説明

タンパク質及びペプチドを結合するための特定の溶媒、及び、それを用いた分離方法

固体担体材料、その表面が水素原子が置換されていてもよいピリジル環を有する第1の残基と、カルボキシ基を有する第2の残基とを備えた吸着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物分子の分離技術に関し、特に、生物クロマトグラフィーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
従来、生体分子のためのクロマトグラフィ媒体は、試料との相互作用を可能とする下記の手段のうち1以上によって分類されている:
−疎水性相互作用(<<逆相>>)
−親水性相互作用(<<順相>>)
−陽イオン交換
−陰イオン交換
−サイズ排除
−金属イオンキレート
【0003】
従来、技術的な発酵工程の滴定(力価)における絶え間ない改良が、簡単で、経済的で、選択性の高い、同じ要因による液体の要求量を大きくさせることなく大きなタンパク質の容量を取り扱うことが可能な後段での精製技術に対する要求の増加につながる。それゆえ、与えられた分離問題に対する上記クロマトグラフィ分野の従来の段階的な適用は、操作時間及び商品コストは言うまでもなく、最終的に深刻に見積もられる各段階での製品ロスにおいて、一歩一歩、確実に製品精製の改良に反映される。このような引き続く一連の連続的なクロマトグラフィ工程の削減は、何度も示され得るため、後段の工程に、各段階での親和性クロマトグイラフィを導入することは、この要求に対する回答となり得る。親和性クロマトグラフィは、化学的観点から、上記と同じ相互作用の態様に基づくものであり、通常は2以上の態様の結合に基づくものであるが、親和性クロマトグラフィは、その独自の種類としてみなされる場合がある。親和性クロマトグラフィの主な特徴は、通常、抗原−抗体、炭水化物−レクチン、ホルモン−受容体、または、相補的な核酸ストランドといった公知の予め決定された分析物に対する高い特異性である。従って、最も親和性のある溶媒は、特定の分離作業に従ったエンドユーザーによって作製されて使用される。十分に機能的な溶媒を生産するためには、商業的に利用可能な担体材料へのほんのわずかな生物学的結合技術のみを選択することによって、生物学的な親和性残基が、直接、または、残基の一定運動動作及び回転動作におけるより高い自由度を許容する任意の鎖を介してつながれる。そのような溶媒の有効期間は、通常、短いのみであり、要求に応じて調製されることが多い。
【0004】
加えて、短い直線状または環状の合成ペプチドまたはペプチド模倣物といった合成親和性リガンド(配位子)だけでなく、反応性染料(主としてトリアジン染料)が、群として特異的に生体分子に作用することが見出されている。後者は、安価であり、また、生体高分子の3次元構造における不安定性や可変性という欠点がない、調製し易い低分子量の残基である。さらに、これらの小さな分子サイズ、及び、調整可能で強力な反応性によって、これらは、長くつなぎ合わされることなく固体の担体に直接位置づけられて十分に固定されることができ、その一方、生体高分子は、折り畳まれていないこと、立体障害、または、無秩序の配位によって、同じ条件下において固定化後の反応性が欠如することが多い。いずれの場合においても、認識過程において活発に進化された溶媒の成分は、通常、担体固体の表面(多くは表面に接着された単層として)に存在しているだけである。
【0005】
均質な固体担体材料の他に、架橋されたポリマーの薄いフィルムで表面が被覆されたバルク固体担体材料の一般的な枠組みに従って、2層化された断面形態から構成されている溶媒が、従来技術から良く知られている。重(放射性)架橋されたポリブタジエン、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ(メタ)アクリル酸、及び、ポリアミドが、過去に主として使用されていた。これらは、固体担体材料の下に存在する部分(「キャリア」)との不要な相互作用から媒体の周囲を保護する密な境界を形成する目的で、主として使用されている。そのような相互作用によって、溶媒に対して生体分子が非特異的でさらに不可逆に接着し得ることとなるが、その一方、固体担体材料の成分や残基に対する化学結合は、試料や溶出液のいずれかの侵襲的な成分によって腐食されることとなるおそれがある。
ポリマーで被覆された吸着剤は、上述された全てのクロマトグラフィの分野、特に、疎水性相互作用及びサイズ排除に適用されることが、基本的には知られている。また、内部的に架橋されず、キャリア材料に直鎖や分岐鎖としてグラフト化されたポリマー被覆も知られており、これらは、テンタクル樹脂と呼ばれている。
【0006】
これに対し、親和性クロマトグラフィは、大抵、バルクのゲル相樹脂を伴って実行される。優れたゲル形成材料は、媒体架橋されたポリサッカライド、ポリアクリルアミド及びポリ(エチレンオキサイド)である。そのようなハイドロゲルは、反応性や変性が無いと共に、柔らかさ(構造的な柔軟性、弾性係数)、大きな孔体系、高い極性及び高い含水量によって、活性残基と、これらと相互作用する生物学的分析物との両方を十分に収容し得る生体適合性のある境界を確保する。これらは、タンパク質を自然な状態で保持することができる、すなわち、正確に折り畳まれ、3次元構造、結合状態、機能的な完全性を維持する。これは、大部分が、強く吸着している疎水性の(<<硬い>>)媒体からタンパク質やペプチドを溶出するように、しばしば要求されている有機溶媒が避けられ得る、という事実の結果である。担体の固有の吸着強度の不足は、ハイドロゲル内に十分に収容された分離標的に対する接着相手としての高度に特異的な、未変化の生物学的配位子によって補償される。しかし、これらは、適用される圧力下で圧縮可能であり、撹拌、カラム充填や高い液流量によるせん断応力に耐えられないため、これらの媒体の機械的な抵抗は、無機担体材料よりも遥かに弱い。従って、強力なHPLC工程の条件に十分に適合する親和性吸着剤は、ほとんどない。
【0007】
近年になって、固定相の機械的抵抗が吸着剤担体のバルク特性であることが認識されてきたが、固定相と移動相との間の境界で薄い層のみが、質量交換に対して、及び、生物学的な分析物との相互作用に対して反応しているに過ぎない。従って、機械的に非常に硬く、寸法的に安定であるポーラスな3次元の核、及び、分析物の結合のための活性配位子を運ぶ、生物学的適合性を有するゲル様の境界層の機能と、関連した合成的な問題とを結合させる概念が持ち出され、その合成に関する問題は、技術的に解決されている。そのような複合材料は、無機酸化物、または、低い極性の密に架橋されたポリマーのいずれかに基づいて、高い極性の緩く架橋されたポリマーを用いる。
【0008】
方法論的に、これらは、核材料に高い極性のポリマーを適用すること、または、極性モノマー、その前駆体またはプレポリマーを核材料及び架橋剤の存在下で直接重合することによって、調製され得る。後者の方法によって調製される主な材料は、孔が貫通していない、または、孔が充填されている形態のいずれかを有することが文献によって示されている孔が貫通していないフィルムでは、分析物との相互作用が適用され得る表面が制限されることとなるが、これにより、ポリマーフィルム、孔が充填されているフィルムの厚みに依存している接着特性の低さが、分析物との相互作用における核材料の内部の孔容量を満たすという利点を有し、このことは、通常、優れた接着特性を示すが、孔の内部での遅い拡散物質移動率及び移動相の動態を変化させる。ポリマーフィルムは、被覆しているが、完全には埋めていないため、核材料の内部表面は、この点で利益がある。この吸着剤の全種類のうち、最も良く知られた代表は、分岐され、任意にさらに架橋された、ポーラスなケイ素担体核材料にグラフト化されたポリエチレンイミンである。そのような吸着剤が、さらに誘導化され得ることが示されているが、それらは、イオン交換、及び、小さな標準的な配位子のみを必要とする群特異性のある親和性の応用のためにのみ、商品化されている。
【0009】
合成親和性媒体の製造に対する概念的に異なる取り組みは、<<分子インプリンティング>>法と呼ばれており、この方法は、標的物質と、重合反応の間に形成されるポリマーの空洞との間における形状及び官能基の相補性に基づく方法であり、上記重合反応は、その後除去されるべき標的物質及びポロゲン(細孔形成試薬)の存在下で実行される。しかし、それは、固体担体材料として高度に架橋された少ない種類のポリマーの形成に制限され、さらに、一旦生産規模に達すると、広く受け入れられることが見出されておらず、特に、規則的な物体の制御下にある薬剤学的なタンパク質やペプチドのためのものであることが見出されていない。
【0010】
免疫グロブリンG(IgG)として最も広く使用される親和性媒体は、担体に接着されたタンパク質AまたはGであり、これら両方とも、タンパク質Lと同様に、ブドウ球菌の細胞壁上で自然に生成されるが、大きな規模の応用には、いずれも比較的高い資本投資を必要とし、これは、基本的には使い捨てとしての使用を妨げる。タンパク質Aは、抗体における一定のFc部分に特定の抗原決定基(エピトーブ)が接着することが知られている。
従って、それは、組み換え抗体の断片またはこの領域を欠いている融合生成物の精製での使用に限定される。一方、タンパク質誘導吸着剤の繰り返しの使用は、タンパク質の2次元/3次元構造の不利点、及び/または、厳しい製造条件に対する化学結合の不安定性に関連する。これゆえに削減された寿命に加えて、精製された生成物がインビボでの薬剤学的な使用のためであるとき、微量の漏出したタンパク質Aは、人体に免疫学的な損傷を引き起こすおそれすらあるため、吸着剤の薬剤学的な製品への適用に関して議論が続いている。このように、規制された製品のための承認登録及び予想される市場の権限は、技術的な精製工程のための決定に重要な他の要因であり、従って、タンパク質Aのクロマトグラフィがろ過された毒物を除去するために、追加のクロマトグラフィが行われる。
【0011】
改良され技術的な特定を有するこれらのタンパク質の、操作された変異体を作製する目的に加えて、結果として、非常に短い(不自然な)ペプチド断片か、すでに十分に合成された配位子のいずれかを有する少しの吸着剤も製造された。商業的に利用可能であり、タンパク質A/G/Lのいずれかとして有用な合成媒体は、近年では、2007年1月に発行されたJournal of Chromatography Bの848巻に概説されている。
【0012】
背景技術
ピリジル環の有用性は、式I及び式IIのプロトタイプの構造のために生物クロマトグラフィ吸着剤として典型的に調査されたカルボキシ基及びその、プロトン化−脱プロトン化の平衡を通した、イオン化し得る形態と同様、それらが組み合わされた使用の利益を主張することなく、より早くに認識されていた。しかし、カルボキシ基を有する残基の例は、弱カチオン交換剤の文脈の内で科学文献や特許文献において、ピリジル環を有する残基よりも頻繁に見つかっている。カルボキシ基を吸着剤に導入する明らかな方法は、追加のリンカー成分を用いて、または、これを用いないで、アスパルギン酸、グルタミン酸、またはこれらの保護された型である天然アミノ酸とのアミド結合カップリングによる。両アミノ酸を用いて、固体層の合成技術による担体へのカップリングのための2つの選択が実行可能であり:アミノ基でのアンミド形成を通したカップリングによって、2つの解離可能なカルボキシ基を依然として含有している構造となるか、または、2つのカルボキシ基のいずれかでのアミド形成を通したカップリングによって、1つの解離可能なカルボキシ基と同様、プロトン化可能なアミノ基を含有している構造となる。これら全ての異なる可能性は、既に、実験的に認識されている。以下、先行技術のうち3つの代表的なものが示される。
【0013】
国際特許出願WO00/69872(プロメガ社)には、pH依存性のイオン交換マトリックスが、そのようなマトリックスを作製する方法、プラスミドのDNA、染色体のDNA、または、タンパク質、脂質、細胞残屑または他の核酸のRNAを含む混入物からのRNAといった標的核酸を単離するためにそのようなマトリックスを使用するための方法と共に、提供される。その発明における各pH依存性イオン交換マトリックスは、少なくとも2つの異なるイオン交換官能基を有しており、該イオン交換官能基の1つは、第1のpHでアニオン交換剤として作用可能であり、他方は、第2の、より高いpHでカチオン交換剤として作用し得る。そのマトリックスは、上記第1及び第2のpH間のpH領域において、全体で電荷が中和されている。その発明のpH依存性イオン交換マトリックスは、マトリックスの全体の電荷が陽性であるようなpHで標的核酸に接着するように、設計されている。
【0014】
国際特許出願WO98/08603(アップフロントクロマトグラフィ A/S)は、例えばハイブリドーマの細胞培養上澄液、動物の血しょうや血清、または初乳等の免疫グロブリンを含有する溶液からの免疫グロブリンの単離または精製のための方法に関する。
その方法は、接着工程における離液性塩といった塩の最小限の使用、及び、好ましくは、溶出工程における有機溶媒の少量の使用をも含む。
固体相マトリックス、好ましくは、エピクロロヒドリンで活性化されたアガロースマトリックスは、単環、または二環式芳香族やヘテロ芳香族配位子(分子量:最大で500Da)と共に官能化されており、この配位子は、例えば、カルボキシ基である。
【0015】
ドイツ特許出願DE 1200801224(ランクセスドイツGmbH)は、少なくとも1つのモノビニル芳香化合物、少なくとも1つのポリビニル芳香化合物、及び/または、(メタ)アクロイル化合物に基づく、単分散、ゲル−形態、または、マクロポーラスのピコリルアミン樹脂に関連しており、これらは、官能基として、任意に置換されたピコリルラジカルを含有しても良い構造内に第3級窒素原子を有しており、また、それらの調製方法及びそれらの使用、特に湿式精錬及び電気精錬における使用に関連する。
【0016】
我々が知る限り、これらだけでなく、さらには特許文献や科学文献からの先行技術の一部においても、本発明の吸着剤が、調製される試みは、今までにまされておらず、かかる発明は、同じ残基か異なる残基の内に含有されているかどうかによらず、ピリジル環やカルボキシ基を含有する残基のプロトタイプとしてそれぞれ、イソニコチンアミド及びコハク酸モノアミドの組み合わせを含んでいる。
担体が不完全に誘導体化されている場合には、担体の残基の接近可能な置換基(または対応する末端封止誘導体)は、例えばピリジン環構造に対するさらに2次的な残基として可能な役割を果たすことが考慮されるべきである。
しかし、これらの官能基は、通常、化学的に単純な成分であり、これにより、2次的な残基としてのみ考慮されるべきである。
各単一の残基のうちの1つを示す残基が一度に検討された刊行物においては、同じ吸着剤内で2つの残基が組み合わされて使用されたことによる利点に関する示唆は、与えられていなかった。
さらに、いずれかの形態の残基を有する吸着剤は、ほんのわずかな吸着剤が、2層化された混成物の担体材料から形成されただけであった。
その代わり、残基は、バルクのキャリア担体に、直接または低分子量の接着成分を通して、大部分は固定化された。
発明の簡単な説明
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の1つの目的は、タンパク質及びペプチドのための新規な精製方法、及び、その方法を実施するための吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、固体担体材料を備えた吸着剤に向けられおり、該固体担体材料の表面に少なくとも2つの異なる残基を備えており、該残基のうち第1の残基はピリジン環を備え、該ピリジン環の水素原子は置換されていてもよく、第2の残基はカルボキシ基を備えている。
少なくとも2つの残基は、任意に、前記表面を被覆するポリマーフィルムによって担持されている。
十分に合成される合成源であることに起因して、穏やかな生理学的条件下で望ましくない試料マトリックスからでさえ生体高分子の特異的な分離を許容するにもかかかわらず、前記吸着剤は、高い物理的(特に熱的)及び化学的な堅牢性によって特徴づけられる。
そのような吸着剤の調製方法も他に提供される。
【0019】
また、本発明は、タンパク質またはペプチドを含有する混合物からタンパク質またはペプチドを分離する方法、または、濃縮及び/または純度を増加させる方法を提供する。
該方法は、所望のタンパク質またはペプチドが吸着される本発明の吸着剤と前記混合物とを接触させること、続いて前記タンパク質またはペプチドを前記吸着剤から溶出させること、及び、任意に中間ですすぐ工程を備えている。
【0020】
また、前記吸着剤及び/または前記方法が有益に使用され得るような、分析的な、調製用の生化学的な、及び、医学的な応用も開示される。
前記方法で精製された抗体は、従来の生体親和性分離技術によって得られる場合と比較して、そのような技術の欠点を被ることなく、回収率、純度及び生物学的活性の百分率によって特徴づけられる。
【0021】
本発明のある特定の実施形態が、以下に開示され、それによって、それぞれの実施例の特徴づけられた特徴の組み合わせも想像されることができ、これも本発明の範囲内である。
一般的な側面によれば、本発明の吸着剤は、固体担体材料を備えており、その表面は、水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C5H4N)を備えた第1の残基と、カルボキシ基(−COOH)を備えた第2の残基と、互いに同じかまたは異なってもよい少なくとも2つの官能基とを備えており、該2つの官能基によって、第1及び第2の残基が担体材料に結合され、ここにおいて第1の残基及び第2の残基は、1つの同じ官能基によって担体材料の表面に結合されている。
【0022】
一の実施形態では、第1及び第2の残基は、互いに直接結合されているが、バルク固体担体自体か、またはキャリアとして該固体担体に支持されているポリマーフィルムのいずれかにそれぞれ接着されている。
本実施形態では、ピリジル環及びカルボキシ基は、1つの同じ官能基によって担体材料の表面に結合されていない。
【0023】
一の側面では、本発明は、固体担体材料を備えた吸着剤に関し、その表面は、水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を備えた第1の残基と、カルボキシ基(−COOH)を備えた第2の残基と、互いに同じかまたは異なってもよい少なくとも2つの官能基とを備えており、該2つの官能基によって、第1及び第2の残基が担体材料に結合され、ここにおいて第1の残基及び第2の残基は、1つの同じ官能基によって担体材料の表面に結合されている。
【0024】
一の実施形態では、前記吸着剤の固体担体材料は、キャリアを備えており、第1及び第2の官能基を備えたポリマーフィルムで被覆されており、これら官能基は、互いに同じか異なっていてもよく、これら官能基が、順に、前記第1及び第2の残基、及び、第3及び第3の残基を担持する。
【0025】
一の実施形態では、前記第1及び/または第2の残基は、リンカーを備えている。
【0026】
一の実施形態では、前記第1及び/または第2の残基は、共有結合的で、構造的に柔軟な、1〜20原子からの長さを有するリンカーを備えている。
【0027】
一の実施形態では、前記共有結合的で、構造的に柔軟なリンカーは、硫黄を含有していない。
【0028】
一の実施形態では、リンカーは、互いに独立して20〜300の炭素原子を有している。
この実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール成分から構成されるか、またはこれを備えている。
【0029】
一の実施形態では、さらなる置換基が、ピリジル環に結合されている。
【0030】
一の実施形態では、前記さらなる置換基は、アニオン交換性(すなわち、陽性に荷電された)基を備えていない。
【0031】
一の実施形態では、前記第1の残基は、ピリジン−4−カルボキシアミド残基(イソニコチンアミド残基)であり、これによって、前記残基は、好ましくはこれらのアミド基を介して固体担体材料の表面に結合されている。
【0032】
一の実施形態では、前記第2の残基は、3−カルボキシアミドプロピオン酸残基(コハク酸ものアミド残基)であり、これによって、前記残基は、好ましくは、これらのアミノ残基を介して固体担体の表面に結合されている。
【0033】
一の実施形態では、前記第1の残基は、ピリジン−4−カルボキシアミド(イソニコチン酸アミド)残基であり、且つ、前記第2の残基は、3カルボキシアミドプロピオン酸(コハク酸モノアミド)であり、これによって、前記残基は、好ましくはこれらのアミド残基を介して固体担体の表面に結合されている。
【0034】
一の実施形態では、ピリジン−4−カルボキシアミド残基及び/または3−カルボキシアミドプロピオン酸残基(「残基核」)の1またはそれ以上の水素原子が置換基によって置換されている。
【0035】
一の実施形態では、前記置換基は、疎水性基を備えていない。
【0036】
一の実施形態では、前記第1及び第2の残基は、1:1〜2:1のモル比、好ましくは約3:2の比で存在している。
【0037】
一の実施形態では、前記第1の残基は、前記第2の残基を備えている。
【0038】
一の実施形態では、前記第3の残基は、アミンまたはアミド構造、好ましくは主としてアミン構造を備えている。
【0039】
一の実施形態では、前記第1の残基は、吸着剤の表面に存在している全ての残基の全モル量に対して、25%及び50%の間のモル百分率で存在している。
【0040】
一の実施形態では、前記第2の残基は、吸着剤の表面に存在している全ての残基の全モル量に対して、20%及び40%の間のモル百分率で存在している。
【0041】
一の実施形態では、前記第1及び第2の残基は、吸着剤の表面に存在している全ての残基の全モル量に対して、第1の残基が25%及び50%の間、第2の残基が20%及び40%の間のモル百分率で存在している。
【0042】
一の実施形態では、前記第1、第2及び第3の残基は、モル比が約35:25:40で存在している。
【0043】
他の実施形態では、前記第1及び第2の残基は、吸着剤の表面に存在している全ての残基の全モル量に対して、第1の残基が40%から55%までの間、第2の残基が45%から60%までの間のモル百分率で存在している。
【0044】
一の実施形態では、全残基の全体の密度は、0.1モルdm-3から1.0モルdm-3になり、好ましくは、少なくとも約0.3モルdm-3となる。
【0045】
一の実施形態では、各形態の残基は、固体担体材料の表面に、均質に及び無秩序に(統計学的に)分布されている。
【0046】
一の実施形態では、固体担体材料は、キャリアから構成されており、このキャリアの表面は、前記第1及び第2の残基で、及び任意に前記第3及び第4の残基で少なくとも部分的に置換された官能基を有する、ポリマーフィルムで被覆されている。
【0047】
一の実施形態では、そのポリマー鎖は、架橋に利用可能な官能基の数量に対して、2%から20%までの程度まで、互いに疎水的に架橋されている。
【0048】
一の実施形態では、そのポリマー鎖は、架橋に利用可能な官能基の数量に対して、2%から20%までの程度まで、互いに疎水的に架橋されている。。
【0049】
一の実施形態では、前記ポリマーは、キャリア表面に疎水的にグラフト化されているが、互いに疎水的に架橋されていない個々の鎖から構成されている。
【0050】
一の実施形態では、そのポリマー鎖は、それらの末端官能基を介してキャリアの表面に疎水的にグラフト化されている。
【0051】
一の実施形態では、前記ポリマーのフィルムは、吸着剤の全重量の5から30%、好ましくは15から20%を占める。
【0052】
一の実施形態では、前記ポリマーは、水性のまたは水性−有機溶媒性の混合媒体中で膨潤し得る。
【0053】
一の実施形態では、前記ポリマーは、合成ポリマー凝集剤である。
【0054】
一の実施形態では、前記ポリマーのグラフト化接続及び/または前記残基の連結は、アミド、ウレタン、ウレアまたは第2級/第3級アミンから生成されている。
【0055】
一の実施形態では、前記ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、または、少なくともこれらのポリマーを有するコポリマーもしくはポリマーの混合物から選択される部分的に誘導化されたポリマーである。
【0056】
一の実施形態では、前記ポリマーは、ポリビニルアミンである。
【0057】
一の実施形態では、前記固体担体材料または少なくともキャリアは、10nmから400nmまでの孔径、1m2-1から1,000mm2-1までの比表面積、容量で30%から80%までの空隙率を有する多孔性材料である。
【0058】
一の実施形態では、前記固体担体材料が、5μmから500μmまでの粒子径を有する粒子材料である。
【0059】
一の実施形態では、前記固体担体材料は、膜といった、シート様または繊維様の材料である。
【0060】
一の実施形態では、前記キャリアが作製される材料は、ポリマーフィルムが作製される材料とは異なる。
【0061】
一の実施形態では、前記固体担体材料または少なくともキャリアは、一般的な、または、表面が改質された、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸若しくはポリスチレンスルホネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、シリカ、ガラス、でんぷん、セルロース、アガロース、セファロース、及びデキストラン、または、それらの組成物から構成される群から選択される材料から作製される。
