説明

タンパク質ポリエチレングリコール(PEG)複合体形成を増大させる方法

【課題】高度に複合体化したタンパク質、およびそうしたタンパク質を作製する方法を提供する。
【解決手段】非タンパク質ポリマー鎖でタンパク質を修飾する方法であって:a)タンパク質を非タンパク質ポリマーと結合し、1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する第1の修飾タンパク質を生成すること;b)1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する、前記の第1の修飾タンパク質を、2つ以上のアミノ基を有する多官能アミンと結合し、1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質を生成すること;c)1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する前記修飾タンパク質を、別の非タンパク質ポリマーと結合し、第1の修飾タンパク質より多くの非タンパク質ポリマー鎖を有する、第2の修飾タンパク質を生成すること、を含んでなる方法。免疫原性が低下し、血中半減期が増加した、高度に複合体化したタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年3月17日出願の仮出願第60/554,310号に関連するものである。この文書の内容は、参考として本明細書に含めるものとする。
【0002】
本発明は、タンパク質治療の分野、特に高度に複合体化したタンパク質、およびそうしたタンパク質を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質治療薬のポリエチレングリコール(PEG)との複合体形成は、血中半減期の増加および抗原性の減少を含めた、重要な治療上の利益を与えることが明らかとなっている(Kozlowski, A.ら、J. Controlled Release (2001) 72: 217-224)。PEGの一つ一つのエチレンオキシドユニットは、2ないし3個の水分子と会合しており、その結果として、PEG分子は、あたかもそれに見合う分子量のタンパク質より5倍から10倍大きいかのような挙動を示す(Kozlowski, A.、上記)。PEG化されたタンパク質のクリアランス速度は、分子量に反比例する(Yamaoka, T.ら、J. Phare. Sci. (1994) 83: 601-606)。分子量約20,000未満では、分子は尿中に排出される。それより分子量の大きいPEGタンパク質は、もっとゆっくり尿および糞便中に排出される(Yamaoka, T.、上記)。PEG化されたタンパク質は、溶解性が高まり、抗原性、タンパク質分解および腎クリアランス速度が低下し、さらに選択的腫瘍ターゲティングが増強される。
【0004】
現在のところ、アデノシンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、α-IFNおよび成長ホルモンアゴニストのPEG化型が、当局の承認を受けている(Maeda, H.ら(編)、 Advances in experimental medicine and biology : polymer drugs in the clinical stage, (2003) 第519巻、Dordrecht, The Netherlands:Kluwer Academic/Plenum Publishers)。PEG-α-IFNは、C型肝炎治療のために2つの形で承認された(Kozlowski, A.、上記、ならびにGilbert, C. W.ら、米国特許第5,951,974号 (1999))。難治性もしくは再発性の急性リンパ性白血病(ALL)の患者は、PEG-アスパラギナーゼ、ならびにメトトレキサート、ビンクリスチンおよびプレドニゾンの併用による治療が行われる(Aguayo, A.ら、Cancer (1999) 86: 1203-1209)。研究から、PEG-ADAが、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の患者において免疫系をかなり強めたことも明らかであるが、この患者は、免疫系の発達が抑制されるため、ほとんどあらゆるタイプの感染を受けやすい(Pool, R., Science (1990)248 : 305; およびHershfield, M. S., Clin.Immunol.Immuopathol. (1995) 76: S228-S232)。PEG化タンパク質は、望ましい治療上の特性を示すが、タンパク質のPEGとの複合体化の方法は、結合に利用できるタンパク質上の部位の数および分布によって限定される。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、高度に複合体化したタンパク質、およびそうしたタンパク質を作製する方法に関する。詳細には、本発明は、ポリアルキレンオキシドを治療用タンパク質と化学結合する方法に関するものであって、その結果、免疫原性が低下し、血中半減期が増加した、高度に複合体化したタンパク質を生じる。
【0006】
ある態様において、本発明は、タンパク質を、非タンパク質ポリマー鎖で修飾する方法に関するが、これは下記を含んでなる:a) タンパク質を非タンパク質ポリマー鎖と結合して、1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する第1の修飾タンパク質を生じること;b) 1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する第1の修飾タンパク質を、少なくとも2つのアミノ基を有する多官能アミンと結合して、1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質を生じること;ならびにc) 1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質を別の非タンパク質ポリマーと結合して、第1の修飾タンパク質より多くの非タンパク質ポリマー鎖を有する、第2の修飾タンパク質を生成すること。
【0007】
ある例において、非タンパク質ポリマーは、タンパク質のN末端アミノ基と反応することができる官能基で誘導体化されている。たとえば、非タンパク質ポリマーは、N-ヒドロキシスクシンイミドで誘導体化されていてもよい。ある例において、非タンパク質ポリマーはポリエチレングリコールのようなポリオキシアルキレンである。ある特別な例において、官能化された非タンパク質ポリマーは、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタラートである。概して、非タンパク質ポリマーの分子量は約5000である。
