説明

タンパク質フォールディング及びタンパク質分解の阻害による、ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための医薬組成物

本発明は、有効成分として少なくとも1種のプロテアソーム阻害剤及びタンパク質フォールディング酵素の阻害剤を含有する医薬組成物に関する。この剤は、ヒト及び動物に病原性のウィルスでの急性の及び慢性の感染の治療に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、有効成分として少なくとも1種のプロテアソーム阻害剤及びタンパク質フォールディング酵素の阻害剤を含有する医薬組成物に関する。この剤は、ヒト及び動物に病原性のウィルスでの急性の及び慢性の感染の治療に適している。このためには、特に、感染疾患、例えばAIDS、肝炎、出血熱、SARS、疱瘡、はしか、ポリオ又は流行性感冒の病原体が挙げられる。本発明の主題は、一方では有効成分としてタンパク質フォールディングの阻害剤を含有する剤である。このためには、細胞フォールディング酵素の阻害剤(酵素シャペロン)、また、タンパク質のフォールディングを化学的シャペロンにより妨げる物質も挙げられる。他方では、この剤は、ユビキチン−プロテアソーム系を阻害する成分、特に、26Sプロテアソームを阻害する剤を含有する。この治療剤の組み合わせにおいて、相互に別個に、又は、同時に、タンパク質生合成の効率及び誤ってフォールディングしたタンパク質の分解が妨げられるものである。この作用を合計すると、目的とされる変性された腫瘍細胞及び/又は急性的に及び/又は慢性的にウィルスにより感染された細胞は、その生存率において損なわれ、従って、プログラム細胞死(アポトーシス)に導かれる。適用領域は、ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療である。
【0002】
技術水準
タンパク質のフォールディング酵素の阻害剤は、刊行物WO 2005/063281 A2から公知である。
【0003】
プロテアソーム阻害剤は、腫瘍疾患(例えばUS 6,083,903)の治療のためにも、また同様に、ウィルス感染の治療のためにも記載されている(WO 02/30455)。
【0004】
タンパク質フォールディング酵素の阻害剤とプロテアソーム阻害剤とからの組み合わせはこれまでには記載されていない。非プロテアソーム選択性プロテアーゼ阻害剤と、タンパク質フォールディング酵素の阻害剤との組み合わせのみが、刊行物WO 2005/063281 A2中に言及されている。
【0005】
発明の課題
本発明の基礎となる課題は、ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための新規の医薬組成物を提供することであった。
【0006】
課題の解決
前記課題は、この特許請求の範囲の特徴部により解決された。タンパク質フォールディング酵素の阻害剤とプロテアソーム阻害剤とからの本発明による組み合わせは、技術水準よりも優れている。本発明により、有効成分として少なくとも1種のユビキチン−プロテアソーム系の阻害剤と、タンパク質フォールディング酵素の阻害剤との組み合わせを含有する組成物又はタンパク質フォールディングに影響を及ぼすための方法が提供される。
【0007】
タンパク質のフォールディング酵素の阻害剤とは、有利には、少なくとも1種の細胞シャペロンの阻害剤又は少なくとも1種の、タンパク質のフォールディングに直接的に影響を及ぼす化学物質(化学的抗シャペロン)である。
【0008】
タンパク質のフォールディングに影響を及ぼすための方法として、有利には、局所的なハイパーサミアが使用される。
【0009】
本発明の更なる一実施形態は、細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンにより、次の物質
a)ウィルスタンパク質のフォールディング及びタンパク質加水分解の成熟を抑制するか、調節するか又は他の様式で影響を及ぼし、これにより、ウィルスの放出及び複製を抑制する物質、このウィルスが特に、感染疾患、例えばAIDS、肝炎、出血熱、SARS、疱瘡、はしか、ポリオ、ヘルペスウィルス感染又は流行性感冒の病原体のウィルスである、又は
b)誤ってフォールディングされたタンパク質の蓄積によりプログラム細胞死に追い込むことにより、変性した細胞、特に腫瘍細胞の増殖を妨げる物質、
が使用されることである。
【0010】
本発明による医薬組成物は、細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンにより、宿主細胞のフォールディング分子状酵素の酵素活性に特殊に影響を及ぼす物質が使用されることを特徴とする。高級真核生物の細胞は、これらの阻害剤又は物質を吸収し、かつ、細胞吸収後に、ウィルス構造タンパク質及び腫瘍細胞からのタンパク質のタンパク質フォールディングを遮断する。阻害剤又は物質は、様々な形態でin vivoで経口で、静脈内、筋肉内、皮下に、又は、細胞特異性の基礎となる変更有り又は無しでカプセル化された形態で投与され、特定の適用−及び用量規定の適用のために少ない細胞毒性を有し、副作用を全く又はほとんど引き起こさず、比較的高い代謝半減時間及び比較的少ないクリアランス速度を生物中で有することができる。
【0011】
本発明による医薬組成物は、更に、細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンにより、
a)微生物又は他の天然の供給源から天然の形態で単離される、又は
b)天然の物質から化学的な修飾により生じる、又は、
c)完全に合成により製造される、又は、
d)遺伝子療法によりin vivoで合成される物質が使用されることにより特徴付けられる。
【0012】
細胞のシャペロンの阻害剤又は化学的抗シャペロンは、ウィルス構造タンパク質のアセンブリー化及びタンパク質加水分解的成熟の高度に組織化されたプロセスを妨げ、かつ、これにより、感染性の子孫ウィルスの放出及び生産を抑制する。更に、これらの物質は、ウィルスタンパク質及び/又は腫瘍特異的なタンパク質のフォールディングを、ウィルス複製のこの後期のプロセス、例えば、アセンブリー化、出芽、タンパク質加水分解による成熟及びウィルス放出を妨げることにより、調節するか、妨げるか、又は遮断する。ウィルスポリプロテインの前駆体タンパク質のタンパク質加水分解によるプロセッシングは、これにより妨げられる。更に、ウィルスプロテアーゼの活性が遮断される。
