タンパク質を含み、そして高濃度のタンパク質で注射性能を示すミクロスフェア
【課題】タンパク質を含み、そして高濃度のタンパク質で注射性能を示すミクロスフェアの提供。
【解決手段】本発明は、実質的に非晶質のタンパク質微粒子の懸濁物を含有する微粒子の組成物に関し、この組成物は、1mlのこの組成物につき少なくとも約50mgのこのタンパク質の濃度を提供し、そしてこのタンパク質は、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する。生産方法に従って、この活性な因子は、溶解した相分離増強剤(PSEA)を含む水性溶媒または水混和性溶媒中に溶解されて、単一の液相中に溶液を形成する。この溶液は、液相−固相分離に供されて、実質的に非晶質であるか、または非結晶質であり、そして細いゲージの針を通して高濃度で注射可能である小さい球状を形成する活性な因子を生じる。本発明は、より高い分子量のタンパク質についての特別な用途を有する。
【解決手段】本発明は、実質的に非晶質のタンパク質微粒子の懸濁物を含有する微粒子の組成物に関し、この組成物は、1mlのこの組成物につき少なくとも約50mgのこのタンパク質の濃度を提供し、そしてこのタンパク質は、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する。生産方法に従って、この活性な因子は、溶解した相分離増強剤(PSEA)を含む水性溶媒または水混和性溶媒中に溶解されて、単一の液相中に溶液を形成する。この溶液は、液相−固相分離に供されて、実質的に非晶質であるか、または非結晶質であり、そして細いゲージの針を通して高濃度で注射可能である小さい球状を形成する活性な因子を生じる。本発明は、より高い分子量のタンパク質についての特別な用途を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、出願番号第10/894,410号(2004年7月19日出願)の一部継続出願であり、かつ米国仮特許出願番号第60/570,274号(2004年5月12日出願)に基づく優先権を主張する(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用され、そして本明細書の一部をなす)。
【0002】
(技術分野)
本発明は、活性な因子の小粒子(好ましくは、形が実質的に球状である)の組成物に関する。この活性な因子は、好ましくは高分子量タンパク質であり、そしてより好ましくは高分子量タンパク質の実質的に非晶質の形態であり、そして最も好ましくは実質的に非晶質のモノクローナル抗体である。本発明は、高分子量タンパク質(高濃度のモノクローナル抗体が挙げられる)の注射可能か、または注入可能(syringable)な組成物を提供する性能を有し、従って臨床的有効量のこのような活性な因子を、低容量の組成物によって送達し、好ましくは10ml以下の組成物によって送達し、そしてより好ましくは注射器の適用において代表的に見出される容量(皮下ボーラス注射による代表的な注入可能な低用量の注射が挙げられる)によって送達する能力を提供する。活性な因子の球状小粒子に関するこれらの組成物の生産方法および使用方法もまた、本発明によって企図される。この生産方法に従って、この活性な因子は、単一の液相中に溶液を形成する溶解した相分離増強因子(PSEA)を含む、水性溶媒または水混和性(aqueous−miscible)の溶媒中に溶解される。次いでこの溶液は、固相を含む活性な因子、PSEAおよび液相を含む溶媒を有する液相−固相分離に供される。この液相−固相分離は、多くの手段(例えば、溶液の温度の変化またはエネルギーの付加)で誘導され得る。この方法は、治療因子を必要とする被験体に送達され得る、治療因子の球状小粒子を形成するのに最も適切である。この方法はまた、高分子(特に、タンパク質のような熱不安定性である高分子(モノクローナル抗体物質が挙げられる))の固体の球状小粒子を形成するのに最も適切である。本発明は、注入可能な高分子を提供する性能を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
過去に、数種の技術が、生体高分子のナノ粒子および微粒子の製造のために使用された。慣習的な技術としては、粒子形成のための噴霧乾燥およびミリングが挙げられ、そしてそれらが使用されて、5ミクロン以下のサイズの粒子が生成され得る。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、非晶質の複合体を生じるために、亜鉛と複合体を形成し、次いで超音波ノズルによって微粒子化され、そしてこの液滴を凍結するために、液体窒素中に噴射されることによる、組換えヒト成長ホルモン(hGH)の固体形態の生成を記載する。その後この液体窒素は、−80℃の温度でエバポレートされ得、そして得られた物質は、凍結乾燥される。
【0005】
微粒子およびミクロスフェアは、タンパク質、合成ポリマー、多糖類およびそれらの組み合わせを含み、1ミリメートル未満の直径を有し、より好ましくは100ミクロン未満の直径を有し、そして最も好ましくは10ミクロン未満の直径を有する固体かまたは半固体の粒子であり、これらの粒子は、種々の物質の形態をとり得る。ミクロスフェアは、多くの異なる用途(主に、分離物(separations)、診断薬、および薬物送達)に使用されてきた。
【0006】
分離技術に使用されるミクロスフェアの最も周知である例は、合成起源または天然起源のいずれかのポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ヒドロキシアパタイトまたはアガロース)の形態をとるミクロスフェアである。制御された薬物送達の分野において、分子は、多くの場合、その後の放出のために球状小粒子中に組み込まれるか、または球状小粒子内にカプセル化されるか、または均質な(monolithic)マトリックス中に組み込まれる。多くの異なる技術(相分離、溶媒エバポレーション、コアセルベーション(coascervation)、乳化、および噴霧乾燥が挙げられる)が慣習的に使用されて、合成ポリマー、天然のポリマー、タンパク質および多糖類からこれらのミクロスフェアが作製される。一般的に、これらのポリマーは、これらのミクロスフェアの支持構造を形成し、そして目的の薬物は、このポリマー構造中に組み込まれる。
【0007】
標的薬物をカプセル化するために脂質を使用して調製される粒子が、現在利用可能である。リポソームは、単一もしくは複数のリン脂質および/またはコレステロールの二重層からなる球状粒子である。リポソームは、100ナノメートル以上のサイズであり、そして種々の、水溶性かまたは脂溶性の薬物を保有し得る。例えば、複数の水性区画を囲んで粒子を形成する二重層膜中に配列される脂質は、Sinil Kimの特許文献3に記載されるように、その後の送達のために水溶性薬物をカプセル化するのに使用され得る。
【0008】
球状ビーズは、長年、生化学者のためのツールとして市販されてきた。例えば、ビーズに結合体化した抗体は、特定のリガンドに対する結合特異性を有する比較的大きい粒子を生じる。抗体は、細胞の活性化についての細胞の表面上のレセプターに結合するために、慣習的に使用され、固相に結合されて免疫親和性による精製のための抗体コーティング粒子を形成し、そして長時間にわたってゆっくりと放出される治療因子を送達するために使用され得、この送達は、その因子を所望の部位に対して標的化するための、粒子に結合体化した組織特異的な抗体または腫瘍特異的な抗体を使用する。
【0009】
粒子(特に、薬物送達の分野、分離の分野および診断の分野における使用に適合され得る粒子)を作製するための新規の方法の開発に対する継続的な必要性が存在する。有用性の観点から最も望ましい粒子は、以下の特性を有する球状小粒子である:狭いサイズ分布、実質的に球状、実質的に活性な因子のみからなる、活性な因子の生化学的完全性および生物活性の保持。この粒子は、コーティングによってか、またはマイクロカプセル化によって粒子のさらなる安定化を可能にする、適切な固体を提供するべきである。さらに、球状小粒子の製造方法は、以下の望ましい特性を有する:簡便な製造、本質的に水性のプロセス、高い収率、およびその後のふるい分けを必要としないこと。
【0010】
タンパク質は、鎖の長さが高レベルの三次構造および/または四次構造を生じるのに十分であるアミノ酸の配列である。これは、「ペプチド」またはこのような構造を有さない他の低分子量薬物と区別される。
【0011】
抗体(免疫グロブリン)は、外来分子(抗原)または侵入する生物に対する応答において免疫系細胞(Bリンパ球)によって産生されるタンパク質である。抗体は、多くの場合、外来分子または外来細胞に対して非常に強固に結合し、それにより、ファゴサイトーシスまたは補体誘導性の溶解により、これらを不活化するか、または破壊のために印付けする。
【0012】
免疫グロブリン(Ig)は、抗体分子である。より高等な脊椎動物は、免疫応答においてそれぞれ異なる役割を担う5つのクラスの免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)を有する。
【0013】
モノクローナル抗体(mAb)は、免疫系細胞(Bリンパ球)のただ1種のクローンから得られ、そしてただ1種の外来分子(抗原)の特異的部位を認識する、高度に特異的な精製された抗体(免疫グロブリン分子)である。モノクローナル抗体は、実験室操作(マウス、キメラ、ヒト化)によって大量生産され得る。用語「モノクローナル抗体」は、広い意味で使用され、そして具体的には、免疫グロブリンのFc領域を有するモノクローナル抗体、多くのエピトープに対する特異性を有する抗体組成物、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、および単鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を包含する。
【0014】
ポリクローナル抗体は、単一の外来分子(抗原)の多くの部位に対して特異的であるさまざまな抗体(免疫グロブリン分子)である。天然の免疫応答は、多クローン性である。
【0015】
トラップ分子と称される抗体は、2つの異なるレセプター構成要素と「Fc領域」といわれる抗体分子の一部分との融合体からなり、このことは、単一の構成要素の試薬によって提供される親和性を上回る顕著に増加した親和性を有する成長因子ブロッカーおよびサイトカインブロッカーの生成をもたらす。例えば、トラップ分子は、Regeneron
Pharmaceuticalsによって開発された。
【0016】
モノクローナル抗体(mAbs)は、細胞の1つのクローンから得られる抗体の実験室由来の集団であり、そして1つの特定の抗原部位への結合において高度に特異的である。これらは、ほぼ150kDa程度の大きいタンパク質であり、4つのポリペプチド鎖(それぞれ約25kDaの2つの軽鎖およびそれぞれ約50kDaの2つの重鎖)からなる。これらのサイズに起因して、モノクローナル抗体は、現在、一般的には静脈内注射によって送達される。
【0017】
抗体は、多くの場合、治療効果を達成するために、比較的大きい容量で送達される必要がある。例えば、多くの抗体のための送達用量は、約100〜800mgの間である。これらの大きい容量の物質の注射性能(injectability)は、かなりの処方物の問題および送達の問題を示す。このような大きい投薬量の小さい容量は、代表的に、高い粘度を有する;したがって、ほぼ10mL〜250mL程度の大きい容量が、これを静脈内に送達するために必要とされる。静脈内送達は、患者にとって非常に不快であり、臨床設定を必要とし、そしてそれは、高価であり、かつ時間が掛かる。
【0018】
本発明に従う微粒子技術は、この市場に対して重要な利点を提供し得る。なぜなら注射の際に容易に溶解できる高濃縮された懸濁物の形成を可能にするからである。同様に、高分子量タンパク質を含む他の活性な因子は、本発明の利益を享受し得る。本発明は、高濃度かつ比較的小さい容量で送達され得る組成物(従って、注入性能(syringability)特性および注射性能特性を有する組成物)を記載する。本発明の前に、モノクローナル抗体、他の抗体、または約25kDaを超える分子量を有する他の高分子量タンパク質は、細いゲージの針(例えば、20ゲージおよび標準的な注射器と組み合わせて使用される、より細い針)を使用して注射できなかった。本発明の前に、このようなタンパク質はまた、臨床的有効量のタンパク質を含む小さい容量(10ml以下)で送達できなかった。これらの分子と組み合わせた微粒子技術の使用は、これまでに必要とされたように、これらの分子の高容量注射の問題を解決する。本発明はまた、小さい注射容量かつ短い送達時間で、高濃度のより低い分子量のタンパク質物質を送達する工程を支援するのに有用であり得る。
【0019】
モノクローナル抗体を製造するプロセスは、時間の掛かるプロセスであり、このことが、モノクローナル抗体が高価な理由である。従って、mAbが非常に効率的かつ安全な様式で標的部位に正確に送達されることが、重要である。mAbであるか否かにかかわらず、容易に溶解する微粒子またはミクロスフェアの高収率の形成、それらそれぞれの化学的完全性の保持、およびmAbのような物質の場合には、皮下、眼、または他の投与経路による送達を可能にし得る非常に良好な注射性能もまた、微粒子の調製および送達において重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,654,010号明細書
【特許文献2】米国特許第5,667,808号明細書
【特許文献3】米国特許第5,422,120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の局面または目的は、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である抗体微粒子を提供することである。
【0022】
本発明の別の局面または目的は、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である抗体微粒子を含有する注入可能な組成物を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる局面または目的は、タンパク質が、約25,000ダルトンおよびそれを上回る分子量を有する場合でさえ、約10ml以下の組成物中の臨床的有効量のタンパク質を提供する注入可能な組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる局面または目的は、活性な因子が少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する場合に特に有利な用途が見出される、臨床的有効量の1mlあたり少なくとも約50mgの活性な因子を有する微粒子を提供することである。
【0025】
本発明の別の局面または目的は、高濃度の注射(例えば、皮下注射が挙げられるが、これに限定されない)による活性な因子の送達を介する臨床的に有効な様式で微粒子を使用する方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる局面または目的は、比較的高分子量のタンパク質物質の微粒子を調製するためのプロセスである。
【0027】
本発明の別の局面または目的は、容易に溶解し(すなわち、生理的pHにてPBS緩衝液中に約10分以内の溶解性を示す一方で、化学的完全性を示し(すなわち、少なくとも約90%の化合物が微粒子中で化学的にインタクトである))、そして注射性能(より具体的に、注入性能の形態)を示す(すなわち、少なくとも50mg/mlの懸濁物および過剰な力の使用を伴わない細いゲージの針による懸濁物の送達性能を形成する)、微粒子(好ましくは、ミクロスフェア)を提供することである。
【0028】
本発明の他の局面、目的および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態に従う説明から理解され、具体的にこれらの実施形態は、本明細書中に記載される種々の特徴の定まった組み合わせおよび定まっていない組み合わせを包含し、添付の図面に示される関連情報に関する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
本発明は、高用量における注射可能な特性を有するタンパク質微粒子に関する。このタンパク質は、活性な因子であり、そしてこの微粒子は、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である。これらの組成物によって、非常に高濃度の活性な因子は、非常に低容量において送達可能である。
【0030】
本発明の活性な因子は、好ましくは、治療因子または診断因子であり得る活性な因子である。本発明の好ましい実施形態において、この活性な因子は、高分子タンパク質であり、このタンパク質としては、モノクローナル抗体が挙げられる。なお別の好ましい実施形態において、この活性な因子を含む粒子は、この因子を必要とする被験体に対する任意の適切な経路によるインビボ送達に適しており、この経路としては、他にこれらの型の高分子について可能ではない、皮下および/または眼の注射アプローチが挙げられる。
【0031】
本発明はまた、活性な因子の、微粒子、球状小粒子、またはミクロスフェアの生産方法および使用方法に関する。生産方法に従って、この活性な因子は溶解した相分離増強因子を含む溶媒中に溶解されて、単一の液相である溶液を形成する。上記溶媒は、好ましくは、水性溶媒または水混和性溶媒である。次いでこの溶液は、固相を含む活性な因子、およびPSEAおよび液相を含む溶媒を有する液相−固相分離に供される。この液相−固相分離は、多くの手段(例えば、溶液の温度を溶液の相転移温度以下に変化させること)で誘導され得る。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、上記溶液を液相−固相分離に供する方法は、この溶液中の上記活性な因子の相転移温度以下までこの溶液を冷却することによる。その温度は、この溶液の凝固点を上回っても下回ってもよい。凝固点が相転移温度を上回る溶液に関して、この溶液は、溶液の凝固点を下げて、溶液を凍結させずに溶液中の相分離を起こさせるために凝固点降下剤(例えば、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール)を含有し得る。
【0033】
本発明の相分離増強剤は、溶液が、活性な因子が凝固して不連続相として球状小粒子の懸濁物を形成する一方で、相分離増強剤が連続相中に溶解したままである相変化の工程に供される場合、上記溶液中の活性な因子の液相−固相分離を増強するか、または誘導する。すなわち、相分離増強剤は、相変化を受けないが、この活性な因子は、相変化を受ける。
【0034】
本発明における粒子を生産する方法はまた、形成された粒子のサイズおよび形を制御するために、粒子の液相−固相分離を制御する工程をさらに包含する。相分離を制御する方法は、イオン強度、pH、相分離増強剤の濃度、溶液中の活性な因子の濃度の制御、または溶液の温度における変化の速度を制御する工程を包含し、これらの制御は、相分離を誘導するために、相分離またはこれらのいずれか、もしくはいくつかの変化の、どちらかの前に行われる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、上記球状小粒子は、粒子の形成後に連続相中のPSEAから分離される。なお別の好ましい実施形態において、分離の方法は、液体の媒体で粒子を含む溶液を洗浄することにより、この液体の媒体において、活性な因子は、この液体の媒体に溶解しないが、相分離増強剤は、この液体の媒体に溶解する。この液体洗浄媒体は、液体の媒体における活性な因子の溶解性を減少させる因子を含み得る。液体洗浄媒体はまた、1種以上の賦形剤を含み得る。これらの賦形剤は、この球状小粒子のためか、またはこの活性な因子もしくはキャリア因子のために安定剤として作用し得る。これらの賦形剤はまた、さらなる特性(例えば、この粒子からの活性な因子の制御された放出または生物学的組織によるこの活性な因子の改変された浸透)によって、この活性な因子またはこの粒子を染み込ませ得る。別の好ましい実施形態において、これらの小さい粒子は、PSEAを含まないが、これらの粒子は、その後の処理工程のために、PSEA相からの分離前にPSEA相の存在下で回収され得る。別の好ましい実施形態において、この溶液は、水性溶媒または水混和性溶媒を含む水溶液である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
実質的に非晶質のタンパク質微粒子の懸濁物を含有する微粒子の注射可能な組成物であって、該組成物が、1mlの該組成物あたり少なくとも約50mgの該タンパク質の濃度を提供し、そして該タンパク質が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する、微粒子の注射可能な組成物。
(項目2)
前記タンパク質微粒子が、抗体を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記タンパク質微粒子が、モノクローナル抗体である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記タンパク質微粒子が、ミクロスフェアである、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記タンパク質微粒子が、非結晶質である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記タンパク質微粒子が、以下、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、トラップ分子、単鎖抗体、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノクローナル抗体構成要素を含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
臨床的有効量の前記組成物のタンパク質が、約10ml以下の該組成物中に分散される、項目1に記載の組成物。
(項目8)
一用量の前記組成物のタンパク質が、約10ml以下の該組成物中に分散される、項目6に記載の組成物。
(項目9)
前記タンパク質は、約50ミクロン以下の平均粒子サイズを有し、かつ約50ミクロン以下の平均粒子サイズを有し続け、そして前記注射可能な組成物が、20ゲージまたはそれより細い注射針を通過する、項目6に記載の組成物。
(項目10)
前記微粒子が、約50ミクロン以下の平均粒子サイズを有する結晶性の微粒子より速い、注射に対する溶解速度を示し、そして前記注射可能な組成物が、20ゲージまたはそれより細い注射針を通過する、項目1に記載の組成物。
(項目11)
少なくとも約90%の前記タンパク質が、前記微粒子においてタンパク質として化学的にインタクトである、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記微粒子が、コーティングを含む、項目1に記載の組成物。
(項目13)
前記コーティングが、マトリックス内に前記微粒子をカプセル化する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
前記コーティングが、多層の電解質によってカプセル化する、項目12に記載の組成物。
(項目15)
項目12に記載の組成物であって、前記微粒子が、賦形剤をさらに含む、組成物。
(項目16)
抗体を含むミクロスフェアであって、該抗体が、実質的に非晶質である、ミクロスフェア。
(項目17)
前記微粒子が、非結晶質である、項目16に記載の微粒子。
(項目18)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目16に記載の微粒子。
(項目19)
前記微粒子が、約50ミクロン以下の粒子サイズを有するミクロスフェアである、項目16に記載の微粒子。
(項目20)
前記微粒子が、モノクローナル抗体、抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、単鎖抗体、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノクローナル抗体を含む、項目16に記載の微粒子。
(項目21)
前記抗体が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する、項目16に記載の微粒子。
(項目22)
前記微粒子が、コーティングを含む、項目16に記載の微粒子。
(項目23)
前記コーティングが、マトリックス内に前記微粒子をカプセル化する、項目22に記載の微粒子。
(項目24)
前記コーティングが、多層の電解質によってカプセル化する、項目22に記載の微粒子。
(項目25)
コーティングが、賦形剤によって前記微粒子をカプセル化する、項目16に記載の微粒子。
(項目26)
前記抗体が、前記ミクロスフェアの総重量に基づいて約20重量%〜約100重量%の該ミクロスフェアを含む、項目16に記載の微粒子。
(項目27)
高濃度において細いゲージの針での注射性能を有し、実質的に非晶質の抗体微粒子を含有する、組成物。
(項目28)
前記微粒子が、非結晶質である、項目27に記載の組成物。
(項目29)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目27に記載の組成物。
(項目30)
前記微粒子が、約50ミクロン以下の粒子サイズを有するミクロスフェアである、項目27に記載の組成物。
(項目31)
タンパク質微粒子が、以下、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノクローナル抗体構成要素を含む、項目27に記載の組成物。
(項目32)
前記抗体が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する、項目27に記載の組成物。
(項目33)
項目27に記載の組成物であって、該組成物が、前記微粒子上にコーティングをさらに含む、組成物。
(項目34)
項目27に記載の組成物であって、前記微粒子が、賦形剤をさらに含む、組成物。
(項目35)
微粒子を調製するプロセスであって、抗体構成要素と水溶性であるかまたは水混和性溶媒に可溶性であるポリマーとを水溶液中で混合して、実質的に非晶質の抗体構成要素の組成物を提供する工程、および該組成物から微粒子を形成する工程を包含する、プロセス。
(項目36)
前記組成物の温度を変化させる工程をさらに包含する、項目35に記載のプロセス。
(項目37)
前記温度を変化させる工程が、前記組成物の温度を下げる、項目35に記載のプロセス。
(項目38)
前記温度を変化させる工程が、前記組成物の温度を上げる、項目35に記載のプロセス。
(項目39)
前記微粒子を形成する工程が、前記組成物から前記ポリマーを除去する工程を包含する、項目35に記載のプロセス。
(項目40)
前記抗体構成要素が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目35に記載のプロセス。
(項目41)
抗体の高濃縮された組成物を注射器の針を通して投与するための方法であって、以下:
抗体とポリマーとを水溶液中で混合して、抗体溶液を提供する工程および該溶液から微粒子を形成する工程;
1mlの組成物あたり少なくとも約50mgの抗体の濃度である約10ml以下の懸濁物として細いゲージの針を有する注射器ユニット中に該微粒子を充填する工程;ならびに
該注射器を通して該懸濁物を注射することによって個体に該用量の該微粒子を投与する工程、
を包含する、方法。
(項目42)
前記抗体構成要素が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記充填する工程および投与する工程の針が、20ゲージまたはそれより細い、項目41に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実施例3に記載される通りに調製された抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの光学顕微鏡画像を示す。
【図2】図2は、実施例3に記載される通りに調製された抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの偏光顕微鏡画像を提供する。
【図3】図3は、実施例3に記載される通りに見た抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真を提供する。
【図4】図4は、実施例4に記載されるような抗第VIII因子モノクローナル抗体(出発物質および溶解したミクロスフェア)のゲル電気泳動画像を示す。
【図5】図5は、実施例5に記載される通りに見た抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、実施例5に記載されるような抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの数、表面積および体積分布による粒子サイズ分布を報告する。
【図7】図7は、実施例6に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの光学顕微鏡画像を提供する。
【図8】図8は、実施例8に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの光学顕微鏡画像である。
【図9】図9は、実施例6に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、実施例6に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの数の分布による粒子サイズ分布を報告する。
【図11】図11は、実施例10に記載されるような抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェア(2スリット構造を有する)およびヘキサトリアコンタン:ケイ素混合物の、粉末X線回折を示す。
【図12】図12は、実施例7に記載されるようなポロキサマーを伴う、冷却の間の抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアに関する立体配置安定性の蛍光モニタリングを報告する。
【図13】図13は、温度に対して活性な因子の濃度をプロットする二元系相図である。
【図14】図14は、冷却温度プロフィールである。
【図15】図15は、球状小粒子中に調製された場合の、インスリンの化学的安定性の全体的な維持を示すHPLC分析である。
【図16】図16aおよび16bは、バッチ間の再現性を実証する概略図である。
【図17A】図17aは、α−1−抗トリプシン(AAT)についての円偏光二色性(CD)プロットである。
【図17B】図17bは、実施例21における室温での保存時間に対する活性のプロットである。
【図17C】図17cは、実施例21における4℃での保存時間に対する活性のプロットである。
【図18】図18は、DSCプロットである。
【図19】図19は、DSCプロットである。
【図20】図20は、DSCプロットである。
【図21】図21は、DSCプロットである。
【図22】図22は、DSCプロットである。
【図23】図23は、DSCプロットである。
【図24】図24は、DSCプロットである。
【図25】図25は、DSCプロットである。
【図26】図26は、DSCプロットである。
【図27】図27は、DSCプロットである。
【図28】図28aおよび図28bは、DSCプロットである。
【図29】図29は、HFA−134aにおけるインスリンの安定性のデータを示すチャートである。
【図30】図30は、3種の吸入デバイスを使用して、インスリンの空気力学的な性能を比較するチャートである。
【図31】図31は、25℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図32】図32は、37℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図33】図33は、25℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図34】図34は、37℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図35】図35は、25℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図36】図36は、37℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図37】図37は、Cyclohaler DPIを使用する、インスリンの空気力学的な安定性の棒グラフである。
【図38】図38は、Danes球状小粒子の光学顕微鏡写真である。
【図39】図39は、DNaseの酵素活性のチャートである。
【図40】図40は、SOD球状小粒子の光学顕微鏡写真である。
【図41】図41は、SOD球状小粒子についての酵素学的データのチャートである。
【図42】図42a〜図42bは、連続的乳化反応器の略図であり、図42Aは、乳化前に連続相または分散相に界面活性化合物が添加される場合の連続的乳化反応器の略図であり、そして図42Bは、乳化後に連続相または分散相に界面活性化合物が添加される場合の連続的乳化反応器の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、多くの異なる形態の実施形態に従う。本発明の好ましい実施形態は、開示され、これに伴って、本開示は、本発明の原理の例示と見なされるべきであり、そして本発明の広範な局面を、この例証された実施形態に限定することを意図しないことが、理解される。
【0038】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態は、本明細書中に開示される;しかし、開示される実施形態は種々の形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることが、理解されるべきである。従って、本明細書中に開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではないが、単に特許請求の範囲のための基礎、および実質的に任意の適切な様式で、本発明を多様に用いる当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0039】
本発明は、タンパク質である活性な因子の、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である小粒子の組成物に関する。特別な用途は、活性な因子が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する場合に見出される。生産方法に従って、この活性な因子は溶解した相分離増強因子を含む溶媒中に溶解されて、単一の液体の連続相である溶液を形成する。上記溶媒は、好ましくは、水性溶媒または水混和性溶媒である。次いでこの溶液は、例えば、この活性な因子の相転移温度以下まで溶液の温度を低下させることによって相変化に供され、それによって、この活性な因子は、液相−固相分離を受けて、不連続相を構成する実質的に非晶質であるか、または非結晶質である小粒子の懸濁物を形成するが、相分離増強剤は、連続相中に残存する。
【0040】
