説明

タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤としての縮合芳香族ジフルオロメタンホスホネート

本発明は、下記式で示され、PTP−1B酵素の阻害剤である新しい部類の化合物を包含する。また、本発明は上記(式I)の化合物を含有する医薬組成物、及び糖尿病を含むPTP−1B媒介疾患の治療又は予防方法をも包含する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPTP−1Bの阻害剤であり、2型糖尿病及び他のPTP−1B媒介疾患の治療に有利であり得る新しい部類のホスホン酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質チロシンホスファターゼは、様々な制御過程に関わる基質を脱リン酸化する膜透過性又は細胞内酵素の一大ファミリーである(Fischerら、1991,Science 253:401−406)。タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)は、種々のヒトの組織に大量に存在する50kdまでの細胞内タンパク質である(Charbonneauら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:5252−5256;Goldstein,1993,Receptor、3:1−15)。
【0003】
多くのタンパク質がPTP−1Bの基質である。1つの重要な基質はインスリン受容体である。インスリンがその受容体に結合すると、受容体が、最も顕著には、キナーゼ触媒ドメインのチロシン1146、1150及び1151で自動リン酸化される(White & Kahn,1994,J.Biol.Chem.269:1−4)。これはインスリン受容体チロシンキナーゼの活性化を惹起し;このキナーゼはインスリンシグナル伝達事象を伝播する種々のインスリン受容体基質(IRS)タンパク質をリン酸化し、さらに下流でインスリンの種々の生物学的作用を媒介する。
【0004】
ケネディら(Kennedyら、1999,Science、283:1544−1548)は、タンパク質チロシンホスファターゼPTP−1Bがインスリンシグナル伝達経路のネガティブの制御因子であることを示しているが、このことはこの酵素の阻害剤が2型糖尿病の治療に有益であり得ることを示唆している。PTP−1B欠損マウスは糖尿病と肥満の両方に抵抗を示す。
【0005】
2型糖尿病及び関連する疾患を治療するためにPTP−1B阻害剤を使用することについてのさらなる支持は、2型糖尿病の動物モデルにおいてPTP−1Bに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用により提供されている。動物モデルにおいてPTP−1Bをアンチセンスオリゴヌクレオチドにより阻害すると、血糖値とインスリン値が正常化する(Zinkerら、2002,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:11357)。
【0006】
それ故、PTP−1Bを阻害する化合物は、2型糖尿病を治療し及び/又は制御するための、また必要な患者のグルコース耐性を改善するための有用性を有すると期待される。PTP−1Bの阻害剤は、糖尿病前症患者の糖尿病発症を遅延させるために、そして糖尿病前症患者の糖尿病進行を予防するために有用であるとも期待される。PTP−1B阻害剤はまた肥満及び脂質異常症の治療に有用性を有するであろう。PTP−1Bを阻害することによる糖尿病治療用のヒト薬物は、これまで成功裏に開発されたことはない。PTP−1Bを阻害する新しい化合物が必要である。
【0007】
PTP−1Bの過剰発現及び上昇レベルが数種の癌細胞株、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、乳癌、卵巣癌及び前立腺癌に観察されており、これらの及び他の癌細胞のキナーゼ活性を制御する上でのPTP−1Bの調節的役割を示唆している。例えば、Liuら、J Biol.Chem.,1996,271:31290−31295;Kennethら、Mol Cell Biol,1998,18:2965−2975;Weinerら、J Natl.Cancer Inst.,1996,86:372−378を参照されたい。従って、PTP−1B活性の阻害は、これらのまた他の癌の治療又は予防の重要な目標となり得る。従って、PTP−1B阻害剤は、癌の治療又は予防に、また発症した癌の進行を減速するために有用であり得る。
多くの研究はまた、PTP−1B阻害剤が神経変性疾患の治療又は予防に有用であり得ることを示唆している。
【発明の概要】
【0008】
発明の要旨
式(I)で示される化合物は、薬学的に許容されるその塩及びそのプロドラッグを含め、糖尿病及び関連する医学的症状の治療に有用なPTP−1B阻害剤であり、また他のPTP−1B媒介疾患又は症状の治療にも有用であり得る。
【0009】
【化1】

【0010】
式(I)で示される化合物において、
Xは、CH及びNから選択され;
は、(a)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよく、また−OH、1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、−SO1−3アルキル及び−CNから選択される1個の基で置換されていてもよいC1−3アルキル;(b)−C(=O)H;(c)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)C1−3アルキル;(d)−CN;(e)−HC=NOH;(f)−(CH)C=NOH;(g)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−HC=NOC1−3アルキル;(h)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−(CH)C=NOC1−3アルキル;(i)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル;(j)−C(=O)NHR;(k)−CH=CH−フェニルであって、ここで−CH=CH−は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;(l)−CHCH−フェニルであって、ここで−CHCH−は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく;(m)フェニル;(n)−HET−フェニルであって、ここでHETは、O、N及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロ芳香族環であり;(o)−C≡C−フェニル;及び(p)−CH−フェニルであって、ここで−CH−フェニルの−CH−基は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよい;からなる群より選択され、
ただし、フェニル及びHETはすべての出現において、(i)ハロゲン、(ii)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル、(iii)−C(=O)OH、(iv)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、(v)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、(vi)−SOMe、及び(vii)−SONH、から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
は、H、1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、フェニル及び−CH−フェニルからなる群より選択され、ただし、両出現におけるフェニルは、(i)ハロゲン、(ii)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル、(iii)−C(=O)OH、(iv)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、及び(v)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
及びRは、独立して、H、ハロゲン、−CH、−CF、−OCH及び−OCFから選択され;
はハロゲンであり、当該ハロゲンは、式(I)の縮合芳香族環に−CFPO(OR基に対してオルトの位置で結合し;
各R基は、独立して、H及び1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキルからなる群より選択され;そして
xは0、1又は2である。
【0011】
式(I)で示される化合物を用いて、糖尿病、肥満及び他の疾患及び症状を治療及び制御する方法を本明細書に開示する。医薬組成物及び併用療法についても本明細書に開示する。
【0012】
本明細書に開示した化合物は、新しい部類のPTP−1B阻害剤である。当該化合物のうちの1つ(実施例7B)の構造と名称は、下記の2つの公表文献に、PTP−1B阻害剤として開示された。該化合物の合成については、これらの公表文献に開示されなかった:(1)Montalibetら、Biochemical Pharmacology,2004,68:1807−1814;(2)Montalibetら、Journal of Biological Chemistry,2006,281,No.8:5258−5266。
【0013】
発明の詳細な説明
式(I)で示される化合物は以下に要約するように、多くの実施態様を有する:
本発明は上記の化合物を包含し、さらに(可能な場合には)該化合物の個々のジアステレオマー、エナンチオマー及びエピマー、及びラセミ混合物を含むそのジアステレオマー及び/又はエナンチオマーの混合物を包含する。本明細書に開示した具体的立体化学が好適ではあるが、他の立体異性体、例えば、ジアステレオマー、エナンチオマー、エピマー及びこれらの混合物も、PTP−1B媒介疾患の治療に用途を有し得る。不活性であるか、又は活性の低いジアステレオマー及びエナンチオマーは、受容体及び活性化メカニズムに関係する科学研究にとって有用である。
【0014】
本発明はまた、該化合物の薬学的に許容される塩、及び該化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物をも包含する。該化合物は特にインスリン耐性、2型糖尿病、並びに2型糖尿病及びインスリン耐性と関連する脂質異常症の治療に有用である。該化合物はまた肥満の治療にも有用である。それらはまた特定の種類の癌の治療に、また患者において発症した癌の進行の減速にも有用である。それらはまた、神経変性疾患の進行の治療、予防又は減速にも有用である。
【0015】
本明細書に開示した化合物は、(a)当該化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び(b)薬学的に許容される担体、を含有する医薬組成物に使用してもよい。該化合物は1種以上の他の活性な医薬成分を含む医薬組成物に使用してもよい。該化合物はまた式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩を唯一の有効成分とする医薬組成物にも使用してもよい。
【0016】
式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩は、ヒト又は他の哺乳動物患者において2型糖尿病の治療のための医薬の製造に使用してもよい。
2型糖尿病の治療法は、式(I)で示される化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又は該化合物を含有する医薬組成物の治療上有効な量を、治療の必要な患者に投与することを含む。式(I)で示される化合物のその他の医学的用途については、以下に記載する。
【0017】
略号
略号及び用語は、有機化学、医化学、薬理学及び医薬の分野で一般的に使用され、またこれらの分野の実務家が周知であるものを本明細書で使用する。代表的な略号と定義について以下に提示する:
【0018】
Acはアセチル[CHC(O)−]である;AcOは無水酢酸である;9−BBNは9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンである;Bnはベンジルである;BOCはtert−ブチルオキシカルボニルである;DIADはジイソプロピルアゾジカルボキシレートである;DIBALは水素化ジイソブチルアルミニウムである;DMFはN,N−ジメチルホルムアミドである;DMSOはジメチルスルホキシドである;EDAC(又はEDC)は1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−カルボジイミドHClである;EtNはトリエチルアミンである;Etはエチルである;EtOAcは酢酸エチルである;EtOHはエタノールである;3−F−Phは3−フルオロフェニルである;HClは塩酸である;HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールである;HPLCは高速液体クロマトグラフィーである;LCMSは質量スペクトル検出装備HPLCである;LGは脱離基である;Mはモル濃度である;mmolはミリモルである;Meはメチルである;MeOHはメタノールである;MsClは塩化メタンスルホニルである;Nは規定濃度である;NaHMDSはナトリウム・ヘキサメチルジシリアジドである;NaOAcは酢酸ナトリウムである;NaOtBuはナトリウムtert−ブトキシドである;NMOはN−メチルモルホリンN−オキシドである;NMPはN−メチルピロリジノンである;Pd(dba)はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムである;PdCl(PhP)はジクロロビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウムである;PGは不特定の保護基を意味する;Phはフェニルである;PhMeはトルエンである;PPhはトリフェニルホスフィンである;PMBはパラ−メトキシベンジルである;RTは室温である;TBAFはフッ化テトラブチルアンモニウムである;TBSはtert−ブチルジメチルシリルである;tBuはtert−ブチルである;Tfはトリフレートである;TFAはトリフルオロ酢酸である;THFはテトラヒドロフランである;TLCは薄層クロマトグラフィーである;TMSはトリメチルシリルである;TPAPは過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムである。
【0019】
定義
「Ac」はアセチル、すなわちCHC(=O)−である。
「アルキル」は、その炭素鎖について別に定義をしない限り、直鎖又は分枝、又はその組み合わせであってもよい飽和の炭素鎖を意味する。アルコキシ及びアルカノイルなどの「alk」の接頭辞を有する他の基もまた、その炭素鎖について別に定義をしない限り、直鎖又は分枝、又はその組み合わせであってもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどを包含する。
【0020】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖又は分枝、又はその組み合わせであってもよい炭素鎖を意味する。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、へキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどを包含する。
【0021】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖又は分枝、又はその組み合わせであってもよい炭素鎖を意味する。アルキニルの例は、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−ヘプチニルなどを包含する。
【0022】
「シクロアルキル」は、特定の炭素原子数を有する飽和の炭素環を意味する。この用語はアリール基に縮合する炭素環を記載するために使用してもよい。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを包含する。シクロアルケニル環は環内に二重結合を含む。
「アリール」は炭素環芳香族構造に言及するために共通に使用する。最も共通のアリール基はフェニル及びナフチルである。フェニルは一般に最も好適なアリール基である。
【0023】
「ヘテロ環」とは、N、S及びOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む飽和若しくは部分不飽和の環又は環系を意味し、その場合のヘテロ原子数と環の大きさ及び不飽和度(もしあれば)が本明細書にて定義される。へテロ環の例は、テトラヒドロフラン、ピペラジン、ピペリジン及びモルホリンを包含する。
【0024】
「ヘテロアリール」とは、本明細書により具体的に定義するように、N、O及びS(SO及びSOを含む)から選択される少なくとも1個の環へテロ原子を含むヘテロ芳香環を意味する。ヘテロアリールの例は、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル(S−オキシド及びジオキシドを含む)、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリル、キナゾリニル、ジベンゾフラニルなどを包含する。
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を包含する。
「Me」はメチルを表わす。
【0025】
「薬学的に許容される」という成句は、本明細書では、正常な医学的判断を用い、そしてあらゆる適用可能な政府の規制に従い、ヒト又は動物への投与に安全かつ適切である化合物、物質、組成物、塩及び/又は用量形態について言及する場合に使用する。
【0026】
医薬組成物におけるように「組成物」という用語は、有効成分及び担体を構成する不活性成分とを含有する生成物、並びに任意の2種以上の成分の組み合わせ、錯体形成若しくは凝集により、又は1種以上の成分の解離により、又は1種以上の成分の他の型の反応若しくは相互作用により、直接又は間接に生じる任意の生成物を包含するものとする。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することにより調製される任意の組成物をも包含する。
置換基「テトラゾール」とは、2H−テトラゾール−5−イル置換基及びその互変異性体を意味する。
【0027】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式(I)で示される化合物は1個以上の不斉中心を含んでもよく、従って、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、個々のジアステレオマー及びジアステレオマー及び/又はエナンチオマーの混合物として存在してもよい。本発明は式(I)で示される化合物のかかる異性体形状のすべてを含むことを意味する。具体的には、本発明の化合物は少なくとも3個の不斉中心を有する。追加の不斉中心は当該分子上の種々の置換基の性質に依存して存在してもよい。可能な光学異性体、立体異性体及びジアステレオマーのすべてが混合物中に、及び純粋な又は部分的精製の化合物として、本発明の範囲内に包含されるものとする(すなわち、不斉中心のすべての可能な組み合わせが純粋な化合物として、又は混合物中で)。
【0028】
本明細書に記載の化合物の一部のものは、オレフィン二重結合を含んでもよく、別に断りのない限り、E及びZの両方の幾何学的異性体を含むものとする。
本明細書に記載の化合物の一部は、異なる水素の付着点をもつものとして存在してもよく、これを互変異性体という。一例はケトンとそのエノール型であり、ケト−エノール互変異性体として知られる。個々の互変異性体並びにその混合物は、式(I)で示される化合物と共に包含される。
【0029】
1個以上の不斉中心をもつ式(I)で示される化合物は、当該技術分野にて周知の方法により、ジアステレオ異性体、エナンチオマーなどに分離してもよい。
あるいは、エナンチオマー及びキラル中心をもつ他の化合物は、光学的に純粋な出発物質及び/又は既知の立体配位の試薬を用いて立体特異的合成により合成してもよい。
【0030】

