説明

タンパク質キナーゼ阻害剤としての化合物および組成物

本発明は、新規式I


(式中、A、Y、R、R、RおよびRは発明の概要において定義したとおりである)
の化合物群、かかる化合物を含む医薬組成物および異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性と関連する疾患または障害、特にB−Rafの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防のためにかかる化合物を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は新規化合物群、かかる化合物を含む医薬組成物および異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性と関連する疾患または障害、特にB−Rafの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防のためのかかる化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
タンパク質キナーゼ類は、広範な細胞過程の制御および細胞機能制御の維持に中心的役割を有するタンパク質の大きなファミリーを代表する。これらのキナーゼ類の一部についての非限定的なリストは次のものを含む:受容体チロシンキナーゼ類、例えば血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF−R)、神経増殖因子受容体、trkB、Metおよび線維芽細胞増殖因子受容体、FGFR3;非受容体チロシンキナーゼ類、例えばAblおよび融合キナーゼBCR−Abl、Lck、Csk、Fes、Bmxおよびc−src;およびセリン/スレオニンキナーゼ類、例えばB−Raf、sgk、MAPキナーゼ類(例えば、MKK4、MKK6など)およびSAPK2α、SAPK2βおよびSAPK3。異常キナーゼ活性は、良性および悪性増殖性障害ならびに免疫および神経系の不適切な活性化に起因する疾患を含む多くの疾患状態で観察されている。
【0003】
本発明の新規化合物は、B−Rafまたはその変異形態(例えばV600E)の活性を阻害し、それ故に、B−Raf関連疾患の処置に有用であると期待される。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
一面において、本発明は、式I:
【化1】

〔式中、Aはaおよびb:
【化2】

から選択され、
ここで、
はNまたはCRから選択され;Rは水素、ハロ、シアノならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、オキソ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシおよびNHC(O)ORから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rは場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
nは0、1および2から選択され;
は水素、C1−4アルキルおよび−NHR20から選択され、ここで、R20は水素ならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、NHC(O)OR10およびS(O)0−210から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、R10は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;ここで、Rのいずれのアルキルも場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
およびRは独立して水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
はC1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールならびにN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜8員ヘテロアリールから選択され;ここで、該アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、場合によりハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
は水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素ならびに場合によりC6−10アリールおよびC3−8シクロアルキルから選択される1個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rの該アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノおよびC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい。〕
の化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、被保護誘導体、互変異性体、個々の異性体および異性体混合物;およびかかる化合物の薬学的に許容される塩類および溶媒和物(例えば水和物)に関する。
【0005】
第二の面において、本発明は、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体または異性体混合物;またはその薬学的に許容される塩を、1種以上の適当な添加物と共に含む医薬組成物を提供する。
【0006】
第三の面において、本発明は、動物におけるキナーゼ活性、特にB−Raf活性の阻害が疾患の病状および/または症状を予防、阻止または軽減できる疾患を処置する方法であって、該動物に治療有効量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体または異性体混合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0007】
第四の面において、本発明は、動物における、キナーゼ活性、特にB−Raf活性、特に変異B−raf(例えばV600E)が疾患の病状および/または症状に関与する疾患の処置用医薬の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0008】
第五の面において、本発明は、式Iの化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、被保護誘導体、個々の異性体および異性体混合物およびその薬学的に許容される塩類の製造方法を提供する。
【0009】
発明の詳細な記載
定義
基としておよび他の基、例えばハロ置換アルキルおよびアルコキシの構成要素としての“アルキル”は、直鎖でも分枝鎖でもよい。C1−4−アルコキシは、メトキシ、エトキシなどを含む。ハロ置換C1−4アルキルは、水素のいずれかがハロゲンで置換されていてよいアルキル基(分枝鎖または非分枝鎖)を意味する。例えば、ハロ置換C1−4アルキルはトリフルオロメチル、ジフルオロエチル、ペンタフルオロエチルなどであり得る。同様に、ヒドロキシ置換C1−6アルキルは、水素のいずれかがヒドロキシルで置換されていてよいアルキル基(分枝鎖または非分枝鎖)を意味する。例えば、ヒドロキシ置換C1−6アルキルは2−ヒドロキシエチルなどを含む。同様に、シアノ置換C1−6アルキルは、水素のいずれかがシアノで置換されていてよいアルキル基(分枝鎖または非分枝鎖)を意味する。
【0010】
“アリール”は、6〜10個の環炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環を意味する。例えば、アリールはフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。“アリーレン”はアリール基由来の二価基を意味する。
【0011】
“シクロアルキル”は、示す数の環原子を含む飽和または部分的不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式環を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0012】
“ヘテロアリール”は、環員の1個以上がヘテロ原子であるときの上でアリールについて定義したとおりである。例えば、ヘテロアリールはピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含む。
【0013】
“ヘテロシクロアルキル”は、示す環炭素の1個以上が−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(ここで、Rは水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である)から選択される基で置換されている限り、本明細書で定義したシクロアルキルである。例えば、本発明の化合物を記載するために本明細書で使用するC3−8ヘテロシクロアルキルは、2H−ピラン、4H−ピラン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、チオモルホリノ、イミダゾリジン−2−オン、テトラヒドロフラン、ピペラジン、1,3,5−トリチアン、ピロリジン、ピロリジニル−2−オン、ピペリジン、ピペリジノン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4,5]デク−8−イルなどを含む。
【0014】
“ハロゲン”(またはハロ)はクロロ、フルオロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0015】
“処置”、“処置する”および“処置し”は、疾患および/またはその随伴症状を軽減または寛解する方法を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい態様の記載
本発明は、キナーゼ関連疾患、特にB−Rafキナーゼ関連疾患の処置のための化合物、組成物およびを提供する。例えば、転移黒色腫、固形腫瘍、脳腫瘍、例えば多形神経膠芽腫(GBM)、急性骨髄性白血病(AML)、乳頭状甲状腺癌、低悪性度卵巣癌および結腸直腸癌。
【0017】
一つの態様において、式Iの化合物について、式Ia:
【化3】

〔式中、
nは0、1および2から選択され;
20は水素ならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、NHC(O)OR10およびS(O)0−210から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、R10は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
およびRは独立して水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
はC1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールならびにN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜8員ヘテロアリールから選択され;ここで、該アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、場合によりハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
は水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素ならびに場合によりC6−10アリールおよびC3−8シクロアルキルから選択される1個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rの該アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノおよびC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい。〕
の化合物である。
【0018】
他の態様において、nは0であり;R20はメチルおよびエチルから選択され;ここで、該メチルおよびエチルは、場合によりシアノ、トリフルオロメチル、メチル−スルホニル、ハロおよびメチルから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;Rはフルオロであり;Rは水素であり;Rはプロピルから選択され;Rはフルオロおよびクロロから選択される。
【0019】
さらなる態様は、次のものから選択される化合物である:N−(4−(3−(6−(エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(4−(3−(6−(2−シアノエチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(3,3,3−トリフルオロプロピルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(4−(3−(6−(2,2−ジフルオロエチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(メチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3−クロロ−4−(3−(6−(エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−5−フルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(2−(メチルスルホニル)エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(4−((3−(6−((2−シアノエチル)アミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イル)アミノ)−3−フルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミドおよびN−(4−(3−(6−(2−シアノプロピルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド。
【0020】
さらなる態様において、下の実施例および表から選択される化合物である。
【0021】
他の態様において、式Iの化合物について、式Ib:
【化4】

