説明

タンパク質ナノ粒子を含むヘアトリートメント組成物

【課題】毛髪に、なめらかさ、サラサラ性、しっとり感、手ぐし通り性、及びしなやかさを付与することができ、しかもその効果の持続性に優れたヘアトリートメント組成物を提供すること。
【解決手段】0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含み、該タンパク質ナノ粒子の平均粒子サイズが10〜200nmである、ヘアトリートメント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質ナノ粒子を含むヘアトリートメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアトリートメントは、主として毛髪の触感や外観を好適に変化させる目的で使用されている。
【0003】
このヘアトリートメントは、通常、一剤式であって、毛髪の触感や外観を好適に変化させるためにカチオン活性剤や油分、シリコーンを主体とした組成物が使用されてきた。しかしながら、これらの組成物による毛髪の好適な変化は、一時的なものであり、洗髪によって消滅してしまうという問題があった。
【0004】
また、アミノ酸がヒトの毛髪の毛根の育成及びヒトの毛髪の成長に重要なことは公知である。特許文献1には、天然アミノ酸またはタンパク質加水分解物を含有するヘアトリートメント組成物を記載している。特許文献2には、アーモンドタンパク質の加水分解物を用いて調整した皮膚および毛髪の手入れ用化粧品を開示している。
【0005】
一方、特許文献3は、シリカ、架橋ポリマー、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、または二酸化チタンなどのコロイド金属の1次粒子サイズ再頻値が7〜40nmの粒子状物質が毛髪のコシの増大やスタイリング効果を示すことを開示している。
【0006】
さらに、特許文献4は、ポリマーナノ構造に密接に関係しているペイロードを含むヘアトリートメント調製物であって、該ポリマーナノ構造が、毛に対して反応性であるか、または毛の上または中で固定化され得る、ヘアトリートメント調製物を開示している。
【0007】
【特許文献1】GB1401089号公報
【特許文献2】EP0186025号公報
【特許文献3】WO01/030310号公報
【特許文献4】WO01/078663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、毛髪に、なめらかさ、サラサラ性、しっとり感、手ぐし通り性、及びしなやかさを付与することができ、しかもその効果の持続性に優れたヘアトリートメント組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、頭髪有効成分を内包したタンパク質ナノ粒子を調製したところ、毛髪に、なめらかさ、サラサラ性、しっとり感、手ぐし通り性、及びしなやかさを付与することができ、しかもその効果が長期間持続させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0010】
本発明によれば、0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含み、該タンパク質ナノ粒子の平均粒子サイズが10〜200nmである、ヘアトリートメント組成物が提供される。
好ましくは、タンパク質はコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、セリシン、ケラチン、ゼイン、グルテン、グリアジン、グルテニン、大豆タンパク、コメタンパク、コメヌカタンパク、ゴマタンパク、アーモンドタンパク、野菜タンパク、ハチミツタンパク、ローヤルゼリータンパク、酵母タンパク、綿実タンパク又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0011】
好ましくは、本発明のヘアトリートメント組成物は、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の頭髪有効成分を含有する。
好ましくは、頭髪有効成分は、染毛剤、芳香剤、抗菌剤、柔軟剤、保湿剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、抗微生物剤、育毛剤、ミネラル、又はアミノ酸類である。
好ましくは、頭髪有効成分は、イオン性物質または脂溶性物質である。
好ましくは、エタノール含有量は20重量%以下である。
好ましくは、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている。
好ましくは、酵素を用いて架橋処理を行う。
酵素としては、タンパク質の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼを用いることができる。
【0012】
好ましくは、本発明のヘアトリートメント組成物は、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【0013】
好ましくは、本発明のヘアトリートメント組成物は、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【0014】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のヘアトリートメント組成物を毛髪に塗布する工程を含む、毛髪のトリートメント方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヘアトリートメント組成物におけるタンパク質ナノ粒子はナノサイズであるため、毛髪との親和性が高い。また、本発明においては、天然のタンパク質ナノ粒子を用いるため、安全性が高い。さらに、疎水性の頭髪有効成分をナノ粒子分散できるため、多量のエタノールを添加する必要がなく、頭皮へのエタノールによる刺激が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明のヘアトリートメント組成物は、0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含有することを特徴とする。好ましくは、0.1〜10重量%のタンパク質ナノ粒子を含有し、より好ましくは、0.5〜5重量%のタンパク質ナノ粒子を含有し、特に好ましくは、1〜3重量%のタンパク質ナノ粒子を含有する。