用語「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される非毒性塩基又は酸、例えば、無機又は有機の塩基及び無機又は有機の酸から調製する塩をいう。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、亜マンガン塩、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を包含する。特に好適な塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの塩である。固体形状の塩は1種を超える結晶構造で存在してもよく、また水和物の形状であってもよい。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、一級、二級及び三級のアミン、天然産置換アミンなどの置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩を包含する。
【0031】
本発明化合物が塩基性である場合、又はその構造内に塩基性置換基を有する場合、塩は無機及び有機の酸を含む薬学的に許容される非毒性酸から調製してもよい。かかる酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などを包含する。特に好適な酸は、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
本明細書にて使用する場合、式(I)で示される化合物への言及は、薬学的に許容される塩も含むことを意味することが理解されよう。
【0032】
代謝物−プロドラッグ
本発明は治療的に活性な代謝物を含み、その場合、当該代謝物自体も本請求項の範囲に入る。本発明はまたプロドラッグをも包含する;プロドラッグはそれらを患者に投与したときに、あるいは患者に投与した後に、請求項の化合物に変換される化合物である。一部の事例において、本出願の請求項の化学構造はそれ自体がプロドラッグであってもよい。
【0033】
用途
本明細書に具体的に例示された化合物は、インビトロのアッセイが示すように、PTP−1B酵素の阻害において、良好な有効性を示す。該化合物は一般にアッセイの項に記載する酵素アッセイにおいて、2μM未満のIC50値を示し、好ましくは1μM未満のIC50値を有する。
【0034】
PTP−1Bの阻害剤は、インスリン感受性を改善し、糖尿病の予防又は治療に、インスリン耐性が存在する場合にはグルコース耐性及びインスリン感受性を改善する上で、そして肥満を治療又は予防する上で、すべてかかる治療を必要とする哺乳動物、又はかかる治療が有益であり得る哺乳動物、例えばヒトにおいて用途を有し得る。該化合物はさらに一般的には2型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病、又はNIDDM)の治療に有用である。また該化合物はトリグリセリド及び脂質の有益な低減を惹起し得る。
【0035】
PTP−1Bを阻害する化合物は、2型糖尿病に伴う多くの症状、例えば、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症(低HDLレベルを有利に上昇することを含む)、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、膵臓炎、脂肪細胞腫瘍、脂肪細胞癌腫(例えば、脂肪肉腫)、脂質異常症、炎症性腸疾患、一般的な炎症及びインスリン耐性が構成要素である他の障害などの治療、予防又は制御に有用でもあり得る。
【0036】
当該化合物は、糖尿病患者において、及びグルコース耐性障害及び/又は糖尿病前症症状にある非糖尿病患者において、糖及び脂質を低下させる上で有効であることが期待される。該化合物は、糖尿病患者又は糖尿病前症患者においてしばしば発生する高インスリン血症を、これらの患者においてしばしば発生する血漿グルコースレベルの揺れを調節することによって改善し得る。該化合物はまた、インスリン耐性を治療又は低下させる上で有効であり得る。本化合物は妊娠性糖尿病の治療又は予防において有効であり得る。
【0037】
本明細書に記載の化合物、組成物及び医薬はまた、メタボリックシンドロームと関連する有害な続発症の危険を低減する上で、及びアテローム性動脈硬化症の進行の危険を低下させ、アテローム性動脈硬化症の発症を遅延させ、及び/又はアテローム性動脈硬化症の続発症の危険性を低下させる上でも有効であり得る。アテローム性動脈硬化症の続発症には、アンギナ、跛行、心臓発作、卒中、その他を含む。
【0038】
高血糖症を管理下に置くことにより、該化合物はまた、血管再狭窄及び糖尿病性網膜症の遅延又は予防にも有効であり得る。
本発明の化合物はまたβ細胞機能を改善するか又は修復する上で有用性を有し、その結果、それらは1型糖尿病の治療に、又は2型糖尿病の患者のインスリン治療の必要性を遅延若しくは予防する上で有用となり得る。
【0039】
PTP−1Bの過剰発現及び上昇レベルが数種の癌細胞株、例えば慢性骨髄性白血病(CML)、乳癌、卵巣癌及び前立腺癌に観察されており、これらの及び他の癌細胞のキナーゼ活性を制御する上でのPTP−1Bの調節的役割を示唆している。従って、PTP−1B活性の阻害はこれらの癌及び他の癌を治療又は予防するための重要な目標を構成し得る。従って、該化合物は、癌、例えば前立腺癌、乳癌、卵巣癌、多発性骨髄腫、白血病、メラノーマ、リンパ腫、腎臓癌及び膀胱癌などの治療又は予防に使用してもよい。
該化合物はまた、神経変性疾患の治療に用途を有してもよい。
【0040】
該化合物は一般に以下の1種以上の疾患の治療に有効である:(1)2型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病又はNIDDMとしても知られる);(2)高血糖症;(3)グルコース耐性障害;(4)インスリン耐性;(5)肥満;(6)脂質障害;(7)混合型又は糖尿病性脂質異常症;(8)高脂血症;(9)高トリグリセリド血症;(10)高コレステロール血症;(11)低HDLコレステロール;(12)高LDLコレステロール;(13)高アポBリポタンパク質血症;(14)アテローム性動脈硬化症とその続発症;(14)血管再狭窄;(15)腹部肥満;(16)網膜症;(17)メタボリックシンドローム;(18)高血圧;(19)インスリン耐性;(19)癌、及び(20)神経変性疾患。
【0041】
本発明の一態様は、混合型又は糖尿病性脂質異常症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDL値、高LDL値、高脂血症及び/又は高トリグリセリド血症の治療と制御の方法であって、かかる治療の必要な患者に、式(I)を有する化合物の治療上有効な量を投与することを含む方法を提供する。該化合物は単独で使用してもよく、又は有利には、コレステロール生合成阻害剤と共に、特に、HMG−CoA還元酵素阻害剤、例えばロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン又はイタバスタチンと共に投与してもよい。該化合物はまた有利には、他の脂質低下薬物、例えば、コレステロール吸収阻害剤(例えば、スタノールエステル類、チケシド(tiqueside)などのステロールグリコシド類及びエゼチミベ(ezetimibe)などのアゼチジノン類)、ACAT阻害剤(アバシミベ(avasimibe)など)、CETP阻害剤(例えば、トルセトラピブ(torcetrapib)及び国際公開出願WO2005/100298、WO2006/014413及びWO2006/014357号各明細書に記載されたもの)、ナイアシン及びナイアシン受容体アゴニスト、胆汁酸キレート剤、ミクロソームトリグリセリド輸送阻害剤及び胆汁酸再吸収阻害剤などと組み合わせて使用してもよい。これらの併用治療は、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、高LDL及び低HDLなどを含む1種以上の関連症状の治療又は制御に有効であり得る。
【0042】
式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩は、上記の1種以上の疾患を治療する必要のある患者に該化合物の治療上有効な量を投与することによる治療方法に使用してもよい。式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩は、1種以上のリストされた疾患を治療するための医薬の製造において使用してもよい。
【0043】
投与及び投与量範囲
本発明の化合物の有効な用量を哺乳動物、とりわけヒトに提供するために、任意の適切な投与経路を使用してもよい。例えば、経口、直腸、局所、非経口、経眼球、経肺、経鼻などを使用してもよい。用量形態は、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁剤、液剤、カプセル、クリーム、軟膏、エーロゾルなどを含む。好ましくは、式(I)で示される化合物は経口投与する。
【0044】
使用される有効成分の有効な用量は、使用される特定の化合物、投与方法、治療する症状及び治療する症状の重篤度によって変わってもよい。かかる用量は当業者に容易に確認され得る。
【0045】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高トリグリセリド血症又は式(I)で示される化合物が適応とされる他の疾患を治療又は制御する場合、本発明化合物を動物体重1kgあたり約0.1ミリグラムないし約100ミリグラムの1日用量で投与し、好ましくは、1日1回の用量で、又は1日2回ないし6回の分割用量で、又は持続性放出の形態で投与すると、一般的に満足な結果が得られる。最も大きい大型哺乳動物に対して、合計1日用量は約1.0ミリグラムないし約1000ミリグラムである。70kgの成人の場合、合計の1日用量は一般に約1ミリグラムないし約500ミリグラムである。特に強力な化合物の場合、成人に対する用量は0.1mgと少なくてもよい。一部の事例において、1日用量は1gmもの多さでもよい。用法用量はこの範囲内で調整してもよく、又はこの範囲外で最適の治療応答を提供するように調整してもよい。
【0046】
経口投与は通常、錠剤又はカプセルを用いて実施する。錠剤及びカプセルにおける用量の例は、0.1mg、0.25mg、0.5mg、1mg、2mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg及び750mgである。他の経口形態も同じ又は同様の用量であってもよい。これらの錠剤及びカプセルは、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回、投与してもよい。1日1回の投与が一般に好ましい。