【0008】
ステップa)において、第1の修飾タンパク質は、タンパク質のN末端アミノ基を非タンパク質ポリマーのエステル基と結合することによって生成することができる。ステップ2において、1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質は、第1の修飾タンパク質のC末端を多官能アミンのアミノ基と結合することによって生成することができる。多官能アミンはジアミノブタンとすることができる。ある例において、カルボキシル基はカルボジイミドのような触媒の存在下で多官能アミンと結合する。特別な例において、カルボキシル基は、l-エチル-3- (3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミドの存在下で多官能アミンと結合する。ある例において、修飾タンパク質は第2の結合ステップにおいて第1の修飾タンパク質間の架橋結合なしに形成される。
【0009】
ある例において、第1の結合ステップにおけるタンパク質の非タンパク質ポリマーに対する比は1:15である。別の例において、第2の結合ステップにおける第1の修飾タンパク質の非タンパク質ポリマーに対する比は、1:60である。
【0010】
本発明はまた、上記の方法にしたがって修飾されたタンパク質を与える。ある例において、タンパク質は高度に複合体化したメチオニナーゼである。さらに、本発明はポリエチレングリコール鎖で2回修飾されたタンパク質を提供するが、この第1の修飾は、タンパク質のN末端アミノ基とポリエチレングリコールエステル誘導体とを結合して、最初のPEG化タンパク質を生成すること、ならびに最初にPEG化したタンパク質と少なくとも2つのアミノ基を有する多官能アミンとを結合して、ポリエチレングリコール鎖および1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する第1の修飾タンパク質を生成することを含んでなる;さらに、第2の修飾は、第2の修飾タンパク質における1つもしくは複数の追加のアミノ基と別のポリエチレングリコールエステル誘導体とを結合して、第1の修飾タンパク質より多くのポリエチレングリコール鎖を有する第2の修飾タンパク質を生成することを含んでなる。本発明はまた、本発明の修飾タンパク質および製薬上許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、腫瘍の活動性を調節する方法を提供するが、その方法は、そうした必要のある被験体に、治療上有効な量の本発明の修飾タンパク質、またはその医薬組成物を投与することを含んでなる。被験体はヒトもしくは動物とすることができる。
【0012】
本明細書で使用する場合、「多官能アミン」という用語は、少なくとも1つのアミノ基を有するアミンを指す。ある例において、脂肪族多官能アミン、好ましくはジアミンを、カップリング剤として使用する。3個以上の機能性アミノ基を有する脂肪族多官能アミン、ならびに芳香族多官能アミンも、カップリング剤としての使用を考慮される。脂肪族多官能アミンの例には、1, 4-ジアミノブタン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,5-ジアミノペンタン、2,2-ジメチル-1, 3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラアミンがあるがそれらに限定されない。ある例において、1, 4-ジアミノブタンが、カップリング試薬として使用される。芳香族多官能アミンの例には、p-フェニレンジアミン、p-トルイレンジアミンおよびジアミノナフタレンがあるがそれらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用する場合、「カップリング剤」という用語は、2つの反応物質の間に結合部を形成することができる、何らかの物質を指す。ある例においては、カルボジイミドを用いて、アミノ基と、エステルや酸のようなカルボキシル基とを結合する。カルボジイミドの例には、1-エチル-3- (3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド、ジシクロヘキシル カルボジイミド、ジイソプロピル カルボジイミド、ビス (トリメチルシリル) カルボジイミド、またはN-シクロヘキシル-N'-(β-[N-メチルモルホリノ]エチル)カルボジイミド p-トルエンスルホナートがあるがそれらに限定されない。ある例において、1-エチル-3- (3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミドが使用され、タンパク質のN末端アミノ基を、エステルもしくは酸のようなカルボキシル基に結合する。
【0014】
本明細書で使用される、「活性化ポリエチレングリコール」もしくは「活性化PEG」という用語は、より反応性の高い官能基で誘導体化されたポリエチレングリコールを指す。特別な例において、活性化ポリエチレングリコールは、タンパク質のリジンもしくはN末端アミノ基と反応しうる官能基で誘導体化されている。ポリエチレングリコールを活性化する方法は、当業者によく知られている。たとえば、ポリエチレングリコールをN-ヒドロキシスクシンイミドとエステル結合させて、活性化PEGエステルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、super-PEG-rMETaseを調製するための模式図を示す。
【図2】図2は、rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度に及ぼす、NHS/EDCモル比の影響を示す。
【図3】図3は、rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度に及ぼす、EDC/rMETaseモル比の影響を示す。
【図4】図4は、rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度に及ぼす、ジアミノブタン(DAB)/rMETaseモル比の影響を示す。
【図5】図5は、rMETaseおよびPEG化rMETaseのSDS-PAGEを示す。
【図6】図6は、rMETaseのカルボキシル基アミド化の際の、最初のPEG化に対する架橋結合の影響を示す。
