説明

タンパク質発現用未修飾および修飾ヌクレオチドの組み合わせを有するRNA

本発明は、タンパク質またはタンパク質断片をコードする配列を有し、未修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの組み合わせを含み、ウリジンヌクレオチドの5〜50%およびシチジンヌクレオチドの5〜50%が修飾ウリジンヌクレオチドまたは修飾シチジンヌクレオチドであるポリリボヌクレオチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリリボヌクレオチド、具体的には、未修飾ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドの組み合わせを含有するタンパク質発現用メッセンジャーRNAならびに疾患の治療および診断方法のための前記RNAの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、ヌクレオシドとして主にアデノシン、シチジン、ウリジンおよびグアノシンを有するヌクレオシドリン酸ビルディングブロックで組み立てられており、中間担体として細胞核内のDNAからDNAがタンパク質へと翻訳される細胞質へと遺伝情報を運ぶポリマーである。よって、前記メッセンジャーRNAは、遺伝子発現のための代替手段として適する。
【0003】
細胞内の生化学的過程の解明およびヒトゲノムの解明は、欠損遺伝子と疾患との間の関係を明らかにしてきた。従って、遺伝子治療によって欠損遺伝子による疾患を治療することが長い間望まれている。期待は高かったが、これに対する試みは概して失敗した。遺伝子治療についての最初のアプローチは、欠損遺伝子または欠陥遺伝子の無傷のDNAの発現を達成するために、ベクターで前記無傷のDNAを細胞核へと持ち込んで、存在しないまたは欠陥のあるタンパク質を供給することにある。これらの試みは概して成功せず、成功しないこれらの試みは実質的な副作用、具体的には腫瘍発生の増加に阻まれた。
【0004】
さらに、遺伝子欠損に起因しないタンパク質の不足またはタンパク質欠陥による疾患が存在する。そのような事例でも、考えられるのは、DNAの投与により生体内(in vivo)で関連タンパク質を生産することである。代謝において役割を果たし且つ病理的または非病理的な理由で破壊されるまたは阻害される因子の供給も、副作用の無いまたは低い核酸療法によってもたらされ得る。
【0005】
疾患につながる遺伝子欠損の治療のための、遺伝性疾患治療法へのmRNAの使用もすでに提案されている。これにおける利点は、mRNAのみが細胞の細胞質へと導入され、核内へは導入されないことである。核内への挿入は困難であり、効率的でない。さらに、ベクターまたはその一部がゲノム内へ組み込まれるならば、染色体DNAの変化が生じる、かなりのリスクが存在する。
【0006】
確かに、生体外(in vitro)で転写したメッセンジャーRNAを実際に哺乳動物組織中で発現させることができることは示されているが、疾患の治療にmRNAを使用する試みにはさらなる障害が生じる。mRNAの安定性の欠如は、哺乳動物組織中で所望のタンパク質が充分な量で利用できなくなるという問題を生じる。さらに、mRNAがかなりの免疫反応の引き金となる事実から、実質的な欠点が生じる。これらの強い免疫応答はTLR3、TLR7、TLR8およびヘリカーゼRIG−1などのToll様レセプターとの結合を通じて生じることが推測される。
【0007】
免疫反応を防ぐために、国際公開第2007/024708号では、4つのリボヌクレオチドのうちの1つが修飾ヌクレオチドにより置き換えられたRNAを使用することが提案された。具体的には、ウリジンが偽ウリジンにすべて置き換えられた場合にmRNAがどのようにふるまうかが研究された。そのようなRNA分子は、免疫原性が著しく低いことが見出された。しかしながら、これらの産物の生物学的活性は成功する治療には、未だ不充分であった。さらに、修飾により2つ以上の種類のヌクレオチドが完全に置き換えられたRNA配列は、苦労して作製できるまたは少しも作製できないことが見出された。
【0008】
核酸を用いて、必要なもしくは有益なタンパク質を身体に供給することおよび/または存在しないもしくは不足しているタンパク質による疾患を治療することを可能にするために、細胞にトランスフェクションできて、長期間細胞内に安定にとどまり充分な量のタンパク質を供給して過度に頻繁な投与が避けられる核酸を利用可能にすることが望ましい。しかしながら、同時に、その核酸は有意な程度の免疫応答を引き起してはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2007/024708号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、免疫応答の著しい減少を引き起こすか、または免疫応答の引き金とならず生理的環境下で安定な、欠損遺伝子もしくは欠陥遺伝子によって引き起こされる疾患または存在しないもしくは欠陥のあるタンパク質によって引き起こされる疾患の治療に適するか、または必要もしくは有益なタンパク質をin vivoで生産できる薬剤、すなわち、投与後ただちに分解されずに全体が治療用薬剤として適切である薬剤を提供することであった。さらに、本発明の目的は、タンパク質のin vivo生産によりプラスに影響され得る疾患の治療用薬剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に規定するようなポリリボヌクレオチドを用いて解決される。特に適するのは、その欠陥もしくは欠如が身体にとって不利である、またはその発現が身体にとって有利である、タンパク質またはタンパク質断片をコードするmRNAである。用語「ポリリボヌクレオチド」または「mRNA」が以下で用いられる場合は、文脈上他の意味が提示される場合を除き、ポリリボヌクレオチドまたはmRNAが、病気もしくは上述したような欠陥に関連したタンパク質もしくはタンパク質断片をコードするか、または身体にとって有益もしくは支援的なタンパク質もしくはタンパク質断片をコードする、ポリリボヌクレオチドまたはmRNAであることを、常に前提とすべきである。