本発明は、活性な因子の小粒子(好ましくは、形が実質的に球状である)の組成物に関する。この活性な因子は、好ましくは高分子量タンパク質であり、そしてより好ましくは高分子量タンパク質の実質的に非晶質の形態であり、そして最も好ましくは実質的に非晶質のモノクローナル抗体である。本発明は、高濃度の高分子量タンパク質(モノクローナル抗体が挙げられる)の注射可能か、または注入可能な組成物を提供する可能性を有し、従って、低容量の組成物で、好ましくは10ml以下の組成物で、そしてより好ましくは代表的に標準的な注射器において見出される容量で臨床的有効量のこのような活性な因子を送達する性能を提供する。
【0041】
活性な因子の球状小粒子に関するこれらの組成物の生産方法および使用方法もまた、本発明によって企図される。生産方法に従って、この活性な因子は、溶解した相分離増強剤(PSEA)を含む水性溶媒または水混和性溶媒中に溶解されて、単一の液相中に溶液を形成する。次いでこの溶液は、固相を含む活性な因子、ならびにこの液相を含むPSEAおよび溶媒を含む液相−固相分離に供される。この液相−固相分離は、多くの手段(例えば、溶液の温度の変化またはエネルギーの付加)で誘導され得る。この方法は、治療因子を必要とする被験体に送達され得る治療因子の球状小粒子を形成するのに最も適切である。この方法はまた、高分子(特に、タンパク質(モノクローナル抗体物質が挙げられる)のような熱不安定性である高分子)の固体の球状小粒子を形成するのに最も適切である。本発明は、注入可能な 高分子を提供する性能を有する。
【0042】
(活性な因子)
本発明の活性な因子は、治療因子または診断因子であり得るタンパク質である。好ましい活性な因子は、高分子量タンパク質である。好ましい因子は、タンパク質の非晶質の形態(非晶質の抗体が挙げられる)である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および抗体フラグメント(特に、一般的に「Fab」フラグメントまたは「Fab」領域として公知である抗原結合フラクション(fraction))、単鎖抗体、ならびに組換え形態であるモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体もしくは他の抗体を包含し、そして名称「トラップ分子」で当該分野において現在認識されるものである。抗体とはまた、(例えば、コーティングまたはカプセル化(本明細書中に記載されるようなアプローチによるものを含む)によって)処理される抗体の上記の形態のいずれかをいう。
【0044】
トラップ分子は、2つの異なるレセプター構成要素と「Fc領域」といわれる抗体分子の一部分との融合体からなり、単一の構成要素の試薬によって提供されるトラップ分子を上回る、顕著に増加した親和性を有する成長因子ブロッカーおよびサイトカインブロッカーの生成をもたらす。
【0045】
以下の参考文献は、トラップ分子についてのさらなる情報を提供する:「Cytokine Traps:Multi−Component、High−Affinity Blockers of Cytokine Action」;Economides AN、Carpenter LR、Rudge JS、Wong V、Koehler−Stec EM、Hartnett C、Pyles EA、Xu X、Daly TJ、Young MR、Fandl JP、Lee F、Carver S、McNay J、Bailey K、Ramakanth S、Hutabarat R、Huang TT、Radziejewski C、Yancopoulos GD、Stahl N;Journal:Nat Med(2003);第9巻、第1号:p.47−52.「Vascular Eendothelial Growth Factor−Trap
Decreases Tumor Burden、Inhibits Ascites、and Causes Dramatic Vascular Remodeling
in an Ovarian Cancer Model」;Byrne AT、Ross L、Holash J、Nakanishi M、Hu L、Hofmann JI、Yancopoulos GD、Jaffe RB;Journal:Clin Cancer Res(2003);第15巻;第9(15)号:p.5721−8.「Prevention of Thecal Angiogenesis、Antral Follicular Growth、and Ovulation in the Primate by Treatment with Vascular Endothelial Growth Factor Trap R1R2」;Wulff C、Wilson H、Wiegand SJ、Rudge JS、Fraser HM;Journal:Endocrinology(2002);第143巻、第7号:p.2797−807。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、上記活性な因子は、天然である得るか、または合成であり得るモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アダリムマブ(adalimutab)(商品名HumiraでAbbotから入手可能)、アブシキシマブ(商品名ReoProでCentocorから入手可能);ダクリズマブ(商品名ZenapazでRocheから入手可能)、リツキシマブ(商品名RituxinまたはRituxanでIDEC/Genentechから入手可能)、バシリキシマブ(商品名SimulectでNovartisから入手可能)、パリビズマブ(palivzumab)(商品名SynagisでMedimmuneから入手可能)、インフリキシマブ(商品名RemicadeでCentocorから入手可能)、トラスツズマブ(trastuxumab)(商品名HerceptinでGenentechから入手可能)、ゲムツズマブ(商品名MylotargでIDECから入手可能)、アレムツズマブ(alemzutumab)(商品名CampathでMillennium/ILEXから入手可能)、およびイブリツモマブ(商品名ZevulinでIDECから入手可能)。Gammagard Liquid(Baxter Healthcare Corporation、Westlake Village、CAから入手可能)は、使用できる状態に滅菌され、高度に精製され、かつ高度に濃縮された免疫グロブリンG(IgG)抗体の液体調製物である。
【0047】
抗体「Fab」フラクションまたは抗体「Fab」領域の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない。TGX−6B4(現在、ThromboGenics Ltd of Dublin、Irelandによって開発中)は、血小板粘着を阻害するGPlbに対する抗体であり、そして動脈血栓症における初期の工程を防止するための新規のアプローチであることが示される。ジゴキシン特異的Fabフラグメントは、ヒキガエルの毒物の中毒の処置において有益であることが報告された(Heart.2003;89:12−472、Toxalert、15:発行物1、1998)。ヒト化Fabフラグメントは、COS細胞およびCHO細胞においてヒトFc(ε)RIαのIgE結合ドメインを認識することが示された(Journal of Biochemistry、2001:第129巻、発行物1 5−12)。多価Fabフラグメントを使用する抗腫瘍放射免疫療法に関する他の情報は、British Journal of Cancer(1999)81、972−980に見出される。
【0048】
他の高分子量タンパク質の例としては、AAT、Dnase、スーパーオキシドジスムターゼ、サブチリシンおよび他のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。代表的に、高分子量は、タンパク質の特定の要求もしくは特定の特性またはその意図される使用に依存して、約25,000程度の分子量を有するタンパク質を示す。より低い分子量のタンパク質は、例えば、注射によって、高濃度で投与されるという同じ要求の範囲に対する、本発明の利益を享受し得る。このようなタンパク質は、当該分野において公知である;例えば、米国特許出願番号第10/894,410号(2004年7月19日出願)および同第10/896,326号(2004年7月21日出願)を参照のこと。
【0049】
(微粒子、球状小粒子またはミクロスフェア)
本発明の微粒子またはミクロスフェアは、動的光散乱法(例えば、光相関分光法(photocorrelation spectroscopy)、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(mediumu−angle laser light scattering)(MALLS))によってか、光掩蔽法(light obscuration method)(例えば、Coulter分析法)によってか、または他の方法(例えば、レオロジーまたは顕微鏡(光学または電子))によって測定される場合、好ましくは200ミクロン未満の幾何学的な平均粒子サイズを有し、代表的には約0.01μm〜約200μm、代表的には約50μm以下、より好ましくは0.1μm〜10μm、さらにより好ましくは約0.5μm〜約5μm、および最も好ましくは約0.5μm〜約3μmの幾何学的な平均粒子サイズを有する。
【0050】
上記球状小粒子またはミクロスフェアは、実質的に球状である。「実質的に球状」によって意味されることは、粒子の断面の最短の垂直軸に対する最長の垂直軸の長さの比が約1.5以下であることである。実質的に球状は、対称中心線を必要としない。さらに、この粒子は、表面のきめを有し得(例えば、粒子のサイズ全体と比較した場合の尺度に応じて小さい、線またはくぼみまたは隆起)、そしてなお実質的に球状である。より好ましくは、この粒子の、最長の軸と最短の軸との間の長さの比は、約1.33以下である。最も好ましくは、この粒子の、最長の軸と最短の軸との間の長さの比は、約1.25以下である。表面の接触は、保存の際にこの粒子の望ましくない集塊を最小化する、実質的に球状であるミクロスフェアにおいて最小化される。多くの結晶またはフレーク(flake)は、集塊がイオン性相互作用または非イオン性相互作用によって生じ得る場合、広い表面の接触面積を可能にし得る平面を有する。球は、非常に小さい面積に対する接触を可能にする。
【0051】
この微粒子はまた、好ましくは実質的に同じ粒子サイズを有する。相対的に大きい粒子および小さい粒子の両方が存在する場合、広いサイズ分布を有する粒子は、より小さい粒子に、より大きい粒子の間の隙間を埋めることを可能にさせ、それによって、新しい接触表面を形成する。広いサイズ分布は、集塊を結合するために多くの接触機会をつくることによって、より大きな球を生じ得る。本発明の球状微粒子は、好ましくは狭いサイズ分布内にあり、それによって集塊と接触するための機会を最小化する。「狭いサイズ分布」によって意味されるものは、球状小粒子の10パーセンタイルの体積粒径に対する90パーセンタイルの球状小粒子の体積粒径の比が5以下である好ましい粒子サイズ分布である。より好ましくは、球状小粒子の10パーセンタイルの体積粒径に対する90パーセンタイルの球状小粒子の体積粒径は、3以下である。最も好ましくは、球状小粒子の10パーセンタイルの体積粒径に対する90パーセンタイルの球状小粒子の体積粒径の比は、2以下である。
【0052】
幾何標準偏差(GSD)もまた、狭いサイズ分布を示すために使用され得る。GSDの計算は、15.9%未満および84.1%未満の累積率における有効カットオフ径(ECD)を決定する工程を包含する。GSDは、15.9%未満のECDに対する84.17%未満のECDの比の平方根である。GSDは、GSDが2.5未満であり、より好ましくは1.8未満である場合に、狭いサイズ分布を有する。
【0053】
本発明の好ましい形態において、微粒子中の活性な因子またはミクロスフェア中の活性な因子は、半結晶質か、または非結晶質か、または実質的に非晶質である。
【0054】
上記ミクロスフェアは、好ましくは、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である活性な因子からなり、すなわち、これらは、非晶質であるか、または半結晶質形態である。本明細書中で使用される場合、「非晶質の」とは、この活性な因子のほぼ無秩序な固体形態をいい、ミクロスフェア内で、タンパク質の結晶格子または他の活性な因子の結晶格子は、存在せず、そして「半結晶質」とは、活性な因子のほぼ無秩序な固体形態をいい、このミクロスフェアの活性な因子の内容物は、この活性な因子の50%未満の結晶格子形態からなる。
【0055】
代表的に、上記微粒子またはミクロスフェアは、実質的に非多孔性であり、そして0.5g/cm3より大きい密度を有し、より好ましくは0.75g/cm3より大きい密度を有し、そして最も好ましくは約0.85g/cm3より大きい密度を有する。この密度についての好ましい範囲は、約0.5g/cm3〜約2g/cm3であり、そしてより好ましくは約0.75g/cm3〜約1.75g/cm3であり、さらにより好ましくは約0.85g/cm3〜約1.5g/cm3である。本発明に従う実質的に非晶質であるか、または非結晶質である微粒子は、より容易に可溶化するか、またはそのように構成されない微粒子(例えば、結晶性微粒子)より速い溶解速度を示す。
【0056】
本発明の微粒子またはミクロスフェアは、高含有量の上記活性な因子を示し得る。微粒子を調製する多くの他の方法に必要とされる、かなりの量の充填剤または同様の賦形剤に対する必要性は、存在しないが、特定の目的を達成するために所望されるような物質が、活性な因子に加えて含まれ得る。例えば、多くの用途において、このミクロスフェアは、この粒子の95重量%以上を含む。代表的に、この活性な因子は、この粒子の約20重量%〜100重量%で存在し、好ましくは約50重量%〜約100重量%で存在し、より好ましくは約80重量%〜約100重量%で存在し、さらにより好ましくは約90重量%〜約100重量%で存在する。本明細書中で範囲を記載する場合、それは、その中に任意の範囲または任意の範囲の組み合わせを含むことが、意味される。
【0057】
本発明のさらなる局面は、上記微粒子またはミクロスフェアが、賦形剤の封入を伴うか、またはこれを伴わずに、上記活性な因子の生化学的完全性および生物活性を保持することである。
【0058】
(粒子のインビボ送達)
本発明における活性な因子を含む微粒子、球状小粒子またはミクロスフェアは、この因子を必要とする被験体に対する注射可能な経路によるインビボ送達に適している。好ましい送達経路は、注射可能であり、これとしては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、鞘内、硬膜外、動脈内、関節内などが挙げられる。他の送達経路(例えば、局所、経口、直腸、経鼻、肺、膣、口腔粘膜、舌下、経皮、経粘膜、耳または眼内)は、実施され得るが、代表的に、本発明の利点は、注射用途について、より明らかである。注入可能な送達経路は、本発明の目的のために最も好ましい。最も重要なことには、この微粒子またはミクロスフェアは、高分子量のタンパク質または活性な因子にもかかわらず、注射器中に吸引され得、そして細い針を通して注射され得る。好ましい送達経路は、細い針による注射であり、これらとしては、皮下、眼などが挙げられる。細い針によってとは、少なくとも20ゲージのサイズの針、代表的には約22ゲージと約30ゲージ以上との間のサイズの針が意味される。有利には、この細い針は、少なくとも24ゲージと同じ細さ、より有利には少なくとも26ゲージと同じ細さ、そしてよりさらに有利には少なくとも28ゲージと同じ細さであり得る。
【0059】
上記微粒子またはミクロスフェアは、注射される組成物の1mlあたり少なくとも約50mgのタンパク質の濃度で注射され得る。例えば、約100mg〜約800mgのタンパク質は、多くの用途について約10mlを超えず、そして通常少なくとも約2mlの送達容量で注射可能である、また、この送達は、通常の注射時間の間に行われる。代表的に、このような時間は、長くても約20秒以下である。
【0060】
本明細書中に示される粒子の処方のための方法は、所望されるか、または必要とされるような賦形剤または他の成分もしくは添加剤を伴うか、またはこれらを伴わない粒子の処方を提供する。添加剤を使用せずにタンパク質自体からタンパク質の微粒子またはミクロスフェアを製造することはまた、本発明のアプローチであり、そして同時に使用についての優れた利点を提供する。
【0061】
(微粒子を作製するための方法)
(連続相)
活性な因子の微粒子またはミクロスフェアを調製する本発明の方法は、単一の液相中の第1の溶媒に溶解された活性な因子および相分離増強剤を有する溶液を提供する工程で始まる。この溶液は、有機溶媒または混和性有機溶媒の混合物を含む有機系であり得る。この溶液はまた、水性媒体もしくは水混和性の有機溶媒もしくは水混和性の有機溶媒の混合物またはそれらの組み合わせを含む水性ベースの溶液であり得る。この水性媒体は、水、通常の生理食塩水、緩衝液、緩衝化した生理食塩水などであり得る。適切な水混和性の有機溶媒としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、テトラヒドロフラン(THF)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150、ポリエチレングリコールエステル、PEG−4ジラウレート、PEG−20ジラウレート、PEG−6イソステアレート、PEG−8パルミトステアレート、PEG−150パルミトステアレート、ポリエチレングリコールソルビタン、PEG−20ソルビタンイソステアレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(PPG)、アルギン酸ポリプロピレン、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、プロピレングリコールラウレート、およびグリコフロール(glycofurol)(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、アルカン(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン)、またはそれらの組み合わせ。
【0062】
上記単一の連続相は、第1の溶媒に可溶性であるか、または第1の溶媒と混和性である相分離増強剤の溶液を最初に提供することによって調製され得る。次いでこの溶液に、活性な因子が添加される。この活性な因子は、この溶液に直接添加され得るか、またはこの活性な因子は、最初に第2の溶媒中に溶解され得、次いでこの溶液に添加され得る。この第2の溶媒は、第1の溶媒と同じ溶媒であり得るか、またはこれは、上記の一覧から選択され、そして上記溶液と混和性である別の溶媒であり得る。活性な因子が、周囲温度以下でこの溶液に添加されることが、好ましく、これは、熱不安定性の分子(例えば、特定のタンパク質)について特に重要である。「周囲温度」によって示されるものは、約20℃〜約40℃前後の室温の温度である。しかし、この系はまた、加熱が活性な因子の活性の有意な減少を生じない限り、この系における活性な因子の溶解性を増加させるために加熱され得る。
【0063】
(相分離増強剤)
本発明の相分離増強剤(PSEA)は、上記溶液が、相分離の工程に供されるとき、この溶液からの活性な因子の液相−固相分離を増強するか、または誘導し、この工程において、この活性な因子は、固体または半固体になって、不連続相として球状小粒子の懸濁物を形成する一方で、この相分離増強剤は、連続相に溶解したままである。この相分離増強剤は、この溶液が相分離状態に提供されるとき、活性な因子の溶解性を減少させる。適切な相分離増強剤としては、この溶液に溶解するか、またはこの溶液と混和性である、ポリマーまたはポリマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリマーの例としては、直鎖状ポリマーまたは分枝状ポリマー、コポリマーおよびブロックコポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、水溶性、半水溶性、水混和性、または不溶性であり得る。
【0064】
本発明の好ましい形態において、上記相分離増強剤は、水溶性または水混和性である。使用され得るポリマーの型としては、炭水化物ベースのポリマー、多価脂肪族アルコール、ポリ(ビニル)ポリマー、ポリアクリル酸、多価有機酸、ポリアミノ酸、コポリマーおよびブロックコポリマー(例えば、Pluronic F127またはPluronic
F68のようなポロキサマー)、tert−ポリマー、ポリエーテル、天然に存在するポリマー、ポリアミド、界面活性剤、ポリエステル、分枝状ポリマーおよび環状ポリマー、ならびにポリアルデヒドが挙げられる。
【0065】
好ましいポリマーは、活性な因子の粒子の投与の意図される経路のための薬学的添加剤として受容可能であるポリマーである。好ましいポリマーは、薬学的に受容可能な添加剤(例えば、種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG 200、PEG 300、PEG 3350、PEG 8000、PEG 10000、PEG
20000など)および種々の分子量のポロキサマー(例えば、ポロキサマー188およびPluronic F127またはPluronic F68))である。なお別の好ましいポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。なお別の好ましいポリマーは、ヒドロキシエチルデンプンである。他の両親媒性ポリマーはまた、単独かまたは組み合わせて使用され得る。上記相分離増強剤はまた、非ポリマー(例えば、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物)であり得る。
【0066】
(液相−固相分離)
上記溶液における活性な因子の液相−固相分離は、当該分野において公知である任意の方法(例えば、温度の変化(上昇または低下のいずれか)、圧力の変化、pHの変化、溶液のイオン強度の変化、活性な因子の濃度の変化、相分離増強剤の濃度の変化、溶液の容量オスモル濃度の変化、これらの組み合わせなど)によって誘導され得る。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、上記相変化は、温度誘導性の相変化である。多くの実施形態において、この温度誘導性の相変化は、温度を上記溶液中の活性な因子の相転移温度以下に下げることによって達成される。
【0068】
図1は、溶媒、PSEAおよび活性な因子を含有する溶液についての二元系相図10である。この図は、溶液の温度に対して活性な因子の濃度をプロットする。上記PSEAの濃度は、一定に保たれる。
【0069】
図1の図表は、以下を有する:飽和曲線12;過飽和曲線14;それらの間の準安定領域16;全ての構成要素が液相中にあり、この系が均質な、単一の液相にある場合、飽和曲線より下の第1の領域18;およびこの系が、活性な因子の固相ならびにPSEAおよび溶媒の液相を有する二相系である場合、過飽和曲線より上の第2の領域20。この相図は、系の温度および純粋な液相中の構成要素の相対濃度、液相−固相ならびにこれらの2つの相の間の転移を取り巻く状態を決定するのに役立つ。
【0070】
本明細書中に開示されるように、上記活性な因子の微粒子またはミクロスフェアの調製は、溶液が存在し得る任意の固相と平衡状態にある場合、主に、点Aにて飽和に達する不飽和溶液(図1中の点A’)からの冷却を包含する。さらなる冷却において、この溶液が所定の温度での平衡溶解度に対応するものよりも活性な因子を含む場合、ある状態に到達する;従って、この溶液は、過飽和状態になる。この固相の自発的な形成は、点Bに到達するまで、生じない。点Bは、準安定区域の境界線上の点である。この準安定区域の幅は、最大に達し得る不十分な冷却ΔTmax=T2−T1によってか、または過飽和ΔCmax=C*2−C*1によって表わされ得る。これら2つの表示は、熱力学方程式:
【0071】
【化1】
である。
【0072】
経路A’−A−Bは、準安定な溶液を調製する多重熱法(polythermal method)を表わす。等温プロセスにおいて、出発点は、A’’である。一定温度において濃度を増加させることによって、飽和は、点Aにて再び達成される。点Cまでの濃度の等温性増加(例えば、溶媒エバポレーションによってか、活性な因子のシード添加/添加による)は、再び準安定性の限界に達するまで、この溶液を準安定領域に移動させる。準安定限界(metastable limit)を超える場合、この溶液は、不安定となり、そして直ちに自発的な固相の形成を生じる。
【0073】
等温的に得られた値(ΔCmax)T=C*3−C*2は、多重熱的に得られたΔTmax=T3−T2の対応する値と異なり得る。準安定区域の境界線に近づく場合、固体粒子の形成のために必要な時間は、準安定限界に達するまで、減少する。
【0074】
多重熱プロセスにおいて、冷却速度は、制御速度にて行われて、粒子のサイズおよび形を制御する。制御速度によって意味されるものは、約0.2℃/分〜約50℃/分であり、より好ましくは0.2℃/分〜30℃/分である。変化の速度は、一定であるかまたは線形、非線形であるか、間欠性であるか、またはプログラム化された速度(複数の相のサイクルを有する)であり得る。この粒子は、この溶液中のPSEAから分離され得、そして以下に考察されるように洗浄されることによって精製され得る。
【0075】
本発明は、活性な因子が、液体状態から固体状態になる一方で、PSEAおよび溶媒は、相変化を受けず、そして液体のままである場合、相変化を生じるために活性な因子の濃度、PSEAの濃度、温度またはこれらの任意の組み合わせを調整する工程を企図する。相変化を増強するか、促進するか、制御するかまたは抑制するためにpH、イオン強度、重量オスモル濃度などを変化させる工程がまた、企図される。凝固点が比較的高いか、または凝固点が、相転移温度を上回る溶液に関して、この溶液は、系を凝固させずにこの系における相変化を可能にするためにこの系の凝固点を下げる凝固点降下剤(例えば、プロピレングリコール、スクロース、エチルレングリコール、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)または凝固点降下剤の水性混合物)を含む。このプロセスはまた、温度が系の凝固点以下に減少されるように行われ得る。本明細書中に記載されるプロセスは、特に、熱不安定性である分子(例えば、タンパク質)に適している。
【0076】
(任意の賦形剤)
本発明の微粒子は、1種以上の賦形剤を含み得る。これらの賦形剤は、さらなる特性(例えば、この微粒子もしくはこの活性な因子もしくはキャリア因子の増加した安定性、この微粒子からの活性な因子の制御された放出または生物学的組織によるこの活性な因子の改変された浸透)によって、この活性な因子またはこの粒子を染み込ませ得る。適切な賦形剤としては、炭水化物(例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール)、カチオン(例えば、Zn2+、Mg2+、Ca2+)、アニオン(例えば、SO42−)、アミノ酸(例えば、グリシン)、脂質、リン脂質、脂肪酸、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸またはそれらの塩(例えば、コール酸またはその塩(例えば、コール酸ナトリウム);デオキシコール酸またはその塩)、脂肪酸エステル、およびPSEAのポリマーとしての機能を下回るレベルで存在するポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。賦形剤が使用される場合、この賦形剤は、溶液の相図にあまり影響しない。
【0077】
(粒子を分離する工程および洗浄する工程)
本発明の好ましい実施形態において、上記微粒子またはミクロスフェアは、上記溶液中の相分離増強剤からこれらを分離することによって回収される。なお別の好ましい実施形態において、分離の方法は、液体媒体で微粒子またはミクロスフェアを含む溶液を洗浄することにより、この液体媒体において、活性な因子は、この液体媒体に溶解しないが、相分離増強剤は、この液体媒体に溶解する。いくつかの洗浄方法は、ダイアフィルトレーションによるか、遠心分離によって行われ得る。この液体媒体は、水性媒体または有機溶媒であり得る。低い水溶性を有する活性な因子に関して、この液体媒体は、水性媒体またはこの活性な因子の水溶性を減少させる因子(例えば、2価のカチオン)を含む水性媒体であり得る。高い水溶性を有する活性な因子(例えば、多くのタンパク質)に関して、有機溶媒またはタンパク質沈殿剤(例えば、硫酸アンモニウム)を含む水性溶媒が、使用され得る。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、上記微粒子またはミクロスフェアは、上記溶液中において相分離増強剤からこれらを分離することによって回収される。なお別の好ましい実施形態において、分離の方法は、液体媒体で微粒子またはミクロスフェアを含む溶液を洗浄することにより、この液体媒体において、活性な因子は、この液体の媒体に溶解しないが、相分離増強剤は、この液体媒体に溶解する。いくつかの洗浄方法は、ダイアフィルトレーションによるか、または遠心分離によって行われ得る。この液体の媒体は、水性媒体または有機溶媒であり得る。低い水溶性を有する活性な因子に関して、この液体の媒体は、水性媒体またはこの活性な因子の水溶性を減少させる因子(例えば、2価のカチオン)を含む水性媒体であり得る。高い水溶性を有する活性な因子(例えば、多くのタンパク質)に関して、有機溶媒またはタンパク質沈殿剤(例えば、硫酸アンモニウム)を含む水性溶媒が、使用され得る。
【0079】
液体媒体として使用するのに適切な有機溶媒の例としては、連続相に適するとして上記で特定されるような有機溶媒が挙げられ、そしてより好ましくは塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ペンタンなどが挙げられる。これらの溶媒のいずれかの混合物を使用することもまた、企図される。1つの好ましい混合物(blend)は、塩化メチレンまたは塩化メチレンとアセトンとの1:1の混合物である。これらの液体媒体は、例えば、凍結乾燥、エバポレーション、または乾燥による容易な除去のために、低い沸点を有することが好ましい。
【0080】
上記液体媒体はまた、超臨界流体(例えば、液体二酸化炭素またはその超臨界点に近い流体)であり得る。超臨界流体は、相分離増強剤(特に、いくつかのポリマー)に対して適切な溶媒であり得るが、タンパク質粒子に対しては非溶媒である。超臨界流体は、それ自体でか、または共溶媒と共に使用され得る。以下の超臨界流体が、使用され得る:液体CO2、エタン、またはキセノン。潜在的な共溶媒は、アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、水、または2−プロパノールであり得る。
【0081】
本明細書中に記載されるPSEAから上記微粒子またはミクロスフェアを分離するのに使用される液体媒体は、この液体媒体中の上記活性な因子の溶解度を減少させる因子を含み得る。この微粒子またはミクロスフェアの収率を最大化するために、この粒子がこの液体媒体中で最小限の溶解度を示すことが最も望ましい。いくつかのタンパク質(例えば、インスリン)に関して、溶解性の減少は、2価陽イオンの添加(例えば、タンパク質に対するZn2+)によって達成され得る。複合体を形成するために使用され得る他のイオンとしては、Ca2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+などが挙げられるが、これらに限定されない。複合体の溶解性は、水溶液中の複合体のダイアフィルトレーションを可能にするために十分低い。
【0082】
上記液体媒体はまた、1種以上の賦形剤を含み得、これらの賦形剤は、さらなる特性(例えば、これまでに議論したような微粒子および/または活性因子もしくはキャリア因子の増加した安定性、この粒子からの活性な因子の制御された放出、または生物学的組織によるこの活性な因子の改変された浸透)によって、この活性な因子またはこの微粒子を染み込ませ得る。本発明の別の形態において、この微粒子またはミクロスフェアは、溶液を含むPSEAから分離されない。
【0083】
(水性ベースのプロセス)
別の好ましい実施形態において、本発明の系の製造プロセスは、水性溶媒または水混和性溶媒を備える水性系の製造プロセスである。適切な水混和性溶媒の例としては、連続相について上記で特定された水混和性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。水性ベースのプロセスを使用する1つの利点は、この溶液が、緩衝化され得、そして活性な因子を保護するために生化学的な安定化を提供する賦形剤を含み得ることである。このことは、この活性な因子がタンパク質である場合に特に有利である。
【0084】
(予備製造された微粒子のマイクロカプセル化)
本発明の微粒子またはミクロスフェアは、マイクロカプセル化粒子を形成するためにマトリックスの壁形成(wall−forming)物質内にさらにカプセル化され得る。このマイクロカプセル化は、当該分野で公知の任意のプロセスによって達成され得る。好ましい実施形態において、本発明の微粒子またはミクロスフェアのマイクロカプセル化は、以下に記載されるような、乳化/溶媒抽出プロセスによって達成される。このマトリックスは、この活性な因子に徐放特性を与え得、この特性は、所望の治療用途に従って数分間から数時間、数日間または数週間持続する放出速度を生じる。このマイクロカプセル化微粒子またはマイクロカプセル化ミクロスフェアはまた、この活性な因子の遅延放出処方物を生成し得る。微粒子およびミクロスフェアを作製するさらなる方法は、本願中に示される。
【0085】
この乳化/溶媒抽出プロセスにおいて、乳化は、2つの不混和性の相(連続相および不連続相(これらは、分散相としても知られている))を混合してエマルションを形成することによって得られる。好ましい実施形態において、この連続相は、水層(すなわち水の相)であり、そしてこの不連続相は、有機相(すなわち油の相)であって、水中油(O/W)型エマルションを形成する。この不連続相は、微細な懸濁物または油中固体(S/O)相を形成する微細な分散のいずれかとして本発明の固体粒子の分散物をさらに含み得る。この有機相は、好ましくは水不混和性であるか、または部分的に水混和性の有機溶媒である。水相に対する有機相の重量の比は、約1:99〜約99:1であり、より好ましくは1:99〜約40:60であり、そして最も好ましくは約2:98〜約1:3であり、またはこれらの中の任意の範囲であるか、もしくは範囲の組み合わせである。好ましい実施形態において、水相に対する有機相の比は、約1:3である。本発明のこの局面は、油相が連続相を形成し、そして水相が不連続相を形成する、逆エマルションは、すなわち油中水型エマルション(W/O)の利用を、さらに企図する。このことは、2つより多い相を有するエマルション(例えば、油中水中油型(oil−in−water−in−oil)エマルション(O/W/O)または水中油中水型(water−in−oil−in−water)エマルション(W/O/W))の利用を、さらに企図する。
【0086】