【0047】
医薬組成物
本発明の別の態様では、式(I)で示される化合物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、有効成分としての式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに薬学的に許容される担体及び場合により他の治療用成分を含有する。用語「薬学的に許容される塩」とは、無機の塩基又は酸及び有機の塩基又は酸を含む薬学的に許容される非毒性の塩基又は酸から調製される塩をいう。医薬組成物は、プロドラッグを投与する場合、プロドラッグ又は薬学的に許容されるその塩を含有してもよい。
【0048】
当該組成物は、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、眼球用(眼科用)、経肺(鼻腔又は口腔吸入)、又は鼻腔投与に適する組成物を含み、任意の事例において最も適する経路は、処置する症状の性質と重篤度、及び有効成分の性質に依存する。それらは簡便には単位投与形態で提供され、また薬学の技術分野にて周知の任意の方法により調製してもよい。
【0049】
実際に使用する場合、式(I)で示される化合物は、常套の製薬混合法に従って、有効成分として緊密に薬学的担体の混合物に組み合わせてもよい。担体は投与のために所望とされる製剤の形状、例えば、経口又は非経口(静脈内を含む)用の形状に応じて様々な形態を採ってもよい。経口投与形態として組成物を調製する場合、例えば、懸濁液、エリキシル及び溶液のような経口用液状製剤の場合、水、グリコール、油、アルコール、芳香剤、保存剤、着色剤などの任意の通常の製剤媒体を使用してもよい;経口用固形製剤、例えば、粉末、ハード及びソフト・カプセル及び錠剤とする場合、デンプン、糖、微結晶セルロース、賦形剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの担体を使用してもよく、液状製剤よりも固形経口製剤が好適である。
【0050】
それらの投与が容易であることから、錠剤及びカプセルが最も有利な経口投与単位形状の代表である;その場合には明らかに固形の製剤担体が使用される。所望により、錠剤は標準的な水性又は非水性技法により被覆してもよい。かかる組成物及び製剤は、少なくとも0.1パーセントの活性化合物を含有するものである。これらの組成物中の活性化合物の含有率は、勿論、変化し、簡便には用量単位重量の約2パーセントないし約60パーセントとしてもよい。かかる治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な用量が得られる量である。活性化合物はまた鼻腔内に、例えば、液滴又はスプレーとして投与してもよい。
【0051】
錠剤、ピル、カプセルなどはまた、結合剤、例えばトラガントガム、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチン;添加剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、ラクトース又はサッカリンなどを含有してもよい。投与単位形態がカプセルである場合、上記のタイプの物質に加えて、脂肪油などの液状担体を含んでもよい。
【0052】
一部の例では、投与すべき化合物又は塩の溶解度に依拠して、該化合物又は塩を油中の溶液として製剤化することが有利であり得る;溶液としては、1種以上の中鎖脂肪酸のトリグリセリドなどの油、トリアセチンなどの親油性溶媒、親水性溶媒(例えば、プロピレングリコール)、又はこれらの2種以上の混合物中の溶液であり、さらに場合により1種以上のイオン性又は非イオン性の界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリエトキシル化トリグリセリド及び1種以上の中鎖脂肪酸のモノ及び/又はジグリセリドなどを含む。界面活性剤(とりわけ、2種以上の界面活性剤)を含む溶液は、水との接触でエマルジョン又はマイクロエマルジョンを形成する。該化合物はまた、水溶性ポリマーに製剤化してもよく、加熱融解押出及びスプレードライなどの方法により無定形相として分散され;かかるポリマーは酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCS)及びポリビニルピロリジノンなどを含み、ホモポリマー及びコポリマーを含む。
【0053】
様々な他の物質がコーティング剤として又は投与単位の物理的形状を修飾するために存在してもよい。例えば、錠剤はセラック、糖又はその両方により被覆されてもよい。シロップ又はエリキシルは、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素及びチェリー又はオレンジ香気などの芳香剤を含んでいてもよい。
【0054】
式(I)で示される化合物は非経口的にも投与してもよい。これら活性化合物の溶液又は懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリソルベート80、並びに中鎖及び長鎖脂肪酸のモノ及びジグリセリドなどの界面活性剤又はその混合物と適宜混合した水中で調製してもよい。分散液は、グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びその油中混合物中で調製してもよい。保存及び使用の通常の条件下、これらの製剤は微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。
【0055】
注射用に適する医薬形状は、無菌の水溶液又は分散液、及び無菌の注射用水溶液又は分散液の即席調製用の無菌粉末を含む。すべての事例において、その形状は無菌でなければならず、また容易に注射筒処理し得る程度に液状でなければならない。それは製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、また細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対処して保存しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール)、その適切な混合物及び植物油などを含む溶媒又は分散媒体であってもよい。
【0056】
併用療法
式(I)で示される化合物は、式(I)で示される化合物が有用である疾患又は症状の治療又は改善においても有用であり得る他の薬物と組み合わせて使用してもよい。かかる他の薬物は、それが通常用いられる経路及び量で、式(I)で示される化合物と同時に、又は連続して投与してもよい。2型糖尿病、インスリン耐性、肥満、メタボリックシンドローム及びこれらの疾患に伴って同時に罹病する疾病を有する患者を治療する場合に、1種を超える薬物を共通して投与する。本発明化合物は一般にこれらの症状に対して1種以上の他の薬物をすでに摂取している患者に投与してもよい。該化合物はしばしば1種以上の抗糖尿病薬、例えばメトホルミン、スルホニルウレア及び/又はPPARアゴニストなどによる治療をすでに受けている患者に、当該患者の血糖値が治療に適切に応答していない場合に投与する。
【0057】
式(I)で示される化合物を1種以上の他の薬物と同時に使用する場合、かかる他の薬物と式(I)で示される化合物とを含有する単位投与形態の医薬組成物が好適である。しかし、併用療法はまた、式(I)で示される化合物と1種以上の他の薬物とを異なる重なり合うスケジュールに基づいて投与する療法も包含する。1種以上の他の有効成分と組み合わせて使用する場合、本発明化合物と他の有効成分は、それぞれを単独で使用する場合よりも低用量で使用してもよいことが予測される。従って、本発明の医薬組成物は、式(I)で示される化合物に加えて、1種以上の他の有効成分を含有する組成物を包含する。
【0058】
式(I)で示される化合物と組み合わせて投与してもよく、別々に又は同じ医薬組成物中で投与してもよい他の有効成分の例は、限定されるものではないが、以下のとおりである:
(a)PPARガンマアゴニスト及び部分アゴニスト;例えばグリタゾン及び非グリタゾンを含む(例えば:トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン、バラグリタゾン、ネトグリタゾン、T−131、LY−300512、LY−818、及びWO02/08188、WO2004/020408及びWO2004/020409号に開示された化合物);
(b)ビグアニド、例えばメトホルミン及びフェンホルミン;
(c)GPR40アゴニスト;
(d)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤、例えばシタグリプチン、サキサグリプチン及びビルダグリプチン;
(e)インスリン又はインスリン模倣薬;
(f)スルホニルウレア、例えばトルブタミド、グリメピリド、グリピジド及び関連物質;
(g)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボースなど);
(h)患者の脂質プロフィールを改善する薬剤、例えば、(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522及び他のスタチン類);(ii)胆汁酸キレート剤(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体);(iii)ナイアシン受容体アゴニスト、ニコチニルアルコール、ニコチン酸、又はその塩;(iv)PPARαアゴニスト、例えばフェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブラート);(v)コレステロール吸収阻害剤、例えばエゼチミベ;(vi)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、例えばアバシミベ;(vii)CETP阻害剤、例えばトルセトラピブ、及び(viii)フェノール性抗酸化剤、例えばプロブコール;
(i)PPARα/γ二重アゴニスト、例えばムラグリタザール(muraglitazar)、テサグリタザール(tesaglitazar)、ファルグリタザール(farglitazar)及びJT−501;
(j)PPARδアゴニスト、例えばWO97/28149号に記載されたもの;
