説明

タンパク質検出デバイスおよびタンパク質の定量分析方法

【課題】 DNAのアレイ化が不要で、低コストのタンパク質の定量分析技術を提供する。
【解決手段】 流路中の基体に、標的タンパク質を特異的に捕捉するための、基体に結合した第一の結合部と、第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と、標的タンパク質に特異的に会合し、情報伝達部が結合した第二の結合部とを有する構造体を結合し、外部から、流路中に、情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、情報伝達部との相補作用による2本鎖DNAを生成し、その2本鎖DNAを増幅し、検出することにより、タンパク質を定量分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の定量分析技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1990年代に入って進められてきたヒトゲノム計画は、各国が分担してヒトの遺伝暗号をすべて解読しようとする試みであり、2000年夏にドラフト版が完成したことが公表された。今後、機能ゲノム科学や構造ゲノム科学の進展によって、解読されたヒトゲノム配列情報の各々の箇所がどのような機能に係わっているかが明らかにされていくものと予想される。
【0003】
このヒトゲノム計画は、ライフサイエンスに関わりを持つ科学技術並びに産業に対して、大きなパラダイムの変化をもたらした。たとえば糖尿病は、血糖値が高くなるという病状に基づいて分類が行われ、発症の原因としては患者の体内でインシュリン産生能がどの程度あるかに基づいてI型(体内でインシュリンを産生できない)、II型(体内でインシュリン量の調整ができない)のような分類が行われてきた。
【0004】
ヒトゲノム計画は、血糖とインシュリンの検出、合成、分解などの調整に係わっている酵素やレセプターなどのタンパク質のアミノ酸配列構造、ならびにそのようなタンパク質の存在量の制御に係わっている遺伝子のDNA配列の情報をすべて我々に提示している。
【0005】
このような情報を使うと、血糖値の調整が正常に行われないという現象としての糖尿病は、血糖とインシュリンの検出、合成、分解などの一連の処理に係わるそれぞれのタンパク質のどれが不調なのかによって、サブタイプに分類でき、それによって適切な診断と治療を行うことが可能になるはずである。
【0006】
特に、ヒトゲノム配列に基づいて特定のタンパク質に対する薬剤を開発するゲノム創薬が精力的に進められており、このような一連の機能的にかかわりのあるタンパク質の状態を把握してゲノム創薬薬剤を投与し、症状の緩和や治癒を行う時代がくると予想される。
【0007】
しかし、このような一連の機能的に関わりのあるタンパク質の存在量を簡便に測定できる技術は、プロテオーム解析技術として発展途上にある。現在確立されている方法として、二次元電気泳動と質量分析機の組み合わせで測定が行われているが、これには比較的大がかりな装置が必要になる。従って、臨床の現場、たとえば病院の検査室やベッドサイドで患者の症状を把握するためにはあらたな技術の開発が必要とされている。
【0008】
いわゆるDNAチップにおいては、測定対象であるDNAをあらかじめPCR反応(polymerase chain reaction)によって増幅(増量)する際に蛍光色素を導入し、アレイ状に配した相補DNA鎖と結合した試料中のDNA量を蛍光強度によって定量することが可能である。しかしながら、タンパク質はPCR反応に相当する増幅を行うことができない。
【0009】
微量タンパク質を捕らえるために用いられている手法としてはELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)法などがある。ELISA法では、1次抗体を使い標的タンパク質を捕捉し、標的タンパク質の別部位を認識できる2次抗体を使用する。
【0010】
この際の認識手段としては、従来、2次抗体と蛍光標識抗体とを使い、蛍光標識抗体の蛍光発色により標的タンパク質の有無を確認していたが、その定量性の信頼性が低いという問題があった。
【0011】
その後改良が加えられ、2次抗体として酸化還元酵素連結抗体が使われるようになり、化学発光もしくは電気化学測定により標的タンパク質を確認することにより、定量性はかなり改善され、電気化学測定においてさらに改善されたという報告がある。
【0012】
このようなELISA法の標的になっているものは、生体内で微量に存在する物質である。そのため試料を検査項目毎に分割すれば、分割した数に比例して感度が低下することは避けられず、しかも、微量サンプルの厳密な分割は困難である。
【0013】
また、サンプル中の標的タンパク質を固定する部位をアレイ化することにより定量する方法も考えられるが、サンプル溶液が各アレイに均等に行き渡る必要があり、その制御は非常に困難である。さらに、タンパク質をアレイ化する際にはタンパク質の変性を避けることが困難である。
【特許文献1】特開平7−265076号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従ってタンパク質の定量分析には、DNAの配列情報を介する方法が現実的であると考えられる。しかしながら、種々のタンパク質の定量分析を可能とするにはDNAのアレイ化が必須であり、アレイ化を行う微細加工に必要な高コスト問題を避けることができない(例えば特許文献1参照。)
