的に使用されてきた。しかしながら、本発明はin vitro翻訳及びRNAのような遺伝子型と所望のポリペプチドのようなコードされた表現型との共有結合又は非共有結合を取り入れるディスプレイ技術において2以上の安定性選択圧の使用を初めて適用する。
【0032】
本発明では、その選択プロトコールがリボソームディスプレイ又はmRNAディスプレイにおける通常のプロトコールと異なる。
【0033】
例えば、リボソームディスプレイ選択は、リボソーム/mRNA/タンパク質複合体の安定性を保証するために4℃で実施される(Hanesら, (2000) Meth Enzymol 328:404)。しかしながら、HICは温度依存性であるためより高温ではHICマトリックスとタンパク質間の疎水性相互作用が増強される。HIC選択圧を最大化するためには、本発明の実施形態のとおり、インキュベーションを室温でHICマトリックスと共に行う。したがって、HIC及び高温という2つの選択圧が、安定なポリペプチド変異体を選択するために組み合わせて使用され得る。リボソーム複合体が室温でも安定であって、そのような選択プロトコールの実施を可能にすることを見出したのは予想外であった。
【0034】
本発明は、3つの安定性選択圧、例えば、DTT、HIC及び高温を用いた選択プロトコールも提供する。
【0035】
選択圧は、新生ポリペプチドのフォールディング過程及び/又は折りたたみタンパク質上で作用し得る。
【0036】
ポリペプチドのフォールディングで作用し、折りたたみ分子上では効果的でないような選択圧は、翻訳過程で加え、その後翻訳後の過程で維持すべきである。これらの選択圧には、DTT、グルタチオン、TCEP、チオシアン酸ナトリウム、メルカプトエタノール、尿素、GuHCL、pH、小分子フォールディングインヒビター及びシャペロンの枯渇が含まれる。
【0037】
折りたたみタンパク質を不安定化するそういった選択圧は、翻訳過程で加えることができ、又は翻訳後ステップに限定される。これらには、尿素、GuHCL、HIC、温度及びプロテアーゼが含まれる。
【0038】
本発明が有用かつ効果的である根拠は、ヒトエリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及び顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の新規変異体の提供と関連付けて示される。
【0039】
ヒトEPOは、Linら, Proc Natl Acad Sci USA (1985) 82: 7582-4、及びJacobs Kら, Nature 313: 806-810 (1985)により初めてクローン化され、アミノ酸配列が報告された。
【0040】
EPOは、世界的な売り上げが30億USドルにも及ぶ主要なバイオ医薬品製品である。EPOは主に、慢性腎不全、癌の化学療法、HIV感染、小児への使用、早産児と関連する貧血を治療する目的で、患者において赤血球の増強や、赤血球を形成させるために使用され、また、待機的非心臓手術及び非血管手術を受ける貧血患者において必要輸血量を減少させるために使用される。
【0041】
ヒトEPOは、分子量が約30400ダルトンの酸性糖タンパク質である。ヒトEPOは、内部ジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基を(7、29、33及び161位で)含み変異のない165アミノ酸の単鎖ポリペプチドから構成される(Laiら, J Biol Chem 1986 261: 3116-3121; Recnyら, J Biol Chem 1987 262: 17156-17163)。7位及び161位のシステイン間のジスルフィド架橋が、生物学的活性について重要であることが知られている。EPOの糖鎖部は、Asn 24、38及び83における3つのN-結合糖鎖、及びSer 126における1つのO-結合糖からなる(Browne JKら, Cold spring Harb symp Quant Biol 1986 51: 693-702 Egrie JCら, Immunobiology 1986 172: 213-224)。
【0042】
ヒトEPOの構造は、既に報告されている(Cheethamら, 1988 Nat Struct Biol 5:861-866; Syedら, 1998 Nature 395:511-516)。ヒトEPOは4つのヘリックス束であり、造血増殖因子ファミリーメンバーの典型例である。変異のないアミノ酸配列とは対照的に、糖鎖構造は変動的であり、ミクロ不均質としての性質を有する。分岐パターン、複雑度及び電荷に関する糖鎖部分の相違点は、EPOの薬物動態及び薬力学において顕著な効果を示す。様々なグリコシル化パターンの効果について、十分な研究がなされてきた(Darlingら, 2002 Biochemistry 41: 14524-14531; Storringら, 1998 Br J Haematol 100: 79-89; Halstensonら, 1991 Clin Pharmacol Ther 50: 702-712; Takeuchiら, 1990 J Biol Chem 265: 12127-12130)。
【0043】
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、骨髄性細胞の産生、エフェクター細胞機能及び生存を調節するサイトカインである。
【0044】
ヒトGM-CSFは、骨髄移植後の骨髄の再構築、骨髄移植定着の不全又は遅延、自家末梢血前駆細胞の移行及び移植後、並びに急性骨髄性白血病に罹患した高齢者における化学療法導入後において使用される。GM-CSFは、leukine(Amgen)及びleucomax(Schering-Plough)という商品名のものを入手することができる。
【0045】
ヒトGM-CSFは、Cantrellらにより初めてクローニングされ、アミノ酸配列が報告された。また、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子のクローニング、配列、及び発現は、Proc Natl Acad Sci U S A. (Sep 1985); 82(18): 6250-4で初めて報告された。
【0046】
GM-CSFは、2つのグリコシル化部位を有する127アミノ酸からなる単量体タンパク質である。該タンパク質は、アミノ末端に疎水性の分泌シグナル配列を含む144アミノ酸の前駆体として合成される。哺乳類細胞で産生されるGM-CSFは、サイズが14-35 KDaの範囲で異なる様々なグリコシル化を形成することがわかっている。糖部分は、生物学的活性の全スペクトルに関して必要とされない。GM-CSFの構造は、他の4つのヘリカルサイトカインと類似する4つのヘリックス束である(Diederichs, K., Boone, T. & Karplus, P. A. (1991), 「顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子の新規折りたたみ及び推定上の受容体結合部位」, Science, 254, 1779-1782)。それは、2つのジスルフィド架橋(54/96位及び88/121位)を形成する4つのシステイン残基をコードする。
【0047】
ヒトG-CSFは、発熱を伴う重篤な好中球減少を好発する骨髄抑制癌化学療法薬の投与を受けた患者において、発熱性好中球減少症(好中球の減少)と関連する感染の発症を減少させるために使用される。G-CSF製品の使用は、医師が計画的な化学療法用量をオンタイムで提供するのを手助け、臨床結果を改善する。G-CSFは、Neupogen、Neulasta(pegylated G-CSF)及びGranocyteという商品名のものを入手することができる。
【0048】
ヒトG-SCFは、Nagataら, 「ヒト顆粒球コロニー刺激因子の染色体遺伝子構造及び2つのmRNA」, Nature 5: 575-581 (1986)により、初めてクローニングされ発現された。
【0049】
成熟G-CSFは、Thr133で1つのO-グリコシル化部位、2つの分子内ジスルフィド架橋(Cys36-Cys42及びCys65-Cys74)を有する174アミノ酸の単量体タンパク質である。G-CSFの構造は、4つのヘリックス束である(Hillら, 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90; 5167-5171)。グリコシル化は分子の安定性に寄与するが、生物学的活性にとっては不要である(Oh-edaら 1990 J Biol Chem 265:11432-11435)。組換えG-CSFは、封入体の回収及びG-CSFのリフォールディングを伴い、大腸菌(Escherichia coli)において産生される(US 5,849,883)。
【0050】
改善された安定性を有するG-CSF変異体が数多く報告されており、例えば、Bishopら 2001「安定性を増強するための顆粒球コロニー-刺激因子のリエンジニアリング」J Biol Chem 276: 33465-33470; Lou et al 2002「コンピューターによる超ハイスループットスクリーニングを用いた安定性が増強したサイトカイン類縁体の開発」, Protein Science 11: 1218-1226; Fujiら, 1997,「KW-228の構造 生物学的活性及び安定性が増強したテーラードのヒト顆粒球コロニー刺激因子」, FEBS Letters 410: 131-135がある。
【0051】
しかしながら、G-CSFの大腸菌による産生に関する報告では全て、細胞質の発現を利用しており、G-CSFをリフォールディングさせて封入体を産生させる。バチルス(Bacillus)シグナルペプチド、ヒスタジン6量体及びXaファクター切断部位を用いるもの以外に、大腸菌でのヒトG-CSFの可溶性発現に成功した報告はない(Jeong及びLee, 2001,「タンパク質発現及び精製」 23:311-318)。これにより、切断されなかったN末端のヒスチジンタグを伴う可溶性発現が生じるが、生物学的活性はないことが立証された。
【0052】
大腸菌内で発現される際にG-CSF変異体は、可溶性で単量体の活性タンパク質を産生する。これにより、リフォールディングステップが不要な簡略化した発現及び精製工程が利用可能となる。これにより調製を最適化し、有効性及び貯蔵特性について利益が得られることがある。
【0053】
本発明は、安定性が改善されたEPO、GM-CSF及びG-CSF変異体を提供し、患者及び製造業者にとっての利益をもたらす本明細書で実証された方法を提供する。安定性が改善された変異体は、一般に下流プロセッシングにおいて高発現及び高収率をもたらし、商品価格(COG)の改善が図られる。さらに、安定性が改善された変異体は改善された有効寿命を有する。有効寿命がより長ければ、商品価格にも反映されるので有益である。さらに有益なのは、冷所保存の必要性の低減であり、商品流通及び自宅で自己投与をする患者をサポートする。
【0054】
安定性が改善された変異体は半減期が延長されるので、体内での有効性が向上し得る。さらに、安定性が改善された変異体は、凝集が減少することにより有効性が向上するだけでなく、誘発される抗体を中和又は結合するリスクも低減するので、皮下投与のような投与経路により適し得る。
【0055】
本発明は、同様に他のポリペプチドに対して、及び安定性が改善されたポリペプチド変異体の選択に対しても、適用することができる。
【0056】
本明細書に記載のとおり、複数の選択圧の使用、特にその同時適用により、より一般的な選択プロトコールを、任意のポリペプチドの安定性に基づいた選択に適用することが可能となる。この発明の対象となりうるポリペプチドの好ましい特徴は、本明細書中に記載する。本発明の対象ポリペプチドは、in vitro翻訳及びRNAのような遺伝子型と所望のポリペプチドのようなコードされた表現型との共有結合又は非共有結合を取り入れるディスプレイ技術を使用することにより、提示可能なものでなければならない。したがって、ポリペプチドは無細胞発現系において翻訳可能である必要があり、また、そのような系において正しく三次構造にフォールディングできる必要がある。
【0057】