【0013】
本発明の更なる有利な一実施態様は、細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンにより、細胞プロテアーゼ及び/又は酵素、例えば、リガーゼ、キナーゼ、ヒドロラーゼ、グリコシル化酵素、ホスファターゼ、DNアーゼ、RNアーゼ、ヘリカーゼ及びトランスフェラーゼ(これらは、ウィルス成熟に関与している)の活性を妨げる物質が使用されることにある。本発明による細胞シャペロンの阻害剤又は化学的な抗シャペロンは、幅広い作用スペクトルを有し、かつ、従って、新規の広範囲なウィルス静止剤(virostatika)として、様々なウィルス感染の予防及び/又は治療のために使用されることができる。
【0014】
この医薬組成物は、細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、細胞シャペロン、例えばヒートショックプロテイン(heat shock proteins (hsp))、特にヒートショックプロテインHsp27、Hsp30、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp72、Hsp73、Hsp90、Hsp104及びHsc70の活性を遮断するか又は阻害する物質が使用されることにより特徴付けられる。
【0015】
細胞シャペロンの阻害剤として、以下の物質クラス及びその誘導体に属する物質が使用されることができる:ゲルダナマイシン(Hsp90を阻害)、ラジシコール(チロシンキナーゼ阻害剤、Hsp90を阻害)、デオキシスペルグアリン(Hsc70及びHsp90を阻害)、4−PBA(4−フェニルブチラート;Hsc70のタンパク質−及びmRNA発現の下流調節)、ヘルビマイシンA(チロシンキナーゼ阻害剤、Hsp72/73誘導と共に)、エポラクタエン(Hsp60の阻害剤)、サイズ(Scythe)及びリーパー(Reaper)(Hsp70を阻害)、アルテミシニン(Hsp90の阻害剤)、CCT0180159(Hsp90のピラゾール阻害剤として)及びSNX−2112(Hsp90の阻害剤)、ラダナマイシン(ラジシコール及びゲルダナマイシンのマクロライドキメラ)、ノボビオシン(Hsp90阻害剤)、ケルセチン(Quercetin)(Hsp70発現の阻害剤)。
【0016】
化学的な抗シャペロンとして、タンパク質のコンフォーメーション及びウィルス及び/又は腫瘍特異的なタンパク質のフォールディングを調節するか、妨げるか又は遮断する物質が使用されることができる。これには、物質、例えば、グリセロール、トリメチルアミン、ベタイン、トレハロース又は重水素化水(D2O)が挙げられる。更に、様々なヒト病原性の又は動物病原性のウィルスでの感染の処置、治療及び抑制のために適している物質又は慢性的な感染疾患、例えばAIDS(HIVー1及びHIV−2)、肝炎(HCV及びHBV)の病原体、「Severe Acute Respiratory Syndroms」(SARS)の病原体、SARS−CoV(コロナウィルス)、疱瘡ウィルスの病原体、ウィルス出血熱(VHF)の病原体、例えば、フィロウィルス科の代表例としてのエボラウィルス、流行性感冒病原体、例えばインフルエンザAウィルスでの感染の、処置、治療及び抑制のために適している物質が使用される。これには、例えばサイクロスポリンA及び/又はタクロリムスが挙げられる。
【0017】
本発明による医薬組成物は、更に、UPSの阻害剤が、
a)特にプロテアソーム阻害剤の形にある、これは、完全な26Sプロテアソーム複合体、及び、遊離の、調節性サブユニットとアセンブリー化していない20S触媒活性のあるプロテアソーム構造の酵素活性に影響を及ぼす、又は、
b)特に、ユビキチンリガーゼの作用を抑制する、又は、
c)特に、ユビキチンヒドロラーゼの作用を抑制する、又は、
d)特に、ユビキチン活性性の酵素の作用を抑制する、又は、
e)特別に、タンパク質のモノ−ユビキチン化を抑制する、又は、
f)特に、タンパク質のポリ−ユビキチン化を抑制する、少なくとも1種の物質であることにより、特徴付けられる。
【0018】
このプロテアソーム阻害剤は、高級真核生物の細胞により取り込まれ、かつ、細胞取り込み後にプロテアソームの触媒性サブユニットと相互作用し、かつ、この際、全ての又は個々の、前記プロテアソームのタンパク質分解活性−トリプシン−、キモトリプシン−及び/又はポストグルタミル−ペプチドを加水分解する活性−を、26S又は20Sのプロテアソーム複合体内で不可逆的に又は可逆的に遮断する。
【0019】
プロテアソーム阻害剤として、
a)天然の形態で微生物又は他の天然源から単離されるか、又は
b)天然物質から化学的修飾により生じる、又は
c)完全に合成により製造される、又は
d)遺伝子的方法によりin vivoで合成される、又は
e)遺伝子技術方法によりin vitroで、又は
f)微生物中で製造される、
物質が使用される。
【0020】
プロテアソーム阻害剤は、以下の物質クラス;
a)天然に存在するプロテアソーム抑制剤: −C末端エポキシケトン構造を含有するペプチド誘導体;又は
−β−ラクトン誘導体;又は
−アクラシノマイシンA(アクラルビシンとも呼ばれる);又は
−ラクタシステイン及びその化学的に修飾された変形、例えば細胞膜透過性変形「クラストラクタシステインβ−ラクトン」
b)合成により製造されたプロテアソーム抑制剤:修飾されたペプチドアルデヒド、例えばN−カルボベンゾキシ−L−ロイシニル−L−ロイシニル−L−ロイシナール(MG132又はzLLLとも呼ばれる)、そのホウ酸誘導体、MG232;N−カルボベンゾキシ−Leu−Leu−Nva−H(MG115と呼ばれる;N−アセチル−L−ロイシニル−L−ロイシニル−L−ノルロイシナール(LLnLと呼ばれる)、N−カルボベンゾキシ−Ile−Glu(OBut)−Ala−Leu−H(PSIとも呼ばれる);
c)C末端に、α,β−エポキシケトン構造、更には、ビニルスルホンを有するペプチド、例えば、カルボベンゾキシ−L−ロイシニル−L−ロイシニル−Lーロイシン−ビニル−スルホン又は4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニルラクテチル−L−ロイシニル−L−ロイシニル−Lーロイシン−ビニル−スルホン(NLVS):