【図7】図7は、無修飾rMETase(◆)、PEG-rMETase(■)、およびsuper-PEG-rMETase(黒い三角)の免疫反応性を比較する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、高度に複合体化したタンパク質、およびそうしたタンパク質を作製する方法に関する。詳細には、本発明は、タンパク質を変性させることなく、活性化ポリエチレングリコール(PEG)とともに複合体を形成するために、追加の部位をタンパク質に連結する方法に関する。本発明はまた、免疫原性が低下し、血中半減期の増加した、高度に複合体化したタンパク質に関する。
【0017】
PEGをタンパク質に結合するために、このポリマーは最初に、ヒドロキシル末端を、典型的にはタンパク質のリジンおよびタンパク質のN末端アミノ基と反応しうる官能基に変えることによって活性化される((Kozlowski, A、上記)。PEG修飾はタンパク質中のリジン残基のεアミノ基と、PEGの活性化されたエステルとの反応に基づくので、PEG修飾の程度は、どのようなタンパク質についても、PEG結合部位の数および分布に主として左右される(Hershfield, M. S.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:7185-7189)。PEG化に利用できる部位を増やすための1つのオプションは、部位特異的突然変異誘発であるが、これは、タンパク質中の特定のアミノ酸をリジンで置き換えるものである((Hershfield, M. S.、上記; ならびにHe, X. H.ら、Life Sci. (1999) 65: 355-368)。あるいはまた、化学的な結合法を用いることもできる(Davis, F. F.ら、米国特許第4,179,337号 (1979); Veronese, F. M. , Biomaterials (2001) 22: 405-417; ならびにKimura, M.ら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. (1988) 188 : 364-369)。
【0018】
タンパク質中にPEG化部位を付加する化学結合法は、水溶性カルボジイミドを介した反応に基づくものであって、この反応はタンパク質中のカルボキシル基が多官能アミンの別途のアミノ基と反応することを可能にする。したがって、この方法は、PEG化に適した反応性アミノ基を、タンパク質のカルボキシル基に付加する。しかしながら、こうしたアプローチは架橋反応によって制約された結果、カルボキシル基-アミド化タンパク質、もしくはペプチドの多量体型をもたらした((Davis, F. F.、上記)。
【0019】
本発明の方法は、タンパク質を変性させることなく、活性化ポリエチレングリコール(PEG)リンカーとともに複合体を形成するために、追加の結合部位をタンパク質に与える(Li ら、Anal. Biochem. 330: 264-271 (2004)、これは参考として本明細書に含めるものとする)。高度に複合体化したタンパク質は、免疫原性の減少および半減期の増加を示すことが明らかとなっている(Yang ら、Cancer Res. 64: 6673-6678 (2004)、これは参考として本明細書に含めるものとする)。高度に複合体化したタンパク質の血中半減期はまた、コファクターであるピリドキサール-5'-リン酸に対して高い用量依存性を示した(Yang ら、Cancer Res. 64:5775-5778 (2004)、これは参考として本明細書に含めるものとする)。
【0020】
概して、方法は下記を含んでなる:a) タンパク質を非タンパク質ポリマー鎖と結合して、1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する第1の修飾タンパク質を生じること;b) 1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する第1の修飾タンパク質を、少なくとも2つのアミノ基を有する多官能アミンと結合して、1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質を生じること;ならびにc) 1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質を別の非タンパク質ポリマーと結合して、第1の修飾タンパク質より多くの非タンパク質ポリマー鎖を有する、第2の修飾タンパク質を生成すること。
【0021】
本発明の方法は、モデルの組換えタンパク質、L-メチオニン-α-デアミノ-γ-メルカプトメタンリアーゼ(rMETase)において説明される。しかしながら、本発明の方法はrMETaseの複合体化に限定されるのもではなく、一般的に他のタンパク質に適用可能である。rMETaseは、単量体当たり398個のアミノ酸のうち9個しかリジン残基がなく、ほとんどのタンパク質で認められるこのアミノ酸の通常の出現頻度と比べて著しく少ない。これに対して、PEG化のために追加のアミノ基と結合することができるカルボキシル基は、rMETaseのそれぞれのサブユニット中に37個存在する。
【0022】
Pseudomonas putida由来のL-メチオニン-α-デアミノ-γ-メルカプトメタンリアーゼ(rMETase)[EC 4.4.1.11]をあらかじめ大腸菌(Escherichia coli)においてクローニングし、作製した(Tan Y.ら、Protein Expr. Purif : (1997) 9: 233-245; Inoue, H.ら、J. Biochem. (1995) 117: 1120-1125; ならびにHori, H.ら、Cancer Res. (1996) 56: 2116-2122)。組換えメチオニナーゼ(rMETase)はヒトの癌の前臨床マウスモデルにおいて活性のある酵素である。rMETaseの効能は、アミノ酸の一つである血漿中のメチオニンの枯渇によるものであって、このメチオニンに対して腫瘍は一般に異常に高いメチオニン要求性を示す。さらに、一過性のメチオニン枯渇は、結果として複数の化学療法薬に対する腫瘍の感受性を著しく高める(Tan, Y.ら、Clin. CancerRes. (1999) 5: 2157-2163; Yoshioka, T.ら、Cancer Res. (1998) 2583-2587; ならびにKokkinakis, D. M.ら、Cancer Res. (2001) 61: 4017-4023)。
【0023】