本発明の対象ポリペプチドは、単シストロン性であり得又は同一のサブユニット(ホモ多量体)から構成され得る。1つの単シストロン(例えば一本鎖Fv抗体分子)から発現され得たポリペプチド鎖と融合した2量体分子が適用され得る。ポリペプチドは、好ましくはジスルフィド結合を形成し得るシステイン残基、又はフォールディング及び安定性に関して重要な他の残基を含む。フォールディング及び安定性に関して重要なポリペプチドエレメントは、好ましくは、条件に依存して、例えば還元剤の添加により若しくは部位特異的突然変異生成により除去され得、又は影響され得る。
【0058】
本発明の対象タンパク質の例には、これに限定されないが、インターフェロン又はインターロキンのような4つの逆平行α-ヘリックス束タンパク質ファミリーのメンバーだけでなく、腫瘍壊死因子受容体II (TNFRII)のような複合体受容体の細胞外ドメインが、さらに含まれる。
【0059】
安定性は一般に、その折りたたみ状態及び活性状態を維持しようとする分子の性質として定義できる。天然分子は通常、その代謝により安定性が制限されており、多くの場合、その迅速な代謝は、体内における作用の内因性機構の主な特徴となる。
【0060】
通常、折りたたみ構造及び天然構造である場合に安定なタンパク質は、プロテアーゼ又は他のメカニズムにより分解することができない。これは、通常、タンパク質を体内から除去する手段である安定状態からの2つのキーオフ経路が原因である。これら2つは、アンフォールディング及び凝集である。それらは通常関連している。アンフォールディングとは、折りたたみ活性分子を非折りたたみ状態に戻す経路である。凝集は、分子が不可逆的に非活性状態へと変化するような誤ったフォールディングの結果である。アンフォールディング及び凝集はいずれも、タンパク質分解又は他の分解へのタンパク質の感受性を明らかに増大させる。
【0061】
タンパク質凝集は、大腸菌発現で可溶性の機能形態の組換えタンパク質の発現を主に引き起こす。組換えタンパク質の凝集は、おそらくシャペロン量の制限が原因である。これらの条件下では、フォールディングが完全にはなされず、疎水性表面に露出し、一部が折りたたまれた中間体はオフ経路を辿り、自己会合(self-associate)する。自己会合は、タンパク質凝集及び封入体の形成の基礎となる(review Baneyx (1999) 「大腸菌における組換えタンパク質発現」Curr Opin Biotechnol 10:411-421; Carrio及びVillaverde (2002) J Biotech 96, 3-12; Geogiou及びValaw (1996) Curr Opin Biotech 7,190-197を参照されたい)。
【0062】
大腸菌内の細胞質で発現されたGM-CSFは、不溶性凝集体を形成することが知られている(Greenbergら, (1988) Curr Microbiol 17:321-332)。ペリプラズム発現も、不溶性画分における大部分の産物を生じさせる(Lundellら, (1990) Biotechnology and Applied Biochemistry 12:567-578)。
【0063】
発現時に凝集し易いタンパク質について、より安定な変異体を作製することにより、可溶性の単量体タンパク質が生じ得る。そのようなタンパク質は、より効率的にフォールディングし得、アンフォールディングし難いと考えられるので、凝集をもたらし得る疎水性表面への露出が少ない。これにより、大腸菌での発現収率は向上すると考えられ、リフォールディングプロセスの必要がなくなるであろう。
【0064】
これまでにタンパク質の可溶性発現を改善する様々な試みがなされてきた。例えば、培養条件の改良、シャペロンの使用、融合タンパク質の作製及びエンジニアリング、GuHCl選択を使用すると、様々なレベルでの成功がもたらされる。
【0065】
本発明の実施形態による方法では、生成物がより安定となるように、対象ポリペプチドのフォールディング及びアンフォールディング経路が改変される。熱力学的安定性が増強されたタンパク質の進化が過去に実証されてきたが(Jermutusら, (2001) Proc Natl Acad Sci 98: 75-80)、in vitro進化及びこの過程を通じて変化した生成アミノ酸がバイオ治療に明白な利益をもたらし得ることを報告したのは、この報告が最初である。
【0066】
本発明の実施形態は、本明細書でより詳細に記載されるが、図面の参照を含めて例示にすぎず、その内容が限定されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
本発明の1態様では、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を提供する方法であって:
(a) 対象ポリペプチド変異体をコードするヌクレオチド配列を含み、フレーム内停止コドンを持たないmRNA分子を提供し;
(b) 前記mRNA分子をmRNA分子のリボソーム翻訳条件下でインキュベートしてコードされた対象ポリペプチド変異体を産生することにより、少なくともmRNA及びコードされた対象ポリペプチド変異体をそれぞれが含む複合体を形成させ;
(c) 前記複合体を、親の対象ポリペプチドと結合する受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと接触させて、選択条件下で前記受容体、リガンド、又は特異的結合対メンバーと結合することができる対象ポリペプチド変異体をそれぞれが提示する1以上の複合体を選択し、ここではステップ(i)、(ii)及び(iii)のうち1以上が次のとおり実施され:
(i) ステップ(b)の翻訳過程で2以上の安定性選択圧が同時に適用され;
(ii) ステップ(c)の選択過程で2以上の安定性選択圧が同時に適用され;
(iii) ステップ(b)の翻訳過程で少なくとも1つの安定性選択圧が適用され、かつ、ステップ(c)の選択過程でも継続して適用され、ステップ(c)の選択過程で少なくとも1つの安定性選択圧がさらに適用され; 及び
(d) 選択された1又は複数の対象ポリペプチド変異体の安定性を試験することにより、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された1以上の対象ポリペプチド変異体を取得することを含む、前記方法が提供される。
【0068】
本発明の方法は、in vitro翻訳及びRNAのような遺伝子型と所望のポリペプチドのようなコードされた表現型との共有結合又は非共有結合を取り入れる選択又はディスプレイ技術を使用することにより、親ポリペプチドと比べ改善された安定性を有し、かつ、機能性を保持するポリペプチド変異体を選択する。
【0069】
本発明の方法は、例えばリボソームディスプレイ技術又はmRNAディスプレイ技術を使用し得る。リボソームディスプレイの場合、本発明の方法で形成された複合体はさらにリボソームを含むであろう。
【0070】
安定性選択圧は、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、シャペロンの枯渇、pH、小分子タンパク質折りたたみインヒビター、プロテアーゼ、チオシアン酸ナトリウム、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)及び温度から選択できる。(高温の適用は、安定性についての選択圧となる。)
【0071】
変異体ポリペプチドの翻訳過程における安定性選択圧は、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、シャペロンの枯渇、pH、及び小分子タンパク質折りたたみインヒビターであり得る。任意には、安定性選択圧は翻訳過程では存在しない。好ましくは、DTTが翻訳過程における選択圧として使用される。
【0072】
少なくとも2つの安定性選択圧を同時に使用して、本発明の方法によりポリペプチド変異体が選択され得る。2以上の安定性選択圧は、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、プロテアーゼ、チオシアン酸ナトリウム、HIC及び温度から選択され得る。好ましくは、同時に使用される選択圧は、選択過程で、好ましくは翻訳過程でのDTTの使用含むプロセスにおいて、HIC及び温度を含む。選択圧として適用される温度は、室温、好ましくは約25℃であり得る。
【0073】
1以上の安定性選択圧は、親の対象ポリペプチドと結合する受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと結合することができる選択された変異体の捕捉過程において存在し得る。他には、2つの選択圧のうち1以上は、受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーにより選択された変異体の捕捉前に除去され得る。選択圧を存在させるか、不存在とするかは、選択圧が選択された変異体と受容体、リガンド若しくは特異的結合対メンバーとの相互作用に影響を及ぼし得るかどうかや、相互作用を妨害するかどうかに少なくとも一部影響される。例えば、プロテアーゼが選択圧として使用される場合、受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーがプロテアーゼにより分解されるのを避けるために、受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーが投入される前に、プロテアーゼを除去又は不活性化することが好ましい。
【0074】
本発明の方法において、安定性は、選択された1又は複数の対象ポリペプチド変異体が受容体、リガンド若しくは特異的結合対メンバーと結合する変異体の能力を選択圧(例えばDTT)の存在下又は不在下で産生、提示された際に比較することにより、試験され得る。
【0075】
本発明で適用される安定性の指標は、ジチオスレイトール(DTT)の存在下で、例えば10mMのDTT存在下で、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される変異体がその受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと結合する能力の、DTTの不在下で、同一のラジオイムノアッセイで変異体がその受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと結合する能力に対する割合として表される。この割合が高くなればなるほど、還元環境下での変異体の安定性が高くなり、折りたたみ状態で存在する変異体が多くなる。
【0076】
野生型ポリペプチドと比べ、変異体は約5倍又は少なくとも約5倍、より好ましくは約10倍、15倍、20倍、25倍若しくは30倍、又は少なくとも約10倍、15倍、20倍、25倍若しくは30倍改善されるような割合を有し得る。
【0077】
本発明の方法において、安定性は、選択された1又は複数の対象ポリペプチド変異体の凝集度を親の対象ポリペプチドの凝集度と比較することにより試験され得る。
【0078】
したがって、本発明に関して適用され得る安定性の別の指標は、時間をかけて生じた変異体ポリペプチドの凝集と野生型ポリペプチドの凝集とを比べることである。例えば、野生型及び変異体ポリペプチドはいずれも、ある温度範囲(例えば、5〜45℃)で保存され、その後分解生成物と凝集した物質が当技術分野で公知の慣用方法により分析され得る。安定なタンパク質は折りたたみ状態でより多く存在し、分解及び凝集され難い。
【0079】
凝集度は、可溶性タンパク質の発現についてのスクリーニングにより評価され得、例えば、タンパク質の発現後に遠心分離並びにPAGE及びイムノブロッティングによる解析を実施することを含む。遠心分離後に除去されるスメア又はバンドとは逆に、遠心分離により除去されない各バンドの検出は、凝集体ではなく可溶性タンパク質の存在を示す。
【0080】
ポリペプチド変異体の安定性は、生物学的活性アッセイで変異体の機能又は活性を測定することにより、評価され得る。
【0081】