d)グリオキサール又はホウ酸残基、例えばピラジル−CONH(CHPhe)CONH(CHイソブチル)B(OH)2)並びにジペプチジル−ホウ酸−誘導体又は
e)ピナコールエステル、例えばベンジルオキシカルボニル(Cbz)−Leu−Leu−boroLeu−ピナコール−エステル
に属する化合物である。
【0021】
特に適したプロテアソーム阻害剤は、エポキシケトン、エポキソマイシン(Epoxomycin、分子式C288647)及び/又はエポネマイシン(Eponemicin:分子式C203625)であり、又はPS系列からの阻害剤、次の化合物:
a) PS−519、β−ラクトン−並びにラクタシスチン誘導体として、化合物1R−[1S,4R,5S]]−1−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−4−プロピル−6−オキサ−2−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3,7−ジオン−分子式C1219NO4−及び/又は
b)PS314、ペプチジル−ホウ酸−誘導体として、化合物N−ピラジンカルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシン−ホウ酸、分子式C1925BN44及び/又は
c)PS−273(モルホリン−CONH−(CH−ナフチル)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及びそのエナンチオマーPS293;及び/又は
d)化合物PS−296(8−キノリル−スルホニル−CONH−(CH−ナフチル)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
e)PS−303(NH2(CH−ナフチル)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
f)PS−321(モルホリン−CONH−(CH−ナフチル)−CONH−(CH−フェニルアラニン)−B(OH)2)として;−及び/又は
g)PS−334(CH3−NH−(CH−ナフチル−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
h)化合物PS−325(2−キノール−CONH−(CH−homo−フェニルアラニン)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
i)PS−352(フェニルアラニン−CH2−CH2−CONH−(CHフェニルアラニン)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
j)PS−383(ピリジル−CONH−(CHpF−フェニルアラニン)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2))
が使用される。
【0022】
記載された医薬組成物は、医薬品として又はウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための剤の製造のために適している。ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための他の剤との組み合わせも同様に可能である。
【0023】
この剤の本発明による使用は、
−吸入剤、
−デポー剤、
−プラスター剤、
−マイクロエレクトロニクス系(「インテリジェントピル」)中で
の形態で行われる。
【0024】
腫瘍学及び/又は腫瘍学及びウィルス学における、
−グリオ芽細胞腫(悪性の脳腫瘍)
−乳癌CA(CA=癌)、
−頭−、喉CA
−偏平上皮−CA、
−卵巣CA、
−気管支CA(小細胞の、大細胞の)、
−甲状腺CA、
−肺−CA、
−大腸CA、
−膵臓CA、
−白血病(AML、ALL、CML、CLL)、
−急性脊髄性、慢性、
−急性リンパ性、慢性、
−リンパ腫(ホジキンでない)、
−頸部CA、
−神経芽細胞種、
−皮膚CA(メラノーマ)、
−前立腺−CA、
−膀胱CA、
−サルコーマ(骨、特に軟質部分)、
−横隔膜CA、
−消化管路CA(例えば、胃、食道)、
−精巣CA
−転位(例えば骨髄)、
−リンパ腫ウィルス、
−単純ヘルペス、
−サイトメガロウィルス、
−水疱、
−水疱・帯状ヘルペス、
−はしか、
−ラッサ熱、
−AIDS、
−おたふく風邪(−髄膜炎、−精巣炎)、
−腸炎;流行性感冒(全ての形態)、
−脳炎、
−肝炎(A、B、C、D、E、G)
−風疹、
−コクサッキーB、
−ポリオ(−脊髄炎)、
−脳髄炎、
−膵炎、
−肺炎、
−心筋炎、
−熱帯性疾患(ウィルス性)、
−全ての二重鎖及び一重鎖のDNA及びRNAヒト病原性ウィルス
の治療のための使用が可能である。
【0025】
意外にも、タンパク質のフォールディングの機構の妨げにより、増強して誤ってフォールディングされたタンパク質が形成されることが明らかになった。タンパク質の生合成のこの誤り生成物は、通常は、ユビキチン−プロテアソーム系(UPS)により分解され、従って、細胞代謝から除去される。UPSの阻害の際には、例えば、プロテアソーム阻害剤により及び/又はユビキチンリガーゼの阻害剤により、この、通常は、ポリユビキチン化した及び誤ってフォールディングされた、タンパク質の生合成の誤り生成物が細胞中に蓄積し、これにより、多岐にわたる、細胞代謝の障害が誘発され、これは、この作用の合計において、この問題となる細胞を有利には、プログラム細胞死(アポトーシス)に導くものである。ウィルス感染した、また同様に、迅速に分割する腫瘍細胞中は、特別に高いタンパク質生合成速度が存在するので、特にこのような細胞は、増強して、UPS及びタンパク質フォールディングの阻害剤の作用に対して反応し、その一方で、この通常の及び健康な細胞は、この阻害剤により、十分に影響を受けないままである。これに、本発明により提案される新規の治療方法の根本的な機構は基づく。
【0026】