〔式中、
はNまたはCRから選択され;Rは水素、シアノ、ハロならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシおよびNHC(O)ORから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rは場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
20は水素ならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、NHC(O)OR10およびS(O)0−210から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、R10は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
およびRは独立して水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
はC1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールならびにN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜8員ヘテロアリールから選択され;ここで、該アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、場合によりハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
は水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素ならびに場合によりC6−10アリールおよびC3−8シクロアルキルから選択される1個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rの該アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノおよびC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい。〕
の化合物である。
【0022】
他の態様において、GはNまたはCHから選択され;R20はメチルおよびエチルから選択され;ここで、該メチルおよびエチルは、場合によりシアノ、トリフルオロメチル、メトキシ−カルボニル−アミノ、ハロおよびメチルから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;Rはフルオロであり;Rは水素であり;Rはプロピルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルから選択され;Rはフルオロおよびクロロから選択され;およびRはメチルである。
【0023】
他の態様において、化合物は次のものから選択される:N−(4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(8−メチル−2−(メチルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3−フルオロ−4−(8−メチル−2−(メチルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;1−(6−(3,5−ジフルオロ−2−(プロピルスルホンアミド)ピリジン−4−イル)−8−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)プロパン−2−イルカルバミン酸(S)−メチル;N−(4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(8−メチル−2−(メチルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)ピリジン−2−イル)−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−スルホンアミド;N−(4−(7−(2−シアノエチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミドおよびN−(5−クロロ−4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3−フルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド。
【0024】
本発明はまた、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩類の全ての適当な同位体標識体(isotopic variations)も含む。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の同位体標識体は、少なくとも1個の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量が通常天然で見られる原子質量と異なる原子で置換されているものを含む。本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩類に取り込み得る同位体の例は水素、炭素、窒素および酸素の同位体、例えばH、H、11C、13C、14C、15N、17O、18O、35S、18F、36Clおよび123Iを含むが、これらに限定されない。本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩類のある種の同位体標識体、例えば、放射性同位体、例えばHまたは14Cが取り込まれているものは、薬物および/または基質組織分布試験に有用である。具体例として、Hおよび14C同位体が、その製造の容易さおよび検出能のために使用され得る。他の例として、Hのような同位体での置換は、大きな代謝安定性に起因するある種の治療利益、例えばインビボ半減期延長または必要投与量減少をもたらし得る。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩類の同位体標識体は、一般的に適当な反応材の適当な同位体標識体を使用する、慣用法により製造できる。
【0025】
薬理学および有用性
本発明の化合物はキナーゼ類の活性を調節し、そのようなものとして、キナーゼ類が疾患の病状および/または症状に関与する疾患または障害の処置に有用である。ここに記載する化合物および組成物により阻害され、ここに記載する方法の対象として有用であるキナーゼ類の例は、B−Rafの変異型を含むB−Rafを含み、これらに限定されない。
【0026】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は、細胞表面受容体から核にシグナルを伝達し、細胞増殖および生存に重要である。ヒト癌の10〜20%が発癌性Ras変異を担持し、多くのヒト癌が活性化された増殖因子受容体を有するため、この経路は理想的な介入標的である。
【0027】
セリン/スレオニンキナーゼのRafファミリーは3種のメンバー:C−Raf(またはRaf−1)、B−RafおよびA−Rafを含む。多くのシグナル伝達経路におけるRafの必須の役割および位置の両方ともが、哺乳動物細胞における脱制御されたおよびドミナント阻害Raf変異体を使用した試験から、ならびにモデル生物に生化学および遺伝子技術を用いた試験から証明されている。従来、抗腫瘍剤標的としてのRafは、主にRasの下流エフェクターとしてのその機能により注目されていた。しかしながら、最近の発見は、Rafが発癌性Ras対立遺伝子を必要としないある種の腫瘍の形成に顕著な役割を有し得ることを示唆する。特に、B−Rafの活性化対立遺伝子は黒色腫の〜70%、乳頭状甲状腺癌の40%、低悪性度卵巣癌の30%および結腸直腸癌の10%で同定されている。ほとんどのB−Raf変異がキナーゼドメイン内で発見され、一置換(V600E)が80%を占める。変異したB−Rafタンパク質は、MEKに対する上昇したキナーゼ活性を介してまたはC−Rafの活性化を介して、Raf−MEK−ERK経路を活性化させる。
【0028】
それ故に、B−Rafに対するキナーゼ阻害剤の開発は、多くのタイプのヒト癌、特に転移黒色腫、固形腫瘍、脳腫瘍、例えば多形神経膠芽腫(GBM)、急性骨髄性白血病(AML)、乳頭状甲状腺癌、低悪性度卵巣癌および結腸直腸癌の処置の新しい治療機会を提供する。数種のRafキナーゼ阻害剤が、インビトロおよび/またはインビボアッセイで腫瘍細胞増殖を阻害する効果を示すと記載されている(例えば、米国特許6,391,636、6,358,932、6,037,136、5,717,100、6,458,813、6,204,467および6,268,391参照)。他の特許および特許出願は、白血病の処置(例えば、米国特許6,268,391、6,204,467、6,756,410および6,281,193;および放棄された米国特許出願20020137774および20010006975参照)または乳癌の処置(例えば、米国特許6,358,932、5,717,100、6,458,813、6,268,391、6,204,467および6,911,446参照)に対するRafキナーゼ阻害剤の使用を示唆する。