rMETaseは、あらかじめメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタラート-5000(MEGC-PEG-5000)と結合して、その血中半減期を長くし、それによって血清および腫瘍メチオニンのin vivo枯渇期間を延長した。rMETaseの1つのサブユニットは、PEG/rMETaseモル比30/1、60/1、および120/1としてrMETaseをPEG化したとき、それぞれ約4、6および8個のPEG分子によって修飾された。PEG-rMETase(120/1)では、血中半減期は20倍に増加し、メチオニン枯渇時間は未修飾rMETaseと比べて12倍に増加した。in vivoでの半減期の増加は、rMETaseのPEG化の程度によって左右される。PEG化はまた、rMETaseの免疫原性を減少させた。免疫原性の減少の程度は、PEG化された残基の数によって左右される(Sun, X.ら、Cancer Research (2003) 63:8377-8383)。
【0024】
図1は、rMETase分子の架橋結合なしにsuper-PEG化されたrMETaseを調製する3ステップを示すが、これは最初のPEG化、カルボキシル基のアミド化、およびsuper-PEG化を包含する。第1に、rMETaseは初めに、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタラート(MEGC-PEG-5000)によってPEG化される。特定の実施形態において、最初のPEG化は、rMETaseに対して15:1のPEGを用いて行われる。
【0025】
第2に、最初にPEG化されたタンパク質のカルボキシル基を、続いてジアミノブタン(DAB)のような多官能アミンと結合させるが、その結果カルボキシル基のアミド化が起こる。特定の実施形態において、カルボキシル基のアミド化は、水溶性カルボジイミドのような触媒の存在下で行われる。本発明は結合機構によって制限されないが、カルボキシル基のアミド化の際のrMETase分子間の架橋結合は、すでにタンパク質に結合しているPEG鎖によってもたらされる立体障害によって防ぐことができる。
【0026】
第3に、カルボキシル基をアミド化したPEG化rMETaseは、カルボキシル基をアミド化したPEG化rMETaseのアミノ基を、さらにメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタラートと結合することによって、super-PEG化された。特定の実施形態において、super-PEG化は、PEG-rMETaseに対するPEGの比が60:1で実行された。生化学分析から、カルボキシル基をアミド化しないPEG-rMETaseに結合したPEGが6-8個であるのに比較して、super-PEG化後には、13個のPEG鎖がrMETaseの1つ1つのサブユニットに結合していることが示された。非PEG化rMETase活性の約15-20%が、super-PEG化分子に残存した。super-PEG-rMETaseの免疫原性は、PEG-rMETaseおよびrMETaseと比べて著しく減少した。最初の結果は、super-PEG化がタンパク質生物製剤をPEG化するための新たなストラテジーとなりうることを示唆する。
【0027】
表1は、反応の各ステップの、rMETaseの比活性に対する影響を示す。表1において、出発材料は比活性 56 U/mgのrMETase 200mgであった。回収率は、無修飾rMETaseの、それぞれの修飾rMETaseとの比活性の比較に基づいて算出する。表1に示すように、カルボキシル基のアミド化反応は、比活性の最大損失をもたらした。
【表1】

【0028】
rMETaseのカルボキシル基-アミド化に対する種々の反応条件の影響
図2は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミドに対するN-ヒドロキシスクシンイミドのモル比(NHS/EDC)が、rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度に及ぼす影響を示す。rMETaseのカルボキシル基アミド化は、異なるNHS/EDC比で実施した。カルボキシル基のアミド化の程度は、フルオレスカミン法および未変性PAGEによって評価した。475nmで励起し475nmで発光する蛍光強度は、タンパク質中の遊離アミノ基の数を示す。ゲル(挿入図)は、カルボキシル基のアミド化に起因するrMETaseの分子量増加を示す。rMETase/ジアミノブタン(DAB)比およびrMETase/EDC比はそれぞれ1:600および1:800を用いた。カルボキシル基アミド化rMETaseの蛍光強度および電気泳動移動度の相違をrMETaseと比較した。
【0029】
NHS/EDC比0.2で、最大のDABとrMETaseとの結合が可能となった。DAB比がそれより少なくても多くても、結合の程度は減少した。NHSはEDCによるカルボキシル基アミド化反応を強めた。しかしながら、こうした増強の最適効率は、NHS/EDCの最適比に依存していた。この研究から得られた結果は他の研究者らによって得られた結果と同様であった(Kuijpers, A.J.ら、J. Biomater. Sci. Polym. (2000) 11:225 243)。
【0030】
カルボキシル基のアミド化反応に対する、EDC/rMETase比の影響は、DAB濃度を9.4 mg/mlに固定し、NHS/EDC比を0.2に維持することによって測定した。結果は、rMETaseのDABによる結合の程度がEDC/rMETase比に依存することを示す(図3)。rMETaseのカルボキシル基アミド化は、EDC/rMETaseモル比を変えて行った。カルボキシル基をアミド化したrMETaseは、フルオレスカミン法および未変性PAGEによって分析した(図2を参照されたい)。NHS/EDC比0.2およびrMETase/DAB比1:600を使用した。カルボキシル基アミド化rMETaseの蛍光強度および電気泳動移動度の相違をrMETaseと比較した。EDC/rMETase比がこれより高いと、rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度も高まる。特定の実施形態において、EDC/rMETaseモル比は800を超えない。
【0031】
図4は、カルボキシル基アミド化の程度に及ぼすDAB/rMETaseの影響を示す。rMETaseのカルボキシル基アミド化は、EDC/rMETaseのモル比を変化させて行った。NHS/EDCおよびrMETase/EDCのモル比はそれぞれ0.2および1:800を用いた。カルボキシル基アミド化rMETaseは、フルオレスカミン法および未変性PAGEによって分析し、rMETaseと比較した。DAB/rMETase比を600にまで高めると、カルボキシル基のアミド化の程度は、プラトーに達すると思われた。特定の実施形態において、カルボキシル基のアミド化反応においてDAB/rMETase比は600以下である。