【0017】
本発明のカゼインナノ粒子の平均粒子サイズは、通常は10〜200nmであり、好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは10〜50nmであり、特に好ましくは15〜30nmである。
【0018】
本発明のヘアトリートメント組成物は、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の頭髪有効成分を含有することが好ましく、タンパク質の重量に対して、0.1〜50重量%の頭髪有効成分を含有することがさらに好ましい。
【0019】
本発明において、頭髪有効成分は、タンパク質ナノ粒子の形成時に添加してもよいし、ナノ粒子の作成後に添加してもよい。
【0020】
本発明で用いる頭髪有効成分の種類は、特に限定されないが、例えば、化粧品用成分、医薬部外品成分、又は医薬品成分から選ぶことができる。本発明において、タンパク質ナノ粒子に内包される頭髪有効成分の具体例としては、染毛剤、芳香剤、抗菌剤、柔軟剤、保湿剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、抗微生物剤、育毛剤、ミネラル、又はアミノ酸類などから選ぶことができる。
【0021】
染毛剤としては、橙205号、黒401号、紫401号、赤102号、赤227号、赤106号、赤504号、黄203号、黄403(1)、緑204号、カーボンブラック、黒酸化チタン、ヘナ、酸化鉄、タール色素、クロロフィル、顔料などが挙げられる。
【0022】
芳香剤としては、ジャコウ、アカシア油、アニス油、イランイラン油、シナモン油、ジャスミン油、スウィートオレンジ油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイム油、ネロリ油、ハッカ油、ヒノキ油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ライム油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズウッド油、アニスアルデヒド、ゲラニオール、シトラール、シベトン、ムスコン、リモネン、バニリンなどが挙げられる。
【0023】
抗菌剤としては、ピロクトンオラミン、イソプロピルメチルエーテル、ヒノキチオール、ジンクピリチオン、クリンバゾール、塩化ベンザルコニウム、感光色素101号、クロルヘキシジン、サリチル酸、フェノール、ケトコナゾール及びミコナゾール、イオウ、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジングルコン酸塩、ハロカルバン、クロロフェネシン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化リゾチーム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸、感光素201号、チモール、ヘキサクロロフェン、ベルベリン、チオキソロン、ユキノシタエキス、オウバクエキス、オウゴンエキスとそれらの誘導体および塩などを挙げることができる。
【0024】
柔軟剤としては、グリセリン、ミネラルオイル、エモリエント成分(例えば、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ポリグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、カカオ脂、コレステロール、混合脂肪酸トリグリセリド、コハク酸ジオクチル、酢酸ステアリン酸スクロース、シクロペンタシロキサン、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ベヘン酸アラキル、ポリベヘン酸スクロース、ポリメチルシルセスキオキサン、ミリスチルアルコール、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシルなど)などを挙げることができる。
【0025】
保湿剤としては、例えば、カンテン、ジグリセリン、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ヨクイニンエキス、ワセリン、尿素、ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲン、ムコ多糖、フコダイン、ラクトフェリン、ソルビトール、キチン・キトサン、リンゴ酸、グルクロン酸、プラセンタエキス、海藻エキス、ボタンピエキス、アマチャエキス、オトギリソウエキス、コレウスエキス、マサキ抽出物、コウカエキス、マイカイ花エキス、チョレイエキス、サンザシエキス、ローズマリーエキス、デュークエキス、カミツレエキス、オドリコソウエキス、レイシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、アロエエキス、マロニエエキス、アスナロエキズ、ヒバマタエキス、オスモインエキス、オーツ麦エキス、チューベロースポリサッカライド、冬虫夏草エキス、大麦エキス、オレンジ抽出物、ジオウエキス、サンショウエキス、ヨクイニンエキスなどを挙げることができる。また、カゼインナノ粒子の場合は、カゼイン自体が保湿性を有する。
【0026】
紫外線防止剤としては、サリチル酸ホモメンチル、4−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、4−t−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン、酸化チタンおよび酸化亜鉛等が挙げられる。
【0027】