本発明の特別な一実施態様において、複数のミエローマを有する患者の、形質細胞種の治療のためにこの阻害剤の作用は利用される。このB細胞種は、免疫グロブリンに関する極めて高い合成速度により、優れている。公知の様式では、この形質細胞種は、プロテアソーム阻害剤での治療に対して特に敏感である。従って、プロテアソーム阻害剤、特に、ホウ酸−ペプチドの形態にあるプロテアソーム阻害剤(市販名、Velcade)は、成功して、複数のミエローマの治療のために使用される。無論、プロテアソーム阻害剤での治療の際には、極めて狭い治療ウィンドウを考慮しなくてはならず、というのは、治療用量と寛容可能な毒性用量の間の境界が極めて狭いからでる。タンパク質のフォールディングの阻害剤での治療により、このような形質細胞種は、プロテアソーム阻害剤に対する作用のために敏感化される。プロテアソーム阻害剤と、タンパク質のフォールディング阻害剤の組み合わせにより、この両方の作用物質の作用は、相乗的に増強される。同時に、この両方の機構は、毒性未満の容量で、より高い有効性でもって使用されることができ、これは、合計すると、この療法の成功の見通しを実質的に高める。
【0027】
本発明による解決策は、公知技術に対して次の利点を提供する:
−耐性の回避、
−特定の疾病の治癒、
−より高い応答速度、
−複数の腫瘍形態の治療(軽症、中程度、重症の場合)。
【0028】
本発明の更なる有利な一実施態様は、この両方の作用物質の組み合わせにおける、抗ウィルス性の作用に関する。プロテアソーム阻害剤が、誤ってフォールディングされたGagタンパク質(これは、子孫ウィルスのアセンブリー化及び放出の整理されたプロセスに干渉する)の蓄積を誘導することにより、ヒトの免疫不全ウィルス(HIV)及び他のウィルスの複製を妨げることが公知である。プロテアソーム阻害剤の治療作用は、このウィルス感染された細胞が、同時に、タンパク質のフォールディングの阻害剤で処理される場合に実質的に増強される。これにより、誤ってフォールディングされた、ウィルスの構造タンパク質の数が高められ、これは、トランスネガティブな機構において、いわゆるプリオン類似の作用様式において、ウィルスタンパク質のアセンブリー化を増強し、かつ、これにより、子孫ウィルスの形成を妨げる。本発明のこの実施態様は、新規に合成されたウィルス構造タンパク質の整理された組立が起こる全てのウィルス感染のために一般的に有効である。
【0029】
本発明は、実施例をもとにより詳細に説明されるが、この際この実施例に限定されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】Hsp90阻害剤17−AAGは、10nMまでの濃度でCEM細胞中で細胞毒性を示さない。CD4+−T−リンパ球細胞(CEM細胞)を様々な濃度の17−AAGと共にインキュベーションし、かつ、時間依存的な色変化(生存細胞の数と同じ意味を持つ)を、AlamarBlueTM (Invitrogen)の添加により、蛍光測定を用いて算出した。
【図2】サブゲノムHIV−1発現ベクターpNLenvlでトランスフェクションしたHeLaSS6細胞が、17−AAGの影響下で、ウィルス画分中で、減少したGagプロセッシングを示し、かつ、細胞画分中で、増強したHsp70−発現を示した。
【0031】
実施例
実施例1: Hsp90阻害剤、17−AAGは、10nMまでの濃度でCEM細胞中で毒性を示さない。
【0032】
CD4+Tリンパ球細胞(CEM細胞)は、96ウェルプレート中で、100μlにつき1×104個の細胞密度で播種される。媒体(参照、実施例4)は、前もって相応する量の17−AAGが、17−AAG、1μM、100nM、10nM、1nM、0.1nM、及び0.01nMの終濃度を達成すべく添加されている。37℃及び5%CO2での30時間のインキュベーション後に、10μlのAlamarBlueTM(Invitrogen)を添加し、かつ、全てのバッチを更なる4時間37℃でインキュベーションした。CEM細胞の生存率のための尺度(MTT CEM中で挙げられる)を、17−AAGの影響下で、530nm/590nmでの蛍光測定を用いた、この媒体の色変化の測定を通じて測定することができた。全てのバッチをトリプリケートで実施した。
【0033】
実施例2:pNL env1トランスフェクションしたHeLaSS6細胞は、17−AAGの影響下で、ウィルス画分中で、減少したGagプロセッシングを示し、かつ、細胞画分中で、増強したHsp70発現を示した。
【0034】
Gagプロセッシングの速度論及びウィルス放出に対する17−AAGの影響の生化学的分析のために、時間速度(Zeitkinetik)を実施した。培養、トランスフェクション、媒体交換及び時間速度の実験的詳細は実施例4a/b中に記載されている。このためには、HeLaSS6細胞の培養が使用され、これは、pNL envl(Schubert et al, 1995)でトランスフェクションされている。17−AAG含有媒体(100nM 17AAG)又は阻害剤無しの媒体中でのインキュベーション後に、この速度を、バッチの、別個の洗浄工程及びアリコート取得により、開始した。アリコートの細胞培養を、それぞれの時間点で取得し、かつ、遠心分離により、細胞−、ウィルス−及び細胞培養上清画分に分離した。HIVタンパク質をSDS PAGEで分離し、PVDF膜上に移し、かつ、引き続き、抗体媒介した化学発光により、レントゲンフィルムに対して可視可能にした。
【0035】
実施例3:17−AAGは、PS341との組み合わせとしても、X4−栄養性のHIウィルスのウィルス複製をHLAC−モデル中で抑制する
ヒトの扁桃を細断(mazerieren)し、96ウェルプレート中に移した。一日間のインキュベーション後にこの細胞を、X4栄養性のHIウィルスで感染させ、相応する阻害剤と混合し、次の日にタグを洗浄した。この工程も、また同様に次の工程も、実施例4c−d中に詳細に記載されている。それぞれの速度点(kineticpunkt)、150μlのこの培地を取り除き、かつ、−80℃でRT測定のために貯蔵した。この更に添加した培地は、この特殊なバッチのために必要な濃度の阻害剤を含有した。
【0036】
15日後に、機能的に形成されたHIウィルスの部分を、RTアッセイ(実施例4e)参照を用いて、この貯蔵された上清から算出した。
【0037】
実施例4:材料及び方法
実施例4a:細胞培養
CEM細胞を、10%(V/V)のウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100U ml-1のペニシリン及び100μg ml-1のストレプトマイシンを有するRPMI1640中で培養した。