(k)抗肥満化合物、例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンチラミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY5阻害剤、Mc4rアゴニスト、カンナビノイド受容体1(CB−1)アンタゴニスト/インバースアゴニスト及びβ3アドレナリン作動性受容体アゴニスト;
(l)回腸胆汁酸輸送阻害剤;
(m)アスピリン、非ステロイド抗炎症性薬物、グルココルチコイド、アズルフィジン及びシクロオキシゲナーゼ2選択的阻害剤などの炎症性症状に使用するための薬剤;
(n)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(o)GLP−1、
(p)GIP−1、
(q)GLP−1類似体、例えばエクセンディン、例えばエクセナチド(ビエッタ(Byetta)、及び
(r)ヒドロキシステロールデヒドロゲナーゼ−1(HSD−1)阻害剤。
【0059】
上記の組み合わせは、本発明の化合物と、他の1種の活性化合物との組み合わせのみならず、2種以上の他の活性化合物との組み合わせをも包含する。限定するものではない例としては、式(I)を有する化合物と、ビグアニド、スルホニルウレア、HMG−CoA還元酵素阻害剤、他のPPARアゴニスト、GPR40アゴニスト、DP−IV阻害剤及び抗肥満化合物から選択される2種以上の活性化合物との組み合わせを包含する。
【0060】
生物活性測定用アッセイ法
本出願化合物の活性は、以下のPTP−1B阻害活性用のアッセイ法を用いて証明される。
【0061】
ホスファターゼ・アッセイ・プロトコール
材料:
EDTA:エチレンジアミン四酢酸(シグマ)
DMH:N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(メルカプトアセチル)ヒドラジン(R.Singh and G.M.Whitesides,J.Org.Chem.56,pp.2332−2337,(1991)に公開された合成);DTTと置き換え可能;ジチオスレイトール・ビストリス−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)2,2’,2”−ニトリロトリエタノール(シグマ)トリトンX−100−オクチルフェノールポリ(エチレン−グリコールエーテル)10(ピアース)
抗体:抗−グルタチオンS−トランスフェラーゼ・ウサギ(H及びL)フラクション(モレキュラー・プローブ)
【0062】
酵素:ヒト組換えPTP−1B:アミノ酸1−320含有、GST酵素(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)又はアフィニティクロマトグラフィーにより精製したFLAGペプチドに縮合(Huyer et al,1997,J.Biol.Chem.,272,843−852)。野生型は活性部位システイン(215)を含むが、突然変異体は活性部位セリン(215)を含む。
トリチル化ペプチド:Bz−NEJJ−CONH、Mwt.808、実験式、C323212
【0063】
保存液
(10×)アッセイバッファー 500mMビストリス(シグマ)pH6.2
MW=209.2
20mM−EDTA(ギブコ/BRL)
保存:4℃にて
【0064】
日々新たに調製:
アッセイバッファー(1×) 50mMビストリス
(室温) 2mM−EDTA
5mM−DMH(MW=208)
【0065】
酵素希釈
バッファー(氷上維持) 50mMビストリス
2mM−EDTA
5mM−DMH
20%グリセロール(シグマ)
0.01%トリトンX−100(ピアース)
【0066】
抗体希釈
バッファー(氷上維持) 50mMビストリス
2mM−EDTA
【0067】
IC50結合アッセイ・プロトコール:
特異的ホスファターゼに対する放射性リガンドの結合を潜在的に阻害する化合物(リガンド)を96穴プレート中で以下のようにスクリーニングする:
【0068】
各ウエルに以下の溶液を25℃で以下の時系列で添加する:
1.アッセイバッファー110μl。
2.アッセイバッファー(1×)中の50mMトリチル化BzN−EJJ−CONH10μl、25℃で。
3.DMSO中の試験化合物10μlを10段階の異なる濃度に系列希釈し(最終DMSO、約5%v/v)、25℃で二重試験。
4.酵素希釈バッファー中の3.75μg/ml精製ヒト組換えGST−PTP−1Bを10μl。
5.プレートを2分間振盪する。
6.抗体希釈バッファーに希釈した0.3μg/μlの抗−グルタチオンS−トランスフェラーゼ(抗−GST)ウサギIgG(モレキュラー・プローブス)10μlを25℃で。
7.プレートを2分間振盪する。
8.プロテインA−PVT SPAビーズ(アマーシャム)50μlを25℃で。
9.プレートを5分間振盪する。マイクロベータ96穴プレートカウンターにて結合シグナルを定量する。
10.非特異的シグナルを、抗−GST抗体の不在下の酵素−リガンドの結合と定義する。
11.100%結合活性は、抗−GST抗体の存在下の酵素−リガンドの結合と定義するが、試験リガンドの不在下の非特定の結合を差し引く。
12.阻害率(パーセント)はそれに準じて計算する。
13.IC50値は4−パラメータ/多重部位方程式により、非線形回帰適合から近似し(“Robust Statistics”,New York,Wiley,P.J.Huber(1981)に記載あり)、nM単位で記録する。
14.10μMで90%を超える阻害を示す試験リガンド(化合物)は活性であると定義する。
【0069】
酵素アッセイPTP−1B
アッセイバッファー 50mMビストリス(pH=6.3)
2mM−EDTA
5mM−N,N’−ジメチル−N,N’−ビス
(メルカプトアセチル)ヒドラジン(DMH)
基質:10mMフルオレセイン二リン酸(FDP)−20℃で保存
(10mM−DiFMUPも使用してもよい)
酵素希釈バッファー 50mMビストリス(pH=6.3)
2mM−EDTA
5mM−DMH
20%(v/v)グリセロール
0.01%トリトンX−100
【0070】
アッセイは96穴プレート中、室温で実施した。反応混合物は170μl中に、50mM−ビス−トリス(pH=6.3)、2mM−EDTA、5mM−N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(メルカプトアセチル)ヒドラジン(DMH)及び10μMフルオレセイン二リン酸(FDP)又は6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルリン酸(DiFMUP)を含んでいた。DMSOに溶解した10系列の濃度(段階希釈)の試験化合物(阻害剤)10μl又は対照としてのDMSOのみを各ウエルに加え、プレートを2分間混合した。反応は、20μlの希釈したPTP−1B(50mMビス/トリス(pH=6.3)、2mM−EDTA、5mM−DMH、20%グリセロール及び0.01%トリトンX−100中、FDPを50nM、DiFMUPを0.5nM)を加えることにより開始させた。ホスファターゼ活性は15〜30分間連続して、蛍光産物フルオレセイン一リン酸(FMP)又は6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシル−4−クマリン(DiFMU)の出現をモニターすることにより追跡した;この際、スペクトロマックス・ジェミニ蛍光プレートリーダー(モレキュラー・プローブス)を用い、FDPについては励起を440nm、発光を530nm(カットオフフィルターは525nm)とし、DiFMUPについては励起360nm、発光450nm(カットオフフィルターは435nm)とした。アッセイはすべて少なくとも二重測定にて実施した。FMP又はDiFMU形成の初期速度を阻害剤の濃度に対してプロットし、データを4−パラメータ方程式に適合させ、適合の変曲点がIC50となる。
【0071】
可逆性アッセイ
PTP1Bについての酵素アッセイと同じ試薬。IC50値は上記のように96穴プレート中、化合物について10μMのFDP及び5nMのPTP1B(最終濃度)を用いて決定した。ホスファターゼ活性は10分間追跡した。反応混合物の40倍希釈は別の96穴プレートで、FDP反応混合物5μlを10μM−DiFMUP含有のアッセイバッファー195μlに移すことにより得た。DiFMUの産生は30分間追跡した。FDP反応とDiFMUP反応両方についてのデータは、4−パラメータ方程式に適合させ、FDPとDiFMUP反応両方についての適合の変曲点でIC50値を決定した。化合物はFDPからDiFMUPバッファーに希釈してIC50値が>20倍シフトした場合に逆転可能であった。
【0072】
ラットでの薬物動態
ラットにおける経口薬物動態
手順:
カナダの動物愛護に関する審議会指針に従って該動物を収容し、給餌し、飼育する。
雄性スプラーグ−ドーリーラット(325〜375g)を各PO血中レベルの検討に先立ち、一夜絶食する。
【0073】
ラットを1匹ずつ拘束装置に容れ、その箱をしっかりと固定する。ゼロ血液サンプルは尾部先端の一部を切除する(1mm以下)ことにより採取する。次いで、尾部をしっかりとした穏やかな動きで先端から付け根まで押さえつけ、血液を搾り出す。約1mLの血液をヘパリン添加バキュティナー管に採取する。
化合物は必要に応じて10mL/kgの標準投与容量で調製し、16ゲージ3”摂食針を胃に挿入し、経口投与する。
【0074】
引き続く採血はゼロ採血と同じ方法で実施するが、再度尾部に傷をつける必要はない。尾部をガーゼ片で清拭し、適宜ラベルを貼った管に上記同様に絞り/押し出す。
サンプル採取直後に、血液を遠心分離し、明瞭にマークしたバイアルに容れ、分析時までフリーザー中に保存する。
【0075】
PO投与後、ラット血液レベルの判定のための典型的時点は以下のとおりである:
0、15min、30min、1h、2h、4h、6h
4時間時点での採血後、ラットに任意に食餌を与える。水については検討期間中終始与える。
【0076】
媒体
POラット血中レベル判定には、以下の媒体を使用してもよい:
PEG200/300/400:2mL/kgに制限
メトセル0.5%〜1.0%:10mL/kg
トウィーン80:10mL/kg
【0077】
PO血中レベルのための化合物は懸濁液の形状であってもよい。より良好な溶解のために、該溶液は約5分間ソニケーター(超音波処理機)上に設置してもよい。
分析のために、一部分を等容量のアセトニトリルで希釈し、遠心分離してタンパク質沈殿を除去する。上清はUV検出を有するC−18HPLCカラムにそのまま注入する。定量は既知量の薬物を加えた清浄血液サンプルに関して実施する。バイオアベイラビリティ(F)はi.v.(静脈内)対p.o.(経口)につき曲線下面積(AUC)を比較することにより評価する。
【0078】
【数1】