【0032】
EDCを介した、rMETaseのカルボキシル基アミド化反応は30分以内に終了した。この反応によって、PEG:カルボキシル基アミド化PEG-rMETaseが60:1の、super-PEG-rMETaseを生成することができる(図5)。したがって、ある実施形態において、タンパク質を反応系に、従来報告されているように長い間入れておく必要はない(Kimura, M.、上記)。むしろ、短時間インキュベーションを採用して、過酷な反応条件によって引き起こされるrMETase活性の損失を少なくすることができる。
【0033】
super-PEG化されたPEG-rMETaseの性質検討
無修飾rMETase、PEG-rMETase、およびsuper-PEG化rMETaseを、10% SDS-ポリアクリルアミドゲルで分析した。図5は、新規のsuper-PEG化rMETaseが最も低い移動度および最も高い分子量を有していたことを示す。図5において、レーン1、2および3は、それぞれ無修飾rMETase、super-PEG-rMETase、およびPEG-rMETaseに関連づけられる。10% SSゲルは、クマシーブリリアントブルーで染色した。これらのデータは、super-PEG化されたPEG-rMETaseが、PEG-rMETaseより非常に多くのPEG鎖と結合していることを示唆する。
【0034】
比色アッセイ(Li, S.ら、Anal. Biochem. (2003) 313:335 337)を用いて、PEG-rMETase、およびsuper-PEG-rMETaseの最終産物中の遊離のPEGおよび結合したPEGを定量した。PEG-rMETaseには約7個のPEG鎖が結合していたのに比べて、約13個のPEG鎖がsuper-PEG-rMETase(図2)の各サブユニットに結合していた。これらの結果は、カルボキシル基のアミド化によって追加のアミノ基が導入されたことを示唆する。
【0035】
対照として、rMETaseを、間にあるカルボキシル基アミド化ステップを除いた2段階でPEG化した。super-PEG-rMETaseは、最初にPEG:rMETase、15:1でPEG化し、続いてカルボキシル基をアミド化し、その後PEG:rMETase、60:1でsuper-PEG化することによって調製した。表2に示すように、この結果、rMETaseサブユニット当たりPEGはわずかに6個となり、rMETaseのsuper-PEG化に対するカルボキシル基アミド化の効果が示された。
【表2】

【0036】
カルボキシル基アミド化反応においてrMETaseの架橋結合を減少させることへの最初のPEG化の影響
最初のPEG化を行わずに無修飾rMETaseを直接DABと反応させたとき、rMETaseは明らかに架橋結合のために反応溶液中に沈澱し、rMETase活性の相当な低下をもたらした。したがって、カルボキシル基アミド化によるタンパク質へのアミノ基付加に対する重大な限界は、反応タンパク質の架橋結合である。最初のPEG化は、概してカルボキシル基アミド化反応中の架橋結合を減少させた。最初のPEG化について、アルカリ加水分解してすべてのPEG鎖を除去した後にPEG-rMETaseおよびsuper-PEG-rMETaseの間に分子量の相違はなかった(図6)。無修飾rMETaseおよびPEG-rMETaseをアルカリ加水分解に供し、10% SDS-ポリアクリルアミドゲルで分析した。
【0037】
図6において、レーン1-4は下記に相当する:1)無修飾rMETase;2)非PEG化rMETaseのカルボキシル基アミド化後のsuper-PEG-rMETase;3)最初のPEG化、カルボキシル基アミド化、およびsuper-PEG化を伴う3ステップ工程で調製されるsuper-PEG-rMETase;ならびに4)対照PEG-rMETase。テストした全サンプルは、無修飾rMETaseを含めて、100μl蒸留水中4mg/mlとした。2μlの水酸化ナトリウム(10N)を各サンプルに加えた。30分後、1.8μlのHCl(10N)を加えて、アルカリ加水分解反応を止めた。約12μgのrMETaseをゲルの各ウェルに加えた。
【0038】
これらのデータは、検出可能な架橋反応がカルボキシル基アミド化反応中には起こらなかったことを示した。これに対して、カルボキシル基アミド化の前に、最初のPEG化を行わなかったsuper-PEG-rMETase複合体は、アルカリ加水分解およびSDS-PAGE後に架橋結合したrMETaseがゲルの最上部にとどまることで示されるように、結果として相当な量の架橋結合となった(図6、レーン2)。最初のPEG化による、カルボキシル基アミド化時の架橋結合防止のメカニズムは、本発明の方法を実施するために必要ではないが、活性化PEGはrMETase分子表面のもっともアクセスしやすいアミノ基と反応すると見られており、他のrMETase分子のカルボキシル基と反応する機会を著しく減少させる。加えて、PEG鎖は非常に大きい排除体積を有する(Knoll, D.ら、J. Biol. Chem. (1983) 258:5710-5715)が、それによって他の高分子が、最初にPEG化されたrMETaseと反応するのを抑制する。したがって、最初のPEG化プロセスでrMETaseに結合したPEG鎖が、それに続くカルボキシル基アミド化の際に架橋結合を抑える可能性がある。
【0039】
rMETase、PEG-rMETase、およびsuper-PEG-rMETaseの免疫反応性の比較
PEG化の最も重要な特徴の一つは、PEG化されたタンパク質の抗原性および免疫原性の低下である。抗原-抗体(Ag-Ab)認識の程度は、タンパク質の抗原性の重要な尺度である。したがって、無修飾rMETase、PEG-rMETase、およびsuper-PEG-rMETaseの免疫反応性は、マウス抗rMETase血清との結合能によって評価した。
【0040】
図7は、無修飾rMETaseおよび2種類のPEG化rMETaseの抗体結合能を濃度の関数として示す。免疫反応性アッセイは、サンドイッチ法でELISAによって行った。ウサギ抗rMETase抗血清をマイクロプレートのコーティングのために使用した。無修飾rMETase、PEG-rMETase、およびsuper-PEG-rMETaseを捕捉した後、マウス抗rMETase抗血清と反応させた。結合したマウス抗rMETase抗血清を、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗マウス多価免疫グロブリンを使用することによって検出した。OD492の吸光度の値によって、無修飾もしくはPEG-rMETaseの抗rMETase抗体との結合が測定される。結果は、3段階の希釈度で比較した。(◆)無修飾rMETase;(■)PEG-rMETase;(黒い三角)super-PEG-rMETase。