【0062】
一の実施形態では、前記吸着剤は、追加して、光学的な吸収、光学的な発光、放射活性、磁性、または、質量若しくは無線周波数をコード化する標識といった、簡単に検知し得る標識を備えている。
【0063】
また、本発明は、吸着剤の調製方法に関し、この方法は、
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)キャリアの表面に前記ポリマーフィルムを吸着させること、
(iii)少なくとも1つの架橋剤を用いて吸着されたポリマーの官能基の所定の部分を架橋すること;
(iv)水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基、カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基、及び任意のさらなる残基を用いて架橋されたポリマーのさらに所定の部分を誘導化することを備える。
【0064】
また、本発明は、吸着剤の調製方法に関し、この方法は、
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基、カルボキシ基(−COOH)を有する単環のヘテロ芳香族構造を有する第2の残基、及び、任意のさらなる残基を用いて、前記官能基の所定の部分を誘導化すること;
(iii)キャリアの表面に前記誘導化されたポリマーフィルムを吸着させること;
(iv)少なくとも1つの架橋剤を用いて前記吸着されたポリマーの前記官能基のさらなる所定の部分を架橋することを備える。
【0065】
また、本発明は、吸着剤の調製方法に関し、この方法は、
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)キャリアの表面に前記ポリマーフィルムを吸着させること、
(iii)前記誘導化されたポリマーフィルムを前記キャリアの表面に吸着させること;
(iv)少なくとも1つの架橋剤を用いて前記吸着されたポリマーの前記置換基のさらなる所定の部分を架橋することを備える。
【0066】
また、本発明は、吸着剤の調製方法に関し、この方法は、
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基、カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基、及び、任意のさらなる残基を用いて前記官能基の所定の部分を誘導化すること;
(iii)キャリアの表面に前記誘導化されたポリマーフィルムを吸着させること;
(iv)前記吸着されたポリマーの前記置換基のさらなる所定の部分を前記キャリアにグラフト化することを備える。
【0067】
吸着剤の調製方法の一の実施形態では、前記ポリマーは、水性のまたは水性−有機溶媒性の混合媒体に溶解し得る。
【0068】
一の実施形態では、前記ポリマーの置換基は、−NH−、−NH2、−OH、−COOHまたは−COO−基である。
【0069】
一の実施形態では、前記ポリマーの分子量は、5,000ダルトン及び50,000ダルトンの間である。
【0070】
一の実施形態では、前記少なくとも1つの架橋剤は、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール及びビス−エポキシから構成される群から選択される。
【0071】
一の実施形態では、前記少なくとも1つの架橋剤は、直線状で、長さが1から20原子の空間的に柔軟な分子である。
【0072】
一の実施形態では、前記誘導化工程は、前記官能基と前記残基との間のアミド結合の形成によって実行される。
【0073】
一の実施形態では、前記誘導化工程は、各残基を用いて段階的に実行される。
【0074】
本発明は、前記タンパク質またはペプチドを含有する混合物からタンパク質またはペプチドを分離、または、これらの濃度及び/または純度を増加させる方法に関し、この方法は、
(i)本発明の吸着剤、または、本発明の方法によって調製された吸着剤に対して、前記タンパク質またはペプチドを前記吸着剤に結合されることが可能となるのに十分な間、第1の液体に溶解または懸濁されている前記混合物を接触させること;
(ii)任意に、第2の液体で前記吸着剤をすすぐこと;
(iii)前記タンパク質まはペプチドが前記吸着剤から放出されることが可能となるのに十分な間、第3の液体に対して前記結合したタンパク質またはペプチドを接触させること;
(iv)任意に、第4及び/または第5の液体を用いて、前記吸着剤を洗浄する、及び/または再生することを備える。
【0075】
タンパク質またはペプチドを分離、または、これらの濃度及び/または純度を増加させる方法の一の実施形態では、前記第1の液体、第2の液体及び第3の液体は、緩衝化された水性媒体であり、さらなる有機調整剤を含有していない。
【0076】
一の実施形態では、前記第2の液体は、前記第1の液体と同じである。
【0077】
一の実施形態では、前記第3の液体のpHは、結合されたタンパク質またはペプチドの等電点(pl)に接近している。
【0078】
一の実施形態では、第3の液体のpHは、第1の液体のpHと異なり、特にこれよりも高く、また、任意に第2のpHとは異なり、特にこれよりも高い。
【0079】
一の実施形態では、第1の液体のpHは、4.0から6.0までの範囲であり、第3の液体は、6.5から8.5までの範囲である。
【0080】
一の実施形態では、第3の液体のイオン強度は、第1の液体のイオン強度と異なり、特にこれよりも高く、任意に、第2の液体のイオン強度と異なり、特にこれよりも高い。
【0081】
一の実施形態では、前記方法は、膜ろ過技術、固相抽出技術として、または、高圧液体クロマトグラフィ技術への媒体として実行される。
【0082】
一の実施形態では、前記方法は、さらに、工程(iii)に続く、前記第3の液体から放出されたタンパク質またはペプチドを単離することを、さらに備える。
【0083】
一の実施形態では、工程(iii)で放出されたタンパク質またはペプチドは、溶出された吸着剤または他の吸着剤から溶出可能な物質を10ppm未満含有する。
【0084】
一の実施形態では、前記方法は、沈殿、遠心分離、乾燥、(精密/限外)ろ過、透析、イオン交換、または、ウイルス低減処理といったさらなる分離工程と組み合わされる。
【0085】
一の実施形態では、前記タンパク質またはペプチドは、4.5から8.5までの等電点plを有し、分子量が100から500,000Daまでである。
【0086】
一の実施形態では、前記タンパク質またはペプチドは、天然の抗体、特に免疫グロブリンG、抗体から誘導された断片またはオリゴマーの関連物、遺伝子組み換え抗体、または、抗体または抗体断片を含有する融合タンパク質である。
【0087】
一の実施形態では、前記タンパク質またはペプチドを含有している混合物は、微生物もしくは細胞培養から、または、作物抽出から得られた、細胞未精製の、または特に精製された生合成生産物である。
【0088】
また、本発明は、フリット、フィルター、板、フローディストリビュータ、シール、フィッティング、スクリュー、バルブまたは他の流体処理や連結要素といった、管状容器及び任意にさらなる容器内の固定相としての、本発明の吸着剤または本発明の方法で調製された吸着剤を有する液体クロマトグラフィまたは固相抽出のためのカラムに関する。
【0089】
一の実施形態は、前記カラムは、加圧力20barまでに対する、加熱110℃までに対する、及び、通常の衛生手順に対する物理的及び化学的抵抗性によって特徴付けられる。
【0090】
また、本発明は、本発明の同じかまたは異なる多数の吸着剤、本発明の方法で調製された多数の吸着剤の採集に関し、または、平行して実行されることが可能なマイクロプレートアレイやマイクロチップアレイ、マルチキャピラリー装置やマイクロ流体装置、のフォーマットにおける本発明のカラムに関する。
【0091】
また、本発明は、本発明の吸着剤、本発明の方法で調製された吸着剤、本発明のカラム、または、本発明の吸着剤の採集もしくはカラムに関し、及び、本発明のタンパク質またはペプチドの分離方法を実行するために必要な、同じ包装単位内の、さらなる化学的または生物学的試薬及び/または使い捨て品、または、これらと異なる、分析方法、診断方法または実験方法に関する。
【0092】
また、本発明は、少なくとも診断用、治療用、栄養用または化粧用の価値がある少なくとも1つのタンパク質またはペプチドを有する医薬用、栄養用や化粧用の組成物の製造における本発明の吸着剤または本発明の方法で調製された吸着剤の使用に関する。
【0093】
また、本発明は、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの除去における、及び、前記少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの存在によって引き起こされている人体または動物の病気の医学的な予防または治療における、本発明の吸着剤または本発明の方法で調製された吸着剤の使用に関する。
【0094】
また、本発明は、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの同定、特性評価、定量または研究室での精製における、本発明の吸着剤または本発明の方法で調製された吸着剤の使用に関する。
【0095】
また、本発明は、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの可逆的な固定化、及び、任意に前記タンパク質またはペプチドに対するさらなる化学的または生物学的な構造の結合のための試験のための、本発明の吸着剤または本発明の方法で調製された吸着剤の使用に関する。
【0096】
第1の側面によれば、本発明は、固体担体材料を備えた吸着剤に関し、その表面は、
−水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基と;
−カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基とを備え、
第1及び第2の残基は、互いに直接結合されていないが、バルクの固体担体自体か、またはキャリアとして該固体担体に支持されているポリマーフィルムのいずれかにそれぞれ接着されていることを特徴とする。
【0097】
第2の側面によれば、本発明は、固体担体材料を備えた吸着剤に関し、その表面は、
−同じかまたは異なっていてもよい第1及び第2の官能基と;
−水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基と;
−カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基とを備え、
前記第1の残基が前記第1の官能基に結合され、前記第2の残基が前記第2の官能基に結合されていることを特徴とする。
【0098】
第3の側面によれば、本発明は、固体担体材料を備えた吸着剤に関し、その表面は、
−同じかまたは異なっていてもよい第1及び第2の官能基と;
−水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基と;
−カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基とを備え、
前記第1の残基が前記第1の官能基に結合され、前記第2の残基が前記第2の官能基に結合され、いずれの前記官能基も、前記第1の残基及び前記第2の残基の両方には結合されていないことを特徴とする。
【0099】
第4の側面によれば、本発明は、固体担体材料を備えた吸着剤に関し、その表面は、
−同じかまたは異なっていてもよい第1及び第2の官能基と;
−水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基と;
−カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基とを備え、
前記第1の残基が前記第1の官能基に結合され、前記第2の残基が前記第2の官能基に結合され、前記第1の残基及び前記第2の残基は、互いに直接接続されていないことを特徴とする。
【0100】
一の実施形態では、前記第1の残基、前記第2の残基、または、前記第1及び第2の残基は、リンカーを介して前記第1及び第2の官能基に結合されている。
【0101】
一の実施形態では、5から95%まで、20から90%まで、40から70%まで、または50から60%までの前記第1及び第2の官能基が、前記第1及び第2の残基と結合されており、前記第1及び第2の残基は、1:1から2:1までのモル比で存在している。
【0102】
一の実施形態では、前記固体担体材料の表面は、前記第1及び第2の官能基を備えたポリマーフィルムで被覆されており、これら官能基が、順に、前記第1及び第2の残基、及び、任意に第3及び第4の残基を担持する。
【0103】
一の実施形態では、前記第1の残基の第1の部分と前記第2の官能基とが少なくとも架橋剤によって架橋され、前記第1の残基の第2の部分と前記第2の官能基とが、前記第1及び第2の残基及び任意にさらなる残基と結合される。
【0104】
この開示の目的のために、本発明の一般的な側面の吸着剤のために挙げられた全ての実施形態は、本発明の第1、第2、第3及び第4の側面による吸着剤と組み合わせられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1:1つの第1の及び1つの第2の残基を用いた2つの隣接した表面の官能基(FG)の誘導体から得られる個々の構成A〜H及び1つの一般的な代表例I。
【図2】図2:表面がポリマーフィルムで被覆されたキャリアから構成された固体担体材料の異なる模式的な形態A〜C(ここでは、灰色の球として図式化された多孔を有さない微粒子キャリアが例示され;縮尺通りに描かれていない)。
【図3】図3:水素原子が置換されているピリジル環を有する第1の残基の可能な置換パターンの選択。
【図4】図4:吸着剤の分析物と相互作用する表面を特徴付けるために使用される用語の象徴的な代表例(縮尺通りに描かれていない)。全ての図式化された項目は、本発明を実行するために必要ではない。
【図5】図5:前記図において規定された第1及び第2の残基を用いて部分的に誘導体化されたポリビニルアミンであるポリマーを有する本発明の吸着剤の象徴的な代表例であり、I、m及びnは、互いに独立して、それぞれが繰り返し単位を示している形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
本発明の基になる技術的な問題は、前述した欄に概説されたように、従前知られた方法の欠点の無い、新規なタンパク質及びペプチドの精製方法を提供することとして説明され得る。
このことは、前記方法は、試料マトリックスから単一の工程においてその機能的な完全性を妥協することなく、高い回収率で、標的とされたタンパク質またはペプチドを単離することを許容すべきであり、しかも、費用の高い材料を大きく回避しつつも、使用における装置の標準の清潔及び衛生規定に適合し得るのに十分な多様性を有しており、これにより、各規制当局によって前記方法が許可されることを確実にする、すなわち、医薬品質における経済的に実行可能な方法で標的とされたタンパク質またはペプチドを提供することを確実にする。
【0107】
この技術的問題は、今ここに、精製されるべきタンパク質またはペプチドの固液平衡分配工程において使用されるために新規な形態の吸着剤を提供することによって解決されることができ、主として残基を用いた特異的な2重の化学的誘導体化によって従来技術から知られた方法とは識別されることができ、前記誘導体化は、それらの副生成物から、特に種々の他のタンパク質またはペプチドから、標的とされたタンパク質またはペプチドを分離することの問題に適応され、その分離は、従来の親和性媒体と匹敵する選択性と感受性とを伴って、しかも、過酷な条件下で製造するための費用が高く及び/または品質が低下しているかもしれない繊細な生物学的材料を完全に欠いている組成物を有することなく行われ得る。
また、吸着剤の製造において使用される全ての材料の高い耐久性は、その吸着剤を使用するどの分離方法の長期間の再生可能性を確実にし、このことは、分析結果におけるドリフト効果がないことによって明らかとなり得る。
【0108】
上記で与えられた技術的問題の解決の手助けは、少なくとも2つの異なる材料を有する吸着剤の層化された部分であり、これら材料の1つは、両方の残基を担持し、固体基体としての役割を果たす第2の材料を被覆する合成または生合成ポリマーフィルムである。
この特定の集合は、一方ではポリマーフィルムの比較的高い重量内容物及び高い物理的安定性、しかし、かなり高い程度の鎖の柔軟性に特徴があり、これにより、高い溶媒及び試料の取り込み能力、及び、それらの拡散的な交換が得られる。
これにより、前記フィルムは、均質で、生体適合性があり、柔軟でゲル様の状態に維持される。
このことは、分析物であるタンパク質またはペプチドが部分的または全体の分子容量で、層に浸ることを許容し、その層は、それらが同時に供与されることを防止しながら、それを通してまたはその表面に沿うかのいずれかで結合または移動するために反応し得る、吸着剤の活性要素を含有してる。
これにより、それは、分析物のための準3次元相互作用空間の形成を確実にし、タンパク質またはペプチドの全ての表面を覆って分布された抗原決定基(エピトープ)と残基で改質されたゲル相との間での複数箇所の接触を許容する。
従って、試料成分も、ポリマーフィルムによって、下に存在する前記固体担体材料の構成物との望ましくない相互作用から遮蔽される。
【0109】
本発明の全範囲を評価し、それをより正確にすることを目的として、ここでの本発明の内容において使用される多数の用語の意味を、まず、次の段落で定義する。
全ての実施例は、説明的な目的でのみ与えられ、実施形態の排他的な例として意味されるものではないことが理解されるべきである。
当業者は、本発明の全趣旨から逸脱することなく本発明を実行する追加的及び類似の方法を、確かに理解するであろう。
模式的な代表である図6は、吸着剤組成物に関してここで使用される多数の異なる用語の間の相互関係を、再び表す。
【0110】
用語「吸着剤」は、試料の固液平衡分配過程における固定相としての使用のための合成または生合成材料を意味し、該吸着剤は、前記試料に含有されている1以上の与えられた標的タンパク質またはペプチドのための受容体としての選択的な非疎水性結合特性を示し、または、前記試料(すなわち、高い絶対的な結合定数及び高い結合定数差)に含有された異なる構成物である少なくとも2つの与えられた標的タンパク質またはペプチドの間での非疎水性結合特性を識別することが可能である。
従って、それは、分析用、調製用検知、分離、固定化、または(生物)化学的転換の任務を解決するために特別に設計され、それは、その組成が公知の、部分的に公知の、または非公知の少なくとも1つの標的タンパク質またはペプチドと、同様にその組成が公知、部分的に公知または非公知の試料マトリックスとの独特の組み合わせから、多くは構成されている。
【0111】
一般的な相とは反対に(この相は、全分析物分子にわたって基本的に平均化された累積パラメータによって分析物を区別し、該累積パラメータは、帯電、双極子モーメントや親油性といった全分析物分子等である)、そのような吸着剤は、集団の相補性の概念によって、少なくとも1つの標的のタンパク質またはペプチドの3次元の分子表面上における少なくとも1つのドメイン(エピトープ)に、少なくとも部分的に結合する。
従って、この新規な概念は、従来の意義における、2つの古典的な平均化された効果の組み合わせによる分離、従来の手段やいわゆる混合様式吸着剤の範囲を超える。
このようにして、本発明の吸着剤は、異なる副生成物の広いスペクトルを含有し得る環境からの高い親和性と個々のまたは集団の高い選択性とを伴って、単なる1つのタンパク質やペプチド、または、構造的に密接に関連するタンパク質またはペプチドに結合するように、分子レベルで設計される。
【0112】
“固体担体材料”としては、球状であるか不規則な形状であるかにかかわらず、当業者に公知な非多孔質または多孔質性の全ての媒体が、吸着剤を形成するために用いられることができ、かかる媒体としては、シリカのような鉱物酸化物、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、フロリシル、マグネタイト、ゼオライト、シリケート(セライト、珪藻土)、マイカ、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、金属−有機構造体、セラミックス及び制御された孔を有するガラス(CPG)のようなガラス、アルミニウム、シリコン、鉄、チタン、銅、銀、金といった金属、さらには、グラファイトまたはアモルファスカーボン、紙、ポリサッカライド、ポリアクリルアミド、アンバークロム(登録商標)のようなポリスチレン等といったものが挙げられる
好ましい固体担体材料は、ポリ(スチレン−co−ジビニルベンゼン)(特に、強いカチオン交換樹脂において使用されるような、バルクのまたはその表面が硫酸化されたポリ(スチレン−co−ジビニルベンゼン))、ポリアクリレート、ポリメタクレレート、ポリビニルアルコール、シリカ、ガラス、及び、デンプン、セルロース、セルロースエステル、アミロース、アガロース、セファロース、マンナン、キサンタン及びデキストランである。
不溶性の担体機能としての、最小限の堅牢で硬い固体基材の導入は、固体相と移動相との間の境界の拡大の基盤を提供し、この基盤は、特に流動及び/または圧力環境下における、前記相間の区分化の工程、及び、機械的強度及び摩損性の増加のための分子基盤としての、タンパク質またはペプチドとの相互作用の場所である。
本発明の固体担体材料は、均質または異質な組成物であってもよく、従って、上記した材料の1またはそれ以上の組成物、特に、多層の組成物である材料を取り込んでもよい。
この関係においては、磁性粒子が、特に挙げられる。
【0113】
これに関する重要な実施形態においては、固体担体材料の表面が、ポリマーフィルムで被覆されている
そのような任意のフィルムは、固体担体材料の一部分としてみなされ、それは、ここで開発され導入された全ての調製及び分離方法は、単一のバルクの固体担体材料の直接の表面上の官能基または残基に依存し、そのうえ、そのようなポリマーの被覆層の各官能基や残基と共に機能するからである。
さらに、バルクの固体担体材料に固有のメソまたはマクロポーラス分布は、被覆工程において維持されることが多い。
そのような結果的に得られる混成材料において、表面のポリマーフィルムは、本発明の目的のために、全ての下側の材料から識別されるべきであり、このような材料が、かいつまんで“キャリア”または他の用語として、独立して言及される場合には、前記混成材料は、キャリアとポリマーフィルムとを有している
しかし、実際には、そのような区別は、吸着剤の調製の履歴が知られている場合にのみ実行可能であることが多い。
吸着剤の堅牢な骨組みを提供する部分としてのキャリアは、固体の物理的状態に類似しており、固体担体材料として上記で挙げられた材料のいくつかから構成されることができ、この固体担体材料は、上部に表面ポリマーフィルムを有していないバルクの固体担体材料として、または、そのような表面ポリマーフィルムのためのキャリアとして、同様に本発明によって使用され得る。
従って、ポリマーの吸着のための安定性を除く上述されたような全ての特徴、選択及び限定は、両方の用語に同等に適用される。
従って、本発明の中核の実施形態は、固体担体材料が、第1及び第2、及び、任意に第3及び第4の残基で少なくとも部分的に置換されている官能基を有するポリマーフィルムで表面が被覆されているキャリアから構成されている吸着剤である。
【0114】
好ましくは、多孔質性の材料がキャリアとして使用される場合には、ポリマーフィルムは、通常、その外部の表面とその大部分のより大きな内部の表面との両方を均質に被覆している。
このようにして、残基による分析物の認識及び結合が生じるところの分離剤としての調製及び適用の間、“表面”は、吸着剤の全ての固体−液体相の境界を特徴付けており、(任意に加圧された)流体力学的な流動、対流、潅流、拡散、エレクトロマイグレーションまたはこれらの組み合わせによって、溶解したタンパク質またはペプチドの少なくとも1つに対して接近し得る。
適切な液体内で、柔らかい物質を有するキャリアと特に表面でのポリマーフィルムとが膨潤し得ることによって、これは、鮮明な境界ではなく、中間のゲル相の層を含み得る。
吸着剤の表面特性は、使用される材料のバルク特性とは異なり得る。
2つの異なる材料がキャリア及びポリマーフィルムとして用いられる場合、及び、非常に大きな特別な表面積になるような調製方法が用いられる場合に、このことは、特にあてはまる。
【0115】
“被覆”は、当業者に公知な被覆手段によって、技術的に達成されることができ、この被覆手段は、自発的吸着、気相析出、液体や気体やプラズマ相からの重合法、スピンコーティング、表面凝縮、ウェッチング、ソーキング、ディッピング、ブラッシング、スプレー、スタンピング、エバポレーション、電解や圧力の適用、及び、例えば液晶、ラングミュア−ブロジェットや交互積層のフィルム形成といった分子の自己組織化に基づく方法のように、自然の推進力によって生じるか、または、手動で実行される。
それゆえ、ポリマーフィルムは、多層として、または、互いの上にそれぞれの単層が段階的に連続した層として直接被覆される。