【0038】
Hela細胞(ATCC CCL2)を、10%のウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100U ml-1ペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを有する、ダルベッコ修飾したイーグル培地(DMEM)中で培養した。
【0039】
扁桃細胞を、15%(V/V)ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100U ml-1ペニシリン、100μg ml-1ストレプトマイシン、2.5μg/mlフンギゾン、1mMピルビン酸ナトリウム、1% MEM 非必須アミノ酸溶液及び50μg/mlゲンタマイシンを有するRPMI 1640中で培養した(「扁桃培地」)。
【0040】
実施例4b:トランスフェクション、培地交換及び速度論
Hela細胞(ATCC CCL2)を、pNLΔenv−リポフェクタミン2000混合物を用いて、OPTI−MEM中にトランスフェクションした。37℃及び5%のCO2中での8時間のインキュベーション後に、培地交換を実施した。両方の培地の1つで、この培地に、終濃度100nMの17−AAGを添加し、かつ、更なる16時間インキュベーションした。PBS中での別個の洗浄工程後に、相応する時間点をアリコート取得した。この相応する時間点に、この細胞を、遠心分離(5分間、5000rpm)により上清から分離し、かつ、後に、CHAPS/DOC溶解(3分間、氷上で)で溶解させた。上清中のVLPを、20%のスクロースクッション上でペレット化し(30分間、14000rpm)、かつ、この細胞ペレットの溶解物も10%のSDS−PAGEを用いて分離し、湿式ブロットによりPVDF膜上に移し、かつ10%のミルク粉末(PBS−Tween 0.1%)中でブロッキングした。HIV−又は細胞特異的なタンパク質の検出を、特異的な抗体(Hsp70、Hsp90、p24、PR56、β−アクチンに対して)を介して行った。二次抗体との反応及びそのカップリングした化学発光により、このシグナルがレントゲンフィルム上で検出できた。
【0041】
実施例4c:トランスフェクション及びウィルスストックの獲得
ウィルス調製物の製造のために、分子状のHIV−1−DNAのプラスミドDNAを、カルシウム−リン酸−調製物方法を適用して、HeLa細胞中にトランスフェクションした。このためには、HeLa細胞のコンフルエントな培養液(5×106細胞)を、リン酸カルシウム結晶中の25μgのプラスミドDNA(Graham 及び van der Eb (1973)による方法により製造)とインキュベーションし、引き続き、Gorman et al. (1982)によるグリセロールショックにかけた。濃縮化したウィルス調製物の獲得のためにトランスフェクション後2日間、この細胞上清を獲得した。引き続き、この細胞並びにこの成分を遠心分離(1000×g、5分間、4℃)及び濾過(0.45μm孔径)を通じて分離した。ウィルス粒子を、超遠心分離(Beckman SW55 ローター, 1.5時間, 35000rpm, 10℃)によりペレット化し、かつ、この後に、1mlのDMEM培地中に再懸濁した。このウィルス調製物を濾過により滅菌(0.45μm孔径)し、小分けにして凍結した(−80℃)。個々のウィルス調製物を、逆転写酵素活性の測定を介して、即ち、既に記載された試験(Willey et al, 1988)に基づいて、オリゴ(dT)−ポリ(A)−テンプレート中への[32P]−TTP組み込みを使用して標準化した。
【0042】
実施例4d:HLACモデル(獲得;感染;速度論)
扁桃組織を、PBS中で洗浄し、外科用メスを用いて血栓をとりのぞき、1〜2mm2の大きさの片に分割した。個々の細胞をフィルター網を通じた機械的加圧を通じて達成した。この個別化した細胞の実施された遠心分離(5分間、1200rpm)後に、この細胞をカウントし、96ウェル中に播種し、かつ、一晩37℃及び5%のCO2でインキュベーションした。この細胞の感染を、相応する阻害剤濃度を適用しながらの、10ngのX4栄養性のHIVストックの同時の添加により実施した。次の日に、50μlの上清を取り出し("1dpi")かつ−80℃で貯蔵した。この細胞を、この後に遠心分離(5分間、1200rpm)し、かつ、更なる50μlの上清を取り除いた。この細胞の100μlの扁桃細胞媒体中での再懸濁後に、この洗浄工程を2回繰り返した。この相応する阻害剤濃度を有する扁桃細胞培地の添加後に、この細胞を新規に、37℃及び5%CO2でインキュベーションした。3、6、9及び12日目に、150μlの培地を取り出し、−80℃で貯蔵し、かつ、相応する阻害剤濃度を有する150μlの媒体を添加した。15日目に、150μlの上清のみを取り出し、−80℃で貯蔵し、かつこの細胞をこの後に、廃棄した。
【0043】
実施例4e:RTアッセイ
−80℃で貯蔵された扁桃上清を、逆転写酵素活性の測定を介して、即ち、既に記載された試験(Willey et al, 1988)に基づいて、オリゴ(dT)−ポリ(A)−テンプレート中への[32P]−TTP組み込みを使用して算出した。
【0044】
図の説明
図1:
Hsp90阻害剤17−AAGは、10nMまでの濃度でCEM細胞中で細胞毒性を示さない。CD4+−T−リンパ球細胞(CEM細胞)を様々な濃度の17−AAGと共にインキュベーションし、かつ、時間依存的な色変化(生存細胞の数と同じ意味を持つ)を、AlamarBlueTM (Invitrogen)の添加により、蛍光測定を用いて算出した。
【0045】
図2:
サブゲノムHIV−1発現ベクターpNLenvlでトランスフェクションしたHeLaSS6細胞が、17−AAGの影響下で、ウィルス画分中で、減少したGagプロセッシングを示し、かつ、細胞画分中で、増強したHsp70−発現を示した。
【0046】
図3:
X4栄養性のHIウィルスに対しての、17−AAG単独の、また同様にプロテアソーム阻害剤PS341との組み合わせでの抗ウィルス活性を、HLACモデル中で2つの異なる扁桃の、そのつどの速度点のRTデータをもとに示した(A及びB)。
【0047】