活性酸素除去剤としては、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、マンニトール、ベータカロチン等のカロテノイド類、アスタキサンチン、ルチン及びその誘導体、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、カテキン、カテキン誘導体、没食子酸、没食子酸誘導体、オウゴン抽出物、イチョウ抽出物、ユキノシタ抽出物、メリッサ抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタンピ抽出物、パセリ抽出物、トルメンチラ抽出物、羅漢果抽出物、海藻抽出物、ヤシャジツ抽出物、ジコッピ抽出物等が挙げられる。
【0028】
抗酸化剤としては、例えば、カロテン類、レチノイン酸、レチノール、ビタミンC及びその誘導体、カイネチン、アスタキサンチン、トレチノイン、ビタミンEおよびその誘導体、セサミン、α−リポ酸、コエンザイムQ10、フラボノイド類、エリソルビン酸、没食子酸プロピル、BHT(ジ-n-ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、コウキエキス、大豆エキス、紅茶エキス、茶エキス、エイジツエキスなどを挙げることができる。
【0029】
抗微生物剤としては、トリアジン系化合物、イソチアゾロン系化合物、第4級アンモニウム化合物などを挙げることができる。
【0030】
育毛剤としては、グリチルレチン酸又はその誘導体、グリチルリチン酸又はその誘導体、ヒノキチオール、ミノキシジルまたはその類縁体、アデノシン、ビタミンE又はその誘導体、ビタミンC誘導体、6-ベンジルアミノプリン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β-ブトキシエステル、イソプロピルメチルフェノール、ペンタデカン酸又はその誘導体、セファラチン、フィナステリド、t-フラバノン、パントテン酸、パンテノール、カンゾウ抽出物、キンセイソウ抽出物、クジン抽出物、センブリ抽出物、トウガラシ抽出物、トウチャ抽出物、ニンジン抽出物、ホウコウエイ抽出物、ボタン抽出物、ミカン抽出物などを挙げることができる。
【0031】
ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、マンガン、鉄、銅、セレンなど生体の維持、調節のために必須の金属類であり、その形態は、塩、酸化物、タンパク複合体またはその分解物の複合体、多糖類複合体、もしくはその分解物の複合体、その他加工デンプン複合体、シクロデキストリン複合体、または、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンパーオキシターゼ、酸性フォスファターゼなどのミネラルを有する金属酵素、ホスホグルコムターゼなどの金属活性化酵素、活性中心以外に金属を含む酵素や補酵素などを挙げることができる。
【0032】
アミノ酸類としては、グルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−アラニン、L−システイン、グリシン、L−イソロイシン、L−ロイシン、リジン、などやそれらの塩類などが挙げられる。
【0033】
上記した頭髪有効成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
本発明においては、脂溶性の頭髪有効成分とカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼインナノ粒子内に頭髪有効成分を内包できることが見出された。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在することが見出された。脂溶性の物質としては、好ましくはClogPが0より大きく、より好ましくはClogPが1以上である。
【0035】
また、タンパク質とイオン性多糖または別種のイオン性タンパク質との混合粒子により、イオン性頭髪有効成分を内包することも見出された。
【0036】
本発明で用いるタンパク質の種類は特に限定されないが、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパクが好ましく、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、セリシン、ケラチン、ゼイン、グルテン、グリアジン、グルテニン、大豆タンパク、コメタンパク、コメヌカタンパク、ゴマタンパク、アーモンドタンパク、野菜タンパク、ハチミツタンパク、ローヤルゼリータンパク、酵母タンパク、綿実タンパク又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、牛、豚、魚、および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。遺伝子組み換えゼラチンとしては、例えばEU1014176A2号、米国特許6,992,172号に記載のものを用いることができるがこれらに限定されるものではない。その中で好ましいものは、カゼイン、酸処理ゼラチン、コラーゲン、又はアルブミンであり、最も好ましいものはカゼイン、又は酸処理ゼラチンである。
【0037】
本発明でカゼインを用いる場合、カゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。遺伝子組み換え体を使用することもできる。好ましくは、カゼインナトリウムを用いることができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明に用いられるタンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
本発明では、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質を架橋処理することができる。上記した架橋処理は、酵素を用いることができる。酵素としては、タンパクの架橋作用が知られているものであれば特に制限されず、その中で好ましいものはトランスグルタミナーゼである。
【0040】
トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、遺伝子組み換え体を用いることができる。具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼ、ヒト由来リコンビナントトランスグルタミナーゼなどが挙げられる。
【0041】
本発明において架橋処理のために用いられる酵素の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来るが、標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度を添加することができる。
【0042】
酵素による架橋反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、1時間から72時間反応することができ、好ましくは、2時間から24時間反応することができる。
【0043】
酵素による架橋反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃で反応することができ、好ましくは、25℃から60℃で反応することができる。
【0044】
本発明に用いられる酵素を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明のナノ粒子は、特許文献特開平6−79168号公報、又はC.Coester著、ジャーナル・ミクロカプスレーション、2000年、17巻、p.187−193に記載の方法に準じて作製することができるが、架橋方法としてグルタルアルデヒドの代わりに酵素を用いることが好ましい。
【0046】
また、本発明においては、酵素架橋処理を有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、THFなどの水溶性有機溶媒が好ましい。
さらに、本発明においては、架橋処理後に有機溶媒を留去し、水分散することが好ましい。有機溶媒を留去前に水を加えてもよく、留去後に水を加えても良い。
【0047】
本発明のヘアトリートメント組成物には、脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、又はシクロデキストリンから選択される1種以上の成分を添加することもできる。脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、及びシクロデキストリンの添加量は特に限定されないが、一般的にはタンパク質の重量に対して0.1〜100重量%の量で添加することができる。本発明のヘアトリートメント組成物においては、上記成分とタンパク質の比を変えることよって、徐放速度を調整することができる。
【0048】
本発明に用いることができるリン脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
【0049】
本発明に用いることができるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0050】
本発明に用いることができるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられる。
【0051】
本発明に用いることができるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられる。
【0052】
本発明に用いられるカチオンタンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられる。
【0053】
本発明においては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【0054】
さらに本発明においては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【0055】
本発明においては、所望のサイズのカゼインナノ粒子を作製できる。また、疎水性の頭髪有効成分とカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼインナノ粒子内に頭髪有効成分を内包できる。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在することが見出された。
また、カゼインとイオン性多糖または別種のイオン性タンパク質との混合粒子により、イオン性頭髪有効成分を内包することも見出された。
【0056】
本発明のカゼインナノ粒子の作製方法は、カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、酸性水性媒体中に注入する方法と、カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法が挙げられる。
【0057】
カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、酸性水性媒体中に注入する方法としては、シリンジによるのが簡便で好ましいが、注入速度、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。一般的には、注入速度は、1mL/minから100mL/minで注入することができる。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。酸性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から60℃ですることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0058】
カゼインを塩基性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法としては、酸を滴下するのが簡便で好ましいが、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0059】
本発明に用いる水性媒体は、有機酸または塩基、無機酸または無機塩基の水溶液、又は緩衝液を用いることができる。