【0029】
本発明の化合物は、B−Rafキナーゼが関与する細胞過程を、これらの癌細胞のシグナルカスケードを遮断し、最終的に細胞静止および/または死を誘発することにより阻害する。
【0030】
前記によって、本発明は、さらに、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、骨髄障害、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫ならびに卵巣、眼、肝臓、胆管および神経系の腺腫および癌腫の予防または処置方法を提供する。さらに、本発明は、かかる処置を必要とする対象における上に記載した疾患または障害の予防または処置方法であって、該対象に治療有効量(下の“投与および医薬組成物”参照)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法をさらに提供する。上記使用のいずれかにおいて、必要とされる投与量は投与方式、処置する特定の状態および所望の効果により変わる。
【0031】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は、当分野で既知の通常のおよび許容される方式により、単独でまたは1種以上の治療剤と組み合わせて治療有効量を投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用する化合物の効力および他の因子により広範囲に変わり得る。一般に、満足のいく結果が、全身的に、約0.03〜30mg/kg体重の1日投与量で得られることが示される。大型哺乳動物、例えばヒトにおいて指示される1日量は、約0.5mg〜訳2000mgの範囲であり、簡便には、例えば1日4回までの分割用量でまたは遅延形態で投与する。経口投与のための適当な単位投与形態は、約1〜500mg活性成分を含む。
【0032】
本発明の化合物を、医薬組成物として、任意慣用の経路で、特に経腸的に、例えば、経口的に、例えば、錠剤またはカプセルの形でまたは非経腸的に、例えば、注射用溶液または懸濁液の形で、局所的に、例えば、ローション、ゲル、軟膏またはクリームの形でまたは経鼻または坐薬形態で投与できる。遊離形態態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、混合法、造粒法またはコーティング法による慣用の手段により製造できる。例えば、経口組成物は、活性成分をa)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩またはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまたc)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびまたはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えば、デンプン類、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤と共に含む錠剤またはゼラチンカプセル剤である。注射用組成物は水性等張性溶液または懸濁液であってよく、坐薬は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造できる。組成物を滅菌してよくおよび/またはアジュバント、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩類および/または緩衝剤を含んでよい。加えて、それらはまた他の治療的に価値ある物質を含み得る。経皮適用に適当な製剤は、有効量の本発明の化合物と担体を含む。担体は、宿主の皮膚の通過を助けるための吸収性の薬理学的に許容される溶媒を含む。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を所望により担体と共に含む貯蔵部、場合により本化合物を宿主の皮膚に制御されかつ予定された速度で長時間にわたり送達するための速度制御バリアおよび該デバイスを皮膚に固定するための手段を含むバンデージの形である。マトリックス経皮製剤も使用してよい。例えば、皮膚および眼への局所適用に適当な製剤は、好ましくは当分野で既知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。それらは可溶化剤、安定化剤、張性増加剤、緩衝剤および防腐剤を含んでよい。
【0033】
本発明の化合物は、治療有効量を1種以上の治療剤と組み合わせて投与できる(組合せ医薬)。例えば、他の抗腫瘍剤または抗増殖剤、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、挿入抗生物質、増殖因子阻害剤、細胞サイクル阻害剤、酵素類、トポイソメラーゼ阻害剤、生物学的応答修飾物質、抗体、細胞毒性剤、抗ホルモン剤、抗アンドロゲン、抗血管形成剤、キナーゼ阻害剤、汎キナーゼ阻害剤または増殖因子阻害剤と相乗効果が起こり得る。
【0034】
本発明の化合物を、治療有効量でコーンデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、デンプンペースト、アルファ化デンプン、糖類、ゼラチン、天然ゴム、合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グアーガム、セルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、ポリビニルピロリドン、タルク、炭酸カルシウム、粉末セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、寒天、炭酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クレイ類、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、ピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、ダイズ油、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、シリカおよびこれらの組合せから選択される1種以上の適当な添加物と投与できる。
【0035】
本発明の一態様は、さらに付加的治療剤を対象に投与することを含む、方法である。付加的治療剤は抗癌剤、鎮痛剤、制吐剤、抗鬱剤または抗炎症剤を含む。さらに、付加的治療剤は異なるRafキナーゼ阻害剤もしくはMEK、mTOR、HSP90、AKT、PI3K、CDK9、PAK、タンパク質キナーゼC、MAPキナーゼ、MAPKキナーゼまたはERKの阻害剤であり、対象に本発明の化合物と同時に投与する。
【0036】
本発明の化合物を他の治療剤と共に投与するとき、併用化合物の投与量は、当然、用いる併用剤のタイプ、処置する状態などにより変わる。
【0037】
本発明はまた、a)遊離形態または薬学的に許容される塩形態のここに開示する本発明の化合物である第一剤およびb)少なくとも1種の併用剤を含む、組合せ医薬、例えばキットも提供する。キットはその投与のための指示を含み得る。
【0038】
本明細書に使用する用語“共投与”または“組合せ投与”などは、選択した複数治療剤の一患者への投与を包含することを意図し、これらの治療剤を必ずしも同じ投与型路でまたは同時に投与するものではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0039】
ここで使用する用語“組合せ医薬”は、1種を超える活性成分の混合または組合せにより生じる製品を意味し、これら活性成分の固定されたおよび固定されていない両方の組合せを含む。用語“固定された組合せ”は、複数活性成分、例えば式Iの化合物と併用剤を両方とも一患者に一つの物または投与形態として投与することを意味する。用語“固定されていない組合せ”は、複数活性成分、例えば式Iの化合物と併用剤を、両方とも一患者に別の物として、同時に、一緒にまたは特定の時間制限なしに連続的に投与することを意味し、ここで、かかる投与は、患者体内に2化合物の治療有効レベルを提供する。後者はまたカクテル療法、例えば3種以上の活性成分の投与にも適用される。
【0040】
本発明の化合物の製造方法
本発明はまた本発明の化合物の製造方法も含む。記載する反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、チオ基またはカルボキシ基を、それらが最終産物において望まれるとき、反応への望まない関与を避けるために保護する必要があるかもしれない。慣用の保護基を標準法に従い使用でき、例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0041】
式Iaの化合物を、次の反応スキームIのとおりに進行させて製造できる:
【化5】