本発明は、上記問題を解決し、DNAのアレイ化を不要としたタンパク質の定量分析技術を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、流路中に、
基体と、
標的タンパク質を特異的に捕捉するための、基体に結合した第一の結合部と、
第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、
標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と、
標的タンパク質に特異的に会合し、情報伝達部が結合した第二の結合部と
を有する2本鎖DNA生成セクションと、
生成した2本鎖DNAを増幅するための2本鎖DNA増幅セクションと、
増幅した2本鎖DNAを検出するための2本鎖DNA検出セクションと
を有するタンパク質検出デバイスが提供される。
【0016】
本発明態様により、DNAのアレイ化をしなくてもタンパク質の定量分析が可能となるデバイスを提供できる。
【0017】
外部から、流路中に、情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、情報伝達部との相補作用により2本鎖DNAを生成し、かつ2本鎖DNAを増幅することのできること、2本鎖DNA増幅セクションが加熱可能であること、2本鎖DNA検出セクションが、タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、標的タンパク質を定量分析できること、第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が抗体を含んでなること、第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が、基体、標的タンパク質および情報伝達部からなる群から選ばれた少なくとも一つと、アビジン−ビオチン結合、オリゴヒスチジン−金属錯体結合またはhAGTとアルキルグアニン誘導体によって生じる結合で結合していること、情報伝達部が核酸であること、タンパク質信号増幅体が、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータを含むこと、2本鎖DNA検出セクションが蛍光を検出する能力を有することおよび、2本鎖DNA生成セクションを並列に複数有することが好ましい。
【0018】
本発明の他の一態様によれば、
流路中の基体に、
標的タンパク質を特異的に捕捉するための、基体に結合した第一の結合部と、
第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、
標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と
標的タンパク質に特異的に会合し、情報伝達部が結合した第二の結合部と
を有する構造体を結合し、
外部から、流路中に、情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、情報伝達部との相補作用による2本鎖DNAを生成し、
その2本鎖DNAを増幅し、検出する
タンパク質の定量分析方法が提供される。
【0019】
本発明態様により、DNAのアレイ化をしなくてもタンパク質を定量分析することができる。
【0020】
2本鎖DNA生成後の増幅段階で加熱すること、検出段階で、タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、標的タンパク質を定量分析すること、第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が抗体を含んでなること、第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が、基体、標的タンパク質および情報伝達部からなる群から選ばれた少なくとも一つと、アビジン−ビオチン結合、オリゴヒスチジン−金属錯体結合またはhAGTとアルキルグアニン誘導体によって生じる結合で結合していること、情報伝達部が核酸であること、タンパク質信号増幅体が、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータを含むこと検出段階で蛍光を検出することが好ましい形態である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、DNAのアレイ化をしなくてもタンパク質の定量分析が可能となる。デバイスの製造コストの低減を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等及び説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。図中、同一の符号は同一の要素を表す。
【0023】
本発明は、上記の課題を解決するため、アレイ化を行う代わりに、種々のタンパク質を分離せずに保持し、かつ、これらタンパク質のそれぞれの存否または量情報を読み出せる機能を有するドメインを設け、そこから随時量情報を読み出せるようにしたタンパク質検出デバイスを提供するものである。本発明に係るデバイスは、上記説明のように、タンパク質に関する存否または量情報を随時読み出せるため、タンパク質検出ライブラリと呼称することもできる。なお、本発明においては、DNAのアレイ化のようにタンパク質を整理して保持することが必要なく、種々雑多のまま上記ドメインに保持でき、しかも種々のタンパク質の存否または量情報を随時呼び出すことができるという特徴も有している。