本発明に対するこのバリエーションの好ましい実施形態において、乳化/溶媒抽出プロセスを使用するマイクロカプセル化のプロセスは、これまでに記載された方法および壁形成物質を含む有機相によって予備製造された(pre−fabricated)微粒子またはミクロスフェアを調製する工程で始まる。この予備製造された微粒子またはミクロスフェアは、壁形成物質の有機相中に分散されて、油相中に予備製造された微粒子またはミクロスフェアの分散物を含む油中固体型(S/O)相を形成する。好ましい実施形態において、この分散は、微粒子またはミクロスフェアおよび有機相の混合物をホモジナイズすることによって生成される。水性媒体は、この連続相を形成する。この場合において、水相でS/O相を乳化することによって形成されるエマルション系は、水中油中固体型(solid−in−oil−in−water)(S/O/W)エマルション系である。
【0087】
上記壁形成物質とは、個々か、または組み合わせて、マトリックスの構造の本質を形成し得る物質をいう。生物分解性壁形成物質が、好ましい(特に、注射可能な適用のために)。このような物質の例としては、ポリ−ラクチド/ポリ−グリコリドポリマー(PLGA’s)、ポリエチレングリコール結合体化PLGA(PLGA−PEG)、およびトリグリセリドのファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。PLGAまたはPLGA−PEGが使用される実施形態において、好ましくは、PLGAは、ポリ−グリコリドに対するポリ−ラクチドの、100:0〜0:100の比、より好ましくは約90:10〜約15:85の比、および最も好ましくは約50:50の比を有する。一般的に、ポリマー中のポリ−ラクチドに対するポリ−グリコリドの比が高ければ、マイクロカプセル化粒子は、より親水性であり、より速い水和およびより速い分解を生じる。種々の分子量のPLGAもまた、使用され得る。一般的に、ポリマー中のポリ−グリコリドおよびポリ−ラクチドの同じ比に関して、PLGAの分子量が高ければ、この活性な因子の放出は、よりゆっくりであり、そしてこのマイクロカプセル化粒子またはスフェアのサイズの分布は、より広くなる。
【0088】
マイクロカプセル化が実施される場合、水中油型(O/W)エマルションまたは水中油中固体型(S/O/W)エマルションの有機相(油相)中の有機溶媒は、水不混和性または部分的に水不混和性であり得る。「水不混和性溶媒」によって意味されるものは、1:1の比で水溶液と混合した場合(O/W)に、界面のメニスカスを形成する溶媒である。適切な水不混和性溶媒としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:炭素数が5以上である置換もしくは非置換の、直鎖状アルカン、分枝状アルカンまたは環状アルカン、炭素数が5以上である置換もしくは非置換の、直鎖状アルケン、分枝状アルケンまたは環状アルケン、炭素数が5以上である置換もしくは非置換の、直鎖状アルキン、分枝状アルキンまたは環状アルキン;芳香族炭化水素、完全か、または部分的にハロゲン化した炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、モノ−、ジ−もしくはトリ−グリセリド、ネイティブな油、アルコール、アルデヒド、酸、アミン、直鎖状シリコーンまたは環状シリコーン、ヘキサメチルジシロキサン、またはこれらの溶媒の任意の組み合わせ。ハロゲン化溶媒としては、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、ヒドロフルオロカーボン、塩素化ベンゼン(モノ、ジ、トリ)、トリクロロフルオロメタンが挙げられるが、これらに限定されない。特に適切な溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、キシレンおよび酢酸エチルである。「部分的に水混和性の溶媒」によって意味されるものは、1つの濃度において水不混和性であり、そしてより低い別の濃度においてにおいて水混和性である溶媒である。これらの溶媒は、水混和性が制限されており、そして自発的エマルションを形成し得る溶媒である。部分的に水混和性である溶媒の例は、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレンカーボネート、ベンジルアルコール、および酢酸エチルである。
【0089】
界面活性化合物は、例えば、有機相の湿潤特性を増加させるためにマイクロカプセル化の局面に関連して添加され得る。界面活性化合物は、水相、有機相、ならびに水性媒体および有機溶液の両方に対する乳化プロセス前、またはエマルションへの乳化プロセス後に添加され得る。界面活性化合物の使用は、カプセル化されていないか、または部分的にカプセル化された球状小粒子の数を減少させ得、このことは、放出の間の上記活性な因子の初期のバースト(burst)の減少を生じる。これらの界面活性化合物は、化合物の溶解性に依存して、有機相、または水相、または有機相および水相の両方に対して添加され得る。
【0090】
用語「界面活性化合物」によって意味されるものは、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または生物学的な界面活性分子のような化合物である。これらの界面活性化合物は、どのような場合であっても、約0.01重量%未満〜約30重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約10重量%、またはこれらの任意の範囲または範囲の組み合わせで、水相または有機相またはエマルションに含まれるべきである。
【0091】
適切なアニオン性界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ラウリル酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、硫酸アルキルポリオキシエチレン、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびそれらの塩、グリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸および他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)ならびにそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなど)。
【0092】
適切なカチオン性界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩酸アシルカルニチン、またはハロゲン化アルキルピリジニウム。アニオン性界面活性剤として、リン脂質が、使用され得る。適切なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵のリン脂質もしくは大豆のリン脂質またはそれらの組み合わせが挙げられる。これらのリン脂質は、塩であっても、脱塩されていてもよいし、水素化されていても部分的に水素化されていてもよく、天然か、半合成かまたは合成であってもよい。
【0093】
適切な非イオン性界面活性剤としては、以下が挙げられる:ポリキシエチルエチレン脂肪アルコールエーテル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Myrj)、ソルビタンエステル(Span)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポロキサミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および多糖類(デンプンおよびデンプン誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および非晶質セルロースが挙げられる)。本発明の好ましい形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマーであり、そして好ましくはプロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、商品名POLOXAMER(時にはPLURONIC(登録商標)ともいわれる)で販売され、そしてSpectrum Chemical and Rugerを含むいくつかの供給業者によって販売される。とりわけ、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、短いアルキル鎖を有するものが挙げられる。このような界面活性剤の一例は、BASF Aktiengesellschaftによって製造されるSOLUTOL(登録商標)HS 15(ポリエチレン−660−ヒドロキシステアレート)である。生物学的な表面活性分子としては、アルブミン、カゼイン、ヘパリン、ヒルジン、ヘタスターチまたは他の適切な生物適合性因子のような分子が挙げられる。
【0094】
本発明のマイクロカプセル化の選択の好ましい形態において、水相は、界面活性化合物としてタンパク質を含む。好ましいタンパク質は、アルブミンである。このタンパク質はまた、賦形剤として機能し得る。タンパク質が界面活性化合物でない実施形態において、他の賦形剤は、エマルション中に含まれ得、乳化プロセスの前または後のいずれかにおいて添加され得る。適切な賦形剤としては、糖類、二糖類、および糖アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい二糖類は、スクロースであり、そして好ましい糖アルコールはマンニトールである。
【0095】
さらに、チャネリング剤(channeling agent)(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))の使用は、最終生成物の水浸透速度を増加させ得る。水浸透速度を増加は、マトリックスが存在する場合、水和速度を改変することによって、マトリックスからの活性な因子の初期放出動態の改変、ならびにマトリックスの分解速度および分解依存性の放出動態の改変を生じる。カプセル化の間にチャネリング剤としてPEGを使用することは、PEGが相分離増強剤として使用される球状小粒子の製造の間の洗浄プロセスのうちの、除去工程部分について有利であり得る。さらに、連続相の塩分およびpHは、このポリマーおよび得られる微粒子またはミクロスフェアの性質に影響を及ぼすために変えられ得、この性質としては、マトリックスの充填密度、表面の電荷、ぬれ、空隙率、粘性、粒子サイズ分布、ならびにマトリックスからのカプセル化治療因子の初期のバーストおよび放出動態が挙げられる。連続相の塩分はまた、2つの相の混和性を減少させるために使用され得る。適切な塩としては、水溶性のリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、および炭酸塩、Tris、MES、HEPESが挙げられるが、これらに限定されない。塩が使用される実施形態において、塩濃度は、0M〜10Mの範囲であり、より好ましくは1mM〜1Mの範囲であり、および最も好ましくは20mM〜200mMの範囲である。pHは、1〜11の範囲であり、より好ましくは2.5〜9の範囲であり、そして最も好ましくは6〜8の範囲である。
【0096】
有機相(油相)中の微粒子またはミクロスフェアを分散させる工程の後、水性媒体(水相)の連続相は、例えば、均質化または超音波処理によって、この有機相の不連続相と激しく混合されて、未発達のマイクロカプセル化粒子の乳化小滴を含むエマルションを形成する。この水性の連続相は、乳化小滴からの有機溶媒の急な抽出を最小化するために、水相と有機相とを混合する前に、有機相に使用される有機溶媒を用いて飽和され得る。この乳化プロセスは、実施される場合には、混合物がその液体の性質を維持し得る任意の温度で行われ得る。エマルション安定性は、有機相または水相中の界面活性化合物の濃度の関数であるか、または界面活性化合物が乳化プロセス後にエマルションに添加される場合には、このエマルション中の界面活性化合物の濃度の関数である。これは、このエマルション系(未発達のマイクロカプセル化粒子)の小滴のサイズ、ならびにマイクロカプセル化粒子のサイズおよびサイズ分布を決定する因子の1つである。マイクロカプセル化粒子のサイズ分布に影響する他の因子は、連続相の粘性、不連続相の粘性、乳化の間のせん断力、界面活性化合物型および濃度、ならびに油/水の比である。
【0097】
乳化後、エマルションは、硬化媒体(hardening mediumu)中に移される。この硬化媒体は、未発達のマイクロカプセル化粒子から不連続相中の溶媒を抽出し、乳化小滴の近傍内の予備製造された微粒子またはミクロスフェアの周囲に、固形のポリマーマトリックスを有する固形のマイクロカプセル化粒子の形成を生じる。O/WまたはS/O/W系の実施形態において、この硬化媒体は、水性媒体であり、この水性媒体は、界面活性化合物、もしくは増粘剤、または他の賦形剤を含み得る。このマイクロカプセル化粒子は、好ましくは球状であり、そして約0.6〜約300μm、およびより好ましくは約0.8〜約60μmの粒子サイズを有する。さらに、好ましくは、このマイクロカプセル化粒子は、粒子サイズの狭い分布を有する。不連続相の抽出時間を減少させるために、加熱または減圧が、この硬化媒体に適用され得る。未発達のマイクロカプセル化粒子からの不連続相の抽出速度は、不連続相の迅速な除去(例えば、エバポレーション(沸騰効果))が、マトリックスの連続性の破壊を生じるので、最終的な固形のマイクロカプセル化粒子中の空隙率の程度において重要な因子である。
【0098】
乳化プロセスの好ましい実施形態において、乳化プロセスが実施される場合には、この乳化プロセスは、バッチプロセスの代わりに連続的な様式で行われる。図41は、このことに関して使用され得る連続的乳化反応器の設計を示す。
【0099】
カプセル化が実施される他の実施形態において、上記活性な因子の微粒子またはミクロスフェアをカプセル化する硬化した壁形成ポリマーマトリックスは、遠心分離および/または濾過(ダイアフィルトレーションを含む)によって、さらに回収され、そして水で洗浄される。残りの液相は、凍結乾燥またはエバポレーションのようなプロセスによってさらに除去され得る。
【0100】
微粒子またはミクロスフェアは、表面官能基の特性を制御することによって粒子の特性を標的化された特性に修正するために選択された高分子電解質の少なくとも1つ以上の層中にカプセル化され得る。このような微粒子は、粒子の表面の特性に影響を及ぼすために、反対の電荷のポリマー(ポリイオン)と共に水性媒体中に浸される。これらの粒子が、ζ電位測定によって決定されるような負の電荷を有する場合、このポリマーの第1の層は、正である。これらの粒子が、最初に正の電荷を有する場合、この第1のポリマー層は、負である。この第1の層の沈着は、水、緩衝液、またはいくつかの水混和性の有機溶媒を含む水溶液中で行われ得る。
【0101】
コロイド性の不安定なタンパク質微粒子の場合には、溶解性を減少させる他の因子が、導入され得る。溶解性を減少させる低分子量の因子/粘度増強因子(例えば、アルコール、グリセロールなど)およびポリマー(例えば、水溶性ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヘタスターチ、デキストランなど)は、この目的のために使用され得る。コーティング物質とのインキュベーションは、粒子の溶解性を制御するために、室温および、より低い温度にて行われ得る。
【0102】
粒子は、必要とされる量の時間(数分間〜数時間)の間、上記ポリマーと一緒にインキュベートされ得る。次いでコーティングされた粒子の懸濁物は、遠心分離またはダイアフィルトレーションのいずれかによって過剰な非結合性のポリマーから単離され得る。これらの粒子は、好ましくは水溶液または上記の溶解性を減少させる因子を含む溶液のいずれかにおいて、残留するポリマーから洗浄される。温度は、活性物質およびコーティング物質の溶解性に基づいて最適化される。
【0103】
洗浄工程が完了した後、反対の電荷を有するポリマーの次の層が、導入される。この手順は、これまでのサイクルにあるように繰り返され得る。沈着したポリマー層の数は、所望される用途に依存し得る。この数は、例えば、表面改変のための1つの層と、必要とされる溶解速度に依存する徐放用途のための10〜20の二重層とで変えられ得る。
【0104】
使用され得るポリマーとしては、以下の一覧が挙げられるが、これらに限定されない:ポリスチレンスルホネート(PSS)および塩酸ポリアリルアミン(PAH)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDA)、および生体適合性ポリマー(例えば、デキストラン硫酸、キトサン、硫酸キトサン、ポリリジン、ゼラチン、アルギナート、プロタミン、硫酸プロタミン、キサンタンガムなど)、およびまた荷電した脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなど)。
【0105】
交互吸着(alternative layer−by−layer)アプローチにおいて、ポリイオンの第1の層はまた、この系中に存在するポリマー(例えば、PEG)の除去を伴わずに、粒子の制御された沈殿の最後に添加され得る。さらに、脂質構造体(例えば、リポソーム)は、反対に荷電したポリマーによる交互の沈着において使用され得、そして荷電した脂質と非荷電の脂質との間の比は、この殻の透過性を最小限にするために最適化され得る。いくつかの場合では、2価のカチオン(例えば、亜鉛)の存在下において交互吸着アセンブリを行うことが好まれ得る。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
この実施例は、注入可能な抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの500μlバッチを調製するための基本的な手順を提供する。このモノクローナル抗体の500μlの10個のバッチは、エッペンドルフチューブにおいて以下のように調製される:
40mM酢酸アンモニウム(AA)緩衝液(pH=6.5)の調製。40mMのAA緩衝液は、1リットルの脱イオンH2Oに3.08グラムのAA(Spectrum)を溶解することによって調製される。このAAは、容易に溶解し、そして約6.4のpHを有する緩衝溶液を形成する。このpHを希釈水酸化アンモニウムによってpH=6.5に調整する。
【0107】
500mLの40mM AA緩衝溶液中の10% Poloxamer 188の調製。50グラムのPoloxamer 188(BASF)は、500mLの40mM AA緩衝液(工程1に記載されるような)に溶解される(ただし、pH調整は、この時点で必要ではない)。この量のPoloxamerの溶解は、数回の添加によって行われ得る。最終pHは、pH約6.4付近である。この溶液は、0.22フィルターを用いて濾過され、そして冷蔵で保持される。
【0108】
緩衝液の交換。2 PD10脱塩カラム(Amersham Biosciences)は、5mLのタンパク質に対して使用される。カラムの総容量は、3.5mLであり、そしてこれは、各2.5mLを超えない交換が推奨される。各カラムは、25mL未満の40mM NH4OAc緩衝液によってリンスされて、この緩衝液によってカラムが飽和される必要がある。その後、2.5mLのリン酸緩衝液中の抗第VIII因子が、このカラム中に挿入される。次いでさらに1mLのNH4OAc緩衝液が、挿入されて、このカラムを満たす。このタンパク質は、さらに2.5mLの40mM NH4OAc緩衝液を注射することによって収集される。
【0109】
好ましい透析カセットは、3〜12mLの総容量および10,000ダルトンのMWカットオフを有する1 Pierceであり、5mLの上記タンパク質に対する緩衝液を置換する。このカセットを、脱イオンH2Oと共に使用する前に、(例えば、18G1/2の針を有する5mL〜10mLの注射器を使用することによって)水和する。最初に、空気がこのカセット中に注射されて、メンブレンの壁が分離される。その後、このサンプルが、注射される。空気がこのカセットから引き抜かれて、より良好なサンプルとメンブレンとの接触が有される。最後に、フロート(float)がこのカセット上に添加され、そしてこのカセットは、低速で回転する。経験則として、それぞれの緩衝液交換は、少なくとも 10倍容量であるべきである。
【0110】
タンパク質濃度。タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を測定すること、および検量線によって決定される。必要に応じて、このタンパク質は、所望の作業濃度に従って緩衝液を含み得る。
【0111】
10% Poloxamer溶液のpHは、酢酸によってpH=6.0およびpH=6.1に調整される。5mLのこのタンパク質は、500μlの10個のバッチに分割される。その後、1000μLの40mM AA中の10% Poloxamer 188(pH=6.0)が、5個のエッペンドルフチューブに添加され、そして1000μLの40mM AA中の10% Poloxamer 188(pH=6.1)が、他の5個のエッペンドルフチューブに添加される。これらの溶液は、穏やかなボルテックスおよび手動での混合によって、十分に混合される。これらの溶液は、透明な状態〜わずかに濁った状態を呈するはずである。これらのサンプルは、ゆっくりと冷却を行うために、1時間〜2時間(約4℃)、インキュベートされる。これらのサンプルは、ドライアイス/エタノール混合物によって冷却され、そして一晩、凍結乾燥されるか、または−80℃の冷蔵庫中におかれて、全ての脱イオンH2Oが除去される。
【0112】
一旦全ての脱イオンH2Oが除去されると、1mLのMeCl2/5%アセトンが、各エッペンドルフチューブ中の乾燥サンプルに添加される。混合が進み、そして遠心分離が、6000RPM〜8000RPMで3分間行われる。この上清は、この遠心分離物から慎重に取り除かれ、そしてデカントされる。洗浄が、さらに2回繰り返される。
【0113】
最後の洗浄が完了された後、この上清はデカントされ、そしてさらなる溶媒は、粉末の懸濁物を回避するために、低濃度の、非常に穏やかなN2の流れを使用することによって除去される。この乾燥チューブは、凍結乾燥器中におかれて、残りの溶媒が除去され、そして抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアが、回収される。
【0114】
(実施例2)
この実施例は、エッペンドルフチューブにおける抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの500μlバッチの調製のために基本的な手順を提供する。
【0115】
40mM酢酸アンモニウム(AA)緩衝液(pH=6.0)の調製。40mMのAA緩衝液は、1リットルの脱イオンH2Oに3.08グラムのAA(Spectrum)を溶解することによって調製される。このAAは、容易に溶解し、そして約6.4のpHを有する緩衝溶液を形成する。このpHを希酢酸によってpH=6.0に調整する。
【0116】
500mLの40mM AA緩衝溶液中の15% Poloxamer 188の調製。75グラムのPoloxamer 188(BASF)は、500mLの40mM AA緩衝液(工程1に記載されるような)に溶解される(ただし、pH調整は、この時点で必要ではない)。この量のPoloxamerの溶解は、数回の添加によって行われ得る。最終pHは、pH約6.4付近である。この溶液は、0.22フィルターを用いて濾過され、そして冷蔵で保持される。
【0117】
緩衝液の交換。2 PD10脱塩カラム(Amersham Biosciences)は、5mLのタンパク質に対して使用される。カラムの総容量は、3.5mLである。各カラムは、25mL未満の40mM NH4OAc緩衝液によってリンスされて、この緩衝液によってカラムが飽和される。その後、2.5mLのリン酸緩衝液中の抗CD34が、このカラム中に挿入される。次いでさらに1mLのNH4OAc緩衝液が、挿入されて、このカラムを満たす。このタンパク質は、さらに2.5mLの40mM NH4OAc緩衝液を注射することによって収集される。3〜12mLの総容量および10,000MWのMWカットオフを有する1 Pierce透析カセットが使用されて、5mLのこのタンパク質に対して緩衝液を置換する。このサンプルが、注射される。フロートがこのカセット上に添加され、そしてこのカセットは、低速で回転するために使用される。
【0118】
タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を測定すること、および検量線によって決定される。必要に応じて、このタンパク質は、所望の作業濃度に従い緩衝液によって希釈される。この手順のための作業濃度は、1.8mg/mlと決定される(最終濃度は、0.9mg/ml)。
【0119】
15% Poloxamer溶液のpHは、酢酸によってpH=5.8およびpH=5.9に調整される。5mLのこのタンパク質は、500μlの10個のバッチに分割される。500μLの40mM AA中の15% Poloxamer 188(pH=5.8)が、5個のエッペンドルフチューブに添加され、そして500μLの40mM AA中の15% Poloxamer 188(pH=5.9)が、他の5個のエッペンドルフチューブに添加される。
【0120】
これらの溶液は、穏やかなボルテックスおよび手動での混合によって、十分に混合され、これらの溶液は、透明な状態〜わずかに濁った状態を呈する。これらのサンプルは、1時間〜2時間(約4℃)、ボール中でインキュベートされ、ゆっくりとした冷却が行われる。
【0121】
これらのサンプルは、全ての脱イオンH2Oを除去するためにドライアイス/エタノール混合物によって急速に冷却され、そして一晩、凍結乾燥されるか、またはこれらのサンプルは、−80℃の冷蔵庫中におかれる。一旦全ての脱イオンH2Oが除去されると、1mLのMeCl2/5%アセトンが、各エッペンドルフチューブに添加され、次いで十分に混合され、そして6000RPM〜8000RPMで3分間遠心分離される。この上清は、デカントされ、この洗浄が、さらに2回繰り返される。
【0122】
最後の洗浄が完了された後、この上清はデカントされ、そしてさらなる溶媒は、低濃度の、非常に穏やかなN2の流れを使用して除去される。このほぼ乾燥したチューブは、凍結乾燥器中におかれて残りの溶媒が除去され、そして抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアが、回収される。
【0123】
(実施例3)
この実施例は、Poloxamerを溶媒として用い、冷却下でのミクロスフェア形成を伴う抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製を記載する。40mMリン酸緩衝液中の抗第VIII因子モノクローナル抗体(pH=7.0、5.3〜5.5の濃度)(塩化ナトリウムを含まず)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。抗第VIII因子モノクローナル抗体は、約150kDの分子量を有するマウスモノクローナル抗体であり、そして精製目的で使用される。5mLのこのモノクローナル抗体(5.3mg/mLの濃度)を、0.22を通して濾過し、そして透析カセットを使用して40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.5)に対して透析した。タンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。10%溶液のPoloxamer 188 NF(Lutrol F68)(BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能)を、pH=6.0で調製し、そして0.22ミクロンのフィルターによって濾過した。酢酸アンモニウムは、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)によって提供された。透析カセット「Slide−A−Lyzer」(10,000の分子量カットオフおよび3〜12mLのサンプル容量)は、Pierce(Rockford,IL)によって提供された。このモノクローナル抗体溶液の0.5mLのアリコートを、20個の1mLのミクロチューブに挿入した。1mLの10% Poloxamer溶液を、0.5mLの抗第VIII因子(5.3mg/mL)を含む各チューブに添加し、そしてこの溶液を、室温で穏やかに混合し、そして29℃で30分間インキュベートした。
【0124】
その後、これらの溶液を、4℃で1時間インキュベートした。冷却の間に、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して濁った。その後、ミクロスフェア中へのタンパク質の取り込み量を、以下の方法で決定した:このミクロスフェア懸濁物のアリコートを除去し、このミクロスフェアを、遠心分離によってこの溶液から分離し、そして上清中のタンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。インキュベーション後、これらのチューブを、急速冷凍し、そして凍結乾燥した。凍結乾燥後、これらの乾燥粉末は、抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアおよびポロキサマーを含んだ。
【0125】
このポロキサマーを、95%塩化メチレンおよび5%アセトンの1mLの溶液を各チューブに添加し、遠心分離し、そしてその上清を除去することによって除去した。この洗浄手順を、3回繰り返した。この湿ったペレットを、窒素ガスを使用して乾燥し、そして残りの溶媒を、減圧を使用して除去した。これらの乾燥粉末を、光学顕微鏡下で観察した。光学顕微鏡画像(図1)および偏光顕微鏡画像(図2)は、0.5〜5ミクロンのサイズ範囲の球状粒子を示す。これらのサンプルを、SEM(Hitachi S4800,Electron Microscopy Center,Northeastern University、Boston MA)に送った。
【0126】
抗第VIII因子抗体のミクロスフェアのサンプルを、SEM試料取り付け具に、両側が伝導性の炭素付着性タブ(double−sided carbon adhesive tab)を使用して取り付けた。白金/パラジウム 80:20の薄い(10〜15nm)伝導層を、Denton DV−502真空エバポレーターを使用するエバポレーションを介してサンプルに適用した。その後これらのサンプルは、画像化され、そして2〜3kVの加速電圧を使用してHitachi S−4800 Field Emission SEM上にデジタル記録された。走査電子顕微鏡写真(図3)は、0.5〜6ミクロンのサイズ範囲の球状粒子を示す。
【0127】
偏光が等方性のサンプルを通過する場合、これらのサンプルは、全ての結晶軸が完全に等価であるので、サンプルがどのような方向を向いているのかにかかわらず、この偏光に対する効果を有さない。この効果は、完全消光または等方性消光(isotropic extinction)として公知であり、そしてこれは、高度な対称性を有する結晶(例えば、立方晶系)に対して起こる。非結晶質の、非晶質サンプルは、同じ挙動を与える。この偏光顕微鏡画像は、明るい円光に囲まれた暗い円としてミクロスフェアを示す。これらの画像は、サンプルの方向性に依存せず、そして球状の形および非晶質の構造を示す。
【0128】
(実施例4)
この実施例は、実施例3に従って調製された抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアのゲル電気泳動を示す。Tris−酢酸ゲル(3−8%、1.5mm×10ウェル)、Tris−酢酸SDS泳動緩衝液、NuPage LDSサンプル緩衝液、12個の分子量の標準のマーカー、および「SimplyBlue SafeStain」乾燥溶液は、Invitrogen(Carlsbad,CA)によって提供された。ゲル電気泳動は、タンパク質およびペプチドの分離および特徴付け、ならびにタンパク質の分子量の推定のために、広範に使用される分析技術である。
【0129】
抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアを、実施例3に従って調製し、そして37℃にてリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)に溶解した。40μlの3つの異なるバッチを、並行して泳動した。40μlのネイティブな抗第VIII因子溶液を、コントロールとして、並行して泳動した。泳動時間は、1時間であり、そして電圧は、150mVであった。
【0130】
図4は、2つのゲルの画像を示し、これらの画像は、この溶解したモノクローナル抗体(ミクロスフェアから放出された)が、ネイティブなモノクローナル抗体と比較した場合に、ゲル中で同様に移動したことを示す。全てのサンプルは、150kDの分子量マーカーまで移動し、このことは、タンパク質サイズが、処方の結果として変化しなかったことを示す。染色強度もまた同様であり、そしてゲルのウェル中の染色物は、存在せず、このことは、分子の凝集が最小限であることを示す。
【0131】
(実施例5)
この実施例は、PEG/PVPを溶媒として用い、加熱下でのミクロスフェア形成を伴う抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製を記載する。Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)の40mMリン酸緩衝液(塩化ナトリウムを含まない)中の抗第VIII因子モノクローナル抗体を、ミクロスフェア形態中においた。100mM酢酸ナトリウム緩衝液中の25% PEG/PVP(w/v)溶液(pH=5.6)を、3350ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)、40,000ダルトンのポリビニルピロリドン(PVP)および酢酸ナトリウム(Spectrum Chemicals(Gardena,CA)から入手可能)を使用して調製した。
【0132】
400μlの25% PEG/PVP溶液を、800μlの抗第VIII因子モノクローナル抗体溶液(5.3mg/mLの濃度)に室温で添加した。これらの溶液を、混合し、そして65℃で30分間インキュベートした。65℃でのインキュベート後、これらの溶液を、冷水中でのインキュベーションによって、約20℃まで急速に冷却(クエンチ)した。冷却の際、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して混濁した。この懸濁物を遠心分離し、そしてその上清を除去した。過剰なPEG/PVPを、脱イオン水で洗浄することによって除去した。
【0133】
図5は、この実施例の手順に従って調製されたミクロスフェアの走査電子顕微鏡画像を示す。このミクロスフェアのサンプルを調製し、そしてAMRAY AMR−1000走査電子顕微鏡(Electron Microscopy Center,Northeastern University,Boston,MA)によって分析した。このサンプルを、炭素ベースの付着を使用する炭素タブ上に貼り付け、そしてSEM試料位置に取り付けた。このサンプルを、白金/パラジウム 80:20の薄い被膜によって減圧下でコーティングした。図9に示した走査電子顕微鏡写真は、1〜3μmのサイズ範囲の球状粒子を示す。
【0134】