安定性が改善された変異体ポリペプチドは、野生型タンパク質が残存活性の90%を例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10℃高くなった場合に維持するのと比べ、さらに2〜10℃高い温度で、残存活性の90%を維持しうる。残存タンパク質(すなわち、折りたたみ、活性タンパク質)の割合は、HPLC、SDS PAGEのような慣用の生化学技術により、又は結合アッセイのような活性アッセイ若しくは細胞からの応答を解明することにより、測定し得る。
【0082】
本発明の方法は、選択された複合体からmRNAを回収することを含み得る。したがって、選択した1又は複数の複合体からmRNAが単離され得、かつ/又はDNAの提供に使用され得る。そして、DNAはコードされた特異的結合対メンバーの産生に使用され得、かつ/又はリボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、又はバクテリオファージディスプレイ、酵母ディスプレイのような他の系を用いる更なる選択ラウンドに適用され得る。
【0083】
一般に、対象ポリペプチドを形成する可能性のある多様なペプチドやポリペプチドのライブラリー、集団又はレパートリーをコードする多様なmRNA配列のライブラリー、集団又はレパートリーが提供される。
【0084】
本発明の方法で適用されるリボソーム翻訳系は、原核性又は真核性であり得る。いずれのリボソーム翻訳系も、様々な結合分子のディスプレイ及び選択に関する技術分野で確立されている。例えば、Mattheakisら, (1994) PNAS USA 91, 9022-9026; Mattheakisら, (1996) Methods Enzymol 267, 195-207; Gersukら, (1997) Biotech及びBiophys Res Com 232, 578-582; Hanes及びPluckthun (1997) PNAS USA 94, 4937-4942; Hanesら, (1998) PNAS USA 95, 14130-50; He及びTaussig (1997) NAR 5132-5234. (Hanesら (2000) Meth. Enzymol.328, 403-430, Pluckthunら (2000) Adv. Prot. Chem 55, 367-403)を参照されたい。
【0085】
リボソームディスプレイの構築物は、RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7ポリメラーゼプロモーター)、リボソーム結合部位、Kozakコンセンサス配列、開始コドン及びポリペプチド、ペプチド又はタンパク質のコード配列を含む得る。1以上の検出タグをコードする1以上のヌクレオチド配列が、1以上の検出タグ(例えば、ヒスチジンタグ)をさらに含むポリペプチド、ペプチド又はタンパク質を産生するために含まれ得る。例えばWO01/75097で開示されるリボソームディスプレイで使用するために、構築物に1以上の特徴がさらに取り込まれ得る。
【0086】
本発明の方法で使用されるmRNA翻訳系は、任意の好適で購入可能な系であり得る。原核性又は真核性翻訳系が使用され得、例えば、原材料の大腸菌又はコムギ溶解物(例えば、Roche, Invitrogenにより供給される)、ウサギ網状赤血球溶解物(例えば、Ambion, Promegaにより供給される)又はPUREのような再構築システム(Shimizuら, 「精製した成分で再構成された無細胞翻訳」, Nat. Biotechnol. 19 (2001) 751-755.)である。
【0087】
本発明の幾つかの実施形態では、翻訳系でインキュベートされるmRNA分子は、RT-PCRプライマーの少なくとも1つが、mRNAコード領域の規定領域を含ませるために多種多様な配列をコードする変異プライマーであるRT-PCR反応を用いることにより提供される。例えば、規定領域は抗体分子のCDR、好ましくは抗体VHドメインのCDR3をコードする領域であり得る。
【0088】
突然変異の規定領域は、全タンパク質の安定性のために必要であることがわかっている残基(Probaら, (1998) J. Mol. Biol.2 75, 245-253)を含み得、又は露出ループ等の早期凝集現象に関与するようなタンパク質の領域であり得る。
【0089】
本明細書に記載のとおり、本発明の方法はin vitro系で産生可能な任意のタンパク質に適用することができる。
【0090】
好ましい実施形態において、ディスプレイに用いる対象ポリペプチドは抗体分子であり、通常はscFv抗体分子、VH、Fd(VH及びCH1ドメインからなる)のような一本鎖抗体分子であり、又はdAb分子である。
【0091】
他の好ましい実施形態では、非抗体の対象ポリペプチドが適用され、これらのポリペプチドには受容体、酵素、ペプチド及びタンパク質リガンドが含まれ得る。対象ポリペプチドの例には、これに限定されないが、インターフェロン又はインターロキンのような4つの逆平行α-ヘリックス束タンパク質ファミリーのメンバーだけでなく、腫瘍壊死因子受容体II(TNFRII)のような複合型受容体の細胞外ドメインも含まれる。
【0092】
本発明の方法では、選択された対象ポリペプチド変異体を提示する選択された複合体から回収されたmRNAが増幅され得、選択された対象ポリペプチド変異体をコードするDNAへとコピーされ得る。
【0093】
DNAは産物を産生させる発現系でもたらされ得、該産物は選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖である。選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖をコードするDNAが、ヌクレオチド配列内に供与されることにより、追加のアミノ酸と融合した選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が提供され得る。融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNAは、産物を産生させる発現系中で提供され得、該産物は融合タンパク質である。本発明の方法は、該産物を単離すること及び精製することをさらに含み得、少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化することを含み得る。
【0094】
提示された対象ポリペプチド変異体をコードする核酸を選択及び回収した後に、この核酸はコードされた対象ポリペプチドを提供するために使用され得、又は(例えば、PCRのような増幅反応を用いて)さらに核酸を提供するために使用され得る。選択されたmRNAは、cDNAコピーを作製するためにRT-PCRの対象となり得る。対象ポリペプチド変異体の構成要素をコードする核酸は、さらなる分子、例えば再構成された抗体分子、融合タンパク質、イムノアドヘシン等をさらに提供するために使用され得る。したがって、例えば、選択されたscFv抗体分子のVH及びVLドメインをコードする核酸は、Fab分子又は全抗体のような他の形態の抗体分子をコードする配列の構築に使用され得る。
【0095】
本発明の方法において、選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖をコードするDNAは、選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖とは異なるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするように突然変異され得る。ポリペプチドをコードする突然変異したDNAは、産物を産生させる発現系でもたらされ得、該産物は該ポリペプチドであり得る。該方法には、産物を単離又は精製すること、任意で少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化することがさらに含まれる。
【0096】
さらに核酸は、核酸配列の改変又は突然変異に関する技術分野で利用可能な任意の技術に供され得る。このことは、誘導体配列を提供するために使用され得る。選択された対象ポリペプチド変異体の誘導体又はその構成成分をコードするように配列が提供され得、例えば該配列は、選択された対象ポリペプチド変異体又はその成分が1以上のアミノ酸配列が付加、欠失、挿入及び/又は置換されている点で異なるアミノ酸配列を含む誘導体である。そのような誘導体を提供する方法は、追加のペプチド又はポリペプチド部分(例えば、毒素又は標識)が対象ポリペプチド変異体若しくはその構成成分と連結された融合タンパク質や複合体を提供し得る。
【0097】
再構成された又は再構成されていないコード核酸は、組換え発現によりポリペプチド及びペプチドを提供する技術分野で利用可能な任意の技術を用いて、コードされたポリペプチド又はペプチドの産生に使用され得る。
【0098】
本発明のさらなる態様及び実施形態が本明細書で開示されており、好ましい態様及び実施形態が下記を含めた請求項で規定されている。
【0099】
本発明は、親の対象ポリペプチドが野生型エリスロポエチン(EPO)である方法により、説明される。特に、親の対象ポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型EPOである。
【0100】
本明細書に記載の方法は、配列番号2のヒト野生型配列中に以下の突然変異のセットからなる群から選択された突然変異のセットを含む対象ポリペプチド変異体を提供する:
(1) L16I I25F T27M V61A R139H T157V
(2) D8V T26A T27A S126P G158E
(3) D8V T27A Y49N W64R V82A E89G 126P G158E
(4) T26A W64R A135V G158E
(5) D8V V74F T107A N147D
【0101】
さらに、本発明は、親の対象ポリペプチドが野生型の顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である方法により説明される。特別には、親の対象ポリペプチドは配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型GM-CSFである。
【0102】
本明細書に記載の方法は、配列番号4のヒト野生型配列中に突然変異のセット:R4S L15H A18V I43V K63T T102Aを含む対象ポリペプチド変異体を提供する。
【0103】
その上、本発明は親の対象ポリペプチドが野生型の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)である方法により説明される。特別には、親の対象ポリペプチドは配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型G-CSFであり得る。
【0104】
本明細書に記載の方法は、突然変異のセット:C17G W58R Q70R F83Lを配列番号6のヒト野生型配列中に含む対象ポリペプチド変異体を提供する。
【0105】
一般に、本発明の態様及び実施形態において、親のポリペプチドは折りたたみタンパク質ドメインを含み、最も好ましくは生物学的活性を有する。生物学的活性には、受容体又はリガンドのようなコグネイト結合パートナーと結合する能力が含まれ得、受容体活性又は生物学的応答を誘発する能力、反応等を触媒する能力が含まれ得る。
【0106】
本明細書に記載のとおり、本発明で適用される安定性の指標は、ジチオスレイトール(DTT)又は任意の他の安定性選択圧、例えば、高温又はHICマトリックスの適用の存在下で、コードするmRNAからの翻訳により産生され、ラジオイムノアッセイ(RIA)で測定された対象ポリペプチド変異体がコグネイト受容体、リガンド又は他の特異的結合対メンバーと結合する能力と、選択圧の不在下で、コードするmRNAからの翻訳により産生され、同一のラジオイムノアッセイで測定された対象ポリペプチド変異体が、対象ポリペプチド受容体、リガンド又は他の特異的結合対メンバーと結合する能力との割合として表され得る。翻訳は、35S-Metの存在下で、放射性標識タンパク質が作製されるように行われ得る。非特異的結合又はバックグラウンド結合は、翻訳混合物を非コグネイト受容体及び/又はBSAのような無関係な抗原にアプライすることにより、またこれらの表面上の残存放射活性を測定することにより測定し得る。