【0024】
本発明に係るタンパク質検出デバイスは、流路中に、基体と、標的タンパク質を特異的に捕捉するための、基体に結合した第一の結合部と、第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と、標的タンパク質に特異的に会合し、情報伝達部が結合した第二の結合部とを有する2本鎖DNA生成セクションと、生成した2本鎖DNAを増幅するための2本鎖DNA増幅セクションと、増幅した2本鎖DNAを検出するための2本鎖DNA検出セクションとを有する。
【0025】
次に本発明を図を使用して説明する。図1は本発明に係る2本鎖DNA生成セクション1と2本鎖DNA増幅セクション2と2本鎖DNA検出セクション3と流路5とを有するタンパク質検出デバイス4の概念図であり、図2は2本鎖DNA生成セクション1を拡大した様子を示す概念図である。
【0026】
2本鎖DNA生成セクション1は、図2に示すように、基体21および、標的タンパク質を特異的に捕捉するための第一の結合部22と、標的タンパク質23と、第二の結合部24と、標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部25とを有する構造体26を含んでいる。第二の結合部24は標的タンパク質23に特異的に会合し、情報伝達部25に結合している。図1の2本鎖DNA生成セクション1には構造体26と結合させた基体21も示されている(構造体26自体は示されていない)。
【0027】
このような構造体を完成させるには公知のどのような方法を採用してもよい。たとえば、基体上に結合した第一の結合部により標的タンパク質を特異的に捕捉し、ついで第二の結合部が標的タンパク質23に特異的に会合し、その第二の結合部に情報伝達部を結合させることでこの構造体を得ることができる。
【0028】
また、標的タンパク質を特異的に捕捉した第一の結合部を基体に結合させてもよい。さらに、標的タンパク質に第一の結合部と第二の結合部と情報伝達部とを予め結合させた後基体に結合させてもよい。
【0029】
基体に第一の結合部を結合させる方法、第一の結合部により標的タンパク質を特異的に捕捉する方法、第二の結合部を標的タンパク質に特異的に会合させる方法および情報伝達部を第二の結合部に結合させる方法については、本発明の趣旨に反しない限りどのような方法を採用してもよい。
【0030】
典型的な例では第一の結合部や第二の結合部として抗体を使用し、情報伝達部として核酸を使用するが、そのような場合には、基体に第一の結合部を結合させる方法として、抗体を基体に結合させる公知の方法を採用することができる。第一の結合部により標的タンパク質を特異的に捕捉する方法、第二の結合部を標的タンパク質に特異的に会合させる方法および情報伝達部を第二の結合部に結合させる方法についても同様である。
【0031】
具体的には、これらの結合または捕捉には、アビジン−ビオチン結合、オリゴヒスチジン−金属錯体結合またはhAGTとアルキルグアニン誘導体によって生じる結合を利用することができる。ただし、一般に、結合の解離定数が大きいと、基体上の上記構造体の量が急速に減少したり、上記構造体の構造が不完全になりやすいので、できるだけ結合の解離定数が小さいものが好ましい。例えば解離定数が10-5以下のものが好ましい。
【0032】
本発明に係る基体としては、本発明の趣旨に反しない限りどのような材質のものも使用することができる。具体的には、ガラス、シリコン、セラミック、プラスチック等を例示することができる。また、本発明に係る流路についても同様に、本発明の趣旨に反しない限りどのような材質のものも使用することができる。
【0033】
本発明に係る第一の結合部または第二の結合部としては、本発明の趣旨に反しない限りどのようなものも使用することができるが、例えば、DNA、RNA、抗体、天然または人工の1本鎖のヌクレオチド体、天然または人工の2本鎖のヌクレオチド体、アプタマー、抗体を蛋白質分解酵素で限定分解して得られる産物、蛋白質に対して親和性を有する有機化合物、蛋白質に対して親和性を有する生体高分子、これらの複合体およびそれらの任意の組み合わせよりなる群から選ばれた少なくとも一つの物質よりなるものを挙げることができる。
【0034】
本発明に係る情報伝達部は、標的タンパク質に一対一対応する。ここで、「一対一対応する」とは、情報伝達部と標的タンパク質とが1:1対応しており、情報伝達部の有する情報を読みとることにより、標的タンパク質の情報が読みとれることを意味する。具体的には、標的タンパク質と特異的に会合できる第二の結合部毎に、互いに区別できる特定の情報伝達部を結合させることにより、このような機能を発揮させることができる。
【0035】
本発明に係る情報伝達部としては、上記の機能を有するものであればどのようなものを使用してもよい。具体的にはDNA、RNAを含む核酸であって標的タンパク質に一対一対応するものを挙げることができる。また、情報伝達部が核酸以外の構造を有していてもよい。情報伝達部に第二の結合部としての機能を持たせることも可能である。そのような場合には、情報伝達部と第二の結合部とが分離して区別できない場合もあり得る。本発明の範疇にはこのような場合も含まれる。
【0036】