ポリマーに関する限り、単一のまたは複数点の“吸着”は、自発的か人為的に促進されるかにかかわらず、どの場合においても、固体の表面に物理的に接触するポリマー溶液から出発する被覆工程の第1(不完全な)段階として考えられる。
それは、少なくとも準安定な集合体を形成するために、固体表面と各単独のポリマーストランドとの間で、多層が吸着される場合には、垂直に付着した同じ及び異なる層の間に、少なくとも弱い引きつける物理的な(ファンデルワールス)力や、キャリア及び/またはポリマーに存在する相補的な官能化の場合には、比較的特別な、非共有結合的な化学的な力の存在を必要とする。
反対符号の電荷の間の静電気力は、この目的に対してよく使用され、これにより、キャリアの表面電荷は、そのゼータ電位によって与えられる。
初期の吸着は、後により大きな程度の2次または3次元の配列及び/または密度に変形し得る緩い不規則な態様で生じ得る。
これは、個々の表面位置での吸着及び分離操作の間における定常状態の平衡の結果としての、表面上のポリマーストランドの残基の移動性に起因し得、また、例えば、焼鈍によって促進され得る。
通常は、鎖の物理的なもつれによる基本的な立体の(エントロピーの)安定性に加えて、続く、最も近い官能基間の共有結合の結合の導入によって、吸着された集合体の安定性をさらに増加させることが必要である。
さらなる安定性の増加を達成するために、ポリマーフィルムの鎖が、下側のキャリア材料に対して、さらに共有結合的にグラフト化され得る。
【0116】
これにより、固体担体材料の外部の表面は、平坦であり(板、シート、箔、ディスク、スラヂド、フィルター、膜、織または不職布、紙)、または、湾曲している(凹状または凸状の、球、ビーズ、粒子、(凹んだ)繊維、チューブ、キャピラリ、バイアル、試料盤におけるウエル)である。
固体担体材料の内部表面の孔構造は、特に、規則的な連続した毛細管経路により、または、不規則な(フラクタルな)立体の空腔により構成されている。
微視的には、それは、製造方法に依存し、滑らかでも粗くてもよい。
空孔の体系は、さらに、全固体担体または(分岐した)空腔の末端を通して連続的に広がっている。
移動相における溶媒和と固定相の表面における保持との間での、タンパク質またはペプチドの界面平衡の比率、及び、これによる連続的な流動分離システムの効率は、主として、固体担体材料の空孔を通った拡散による物質移動によって、及び、これによる特徴的な粒子分布及び空孔サイズによって支配されている。
空孔のサイズは、任意に、非対称の、多モードの、及び/または、空間的に(例えば、断面的に)不均質な分布として示される。
全部の固体担体材料またはキャリアとして本発明に用いられる多孔質性の固体の、通常の空孔サイズは、10nmから40nmまでの範囲であり、これにより、メソポーラスまたはマクロポーラスとして分類されることができ;微粒子材料の通常の粒子サイズは、5μmから500μmまでの範囲である。
適切な固体は、体積で30%から80%までの範囲の許容し得る特性を有しており、通常の比表面積は、1m2-1から1,000m2-1の範囲である。
【0117】
別の、より新しく導入された固体担体材料は、いわゆる単一のクロマトグラフィ媒体であり、この媒体は、分離した微視的な粒子から形成された圧縮可能な従来のカラム充填とは異なり、望ましい(通常は棒状の)形状の単一の巨視的な存在として型成形される。
単一のカラムは、シリカや、例えばポリメタクリレートのようなポリマー材料から構成されることができ、その微細構造は、繊維状のキャピラリや焼結された粒子凝集体を含有することができる。
【0118】
用語“ポリマーのフィルム”または“ポリマーフィルム”は、少なくとも1層の、通常は数分子層または数十分子層間の、2次元、または、好ましくは3次元の合成または生合成ポリマーネットワークを意味する。
そのような(誘導化または誘導化されてない)ポリマーネットワークは、それ自体、当業者に知られた操作で調製され得る。
ポリマーのフィルムは、化学的に均質な組成物を有し、または、少なくとも2つの異なる種類の、不規則にもつれた態様または秩序立った態様(交互積層)で浸透しているポリマー鎖(例えば、ポリアクリル酸及びポリアミン)を有している。
用語“鎖”は、一般的に、ポリマーの最も長い連続した主要なストランド及び可能な分岐をいい、これに沿って官能基が結合される。
その用語は、吸着剤の調製の間に使用される、溶解された、吸着された、またはグラフト化されたポリマーの全ての骨格長さと、架橋されたポリマーの網の結び目の間に配された鎖セグメントとの両方を示すために用いられ、後者の場合には、個々のストランドの全ての長さは同定し難いからである。
【0119】
骨格または側鎖内に少なくとも1つの官能基を含有している“ポリマー”が好ましく、これは、それらが、均質または不均質な媒体中においてそのような官能基で残基を用いた容易な誘導化を許容するからである。
さらに、固体または溶解された状態でのポリマーの多くの特性、及び、それの、与えられた固体キャリアに対して自発的に吸着する及び永久的に付着する傾向は、それの官能基によって決定される。
ここでは、ポリマー凝集体が、特別に言及される。
また、交互の、統計的な、またはブロックの連続体であっても、官能的または非官能的なユニットを含有しているコポリマーは、この観点において適切である。
好ましい官能基は、第1級及び第2級アミノ基、ヒドロキシ基、及び、カルボン酸基またはエステル基である。
周囲の媒体の酸性/塩基性によって、アミノ基は、プロトン化されたアンモニウムイオンとして存在し、カルボキシ基は、脱プロトン化されたカルボン酸イオンとして存在する。
多孔質性または非多孔質性のバルクのポリマーが、固体担体材料のキャリアとしても用いられた場合には、その上に被覆されたポリマーのフィルムは、ここで記載されたように、異なる化学的な組成物を有し得る。
これらの違いは、下記に挙げられた官能基の存在、種類や密度から、より低い分子量から、または、架橋の程度がより低いことから生じ得る。
全てのこれらのパラメータは、増加された親油性、溶媒の膨潤性/拡散、及び生体適合性を増加させ、及び、被覆された表面への非特異的な吸着を減少させる。
【0120】
天然の及び合成されたポリマーの両方は、本発明の吸着剤において用いられ得る。
好ましくは、合成されたポリマーである。
好ましいポリマーフィルムは、アミノ基を含有している少なくとも1つのポリマーを有している。
特に好ましくは、ポリビニルアミンである。
他の適切なポリアミンは、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等を有している。
【0121】
他の適切なポリマーは、アミノ基を有しているポリマー以外の官能的なポリマーであり、そのようなポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、または、これらの前駆体ポリマーといったものであり、この前駆体ピリマーは、ポリ(マレイン酸無水物)、ポリアミド、または多糖類(セルロース、デキストラン、プルラン等)といったものである。
コポリマーが用いられる場合には、好ましいコポリマーは、単純なアルケンモノマー、または、ビニルピロリドンのような極性、不活性モノマーである。
使用されるポリマーの好ましい分子量は、限定されないが、5,000Daから50,000Daの範囲であり、この分子量は、特に、ポリビニルアミンに適切である。
上記範囲の下限に近い分子量を有するポリマーは、キャリアの狭い空孔を通過することを示すため、高い表面積を有し、良好な物質移動動態、分解及び結合性能を連続的に有する固体担体材料は、本発明の吸着剤において用いられ得る。
【0122】
第1及び第2の残基を用いて誘導化される前または後で、または、第1の残基を用いた誘導化工程と第2の残基を用いた誘導化工程との間で、ポリマーは、適切なキャリアの表面に薄い吸着層として吸着され、それから、架橋またはグラフト化され得る。
得られる複合材料のフィルム内容量は、残基を用いたそれの誘導化を含んで、吸着剤の全重量に対して、重量で約5%から30%まで、好ましくは約15%から20%までの範囲であり得る。
また、全て官能化された吸着剤のポリマー内容量の正確な値は、誘導化の程度、残基の分子量、及び、選択されたキャリアの所定の重量にも依存し得る。
これらの値は、より低いナノメートル範囲でのフィルムの厚みに対応している。
被覆されたポリマーは、依然として、膨潤または収縮する性能を保持することができ、これにより、実際のフィルムの厚みは、使用されている吸着剤の型式に強く依存し得る。
【0123】
ポリマーフィルムの架橋度は、架橋に利用される官能基の数に対して、それぞれ2%から20%までの範囲であり得る。
特に好ましくは、官能基の凝集による架橋であるが、ラジカル化学または光化学を含む、ポリマー化学において知られた他の全ての方法が、適用され得る。
しかし、架橋結合は、含まれるポリマーの官能基間で、架橋剤が添加されることなく、直接的に形成されることもできる。
互いに対して潜在的な反応性を示す少なくとも2つの異なる官能基を提供するところのコポリマーまたは混合されたポリマーが用いられる場合には、特に、このことが可能となり、上記2つの官能基は、例えば、活性化後に互いの間でアミド結合を形成し得るアミノ基及びカルボキシ基である。
好ましい架橋は、共有結合的なC−N結合、例えば、アミド、ウレタンまたは第2級/第3級アミノ結合の形成を含んでおり、また、活性化されたカルボン酸またはエポキシのいずれかをアミンを用いて反応させることによって形成され得る。
その他、架橋は、反対に帯電した官能基間または多荷電のカウンターイオン間等でのイオン対を利用している、非共有結合性の天然物から構成され得る。
【0124】
ここで用いられるように、“架橋度”は、架橋可能な官能基の全数量に対する、架橋反応で形成されている架橋の最大の数量として与えられる。
それにより、好ましくは、2官能性試薬が架橋のために使用される場合、架橋度は、架橋反応に供与された架橋剤の量と、(2つの官能基が1つの架橋の形成ごとに必要とされるような場合における)架橋可能なポリマー官能基の数量との間のモル比を反映しており、これによって、反応が、ここで試みられた比率で、ほとんど定量的に進行する。
原則的には、ストランド間及びストランド内の架橋の両方、及び、(部分的な架橋反応からの)非架橋性の末端化された側鎖が形成されることが可能である。
【0125】
反対に、“グラフト化”は、固体担体の表面に対する単一のポリマー鎖の共有結合性のアンカー、好ましくは、その上に官能基を用いて形成されたアンカーを意味する。
各ポリマーのストランドが、その鎖に沿って少なくとも1つの任意の位置でアンカー固定される場合には、それで十分であり得る。
フィルムの良好な安定性は、その表面に形成されたポリマーの輪が突出するように、複数の位置でグラフト化が成し遂げられ得る。
しかし、後者の方法は、ポリマー鎖の3次元の柔軟性を減少させる。
単一の位置での付着は、好ましくは、鎖末端を通して認識され、これにより、反対の末端での複数のまたは単一の官能基/残基が優先的に付着される鎖の引き延ばされた全長さが、表面から外側に向かって立つことができる。
グラフト化されたポリマーの実際の構造は、ランダムコイルであり得るが、表面上の高いグラフト密度の使用及び適切な吸着剤は、膨潤し、分散的な相互作用により近隣の鎖間で自己集合の現象に適応されることにつながることができ、上記相互作用は、架橋によってさらに安定化され得るポリマーブラシの形成といったものである。
好ましくは、グラフト化は、架橋反応と同様の緩和な縮合反応によって達成されるが、酸化法やラジカル誘発法といった、フリーラジカル、イオンまたはラジカルイオンを増殖させることを含む方法も、適用され得る。
選択された方法は、容易さ、種類及びキャリアの官能化度に依存し得る。
グラフト化は、原則的には2つの異なる技術によって達成され得る:第1の技術は、その場重合によって表面から平行なポリマー鎖を立設するために、表面に結合されたモノマーまたは開始剤を用いており、一方、第2の技術では、最初に、均質な媒体中で、すなわち、表面が存在しない状態で、ポリマー鎖がその全長さにおいて合成され、その後、他の工程で上記表面にグラフト化される。
後者の技術は、本発明の吸着剤がグラフト化操作によって調製され、また、それが本発明の方法的な実施形態を構成する場合には、そのことが好ましい。
【0126】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーフィルムは、共有結合的な結合によって内部的に架橋される場合にも、グラフト化、すなわち、下方のキャリア材料に共有結合的に結合されない、すなわち、物理的及び/または化学的な吸着のみによってその上に結合される。
従って、用語“結合すること”は、物理的及び/または化学的な吸着を包含している。
そのとき、複合材料の化学的及び機械的な安定性は、架橋されたポリマーフィルムによるキャリアの物理的なすべてのもつれに起因する。
ポリマーフィルムの厚み及び密度は、固体ポリスチレンスルホン酸の場合にはフェニル基または硫酸基といった、支持キャリアの表面の高い極性や反応性の基を、接近性から遮蔽するためにさらに十分なものであり、上記接近性によって、試薬によって開裂されたり、分離されるべき混合物における標的のタンパク質またはペプチドや、それに付随する不純物との、不定の、再生不能な、または付加逆な相互作用を受けたりするおそれがある。
【0127】
さらなる実施形態においては、ポリマーフィルムは、キャリア上にグラフト化されるが、内部的に架橋されない。
第3の選択として、ポリマーフィルムは、内部的に架橋され、しかも、キャリア上にグラフト化され得る。
ポリマーフィルムにおける、得られる3つの異なったネットワーク形態の全ては、図2に模式的に示される。
図2のケースAは、個々のポリマー鎖が互いに共有結合的に架橋されているが、キャリア表面に共有結合的にグラフト化されていない好ましい吸着剤を示す。
ケースBは、個々のポリマー鎖がキャリアの表面に共有結合的にグラフト化されているが、互いに共有結合的に架橋されていない吸着剤を示す。
ケースCは、個々のポリマー鎖が、キャリアの表面に共有結合的にグラフト化されているのみならず、互いに共有結合的に架橋されて、その2つの固定化技術(どの順序で実行されても良い)の組み合わせの結果として得られる吸着剤を示す。
【0128】
用語“官能基”は、(誘導化されていない)固体担体材料に属するいずれかの単純な別個の化学的成分、または、該固体担体材料の表面上のポリマーフィルムに限定された、もしくはフィルム吸着によって上記表面を調製している間におけるポリマーに限定された上記成分を意味し、上記フィルム吸着は、化学的な付着位置またはアンカーとしての役割を果たし、それゆえ、固体担体材料またはそれを被覆しているポリマーフィルムの膨潤状態において少なくとも、化学的な付加または置換反応による液相または固相の誘導化に従い、また、任意に架橋にも従う。
従って、置換基は、通常、1つの弱い結合及び/または1つのヘテロ原子の少なくとも1つを含有しており、好ましくは、求核試薬または求電子試薬として作用する基を含有している。
誘導化の前に反応性官能基が活性化されることはほとんどない。
このように、これらは、ポリマーストランドと吸着剤の残基との間で構造的な結合をするのみならず、架橋ネットワークの結び目を形成する。
残基とは反対に、官能基は、本来、分析物と相互作用するように設計されているのではなく(それにもかかわらず、副成分の斥力によって分離操作において相互作用やそれを補助することが厳格に排除され得るものではないが)、むしろ、所定の化学的な反応における分子的な大きさの領域を表面被覆に提供するように設計されており、上記領域は、実質的に相互作用する残基(誘導化)に転換され得、または、共有結合的な連結の形成に用いられえる(ポリマー架橋及びグラクト化)。
用語“接続”または“連結”は、ここで用いられるように、直接的に形成された共有結合的な結合、及び、多数の原子を連続的に含むことによって一列に伸長された一連の共有結合的な結合の両方を包含し得る。
吸着剤または分析物上に存在し得る、または、良く知られた特定な機能のいずれかを果たさないところの単純な2原子の断片に対する、他の化学的な成分は、単純に“基”と称する。
【0129】
一揃いの官能基は、複数の分離としてではあるが、同一の単位として処理されることができ、それらの化学的な挙動は、主として、予測可能で再生可能な基の特性のみによって、それらが付着される材料や該材料上のそれらの正確な位置によるよりも遥かに低い程度で、決定され得る。
【0130】
そのような官能基の間でも、少数のアミノ基、ヒドロキシ基、チオ基、カルボン酸基やカルボキシエステル基にだけ言及される。
官能基は、固体担体材料の必要不可欠な部分であり、その表面の大部分に均一に分散される。
適切な官能基は、多くの場合、弱酸または弱塩基特性を示し、これにより、フィルムを形成するポリマーが両性電解性の特性となる。
ポリマー中の官能基は、対応するモノマーからの重合の間に、または、その後の、キャリア上への吸着の前後における官能基の転換(ポリマー類似反応)のいずれかによって、導入され得る。
また、ポリマーフィルムは、異なるモノマーがコモノマー化される場合、官能基の転換が完了する前に停止された場合や、異なるポリマーが互いの上に積層または相互貫通網目構造として積層される場合には、2つまたは3つの官能基を含有している。
好ましい官能基は、第1級及び第2級アミノ基である。
特に好ましくは、第1級アミノ基である。
【0131】
用語“誘導体化”は、固体担体材料の表面上に特定の残基を導入し得る化学的な反応、または、中間体または完全に官能化された吸着剤を製造するために吸着剤を調製する間、特に、残基またはその前駆体を含有している適切な誘導化試薬を有する官能基への付加または置換の間において、上記表面を被覆するために用いられるポリマーに特定の残基を導入し得る化学的な反応を意味する。
官能基を、異なるが依然として反応性を有する官能基に転換することも、上記用語に包含され得る。
残基の“前駆体”は、遮蔽された、または保護された化学的な成分を組み入れてもよく、該化学成分は、誘導化工程における上記表面またはポリマーを用いた連結の形成の後またはこれと同時に、最終的な残基へと脱保護化さもなくば転換され得るところの、遮蔽または保護された化学的な成分を取り込み得る。
例えば、ポリマー鎖が第1級または第2級アミノ官能基を含有し、誘導体化がこれらを用いたアミド結合によって形成される場合には、残基に含有されるべき追加の第1級または第2級アミン成分が、例えば誘導化試薬中におけるボックまたはFモック誘導体として最初に保護され得る。
さらに、表面またポリマー官能基と誘導体化試薬上の反応中心との間での誘導体化反応の間に形成されるべき結合が、標的のタンパク質またはペプチドの認識における役割を果たすところの新たな化学的な成分の形成をもたらす場合には、それぞれの残基は、明らかに、誘導体化後に十分に発展されるのみであり、また、それの一部または官能的な修飾が誘導化試薬における前駆体として含有されるだけである。
そのような場合には、前駆体成分(解離基)は、誘導体化反応の間に(縮合反応における水分子のように)切り離され得る。
【0132】
誘導体化は、官能基の“規定の位置”において常に実行されるところの少なくとも1つのまたは複数の工程のそれぞれに存在する。
このことは、異なる官能基及び試薬の反応性を考慮すると、誘導体化されていないポリマーまたは固体担体材料に存在するそれぞれ与えられた種類の官能基における目標とされた所定の百分率のものは、常に、選択されたそれぞれの残基を用いて誘導体化された官能基に転換されていることを意味する。
それから、均質に且つ再生可能に誘導体化された吸着剤を得るために、計算された適切な量の誘導体化試薬が、ポリマーと反応させられる。
また、全ての誘導体化(誘導体化度が100%である)が試みられることができ、これにより、誘導体化試薬は、多くの場合、過剰に用いられるが、このことは必須ではない。
【0133】
そのような吸着剤の残基の材料は、誘導体化工程の間で妨げられないことから、緩和な条件下で誘導体化が実行されることが、多くの場合、望ましい。
このように、官能基を活性化させること、または、そのような条件下で十分な反応性を維持するために実際の結合形成の前やこれに付随して誘導体化試薬を活性化させることのいずれかが必要とされ得る。
好ましくは、誘導体化試薬が活性化される。
好ましい誘導体化反応は、アミノ基といった電子に富んだ窒素官能基を含有している求核性ポリマー、及び、反対に、カルボニルまたはカルボキシ誘導体といった電子に乏しい炭素に付着された解離基を含有している求電子性試薬を含み得る。
従って、活性化は、例えば活性化されたエステルによる固相または液相のペプチド合成物の標準的な技術によって、達成され得る。
好ましい誘導体化反応は、官能基を用いたアミド、ウレタンまたは第1級/第2級アミン連結の形成を含む。
カルボニル炭素に関するアミド及びウレタン連結の非対称性に起因して、それらは、アミノまたはカルボキシ基から、及び、アミノまたはヒドロキシポリマーからそれぞれいずれかの方向に形成され得る。
【0134】
吸着剤の親和性及び選択性は、ほとんど、2つまたは3つの異なる残基の組み合わせによって決定される。
用語“残基”は、いずれかの別個の化学的な成分、または、別個に同定され得、通常はそれぞれ発生する配列を有する、同じかまたは異なる種類の化学的な成分を意味し、該同じかまたは異なる化学的な成分は、ナノレベルのスケールで、複合体内に、または、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの少なくとも1つの相補的な構造や表面に対して高度な及び/または選択的な親和性を有する場所に、(それ自身やそれ自身の一部によって、または、上記同じかまたは異なる種類の残基のクラスター内で)集合することが可能であり、この集合は、吸着剤の表面における格子やポリマー鎖のCHまたはCH2の繰り返し単位を用いた単なるファンデルワールス力よりも上記親和力の方が強い限り、可能である。
固/液相の境界でのそのような場所は、生体高分子を含む特定の相互作用の記載に類似して、“結合部位”と呼ばれており、
これにより、残基は、完全に、合成物や天然物、または、それらの断片や組み合わせであり得るが、化学的な合成及び/または誘導体化に従う必要がある。
それは、1つの別個の化学的な成分(化学的に反応しない成分を含み、この成分は、例えば、それにもかかわらず疎水性や拡散相互作用に携わり得るアルキルやアルケン単位といったものである)よりも多くを備えている。
【0135】
2つ以上の異なる残基は、吸着剤に種々の比率で導入されるため、結合部位は、2つ以上の別個の異なる残基を備え得る。
特定の結合部位の形成に含まれる残基の全体は、互いに2次元または3次元空間的に近接して配されており、必ずしも必要ではないが、表面の官能基の近くに位置する残基や、ポリマーフィルムの近くに位置する繰り返し単位を含み得る。
共通の結合部位の個々の残基は、同様に、架橋または表面がグラフト化されたポリマーの異なるストランドに属し得る(同様の原理が、それぞれのタンパク質またはペプチドの表面上に曝された結合相手に適用される)。
これに対し、特定の残基は、2つ以上の、隣接した、または重なった結合部位に分配され得る。
表面上またはポリマーフィルム内の官能基上での、架橋及び残基の分散における不規則な(統計学的に)性質に起因して、同様であるが、構造的にもエネルギー的にも別個ではない分散が、結果的に形成され得る。
結果として、標的のタンパク質またはペプチドに対するこれらの結合部位のサイズ及び親和性は、相当な程度まで異なっていてもよく、この程度は、実際に不利点として証明されていない。
【0136】
吸着剤の結合部位と標的のタンパク質またはペプチドとの間の“結合”は、可逆的であり得、従って、吸着剤の相補的で化学的な成分の間の非共有結合的な相互作用の形成によって生じ得る。
広く行われている非共有結合的な態様の間で、イオン、水素結合、供与−受容電荷移動、π−π、カチオン−π、双極子、配位、拡散、及び疎水性相互作用が見られるが、多くの場合、混合され不定比性の形態であり、個々の結合態様の寄与を特定することは可能ではない。
これゆえ、単一の、2重の、または多重の同時の接触が、同じかまたは異なる残基を含む結合相手間で発生し得る。
粗い表面上及びマイクロレベルの孔内の分析物の移動性に影響を及ぼす物理的及びエントロピー的な力、及び、溶媒が媒介する相互作用は、結合の原因となる要素に追加され得る。
特定の例では、吸着剤と少なくとも1つの結合したタンパク質またはペプチドを含む、得られた複合体は、検知可能または分離可能ですらあり得るが、より多くの場合、一時的な特性を有するのみである。
また、結合力を負わされている有用な下限はなく、それは、そのような値は、与えられた吸着剤と分析物との対における固有の特性であるばかりか、強く吸着剤に依存しているとも考えられるからである。
さらに、1kcalモル-1と同じくらい小さな、異なるギブスのエンタルピーですら、カラム内での多数の連続した平衡に起因して、クロマトグラフィ法によってやはり解明され得、該カラムの理論段数は、クロマトグラフィのベッド長におけるメートル当たり約103から104の値を採用し得る。
また、クロマトグラフィの適用においては、結合は、強過ぎることがなく、それは、さもなければ、可逆性が、周囲の生物学的条件下で達成されることが困難となり得るからである。
【0137】
本発明の吸着剤に関しては、残基は、固体担体材料の表面上の官能基に、前記表面を被覆している任意のポリマーフィルムを含んで接続されることができ、そのような場合、官能基での付着の位置からの表面から外に立っている全ての部分的な構造、または、少なくとも、異なる官能基上の個別の態様で発生するその部分を含む。