【0107】
選択された対象ポリペプチド変異体、例えばEPO変異体について、本発明で適用される安定性の指標は、ジチオスレイトール(DTT)の存在下で、例えば10mMのDTT存在下でラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される変異体、例えばEPO変異体がその受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと結合する能力(例えば、EPO変異体がEPO受容体と結合する能力)と、DTTの不在下で、同一のラジオイムノアッセイで変異体、例えばEPO変異体がその受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと結合する能力(例えば、EPO変異体がEPO受容体と結合する能力)との割合として表され得る。該割合が高くなればなるほど、還元環境下で存在する変異体、例えばEPO変異体の安定性が高くなり、従って折りたたみ状態で存在する変異体が多くなる。
【0108】
野生型EPOと比べ、EPO変異体は約5倍又は少なくとも約5倍、より好ましくは約10倍、15倍、20倍、25倍若しくは30倍、又は少なくとも約10倍、15倍、20倍、25倍若しくは30倍改善されるような割合を有する。
【0109】
安定性が改善され機能が維持された変異体の提供は、下記のとおり実施例で実証されている。例えば表1を参照すると、表1はDTTの存在下及び不在下での野生型EPO(0.00)及び様々なEPO変異体(0.1〜0.33)についてのEPO受容体結合の割合を示す。
【0110】
本明細書にも記載のとおり、本発明で適用される安定性の指標は凝集度であり得る。したがって、安定性は、時間をかけて生じたEPO変異体の凝集度と野生型EPOの凝集度とを比べることにより測定され得る。例えば、野生型EPO及び変異体EPOはいずれも、ある温度範囲(例えば、5℃〜45℃)で保存され、その後分解生成物と凝集した物質が当技術分野で公知の慣用方法により解析され得る。安定なタンパク質は折りたたみ状態でより多く存在し、分解及び凝集され難い。
【0111】
安定性が改善されたEPO変異体ポリペプチドは、野生型タンパク質が残存活性の90%を例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10℃高くなった場合に維持するのよりも2〜10℃高い温度で、残存活性の90%を維持しうる。残存タンパク質(すなわち、折りたたみ、活性タンパク質)の割合は、HPLC、SDS PAGEのような慣用の生化学技術により、又は結合アッセイのような活性アッセイ若しくは細胞からの応答を解明することにより、測定し得る。
【0112】
例えば、凝集度は可溶性タンパク質の発現についてのスクリーニングにより評価され得、例えばタンパク質を発現させた後に、次にPAGE及びイムノブロッティングによる解析を行うことにより評価し得る。イムノブロッティングによる各バンドの検出は、スメアとは逆に、タンパク質凝集体ではなく可溶性タンパク質の存在を示す。
【0113】
改善された発現プロファイルを有するGM-CSF変異体を、本発明の方法により同定した。GM-CSF変異体由来の産物は、野生型産物のラダースメアとの比較において、主に単一バンドとして検出された。G-CSF変異体由来の産物も、単一のバンドとして検出された。
【0114】
ポリペプチド変異体の安定性は、生物学的活性アッセイで変異体の機能又は活性を測定することにより評価し得る。
【0115】
例えば、GM-CSF変異体の安定性はTF1細胞増殖アッセイで測定され得、G-CSF変異体の安定性は、OCI/AML5細胞増殖アッセイで測定され得る。経路の安定性を測定するために使用される生物学的アッセイの性質は、対象ポリペプチドの機能又は活性に影響される。特定のタンパク質活性をアッセイするのに好適な方法が当技術分野では知られている。
【0116】
安定性が改善され機能が維持された変異体の提供は、下記の実施例で実証される。例えば表2を参照すると、表2はGM-CSF変異体について野生型GM-CSFと比較したTF1増殖アッセイの結果を示し、表3はG-CSF変異体について野生型G-CSFと比較したOCI/AML5細胞増殖アッセイの結果を示す。
【0117】
本発明の対象ポリペプチド変異体は、野生型若しくは天然のタンパク質又は既に入手されたポリペプチド変異体であり得る出発ポリペプチド又は親ポリペプチドと比べ、1以上の追加の変化が含まれるように提供され得る。野生型と比べ改良された特性を有する数多くの対象ポリペプチドの改変体(天然の突然変異体及び人工的に作製された変異体の両方)が知られている。これらの特性のうち1以上は維持され、又は本発明の対象ポリペプチド変異体内に供与され得る。
【0118】
本発明の方法による提供後に、対象ポリペプチド変異体は(例えば、抗体を用いて)、例えばコード核酸の発現により産生された後で単離及び精製され得る(下記参照)。したがって、ポリペプチドは汚染物質を含まず又は実質的に含まずに提供され得る。ポリペプチドは、他のポリペプチドを含まず又は実質的に含まずに提供され得る。単離及び/精製されたポリペプチドは、組成物の製剤化で使用され得、該組成物には少なくとも1つの追加成分、例えば、製薬上許容される賦形剤、ビヒクル又は担体を含む医薬組成物が含まれ得る。本発明のポリペプチドを含む組成物は、下記に検討するとおり、予防的処置及び/又は治療的処置で使用され得る。
【0119】
本発明のポリペプチドを産生するのに好都合な方法は、該ポリペプチドをコードする核酸を発現系で用いて核酸を発現させることである。したがって、本発明は(開示のとおり)ポリペプチドを作製する方法、該ポリペプチドをコードする核酸(一般に、本発明の核酸)からの発現を含む方法も包含する。これは、適切な条件下でポリぺプチドの発現を惹起する又は許容するようなベクターを含む培養液中で、宿主細胞を生育することにより適宜行うことができる。ポリペプチドは、網状赤血球溶解物のようなin vitro系でも発現し得る。
【0120】
多種多様な宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現系が、よく知られている。好適な宿主細胞は、細菌、哺乳類及び酵母のような真核細胞、並びにバキュロウイルス系を含む。異種ポリペプチドの発現に関して当技術分野で利用可能な哺乳類の細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、COS細胞及びその他多くの細胞が含まれる。一般的で好ましい細菌の宿主は、大腸菌である。好適なベクターを選択することができ、プロモーター配列、ターミネーターフラグメント、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び場合によっては他の配列を含む適当な調節配列を包含させて構築することができる。ベクターは、プラスミド、ウイルス性の例えば「ファージ」、また場合によってはファージミドであり得る。さらに詳細に関しては、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual:第3版, Sambrook及びRussell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異生成、配列決定、DNAの細胞への導入と遺伝子発現、及びタンパク質の解析に関する核酸の操作に関する多くの公知の技術及びプロトコールは、Molecular Biology, Ausubelら著, John Wiley & Sons, 1992における最新のプロトコールに詳細が記載されている。
【0121】
対象ポリペプチド変異体をコードする核酸は、本発明の方法により提供され得る。一般に、本発明の核酸は単離体として、単離及び/又は精製された形態で、又は汚染物質を含まず若しくは実質的に含まずに提供される。核酸は、全体又は一部が合成され得、またゲノムDNA、cDNA又はRNAを含み得る。
【0122】
核酸は複製ベクターの一部として提供され得、また本発明の対象ポリペプチド変異体をコードする核酸を含むベクター、特に、適切な条件下でコードされたポリペプチドを発現させることのできる任意の発現ベクター、及びそのようなベクター又は核酸を含む宿主細胞も、本発明により提供される。ここで、発現ベクターは、所望のポリペプチドをコードする核酸及びin vitro発現系(例えば、網状赤血球溶解物)又はin vivo発現系(例えば、COS細胞若しくはCHO細胞のような真核細胞や大腸菌のような原核細胞)でポリペプチド発現をするのに適切した調節配列を含む核酸分子である。
【0123】
宿主細胞は、本明細書で開示されるとおり、核酸を含んで提供され得る。核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)と一体化され得る。一体化は、ゲノムを伴う組換えを促す配列を標準技術により包含させることにより促進され得る。該核酸は、細胞内で染色体外ベクター上に存在し得る。
【0124】
核酸は、宿主細胞へと導入され得る。導入は、一般には(特に、in vitro導入では)これに限定されないが「形質転換」又は「トランスフェクション」を意味し、この導入では任意の利用可能な技術を適用し得る。真核細胞に関して、好適な技術にはリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポーレーション、リポソーム介在トランスフェクション及びレトロウイルス又は他のウイルス(例えば、ワクシニア、又は昆虫細胞に関してはバキュロウイルス)を用いた形質導入が含まれ得る。細菌細胞に関して、好適な技術には塩化カルシウム形質転換、エレクトロポーレーション及びバクテリオファージを用いたトランスフェクションが含まれ得る。
【0125】
抗生物質耐性遺伝子又は感受性遺伝子のようなマーカー遺伝子は、当技術分野で周知のとおり、所望の核酸を含むクローンを同定するために使用され得る。
【0126】
この導入の後に、例えば宿主細胞(実際に形質転換された細胞を含み得るが、形質転換された細胞の子孫である可能性が高い)を遺伝子発現のための条件下で培養することにより、核酸からの発現が惹起又は許容され得、その結果コードされたポリペプチドが産生される。ポリペプチドが適切なシグナルリーダーペプチドと結合して発現される場合、このポリペプチドは、細胞から培地へと分泌され得る。発現による産生後に、ポリペプチドは宿主細胞及び/又は培地から単離及び/精製され得、その後、必要であれば、このポリペプチドは例えば、1以上の製薬上許容できる賦形剤、ビヒクル又は担体(例えば、下記参照)を含む医薬組成物のような1以上の追加成分を含み得る組成物の製剤化において使用される。
【0127】
発現による対象ポリペプチド変異体の産生後に、対象ポリペプチド変異体の活性、例えば対象ポリペプチド受容体又はリガンド又は他の特異的結合対メンバーと結合する能力が、一般的方法により試験され得る。
【0128】
本発明のさらなる態様では、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を作製する方法であって;
対象ポリペプチド変異体をコード核酸からの発現により産生し、ここで
該産生は、DTTの存在下及び不在下での翻訳により行い、
該産生は、対象ポリペプチド変異体及び該対象ポリペプチド変異体をコードするmRNAをそれぞれ含むリボソーム複合体が産生されるようなリボソームディスプレイ系においてなされ;
リボソーム複合体中に含まれた対象ポリペプチド変異体につき、親の対象ポリペプチドと比べ改善された安定性について、例えば、安定性の指標として、DTTの存在下で翻訳された場合にラジオイムノアッセイで測定された対象ポリペプチド受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーに対する結合活性と、DTTの不在下で翻訳された場合に同一のアッセイで測定された対象ポリペプチド受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーに対する結合活性との割合を用いて試験し、