〔式中、Xは臭素、塩素またはヨウ素であり;Mはスズ、ホウ素および亜鉛の群から選択される金属であり、各場合、適当なリガンドを担持し;X’はハロゲン、アミノもしくはハロゲンまたはアミノに変換できる基から選択され;R20、R2、、R、RおよびRは発明の概要において定義したとおりである〕。式Iaの化合物は、式2の化合物と式R20NHのアミンを、溶媒、例えばイソプロパノール、DMF、DMSOまたはNMP中、場合により塩基、例えば炭酸ナトリウムまたはトリエチルアミンの存在下で、おおよそ室温から約130℃の温度で反応させることにより合成できる。アミンとの反応前に、式2の化合物のスルフィド基を、適当な酸化剤、例えばm−CPBAを、不活性溶媒、例えばジクロロメタン中、約−78℃からおおよそ室温までの温度で使用して、場合により対応するスルホキシドまたはスルホンに酸化してよい。
【0042】
式2の化合物を、次に、式3の化合物とスルホニル化剤RSOClを、適当な塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなど)および適当な溶媒(例えばピリジン、ジクロロメタンなど)の存在下で反応させることにより製造できる。本反応は約20℃〜約100℃の温度範囲で進行し、完了まで最大約24時間かかり得る。ある例では、スルホニル化剤を、ビス−スルホニル誘導体を製造するために2回反応させてよい。この場合、ビス−スルホニル化合物を、プロトン性溶媒、例えばメタノールまたは水の存在下、場合により共溶媒、例えばトルエンの存在下、適当な塩基(例えば、ナトリウムまたは炭酸カリウム)で処理して、式2の化合物に変換できる。本反応は約20℃〜約100℃の温度範囲で進行し、完了まで最大約24時間かかり得る。
【0043】
式3の化合物は、式4の化合物の脱保護により製造でき、ここで、NR2122は被保護アミノ基を意味する(例えばR21およびR22はそれぞれBOCおよび水素であり得る;またはR21およびR22の両方ともBOCであり得る;またはR21およびR22はそれぞれSEMおよびRSOであり得る)。NR2122がNR21SOである特定の例においては、式4の化合物の脱保護は直接式2の化合物をもたらす。
【0044】
式4の化合物は、式5の化合物と式8の化合物(式中、Xは塩素、臭素またはヨウ素cである)の、適当なリガンド、例えばXantphosと組み合わせたパラジウム触媒、例えばPddba存在下、不活性溶媒、例えばジオキサンまたはトルエン中、塩基、例えば炭酸セシウムまたはナトリウムt−ブトキシドの存在下、おおよそ室温から約140℃の範囲の温度でのハートウィッグ/ブッフバルト反応により製造できる。
【0045】
式4の化合物はまた式6の化合物と式7の化合物(式中、Xは塩素、臭素またはヨウ素であり、NR2122はアミノ基、被保護アミノ基または式NR21SOのスルホニルアミノ基を意味し、ここで、R21は水素または適当な保護基であり得る)の反応によっても製造できる。本反応は、上に記載したハートウィッグ/ブッフバルト条件に準ずる条件で行う。
【0046】
式6の化合物を、式8の化合物(式中、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素である)とアンモニアの、溶媒、例えばアルコール、THF、ジオキサンまたは水中、高温および高圧での反応により製造できる。式6の化合物はまた式9の化合物(式中、X’はNHに変換できる基である;例えば、X’は被保護アミノ基、例えばNHBOCであり得る)からも製造できる。
【0047】
式8の化合物は、式9の化合物(式中、X’はXに変換できる基である;例えば、X’がNHであるならば、ザントマイヤー反応条件を使用し、X’がアルコキシ基であるならば、オキシ塩化リンを高温で使用でき、場合により予め別の脱アルキル化工程を行ってよい)から製造できる。
【0048】
式9の化合物を、式10の化合物(式中、Xは塩素、臭素またはヨウ素であり、X’はハロゲンまたはハロゲンに変換できる基である)と、式11の化合物(式中、Mはスズ、ホウ素および亜鉛の群から選択される金属であり、各場合、適当なリガンドを担持し;例えば、Mがスズであるならば、ライゲートされた基はBuSnまたはMeSnであってよく、Mが亜鉛であるならば、ライゲートされた基はZnBrであってよく、Mがホウ素であるならば、ライゲートされた基はボロン酸またはボロン酸エステル基であり得る)の反応により製造できる。本反応は、適切にライゲートされたパラジウム触媒の存在下で行い、正確な条件は特定のライゲートされた金属Mにより、当業者に既知である。X’が塩素、臭素またはヨウ素であるならば、式10の化合物と式11の化合物の反応により、式8の化合物が直接もたらされる。
【0049】
がNHR20である式Ibの化合物を、WO2005/034869に開示された方法に従い、次の反応スキームIIのとおりに進行させて製造できる:
【化6】

