説明

タンパク質凝集性障害を予防、処置および診断をする方法

【課題】アルツハイマー病および他のアミロイドーシスを処置する方法の提供。さらには、アルツハイマー病および他のアミロイドーシスの治療介入において、アミロイド原線維形成を抑制および低減する方法を提供する。
【解決手段】薬学的有効量のイノシトール立体異性体、鏡像異性体またはそれらの誘導体を、被験体に投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年2月27日、2003年11月17日および2003年11月19日に各々出願した米国仮出願第60/451,363号、同第60/520,958号および同60/523,534号に基づく優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、アルツハイマー病および他のアミロイドーシスを処置する方法に関する;さらに詳細には、本発明は、アルツハイマー病および他のアミロイドーシスの治療介入において、アミロイド原線維形成を抑制および低減する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
アルツハイマー病は、アミロイド沈着、神経原線維変化および選択的な神経の喪失により、神経病理学的に特徴づけられる。上記アミロイド沈着の主要な成分は、アミロイド−β(Aβ)という39〜43残基ペプチドである。アミロイド前駆体タンパク質の切断から生成される溶解型Aβは、正常な代謝産物である。アルツハイマー病における残基1〜42(Aβ42)の重要性は、アミロイド前駆体タンパク質遺伝子のコドン717、プレセニリン1遺伝子およびプレセリニン2遺伝子の変異が、Aβ1〜40を上回るAβ42を産生する結果になるという発見の中で注目を浴びた。成熟斑および拡散アミロイドの両方におけるAβ42の存在と関連して、これらの結果は、このよりアミロイド生成性の種類が斑形成において重大な要素であり得るという仮説を導いている。上記仮説は、Aβ42沈着がPS1変異のダウン症候群およびアミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血におけるAβ40の沈着より先行するという事実に支持された。
【0004】
多くのインビトロでの研究が、Aβは、神経毒性があり得、または興奮毒性傷害、代謝性傷害もしくは酸化性傷害に対するニューロンの感受性を昂進し得ることを実証してきている。当初は、Aの原線維性形態のみがニューロンに毒性を示すと考えられていたが、より徹底的なAβ構造の特徴づけにより、Aβの2量体および小凝集体もまた、神経毒性が有ることが実証された。これらのデータは、Aβのオリゴマー化の予防が、AD関連の神経変性を予防する見込みの有る戦略であることを示唆した。いくつかの研究は、インビトロでのAβ誘導性の神経毒性が、アポトーシスと関連する細胞性経路を標的とすることによりニューロンの抵抗性を増加させ得る化合物、または破壊的経路のAβ誘導後に下流経路を遮断し得る化合物、またはAβのオリゴマー化そして最終的には原線維の形成の遮断し得る化合物によって、削減され得ることを実証された。Aβが作用して神経毒性を誘導する部位は、まだ、解明されていないが、毒性作用は、種々の異種の薬剤により遮断されている。
【0005】
Aβ原線維のニューロン細胞膜および小グリア細胞膜への結合が、ADの進行の間の早期かつ介入可能段階であり得る。アミロイド斑の形成ならびに神経毒性および炎症、糖部分を含有する分子とAとの相互作用の直接的または間接的な結果であり得る。以前の研究で、Aβとグリコサミノグリカンとの相互作用が、おそらくそれらの不溶性および斑存続に加えて、Aβの凝集をもたらすことを実証してきた。グリコサミノグリカンはまた、ニューロン毒性および小グリア細胞の活性化と関係付けられている。あるいは、ガングリオシドのような糖脂質との相互作用は、Ab原線維形成およびAβの産生部位の安定化および防止という結果になる。一方、ホスファチジルイノシトール類は、原線維形成を加速する結果になる。ホスファチジルイノシトールのヘッド基は、脂質生合成、シグナル伝達および浸透圧調整に関連する天然に存在する単糖である、myo−イノシトールである。
【0006】
種々の他のヒトの疾患もまた、アミロイド沈着を示し通常全身の器官(すなわち、中枢神経系の外部に存在する器官または組織)と関係し、そのアミロイド蓄積が器官の機能障害または不全の原因となる。アルツハイマー病および「全身性」アミロイド疾患においては、治癒または有効な処置は現在なく、その患者は、通常、疾患の発症から3〜10年以内に死亡する。
【0007】
特許文献1は、アルツハイマー病の処置のために、フィチン酸、フィチン酸塩、フィチン酸の異性体もしくは加水分解物の使用を開示している。それはまた、フィチン酸の異性体またはフィチン酸塩が、myo−イノシトール6リン酸コンホメーション、scyllo−イノシトール6リン酸コンホメーション、D−chiro−イノシトール6リン酸コンホメーション、L−chiro−イノシトール6リン酸コンホメーション、neo−イノシトール6リン酸コンホメーションおよびmuco−イノシトール6リン酸コンホメーションを含むことを開示している。フィチン酸は、イノシトール6リン酸(IP6)である。
【0008】
特許文献2は、パーキンソン病の処置のために、フィチン酸およびその異性体の使用を開示している。特許文献1と同様に、この特許で開示されたフィチン酸の異性体が、6炭糖のイノシトールに6個のリン酸基を保持していることを開示している。
【0009】
後続の刊行物に、イノシトール1リン酸、イノシトール−1,4−2リン酸およびイノシトール−1,4,5−3リン酸が、アミロイド−βペプチド原線維発生を阻害する能力が、調査されたが、有効ではないことが判明したことは注目すべきことである。(非特許文献1)。
【0010】
Barakらは、アルツハイマー病(AD)の処置のために,イノシトールの使用を開示している。(非特許文献2)。しかしながら、この参考文献は、イノシトールの異性体の使用を開示していない。イノシトールで処置された患者において、全体的な認知機能スコア(CAMCOG指標)について、AD患者のイノシトールとプラセボ(デキストロース)間で有意差が見られなかったが、CAMCOG指標の特定の二つのサブスケール(見当識力および言語)は、有意な改善が見られた。
【0011】
Levine J.は、上記Barakらの論文をレビューし、イノシトール処置はADまたはECT誘導性認知障害において有益ではないと詳細に明言した(非特許文献3)。
【0012】
Colodny Lらは、上記Barakらの論文に言及して、アルツハイマー病におけるイノシトールの有用性のためのさらなる研究を示唆し、それ故、イノシトール異性体のそのような使用を開示も示唆もしない(非特許文献4)。
【0013】
McLaurinらは、myo−イノシトールが、小さいAβ42ミセルを安定化することを開示した(非特許文献1)。さらに、McLaurinらは、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールは、Aβ42においてランダムからβ構造への構造的遷移を誘導し得たが、chiro−イノシトールでは誘導し得なかったことを開示している(非特許文献5;および非特許文献6)。あるいは、上記立体異性体のいずれも、Aβ40の構造的遷移状態を誘導できなかった。電子顕微鏡は、イノシトールが、小さいAβ42凝集体を安定化することを示した。これらの参考文献はまた、イノシトール−Aβ相互作用が、神経成長因子により分化されたPC−12細胞および初代培養ヒトニューロンに非毒性の複合体を生じることを開示する。
【0014】
アルツハイマー病領域で、多くの研究が成し遂げられたが、アルツハイマー病および他のアミロイドーシスで発生するアミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積および/もしくはアミロイド存続を阻止または削減できる治療レジメのための化合物または薬剤についても、いままでほとんど知られていない。
【0015】
従って、アルツハイマー病および他のアミロイドーシスで発生するアミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積および/もしくはアミロイド存続を阻止または削減できる治療レジメのための新しい化合物または薬剤が、切に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,847,082号明細書
【特許文献2】米国特許第5,112,814号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J.Mol.Biol.278:183〜194、1998
【非特許文献2】Prog Neuro−psychopharmacol&Biol Psychiat.20:729〜735,2000
【非特許文献3】Eur Neuropsychopharm.1997;147〜155、1997
【非特許文献4】Altern Med Rev 3(6):432〜47、1998
【非特許文献5】J Biol Chem.Jun 16;275(24):18495〜502、(2000)
【非特許文献6】J Struct Biol 130:259〜270、2000
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要約)
本発明は、被験体においてタンパク質のフォールディングにおける障害もしくはタンパク質の凝集における障害、またはアミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積もしくはアミロイド存続と関連する中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態を、処置または予防する方法を提供し、この方法は薬学的有効量の、下記の構造:
【0019】
【化6】

を有する化合物を上記被験体に投与する工程を包含し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここでこのRは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここでこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そしてこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここでこのR10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、上記化合物は、myo−イノシトールではない。
【0020】
本発明は、被験体において異常なタンパク質のフォールディング、異常なタンパク質の凝集、アミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積もしくはアミロイド存続、またはアミロイドと脂質との相互作用を、予防する方法を提供し、この方法は薬学的有効量の、下記の構造:
【0021】
【化7】

を有する化合物を上記被験体に投与する工程を包含し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここでこのRは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここでこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そしてこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここでこのR10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、上記化合物はmyo−イノシトールではない。
本発明は、被験体において異常に凝集したタンパク質の解離および/または前に形成されたもしくは前に沈着したアミロイド原線維もしくはアミロイドを溶解もしくは崩壊することを引き起こす方法を提供し、この方法は薬学的有効量の、下記の構造:
【0022】
【化8】

を有する化合物を上記被験体に投与する工程を包含し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここでこのRは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここでこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そしてこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここでこのR10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、上記化合物はmyo−イノシトールではない。
【0023】
本発明はまた、被験体において異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)上記被験体に、放射性化合物または検出可能なシグナルを放出する物質で標識された化合物を、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドが、もし存在する場合には、それにその化合物が結合するのを許容するのに十分な量および条件で投与する工程;ならびに(b)異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドに結合した化合物からの放射能またはシグナルを検出し、従って、上記被験体において、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する工程を包含し、上記化合物は下記の構造:
【0024】
【化9】

を有し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここでこのRは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここでこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そしてこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここでこのR10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル
より選択され、
ただし、上記化合物はmyo−イノシトールではない。
本発明はさらに、被験体において異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する方法を提供し、この方法は、以下の工程:(a)上記被験体からサンプルを収集する工程;(b)上記サンプルを、もし存在する場合には、放射性化合物または検出可能なシグナルを放出する物質で標識された化合物と、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドへ上記化合物が結合することを可能とする条件下で、上記サンプルを接触させる工程;ならびに(c)異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドに結合した上記化合物からの放射能またはシグナルを検出し、それによって、上記被験体中の異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する工程を包含し、ここで、上記化合物は以下の構造:
【0025】
【化10】

を有し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここでこのRは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここでこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そしてこのRは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここでこのR10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は、水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、その化合物はmyo−イノシトールではない、工程。
また、本発明は以下を提供する:
(項目1)
被験体においてタンパク質のフォールディングもしくはタンパク質の凝集における障害、またはアミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積もしくはアミロイド存続と関連する中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態を、処置または予防する方法であって、薬学的有効量の、下記の構造:
【化1−A】