本発明ではこのような2本鎖DNA生成セクションから情報を読み出す。すなわち二本鎖DNAを生成する。このためには、このような2本鎖DNA生成セクションを有する流路中に、外部から、核酸の断片であるプライマーであって上記情報伝達部の配列を認識し得るものと、dATP(デオキシアデノシン三リン酸)、dGTP(デオキシグアノシン三リン酸)、dCTP(デオキシシチジン三リン酸)およびTTP(チミジン三リン酸)を含むdNTP(デオキシヌクレオシド三リン酸)と、DNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、情報伝達部との相補作用により2本鎖DNAを生成させる。このように本発明におけるタンパク質信号増幅体は、標的タンパク質に一対一対応する核酸配列を生成または増幅する機能を有する。
【0037】
本発明に係るプライマーは情報伝達部と相補結合できるとして選択されているので、このプライマーが核酸と相補的に結合し、このプライマーの持つ情報に従い、DNA複製酵素が増幅部位を決定することにより、dNTPを原料にして、 情報伝達部の有する情報を含む2本鎖DNAが生成される。
【0038】
本発明に係るDNA複製酵素としては、高熱耐性DNA複製酵素Taqポリメレースが好適として挙げられるが、流路内の温度で安定であれば、いかなるDNA複製酵素でもよい。
【0039】
このようにして生成した2本鎖DNAは通常その量が少ないので、本発明では、増幅(すなわち、複製によりその量を増大)してから検出する。この増幅は、2本鎖DNA増幅セクションにおいてdNTPとプライマーとDNA複製酵素とにより行うことができる。ただし、特に2本鎖DNA増幅セクションを明示的に設ける必要はなく、2本鎖DNA生成セクションと2本鎖DNA検出セクションとの間に一定の保持時間があれば十分である。2本鎖DNA生成セクションと2本鎖DNA検出セクションとの間にある流路部分を2本鎖DNA増幅セクションと考えてもよい。この保持時間は、定量分析したいタンパク質の量、上記流路を流れるタンパク質信号増幅体の流量等により、実状に応じて定めることができる。
【0040】
なお、2本鎖DNAの増幅は一般に高温ほど有利であるが、タンパク質は熱に弱いので、2本鎖DNA増幅セクションを加熱し、2本鎖DNA生成セクションは加熱しないで室温程度に保つことが好ましい。2本鎖DNA増幅セクションの温度範囲としては30〜60℃の範囲が好ましい。
【0041】
2本鎖DNA検出セクションでは2本鎖DNAを検出するが、その方法としては、公知のどのような方法を使用してもよい。たとえば、後述するように、タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、上記標的タンパク質を定量分析することができる。上記タンパク質信号増幅体は、プライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含む水溶液であるが、これに、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータを含ませておき、2本鎖DNA検出セクションでその蛍光を検出する方法が信頼性が高く、好ましい。
【0042】
ここで、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータとは2本鎖DNAに特異的にインタカレーションし、その際、蛍光を発光する物質を意味する。特異的蛍光発光インタカレータとしては、サイバーグリーン1、YOYO1等を挙げることができる。なお、タンパク質信号増幅体には、この他、インタカレータの代わりに蛍光・消光一本短鎖DNA(taqman probe等)が含まれていてもよい。
【0043】
このようにして、標的タンパク質の有する情報が情報伝達部とプライマーとを介して2本鎖DNAに伝えられるので、この2本鎖DNAを検出することで標的タンパク質を定量分析することが可能となる。従って、本発明により、DNAのアレイ化をしなくてもタンパク質の定量分析が可能となる。アレイ化のための加工費用が不要となるのでデバイスの製造コストの低減を図ることもできる。
【0044】
なお、本発明において、「標的タンパク質の定量分析」とは、2本鎖DNA生成セクションに捕捉されている標的タンパク質の定量を意味するが、本発明を利用すれば、サンプル液中におけるタンパク質を2本鎖DNA生成セクションに捕捉させることにより、特定タンパク質の有無の確認および定量を行うことも可能である。
【0045】
2本鎖DNA生成セクションには複数種類のタンパク質を同時に存在させてもよい。それぞれとの一対一対合を通じて、それぞれの標的タンパク質の情報を読み出し、それぞれの定量分析に供することができる。図2について説明すれば、図2の三つの標的タンパク質23がそれぞれ別種である場合には、三つの情報伝達部25も別種になり、従って、三種類の2本鎖DNAが生じ、それぞれの分析をすれば、それぞれの標的タンパク質の定量分析が可能となるのである。従って、本発明により、DNAのアレイ化をしなくても複数種のタンパク質の定量分析が可能となる。
【0046】
本発明に係るタンパク質検出デバイスは、2本鎖DNA生成セクションを並列に複数有するものであってもよい。タンパク質検出デバイスが複数あれば、複数のタンパク質の定量をより迅速に行うことができる。この場合、2本鎖DNA増幅セクションおよび/または2本鎖DNA検出セクションが複数あるものであってもよい。
【0047】