〔式中、R20、R2、、R、R、RおよびGは発明の概要において定義したとおりであり、NR2122は反応スキームIに記載のとおり場合により保護されていてよいアミノ基である。〕。
【0050】
がCRである式25の化合物を、WO2005/034869に開示された方法に従い、次の反応スキームIIIにおけるとおりに製造する:
【化7】

〔式中、RおよびRは発明の概要において定義したとおりである〕。
【0051】
がNである式25の化合物は、J. Med. Chem. 2000, 4006に開示された方法に従い、次の反応スキームIVのとおりに製造できる:
【化8】

〔式中、Rは発明の概要において定義したとおりである〕。
【0052】
およびRがフッ素であり、R21およびR22が水素である式24の化合物は、次の反応スキームVに示すとおり、複数の経路により、Chem. Eur. J. 2005, 11, 1903 - 1910およびJ. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2001, 2788-2795に開示の一般法に従い製造できる:
【化9】

【0053】
がNHR20である式Ibの化合物はまた次の反応スキームVIのとおりにも製造できる:
【化10】

〔式中、R2、、R、R、R、R20およびGは発明の概要において定義したとおりであり、NR2122は反応スキームIについて記載のとおり場合により保護されていてよいアミノ基である〕。GがNであるならば、Zはメチルチオであり;GがCRであるならば、Zはクロロである。Gが窒素である式1bの化合物は、WO2005/034869;J. Med. Chem. 2000, 4606;およびBioorg. Med. Chem. Lett. 2005, 1931に記載の方法の組合せを使用して製造できる。
【0054】
がNまたはCRである式1bの化合物は、式61の化合物とスルホニル化剤RSOClを、適当な塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなど)および適当な溶媒(例えばピリジン、ジクロロメタンなど)の存在下に反応させることにより、製造できる。本反応は約20℃〜約100℃の温度範囲で進行し、完了まで最大約24時間かかり得る。ある例では、スルホニル化剤を、ビス−スルホニル誘導体を製造するために2回反応させてよい。この場合、ビス−スルホニル化合物を、適当な塩基(例えば、ナトリウムまたは炭酸カリウム)で、プロトン性溶媒、例えばメタノールまたは水の存在下、場合により共溶媒、例えばトルエンの存在下に処理することにより式61の化合物に変換できる。本反応は約20℃〜約100℃の温度範囲で進行し、完了まで最大約24時間かかり得る。
【0055】
式61の化合物を、式62の化合物(式中、NR2122は被保護アミノ基である)の脱保護により製造できる。NR2122がNR21SOである特定の例においては、式62の化合物の脱保護は直接式Ibの化合物をもたらす。
【0056】
式62の化合物は、式63の化合物と式7の化合物(式中、Xは塩素、臭素またはヨウ素である)の、パラジウム触媒、例えば適当なリガンド、例えばトリフェニルアルシンと組み合わせたPddbaと、添加剤、例えばヨウ化銅(I)の存在下、不活性溶媒、例えばDMF中、おおよそ室温から約100℃の範囲の温度で、約24〜約72時間のスティル反応により製造できる。
【0057】
式63の化合物は、次に、式64の化合物(式中、Xは塩素、臭素またはヨウ素である)とヘキサブチルジスタンナンの、適当なパラジウム触媒、例えばPd(PhP)存在下、不活性溶媒、例えばTHF中、約60〜約100℃の温度での反応により製造できる。
【0058】
式64の化合物は、式65の化合物と適当な臭素化剤の反応により製造できる。適当な臭素化条件は、ピリジン存在下、不活性溶媒、例えばジクロロメタン中、おおよそ室温から約50℃の温度でのフェニルセレニウムブロマイドとの反応または約−78℃からおおよそ室温の温度での臭素との反応を含む。
【0059】
式65の化合物は、式66の化合物と1級アミンR20NHの、適当な溶媒、例えばNMPまたはN,N−ジメチルアセトアミド中、場合によりマイクロ波照射を伴う約50〜約200℃の温度での反応により製造できる。GがNであり、Zがメチルチオである場合、式66の化合物のメチルチオ基を、場合によりアミンR20NHとの反応前に対応するスルホキシドまたはスルホンに酸化してよい。適当な酸化条件は、mCPBAとの、DCM中、約−78℃からおおよそ室温の温度での、場合により塩基、例えば重炭酸ナトリウム存在下の反応を含む。
【0060】
式66の化合物は、式25の化合物と(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホランとの反応または適当なホーナー・エモンズ試薬、例えば適当な塩基、例えばn−ブチルリチウムまたは水素化ナトリウムと組み合わせたトリエチルホスホノアセテートとの反応により製造できる
【0061】
が水素またはC1−4アルキルであり、ここで、Rのいずれのアルキルも場合により水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい式Ibの化合物は、反応スキームII〜VIに記載する方法に準じて、適切に置換されたピリジンまたはピリミジン出発物質を使用して製造できる。
【0062】
式Iaの化合物およびIbの合成の詳細な例は、下の実施例に見ることができる。
【0063】
本発明の化合物の製造のための付加的工程
本発明の化合物を、遊離塩基形態の化合物と薬学的に許容される無機または有機酸を反応させることにより、薬学的に許容される酸付加塩として製造できる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を、遊離酸形態の化合物と薬学的に許容される無機または有機塩基の反応により製造できる。
【0064】
あるいは、塩形態の本発明の化合物を、出発物質または中間体の塩を使用して製造できる。
【0065】
遊離酸または遊離塩基形態の本発明の化合物を、それぞれ対応する塩基付加塩または酸付加塩形態から製造できる。例えば酸付加塩形態の本発明の化合物を、対応する遊離塩基に、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することにより変換できる。塩基付加塩形態の本発明の化合物を、対応する遊離酸に、適当な酸(例えば、塩酸など)で処理することにより変換できる。
【0066】
酸化されていない形態の本発明の化合物を、本発明の化合物のN−オキシド類から、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、リチウムボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、リントリクロライド、トリブロマイドなど)で、適当な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、ジオキサン水溶液など)中、0〜80℃で処理することにより製造できる。
【0067】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法により製造できる(例えば、さらなる詳細はSaulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985参照)。例えば、適当なプロドラッグ類を、誘導体化されていない本発明の化合物と適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリダート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなど)との反応により製造できる。
【0068】
本発明の化合物の被保護誘導体は、当業者に既知の手段により製造できる。保護基の形成およびその除去に適用可能な技術の詳細な記載はT. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0069】
本発明の化合物を好都合には溶媒和物(例えば、水和物)として製造できまたはそれが本発明の工程中に形成される。本発明の化合物の水和物を、好都合には水性/有機溶媒混合物から、有機溶媒、例えばジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールを使用して再結晶することにより製造できる。
【0070】
本発明の化合物は、本化合物のラセミ混合物と光学活性分割剤を反応させてジアステレオ異性体混合物を形成し、ジアステレオマーを分離し、光学上純粋な鏡像体を回収することにより個々の立体異性体として製造することができる。エナンチオマーの分割は本発明の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を使用して実施できるが、解離可能な複合体(例えば結晶性ジアステレオマー塩)が好ましい。ジアステレオマーは異なる物性(例えば融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの相違の利用により容易に分離することができる。ジアステレオマーはクロマトグラフィーによりまたは好ましくは溶解度の差異に基づく分離/分解技術によって分離できる。その後、光学的に純粋な鏡像体を、ラセミ化を生じない何らかの実際的な手段により分割剤と共に回収する。ラセミ混合物からの化合物の立体異性体の分割に適用可能な技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0071】
要約として、式Iの化合物は次のものを含む工程により製造できる:
(a) 上記反応スキームのもの;および
(b) 場合により本発明の化合物の薬学的に許容される塩への変換;
(c) 場合により塩形態の本発明の化合物の非塩形態への変換;
(d) 場合により酸化されていない形態の本発明の化合物の薬学的に許容されるN−オキシドへの変換;
(e) 場合によりN−オキシド形態の本発明の化合物のその酸化されていない形態への変換;
(f) 場合により異性体混合物からの本発明の化合物の個々の異性体の分割;
(g) 場合により誘導体化されていない本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体への変換;および
(h) 場合により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体のその誘導体化されていない形態への変換。
【0072】
出発物質の製造が特に記載されていない限り、その化合物は既知であるかまたは当業者に既知の方法に準じてまたは下の実施例に記載のとおり製造できる。
【0073】
当業者には、上記の変換は本発明の化合物の製造の単なる代表例であって、他の既知方法を同様に使用できることは当然である。
【実施例】
【0074】
本発明を、本発明に従う式Iの化合物の製造を説明する次の中間体(参考例)および実施例によりさらに例示するが、限定しない。
【0075】
使用する略語は次のとおりである:ジクロロメタン(DCM);N,N−ジメチルアセトアミド(DMA);N,N−ジメチルホルムアミド(DMF);N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMF DMA);ジメチルスルホキシド(DMSO);高速液体クロマトグラフィー(HPLC);テトラヒドロフラン(THF);薄層クロマトグラフィー(TLC);およびパラ−トルエンスルホン酸(pTsOH)。
【0076】
参考例1:N−(4−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
【化11】

【0077】
工程1:3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−アミン
n−ブチルリチウム(41ml、1.6Mヘキサン溶液、66mmol)を、2−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン(3.4g、26mmol)のTHF(100ml)溶液に−78℃で滴下した。混合物をその温度で1.5時間撹拌し、ヨウ素(20g、78mmol)のTHF(30ml)溶液を添加した。混合物を−78℃で15分間撹拌し、rtに温めた。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤0〜25%酢酸エチルのヘキサン溶液)で精製して、表題化合物を得た。MS m/z: 297.9 (M+MeCN+1)。
【0078】
工程2:3,5−ジフルオロ−N−(4−メトキシベンジル)ピリジン−2,4−ジアミン
撹拌している3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−アミン(3.0g、11.7mmol)、4−メトキシベンジルアミン(1.92g、14mmol)、Pddba(1.07g、1.2mmol)、BINAP(1.46g、2.3mmol)、ナトリウムt−ブトキシド(1.46g、2.3mmol)およびトルエン(600ml)の混合物を、密閉容器中、130℃で16時間撹拌しながら加熱した。重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤30%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。
【0079】
工程3:N−(3,5−ジフルオロ−4−(4−メトキシベンジルアミジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
3,5−ジフルオロ−N−(4−メトキシベンジル)ピリジン−2,4−ジアミン(1.3g、4.9mmol)、トリエチルアミン(4.1ml、29mmol)およびDCMの溶液をn−プロパンスルホニルクロライド(2.2ml、19.6mmol)で0℃で処理した。混合物をrtに温め、2時間撹拌した。さらにn−プロパンスルホニルクロライド(1.1ml、9.8mmol)を添加した。1時間後、重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、混合物をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をアセトニトリル(10mL)に溶解し、炭酸ナトリウム水溶液(2M、10ml)を添加した。混合物を2時間還流した。冷却した反応混合物を酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤20−30%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。
【0080】
工程4:N−(4−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
N−(3,5−ジフルオロ−4−(4−メトキシベンジルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド(1.05g)のDCM(50ml)およびTFA(20ml)溶液をrtで16時間撹拌した。混合物を濃縮した。残渣を重炭酸ナトリウム水溶液に溶解し、混合物をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤10−50%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS m/z: 251.9 (M+1)。
【0081】
参考例2:4−(3−クロロ−ピラジン−2−イル)−6−メチルスルファニル−ピリミジン
【化12】