【0079】
クリアランス速度は以下の関係式から計算する:
【0080】
【数2】

【0081】
CLの単位はmL/h・kg(ミリリットル/時間・キログラム)
【0082】
ラットにおける静脈内投与薬物動力学
手順:
カナダの動物愛護に関する審議会指針に従って動物を収容し、給餌し、飼育する。
雄性スプラーグ−ドーリーラット(325〜375g)を、吊り床、籠状蓋、給水瓶及び食餌を備えたプラスチック靴箱様籠に収容する。
化合物は必要に応じて1mL/kgの標準投与容量で調製する。
【0083】
ラットはゼロ血液サンプル用に出血させ、CO鎮静下に投薬する。ラットは1匹ずつ予めCOを入れたチャンバーに収容し、ラットが正向反射を失ったとき、直ちに取り出す。次いで、ラットを拘束板上に置き、CO送達用ノーズコーンを口輪に被せ、ラットを輪ゴムで板上に拘束する。ピンセットとハサミで頚静脈を露出し、ゼロサンプルを取り、測定した用量の化合物を頚静脈に注射する。注射部位に軽い指圧を加え、ノーズコーンを取り去る。時間を記録する。これをゼロ時点とする。
【0084】
尾部の先端の一部を切除する(1〜2mm)を付けることで5分間出血させる。次いで、尾部をしっかりとした穏やかな動きで先端から付け根まで押さえつけ、尾部から血液を搾り出す。約1mLの血液をヘパリン添加採血バイアルに採取する。引き続く出血は同じ様式で行うが、再度尾部に傷をつける必要はない。尾部をガーゼ片で清拭し、適宜ラベルを貼った管に上記同様に出血させる。
【0085】
I.V.投与後のラット血液レベル判定のための典型的時点は以下のとおりである:
0、5min、15min、30min、1h、2h、6h
又は 0、5min、30min、1h、2h、4h、6h。
【0086】
媒体
IVラット血中レベル判定には、以下の媒体を使用してもよい:
デキストロース: 1mL/kg
2−ヒドロキシプロピル−b−シクロデキストリン 1mL/kg
DMSO(ジメチルスルホキシド):動物1匹につき0.1mL投与容量に限定
PEG200:40%無菌水と混合した60%以下 − 1mL/kg
もし溶液に濁りがある場合には、デキストロースと共に、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムを加えてもよい。
【0087】
分析のために、一部分を等容量のアセトニトリルで希釈し、遠心分離してタンパク質沈殿を除去する。上清はUV検出を有するC−18HPLCカラムにそのまま注入する。定量は既知量の薬物を加えた清浄血液サンプルに関して実施する。バイオアベイラビリティ(F)はi.v.(静脈内)対p.o.(経口)につき曲線下面積(AUC)を比較することにより評価する。
【0088】
【数3】

【0089】
クリアランス速度は以下の関係式から計算する:
【0090】
【数4】

【0091】
CLの単位はmL/h・kg(ミリリットル/時間・キログラム)である。
【0092】
PTP−1B未処理細胞アッセイ
組換えバキュロウイルス転移ベクターの構築と昆虫細胞
簡単に説明すると、Bac−to−Bacバキュロウイルス発現システム(ギブコ−BRL、ミシッサウガ、オンタリオ、カナダ)を用い、PTP1B cDNA(エリクソン博士(Dr.R.L.Erikson;ハーバード大学、米国)から入手)を、pFASTBACドナープラスミド(cDNA(PTP1B−FL)の5’末端にFLAG配列を含むように設計する)にクローン化する。組換えプラスミドを適格DH10BAC大腸菌細胞に形質転換する。遺伝子転移と抗生物質選択の後、組換えバクミドDNAを、選択した大腸菌コロニーから単離し、sf9昆虫細胞(インビトロゲン、サンディエゴ、カリフォルニア、米国)に形質移入するために使用する。sf9細胞は、攪拌フラスコ中、サマーズとスミスのプロトコール(Summers and Smith,A manual for Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures(バキュロウイルスベクター法と昆虫培養手法の手引き),Bulletin No.1555 テキサスA&M大学、テキサス農学実験ステーション、カレッジステーション、テキサス、1987年)に従い、10%熱不活性化胎児血清(ギブコ−BRL)を含むグレーセス(Graces)捕捉培地(ギブコ−BRL、ミシッサウガ、オンタリオ、カナダ)中で28℃で培養する。
【0093】
未処理細胞アッセイ
PTP1B−FLを発現する感染sf9細胞及び模擬感染細胞を、5分間、460rpm(48g)のゆるやかな遠心分離(ベックマンGS−6R)により29hpi(感染後の時間)に収穫する。細胞をアッセイバッファー(15mMヘペスで緩衝化したハンク溶液、pH7.4;シグマ(セントルイス、ミズーリ、米国)から入手)中で1回洗浄し、300rpm(21g)で10分間、再遠心分離する。次いで、この細胞をアッセイバッファー中でゆるやかに再懸濁し、トリパンブルー排除による細胞密度と生存度用のヘマサイトメーターを用いて試験する。アッセイはトムテック・クァドラ96ピペット分配ロボットを用い、各添加ごとに細胞をゆるやかに混合するようにプログラムして実施する。200μLのアッセイバッファーに、2×10個のPTP発現細胞又は模擬感染細胞を96穴ポリプロピレンプレートの各ウエルに分配し、試験化合物又はDMSO媒体(3μL)と共に15分間、37℃で予備インキュベートする。予備インキュベートした細胞を最終濃度10mMのpNPP(リン酸p−ニトロフェニル;シグマ−アルドリッチ・カナダ社から入手;オークビル、オンタリオ)で15分間チャレンジし、4℃で遠心分離し、基質加水分解の量を、分光光度法によりOD405で定量する。
【0094】
経口グルコース負荷試験
経口グルコース負荷試験は知覚反応のあるツッカー(Zucker)肥満fa/faラット又は肥満ob/obマウス(12週令以上)にて実施する。実験に使用する前に、動物は16〜18時間絶食とする。試験化合物又は媒体は、2g/kg体重の用量でグルコース溶液を経口投与する60分前に、腹腔内又は経口で与える。血糖値はメディセンス・グルコメーターを用いて、グルコース投与の前後、異なる時点で採取した尾部出血サンプルから測定する。血糖値の時間曲線を作成し、120分間の曲線下面積(AUC)を計算する(グルコース投与時をゼロ時とする)。阻害率(パーセント)は媒体−対照群をゼロ・パーセント阻害として、AUCを用いて決定する。
【0095】
別の検討において、C57BL/6Jマウスに、3ないし4週間、高脂肪(35%)及び高炭水化物(36%)食餌(バイオサーブ(Bioserv);フレンチタウン、ニュージャージーから入手)を給餌する;この時点で50〜100%の基線体重を得る。経口グルコース負荷試験は上記と同様に実施する。
【0096】
実施例
以下の実施例は本発明を説明するために提供するものであり、如何なる方法でも本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明の範囲は添付の請求項により規定される。
【0097】
本明細書に開示した化合物の調製方法は、以下の工程図及び実施例にて説明する。出発物質は市販品として入手し得るか、又は文献上既知の手法により若しくは説明どおりに調製する。本発明はさらに上記定義の式(I)で示される化合物の調製法を提供する。一部の事例において、前記工程図を実施する順序は、反応を容易にするために又は不所望の反応産物を回避するために変更してもよい。以下の実施例は説明することを目的として提供するものであり、開示された発明を制限しようとするものではない。
【0098】
実施例1
3−((E)−2−{5−ブロモ−6−[ジフルオロ(ホスホノ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸
【0099】
【化2】

【0100】
工程1:6−アミノ−5−ブロモ−2−ナフトエ酸メチル
6−アミノ−2−ナフトエ酸メチル(0.5g)のTHF(10ml)中の溶液に、三臭化ピリジニウム(0.87g)を加えた。反応混合物を0℃で1時間攪拌し、次いで、SiOのパッドで濾過し、ヘキサンで洗浄した。有機洗浄液を蒸発乾固し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによりヘキサンで溶出精製して標題化合物を得た。
【0101】
工程2:5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフトエ酸メチル
6−アミノ−5−ブロモ−2−ナフトエ酸メチル(700mg)の水(5mL)中の溶液に、0℃でHSOを加えた。反応混合物を30分間攪拌した。次いで、NaNO(0.3g)の水5mL中の溶液を滴下し、混合物を90分間攪拌した。この溶液に0℃でKI溶液(1.1g/水5mL)を加えた。反応液を室温で一夜攪拌し、その後飽和NHCl溶液を混合物に加えた。この混合物をEtOAcで抽出し、抽出液をNaSOで乾燥した。有機抽出液を蒸発乾固し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーによりヘキサンで溶出精製して標題化合物を得た。
【0102】
工程3:(5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフチル)メタノール
5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフトエ酸メチル(0.37g、0.95mmol)のトルエン(10mL)中の溶液に、−78℃でDIBAL(1M溶液、PhMe中;3mL,3mmol)を滴下した。温度を1時間で0℃に上昇させた。1M−HCl(10mL)を加えて反応を停止させ、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥した。有機抽出液を蒸発乾固し、標題化合物を得た。
【0103】
工程4:1−ブロモ−6−(ブロモメチル)−2−ヨードナフタレン
POBr(662mg、2.3mmol)のCHCl(4.5mL)中の溶液に、0℃でDMF(2.25mL)を滴下した。反応液を10分間攪拌し、次いで、(5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフチル)メタノール(280mg、0.77mmol)のCHCl(5mL)中の溶液を加えた。反応混合物を30分間攪拌し、飽和NHCl溶液を加えて反応を停止させ、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥した。有機抽出液を蒸発乾固し、標題化合物を得て、このものをそのまま次工程で使用した。
【0104】
工程5:(5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフチル)メチルホスホン酸ジエチル
工程4からの1−ブロモ−6−(ブロモメチル)−2−ヨードナフタレン(270mg)に、亜リン酸トリエチル(4mL)を加えた。反応混合物を1時間加熱還流し、高真空蒸留により過剰の亜リン酸トリエチルを除去し、標題生成物を得た。
【0105】
工程6:3−[(E)−2−(5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフチル)エテニル]安息香酸メチル
工程5からの(5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフチル)メチルホスホン酸ジエチル(250mg)のTHF(5mL)中の溶液に、0℃でNaH(60%/鉱油;17mg)を加えた。反応混合物を1時間攪拌し、3−ホルミル安息香酸メチル(85mg)を加え、室温で1時間攪拌を続けた。この混合物に飽和NHCl溶液を加えて反応を停止させ、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥、蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより5%EtOAc/ヘキサンで溶出精製して標題化合物を得た。
【0106】
工程7:3−((E)−2−{5−ブロモ−6−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸メチル
この生成物は、文献(S.Shibuya、Tetrahedron、1997,53.3,815)の手法に従い、3−[(E)−2−(5−ブロモ−6−ヨード−2−ナフチル)エテニル]安息香酸メチルから、臭化((ジエトキシホスフィニル)ジフルオロメチル)亜鉛との反応により得た。
【0107】
工程8:3−((E)−2−{5−ブロモ−6−[ジフルオロ(ホスホノ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸
工程7からの3−((E)−2−{5−ブロモ−6−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸メチル(35mg)の加水分解は、CHCl(1mL)中、TMSBr(2mL)を用いて、室温で一夜実施した。混合物を蒸発乾固させ、残渣をエタノールに溶解した。これを再度蒸発乾固させ、このプロセスを3回繰り返した。反応残渣を水に溶解し、1N−NaOHで処理し、標題生成物をナトリウム塩として得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ8.52(d,1H),8.30(s,1H),8.15(m,2H),7.95−8.05(m,3H),7.72(d1H),7.60(m,3H)。
【0108】
実施例2
3−((E)−2−{6−ブロモ−7−{ジフルオロ(ホスホノ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸
【0109】
【化3】