【0060】
具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明に用いる水性媒体の濃度は、約10mMから約1Mが好ましい。より好ましくは、約20mMから約200mMである。
【0062】
本発明に用いる塩基性水性媒体のpHは、8以上が好ましく、8から12が好ましい。より好ましくはpH10〜12である。pHが高すぎると加水分解の懸念や取り扱い上の危険性があるため、上述の範囲が好ましい。
【0063】
本発明において、カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる温度は、0〜90℃が好ましく、10〜80℃が好ましい。より好ましくは、20〜70℃である。
【0064】
本発明に用いる酸性水性媒体のpHは、好ましいpHは3.5〜7.5である。より好ましくはpHは5から6である。前述の範囲外では、粒子サイズが大きくなる傾向が見られる。
【0065】
本発明のヘアトリートメント組成物は、別種のトリートメント剤を含むことができる。別種のトリートメント剤としては特に限定することはないが、カチオン活性剤やシリコーン、加水分解タンパク質、油分から選択される1種以上のものを使用することができる。
【0066】
本発明で用いることができるカチオン活性剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘントリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ジココジモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0067】
本発明で用いることができる油分として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。椿油、サラソウジュ種子脂、マカダミアナッツ油、コメ胚芽油、ミンク油、パーム油などが挙げられる。
【0068】
本発明で用いることができるシリコーンとして具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジメチコン、ジメチコノール、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン、シクロメチコン、アミノプロピルジメチコン、アモジメチコン、その共重合体などが挙げられる。
【0069】
本発明のヘアトリートメント組成物はさらに、添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、真珠光沢材料、防腐剤、酸化防止剤、色素剤、増粘剤、又はpH調整剤から選択される1種以上のものを使用することができる。さらに必要に応じて、高級アルコール(セタノールやステアリルアルコールなど)、動・植物油脂、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースなどを含有させても良い。
【0070】
本発明で用いることができる真珠光沢材料として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、グアニンおよび二酸化チタンを被覆した雲母、オキシ塩化ビスマス、およびステアリン酸モノエタノールアミドなどが挙げられる。
【0071】
本発明で用いることができる防腐剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、フェノキシエタノール、レゾルシン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、チモール、チラム、ティートリー油、ヒノキチオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1.3-ブチレングリコール、1.4-ブチレングリコール、1,2ペンタンジオール、2−メチル−2,4ペンタンジオール、などが挙げられる。
【0072】
本発明で用いることができる酸化防止剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ビタミンA、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸トコフェリル、ビタミンCおよびその誘導体、カイネチン、β−カロテン、アスタキサンチン、ルテイン、リコピン、トレチノイン、ビタミンE、α−リポ酸、コエンザイムQ10、ポリフェノール、SOD、フィチン酸などが挙げられる。
【0073】
本発明で用いることができる色素剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カオリン、カルミン類、グンジョウ、コチニール色素、酸化クロム、酸化鉄、二酸化チタン、タール色素、クロロフィルなどが挙げられる。
【0074】
本発明で用いることができる増粘剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クインスシード、カラギーナン、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、デンプン、シクロデキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0075】
本発明で用いることができるpH調整剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、コハク酸などが挙げられる。
【0076】
本発明のヘアトリートメント組成物の剤型は特に限定されないが、例えば、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアパック、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアスプレー、パーマネントウエーブ用組成物、染毛剤、ボディーソープ、石鹸、サンケア(サンスクリーン、サンオイル、アフターサンローション)、フレグランス、外用液剤、湿布剤、塗布剤、清拭剤、浴剤、消毒剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、泥膏剤、経皮吸収型粘着テープ、創傷保護剤、エアゾール剤、ローション剤、トニック剤、リニメント剤、乳剤、懸濁剤、粉剤、泡剤、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、シート状外用剤、マスカラなどのメーキャップ化粧料などを挙げることができる。