【0082】
工程1:4−クロロ−6−メチルスルファニル−ピリミジン
【化13】

4,6−ジクロロ−ピリミジン(20.93g、140mmol)およびナトリウムチオメトキシド(10.3g、147mmol)のTHF(100mL)中の混合物を室温で16時間撹拌し、反応混合物を濃縮した。残渣を酢酸エチルおよび塩水に分配した。有機層を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物残渣をヘキサン(60mL)からの再結晶により精製して、表題化合物を得た。母液を濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤として0〜10%酢酸エチルのヘキサン溶液)で精製して、少量の副産物4,6−ビスメチルチオ−ピリミジンを含むさらなる化合物を得た。1H NMR 400 MHz (CDCl3) δ 8.72 (s, 1H), 7.21 (s, 1H), 2.58 (s, 3H)。
【0083】
工程2:4−ヨード−6−メチルスルファニル−ピリミジン
【化14】

4−クロロ−6−メチルスルファニル−ピリミジン(0.54g、3.4mmol)、57%ヨウ化水素酸溶液(2.50mL、19.0mmol)およびDCM(3mL)の混合物を室温で撹拌した。5時間後、得られた固体を濾過により回収し、DCMで洗浄した。ケーキを水(10mL)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でpH=8に塩基性化した。水性層をDCMで抽出した(2×50mL)。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、表題化合物を得た。
【0084】
工程3:4−メチルスルファニル−6−トリブチルスタンナニル−ピリミジン
【化15】

イソプロピルマグネシウムクロライド(2M THF溶液、5mL、10mmol)溶液を、4−ヨード−6−メチルスルファニル−ピリミジン(2.53g、10mol)のTHF(50mL)溶液に−78℃でゆっくり添加した。10分間後、トリ−n−ブチルスズクロライド(2.75mL、10mmol)を添加し、混合物を撹拌し、一夜でrtに温めた。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤0〜10%酢酸エチルのヘキサン溶液)で精製して、表題化合物を得た。
【0085】
工程4:4−(3−クロロ−ピラジン−2−イル)−6−メチルスルファニル−ピリミジン
【化16】

4−メチルスルファニル−6−トリブチルスタンナニル−ピリミジン(1.80g、4.33mmol)、2,3−ジクロロ−ピラジン(1.94g、13mmol)、トリフェニルホスフィン(0.907g、3.46mmol)、酢酸パラジウム(II)(194mg、0.866mmol)およびジオキサン(15mL)中の混合物を脱気し、圧力管中密閉した。120℃で16時間撹拌後、反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤10%〜30%酢酸エチルのヘキサン溶液)で精製して、表題化合物を得た。1H NMR 300 MHz (CDCl3) δ 9.10 (s, 1H), 8.64 (d, J = 2 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 2 Hz, 1H), 7.70 (s, 1H), 2.64 (s, 3H)。
【0086】
参考例3:N−(3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−イル)−N−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)プロパン−1−スルホンアミド
【化17】

【0087】
工程1:N−(3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−イル)−N−(プロピルスルホニル)プロパン−1−スルホンアミド
撹拌中の3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−アミン(200mg、0.78mmol)およびトリエチルアミン(240mg、2.34mmol)のDCM(10ml)中の混合物に、0℃でn−プロパンスルホニルクロライド(0.28g、1.95mmol)を添加した。混合物をrtに温め、2時間撹拌した。濃縮して粗生成物を得て、それを精製せずに次工程に使用した。MS m/z 469.1 (M + 1)。
【0088】
工程2:N−(3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
粗N−(3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−イル)−N−(プロピルスルホニル)プロパン−1−スルホンアミド(工程1で得た)を5%水酸化ナトリウム水溶液(20ml)と60℃で1時間撹拌した。冷却した反応混合物を10%塩酸でpH<2に酸性化し、DCMで抽出した。合わせた抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤20−30%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS m/z 363.1 (M + 1)。
【0089】
工程3:N−(3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−イル)−N−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)−メチル)プロパン−1−スルホンアミド
N−(3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド(0.68g、1.88mmol)の無水DMF(25ml)溶液に、0℃で、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散、0.15g、3.8mmol)を添加した。反応混合物を10分間撹拌し、SEMCl(0.47g、2.8mmol)を添加した。混合物を1時間撹拌し、濃縮した。水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤5〜20%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS m/z 515.1 (M+Na)。
【0090】
参考例4:N,N−ビス−BOC−3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−アミン
【化18】

3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−アミン(0.26g、1mmol)およびDMAP(18mg、0.15mmol)のDMF(5mL)溶液をジカルボン酸ジ−t−ブチル(0.67g、3mmol)でrtで処理した。混合物をrtで16時間撹拌し、水で希釈した。混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤5%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 300.9 (M+1-Boc-t-Bu)。
【0091】
参考例5:6−クロロ−4−(メチルアミノ)ニコチンアルデヒド
【化19】

【0092】
工程1:4,6−ジヒドロキシニコチン酸エチル
2Lフラスコに1,3−アセトンジカルボン酸ジエチル(160g、0.79mol)、オルトギ酸トリエチル(129g、0.87mol)および酢酸無水物(161g、1.58mol)を仕込んだ。得られた混合物を120℃で1.5時間加熱した。混合物をrtに冷却し、揮発物を減圧下に除去した。残渣を氷浴で冷却し、30%アンモニア水溶液(65mL)を添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、2N塩酸でpH<5に酸性化した。混合物を真空で濃縮した。粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤1:1 ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、表題生成物を得た。
【0093】
工程2:4,6−ジクロロニコチン酸エチル
4,6−ジヒドロキシニコチン酸エチルエステル(50g、0.3mol)をPOCl(500mL)と2Lフラスコ中で撹拌し、110℃で3時間加熱した。反応混合物を冷却し、真空下に濃縮した。粗暗色残渣を氷−水混合物に注ぎ、混合物を飽和炭酸ナトリウム水溶液で中和した。混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤25%酢酸エチルのヘキサン溶液)での精製により、表題化合物を白色固体として得た。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.85 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 4.43 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0094】
工程3:6−クロロ−4−(メチルアミノ)ニコチン酸エチル
4,6−ジクロロニコチン酸エチルエステル(43g、195mmol)をアセトニトリル(600mL)に溶解し、0℃に冷却し、メチルアミン(125mLの40%水溶液、977mmol)をゆっくり添加した。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、rtに3時間かけて温めた。溶媒を真空で除去し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤1:1 ヘキサン/酢酸エチル)を使用して精製した。表題化合物を白色固体として単離した。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.66 (s, 1H), 8.12 (bs, 1H), 6.53 (s, 1H), 4.34 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.92 (s, 3H), 1.37 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0095】
工程4:(6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル)メタノール
6−クロロ−4−メチルアミノニコチン酸エチルエステル(33g、156mmol)を無水THF(500mL)に溶解し、−78℃に冷却した。この溶液に、LAH(12.5g、330mmol)のTHF(500mL)溶液をゆっくり添加した。添加完了後、反応を−78℃で1時間維持した。混合物をrtに温め、少量のMeOH/酢酸エチル(1/1)をゆっくり添加して、過剰のLAHを破壊した。粗反応混合物をセライトプラグで濾過し、酢酸エチルで2回洗浄した。濾液を濃縮し、粗残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離剤1:1 ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。表題化合物を白色固体として得た。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.36 (s, 1H), 6.48 (s, 1H), 5.55 (bs, 1H), 4.63 (s, 2H), 2.89 (d, J = 5.1 Hz, 3H)。
【0096】
工程5:6−クロロ−4−(メチルアミノ)ニコチンアルデヒド
(6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル)メタノール(20g、116mmol)をDCM(250mL)に溶解し、MnO(100g、1.16mol)を添加した。反応混合物をrtで一夜撹拌し、セライトプラグで濾過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を濃縮して、表題化合物を得た。1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 9.85 (s, 1H), 8.59 (bs, 1H), 8.31 (s, 1H), 6.59 (s, 1H), 2.96 (d, J = 5.1 Hz, 3H)。
【0097】
実施例1:N−(4−(3−(6−(エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
【化20】