【0110】
工程1:3−ブロモ−7−メチル−2−ナフトアルデヒド
文献(Sun,Q.,Lavoie E.J.;Heterocycles;1996,43,(4),737−743)記載どおりに、7−メチル−2−ナフトアルデヒド(430mg)、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン(500mg)、BuLi(1.6M/ヘキサン;4.95mL)及びテトラフルオロジブロモエタン(2.5mL)から、標題生成物を産生させた。
【0111】
工程2:(3−ブロモ−7−メチル−2−ナフチル)(ヒドロキシ)メチルホスホン酸ジエチル
亜リン酸ジエチル(0.22mL)のTHF(5mL)中の溶液に、−78℃でLiHMDS(1当量の1M THF溶液)を加えた。反応混合物を−78℃で1時間攪拌した。3−ブロモ−7−メチル−2−ナフトアルデヒドの溶液を滴下し、反応液を0℃で一夜攪拌した。飽和NHCl溶液で反応を停止し、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥した。有機抽出液を蒸発乾固し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより、50〜100%EtOAc/ヘキサンで溶出精製して標題生成物を得た。
【0112】
工程3:3−ブロモ−7−メチル−2−ナフトイルホスホン酸ジエチル
塩化オキサリル(0.15mL)のCHCl(2.5mL)中の溶液に、−78℃でDMSO(0.23mL)を加えた。反応液を10分間攪拌し、その後、(3−ブロモ−7−メチル−2−ナフチル)(ヒドロキシ)メチルホスホン酸ジエチル(160mg)のCHCl(2.5mL)中の溶液を滴下した。反応液を−78℃で1時間攪拌し、その後、トリエチルアミン(0.66mL)を混合物に加え、温度を室温まで上昇させた。水(5mL)を加え、混合物をCHClで抽出した。有機抽出液を併合し、NaSOで乾燥し、蒸発乾固して標題生成物を得て、このものはそのまま次工程で使用した。
【0113】
工程4:(3−ブロモ−7−メチル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル
3−ブロモ−7−メチル−2−ナフトイルホスホン酸ジエチル(160mg)のCHCl(3mL)中の溶液に、−78℃で三フッ化(ジエチルアミノ)イオウ(0.44mL)を加えた。反応液を室温で5時間攪拌し、次いで、氷/水/CHCl混合物上に注いだ。有機抽出液を50%NHOH/水及び食塩水で逆洗浄した。次いで、抽出液をNaSOで乾燥し、蒸発乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより、40%へキサン/EtOAcで溶出精製して標題生成物を得た。
【0114】
工程5:[3−ブロモ−7−(ブロモメチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル
(3−ブロモ−7−メチル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(200mg)のCCl(12mL)中の溶液に、NBS(90mg)及び触媒量の過酸化ベンゾイルを加えた。混合物を2時間還流し、次いで、ヘキサンで希釈した。この溶液をセライトのパッドで濾過し、ヘキサンで洗浄した。ヘキサン洗浄液を蒸発乾固させ、標題生成物を得た。
【0115】
工程6:{6−ブロモ−7−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]−2−ナフチル}メチルホスホン酸ジエチル
亜リン酸ジエチル(0.22mL)のトルエン(5mL)中の溶液に、0℃でNaH(60%/鉱油、20mg)を加えた。反応混合物を1時間攪拌し、次いで、[3−ブロモ−7−(ブロモメチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(220mg)のトルエン(2mL)中の溶液を滴下した。反応液を0℃で1時間攪拌し、飽和NHCl溶液で反応を停止し、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥した。有機抽出液を蒸発乾固し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより、50%EtOAc/へキサンで溶出精製して標題化合物を得た。
【0116】
工程7:3−((E)−2−{6−ブロモ−7−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸メチル
{6−ブロモ−7−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]−2−ナフチル}メチルホスホン酸ジエチル(190mg)及び3−ホルミル安息香酸メチル(60mg)の脱ガスTHF(5mL)中の溶液に、−78℃で、カリウムtert−ブトキシド(THF中1M溶液;0.35mL)を加え、その反応溶液を0℃で1時間攪拌した。混合物に飽和NHCl溶液を加えて反応停止し、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥し、蒸発乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより、25%EtOAc/へキサンで溶出精製して標題生成物を得た。
【0117】
工程8:3−((E)−2−{6−ブロモ−7−{ジフルオロ(ホスホノ)メチル]−2−ナフチル}エテニル}安息香酸
工程7からの3−((E)−2−{6−ブロモ−7−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]−2−ナフチル}エテニル)安息香酸メチル(120mg)の加水分解は、CHCl(1mL)中のTMSBr(2mL)を用いて、室温で一夜実施した。混合物を蒸発乾固させ、残渣をエタノールに溶解した。これを再度蒸発乾固させ、このプロセスを3回繰り返した。反応残渣を水に溶解し、1N−NaOHで処理し、標題生成物をナトリウム塩として得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ8.84(s,1H),8.22(s,1H),8.12(s,1H),8.05(s,1H),7.88(m,2H),7.78(d,1H),7.70(d,1H),7.40(m,3H)。
【0118】
実施例3〜6:
【0119】
【化4】

【0120】
実施例3
(3−ブロモ−7−メチル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸
(3−ブロモ−7−メチル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(0.1g;実施例2、工程4から)をCHCl(1mL)中、TMSBr(2mL)で、室温にて一夜加水分解した。混合物を蒸発乾固させ、残渣をエタノールに溶解した。これを再度蒸発乾固させ、このプロセスを3回繰り返した。反応残渣を水に溶解し、1N−NaOHで処理して標題生成物をナトリウム塩として得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ8.15(d,2H),7.70(m,2H),7.45(d,1H),2.50(s,3H)。
【0121】
実施例4
[3−ブロモ−7−(シアノメチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸
[3−ブロモ−7−(ブロモメチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(0.06g;実施例2、工程5から)のDMSO(3mL)中の溶液に、NaCN(18mg)を加えた。反応液を室温で1時間攪拌した。水を加えて反応を停止させ、エーテルで2回抽出した。有機抽出液をNaSOで乾燥し、蒸発乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより、20%EtOAc/へキサンで溶出精製してホスホン酸エステル(20mg)を得た。[3−ブロモ−7−(シアノメチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチルは、TMSBr(2mL)中で室温にて一夜加水分解した。混合物を蒸発乾固させ、残渣をエタノールに溶解した。これを再度蒸発乾固させ、このプロセスを3回繰り返した。反応残渣を水に溶解し、1N−NaOHで処理して標題生成物をナトリウム塩として得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ8.40(d,1H),8.34(s,1H),8.13(s,1H),−8.05(d,1H),7.72(d1H),4.20(s,2H)。
実施例5
【0122】
(3−ブロモ−7−ホルミル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸
[3−ブロモ−7−(ブロモメチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(0.2g;実施例2、工程5から)のジオキサン5mL中の溶液に、N−メチルモルホリンN−オキシド(0.17g)を加えた。反応混合物を1時間還流した。混合物に飽和NHCl溶液を加えて反応停止し、混合物をEtOAcで抽出し、抽出液をNaSOで乾燥し、蒸発した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより10〜20%EtOAc/へキサンで溶出精製して、(3−ブロモ−7−ホルミル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(0.15グラム)を得て、これをCHCl(1mL)中のTMSBr(2mL)で、室温にて一夜加水分解した。混合物を蒸発乾固させ、残渣をエタノールに溶解した。これを再度蒸発乾固させ、このプロセスを3回繰り返した。反応残渣を水に溶解し、1N−NaOHで処理して標題生成物をナトリウム塩として得た。
1H NMR(500MHz,CD3OD):δ10.22(s,1H),8.70(s,1H),8.51(s,1H),8.42(s,1H),8.09(m2H)。
【0123】
実施例6
(7−アセチル−3−ブロモ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸
工程1:[3−ブロモ−7−(1−ヒドロキシエチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル
(3−ブロモ−7−ホルミル−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(0.1g;実施例5)のTHF(1mL)中の溶液に、−78℃で、MeMgBr(THF中3N溶液、79μL)を加えた。温度を0℃に上昇させ、1時間攪拌した。混合物に飽和NHCl溶液を加えて反応停止し、EtOAcで抽出し、有機抽出液をNaSOで乾燥し、蒸発乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより10〜30%へキサン/EtOAcで溶出精製して、標題生成物を得た。
【0124】
工程2:(7−アセチル−3−ブロモ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル
工程1からの[3−ブロモ−7−(1−ヒドロキシエチル)−2−ナフチル](ジフルオロ)メチルホスホン酸ジエチル(20mg)のCHCl(2mL)中の溶液に、0℃で、デス−マーチン試薬(24mg)を加えた。温度を室温まで上昇させ、反応液を1時間攪拌した。反応液をSiOのパッドで濾過し、30%EtOAc/ヘキサンで溶出し、有機物を蒸発乾固した。残渣をニートのTMSBr(3mL)に溶解して加水分解し、室温で一夜攪拌した。混合物を蒸発乾固し、残渣をエタノールに溶解した。これを再度蒸発乾固させ、このプロセスを3回繰り返した。反応残渣を水に溶解し、トルエンと共蒸留し、ポンプで高真空として標題生成物を得た。
H NMR(500MHz,CDOD):δ8.79(d,1H),8.50(s,1H),8.39(s,1H),8.15(d,1H),8.02(d1H),2.75(s,3H)。
【0125】
実施例7
[(3−ブロモ−6−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸
【0126】
【化5】