を有する化合物を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここで該Rは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここで該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そして該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここで該R10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、該化合物はmyo−イノシトールではない、方法。
(項目2)
前記化合物が、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソールである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記化合物が、cis−イノシトール、epi−イノシトール、allo−イノシトール、muco−イノシトール、neo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−chiro−イノシトールおよびL−chiro−イノシトールの群より選択される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記化合物が、1,2,3,4,5−シクロヘキサンペントールである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記化合物が、epi−クエルシトール、vibo−クエルシトール、scyllo−クエルシトール、allo−クエルシトール、talo−クエルシトール、gala−クエルシトール、cis−クエルシトール、muco−クエルシトール、neo−クエルシトール、proto−クエルシトールおよびそれらの鏡像異性体の群より選択されるクエルシトールである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記化合物が、シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンテトロールの立体異性体、シクロヘキサントリオールの立体異性体、シクロヘキサンテトロールの鏡像異性体およびシクロヘキサントリオールの鏡像異性体の群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記化合物が、O−モノメチルシクロヘキサンヘキソールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記化合物が、D−ピニトール、L−クェブラキトールおよびD−ボルネシトールの群より選択される、項目15記載の方法。
(項目17)
前記化合物が、モノアミノシクロヘキサンペントール(イノサミン)、ジアミノシクロヘキサンテトロール(イノサジアミン)、ジアミノシクロヘキサントリオール、それらの立体異性体およびそれらの鏡像異性体、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩の群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記化合物が、L−neo−イノサミン、DL−epi−イノサミンー2、ストレプトアミンおよびデオキシストレプトアミンの群より選択される、項目17記載の方法。
(項目19)
前記化合物が、モノメルカプトシクロヘキサンペントールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記化合物が、1L−1−デオキシ−1−メルカプト−8−O−メチル−chiro−イノシトールである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記化合物が、scyllo−イノシトールである、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記化合物が、allo−イノシトールである、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、βプリーツシート状および/もしくは原線維状および/もしくは凝集体状でのタンパク質、タンパク質フラグメントおよびペプチドの沈着を生じる、項目1記載の方法。
(項目24)
項目23に記載の方法であって、前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、以下の群:アルツハイマー病、初老性形態および老年性形態;アミロイドアンギオパチー、軽度認知障害、アルツハイマー病関連痴呆;タウオパチー;α−シヌクレイノパチー;パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;痙性対麻痺;ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、フリートライヒ運動失調;タンパク質とポリグルタミン、ポリアミンもしくは対応する遺伝子内の3もしくは4個のヌクレオチドエレメントの病的な拡大から生じる他のリピートとの、細胞内凝集および/またはニューロン内凝集と関連する神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;外傷後のアミロイドβペプチドの蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患;家族性英国型痴呆;家族性デンマーク型痴呆;痙攣性運動失調を伴う初老期痴呆;脳のアミロイドアンギオパチー、英国型;痙攣性運動失調、脳のアミロイドアンギオパチーを伴う初老期痴呆、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド性多発神経障害;アミロイドβペプチドに起因する封入体筋炎;家族性およびフィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および慢性炎症;および島アミロイドポリペプチド(IAPP)と関連するII型糖尿病より選択される、方法。
(項目25)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、アルツハイマー病である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記アルツハイマー病関連痴呆が血管性痴呆またはアルツハイマー痴呆である、項目24に記載の方法。
(項目27)
項目24に記載の方法であって、前記タウオパチーが、好銀性粒子痴呆、皮質基底核変性、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、振せん麻痺をともなう前頭側頭痴呆、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−シュパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後振せん麻痺、プリオン蛋白脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、およびもつれのみの痴呆の群より選択される、方法。
(項目28)
前記α−シヌクレイノパチーが、レーヴィ小体を伴う痴呆、小グリア細胞内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、線条体黒質の変性、オリーブ橋小脳の萎縮、I型脳鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全および筋萎縮性側索硬化症の群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目29)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、パーキンソン病である、項目24に記載の方法。
(項目30)
前記パーキンソン病が、家族性である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記パーキンソン病が、非家族性である、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記運動ニューロン疾患が、神経原線維および/またはスーパーオキシドジスムターゼタンパク質の微細線維および凝集と関連する、項目24に記載の方法。
(項目33)
前記痙性対麻痺が、シャペロンおよび/または三重Aタンパク質の欠陥のある機能と関連する、項目24に記載の方法。
(項目34)
前記脊髄小脳性運動失調が、DRPLAまたはマチャド−ジョセフ病である、項目24に記載の方法。
(項目35)
前記プリオン関連疾患が、クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病および変異型のクロイツフェルト−ヤーコブ病の群より選択される、項目24記載の方法。
(項目36)
前記アミロイド性多発神経障害が、老人性アミロイド性多発神経障害または全身性アミロイドーシスである、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約1gの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目38)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約200mgの用量で投与される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約10mgから約100mgの用量で投与される、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約30mgから約70mgの用量で投与される、項目37に記載の方法。
(項目41)
被験体において異常なタンパク質のフォールディング、異常なタンパク質の凝集における障害、アミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積もしくはアミロイド存続、またはアミロイドと脂質との相互作用を、予防する方法であって、薬学的有効量の、下記の構造:
【化2−A】

を有する化合物を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここで該Rは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここで該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そして該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここで該R10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、該化合物はmyo−イノシトールではない、方法。
(項目42)
前記化合物が、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソールである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記化合物が、cis−イノシトール、epi−イノシトール、allo−イノシトール、muco−イノシトール、neo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−chiro−イノシトールおよびL−chiro−イノシトールの群より選択される、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記化合物が、1,2,3,4,5−シクロヘキサンペントールである、項目41に記載の方法。
(項目45)
前記化合物が、epi−クエルシトール、vibo−クエルシトール、scyllo−クエルシトール、allo−クエルシトール、talo−クエルシトール、gala−クエルシトール、cis−クエルシトール、muco−クエルシトール、neo−クエルシトール、proto−クエルシトールおよびそれらの鏡像異性体の群より選択されるクエルシトールである、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記化合物が、シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンテトロールの立体異性体、シクロヘキサントリオールの立体異性体、シクロヘキサンテトロールの鏡像異性体およびシクロヘキサントリオールの鏡像異性体の群より選択される、項目41に記載の方法。
(項目47)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目41に記載の方法。
(項目48)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目41に記載の方法。
(項目50)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目41に記載の方法。
(項目52)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目41に記載の方法。
(項目54)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記化合物が、O−モノメチルシクロヘキサンヘキソールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目41に記載の方法。
(項目56)
前記化合物が、D−ピニトール、L−クェブラキトールおよびD−ボルネシトールの群より選択される、項目55記載の方法。
(項目57)
前記化合物が、モノアミノシクロヘキサンペントール(イノサミン)、ジアミノシクロヘキサンテトロール(イノサジアミン)、ジアミノシクロヘキサントリオール、それらの立体異性体およびそれらの鏡像異性体、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩の群より選択される、項目41に記載の方法。
(項目58)
前記化合物が、L−neo−イノサミン、DL−epi−イノサミン−2、ストレプトアミンおよびデオキシストレプトアミンの群より選択される、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記化合物が、モノメルカプトシクロヘキサンペントールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目41に記載の方法。
(項目60)
前記化合物が、1L−1−デオキシ−1−メルカプト−8−O−メチル−chiro−イノシトールである、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記化合物が、scyllo−イノシトールである、項目41に記載の方法。
(項目62)
前記化合物が、allo−イノシトールである、項目41に記載の方法。
(項目63)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、βプリーツシート状および/もしくは原線維状および/もしくは凝集体状でのタンパク質、タンパク質フラグメントおよびペプチドの沈着を生じる、項目41に記載の方法。
(項目64)
項目63に記載の方法であって、前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、以下の群:アルツハイマー病、初老性形態および老年性形態;アミロイドアンギオパチー、軽度認知障害、アルツハイマー病関連痴呆;タウオパチー;α−シヌクレイノパチー;パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;痙性対麻痺;ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、フリートライヒ運動失調;タンパク質とポリグルタミン、ポリアミンもしくは対応する遺伝子内の3もしくは4個のヌクレオチドエレメントの病的な拡大から生じる他のリピートとの、細胞内凝集および/またはニューロン内凝集と関連する神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;外傷後のアミロイドβペプチドの蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患;家族性英国型痴呆;家族性デンマーク型痴呆;痙攣性運動失調を伴う初老期痴呆;脳のアミロイドアンギオパチー、英国型;痙攣性運動失調、脳のアミロイドアンギオパチーを伴う初老期痴呆、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド性多発神経障害;アミロイドβペプチドに起因する封入体筋炎;家族性およびフィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および慢性炎症;および島アミロイドポリペプチド(IAPP)と関連するII型糖尿病より選択される、方法。
(項目65)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、アルツハイマー病である、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記アルツハイマー病関連痴呆が血管性痴呆またはアルツハイマー痴呆である、項目64に記載の方法。
(項目67)
項目64に記載の方法であって、前記タウオパチーが、好銀性粒子痴呆、皮質基底核変性、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、振せん麻痺をともなう前頭側頭痴呆、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−シュパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後振せん麻痺、プリオン蛋白脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、およびもつれのみの痴呆の群より選択される、方法。
(項目68)
前記α−シヌクレイノパチーが、レーヴィ小体を伴う痴呆、小グリア細胞質内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、線条体黒質の変性、オリーブ橋小脳の萎縮、I型脳鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全および筋萎縮性側索硬化症の群より選択される、項目64に記載の方法。
(項目69)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、パーキンソン病である、項目24に記載の方法。
(項目70)
前記パーキンソン病が、家族性である、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記パーキンソン病が、非家族性である、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記運動ニューロン疾患が、神経原線維および/またはスーパーオキシドジスムターゼタンパク質の微細線維および凝集と関連する、項目64に記載の方法。
(項目73)
前記痙性対麻痺が、シャペロンおよび/または三重Aタンパク質の欠陥のある機能と関連する、項目64に記載の方法。
(項目74)
前記脊髄小脳性運動失調が、DRPLAまたはマチャド−ジョセフ病である、項目64に記載の方法。
(項目75)
前記プリオン関連疾患が、クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病および変異型のクロイツフェルト−ヤーコブ病の群より選択される、項目64記載の方法。
(項目76)
前記アミロイド性多発神経障害が、老人性アミロイド性多発神経障害または全身性アミロイドーシスである、項目64に記載の方法。
(項目77)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約1gの用量で投与される、項目41に記載の方法。
(項目78)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約200mgの用量で投与される、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約10mgから約100mgの用量で投与される、項目77に記載の方法。
(項目80)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約30mgから約70mgの用量で投与される、項目77に記載の方法。
(項目81)
被験体において、異常に凝集したタンパク質の解離を引き起こし、および/または前に形成されたかもしくは前に沈着したアミロイド性原線維もしくはアミロイドを、溶解させるかもしくは崩壊させる方法であって、該方法は、薬学的有効量の、下記の構造:
【化3−A】