結合能は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを室温で用いて評価されるものである;
ことを含む前記方法が提供される。
【0129】
この割合は、約5倍又は少なくとも約5倍又はそれより多く、本明細書の他の箇所に記載のとおり改善され得る。
【0130】
本発明の方法には、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を作製する方法であって、:
対象ポリペプチド変異体を、リボソームディスプレイ系で、DTTの存在下及び不在下でコードする核酸からの発現により産生し;
対象ポリペプチド変異体とコグネイト受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーとの結合がリボソーム上で提示され、DTTの存在下および不在下で生じる場合に、疎水性相互作用クロマトグラフィーを室温で用いて、結合を比較することにより改善された安定性について試験する;
ことを含む、前記方法が含まれ得る。
【0131】
本発明の方法は、親の対象ポリペプチドをコードする核酸を試験すること及び/又は突然変異させることの前に、対象ポリペプチド変異体を単離するステップを包含させることにより、核酸から発現される前に対象ポリペプチド変異体をコードする核酸がもたらされ得る。
【0132】
そのような方法は、対象ポリペプチド変異体の産生後と該変異体の試験前に、対象ポリペプチド変異体を単離及び/又は精製することを任意で含み得る。
【0133】
該方法を実施する者は、考察のとおり、例えば1以上のアミノ酸の置換及び/又は挿入により、対象ポリペプチド変異体のアミノ酸配列を改変することによって、対象ポリペプチド変異体をもたらす前ステップをさらに実施し得る。多種態様な変異体が提供され得、例えば複数の変異体の中から所望の特性を有する1以上の変異体を本発明により同定するために、所望の活性が試験され得る。通常、対象ポリペプチドのアミノ酸配列の改変は、対象ポリペプチドをコードする核酸のコード配列を改変することによりなされるであろう。1以上のコドンを改変することにより、コードされた1又は複数のアミノ酸を改変するために、1以上のヌクレオチドが改変され得る。本明細書の他の箇所で述べるとおり、当業者には明らかであろうが、突然変異生成、特に定方向突然変異生成又は部位特異的突然変異生成に関する任意の好適な技術を適用することにより、コード配列を変更することにより対象ポリペプチド変異体についてコードしたアミノ酸配列を変更することができる。このことは、McPherson及びMoller (2000) PCR, The Basics from Background to Bench; BIOS Scientific Publishers Ltd.によりレビューされている。
【0134】
本発明による安定性が改善された対象ポリペプチド変異体の選択は、リボソームディスプレイ、DTTの存在下又は不在下でのリボソームディスプレイ系における翻訳、並びにリボソーム及びmRNAを含む複合体中でのHICを室温で用いた対象ポリペプチド変異体の選択を適用し得る。
【0135】
本発明の更なる態様は、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を提供、同定、又は取得する方法であって:
親の対象ポリペプチドをコードする核酸を突然変異させて、改変されたアミノ酸配列を有する1以上の対象ポリペプチド変異体(「対象ポリペプチド変異体」)をコードする配列を有する1以上の核酸を提供し;
1又は複数の核酸をリボソームディスプレイ系でmRNAとして発現させることにより、mRNAからの翻訳によって1又は複数のコードされた対象ポリペプチド変異体を産生させ、ここで該翻訳はDTTの存在下及び不在下でなされたものであり;
疎水性相互作用クロマトグラフィーにより親の対象ポリペプチドと比べ安定性を改善するよう産生された1又は複数の対象ポリペプチド変異体が選択される;
ことを含み、
疎水性相互作用クロマトグラフィーは室温で実施される方法を提供する。
【0136】
室温で意図される温度は、20℃又は20℃より高くて、しかも30℃又は30℃より低い任意の温度であって、好ましくは約25℃である。
【0137】
変異体のライブラリー又は多様な母集団が作製され得、所望の能力について試験され得る。
【0138】
突然変異は、突然変異のセットの中から同定された本明細書に開示の任意の残基において、N-グリコシル化が生じる部位の任意のシステイン及び/又は任意の残基において、又は本明細書に記載の任意の他の方法で生じ得る。
【0139】
突然変異に供される対象ポリペプチドは、野生型ポリペプチド、又は既存の変異体、例えば所望の特性(例えば、改善又は増強された安定性)に基づいて既に選択された変異体であり得る。
【0140】
所望の特性を有する1以上の対象ポリペプチド変異体が、同定又は選択され得る。
【0141】
本発明の対象ポリペプチド変異体は同定又は取得された後に、単離及び/又は精製形態でもたらされ得、所望のとおり使用され得、製薬上許容できる賦形剤又は担体のような少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化され得る。対象ポリペプチド変異体をコードする核酸を使用して、継続使用のための変異体を産生し得る。本明細書に記載のとおり、そのような核酸は、例えば、対象ポリペプチド変異体が産生及び同定されるライブラリー又は多様な集団であって、最初に提供されたライブラリー又は多様な集団から単離され得る。
【0142】
本発明の対象ポリペプチド変異体は、被験体の人体又動物体、好ましくはヒトを診断又は治療する方法において、使用され得る。
【0143】
したがって、本発明のさらなる態様は、提供された対象ポリペプチド変異体の投与を含む治療法、そのような対象ポリペプチド変異体を含む医薬組成物、及び投与医薬の製造における、例えば、製薬上許容できる賦形剤と共に対象ポリペプチド変異体を製剤化することを含む医薬又は医薬組成物を製造する方法における、そのような対象ポリペプチド変異体の使用を提供する。
【0144】
対象ポリペプチド変異体が使用され得る臨床適応症は、対象ポリペプチドが治療効果をもたらす適応症である。
【0145】
本発明では、対象ポリペプチド変異体が個体に投与され得、好ましくは、個体への利益をもたらすのに十分な「予防上有効量」又は「治療上有効量」(このケースでは、予防は治療とみなすことができるが)が投与され得る。実際の投与量、並びに投与速度及び時間経過は、治療される対象の性質及び重症度にあわせて変更されるであろう。治療処方、例えば、投与量等の決定は、一般医師及び他の医師の責任の範疇にある。
【0146】
組成物は、単独で又は他の治療と組み合わせて、同時又は逐次的に、治療される条件に合わせて投与され得る。
【0147】
本発明の医薬組成物、本発明で使用するための医薬組成物は、活性成分に加え、製薬上許容できる賦形剤、担体、緩衝液、安定化剤又は当業者に周知の他の物質を含み得る。そのような物質は、非毒性である必要があり、また活性物質の有効性を妨げない必要がある。担体又は他の物質の厳密な性質は投与経路に基づいて決定され得、該投与経路は任意の好適な経路であり得るが、注射である可能性が最も高く、特別には静脈注射である。
【0148】
静脈注射、皮膚若しくは皮下注射、又は苦痛部位への注射に関して、活性成分は、発熱性物質を含まず、好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口水溶液の形態とされるであろう。当技術分野の関連技術であるところのもの、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液又は乳酸化リンガー注射液のような等張性ビヒクルを用いて、好適な溶液を効果的に調製することができる。保存剤、安定化剤、緩衝液、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が必要に応じて、含まれ得る。
【0149】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、次の実験的例証を含めた本開示に照らせば、当業者には明らかであろう。
【0150】
この明細書のいずれかに記載の全ての文献は、引用により本明細書に含まれているものとする。
【実施例】
【0151】
実施例1
EPO変異体ライブラリーの構築及び改善された安定性についてのEPO変異体の選択
ライブラリー構築
EPOのcDNAをInvitrogen社から入手した。成熟配列を再構成させ、リボソームディスプレイの直鎖状鋳型とし、該鋳型を引き続きライブラリー作製のために使用した。mRNAへの効率的な転写のために、DNAレベルでT7プロモーターを5'-末端に付加した。mRNAレベルで、構築物に原核性リボソーム結合部位(シャイン・ダルガルノ配列)を含ませた。3'末端に、gIII部分をスペーサーとして機能するように付加した(Hanesら, (2000) Meth Enzymol 328:.404)。変異体のライブラリーを、エラー率8.1 ヌクレオチド突然変異/分子で誤りがちなPCR(error prone PCR)(BO Bioscience)を製造業者のプロトコールとおりに使用して作製した。このPCRは、1分子につき4つの突然変異を誘導し、1ライブラリーにつき約2.5×1010変異体分子を誘導した。
【0152】
安定性についての選択
DTT、HIC及び高温を含む安定性選択圧のうち少なくとも2つを同時に使用して選択を行い、次に機能活性について選択した。還元剤ジチオスレイトール(DTT)を、翻訳及び選択過程で存在させた。DTTは、EPOの安定性の重要な要素であるジスルフィド架橋の形成を阻害する。翻訳後に、DTTを含む翻訳混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)マトリックスを25℃で用いてインキュベートした。通常の4℃と比べ、DTT、HIC及び25℃という高温の組合せは、折りたたまれていない及び/又は誤って折りたたまれたより安定性の低い変異体を、選択圧に基づいて捕捉及び除去するはずである。HICマトリックスは、例えば、遠心分離又は濾過により混合物から除去する。機能性選択を進める前に緩衝液交換ステップが必要な場合もある。
【0153】
In vitro翻訳及び選択を、DTTの存在下又は不在下で、次の事項以外はJermutusら, (2001)に記載のとおり行った。
【0154】
1. 翻訳は、30℃で10分間行った。
【0155】
2. HIC及び高温を更なる選択圧として使用した。DTTと共に及びDTTなしで翻訳した後、KCl(1 M〜最大3 M)及び翻訳時と同じ濃度のDTTを含む緩衝液中で翻訳を停止させた。その後、翻訳混合物を総容積1 mlのHICビーズ(ブチル-、オクチル-及びフェニル-セファロース, Amersham)と共にインキュベートした。25℃で30分間振盪させた後、HICビーズを室温で遠心分離により除去した。
【0156】
3. その後、上澄液を4℃に冷却することにより、機能性選択を行った。次に、安定性が選択されたライブラリーをEPO受容体融合タンパク質と共にインキュベーションし、該融合タンパク質を捕捉し、結合複合体を磁気分離により回収した。一方、非結合複合体は洗い流した。その後、結合EPO変異体をコードするmRNAをRT-PCRにより回収し、この選択プロセスを繰り返した。より不安定化するDTT、HIC及び高温の組合せを用いて4ラウンドの選択を実施した。
【0157】
4ラウンド後に得られたPCR産物を、in vitro発現ベクターpIVEX2.3d (Roche)にクローニングした。簡潔にいうと、5'末端にNco1制限部位、及び3'末端にNot1制限部位と隣接するように終止コドンを導入するように、アウトプットをPCR増幅させた。終止コドンは、タグ付けされていない変異体EPOを発現させた。該産物をゲル精製してNot1及びNco1(New England Biolabs)で二重消化し、さらにゲル精製した。消化した産物をNot1 Nco1で消化したpIVEX2.3dへとライゲートし、大腸菌TG1細胞に導入し形質転換させた。それぞれのコロニーを、スクリーニング及び配列決定するために96ウェルプレートに取り出した。
【0158】
実施例2