【0127】
工程1〜3:6,7−ジブロモ−2−ナフトニトリル
文献記載の手法(Hanack,M.,Grobhans,R.;Chem.Ber.1992,125,1243−1247)に従って、市販品として入手し得る4,5−ジブロモ−o−キシレンから2工程で、又は市販品として入手し得る4−ブロモ−o−キシレンから3工程で、6,7−ジブロモ−2−ナフトニトリルを調製し得る。
【0128】
工程4:7−ブロモ−6−ヨード−2−ナフトニトリル及び6−ブロモ−7−ヨード−2−ナフトニトリル
6,7−ジブロモ−2−ナフトニトリル(15g)及びTMSCl(6.73mL)のTHF(250mL)中の溶液に、−78℃で激しく攪拌しながら、n−BuLi(53mL;1.6M/ヘキサン;予め−20℃に冷却)を素早く加え、その混合物をさらに5分間攪拌し、飽和NHClで反応停止した。次いで、混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を黄色固体として得た。
H NMR(400MHz,アセトン−d)(2つの位置異性体の混合物):δ8.53(s,1H),8.42(s,1H),8.33(s,1H),8.30(S,1h),8.23(S,1h),8.20(S,1h),8.18(d,1H),8.07(d,1H),7.82−7.77(m,2H),0.50(s,18H)。
【0129】
上記生成物のジクロロメタン(250mL)中の溶液に、過剰のIClを加え、その混合物を室温で1時間攪拌した。次いで、この溶液をすべてのIClが消費されるまで10%Naで洗浄した。次いで、この溶液を水及び食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣をエーテル/ヘキサンから再結晶して、所望の生成物を得た。
H NMR(400MHz,アセトン−d)(2つの位置異性体の混合物):δ8.74(s,1H),8.73(s,1H),8.46−8.44(m,4H),8.10−8.07(m,2h),7.84−7.81(m,2H)。
【0130】
工程5:[(3−ブロモ−6−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル及び[(3−ブロモ−7−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル
火炎乾燥丸底フラスコにCuBr(99.999%)及びTHF(10mL)を入れ、文献記載の手法(S.Shibuya,Tetrahedron 1997,53.3,815)に従って、臭化((ジエトキシホスフィニル)ジフルオロメチル)亜鉛(29mL;1.72M/THF)を加えた。この懸濁液をN下で15分間攪拌した。次いで、7−ブロモ−6−ヨード−2−ナフトニトリル(7.1g)を固形物として加え、その混合物を一夜45℃に加熱し、室温に冷却した。次いで、懸濁液に半飽和NHClを加えて反応停止し、1:1エーテル/酢酸エチルで抽出した(3×)。抽出液を常法どおりに処理し、粗生成物を得て、これを先ずフラッシュクロマトグラフィー(40%酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。次いで、2種類の位置異性体をHPLCにより分離した。50%酢酸エチル/ヘキサンによる溶出は、先に極性の低い異性体[(3−ブロモ−7−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチルを与えた。
H NMR(400MHz,アセトン−d):δ8.72(s,1H),8.54(s,1H),8.46(s,1H),8.19(d,1H),7.95(d,1H),4.26(m,4H),1.33(t,6H)。
【0131】
それに続く溶出はより極性の高い異性体[(3−ブロモ−6−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチルを与えた。
H NMR(400MHz,アセトン−d):δ8.56(s,2H),8.43(s,1H),8.35(d,1H),7.93(d,1H),4.26(m,4H),1.33(t,6H)。
【0132】
工程6:[(3−ブロモ−7−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸(7a)
[(3−ブロモ−7−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(2.2g)のジクロロメタン(5mL)溶液とTMSBr(7mL)を一夜攪拌し、濃縮した。残渣はジクロロメタン(2×)、エタノール/水(2×)と共蒸発させ、次いで、メタノール(20mL)に溶解した。次いで、アンモニア(30%)を激しく攪拌しながら加え、混合物を濃縮し、メタノールと共蒸発させた(3×)。固形残渣をエーテルで洗浄し、所望の生成物を白色粉末として得た。MS(−ESI):m/z360.0及び361.9(M−1)
注記:[(3−ブロモ−6−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸(7b)は工程6に記載の方法と同様の方法で得た。MS(−ESI):m/z360.0,361.9。
【0133】
実施例8a
[{2−[(フェニルアミノ)カルボニル]−6−ブロモキノリン−7−イル}(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸
【0134】
【化6】

【0135】
工程1:(4−ブロモ−3−ヨードフェニル)アミン
3−ヨードアニリン(12mL、100mmol)のCHCl(400mL)中の溶液に、−10℃で、2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン(45.1g、110mmol)を分割して加え、その間、内部温度は−10℃に維持した。4時間攪拌した後、1N−NaOH(150mL)を加え、その生成物をCHClで抽出した。併合した抽出液を水、次いで食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥した。真空下濃縮した後、粗生成物を2:1のヘキサン:トルエンで再結晶して、所望の生成物を得た。
【0136】
工程2:6−ブロモ−7−ヨード−2−メチルキノリン
(4−ブロモ−3−ヨードフェニル)アミン(11.93g、40mmol)に、濃HCl(6ml)、p−クロラニル(9.83g、1当量)及びイソプロパノール(20ml)を加え、その混合物を加熱還流した。次いで、クロトンアルデヒド(3.98ml)のイソプロパノール(3.8ml)中の溶液を、シリンジポンプにより0.1ml/分の速度で添加し、添加終了後、さらに40分間、混合物を還流下に攪拌した。この混合物を室温に冷却し、EtOAc及び5%水性NHOHで希釈した。生成物をEtOAcで抽出し、有機層を水及び食塩水で数回洗浄し、NaSOで乾燥した。粗生成物を沸騰トルエン(300ml)にできるだけ溶解し、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより0〜5%勾配のEtOAc/トルエンで精製した。第一の生成物は6−ブロモ−7−ヨード−2−メチルキノリンであり、それに続きその異性体6−ブロモ−5−ヨード−2−メチルキノリンであった。
【0137】
6−ブロモ−7−ヨード−2−メチルキノリン:H NMR(400MHz,アセトン−d):δ8.58(s,1H),8.32(s,1H),8.20(d,1H),7.48(d,1H),2.68(s,3H)。
6−ブロモ−5−ヨード−2−メチルキノリン:H NMR(400MHz,アセトン−d):δ8.45(d,1H),8.01(d,1H),7.92(d,1H),7.53(d,1H),2.72(s,3H)。
【0138】
工程3:[(6−ブロモ−2−メチルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル
本生成物は文献記載の手法(S.Shibuya,Tetrahedron 1997,53.3,815)に従い、6−ブロモ−7−ヨード−2−メチルキノリンから臭化((ジエトキシホスフィニル)ジフルオロメチル)亜鉛との反応により得た。
【0139】
工程4:[(6−ブロモ−2−ホルミルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル
工程3の生成物(1.24g、3.04mmol)に、ジオキサン(15ml)中、二酸化セレン(388mg、1.15当量、真空下にトーチにて乾燥)を加え、混合物を1.3時間、100℃に加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカ上のフラッシュクロマトグラフィーにより30%EtOAc/トルエンで精製し、標題生成物を黄色固体として得た。
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ10.16(s,1H),8.63,(d,1H),8.48(s,1H),8.53(s,1H),8.13(d,1H),4.30(m,4H),1.33(t,6H)。
【0140】
工程5:6−ブロモ−7−[(ジエトキシホスホリル)(ジフルオロ)メチル]キノリン−2−カルボン酸
文献(Synthesis,1993,295)記載のように、ギ酸(1ml)中、工程4の生成物(105mg、0.25mmol)に、30%過酸化水素(0.13mL、1mmol)を滴下し、混合物を室温で一夜攪拌した。溶媒を蒸発させ、無水エタノールを加えた。これを3回繰返し、残りのエタノールを蒸発させ、標題生成物を油として得た。
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.63,(s,1H),8.49(s,2H),8.45(s,1H),4.30(m,4H),1.33(t,6H)。
【0141】
工程6:[{2−[(フェニルアミノ)カルボニル]−6−ブロモキノリン−7−イル}(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル
CHCl(5mL)中、工程5の生成物(109mg)に、EDCI(96mg)、アニリン(0.1mL)及びヒューニッヒ塩基(0.1mL)を加えた。この溶液を室温で3時間攪拌し、濃縮後にシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(10〜25%EtOAc/トルエンの勾配)に付し、当該アミドを得た。
NMR(500MHz,CDCl)δ10.2,(s,1H),8.6(s,1H),8.5(d,1H),8.45(d,1H),8.4(s,1H),7.4−7.0(m,5H),4.30(m,4H),1.33(t,6H)。
【0142】
工程7:[{2−[(フェニルアミノ)カルボニル]−6−ブロモキノリン−7−イル}(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸(8)
[(3−ブロモ−7−シアノ−2−ナフチル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(2.2g)のジクロロメタン(5mL)及びTMSBr(7mL)中の溶液を一夜攪拌し、濃縮した。残渣をジクロロメタン(2×)、エタノール/水(2×)と共蒸発させ、次いで、メタノール(20mL)に溶解した。次いで、アンモニア(30%)を激しく攪拌しながら加え、混合物を濃縮し、メタノールと共蒸発させた(3×)。固形残渣をエーテルで洗浄し、所望の生成物を白色粉末として得た。MS(−ESI):m/z457.2及び456.3(M−1)
【0143】
下記の表は、上記の工程図と同様の方法で調製した実施例8aに類似の誘導体を示す:
【0144】
【表1】

【0145】
実施例9a〜9i
(6−ブロモ−2−置換キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸
以下の表の化合物は脚注に示すように、工程図5(実施例8)及び工程図6(表2の最終事項である実施例9−I)に記載した中間体から調製した。
【0146】
実施例9i(表2):
[(6−ブロモ−2−シアノキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジアンモニウム
【0147】
【化7】

【0148】
工程1:[(6−ブロモ−2−((ヒドロキシイミノ)メチル)キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル
[(6−ブロモ−2−ホルミルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(525mg、1.244mmol)[実施例8、工程4]のエタノール(12mL)中の攪拌溶液に、室温で、ヒドロキシルアミン塩酸塩(130mg、1.865mmol)及び酢酸ナトリウム(508mg、3.73mmol)を加えた。反応混合物を70℃で1時間攪拌した。これを次いで炭酸水素ナトリウム水に注ぎ、酢酸エチル(100mL)で抽出し、炭酸水素ナトリウム水(2×)、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下濃縮して、粗[(6−ブロモ−2−[(E)−(ヒドロキシイミノ)メチル]キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチルを得た。
H NMR δ(ppm)(アセトン−d):11.19(1H,s),8.44(1H,s),8.39(1H,d,J=8.72Hz),8.36(1H,s),8.29(1H,s),8.13(1H,d,J=8.72Hz),4.34−4.26(4H,m),.36−1.29(6H,m)。
【0149】
工程2:[(6−ブロモ−2−シアノキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル
[(6−ブロモ−2−[(E)−(ヒドロキシイミノ)メチル]キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(520mg、1.189mmol)のアセトニトリル(30mL)中の攪拌溶液に、室温で、トリフェニルホスフィン(1.248g、4.76mmol)及び四塩化炭素(230μL、2.383mmol)を加えた。反応混合物を100℃で1時間攪拌した。これを真空下に濃縮乾固し、フラッシュクロマトグラフィー用のシリカゲルに予め吸着させ、トルエン中の酢酸エチル(20%〜30%)で溶出して、[(6−ブロモ−2−シアノキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチルを得た。
H NMR δ(ppm)(アセトン−d):8.72(1H,d,J=8.52Hz),8.63(1H,s),8.43(1H,s),8.13(1H,d,J=8.52Hz),4.36−4.26(4H,m),1.41−1.29(6H,m).MS(+ESI)=419.0及び421.0。
【0150】
工程3:[(6−ブロモ−2−シアノキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジアンモニウム
[(6−ブロモ−2−シアノキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(370mg、0.883mmol)のジクロロメタン(9)中の攪拌溶液に、0℃でブロモトリメチルシラン(1.15mL、8.83mmol)を滴下した。反応混合物を室温で一夜攪拌した。これを濃縮乾固し、ジクロロメタン(2×)と共蒸発させた。残渣にエタノール(5mL)を加え、これを20分間攪拌した。これを濃縮乾固し、エタノール(2×)と共蒸発させた。残渣をメタノール(8mL)に溶解し、メタノール中の2.0Mアンモニア(4.4mL、8.80mmol)を滴下した。これを20分間攪拌し、濃縮乾固し、ジエチルエーテルに懸濁した。沈殿物を濾取し、[(6−ブロモ−2−シアノキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジアンモニウムを得た。
H NMR δ(ppm)(CDOD):8.69(1H,s),8.48(1H,d,J=8.50Hz),8.39(1H,s),7.89(1H,d,J=8.50Hz),MS(−ESI)=361.0及び363.0。
【0151】
【表2】