を有する化合物を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここで該Rは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここで該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そして該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここで該R10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、該化合物はmyo−イノシトールではない、方法。
(項目82)
前記化合物が、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソールである、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記化合物が、cis−イノシトール、epi−イノシトール、allo−イノシトール、muco−イノシトール、neo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−chiro−イノシトールおよびL−chiro−イノシトールの群より選択される、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記化合物が、1,2,3,4,5−シクロヘキサンペントールである、項目81に記載の方法。
(項目85)
前記化合物が、epi−クエルシトール、vibo−クエルシトール、scyllo−クエルシトール、allo−クエルシトール、talo−クエルシトール、gala−クエルシトール、cis−クエルシトール、muco−クエルシトール、neo−クエルシトール、proto−クエルシトールおよびそれらの鏡像異性体の群より選択されるクエルシトールである、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記化合物が、シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンテトロールの立体異性体、シクロヘキサントリオールの立体異性体、シクロヘキサンテトロールの鏡像異性体およびシクロヘキサントリオールの鏡像異性体の群より選択される、項目81に記載の方法。
(項目87)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目81に記載の方法。
(項目88)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目81に記載の方法。
(項目90)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目81に記載の方法。
(項目92)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目81に記載の方法。
(項目94)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記化合物が、O−モノメチルシクロヘキサンヘキソールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目81に記載の方法。
(項目96)
前記化合物が、D−ピニトール、L−クェブラキトールおよびD−ボルネシトールの群より選択される、項目95記載の方法。
(項目97)
前記化合物が、モノアミノシクロヘキサンペントール(イノサミン)、ジアミノシクロヘキサンテトロール(イノサジアミン)、ジアミノシクロヘキサントリオール、それらの立体異性体およびそれらの鏡像異性体、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩の群より選択される、項目81に記載の方法。
(項目98)
前記化合物が、L−neo−イノサミン、DL−epi−イノサミン−2、ストレプトアミンおよびデオキシストレプトアミンの群より選択される、項目97に記載の方法。
(項目99)
前記化合物が、モノメルカプトシクロヘキサンペントールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目81に記載の方法。
(項目100)
前記化合物が、1L−1−デオキシ−1−メルカプト−8−O−メチル−chiro−イノシトールである、項目99に記載の方法。
(項目101)
前記化合物が、scyllo−イノシトールである、項目91に記載の方法。
(項目102)
前記化合物が、allo−イノシトールである、項目81に記載の方法。
(項目103)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、βプリーツシート状および/もしくは原線維状および/もしくは凝集体状でのタンパク質、タンパク質フラグメントおよびペプチドの沈着を生じる、項目81に記載の方法。
(項目104)
項目103に記載の方法であって、前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、以下の群:アルツハイマー病、初老性形態および老年性形態;アミロイドアンギオパチー、軽度認知障害、アルツハイマー病関連痴呆;タウオパチー;α−シヌクレイノパチー;パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;痙性対麻痺;ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、フリートライヒ運動失調;タンパク質とポリグルタミン、ポリアミンもしくは対応する遺伝子内の3もしくは4個のヌクレオチドエレメントの病的な拡大から生じる他のリピートとの、細胞内凝集および/またはニューロン内凝集と関連する神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;外傷後のアミロイドβペプチドの蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患;家族性英国型痴呆;家族性デンマーク型痴呆;痙攣性運動失調を伴う初老期痴呆;脳のアミロイドアンギオパチー、英国型;痙攣性運動失調、脳のアミロイドアンギオパチーを伴う初老期痴呆、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド性多発神経障害;アミロイドβペプチドに起因する封入体筋炎;家族性およびフィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および慢性炎症;および島アミロイドポリペプチド(IAPP)と関連するII型糖尿病より選択される、方法。
(項目105)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、アルツハイマー病である、項目104に記載の方法。
(項目106)
前記アルツハイマー病関連痴呆が血管性痴呆またはアルツハイマー痴呆である、項目104に記載の方法。
(項目107)
項目104に記載の方法であって、前記タウオパチーが、好銀性粒子痴呆、皮質基底核変性、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、振せん麻痺をともなう前頭側頭痴呆、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−シュパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後振せん麻痺、プリオン蛋白脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、およびもつれのみの痴呆の群より選択される、方法。
(項目108)
前記α−シヌクレイノパチーが、レーヴィ小体を伴う痴呆、小グリア細胞内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、線条体黒質の変性、オリーブ橋小脳の萎縮、I型脳鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全および筋萎縮性側索硬化症の群より選択される、項目104に記載の方法。
(項目109)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、パーキンソン病である、項目84に記載の方法。
(項目110)
前記パーキンソン病が、家族性である、項目109に記載の方法。
(項目111)
前記パーキンソン病が、非家族性である、項目109に記載の方法。
(項目112)
前記運動ニューロン疾患が、神経原線維および/またはスーパーオキシドジスムターゼタンパク質の微細線維および凝集と関連する、項目104に記載の方法。
(項目113)
前記痙性対麻痺が、シャペロンおよび/または三重Aタンパク質の欠陥のある機能と関連する、項目104に記載の方法。
(項目114)
前記脊髄小脳性運動失調が、DRPLAまたはマチャド−ジョセフ病である、項目104に記載の方法。
(項目115)
前記プリオン関連疾患が、クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病および変異型のクロイツフェルト−ヤーコブ病の群より選択される、項目104記載の方法。
(項目116)
前記アミロイド性多発神経障害が、老人性アミロイド性多発神経障害または全身性アミロイドーシスである、項目104に記載の方法。
(項目117)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約1gの用量で投与される、項目81に記載の方法。
(項目118)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約200mgの用量で投与される、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約10mgから約100mgの用量で投与される、項目117に記載の方法。
(項目120)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約30mgから約70mgの用量で投与される、項目117に記載の方法。
(項目121)
被験体において異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する方法であって、以下の工程:
(a)該被験体に、放射性化合物または検出可能なシグナルを放出する物質で標識された化合物を、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドが、もし存在する場合には、それに前記化合物が結合するのを許容するのに十分な量および条件で投与する工程;ならびに
(b)異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドに結合した前記化合物からの放射能またはシグナルを検出し、それにより該被験体における、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する工程を包含し、前記化合物は、下記の構造を有する:
【化4−A】

ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここで該Rは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここで該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そして該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここで該R10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、該化合物はmyo−イノシトールではない、方法。
(項目122)
前記化合物が、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソールである、項目121に記載の方法。
(項目123)
前記化合物が、cis−イノシトール、epi−イノシトール、allo−イノシトール、muco−イノシトール、neo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−chiro−イノシトールおよびL−chiro−イノシトールの群より選択される、項目122に記載の方法。
(項目124)
前記化合物が、1,2,3,4,5−シクロヘキサンペントールである、項目121に記載の方法。
(項目125)
前記化合物が、epi−クエルシトール、vibo−クエルシトール、scyllo−クエルシトール、allo−クエルシトール、talo−クエルシトール、gala−クエルシトール、cis−クエルシトール、muco−クエルシトール、neo−クエルシトール、proto−クエルシトールおよびそれらの鏡像異性体の群より選択されるクエルシトールである、項目124に記載の方法。
(項目126)
前記化合物が、シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンテトロールの立体異性体、シクロヘキサントリオールの立体異性体、シクロヘキサンテトロールの鏡像異性体およびシクロヘキサントリオールの鏡像異性体の群より選択される、項目121に記載の方法。
(項目127)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目121に記載の方法。
(項目128)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目127に記載の方法。
(項目129)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目121に記載の方法。
(項目130)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目129に記載の方法。
(項目131)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目121に記載の方法。
(項目132)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目131に記載の方法。
(項目133)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目121に記載の方法。
(項目134)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目133に記載の方法。
(項目135)
前記化合物が、O−モノメチルシクロヘキサンヘキソールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目121に記載の方法。
(項目136)
前記化合物が、D−ピニトール、L−クェブラキトールおよびD−ボルネシトールの群より選択される、項目135記載の方法。
(項目137)
前記化合物が、モノアミノシクロヘキサンペントール(イノサミン)、ジアミノシクロヘキサンテトロール(イノサジアミン)、ジアミノシクロヘキサントリオール、それらの立体異性体およびそれらの鏡像異性体、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩の群より選択される、項目121に記載の方法。
(項目138)
前記化合物が、L−neo−イノサミン、DL−epi−イノサミン−2、ストレプトアミンおよびデオキシストレプトアミンの群より選択される、項目137記載の方法。
(項目139)
前記化合物が、モノメルカプトシクロヘキサンペントールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目121に記載の方法。
(項目140)
前記化合物が、1L−1−デオキシ−1−メルカプト−8−O−メチル−chiro−イノシトールである、項目139に記載の方法。
(項目141)
前記化合物が、scyllo−イノシトールである、項目121に記載の方法。
(項目142)
前記化合物が、allo−イノシトールである、項目121に記載の方法。
(項目143)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、βプリーツシート状および/もしくは原線維状および/もしくは凝集体状でのタンパク質、タンパク質フラグメントおよびペプチドの沈着を生じる、項目121記載の方法。
(項目144)
項目143に記載の方法であって、前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、以下の群:アルツハイマー病、初老性形態および老年性形態;アミロイドアンギオパチー、軽度認知障害、アルツハイマー病関連痴呆;タウオパチー;α−シヌクレイノパチー;パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;痙性対麻痺;ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、フリートライヒ運動失調;タンパク質とポリグルタミン、ポリアミンもしくは対応する遺伝子内の3もしくは4個のヌクレオチドエレメントの病的な拡大から生じる他のリピートとの、細胞内凝集および/またはニューロン内凝集と関連する神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;外傷後のアミロイドβペプチドの蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患;家族性英国型痴呆;家族性デンマーク型痴呆;痙攣性運動失調を伴う初老期痴呆;脳のアミロイドアンギオパチー、英国型;痙攣性運動失調、脳のアミロイドアンギオパチーを伴う初老期痴呆、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド性多発神経障害;アミロイドβペプチドに起因する封入体筋炎;家族性およびフィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および慢性炎症;および島アミロイドポリペプチド(IAPP)と関連するII型糖尿病より選択される、方法。
(項目145)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、アルツハイマー病である、項目144に記載の方法。
(項目146)
前記アルツハイマー病関連痴呆が血管性痴呆またはアルツハイマー痴呆である、項目144に記載の方法。
(項目147)
項目144に記載の方法であって、前記タウオパチーが、好銀性粒子痴呆、皮質基底核変性、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、振せん麻痺をともなう前頭側頭痴呆、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−シュパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後振せん麻痺、プリオン蛋白脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、およびもつれのみの痴呆の群より選択される、方法。
(項目148)
前記α−シヌクレイノパチーが、レーヴィ小体を伴う痴呆、小グリア細胞内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、線条体黒質の変性、オリーブ橋小脳の萎縮、I型脳鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全および筋萎縮性側索硬化症の群より選択される、項目144に記載の方法。
(項目149)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、パーキンソン病である、項目144に記載の方法。
(項目150)
前記パーキンソン病が、家族性である、項目149に記載の方法。
(項目151)
前記パーキンソン病が、非家族性である、項目149に記載の方法。
(項目152)
前記運動ニューロン疾患が、神経原線維および/またはスーパーオキシドジスムターゼタンパク質の微細線維および凝集と関連する、項目144に記載の方法。
(項目153)
前記痙性対麻痺が、シャペロンおよび/または三重Aタンパク質の欠陥のある機能と関連する、項目144に記載の方法。
(項目154)
前記脊髄小脳性運動失調が、DRPLAまたはマチャド−ジョセフ病である、項目144に記載の方法。
(項目155)
前記プリオン関連疾患が、クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病および変異型のクロイツフェルト−ヤーコブ病の群より選択される、項目144記載の方法。
(項目156)
前記アミロイド性多発神経障害が、老人性アミロイド性多発神経障害または全身性アミロイドーシスである、項目144に記載の方法。
(項目157)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約1gの用量で投与される、項目121に記載の方法。
(項目158)
前記化合物が、前記被験体の体重1kgあたり約1mgから約200mgの用量で投与される、項目157に記載の方法。
(項目159)
前記検出可能なシグナルが、蛍光シグナルである、項目121に記載の方法。
(項目160)
前記検出可能なシグナルが、放射能シグナルである、項目121に記載の方法。
(項目161)
被験体において異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する方法であって、以下の工程:
(a)該被験体からサンプルを収集する工程;
(b)放射性化合物または検出可能なシグナルを放出する物質で標識された化合物を、もし存在する場合には、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドへの該化合物の結合が可能な条件下で、該サンプルを接触させる工程;ならびに
(c)異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドに結合した該化合物からの放射能またはシグナルを検出する工程であって、このようにして、該被験体における、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する工程を包含し、ここで、該化合物は以下の構造:
【化5−A】