必ずしも、全ての残基が標的のタンパク質またはペプチドの結合に直接的に関わる必要はない。
残基は、同様に、結合している構造を互いから分離したり互いに結合したりすること、または、標的に対して結合している構造を提供するために結合部位のための幾何学に適切な骨格を供給することを目的とするのみであるような、原子または成分を含有している。
このように、固体担体材料上、特にその表面上の任意のポリマーフィルム上の官能基と、実際の結合構造との間での、任意のスペーサー、分岐、または他のリンカーユニットは、少なくとも1つの連結を形成する各残基の部分であるように形式的に割り当てられる。
その連結は、通常、官能基の少なくとも1つの特定の誘導化工程によって達成されることができ、それは、確率的な(遍在する)または選択的な態様で、キャリア媒体上の任意のポリマーフィルムの付加の前または後で、均質または異質な態様で、達成され得る。
従って、ポリマーの溶液または薄いフィルムは、予め合成され、既に残基またはその前駆体を含有している誘導化試薬と反応され得る。
【0138】
しかし、官能基またはその構造的な部分が、残基やその前駆体を用いた誘導化によって異なる種類の成分に転換される、または、それから前記残基の追加の原子(例えば、−NH2官能基の−NHCO−R残基への転換における窒素原子)と共に必須の化学的ユニットを形成している場合には、該残基は、同様に、官能基としての特性を喪失していると考えられ、その代わりに、前記残基に属する構造的な成分と考えられる。
【0139】
同じかまたは異なる種類の残基が、固体担体材料の官能基に、直接的にまたは共有結合的な立体構造的に柔軟なリンカーを介して個々に付着される場合、それらが、その推進力が全てのギブスのエンタルピーを最小化するように、標的のタンパク質またはペプチド上の相補的な相手に対して適合される、と考えられる。
従って、結合部位の残基が、与えられたタンパク質またはペプチドのエピトープ(例えば天然の抗体)の最適な結合のために正確な3次元の配向において体系化されることは、本発明の目的には必要ではなく;それらは、立体構造的な空間(基質が誘発する適合)の探索を通した配向のように考えられ得るためにのみ必要である。
多くの場合、特に、異なる結合が、標的のタンパク質またはペプチドの2つ以上の異なったまたは重なったエピトープのために試みられる場合、それは、同じ吸着剤によって認識され得る。
【0140】
吸着剤の表面から立ち上がっており、その上に分析物の結合に関わろうとする意図で個別にまたは同様に何度も繰り返されている全てのユニットについて言及しているところの用語“残基”は、そのように機能的に規定されている一方で、そのような残基は、1以上の区別し得るがそれら自身内で隣接するサブユニットの分子構造レベルにおいて構成されることができ、まさに形式的に、断片化された、いわゆる“構造”であり得る。
この用語は、最も広く可能な意味において本発明の全体を通して用いられている。
多少任意ではあるが、異なる構造への残基の分割は、化学的な同様性及び直感の原則に従うことができ、これにより、分子的な成分または断片は、共通の構造及び/または物理的特定に従って一緒に意義を有するように分類され得る。
これにより、同じ残基に属する異なった構造と関連付けられた機能は、同様に異なていてもよく;いくつかの構造は、分析物の結合と関連していてもよく、他の構造は、関連していない。
残基の小さな構造的な変化に起因する、本発明の吸着剤を認識する無数の可能性の観点においては、そのような基盤において残基の重要な部分は、重要ではない部分から分離され得る。
分析物の結合に主として含まれるそのような任意の構造に、“連結”は属しており、それは、短い分子(多くは単純な炭化水素)のつなぎであり、官能基、または、必要な連結を形成するための一方または両方の末端において置換されていない不飽和の原子価を任意に含有しており、また、実際に結合している構造と、近接している構造及び/または吸着剤の表面との間での結び目を形成している。
このように、例えば、本発明の吸着剤における異なった残基が使用されることが可能であり、該吸着剤は、異なる種類、長さ、または接続性を有するリンカーを除いた、ピリジル環を有する第1の残基とカルボン酸基を有する第2の残基とを全て備えており、また、任意のまたは場所が不明なさらなる構造を備えている。
それから、そのような群の残基は、分子レベルで認識されることができるが、それらは、本発明の意味の範囲内で、“第1の残基”及び“第2の残基”として機能的に全体として分類され得る。
リンカーの使用は、以下でさらに詳細に議論され得る。
【0141】
標的を認識するための要因である残基の構造は、第1の残基として“水素原子が置換されていてもよいピリジル環を有する残基”を含んでおり、第2の残基とし“カルボキシ基を有する残基”を含んでいる。
【0142】
一般的な学術用語に従って、“ピリジル”は、5つの炭素原子及び1つの窒素原子を有するが他のヘテロ原子を有しない単環状の6員環から(ラジカルに)誘導された部分的な構造(すなわち、ピリジンまたはアザ−ベンゼン)を意味し、少なくとも1つの単結合によって残基の残余に連結されているが、種々置換されたピリジンも、異なる慣用名の下で知られ得る。
さらに、それでも、芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族またはヘテロ脂肪族の環または環体系が、少なくとも1つの環原子に単結合の連結を介して、任意にスペーサーユニットを介して、置換基としてピリジル環に付着され得る。
しかし、伸長された環融合(2箇所の置換基の付着)は、ピリジンのπ電子体系が追加の環の全長さにまで拡張しないように、また、高度な求核性を有する環体系が避けられるように、脂肪族またはヘテロ脂肪族と共に可能であるだけである。
残基を構造へと断片化する多重の個々の可能性に起因して、少なくとも1つ存続し得る、第1の残基及び第2の残基の断片化がピリジル環及びカルボキシ基をそれぞれもたらす場合には、それは、ここで使用される関係内では十分であり得る。
【0143】
“置換基”は、有機ラジカル(水素を除く)であり、ピリジン環の任意の部分と考えられ、また、これにより、任意の分析物の結合にも関わっていると考えられる。
【0144】
先行技術においては、高い親和性と選択性を示す吸着剤は、生体源の抗体や他の高分子量の受容体が付着されるところの固体担体材料から、圧倒的に区別されている。
そのような抗体は、まず、生存生物を含む生物学的な過程における標的の抗原に対して特異的に高められなければならず、または、標的のタンパク質またはペプチドは、抗原や、ほんのわずかに知られた天然の親和性を有する1つの成分に可逆的に結合されなければならない。
本発明の吸着剤は、それらの残基が、低い分子量及び高い化学的な安定性によって、化学的な合成物によって接近可能であるという事実によって、上記吸着剤から区別され得る。
しかし、それらは、同様に、親和性クロマトグラフィ法の全ての種類における固相として実行され得る。
【0145】
用語“タンパク質”及び“ペプチド”は、化学的、生合成的または生分析的に明らかに同一な実体としてポリ及びオリゴアミノ酸をそれぞれ表し、合成的または生物学的な起源から(自然に発生し得るにもかかわらず)、または、直線または分岐した同種または異種の連続体から構成されることができ、連続長さの最小限や最大限、または、分子量は制限されない。
最小限の要求は、それらが、少なくとも1つのアミノ結合を介して連結される少なくとも2つのアミノ酸から構成されていることであり、例えば、ジペプチドに相当し得る。
非タンパク原生または完全に非天然のアミノ酸、β−アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、追加のペプチド模倣物質のユニット等の存在は、有害ではなく、これらは全てペプチド結合の形成が可能である。
小さな(オリゴ)ペプチドは、多くの場合、段階的で集中的な方法によって合成的に調製され得る;用語ペプチドは、そのような場合には、追加的に、例えばデプシペプチドやペプトイドといった通常の連結性によって形成される、取得可能な構造を包含している。
より大きなタンパク質は、通常、規定された3次元構造を有しており、この構造は、例えば、球状(アルブミン)や糸状/繊維状(アクチン、コラーゲン)の形状といった多数の異なる形状に適用され得る;それらは、サイトゾルが膜結合した細胞外マトリックスの部分に溶解可能であり得、または、細胞の表面に提供され得る。
現在の分子生物学的な方法で処理され得る少量のタンパク質に起因して、それらの主なアミノ酸配列は、それらを同定するために知られることが必要とされていない;たまにですら、それらが均質な組成物として存在しているどうかは知られていない。
例えば、ウイルス、少量の点またはラテックスの形状といった、(コロイド状に)分散されたキャリア(ナノ)粒子の表面に結合されたタンパク質またはペプチドは、通常、本発明の分離方法において使用され得る前に、吸着剤との相互作用のための全分子表面の別途遮蔽された部分も曝すために、最初に、隔離される必要がある。
【0146】
一方、上記用語は、非共有結合性のペプチドの凝集物、及び、ホモ及びヘテロ多量体のタンパク質を含むが、一方で、酵素的な分解やジスルフィド結合反応の生成物といった全てのタンパク質の官能または官能基も含み、また、<<アフィボディ(登録商標)>>、<<アンチカリン(登録商標)>>、<<ナノボディ(登録商標)>>といった再設計された小さなタンパク質も含み、または、他の工業的に再構成された活性部位を含む。
金属イオンや複合体は、タンパク質に、通常、それらの活性部位に含有され得る。
分析物のタンパク質は、リン酸化、硫酸化、グリコシル化、グルクロン酸化やユビキチン化といったインビボの翻訳後の修飾化によって修飾され得る。
グリコグリコシド及び脂質との結合によって、まさにアミノ酸を越えて追加の構造ユニットから構成されているグリコ及びリポタンパク質がそれぞれ得られる。
タンパク質の修飾の上向きまたは下向き調整は、それらが製造されるところの生物における中心的で病理学的な状態のための指標として働くことができ、これにより、該タンパク質の修飾は、一般的に、最大限に重要である。
同様に、表面のインビトロの生化学的な修飾、及び、タンパク質の活性的またはアロステリックな部位は、基質のアゴニストまたはアンタゴニストを用いた可逆的または不可逆的な複合体の形成、及び、アミノ、カルボキシ及び側鎖官能性を有する保護基成分の全ての種類を含んでいる。
タンパク質及びペプチドは、さらに、化学的または生化学的にタグ化されることができ(例えば、オリゴヒスチジン配列のタグ、結合色素または放射活性の標識)、または、タンパク質またはペプチドにおける増幅された発現、溶解性、排出、検知または分離の目的で他の(キャリア)タンパク質と融合されることができ、これにより、結合の位置が、切断可能となり得るが、例えば膜にアンカー固定された末尾といった元来の配列の部分を欠くことにもなり得る。
【0147】
用語“標的のタンパク質”、“標的のペプチド”、または、単に“標的”の1つが使用される場合、特定のタンパク質やペプチド、または、多数のタンパク質やペプチド(通常、構造、分類、合成、または、起源によって関連付けられる)は、その特定の残基と共に吸着剤が設計されることを意味する。
これは、通常、吸着剤に対して最も高い親和性を示している供給混合物における分析物または成分である。
標的のタンパク質またはペプチドは、そのアミノ酸配列によるだけでなく(遺伝子転写の間において、単一の位置の配列の転換や消失に至るまで、及び、他の接合やSNPバリアントから得られる結果物を含んでいる)、違ったように折り畳まれた(自然の、折り畳まれていない、または、誤って折り畳まれた)状態の存在を含むところの全ての2次及び3次構造の要素によっても、潜在的なタンパク質性の副生成物から区別され得る。
しかし、標的のタンパク質またはペプチドは、供給混合物の主な成分であること(重量またはモルによって)は必ずしも必要ではなく、主なペプチド性の成分であることですら必ずしも必要ではない。
しかし、混合物内でのそれの存在量にかかわらず、標的は、多くの場合、重要な成分、または、精製されることが要求される特定の物質である必要はないが、後者は、おそらくフロースルー画分に含有され得る。
多くのタンパク質またはペプチドは、有毒な特性を示し得るため、主として健康または環境志向性の適用において、標的は、混合物中のタンパク質またはペプチドを示している、そのように有毒な、さもなければ求められていない特性であることもでき、タンパク質またはペプチドは、上記混合物から枯渇しているべきである。
標的が、混合物の残余から分離または除去されることが要求される製造工程における主要な生成物ではなく、微量の副生成物であることもあり得、これにより、それ自身がタンパク質やペプチドであってもなくてもよい他の混合成分の濃度や純度が、通常は主要な生成物であるが、増加する。
複数段階の血漿分画工程に向けるように、多くの連続した分画は、供給混合物に同時に存在している異なるタンパク質またはペプチドの全ての群を修正するために必要であり得、これにより、分画の特定の段階のフロースルーが、逆に、次の段階で吸着され得る。
【0148】
分離されるべき混合物内の全ての溶出の集団は、−標的を含んでおり−、適切な条件下で本発明の吸着剤と少なくとも弱い相互作用が可能であるが、かかる集団は、“分析物”と称される。
ほとんどの分析物は、タンパク質またはペプチドであり得、それは、これらが、これらのために吸着剤が設計されるところの分析物であるが、特定の状況下では、小さな、非ペプチド性の分子がこの集団に属し得ることも可能である。
非常に関連した分析物は、合成または生合成のライブラリー、例えばトリプシン消化、ファージディスプレイライブラリーや、インビボまたはインビトロで適切に転写されたところのランダム化されたcDNAライブラリーの発現生成物を共に形成する。
しかし、吸着剤の親和性は、通常、標的の群から逸脱された構造を有する分析物が原因で急速に低下し、これらが構造的に標的と関連しない場合、ゼロに近づく。
【0149】
好ましいタンパク質またはペプチドは、4.5から8.5までの等電店plを有し、その分子量は、100から500,000Daまでの範囲であり得る。
これらのpl値は、少なくとも1つの第1の残基において取り込まれたピリジル環の酸性度pKaと適切に対応している。
本発明の吸着剤における特に好ましい標的のタンパク質またはペプチドは、“抗体”またはその混合物であり、その用語は、抗体の断片(軽鎖(L鎖)または重鎖(H鎖)、Fab及びPc領域、Sc可変領域等)、そのような断片からの人工的な構築(二量体、三量体)、抗体におけるオリゴマーの関連物、及び、抗体または抗原の断片を含有する融合タンパク質、または、互いに化学的に連結され得るところのグルタチオンやGFPのような検知可能なタグを有するものといった他の種類の結合体をも含み得る。
それは、ポリクロナールまたはモノクロナール抗体であり得る。
免疫グロブリン(Ig、γ−グロブリン)の間で、抗体は、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMのいくつかに属し得、これらのおのおのは、順番に、いくつかのサブクラスに分けられ得る。
抗体は、ヒトまたは哺乳類(典型的な:ねずみやげっ歯類(マウス、ラット、うさぎ、ハムスター、モルモット)、やぎ、羊、犬、ウシ、馬)源のものであり得る。
好ましい抗体は、ヒトまたはヒト化(キメラ)抗体である。
それらのイディオタイプは、全ての種類の抗原(他の抗体や生物学的物質、小さな分子)に導かれ得る。
【0150】
“タンパク質またはペプチドを含有している混合物”は、種々の源であるところの混合物を意味する。
混合物が得られたところの発生源に関して、本発明の厳しい限定はない。
要求されるのは、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドを含有していることのみであり、該タンパク質またはペプチドは分析物として適格であり得、該分析物のために本発明の吸着剤が少なくとも弱い受容体特性を示し得る。
これにより、混合物は、2つ以上の異なるタンパク質またはペプチドを含有していてもよく、該タンパク質またはペプチドは、混合物の残余から集団的に分離される(すなわち、それらの全てが分離標的である)ことか、または、互いから分離される(すなわち、それらの1または少しのみが分離標的である)ことのいずれかが意図され得る。
吸着剤の残基によって認識されるところの混合物内の少なくとも2つのタンパク質またはペプチドの構造的なモチーフ(エピトープ)は、両方とも、同一、同様か部分的に同一、または異なっていてもよい。
後者の場合は、多くの例で、吸着剤との相互作用における異なる種類となり、これにより、結合力においてより大きな違いとなることが考えられ、同等の分子量であり、認識し得るエピトープと略同じ数量を含有しているところの少なくとも2つのタンパク質またはペプチドが提供される。
【0151】
タンパク質またはペプチドが、自然に発生する、または、組み換えで製造された物質である場合、液体または固体の生物学的な材料の生または乾燥抽出物から得られてもよく、かかる材料としては、動物、植物、微生物またはウイルス(生成物を過剰に生産するところの、生育した、または、遺伝子を導入した種を含む)、細胞培養や生物培養媒体からの抽出物、微生物(細菌や菌類)や酵素による発酵スープ、市販の供給材料、またはそれらの組み合わせ、といったものが挙げられる。
他に、タンパク質またはペプチドを含有している混合物は、化学的な合成物や部分的な合成物の原材料であり得る。
これは、特に、標準溶液と、手動または自動のいずれかで実行される固液相のペプチド合成の方法とを含む。
【0152】
精製技術としては典型的な、特にいずれかのクロマトグラフィ法としては、使用される正確な条件は、標的のタンパク質またはペプチドの構成に依存するだけでなく、試料マトリックスにも同様に依存する。
“マトリックス”は、合物の全ての活性または不活性な構成の集団のために使用される用語であり、標的を除くが、これが消失された媒体を含んでいる。
これは、タンパク質またはペプチドの絶対的な物理的または化学的な特性が分離工程において一般に利用されるからではなく、むしろ、標的のタンパク質またはペプチドと少ない特定のマトリックス組成物との間で上記特性が違うからである。
通常、マトリックスの組成物は、せいぜい部分的に知られている(質的にも量的にも)のみであり、それは、1つの単一の分析方法が、多くの場合、同等の感受性を少なくとも伴っておらず、全ての成分を検知できないからである。
化学的または生物学的な材料の下流側での単離及び精製の間に異なる工程段階で得られた中間生成物は、本発明との関係において使用される意味の範囲内で異なる材料を表す。
吸着剤上の吸着動作を目的として試験されるべき全ての混合物(組み合わされた標的及びマトリックス)は、分析的な関係においては、多くの場合、“試料”とも称される。
【0153】
本発明の吸着剤を用いた処理の前に、生の化学的及び生化学的な材料は、さらなる非破壊的な単位の操作の組み合わせによって、さらなる前処理を介して部分的に精製されることができ、該操作としては、特に、ろ過(精密ろ過や限外ろ過を含む)、透析、電気透析、洗浄、沈殿、遠心分離、イオン交換、ゲルろ過、溶解、エバポレーション、結晶化、乾燥、すりつぶし、ウイルス削減処理法、及び、従来のクロマトグラフィ(特異性の低い吸着剤上のクロマトグラフィ、及び/または、生物学的な残基を用いた従来の親和性クロマトグラフィ)も挙げられ、かかる操作は、実行可能な限り多くの不要な材料(例えば、不溶性の物質、及び、生物学的な材料の場合には大多数のタンパク質、核酸、炭水化物、脂質及び無機物であり、価値のある物質を残す)、有害または攻撃的な物質、または、吸着剤を劣化させたりその分離性能を減少させたりするおそれのある物質を、化学的または生物学的な材料から除去するために行われるものであり、これによって、かかる材料を吸着剤に接触させる前に標的の濃度を増加させ得る。
この関係内において、LC/LCカップリング技術が言及される。
凍結乾燥や高減圧凍結乾燥された材料といった乾燥した混合物は、吸着剤を用いて処理される前に、適切な供給溶媒中に採られることを必要とする。
溶解した混合物が、均質であり、懸濁またはコロイド状の粒子が存在しないことが望ましい。
同様に、本発明の分離方法は、上記で与えられた種類の1以上の工程と引き続き組み合わされ得る。
【0154】
多くのタンパク質またはペプチドは、既に工業的スケールで製造され、医薬、栄養(例えば、栄養補助食品)、化粧品や農業に適用されている。
それらほとんどの大規模スケールの生成物は、これまで、生物資源の抽出によって、経済的に及び合理的な時間枠内で達成され得るのみであり、該生物資源は、すなわち、例えば医薬工場から得られた生物学的な材料、原核性や真核性の微生物発酵、または、昆虫や哺乳動物細胞に至るまでより高い有機物を有する細胞培養(例えば、頻繁に使用されるCHO、NSO、BHK、または、HeLa細胞)である。
従って、要約すると、本発明の混合物における高頻度の発生源は、微生物や細胞培養、または、作物抽出物から得られたような、生合成生成物である。
【0155】
微生物発酵は、細菌や菌(例えばイースト菌)の株における沈んでいる、または、浮かんでいる培養物を含む。
生成物は、全ての有機生成物から、または、菌糸及び/またはそれらが分泌されるところの対応の培養液の上澄液といった分離された部分から、抽出され得る。
半合成生成物は、天然の生成物や中間体における下流側での化学的な修飾物と、合成の供給原料における生体内変化物との両方を含む。
全ての場合において、副生成物は、多くの場合、タンパク質のアイソフォーム、欠失型フォーム、及び、標的のタンパク質またはペプチドに導かれる生合成経路にそって蓄積された中間物や追跡生成物を有する。
これらは、追加的に、遍在的に隠された抗生物質、エンドトキシン、マイコトキシン、パイロジェン、細胞拡散の促進剤や阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、消泡剤、不完全に消化された栄養物の残余、部分的に分解された生成物、及び、有機物の製造における最終段階の細胞分解から生じ得るような高分子量で部分的に不溶な成分(例えば細胞破片)を同伴し得る。
細胞分解は、多くの場合、混合物の複雑性をさらに増加させるが、これは、核酸及び莫大な数のいわゆる宿主細胞タンパク質のような、追加の特定物質を抽出可能な媒体に放出することに起因する。
【0156】
本発明の分離方法と関連した用語“分離”は、混合物をその部分に分離または分割する全ての種類を含んであり、特に、1以上の構造的に異なる成分を分けることを含んでおり、該成分は、分子的に液体に溶解され、異なる液体分画へと拡げられる。
混合物における1つの傑出した成分は、常に、標的のタンパク質またはペプチドであり、該タンパク質またはペプチドは、少なくとも1つの他の混合物成分からの分離を経る。
これにより、標的が1つの分画内で分離され副生成物の集合性が1つの別の(共通の)分画で分離されるかどうかや、各個別の混合物成分がそれ自身の分画で他の成分から分離されるかや、その方法によってこれらの極端なものの間に位置されたものとなるかは、問題ではない。
上記方法が実行された後に得られた少なくとも1つの液体分画において、原(供給)混合物内に少なくとも1つの溶解したタンパク質またはペプチドが豊富に存在していることが観察される場合、それが十分である。
分離された副生成物は、必ずしも分離された液体分画として回収される必要はない;それらは、また、例えば、そのように廃棄されるための吸着剤と結合したままでもあり得る。
分離工程が不完全なままである場合はまれであり、この場合、価値のある望ましい生成物を含有している分画において収量の損失となる。
溶出帯が重なることを避ける鋭い分画は、さらなる収量損失のコストにおいて、分離(すなわち純度)の質を向上させ得る。
【0157】
用語“濃度”及び“純度”は、混合物中における関連物質の実現可能な分画の容量と関連しており、これにより、その用語の濃度は、混合物の全参照量における溶媒の量の含有を伴った溶液を指しており、また、その用語の純度は、溶媒(残余の水を含む)を考慮しない(ときには仮定の)乾燥混合物を意味する。
より多くの場合には、それらは、重量またはモル比(重量/重量、重量/体積、モル/モル、モル/体積)のいずれかとして表される。
このように、より高い純度は、逆に、より高い希釈物(すなわち、低い濃度)のコストを犠牲にして達成され得、特定のシステムにおいて達成されるべきより重要な終末に依存し得る。
ここで使用されるような指標の実際の値を決定するための測定は、HPLCのピーク面積によるものであり、これにより、重量を除く各定量法が、十分に検知し得る混合物成分と十分に検知し得ない混合物成分とで特定の偏りを示し、また、非線形の検量線も得られ得る。
例えば、不溶性の材料は、HPLCによって定量され得ない。
その源、その単離方法及び前処理に依存して、混合物は、通常、標的のタンパク質またはペプチドを、1%から89%まで、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%の純度(組み合わせで)で含有しており、残りは、残余の溶媒、試薬等といったような、構造的及び機能的に標的と関係しない副生成物や成分であり得る。
従って、実際の精製作業に依存して、本発明の分離方法は、非常に薄めた、または、加工していない混合物から最初の捕捉または単離工程、または、ほとんど純粋な標的のタンパク質またはペプチドを含有している、既に予め精製された混合物の最終的な精製工程の両方として使用され得る。