【0152】
9a)実施例1、工程8同様に、[(6−ブロモ−2−メチルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例8、工程3)のTMSBr加水分解により調製。
9b)6−ブロモ−5−ヨード−2−メチルキノリン(実施例8、工程2)から、臭化((ジエトキシホスフィニル)ジフルオロメチル)亜鉛(S.Shibuya,Tetrahedron、1997,vol53.no3,815)と反応させ、次いで、実施例1、工程8同様に、TMSBr加水分解することにより調製。
9c)実施例1、工程8同様に、[(6−ブロモ−2−ホルミルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例8、工程4)のTMSBr加水分解により調製。
9d)[(6−ブロモ−2−ホルミルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例8、工程4)に、−78〜−10℃で、THF中、メチルマグネシウムを付加し、次いで実施例1、工程8同様に、TMSBr加水分解により調製。
9e)[(6−ブロモ−2−(1−ヒドロキシエチル)キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例9d)をEtOAc中、室温で1.5時間、MnOで酸化し、次いで実施例1、工程8同様に、TMSBr加水分解により調製。
9f)[(6−ブロモ−2−(1−ヒドロキシエチル)キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例9d)を塩化メタンスルホニル及び大過剰のDBUと、CHCl中、室温で数時間反応させ、次いで実施例1、工程8同様に、TMSBr加水分解により調製。
9g)[(6−ブロモ−2−ホルミルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例8、工程4)と、ヒドロキシルアミン塩酸塩(2当量)及び酢酸ナトリウム三水和物(4当量)とを還流エタノール中5時間反応させ、次いで実施例1、工程8同様に、TMSBr加水分解により調製。
9h)[(6−ブロモ−2−アセチルキノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例9e)とメトキシアミン塩酸塩(3当量)とをピリジン中80℃で2時間反応させ、次いで実施例1、工程8同様に、TMSBr加水分解により調製。
9i)[(6−ブロモ−2−((ヒドロキシイミノ)メチル)キノリン−7−イル)(ジフルオロ)メチル]ホスホン酸ジエチル(実施例9g)をCHCN中、トリフェニルホスフィン及びCClと脱水反応させ(Synth.Commun.1990,2785)、次いでTMSBr加水分解(実施例9i)により調製。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
XはCH及びNから選択され;
は、(a)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよく、また−OH、1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、−SO1−3アルキル及び−CNから選択される1個の基で置換されていてもよいC1−3アルキル;(b)−C(=O)H;(c)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)C1−3アルキル;(d)−CN;(e)−HC=NOH;(f)−(CH)C=NOH;(g)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−HC=NOC1−3アルキル;(h)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−(CH)C=NOC1−3アルキル;(i)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル;(j)−C(=O)NHR;(k)−CH=CH−フェニルであって、ここで−CH=CH−は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;(l)−CHCH−フェニルであって、ここで−CHCH−はハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく;(m)フェニル;(n)−HET−フェニルであって、ここでHETは、O、N及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロ芳香族環であり;(o)−C≡C−フェニル;及び(p)−CH−フェニルであって、ここで−CH−フェニルの−CH−基は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよい;からなる群より選択され、ここで、フェニル及びHETはすべての出現において、(i)ハロゲン、(ii)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル、(iii)−C(=O)OH、(iv)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、(v)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、(vi)−SOMe、及び(vii)−SONH、から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
は、H、1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、フェニル及び−CH−フェニルからなる群より選択され、ここで、両出現におけるフェニルは、(i)ハロゲン、(ii)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル、(iii)−C(=O)OH、(iv)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、及び(v)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく;
及びRは、独立して、H、ハロゲン、−CH、−CF、−OCH及び−OCFから選択され;
はハロゲンであり、当該ハロゲンは、式(I)の縮合芳香族環に−CFPO(OR基に対してオルトの位置で結合し;
各R基は、独立して、H及び1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキルからなる群より選択され;そして
xは0、1又は2である]
で示される化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
HETが、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル及びチアジアゾリルからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、(a)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよく、また−OH及び−CNから選択される1個の基で置換されていてもよいC1−3アルキル;(b)−C(=O)H;(c)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)C1−3アルキル;(d)−CN;(e)−HC=NOH;(f)−(CH)C=NOH;(g)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−HC=NOC1−3アルキル;(h)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−(CH)C=NOC1−3アルキル;(i)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル;(j)−C(=O)NHR;(k)−CH=CH−フェニルであって、ここで−CH=CH−はハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;(l)−CHCH−フェニルであって、ここで−CHCH−は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく;及び(m)−CH−フェニルであって、ここで−CH−フェニルの−CH−基は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく、ここでフェニルはすべての出現において、(i)ハロゲン、(ii)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル、(iii)−C(=O)OH、(iv)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、及び(v)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい;
からなる群より選択されるものである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が、(a)−OH、ハロゲン及び−CNから選択される1個の基で置換されていてもよいC1−2アルキル;(b)−C(=O)H;(c)−C(=O)CH;(d)−CN;(e)−HC=NOH;(f)−(CH)C=NOCH;(g)−C(=O)NHR;(h)−CH=CH−フェニル;及び(i)−CHCH−フェニルであって、ここでフェニルはすべての出現において、1〜2個のハロゲン及び1個の置換基−C(=O)OHで置換されていてもよい;
からなる群より選択されるものである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Xが、CH及びNから選択され;
が、(a)−OH、ハロゲン及び−CNから選択される1個の基で置換されていてもよいC1−2アルキル;(b)−C(=O)H;(c)−C(=O)CH;(d)−CN;(e)−HC=NOH;(f)−(CH)C=NOCH;(g)−C(=O)NHR;(h)−CH=CH−フェニル;及び(i)−CHCH−フェニルであって、ここでフェニルはすべての出現において、1〜2個のハロゲン及び1個の置換基−C(=O)OHで置換されていてもよい;
からなる群より選択され;
が、H、CH、フェニル及び−CH−フェニルからなる群より選択され、ただし、両出現におけるフェニルは、(i)ハロゲン、(ii)−CH、(iii)−CF、(iv)−OCH、及び(v)−OCF、から独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;
、R及びRがHであり;そして
がBrであり、これは式(I)の縮合芳香族環に−CFPO(OR基に対してオルトの位置で結合する;
式(I)で示される請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
式(Ia):
【化2】

[式中、
Xは、CH及びNから選択され;
は、(a)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよく、また−OH、1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、−SO1−3アルキル及び−CNから選択される1個の基で置換されていてもよいC1−3アルキル;(b)−C(=O)H;(c)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)C1−3アルキル;(d)−CN;(e)−HC=NOH;(f)−(CH)C=NOH;(g)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−HC=NOC1−3アルキル;(h)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−(CH)C=NOC1−3アルキル;(i)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル;(j)−C(=O)NHR;(k)−CH=CH−フェニルであって、ここで−CH=CH−は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;(l)−CHCH−フェニルであって、ここで−CHCH−は、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから独立して選択される1〜4個の置換基で置換されていてもよく;(m)フェニル;(n)−HET−フェニルであって、ここでHETは、O、N及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5員又は6員のヘテロ芳香族環であり;(o)−C≡C−フェニル;及び(p)−CH−フェニルであって、ここで−CH−フェニルの−CH−基は、独立して、ハロゲン及び1〜3個のFで置換されていてもよいC1−2アルキルから選択される1〜2個の置換基で置換されていてもよく;からなる群より選択され、ここでフェニル及びHETは、すべての出現において、(i)ハロゲン、(ii)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−C(=O)OC1−3アルキル、(iii)−C(=O)OH、(iv)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよいC1−3アルキル、(v)1〜3個のハロゲンで置換されていてもよい−OC1−3アルキル、(vi)−SOMe、及び(vii)−SONH、から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく:そして
はハロゲンであり、当該ハロゲンは式(I)の縮合芳香族環に−CFPO(OR基に対してオルトの位置で結合する]
で示される、請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
以下の化合物から選択される、請求項1記載の式(I)で示される化合物又は薬学的に許容されるその塩:
【化3−1】

【化3−2】

【請求項8】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
2型糖尿病治療のための医薬の製造における、請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項10】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を、その治療を必要とする患者に投与することを含む2型糖尿病の治療方法。
【請求項11】
請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の治療上有効な量を、その治療を必要とする患者に投与することを含む癌の治療方法。
【請求項12】
(1)請求項1記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩;
(2)以下からなる群より選択される1種以上の化合物
(a)PPARガンマアゴニスト及び部分アゴニスト;
(b)ビグアニド;
(c)GPR40アゴニスト;
(d)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(e)インスリン又はインスリン模倣薬;
(f)スルホニルウレア;
(g)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(h)患者の脂質プロフィールを改善する薬剤であって、以下の群から選択されるもの (i)HMG−CoA還元酵素阻害剤;(ii)胆汁酸キレート剤;(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩;(iv)PPARαアゴニスト;(v)コレステロール吸収阻害剤;(vi)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤;(vii)CETP阻害剤;及び(viii)フェノール性抗酸化剤;
(i)PPARα/γ二重アゴニスト;
(j)PPARδアゴニスト;
(k)抗肥満化合物;
(l)回腸胆汁酸輸送阻害剤;
(m)抗炎症性薬剤;
(n)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(o)GLP−1;
(p)GIP−1;
(q)GLP−1類似体;及び
(r)HSD−1阻害剤;並びに
(3)薬学的に許容される担体;
を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2010−516715(P2010−516715A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546627(P2009−546627)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000172
【国際公開番号】WO2008/089581
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】