単一EPO変異体の一次安定性RIAでのスクリーニング
EPO変異体を、一次安定性RIA(ラジオイムノアッセイ)を用いてJermutusら, (2001)に記載のとおり、安定性についてスクリーニングした。それぞれの変異体について簡潔にいうと、直鎖状DNA鋳型を増幅、転写させ、mRNAをG25セファデックスカラムで精製し定量した。35S-標識したメチオニンの存在下でのin vitro翻訳は、それぞれの変異体につき2個を1セットとして、1つは非還元条件下で、もう1つは10 mM DTT(ジチオスレイトール)の存在下で、30℃で30分間行った。翻訳は、0.05%Tween 20を含むPBSと、翻訳時と同じ濃度のDTTで停止させた。翻訳混合物をEPO受容体で被覆されたプレート上で、室温で1時間インキュベートした。プレートは、0.05% Tween 20を含むPBSで3回洗浄し、さらにPBSで3回洗浄した。残存する放射活性を0.1 Mトリエチルアミンで溶出させ、液体シンチレーションカウント法により定量した。変異体の安定性の指標は、10 mM DTTの存在下でのRIAシグナルを、DTTの不在下でのRIAシグナルで割ることにより計算した。変異体が安定であればるほど、この割合は大きくなる。すなわち、DTTの存在下で不活性な場合、割合=0であり、DTTの存在下で完全に活性である場合、割合=1である。
【0159】
4ラウンド後に得られた48個のクローン化したEPO変異体を上述のとおり、スクリーニングした。このうち、5個のEPO変異体が野生型よりも一層安定であることを確認した(表1)。
【表1】

【0160】
EPO変異体の配列解析
4ラウンド後に得られたEPO変異体を配列決定し、5個のより安定な変異体の配列と配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する野生型EPOとの、アミノ酸レベルでの違いを下記のとおり記す。
【0161】
変異体1 L16I I25F T27M V61A R139H T157V
変異体2 D8V T26A T27A S126P G158E
変異体3 D8V T27A Y49N W64R V82A E89G S126P G158E
変異体4 T26A W64R A135V G158E
変異体5 D8V V74F T107A N147D
【0162】
実施例3
GM-CSF変異体ライブラリーの構築及び発現を改善するための安定性についての選択
ライブラリー構築
ヒトGM-CSFのcDNAをクリーニングし、成熟配列を再構成させ、リボソームディスプレイの直鎖状鋳型とし、該鋳型を引き続きライブラリー作製のために使用した。mRNAへの効率的な転写のために、DNAレベルでT7プロモーターを5'-末端に付加した。mRNAレベルで、構築物に原核性リボソーム結合部位(シャイン・ダルガルノ配列)を含ませた。3'末端に、gIII部分をスペーサーとして機能するように付加した(Hanesら, (2000) Meth Enzymol 328:.404)。変異体のライブラリーを、エラー率8.1 ヌクレオチド突然変異/分子で誤りがちなPCR(BO Bioscience)を製造業者のプロトコールとおりに使用して作製した。これにより、1分子につき3つの突然変異を誘導した。
【0163】
安定性についての選択
DTT、HIC及び高温を含む安定性選択圧のうち少なくとも2つを同時に使用して、実施例1に記載とおり選択を行い、次にGM-CSF受容体を融合タンパク質と結合させることにより機能活性について選択した。不安定化をより増強するDTT、HIC及び高温の組合せを用いて4ラウンドの選択を実施した。
【0164】
4ラウンド後に得られたPCR産物をペリプラズム発現ベクターpcantab6.にクローニングした(McCaffertyら, Appl Biochem Biotechnol. (May-Jun 1994) 47(2-3):157-71; discussion 171-3)。簡潔にいうと、5'末端にNco1制限部位、3'末端にNot1制限部位を導入するように、アウトプットををPCR増幅させた。この産物をゲル精製してNot1及びNco1(New England Biolabs)で二重消化し、さらにゲル精製した。消化した産物をNot1 Nco1で消化したpcantab6へと連結し、大腸菌 HB2151細胞(Biostat Diagnostics)に導入し形質転換させた。それぞれのコロニーを、スクリーニング及び配列決定するために96ウェルプレートに取り出した。
【0165】
実施例4
単一GM-CSF変異体の一次発現スクリーニングでのスクリーニング
96-ウェルでの発現、PAGE及びイムノブロッティングを用いて、GM-CSF変異体を可溶性発現についてスクリーニングした。簡潔にいうと、Overnight ExpressTM Autoinduction System (Merck Bioscience)を用いて可溶性発現させ、その産物をE-PAGEタンパク質電気泳動システム(Invitrogen)上で電気泳動した。ペリプラズム抽出物を得るために、細胞を遠心分離により回収した。浸透圧ショックにより該ペリプラズム材料を遊離させ、遠心分離により残屑を除去し、発現したタンパク質を上澄み液中に残した。抽出したタンパク質のサンプルを、96個のサンプルを同時に電気泳動できるE-PAGE(Invitrogen)SDS-PAGEシステムを用いて電気泳動した。その後、ゲルからPVDF膜上へブロットし、続いてポリクローナル抗ヒトGM-CSF抗体(Chemicon)で検証し、抗ウサギIgG-HRPコンジュゲート(Dako UK)、ECL Plus化学発光試薬(Amersham)及びLumi Imager (Boehringer Mannheim)を用いた画像取得により検出した。
【0166】
4ラウンド後に得られた88個のGM-CSF変異体を、上記のとおりスクリーニングした。これにより、改善された発現プロファイルを有するGM-CSF変異体を同定した。これらの変異体由来の産物は、野生型産物のラダースメアと比べ、主に単一バンドとして抗GM-CSF抗体で検出された。
【0167】
実施例5
GM-CSF変異体の可溶性発現
GM-CSF変異体及び野生型のペリプラズム産生を二重で比較した。250 mlのエルレンマイヤーフラスコ中で容積が50 mlのOvernight ExpressTM Autoinduction System (Merck Bioscience)を用いて、大腸菌 HB2151(Biostat Diagnostics)中でpCANTAB6から組換えタンパク質を発現させた。最終培養密度は、1/10希釈液の波長600nmでの吸光度(OD600)測定により計測した。すべての培養液を、OD600が1.0になるように標準化した。細胞を遠心分離により回収し、ペリプラズム材料を浸透圧ショックにより(200mM Tris(pH 8.0)4℃、1mM EDTA、0.5Mスクロースを用いて)遊離させ、マイクロフュージを用いた低速遠心分離(4000rpm)により残屑を除去した。不溶性タンパク質をペリプラズム抽出物からマイクロフュージを用いた高速遠心分離(15000 rpm)により除去した。該サンプルをNuPAGE Bis-Tris gel System (Invitrogen)上で、1x MES緩衝液で泳動した。ゲルからPVDF膜上へブロットし、続いてポリクローナル抗ヒトGM-CSF抗体(Chemicon)で検証し、抗ウサギIgG-HRPコンジュゲート(Dako UK)、ECL Plus化学発光試薬(Amersham)及びLumi Imager (Boehringer Mannheim)を用いた画像取得により検出した。
【0168】
図1に示すとおり、GM-CSF変異体の変異体1(F07)は、ペリプラズム中で可溶性タンパク質を産生した。GM-CSF野生型は、予想どおり(Lundellら, 1990)、可溶性タンパク質を産生しなかった(図1)。
【0169】
変異体及び野生型の生物学的活性をTF-1細胞増殖アッセイで評価した。TF-1細胞をR&Dシステムから入手し、供給されたプロトコール通りに維持した。アッセイ培地には、RPMI-1640に5%ウシ胎児血清及び1%ピルビン酸ナトリウムを含むGLUTAMAX Iを含有させた。各アッセイの前に、TF-1細胞を300×gで5分間の遠心分離によりペレット化し、培地を吸引により除去して、そして該細胞をアッセイ培地中に再懸濁させた。このプロセスをさらに3回繰り返して、細胞を最終濃度1×105 /mlでアッセイ培地中に再懸濁させた。GM-CSF変異体を(二重で)、所望の濃度でアッセイ培地中に希釈した。その後、100μlの再懸濁した細胞を各アッセイポイントに添加し、全アッセイ容量を200μl/ウェルとした。アッセイプレートを37℃で72時間、5%CO2下でインキュベートした。その後、20μlのトリチウムチミジン(5μCi/ml, NEN)を各アッセイポイントに添加し、アッセイプレートをインキュベーターに戻して、さらに4時間インキュベートした。細胞採取器により細胞をガラス繊維フィルタープレート(Perkin Elmer)上に集めた。Packard TopCountマイクロプレート液体シンチレーションカウンターを用いて、チミジン取込みを定量した。データはGraphpad Prism softwareを用いて解析した。
【0170】
TF1増殖アッセイにおいて、GM-CSF変異体1は野生型GM-CSFと比べ、より活性であった(表2):
【表2】

【0171】
GM-CSF変異体の配列解析
変異体1を配列解析した。変異体の配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列を有する野生型GM-CSFと比べ、アミノ酸レベルで下記のとおり異なる。
【0172】
変異体1:R4S L15H A18V I43V K63T T102A
【0173】
実施例6
G-CSF変異体ライブラリーの構築及び発現を改善するための安定性についての選択
ライブラリー構築
ヒトG-CSF cDNAをクローニングし、成熟配列を再構成させ、リボソームディスプレイの直鎖状鋳型とし、該鋳型を引き続きライブラリー作製のために使用した。mRNAへの効率的な転写のために、DNAレベルでT7プロモーターを5'-末端に付加した。mRNAレベルで、構築物に原核性リボソーム結合部位(シャイン・ダルガルノ配列)を含ませた。3'末端に、gIII部分をスペーサーとして機能するように付加した(Hanesら, (2000) Meth Enzymol 328:.404)。変異体のライブラリーを、エラー率8.1 ヌクレオチド突然変異/分子で誤りがちなPCR(BO Bioscience)を製造業者のプロトコールとおりに使用して作製した。このPCRは、1分子につき3つの突然変異を導入した。
【0174】
安定性についての選択
DTT、高温及びHICを含む安定性選択圧のうち少なくとも2つを同時に使用して、実施例1に記載のとおり選択を行い、次にビオチン化G-CSF受容体(RnD Cat No 381-ER-05)に結合させることにより、機能活性について選択した。不安定化をより増強するDTT、HIC及び温度の組合せを用いて4ラウンドの選択を実施した。
【0175】
4ラウンド後に得られたPCR産物をペリプラズム発現ベクターpcantab6にクローニングした(McCaffertyら, Appl Biochem Biotechnol. (May-Jun 1994) 47(2-3):157-71; discussion 171-3)。簡潔にいうと、5'末端にNco1制限部位、3'末端にNot1制限部位を導入するように、アウトプットをPCR増幅させた。この産物をゲル精製してNot1及びNco1(New England Biolabs)で二重消化し、さらにゲル精製した。消化した産物をNot1 Nco1で消化したpcantab6へと連結し、大腸菌 HB2151細胞(Biostat Diagnostics)に導入し形質転換させた。それぞれのコロニーを、スクリーニング及び配列決定するために96ウェルプレートに取り出した。
【0176】
実施例7
G-CSF変異体の一次発現スクリーニングでのスクリーニング