を有し、
ここで、R、R1’、R、R2’、R、R3’、R、R4’、R、R5’、RおよびR6’の各々は独立して、以下の群:
(a)水素原子;
(b)NHRであって、ここで該Rは、水素;C〜C10アシルおよびC〜C10アルキルの群より選択される、NHR
(c)NRであって、ここで該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルであり、そして該Rは、C〜C10アシルまたはC〜C10アルキルである、NR
(d)OR10であって、ここで該R10は、基なし、水素、C〜C10アシル、C〜C10アルキルおよびSOHの群より選択される、OR10
(e)C〜Cグリコシル;
(f)水素、OH、NH、SH、OSOHおよびOPOの群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル;
(g)SR11であって、ここでR11は水素、C〜C10アルキルおよびOHの群より選択される、SR11
(h)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜C10アルキル;ならびに
(i)水素、OR10、NHR、NRおよびSR11の群より選択される置換基で必要に応じて置換された、C〜Cシクロアルキル、
より選択され、
ただし、該化合物はmyo−イノシトールではない、方法。
(項目162)
前記化合物が、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソールである、項目161に記載の方法。
(項目163)
前記化合物が、cis−イノシトール、epi−イノシトール、allo−イノシトール、muco−イノシトール、neo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−chiro−イノシトールおよびL−chiro−イノシトールの群より選択される、項目162に記載の方法。
(項目164)
前記化合物が、1,2,3,4,5−シクロヘキサンペントールである、項目161に記載の方法。
(項目165)
前記化合物が、epi−クエルシトール、vibo−クエルシトール、scyllo−クエルシトール、allo−クエルシトール、talo−クエルシトール、gala−クエルシトール、cis−クエルシトール、muco−クエルシトール、neo−クエルシトール、proto−クエルシトールおよびそれらの鏡像異性体の群より選択されるクエルシトールである、項目164に記載の方法。
(項目166)
前記化合物が、シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンテトロールの立体異性体、シクロヘキサントリオールの立体異性体、シクロヘキサンテトロールの鏡像異性体およびシクロヘキサントリオールの鏡像異性体の群より選択される、項目161に記載の方法。
(項目167)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノン、その立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目161に記載の方法。
(項目168)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目167に記載の方法。
(項目169)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノン、またはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目161に記載の方法。
(項目170)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目169に記載の方法。
(項目171)
前記化合物が、ペンタヒドロキシシクロヘキサノン、またはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目161に記載の方法。
(項目172)
前記化合物が、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソースである、項目171に記載の方法。
(項目173)
前記化合物が、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目161に記載の方法。
(項目174)
前記化合物が、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである、項目163に記載の方法。
(項目175)
前記化合物が、O−モノメチルシクロヘキサンヘキソールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目161に記載の方法。
(項目176)
前記化合物が、D−ピニトール、L−クェブラキトールおよびD−ボルネシトールの群より選択される、項目175記載の方法。
(項目177)
前記化合物が、モノアミノシクロヘキサンペントール(イノサミン)、ジアミノシクロヘキサンテトロール(イノサジアミン)、ジアミノシクロヘキサントリオール、それらの立体異性体およびそれらの鏡像異性体、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩の群より選択される、項目161に記載の方法。
(項目178)
前記化合物が、L−neo−イノサミン、DL−epi−イノサミンー2、ストレプトアミンおよびデオキシストレプトアミンの群より選択される、項目177記載の方法。
(項目179)
前記化合物が、モノメルカプトシクロヘキサンペントールまたはその立体異性体もしくは鏡像異性体である、項目161に記載の方法。
(項目180)
前記化合物が、1L−1−デオキシ−1−メルカプト−8−O−メチル−chiro−イノシトールである、項目179に記載の方法。
(項目181)
前記化合物が、scyllo−イノシトールである、項目161に記載の方法。
(項目182)
前記化合物が、allo−イノシトールである、項目161に記載の方法。
(項目183)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、βプリーツシート状および/もしくは原線維状および/もしくは凝集体状でのタンパク質、タンパク質フラグメントおよびペプチドの沈着を生じる、項目161記載の方法。
(項目184)
項目183に記載の方法であって、前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、以下の群:アルツハイマー病、初老性形態および老年性形態;アミロイドアンギオパチー、軽度認知障害、アルツハイマー病関連痴呆;タウオパチー;α−シヌクレイノパチー;パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;痙性対麻痺;ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、フリートライヒ運動失調;タンパク質とポリグルタミン、ポリアミンもしくは対応する遺伝子内の3もしくは4個のヌクレオチドエレメントの病的な拡大から生じる他のリピートとの、細胞内凝集および/またはニューロン内凝集と関連する神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;外傷後のアミロイドβペプチドの蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患;家族性英国型痴呆;家族性デンマーク型痴呆;痙攣性運動失調を伴う初老期痴呆;脳のアミロイドアンギオパチー、英国型;痙攣性運動失調、脳のアミロイドアンギオパチーを伴う初老期痴呆、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド性多発神経障害;アミロイドβペプチドに起因する封入体筋炎;家族性およびフィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および慢性炎症;および島アミロイドポリペプチド(IAPP)と関連するII型糖尿病より選択される、方法。
(項目185)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、アルツハイマー病である、項目184に記載の方法。
(項目186)
前記アルツハイマー病関連痴呆が血管性痴呆またはアルツハイマー痴呆である、項目184に記載の方法。
(項目187)
項目184に記載の方法であって、前記タウオパチーが、好銀性粒子痴呆、皮質基底核変性、ボクサー痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化、振せん麻痺をともなう前頭側頭痴呆、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−シュパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後振せん麻痺、プリオン蛋白脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、およびもつれのみの痴呆の群より選択される、方法。
(項目188)
前記α−シヌクレイノパチーが、レーヴィ小体を伴う痴呆、小グリア細胞内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、線条体黒質の変性、オリーブ橋小脳の萎縮、I型脳鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全および筋萎縮性側索硬化症の群より選択される、項目184に記載の方法。
(項目189)
前記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、パーキンソン病である、項目184に記載の方法。
(項目190)
前記パーキンソン病が、家族性である、項目189に記載の方法。
(項目191)
前記パーキンソン病が、非家族性である、項目189に記載の方法。
(項目192)
前記運動ニューロン疾患が、神経原線維および/またはスーパーオキシドジスムターゼタンパク質の微細線維および凝集と関連する、項目184に記載の方法。
(項目193)
前記痙性対麻痺が、シャペロンおよび/または三重Aタンパク質の不完全な機能と関連する、項目184に記載の方法。
(項目194)
前記脊髄小脳性運動失調が、DRPLAまたはマチャド−ジョセフ病である、項目184に記載の方法。
(項目195)
前記プリオン関連疾患が、クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病および変異型のクロイツフェルト−ヤーコブ病の群より選択される、項目184記載の方法。
(項目196)
前記アミロイド性多発神経障害が、老人性アミロイド性多発神経障害または全身性アミロイドーシスである、項目184に記載の方法。
(項目197)
前記検出可能なシグナルが、蛍光シグナルである、項目161に記載の方法。
(項目198)
前記検出可能なシグナルが、放射能シグナルである、項目161に記載の方法。
(項目199)
前記検出可能なシグナルが、酵素結合イムノソルベント検定シグナルである、項目161に記載の方法。
(項目200)
前記サンプルが、全血である、項目161に記載の方法。
(項目201)
前記サンプルが血漿である、項目161に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1Aは、myo−イノシトール、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールの構造を示し、図1B〜1Hは、TgCRND8マウスにおけるモリス水迷路の空間参照記憶バージョンを示す。Myo−イノシトール処置は認知機能を変えなかった(1B)。6ヶ月齢で、未処置TgCRND8(n=10)は、非Tgコントロールおよびepi−イノシトール(1C)およびscyllo−イノシトール(1D)処置されたマウス(各群n=10、p<0.02未処置群対処置群)に対して相対的に認知障害を示している。epi−イノシトール処置されたTgCRND8マウスの成績は非Tg同腹子(1E)に関して障害が残っていたが、scyllo−イノシトールTgCRND8の成績は、非Tg同腹子(1F)の成績と近いものであった。非Tg同腹子の行動は、epi−イノシトール(1G)またはscyllo−イノシトール(1H)処置のいずれにも影響を受けなかった。垂直線は標準誤差を表す。
【図2】図2A〜2Iは、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールで処置された6ヶ月齢のTgCRND8マウスにおける、斑負荷および血管神経膠症を示す。コントロールの動物は、海馬(2A)および大脳皮質(2B)に重度の斑負荷および血管神経膠症を有している。高倍率は、星状細胞の活性化が、斑負荷のみと関連するだけではないことを実証している(2C)。epi−イノシトール処置は、血管神経膠の減少をともなうアミロイド負荷に対する適度な効果を有する(2D、2Eおよび2F)。Scyllo−イノシトール処置は、アミロイド負荷および神経膠症を有意に低減させた(2G、2Hおよび2I)。高倍率は、scyllo−イノシトール処置マウス(2I)において、より小さい平均斑サイズを示している。星状細胞が抗GFAP抗体を用いて標識され、斑負荷が、抗Aβ抗体を用いて同定された。目盛線は、450ミクロン(A、B、D、E、G、H)および94ミクロン(C、F、I)である。
【図3】図3A〜3Dは、コントロールのTgCRND8マウスおよび処置されたTgCRND8マウスにおける、Aβ種、1〜42、1〜40および1〜38は、APPのプロセシングの程度(3B)と同様、識別不能であった(3A)ことを示す。血管性アミロイド負荷を、処置TgCRND8マウスおよび無処置TgCRND8マウスにおいて、矢状連続切片で定量した。TgCRND8マウスは、小および中サイズの管と関連する著しい血管性アミロイド負荷を有し、その負荷は、scyllo−イノシトール処置されたTgCRND8マウスでは減少した(3A)。scyllo−イノシトール処置は、未処置およびepi−イノシトール処置されたTgCRND8マウスと比較して、全血管性負荷を有意に低減した(3C)。scyllo−イノシトールは、平均斑サイズの有意な減少により示されているように、斑沈着を低減する(3D)。
【図4】図4は、3日間試験の実例における、モリス水迷路の空間参照記憶バージョンを用いたTgCRND8マウスおよび非Tgマウスの認知機能に対する水の効果を示す。
【図5】図5は、3日間試験の実例における、モリス水迷路の空間参照記憶バージョンを用いたTgCRND8マウスおよび非Tgマウスの認知機能に対するscyllo−イノシトールの効果を示す。
【図6】図6は、3日間試験の実例における、モリス水迷路の空間参照記憶バージョンを用いたTgCRND8マウスおよび非Tgマウスの認知機能に対するepi−イノシトールの効果を示す。
【図7】図7は、3日間試験の実例における、モリス水迷路の空間参照記憶バージョンを用いたTgCRND8マウスおよび非Tgマウスの認知機能に対するmyo−イノシトールの効果を示す。
【図8】図8は、3日間試験の実例における、モリス水迷路の空間参照記憶バージョンを用いて、野生型マウスと比較したTgCRND8マウス(学習相および記憶試験)および非Tgマウスの認知機能に対するscyllo−イノシトール、epi−イノシトールおよびmyo−イノシトールの効果を示す。
【図9】図9は、未処置のTgCRND8マウスおよびscyllo−イノシトールにより処置されたマウス、epi−イノシトールにより処置されたマウスまたはmyo−イノシトールにより処置されたマウスと対比して、斑で被覆された脳面積の%を示す。
【図10】図10Aおよび10Bは、水により処置されたTgCRND8マウスの生存率とepi−イノシトールにより処置されたTgCRND8マウスもしくはmyo−イノシトールにより処置されたTgCRND8マウス(10A)の生存率の対比または水により処置されたTgCRND8マウスの生存率とscyllo−イノシトール(10B)により処置されたTgCRND8マウスとの生存率の対比を示す。
【図11】図11A〜Dは、未処置またはマンニトールで処置された6ヶ月齢のTgCRND8マウスにおける、モリス水迷路試験の空間参照記憶バージョンの結果を示す(A、B)。マンニトール処置されたTgCRND8マウスは、未処置のTgCRND8マウスとは有意差が無かった(p=0.89;A)。マンニトール処置されたTgCRND8マウスの成績は、マンニトール処置された非Tg同腹子とは有意に差があった(p=0.05;B)。斑負荷を、6ヶ月齢で、定量的画像分析を用いて分析した(C)。マンニトール処置されたTgCRND8マウスは、全斑負荷の指標として斑計数が用いられた場合、未処置のTgCRND8マウスとは識別不能であった(p=0.87)。垂直線は標準誤差を表している。マンニトール処置および未処置のTgCRND8マウスについてのKaplan−Meier法による累積生存率をプロットする(D)。各群n=35の、動物の二つのコホートは、Tarone−Wareの統計検定により判定する場合、有意差は無かった、p=0.87。
【図12】図12AおよびBは、3日間試験の実例において、行なわれた処置の研究における、空間参照記憶試験の結果を示す。scyllo−イノシトール処置したTgCRND8マウスの成績は、scyllo−イノシトール処置した非Tg同腹子に匹敵した(p=0.38;A)。同様に、scyllo−イノシトール処置したTgCRND8マウスは、処置の2ヵ月後、非Tg同腹子と識別不能なままであった(p=0.67;B)。
【図13】図13AおよびBは、5ヶ月齢のTgCRND8マウスに1日1回1ヶ月間、種々の用量のscyllo−イノシトールを、投与した後のCNS内のAβレベルを示す。可溶性Aβ42レベルは、全ての用量で減少し、未処置コントロールとは有意差があった(A)。それとは対照的に、不溶性Aβ42レベルは、全ての条件下で有意差が無かった(B).垂直線は、標準誤差を表す。
【図14】図14は、1日1回、1ヶ月間、種々の用量のscyllo−イノシトールを投与したTgCRND8マウスを、脳Aβ40のレベルについて分析した。試験した全ての用量の未処置およびscyllo−処置されたTgCRND8マウスの可溶性(A)および不溶性(B)のAβ40のレベルについて差が認められなかった。
【図15】図15は、非トランスジェニック同腹子の認知成績と比較したallo−イノシトール処置された6ヶ月齢のTgCRND8マウスの認知成績を示す。
【図16】図16A〜Dは、scyllo−イノシトール処置されたマウスにおいて、TgPS1xAPPマウスにおける斑負荷が、2ヶ月齢で減少することを示す。コントロールの動物は、海馬(A)および大脳皮質(B)に高い斑負荷を有する。scyllo−イノシトール処置は、アミロイド負荷を有意に減少させた(C、D)。斑負荷は、抗Aβ抗体(褐色)を用いて同定された。目盛線は、300μmである。
【図17】図17A〜Cは、scyllo−イノシトール処置後のTgPS1xAPPマウスにおける斑負荷の定量化を示す。斑で被覆された脳面積%(A)、平均斑サイズ(B)および斑計数(C)が有意に減少した。垂直線は標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、アルツハイマー病のようなアミロイド関連疾患の処置に関して特定のイノシトール立体異性体の新規で、予測不可能かつ予期せぬ性質を開示する。
【0028】
驚くべきことに、イノシトールの特定の立体異性体および関連化合物が、Aβ沈着の発生期の間に、ヒトアルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルに投与された場合、Aβ誘導進行性認知低下および大脳アミロイド斑病態を遮断し、生存率を改善することが発見された。
【0029】
上に開示されるように、以前のデータは、全てでは無いが、いくつかのイノシトール立体異性体が、インビトロで、培養ニューロン細胞において、アミロイド凝集に対して、効果を有し得ることを示唆した(McLaurinら、J.Biol.Chem.275(24):18495〜18502(2000))。それらの知見は、あるとすれば、研究された立体異性体(myo−イノシトール、epi−イノシトール、scyllo−イノシトールおよびchiro−イノシトール)のいずれが、そのような効果を有し、または他のいずれの立体異性体が、そのような効果を有するか否かということを予測する方法を全く提供しなかった。それらの研究はまた、いずれかのイノシトール立体異性体が、インビボでアミロイド沈着、認知欠損または寿命に対する効果を有するか否かを予測し得ない。本発明は、特定のイノシトールの立体異性体のみ、特にscyllo−イノシトールおよびallo−イノシトールが、アミロイド関連疾患の動物モデルにおいて、アミロイド斑負荷を減少させ、認知を改善し、寿命を増加するという予測不可能な結果を記載している。それに対して、他の研究では、そのような効果は無かった。
【0030】
以前の研究はまた、特定のイノシトールの立体異性体(例えば、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトール)は、インビトロでデノボアミロイド凝集を阻害し得ることのみを示唆した。本発明は、scyllo−イノシトールが、既に確立された大脳アミロイド沈着を阻害し、生存する脳においてもそうであるという予期せぬ結果について記載している。これは、生存している脳の複雑な組織ではなく、特定の培養ニューロン細胞型のみを考慮した以前に公表されたインビボのデータにより、意味されるものではなく、イノシトールがデノボ凝集を阻害し得ルことを示唆し、従って、確立された疾患と関連性を有さないことのみを示唆している。
【0031】
以前のインビトロのデータはまた、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールの投与が、アミロイドAβ42レベルならびにAβ40レベルに影響を与えることを示唆した。本発明のインビボの投与研究では、allo−イノシトールまたはscyllo−イノシトールの投与が、特にAβ42レベルを減少させ、一方では、不溶性Aβ42レベルおよび可溶性Aβ40レベルもしくは不溶性Aβ40レベルに影響を与えなかったという予測不可能な結果を明らかにした。
【0032】
グリアの活性および炎症における変化を示している本発明の知見は、新規であり、驚くべきことであり、以前に公表された前記インビトロデータにより予測することはできなかった。
【0033】
アルツハイマー病に対するいかなる薬物も以前に生存率を上昇させたり、インビボで寿命を延ばすことは示されていないので、scyllo−イノシトールがトランスジェニックモデル動物において寿命を改善することを示す本発明の知見もまた、新規であり、驚くべきことである。
【0034】
好ましくは、本発明の化合物は、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキソール、より好ましくは、cis−イノシトール,epi−イノシトール,allo−イノシトール,muco−イノシトール、neo−イノシトール、scyllo−イノシトール、D−chiro−イノシトールおよびL−chiro−イノシトールの群より選択される。
【0035】
また好ましくは、これらの化合物は、1,2,3,4,5−シクロヘキサンペントール(クエルシトール)、より好ましくは、epi−クエルシトール、vibo−クエルシトール、scyllo−クエルシトール、allo−クエルシトール、talo−クエルシトール、gala−クエルシトール、cis−クエルシトール,muco−クエルシトール、neo−クエルシトール,proto−クエルシトールおよびそれらの鏡像異性体の群より選択される。
【0036】
また好ましくは、これらの化合物は、シクロヘキサンテトロール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンテトロールの立体異性体、シクロヘキサントリオールの立体異性体、シクロヘキサンテトロールの鏡像異性体およびシクロヘキサントリオール鏡像異性体の群より選択される。
【0037】
これらの化合物はまた、ペンタヒドロキシシクロヘキサノンまたはそれらの立体異性体もしくは鏡像異性体であり得る。
【0038】
さらに好ましくは、これらの化合物はscyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択されるイノソース化合物である。
【0039】
また好ましくは、これらの化合物は、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたはそれらの立体異性体もしくは鏡像異性体である。より好ましくは、(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースである。
【0040】
また好ましくは、これらの化合物は、ペンタヒドロキシシクロヘキサノン(イノソース)またはそれらの立体異性体もしくは鏡像異性体であり、より好ましくは、scyllo−イノソース、L−chiro−イノソース−1およびL−epi−イノソースの群より選択される。
【0041】
必要に応じて、これらの化合物は、トリヒドロキシシクロヘキサノンまたは(−)−1−デオキシ−scyllo−イノソースのようなそれらの立体異性体もしくは鏡像異性体である。
【0042】
また好ましくは、これらの化合物は、O−モノメチル−シクロヘキサンヘキソールまたはそれらの立体異性体もしくは鏡像異性体であり、より好ましくは、D−ピニトール、L−クエブラキトールおよびD−ボルネシトールの群より選択される。
【0043】
さらに、これらの化合物は、L−neo−イノサミン(inosamine)、D,L−epi−イノサミン−2、ストレプトアミンおよびデオキシストレプトアミンのような、モノアミノシクロヘキサンペントール(イノサミン)、ジアミノシクロヘキサンテトロール(イノサジアミン(inosadiamines))、ジアミノシクロヘキサントリオール、それらの立体異性体およびそれらの鏡像異性体ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩の群より選択され得る。
【0044】
よりさらに好ましくは、これらの化合物は、モノメルカプト−シクロヘキサンペントールまたはそれらの立体異性体もしくは鏡像異性体であり、より好ましくは、1L−1−デオキシ−1−メルカプト−8−O−メチル−chiro−イノシトールである。
【0045】
本発明の最も好ましい化合物は、allo−イノシトールおよびscyllo−イノシトールであり、scyllo−イノシトールが最も好ましい。上記に示したように、本発明のイノシトールの立体異性体はmyo−イノシトールを除外し,epi−イノシトールもまた、除外し得る。
【0046】
アミロイド病理が数ヶ月間にわたって、十分確立された後に投与した場合でも、これらの化合物は、効果的に大脳Aβ蓄積およびアミロイド病理を逆転する。
【0047】
従って、これらの化合物は、被験体において、タンパク質のフォールディングもしくはタンパク質の凝集またはアミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積、もしくはアミロイド存続の障害と関連する中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態を処置または予防するのに有用であることがわかる。これらの化合物はまた、被験体において、異常に凝集したタンパク質を解離させることおよび/あるいは以前に形成されたアミロイド原線維もしくはアミロイドまたは以前に沈着したアミロイド原線維もしくはアミロイドを溶解または崩壊させることならびに異常なタンパク質のフォールディング、異常なタンパク質の凝集、アミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積もしくはアミロイド存続またはアミロイド脂質相互作用を予防するのに有用であることがわかる。
【0048】
好ましくは、中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、βプリーツシート状および/または原線維状および/または凝集状のタンパク質、タンパク質フラグメントおよびペプチドの沈着を生じる。より好ましくは、上記中枢神経系もしくは末梢神経系または全身系の器官の状態は、以下の群:アルツハイマー病、初老性形態および老年性形態;アミロイドアンギオパチー、軽度認知障害、アルツハイマー病関連痴呆;タウオパチー(tauopathy);α−シヌクレイノパチー(α−synucleinopathy);パーキンソン病;筋萎縮性側索硬化症;運動ニューロン疾患;痙性対麻痺;ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調、フリートライヒ運動失調;タンパク質とポリグルタミン、ポリアミンもしくは対応する遺伝子内の3もしくは4個のヌクレオチドエレメントの病的な拡大から生じる他のリピートとの、細胞内凝集および/またはニューロン内凝集と関連する神経変性疾患;脳血管疾患;ダウン症候群;外傷後のアミロイドβペプチドの蓄積を伴う頭部外傷;プリオン関連疾患;家族性英国型痴呆;家族性デンマーク型痴呆;痙攣性運動失調を伴う初老期痴呆;脳のアミロイドアンギオパチー、英国型;痙攣性運動失調、脳のアミロイドアンギオパチーを伴う初老期痴呆、デンマーク型;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド性多発神経障害;アミロイドβペプチドに起因する封入体筋炎;家族性およびフィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染症および慢性炎症;および島アミロイドポリペプチド(IAPP)と関連するII型糖尿病より選択される。
【0049】
また好ましくは、アルツハイマー関連痴呆は、血管性痴呆もしくはアルツハイマー痴呆であり、および好銀性粒子痴呆(argyrophilic)、皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、ボクサー痴呆(dementia pugilistica)、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化(diffuse neurofibrillary tangles with calcification)、振せん麻痺をともなう前頭側頭痴呆、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−シュパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、C型ニーマン−ピック病、神経原線維変化を伴う非グアム型運動ニューロン疾患(non−Guamanian Motor Neuron disease with neurofibrillary tangples)、ピック病、脳炎後振せん麻痺、プリオン蛋白脳アミロイドアンギオパチー、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性汎脳炎、およびもつれのみの痴呆(tangle only dementia)の群より選択されるタウオパチーである
また好ましくは、上記α−シヌクレイノパチーは、レーヴィ小体を伴う痴呆、小グリア細胞内封入体を伴う多系統萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、線条体黒質の変性、オリーブ橋小脳の萎縮、I型脳鉄蓄積を伴う神経変性、嗅覚機能不全および筋萎縮性側索硬化症の群より選択される。
さらに好ましくは、上記運動ニューロン疾患は、微細線維および神経フィラメントの凝集および/またはスーパーオキシドジスムターゼタンパク質と関連し、上記痙性対麻痺はシャペロンおよび/または三重A(triple A)タンパク質の不完全な機能と関連し、そして脊髄小脳性運動失調は、DRPLAもしくはマチャド−ジョセフ病である。
【0050】
また好ましくは、上記プリオン関連疾患は、クロイツフェルト−ヤーコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病および変異型のクロイツフェルト−ヤーコブ病の群より選択され、上記アミロイド性多発神経障害が、老人性アミロイド性多発神経障害または全身性アミロイドーシスである。
【0051】
より好ましくは、中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の状態が、家族性および非家族性を含むパーキンソン病である。最も好ましくは、中枢神経系もしくは末梢神経系または全身の器官の上記状態は、アルツハイマー病である。
【0052】
好ましくは、上記化合物は、被験体に上記被験体の体重1kgあたり約1mg〜約1g、好ましくは、体重1kgあたり約1mg〜約200mg、より好ましくは体重1kgあたり約10mg〜約100mg、そして最も好ましくは、体重1kgあたり約30mg〜70mgの用量で投与される。上記投与は、経口(経口丸薬、経口液剤または経口懸濁剤)、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、経皮的、鼻腔内、舌下による方法、直腸坐薬もしくは吸入によるなど種々の方法により、達成され得るが、経口投与が最も好ましい。本発明の化合物の投与は、1日1回、1日2回、1週間に1回、1ヶ月に1回または連続的にのように、種々の間隔で行なわれ得る。
【0053】
好ましくは、本発明の化合物は、βセクレターゼインヒビター、γセクレターゼインヒビター(APP特異的または非特異的)εセクレターゼインヒビター(APP特異的または非特異的)、βシート凝集/線維素形成/ADDL形成の他のインヒビター(例えば、アルチェメド(Alzhemed))、NMDAアンタゴニスト(例えばメマンチン)、非ステロイド性抗炎症化合物(例えばイブプロフェン、セレベレックス)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、栄養素や栄養補助食品(例えば、Gingko biloba);アセチルコリンエステラーゼインヒビター(例えばドネゼピル(donezepil)、ムスカリンアゴニスト(例えば、AF102B(Cevimeline、EVOXAC)、AF150(S)およびAF267B)、抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、クロザピン、オランザピン);抗欝剤(トリサイクリックスおよびセロトニン再取り込みインヒビター(例えば、セルトラリンおよびシタロプラムHbr)、遺伝子治療および/またはネプリリシン(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬物ベースのアプローチ;遺伝子治療および/またはインスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬物ベースのアプローチ、Aβに対するワクチン、免疫治療法および抗体(例えば,ELANAN−1792)、スタチンおよび他のコレステロール低下剤(例えば、ロバスタチンおよびシンバスタチン)、幹細胞または他の細胞ベースの治療法、TAUタンパク質をリン酸化するキナーゼ(CDK5、GSK3α、GSK3β)のインヒビター(例えば塩化リチウム)またはAβ産生を調節するキナーゼ(GSK3α、GSK3β、Rho/ROCKキナーゼ)のインヒビター(例えば、塩化リチウムおよびイブプロフェン)のような他の処置との併用で投与される。
【0054】
これらの他の治療法は異なる機構で作用し、本発明とともに付加的効果/相乗的効果を有し得ると考えられる。さらに、これらの治療の多くは機構ベースおよび/またはそれらが単独で投与され得る用量または期間を制限する他の副作用を有する。
【0055】
より詳細には、以下で議論されるように、インビボでアミロイドと結合する能力により本発明の化合物はまた、被験体における異常にフォールドしたもしくは異常に凝集したおよび/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断するのに有用であり、これは、もし存在する場合には、上記被験体に、放射性化合物または検出可能なシグナルを放出する物質で標識された化合物を、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドにその化合物が結合するのを許容するのに十分な量および条件で投与する工程、ならびに異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドに結合した化合物からの放射能またはシグナルを検出する工程であって、このようにして異常にフォールドしたもしくは異常に凝集したおよび/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドの存在を診断する工程を包含する方法を用いる。
【0056】
あるいは、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドを含んでいる疑いのあるサンプルを、被験体から採取し、放射性化合物または検出可能なシグナルを放出する物質で標識された化合物と、もし存在する場合には、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/またはアミロイド原線維もしくはアミロイドが、それにその化合物が結合するのを許容する条件下で、接触させ;そして、その後、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドに結合した上記化合物からの放射能またはシグナルを検出し、従って、上記被験体において、異常にフォールドしたタンパク質もしくは異常に凝集したタンパク質および/または原線維もしくはアミロイドの存在を診断する。
【0057】
好ましくは、上記検出可能な信号は、蛍光もしくは酵素結合イムノソルベント検定であり、上記サンプルは、全血(全ての細胞成分を含む)または血漿である。
【0058】
以下に示されるように、本発明の化合物は、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、これらのマウスに顕性の認知低下およびアミロイド性神経病理の発症に先立つ「後期前症候(late presymptomatic)」相の間に投与された場合、Aβの大脳蓄積、大脳アミロイド斑の沈着および認知欠損を抑止し得る。さらに、これらの化合物が、認知欠損およびアミロイド斑神経病理の発症後に投与された場合でさえ、それらは、アミロイド沈着および神経病理を効果的に逆転し得る。重要なことは、これらの化合物の作用機構は、Aβモノマーの集合を神経毒性のオリゴマーおよび/またはプロト原線維に変化させる能力に基づいた合理的な設計に従う。
【0059】
本発明の化合物の他の利点は、両方とも公知のトランスポーターによりおよび受動拡散によりCNSへトランスポートされるという事実を包含し、従って、容易なCNSへのバイオアベイラビリティを提供する。2番目に、これらの化合物は、ブドウ糖に異化される。3番目に、一つのクラスとして、これらの化合物は、一般的に低い毒性プロフィールを有し、それらのいくつかは、異なる目的だが、以前から人に投与されてきている。
【実施例】
【0060】
(実施例1.アルツハイマーマウスモデルの開発および本発明の化合物を投与する方法)
TgCRND8マウスは、Janusら(Nature 408:979〜982(2000))により記載されているように、アルツハイマー病のしっかりしたマウスモデルである。それらは、C3H/B6の異系交配のバックグラウンドを持つシリアハムスタープリオンプロモータの制御下でヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP695)トランスジーンを発現する。上記ヒトAPP695トランスジーンは、ヒトのADの原因となる二つの変異(K670N/M671LおよびV717F)を有する。TgCRND8マウスは、3ヶ月齢から始まって、AD病のヒトの脳に観察されるものと類似している、大脳Aβレベルを上昇させることおよび大脳細胞外アミロイド斑の数を増加させることを伴う進行性の空間学習欠損を有する(C.Janusら、Nature 408:979〜982(2000))。
【0061】
齢および性を合わせたTgCRND8マウスおよび非トランスジェニックの同腹子コホート(各コホートn=35)を未処置としたか、または本発明の化合物を、下記に示すように約6週齢から始めてマウス1匹当たり、1日30mgを投与した。上記マウスは、結果の尺度である認知機能、脳Aβレベル、脳病理および生存率について4ヶ月齢および6ヶ月齢で追跡した。
【0062】
(予防研究方法)
マウス−TgCRND8マウスの実験群に、myo−イノシトール、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールをマウス1匹あたり、1日30mgを給餌した。二つのコホートが6週齢でこの研究に入り、4ヶ月齢および6ヶ月齢で結果を分析した。体重、毛皮特性およびケージ内行動をモニタリングした。全ての実験を、カナダ動物管理協会のガイドラインに従って行なった。
【0063】
行動試験−非空間予備訓練後、マウスを1日4試験5日間、場所識別訓練を受けさせた。行動データを、薬剤または遺伝子型および訓練セッションを反復測定要因として要因分散分析の混合モデルを用いて解析した。
【0064】
大脳アミロイド負荷−脳を取り出し、一つの半球を4%パラホルムアルデヒドで固定し、正中矢状面にパラフィンワックス包埋した。組になった系統的な一様なランダム切片を作製するために、5μmの連続切片を全半球に渡って収集した。50mm間隔の組になった切片を分析のために用いた(10〜14切片/組)。ギ酸での抗原回復処理後、抗Aβ1次抗体(Dako M−0872)に、引き続き2次抗体(Dako StreptABC複合体/西洋ワサビキット)にインキュベートし、斑を同定した。最終生成物をヘマトキシリンでDAB対比染色して視覚化した。アミロイド斑負荷は、ライカ顕微鏡および日立 KP−M1U CCDビデオカメラに接続したLeco IA−3001画像解析ソフトウエアを用いて評価した。血管負荷を、同様に解析し、影響のあった血管の直径を測定するのにディセクターを使用した。
【0065】
血漿Aβ含量および大脳Aβ含量−脳の半分のサンプルを緩衝ショ糖溶液中でホモジナイズし、引き続き、可溶性Aβレベルのための0.4%ジエチルアミン/100mM NaClもしくは全Aβ単離のための冷ギ酸のいずれかを加える。中和後、上記サンプルを希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を用いて、Aβ40およびAβ42について分析した。各半球を、3重に分析した(平均値±標準誤差を報告した)。ウェスタンブロット分析を、Aβ種分析のために尿素ゲルを用いて全画分について行なった。Aβを、6E10(BIOSOURCE International)およびEnhanced Chemiluminenscence(Amersham)を用いて、検出した。
【0066】
脳中のAPP分析−マウス脳の半分のサンプルを20mMトリスpH7.4、0.25Mショ糖、1mM EDTAおよび1mM EGTAおよびプロテアーゼインヒビターカクテル中でホモジナイズし、0.4%DEA(ジメチルアミン)/100mM NaClと混合し109,000Xgで遠心した。その上清をmAb22C11を用いてウェスタンブロットによりAPPレベルについて分析し、一方、そのペレットをmAbC1/6.1を用いて、APPホロタンパク質について分析した。
【0067】
グリオーシスの定量化−5つのランダムに選択した、均等に空白領域のある矢状切片を処置マウスおよびコントロールマウスのパラホルムアルデヒド固定して凍結した半球から収集した。切片を、抗ラットGFAP IgG2a(Dako;希釈1:50)で星状細胞のためにおよび抗ラットCD68 IgG2b(Dako;1:50)で小グリア細胞のために免疫標識した。ディジタル画像を、Zeiss Axioscope 2 Plus 顕微鏡に取り付けられたCoolsnapディジタルカメラ(Photometrics、Tucson,Arizona)を用いて取り込んだ。画像をOpenlab 3.08画像化ソフトウエア(Improvision、Lexington MA)を用いて解析した。
【0068】
生存率調査−生存確率を、死の発生ごとに生存確率を計算し、従って、小さいサンプルサイズには適しているKaplan−Meier技法により評価した。生存率分析のために35匹のマウスを各処置群に用いた。処置間の比較はTarone−Ware検定を用いて報告した。
【0069】
(実施例2.認知欠損の予防)
TgCRND8マウスの認知機能を、5日間試験実例(図1C〜1H)を用いてモリス水迷路空間参照記憶バージョンを用いて、評価した。処置および未処置のTgCRND8マウスからのデータならびに処置および未処置の非Tg同腹子(全ての組み合わせにつきn=10)からのデータを、処置(未処置、epi−イノシトールまたはscyllo−イノシトールおよび遺伝子型(TgCRND8と非Tgとの対比)を「被験体間(between subject)」要因として、分散分析(ANOVA)の混合モデルを用いて、解析した。epi−イノシトールもしくはscyllo−イノシトールのいずれかで処置したTgCRND8マウスは、未処置TgCRND8マウスより有意によりよく機能した(p<0.02;図1Cおよび1D)。処置または未処置の非Tg同腹子と比較した場合、epi−イノシトール処置TgCRND8マウスは、訓練の最初の3日の間は、やや遅い学習曲線であった。しかしながら、4日間の訓練後は、epi−イノシトール処置をしたTgCRND8マウスはその非Tg同腹子とは統計的に差はなかった(図2E)。対照的に、scyllo−イノシトール処置TgCRND8マウスは、全ての日において、非Tg同腹子とは識別不能であった。このように、上記の両異性体が、認知欠損の進展を阻害し、そしてscyllo−イノシトールは、実際に、scyllo−イノシトール処置TgCRND8マウスが、正常マウスと識別不能な程度まで上記欠陥を予防した。この改善された機能は、epi−イノシトール処置およびscyllo−イノシトール処置が非Tgマウスの機能に対する効果がなかったので(図2Gおよび2H)、行動、運動または知覚系に対する非特異的効果に起因するものではなかった。上記改善された機能はまた、体重、活動度および毛皮状態は処置コホートと未処置コホートとで差はなかったので、栄養学的の効果にもカロリー的の効果にも起因するものでなかった。さらに、マンニトール(類似した分子量の糖)による処置は、行動に影響がなかった。性別の効果はいずれの処置群間でも有意ではなかった(p=0.85)。
【0070】
(実施例3−大脳Aβ負荷およびアミロイド神経病理の減少)
未処置のTgCRND8マウスは、4ヶ月齢でAβ40およびAβ42の両方を強力に発現する(表1)。epi−イノシトール処置は、実施例1で記載されているように、4ヶ月齢でAβ40レベル(可溶性および不溶性の両者のプールで43±2%減少;p≦0.05)およびAβ42レベル(可溶性プールで69%減少、p=0.005;不溶性プールで28%減少、p=0.02)の両者を減少させた。しかしながら、これらの改善は、維持されず、そして6ヶ月齢までには脳Aβレベルは、未処置TgCRND8マウスで観察されるレベルと類似したレベルに上昇した(表1)。
【0071】
対照的に、4ヶ月齢でscyllo−イノシトール処置は、全脳Aβ40を62%(p=0.0002)および全脳Aβ42を22%(p=0.0096;表1)減少させた。6ヶ月齢では、未処置TgCRND8マウスに比較して、scyllo−イノシトール処置は、Aβ40レベルの32%の減少(p=0.04)およびAβ42の20%の減少(p=0.02)を引き起こした。
【0072】
イノシトール処置後に検出された減少したAβ濃度が、血漿中へのAβの流出変化から生じているのかもしれないので、血漿中のAβ−βレベルを4ヶ月齢および6ヶ月齢で検査した(表1)。TgCRND8マウスは、6ヶ月齢では、CNS斑負荷は依然と上昇中であるにもかかわらず、4ヶ月齢で高い血漿Aβ濃度を有し、6ヶ月齢で一定に維持される(表1)。epi−イノシトール処置もscyllo−イノシトール処置のいずれも、未処置のTgCRND8マウスと比較して、血漿Aβレベルに対する効果を有しなかった(p=0.89)。この観察に最も倹約的な説明は、上記イノシトールがCNSのAβの原線維化を選択的に変化させたが、βセクレターゼ活性にも、γセクレターゼ活性にもAβの血漿中へのクリアランスの正常なメカニズムにも影響を与えなかったことである。それにもかかわらず、この観察は、2つの理由で重要である。第一に、血漿AβレベルおよびCSFのAβレベルの低下は、未処置AD患者の臨床コースが進行するにつれて、通常検出される(Mayeuxら、Ann.Neurol.46、412、2001)。第二に、強い抗体応答および明白な臨床応答を発達させたAN1792免疫研究における患者は、血漿Aβ−βレベルを変化させなかった(Hockら、Neuron 38,547
2003)。従って、これらの結果は、効果的な治療結果を得るために血漿Aβレベルを変化させる必要が無いことを示している。
【0073】
イノシトールの立体異性体がAPPの発現にもタンパク分解プロセシングにも効果が無いことを確認するために、APPホロタンパク質、sAPP−αおよび種々のAβ種のレベルがイノシトール処置TgCRND8マウスおよび未処置のTgCRND8マウスの脳内で確かめられた。本発明者らが以前に報告したデータ(McLaurinら、Nat.Med.8、1263、2002)と一致して、Aβ42、Aβ40およびAβ38は、TgCRND8マウスの脳で主要な種であり(図3A)、未成熟および成熟のグリコシル化されたAPP(図3B)およびsAPP−αのCNSレベルは、処置に拘わらず識別不能であった。合わせて、これらの結果は、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールが、APPのプロセシングではなく、Aβのオリゴマー化に直接的および選択的に効果を有することを示している。
【0074】
Aβ−βペプチド負荷における変化は、斑負荷の顕著な減少を伴った(表1;図2A〜2I)。epi−イノシトール処置TgCRND8マウスにおいて、未処置TgCRND8マウスと比較して、6ヶ月齢ではなく4ヶ月齢において、平均斑サイズの有意な減少があった(それぞれ、95±4.3μm 対 136±15μm、p=0.04;370±9μm 対 423±22μm、p=0.06)。これらの結果は、適度なAβレベルで、epi−イノシトールがAβのオリゴマー化を予防するが、一度高いAβ濃度で開始されるとepi−イノシトールは、原線維化形成を阻害できないことを示す。scyllo−イノシトール処置は4ヶ月齢で平均斑サイズを136±15μmから103±4μmへ減少させた(p=0.01)。6ヶ月齢のscyllo−イノシトール処置TgCRND8マウスでは、Aβペプチドレベルの減少は、斑数の20%減少(p=0.005)、斑で被覆されている脳面積の35%減少(p=0.015)および減少した平均斑サイズ(339±10μm 対 423±21μm、p=0.009)を伴った。これらの結果は、どのような指標においてもscyllo−イノシトール処置後の斑負荷が減少したことを実証する。
【0075】
【表1】