レーザー光散乱による粒子サイズ分布(Beckman Coulter LS 230、Miami FL)を、この実施例に従って調製したミクロスフェアの水性懸濁物に対して行った。この粒子サイズの分布は狭く、90%を超える粒子が、2μmより小さかった。さらに、数、表面積、および体積による粒子サイズ分布を重ね合わせ、これは、全ての粒子が、明らかな凝集物を有さずに、ほぼ同じサイズであること示す。図6を参照のこと。
【0135】
(実施例6)
この実施例において、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアを、Poloxamer溶媒を用いて調製し、そして冷却を、ミクロスフェア 形成において使用した。抗CD34モノクローナル抗体は、約146kDの分子量を有するマウスIgG1λモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、Isolex(登録商標)300 Magnetic Cell Selection SystemおよびIsolex(登録商標)300i Magnetic Cell Selection System(Baxter Healthcare Corporation)と組み合わせて、細胞外の治療(例えば、幹細胞の選択)に使用される。幹細胞選択システムおよび幹細胞処理は、CD34ネガティブな腫瘍を有する患者における骨髄機能廃絶療法後の造血再構築が意図される、CD34+細胞が豊富な集団を得るために、自己の末梢血前駆細胞(PBPC)産物を加工するのに適用される。
【0136】
0.15M塩化ナトリウムおよび0.001% Tween 80を含む0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液中の抗CD34モノクローナル抗体(pH=5.5および2.3〜2.5mg/mLの濃度)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。5mLのこのモノクローナル抗体(2.2mg/mLの濃度)を、0.22μmを通して濾過し、そして40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.0)に対して透析した。Poloxamer 188 NF(Lutrol F68)(BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能)の15%溶液(この溶液は、pH=6.0である)を調製し、そして0.22μmのフィルターによって濾過した。酢酸アンモニウムは、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)によって提供された。透析カセット「Slide−A−Lyzer」(10,000の分子量カットオフおよび3〜12mLのサンプル容量)は、Pierce(Rockford、IL)によって提供された。このモノクローナル抗体溶液の0.5mLのアリコートを、20個の1mLのミクロチューブに挿入した。0.5mLの15% Poloxamer溶液を、0.5mLの抗CD34(2.0mg/mL)を含む各チューブに添加し、そしてこの溶液を、室温で穏やかに混合し、そして29℃で30分間インキュベートした。
【0137】
その後、これらの溶液を、4℃で1時間インキュベートした。冷却の間に、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して濁った。その後、ミクロスフェア中へのタンパク質の取り込み量を、以下の方法で決定した:このミクロスフェア懸濁物のアリコートを除去し、このミクロスフェアを、遠心分離によってこの溶液から分離し、そして上清中のタンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。インキュベーション後、これらのチューブを、急速冷凍し、そして凍結乾燥した。凍結乾燥後、これらの乾燥粉末は、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアおよびポロキサマーを含んだ。
【0138】
このポロキサマーを、95%塩化メチレンおよび5%アセトンの1mLの溶液を各チューブに添加し、次いで遠心分離し、そしてその上清を除去することによって除去した。この洗浄手順を、3回繰り返した。これらの湿ったペレットを、窒素ガスを使用して乾燥し、そして残りの溶媒を、減圧を使用して除去した。これらの乾燥粉末を、光学顕微鏡下で観察し、そしてサンプルを、SEMに送った。光学顕微鏡画像(図7)は、0.5〜5ミクロンのサイズ範囲の球状粒子を示す。抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真を、上記の実施例4に記載されるように観察した(図9)。
【0139】
空力学的な飛行時間測定(TSI Aerosizer)によって粒子サイズ分布を、この実施例に従って調製した抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの5mgの乾燥粉末に対して行った。数によるこの粒子サイズの分布は狭く、1.3μmの空気動力学的直径の平均サイズを伴い、95%の粒子が、3.6μmより小さかった(図10)。
【0140】
(実施例7)
実施例6の抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの立体配座安定性もまた、モニタリングした。実施例6に記載されるような条件において、40mMの酢酸アンモニウム緩衝液中の1.5mLの抗CD34(pH=6.0および1.6mg/mLの濃度)を、40mM酢酸アンモニウム(25℃でpH=6.0)中の1.5mLの15%ポロキサマーと混合した。3μLの蛍光色素8−アニリノナフタレン−1−スルホン酸(sulphonic acid)(ANS)の10mM溶液を添加した。この溶液を穏やかに混合して、蛍光測定用セルに移した。
【0141】
抗CD34抗体の立体配座安定性を、タンパク質のトリプトファン残基およびチロシン残基の内因性の蛍光ならびにANS色素の外因性の蛍光を使用することによってモニタリングした。蛍光測定用セル中の粒子の形成後に、250nmにおける光励起の弾性散乱の500nmにおける第2のオーバートーン(overtone)の検出を使用した。この実施例を、Peltier−耐熱性マルチセルホルダーアクセサリーを備えたCary Eclipse Biomelt蛍光分光光度計を使用して行った。このサンプルを、25℃で1分間インキュベートし、1分間あたり0.06℃の割合で31℃まで加熱し、1分間あたり5℃の割合で2℃まで冷却し、そしてこの温度で1時間インキュベートした。コントロールサンプルは、40mM酢酸アンモニウム(pH=6.0)中の10μM ANS、7.5%ポロキサマー(pH=6.0)、および40mM酢酸アンモニウム(pH=6.0)中の10μM ANSを含む0.8mg/mLの抗CD34モノクローナル抗体を含んだ。
【0142】
図12は、抗CD34モノクローナル抗体の立体配置の安定性の蛍光モニタリング結果を示す。蛍光のデータは、このタンパク質の立体配座が、ミクロスフェア形成の間にインタクトなままであったことを支持する。
【0143】
(実施例8)
この実施例に従って、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアを、Poloxamer溶媒またはPEG/PVP溶媒によって調製し、そしてこの調製に加熱を組み込んだ。0.15M塩化ナトリウムおよび0.001% Tween 80を含む0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液中の抗CD34モノクローナル抗体(pH=5.5および2.3〜2.5mg/mLの濃度)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。2.5mLのサンプル容量の脱塩カラム(Amersham Bioscience(Piscataway、NJ)から入手可能)を使用して、40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.3)(Spectrum Chemicals、Gardena、CA)に対して5mLの抗CD34モノクローナル抗体を透析した。タンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。このモノクローナル抗体溶液の0.5mLのアリコートを、10個の1mLミクロチューブ中に挿入し、そして15%Poloxamer 188 NF(Lutrol F68、BASF Corporation,Florham Park,NJ)の0.3mLアリコートを、0.5mLの抗CD34(2.1mg/mL)を含むチューブに添加した。この溶液を、室温で穏やかに混合し、そして70℃で30分間インキュベートした。
【0144】
70℃でのインキュベーション後、この溶液を、冷水中でのインキュベーションによって23℃まで急速に冷却(クエンチ)した。冷却の際、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して混濁した。この懸濁物を遠心分離し、そしてその上清を除去した。過剰なポロキサマーを、脱イオン水で洗浄することによって除去した。光学顕微鏡画像(図8)は、0.5〜5μmのサイズ範囲の球状粒子を示す。
【0145】
(実施例9)
この実施例において、溶媒としてPEG/PVPを用い、そして冷却下でのミクロスフェア形成を伴う抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製が、記載される。0.15M塩化ナトリウムおよび0.001% Tween 80を含む0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液中の抗CD34モノクローナル抗体(pH=5.5および2.3〜2.5mg/mLの濃度)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。3350Daのポリエチレングリコール(PEG)、40,000Daのポリビニルピロリドン(PVP)および酢酸ナトリウムは、全てSpectrum Chemicals(Gardena、CA)によって提供された。
【0146】
l00mM酢酸ナトリウム緩衝液中の25% PEG/PVP溶液(pH=5.6)を、調製し、そして0.22μmのフィルターによって濾過した。5mLのこのモノクローナル抗体(2.2mg/mLの濃度)を、0.22μmのフィルターによって濾過し、そしてPierce(Rockford,IL)によって提供された透析カセット「Slide−A−Lyzer」(10,000の分子量カットオフおよび3〜12mLのサンプル容量)を使用して透析した。このモノクローナル抗体を、40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.0)に対して透析した。その後、200μlの25% PEG/PVP溶液(w/v)を、500μlの抗CD34モノクローナル抗体(2.0mg/mLの濃度)に添加し、そしてこの溶液を、室温で穏やかに混合し、そして29℃で30分間インキュベートした。このプロセスは、実施例6に記載されるように継続するが、この工程は、95%塩化メチレン/5%アセトン溶液を用いた洗浄によって、ポロキサマーとは反対にPEG/PVPを除去するためであった。
【0147】
(実施例10)
この実施例は、実施例6に従って調製されたモノクローナル抗体のミクロスフェアの粉末X線回折(XRPD)を示す。高解像度粉末X線回折(XRPD)分析を、Cu Kα放射線(radition)(SSCI、West Lafayette,IN)を使用した長い高精度焦点のX線管を備えるShimadzu XRD−6000 X線粉末回折計を用いて得た。
【0148】
この管の電圧、およびアンペア数を、それぞれ、40kVおよび40mAに設定した。発散スリットおよび散乱スリットを、1°に設定し、そして受光スリットを、0.15mmに設定した。あるいは、発散スリットおよび散乱スリットを、0.5°に設定し、そして受光スリットを、0.15mmに設定した。回折される放射線を、NaIシンチレーション検出器によって検出した。1〜20° 2θの、1分間あたり0.5°でのθ〜2θの連続的スキャン(0.02ステップあたり4.8秒)を、使用した。シリコーン標準を分析して、この機器の調整を確認した。データを、収集し、そしてXRD−6000 v.4.1を使用して分析した。ヘキサトリアコンタン:シリコーンの80:20混合物からなる低角度標準を実行し、良好に定義される「d」値について、より低い角度におけるこの機器の高解像度を実証した。
【0149】
図11は、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアおよびヘキサトリアコンタン:シリコーンの80:20混合物のXRPDパターンを示す。ヘキサトリアコンタン:シリコーンの混合物のXRPDは、結晶状態を示す独特のピークを有する一方で、抗体ミクロスフェアのXRPDパターンは、連続的であり、そして明確なピークを有さず、このことは、非晶質の、非結晶質状態の典型である。
【0150】
【化2】
この結果は、高濃度のこれらのタンパク質ミクロスフェアが、吸引され得、そして首尾よく10ポンドのハム片中に注射され得ることを示す。
【0151】
(実施例11)
抗CD34を、本発明に従って(実施例2にほぼ従って)ミクロスフェア中に処方した。このミクロスフェアを、表Iに示す濃度にて5% PEG 3350の溶液中に懸濁した。懸濁したミクロスフェアのある容量を、注射器中に吸引し、そして25ゲージの注射可能の針を通して4ポンドの市販のブタ肩肉中に送達した。それぞれの注射を、目詰まりせずに20秒以下で行った。この実施例における注入能力の結果は、25ゲージの針を通して注射器中にこのミクロスフェア懸濁物を吸引し、そして注射器の内容物をこのブタに完全に注射する能力を示し、この結果は、表Iに記録される。
(表I)
【0152】
【表1−1】
表Iに報告した結果は、高濃度のこれらのタンパク質ミクロスフェアが、細い(25ゲージ)針の中に吸引され、そしてそこから首尾よく注射され得ることを示す。このことは、皮膚を通し、そして筋肉中への、皮下環境における注射性能の徴候を提供する。
【0153】
(実施例12)
90重量%より多い組換えヒトインスリンを含むインスリンミクロスフェアを、本発明に従うミクロスフェア中に処方した。このインスリンミクロスフェアを、表Iに示す濃度で5% PEG 3350の溶液中に懸濁した。1mLの懸濁したミクロスフェアを、注射器中に吸引し、そして28ゲージのインスリン針を通して10ポンドの市販のスモークハム中に送達した。それぞれの注射は、目詰まりせずに20秒以下で行った。この実施例における注射器能力の結果は、28ゲージの針を通して注射器中にこのミクロスフェア懸濁物を吸引する能力を示し、そしてこの実施例における注射性能は、注射器の内容物をこのハムに完全に注射する能力を示す。この結果は、表Iに記録される。
(表1)
【0154】
【表1−2】
表Iに報告した結果は、高濃度のこれらのタンパク質ミクロスフェアが、細い(28ゲージ)針の中に吸引され、そしてそこから10ポンドのハム片に首尾よく注射され得ることを示す。この後者の工程は、皮下環境における注射性能のおおまかな徴候を提供する。300mg/mlの注射を、5.8ニュートンの力で行った。
【0155】
(実施例13)
インスリンの微粒子またはミクロスフェアは、一般的方法によって調製される。16.67%のPEG 3350を含むpH5.65(0.033M酢酸ナトリウム緩衝液)で緩衝化した溶液を、調製した。亜鉛結晶性インスリンの濃縮されたスラリーを、撹拌しながらこの溶液に添加した。最終的な溶液中のインスリン濃度は、0.83mg/mLであった。この溶液を、約85℃〜90℃に加熱した。このインスリンの結晶は、この温度で5分以内に完全に溶解した。インスリン球状小粒子は、溶液の温度が制御した速度で減少する場合、約60℃で形成し始めた。PEGの濃度が増加するにつれて、インスリン球状小粒子の収量は、増加した。このプロセスは、1.4μmの平均を有する種々のサイズ分布を伴って、微粒子またはミクロスフェアを産生した。
【0156】
形成されたインスリンの微粒子またはミクロスフェアを、このミクロスフェアが溶解しない条件下でダイアフィルトレーションを介してこのミクロスフェアを洗浄することによって、PEGから分離した。このインスリンミクロスフェアを、Zn2+を含む水溶液を使用して上記懸濁物から洗浄した。このZn2+イオンは、インスリンの溶解性を減少させ、そして収量を減少させ、そしてミクロスフェアの凝塊形成を生じる溶解を防止する。
【0157】
(実施例14)
本発明はまた、本発明の好ましい注入可能な送達経路に特に適した、α−1−抗トリプシン(AAT)の球状小粒子を調製するために使用され得る。AATは、約44kDaの分子量を有する。この実施例は、AAT球状小粒子のジャケット付カラムバッチの調製(10〜300mgの規模)について報告する。
【0158】
16%のPEG 3350および0.02%のPluronic F−68を含む10mM酢酸アンモニウムによってpH6.0に緩衝化した溶液を、ジャケット付ビーカー中で磁性撹拌子を用いて混合し、そして30℃に加熱した。このビーカーの温度を、循環式の水浴を使用して制御した。組換えAAT(rAAT)の濃縮溶液を、撹拌しながらこの溶液に添加し、そしてそのpHを6.0に調整した。最終的な溶液中のrAAT濃度は、2mg/mlであった。rAATは、この溶液の組成におけるこの温度で完全に溶解した。この容器の全内容物を、ジャケット付カラムに移し、そして25〜30℃に加熱した。このカラムのためにこの循環式の水浴を、−5℃まで降下するように設定した。このカラムおよび内容物を、1分間あたり約1℃の割合で、約4℃の温度まで冷却した。このrAAT球状小粒子は、この冷却工程の間に形成した。このミクロスフェア懸濁物を、ガラス結晶皿中で凍結させ、そして凍結乾燥して、水および緩衝液を除去した。
【0159】
凍結乾燥後のタンパク質球状小粒子からPEGを抽出するために、PEG/タンパク質の固形物を、塩化メチレン(MeCl2)で洗浄した。利用した別の洗浄用媒体は、塩化メチレン:アセトン 1:1、または塩化メチレン:ペンタン 1:1であった。この洗浄手順を、最初の容量の洗浄で合計3回繰り返した。最終的なペレットを、小さい容量のアセトンまたはペンタンに懸濁し、そして窒素ガスに直接曝すことによってか、またはロータリーエバポレーションによってかのいずれかで乾燥した。
【0160】
(実施例15)
この実施例において、AAT球状小粒子(200〜2000mgの規模)は、ジャケット付容器バッチの調製である。この型の調製を、ジャケット付カラムと同じであるが、より大きい容量に適合し得る処方の組成物を使用して行い、そしてこの調製は、よりスケールアップに適していた。この規模において、この処方物を、ジャケット付容器(通常は500〜1000ml)中のA字型のパドル型インペラー(A−shaped paddle style impeller)によって、75rpmで混合し、そして30℃まで加熱した。この容器の温度を、循環式の水浴を使用して制御した。同じ容器中の溶液を保持しながら、水浴の供給源を、30℃のバス〜2℃のバスに切り替えた。この容器および内容物を、1分間あたり約1℃の割合で、4℃の温度まで冷却した。このrAAT球状小粒子は、この冷却工程の間に形成した。この温度を、熱電対を使用してモニタリングし、そしてこの懸濁物が4℃に達したとき、この懸濁物をこの温度付近で、さらに30分間保持した。保持工程の後、この球状小粒子の懸濁物を、約4℃にてダイアフィルトレーションを介して濃縮して、約75%のポリマーおよび約75%の容量を取り除いた。残った球状小粒子の懸濁物を、予め冷却した凍結乾燥トレイ中に薄い層として凍結し、そして凍結乾燥して、水および残った緩衝液を除去した。
【0161】
このタンパク質球状小粒子を、有機溶媒と共に遠心分離することによって(実施例18に記載されるように)か、または超臨界流体(SCF)抽出によってかのいずれかで、残りの乾燥したポリマーから分離した。SCF抽出のために、この乾燥した物質を、CO2によって(室温で)2500psiまで加圧される高圧抽出チャンバー中に移した。一旦作動圧力に達すると、エタノールは、70:30のCO2:エタノール混合物として吸気口の流体の流れに導入された。この超臨界流体は、この球状小粒子を残したままこのポリマーを溶解した。このプロセスの終結において、このシステムは、エタノールを流され、そしてゆっくりと圧力が下げられた。
【0162】
(実施例16)
球状小粒子を、実施例15および16に記載されるように製造し、そして歩留まりを決定した。冷却プロセスを完了した後、この懸濁物の少量のアリコートを、取り除き、そしてこれを、0.2μmの注射器フィルターによって濾過して、固体の球状小粒子を除去した。溶液中に残っているrAATであるこの濾過物の吸光度を、UV分光光度計を使用して280nmにおいて決定した。その後このrAAT濃度を、標準曲線から計算した。この%の変換を、以下:
【0163】
【表2】
のように計算した。
【0164】
上記の表に示されるように、高い%のAATタンパク質を、プロセスの規模に関係なく、球状小粒子に変換した。
【0165】
(実施例17)
この実施例は、異なるプロセスの規模のエアロサイザー(Aerosizer)データにおける、AAT粒子の粒子サイズ分布を示す。最終的なAATの乾燥粉末球状小粒子のサンプルを、飛行時間測定によって粒子サイズを測定するTSI Aerosizer 3225において分析した。これらの測定値から、異なる割合の体積粒径を、このAAT球状小粒子の粒子サイズ分布を実証するために計算し、そしてこの体積粒径を、本発明の方法以外の方法によって製造された粒子と比較するために使用した。
【0166】
【表3】
5〜10mgのサンプルを、ゲルカプセル中に秤量し、そして1分間あたり60リットルの流速(LPM)にてCyclohaler Dry Powder Inhalerを使用するAndersen Cascade Impactor中に適用した。球状小粒子を、全ての衝突または段階から回収し、0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解し、そして逆相HPLCを使用して定量化した。このデータを分析し、そして幾何標準偏差(GSD)を、United States Pharmacopeia(USP)に記載されるように計算した。このデータは、狭いサイズ分布を実証した。
【0167】
【表4】
上に示される全ての分布パラメーターは、本発明の製造方法から生じる優れた粒子サイズ分布を実証した。
【0168】
(実施例18)
この実施例は、AATの生物活性の保持を示す。比活性を決定するために、上記rAAT球状小粒子を、0.2M Tris−HCl(pH8.0)に室温で溶解した。得られた溶液を、C末端にp−ニトロアニリド基を含む合成ペプチドを加水分解する、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)の能力を阻害するrAATの性能を測定するアッセイによって分析した。次いでrAAT球状小粒子の同じ溶液を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイを使用してタンパク質濃度についてアッセイした。コントロールのrAAT出発物質溶液もまた、両方のアッセイによって分析した。この活性のアッセイは、1サンプルあたり1mg/mlのタンパク質の濃度に基づく活性を決定するために開発されたので、この活性の値を、BCAによって決定される実際のタンパク質濃度に基づいて補正し、比活性値を得た。
【0169】
【表5】
従って、この比活性は、AATの球状小粒子中への製造後の、生物活性の保持を実証した。
【0170】
(実施例19)
この実施例は、溶媒としてPEGまたはPoloxamerを用い、そして冷却下でのミクロスフェア形成を伴うヒト化モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製を記載する。40mM酢酸アンモニウム緩衝液中の4mg/mLヒト化モノクローナル抗体(抗CD25モノクローナル抗体)の1mL溶液(pH=5.9)を、1mLのPEG 3350
Da(Spectrum Chemicals(Gardena、CA)から入手可能)の30%(w/v)溶液と水中で混合した。あるいは、この溶液を、1mLのポロキサマー 188 NF(Lutrol F68)(BASF Corporation(Florham Park、NJ)から入手可能)の30%(w/v)溶液と水中で混合した。この混合物を、35℃で10分間、水浴中でインキュベートし、次いで1分間あたり約0.7℃の割合で2℃まで冷却した。
【0171】
その後、このサンプルを、光学顕微鏡において、10×および100×の倍率で観察し、そしてこのサンプルは、いずれかのポリマーを使用した球状粒子の形成を示した。このミクロスフェアのほとんどは、約2ミクロンの直径であるようだが、より小さいものもあった。直径が5ミクロンより大きいミクロスフェアは、ほとんどなかった。
【0172】
(実施例20)
この実施例は、AATの構造的完全性の保持を示す。制御された相分離(CPS)技術の異なる重要な点の1つは、粒子形成の間に水性系を利用し、そして他の負荷を誘導する条件(例えば、上昇した温度、せん断など)を回避する穏やかな条件下での粒子の形成である。粒子工学の分野において、主要な関心事は、製造の間のタンパク質の安定性および保存安定性である。主な分解経路(例えば、酸化、アミド分解および特にタンパク質の凝塊形成)は、タンパク質処方物の副作用(免疫原性が挙げられる)の原因であると考えられる。従って、規制の関連事項は、最終的な粒子処方物における分解産物の非常に低いレベルを必要とする。HPLC、物理化学的特徴付け(例えば、CDおよびDSC)を、タンパク質の改変が形成の間に生じたか否かを決定するために利用した。
【0173】
円偏光二色性(CD)は、摂動に供されたタンパク質の構造上の変化の評価、または操作したタンパク質の構造の親タンパク質に対する比較のために最も一般的に使用される方法である。CD法は、タンパク質の折り畳み、ならびにタンパク質の二次構造および三次構造を評価している。
【0174】
二次構造は、「遠紫外」スペクトル領域(190〜250nm)におけるCD分光法によって決定され得る。これらの波長において、発色団は、それが正常に折り畳まれた環境中に位置する場合、ペプチド結合である。α−へリックス、β−シート、およびランダムコイル構造は、それぞれ、CDスペクトルの特徴的な形および強度を生じる。従って、任意のタンパク質中に存在するそれぞれの二次構造型のおおよその割合は、その遠紫外CDスペクトルを分析することによって、それぞれの構造の型についての分かれた複数のこのような参照スペクトルの合計として決定され得る。
【0175】
「近紫外」スペクトル領域(250〜350nm)におけるタンパク質のCDスペクトルは、三次構造の特定の局面に対して感受性であり得る。これらの波長において、発色団は、芳香族アミノ酸およびジスルフィド結合であり、そしてこれらが生成するCDシグナルは、タンパク質の三次構造全体に対して感受性である。250〜270nmの領域中のシグナルは、フェニルアラニン残基に起因し、270〜290nmのシグナルは、チロシンに起因し、そして280〜300nmのシグナルは、トリプトファンに起因する。ジスルフィド結合は、近紫外スペクトル全体にわたって広範な弱いシグナルを生じる。
【0176】
rAATストック溶液およびリン酸緩衝液中の球状小粒子(pH7.4、T=25℃、0.05mg/mLのタンパク質濃度)から放出されたAATの遠紫外CDスペクトルを、図13に示す。それぞれのスペクトルは、10回の走査の平均を示す。
【0177】
遠紫外CDスペクトルは、区別不能であり、AATの球状小粒子中への製造が、AATのその後の放出において、出発AAT物質の構造と同じ構造を有するAAT分子を生じたことを実証する。
【0178】
球状小粒子を、pH8.0の0.2M Tris−HClに溶解し、そして逆相HPLCによって分析した。出発rAATタンパク質のコントロール溶液と比較した場合、クロマトグラムの外見において明らかな違いは、存在しない。
【0179】
HPLCシステム:
HPLCカラム−Pheomenex Jupiter、5ミクロン、C4、300A、250×4.6mm
Waters Alliance 2965ポンプ/オートサンプラー
波長− 280nm
注射容量− 75ul
濃度の勾配:
移動相1:水中の0.1% TFA
移動相2:水中の90%(c/v)アセトニトリル中の0.085% TFA
実行時間− 60分間
流速− 1.0ml/分
DSCダイアグラムを、作製した。図15〜図25bを参照のこと。
【0180】
(実施例21)
この実施例は、AAT出発物質の保存安定性に対するAAT球状小粒子の保存安定性を報告する。球状小粒子を、室温および4℃における、1週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、ならびに12ヶ月間の保存後の、生物活性の保持について分析した(実施例17に記載されるアッセイを使用して)。(図17bおよび図17c)。このバルク物質(bulk material)は、透析し、次いで凍結乾燥したrAAT出発溶液である。それぞれの時点および保存状態に関して、二連のサンプルが存在し、これらを、それぞれ二連でアッセイした。
【0181】
(実施例22)
Dnase球状小粒子を調製した。DNaseは、約38kDaの分子量を有する。処方例:以下の溶液:(lmg/mlストックからの)0.18mg/ml DNase、(25%ストックからの)18.2% PEG 3350、(1Mストックからの)9mM酢酸アンモニウム(pH5.15)。この懸濁物を、−80℃の冷凍庫で冷却し、そして一旦凍結させ、この懸濁物を、マニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥し、次いでMeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。
【0182】
試みた最初の濃度は、0.lmg/ml DNaseおよび20% PEG 3350であった。37℃から0℃までの冷却を試みた後に、沈殿を得ることはできなかったが、別の量のDNaseを添加して、上記の濃度を得た。この溶液を、−80℃の冷凍庫で冷却し、そして一旦凍結させ、この溶液を、マニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥した。MeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。試みた最初の濃度は、0.lmg/ml DNaseおよび20% PEG 3350であった。37℃から0℃までの冷却を試みた後に、沈殿を得ることはできなかったが、別の量のDNaseを添加して、上記の濃度を得た。この溶液を、−80℃の冷凍庫で冷却し、そして一旦凍結させ、この溶液を、マニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥した。MeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。(図38、図39)。
【0183】
活性(DNase−Iについての、Sigmaから購入したDNA−メチルグリーンを使用したアッセイ)。出発物質についての理論上の活性は、775Ku/mgのタンパク質として記載される。ストック溶液を、0.145mg/mlのタンパク質であると決定した。この濃度を、0.0199mg/mlの最終濃度になるように5mlに希釈した。この活性は、775Ku/mg*0.0199mg/ml=15.46Ku/mlとなるはずである。
【0184】
【化3】
理論上の活性に対する比較:球状小粒子/理論上の活性*100%=活性の%:
14.55Ku/ml / 15.46Ku/ml*100%=94.1%。
【0185】
(実施例23)
スーパーオキシドジスムターゼ(約32kDaの分子量)球状小粒子を、調製する。(5mg/mlストックからの)0.68mg/ml SOD、(31.25%ストックからの)24.15% PEG 3350、(1Mストックからの)9.lmM 酢酸アンモニウム、最終pH=4.99の溶液を水酸化アンモニウムおよび酢酸で調整した。これらの溶液を、40℃から0℃まで、50分間かけて冷却(1分間あたり約0.8℃)し、そして沈殿は、約25℃で開始した。この懸濁物を、液体窒素中で急速冷凍し、そしてマニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥し、次いでMeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。(図40、図41)。
【0186】
40℃から0℃まで、50分間かけて冷却(1分間あたり約0.8℃)した。沈殿は、約25℃で始まった。液体窒素中で急速冷凍し、そしてマニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥した。MeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。球状小粒子が、形成され、そして大部分のアセトンが保持された。
【0187】
(実施例24)
サブチリシン(約35,230ダルトンの分子量)球状小粒子は、非ポリマー性相分離増強剤を使用して調製される。最初の系の連続相は、非ポリマー性相分離増強剤を含み、冷却の間にタンパク質の相分離を誘導し得る。サブチリシン球状小粒子は、任意のポリマーの使用を伴わずに、プロピレングリコールとエタノールとの混合物を使用して、本発明に従って形成され得る。この系において、プロピレングリコールは、凝固点降下剤として機能し、そしてエタノールは、相分離増強剤として機能する。プロピレングリコールはまた、球状小粒子の球状形状の形成を支援する。
【0188】
35%プロピレングリコール中の20mg/mLサブチリシン溶液−10%ホルメート−0.02% CaCl2を、調製した。次いで35%プロピレングリコール−サブチリシン溶液を、混合しながら67%エタノールに加えた。この溶液は、室温で透明なままであった。しかし、−20℃で1時間冷却した場合、粒子の懸濁物を形成した。遠心分離してこの粒子を収集し、そして90%エタノールで洗浄した後、コールター粒径分析を、懸濁物の流体として無水エタノールを使用して行った。この粒子は、2.2ミクロンの平均直径を有する分離した粒子に一致するコールターの結果を与え、そして95%の粒子は、0.46ミクロンと3.94ミクロンとの間であった。光学顕微鏡の評価は、実質的に球状の粒子を示すこれらの結果を裏付けた。この粒子のSEM分析は、コールターの結果を裏付けた。
【0189】
溶液中のサブチリシンのサブチリシン球状小粒子への変換後におけるサブチリシン酵素活性の保持を、比色定量アッセイによって確認した。球状小粒子についての活性の理論上の総ユニットは、冷却前のエタノール−サブチリシン−プロピレングリコール溶液においてアッセイしたサブチリシンの総ユニット数から、(サブチリシン粒子の分離後の)上清に見出される総ユニット数を差し引くことによって計算した。%として表わされる理論上のユニット数で除算されたサブチリシン球状小粒子について見出される実際の総ユニット数は、粒子形成後のサブチリシン活性の保持を表わす。この計算によって、理論上のサブチリシン活性の107%が、このサブチリシン球状小粒子の形成後に保持された。
【0190】