このX4栄養性のHIウィルスのウィルス複製は、扁桃A(A)中で、1nMのプロテアソーム阻害剤PS341、1nMの17−AAGとのインキュベーション、また更に10nM 17−AAGを用いても、顕著には影響を及ぼされない。この両方の物質の組み合わせ(5nM PS341及び1nM 17−AAG)が、初めて、ウィルス複製の顕著な減少を達成した。この際、この相加的な効果はこの両方の物質の適用の際に、Hsp90阻害剤17−AAG(10nM)のより高い濃度により、更に増強されることができたことが示された。扁桃B(B)は同様に、X4栄養性のHIV複製の影響を、1nMのPS341又は1nMの17−AAGでのインキュベーションで示さない。扁桃Aとは対照的に、扁桃Bでは10nMの17−AAGの添加で既に、ウィルス複製の顕著な減少を検出されることができた。プロテアソーム阻害剤PS341と、Hsp90阻害剤17−AAGとの間でのそのつどの組み合わせでは、ウィルス複製はもはや検出されることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のユビキチン−プロテアソーム系の阻害剤及びタンパク質フォールディング酵素の阻害剤を有効成分とする、医薬組成物。
【請求項2】
タンパク質フォールディング酵素の阻害剤が、少なくとも1種の細胞シャペロンの阻害剤であるか又はタンパク質のフォールディングに直接的に影響を及ぼす少なくとも1種の化学物質(化学的抗シャペロン)であることを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンとして、次の物質:
a)ウィルスタンパク質のフォールディング及びタンパク質加水分解の成熟を抑制するか、調節するか又は他の様式で影響を及ぼし、これにより、ウィルスの放出及び複製を抑制する物質、このウィルスが特に、感染疾患、例えばAIDS、肝炎、出血熱、SARS、疱瘡、はしか、ポリオ、ヘルペスウィルス感染又は流行性感冒の病原体のウィルスである、又は
b)誤ってフォールディングされたタンパク質の蓄積によりプログラム細胞死に追い込むことにより、変性した細胞、特に腫瘍細胞の増殖を妨げる物質、
が使用されることを特徴とする、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンにより、宿主細胞のフォールディング分子状酵素の酵素活性に特に影響を及ぼす物質が使用されることを特徴とする、請求項2又は3記載の医薬組成物。
【請求項5】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的抗シャペロンにより、高級真核生物の細胞により吸収され、細胞吸収後に、ウィルス構造タンパク質及び腫瘍細胞からのタンパク質のタンパク質フォールディングを遮断する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、様々な形態でin vivoで経口で、静脈内、筋肉内、皮下に、又は、細胞特異性の基礎となる変更有り又は無しでカプセル化された形態で投与され、特定の適用−及び用量規定の適用のために少ない細胞毒性を有し、副作用を全く又はほとんど引き起こさず、比較的高い代謝半減時間及び比較的少ないクリアランス速度を生物中で有する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンとして、次の物質:
a)微生物又は他の天然の供給源から天然の形態で単離される物質、又は
b)天然の物質から化学的な修飾により生じる物質、又は
c)完全に合成により製造される物質、又は
d)遺伝子療法によりin vivoで合成される物質
が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、ウィルス構造タンパク質のアセンブリー化及びタンパク質加水分解的成熟の高度に組織化されたプロセスを妨げ、かつ、これにより、感染性の子孫ウィルスの放出及び生産を抑制する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、ウィルスタンパク質及び/又は腫瘍特異的なタンパク質のフォールディングを調節するか、妨げるか又は遮断する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的シャペロンにより、ウィルス複製の後期のプロセス、例えばアセンブリー化、出芽、タンパク質加水分解による成熟及びウィルス放出を妨げる物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンとして、ウィルスのポリプロテインの前駆体タンパク質のタンパク質加水分解によるプロセッシングを妨げる物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンとして、ウィルスプロテアーゼの活性を遮断する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、細胞プロテアーゼ及び/又は酵素、例えば、リガーゼ、キナーゼ、ヒドロラーゼ、グリコシル化酵素、ホスファターゼ、DNアーゼ、RNアーゼ、ヘリカーゼ及びトランスフェラーゼ(これらは、ウィルス成熟に関与している)の活性を妨げる物質を使用することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、幅広い作用スペクトルを有し、かつ、従って、新規の広範囲なウィルス静止剤として、様々なウィルス感染の予防及び/又は治療のために使用される物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、細胞シャペロン、例えばヒートショックプロテイン(heat shock proteins (hsp))を遮断する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項16】
細胞シャペロンの阻害剤として又は化学的な抗シャペロンにより、ヒートショックプロテイン、Hsp27、Hsp30、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp72、Hsp73、Hsp90、Hsp104及びHsc70の活性を阻害する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項17】