(実施例4−グリア細胞反応性および炎症の低減)
大グリア細胞および小グリア細胞の反応はヒトADおよび全てのアミロイドマウスモデルの両方の神経病理学的特徴である(Irizarryら、J Neuropathol Exp Neurol.56、965、1997;K.D.Bornemannら、Ann NY Acad Sci.908、260、2000)。従って、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトール処置の効果がTgCRND8マウスの脳内のアストログリオーシスおよびマイクログリオーシスについて検討された(図3A〜3D)。連続矢状切片が星状細胞マーカーグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)で染色され、アストログリオーシスで被覆される脳面積%を定量化した。TgCRND8マウスは4ヶ月齢で高い基礎アストログリオーシス(0.459±0.048%)を有しており、それは、6ヶ月齢で僅かに増加し(0.584±0.089%)、そしてそれは、斑面積に限定されない(図2A〜C)。epi−イノシトールは、6ヶ月齢でアストログリオティック応答を0.388±0.039%まで減少させた(p=0.04;図2D〜F)。scyllo−イノシトールは、一方、6ヶ月齢で、ずっとより効果的にアストログリオーシスを0.269±0.028%まで減少させた(p=0.006)(図2G〜I)。小グリア細胞の活性化はまた、年齢および性を合わせた未処置TgCRND8マウス(0.31±0.01%;p<0.001)と比較して、scyllo−イノシトール処置されたTgCRND8マウス(0.20±0.008%脳面積)で有意に弱められた。しかしながら、epi−イノシトール処置マウスは、6ヶ月齢で小グリア細胞活性化の有意な減少(0.248±0.02%;p=NS)は示さなかった。これらのデータは、まとめて考えると、scyllo−イノシトール処置がCNS内のAβ誘導炎症応答を減少させることを示す。
【0076】
(実施例5.血管アミロイド負荷の減少)
アルツハイマー病は実質および血管アミロイド沈着の存在により特徴づけられている。6ヶ月齢の未処置TgCRND8マウスでは、脳面積の約0.03%が血管アミロイドと関連する。6ヶ月齢のepi−イノシトール処置後の血管アミロイド負荷において、差が検出され得なかった(図3C)。対照的に,scyllo−イノシトール処置は血管アミロイド負荷(p=0.05、図3C)を有意に減少させ、アミロイド沈着は直径25m未満(56±2%対70±8%未処置TgCRND8マウスの小血管)より小さな血管に主に局在した。上記の脳血管斑の平均サイズは、未処置マウスと比較して、scyllo−イノシトール処置したマウスで有意に減少した(154±16 対 363±34、p=0.008;図3D)。
【0077】
(実施例6.生存率改善)
TgCRND8マウスは、175日目で50%の生存率を有するが、scyllo−イノシトール処置後では72%に改善されている(n=35/群、p<0.02,scyllo−イノシトール対コントロール、図10B)。myo−イノシトール処置は、全体的な生存率に有意に影響を及ぼさなかった(図10A)。コントロール実験は、scyllo−イノシトール処置マウスの昂進された生存率が、増加したカロリー摂取の間接的な効果ではないことを確認した。従って、野生型マウスのscyllo−イノシトール処置は生存率にも、体重、毛皮の状態、ケージ内行動のような他のパラメータにも効果を及ぼさなかった。さらに、上記イノシトール処置TgCRND8マウスの体重、毛皮の状態、ホームケージ内の行動は、未処置TgCRND8マウスと変わらなかった。類似の分子量の単純糖であるマンニトールでの同時の実験もまた、TgCRND8マウスの生存に効果はなかった。
【0078】
(実施例7.アミロイド沈着の処置および逆転)
一緒に考えると、予防研究は、アルツハイマー病のTgCRND8マウスモデルでscyllo−イノシトールが、実質および大脳血管アミロイドの沈着を阻害し、生存率および認知機能を改善することを実証する。しかしながら、殆どのアルツハイマー病患者は、症状に出たり、Aβオリゴマー化、Aβ沈着、Aβ毒性およびAβ斑形成が、CNS内ですでに十分に進行した場合に処置を求めるようである。従って、5ヶ月齢のTgCRND8マウスを用いてパイロット研究を開始した。これらのマウスは、ヒトAD患者の脳のAβおよび斑負荷に匹敵する顕著なAβおよび斑負荷を有する。
【0079】
(処置研究方法)
マウス−TgCRND8マウスの実験群に、myo−イノシトール、epi−イノシトールおよびscyllo−イノシトールをマウス1匹あたり、1日30mgを給餌した。コホートは、5ヶ月齢で研究に入り、結果を6ヶ月齢で分析した。体重、毛皮特性およびケージ内行動をモニタリングした。全ての実験を、カナダ動物管理協会のガイドラインに従って、行なった。
【0080】
生存率調査−生存の確率を、各死の発生ごとに小サンプルサイズに適切なようにして計算し、Kaplan−Meier技法により、生存確率を評価した。生存率の分析に各処置群につき35匹のマウスを使用した。処置間の比較は、Tarone−Ware検定を用いて報告した。
【0081】
行動試験−逆転研究−マウスを、予備訓練なしで、1日目に隠れたプラットフォームのあるモリス水迷路試験に入れた。マウスを、1日につき6回、3日間に亘って試験した。4日目に、上記プラットフォームをプールから取り除き、各マウスに、1回の30秒水泳探索試験を課した。最終日に、上記動物に、水泳能力、視力および総合認知を評価するために手がかり試験を課した。上記手がかり試験は、試験のために用いられるものとは異なり旗で標識化された四分円に上記プラットフォームが置かれて構成されている。動物に、上記プラットフォームを発見するのに60秒を与えた。上記プラットフォームを発見できなかった動物は、空間記憶の最後の分析には用いられない。行動データは、薬剤または遺伝子型および訓練セッションを反復測定要因として要因分散分析(ANOVA)の混合モデルを用いて解析した。
【0082】
大脳アミロイド負荷−脳を取り出し、一つの半球を4%パラホルムアルデヒドで固定し、中央の矢状面にパラフィンワックス包埋した。組になった系統的な一様なランダム切片を作製するために、5μmの連続切片を全半球に渡って収集した。50mm間隔の数組の切片を分析のために用いた(10〜14切片/組)。ギ酸で抗原回復処理後、抗Aβ1次抗体(Dako M−0872)とともにインキュベートし、その後、2次抗体(Daco StreptABC複合体/西洋ワサビキット)にインキュベートし、斑を同定した。最終生成物をヘマトキシリンでDAB対比染色して視覚化した。アミロイド斑負荷は、ライカ顕微鏡およびHitachi KP−M1U CCDビデオカメラを適合したLecoIA−3001画像解析ソフトウエアを用いて評価した。
【0083】
血漿Aβ含量および大脳Aβ含量−脳半球のサンプルを緩衝ショ糖溶液中でホモジナイズし、引き続き、可溶性Aβレベルのための0.4%ジエチルアミン/100mM NaClもしくは全Aβ単離のための冷ギ酸のいずれかを加える。中和後、上記サンプルを希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を用いて、Aβ40およびAβ42を分析した。各半球を、3重に分析し、その平均値±標準誤差を報告した。
【0084】
結果および有意性−逆転研究に参加した全ての動物は、生存し、苦痛または毒性の表面的な徴候は示さなかった。TgCRND8マウスの認知機能について、3日間の試験実例を用いたモリス水迷路の空間参照記憶バージョンを用いて評価した(図4〜8)。処置および未処置TgCRND8マウスからのデータならびに処置および未処置非Tg同腹子からのデータ(全ての組合せでn=10)を、処置(未処置、myo−イノシトール,epi−イノシトールまたはscyllo−イノシトール)および遺伝子型(TgCRND8マウス 対 非Tg)を「被験体間」の要因として、分散分析(ANOVA)の混合モデルを用いて解析した。この実例で、TgCRND8マウスは、野生型と比較して、有意に障害があった(図4)。対照的に、scyllo−イノシトール処置TgCRND8マウスは、全ての日において、非Tg同腹子と識別不能であった(p=0.38;図5)。処置された非Tg同腹子と比較する場合、epi−イノシトール処置TgCRND8マウスは、殆ど有意に差があった(p=0.07;図6)。同様に、myo−イノシトール処置TgCRND8マウスは、処置非Tg同腹子と有意に差があった(p=0.05;図7)。モリス水迷路試験の学習相を処置群間で比較すると、全てのマウスが、同じように行動した(図8)。対照的に、scyllo−イノシトールのみが非Tg同腹子と識別不能であった(図8)。従って、scyllo−イノシトールは、実際に、上記scyllo−イノシトール処置TgCRND8マウスが、正常マウスと識別できない程度に認知欠損を逆転した。この改善された機能は、epi−イノシトール処置およびscyllo−イノシトール処置が非Tgマウスの機能に何の効果もなかったので、行動、運動性または知覚系に対する非特異的な効果に起因するものではなかった。上記改善された機能はまた、体重、活動度および毛皮状態が、処置および未処置コホート間で差がなかったので、栄養学的またはカロリー的な効果に起因するものでもなかった。
【0085】
上記改善された認知機能が、減少した斑負荷およびAβ負荷と関連するかどうかを決定するために、脳組織を剖検した。認知の変化は、斑負荷およびAβ負荷の対応する変化が付随して起こった(図9および表2)。myo−イノシトール処置は、斑負荷またはAβ負荷に影響を及ぼさなかった(図9および表2)。epi−イノシトール処置TgCRND8マウスにおいて、未処置TgCRND8マウスと比較して、平均斑サイズの有意な減少はなかった(図9)が、Aβ負荷は、有意に減少した(表2)。これらの結果は、中程度のAβレベルで、epi−イノシトールが、Aβオリゴマー化を予防するが、より高いAβ濃度では、epi−イノシトールは原線維形成を完全に阻害することはできないということを示唆している。scyllo−イノシトール処置は、斑負荷とAβ負荷を有意に減少させた。これらの結果は、どの尺度でも、scyllo−イノシトール処置後は、斑負荷およびAβ負荷が、減少することを示している。これらの結果は、6ヶ月の予防研究に対して、効果の大きさで匹敵し得るし、そしてscyllo−イノシトールの潜在力をさらに支持している。
【0086】
イノシトール処置後に検出された減少したAβ濃度が、血漿へのAβの流出変化から生じているかもしれないので、本発明者らは、血漿中のAβレベルを調べた(表2)。TgCRND8マウスは、6ヶ月齢で、高い血漿Aβ濃度を有する。myo−イノシトール処置,epi−イノシトール処置またはscyllo−イノシトール処置のいずれもが、未処置TgCRND8マウスと比較して、血漿Aβレベルに影響を及ぼさない(p=0.89)。この観察に最も倹約的な説明は、上記イノシトールがCNS中でのAβの原線維化を選択的に変化させたが、βセクレターゼ活性にもγセクレターゼ活性にもAβの血漿中へのクリアランスの正常なメカニズムにも影響を与えなかったことである。それにもかかわらず、この観察は、2つの理由で重要である。第一に、血漿のAβレベルおよびCSFのAβレベルの低下は、未処置AD患者の臨床コースが進行するにつれて、通常検出される。第二に、強い抗体応答および明白な臨床応答を生じたAN1792免疫研究における患者は、血漿Aβ−βレベルを変化させなかった。従って、これらの結果は、効果的な治療結果を得るために血漿Aβレベルを変化させる必要が無いことを示している。
【0087】
まとめて考えると、これらのデータは、選択されたscyllo−イノシトールが、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、これらのマウスの明らかな認知低下およびアミロイド性神経病理状態の発症に先立つ「後期前症候」相の間に投与された場合、Aβの大脳蓄積、大脳アミロイド斑の沈着および認知低下を抑止し得ることを明らかにしている。さらに、scyllo−イノシトールが、認知欠損およびアミロイド斑神経病理状態の発症後に投与された場合でさえ、これらの化合物は、アミロイド沈着、神経病理および認知欠損を効果的に逆転し得る。従って、これらの結果は、ADと既に診断された患者において、存在する疾患の予防および処置の両方で効果的であることを示している。
【0088】
【表2】