本明細書中に開示される実施形態は種々の形態において具現化され得る本発明の単なる例示であることが、理解されるべきである。従って、本明細書中に開示される具体的な詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に、特許請求の範囲の基礎、および事実上、任意の適切な様式で本発明を様々に利用する当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。記載された本発明の実施形態は、本発明の原理のいくつかの適用の例示であり、そして本明細書中で個別に開示されるか、または特許請求される特徴の組み合わせを含む改変は、なされ得る。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、出願番号第10/894,410号(2004年7月19日出願)の一部継続出願であり、かつ米国仮特許出願番号第60/570,274号(2004年5月12日出願)に基づく優先権を主張する(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用され、そして本明細書の一部をなす)。
【0002】
(技術分野)
本発明は、活性な因子の小粒子(好ましくは、形が実質的に球状である)の組成物に関する。この活性な因子は、好ましくは高分子量タンパク質であり、そしてより好ましくは高分子量タンパク質の実質的に非晶質の形態であり、そして最も好ましくは実質的に非晶質のモノクローナル抗体である。本発明は、高分子量タンパク質(高濃度のモノクローナル抗体が挙げられる)の注射可能か、または注入可能(syringable)な組成物を提供する性能を有し、従って臨床的有効量のこのような活性な因子を、低容量の組成物によって送達し、好ましくは10ml以下の組成物によって送達し、そしてより好ましくは注射器の適用において代表的に見出される容量(皮下ボーラス注射による代表的な注入可能な低用量の注射が挙げられる)によって送達する能力を提供する。活性な因子の球状小粒子に関するこれらの組成物の生産方法および使用方法もまた、本発明によって企図される。この生産方法に従って、この活性な因子は、単一の液相中に溶液を形成する溶解した相分離増強因子(PSEA)を含む、水性溶媒または水混和性(aqueous−miscible)の溶媒中に溶解される。次いでこの溶液は、固相を含む活性な因子、PSEAおよび液相を含む溶媒を有する液相−固相分離に供される。この液相−固相分離は、多くの手段(例えば、溶液の温度の変化またはエネルギーの付加)で誘導され得る。この方法は、治療因子を必要とする被験体に送達され得る、治療因子の球状小粒子を形成するのに最も適切である。この方法はまた、高分子(特に、タンパク質のような熱不安定性である高分子(モノクローナル抗体物質が挙げられる))の固体の球状小粒子を形成するのに最も適切である。本発明は、注入可能な高分子を提供する性能を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
過去に、数種の技術が、生体高分子のナノ粒子および微粒子の製造のために使用された。慣習的な技術としては、粒子形成のための噴霧乾燥およびミリングが挙げられ、そしてそれらが使用されて、5ミクロン以下のサイズの粒子が生成され得る。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、非晶質の複合体を生じるために、亜鉛と複合体を形成し、次いで超音波ノズルによって微粒子化され、そしてこの液滴を凍結するために、液体窒素中に噴射されることによる、組換えヒト成長ホルモン(hGH)の固体形態の生成を記載する。その後この液体窒素は、−80℃の温度でエバポレートされ得、そして得られた物質は、凍結乾燥される。
【0005】
微粒子およびミクロスフェアは、タンパク質、合成ポリマー、多糖類およびそれらの組み合わせを含み、1ミリメートル未満の直径を有し、より好ましくは100ミクロン未満の直径を有し、そして最も好ましくは10ミクロン未満の直径を有する固体かまたは半固体の粒子であり、これらの粒子は、種々の物質の形態をとり得る。ミクロスフェアは、多くの異なる用途(主に、分離物(separations)、診断薬、および薬物送達)に使用されてきた。
【0006】
分離技術に使用されるミクロスフェアの最も周知である例は、合成起源または天然起源のいずれかのポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ヒドロキシアパタイトまたはアガロース)の形態をとるミクロスフェアである。制御された薬物送達の分野において、分子は、多くの場合、その後の放出のために球状小粒子中に組み込まれるか、または球状小粒子内にカプセル化されるか、または均質な(monolithic)マトリックス中に組み込まれる。多くの異なる技術(相分離、溶媒エバポレーション、コアセルベーション(coascervation)、乳化、および噴霧乾燥が挙げられる)が慣習的に使用されて、合成ポリマー、天然のポリマー、タンパク質および多糖類からこれらのミクロスフェアが作製される。一般的に、これらのポリマーは、これらのミクロスフェアの支持構造を形成し、そして目的の薬物は、このポリマー構造中に組み込まれる。
【0007】
標的薬物をカプセル化するために脂質を使用して調製される粒子が、現在利用可能である。リポソームは、単一もしくは複数のリン脂質および/またはコレステロールの二重層からなる球状粒子である。リポソームは、100ナノメートル以上のサイズであり、そして種々の、水溶性かまたは脂溶性の薬物を保有し得る。例えば、複数の水性区画を囲んで粒子を形成する二重層膜中に配列される脂質は、Sinil Kimの特許文献3に記載されるように、その後の送達のために水溶性薬物をカプセル化するのに使用され得る。
【0008】
球状ビーズは、長年、生化学者のためのツールとして市販されてきた。例えば、ビーズに結合体化した抗体は、特定のリガンドに対する結合特異性を有する比較的大きい粒子を生じる。抗体は、細胞の活性化についての細胞の表面上のレセプターに結合するために、慣習的に使用され、固相に結合されて免疫親和性による精製のための抗体コーティング粒子を形成し、そして長時間にわたってゆっくりと放出される治療因子を送達するために使用され得、この送達は、その因子を所望の部位に対して標的化するための、粒子に結合体化した組織特異的な抗体または腫瘍特異的な抗体を使用する。
【0009】
粒子(特に、薬物送達の分野、分離の分野および診断の分野における使用に適合され得る粒子)を作製するための新規の方法の開発に対する継続的な必要性が存在する。有用性の観点から最も望ましい粒子は、以下の特性を有する球状小粒子である:狭いサイズ分布、実質的に球状、実質的に活性な因子のみからなる、活性な因子の生化学的完全性および生物活性の保持。この粒子は、コーティングによってか、またはマイクロカプセル化によって粒子のさらなる安定化を可能にする、適切な固体を提供するべきである。さらに、球状小粒子の製造方法は、以下の望ましい特性を有する:簡便な製造、本質的に水性のプロセス、高い収率、およびその後のふるい分けを必要としないこと。
【0010】
タンパク質は、鎖の長さが高レベルの三次構造および/または四次構造を生じるのに十分であるアミノ酸の配列である。これは、「ペプチド」またはこのような構造を有さない他の低分子量薬物と区別される。
【0011】
抗体(免疫グロブリン)は、外来分子(抗原)または侵入する生物に対する応答において免疫系細胞(Bリンパ球)によって産生されるタンパク質である。抗体は、多くの場合、外来分子または外来細胞に対して非常に強固に結合し、それにより、ファゴサイトーシスまたは補体誘導性の溶解により、これらを不活化するか、または破壊のために印付けする。
【0012】
免疫グロブリン(Ig)は、抗体分子である。より高等な脊椎動物は、免疫応答においてそれぞれ異なる役割を担う5つのクラスの免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)を有する。
【0013】
モノクローナル抗体(mAb)は、免疫系細胞(Bリンパ球)のただ1種のクローンから得られ、そしてただ1種の外来分子(抗原)の特異的部位を認識する、高度に特異的な精製された抗体(免疫グロブリン分子)である。モノクローナル抗体は、実験室操作(マウス、キメラ、ヒト化)によって大量生産され得る。用語「モノクローナル抗体」は、広い意味で使用され、そして具体的には、免疫グロブリンのFc領域を有するモノクローナル抗体、多くのエピトープに対する特異性を有する抗体組成物、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、および単鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)を包含する。
【0014】
ポリクローナル抗体は、単一の外来分子(抗原)の多くの部位に対して特異的であるさまざまな抗体(免疫グロブリン分子)である。天然の免疫応答は、多クローン性である。
【0015】
トラップ分子と称される抗体は、2つの異なるレセプター構成要素と「Fc領域」といわれる抗体分子の一部分との融合体からなり、このことは、単一の構成要素の試薬によって提供される親和性を上回る顕著に増加した親和性を有する成長因子ブロッカーおよびサイトカインブロッカーの生成をもたらす。例えば、トラップ分子は、Regeneron
Pharmaceuticalsによって開発された。
【0016】
モノクローナル抗体(mAbs)は、細胞の1つのクローンから得られる抗体の実験室由来の集団であり、そして1つの特定の抗原部位への結合において高度に特異的である。これらは、ほぼ150kDa程度の大きいタンパク質であり、4つのポリペプチド鎖(それぞれ約25kDaの2つの軽鎖およびそれぞれ約50kDaの2つの重鎖)からなる。これらのサイズに起因して、モノクローナル抗体は、現在、一般的には静脈内注射によって送達される。
【0017】
抗体は、多くの場合、治療効果を達成するために、比較的大きい容量で送達される必要がある。例えば、多くの抗体のための送達用量は、約100〜800mgの間である。これらの大きい容量の物質の注射性能(injectability)は、かなりの処方物の問題および送達の問題を示す。このような大きい投薬量の小さい容量は、代表的に、高い粘度を有する;したがって、ほぼ10mL〜250mL程度の大きい容量が、これを静脈内に送達するために必要とされる。静脈内送達は、患者にとって非常に不快であり、臨床設定を必要とし、そしてそれは、高価であり、かつ時間が掛かる。
【0018】
本発明に従う微粒子技術は、この市場に対して重要な利点を提供し得る。なぜなら注射の際に容易に溶解できる高濃縮された懸濁物の形成を可能にするからである。同様に、高分子量タンパク質を含む他の活性な因子は、本発明の利益を享受し得る。本発明は、高濃度かつ比較的小さい容量で送達され得る組成物(従って、注入性能(syringability)特性および注射性能特性を有する組成物)を記載する。本発明の前に、モノクローナル抗体、他の抗体、または約25kDaを超える分子量を有する他の高分子量タンパク質は、細いゲージの針(例えば、20ゲージおよび標準的な注射器と組み合わせて使用される、より細い針)を使用して注射できなかった。本発明の前に、このようなタンパク質はまた、臨床的有効量のタンパク質を含む小さい容量(10ml以下)で送達できなかった。これらの分子と組み合わせた微粒子技術の使用は、これまでに必要とされたように、これらの分子の高容量注射の問題を解決する。本発明はまた、小さい注射容量かつ短い送達時間で、高濃度のより低い分子量のタンパク質物質を送達する工程を支援するのに有用であり得る。
【0019】
モノクローナル抗体を製造するプロセスは、時間の掛かるプロセスであり、このことが、モノクローナル抗体が高価な理由である。従って、mAbが非常に効率的かつ安全な様式で標的部位に正確に送達されることが、重要である。mAbであるか否かにかかわらず、容易に溶解する微粒子またはミクロスフェアの高収率の形成、それらそれぞれの化学的完全性の保持、およびmAbのような物質の場合には、皮下、眼、または他の投与経路による送達を可能にし得る非常に良好な注射性能もまた、微粒子の調製および送達において重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,654,010号明細書
【特許文献2】米国特許第5,667,808号明細書
【特許文献3】米国特許第5,422,120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の局面または目的は、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である抗体微粒子を提供することである。
【0022】
本発明の別の局面または目的は、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である抗体微粒子を含有する注入可能な組成物を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる局面または目的は、タンパク質が、約25,000ダルトンおよびそれを上回る分子量を有する場合でさえ、約10ml以下の組成物中の臨床的有効量のタンパク質を提供する注入可能な組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる局面または目的は、活性な因子が少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する場合に特に有利な用途が見出される、臨床的有効量の1mlあたり少なくとも約50mgの活性な因子を有する微粒子を提供することである。
【0025】
本発明の別の局面または目的は、高濃度の注射(例えば、皮下注射が挙げられるが、これに限定されない)による活性な因子の送達を介する臨床的に有効な様式で微粒子を使用する方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる局面または目的は、比較的高分子量のタンパク質物質の微粒子を調製するためのプロセスである。
【0027】
本発明の別の局面または目的は、容易に溶解し(すなわち、生理的pHにてPBS緩衝液中に約10分以内の溶解性を示す一方で、化学的完全性を示し(すなわち、少なくとも約90%の化合物が微粒子中で化学的にインタクトである))、そして注射性能(より具体的に、注入性能の形態)を示す(すなわち、少なくとも50mg/mlの懸濁物および過剰な力の使用を伴わない細いゲージの針による懸濁物の送達性能を形成する)、微粒子(好ましくは、ミクロスフェア)を提供することである。
【0028】
本発明の他の局面、目的および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態に従う説明から理解され、具体的にこれらの実施形態は、本明細書中に記載される種々の特徴の定まった組み合わせおよび定まっていない組み合わせを包含し、添付の図面に示される関連情報に関する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
本発明は、高用量における注射可能な特性を有するタンパク質微粒子に関する。このタンパク質は、活性な因子であり、そしてこの微粒子は、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である。これらの組成物によって、非常に高濃度の活性な因子は、非常に低容量において送達可能である。
【0030】
本発明の活性な因子は、好ましくは、治療因子または診断因子であり得る活性な因子である。本発明の好ましい実施形態において、この活性な因子は、高分子タンパク質であり、このタンパク質としては、モノクローナル抗体が挙げられる。なお別の好ましい実施形態において、この活性な因子を含む粒子は、この因子を必要とする被験体に対する任意の適切な経路によるインビボ送達に適しており、この経路としては、他にこれらの型の高分子について可能ではない、皮下および/または眼の注射アプローチが挙げられる。
【0031】
本発明はまた、活性な因子の、微粒子、球状小粒子、またはミクロスフェアの生産方法および使用方法に関する。生産方法に従って、この活性な因子は溶解した相分離増強因子を含む溶媒中に溶解されて、単一の液相である溶液を形成する。上記溶媒は、好ましくは、水性溶媒または水混和性溶媒である。次いでこの溶液は、固相を含む活性な因子、およびPSEAおよび液相を含む溶媒を有する液相−固相分離に供される。この液相−固相分離は、多くの手段(例えば、溶液の温度を溶液の相転移温度以下に変化させること)で誘導され得る。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、上記溶液を液相−固相分離に供する方法は、この溶液中の上記活性な因子の相転移温度以下までこの溶液を冷却することによる。その温度は、この溶液の凝固点を上回っても下回ってもよい。凝固点が相転移温度を上回る溶液に関して、この溶液は、溶液の凝固点を下げて、溶液を凍結させずに溶液中の相分離を起こさせるために凝固点降下剤(例えば、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコール)を含有し得る。
【0033】
本発明の相分離増強剤は、溶液が、活性な因子が凝固して不連続相として球状小粒子の懸濁物を形成する一方で、相分離増強剤が連続相中に溶解したままである相変化の工程に供される場合、上記溶液中の活性な因子の液相−固相分離を増強するか、または誘導する。すなわち、相分離増強剤は、相変化を受けないが、この活性な因子は、相変化を受ける。
【0034】
本発明における粒子を生産する方法はまた、形成された粒子のサイズおよび形を制御するために、粒子の液相−固相分離を制御する工程をさらに包含する。相分離を制御する方法は、イオン強度、pH、相分離増強剤の濃度、溶液中の活性な因子の濃度の制御、または溶液の温度における変化の速度を制御する工程を包含し、これらの制御は、相分離を誘導するために、相分離またはこれらのいずれか、もしくはいくつかの変化の、どちらかの前に行われる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、上記球状小粒子は、粒子の形成後に連続相中のPSEAから分離される。なお別の好ましい実施形態において、分離の方法は、液体の媒体で粒子を含む溶液を洗浄することにより、この液体の媒体において、活性な因子は、この液体の媒体に溶解しないが、相分離増強剤は、この液体の媒体に溶解する。この液体洗浄媒体は、液体の媒体における活性な因子の溶解性を減少させる因子を含み得る。液体洗浄媒体はまた、1種以上の賦形剤を含み得る。これらの賦形剤は、この球状小粒子のためか、またはこの活性な因子もしくはキャリア因子のために安定剤として作用し得る。これらの賦形剤はまた、さらなる特性(例えば、この粒子からの活性な因子の制御された放出または生物学的組織によるこの活性な因子の改変された浸透)によって、この活性な因子またはこの粒子を染み込ませ得る。別の好ましい実施形態において、これらの小さい粒子は、PSEAを含まないが、これらの粒子は、その後の処理工程のために、PSEA相からの分離前にPSEA相の存在下で回収され得る。別の好ましい実施形態において、この溶液は、水性溶媒または水混和性溶媒を含む水溶液である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
実質的に非晶質のタンパク質微粒子の懸濁物を含有する微粒子の注射可能な組成物であって、該組成物が、1mlの該組成物あたり少なくとも約50mgの該タンパク質の濃度を提供し、そして該タンパク質が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する、微粒子の注射可能な組成物。
(項目2)
前記タンパク質微粒子が、抗体を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記タンパク質微粒子が、モノクローナル抗体である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記タンパク質微粒子が、ミクロスフェアである、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記タンパク質微粒子が、非結晶質である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記タンパク質微粒子が、以下、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、トラップ分子、単鎖抗体、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノクローナル抗体構成要素を含む、項目1に記載の組成物。
(項目7)
臨床的有効量の前記組成物のタンパク質が、約10ml以下の該組成物中に分散される、項目1に記載の組成物。
(項目8)
一用量の前記組成物のタンパク質が、約10ml以下の該組成物中に分散される、項目6に記載の組成物。
(項目9)
前記タンパク質は、約50ミクロン以下の平均粒子サイズを有し、かつ約50ミクロン以下の平均粒子サイズを有し続け、そして前記注射可能な組成物が、20ゲージまたはそれより細い注射針を通過する、項目6に記載の組成物。
(項目10)
前記微粒子が、約50ミクロン以下の平均粒子サイズを有する結晶性の微粒子より速い、注射に対する溶解速度を示し、そして前記注射可能な組成物が、20ゲージまたはそれより細い注射針を通過する、項目1に記載の組成物。
(項目11)
少なくとも約90%の前記タンパク質が、前記微粒子においてタンパク質として化学的にインタクトである、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記微粒子が、コーティングを含む、項目1に記載の組成物。
(項目13)
前記コーティングが、マトリックス内に前記微粒子をカプセル化する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
前記コーティングが、多層の電解質によってカプセル化する、項目12に記載の組成物。
(項目15)
項目12に記載の組成物であって、前記微粒子が、賦形剤をさらに含む、組成物。
(項目16)
抗体を含むミクロスフェアであって、該抗体が、実質的に非晶質である、ミクロスフェア。
(項目17)
前記微粒子が、非結晶質である、項目16に記載の微粒子。
(項目18)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目16に記載の微粒子。
(項目19)
前記微粒子が、約50ミクロン以下の粒子サイズを有するミクロスフェアである、項目16に記載の微粒子。
(項目20)
前記微粒子が、モノクローナル抗体、抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、単鎖抗体、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノクローナル抗体を含む、項目16に記載の微粒子。
(項目21)
前記抗体が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する、項目16に記載の微粒子。
(項目22)
前記微粒子が、コーティングを含む、項目16に記載の微粒子。
(項目23)
前記コーティングが、マトリックス内に前記微粒子をカプセル化する、項目22に記載の微粒子。
(項目24)
前記コーティングが、多層の電解質によってカプセル化する、項目22に記載の微粒子。
(項目25)
コーティングが、賦形剤によって前記微粒子をカプセル化する、項目16に記載の微粒子。
(項目26)
前記抗体が、前記ミクロスフェアの総重量に基づいて約20重量%〜約100重量%の該ミクロスフェアを含む、項目16に記載の微粒子。
(項目27)
高濃度において細いゲージの針での注射性能を有し、実質的に非晶質の抗体微粒子を含有する、組成物。
(項目28)
前記微粒子が、非結晶質である、項目27に記載の組成物。
(項目29)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目27に記載の組成物。
(項目30)
前記微粒子が、約50ミクロン以下の粒子サイズを有するミクロスフェアである、項目27に記載の組成物。
(項目31)
タンパク質微粒子が、以下、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノクローナル抗体構成要素を含む、項目27に記載の組成物。
(項目32)
前記抗体が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する、項目27に記載の組成物。
(項目33)
項目27に記載の組成物であって、該組成物が、前記微粒子上にコーティングをさらに含む、組成物。
(項目34)
項目27に記載の組成物であって、前記微粒子が、賦形剤をさらに含む、組成物。
(項目35)
微粒子を調製するプロセスであって、抗体構成要素と水溶性であるかまたは水混和性溶媒に可溶性であるポリマーとを水溶液中で混合して、実質的に非晶質の抗体構成要素の組成物を提供する工程、および該組成物から微粒子を形成する工程を包含する、プロセス。
(項目36)
前記組成物の温度を変化させる工程をさらに包含する、項目35に記載のプロセス。
(項目37)
前記温度を変化させる工程が、前記組成物の温度を下げる、項目35に記載のプロセス。
(項目38)
前記温度を変化させる工程が、前記組成物の温度を上げる、項目35に記載のプロセス。
(項目39)
前記微粒子を形成する工程が、前記組成物から前記ポリマーを除去する工程を包含する、項目35に記載のプロセス。
(項目40)
前記抗体構成要素が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目35に記載のプロセス。
(項目41)
抗体の高濃縮された組成物を注射器の針を通して投与するための方法であって、以下:
抗体とポリマーとを水溶液中で混合して、抗体溶液を提供する工程および該溶液から微粒子を形成する工程;
1mlの組成物あたり少なくとも約50mgの抗体の濃度である約10ml以下の懸濁物として細いゲージの針を有する注射器ユニット中に該微粒子を充填する工程;ならびに
該注射器を通して該懸濁物を注射することによって個体に該用量の該微粒子を投与する工程、
を包含する、方法。
(項目42)
前記抗体構成要素が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体フラグメント、トラップ分子、それらの組換え形態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記充填する工程および投与する工程の針が、20ゲージまたはそれより細い、項目41に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実施例3に記載される通りに調製された抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの光学顕微鏡画像を示す。
【図2】図2は、実施例3に記載される通りに調製された抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの偏光顕微鏡画像を提供する。
【図3】図3は、実施例3に記載される通りに見た抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真を提供する。
【図4】図4は、実施例4に記載されるような抗第VIII因子モノクローナル抗体(出発物質および溶解したミクロスフェア)のゲル電気泳動画像を示す。
【図5】図5は、実施例5に記載される通りに見た抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、実施例5に記載されるような抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの数、表面積および体積分布による粒子サイズ分布を報告する。
【図7】図7は、実施例6に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの光学顕微鏡画像を提供する。
【図8】図8は、実施例8に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの光学顕微鏡画像である。
【図9】図9は、実施例6に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、実施例6に記載される通りに調製された抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの数の分布による粒子サイズ分布を報告する。
【図11】図11は、実施例10に記載されるような抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェア(2スリット構造を有する)およびヘキサトリアコンタン:ケイ素混合物の、粉末X線回折を示す。
【図12】図12は、実施例7に記載されるようなポロキサマーを伴う、冷却の間の抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアに関する立体配置安定性の蛍光モニタリングを報告する。
【図13】図13は、温度に対して活性な因子の濃度をプロットする二元系相図である。
【図14】図14は、冷却温度プロフィールである。
【図15】図15は、球状小粒子中に調製された場合の、インスリンの化学的安定性の全体的な維持を示すHPLC分析である。
【図16】図16aおよび16bは、バッチ間の再現性を実証する概略図である。
【図17A】図17aは、α−1−抗トリプシン(AAT)についての円偏光二色性(CD)プロットである。
【図17B】図17bは、実施例21における室温での保存時間に対する活性のプロットである。
【図17C】図17cは、実施例21における4℃での保存時間に対する活性のプロットである。
【図18】図18は、DSCプロットである。
【図19】図19は、DSCプロットである。
【図20】図20は、DSCプロットである。
【図21】図21は、DSCプロットである。
【図22】図22は、DSCプロットである。
【図23】図23は、DSCプロットである。
【図24】図24は、DSCプロットである。
【図25】図25は、DSCプロットである。
【図26】図26は、DSCプロットである。
【図27】図27は、DSCプロットである。
【図28】図28aおよび図28bは、DSCプロットである。
【図29】図29は、HFA−134aにおけるインスリンの安定性のデータを示すチャートである。
【図30】図30は、3種の吸入デバイスを使用して、インスリンの空気力学的な性能を比較するチャートである。
【図31】図31は、25℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図32】図32は、37℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図33】図33は、25℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図34】図34は、37℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図35】図35は、25℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図36】図36は、37℃で保存されたインスリン出発物質と比較した、インスリン球状小粒子の安定性のデータのチャートである。
【図37】図37は、Cyclohaler DPIを使用する、インスリンの空気力学的な安定性の棒グラフである。
【図38】図38は、Danes球状小粒子の光学顕微鏡写真である。
【図39】図39は、DNaseの酵素活性のチャートである。
【図40】図40は、SOD球状小粒子の光学顕微鏡写真である。
【図41】図41は、SOD球状小粒子についての酵素学的データのチャートである。
【図42】図42a〜図42bは、連続的乳化反応器の略図であり、図42Aは、乳化前に連続相または分散相に界面活性化合物が添加される場合の連続的乳化反応器の略図であり、そして図42Bは、乳化後に連続相または分散相に界面活性化合物が添加される場合の連続的乳化反応器の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、多くの異なる形態の実施形態に従う。本発明の好ましい実施形態は、開示され、これに伴って、本開示は、本発明の原理の例示と見なされるべきであり、そして本発明の広範な局面を、この例証された実施形態に限定することを意図しないことが、理解される。
【0038】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態は、本明細書中に開示される;しかし、開示される実施形態は種々の形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることが、理解されるべきである。従って、本明細書中に開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではないが、単に特許請求の範囲のための基礎、および実質的に任意の適切な様式で、本発明を多様に用いる当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0039】
本発明は、タンパク質である活性な因子の、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である小粒子の組成物に関する。特別な用途は、活性な因子が、少なくとも約25,000ダルトンの分子量を有する場合に見出される。生産方法に従って、この活性な因子は溶解した相分離増強因子を含む溶媒中に溶解されて、単一の液体の連続相である溶液を形成する。上記溶媒は、好ましくは、水性溶媒または水混和性溶媒である。次いでこの溶液は、例えば、この活性な因子の相転移温度以下まで溶液の温度を低下させることによって相変化に供され、それによって、この活性な因子は、液相−固相分離を受けて、不連続相を構成する実質的に非晶質であるか、または非結晶質である小粒子の懸濁物を形成するが、相分離増強剤は、連続相中に残存する。
【0040】
本発明は、活性な因子の小粒子(好ましくは、形が実質的に球状である)の組成物に関する。この活性な因子は、好ましくは高分子量タンパク質であり、そしてより好ましくは高分子量タンパク質の実質的に非晶質の形態であり、そして最も好ましくは実質的に非晶質のモノクローナル抗体である。本発明は、高濃度の高分子量タンパク質(モノクローナル抗体が挙げられる)の注射可能か、または注入可能な組成物を提供する可能性を有し、従って、低容量の組成物で、好ましくは10ml以下の組成物で、そしてより好ましくは代表的に標準的な注射器において見出される容量で臨床的有効量のこのような活性な因子を送達する性能を提供する。
【0041】
活性な因子の球状小粒子に関するこれらの組成物の生産方法および使用方法もまた、本発明によって企図される。生産方法に従って、この活性な因子は、溶解した相分離増強剤(PSEA)を含む水性溶媒または水混和性溶媒中に溶解されて、単一の液相中に溶液を形成する。次いでこの溶液は、固相を含む活性な因子、ならびにこの液相を含むPSEAおよび溶媒を含む液相−固相分離に供される。この液相−固相分離は、多くの手段(例えば、溶液の温度の変化またはエネルギーの付加)で誘導され得る。この方法は、治療因子を必要とする被験体に送達され得る治療因子の球状小粒子を形成するのに最も適切である。この方法はまた、高分子(特に、タンパク質(モノクローナル抗体物質が挙げられる)のような熱不安定性である高分子)の固体の球状小粒子を形成するのに最も適切である。本発明は、注入可能な 高分子を提供する性能を有する。