次に、本発明に係るタンパク質の定量分析方法について説明する。本発明に係るタンパク質の定量分析方法は、流路中の基体に、標的タンパク質を特異的に捕捉するための、基体に結合した第一の結合部と、第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と標的タンパク質に特異的に会合し、情報伝達部が結合した第二の結合部とを有する構造体を結合し、外部から、流路中に、情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、情報伝達部との相補作用による2本鎖DNAを生成し、その2本鎖DNAを増幅し、検出することで行うことができる。
【0048】
本発明に係るタンパク質の定量分析方法は、上記のタンパク質検出デバイスを使用して実行することが好ましいが、他のデバイスを使用してもよいことはいうまでもない。たとえば、流路中に、基体と2本鎖DNA検出セクションとを有するデバイスについて、その基体に、標的タンパク質を特異的に捕捉するための第一の結合部と、第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と標的タンパク質に特異的に会合し、情報伝達部が結合した第二の結合部とを有する構造体を結合し、外部から、流路中に、情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、上記と同様に2本鎖DNAを生成し、増幅し、検出することができる。
【0049】
なお、本発明に係るタンパク質の定量分析方法における用語の意味および好ましい形態は上記の本発明に係るタンパク質検出デバイスにおける用語の意味および好ましい形態と同様に考えることができる。
【0050】
以下に、標的タンパク質の定量分析を具体的に例示すると次のようになる。
【0051】
(1)あるサンプル中に特定のタンパク質Aが含まれているかどうかの確認
第一の結合体および第二の結合体として、タンパク質Aに特異的に結合または会合する抗体を選択し、情報伝達部として、タンパク質Aと一対一対応する核酸を選択し、このサンプルを使用して2本鎖DNA生成セクションを構成する作業を行う。このようにして得たタンパク質検出デバイスに、外部から、流路中に、上記情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素と、特異的蛍光発光インタカレータとを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給して、2本鎖DNAを生成させる操作を行い、必要であれば2本鎖DNA増幅セクションを加熱し、2本鎖DNA検出セクションで、特異的蛍光発光インタカレータの発光の有無を検出する。この特異的蛍光発光インタカレータは、生成した2本鎖DNAとインタカレーションした場合にのみ蛍光を発するので、容易に生成した2本鎖DNAの有無を検出でき、従ってタンパク質Aの存否を判定できる。
【0052】
(2)あるサンプル中に含まれる特定のタンパク質A量の測定
第一の結合体および第二の結合体として、タンパク質Aに特異的に結合または会合する抗体を選択し、情報伝達部として、タンパク質Aと一対一対応する核酸を選択し、それらの十分な量とこのサンプルを使用して2本鎖DNA生成セクションを構成する作業を行う。このようにして得たタンパク質検出デバイスに、外部から、流路中に、上記情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素と、特異的蛍光発光インタカレータとを含んでなる、十分な量のタンパク質信号増幅体を供給し、必要であれば2本鎖DNA増幅セクションを加熱し、2本鎖DNA検出セクションで、特異的蛍光発光インタカレータの発光を検出する。
【0053】
発光は時間と共に指数関数的に増大するが、最初に2本鎖DNA生成セクションに捕捉された量が多いほど早く検出される。従って、2本鎖DNA検出セクションで、タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、標的タンパク質を定量分析すれば、その量の多寡を測定することができる。この場合、タンパク質Aの濃度が既知のサンプルについてのタンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間と比較すれば、サンプル中の絶対量を知ることもできる。具体的には、通常、図3のような結果が得られるので、例えば蛍光強度が最大値の5%に達した時までの時間を採用して比較することができる。上記の十分な量は、使用量を変えて実験することにより容易に知ることができる。使用量が過剰であっても差し支えないので、大過剰量を使用することが実際的である。
【0054】
本発明によって実現されるタンパク質検出デバイスおよびタンパク質の定量分析方法は、プロテオームチップ上へのタンパク質のライブラリ化への応用に最も期待できる。バイオメムスなどの検出器部分に、本発明に係るタンパク質検出デバイスを導入することにより、現在の微細加工の限界を超えた集積化が可能になり、低コスト化が可能になる。
【0055】
多種類のタンパク質を少量のサンプルから定量するという需要は様々な疾病において存在する。例えば糖尿病において肝細胞がインシュリンの受容状態に応じて細胞内グリコーゲン代謝を切り換えるなどの場合に、インシュリン受容体からグリコーゲン分解酵素に至る一連のタンパク質相互作用ネットワークの一部が低下ないし昂進していることを捉えようとするものがある。本件技術を使うことによって、リン酸化や糖鎖付加などのいわゆる翻訳後修飾も含めて、タンパク質のポピュレーションを捉えることが可能になるであろう。