(実施例8.scyllo−イノシトールによる2ヶ月間の処置研究)
疾患の処置についてscyllo−イノシトールのより長い有効性範囲を測定するために、5ヶ月齢のTgCRND8マウスにscyllo−イノシトールを2ヶ月に亘って給餌するか、または未処置で飼育した(n=10/群)。scyllo−イノシトールで処置された7ヶ月齢のTgCRND8マウスの認知機能は、モリスの水迷路の3日間の実例で、未処置TgCRND8マウスおよび処置非Tg同腹子と比較した。行動データは、被験体変数間として薬物および遺伝子型を、ならびに被験体変数内として訓練セッションを要因分散分析(ANOVA)の混合モデルを用いて、解析した。scyllo−イノシトールの1ヶ月処置で観察されるように(図12A)、scyllo−イノシトールで2ヶ月間処置されたTgCRND8マウスは、scyllo−イノシトール処置した非Tg同腹子と識別不能であった(図12B)。上記改善された認知と病理状態を相関付けるために、脳内においてAβ40レベルおよびAβ42レベルを分析した(表3)。不溶性Aβ40および不溶性Aβ42レベル両方とも、scyllo−イノシトール処置後、20%減少した。これらの結果は、scyllo−イノシトール効果が疾患の進行中持続していることを実証した。
【0089】
【表3】