細胞シャペロンの阻害剤として、次の物質クラス及びその誘導体:
ゲルダナマイシン(Hsp90を阻害)、ラジシコール(チロシンキナーゼ阻害剤、Hsp90を阻害)、デオキシスペルグアリン(Hsc70及びHsp90を阻害)、4−PBA(4−フェニルブチラート;Hsc70のタンパク質−及びmRNA発現の下流調節)、ヘルビマイシンA(チロシンキナーゼ阻害剤、Hsp72/73誘導と共に)、エポラクタエン(Hsp60の阻害剤)、サイズ及びリーパー(Hsp70を阻害)、アルテミシニン(Hsp90の阻害剤)、CCT0180159(Hsp90のピラゾール阻害剤として)及びSNX−2112(Hsp90の阻害剤)、ラダナマイシン(ラジシコール及びゲルダナマイシンのマクロライドキメラ)、ノボビオシン(Hsp90阻害剤)、ケルセチン(Hsp70発現の阻害剤)に属する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項18】
化学的な抗シャペロンとして、ウィルス及び/又は腫瘍特異的なタンパク質のタンパク質コンフォーメーション及びフォールディングを調節するか、妨げるか又は遮断する物質が使用されることを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項19】
化学的抗シャペロンとして、物質、例えばグリセロール、トリメチルアミン、ベタイン、トレハロース又は重水素化水(D2O)が使用されることを特徴とする、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
化学的抗シャペロンとして、様々なヒト病原性の又は動物病原性のウィルスでの感染の、処置、治療及び抑制のために適している物質を使用することを特徴とする、請求項18又は19記載の医薬組成物。
【請求項21】
分子シャペロン又は化学的抗シャペロンの阻害剤として、慢性的な感染疾患、例えばAIDS(HIVー1及びHIV−2)、肝炎(HCV及びHBV)の病原体、「Severe Acute Respiratory Syndroms」(SARS)の病原体、SARS−CoV(コロナウィルス)、疱瘡ウィルス、ウィルス出血熱(VHF)の病原体、例えば、フィロウィルス科の代表例としてのエボラウィルス、流行性感冒病原体、例えばインフルエンザAウィルスでの感染の、処置、治療及び抑制のために適している物質を使用することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項22】
サイクロスポリンA及び/又はタクロリムスを使用することを特徴とする、請求項2から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項23】
UPSの阻害剤が、以下の少なくとも1種の物質:
a)特に、プロテアソーム阻害剤の形にある物質、これは、完全な26Sプロテアソーム複合体の酵素活性、及び、遊離の、調節性サブユニットとアセンブリー化していない20S触媒活性のあるプロテアソーム構造の酵素活性に影響を及ぼす、又は、
b)特に、ユビキチンリガーゼの作用を抑制する物質、又は
c)特に、ユビキチンヒドロラーゼの作用を抑制する物質、又は
d)特に、ユビキチン活性性の酵素の作用を抑制する物質、又は
e)特に、タンパク質のモノ−ユビキチン化を抑制する物質、又は
f)特に、タンパク質のポリ−ユビキチン化を抑制する物質
であることを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項24】
プロテアソーム阻害剤として、高級真核生物により取り込まれ、かつ、細胞取り込み後にプロテアソームの触媒性サブユニットと相互作用し、かつ、この際、全ての又は個々の、前記プロテアソームのタンパク質加水分解活性−トリプシン−、キモトリプシン−及び/又はポストグルタミル−ペプチドを加水分解する活性−を、26S又は20Sのプロテアソーム複合体内で不可逆的に又は可逆的に遮断する物質が使用されることを特徴とする、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
プロテアソーム阻害剤として、以下の物質:
g)微生物又は他の天然の供給源から天然の形態で単離される物質、又は
h)天然の物質から化学的な修飾により生じる物質、又は
i)完全に合成により製造される物質、又は
j)遺伝子療法によりin vivoで合成される物質、
k)遺伝子技術方法によりin vitroで又は
l)微生物中で製造される物質
が使用されることを特徴とする、請求項23又は24記載の医薬組成物。
【請求項26】
プロテアソーム阻害剤として、次の物質クラス:
f)天然に存在するプロテアソーム阻害剤:
−C末端のエポキシケトン構造を含有するペプチド誘導体、又は
−β−ラクトン誘導体、又は
−アクラシノマイシンA(アクラルビシンとも呼ばれる)、又は
−ラクタシスチン及びその化学的に修飾された変形、例えば、細胞膜透過性の変形「クラストラクタシステインβ−ラクトン」
g)合成により製造されたプロテアソーム阻害剤:−修飾されたペプチドアルデヒド、例えばN−カルボベンゾキシ−L−ロイシニル−L−ロイシニル−L−ロイシナール(MG132又はzLLLとも呼ばれる)、そのホウ酸誘導体、MG232;N−カルボベンゾキシ−Leu−Leu−Nva−H(MG115と呼ばれる;N−アセチル−L−ロイシニル−L−ロイシニル−L−ノルロイシナール(LLnLと呼ばれる)、N−カルボベンゾキシ−Ile−Glu(OBut)−Ala−Leu−H(PSIとも呼ばれる);
h)C末端に、α,β−エポキシケトン構造、更には、ビニルスルホンを有するペプチド、例えば、カルボベンゾキシ−L−ロイシニル−L−ロイシニル−Lーロイシン−ビニル−スルホン又は4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニルラクテチル−L−ロイシニル−L−ロイシニル−Lーロイシン−ビニル−スルホン(NLVS):
i)グリオキサール−又はホウ酸残基、例えばピラジル−CONH(CHPhe)CONH(CHイソブチル)B(OH)2)並びにジペプチジル−ホウ酸−誘導体又は
j)ピナコールエステル、例えばベンジルオキシカルボニル(Cbz)−Leu−Leu−boroLeu−ピナコール−エステル