【0056】
これにより、従来のように症状として現れた現象を大括りにして糖尿病と捉えるのではなく、相互作用ネットワークに係わるある特定のタンパク質の機能低下が糖代謝の不全を起こしているなどを把握できるようになり、機能不全の原因に対応して適切な診断と治療、ならびに治療結果の検証が可能になる。
【0057】
もちろん同様の手法は、糖尿病に限らず、高血圧症、高脂血症やその他の多因子性疾患全般に対して適用が可能である。
【実施例】
【0058】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
(cDNAの定量)
ラット肝臓組織からの末端チオール化オリゴ(dT)プライマーを用いてGubler and Hoffman法に基づいてcDNAを基体上に結合させた。
【0060】
アミノ末端磁気ビーズを2官能性(マレイイミド−スクシンイミド)試薬で処理してアミノ末端とスクシンイミド基とを反応させ、ビーズの表面にマレインイミド官能基を露出させた状態にした後、マレイミド基と上記チオール基とを反応させることによりcDNAライブラリーを基体上に固定した。
【0061】
本操作の代わりに好熱細菌由来のアビジンがコートされた磁気ビーズと末端ビオチン化オリゴ(dT)プライマーを用いることでも同様のことが可能である。
【0062】
本基体を用いてcDNA濃度が各々2桁以上異なる3組のcDNAについてその定量を試みた。DNA逐次読み出しはICAN法を用いることにより行った。結果は、図3について説明した場合と同様に、3組の間にはっきりとした差が認められた。
【0063】
本例は、タンパク質を使用せず、情報伝達部としてのcDNAを直接基体に結合させた例であるが、本発明では、情報伝達部がタンパク質と一対一対応するので、本例から、タンパク質を使用した場合にも同様の効果が得られることが容易に理解される。
【0064】
[実施例2]
(タンパク質の定量)
図4に模式的に示した流路を有するタンパク質検出デバイス4を使用した。基体21として、アマシャムバイオサイエンス社製のビーズを使用した。
【0065】
このような構成で、2本鎖DNA生成セクション1を挟んで、インレット41−アウトレット42間に、N末ビオチン修飾一本鎖GST抗体(ScFv)溶液を流した後に決まった濃度のGSTを流し、第一の結合部としてのGST抗体と標的タンパク質としてのGSTを結合させた複合体を基体に結合した。
【0066】
ついで、インレット41−アウトレット42間に、RNA標識されており、GSTに特異的に会合する抗体の水溶液を流した後、インレット41−アウトレット42間およびインレット43−アウトレット42間をバッファー液で洗浄した。このRNAが本発明に係る情報伝達部、抗体が本発明に係る第二の結合部に該当する。この抗体-RNAコンジュゲートはN末6-alkylguanine-DNA alkyltransferase融合scFvと5’末端6-アルキルグアニン修飾RNAから合成した。その結果、標的タンパク質の配列情報に対応した配列情報を有することになる。このようにして、2本鎖DNA生成セクション1(図4上、2本鎖DNA生成セクション1は基体21と同一個所に見えている。)を完成した。
【0067】
ついで、インレット41−アウトレット44間に、RNA−DNAキメラプライマー,dNTP、RNAaseH、鎖置換型DNAポリメレース(ICAN法試薬)、AMV逆転写酵素およびSYBR green 1を含む水溶液を流し、生成する2本鎖DNAの量をSYBR greenを用いることにより、蛍光を検出できる2本鎖DNA検出セクション3を使用して定量した。上記水溶液が、本発明に係るタンパク質信号増幅体、SYBR green 1が、本発明に係る、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータである。2本鎖DNA生成セクション1から2本鎖DNA検出セクション3までの流路45が、本発明に係る2本鎖DNA増幅セクション2に該当する。タンパク質検出デバイスは、2本鎖DNA生成セクション1は37℃に、それ以外は60℃に維持した。
全ての操作の間、室温に保った。
【0068】
結果は、図3と同様に濃度と代謝時間に相関関係が認められた。
【0069】
[実施例3]
(タンパク質の定量)
実施例2と同じ図4に模式的に示した構成で、2本鎖DNA生成セクション1を挟んで、インレット41−アウトレット42間に、N末ビオチン修飾一本鎖GST抗体(ScFv)とN末ビオチン修飾一本鎖GFP抗体(ScFv)混合溶液を流し、更にGSTとGFPの混合物を流した後についで、インレット41−アウトレット42間に、RNA標識されており、GSTに特異的に会合する抗体及びRNA標識されており、GFPに特異的に会合する抗体の水溶液を流した後、実施例2と同様の手法でGSTについて定量し、bufferで洗浄し、同様の手法でGFPについて定量した。
【0070】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0071】
(付記1)
流路中に、
基体と、
標的タンパク質を特異的に捕捉するための、当該基体に結合した第一の結合部と、
当該第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、