混合物における副生成物及び他の成分の数量は、1(例えば、単一の位置の配列転換または削除)から本質的に重要な無限数(例えば、処置されていない生理学上の試料)までの範囲であり得る。
上記生成物の種類は、同様に、原材料または前処理に依存している。
【0158】
用語“接触”は、現象的な(濡れている)スケール及び分子的な(表面や孔の拡散)スケールの両方の相の間で物理的な接触を確立することによって、液相中に固(静止)相としての吸着剤と共に存在している最初の(供給)混合物の適切な処理に適用する。
形成された接触は、少なくとも標的のタンパク質またはペプチドを除いて、混合物における消失した全ての分子的な成分が、残基が配されるところの外部及び任意に内部の吸着剤の全ての表面に到達し、それからそれらと相互作用することを可能とするのに十分な強度を有し得る。
接触の形成は、静的または(押し出し、層、乱)流動的な条件下、例えば、吸着剤粒子の固定または流動(拡げられた)層を覆って、生じ得る。
混合物は、第1の液体(供給液体または吸着液体)に溶解され得るため、これは、異質の工程であり得、接触の形成は、得られる懸濁液の撹拌や振とうによって巨視的に加速され得るが、標的のタンパク質またはペプチド及び任意の副生成物と吸着剤との間の結合平衡が定常状態の確立に近づかない限り、この作業工程を終えるための時間制限はない。
【0159】
上記で使用されたように、用語“液体”は、分離すべき混合物の1つまたはそれ以上の成分のために少なくとも弱い可溶化特性を有するところのいずれかの溶媒(最も重要なものとしての水を含む)、または、溶媒の混合物に適用される。
異なる組成の液体は、方法における異なる工程において吸着剤の処理のために使用され、これは、各工程において用いられたそれぞれの液体は、標的の吸着(結合)、標的の脱離(放出)、または、吸着剤の清掃といった、可能な特定の作業を遂行べきだからである。
クロマトグラフィの環境内では、混合物における1以上の成分が吸着剤を用いて動的平衡交換することを可能にする液体は、多くの場合、移動相と称される。
本発明の吸着剤上のクロマトグラフィの分離は、主として強い極性及び疎水性の相互作用の両方に依存しているため、個々の混合物の成分に対して識別可能な溶媒和能力を有する、広く種々の液体成分が、望まれる相互作用の種類に依存して、使用され得る。
さらに、分離方法の与えられた工程の時間推移にわたるこれらの相互作用のいずれかまたは全ての強度を調整するために、例えばグラジエント混合によって上記工程内で用いられる液体の組成を徐々に変化させることも、ときには得策であり得る。
従って、特定の作業を遂行するために供された液体の組成は、それが使用される工程の全時間経過にわたって一定である必要はない。
適切な、吸着の、溶出の液体を選択するときには、標的のタンパク質またはペプチドの特定の溶解度を考慮すべきである。
膜に結合したものを除いて、タンパク質は、自然な状態で保護されるべきであり、凝集が避けられるべきである場合には、通常、高い水性の内容物を有する液体の使用を必要とする。
また、多くのタンパク質またはペプチドは、適切な低い百分率のジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、または、低級アルコール及びグリコールも許容する。
本発明の吸着剤は、ほとんど全てのプロトン性または非プロトン性の有機溶媒に対して化学的な抵抗性があるため、特に、キャリアを含有しているバルクの固体担体材料が、液体と直接接触する唯一の材料である表面のポリマーフィルムによって遮蔽されている場合、さらに吸着剤またはその上に配された少なくとも上記任意のポリマーフィルムの膨潤を容易にするところの主として極性溶媒に与えられることが好ましい。
従って、親和性のある液体の混合物の正確な極性は、その組成物の態様によって容易に微調整され得る。
【0160】
さらに、そのような液体または液体の混合物に対して、好ましくは揮発性の、酸、塩基または緩衝液といった少量の補助物質が添加され得、これにより、異なる溶解性能の間で、適用された液体のpH(または、特に有機溶出液の見かけのpH)の調整を介することによって、選択されたあるいは全ての分析物、及び/または、選択されたあるいは全ての吸着剤の残基におけるプロトン化及び/または脱プロトン化の程度を切り替えることが可能となる。
この点で有用な物質は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸及びそれらの塩である。
高濃度の不活性な有機または無機塩を添加することは、液体のイオン強度を修正し、これにより、分析物と吸着剤との間で、競合的相互作用を介してイオン対を選択的に破壊するために有用であり得る。
しかし、そのような不揮発性の塩の添加といった予備的な適用においては、標的のタンパク質またはペプチドがさらに結晶化によって精製されることを意図されている場合には、回収した溶出液から添加物を後で除去することが困難である。
【0161】
特定の状況下では、タンパク質またはペプチドの分析において吸着剤と共にさらなる有機修飾剤を使用することが利点となり得、これは、液体のpHまたはイオン強度の単なる調整を超える作用機序によって作用している。
“修飾剤”として、小分子や大分子またはそれらの混合物が加えられ、それらは、自身が溶解化特性を有する液体ではなく、本発明の分離方法において使用される1またはそれ以上の種々の液体に少量溶解または懸濁されることができ、これにより、以下のことを、個々の分離の問題に依存して補助または防止することができ、それは、本方法の特定の工程の間に分離されるべき混合物の特定の成分の溶解/溶出、または、多くの2次的(技術的)な理由で例えば、溶媒の長期安定性及び保存性、吸着剤の生物汚染の防止、化学的もしくは生物学的劣化または凝固からの分析物の保護、増強された溶媒親和性、吸着剤の膨潤、改良された分析物検知、水構造の破壊、制御されたタンパク質の折り畳みまたは再折り畳み等である。
有機修飾剤の特定の例は、イオン対試薬、界面活性剤(洗浄剤)及びカオトロピック試薬である。
【0162】
“すすぎ”、“洗浄”及び“再生"は、異なる種類の液体を用いた同じ吸着剤の段階的な処理をより良好に区別するために使用される異なる表現である。
これにより、液体は、組成よりもむしろ、実行する作業によって区別される。
これにより、実際の処理の手順は、非常に似通っており、ときには、処理後に溶解された物質に基づいて、液体がさらに精製、分画、採集、または廃棄されるかどうかについてなされる決定によって、異なるのみである。
すすぎは、吸着剤によって非特異的に結合された標的を除いて、混合物の成分を理想的に溶解またはこれから理想的に放出させる液体の処理に関する。
洗浄は、吸着剤が除去できないほどに結合した成分の全て、さらに標的よりも強く結合し得るものでさえ溶解またはこれから放出させるように意図された処理に関する。
再生は、洗浄液の跡を除去、及び、方法の次の実行の開始における吸着段階において使用されるための、理想的な物理的及び化学的特性を有する清潔な吸着剤を修復することを可能とする液体の使用に関する。
【0163】
“固定”は、吸着剤の表面上のタンパク質またはペプチドにおける長い範囲の側方向及び/または垂直方向の移動性を除去、または、実質的に阻止する工程を意味し、該移動は、統計的、拡散移動(ブラウン運動)、または、一定方向の物理的もしくは化学的な力(例えば、浸透圧、せん断力)によって生じ得る。
従って、表面の吸着性の部分に固定されたタンパク質またはペプチドの巨視的な2次元または3次元の位置は、短時間のスケールに固定されているように考えられ得る。
固定化の中心の周囲のナノメートルオーダーの不可避的な少量の変動が、依然として影響を受けないままであり、このような変動として、配座変化、分子の回転や振動、隣接する結合部位間での跳びまわり、または、タンパク質またはペプチド自体と、その表面へのそれぞれの結合部位の残基の固定に適用された(任意にポリマーの)つなぎ同様に結合された残基との半径の組み合わせ内での並進運動といったものが挙げられる。
大きな時間スケール上の結合している表面の層を横切ることによって結合されたタンパク質またはペプチドのゆっくりとした放出は、望まれた特性である方がよい。
【0164】
物質の組成物を定義する中心的な実施形態においては、本発明は、新規な吸着剤の標的特異的な設計に関する。
官能基を有する固体担体材料は、次の表面誘導化のために用いられて、含まれる標的のタンパク質またはペプチドとの多価及び/または多機能の空間的な相互作用に適した多数の残基の2次元または3次元配置をもたらす。
【0165】
従って、本発明の一般的な側面においては、固体担体材料を備えており、その表面は、水素原子が置換されていてもよいピリジル環を備えた第1の残基と、カルボキシ基を備えた第2の残基とを備えた吸着剤が記載され得る。
【0166】
本発明のより特別な側面においては、“発明の簡単な説明”欄で特定されたような第1、第2、第3及び第4の側面による吸着剤が記載され得る。
【0167】
本発明の第3及び第5の側面による吸着剤の記載のために使用される用語“前記第1の残基及び前記第2の残基の両方を備えた前記官能基ではない”とは、キャリアの表面の利用可能な官能基が5%未満、好ましくは1%未満であり、第1及び第2の残基の両方を担持する官能基が無いことがさらにより好ましい。
【0168】
特定の実施形態においては、官能基が第1及び第2の残基を担持することは、分光法といった一般的な分析法によって検知され得ない。
【0169】
吸着剤の固体担体材料は、ポリスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、シリカ、ガラス、でんぷん、セルロース、アガロース、セファロース及びデキストラン、または、これらの混合物から選択され得る。
固体担体材料は、例えば、表面の官能基を導入するため、または、水性の濡れ性を増加させるための、一般的なバルクまたはさらに表面修飾された材料の分類に属し得る。
【0170】
特定の実施形態においては、吸着剤は、光学的な発光、放射活性、または、質量または無線周波数を標識化したタグといった、容易に検知し得るタグを備えていてもよい。
タグは、吸着剤の混合物においてすら個々の残基の組み合わせを有する特定の吸着剤を同定するために、または、タンパク質またはペプチドの結合の検知を促進するために、使用され得る。
タグは、固体担体材料の核の中に、または、その表面上に残基と共に、取り込まれ得る。
【0171】
上述したように、図3に示された一覧のように、小さな有機分子の化学的構造において頻繁に発生しているものは、特に、ピリジル環を有する残基に属する。
与えられた特定のタンパク質またはペプチドのための吸着剤の特異的な親和性の微調整は、ピリジル環上のそれぞれの官能基の身長な選択、第1及び第2の残基のモル比、及び、任意のさらなる残基の導入を介して達成される。
従って、全体の変化が徹底的に処理され得ないことが明らかとなり得;その代わり、存在している要求に従った吸着剤を構築するための概念的な骨格が、与えられ得る。
【0172】
単純化のために、唯一のメソメリーの式が、各構造のために、図3に示される。
さらに、本発明の目的のために、そのような構造のヘテロ芳香族のピリジン特性における少なくとも1つの合理的なメソメリーまたは互変異性の式が存在し、追加の非ヘテロ芳香族の式が可能ですらある場合には、それは、用語“ピリジル基”の意味の範囲内で十分である。
環の体系と残余の残基との間の連結、及び、これによる最終的な固体担体材料の連結は、ヘテロ原子の自由な原子価を含んでいる、付着位置としての、環の原子を介してなされ得る。
【0173】
ピリジル環及びカルボキシ基は、両方ともイオン形成性であり、電子的に中性の原子やそれを含有している基が、実行され得る分離の条件下(すなわち、吸着剤または分析物の構造的な完全性に影響を与えない、通常の緩和な、または、周囲の条件)で、(例えばプロトン化または脱プロトン化によって)周囲の条件下で安定か、または荷電されていない形態と平衡のいずれかであるカチオンまたはアニオンに、可逆的に転換され得る。
さらに特には、吸着剤の第1の残基は、少なくともある部分では、プロトン化に従い、これにより、プロトン化された形態で存在し得る。
荷電された形態は、明白に図示されていないが、その平衡は、実際には与えられた条件下でどちらかの側にほとんど全体的に存在することができ、また、荷電及び荷電されていない形態の間で測定可能な、お互いの相互変化であり得る。
プロトン化は、環境のpHに依存するが、大抵の非プロトン性の溶媒中に広く存在しており、両方の形態またはそれらの1つのいずれが吸着剤によって示された親和性のために合理的であるかは、区別することが困難である。
各残基の正確なプロトン化度は、その塩基性、存在している酸の濃度及び種類、使用される移動相、及び、吸着剤の前処理に依存し得る。
【0174】
このように、特定の分離作業に依存して、残基を示す吸着剤を用いて分離されるためにべく混合物を処理することも利点があり得、該残基は、主として荷電されていない状態もしくは主として荷電された状態であるように条件付けられ、または、(例えば、弱イオン交換剤から知られるような緩衝液交換によって)分離の間に1以上の回数で電荷の状態を変化すらし得る。
各構造のpK値にpHが近づく環境において分離が実行される場合に容易に想像され得るように、吸着剤におけるイオン形成性のピリジル環及び/またはカルボキシ基が部分的にイオン化され得る条件であることも可能である。
逆に、荷電された状態で分離を実行しつつ荷電されていない状態で吸着剤を製造するかまたは保存することも、必要であり得る。
【0175】
pHが約5の水性緩衝液システムを含む吸着剤の前処理が、アミン構造(下記参照)を有するさらなる(第3の)残基が存在する場合に、好ましい。
そのような処理は、各種類のアンモニウム構造または他のイオン形成性の残基に属する対イオンの均一な分布を確立し得る。
分析物に対する残基によって示される水素結合の強度は、溶媒和殻の周囲内に滞在しプロトン化された残基とイオン対を形成すると考えられるカウンターイオンの性質、塩基性及び/または<<硬い>>対<<柔らかい>>分極率の挙動によっても影響され得る。
【0176】
さらに、置換基がピリジル環に結合されることができ、また、各環のために独立して選択され得ることができる。
代表的な構造として図3に示されるように、官能基R1、R2...R4は、それぞれ独立して水素原子(H)、有機ラジカルを表す。
特定の環の幾何構造や置換基のパターンに制限されことなく、適切な置換基は、特に、以下の単純な有機ラジカルの1またはそれ以上を有する;C1〜C2の直線状または分岐したアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アリルアルキニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、アリルオキシ、アリルアルキルオキシ、アルキルチイル、アルケニルチイル、アルキニルチイル、シクロアルキルチイル、アリルチイル、アイルアルキルチイル、ハロゲンアルキル、ハロゲンアルケニル、ハロゲンアルキニル、ハロゲンシクロアルキル、ハロゲンアリル、ハロゲンアリルアルキル、ハロゲンアルキルオキシ、ハロゲンアリルオキシ、ハロゲンアリルアルキルオキシ、ハロゲンアルキルチオイル、ハロゲンアリルチオイル、または、ハロゲンアリルアルキルチオイル。
【0177】
全合成された本発明の吸着剤は、さらに従来の親和性媒体から区別されるべきであり、該媒体中においては、表面の結合された残基は、多くの場合、それ自体がタンパク質またはペプチド、または、それらの部分であり、知られた生物学的なリガンド−受容体相互作用を非常に真似ている。
一般に、そのような媒体は、はじめに述べられた不利点を受けている。
【0178】
各残基を用いた誘導化度は、第1及び第2の残基がモル比で3:2、より広い意味では、少なくとも1:1から2:1までであることが好ましい。
組み合わされた第1及び第2の残基のための誘導化度は、混合された組成物の多価の相互作用部位の形成を促進するために、少なくとも50%に近接していることが望ましいが(誘導化が可能な官能基の数量に基づく)、一方で、標的のタンパク質またはペプチドのための吸着剤の結合性能を依然として維持している。
それから、第1及び第2の残基は、それぞれ、例えば35%から25%までに近い誘導化度で存在していてもよい。
好ましい第3の残基(下記参照)は、アミンまたはアミドを有し、より好ましくは、主としてアミン構造を有している。
そのような場合には、第1、第2及び第3の残基は、それぞれ、約3:2:3のモル比で存在している。
約10%近傍の相対偏差が、許容される。
【0179】
一の実施形態では、官能基の5から95%が、前記第1及び第2の残基の相互作用する構造(それぞれピリジル環及びカルボキシ基)に連結されており、好ましくは20から90%、より好ましくは30から80%、さらにより好ましくは40から70%まで、一層好ましくは50から60%までが連結されている。
第1及び第2の残基の比が自由に選択され得るため、上記与えられた範囲内で、吸着剤を、特定の分離の問題、例えば上記タンパク質またはペプチドを有する混合物からタンパク質またはペプチドの分離、に適合させることや、上記タンパク質またはペプチドを有する混合物からタンパク質またはペプチドの濃度及び/または純度を増加させることが可能となる。
【0180】
従って、一の実施形態では、官能基の5から95%が、前記第1及び第2の残基の相互作用する構造(それぞれピリジル環及びカルボキシ基)に連結されており、好ましくは20から90%、より好ましくは30から80%、さらにより好ましくは40から70%、一層好ましくは50から60%が連結され;第1及び第2の残基は、1:1から2:1までのモル比で存在している。
【0181】
残基の付着の種類は、共有結合的な結合の変形(ホモまたはヘテロ原子の、多様な結合次数)であり得、また、固体担体材料または任意の該表面を被覆するポリマーフィルムの表面上の官能基と共に直接的に生成され得、これらは、それの骨格またはぶら下げられた直線状または分岐した側鎖に付着されるか、2官能性の連結の末端によって任意に結合されるかにかかわらず、可能である。
標的のタンパク質またはペプチドと選択的に相互作用する第1の残基の指定された部分であるピリジル環への付着に加えて、これらの残基は、非共有結合性のリンカーも有している。
そのような2官能性のリンカーは、長さ及び化学的な組成での大きな変動に起因して意図的に図示されないが、標準的な固相の合成や生体結合法から知られている(例えば、スクシニル);最も単純な2官能性のリンカーは、1から約20原子までの所定の数量のアルキレン鎖であり得る。
最も適したリンカーは、配座的に柔軟なものである。
全残基をポリマーフィルムに連結させる好ましい共有結合性のリンカーは、再び、アミド、ウレタンまたは第1級/第2級アミン結合から形成される。
【0182】
これに関するうち、リンカーとして使用される、特に長いアルキレン鎖またはポリエチレングリコール成分は、第1及び第2の残基のそれぞれの主な効果の重なりや増幅において、前記タンパク質またはペプチドに、追加の、ほとんど非特異的な疎水性力を働かせ得る。
しかし、硫黄を含有し、容易に合成され、活性化された表面に連結される前述したリンカーは、本発明の力の範囲内ではなく、それは、硫黄原子や硫黄を含有する基が分析物の分子表面上の同種の対応する基と良好に相互作用すること、そのことが自身に特別な選択性を導入してここで提供された吸着剤の結合メカニズムを妨げる可能性があり得るという事実が良く知られているからである。
【0183】
従って、そのような任意のリンカーと、固体担体材料及び/または残基の相互作用する構造との間で、それらの付着によって形成される、可能な追加の化学的な構造は、種々の分析物に接近することもでき、これにより、標的のタンパク質またはペプチドの選択的な保持を補助し得る。
それぞれの残基の一部としてのヘテロ芳香族の構造と、固体担体材料の表面との間に配された、追加の構造的な実体物の化学的な組成に関する実質的な限定は、吸着剤の製造、保存及び使用の間において適用される条件を伴った化学的な安定性及び生体適合性の要求によって課されるのみである。
従って、それぞれの残基が、特定された付着位置を介して、サブ構造として、同じ及び/または異なる種類の追加の残基を有し得るところのより高度な複雑性を有する骨格(ポリマーを含む)に取り込まれることも可能である。
【0184】
特に、前記表面上の官能基との共有結合的な結合を形成することによって、残基は、バルクの固体担体材料の表面に直接結合され得る。
例えば、シリカの表面のシラノール基に残基を結合するために選択する方法は、クロロシランまたはアルコキシシランで末端化されたリンカーの補助を伴って実行され、一方、カルボン酸エステルの担体のヒドロキシ基への結合は、従来の臭化シアンの活性化といった種々の方法を通して達成され得る。
これらの方法は、当業者に十分に知られている。
【0185】
しかし、好ましい実施形態においては、バルクの固体担体材料は、単なるキャリアを表し、その直接の表面は官能基を有するポリマーのフィルムで被覆されており、順番に、少なくとも部分的に、ペンダント基の第1及び第2さらに任意の第3の残基によって置換され得る。
これにより、薄い内部の層が形成され、それは、巨視的な形状の定義、及び、互いから離れた分析物が相互作用する部分を移動させるが、下方に存在している全ての表面トポロジーを特徴的に変化させることはなく、また、それゆえ、それの表面の一部として考えられている。
残基は、使用されたベースポリマーを少なくとも部分的に誘導化されたコポリマーにするところの前記ポリマー官能基に付着され得る。
官能基を有する適切なベースポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及び、少なくともこれらのポリマーを有するコポリマーもしくはポリマー混合物である。
特に、固体担体材料が、表面がさらにポリマーのフィルムで被覆されたキャリアとしてのバルクのポリマー性材料から構成されている場合、また、非ポリマー性のキャリアが使用される場合、キャリアが作製される材料は、ポリマーフィルムが作製される材料とは異なり得る。
そのような違いは、例えば、異なるモノマー組成物、重合の位置または立体化学、立体規則性(タクティシティ)、分子量分布、架橋度、またはそれらの組み合わせとして示される。
【0186】
従って、ポリマーフィルムの正確な厚み、並びに、吸着剤の分離の動態及び性能は、ポリマーの膨潤の状態に依存しており、それ自体が常に移動相の組成物の機能であり、これにより、異なる外部条件下で変動し得る。
水性または混合された水性−有機性媒体中で実行されるタンパク質またはペプチドの分離のためには、ポリマーがそのような媒体中で膨潤し得る場合には、それが望ましい。
これは、ポリマーが合成の高分子電解質である場合には、最も容易に実現される。
上記で説明したように、イオン形成性の残基の荷電特性も、再度溶媒依存性となる程度までポリマーフィルムの膨潤性に影響を与える。
用語“水性”は、ここでは、体積が50%よりも多い水を含有している液体を示し、残余は、無機または有機緩衝剤、塩といった水溶性の溶質や添加剤である。
【0187】
そのような形態は、移動相と固相との間での、孔の分散を介した、特に高い物質移動を維持するために設計される。
ポリマーフィルムが分離工程の条件に抵抗するために、直線状または分岐状のポリマーは、それ自体、堅牢で硬いキャリアに永久的に固定されなければならず、かかる分離工程のために、それは、全工程の至るところの位置において作製され滞在する。
固定は、連続したポリマーネットワークを形成するように個々のポリマーストランドの内部の架橋、または、鎖に沿った少なくとも1つ以上の位置で個々のポリマーストランドをキャリア固体に対するグラフト化のいずれかによって、実行され得る。
グラフト化と同様に架橋は、ポリマーの同じかまたは異なる官能基の間で、または、ポリマー中のどこでも存在する官能基と被覆されていないキャリアの表面に存在する官能基との間で、それぞれ容易に達成され得る。
ポリマーにおける好ましい架橋またはグラフト化連結は、アミド、ウレタン、ウレアまたは第2級/第3級アミン結合から形成され得る。
個々のポリマーストランドの末端の官能基は、グラフト化のために最も使用され、これにより、最も高い鎖の柔軟性を与えるところの端と端とを合わせた構成が得られ得る。
【0188】
両方の技術の組み合わせは、確かに実行可能であり得るが、通常、それらのうちの1つで十分である。
好ましい固定方法は、(グラフト化ではなく)架橋である。
これにより、ポリマーの鎖は、架橋のために利用し得る官能基の数量に対して1%から20%までの程度まで、互いに、共有結合的に架橋され得る。
【0189】
これにより、架橋剤が1つ以上の分析物と相互作用するために適切であるところの化学的構造を含有している場合、追加の相補的な残基は、原則的には、ポリマーに架橋を導入する結果となり得る。
ポリマーの架橋度は、好ましくは、比較的低い百分率で保持されるため、それらの貢献は、むしろ少量であると思われている。
種々の量で残り得るところの追加のアミド(例えばホルムアミド)の貢献についても同様のことが正しいと考えられているが、アミノ官能基を含有しているポリマーフィルムの、不完全な加水分解を介した合成から得られる結果としては、通常、1%未満であり、統計学的にアミン/アミドまたはアミン/ウレタンのコポリマーが得られ得る。
【0190】
それにもかかわらず、それぞれの部分的な構造の定義に従って、2つ以上の異なる第1の残基及び/または2つ以上の異なる第2の残基を用いた固体担体材料の誘導化が可能である。