【0042】
(活性な因子)
本発明の活性な因子は、治療因子または診断因子であり得るタンパク質である。好ましい活性な因子は、高分子量タンパク質である。好ましい因子は、タンパク質の非晶質の形態(非晶質の抗体が挙げられる)である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および抗体フラグメント(特に、一般的に「Fab」フラグメントまたは「Fab」領域として公知である抗原結合フラクション(fraction))、単鎖抗体、ならびに組換え形態であるモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体もしくは他の抗体を包含し、そして名称「トラップ分子」で当該分野において現在認識されるものである。抗体とはまた、(例えば、コーティングまたはカプセル化(本明細書中に記載されるようなアプローチによるものを含む)によって)処理される抗体の上記の形態のいずれかをいう。
【0044】
トラップ分子は、2つの異なるレセプター構成要素と「Fc領域」といわれる抗体分子の一部分との融合体からなり、単一の構成要素の試薬によって提供されるトラップ分子を上回る、顕著に増加した親和性を有する成長因子ブロッカーおよびサイトカインブロッカーの生成をもたらす。
【0045】
以下の参考文献は、トラップ分子についてのさらなる情報を提供する:「Cytokine Traps:Multi−Component、High−Affinity Blockers of Cytokine Action」;Economides AN、Carpenter LR、Rudge JS、Wong V、Koehler−Stec EM、Hartnett C、Pyles EA、Xu X、Daly TJ、Young MR、Fandl JP、Lee F、Carver S、McNay J、Bailey K、Ramakanth S、Hutabarat R、Huang TT、Radziejewski C、Yancopoulos GD、Stahl N;Journal:Nat Med(2003);第9巻、第1号:p.47−52.「Vascular Eendothelial Growth Factor−Trap
Decreases Tumor Burden、Inhibits Ascites、and Causes Dramatic Vascular Remodeling
in an Ovarian Cancer Model」;Byrne AT、Ross L、Holash J、Nakanishi M、Hu L、Hofmann JI、Yancopoulos GD、Jaffe RB;Journal:Clin Cancer Res(2003);第15巻;第9(15)号:p.5721−8.「Prevention of Thecal Angiogenesis、Antral Follicular Growth、and Ovulation in the Primate by Treatment with Vascular Endothelial Growth Factor Trap R1R2」;Wulff C、Wilson H、Wiegand SJ、Rudge JS、Fraser HM;Journal:Endocrinology(2002);第143巻、第7号:p.2797−807。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、上記活性な因子は、天然である得るか、または合成であり得るモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アダリムマブ(adalimutab)(商品名HumiraでAbbotから入手可能)、アブシキシマブ(商品名ReoProでCentocorから入手可能);ダクリズマブ(商品名ZenapazでRocheから入手可能)、リツキシマブ(商品名RituxinまたはRituxanでIDEC/Genentechから入手可能)、バシリキシマブ(商品名SimulectでNovartisから入手可能)、パリビズマブ(palivzumab)(商品名SynagisでMedimmuneから入手可能)、インフリキシマブ(商品名RemicadeでCentocorから入手可能)、トラスツズマブ(trastuxumab)(商品名HerceptinでGenentechから入手可能)、ゲムツズマブ(商品名MylotargでIDECから入手可能)、アレムツズマブ(alemzutumab)(商品名CampathでMillennium/ILEXから入手可能)、およびイブリツモマブ(商品名ZevulinでIDECから入手可能)。Gammagard Liquid(Baxter Healthcare Corporation、Westlake Village、CAから入手可能)は、使用できる状態に滅菌され、高度に精製され、かつ高度に濃縮された免疫グロブリンG(IgG)抗体の液体調製物である。
【0047】
抗体「Fab」フラクションまたは抗体「Fab」領域の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない。TGX−6B4(現在、ThromboGenics Ltd of Dublin、Irelandによって開発中)は、血小板粘着を阻害するGPlbに対する抗体であり、そして動脈血栓症における初期の工程を防止するための新規のアプローチであることが示される。ジゴキシン特異的Fabフラグメントは、ヒキガエルの毒物の中毒の処置において有益であることが報告された(Heart.2003;89:12−472、Toxalert、15:発行物1、1998)。ヒト化Fabフラグメントは、COS細胞およびCHO細胞においてヒトFc(ε)RIαのIgE結合ドメインを認識することが示された(Journal of Biochemistry、2001:第129巻、発行物1 5−12)。多価Fabフラグメントを使用する抗腫瘍放射免疫療法に関する他の情報は、British Journal of Cancer(1999)81、972−980に見出される。
【0048】
他の高分子量タンパク質の例としては、AAT、Dnase、スーパーオキシドジスムターゼ、サブチリシンおよび他のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。代表的に、高分子量は、タンパク質の特定の要求もしくは特定の特性またはその意図される使用に依存して、約25,000程度の分子量を有するタンパク質を示す。より低い分子量のタンパク質は、例えば、注射によって、高濃度で投与されるという同じ要求の範囲に対する、本発明の利益を享受し得る。このようなタンパク質は、当該分野において公知である;例えば、米国特許出願番号第10/894,410号(2004年7月19日出願)および同第10/896,326号(2004年7月21日出願)を参照のこと。
【0049】
(微粒子、球状小粒子またはミクロスフェア)
本発明の微粒子またはミクロスフェアは、動的光散乱法(例えば、光相関分光法(photocorrelation spectroscopy)、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(mediumu−angle laser light scattering)(MALLS))によってか、光掩蔽法(light obscuration method)(例えば、Coulter分析法)によってか、または他の方法(例えば、レオロジーまたは顕微鏡(光学または電子))によって測定される場合、好ましくは200ミクロン未満の幾何学的な平均粒子サイズを有し、代表的には約0.01μm〜約200μm、代表的には約50μm以下、より好ましくは0.1μm〜10μm、さらにより好ましくは約0.5μm〜約5μm、および最も好ましくは約0.5μm〜約3μmの幾何学的な平均粒子サイズを有する。
【0050】
上記球状小粒子またはミクロスフェアは、実質的に球状である。「実質的に球状」によって意味されることは、粒子の断面の最短の垂直軸に対する最長の垂直軸の長さの比が約1.5以下であることである。実質的に球状は、対称中心線を必要としない。さらに、この粒子は、表面のきめを有し得(例えば、粒子のサイズ全体と比較した場合の尺度に応じて小さい、線またはくぼみまたは隆起)、そしてなお実質的に球状である。より好ましくは、この粒子の、最長の軸と最短の軸との間の長さの比は、約1.33以下である。最も好ましくは、この粒子の、最長の軸と最短の軸との間の長さの比は、約1.25以下である。表面の接触は、保存の際にこの粒子の望ましくない集塊を最小化する、実質的に球状であるミクロスフェアにおいて最小化される。多くの結晶またはフレーク(flake)は、集塊がイオン性相互作用または非イオン性相互作用によって生じ得る場合、広い表面の接触面積を可能にし得る平面を有する。球は、非常に小さい面積に対する接触を可能にする。
【0051】
この微粒子はまた、好ましくは実質的に同じ粒子サイズを有する。相対的に大きい粒子および小さい粒子の両方が存在する場合、広いサイズ分布を有する粒子は、より小さい粒子に、より大きい粒子の間の隙間を埋めることを可能にさせ、それによって、新しい接触表面を形成する。広いサイズ分布は、集塊を結合するために多くの接触機会をつくることによって、より大きな球を生じ得る。本発明の球状微粒子は、好ましくは狭いサイズ分布内にあり、それによって集塊と接触するための機会を最小化する。「狭いサイズ分布」によって意味されるものは、球状小粒子の10パーセンタイルの体積粒径に対する90パーセンタイルの球状小粒子の体積粒径の比が5以下である好ましい粒子サイズ分布である。より好ましくは、球状小粒子の10パーセンタイルの体積粒径に対する90パーセンタイルの球状小粒子の体積粒径は、3以下である。最も好ましくは、球状小粒子の10パーセンタイルの体積粒径に対する90パーセンタイルの球状小粒子の体積粒径の比は、2以下である。
【0052】
幾何標準偏差(GSD)もまた、狭いサイズ分布を示すために使用され得る。GSDの計算は、15.9%未満および84.1%未満の累積率における有効カットオフ径(ECD)を決定する工程を包含する。GSDは、15.9%未満のECDに対する84.17%未満のECDの比の平方根である。GSDは、GSDが2.5未満であり、より好ましくは1.8未満である場合に、狭いサイズ分布を有する。
【0053】
本発明の好ましい形態において、微粒子中の活性な因子またはミクロスフェア中の活性な因子は、半結晶質か、または非結晶質か、または実質的に非晶質である。
【0054】
上記ミクロスフェアは、好ましくは、実質的に非晶質であるか、または非結晶質である活性な因子からなり、すなわち、これらは、非晶質であるか、または半結晶質形態である。本明細書中で使用される場合、「非晶質の」とは、この活性な因子のほぼ無秩序な固体形態をいい、ミクロスフェア内で、タンパク質の結晶格子または他の活性な因子の結晶格子は、存在せず、そして「半結晶質」とは、活性な因子のほぼ無秩序な固体形態をいい、このミクロスフェアの活性な因子の内容物は、この活性な因子の50%未満の結晶格子形態からなる。
【0055】
代表的に、上記微粒子またはミクロスフェアは、実質的に非多孔性であり、そして0.5g/cm3より大きい密度を有し、より好ましくは0.75g/cm3より大きい密度を有し、そして最も好ましくは約0.85g/cm3より大きい密度を有する。この密度についての好ましい範囲は、約0.5g/cm3〜約2g/cm3であり、そしてより好ましくは約0.75g/cm3〜約1.75g/cm3であり、さらにより好ましくは約0.85g/cm3〜約1.5g/cm3である。本発明に従う実質的に非晶質であるか、または非結晶質である微粒子は、より容易に可溶化するか、またはそのように構成されない微粒子(例えば、結晶性微粒子)より速い溶解速度を示す。
【0056】
本発明の微粒子またはミクロスフェアは、高含有量の上記活性な因子を示し得る。微粒子を調製する多くの他の方法に必要とされる、かなりの量の充填剤または同様の賦形剤に対する必要性は、存在しないが、特定の目的を達成するために所望されるような物質が、活性な因子に加えて含まれ得る。例えば、多くの用途において、このミクロスフェアは、この粒子の95重量%以上を含む。代表的に、この活性な因子は、この粒子の約20重量%〜100重量%で存在し、好ましくは約50重量%〜約100重量%で存在し、より好ましくは約80重量%〜約100重量%で存在し、さらにより好ましくは約90重量%〜約100重量%で存在する。本明細書中で範囲を記載する場合、それは、その中に任意の範囲または任意の範囲の組み合わせを含むことが、意味される。
【0057】
本発明のさらなる局面は、上記微粒子またはミクロスフェアが、賦形剤の封入を伴うか、またはこれを伴わずに、上記活性な因子の生化学的完全性および生物活性を保持することである。
【0058】
(粒子のインビボ送達)
本発明における活性な因子を含む微粒子、球状小粒子またはミクロスフェアは、この因子を必要とする被験体に対する注射可能な経路によるインビボ送達に適している。好ましい送達経路は、注射可能であり、これとしては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、鞘内、硬膜外、動脈内、関節内などが挙げられる。他の送達経路(例えば、局所、経口、直腸、経鼻、肺、膣、口腔粘膜、舌下、経皮、経粘膜、耳または眼内)は、実施され得るが、代表的に、本発明の利点は、注射用途について、より明らかである。注入可能な送達経路は、本発明の目的のために最も好ましい。最も重要なことには、この微粒子またはミクロスフェアは、高分子量のタンパク質または活性な因子にもかかわらず、注射器中に吸引され得、そして細い針を通して注射され得る。好ましい送達経路は、細い針による注射であり、これらとしては、皮下、眼などが挙げられる。細い針によってとは、少なくとも20ゲージのサイズの針、代表的には約22ゲージと約30ゲージ以上との間のサイズの針が意味される。有利には、この細い針は、少なくとも24ゲージと同じ細さ、より有利には少なくとも26ゲージと同じ細さ、そしてよりさらに有利には少なくとも28ゲージと同じ細さであり得る。
【0059】
上記微粒子またはミクロスフェアは、注射される組成物の1mlあたり少なくとも約50mgのタンパク質の濃度で注射され得る。例えば、約100mg〜約800mgのタンパク質は、多くの用途について約10mlを超えず、そして通常少なくとも約2mlの送達容量で注射可能である、また、この送達は、通常の注射時間の間に行われる。代表的に、このような時間は、長くても約20秒以下である。
【0060】
本明細書中に示される粒子の処方のための方法は、所望されるか、または必要とされるような賦形剤または他の成分もしくは添加剤を伴うか、またはこれらを伴わない粒子の処方を提供する。添加剤を使用せずにタンパク質自体からタンパク質の微粒子またはミクロスフェアを製造することはまた、本発明のアプローチであり、そして同時に使用についての優れた利点を提供する。
【0061】
(微粒子を作製するための方法)
(連続相)
活性な因子の微粒子またはミクロスフェアを調製する本発明の方法は、単一の液相中の第1の溶媒に溶解された活性な因子および相分離増強剤を有する溶液を提供する工程で始まる。この溶液は、有機溶媒または混和性有機溶媒の混合物を含む有機系であり得る。この溶液はまた、水性媒体もしくは水混和性の有機溶媒もしくは水混和性の有機溶媒の混合物またはそれらの組み合わせを含む水性ベースの溶液であり得る。この水性媒体は、水、通常の生理食塩水、緩衝液、緩衝化した生理食塩水などであり得る。適切な水混和性の有機溶媒としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、テトラヒドロフラン(THF)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150、ポリエチレングリコールエステル、PEG−4ジラウレート、PEG−20ジラウレート、PEG−6イソステアレート、PEG−8パルミトステアレート、PEG−150パルミトステアレート、ポリエチレングリコールソルビタン、PEG−20ソルビタンイソステアレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(PPG)、アルギン酸ポリプロピレン、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、プロピレングリコールラウレート、およびグリコフロール(glycofurol)(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)、アルカン(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン)、またはそれらの組み合わせ。
【0062】
上記単一の連続相は、第1の溶媒に可溶性であるか、または第1の溶媒と混和性である相分離増強剤の溶液を最初に提供することによって調製され得る。次いでこの溶液に、活性な因子が添加される。この活性な因子は、この溶液に直接添加され得るか、またはこの活性な因子は、最初に第2の溶媒中に溶解され得、次いでこの溶液に添加され得る。この第2の溶媒は、第1の溶媒と同じ溶媒であり得るか、またはこれは、上記の一覧から選択され、そして上記溶液と混和性である別の溶媒であり得る。活性な因子が、周囲温度以下でこの溶液に添加されることが、好ましく、これは、熱不安定性の分子(例えば、特定のタンパク質)について特に重要である。「周囲温度」によって示されるものは、約20℃〜約40℃前後の室温の温度である。しかし、この系はまた、加熱が活性な因子の活性の有意な減少を生じない限り、この系における活性な因子の溶解性を増加させるために加熱され得る。
【0063】
(相分離増強剤)
本発明の相分離増強剤(PSEA)は、上記溶液が、相分離の工程に供されるとき、この溶液からの活性な因子の液相−固相分離を増強するか、または誘導し、この工程において、この活性な因子は、固体または半固体になって、不連続相として球状小粒子の懸濁物を形成する一方で、この相分離増強剤は、連続相に溶解したままである。この相分離増強剤は、この溶液が相分離状態に提供されるとき、活性な因子の溶解性を減少させる。適切な相分離増強剤としては、この溶液に溶解するか、またはこの溶液と混和性である、ポリマーまたはポリマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリマーの例としては、直鎖状ポリマーまたは分枝状ポリマー、コポリマーおよびブロックコポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、水溶性、半水溶性、水混和性、または不溶性であり得る。
【0064】
本発明の好ましい形態において、上記相分離増強剤は、水溶性または水混和性である。使用され得るポリマーの型としては、炭水化物ベースのポリマー、多価脂肪族アルコール、ポリ(ビニル)ポリマー、ポリアクリル酸、多価有機酸、ポリアミノ酸、コポリマーおよびブロックコポリマー(例えば、Pluronic F127またはPluronic
F68のようなポロキサマー)、tert−ポリマー、ポリエーテル、天然に存在するポリマー、ポリアミド、界面活性剤、ポリエステル、分枝状ポリマーおよび環状ポリマー、ならびにポリアルデヒドが挙げられる。
【0065】
好ましいポリマーは、活性な因子の粒子の投与の意図される経路のための薬学的添加剤として受容可能であるポリマーである。好ましいポリマーは、薬学的に受容可能な添加剤(例えば、種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG 200、PEG 300、PEG 3350、PEG 8000、PEG 10000、PEG
20000など)および種々の分子量のポロキサマー(例えば、ポロキサマー188およびPluronic F127またはPluronic F68))である。なお別の好ましいポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。なお別の好ましいポリマーは、ヒドロキシエチルデンプンである。他の両親媒性ポリマーはまた、単独かまたは組み合わせて使用され得る。上記相分離増強剤はまた、非ポリマー(例えば、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物)であり得る。
【0066】
(液相−固相分離)
上記溶液における活性な因子の液相−固相分離は、当該分野において公知である任意の方法(例えば、温度の変化(上昇または低下のいずれか)、圧力の変化、pHの変化、溶液のイオン強度の変化、活性な因子の濃度の変化、相分離増強剤の濃度の変化、溶液の容量オスモル濃度の変化、これらの組み合わせなど)によって誘導され得る。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、上記相変化は、温度誘導性の相変化である。多くの実施形態において、この温度誘導性の相変化は、温度を上記溶液中の活性な因子の相転移温度以下に下げることによって達成される。
【0068】
図1は、溶媒、PSEAおよび活性な因子を含有する溶液についての二元系相図10である。この図は、溶液の温度に対して活性な因子の濃度をプロットする。上記PSEAの濃度は、一定に保たれる。
【0069】
図1の図表は、以下を有する:飽和曲線12;過飽和曲線14;それらの間の準安定領域16;全ての構成要素が液相中にあり、この系が均質な、単一の液相にある場合、飽和曲線より下の第1の領域18;およびこの系が、活性な因子の固相ならびにPSEAおよび溶媒の液相を有する二相系である場合、過飽和曲線より上の第2の領域20。この相図は、系の温度および純粋な液相中の構成要素の相対濃度、液相−固相ならびにこれらの2つの相の間の転移を取り巻く状態を決定するのに役立つ。
【0070】
本明細書中に開示されるように、上記活性な因子の微粒子またはミクロスフェアの調製は、溶液が存在し得る任意の固相と平衡状態にある場合、主に、点Aにて飽和に達する不飽和溶液(図1中の点A’)からの冷却を包含する。さらなる冷却において、この溶液が所定の温度での平衡溶解度に対応するものよりも活性な因子を含む場合、ある状態に到達する;従って、この溶液は、過飽和状態になる。この固相の自発的な形成は、点Bに到達するまで、生じない。点Bは、準安定区域の境界線上の点である。この準安定区域の幅は、最大に達し得る不十分な冷却ΔTmax=T2−T1によってか、または過飽和ΔCmax=C*2−C*1によって表わされ得る。これら2つの表示は、熱力学方程式:
【0071】
【化1】
である。
【0072】
経路A’−A−Bは、準安定な溶液を調製する多重熱法(polythermal method)を表わす。等温プロセスにおいて、出発点は、A’’である。一定温度において濃度を増加させることによって、飽和は、点Aにて再び達成される。点Cまでの濃度の等温性増加(例えば、溶媒エバポレーションによってか、活性な因子のシード添加/添加による)は、再び準安定性の限界に達するまで、この溶液を準安定領域に移動させる。準安定限界(metastable limit)を超える場合、この溶液は、不安定となり、そして直ちに自発的な固相の形成を生じる。
【0073】
等温的に得られた値(ΔCmax)T=C*3−C*2は、多重熱的に得られたΔTmax=T3−T2の対応する値と異なり得る。準安定区域の境界線に近づく場合、固体粒子の形成のために必要な時間は、準安定限界に達するまで、減少する。
【0074】
多重熱プロセスにおいて、冷却速度は、制御速度にて行われて、粒子のサイズおよび形を制御する。制御速度によって意味されるものは、約0.2℃/分〜約50℃/分であり、より好ましくは0.2℃/分〜30℃/分である。変化の速度は、一定であるかまたは線形、非線形であるか、間欠性であるか、またはプログラム化された速度(複数の相のサイクルを有する)であり得る。この粒子は、この溶液中のPSEAから分離され得、そして以下に考察されるように洗浄されることによって精製され得る。
【0075】
本発明は、活性な因子が、液体状態から固体状態になる一方で、PSEAおよび溶媒は、相変化を受けず、そして液体のままである場合、相変化を生じるために活性な因子の濃度、PSEAの濃度、温度またはこれらの任意の組み合わせを調整する工程を企図する。相変化を増強するか、促進するか、制御するかまたは抑制するためにpH、イオン強度、重量オスモル濃度などを変化させる工程がまた、企図される。凝固点が比較的高いか、または凝固点が、相転移温度を上回る溶液に関して、この溶液は、系を凝固させずにこの系における相変化を可能にするためにこの系の凝固点を下げる凝固点降下剤(例えば、プロピレングリコール、スクロース、エチルレングリコール、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)または凝固点降下剤の水性混合物)を含む。このプロセスはまた、温度が系の凝固点以下に減少されるように行われ得る。本明細書中に記載されるプロセスは、特に、熱不安定性である分子(例えば、タンパク質)に適している。
【0076】
(任意の賦形剤)
本発明の微粒子は、1種以上の賦形剤を含み得る。これらの賦形剤は、さらなる特性(例えば、この微粒子もしくはこの活性な因子もしくはキャリア因子の増加した安定性、この微粒子からの活性な因子の制御された放出または生物学的組織によるこの活性な因子の改変された浸透)によって、この活性な因子またはこの粒子を染み込ませ得る。適切な賦形剤としては、炭水化物(例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール)、カチオン(例えば、Zn2+、Mg2+、Ca2+)、アニオン(例えば、SO42−)、アミノ酸(例えば、グリシン)、脂質、リン脂質、脂肪酸、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸またはそれらの塩(例えば、コール酸またはその塩(例えば、コール酸ナトリウム);デオキシコール酸またはその塩)、脂肪酸エステル、およびPSEAのポリマーとしての機能を下回るレベルで存在するポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。賦形剤が使用される場合、この賦形剤は、溶液の相図にあまり影響しない。
【0077】
(粒子を分離する工程および洗浄する工程)
本発明の好ましい実施形態において、上記微粒子またはミクロスフェアは、上記溶液中の相分離増強剤からこれらを分離することによって回収される。なお別の好ましい実施形態において、分離の方法は、液体媒体で微粒子またはミクロスフェアを含む溶液を洗浄することにより、この液体媒体において、活性な因子は、この液体媒体に溶解しないが、相分離増強剤は、この液体媒体に溶解する。いくつかの洗浄方法は、ダイアフィルトレーションによるか、遠心分離によって行われ得る。この液体媒体は、水性媒体または有機溶媒であり得る。低い水溶性を有する活性な因子に関して、この液体媒体は、水性媒体またはこの活性な因子の水溶性を減少させる因子(例えば、2価のカチオン)を含む水性媒体であり得る。高い水溶性を有する活性な因子(例えば、多くのタンパク質)に関して、有機溶媒またはタンパク質沈殿剤(例えば、硫酸アンモニウム)を含む水性溶媒が、使用され得る。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、上記微粒子またはミクロスフェアは、上記溶液中において相分離増強剤からこれらを分離することによって回収される。なお別の好ましい実施形態において、分離の方法は、液体媒体で微粒子またはミクロスフェアを含む溶液を洗浄することにより、この液体媒体において、活性な因子は、この液体の媒体に溶解しないが、相分離増強剤は、この液体媒体に溶解する。いくつかの洗浄方法は、ダイアフィルトレーションによるか、または遠心分離によって行われ得る。この液体の媒体は、水性媒体または有機溶媒であり得る。低い水溶性を有する活性な因子に関して、この液体の媒体は、水性媒体またはこの活性な因子の水溶性を減少させる因子(例えば、2価のカチオン)を含む水性媒体であり得る。高い水溶性を有する活性な因子(例えば、多くのタンパク質)に関して、有機溶媒またはタンパク質沈殿剤(例えば、硫酸アンモニウム)を含む水性溶媒が、使用され得る。
【0079】
液体媒体として使用するのに適切な有機溶媒の例としては、連続相に適するとして上記で特定されるような有機溶媒が挙げられ、そしてより好ましくは塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ペンタンなどが挙げられる。これらの溶媒のいずれかの混合物を使用することもまた、企図される。1つの好ましい混合物(blend)は、塩化メチレンまたは塩化メチレンとアセトンとの1:1の混合物である。これらの液体媒体は、例えば、凍結乾燥、エバポレーション、または乾燥による容易な除去のために、低い沸点を有することが好ましい。
【0080】
上記液体媒体はまた、超臨界流体(例えば、液体二酸化炭素またはその超臨界点に近い流体)であり得る。超臨界流体は、相分離増強剤(特に、いくつかのポリマー)に対して適切な溶媒であり得るが、タンパク質粒子に対しては非溶媒である。超臨界流体は、それ自体でか、または共溶媒と共に使用され得る。以下の超臨界流体が、使用され得る:液体CO2、エタン、またはキセノン。潜在的な共溶媒は、アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、水、または2−プロパノールであり得る。
【0081】
本明細書中に記載されるPSEAから上記微粒子またはミクロスフェアを分離するのに使用される液体媒体は、この液体媒体中の上記活性な因子の溶解度を減少させる因子を含み得る。この微粒子またはミクロスフェアの収率を最大化するために、この粒子がこの液体媒体中で最小限の溶解度を示すことが最も望ましい。いくつかのタンパク質(例えば、インスリン)に関して、溶解性の減少は、2価陽イオンの添加(例えば、タンパク質に対するZn2+)によって達成され得る。複合体を形成するために使用され得る他のイオンとしては、Ca2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+などが挙げられるが、これらに限定されない。複合体の溶解性は、水溶液中の複合体のダイアフィルトレーションを可能にするために十分低い。
【0082】
上記液体媒体はまた、1種以上の賦形剤を含み得、これらの賦形剤は、さらなる特性(例えば、これまでに議論したような微粒子および/または活性因子もしくはキャリア因子の増加した安定性、この粒子からの活性な因子の制御された放出、または生物学的組織によるこの活性な因子の改変された浸透)によって、この活性な因子またはこの微粒子を染み込ませ得る。本発明の別の形態において、この微粒子またはミクロスフェアは、溶液を含むPSEAから分離されない。
【0083】
(水性ベースのプロセス)
別の好ましい実施形態において、本発明の系の製造プロセスは、水性溶媒または水混和性溶媒を備える水性系の製造プロセスである。適切な水混和性溶媒の例としては、連続相について上記で特定された水混和性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。水性ベースのプロセスを使用する1つの利点は、この溶液が、緩衝化され得、そして活性な因子を保護するために生化学的な安定化を提供する賦形剤を含み得ることである。このことは、この活性な因子がタンパク質である場合に特に有利である。
【0084】
(予備製造された微粒子のマイクロカプセル化)
本発明の微粒子またはミクロスフェアは、マイクロカプセル化粒子を形成するためにマトリックスの壁形成(wall−forming)物質内にさらにカプセル化され得る。このマイクロカプセル化は、当該分野で公知の任意のプロセスによって達成され得る。好ましい実施形態において、本発明の微粒子またはミクロスフェアのマイクロカプセル化は、以下に記載されるような、乳化/溶媒抽出プロセスによって達成される。このマトリックスは、この活性な因子に徐放特性を与え得、この特性は、所望の治療用途に従って数分間から数時間、数日間または数週間持続する放出速度を生じる。このマイクロカプセル化微粒子またはマイクロカプセル化ミクロスフェアはまた、この活性な因子の遅延放出処方物を生成し得る。微粒子およびミクロスフェアを作製するさらなる方法は、本願中に示される。
【0085】
この乳化/溶媒抽出プロセスにおいて、乳化は、2つの不混和性の相(連続相および不連続相(これらは、分散相としても知られている))を混合してエマルションを形成することによって得られる。好ましい実施形態において、この連続相は、水層(すなわち水の相)であり、そしてこの不連続相は、有機相(すなわち油の相)であって、水中油(O/W)型エマルションを形成する。この不連続相は、微細な懸濁物または油中固体(S/O)相を形成する微細な分散のいずれかとして本発明の固体粒子の分散物をさらに含み得る。この有機相は、好ましくは水不混和性であるか、または部分的に水混和性の有機溶媒である。水相に対する有機相の重量の比は、約1:99〜約99:1であり、より好ましくは1:99〜約40:60であり、そして最も好ましくは約2:98〜約1:3であり、またはこれらの中の任意の範囲であるか、もしくは範囲の組み合わせである。好ましい実施形態において、水相に対する有機相の比は、約1:3である。本発明のこの局面は、油相が連続相を形成し、そして水相が不連続相を形成する、逆エマルションは、すなわち油中水型エマルション(W/O)の利用を、さらに企図する。このことは、2つより多い相を有するエマルション(例えば、油中水中油型(oil−in−water−in−oil)エマルション(O/W/O)または水中油中水型(water−in−oil−in−water)エマルション(W/O/W))の利用を、さらに企図する。
【0086】
本発明に対するこのバリエーションの好ましい実施形態において、乳化/溶媒抽出プロセスを使用するマイクロカプセル化のプロセスは、これまでに記載された方法および壁形成物質を含む有機相によって予備製造された(pre−fabricated)微粒子またはミクロスフェアを調製する工程で始まる。この予備製造された微粒子またはミクロスフェアは、壁形成物質の有機相中に分散されて、油相中に予備製造された微粒子またはミクロスフェアの分散物を含む油中固体型(S/O)相を形成する。好ましい実施形態において、この分散は、微粒子またはミクロスフェアおよび有機相の混合物をホモジナイズすることによって生成される。水性媒体は、この連続相を形成する。この場合において、水相でS/O相を乳化することによって形成されるエマルション系は、水中油中固体型(solid−in−oil−in−water)(S/O/W)エマルション系である。
【0087】