当該標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と、
当該標的タンパク質に特異的に会合し、当該情報伝達部と結合した第二の結合部と
を有する2本鎖DNA生成セクションと、
生成した2本鎖DNAを増幅するための2本鎖DNA増幅セクションと、
増幅した2本鎖DNAを検出するための2本鎖DNA検出セクションと
を有するタンパク質検出デバイス。
【0072】
(付記2)
外部から、前記流路中に、前記情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、前記情報伝達部との相補作用により2本鎖DNAを生成し、かつ当該2本鎖DNAを増幅することのできる、付記1に記載のタンパク質検出デバイス。
【0073】
(付記3)
前記2本鎖DNA増幅セクションが加熱可能である、付記1または2に記載のタンパク質検出デバイス。
【0074】
(付記4)
前記2本鎖DNA検出セクションが、前記タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、前記標的タンパク質を定量分析できる、付記1〜3のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0075】
(付記5)
前記第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が抗体を含んでなる、付記1〜4のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0076】
(付記6)
前記第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が、前記基体、標的タンパク質および情報伝達部からなる群から選ばれた少なくとも一つと、アビジン−ビオチン結合、オリゴヒスチジン−金属錯体結合またはhAGTとアルキルグアニン誘導体によって生じる結合で結合している、付記1〜5のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0077】
(付記7)
前記情報伝達部が核酸である、付記1〜6のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0078】
(付記8)
前記タンパク質信号増幅体が、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータを含む、付記1〜7のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0079】
(付記9)
前記2本鎖DNA検出セクションが蛍光を検出する能力を有する、付記1〜8のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0080】
(付記10)
前記2本鎖DNA生成セクションを並列に複数有する、付記1〜9のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【0081】
(付記11)
流路中の基体に、
標的タンパク質を特異的に捕捉するための、当該基体に結合した第一の結合部と、
当該第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、
当該標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と
当該標的タンパク質に特異的に会合し、当該情報伝達部と結合した第二の結合部と
を有する構造体を結合し、
外部から、当該流路中に、当該情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、当該情報伝達部との相補作用による2本鎖DNAを生成し、
当該2本鎖DNAを増幅し、検出する
タンパク質の定量分析方法。)
(付記12)
前記2本鎖DNA生成後の増幅段階で加熱する、付記11に記載のタンパク質の定量分析方法。
【0082】
(付記13)
前記検出段階で、前記タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、前記標的タンパク質を定量分析する、付記11または12に記載のタンパク質の定量分析方法。
【0083】
(付記14)
前記第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が抗体を含んでなる、付記11〜13のいずれかに記載のタンパク質の定量分析方法。
【0084】
(付記15)
前記第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が、前記基体、標的タンパク質および情報伝達部からなる群から選ばれた少なくとも一つと、アビジン−ビオチン結合、オリゴヒスチジン−金属錯体結合またはhAGTとアルキルグアニン誘導体によって生じる結合で結合している、付記11〜14のいずれかに記載のタンパク質の定量分析方法。
【0085】
(付記16)
前記情報伝達部が核酸である、付記11〜15のいずれかに記載のタンパク質の定量分析方法。
【0086】
(付記17)
前記タンパク質信号増幅体が、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータを含む、付記11〜16のいずれかに記載のタンパク質の定量分析方法。