【0077】
本発明のヘアトリートメント組成物の塗布方法は特に限定されないが、ウォッシュオフ(シャンプーまたはコンディショナーなど)としてもよく、リーブオン(ジェル、ムース、クリーム、ローション、スプレー、またはエア注入式スタイリングフォームなど)としてもよい。
【0078】
本発明のヘアトリートメント組成物の投与量は、頭髪有効成分の種類及び使用量、使用者の髪の量、状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、1μg〜50mg/cm2程度を投与することができ、好ましくは2.5μg〜10mg/cm2程度を投与することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
実施例1:
カゼイン(乳由来・和光純薬製)100mgを、pH10、50mMクエン酸バッファー10mLに混合させる。塩酸を加えpHを7に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、20nmであった。
【0080】
実施例2:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。グリチルレチン酸(和光純薬製)1.7mgをエタノール0.25mLに溶解させる。カゼイン溶液に攪拌下、グリチルレチン酸溶液を滴下し、この混合液を、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、1mLをマイクロシリンジを用いて、pH5、200mMのリン酸バッファー水10mL中に注入したところ、グリチルレチン酸を内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、83nmであった。
【0081】
実施例3:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。ヒノキチオール(和光純薬製)1.7mgをエタノール0.25mLに溶解させる。カゼイン溶液に攪拌下、ヒノキチオール溶液を滴下し、この混合液を、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、1mLをマイクロシリンジを用いて、pH5、200mMのリン酸バッファー水10mL中に注入したところ、ヒノキチオールを内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、57nmであった。
【0082】
実施例4:
カゼインNa(乳由来・和光純薬製)10mgをpH9、50mMリン酸バッファー1mLに混合させる。酢酸トコフェロール1.7mgをエタノール0.25mLに溶解させる。カゼイン溶液に攪拌下、酢酸トコフェロール溶液を滴下し、この混合液を、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、カゼイン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、200mMのリン酸バッファー水10mL中に注入したところ、酢酸トコフェロールを内包したカゼインナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、124nmであった。
【0083】
実施例5:
酸処理ゼラチン10mg、TG-S(味の素製)5mgを水1mLに溶解させる。外設40℃、800rpmの攪拌条件で、ゼラチン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、グリチルレチン酸1.7mgを溶解したエタノール10mL中に注入したところ、ゼラチンナノ粒子が得られた。外設55℃で5時間静置し、ゼラチンナノ粒子を酵素架橋する。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、80nmであった。
【0084】
得られたゼラチンナノ粒子分散液に水5mLを加え、ロータリーエバポレーターにて、エタノールを除去し、グリチルレチン酸を内包したゼラチンナノ粒子の水分散液が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、201nmであった。
【0085】
実施例6:
酸処理ゼラチン10mg、TG-S(味の素製)5mgを水1mLに溶解させる。外設40℃、800rpmの攪拌条件で、ゼラチン溶液1mLをマイクロシリンジを用いて、トコフェロール1.7mgを溶解したエタノール10mL中に注入したところ、ゼラチンナノ粒子が得られた。外設55℃で5時間静置し、ゼラチンナノ粒子を酵素架橋する。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、ニッキソー(株)製マイクロトラックを用い測定したところ、95nmであった。
【0086】
実施例7:
カゼイン(乳由来・和光純薬製)100mgを、pH10、50mMリン酸バッファー10mLに混合させる。パントテニルエチルエーテル400mgをエタノール0.8mLに溶解させる。この2種の溶液を混合し、塩酸を加えpHを6.5に調整したところ、カゼインナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、23nmであった。
【0087】
試験例1:
トレーにダメージ毛0.1gを測り、実施例1の組成物3mLを加えて、約3分間浸した後、よく乾かした。
【0088】
試験例2:
トレーにダメージ毛0.1gを測り、実施例1の組成物3mLを加えて、約3分間浸した後、40℃の温水で1分間すすぎ、よく乾かした。
【0089】