に属する物質が使用されることを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項27】
特に適したプロテアソーム阻害剤として、エポキシケトン、エポキソマイシン(Epoxomycin、分子式C288647)及び/又はエポネマイシン(Eponemicin:分子式C203625)が使用されることを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項28】
特に適したプロテアソーム阻害剤としてPS系列から次の化合物:
k) PS−519、β−ラクトン−並びにラクタシスチン誘導体として、化合物1R−[1S,4R,5S]]−1−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−4−プロピル−6−オキサ−2−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−3,7−ジオン−分子式C1219NO4−及び/又は
l)PS314、ペプチジル−ホウ酸−誘導体として、化合物N−ピラジンカルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシン−ホウ酸、分子式C1925BN44及び/又は
m)PS−273(モルホリン−CONH−(CH−ナフチル)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及びそのエナンチオマーPS293;及び/又は
n)化合物PS−296(8−キノリル−スルホニル−CONH−(CH−ナフチル)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
o)PS−303(NH2(CH−ナフチル)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
p)PS−321(モルホリン−CONH−(CH−ナフチル)−CONH−(CH−フェニルアラニン)−B(OH)2)として、及び/又は
q)PS−334(CH3−NH−(CH−ナフチル−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
r)化合物PS−325(2−キノール−CONH−(CH−homo−フェニルアラニン)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2)及び/又は
s)PS−352(フェニルアラニン−CH2−CH2−CONH−(CHフェニルアラニン)−CONH−(CH−イソブチル)l−B(OH)2)及び/又は
t)PS−383(ピリジル−CONH−(CHpF−フェニルアラニン)−CONH−(CH−イソブチル)−B(OH)2))
が使用されることを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1から28までのいずれか1項記載の組成物を含有する、ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための剤。
【請求項30】
ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための、請求項1から28までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項31】
ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のための剤の製造のための、請求項1から28までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項32】
ウィルス感染及び/又は腫瘍疾患の治療のために使用される他の剤と組み合わせた、請求項30又は31記載の使用。
【請求項33】
−吸入剤、
−デポー形態、
−プラスター、
−マイクロエレクトロニクス系(「インテリジェントピル」)
の形での、請求項30から32までのいずれか1項記載の使用。
【請求項34】
腫瘍学及び/又は腫瘍学及びウィルス学における、請求項30から33までのいずれか1項記載の使用。
【請求項35】
−グリオ芽細胞腫(悪性の脳腫瘍)
−乳CA(CA=癌)
−頭部CA、喉部CA、
−偏平上皮−CA、
−卵巣CA、
−気管支CA(小細胞の、大細胞の)、
−甲状腺CA、
−肺CA、
−大腸CA、
−膵臓CA、
−白血病(AML、ALL、CML、CLL)
−急性脊髄性、慢性、
−急性リンパ性、慢性、
−リンパ腫(ホジキンでない)、
−頸部CA、
−神経芽細胞腫、
−皮膚CA(メラノーマ)、
−前立腺CA、
−膀胱CA、
−サルコーマ(骨、特に軟質部分)、
−横隔膜CA、
−消化管路CA(例えば、胃、食道)、
−精巣CA
−転位(例えば骨髄)、
−リンパ腫ウィルス、
−単純ヘルペス、
−サイトメガロウィルス、
−水疱、
−水疱・帯状ヘルペス、
−はしか、
−ラッサ熱、
−AIDS、
−おたふく風邪(−髄膜炎、−精巣炎)、
−腸炎;流行性感冒(全ての形態)、
−脳炎、
−肝炎(A、B、C、D、E、G)
−風疹、
−コクサッキーB、
−ポリオ(−脊髄炎)
−脳髄炎、
−膵炎、
−肺炎、
−心筋炎、
−熱帯性疾患(ウィルス性)、
−全ての二重鎖及び一重鎖のDNA及びRNAヒト病原性ウィルス
の治療のための、請求項30又は31記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−538881(P2009−538881A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512618(P2009−512618)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055425
【国際公開番号】WO2007/138116
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508250062)ヴィロローギク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】ViroLogik GmbH
【住所又は居所原語表記】Henkestrasse 91, D−91052 Erlangen, Germany
【Fターム(参考)】