それから、これらは、相互作用する構造(置換されたピリジル基及び/またはカルボキシ基)、これらの構造を固体担体材料の表面に結合する方法、またはその両方において、互いに異なり得る。
好ましい実施形態においては、第1の残基の全数量及び第2の残基の全数量(または、それらの誘導化度それぞれと同等なもの)は、大きな同じオーダー内であり得、それは、無秩序な(統計学的に)特別な残基の分布の提供の下で、異なる第1及び第2の残基を全て有する混合物の結合部位の最大の数量を認識するためである。
【0191】
通常、及び、好ましい実施形態では、第1及び第2の残基は、互いに直接接続されているのではなく、バルクの固体担体材料それ自体またはキャリアとしてのそれによって担持されているポリマーフィルムのいずれかに対して別々に付着される。
従って、ピリジル環及びカルボキシ基は、1またはいくつかの官能基を介して固体担体材料の表面に連結されるのではない。
【0192】
一方、同じかまたは異なる種類の2つ以上の残基は、ポリマーフィルムの骨格、または、他の方法では固体担体材料の表面を含まずに、共有結合的な結合を通して互いに直接接続されていることもできる。
そのような場合、個々の残基の間の境界は、不鮮明となり始め、また、任意となっており、それは、吸着剤の誘導化の履歴(すなわち、誘導化工程の配列及び種類)が知られている場合には、意味深さが残っているのみであるからである。
図1に模式的に示すA〜Hに代表して示されるように、固体担体材料の表面上のペンダント官能基は、多くの異なる方法(ここでは、長い水平方向の揺れ動く線それ自体が、さらなる残基を含有し得る表面の部分を示す)で、2つの異なる残基を用いて誘導体化され得る。
【0193】
上記したような、個々の官能基が1つの残基を担持する同等の分布に加えて(式AまたはBにて)、それらは、例えば、同じ官能基の上に、連続的に“1列に”(式C、Dにて)、または、平行に(式E、Gにて)整列され得る。
そのような構成は、実験的に達成されることができ、特に、その構成においては、残基自体が、ポリマーまたは表面の官能基と同じかまたは異なる官能基を含有しており、ポリマーまたは表面の官能基の前記第1の残基を用いた誘導体化の後で、それ自体が(任意に脱プロトン化及び/または活性化の後で)第2の残基を用いて誘導体化され得るか(ケースC)、または、1つの官能基が少なくとも2つに折り畳まれて誘導体化される(1つの工程または多くの連続的な工程で、共通の官能基(ケースG)または分岐した構造(ケースE)を有する連結が両方の残基によって共有される(適切な例は、第3級アミノまたは第4アンモニウム成分を産生する2つまたは3つに折り畳まれた第1級アミノ基のアルキル化であり得る)。
しかし、得られた構成C、D、E、Fは、代替経路によって誘導化されることもでき、この経路では、官能基を有する表面またはポリマーが、正しい相互の配列で第1及び第2の残基の両方を担持している単一の誘導体化試薬を用いて誘導体化される。
環状または多環状の環システム(ケースF及びH)といった両方の残基における、より複雑な相互の配列も、もちろん、想像され得る。
A及びBを除く全てのケースにおいて、第1の残基で誘導体化される官能基の第1の位置は、常に、第2の残基で誘導体化される官能基の第2の(同じ)位置に相当する。
【0194】
上記した全ての場合は、統合された見解の下では、個々の残基が階層的な秩序で配列されるところのより一般的な状況の境界的な場合と考えられる。
【0195】
与えられた例の1つは、この一般的な代表例の観点から、再試験される場合、以下のような構成が、特に挙げられることができ、その構成では、2つの異なる構造が共通のリンカーまたはその一部を共有しており、それらが、固体担体材料の表面に付着される。
従って、その2つの構造は、リンカーが分岐した構造を有している場合、同じ枝または異なる枝に直線状に配列される。
それから、残基の全体、すなわち、可能な限り最も大きな、均一な構造ユニット(官能基の表面及びそれと接続された他の全てのサブ構造において可能なリンカーの末端化を含んでいる)は、まさに形式的に、第1の残基に帰するものであり得、第2の残基は、形式的に、再び、そのような構成において、代表的なカルボキシ基構造、及び、可能ならそれの直接の接続要素を、全ての(第1の)残基の残余とともに有しているのみである。
【0196】
驚くべきことに、上記の2つの構造的な特徴を所有する吸着剤は、多くのタンパク質またはペプチドの容易な回収を可能とし、特定の場合には、98%よりも高い、または、各不純物が1%よりも低い最終濃度が、混合物を部分的に精製することのみから開始する単一の肯定において得られることがわかった。
これにより、医薬品品質が、面倒または厄介な作業をすることなく得られ得る。
工業スケールでの製造から直接得られるような、粗材料中のタンパク質またはペプチドの濃度も、単一の工程で高いレベルまで増加され得る。
適用可能な滴定濃度は、混合物中に約1%から約90%までの範囲であり得る。
これにより、前記工程で回収された生成物は、少なくとも、従来の精製方法と同程度に高く、95%の値に近づき得る。
本発明の与えられた目的のための両方の種類の残基を有する吸着剤における、顕著に良好な性能は、さらに驚くべきものであり、それは、密接に関連した構造の残基を有する吸着剤またはただ1種類の必要な2つの構造が、せいぜい適切な分離効率を示し得るからである。
【0197】
理論に結び付けられなくても、単純な、誘導体化されていないポリマーのアミンのフィルムで被覆された吸着剤と比較して、この特定の吸着剤の高い性能は、追加の構造的に新規な多価の結合部位の存在に帰することができる。
そのような新規な結合部位を形成するために必要な構造は、主として、ポリマーの部分的な統計学上の修飾に帰することができる
特筆されるべきそのような構造のうち、拡張された、電子が豊富かまたは乏しいかのいずれかのπシステム、及び/または、前記結合部位内の弱塩基性または弱酸性の結合システムが、潜在的に存在する。
下方での相互作用の態様は、静電力、電荷移動及び水素結合のような極性/双極性の基に属する相互作用、及び、疎水性相互作用及びπ吸着のような無極性の基に属する相互作用の両方を含むと考えられる。
πシステムのヘテロ原子は、電気的なπシステム自体を通して、または、特別な孤立電子対を通してのいずれかの、双極子力及び水素結合の潜在的な部位であると予測される。
しかし、与えられた分離、及び、全ての結合強度への正確な種類の各残基の部分的な貢献において、実際の作動メカニズムに対する実行された探索を有することなく、規定された濃度は、そのような構造のために前もって引き出されることはできず、それは、部分的には、溶媒分子との競合を形成する水素結合が、その場合を複雑化し得るからである。
立体障害の要素は、追加的に、設計された吸着剤の選択性に貢献し得る。
少なくとも、第1及び第2の残基からの純粋なイオン性の貢献は、ありそうもない。
【0198】
さらに、異なって誘導化された吸着剤を大量に試験した後、第1及び第2の残基を用いた固体担体材料の表面上の官能基の第1及び第2の部分の誘導体化に加えて、第3の残基の存在は、本発明の与えられた分離目的の観点から優れた結果すら得られることが、著しくわかった。
これにより、固体担体材料は、補充の第3、第4及び第5の残基等を用いてさらに誘導体化され得る。
固体担体材料を有する吸着剤は、その表面に上記のように第1及び第2の残基に加えて第3の残基も有し、それゆえ、本発明のさらなる実施形態である。
ピリジル環及びカルボキシ基は、第3及び各さらなる残基の構造的に組み立てられたブロックとして排除されている。
この排除から離れて、2つの残基間の可能な構造的な関係を考慮する全ての選択は、第1及び第2の残基のために図1に代表して示すが、第3と第1、第3と第2の相互の関係、及び、追加の残基間での関係における相互の関係に、同様に適用される。
異なる種類の各追加の残基は、与えられたタンパク質またはペプチドのための非常に特異的な結合部位を吸着剤が形成する可能性を促進し、密接に関連する副生成物からそれを区別する。
しかし、各分類の残基は、少なくとも約20%の誘導化度で存在すべきであり、それは、誘導化度が極端に少ないことは、多くの場合に統計学的な理由によって無視し得るからである。
従って、主要な適用のために、残基の種類の数量を、ほぼ誘導体化度に相当する5以下に維持することが十分である。
異なる残基の数量や相互の比率にかかわらず、各種類の残基は、均質で無秩序(統計学的に)に、固体担体材料の表面に分散され得る。
【0199】
一方、これにより、官能基の前記第1の部分は、官能基の前記第2の部分を含むか、または、それらの形態とは異なっていてもよく、第3の残基は、第1及び第2の残基の部分を用いた固体担体材料の官能基の表面の不完全な誘導体化から生じ得る。
使用される試薬及び合成条件に依存して、誘導体化反応は、多くの場合、不完全のままである。
従って、被覆しているベースポリマーを任意に含む固体担体材料の表面に対して一般的な、誘導化されるべき特定の数量の誘導化されていない官能基(すなわち、少なくとも1つの、対応するモノマーまたは繰り返し単位に取り込まれたもの)は、内部的に、または、技術的な理由によって、生き残り得る。
これらは、種々の分析物に接近可能であり、結合部位の補充的な部分として作用することができ、標的のタンパク質またはペプチドと結合することを補助し、これにより、吸着剤の分離能力を増加させ得る。
これは、前記官能基の第3の(残りの)部分それ自体が前記第3の残基の種類を表し得ることを意味する。
本発明において、ポリアミンのフィルム、特にポリビニルアミンのフィルムで被覆された固体担体材料を用いることが、好ましい。
従って、好ましい官能基は、主として、及び、任意に、第2級アミノ構造であり、これにより、補助的な第3の残基として考えられ得る。
特定の例において、誘導化された官能基の断片は、与えられた分離の目的のための選択おいて増加されて100%に接近することが示され得る。
この事実は、新規な多官能な結合部位が、これによって第1及び第2の残基を両方有する吸着剤、及び、密接な空間的な接近において誘導化された官能基であり得ることを示すこととして取り入れられ得る。
【0200】
そのような設計された第3の誘導体、または、不完全な第1及び第2の誘導体化の方法によって、与えられたタンパク質またはペプチドに対する選択性は、多くの場合、さらに増加されることができ、また、伴う実質的な利益として、固体担体材料の表面を被覆する任意のポリマーのフィルムは、多くの場合、追加の化学的な安定性及びより良好な溶媒適合性または膨潤特性であり、含まれる第1及び第2の残基と官能基との相対的な極性に依存し得る。
それにもかかわらず、第1及び第2の残基は、特異性という用語における基礎となる分離の目的を達成するための最も重要な残基であり、それは、架橋されたポリビニルアルコールのように相補的に誘導化されていないポリマーのフィルムは、分析物に対する骨格の第1のアミノ官能基を表すのみであり、本発明の分離の目的を十分に達成しないからである、ということが述べられ得る。
理想的には、残基の全密度(相補的な残基として作用する誘導化されていない官能基を含む)は、0.1モルdm-3から1.0モルdm-3であるが、好ましくは、少なくとも0.3モルdm-3までである。
【0201】
一方、固体担体材料またはその上の任意のポリマーフィルムの誘導化されていない反応性の官能基、より特にはアミノ基は、分離されるべき混合物における標的のまたは可能な反応性の副生成物に対して可逆的または不可逆的な反応性も示し得、それらが低濃度で存在する場合には、それらの物質のフィルムの捕捉につながり得、また、繰り返し使用された後、吸着剤の緩やかな劣化及び結合性能の低下につながり得る。
そのような望ましくない相互作用を避けるために、クロマトグラフィの固相の調製において、そのような余剰の官能基を、前記基の最終的な<<エンドキャッピング>>によって不活性にすることが、一般的に行われている。
これにより、追加の(第3または第4の)残基は、元来フリーな官能基を末端が封止された官能基に、少なくとも部分的に転換することによって作製され得る。
エンドキャッピングは、このように、分析物、マトリクス、及び移動相の必要に応じて、固/液の相互作用の改良された適合性を確立する誘導体化反応の特別な場合として考えられることができるが、追加の結合強度をほとんど産み出し得ず、これにより、追加の選択性も産み出し得ない。
それにもかかわらず、官能基の残基の部分的または全部のエンドキャッピングは、最終的に、固定相の調製における追加の成果にもかかわらず、長期間の工程の安定性に関して好ましいことがわかる。
【0202】
好ましくは、アミノ基といった求核性官能基のエンドキャッピングが、官能基の求核性を減少させる反応を通して達成される。
エンドキャッピング基は、広い範囲の分析物を用いた低い強度の相互作用がないかまたは少なくとも非共有結合性及び非特異性の相互作用があるのみであることを示すように設計され、また、固定相の全ての極性を顕著に変更しないように設計される。
しかし、それらが、物質との多価の相互作用における第1及び第2の残基を、高い誘導体化度で補助することができると考えられる。
不完全な混合されたエンドキャッピングに起因する吸着剤上の2つよりも多く折り畳まれて混合された第3の誘導体の可能性にもかかわらず、吸着剤全体に均一なエンドキャッピング(すなわち、95%を超える程度まで)が有るか、または、全くエンドキャッピングが無いかのいずれかを目的とされることが好ましいことが、判明した。
このように、エンドキャッピング基の構造に依存して、形式てきに処理される場合には、それらは、潜在的に第3の残基の役割を果たしても果たさなくてもよい。
【0203】
第1の方法の実施形態においては、本発明は、上記で示された特性を有する本発明の吸着剤の調製方法に関する。
それらによって、特別な分類の吸着剤を得ることができ、該吸着剤は、固体担体材料は、キャリアから構成されており、このキャリアの表面は、少なくとも残基で部分的に置換された官能基を有するポリマーのフィルムで被覆されている。
この好ましい種類の吸着剤の特別な特性は、上記で広く概説されてもいる。
【0204】
ここでは、前記調製方法は、少なくとも以下の工程を備えている:
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(a)ポリマーのフィルムのキャリア上へと吸着すること(“吸着工程”);
(b−I)吸着されたポリマーの官能基の規定の部分を、少なくとも1つの架橋剤を用いて架橋すること;
(b−II)吸着されたポリマーの官能基の規定の部分を、キャリアにグラフト化すること(“グラフト化工程);
(c)ポリマーの官能基の規定の部分を、水素原子が置換されていてもよいピリジル環を有する第1の残基、及び、カルボキシ基を有する第2の残基、及び、任意のさらなる残基を用いて誘導体化すること。
【0205】
上記の調製で詳述された割付に関する複数の変形が考えられる。
まず、工程(b−I)及び(b−II)、すなわち、架橋及びグラフト化は、それぞれ、同等の代替物と考えられ、また、これらのいずれか1つの工程は、さらに上記で記載された特性を示し得る本発明の吸着剤を構築するために、その方法を実行するのに十分である。
両方の代替物は、さらなる工程と吸着剤の使用の条件下で、キャリア上に吸着されたポリマーの耐久性のある固定の作業を遂行するために、働く。
これは、全てのポリマーのストランドの間での追加の共有結合的な結合の、連続するネットワークを形成すること(架橋)、または、各単一のポリマーのストランドとキャリアとの間での共有結合的な結合を形成すること(グラフト化)によって、達成される。
もちろん、両方の代替的な工程も、その方法内で、同時に単一の工程に、または、その後の2つの区別され得る次の工程として、吸着剤の安定性にとって不利点を受けることなく、組み合わされ得る。
【0206】
次に、さらなる変形が、吸着工程(a)に関連して、誘導体化工程(c)の相対的な時間的順序が考慮され得る。
これにより、最初に残基を用いて均質な溶液内でポリマーを誘導体化し、それから、既に残基を含有いている誘導体化されたポリマーのフィルムを適切なキャリア上に吸着することが考えられる。
そのような作業は、それぞれ異なって誘導体化されたポリマーのための被覆工程の実験的な条件を探索し、最適化することが必要であり得る。
従って、好ましい変形は、薄い均質な層を得るために、誘導体化工程(c)と平行してまたはその前に、吸着工程(a)内で実行され得るように、誘導化されていないポリマーをキャリアに、むしろ最初に吸着することである。
【0207】
架橋工程(b−I)またはグラフト化工程(b−II)は、それぞれ、いかなる場合でも、すぐに吸着工程(a)に従い得、それは、一旦架橋されると、ポリマーがフィルムとして吸着することが困難であり得るからである。
さらなる結合条件は、工程(i)がつねに配列の最初の工程であり得る。
一緒に取り込まれると、前記2つの個々の工程の変形の以下の4つの組み合わせ(工程b−Iまたはb−IIの選択が、工程(a)及び(c)の相対的な順序で組み合わされ)が、可能である:
【0208】
第1の方法:本発明の吸着を調製する方法であって、以下の順序を備える:
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)吸着工程(a);
(iii)架橋工程(b−I)
(iv)誘導化工程(c)。
【0209】
第2の方法:本発明の吸着を調製する方法であって、以下の順序を備える:
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)誘導化工程(c);
(iii)吸着工程(a);
(iv)架橋工程(b−I)。
【0210】
第3の方法:本発明の吸着を調製する方法であって、以下の順序を備える:
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)吸着工程(a);
(iii)グラフト化工程(b−ii)
(iv)誘導化工程(c)。
【0211】
第4の方法:本発明の吸着を調製する方法であって、以下の順序を備える:
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)誘導化工程(c);
(iii)吸着工程(a);
(iv)グラフト化工程(b−II)。
【0212】
配列の各工程は、直ちに先行する工程の完了から得られる状態においてポリマーを用いいて実行されることが意味され、すなわち、架橋またはグラフト化に続く誘導体化工程は、既に架橋またはグラフト化されたポリマーを用いて実行され得、一方、吸着工程に先行する誘導体化工程は、自由な、吸着されていないポリマーを用いて実行され得る。
ポリマーの官能基の規定された部分が、特定の工程に到着するか、または、同様の部分が既に先行する工程において反応した場合、その特定の工程における規定された部分は、先行する工程からの残りである官能基の全体から取り込まれ得、また、前もって反応され得る(2価または多価の官能基の除去を伴って)。
4つの全ての方法が、原則的に、同等の結果をもたらすが、最初の方法がそれの実質的な単純さのために好ましい。
【0213】
さらに明白に記述されたさらなる変形においては、ポリマーの官能基の第1の部分は、溶液内で誘導体化され、部分的に誘導体化されたポリマーがそれから吸着され、そして、このように吸着されたポリマー上で、前述のように同じかまたは異なる官能基の第2の部分が、前述のように同じかまたは異なる残基を用いて誘導体化される。
または、ポリマーの官能基は、最初に、溶液誘導体化によって異なる官能基または残基の前駆体に転換されることができ、それから、吸着後に、最終的な残基に転換され得る。
従って、そのような調製工程の混合された組み合わせによって個々の残基が導入される最も合理的な順序は、特定の種類のキャリア、及び、キャリア上における特定の、部分的に誘導体化されたポリマーに、強く依存し得る。
【0214】
層における分子間または分子内の架橋は、安定な2次元好ましくは3次元のポリマーのネットワークを形成し、また、<<包み込まれた>>キャリア媒体からのそれの脱離を防止し得る。
架橋は、技術常識として知られた操作に従って、または、ポリマー鎖上の至るところでのラジカルな種類の生成に基づく非選択的な方法を取り込んで達成されることができ、該方法としては、電気化学的、光または(イオン化させる)放射線が導入された方法が挙げられるが、架橋工程は、好ましくは、例えば前記官能基を用いた縮合反応を実行するために設計された架橋剤を使用して、ポリマーの官能基間のみで実行され得る。
1から20の原子の間の長さを有する、α,ω−2官能性の縮合試薬といった直線状、配座的に柔軟な分子が、架橋にとって好ましい。
また、異なる長さ及び/または異なる反応性及び/または異なる鎖の堅牢性を有する2つ以上の架橋試薬が、好ましくは連続の工程で用いられることが、好ましい。
架橋は、堅牢な材料につながり得る消耗性の方法においてではなく、常に所定の程度まででのみ、すなわち、ポリマーの官能基の規定の部分で実行されることができ、それは、利用可能なポリマー官能基に関連する追加された架橋試薬の一定比の分画を介して容易に制御され得る。
この点での適切な架橋試薬は、ジカルボン酸、ジアミン及びビスエポキシ、例えば、1,10−デカンジカルボン酸またはエチレングリコール ジグリコシジルエーテル(EGDGE)を有する。
4,4−ビフェニルジカルボン酸は、堅牢な架橋剤として有用である。
【0215】
架橋試薬は、ポリマーの官能基を用いて、しかし、鋳型を用いず、下にあるキャリア材料も用いることなく明確に反応するために優先的に選択され、例えば、ポリマーフィルムとキャリア表面との間ではなくポリマーフィルム内の安定な架橋を達成するためのものである。
ともかく、適切な数量の後者の種類の追加的な架橋剤を確立することは、吸着剤の特性を確かに顕著には変更し得ない。
【0216】
追加の封止基が望まれる場合、前の誘導体化が不完全な場合、それらは、通常、工程の最後で導入される(特定の残基を用いた最後の誘導体化の後)。
エンドキャッピングは、原則として、上述した特定の誘導体化と同様に実行され得る。
しかし、高い反応性の試薬につながる活性化方法は、通常、キャッピング反応であり、それは、それらが、前の誘導体化工程の間で最も低い反応性のものであることが照明された官能基を用いて反応することが要求されるからである。
好ましいのは、アシル無水物及びアシル塩化物、特に、酢酸、または、イソシアネートやイソチオシアネート、またはエポキシである。
また、2以上の異なるエンドキャッピング試薬、または、例えば、混合された無水物といった2以上の異なる封止基を有する試薬が、使用され得る。
ヨウ化メチル、ジメチルスルホン酸またはジアゾメタンといった良好な脱離基を有する他の通常のアルキル化試薬が使用されることも考えられ得る。
先行技術から知られたポリマー及び非ポリマーの固定相の両方として、他の適切なエンドキャッピング方法が、同様に使用され得る。
通常、全工程を通して望まれている多くの余剰の官能基とできる限り同様の、徹底的なエンドキャッピングも、要求される場合、重要な任意のキャッピング度で停止されるように管理され得る。
【0217】
また、ポリマーフィルムの官能基または残基の置換基を、保護基を用いて一時的に誘導体化することもできる。
前記官能基または置換基は、これゆえ、それぞれの誘導体化試薬を用いた、ときには望ましくない反応から1以上のさらなるセットの残基の導入の間において保護されることができ、それは、さもなければ、分岐化といった、残基または高く秩序立った置換基パターンの制御できない蓄積につながり得る。
一旦追加のセットの残基が設置されると、保護基は、通常、再度除去される。
【0218】
キャリアの表面にフィルムとして吸着されるべきポリマーの好ましい官能基は、第1または第2のアミノ基、ヒドロキシ基、及び、カルボン酸またはカルボキシエステル基である。
これらの基は、容易に、誘導体化、生体適合化であり、ポリマーの水溶解性を増加さsる。
これゆえ、水性または混合された水性−有機性媒体である方法にポリマーを用いることも好ましく、それは、吸着工程が、好ましくは、そのような媒体からその中に懸濁されたキャリア材料上に対して好ましく実行されるからである。
吸着工程はそれ自体、原則的には、各工程で異なるポリマーを用いて段階的に実行され得るが、単一の種類のポリマー(すなわち、官能基と同じ種類のポリマー、または、同じ前固定の荷電を産み出す官能基)のみを用いて実行されることが好ましい。
特に好ましくは、5,000Daから50,000Daまでの間の分子量を有しているポリマーである。
【0219】
一般に、本発明の吸着剤の組成及び特性に関して上記概説したものとして、全てのさらなる好ましい実施形態は、前記方法に用いられるべき材料の調製方法に同様に適合され、これゆえ、これとの関係で、繰り返されない。
【0220】
アンカー基は、すなわち、誘導体化工程に使用される誘導体化試薬の活性化の部位はは、形成されるべき結合部位に接近しているか、または、それから短いまたは長い距離離れていてもよく、基本的には、構造、機能、または合成の要求に依存しており、すなわち、結合部位を形成している構造と活性部位との間でスペーサー基を取り込んでもよい。
そのようなスペーサーは、堅牢または柔軟であることができ、また、より長いスペーサー基が、多くの場合、配座的に柔軟に変形する種々の長さであることができ、それは、ときには、望ましい幾何学を採用するために、吸着剤の結合部位と標的のタンパク質またはペプチドとの間の複合体によって要求される。