上記壁形成物質とは、個々か、または組み合わせて、マトリックスの構造の本質を形成し得る物質をいう。生物分解性壁形成物質が、好ましい(特に、注射可能な適用のために)。このような物質の例としては、ポリ−ラクチド/ポリ−グリコリドポリマー(PLGA’s)、ポリエチレングリコール結合体化PLGA(PLGA−PEG)、およびトリグリセリドのファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。PLGAまたはPLGA−PEGが使用される実施形態において、好ましくは、PLGAは、ポリ−グリコリドに対するポリ−ラクチドの、100:0〜0:100の比、より好ましくは約90:10〜約15:85の比、および最も好ましくは約50:50の比を有する。一般的に、ポリマー中のポリ−ラクチドに対するポリ−グリコリドの比が高ければ、マイクロカプセル化粒子は、より親水性であり、より速い水和およびより速い分解を生じる。種々の分子量のPLGAもまた、使用され得る。一般的に、ポリマー中のポリ−グリコリドおよびポリ−ラクチドの同じ比に関して、PLGAの分子量が高ければ、この活性な因子の放出は、よりゆっくりであり、そしてこのマイクロカプセル化粒子またはスフェアのサイズの分布は、より広くなる。
【0088】
マイクロカプセル化が実施される場合、水中油型(O/W)エマルションまたは水中油中固体型(S/O/W)エマルションの有機相(油相)中の有機溶媒は、水不混和性または部分的に水不混和性であり得る。「水不混和性溶媒」によって意味されるものは、1:1の比で水溶液と混合した場合(O/W)に、界面のメニスカスを形成する溶媒である。適切な水不混和性溶媒としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:炭素数が5以上である置換もしくは非置換の、直鎖状アルカン、分枝状アルカンまたは環状アルカン、炭素数が5以上である置換もしくは非置換の、直鎖状アルケン、分枝状アルケンまたは環状アルケン、炭素数が5以上である置換もしくは非置換の、直鎖状アルキン、分枝状アルキンまたは環状アルキン;芳香族炭化水素、完全か、または部分的にハロゲン化した炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、モノ−、ジ−もしくはトリ−グリセリド、ネイティブな油、アルコール、アルデヒド、酸、アミン、直鎖状シリコーンまたは環状シリコーン、ヘキサメチルジシロキサン、またはこれらの溶媒の任意の組み合わせ。ハロゲン化溶媒としては、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、ヒドロフルオロカーボン、塩素化ベンゼン(モノ、ジ、トリ)、トリクロロフルオロメタンが挙げられるが、これらに限定されない。特に適切な溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、キシレンおよび酢酸エチルである。「部分的に水混和性の溶媒」によって意味されるものは、1つの濃度において水不混和性であり、そしてより低い別の濃度においてにおいて水混和性である溶媒である。これらの溶媒は、水混和性が制限されており、そして自発的エマルションを形成し得る溶媒である。部分的に水混和性である溶媒の例は、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレンカーボネート、ベンジルアルコール、および酢酸エチルである。
【0089】
界面活性化合物は、例えば、有機相の湿潤特性を増加させるためにマイクロカプセル化の局面に関連して添加され得る。界面活性化合物は、水相、有機相、ならびに水性媒体および有機溶液の両方に対する乳化プロセス前、またはエマルションへの乳化プロセス後に添加され得る。界面活性化合物の使用は、カプセル化されていないか、または部分的にカプセル化された球状小粒子の数を減少させ得、このことは、放出の間の上記活性な因子の初期のバースト(burst)の減少を生じる。これらの界面活性化合物は、化合物の溶解性に依存して、有機相、または水相、または有機相および水相の両方に対して添加され得る。
【0090】
用語「界面活性化合物」によって意味されるものは、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または生物学的な界面活性分子のような化合物である。これらの界面活性化合物は、どのような場合であっても、約0.01重量%未満〜約30重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約10重量%、またはこれらの任意の範囲または範囲の組み合わせで、水相または有機相またはエマルションに含まれるべきである。
【0091】
適切なアニオン性界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ラウリル酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、硫酸アルキルポリオキシエチレン、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびそれらの塩、グリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸および他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)ならびにそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなど)。
【0092】
適切なカチオン性界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩酸アシルカルニチン、またはハロゲン化アルキルピリジニウム。アニオン性界面活性剤として、リン脂質が、使用され得る。適切なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵のリン脂質もしくは大豆のリン脂質またはそれらの組み合わせが挙げられる。これらのリン脂質は、塩であっても、脱塩されていてもよいし、水素化されていても部分的に水素化されていてもよく、天然か、半合成かまたは合成であってもよい。
【0093】
適切な非イオン性界面活性剤としては、以下が挙げられる:ポリキシエチルエチレン脂肪アルコールエーテル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Myrj)、ソルビタンエステル(Span)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポロキサミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および多糖類(デンプンおよびデンプン誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および非晶質セルロースが挙げられる)。本発明の好ましい形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマーであり、そして好ましくはプロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、商品名POLOXAMER(時にはPLURONIC(登録商標)ともいわれる)で販売され、そしてSpectrum Chemical and Rugerを含むいくつかの供給業者によって販売される。とりわけ、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、短いアルキル鎖を有するものが挙げられる。このような界面活性剤の一例は、BASF Aktiengesellschaftによって製造されるSOLUTOL(登録商標)HS 15(ポリエチレン−660−ヒドロキシステアレート)である。生物学的な表面活性分子としては、アルブミン、カゼイン、ヘパリン、ヒルジン、ヘタスターチまたは他の適切な生物適合性因子のような分子が挙げられる。
【0094】
本発明のマイクロカプセル化の選択の好ましい形態において、水相は、界面活性化合物としてタンパク質を含む。好ましいタンパク質は、アルブミンである。このタンパク質はまた、賦形剤として機能し得る。タンパク質が界面活性化合物でない実施形態において、他の賦形剤は、エマルション中に含まれ得、乳化プロセスの前または後のいずれかにおいて添加され得る。適切な賦形剤としては、糖類、二糖類、および糖アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい二糖類は、スクロースであり、そして好ましい糖アルコールはマンニトールである。
【0095】
さらに、チャネリング剤(channeling agent)(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))の使用は、最終生成物の水浸透速度を増加させ得る。水浸透速度を増加は、マトリックスが存在する場合、水和速度を改変することによって、マトリックスからの活性な因子の初期放出動態の改変、ならびにマトリックスの分解速度および分解依存性の放出動態の改変を生じる。カプセル化の間にチャネリング剤としてPEGを使用することは、PEGが相分離増強剤として使用される球状小粒子の製造の間の洗浄プロセスのうちの、除去工程部分について有利であり得る。さらに、連続相の塩分およびpHは、このポリマーおよび得られる微粒子またはミクロスフェアの性質に影響を及ぼすために変えられ得、この性質としては、マトリックスの充填密度、表面の電荷、ぬれ、空隙率、粘性、粒子サイズ分布、ならびにマトリックスからのカプセル化治療因子の初期のバーストおよび放出動態が挙げられる。連続相の塩分はまた、2つの相の混和性を減少させるために使用され得る。適切な塩としては、水溶性のリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、および炭酸塩、Tris、MES、HEPESが挙げられるが、これらに限定されない。塩が使用される実施形態において、塩濃度は、0M〜10Mの範囲であり、より好ましくは1mM〜1Mの範囲であり、および最も好ましくは20mM〜200mMの範囲である。pHは、1〜11の範囲であり、より好ましくは2.5〜9の範囲であり、そして最も好ましくは6〜8の範囲である。
【0096】
有機相(油相)中の微粒子またはミクロスフェアを分散させる工程の後、水性媒体(水相)の連続相は、例えば、均質化または超音波処理によって、この有機相の不連続相と激しく混合されて、未発達のマイクロカプセル化粒子の乳化小滴を含むエマルションを形成する。この水性の連続相は、乳化小滴からの有機溶媒の急な抽出を最小化するために、水相と有機相とを混合する前に、有機相に使用される有機溶媒を用いて飽和され得る。この乳化プロセスは、実施される場合には、混合物がその液体の性質を維持し得る任意の温度で行われ得る。エマルション安定性は、有機相または水相中の界面活性化合物の濃度の関数であるか、または界面活性化合物が乳化プロセス後にエマルションに添加される場合には、このエマルション中の界面活性化合物の濃度の関数である。これは、このエマルション系(未発達のマイクロカプセル化粒子)の小滴のサイズ、ならびにマイクロカプセル化粒子のサイズおよびサイズ分布を決定する因子の1つである。マイクロカプセル化粒子のサイズ分布に影響する他の因子は、連続相の粘性、不連続相の粘性、乳化の間のせん断力、界面活性化合物型および濃度、ならびに油/水の比である。
【0097】
乳化後、エマルションは、硬化媒体(hardening mediumu)中に移される。この硬化媒体は、未発達のマイクロカプセル化粒子から不連続相中の溶媒を抽出し、乳化小滴の近傍内の予備製造された微粒子またはミクロスフェアの周囲に、固形のポリマーマトリックスを有する固形のマイクロカプセル化粒子の形成を生じる。O/WまたはS/O/W系の実施形態において、この硬化媒体は、水性媒体であり、この水性媒体は、界面活性化合物、もしくは増粘剤、または他の賦形剤を含み得る。このマイクロカプセル化粒子は、好ましくは球状であり、そして約0.6〜約300μm、およびより好ましくは約0.8〜約60μmの粒子サイズを有する。さらに、好ましくは、このマイクロカプセル化粒子は、粒子サイズの狭い分布を有する。不連続相の抽出時間を減少させるために、加熱または減圧が、この硬化媒体に適用され得る。未発達のマイクロカプセル化粒子からの不連続相の抽出速度は、不連続相の迅速な除去(例えば、エバポレーション(沸騰効果))が、マトリックスの連続性の破壊を生じるので、最終的な固形のマイクロカプセル化粒子中の空隙率の程度において重要な因子である。
【0098】
乳化プロセスの好ましい実施形態において、乳化プロセスが実施される場合には、この乳化プロセスは、バッチプロセスの代わりに連続的な様式で行われる。図41は、このことに関して使用され得る連続的乳化反応器の設計を示す。
【0099】
カプセル化が実施される他の実施形態において、上記活性な因子の微粒子またはミクロスフェアをカプセル化する硬化した壁形成ポリマーマトリックスは、遠心分離および/または濾過(ダイアフィルトレーションを含む)によって、さらに回収され、そして水で洗浄される。残りの液相は、凍結乾燥またはエバポレーションのようなプロセスによってさらに除去され得る。
【0100】
微粒子またはミクロスフェアは、表面官能基の特性を制御することによって粒子の特性を標的化された特性に修正するために選択された高分子電解質の少なくとも1つ以上の層中にカプセル化され得る。このような微粒子は、粒子の表面の特性に影響を及ぼすために、反対の電荷のポリマー(ポリイオン)と共に水性媒体中に浸される。これらの粒子が、ζ電位測定によって決定されるような負の電荷を有する場合、このポリマーの第1の層は、正である。これらの粒子が、最初に正の電荷を有する場合、この第1のポリマー層は、負である。この第1の層の沈着は、水、緩衝液、またはいくつかの水混和性の有機溶媒を含む水溶液中で行われ得る。
【0101】
コロイド性の不安定なタンパク質微粒子の場合には、溶解性を減少させる他の因子が、導入され得る。溶解性を減少させる低分子量の因子/粘度増強因子(例えば、アルコール、グリセロールなど)およびポリマー(例えば、水溶性ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヘタスターチ、デキストランなど)は、この目的のために使用され得る。コーティング物質とのインキュベーションは、粒子の溶解性を制御するために、室温および、より低い温度にて行われ得る。
【0102】
粒子は、必要とされる量の時間(数分間〜数時間)の間、上記ポリマーと一緒にインキュベートされ得る。次いでコーティングされた粒子の懸濁物は、遠心分離またはダイアフィルトレーションのいずれかによって過剰な非結合性のポリマーから単離され得る。これらの粒子は、好ましくは水溶液または上記の溶解性を減少させる因子を含む溶液のいずれかにおいて、残留するポリマーから洗浄される。温度は、活性物質およびコーティング物質の溶解性に基づいて最適化される。
【0103】
洗浄工程が完了した後、反対の電荷を有するポリマーの次の層が、導入される。この手順は、これまでのサイクルにあるように繰り返され得る。沈着したポリマー層の数は、所望される用途に依存し得る。この数は、例えば、表面改変のための1つの層と、必要とされる溶解速度に依存する徐放用途のための10〜20の二重層とで変えられ得る。
【0104】
使用され得るポリマーとしては、以下の一覧が挙げられるが、これらに限定されない:ポリスチレンスルホネート(PSS)および塩酸ポリアリルアミン(PAH)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDA)、および生体適合性ポリマー(例えば、デキストラン硫酸、キトサン、硫酸キトサン、ポリリジン、ゼラチン、アルギナート、プロタミン、硫酸プロタミン、キサンタンガムなど)、およびまた荷電した脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなど)。
【0105】
交互吸着(alternative layer−by−layer)アプローチにおいて、ポリイオンの第1の層はまた、この系中に存在するポリマー(例えば、PEG)の除去を伴わずに、粒子の制御された沈殿の最後に添加され得る。さらに、脂質構造体(例えば、リポソーム)は、反対に荷電したポリマーによる交互の沈着において使用され得、そして荷電した脂質と非荷電の脂質との間の比は、この殻の透過性を最小限にするために最適化され得る。いくつかの場合では、2価のカチオン(例えば、亜鉛)の存在下において交互吸着アセンブリを行うことが好まれ得る。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
この実施例は、注入可能な抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの500μlバッチを調製するための基本的な手順を提供する。このモノクローナル抗体の500μlの10個のバッチは、エッペンドルフチューブにおいて以下のように調製される:
40mM酢酸アンモニウム(AA)緩衝液(pH=6.5)の調製。40mMのAA緩衝液は、1リットルの脱イオンH2Oに3.08グラムのAA(Spectrum)を溶解することによって調製される。このAAは、容易に溶解し、そして約6.4のpHを有する緩衝溶液を形成する。このpHを希釈水酸化アンモニウムによってpH=6.5に調整する。
【0107】
500mLの40mM AA緩衝溶液中の10% Poloxamer 188の調製。50グラムのPoloxamer 188(BASF)は、500mLの40mM AA緩衝液(工程1に記載されるような)に溶解される(ただし、pH調整は、この時点で必要ではない)。この量のPoloxamerの溶解は、数回の添加によって行われ得る。最終pHは、pH約6.4付近である。この溶液は、0.22フィルターを用いて濾過され、そして冷蔵で保持される。
【0108】
緩衝液の交換。2 PD10脱塩カラム(Amersham Biosciences)は、5mLのタンパク質に対して使用される。カラムの総容量は、3.5mLであり、そしてこれは、各2.5mLを超えない交換が推奨される。各カラムは、25mL未満の40mM NH4OAc緩衝液によってリンスされて、この緩衝液によってカラムが飽和される必要がある。その後、2.5mLのリン酸緩衝液中の抗第VIII因子が、このカラム中に挿入される。次いでさらに1mLのNH4OAc緩衝液が、挿入されて、このカラムを満たす。このタンパク質は、さらに2.5mLの40mM NH4OAc緩衝液を注射することによって収集される。
【0109】
好ましい透析カセットは、3〜12mLの総容量および10,000ダルトンのMWカットオフを有する1 Pierceであり、5mLの上記タンパク質に対する緩衝液を置換する。このカセットを、脱イオンH2Oと共に使用する前に、(例えば、18G1/2の針を有する5mL〜10mLの注射器を使用することによって)水和する。最初に、空気がこのカセット中に注射されて、メンブレンの壁が分離される。その後、このサンプルが、注射される。空気がこのカセットから引き抜かれて、より良好なサンプルとメンブレンとの接触が有される。最後に、フロート(float)がこのカセット上に添加され、そしてこのカセットは、低速で回転する。経験則として、それぞれの緩衝液交換は、少なくとも 10倍容量であるべきである。
【0110】
タンパク質濃度。タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を測定すること、および検量線によって決定される。必要に応じて、このタンパク質は、所望の作業濃度に従って緩衝液を含み得る。
【0111】
10% Poloxamer溶液のpHは、酢酸によってpH=6.0およびpH=6.1に調整される。5mLのこのタンパク質は、500μlの10個のバッチに分割される。その後、1000μLの40mM AA中の10% Poloxamer 188(pH=6.0)が、5個のエッペンドルフチューブに添加され、そして1000μLの40mM AA中の10% Poloxamer 188(pH=6.1)が、他の5個のエッペンドルフチューブに添加される。これらの溶液は、穏やかなボルテックスおよび手動での混合によって、十分に混合される。これらの溶液は、透明な状態〜わずかに濁った状態を呈するはずである。これらのサンプルは、ゆっくりと冷却を行うために、1時間〜2時間(約4℃)、インキュベートされる。これらのサンプルは、ドライアイス/エタノール混合物によって冷却され、そして一晩、凍結乾燥されるか、または−80℃の冷蔵庫中におかれて、全ての脱イオンH2Oが除去される。
【0112】
一旦全ての脱イオンH2Oが除去されると、1mLのMeCl2/5%アセトンが、各エッペンドルフチューブ中の乾燥サンプルに添加される。混合が進み、そして遠心分離が、6000RPM〜8000RPMで3分間行われる。この上清は、この遠心分離物から慎重に取り除かれ、そしてデカントされる。洗浄が、さらに2回繰り返される。
【0113】
最後の洗浄が完了された後、この上清はデカントされ、そしてさらなる溶媒は、粉末の懸濁物を回避するために、低濃度の、非常に穏やかなN2の流れを使用することによって除去される。この乾燥チューブは、凍結乾燥器中におかれて、残りの溶媒が除去され、そして抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアが、回収される。
【0114】
(実施例2)
この実施例は、エッペンドルフチューブにおける抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの500μlバッチの調製のために基本的な手順を提供する。
【0115】
40mM酢酸アンモニウム(AA)緩衝液(pH=6.0)の調製。40mMのAA緩衝液は、1リットルの脱イオンH2Oに3.08グラムのAA(Spectrum)を溶解することによって調製される。このAAは、容易に溶解し、そして約6.4のpHを有する緩衝溶液を形成する。このpHを希酢酸によってpH=6.0に調整する。
【0116】
500mLの40mM AA緩衝溶液中の15% Poloxamer 188の調製。75グラムのPoloxamer 188(BASF)は、500mLの40mM AA緩衝液(工程1に記載されるような)に溶解される(ただし、pH調整は、この時点で必要ではない)。この量のPoloxamerの溶解は、数回の添加によって行われ得る。最終pHは、pH約6.4付近である。この溶液は、0.22フィルターを用いて濾過され、そして冷蔵で保持される。
【0117】
緩衝液の交換。2 PD10脱塩カラム(Amersham Biosciences)は、5mLのタンパク質に対して使用される。カラムの総容量は、3.5mLである。各カラムは、25mL未満の40mM NH4OAc緩衝液によってリンスされて、この緩衝液によってカラムが飽和される。その後、2.5mLのリン酸緩衝液中の抗CD34が、このカラム中に挿入される。次いでさらに1mLのNH4OAc緩衝液が、挿入されて、このカラムを満たす。このタンパク質は、さらに2.5mLの40mM NH4OAc緩衝液を注射することによって収集される。3〜12mLの総容量および10,000MWのMWカットオフを有する1 Pierce透析カセットが使用されて、5mLのこのタンパク質に対して緩衝液を置換する。このサンプルが、注射される。フロートがこのカセット上に添加され、そしてこのカセットは、低速で回転するために使用される。
【0118】
タンパク質濃度は、280nmでの吸光度を測定すること、および検量線によって決定される。必要に応じて、このタンパク質は、所望の作業濃度に従い緩衝液によって希釈される。この手順のための作業濃度は、1.8mg/mlと決定される(最終濃度は、0.9mg/ml)。
【0119】
15% Poloxamer溶液のpHは、酢酸によってpH=5.8およびpH=5.9に調整される。5mLのこのタンパク質は、500μlの10個のバッチに分割される。500μLの40mM AA中の15% Poloxamer 188(pH=5.8)が、5個のエッペンドルフチューブに添加され、そして500μLの40mM AA中の15% Poloxamer 188(pH=5.9)が、他の5個のエッペンドルフチューブに添加される。
【0120】
これらの溶液は、穏やかなボルテックスおよび手動での混合によって、十分に混合され、これらの溶液は、透明な状態〜わずかに濁った状態を呈する。これらのサンプルは、1時間〜2時間(約4℃)、ボール中でインキュベートされ、ゆっくりとした冷却が行われる。
【0121】
これらのサンプルは、全ての脱イオンH2Oを除去するためにドライアイス/エタノール混合物によって急速に冷却され、そして一晩、凍結乾燥されるか、またはこれらのサンプルは、−80℃の冷蔵庫中におかれる。一旦全ての脱イオンH2Oが除去されると、1mLのMeCl2/5%アセトンが、各エッペンドルフチューブに添加され、次いで十分に混合され、そして6000RPM〜8000RPMで3分間遠心分離される。この上清は、デカントされ、この洗浄が、さらに2回繰り返される。
【0122】
最後の洗浄が完了された後、この上清はデカントされ、そしてさらなる溶媒は、低濃度の、非常に穏やかなN2の流れを使用して除去される。このほぼ乾燥したチューブは、凍結乾燥器中におかれて残りの溶媒が除去され、そして抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアが、回収される。
【0123】
(実施例3)
この実施例は、Poloxamerを溶媒として用い、冷却下でのミクロスフェア形成を伴う抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製を記載する。40mMリン酸緩衝液中の抗第VIII因子モノクローナル抗体(pH=7.0、5.3〜5.5の濃度)(塩化ナトリウムを含まず)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。抗第VIII因子モノクローナル抗体は、約150kDの分子量を有するマウスモノクローナル抗体であり、そして精製目的で使用される。5mLのこのモノクローナル抗体(5.3mg/mLの濃度)を、0.22を通して濾過し、そして透析カセットを使用して40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.5)に対して透析した。タンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。10%溶液のPoloxamer 188 NF(Lutrol F68)(BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能)を、pH=6.0で調製し、そして0.22ミクロンのフィルターによって濾過した。酢酸アンモニウムは、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)によって提供された。透析カセット「Slide−A−Lyzer」(10,000の分子量カットオフおよび3〜12mLのサンプル容量)は、Pierce(Rockford,IL)によって提供された。このモノクローナル抗体溶液の0.5mLのアリコートを、20個の1mLのミクロチューブに挿入した。1mLの10% Poloxamer溶液を、0.5mLの抗第VIII因子(5.3mg/mL)を含む各チューブに添加し、そしてこの溶液を、室温で穏やかに混合し、そして29℃で30分間インキュベートした。
【0124】
その後、これらの溶液を、4℃で1時間インキュベートした。冷却の間に、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して濁った。その後、ミクロスフェア中へのタンパク質の取り込み量を、以下の方法で決定した:このミクロスフェア懸濁物のアリコートを除去し、このミクロスフェアを、遠心分離によってこの溶液から分離し、そして上清中のタンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。インキュベーション後、これらのチューブを、急速冷凍し、そして凍結乾燥した。凍結乾燥後、これらの乾燥粉末は、抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアおよびポロキサマーを含んだ。
【0125】
このポロキサマーを、95%塩化メチレンおよび5%アセトンの1mLの溶液を各チューブに添加し、遠心分離し、そしてその上清を除去することによって除去した。この洗浄手順を、3回繰り返した。この湿ったペレットを、窒素ガスを使用して乾燥し、そして残りの溶媒を、減圧を使用して除去した。これらの乾燥粉末を、光学顕微鏡下で観察した。光学顕微鏡画像(図1)および偏光顕微鏡画像(図2)は、0.5〜5ミクロンのサイズ範囲の球状粒子を示す。これらのサンプルを、SEM(Hitachi S4800,Electron Microscopy Center,Northeastern University、Boston MA)に送った。
【0126】
抗第VIII因子抗体のミクロスフェアのサンプルを、SEM試料取り付け具に、両側が伝導性の炭素付着性タブ(double−sided carbon adhesive tab)を使用して取り付けた。白金/パラジウム 80:20の薄い(10〜15nm)伝導層を、Denton DV−502真空エバポレーターを使用するエバポレーションを介してサンプルに適用した。その後これらのサンプルは、画像化され、そして2〜3kVの加速電圧を使用してHitachi S−4800 Field Emission SEM上にデジタル記録された。走査電子顕微鏡写真(図3)は、0.5〜6ミクロンのサイズ範囲の球状粒子を示す。
【0127】
偏光が等方性のサンプルを通過する場合、これらのサンプルは、全ての結晶軸が完全に等価であるので、サンプルがどのような方向を向いているのかにかかわらず、この偏光に対する効果を有さない。この効果は、完全消光または等方性消光(isotropic extinction)として公知であり、そしてこれは、高度な対称性を有する結晶(例えば、立方晶系)に対して起こる。非結晶質の、非晶質サンプルは、同じ挙動を与える。この偏光顕微鏡画像は、明るい円光に囲まれた暗い円としてミクロスフェアを示す。これらの画像は、サンプルの方向性に依存せず、そして球状の形および非晶質の構造を示す。
【0128】
(実施例4)
この実施例は、実施例3に従って調製された抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアのゲル電気泳動を示す。Tris−酢酸ゲル(3−8%、1.5mm×10ウェル)、Tris−酢酸SDS泳動緩衝液、NuPage LDSサンプル緩衝液、12個の分子量の標準のマーカー、および「SimplyBlue SafeStain」乾燥溶液は、Invitrogen(Carlsbad,CA)によって提供された。ゲル電気泳動は、タンパク質およびペプチドの分離および特徴付け、ならびにタンパク質の分子量の推定のために、広範に使用される分析技術である。
【0129】
抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアを、実施例3に従って調製し、そして37℃にてリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)に溶解した。40μlの3つの異なるバッチを、並行して泳動した。40μlのネイティブな抗第VIII因子溶液を、コントロールとして、並行して泳動した。泳動時間は、1時間であり、そして電圧は、150mVであった。
【0130】
図4は、2つのゲルの画像を示し、これらの画像は、この溶解したモノクローナル抗体(ミクロスフェアから放出された)が、ネイティブなモノクローナル抗体と比較した場合に、ゲル中で同様に移動したことを示す。全てのサンプルは、150kDの分子量マーカーまで移動し、このことは、タンパク質サイズが、処方の結果として変化しなかったことを示す。染色強度もまた同様であり、そしてゲルのウェル中の染色物は、存在せず、このことは、分子の凝集が最小限であることを示す。
【0131】
(実施例5)
この実施例は、PEG/PVPを溶媒として用い、加熱下でのミクロスフェア形成を伴う抗第VIII因子モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製を記載する。Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)の40mMリン酸緩衝液(塩化ナトリウムを含まない)中の抗第VIII因子モノクローナル抗体を、ミクロスフェア形態中においた。100mM酢酸ナトリウム緩衝液中の25% PEG/PVP(w/v)溶液(pH=5.6)を、3350ダルトンのポリエチレングリコール(PEG)、40,000ダルトンのポリビニルピロリドン(PVP)および酢酸ナトリウム(Spectrum Chemicals(Gardena,CA)から入手可能)を使用して調製した。
【0132】
400μlの25% PEG/PVP溶液を、800μlの抗第VIII因子モノクローナル抗体溶液(5.3mg/mLの濃度)に室温で添加した。これらの溶液を、混合し、そして65℃で30分間インキュベートした。65℃でのインキュベート後、これらの溶液を、冷水中でのインキュベーションによって、約20℃まで急速に冷却(クエンチ)した。冷却の際、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して混濁した。この懸濁物を遠心分離し、そしてその上清を除去した。過剰なPEG/PVPを、脱イオン水で洗浄することによって除去した。
【0133】
図5は、この実施例の手順に従って調製されたミクロスフェアの走査電子顕微鏡画像を示す。このミクロスフェアのサンプルを調製し、そしてAMRAY AMR−1000走査電子顕微鏡(Electron Microscopy Center,Northeastern University,Boston,MA)によって分析した。このサンプルを、炭素ベースの付着を使用する炭素タブ上に貼り付け、そしてSEM試料位置に取り付けた。このサンプルを、白金/パラジウム 80:20の薄い被膜によって減圧下でコーティングした。図9に示した走査電子顕微鏡写真は、1〜3μmのサイズ範囲の球状粒子を示す。
【0134】
レーザー光散乱による粒子サイズ分布(Beckman Coulter LS 230、Miami FL)を、この実施例に従って調製したミクロスフェアの水性懸濁物に対して行った。この粒子サイズの分布は狭く、90%を超える粒子が、2μmより小さかった。さらに、数、表面積、および体積による粒子サイズ分布を重ね合わせ、これは、全ての粒子が、明らかな凝集物を有さずに、ほぼ同じサイズであること示す。図6を参照のこと。
【0135】
(実施例6)
この実施例において、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアを、Poloxamer溶媒を用いて調製し、そして冷却を、ミクロスフェア 形成において使用した。抗CD34モノクローナル抗体は、約146kDの分子量を有するマウスIgG1λモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、Isolex(登録商標)300 Magnetic Cell Selection SystemおよびIsolex(登録商標)300i Magnetic Cell Selection System(Baxter Healthcare Corporation)と組み合わせて、細胞外の治療(例えば、幹細胞の選択)に使用される。幹細胞選択システムおよび幹細胞処理は、CD34ネガティブな腫瘍を有する患者における骨髄機能廃絶療法後の造血再構築が意図される、CD34+細胞が豊富な集団を得るために、自己の末梢血前駆細胞(PBPC)産物を加工するのに適用される。