【0041】
データから、PEG-rMETaseの抗rMETaseに対する結合能はある程度低下したことがわかる。super-PEG-rMETaseの抗rMETase抗血清との結合能は、通常のPEG-rMETaseよりかなり低かった。こうした結果は、super-PEG-rMETaseの抗原性が低下したことを示唆する。抗原性の有意な減少によって、カルボキシル基のアミド化によりrMETaseのPEG化を高める有効性が確認された。今後の実験が、super-PEG-rMETaseのin vivo有効性を決定することになる。
【0042】
実施例
下記の実施例は、説明のために提供されるが、本発明を限定するものではない。下記の実施例において、組換えメチオニナーゼ(rMETase)は、大腸菌(E. coli)の培養によって製造された(Tan, Y.、上記)。Sephacryl S-300, Sephadex G-25は、Amersham Pharmacia Biotech (Piscateway, N.J)から購入した。プレキャストTris-グリシンゲルはNOVEX (San Diego, CA)から購入した。rMETaseに対するウサギ抗血清は、H.T.I Bio-Products, Inc., San Diego, CAから入手した。ヤギ抗マウス多価免疫グロブリン・西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体は、Sigma (St. Louis, MO)から購入した。フルオレスカミン、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド (EDC)、1,4-ジアミノブタン (DAB)二塩酸塩、N-ヒドロキシスクシンミド、およびチオシアン酸アンモニウムは、Fisher Scientific (Fairlawn, NJ)から購入した。モノメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタラート-5000(MEGC-5000)PEGは、NOF社(東京)から贈られた。
【実施例1】
【0043】
rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度を推定するフルオレスカミン法
フルオレスカミン法は通常、活性化されたPEGによるアミノ基の結合による蛍光強度の減少に基づいて、PEG化の程度を推定するために使用される。ここでは、フルオレスカミン法を用いて、rMETaseをジアミノブタン(DAB)と結合した後の蛍光強度の増加を検出することによって、rMETaseのカルボキシル基アミド化の程度を推定した。アッセイ法は基本的にはStocksにより記載の方法に従った(Stocks, S.J.ら、Anal. Biochem. (1986) 154:232 234)。手短に述べると、さまざまな量のrMETaseおよびPEG化rMETase(0.1 M リン酸ナトリウムバッファー、pH 8.0、2 ml中)をフルオレスカミン溶液(0.3 mg/mlアセトン)1 mlと混合し、5分間室温に保持した。次に、サンプルを蛍光分光光度計にて、390nm励起および475nm発光でアッセイした。結果を、rMETase濃度に対する蛍光強度としてプロットし、直線の勾配を直線回帰によって決定した。
【0044】
蛍光強度の増加率(%)は、[(DABとの結合後の蛍光強度の勾配−無修飾rMETaseの蛍光強度の勾配)/無修飾rMETaseの蛍光強度の勾配] x 100として与えられた。
【0045】
タンパク質含量の測定
無修飾rMETaseのタンパク質濃度を、Wako Protein Assay Kit(和光純薬、大阪)を用いて使用説明書にしたがって測定した。ウシ血清アルブミン(BSA)を標準物質として使用した。PEG-rMETase複合体のタンパク質含量は、280 nmの紫外(UV)吸光度により測定した。無修飾rMETaseを、検量線作成のために使用した。
【0046】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)
すべての電気泳動実験は、使用マニュアルにしたがって10% NOVXプレキャストゲルを用いてXcell IIシステムにより行った。SDS-PAGEを実施するために、SDSを含有するトリス-グリシン泳動バッファーを使用した。ゲル中のタンパク質をクマシーブリリアントブルーで染色した。すべての修飾rMETaseを、無修飾rMETaseと比較した。
【実施例2】
【0047】
rMETaseのカルボキシル基アミド化のための反応条件
A. N-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド(EDC)比の最適化
rMETase/DABおよびrMETase/EDCの比をそれぞれ1:600および1:800に維持して、NHS/EDCの最適モル比を決定した。DAB(14.1 mg)を、それぞれさまざまな量、4.0 mg, 2.7 mg, 1.3 mgおよび0 mg、のNHSとともに(NHS/EDC比はそれぞれ0.6, 0.4, 0.2, 0に相当する)、蒸留水に溶解した。それぞれの溶液のpHは0.5N NaOHにより6.5に調整し、最終容量1mlを得た。これらの溶液を4ウェルの組織培養プレートに移した。その後、25mg rMETase(0.2Mリン酸ナトリウムバッファー(pH 6.5)0.5ml中)を各ウェルに添加した。カルボキシル基アミド化反応は22.2mg EDCの添加によって開始した。室温で4時間撹拌した後、生成物を0.1M, pH7.4 PBSであらかじめ平衡化したSephadex G-25カラムにかけて、低分子不純物を除去した。rMETaseとDABとの結合の程度は、その後、PAGEおよびフルオレスカミン法を用いて評価した。
【0048】
B. rMETase/EDCおよびrMETase/DAB比の最適化
上記実験Aから決定された最適なNHS/EDCモル比、0.2、ならびにrMETase/DAB比、1:600を用いて、カルボキシル基アミド化反応に対するEDCの影響を判定した。rMETase/EDCモル比、1:200, 1:400, 1:600, 1:800および1:1000に相当するさまざまな量のEDCを、25 mg rMETase、14.1 mg DABおよび1.3 mg NHSを含有するPBS(0.2M, pH 6.5)混合物1.5mlを入れた各ウェルに添加した。他の反応条件、最終結合生成物の処理法および評価法は、実験Aと同様とした。rMETase/DABの最適モル比を得るために、NHS/EDC比は0.2に維持し、同様にrMETase/EDCは決定された最適比1:800として、上記と同じ手順を実施した。