(実施例9.病態TgCRND8マウスにおける病理学的結果に及ぼす用量の効果)
5ヶ月齢のTgCRND8マウスを水に入れたscyllo−イノシトールを毎日1回、10mg/Kg、30mg/Kg、100mg/Kgまたは未処置の用量で強制飼養した。動物を、処置1ヵ月後で屠殺し、病理学的結果のために分析した。全てのコホートの脳内のAβのレベルの分析は、全ての薬剤用量が、未処置TgCRND8マウスに比較して、可溶性Aβ42を低下させるのに同じ程度で、効果的であった(20%減少、F3,15=3.1、p=0.07;図13A)ことを示している。個別の用量の分析は、10mg/Kgおよび30mg/Kg用量は、未処置コントロールと有意に差がある(それぞれp=0.03およびp=0.02)ことを示している。それぞれ選択された用量のいずれも相互に有意差はなかった(F2,11=0.6、p=0.57;図13A)。強制飼養用量は、不溶性Aβ42(F3,15=0.69、P=0.58;図13B)または可溶性および不溶性のAβ40に有意な効果を与えなかった(それぞれ、F3,15=0.04、p=0,99およびF3,15=0.36、p=0.79;図14Aおよび14B)。
【0090】
(実施例10.病態TgCRND8マウスの処置のためのallo−イノシトールの有効性)
allo−イノシトールがさらなる進行を防止するのかそして/または十分に確立されたAD様表現型を部分的に逆転し得るのかを評価するために、TgCRND8マウスの処置の開始を5ヶ月齢まで遅らせた。TgCRND8および非トランスジェニック同腹子をallo−イノシトールで28日間、処置を行いまたは未処置で続けた。これらの実験では、化合物の用量および経口投与ならびに行動アッセイや神経化学的アッセイは上記処置実験で用いられた方法と同じである。
【0091】
6ヶ月齢のallo−イノシトール処置TgCRND8マウスのコホートは、未処置TgCRND8マウスより有意に機能した(F1,13=0.45、p=0.05;データは示されない)。6ヶ月齢のallo−イノシトール処置TgCRND8マウスの認知機能は、非トランスジェニック同腹子と有意に差がある(F1,13=5.9、p=0.05;図15)。イノシトール処置の有利な効果は、イノシトール処置が非Tgマウスの認知機能に対する効果がなかったことから、行動、運動または知覚系に対する非特異的効果に起因するものではない(F1,12=0.98、p=0.49)。大脳Aβレベルは、改善された行動がAβの変化と相関があるか否かを測定するために、処置したものと未処置TgCRND8マウスとを対比して分析した(表4)。allo−イノシトール処置は、可溶性Aβ42を減少させ(20%減少、p<0.05)、scyllo−イノシトールで観察されたと類似の効果であった。allo−イノシトールは、不溶性Aβ42または不溶性Aβ40を有意に変えなかった(可溶性プールおよび不溶性プール)。Aβ42の減少の可能な説明は、血漿中のAβ42の増加に繋がる末梢でのAβ42のクリアランスである。allo−イノシトール処置後の血漿中のAβ42のレベルは、未処置TgCRND8血漿と識別不能であった(表5)。他のイノシトール立体異性体と一致して、これらの結果は、血漿中のAβレベルは、allo−イノシトール処置により影響を受けないことを示した。
【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