96-ウェルでの小規模発現スクリーンにおいて、GM-CSF変異体を可溶性発現について試験した。簡潔にいうと、G-CSF変異体タンパク質を、pCANTAB6発現ベクター及び大腸菌 HB2151細胞(Biostat Diagnostics)を用いて発現させた。発現スクリーニングは、96-ウェルマスターブロック(Greiner Bio-One)上で3重で行い、各ウェルには500mlの2x TY培養液、0.2%グルコース、100mMアンピシリンを含有させた。カラム12のウェル以外の各ウェルに1 mlのG-CSF変異体グリセロールストックを接種し、カラム12のウェルには1 mlの野生型G-CSFグリセロールストックを接種した。プレートは、37℃、600rpmで6時間、HiGroインキュベーター(Genemachines, Inc)内でインキュベートした。その後、IPTGを各ウェルに加え最終濃度を1 mMとし、プレートを37℃、600rpmで一晩インキュベートした。細胞を遠心分離(2500×gで10分間)により回収した。各ペレットを200mM Tris(pH 8.0)、1mM EDTA、0.5Mスクロース、0.1%Tween:4℃を含む200 ml溶液中に再懸濁させることにより、ペリプラズム材料を遊離させ、氷上で20分間インキュベートした。細胞残骸を2500×gで10分間の遠心分離により除去した。各クローンにつき3サンプルをプールし、1400 mlを20ml NiNTA PhyNexusチップ(PhyNexus, Inc)にローディングした。チップを溶液340ml(50mM Tris pH 7.4、300mM NaCl、0.1% Tweenを含む)で洗浄し、続いて溶液100ml(50mM Tris pH 7.4、300mM NaCl、0.1% Tween、30mMイミダゾールを含む)で洗浄した。その後、結合G-CSFを100mM HEPES pH 3.0、140mM NaCl、0.2% Tweenで溶出させる前に、溶液170ml(50mM Tris pH 7.4、300mM NaCl、0.1%Tween)で洗浄した。溶出したサンプルは、200mM HEPES (pH 8.0) 25 mlで中和した。該サンプルを12% NuPAGE Bis-Tris gels (Invitrogen)上で、1x MES緩衝液中で泳動させ、SilverXpress銀染色キット(Invitrogen)を用いてゲルを染色した。
【0177】
4ラウンド後に得られた88個のG-CSF変異体を上記のとおりスクリーニングした。これにより、改善された発現プロファイルを有するGM-CSF変異体を同定した。銀染色により、野生型産生では視覚的にバンドが検出されなかったの対し、この変異体から得られた産物は主に1つのバンドとして検出された(図2)。
【0178】
実施例8
G-CSF変異体の大規模発現及び精製
G-CSF変異体及び野生型G-CSFの大規模ペリプラズム産生を比較した。各G-CSFにつき1コロニーを、2L三角フラスコ中の溶液400ml(2x TY培養液、0.2%グルコース、100mMアンピシリン)へ接種するのに使用した。培養液を37℃、300rpmで6時間インキュベートした後、IPTGを加え最終濃度を1mMとした。そして、該培養液を37℃、300rpmで一晩インキュベートした。細胞を遠心分離(16800×gで10分間)により回収した。各ペレットを200mM Tris(pH 8.0)、1mM EDTA、0.5Mスクロース、0.1%Tween:4℃を含む25 ml溶液中に再懸濁させることにより、ペリプラズム材料を遊離させ、氷上で20分間インキュベートした。細胞残骸を12000×gで10分間の遠心分離により除去した。この精製はAKTA Explorer (GE Healthcare)を用いて行った。各精製において、ペリプラズムサンプルは、50mM Tris pH 8.0、300mM NaCl、0.1%Tweenで平衡化した5ml HisTrap HPカラム(GE Healthcare)を通過させた。カラムを、溶液50ml(50mM Tris pH 8.0、300mM NaCl、0.1% Tween、30mMイミダゾール)で洗浄し、その後、結合G-CSFを50mM Tris pH 8.0、300mM NaCl、0.1% Tween、200mMイミダゾールを用いて溶出させた。その後、溶出したサンプルを2x PBS、0.1% Tweenで平衡化したSuperdex 75 16/30ゲル濾過カラム(GE Healthcare)上で泳動した。
【0179】
図3に示すとおり、G-CSF変異体(変異体1)は収率8mg/Lの可溶性単量体タンパク質を産生した。野生型は単量体タンパク質を産生せず、8μg/Lという少量の二量体又は凝集したG-CSFを産生した(図3)。
【0180】
実施例9
G-CSFの生物学的活性
変異体及び野生型の生物学的活性をOCI/AML5細胞増殖アッセイで評価した。OCI/AML5細胞をGerman collection of Microorganisms and cell culture (DSMZ, Braunschweig. ACC 247)より入手し、供給されたプロトコール通りに維持した。アッセイ培地には、16.6%(v/v)のウシ胎児血清を含むMEMAを含有させた。各アッセイの前に、OCI/AML5細胞を300×gで5分間の遠心分離によりペレット化し、培地を吸引により取り出して、該細胞をアッセイ培地中に再懸濁させた。このプロセスをさらに3回繰り返して、細胞を最終濃度1×105 /mlでアッセイ培地中に再懸濁させた。GM-CSF変異体を(二重で)、所望の濃度でアッセイ培地中に希釈させた。その後、100μlの再懸濁した細胞を各アッセイポイントに添加し、全アッセイ容量を200μl/ウェルとした。アッセイプレートを37℃で72時間、5%CO2下でインキュベートした。その後、20μlのトリチウムチミジン(5μCi/ml, NEN)を各アッセイポイントに添加し、アッセイプレートをインキュベーターに戻して、さらに4時間インキュベートした。細胞採取器により細胞をガラス繊維フィルタープレート(Perkin Elmer)上に集めた。Packard TopCountマイクロプレート液体シンチレーションカウンターを用いて、チミジン取込みを定量した。データはGraphpad Prism softwareを用いて解析した。
【0181】
OC1/AML5増殖アッセイにおいて、G-CSF変異体の変異体1は野生型G-CSFと比べ、より活性であった(表3)。
【表3】

【0182】
G-CSF変異体の配列解析
変異体1を配列解析した。変異体の配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列を有する野生型G-CSFと比べ、アミノ酸レベルで下記のとおり異なる。
変異体1:C17G W58R Q70R F83L
【0183】
配列番号1:野生型ヒトEPOをコードするヌクレオチド配列
配列番号2:野生型ヒトEPOのアミノ酸配列

【0184】

【0185】
配列番号3:野生型ヒトGM-CSFをコードするヌクレオチド配列
配列番号4:野生型ヒトGM-CSFのアミノ酸配列

【0186】
配列番号5:野生型ヒトG-CSFのヌクレオチド配列
配列番号6:野生型ヒトG-CSFのアミノ酸配列

【0187】

【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】変異体F07(変異体1)及び野生型由来のGM-CSF産物のウェスタンブロットを示す。サンプルを本文に記載のとおり産生した。レーン1:細胞溶解物から得たF07総GM-CSF。レーン2:4000 rpmで回転させたF07ペリプレップ(periprep)。レーン3:15000 rpmで回転させたF07ペリプレップ。レーン4:細胞溶解物から得た野生型の総GM-CSF。レーン5:4000 rpmで回転させた野生型のペリプレップ。レーン6:15000 rpmで回転させた野生型のペリプレップ。レーン7:Magicマーカー(Invitrogen)。
【図2】野生型及び変異体(変異体1)由来のG-CSF産物の銀染色したゲルを示す。変異体1のレーンにおける約25 KDaの明瞭なバンドは、単量体G-CSFである。サンプルは、実施例6及び7に記載のとおり作製した。
【図3】野生型及び変異体(変異体1)50 mlのペリプラズム発現で得られたSECトレース及び収量を表す。サンプルは、実施例8に記載のとおり作製した。変異体1において、矢印(1)は凝集体G-CSFを示し、矢印(2)は単量体G-CSFを示す。単量体G-CSF(矢印(2))において、低い方のピークはO.D 254で測定し、高い方のピークはO.D 280で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を提供する方法であって:
(a) 対象ポリペプチド変異体をコードするヌクレオチド配列を含み、フレーム内停止コドンを持たないmRNA分子を提供し;
(b) 前記mRNA分子をmRNA分子のリボソーム翻訳条件下でインキュベートしてコードされた対象ポリペプチド変異体を産生することにより、少なくともmRNA及びコードされた対象ポリペプチド変異体をそれぞれが含む複合体を形成させ;
(c) 前記複合体を、親の対象ポリペプチドと結合する受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと接触させて、選択条件下で前記受容体、リガンド、又は特異的結合対メンバーと結合することができる対象ポリペプチド変異体をそれぞれが提示する1以上の複合体を選択し、ここでステップ(i)、(ii)及び(iii)のうち1以上が次のとおり実施され:
(i) ステップ(b)の翻訳過程で2以上の安定性選択圧が同時に適用され;
(ii) ステップ(c)の選択過程で2以上の安定性選択圧が同時に適用され;
(iii) ステップ(b)の翻訳過程で少なくとも1つの安定性選択圧が適用され、かつ、ステップ(c)の選択過程でも継続して適用され、ステップ(c)の選択過程で少なくとも1つの安定性選択圧がさらに適用され; さらに
(d) 選択された1又は複数の対象ポリペプチド変異体の安定性を試験することにより、親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された1以上の対象ポリペプチド変異体を取得することを含む、前記方法。
【請求項2】
mRNA、コードされた対象ポリペプチド変異体及びリボソームを含む複合体が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
安定性選択圧が、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、シャペロンの枯渇、pH、小分子タンパク質折りたたみインヒビター、プロテアーゼ、チオシアン酸ナトリウム、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)及び温度からなる群から選択される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)での安定性選択圧が、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、シャペロンの枯渇、pH及び小分子タンパク質折りたたみインヒビターからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)の選択過程において2以上の安定性選択圧が適用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)の安定性選択圧が、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン、Tris[2-カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)、メルカプトエタノール、尿素、塩酸グアニジン(GuHCl)、プロテアーゼ、チオシアン酸ナトリウム、HIC及び温度からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ジチオスレイトール(DTT)がステップ(b)における安定性選択圧として適用される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