スペーサーは、対応するピリジル環の構造及びカルボキシ基の構造をそれぞれ用いて、最初に結合されることができ、分離(可能であれば均質な)反応における結合部位及び形成された結合を形成し、それは、残基全体に似ており、それから、任意の脱プロトン化の後、ポリマーと結合され、または、スペーサーは、最初にポリマーと結合され、それから結合体を形成し、任意の脱プロトン化の後、対応するピリジル環の構造及びカルボキシ基の構造とそれぞれ結合されて、残基全体が形成される。
従って、2つの結合反応は、同じかまたは異なる種類であってもよい。
一般に、第1級のアミノ官能基を含有しているポリマーがフィルム形成ポリマーとして使用される場合、官能的なアミノ基の窒素原子は、残基に直接取り込まれ得る。
【0221】
好ましい誘導体化試薬は、アミン、エポキシ、カルボン酸やエステル、及びイソ(チオ)シアネートを有しており、好ましいポリマーの官能基と共に、アミド、ウレタン、または(チオ)ウレアリンカーが得られる。
構造、安定性、及び簡便さの理由として、官能基と残基の間、すなわち、アミノ含有ポリマーとカルボキシ末端化誘導体試薬との間、または、カルボキシ含有ポリマーとアミノ末端化誘導体化試薬との間、のアミド結合の形成によって、誘導体化工程が実行される場合、それは最も好ましい。
アミノポリマーとの結合体において、特に好ましい誘導体化試薬は、活性化されたカルボン酸誘導体である。
【0222】
誘導体化の前に化学的な活性が必要とされる場合、誘導体化工程の上流側の特別な工程において、または同時に誘導体化工程共に実行され得る。
ポリマーの官能基または、好ましくは、誘導体化試薬のいずれかが、活性化され得る。
カルボキシ基の活性は、例えば、固相のペプチド合成の標準的な技術によって、例えば、OBt(ベンゾトリアゾールイルオキシ)またはONB(ノルボルネンジカルボキシイミドイルオキシ)エステルを介して、達成され得る。
ヒドロキシ基は、同様に扱われ得る。
経済的な、これゆえ特に好ましい実施形態においては、活性化は、ペプチド化学で知られた方法、すなわち、活性化された種類の定常状態の濃度が製造されているが、分離されないワンポット反応の助けを用いて誘導体化工程の間にインサイチュで実行されることができる。
【0223】
両方の残基は、単一の誘導体化工程においてポリマーに導入され得る。
任意に、単一の誘導体化試薬が、ここで使用され、該試薬は、既に両方の残基を有する(または、その前駆体それぞれ)か、または、第2の残基(または逆に)を有する第1の残基を有する。
または、少なくとも2つの異なる誘導体化試薬は、混合物として用いられ、それぞれは、少なくとも1つであるが異なる残基を有する。
誘導体化工程は、他に、各残基を用いて段階的に実行され得る。
それから、第1の誘導体化工程に用いられる誘導体化試薬は、第1の残基を有しており、第2の誘導体化工程に用いられる誘導体化試薬は、第2の残基を有している。
【0224】
調製方法の1つの変形においては、誘導体化工程(c)は、各種類の残基または単一の工程を用いて段階的に実行され得る。
この実施形態においては、第1及び第2の残基の両方のポリマーの官能基の誘導体化反応は、容易に同時に導入され得ることが考慮される。
これは、少なくとも2つの誘導体化試薬の混合物が使用される方法で達成され、その第1が、第1の残基を有し、第2が第2の残基を有する。
ポリマー骨格に沿った2つの残基の無秩序で不規則な分布が得られ得るが、誘導体化されたポリマーは、第1及び第2の残基の統計学的な比率に特徴があり得、該比率は、基本的には、少なくとも2つの誘導体化試薬の相対的な量及び反応性によって決定され得る。
他に、誘導体化試薬が、既に、第1及び第2の残基を有している場合には、ただ1つの誘導体化試薬を用いることが可能である(または、逆に、第1の残基が第2の残基を有している)。
自然に、それから両方の残基は、得られる誘導体化されたポリマーにおいて、前もって規定された相互の位置または立体化学における1:1の比率で存在し得る。
2つの完全に発展された残基の代わりに、少なくとも1つが、前駆体としての誘導体化試薬に存在していることが可能である。
【0225】
本発明の調製方法の変形の範囲内において、誘導体化試薬の混合物が使用され、それぞれが第1及び第2の残基の両方を有する構成が、理解され得る。
特に、そのような混合物において、第1の残基(またはその前駆体)の部分的な構造は、誘導体化試薬の間で変動し得るが、第2の残基(またはその前駆体)は、逆に、同一であり得る。
非常に特には、誘導体化試薬は、調製方法の遂行において互いに結合されることができ、その規定された量は、第1及び第2の残基の両方を含有しているが、他の規定された量が第1または第2の残基のみを含有していてもよい。
それから、試薬の量及び反応性が同程度の場合、得られる生成物は、一方の残基が他の残基よりも過剰であることを示し得る。
そのような方法において、特に、ポリマーの官能基の間の第1及び第2の残基におけるテーラー型ではあるが、均質で無秩序(統計学的に)な分布が、達成され得る。
【0226】
追加の第3、第4、・・・等の残基がポリマーに導入されるべきであれば、誘導体化工程は、任意に段階的に複数回、従って、望まれた構造のモチーフを有するさらなる残基を用いて繰り返され得る。
約4つの繰り返しの工程まで、経済的に、実行可能である。
好ましくは、各誘導体化工程は、常に、大まかには同じ誘導体化度、従って、約25%の各残基の誘導体化度まで実行される。
【0227】
本発明の吸着剤は、主として、タンパク質またはペプチドを含有する混合物の精製に適用され得る。
従って、第2の方法の実施形態においては、本発明は、タンパク質またはペプチドを含有する混合物、または、任意に上述した標的特異的に設計された吸着剤を用いる副生成物から、1以上のタンパク質またはペプチドを分離する、または、濃縮及び/または純度を増加させる方法に関する。
その工程は、少なくとも以下の工程を備えている:
(i)前記吸着剤に接着される前記タンパク質またはペプチドが前記吸着剤に結合されることが可能となるのに十分な時間の間、本発明の吸着剤に第1の液体に溶解または懸濁されている前記混合物を接触させること;
(iii)前記タンパク質まはペプチドが前記吸着剤から放出されることが可能となるのに十分な時間の間、第3の液体に対して前記結合したタンパク質またはペプチドを接触させること。
【0228】
上記方法の最初の変形は、理想的には、精製されるべき吸着剤とタンパク質またはペプチドとの間の非共有結合的な結合を著しく崩壊させず、さもなければ前記吸着剤と結合したタンパク質またはペプチドを放出する第2の(洗浄)液体を用いた分離すすぎ工程が、工程(i)と工程(iii)の間に含まれ得る。
副生成物と混合物を含有しているさらなる構成物の種類及び数量に依存して、分離工程の間のそのような液体の変化が、ときには、分離効率を増加させ得る。
第2の液体は、ほとんど低い溶出強度を有することができ、非特異的に溶出し得る。
それから、その工程は、任意に中間の工程を備えている:
(ii)第2の液体で前記吸着剤をすすぐこと;
【0229】
工程(i)で標的のタンパク質またはペプチドと副生成物との混合物を吸着剤と接触させた後、それに吸着された標的のタンパク質またはペプチドを伴った吸着剤は、工程(ii)で第2の液体を用いてすすがれる前に、第1の液体に含有された残余の混合物から再び分離されることができる。
残余の混合物はそれ自体、価値のある副生成物を含有している場合、再回収され得る。
後者の変形は、非常に希釈された供給原料のための捕捉手段として使用され得、また、その後の十分でより複雑なクロマトグラフィの分離によって妨げられるおそれがある急速なバッチ工程における潜在的な副生成物を除去する実現可能な方法であり得る。
そのような可能な副生成物の間で、不可逆な物理的または化学的な吸着による吸着剤の緩やかな劣化につながり得、これにより、カラムの耐久性が短くなり得る。
【0230】
実質的に特別だが重要な場合においては、第2の液体は、前記第1(供給、吸着)の液体と同じ液体が選択され得る。
これは、工程(i)において吸着剤との混合物として適用されるとき、標的のタンパク質またはペプチドが吸着されるのと同じ液体を用いて、吸着剤は、工程(ii)においてすすがれることを意味する。
これは、多くの場合、可能であり、それは、標的のタンパク質またはペプチドのための中間から乏しいまでの特性を有するように、通常、第1の液体が選択されるからであり、標的のタンパク質またはペプチドと液体との間の相互作用のエンタルピーが、標的のタンパク質またはペプチドと吸着剤との間よりも小さい場合に、十分な吸着が、可能になるからである。
一方、この液体が、工程(ii)において吸着剤から溶出されると考えられる副生成物のための良好な溶解特性を有している場合、標的タンパク質またはペプチドが同時に放出されることなくそれに吸着されつつ、吸着剤をすすぐためにも適用され得る。
【0231】
同様に、第2の液体は、第3の(脱離、溶出)液体と同一に選択され得る。
標的タンパク質またはペプチド及び副生成物のための第3の液体の溶解特性が十分に大きな程度に異なっているが、それらの吸着剤上の吸着エンタルピーが同一である場合、同じ液体が吸着剤をすすぐために使用され得る。
これは、その方法の工程(ii)及び工程(iii)が、これらの条件下で1つの工程に組み合わされ得ることを、本質的に意味する。
連続するフローシステムにおいては、より良好に溶解され得る副生成物が、まず、すすがれ、次に、同じ液における後者の溶出された分画内における、標的のタンパク質またはペプチドが放出され得る。
もちろん、この配列は、再び、さらなる、ほとんど溶解されず、従って、よりゆっくりと溶出する副生成物を含有している第3の液体の追加的な分画が続き得る。
【0232】
さらに3つの液体はすべて同一であってもよい。
しかし、2つまたは3つの液体が同一に選択され得る場合、それらは、依然として、その方法の異なる工程において異なる流量で吸着剤に適用され得る。
クロマトグラフィにおける体積流量は、一般に、適用される圧力状態、カラム寸法、及び液体の粘度の機能である。
HPLCにおける移動相の対応する一次元速度は、通常、約1〜5mms-1のオーダー内である。
これゆえ、第1、第2、第3...の液体と数えることは、異なる作業を遂行する液体に適用するそれぞれの配列を規定するために働くが、それぞれの液体の特定の組成を規定することが必要であるということを意味するものではない。
液体の種類またはそれの適用された流量の個別のまたは段階的(すなわち、工程のグラジエント)な変化の代わりに、他の連続したグラジエント形状、特に、直線的なグラジエントが、異なる液体間及び/または流量間でゆっくりと切り替えるために使用され得る。
これは、少なくとも部分的な相互の混合性と、連続する液体の増加する分画をそれぞれ先行する液体に徐々に混合するためのメカニズムを有する装置とが必要とする。
【0233】
本発明の1つの実施形態においては、第3の液体は、そのpHにおいて第1の液体とは異なり得、任意に第2の液体とも異なり得る。
特定の実施形態においては、第3の液体のpHは、第1及び任意の第2の液体のpHよりも高い。
さらにより好ましくは、第3の液体のpHは、標的のタンパク質またはペプチドの等電点(pl)に接近しており(すなわち、±1ユニットの範囲内で、ほぼ一致している)、一方、第1及び任意の第2の液体は、大きく異なるpHをを有しており、少なくともpHが約2ユニットであり、特により低い。
第1の液体のpHは、望ましくは4.0から6.0までの範囲内であり、一方、第3の液体の得られるpHは、6.5から8.5までの範囲内である。
この実施形態は、吸着剤と標的のタンパク質またはペプチドとの間の結合エンタルピーが、それぞれの結合相手上に1以上のイオン化し得る残基(例えば、アミノ基、窒素含有ピリジル環または酸素含有カルボン酸)を含み、静電気や他の極性相互作用(双極子力、水素結合)によって重要な部分に占められる場合を扱う。
特に、疎水性及び極性相互作用は、中性のpH近くに占められると考えられ、一方、イオン性の反発は、いずれかの極度のpHスペクトル(すなわち、低いpHでプロトン化された窒素と、高いpHでの脱プロトン化された酸素)に接近するとき、同じ、従来の荷電されていない残基の引き付ける極性力を部分的に置き換えると考えられる。
この効果は、結合のエンタルピーを顕著に弱めることができ、その結果、結合されたタンパク質またはペプチドを吸着剤から放出し、または、副生成物がそれと結合することを妨げ得る。
反対の方法においては、他のイオン性相互作用が、いずれかの結合相手の等電点の低下によって弱められ、その結果、pHがシフトし得る。
吸着剤上の残基としてのピリジン環といったこのそれぞれの窒素含有ヘテロ原子が、特に重要であり、それは、疎水性と、極性/イオン性相互作用との両方を示し得るからである。
本発明の分離方法で使用するためのピリジル環といったものの引力は、それらの結合態様が生物学的な条件とよく似ているpH値で切り替えられ得るという事実から得られる一方、切り替えの正確なpHの範囲は、特定の残基の等電点に依存し、これゆえ、少なくとも2つの異なるイオン形成性の残基に含有されている吸着剤の構造及び相対的な組成によって、微調整され得る。
一方、結合のエンタルピーのpH依存性は、同様に、吸着剤と少なくとも1つの分離されるべき副生成物との間での相互作用に関して適用される。
例えば、これは、標的のタンパク質またはペプチドの等電点、または、疎水性/極性対静電的相互作用の量的に異なる相対的な貢献に依存してる。
【0234】
本発明のさらなる実施形態においては、第3の液体は、第1及び任意に第2の液体とイオン強度において異なり得る。
特定の実施形態においては、第3の液体のイオン強度は、第1及び任意の第2の残基よりも高い。
この実施形態は、吸着剤と標的のタンパク質またはペプチドとの間の結合のエンタルピーが、1以上のイオン性またはイオン化し得る残基の調製において、静電的な相互作用による重要な部分に支配され得、一方、そのような関与、特に明白ではないが、吸着剤と分離されるべき少なくとも1つの副生成物との間の静電的相互作用において異なる。
一方、結合のエンタルピーに対する疎水性の貢献は、全ての他のパラメータが一定に維持される場合、イオン強度の増加によって強化され得る。
好ましくは、分離方法の吸着工程(i)は、第1の液体における低い塩の条件下(0〜0.2Mの塩化ナトリウム)で実施され、一方、放出工程(iii)は、第3の液体における1Mの塩化ナトリウムまでで実施され得る。
本発明の吸着剤は、非常に高い塩条件を許容するが、吸着剤が結合されたタンパク質またはペプチドを脱離するためには、工程(iii)の第3の液体までの高い塩濃度を加えることは、ほとんどの条件下で必要がなく、得策でもない。
その代わり、多くのタンパク質またはペプチドに対する親和性は、塩濃度の変化を伴って、ほとんど一定であり得る。
従って、塩のグラジエントは、単にそれら自身によって吸着されたタンパク質またはペプチドを放出することは、有効とはなり得ないが、補助的なpHグラジエントを用いた組み合わせにおいて有効となり得る。
【0235】
これゆえ、標的のタンパク質またはペプチドの吸着剤からの放出は、第1及び第2の液体と同様の標的のための第3の液体の溶媒強度の増加を介して達成され得る。
他に、それは、吸着剤の結合部位からの、第3の液体に溶解された置換試薬を用いた、標的のタンパク質またはペプチドの置換を介して実行され得る。
置換の効果(好ましくは、競合する標的よりもむしろ、吸着剤による置換試薬の結合の方が、好ましい。)は、置換試薬が標的のタンパク質またはペプチドよりも過剰に存在するか、または、吸着剤に対する置換試薬の結合強度が、標的のタンパク質またはペプチドのそれよりも高い場合、達成され得る。
置換試薬は、それ自体、標的として同様の特性を有するタンパク質またはペプチド、またはその断片化であり得るが、ピリジル残基及びカルボキシ残基のために高い親和性を伴った小さな合成分子でもあり得る。
【0236】
他の溶出の変化は、標的のタンパク質またはペプチドが吸着剤から完全に放出された後、クロマトグラフィの解決の費用でクロマトグラフィの実行を加速させるために、または、他の価値のある生成物が後で溶出される場合、経済的の観点で有用であり得る。
【0237】
第2の変形においては、その方法は、任意の下記最終工程によって議論される:
(iv)第4及び/または第5の液体を用いて吸着剤を洗浄及び/または再生すること;それは、工程(iii)の後で導入される。
【0238】
ここでは、第4の(洗浄)液体として、大抵、非常に高い溶出強度を有し得、上述した種類の添加剤を含有し得、非特異的に溶出し得る液体が使用される。
吸着剤がクロマトグラフィのカラムの形態で使用される場合、第4の液体は、通常のまたは反対の方向における高い体積の流量に適用され得、それは、カラムの段階的な汚れ、詰まること、または、カラムの性能低下を防ぐために、その作業が吸着剤を清掃し、残基の構築し、強い吸着さもなければ化学的または生物学的な不純物を妨げ、強く吸着する特に粒子の問題を永久的に除去するからである。
医薬、衛生、安全性、通常の清掃、清潔化または滅菌の規定のために(例えば、アルカリ(1.0M水酸化ナトリウム)、酸(0.4M酢酸)、酸化物(次亜塩素酸)及び/または熱処理)、微生物の汚染を除去することが、この点で吸着剤に適用され得る。
【0239】
第5の(再条件下)液体は、吸着剤を条件化、その膨潤度、及び、本来の状態の吸着剤が修復され、一定の平衡化された条件が各分離の実行の初期に導入されるような、攻撃的で強力な溶解性の液体で処理される前及び後でそれの付着した残基を強力に溶解化するために用いられる。
溶出または清掃の液体の跡を除去することとは異なり、イオン性の残基のカウンターイオンが、存在する場合には、それにより、吸着剤の一定の酸/塩基特性を維持するために、本来の均一な分布に置き換えられ得る。
第5の液体は、第1及び第2の液体と一致することができ、通常、同じ流量で適用され得る。
例えば、意図された生成物の品質規格に達するのに重要な汚染物質の実質的な負荷に依存して、各5番目、10番目等の実行の後に、より複雑な作業を実行した後、素早く単純な洗浄/再生プログラムから切り替えることも可能である。
【0240】
分離方法を実行する方法は、中間から高い圧力の液体クロマトグラフィ技術として好ましい。
その作業の単純性に起因して、及び、上記した変形の変動のいずれかの方法によって、その方法は、親和性(膜)ろ過、固相抽出技術または、連続的な擬似移動床方式(SMB)を用いて、バッチ精製の方法において不連続に使用され得る。
また、全ての変形は、互いに組み合わされ得る。
【0241】
吸着剤の強力な化学的安定性、及び、静的及び動的な性能(約0.3Lの負荷まで、または、吸着剤1リットル当たり約20gのタンパク質またはペプチド)は、本発明で使用される5つの全ての液体の個々の変動に大きな程度の自由を許容する。
また、従来の親和性クロマトグラフィには適合しない強力な溶解性の溶出システムは、ここでは、以下のように接近可能であり、例えば、溶解力、低いコスト、低い毒性、及び、低い浪費生成物といった特性のために、液体を最適化する多くの余地がある。
その方法の実行に適合する溶液のシステムは、基本的には、分離方法の物質のための少なくとも弱い溶解特性を有している液体または液体の混合物を備えており、すなわち、特にタンパク質またはペプチド、及び、好ましくは副生成物のためであり、後者は、第2の液体にとって特に重要である。
本発明の吸着剤におけるクロマトグラフィの分離は、通常、生体適合性の制限下で実行され得るため、緩衝化された水性媒体は、多くの場合、第1、第2及び第3の液体として使用される。
タンパク質の機能を保存するために重要である緩衝材や金属塩よりも他の有機修飾剤(例えば、洗浄剤、アオトロピックな添加剤、酸化防止剤、、消泡剤)は、仮に液体に添加されることができるが、精製されるべきタンパク質またはペプチドの最も高い可能な生物学的な活性を保持するために、これらの試薬が完全に回避されることが最も良い。
少量の揮発性有機酸は、特定の分析物の検知性能を増幅させる理由で、実際の分離工程の前またはその後を通して添加され得る。
【0242】
それにもかかわらず、さらなる添加剤が使用されている場合、それらは、通常、後に、すなわち、その方法の完了後に、工程(iii)で得られた標的のタンパク質またはペプチドを含有している液体から除去されるべきであり、特に、前記タンパク質またはペプチドが結晶の形態で得られることが必要とされる場合には、除去されるべきである。
この目的を達成するために、広い範囲のそのような潜在的な追加の工程が、当業者によく知られている。
添加剤を除去するために、従って、本発明の方法は、共通の分離過程を有する他の種類とその後に同様に組み合わされ得る。
【0243】
本発明の吸着剤に対して超臨界流体を含む有機または水性の液体または液体混合物を実質的に適用することが実行可能であり得るが、固体担体材料の表面にポリマーのフィルムが存在している場合には、ポリマーのフィルムの膨潤を促進する極性の液体が与えられることが、好ましい。
液体混合物の正確な極性は、その組成の態様によって容易に微調整され得る。
【0244】
吸着された標的のタンパク質またはペプチド(及び、副生成物も)は、多くの場合、その方法の工程(iii)において即時に(オンオフ状態のように)放出されず、むしろ、ゆっくりと段階的に放出されるため、工程(iii)それ自体が、段階的に、すなわち、分画化のように、分離過程の全ての増加された解決のために、実行されることが望ましい。
それから、同じかまたは異なる2以上のサイズを有する2以上の固定体積分画は、吸着剤が第3の液体と十分時間接触された後に、該第3の液体が手動または自動で回収される。
それから、工程(iii)が繰り返され、結合された全てのタンパク質またはペプチドが放出される前に、吸着剤が、新鮮な(必要であれば、修飾された組成の)第3の液体と再び接触される。
また、第3の液体の連続した供給は、分画の採集の間に認識され得る。
各分画において放出された標的のタンパク質またはペプチドの純度及び回収率は、その後、決定され、品質/経済性に関して予め決められた許容規格に適合する分画のみがさらに処理され、一方、他の全ての分画は、廃棄されるかまたは供給原料へと再生され得る。
区域と同様に前方の溶出技術が用いられ得る。
最も良い動作及び生産性は、多くの場合、グラジエント溶出で、特に、第2の及び/または第3の液体への極性有機溶媒(低級アルコール、アセトニトリル、アセトン)の内容量を増加させることで、達成される。
しかし、一般的に、プロセスクロマトグラフィまたは製造環境において用いられる場合、段階的なグラジエントのような均一濃度の溶出または単純なグラジエント形状が、作業の単純性及び技術的な頑強性にとって好ましい。
また、pH及び塩のグラジエントは、連続的に実行され得る。
吸着剤の特定の残基に依存して、吸着剤の化学的な安定性が考慮される限り、短期間での1及び14の間の範囲のpH値、連続操作での2及び13が可能である。
それぞれの最適な液体組成は、吸着剤の実際の誘導体化度にも依存し得、その都度実験的に決定されるべきである。
従来のイオン交換吸着からその方法を明確に区別させるものは、タンパク質またはペプチドが正味のイオン電荷を含有していない、すなわち、可溶化媒体のpHがその等電点と密接に似ている場合の分離作業にも特に適用され得るという点である。
前固定のイオン交換は、本発明の吸着剤に結合強度を追加し得るのは、プロトン化し得る窒素含有残基及び非プロトン化し得る酸素含有残基の内容量に起因するが、それらの存在は、その方法の連続的な完了のために必須ではない。
同じことが、混合物における副生成物及び他の成分についても当てはまる。
荷電された相互作用が吸着剤上の複合物の吸着または分離に影響を及ぼし得る程度は、周囲の媒体の双極特性及び塩濃度によっても決定され得る。
吸着剤及び分析物の反対の荷電に対して上記で説明されたことは、いくつかの場合に付加的な引力の代わりに吸着剤からの反発及び排斥につながる、同様の前固定の荷電に対しても当てはまる。
【0245】
その方法は、そこに放出されたところの第3の液体の少なくとも1つの分画からタンパク質またはペプチドを分離する、次の工程(iii)を追加的に備えていてもよい。
調製の適用において、特徴化及び/または次の処理の目的で、第3の液体中の溶液から、濃縮化されたまたはきちんとした形態で、タンパク質またはペプチドが分離され得る。
最も簡単な方法においては、溶媒エバポレーションの緩和な方法によって(凍結乾燥、高減圧凍結乾燥を含む)、工程(iii)の液体からそれが回収され得る。
しかし、溶媒エバポレーションは、第3の液体から生じる低い蒸気圧の含有された物質を豊富化させ得る。
そのような物質は、緩衝剤塩や安定化試薬、または、より高い沸点を有する均質及び/または分解した生成物といった添加剤を含有していてもよく、該生成物は、商品的に利用可能な品質の溶媒中に、通常、微量に含有されている。
しかし、吸着剤の高い物理的または化学的な安定性に起因して、実質的に固定相から溶出させることは、工程(iii)〜(iv)の間で生じることはなく、そのため、工程(iii)で放出されたタンパク質またはペプチドは、通常、溶出した吸着剤を10ppmより少なく含有し得、または、それからの他の溶出可能な物質を含有し得る(すなわち、それの組成物(ポリマー、残基)または分解物)。
【0246】
好ましい分離の方法は、精製されたタンパク質またはペプチド、または、前記エバポレートされた残基を含有している第3の液体の結晶化工程から構成されており、必要な場合には、再溶解後に行われ得る。
例えば、液体の温度及び/または組成を変化させることによって引き起こされるような結晶化工程の間に、さらに高い精製度が達成され得、それは、低蒸気圧の汚染物質が、通常、溶液中に保持されており、これにより、標的のタンパク質の結晶から容易に分離される。
乾燥後、結晶は、多くの場合、合成や配合工程に使用される準備ができている。