【0098】
工程1:N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(メチルチオ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
撹拌中の4−(3−クロロピラジン−2−イル)−6−(メチルチオ)ピリミジン(143mg、0.6mmol)、N−(4−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド(100mg、0.4mmol)、Pd(dba)(109mg、0.12mmol)、Xantphos(138mg、0.24mmol)、CsCO(389mg、1.19mmol)、4Åモレキュラー・シーブ(500mg)およびジオキサン(15ml)の混合物を、撹拌しながら、密閉容器中、150℃で5時間加熱した。反応混合物をrtに冷却し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲル(溶離剤10〜30%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS m/z 454.1 (M+1)。
【0099】
工程2:N−(4−(3−(6−(エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
撹拌中のN−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(メチルチオ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド(70mg、0.15mmol)、エチルアミン(70%水溶液、3mL)および2−プロパノール(3mL)の混合物を、撹拌しながら120℃で16時間加熱した。反応混合物をrtに冷却し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤10〜50%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。
【0100】
実施例13:N−(4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
【化21】

【0101】
工程1:3−(6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル)アクリル酸(E)−エチル
6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−カルボキシアルデヒド(3.41g、20mmol)のTHF(120mL)溶液に、(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(8.35g、24mmol)を添加した。混合物を16時間加熱還流し、冷却し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤12%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 241.0 (M+1)。
【0102】
工程2:7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン
バイアルに3−(6−クロロ−4−(メチルアミノ)ピリジン−3−イル)アクリル酸(E)−エチル(45mg)、70%エチルアミン水溶液(1mL)およびNMP(1mL)を仕込んだ。バイアルを密閉し、マイクロ波照射で35分間、150℃で加熱した。重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、混合物をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤50%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 204.0 (M+1)。
【0103】
工程3:3−ブロモ−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン
7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(20mg、0.1mmol)およびピリジン(27μL、0.3mmol)のDCM(2mL)溶液に、フェニルセレニウムブロマイド(72mg、0.3mmol)を添加した。混合物を39℃で6時間加熱し、溶媒を真空下に除去した。残渣をシリカゲル(溶離剤30%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 282.0 (M+1)。
【0104】
工程4:3−(トリブチルスタンニル)−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン
チューブに3−ブロモ−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(45mg、0.16mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(55mg、0.047mmol)を仕込んだ。チューブを脱気し、窒素ガスを再充填した。ヘキサブチルジスズ(293mg、0.48mmol)およびTHF(10mL)を添加し、チューブを密閉し、混合物を80〜90℃で48時間加熱した。混合物を濃縮し、残渣をシリカゲル(溶離剤30%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 490.1 (M+1)。
【0105】
工程5:3−(2−(N,N−ビス−(t−ブトキシカルボニル)アミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−4−イル)−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン
チューブに3−(トリブチルスタンニル)−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(48mg、0.1mmol)、N,N−ビス−BOC−3,5−ジフルオロ−4−ヨードピリジン−2−アミン(54mg、0.12mmol)、PhAs(25mg、0.08mmol)、CuI(7.5mg、0.04mmol)およびPd(dba)(9mg、0.01mmol)を仕込んだ。チューブを脱気し、窒素ガスを再充填した。DMF(10mL)を添加し、チューブを密閉し、60℃で48時間加熱した。重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤70%酢酸エチルのヘキサン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 533.2 (M+1)。
【0106】
工程6:3−(2−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−4−イル)−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン
3−(2−(N,N−ビス−(t−ブトキシカルボニル)アミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−4−イル)−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(32mg)のDCM(10mL)溶液にトリフルオロ酢酸(5mL)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣を酢酸エチルおよび重炭酸ナトリウム水溶液に分配した。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤3%メタノールのジクロロメタン溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。MS (m/z) 332.1 (M+1)。
【0107】
工程7:N−(4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
3−(2−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−4−イル)−7−(エチルアミノ)−1−メチル−1,6−ナフチリジン−2(1H)−オン(15mg、0.05mmol)、トリエチルアミン(3ml)およびDCM(10mL)の溶液をn−プロパンスルホニルクロライド(0.05ml、0.4mmol)で0℃で処理した。混合物をrtに温め、16時間撹拌した。重炭酸ナトリウム水溶液を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をメタノール(10mL)に溶解し、炭酸カリウム(2g)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル(溶離剤2%〜3%メタノールのDCM溶液)でクロマトグラフして、表題化合物を得た。
【0108】
上の実施例1〜13に概説した方法の変法を使用して、次の表1の実施例化合物を製造できる:
【表1】

【表2】

【表3】

【0109】
実施例19
(B−Raf V600E/Mek増幅発光プロキシミティ近接アッセイ
B−Raf(V600E;4pM)およびビオチニル化Mek(キナーゼ死滅;10nM)をアッセイ緩衝液(50mM Tris、pH7.5、15mM MgCl、0.01%BSAおよび1mM DTT)中最終濃度の2×で合わせ、100%DMSOに希釈した0.5μlの40×本発明の化合物を含むアッセイプレート(Greiner白色384ウェルアッセイプレート#781207)に10μl/ウェルで添加した。プレートを、60分間、室温でインキュベートした。
【0110】
B−Rafキナーゼ活性反応を、アッセイ緩衝液に希釈した2×ATP(10μM)の10μl/ウェルの添加により開始させた。3時間後、反応を10μlの停止試薬(60mM EDTA、0.01%Tween20)の添加により停止させた。リン酸化産物を、ウサギ抗p−MEK(Cell Signaling, #9121)抗体およびAlpha Screen IgG(プロテインA)検出キット(PerkinElmer #6760617R)を使用して、30μlをビーズ緩衝液(50mM Tris、pH7.5、0.01%Tween20)中の抗体(1:2000希釈)および検出ビーズ(両方のビーズについて1:1000希釈)の混合物のウェルに添加して測定した。添加は、検出ビーズを光から保護するために暗条件下で行った。蓋をプレートの上に置き、プレートを1時間、室温でインキュベートした。発光をPerkinElmer Envision装置で読んだ。各化合物について50%阻害濃度(IC50)をXL Fitデータ解析ソフトウェアを使用して非線形回帰により計算した。
【0111】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物は、価値ある薬理学的特性を、例えば、本明細書に記載するインビトロ試験で示されるとおり示す。例えば、本発明の化合物は、好ましくは野生型およびV600E B−Rafについて1×10−10から1×10−5Mの範囲、好ましくは500nM未満、250nM未満、100nM未満および50nM未満のIC50を示す。
【0112】
実施例20
A375細胞増殖アッセイ
A375はB−Raf V600E変異を担持する黒色腫細胞株である。ルシフェラーゼを発現するように操作したA375−luc細胞を384ウェル白色透明底プレートに、10%FBS含有DMEM中1,500細胞/50μl/ウェルで播種する。適当な濃度で100%DMSOに溶解した本発明の化合物を、細胞にロボットPin Tool(100nl)で移す。細胞を2日間、25℃でインキュベートし、25μlのBrightGloTMを各ウェルに添加し、プレートを発光により読む。各化合物の50%阻害濃度(IC50)をXL Fitデータ解析ソフトウェアを使用して非線形回帰により計算した。
【0113】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物は、価値ある薬理学的特性を、例えば、本明細書に記載するインビトロ試験で示されるとおり示す。例えば、本発明の化合物は、好ましくは実施例20に記載するこのアッセイで500nM未満、250nM未満、100nM未満、50nM未満および10nM未満の範囲のIC50を示す。
【0114】
例えば、A375細胞増殖アッセイにおける本発明の化合物のいくつかについてのIC50データを上の表に記載する。
【0115】
ここに記載する実施例および態様は説明の目的のためのみであり、それに照らした種々の修飾または変更が当業者には示唆され、本明細書の精神および範囲ならびに添付する特許請求の範囲の範囲内に入ると理解される。ここに引用する全ての刊行物、特許および特許出願を、全ての目的のために引用により本明細書に包含させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中、Aはaおよびb:
【化2】