【0049】
C. カルボキシル基アミド化反応の経時変化
タイムコース反応は、33 mg rMETaseを含有する2ml PBS(0.2M, pH 6.5)を使用し、NHS/EDCは0.2、rMETase/DABは1:800、さらにrMETase/EDCは1:800とした。EDC添加により反応を開始後、反応物0.4mlをさまざまな時間間隔で取り出し、精製した。rMETaseのDABとの結合の程度は、上記のように分析した。
【実施例3】
【0050】
super-PEG化rMETaseの調製
図1に示す3段階の手順にしたがって、カルボキシル基がアミド化されていないrMETaseですでに達成されたPEG鎖より多くのPEG鎖を有するsuper-PEG化rMETaseを調製した。rMETase分子間での架橋結合なしに、追加の第一級アミンを導入するために、最初に無修飾rMETaseをPEG化し、それによって、架橋結合することなくカルボキシル基をアミド化することが可能となった。最後にカルボキシル基アミド化rMETaseを"super"-PEG化した。最初のPEG化ステップのために、rMETase(200mg)を含有するPBS(0.1M, pH7.4)2mlを0.5N NaOHでpH 8.5に調整した後、87.2 mgのMEGC-5000 PEG (rMETaseに対するPEGのモル比15:1)とともに室温で1時間撹拌しながら反応させた。
【0051】
初めにPEG化されたrMETaseのカルボキシル基にDABを結合するために、反応物を4mlのPBS(0.2M, pH6.5)で希釈して、21.3 mg NHS (NHS/EDC、0.2), 149.8 mg DAB (rMETase/DAB、1:600), 178.3 mg EDC (rMETase/EDC、1:800)を含有する8mlとした。30分間撹拌した後、混合物をSephacryl S-300カラム(26x60)に供し、遊離のPEGおよび他の低分子不純物を除去するためにPBS(0.05M, pH 7.4)で溶出した。カルボキシル基アミド化PEG-rMETaseを、次に、下記のようにsuper-PEG化した:
super-PEG化のために、新たに付加された第一級アミンを含有するPEG-rMETase、152mgを、2 mlに濃縮した。super-PEG化反応を開始するために、ホウ酸バッファー(1M, pH9.0)0.2 mlを、MEGC PEG 5000 (PEG:PEG-rMETaseモル比、60:1) 265.1 mgとともに添加し、pHを8.5に調整した。精製および濃縮した後、112 mgのsuper-PEG-rMETaseが得られた。また、対照として、カルボキシル基アミド化が無いほかは上記と同様に、PEG:rMETaseがそれぞれ15:1および60:1の2段階法でPEG-rMETaseを調製した。
【実施例4】
【0052】
rMETaseのPEG化の程度の測定
rMETaseのPEG化の程度は、rMETaseサブユニット当たりの平均PEG含量として測定した。最終精製PEG-rMETase複合体中のPEG含量の定量は、Li, S.ら、上記、により記載のアルカリ加水分解比色法によって行った。簡単に述べると、分析すべきPEG-rMETaseを2つのサンプルに分けた。一方のサンプルを30分間アルカリ加水分解に供し、rMETaseと結合したPEGを遊離させた。もう一方のPEG-rMETaseサンプルはアルカリ加水分解を行わなかった。次に、それぞれのサンプルを1mlクロロホルムおよび1mlチオシアン酸アンモニウムからなる二層系に注入した。30分間勢いよく撹拌し、3500 gで3分間遠心した後、下層のクロロホルムを取り除く。510nmの吸光度を用いて、クロロホルム層における遊離の、または遊離されたPEGの量を検量線によって決定した。PEG-rMETase標品中の遊離PEGの量は、アルカリ加水分解処理なしのサンプルから決定した。PEG-rMETase中のPEGの総量は、アルカリ加水分解に供したサンプルで測定した。rMETaseに結合したPEGの量は、PEGの総量から遊離の量を差し引いて得られた(cLi, S.上記)。
【実施例5】
【0053】
rMETase、PEG-rMETaseおよびSuper-PEG化rMETaseの免疫反応性
無修飾rMETaseおよびPEG化rMETaseの免疫反応性を、抗rMETase抗血清との結合能力によって判定した。免疫反応性アッセイは、ELISAおよびサンドイッチ法を用いて実施した。0.1M炭酸ナトリウムコーティングバッファー(pH9.5)で希釈した100μlのウサギ抗rMETase抗血清をマイクロプレートの各ウェルに加え、4℃にて一晩インキュベートした。プレートを、0.05% Tween-20含有PBS(pH7.4)で三回洗浄し、10% FBS含有PBSアッセイバッファー(pH7.4)200μlを用いて室温で2時間ブロッキングし、再度洗浄した。PBSアッセイバッファー中で25μg/mlから0.25μg/mlまで希釈されたrMETase、PEG化rMETaseおよびsuper-PEG化rMETase、100μlを、マイクロプレートの該当するウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、100μlのマウス抗rMETase抗血清をプレートの各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートし、次に洗浄した。最適希釈した100μlのヤギ抗マウス多価免疫グロブリン・西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体を各ウェルに添加した。このプレートを室温で1時間インキュベートし3回洗浄した。100μlの基質溶液(O-フェニレンジアミン二塩酸塩+過酸化水素)を各ウェルに添加した後、室温で30分間インキュベートした。50μlの2N硫酸を各ウェルに添加して呈色反応を終止した。各ウェルの吸光度を492nmで測定した。
【0054】