比較例1:
トレーにダメージ毛0.1gを測り、1重量%の加水分解カゼイン水溶液3mLを加えて、約3分間浸した後、よく乾かした。
【0090】
(電子顕微鏡評価)
試験例1および2、比較例1、未処理の毛髪をカーボンテープにより試料台に固定し、導電性付与のためC蒸着を行った後、走査型電子顕微鏡(日立製S−5500型)により観察を行った。その評価の写真を図1に示す。
【0091】
試験例3:
長さ20cm、幅1cm、重さ1.5gの人毛毛束を、実施例1の組成物5mLに5分間浸した後、よく乾かした。
【0092】
試験例4:
長さ20cm、幅1cm、重さ1.5gの人毛毛束を、実施例1の組成物5mLに5分間浸した後、40℃の温水で1分間すすぎ、よく乾かした。
【0093】
(官能評価)
試験例3および4の毛束を被験毛1および2、未処理の毛束を基準毛として、毛束のなめらかさ、サラサラ性、しっとり感、手ぐし通り、及びしなやかさを、表1の基準に従って5段階で官能評価した。評価は5人で行い、その評価の平均値を表2に示す。0より大きい得点は、その特性において基準毛より改善されていることを示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
被験毛1は、全ての特性で改善が認められ、特にサラサラ性の得点に大きな改善が見られた。被験毛2は、なめらかさ、サラサラ性、手ぐし通り、しなやかさの特性で改善が認められ、特にサラサラ性の得点に大きな改善が見られた。
【0097】
(摩擦測定器評価)
試験例3および4の毛束を被験毛1および2、未処理の毛束を基準毛として、摩擦測定器(触感計TYPE33:新東科学社製)により、摩擦係数を測定した。評価は30回行い、その評価の平均値を図2に示す。
【0098】
被験毛1および被験毛2は、基準毛に対して、摩擦係数の減少が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、試験例1および2、比較例1、未処理の毛髪を電子顕微鏡で観察した結果を示す。
【図2】図2は、被験毛1および2、並びに未処理の毛束について摩擦測定器により摩擦係数を測定した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含み、該タンパク質ナノ粒子の平均粒子サイズが10〜200nmである、ヘアトリートメント組成物。
【請求項2】
タンパク質がコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、セリシン、ケラチン、ゼイン、グルテン、グリアジン、グルテニン、大豆タンパク、コメタンパク、コメヌカタンパク、ゴマタンパク、アーモンドタンパク、野菜タンパク、ハチミツタンパク、ローヤルゼリータンパク、酵母タンパク、綿実タンパク又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項3】
タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の頭髪有効成分を含有する、請求項1又は2に記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項4】
頭髪有効成分が、染毛剤、芳香剤、抗菌剤、柔軟剤、保湿剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、抗微生物剤、育毛剤、ミネラル、又はアミノ酸類である、請求項1から3の何れかに記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項5】
頭髪有効成分が、イオン性物質または脂溶性物質である、請求項3又は4に記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項6】
エタノール含有量が20重量%以下である、請求項1から5の何れかに記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項7】
ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている、請求項1から6の何れかに記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項8】
酵素を用いて架橋処理を行う、請求項7に記載のヘアトリートメント組成物。
【請求項9】
下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む、請求項1から6の何れかに記載のヘアトリートメント組成物。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を pH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程:
【請求項10】
下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼインナノ粒子を含む、請求項1から6の何れかに記載のヘアトリートメント組成物。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合させる工程;
(b)工程(a)で得た溶液に少なくとも1種の頭髪有効成分を添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH を等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程:
【請求項11】
請求項1から10の何れかに記載のヘアトリートメント組成物を毛髪に塗布する工程を含む、毛髪のトリートメント方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−6721(P2010−6721A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165325(P2008−165325)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】