【0136】
0.15M塩化ナトリウムおよび0.001% Tween 80を含む0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液中の抗CD34モノクローナル抗体(pH=5.5および2.3〜2.5mg/mLの濃度)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。5mLのこのモノクローナル抗体(2.2mg/mLの濃度)を、0.22μmを通して濾過し、そして40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.0)に対して透析した。Poloxamer 188 NF(Lutrol F68)(BASF Corporation(Florham Park,NJ)から入手可能)の15%溶液(この溶液は、pH=6.0である)を調製し、そして0.22μmのフィルターによって濾過した。酢酸アンモニウムは、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)によって提供された。透析カセット「Slide−A−Lyzer」(10,000の分子量カットオフおよび3〜12mLのサンプル容量)は、Pierce(Rockford、IL)によって提供された。このモノクローナル抗体溶液の0.5mLのアリコートを、20個の1mLのミクロチューブに挿入した。0.5mLの15% Poloxamer溶液を、0.5mLの抗CD34(2.0mg/mL)を含む各チューブに添加し、そしてこの溶液を、室温で穏やかに混合し、そして29℃で30分間インキュベートした。
【0137】
その後、これらの溶液を、4℃で1時間インキュベートした。冷却の間に、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して濁った。その後、ミクロスフェア中へのタンパク質の取り込み量を、以下の方法で決定した:このミクロスフェア懸濁物のアリコートを除去し、このミクロスフェアを、遠心分離によってこの溶液から分離し、そして上清中のタンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。インキュベーション後、これらのチューブを、急速冷凍し、そして凍結乾燥した。凍結乾燥後、これらの乾燥粉末は、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアおよびポロキサマーを含んだ。
【0138】
このポロキサマーを、95%塩化メチレンおよび5%アセトンの1mLの溶液を各チューブに添加し、次いで遠心分離し、そしてその上清を除去することによって除去した。この洗浄手順を、3回繰り返した。これらの湿ったペレットを、窒素ガスを使用して乾燥し、そして残りの溶媒を、減圧を使用して除去した。これらの乾燥粉末を、光学顕微鏡下で観察し、そしてサンプルを、SEMに送った。光学顕微鏡画像(図7)は、0.5〜5ミクロンのサイズ範囲の球状粒子を示す。抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの走査電子顕微鏡写真を、上記の実施例4に記載されるように観察した(図9)。
【0139】
空力学的な飛行時間測定(TSI Aerosizer)によって粒子サイズ分布を、この実施例に従って調製した抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの5mgの乾燥粉末に対して行った。数によるこの粒子サイズの分布は狭く、1.3μmの空気動力学的直径の平均サイズを伴い、95%の粒子が、3.6μmより小さかった(図10)。
【0140】
(実施例7)
実施例6の抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの立体配座安定性もまた、モニタリングした。実施例6に記載されるような条件において、40mMの酢酸アンモニウム緩衝液中の1.5mLの抗CD34(pH=6.0および1.6mg/mLの濃度)を、40mM酢酸アンモニウム(25℃でpH=6.0)中の1.5mLの15%ポロキサマーと混合した。3μLの蛍光色素8−アニリノナフタレン−1−スルホン酸(sulphonic acid)(ANS)の10mM溶液を添加した。この溶液を穏やかに混合して、蛍光測定用セルに移した。
【0141】
抗CD34抗体の立体配座安定性を、タンパク質のトリプトファン残基およびチロシン残基の内因性の蛍光ならびにANS色素の外因性の蛍光を使用することによってモニタリングした。蛍光測定用セル中の粒子の形成後に、250nmにおける光励起の弾性散乱の500nmにおける第2のオーバートーン(overtone)の検出を使用した。この実施例を、Peltier−耐熱性マルチセルホルダーアクセサリーを備えたCary Eclipse Biomelt蛍光分光光度計を使用して行った。このサンプルを、25℃で1分間インキュベートし、1分間あたり0.06℃の割合で31℃まで加熱し、1分間あたり5℃の割合で2℃まで冷却し、そしてこの温度で1時間インキュベートした。コントロールサンプルは、40mM酢酸アンモニウム(pH=6.0)中の10μM ANS、7.5%ポロキサマー(pH=6.0)、および40mM酢酸アンモニウム(pH=6.0)中の10μM ANSを含む0.8mg/mLの抗CD34モノクローナル抗体を含んだ。
【0142】
図12は、抗CD34モノクローナル抗体の立体配置の安定性の蛍光モニタリング結果を示す。蛍光のデータは、このタンパク質の立体配座が、ミクロスフェア形成の間にインタクトなままであったことを支持する。
【0143】
(実施例8)
この実施例に従って、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアを、Poloxamer溶媒またはPEG/PVP溶媒によって調製し、そしてこの調製に加熱を組み込んだ。0.15M塩化ナトリウムおよび0.001% Tween 80を含む0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液中の抗CD34モノクローナル抗体(pH=5.5および2.3〜2.5mg/mLの濃度)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。2.5mLのサンプル容量の脱塩カラム(Amersham Bioscience(Piscataway、NJ)から入手可能)を使用して、40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.3)(Spectrum Chemicals、Gardena、CA)に対して5mLの抗CD34モノクローナル抗体を透析した。タンパク質濃度を、280nmの光学密度における吸光度を測定することによって決定した。このモノクローナル抗体溶液の0.5mLのアリコートを、10個の1mLミクロチューブ中に挿入し、そして15%Poloxamer 188 NF(Lutrol F68、BASF Corporation,Florham Park,NJ)の0.3mLアリコートを、0.5mLの抗CD34(2.1mg/mL)を含むチューブに添加した。この溶液を、室温で穏やかに混合し、そして70℃で30分間インキュベートした。
【0144】
70℃でのインキュベーション後、この溶液を、冷水中でのインキュベーションによって23℃まで急速に冷却(クエンチ)した。冷却の際、この透明な溶液は、モノクローナル抗体から構成されるミクロスフェアを形成して混濁した。この懸濁物を遠心分離し、そしてその上清を除去した。過剰なポロキサマーを、脱イオン水で洗浄することによって除去した。光学顕微鏡画像(図8)は、0.5〜5μmのサイズ範囲の球状粒子を示す。
【0145】
(実施例9)
この実施例において、溶媒としてPEG/PVPを用い、そして冷却下でのミクロスフェア形成を伴う抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製が、記載される。0.15M塩化ナトリウムおよび0.001% Tween 80を含む0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液中の抗CD34モノクローナル抗体(pH=5.5および2.3〜2.5mg/mLの濃度)は、Baxter Healthcare Corporation(Bioscience Division,Hayward,CA)によって提供された。3350Daのポリエチレングリコール(PEG)、40,000Daのポリビニルピロリドン(PVP)および酢酸ナトリウムは、全てSpectrum Chemicals(Gardena、CA)によって提供された。
【0146】
l00mM酢酸ナトリウム緩衝液中の25% PEG/PVP溶液(pH=5.6)を、調製し、そして0.22μmのフィルターによって濾過した。5mLのこのモノクローナル抗体(2.2mg/mLの濃度)を、0.22μmのフィルターによって濾過し、そしてPierce(Rockford,IL)によって提供された透析カセット「Slide−A−Lyzer」(10,000の分子量カットオフおよび3〜12mLのサンプル容量)を使用して透析した。このモノクローナル抗体を、40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH=6.0)に対して透析した。その後、200μlの25% PEG/PVP溶液(w/v)を、500μlの抗CD34モノクローナル抗体(2.0mg/mLの濃度)に添加し、そしてこの溶液を、室温で穏やかに混合し、そして29℃で30分間インキュベートした。このプロセスは、実施例6に記載されるように継続するが、この工程は、95%塩化メチレン/5%アセトン溶液を用いた洗浄によって、ポロキサマーとは反対にPEG/PVPを除去するためであった。
【0147】
(実施例10)
この実施例は、実施例6に従って調製されたモノクローナル抗体のミクロスフェアの粉末X線回折(XRPD)を示す。高解像度粉末X線回折(XRPD)分析を、Cu Kα放射線(radition)(SSCI、West Lafayette,IN)を使用した長い高精度焦点のX線管を備えるShimadzu XRD−6000 X線粉末回折計を用いて得た。
【0148】
この管の電圧、およびアンペア数を、それぞれ、40kVおよび40mAに設定した。発散スリットおよび散乱スリットを、1°に設定し、そして受光スリットを、0.15mmに設定した。あるいは、発散スリットおよび散乱スリットを、0.5°に設定し、そして受光スリットを、0.15mmに設定した。回折される放射線を、NaIシンチレーション検出器によって検出した。1〜20° 2θの、1分間あたり0.5°でのθ〜2θの連続的スキャン(0.02ステップあたり4.8秒)を、使用した。シリコーン標準を分析して、この機器の調整を確認した。データを、収集し、そしてXRD−6000 v.4.1を使用して分析した。ヘキサトリアコンタン:シリコーンの80:20混合物からなる低角度標準を実行し、良好に定義される「d」値について、より低い角度におけるこの機器の高解像度を実証した。
【0149】
図11は、抗CD34モノクローナル抗体のミクロスフェアおよびヘキサトリアコンタン:シリコーンの80:20混合物のXRPDパターンを示す。ヘキサトリアコンタン:シリコーンの混合物のXRPDは、結晶状態を示す独特のピークを有する一方で、抗体ミクロスフェアのXRPDパターンは、連続的であり、そして明確なピークを有さず、このことは、非晶質の、非結晶質状態の典型である。
【0150】
【化2】
この結果は、高濃度のこれらのタンパク質ミクロスフェアが、吸引され得、そして首尾よく10ポンドのハム片中に注射され得ることを示す。
【0151】
(実施例11)
抗CD34を、本発明に従って(実施例2にほぼ従って)ミクロスフェア中に処方した。このミクロスフェアを、表Iに示す濃度にて5% PEG 3350の溶液中に懸濁した。懸濁したミクロスフェアのある容量を、注射器中に吸引し、そして25ゲージの注射可能の針を通して4ポンドの市販のブタ肩肉中に送達した。それぞれの注射を、目詰まりせずに20秒以下で行った。この実施例における注入能力の結果は、25ゲージの針を通して注射器中にこのミクロスフェア懸濁物を吸引し、そして注射器の内容物をこのブタに完全に注射する能力を示し、この結果は、表Iに記録される。
(表I)
【0152】
【表1−1】
表Iに報告した結果は、高濃度のこれらのタンパク質ミクロスフェアが、細い(25ゲージ)針の中に吸引され、そしてそこから首尾よく注射され得ることを示す。このことは、皮膚を通し、そして筋肉中への、皮下環境における注射性能の徴候を提供する。
【0153】
(実施例12)
90重量%より多い組換えヒトインスリンを含むインスリンミクロスフェアを、本発明に従うミクロスフェア中に処方した。このインスリンミクロスフェアを、表Iに示す濃度で5% PEG 3350の溶液中に懸濁した。1mLの懸濁したミクロスフェアを、注射器中に吸引し、そして28ゲージのインスリン針を通して10ポンドの市販のスモークハム中に送達した。それぞれの注射は、目詰まりせずに20秒以下で行った。この実施例における注射器能力の結果は、28ゲージの針を通して注射器中にこのミクロスフェア懸濁物を吸引する能力を示し、そしてこの実施例における注射性能は、注射器の内容物をこのハムに完全に注射する能力を示す。この結果は、表Iに記録される。
(表1)
【0154】
【表1−2】
表Iに報告した結果は、高濃度のこれらのタンパク質ミクロスフェアが、細い(28ゲージ)針の中に吸引され、そしてそこから10ポンドのハム片に首尾よく注射され得ることを示す。この後者の工程は、皮下環境における注射性能のおおまかな徴候を提供する。300mg/mlの注射を、5.8ニュートンの力で行った。
【0155】
(実施例13)
インスリンの微粒子またはミクロスフェアは、一般的方法によって調製される。16.67%のPEG 3350を含むpH5.65(0.033M酢酸ナトリウム緩衝液)で緩衝化した溶液を、調製した。亜鉛結晶性インスリンの濃縮されたスラリーを、撹拌しながらこの溶液に添加した。最終的な溶液中のインスリン濃度は、0.83mg/mLであった。この溶液を、約85℃〜90℃に加熱した。このインスリンの結晶は、この温度で5分以内に完全に溶解した。インスリン球状小粒子は、溶液の温度が制御した速度で減少する場合、約60℃で形成し始めた。PEGの濃度が増加するにつれて、インスリン球状小粒子の収量は、増加した。このプロセスは、1.4μmの平均を有する種々のサイズ分布を伴って、微粒子またはミクロスフェアを産生した。
【0156】
形成されたインスリンの微粒子またはミクロスフェアを、このミクロスフェアが溶解しない条件下でダイアフィルトレーションを介してこのミクロスフェアを洗浄することによって、PEGから分離した。このインスリンミクロスフェアを、Zn2+を含む水溶液を使用して上記懸濁物から洗浄した。このZn2+イオンは、インスリンの溶解性を減少させ、そして収量を減少させ、そしてミクロスフェアの凝塊形成を生じる溶解を防止する。
【0157】
(実施例14)
本発明はまた、本発明の好ましい注入可能な送達経路に特に適した、α−1−抗トリプシン(AAT)の球状小粒子を調製するために使用され得る。AATは、約44kDaの分子量を有する。この実施例は、AAT球状小粒子のジャケット付カラムバッチの調製(10〜300mgの規模)について報告する。
【0158】
16%のPEG 3350および0.02%のPluronic F−68を含む10mM酢酸アンモニウムによってpH6.0に緩衝化した溶液を、ジャケット付ビーカー中で磁性撹拌子を用いて混合し、そして30℃に加熱した。このビーカーの温度を、循環式の水浴を使用して制御した。組換えAAT(rAAT)の濃縮溶液を、撹拌しながらこの溶液に添加し、そしてそのpHを6.0に調整した。最終的な溶液中のrAAT濃度は、2mg/mlであった。rAATは、この溶液の組成におけるこの温度で完全に溶解した。この容器の全内容物を、ジャケット付カラムに移し、そして25〜30℃に加熱した。このカラムのためにこの循環式の水浴を、−5℃まで降下するように設定した。このカラムおよび内容物を、1分間あたり約1℃の割合で、約4℃の温度まで冷却した。このrAAT球状小粒子は、この冷却工程の間に形成した。このミクロスフェア懸濁物を、ガラス結晶皿中で凍結させ、そして凍結乾燥して、水および緩衝液を除去した。
【0159】
凍結乾燥後のタンパク質球状小粒子からPEGを抽出するために、PEG/タンパク質の固形物を、塩化メチレン(MeCl2)で洗浄した。利用した別の洗浄用媒体は、塩化メチレン:アセトン 1:1、または塩化メチレン:ペンタン 1:1であった。この洗浄手順を、最初の容量の洗浄で合計3回繰り返した。最終的なペレットを、小さい容量のアセトンまたはペンタンに懸濁し、そして窒素ガスに直接曝すことによってか、またはロータリーエバポレーションによってかのいずれかで乾燥した。
【0160】
(実施例15)
この実施例において、AAT球状小粒子(200〜2000mgの規模)は、ジャケット付容器バッチの調製である。この型の調製を、ジャケット付カラムと同じであるが、より大きい容量に適合し得る処方の組成物を使用して行い、そしてこの調製は、よりスケールアップに適していた。この規模において、この処方物を、ジャケット付容器(通常は500〜1000ml)中のA字型のパドル型インペラー(A−shaped paddle style impeller)によって、75rpmで混合し、そして30℃まで加熱した。この容器の温度を、循環式の水浴を使用して制御した。同じ容器中の溶液を保持しながら、水浴の供給源を、30℃のバス〜2℃のバスに切り替えた。この容器および内容物を、1分間あたり約1℃の割合で、4℃の温度まで冷却した。このrAAT球状小粒子は、この冷却工程の間に形成した。この温度を、熱電対を使用してモニタリングし、そしてこの懸濁物が4℃に達したとき、この懸濁物をこの温度付近で、さらに30分間保持した。保持工程の後、この球状小粒子の懸濁物を、約4℃にてダイアフィルトレーションを介して濃縮して、約75%のポリマーおよび約75%の容量を取り除いた。残った球状小粒子の懸濁物を、予め冷却した凍結乾燥トレイ中に薄い層として凍結し、そして凍結乾燥して、水および残った緩衝液を除去した。
【0161】
このタンパク質球状小粒子を、有機溶媒と共に遠心分離することによって(実施例18に記載されるように)か、または超臨界流体(SCF)抽出によってかのいずれかで、残りの乾燥したポリマーから分離した。SCF抽出のために、この乾燥した物質を、CO2によって(室温で)2500psiまで加圧される高圧抽出チャンバー中に移した。一旦作動圧力に達すると、エタノールは、70:30のCO2:エタノール混合物として吸気口の流体の流れに導入された。この超臨界流体は、この球状小粒子を残したままこのポリマーを溶解した。このプロセスの終結において、このシステムは、エタノールを流され、そしてゆっくりと圧力が下げられた。
【0162】
(実施例16)
球状小粒子を、実施例15および16に記載されるように製造し、そして歩留まりを決定した。冷却プロセスを完了した後、この懸濁物の少量のアリコートを、取り除き、そしてこれを、0.2μmの注射器フィルターによって濾過して、固体の球状小粒子を除去した。溶液中に残っているrAATであるこの濾過物の吸光度を、UV分光光度計を使用して280nmにおいて決定した。その後このrAAT濃度を、標準曲線から計算した。この%の変換を、以下:
【0163】
【表2】
のように計算した。
【0164】
上記の表に示されるように、高い%のAATタンパク質を、プロセスの規模に関係なく、球状小粒子に変換した。
【0165】
(実施例17)
この実施例は、異なるプロセスの規模のエアロサイザー(Aerosizer)データにおける、AAT粒子の粒子サイズ分布を示す。最終的なAATの乾燥粉末球状小粒子のサンプルを、飛行時間測定によって粒子サイズを測定するTSI Aerosizer 3225において分析した。これらの測定値から、異なる割合の体積粒径を、このAAT球状小粒子の粒子サイズ分布を実証するために計算し、そしてこの体積粒径を、本発明の方法以外の方法によって製造された粒子と比較するために使用した。
【0166】
【表3】
5〜10mgのサンプルを、ゲルカプセル中に秤量し、そして1分間あたり60リットルの流速(LPM)にてCyclohaler Dry Powder Inhalerを使用するAndersen Cascade Impactor中に適用した。球状小粒子を、全ての衝突または段階から回収し、0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解し、そして逆相HPLCを使用して定量化した。このデータを分析し、そして幾何標準偏差(GSD)を、United States Pharmacopeia(USP)に記載されるように計算した。このデータは、狭いサイズ分布を実証した。
【0167】
【表4】
上に示される全ての分布パラメーターは、本発明の製造方法から生じる優れた粒子サイズ分布を実証した。
【0168】
(実施例18)
この実施例は、AATの生物活性の保持を示す。比活性を決定するために、上記rAAT球状小粒子を、0.2M Tris−HCl(pH8.0)に室温で溶解した。得られた溶液を、C末端にp−ニトロアニリド基を含む合成ペプチドを加水分解する、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)の能力を阻害するrAATの性能を測定するアッセイによって分析した。次いでrAAT球状小粒子の同じ溶液を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイを使用してタンパク質濃度についてアッセイした。コントロールのrAAT出発物質溶液もまた、両方のアッセイによって分析した。この活性のアッセイは、1サンプルあたり1mg/mlのタンパク質の濃度に基づく活性を決定するために開発されたので、この活性の値を、BCAによって決定される実際のタンパク質濃度に基づいて補正し、比活性値を得た。
【0169】
【表5】
従って、この比活性は、AATの球状小粒子中への製造後の、生物活性の保持を実証した。
【0170】
(実施例19)
この実施例は、溶媒としてPEGまたはPoloxamerを用い、そして冷却下でのミクロスフェア形成を伴うヒト化モノクローナル抗体のミクロスフェアの調製を記載する。40mM酢酸アンモニウム緩衝液中の4mg/mLヒト化モノクローナル抗体(抗CD25モノクローナル抗体)の1mL溶液(pH=5.9)を、1mLのPEG 3350
Da(Spectrum Chemicals(Gardena、CA)から入手可能)の30%(w/v)溶液と水中で混合した。あるいは、この溶液を、1mLのポロキサマー 188 NF(Lutrol F68)(BASF Corporation(Florham Park、NJ)から入手可能)の30%(w/v)溶液と水中で混合した。この混合物を、35℃で10分間、水浴中でインキュベートし、次いで1分間あたり約0.7℃の割合で2℃まで冷却した。
【0171】
その後、このサンプルを、光学顕微鏡において、10×および100×の倍率で観察し、そしてこのサンプルは、いずれかのポリマーを使用した球状粒子の形成を示した。このミクロスフェアのほとんどは、約2ミクロンの直径であるようだが、より小さいものもあった。直径が5ミクロンより大きいミクロスフェアは、ほとんどなかった。
【0172】
(実施例20)
この実施例は、AATの構造的完全性の保持を示す。制御された相分離(CPS)技術の異なる重要な点の1つは、粒子形成の間に水性系を利用し、そして他の負荷を誘導する条件(例えば、上昇した温度、せん断など)を回避する穏やかな条件下での粒子の形成である。粒子工学の分野において、主要な関心事は、製造の間のタンパク質の安定性および保存安定性である。主な分解経路(例えば、酸化、アミド分解および特にタンパク質の凝塊形成)は、タンパク質処方物の副作用(免疫原性が挙げられる)の原因であると考えられる。従って、規制の関連事項は、最終的な粒子処方物における分解産物の非常に低いレベルを必要とする。HPLC、物理化学的特徴付け(例えば、CDおよびDSC)を、タンパク質の改変が形成の間に生じたか否かを決定するために利用した。
【0173】
円偏光二色性(CD)は、摂動に供されたタンパク質の構造上の変化の評価、または操作したタンパク質の構造の親タンパク質に対する比較のために最も一般的に使用される方法である。CD法は、タンパク質の折り畳み、ならびにタンパク質の二次構造および三次構造を評価している。
【0174】
二次構造は、「遠紫外」スペクトル領域(190〜250nm)におけるCD分光法によって決定され得る。これらの波長において、発色団は、それが正常に折り畳まれた環境中に位置する場合、ペプチド結合である。α−へリックス、β−シート、およびランダムコイル構造は、それぞれ、CDスペクトルの特徴的な形および強度を生じる。従って、任意のタンパク質中に存在するそれぞれの二次構造型のおおよその割合は、その遠紫外CDスペクトルを分析することによって、それぞれの構造の型についての分かれた複数のこのような参照スペクトルの合計として決定され得る。
【0175】
「近紫外」スペクトル領域(250〜350nm)におけるタンパク質のCDスペクトルは、三次構造の特定の局面に対して感受性であり得る。これらの波長において、発色団は、芳香族アミノ酸およびジスルフィド結合であり、そしてこれらが生成するCDシグナルは、タンパク質の三次構造全体に対して感受性である。250〜270nmの領域中のシグナルは、フェニルアラニン残基に起因し、270〜290nmのシグナルは、チロシンに起因し、そして280〜300nmのシグナルは、トリプトファンに起因する。ジスルフィド結合は、近紫外スペクトル全体にわたって広範な弱いシグナルを生じる。
【0176】
rAATストック溶液およびリン酸緩衝液中の球状小粒子(pH7.4、T=25℃、0.05mg/mLのタンパク質濃度)から放出されたAATの遠紫外CDスペクトルを、図13に示す。それぞれのスペクトルは、10回の走査の平均を示す。
【0177】
遠紫外CDスペクトルは、区別不能であり、AATの球状小粒子中への製造が、AATのその後の放出において、出発AAT物質の構造と同じ構造を有するAAT分子を生じたことを実証する。
【0178】
球状小粒子を、pH8.0の0.2M Tris−HClに溶解し、そして逆相HPLCによって分析した。出発rAATタンパク質のコントロール溶液と比較した場合、クロマトグラムの外見において明らかな違いは、存在しない。
【0179】
HPLCシステム:
HPLCカラム−Pheomenex Jupiter、5ミクロン、C4、300A、250×4.6mm
Waters Alliance 2965ポンプ/オートサンプラー
波長− 280nm
注射容量− 75ul
濃度の勾配:
移動相1:水中の0.1% TFA
移動相2:水中の90%(c/v)アセトニトリル中の0.085% TFA
実行時間− 60分間
流速− 1.0ml/分
DSCダイアグラムを、作製した。図15〜図25bを参照のこと。
【0180】
(実施例21)
この実施例は、AAT出発物質の保存安定性に対するAAT球状小粒子の保存安定性を報告する。球状小粒子を、室温および4℃における、1週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、ならびに12ヶ月間の保存後の、生物活性の保持について分析した(実施例17に記載されるアッセイを使用して)。(図17bおよび図17c)。このバルク物質(bulk material)は、透析し、次いで凍結乾燥したrAAT出発溶液である。それぞれの時点および保存状態に関して、二連のサンプルが存在し、これらを、それぞれ二連でアッセイした。
【0181】
(実施例22)
Dnase球状小粒子を調製した。DNaseは、約38kDaの分子量を有する。処方例:以下の溶液:(lmg/mlストックからの)0.18mg/ml DNase、(25%ストックからの)18.2% PEG 3350、(1Mストックからの)9mM酢酸アンモニウム(pH5.15)。この懸濁物を、−80℃の冷凍庫で冷却し、そして一旦凍結させ、この懸濁物を、マニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥し、次いでMeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。
【0182】
試みた最初の濃度は、0.lmg/ml DNaseおよび20% PEG 3350であった。37℃から0℃までの冷却を試みた後に、沈殿を得ることはできなかったが、別の量のDNaseを添加して、上記の濃度を得た。この溶液を、−80℃の冷凍庫で冷却し、そして一旦凍結させ、この溶液を、マニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥した。MeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。試みた最初の濃度は、0.lmg/ml DNaseおよび20% PEG 3350であった。37℃から0℃までの冷却を試みた後に、沈殿を得ることはできなかったが、別の量のDNaseを添加して、上記の濃度を得た。この溶液を、−80℃の冷凍庫で冷却し、そして一旦凍結させ、この溶液を、マニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥した。MeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。(図38、図39)。
【0183】
活性(DNase−Iについての、Sigmaから購入したDNA−メチルグリーンを使用したアッセイ)。出発物質についての理論上の活性は、775Ku/mgのタンパク質として記載される。ストック溶液を、0.145mg/mlのタンパク質であると決定した。この濃度を、0.0199mg/mlの最終濃度になるように5mlに希釈した。この活性は、775Ku/mg*0.0199mg/ml=15.46Ku/mlとなるはずである。
【0184】
【化3】
理論上の活性に対する比較:球状小粒子/理論上の活性*100%=活性の%:
14.55Ku/ml / 15.46Ku/ml*100%=94.1%。
【0185】
(実施例23)
スーパーオキシドジスムターゼ(約32kDaの分子量)球状小粒子を、調製する。(5mg/mlストックからの)0.68mg/ml SOD、(31.25%ストックからの)24.15% PEG 3350、(1Mストックからの)9.lmM 酢酸アンモニウム、最終pH=4.99の溶液を水酸化アンモニウムおよび酢酸で調整した。これらの溶液を、40℃から0℃まで、50分間かけて冷却(1分間あたり約0.8℃)し、そして沈殿は、約25℃で開始した。この懸濁物を、液体窒素中で急速冷凍し、そしてマニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥し、次いでMeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。(図40、図41)。
【0186】
40℃から0℃まで、50分間かけて冷却(1分間あたり約0.8℃)した。沈殿は、約25℃で始まった。液体窒素中で急速冷凍し、そしてマニホールド式凍結乾燥器上で凍結乾燥した。MeCl2/アセトンを伴う遠心分離によって洗浄した。球状小粒子が、形成され、そして大部分のアセトンが保持された。
【0187】
(実施例24)
サブチリシン(約35,230ダルトンの分子量)球状小粒子は、非ポリマー性相分離増強剤を使用して調製される。最初の系の連続相は、非ポリマー性相分離増強剤を含み、冷却の間にタンパク質の相分離を誘導し得る。サブチリシン球状小粒子は、任意のポリマーの使用を伴わずに、プロピレングリコールとエタノールとの混合物を使用して、本発明に従って形成され得る。この系において、プロピレングリコールは、凝固点降下剤として機能し、そしてエタノールは、相分離増強剤として機能する。プロピレングリコールはまた、球状小粒子の球状形状の形成を支援する。
【0188】
35%プロピレングリコール中の20mg/mLサブチリシン溶液−10%ホルメート−0.02% CaCl2を、調製した。次いで35%プロピレングリコール−サブチリシン溶液を、混合しながら67%エタノールに加えた。この溶液は、室温で透明なままであった。しかし、−20℃で1時間冷却した場合、粒子の懸濁物を形成した。遠心分離してこの粒子を収集し、そして90%エタノールで洗浄した後、コールター粒径分析を、懸濁物の流体として無水エタノールを使用して行った。この粒子は、2.2ミクロンの平均直径を有する分離した粒子に一致するコールターの結果を与え、そして95%の粒子は、0.46ミクロンと3.94ミクロンとの間であった。光学顕微鏡の評価は、実質的に球状の粒子を示すこれらの結果を裏付けた。この粒子のSEM分析は、コールターの結果を裏付けた。
【0189】
溶液中のサブチリシンのサブチリシン球状小粒子への変換後におけるサブチリシン酵素活性の保持を、比色定量アッセイによって確認した。球状小粒子についての活性の理論上の総ユニットは、冷却前のエタノール−サブチリシン−プロピレングリコール溶液においてアッセイしたサブチリシンの総ユニット数から、(サブチリシン粒子の分離後の)上清に見出される総ユニット数を差し引くことによって計算した。%として表わされる理論上のユニット数で除算されたサブチリシン球状小粒子について見出される実際の総ユニット数は、粒子形成後のサブチリシン活性の保持を表わす。この計算によって、理論上のサブチリシン活性の107%が、このサブチリシン球状小粒子の形成後に保持された。
【0190】
本明細書中に開示される実施形態は種々の形態において具現化され得る本発明の単なる例示であることが、理解されるべきである。従って、本明細書中に開示される具体的な詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に、特許請求の範囲の基礎、および事実上、任意の適切な様式で本発明を様々に利用する当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。記載された本発明の実施形態は、本発明の原理のいくつかの適用の例示であり、そして本明細書中で個別に開示されるか、または特許請求される特徴の組み合わせを含む改変は、なされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2012−224645(P2012−224645A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−182387(P2012−182387)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2007−513363(P2007−513363)の分割
【原出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182387(P2012−182387)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2007−513363(P2007−513363)の分割
【原出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
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