当然のことながら、前記の詳細な説明およびそれに付随する実施例は、単なる例証であって、本発明の範囲について限定するものとして受け止められるべきでない。開示された実施形態に対してさまざまな変更および修正が、当業者には明らかであると思われる。こうした変更および修正は、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤および/または本発明の使用方法に関するものを包含するがこれに限定されず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。米国特許および本明細書に引用された刊行物は、参考として本明細書に含めるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非タンパク質ポリマー鎖でタンパク質を修飾する方法であって:
a) タンパク質を非タンパク質ポリマーと結合し、1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する第1の修飾タンパク質を生成すること;
b) 1つもしくは複数の非タンパク質ポリマー鎖を有する、前記の第1の修飾タンパク質を、2つ以上のアミノ基を有する多官能アミンと結合し、1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する修飾タンパク質を生成すること;
c) 1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する前記修飾タンパク質を、別の非タンパク質ポリマーと結合し、第1の修飾タンパク質より多くの非タンパク質ポリマー鎖を有する、第2の修飾タンパク質を生成すること、
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
前記非タンパク質ポリマーが、前記タンパク質のN末端アミノ基と反応しうる官能基により誘導体化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非タンパク質ポリマーがポリオキシアルキレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンがポリエチレングリコールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能基が、N-ヒドロキシスクシンイミドである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記非タンパク質ポリマーが、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタラートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非タンパク質ポリマーの分子量が約5000である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記多官能アミンがジアミノブタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)における前記の第1の修飾タンパク質が、前記タンパク質のN末端アミノ基と、前記非タンパク質ポリマーのエステル基との結合によって生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)における、1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する前記修飾タンパク質が、前記第1の修飾タンパク質のC末端カルボキシル基と、前記多官能アミンのアミノ基との結合によって生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カルボキシルが触媒の存在下で前記アミノ基と結合する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒がカルボジイミドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルボジイミドが1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記修飾タンパク質が、ステップb)において第1の修飾タンパク質間の架橋結合なしに生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
第1の結合ステップにおいて、前記タンパク質の前記非タンパク質ポリマーに対する比が、1:15である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第2の結合ステップにおいて、前記第1の修飾タンパク質の前記非タンパク質ポリマーに対する比が、1:60である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法にしたがって修飾されたタンパク質。
【請求項18】
前記タンパク質がメチオニナーゼである、請求項17に記載のタンパク質。
【請求項19】
ポリエチレングリコール鎖により2回修飾されたタンパク質であって、第1の修飾は、タンパク質のN末端アミノ基とポリエチレングリコールエステル誘導体とを結合して、最初のPEG化タンパク質を生成すること、ならびに前記の最初のPEG化タンパク質と少なくとも2つのアミノ基を有する多官能アミンとを結合して、ポリエチレングリコール鎖および1つもしくは複数の追加のアミノ基を有する第1の修飾タンパク質を生成することを含んでなる;さらに、第2の修飾は、前記第2の修飾タンパク質における1つもしくは複数の追加のアミノ基と別のポリエチレングリコールエステル誘導体とを結合して、第1の修飾タンパク質より多くのポリエチレングリコール鎖を有する第2の修飾タンパク質を生成することを含んでなる、前記タンパク質。
【請求項20】
請求項19に記載のタンパク質、および製薬上許容される賦形剤を含んでなる、医薬組成物。
【請求項21】
必要のある被験体に、治療上有効な量の請求項19に記載の化合物、またはその医薬組成物を投与することを含んでなる、腫瘍の活動性を調節する方法。
【請求項22】
前記被験体がヒトもしくは動物である、請求項21に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−116840(P2012−116840A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98(P2012−98)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2007−503980(P2007−503980)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(502326772)アンチキャンサー インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】