から選択され、
ここで、
はNまたはCRから選択され;Rは水素、ハロ、シアノならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、オキソ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシおよびNHC(O)ORから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rは場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
nは0、1および2から選択され;
は水素、C1−4アルキルおよび−NHR20から選択され、ここで、R20は水素ならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、NHC(O)OR10およびS(O)0−210から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、R10は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
およびRは独立して水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
はC1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールならびにN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜8員ヘテロアリールから選択され;ここで、該アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、場合によりハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
は水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素ならびに場合によりC6−10アリールおよびC3−8シクロアルキルから選択される1個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rの該アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノおよびC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式Ia:
【化3】

〔式中:
nは0、1および2から選択され;
20は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、NHC(O)OR10およびS(O)0−210から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、R10は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
およびRは独立して水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
はC1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールならびにN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜8員ヘテロアリールから選択され;ここで、該アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、場合によりハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
は水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素ならびに場合によりC6−10アリールおよびC3−8シクロアルキルから選択される1個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rの該アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノおよびC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい。〕
である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
nが0であり;
20がメチルおよびエチルから選択され;ここで、該メチルおよびエチルは、場合によりシアノ、トリフルオロメチル、メチル−スルホニル、ハロおよびメチルから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
がフルオロであり;
が水素であり;
がプロピルおよび3,3,3−トリフルオロプロピルから選択され;
がフルオロおよびクロロから選択される、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
N−(4−(3−(6−(エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(4−(3−(6−(2−シアノエチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(3,3,3−トリフルオロプロピルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(4−(3−(6−(2,2−ジフルオロエチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(メチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3−クロロ−4−(3−(6−(エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)−5−フルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(3−(6−(2−(メチルスルホニル)エチルアミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イルアミノ)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;およびN−(4−((3−(6−((2−シアノエチル)アミノ)ピリミジン−4−イル)ピラジン−2−イル)アミノ)−3−フルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式Ib:
【化4】

〔式中:
はNまたはCRから選択され;Rは水素ならびに場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシおよびNHC(O)ORから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rは場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
20は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、NHC(O)OR10およびS(O)0−210から独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;ここで、R10は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよいC1−4アルキルであり;
およびRは独立して水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
はC1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、C6−10アリールならびにN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜8員ヘテロアリールから選択され;ここで、該アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、場合によりハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
は水素、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシから選択され;
は水素および場合によりC6−10アリールおよびC3−8シクロアルキルから選択される1個の基で置換されていてよいC1−4アルキルから選択され;ここで、Rの該アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は場合によりヒドロキシ、ハロ、シアノおよびC1−4アルコキシから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよい。〕
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がNまたはCHから選択され;
20がメチルおよびエチルから選択され;ここで、該メチルおよびエチルは、場合によりシアノ、トリフルオロメチル、メトキシ−カルボニル−アミノ、ハロおよびメチルから独立して選択される1〜3個の基で置換されていてよく;
がフルオロであり;
が水素であり;
がプロピルまたは場合によりトリフルオロメチルで置換されていてよいエチルであり;
がフルオロおよびクロロから選択され;
がメチルである、
請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
N−(4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(8−メチル−2−(メチルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3−フルオロ−4−(8−メチル−2−(メチルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)ピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;1−(6−(3,5−ジフルオロ−2−(プロピルスルホンアミド)ピリジン−4−イル)−8−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イルアミノ)プロパン−2−イルカルバミン酸(S)−メチル;N−(4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド;N−(3,5−ジフルオロ−4−(8−メチル−2−(メチルアミノ)−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−6−イル)ピリジン−2−イル)−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−スルホンアミド;N−(4−(7−(2−シアノエチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミドおよびN−(5−クロロ−4−(7−(エチルアミノ)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−1,6−ナフチリジン−3−イル)−3−フルオロピリジン−2−イル)プロパン−1−スルホンアミド
から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物を少なくとも1種の薬学的に許容される添加物と共に含む、医薬組成物。
【請求項9】
添加物がコーンデンプン、ポテトデンプン、タピオカデンプン、デンプンペースト、アルファ化デンプン、糖類、ゼラチン、天然ゴム、合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカント、グアーガム、セルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、ポリビニルピロリドン、タルク、炭酸カルシウム、粉末セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、寒天、炭酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クレイ類、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、水素化植物油、ピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、ダイズ油、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、シリカおよびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
さらに付加的治療剤を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
付加的治療剤が抗癌化合物、鎮痛剤、制吐剤、抗鬱剤および抗炎症剤から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
癌の処置用の請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
癌が肺癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、骨髄障害、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫ならびに卵巣、眼、肝臓、胆管および神経系の腺腫および癌腫から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
処置を必要とする対象に有効量の請求項1の化合物または請求項8の医薬組成物を投与することを含む、癌の処置方法。
【請求項15】
癌が肺癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、骨髄障害、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫ならびに卵巣、眼、肝臓、胆管および神経系の腺腫および癌腫から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに対象に付加的治療剤を投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
付加的治療剤が抗癌剤、鎮痛剤、制吐剤、抗鬱剤または抗炎症剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
付加的治療剤が異なるRafキナーゼ阻害剤もしくはMEK、mTOR、HSP90、AKT、PI3K、CDK9、PAK、タンパク質キナーゼC、MAPキナーゼ、MAPKキナーゼまたはERKの阻害剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
付加的治療剤を対象に本化合物と同時に投与する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
処置を必要とする対象に有効量の請求項1の化合物または請求項8の医薬組成物を投与することを含む、Rafキナーゼが仲介する状態の処置方法。
【請求項21】
Rafキナーゼが変異b−Rafキナーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
変異b−Rafキナーゼがb−Raf(V600E)である、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518904(P2013−518904A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552123(P2012−552123)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/023812
【国際公開番号】WO2011/097526
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】