HIC及び/又は温度がステップ(c)における安定性選択圧として適用される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
DTTがステップ(b)における安定性選択圧として適用され、HIC及び温度がステップ(c)における安定性選択圧として適用される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
温度が室温である、請求項8又は請求項9記載の方法。
【請求項11】
安定性が、選択された1又は複数の対象ポリペプチド変異体が受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーと結合する能力をDTTの存在下又は不在下で産生、提示された際に比較することにより確認される、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
安定性が、選択された1又は複数の対象ポリペプチド変異体の凝集度と親の対象ポリペプチドの凝集度を比較することにより確認される、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
翻訳系でインキュベーションするためのmRNA分子がRT-PCR反応により提供され、
ここで対象ポリペプチド変異体をコードするヌクレオチド配列の規定領域内に含まれるために、少なくとも1つのRT-PCRプライマーは多種多様な配列をコードする変異誘発性プライマーである、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
選択された複合体からmRNAを回収することをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
選択された対象ポリペプチド変異体を提示する選択された複合体から回収されたmRNAが増幅され、選択された対象ポリペプチド変異体をコードするDNAへとコピーされる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
DNAが産物を産生させる発現系でもたらされ、前記産物は選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記産物を単離又は精製することをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記産物を、少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖をコードするDNAが、ヌクレオチド配列内に供与されることにより、追加のアミノ酸と融合した選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が提供される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNAが、産物を産生させる発現系でもたらされ、前記産物は融合タンパク質である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記産物を単離又は精製することをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記産物を、少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化することをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
選択された対象ポリペプチド変異体又は選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖をコードするDNAが、前記選択された対象ポリペプチド変異体又は前記選択された対象ポリペプチド変異体のポリペプチド鎖とは異なるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするように突然変異される、請求項15又は請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドをコードする突然変異したDNAが、産物を産生させる発現系でもたらされ、前記産物は前記ポリペプチドである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記産物を単離又は精製することをさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記産物を、少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化することをさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
親の対象ポリペプチドが抗体分子である、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
抗体分子が一本鎖抗体分子である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
抗体分子がscFv、VH、Fd又はdAb分子である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
親の対象ポリペプチドが4つの逆平行α-ヘリックス束タンパク質ファミリーのメンバーである、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
親の対象ポリペプチドが複合体受容体の細胞外ドメインである、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
親の対象ポリペプチドがエリスロポエチン(EPO)である、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
親の対象ポリペプチドが配列番号2で示される配列を有するヒト野生型EPOである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
対象ポリペプチド変異体が、配列番号2のヒト野生型配列中に、以下の突然変異のセットからなる群から選択される突然変異のセットを含む、請求項33記載の方法。
(1) L16I I25F T27M V61A R139H T157V
(2) D8V T26A T27A S126P G158E
(3) D8V T27A Y49N W64R V82A E89G 126P G158E
(4) T26A W64R A135V G158E
(5) D8V V74F T107A N147D
【請求項35】
親の対象ポリペプチドが顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
親の対象ポリペプチドが配列番号4で示される配列を有するヒト野生型GM-CSFである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
対象ポリペプチド変異体が、配列番号4のヒト野生型配列中に突然変異のセット:R4S L15H A18V I43V K63T T102Aを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
親の対象ポリペプチドが顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)である、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
親の対象ポリペプチドが配列番号6で示される配列を有するヒト野生型G-CSFである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
対象ポリペプチド変異体が、配列番号6のヒト野生型配列中に突然変異のセット: C17G W58R Q70R F83Lを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を生産する方法であって:
対象ポリペプチド変異体を、リボソームディスプレイ系で、コードする核酸からDTTの存在下及び不在下で発現させることにより産生し;
対象ポリペプチド変異体とコグネイト受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーとの結合がリボソーム上で提示され、DTTの存在下及び不在下で生じる場合に、疎水性相互作用クロマトグラフィーを室温で用いて比較することにより、改善された安定性について試験される;
ことを含む、前記方法。
【請求項42】
安定性が、安定性の指標として、DTTの存在下で翻訳された場合にラジオイムノアッセイで測定された対象ポリペプチド受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーに対する結合活性と、DTTの不在下で翻訳された場合に同一アッセイで測定された対象ポリペプチド受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーに対する結合活性との割合を使用して試験される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記試験をする前に対象ポリペプチド変異体を単離するステップを含む、請求項41又は請求項42記載の方法。
【請求項44】
親の対象ポリペプチドをコードする核酸の突然変異を含ませることにより、それらが発現する前に対象ポリペプチド変異体をコードする核酸が提供される、請求項41〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
親の対象ポリペプチドと比べ安定性が改善された対象ポリペプチド変異体を同定又は取得する方法であって:
親の対象ポリペプチドをコードする核酸を突然変異させて、改変されたアミノ酸配列を含む1以上の対象ポリペプチド変異体をコードする配列を含む1以上の核酸が提供され;
DTTの存在下及び不在下で、1又は複数の核酸をリボソームディスプレイ系で発現させることにより、1又は複数の対象ポリペプチド変異体を産生させ;
DTTの存在下及び不在下で産生されリボソーム上で提示された対象ポリペプチド変異体とコグネイト受容体、リガンド又は特異的結合対メンバーとの結合を、疎水性相互作用クロマトグラフィーを室温で用いて比較することにより、上記のとおり産生された1又は複数の対象ポリペプチド変異体の改善された安定性について試験することを含む、前記方法。
【請求項46】
対象ポリペプチド変異体のライブラリーを作製すること、及び前記ライブラリーの変異体の改善された安定性について試験することを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
安定性が改善された1以上の対象ポリペプチド変異体を同定することを含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記1以上の対象ポリペプチド変異体を単離することを含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記1以上の対象ポリペプチド変異体をコードする核酸配列を単離することを含む、請求項47又は請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記1以上の単離した対象ポリペプチド変異体を、少なくとも1つの追加成分を含む組成物へと製剤化することを含む、請求項49記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−526191(P2008−526191A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548905(P2007−548905)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000002
【国際公開番号】WO2006/072773
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506042265)ケンブリッジ アンチボディー テクノロジー リミテッド (11)
【Fターム(参考)】