(実施例11.イノシトール処置は、血液化学に影響しない)
イノシトール処置の血液化学および器官機能に対する如何なる有害な効果を除外するために、scyllo−イノシトールおよびallo−イノシトールの両処置の1ヶ月後に、血液を分析した(表5、6)。全タンパク質、アルブミン、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、ブドウ糖、尿素およびクレアチニンは、処置群間に有意差はなく、また未処置TgCRND8マウスとも有意差はなかった。全てのレベルは、非トランスジェニック野生型マウスで測定される正常範囲内に入った。さらに、溶血、黄疸および脂血症は全て正常であった。これらの結果は、allo−イノシトールoyobiscyllo−イノシトールは、血液化学または器官の機能に明らかな有害な効果を示さないということを示唆している。
【0094】
【表6】

(実施例12.アルツハイマー病2重トランスジェニックマウスモデル、PS1×APPにおけるAD様病理を予防するscyllo−イノシトールの有効性)
TgPS1×APPマウスは、インド型変異およびスエーデン型変異をコードしているヒトAPPトランスジーンと関連して、二つの家族性変異(M146LおよびL286V)をコードしているPS1トランスジーンを発現するアルツハイマー病の機能強化モデルである。これらの動物は、30〜45日齢までに、大脳Aβレベルおよびアミロイド沈着の強力な発現を進展させる。予防試験において、TgPS1×APPマウスを、scyllo−イノシトールを離乳後から処置し、2ヶ月齢で神経病理に対する効果を評価した(図16および17)。未処置TgPS1×APPマウスと比較して、scyllo−イノシトール処置したTgPS1×APPマウスは、2ヶ月齢で斑負荷の全ての指標で有意な減少を示した(斑の被覆脳面積%=0.157±0.007 対 0.065±0.016、p<0.001;平均斑サイズ=177±8μm 対 149±5μm、p<0.05;斑計数3054±324 対 1514±510、p<0.01;(図17)。これらの結果は、scyllo−イノシトールが、アルツハイマー病の二つの強力なモデルでアミロイド沈着を予防することを示した。
【0095】
(実施例13.TgCRND8マウスにおける増加したカロリー摂取の効果)
増加したカロリー摂取の効果の寄与または非特異的な効果を除外するために、TgCRND8マウスを類似した分子量の単糖、マンニトールで処置した。6ヶ月齢で、マンニトール処置TgCRND8マウスは、未処置TgCRND8マウスと識別不能であり(図11A)そしてマンニトール処置非Tg同腹子とは有意に差が有った(図11B)。マンニトールは、非Tgマウスの行動に効果はなかった、何故ならマンニトール処置非Tgマウスは、未処置非Tgマウスと識別不能であったからである。これらの結果は、マンニトールがTgCRND8マウスの斑負荷を変化させなかったことを示した病理学的研究と相関する(図11C)。生存率の同時調査は、マンニトールは、TgCRND8マウスの生存率に効果がなかったことを示している(図11D)。
【0096】
本発明を、その特定の実施形態に関連して記載してきたが、多くの他のバリエーションおよび改変および他の用途は、当業者に明らかである。従って、本発明は、本明細書の特定の開示に限られず、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−105733(P2011−105733A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294145(P2010−294145)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2006−501433(P2006−501433)の分割
【原出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(505321031)
【Fターム(参考)】