【0087】
(付記18)
前記検出段階で蛍光を検出する、付記11〜17のいずれかに記載のタンパク質の定量分析方法。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る2本鎖DNA生成セクションと2本鎖DNA増幅セクションと2本鎖DNA検出セクションと示す模式図である。
【図2】2本鎖DNA生成セクションを拡大した様子を示す概念図である。
【図3】DNAの蛍光強度を縦軸に、タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間を横軸にしたグラフである。
【図4】本発明に係るタンパク質検出デバイスの模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0089】
1 2本鎖DNA生成セクション
2 2本鎖DNA増幅セクション
3 2本鎖DNA検出セクション
4 タンパク質検出デバイス
5 流路
21 基体
22 第一の結合部
23 標的タンパク質
24 第二の結合部
25 情報伝達部
26 構造体
41 インレット
42 アウトレット
43 インレット
44 アウトレット
45 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中に、
基体と、
標的タンパク質を特異的に捕捉するための、当該基体に結合した第一の結合部と、
当該第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、
当該標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と、
当該標的タンパク質に特異的に会合し、当該情報伝達部と結合した第二の結合部と
を有する2本鎖DNA生成セクションと、
生成した2本鎖DNAを増幅するための2本鎖DNA増幅セクションと、
増幅した2本鎖DNAを検出するための2本鎖DNA検出セクションと
を有するタンパク質検出デバイス。
【請求項2】
外部から、前記流路中に、前記情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、前記情報伝達部との相補作用により2本鎖DNAを生成し、かつ当該2本鎖DNAを増幅することのできる、請求項1に記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項3】
前記2本鎖DNA増幅セクションが加熱可能である、請求項1または2に記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項4】
前記2本鎖DNA検出セクションが、前記タンパク質信号増幅体を流路に投入開始した時から検出を開始するまでの時間により、前記標的タンパク質を定量分析できる、請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項5】
前記第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が抗体を含んでなる、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項6】
前記第一の結合部と第二の結合部との少なくともいずれか一方が、前記基体、標的タンパク質および情報伝達部からなる群から選ばれた少なくとも一つと、アビジン−ビオチン結合、オリゴヒスチジン−金属錯体結合またはhAGTとアルキルグアニン誘導体によって生じる結合で結合している、請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項7】
前記情報伝達部が核酸である、請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項8】
前記タンパク質信号増幅体が、2本鎖DNAに対する特異的蛍光発光インタカレータを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項9】
前記2本鎖DNA検出セクションが蛍光を検出する能力を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のタンパク質検出デバイス。
【請求項10】
流路中の基体に、
標的タンパク質を特異的に捕捉するための、当該基体に結合した第一の結合部と、
当該第一の結合部に捕捉された標的タンパク質と、
当該標的タンパク質に一対一対応し、かつ、プライマーにより配列を認識し得る情報伝達部と
当該標的タンパク質に特異的に会合し、当該情報伝達部と結合した第二の結合部と
を有する構造体を結合し、
外部から、当該流路中に、当該情報伝達部の配列を認識し得るプライマーとdNTPとDNA複製酵素とを含んでなるタンパク質信号増幅体を供給することにより、当該情報伝達部との相補作用による2本鎖DNAを生成し、
当該2本鎖DNAを増幅し、検出する
タンパク質の定量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−191886(P2006−191886A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8524(P2005−8524)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】