乾燥段階が望まれていないか困難な場合、代わりに、精製された生成物を異なる組成の溶液へと転換することを実行する必要があり得、すなわち、第3の液体が、透析、イオン交換等の標準的な操作によって保管液体に対して交換され得る必要がある。
【0247】
また、クロマトグラフィにおいて通常であるように、その方法、及び、それが実行される関連する装置は、望ましくは、適切な検知技術によって補われ得、該技術は、鋭く細かい分画のための溶出液中の混合物における、標的のタンパク質またはペプチド、または、他の成分の品質的、半品質的または量的な測定を可能とする。
好ましい検知方法は、物理的または分光分析特性のオンラインフローセル検知を含んでおり、例えば、屈折法、旋光法、導電率法、紫外/可視吸光度法、または、蛍光法、分光法、赤外分光法、質量分析法、及び、核磁気共鳴分光法が挙げられる。
オンラインのカラム前またはカラム後の誘導体化または分解ユニットは、そのシステムに加えられることができ、そのようにするのは、分離されるべき混合物の特定の成分全てを、改良された検知性能を有する誘導体や断片に転換するためであり、または、それらの溶出を加速させたり遅くさせたりするためである。
タンパク質またはペプチドのための一般的な非破壊的な検知方法は、波長280nmでのUV吸収である。
【0248】
大スケールにおいては、本発明の吸着剤及びこの吸着剤を用いる吸着剤の分離方法は、ヒトまたは獣医の使用(例えば、抗血清またはワクチン)のための製薬または栄養の組成物の製造において、そのような組成物が、吸着剤が結合され得る、診断、治療、栄養上の価値を有する少なくともタンパク質またはペプチドを有している場合には、有益に使用されることができる。
本発明の利益は、そのような適用が、多くの場合、99%を超えるかさらには99.9%を超える範囲で価値のある活性成分の純度を必要としているという事実から、主として生じ、かかる範囲は、従来の方法によると、長く費用がかかる作業下でのみ実現することができ、この方法は、経済的な観点から適用が禁止されることになる場合もある。
【0249】
小スケールにおいては、それらは、代わりに、少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの同定、特徴付け、定量、または、実験室での精製において使用され得る。
品質及び量的な分析に関するこの目的のために、分離方法は、特定の生物学的なアッセイまたは分光分析法によって、すなわち、例えば組み合わされた技術を用いて補完され得るが、純粋で真正な試料またはペプチド標準を用いた保持体積の比較によって実現され得る。
マイクロスケールのフォーマットにおいては、それらは、プロテオミクスの適用、すなわち、細胞や有機物における複数の異なるタンパク質の同時の発現レベルの同定や定量及び修飾に対して関心がもたれ得る。
また、医療機器の部分として、それらは、生物学的な流体から少なくとも1つのタンパク質またはペプチドを除去することに使用されることができ、それは、前記生物学的な流体中の前記少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの存在によって引き起こされている病気の医学的な予防や処置を含む。
その装置は、患者が有害または感染性のタンパク質またはペプチドを既に取り込んでいるか取り込もうとしているような全ての場合において、解毒や浄化ユニットの種類として適用されることができ、それらは、例えば、病原体によって隠されているが、患者の体自体がそのような有害ままたは感染性のタンパク質を産出する全ての場合においても適用でき、多くの場合、これは、自己免疫疾患である。
取り込みの潜在的な源は、食料、水、空気、感染したヒトとの接触、輸血等を含む。
特別な適用においては、医療機器は、アフェレーシスや血漿分離交換法ユニットとして構成され得る。
そのような装置は、主として、エクスビボまたはインビボで操作され得るが、縮小された移植可能な装置としての構成も、想像の範囲内で明らかである。
患者の生物学的な流体は、(連続して、または、バッチ法のいずれかで)患者から取り出され、吸着剤を用いた処理を介して汚染物質が枯渇され、それから、患者に戻され得る。
外部源(他のヒト、動物)からの生物学的な流体も、該流体やその一部またはそれから製造された組成物が必要としている患者に投与される前に、感染病の伝染の危険性を減らすために吸着剤を用いて処理され得る。
そのような場合、本発明の分離方法は、<価値のある>分画中の標的のタンパク質またはペプチドの濃度/純度を減らすために使用され得るが(それにより、その中の価値のある標的のタンパク質またはペプチドの純度を増加させる)、一方で、<無駄な>分画において豊富化され得る。
【0250】
最終的に、それらは、吸着剤上の少なくとも1つのタンパク質またはペプチドの固定化のために使用され得る。
吸着剤と標的のタンパク質またはペプチドとの間の相互作用の非共有結合的な性質に起因して、そのような固定化は、可逆的であり得る。
これは、以下のような適用に潜在的な利点があり得、かかる適用としては、例えば、ろ過可能な試薬や結晶、表面に結合された細胞の培養、薬物送達装置(例えば、薬物溶出または治療のステント)の調製、薬物発見スクリーニングが挙げられる。
後者の場合には、本発明の分離方法は、固定されたタンパク質またはペプチドに対するさらなる化学的または生物学的な構造の結合のために試験する方法によって補完され得る。
それから、そのような第2の結合の検知は、いずれかの結合相手の可能な生理学上の効果の第1の指標として働き得る。
ポリマー被覆が使用される場合、固定されたタンパク質またはペプチドは、周囲のゲル形成媒体によって物理的に捕捉され得、これにより、高い生体適合性の環境を追加的に試み得る。
また、直接試みられることによって、ここで記載された吸着剤と少なくとも1つのタンパク質またはペプチドとの間で形成された、非共有結合的で、分離可能な複合体は、これゆえ、本発明を具体化する。
本発明の好ましいタンパク質またはペプチドとして抗体を含有しているそのような複合体は、免疫付着技術に使用され得る。
【0251】
上記で与えられた説明から直ちに誘導され得る本発明のさらなる目的は、管状の容器内に本発明の吸着剤を有する、予め充填されたカラムである。
そのようなカラムは、液体クロマトグラフィや固相抽出の適用における、固定され、望ましいサイズ(長さ×直径)を有する固定相として使用され得る。
他に、カラムといった管状の格納容器は、任意に、フリット、フィルター板、フローディストリビュータ、シール、フィッティング、スクリュー、バルブ、または、他の流体の取り扱いや接続要素といったさらなる成分を有することもでき、これらは、従来技術から知られている。
吸着剤は、重力や遠心力下で、外部的に適用された流体力学的な圧力下、または、カラム内へのピストンによる追加の軸方向の圧縮下で、スラリーとして充填され、また、そのような予め充填されたフォーマットにおいて商業的に利用可能とされ得る。
これにより、追加されたユーザーの利便性のために、より製造性に富む充填物が保障されることができ、また、固定相が、容易に保存されることができ、使用しない場合、クロマトグラフィのシステム内において素早く交換されることが可能となる。
格納容器が製造される材料(ステンレススティール、ホウケイ酸ガラス、PEEKのようなプラスチック等)は、通常、吸着剤それ自体の高い安定性が犠牲にされないように選択され、それは、カラム全体は、理想的には、適用される圧力が20barまでに対して、適用される熱が110℃まで、及び、オートクレーブ可能であることを含む一般的な清潔の規格に対して、物理的及び化学的な抵抗性による特徴を有し得る。
望ましい状況下では、これは、1,000回、好ましくは5,000回までのカラムの繰り返しの使用を可能とし得、また、全体の工程の経済性を追加し得る。
しかし、それは、使い捨て可能または焼却可能なユニットであることも可能である。
他の選択は、安く使い捨て可能な、直接の環状の吸着剤のハウジングのみが設計されることであり、また、補充の成分を含有していて全て再使用可能であり、長寿命で永続性のある材料から作製された第2の、外側のハウジング内にそれを設置することである(カートリッジシステム)。
カラムは、全クロマトグラフィシステムの部分であり得る。
上記した検知システムとは異なり、クロマトグラフィシステムの他の適切な成分は、ポンプ、流量調整、液体貯留槽、脱気装置、注入口、カラム切り替えバルブ、圧力及流量計、温度調整チャンバー、出口の採集トレイ(カルーセル)、及び、ロボットの分画装置を含んでいる。
【0252】
本発明のさらなる目的は、緩い材料(粒またはブロック(一枚岩)の設計)として、または予め充填されたカラム、カートリッジ(上記参照)として、または膜として、本発明の複数の同じかまたは異なる吸着剤の採集(または“ライブラリー”)であり、それにより、個々の吸着剤は、同じかまたは異なっていてもよい。
異なる吸着剤の採集は、例えば、適切な吸着剤のための最初のスクリーニング活動に使用され得、上記吸着剤は、より複雑な調製されたクロマトグラフィの後での構築に使用されるように計画され、一方、同じ吸着剤の採集は、例えば、同様のマトリックスを有する多数の試料を多数の医学的に診断学的な試験に使用されることができ、または、準連続的な工程のモニタリングに使用されることができる。
そのような採集の利点は、手動または自動化のいずれか態様で、平行に工程化される能力である。
そのような平行な工程は、一連の工程と比較し得るようなより高い試料の処理能力に起因する時間の節約の他にも、標準化された、または、少なくとも同じ(再製造可能な)条件下で、異なる吸着剤または他の工程パラメータを比較することを可能とする。
この利点は、特に、採集物の個々の成分が、標準化されて位置的に指定し得るフォーマットに、好ましくは、マイクロプレート配列やマイクロチップ配列、または、マルチキャピラリーやマイクロ流体装置といったロボットのワークステーションと同等の2次元の長方形の格子で配列された場合には、功績があり得る。
小型化されたフォーマットの読み出しが考慮される限り、再びプロテオミクス技術に対して参照され得る。
【0253】
上記で記載された調製方法の架橋/グラフト化で始まる全ての中間生成物は、将来の使用のために保存されるべき十分な状態である。
それから、そのような生成物は、誘導体化工程が個々の誘導体化試薬を用いて実行される複数のサブセットの中に分けられている。
そのような方法においては、異なる吸着剤のライブラリー(すなわち、異なる残基で誘導体化された吸着剤たその組み合わせ、または、異なる残基の比率や異なる誘導体化度で)は、要求に必要に応じて形成され得る。
誘導体化工程がサブセット全体で平行に実行される場合には、変化する分離目的に急速に反応することを可能とする与えられた適用のための、最も良い吸着剤の最初のスクリーニング調査を実行するために、非常に短時間でそのようなライブラリーを形成することが実行可能である。
異なる誘導体化の他に、異なるポリマーフィルム、キャリア及び/または活性化成分を含む、異なる固体担体材料も、吸着剤のライブラリーの形成に適用され得る。
無秩序または標的化されたライブラリースクリーニングは、ときには、合理的な吸着剤設計を補足し、または、置き換えさえし得ることを意味する。
標的のタンパク質またはペプチド上の吸着剤及び/またはそのカウンターパート上の異なる残基からの貢献の相対的な重要性が明らかでないような場合、構造的な情報が不足している場合、または、例えば一致した液相の選択に関する追加の堅い結合が適用される場合には、特に、それが使用され得る。
与えられた分離目的に対するそのようなライブラリーのスクリーニングは、特定の吸着剤の性能(親和性、選択性、収容力、回収、安定性等)を特徴付ける1以上のパラメータが、全ライブラリーやその1以上のサブセットを用いて連続的にまたは平行に、測定される。
最も優れた特性は、吸着剤とタンパク質またはペプチドの標的との間の複合体の形成を考えて、親和性及び選択性に関連する熱力学及び動態のパラメータである。
ライブラリーに取り込むのに適した、予め選択された吸着剤は、計算上の方法を用いて実行され得る。
【0254】
実行可能なスクリーニングは、例えば、少なくとも1つのタンパク質またはペプチド、及び、副生成物及び/または、本発明のそれぞれの吸着剤を含有している混合物を、適切なバッチ条件下で、取り扱うことから構成されることができ、また、吸着剤と標的のタンパク質またはペプチドとの間での複合体の形成における個々の平衡ギブスエンタルピーを測定し得る。
他の方法は、標的のタンパク質またはペプチドと、一方、適切に選択された副生成物とを用いた吸着剤の複合体の形成間での異なるギブスのエンタルピーを測定することから構成され得る。
測定は、例えば熱量測定法といった当業者に知られた熱力学及び/または動態の方法の助けを用いて直接実行され得る。
測定は、そのような複合体の一時的な形成で描かれた適用における工程のような条件下で、クロマトグラフィの実行の助けを用いて直接ではなくなされ得、それにより、得られた結果物は、溶出液の貢献のために修正される必要があり得る。
クロマトグラフィの環境においては、K’及びα値は、ギブスのエンタルピーまたは異なるギブスのエンタルピーそれぞれの指標として最初の近似において働く。
【0255】
本発明のさらなる目的は、透析または実験室の精製キットであり、それは、本発明の吸着剤(または吸着剤の採集、または、吸着剤を有するカラム)の他に、同じ包装ユニット内に、さらなる(または全ての)化学的または生物学的試薬及び/または本発明の分離方法を実行するために必要な使い捨て物、または、前記吸着剤が用いられ得る異なる分析、透析、実験室の方法の一揃えを有する。
分離方法が実行されるときに標準化された実験規格に従う場合、特に、吸着剤またはカラムが使い捨て装置として用いられる場合、そのような、適切な数、量または濃度の予め充填された材料の採集は、ユーザーの利便性を増加させることを意図される。
前記規格は、安全性データシート等と共に、キットに任意に伴う使用のための指図に取り込まれることができる。
【実施例】
【0256】
材料及び方法
吸着剤が、40×4mmの実質的なベッドサイズの標準的なステンレス鋼HPLCカラム(例2)、または、250×16mmの実質的なベッドサイズを有するゲテックガラスカラム(例3)内において、全てのクロマトグラフィの実験のために使用された。
カラムは、20barの圧力下で、水−メタノール(1:1)懸濁液の流式沈降によって充填された。
【0257】
ダイオネクス(正式にはGynkotek)からのHPLCシステムは、4チャンネルの低圧力グラジエントポンプ(LPG580、LPG680、LPG3400)、オートサンプラー(Gina 50、ASI−100またはWPS−300)、6チャンネルのカラム切り替えバルブ(Besta)、カラムオーブン及びダイオードアレイUV検出器(UVD 170U、UVD 340SまたはVWD 3400)から構成された。
予備的な実行のために、アクタ精製装置(AKTA Purifier、GEヘルスケア)10ユニットが利用された。
【0258】
免疫グロブリンG(オクタファルマ(Gammanorm)(登録商標)、源:ヒト血漿)は、144kDaの分子量及び等電点6.4を有していた。ヒト血清アルブミン(オクタファルマ(Octablin(登録商標)20%溶液)、源:ヒト血漿)は、66kDaの分子量及び等電点4.6を有していた。全ての他の試薬は、標準的な実験室グレードの品質のものが使用された。
ヒト血清アルブミン(オクタファルマ(Octablin(登録商標)20%溶液)、源:ヒト血漿)は、66kDaの分子量及び等電点4.6を有していた。
全ての他の試薬は、標準的な実験室グレードの品質のものが使用された。
【0259】
例1:吸着剤の調製
市販のポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーの球状樹脂ビーズ(ローム&ハース社:アンバークロム(登録商標)CG1000S)が、最初に、濃硫酸中で過剰にスルホン化された、それから、市販のポリビニルアミン−ポリビニルホルムアミドコポリマー溶液(BASF:ルパミン(登録商標))が上記多孔質性ビーズに吸着され、ビスエポキシドを用いて軽度に化学的に架橋された。
この誘導体化された中間体については、該中間体は、約0.35〜0.45mmol/mLの自由なアミノ基を含有し、ジメチルホルムアミド中で予備的に膨潤されており、インジツで活性化されたイソニコチン酸が、標準的な固相アミド結合の手順を介して、標的の誘導体化度に対応する所定の量よりもわずかに過剰にアミノ基に結合された。
第2の工程では、コハク酸無水物が、相の懸濁液に、わずかに過剰に添加されて、カルボン酸に連結されたアミノ基の特定のグレードの誘導体化が得られた。
吸着剤は、過剰な試薬が除かれるように洗浄され、一定の重量に達するまで乾燥された。
誘導体化度が、加水分解開裂を介した各誘導体化工程及びHPLCによる開裂した残基の定量分析の後に、決定された。
誘導体化度は、誘導体化されていない中間物における測定可能なアミノ基の量と比較した開裂した基の比として規定された。
この一般的な操作によって、表1に示す吸着剤が、調製された。
誘導体化の精度は、約±2%であった。組み合わされた置換と100%との間の違いは、残余のアミノ基の内容量に相当する。
【0260】
例2:IgG及びHSAを含有している、標準化された試験混合物のクロマトグラフィ
市販のヒト免疫グロブリン(IgG)及びヒト血清アルブミン(HSA)の混合物125μLが、5:1の比率でカラムに注入された。
これは、1mL当たり全タンパク質が7.2mgの吸着剤材料、それぞれ約6mg/mLのIgG及び1.2mg/mLのHSA吸着剤に関連していた。
吸着剤に結合されていないタンパク質の比率は、ゲル浸透クロマトグラフィによって、採集(流体)され、分析され、定量された。
標準化されたIgG及びHSAによって、流体中のHSA(部分的に結合していない)の存在、IgGの不存在が、それぞれ、確認されることができた。
ゲル浸透クロマトグラフィのカラムにおけるHSAの校正機能によって、流体中の結合されていないHSAが確認されることができた。
IgGは、試験された全ての吸着剤において完全に結合された。
HSAは、流体中において、50から90%までの供給量をもって定量された。
表1において、この分析で見出された2つのタンパク質の量及び比率のデータが、対応する吸着剤の構造的な組成と反対である。
【0261】


【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体担体材料を備え、その表面は、水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C5H4N)を備えた第1の残基と、カルボキシ基(−COOH)を備えた第2の残基とを有する吸着剤。
【請求項2】
前記第1及び/または第2の残基は、1及び20原子の間の長さを有する、共有結合的に結合されたリンカーを介して前記表面に付着されている請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記リンカーは、配座的に柔軟である請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記第1の残基は、式Iの構造を有するピリジン−4−カルボキシ(イソニコチン酸アミド)残基であり、且つ、前記第2の残基は、式IIの構造を有する3カルボキシアミドプロピオン酸(コハク酸モノアミド)であり、これによって、前記残基は、それらのアミド残基を介して前記固体担体材料の表面に結合されている先行する請求項のいずれかに記載の吸着剤。
【化1】

【請求項5】
前記固体担体材料の前記表面は、追加的に第3の残基及び任意に第4の残基を有する先行する請求項のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項6】
前記第3の残基は、アミンまたはアミド構造、好ましくは、第1級アミン構造を有している請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記第1及び第2の残基は、25%及び75%の間の第1の残基及び20%及び60%の間の第2の残基のモル百分率で存在しており、前記モル百分率の合計は、100%、好ましくは25から60モル%の第1の残基及び20から50モル%の第2の残基、より好ましくは25から40モル%の第1の残基及び20から30モル%の第2の残基である先行する請求項のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項8】
前記固体担体材料は、表面が前記第1及び第2の残基、及び、任意に第3及び第4の残基で少なくとも部分的に置換された官能基を有するポリマーフィルムで被覆されている先行する請求項のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項9】
前記キャリアは、ポリスチレンスルホン酸であるか、または、これを有している請求項8に記載の吸着剤。
【請求項10】
前記ポリマーは、互いに共有結合的に架橋されている独立した鎖から構成されているが、前記キャリアの表面に共有結合的にグラフト化されていない請求項8または9に記載の吸着剤。
【請求項11】
前記ポリマーは、部分的に誘導体化されたポリアミンであり、前記ポリアミンは、好ましくは、ポリビニルアミン、または、ポリアリルアミンを有する部分的に誘導体化されたコポリマーまたはポリマー混合物である請求項8〜10のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項12】
前記ポリマーは、請求項4で定義された式I及びIIの前記第1及び第2の残基によって置換されたポリビニルアミンであり、前記式のNH基が、前記ポリビニルアミンから生じる請求項11に記載の吸着剤。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれかに記載された吸着剤を調製する方法であって、以下の工程を備える:
(i)官能基を有するポリマーを提供すること;
(ii)キャリアの表面に前記ポリマーフィルムを吸着させること、
(iii)少なくとも1つの架橋剤を用いて吸着したポリマーの官能基の所定の部分を架橋すること;
(iv)水素原子が置換されていてもよいピリジル環(−C54N)を有する第1の残基、カルボキシ基(−COOH)を有する第2の残基、及び任意のさらなる残基を用いて架橋されたポリマーのさらに所定の部分を誘導化することを備える。
【請求項14】
タンパク質またはペプチドを含有する混合物からタンパク質またはペプチドを分離、または、これらの濃度及び/または純度を増加させる方法であって、以下の工程を備える。
(i)請求項1〜12のいずれかに記載された吸着剤、または、請求項13に記載された方法によって調製された吸着剤に対して、前記タンパク質またはペプチドを前記吸着剤に結合されることを可能とするのに十分な時間の間、第1の液体に溶解または懸濁されている前記混合物を接触させること;
(ii)任意に、第2の液体で前記吸着剤をすすぐこと;
(iii)前記タンパク質まはペプチドが前記吸着剤から放出されることが可能となるのに十分な間、第3の液体に対して前記結合したタンパク質またはペプチドを接触させること;
(iv)任意に、第4及び/または第5の液体を用いて、前記吸着剤を洗浄及び/または再生することを含む。
【請求項15】
前記第3の液体のpHは、分離されるべき前記タンパク質またはペプチドの等電点(pl)に接近している請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の液体のpHは、4.0から6.0までの範囲であり、前記第3の液体のpHは、6.5から8.5までの範囲である請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質またはペプチドは、4.5から8.5までの等電点plを有し、分子量が100から500,000Daまでである請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質またはペプチドは、天然の抗体(特に免疫グロブリンG)、天然の抗体から誘導された断片またはオリゴマーの関連物、遺伝子組み換え抗体、または、抗体または抗体断片を含有する融合タンパク質である請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質またはペプチドを含有している混合物は、ヒト血液、または、ヒト血液から誘導された中間体または採集生成物、特にヒト血漿または血漿の分画化工程によって得られたタンパク質の沈殿物である請求項14〜18のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−514524(P2013−514524A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543534(P2012−543534)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007759
【国際公開番号】WO2011/072873
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512158217)インストラクション・ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTRACTION GMBH
【住所又は居所原語表記】Janderstrasse 3,68199 Mannheim(DE)
【Fターム(参考)】