【0012】
驚くべきことに、先に述べた課題が、次記のような場合に、リボ核酸またはポリリボヌクレオチド(以下では一般にRNAとも呼ぶ)、具体的にはメッセンジャーRNA(mRNA)を用いて解決できることが見出された。すなわち、未修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの両方を含有し、所定の含量のウリジンヌクレオチドおよびシチジンヌクレオチドがそれぞれ修飾形態で存在するRNAが用いられる場合である。
【発明の効果】
【0013】
さらに驚くべきことに、2種類のヌクレオチドが各々修飾ヌクレオチドで部分的に置き換えられたRNAは、高い翻訳およびトランスフェクション効率を示すこと、すなわち、前記RNAは既知のRNAを用いて可能であったよりも多くの細胞に感染して1細胞当たりより多くのコード化タンパク質を生産することが観察された。加えて、本発明に従って修飾したRNAは、最先端技術に由来する既知の修飾RNAまたは未修飾RNAよりも長時間活性を持つ。
【0014】
本発明のRNAで達成される効果は、未修飾RNAであっても完全に修飾したRNAであっても得られない。mRNA中の修飾ウリジンヌクレオチドおよび修飾シチジンヌクレオチドの含量は特異的に設定され、各々につき5%以上50%以下である場合に、低下した免疫原性と上昇した安定性との双方が達成できることを見出した。修飾なしでmRNAを用いる場合は、そのmRNAは極端に高い免疫原性を示し、一方、すべてのウリジンヌクレオチドおよびシチジンヌクレオチドが修飾形態で存在する場合には、治療目的を可能にするための使用としては、生物学的活性が低くなりすぎる。修飾ヌクレオチドの含量が非常に高いRNAは、非常に困難な条件下で生産することができるか、少しも生産できない。例えば、ウリジンの代わりの偽ウリジンのみと修飾シトシンおよび/または修飾アデノシンのみを含有するヌクレオチド混合物は、いずれのRNA配列も生じることができないことが実証されている。しかしながら、驚くべきことに、本発明の様式で修飾されたRNA配列は、妥当な効率で容易に生産することができる。
【0015】
加えて、修飾の性質が重要であることを見出した。本発明に従って修飾したmRNAは、低い免疫原性を示し、長い存続期間を有する。
【0016】
本発明のRNAの安定性が以前に使用された核酸に比べて著しく上昇していることが見出された。このように、本発明のmRNAは、トランスフェクション後、10日間未修飾RNAよりも10倍も多い量で検出可能であることが実証された。治療目的のための本発明のmRNAの使用は、高いトランスフェクション率だけでなく、中でも存続期間の延長を可能にし、高い安定性とそれによる長い存続期間が、患者に許容可能なさらに長時間間隔での投与を達成することを可能にする。
【0017】
このように、本発明は、治療目的で特に有用な薬剤を提供する。本発明のRNAは、RNAが細胞質へのみ導入されて細胞核へ導入されずにその活性を発揮することが必要であり、ゲノムへの組み込みの危険性が存在せず、本発明の種類の修飾が免疫反応を幅広く予防し、加えて前記修飾が本発明のRNAを急速な分解から保護するという、治療に用いられる生成物に存在する要求を満足する。従って、本発明のRNAを用いて、組織中の生理的機能を生じさせることまたは再生させること、例えば、欠損遺伝子もしくは欠陥遺伝子のせいで機能していなかったin ivoの機能を回復させ、よって欠損遺伝子もしくは欠陥遺伝子によって引き起こされた疾患を治療することを可能にする。さらに、驚くべきことに、本発明のポリリボヌクレオチドは、疾患の経過に直接的にまたは間接的に影響を有することができるタンパク質がin vivoで生産されることから、疾患に好都合に影響を与えることができることを見出した。従って、本発明によると、一般的なまたは特異的な状況で身体に有益または支援的である因子、例えば増殖因子、血管形成因子、刺激物質、誘導物質、酵素または他の生物学的活性分子をコードするポリリボヌクレオチドを提供することもできる。
【0018】
次の記載および添付図面において、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1は、種々のmRNAの免疫原性および安定性に対する異なるヌクレオチド修飾の効果を表す。図1Aは、様々に修飾されたヌクレオチドを有する種々のRNAの投与後のTNF−αレベルをプロットした図である。未修飾RNAおよび25%以下の一重修飾RNAは高レベルの炎症マーカーをもたらし、そのRNAの高い免疫原性を示すが、一方、本発明の二重に修飾したRNAについては炎症マーカーが許容量で存在する。
【図1B】図1は、種々のmRNAの免疫原性および安定性に対する異なるヌクレオチド修飾の効果を表す。図1Bは、種々の方法で修飾したmRNAの生物学的活性(トランスフェクション効率および発現)を、赤色蛍光タンパク質(RFP)について陽性である細胞のパーセンテージおよび1細胞あたりのRFP量として、ヒト細胞およびマウス細胞において表す。この図は、未修飾RNA、一重修飾RNAおよび完全修飾RNAによってコードされたタンパク質が低い含有率でのみ検出できた一方で、本発明に従って部分的に二重に修飾したRNAはその高い安定性のおかげで著しく高いタンパク質量を生じることを示す。
【図1C】図1は、種々のmRNAの免疫原性および安定性に対する異なるヌクレオチド修飾の効果を表す。図1Cは、種々の方法で修飾したmRNAの生物学的活性(トランスフェクション効率および発現)を、赤色蛍光タンパク質(RFP)について陽性である細胞のパーセンテージおよび1細胞あたりのRFP量として、ヒト細胞およびマウス細胞において表す。この図は、未修飾RNA、一重修飾RNAおよび完全修飾RNAによってコードされたタンパク質が低い含有率でのみ検出できた一方で、本発明に従って部分的に二重に修飾したRNAはその高い安定性のおかげで著しく高いタンパク質量を生じることを示す。
【図2A】図2は、多重修飾mRNAについての発現の高い安定性および長い持続期間を表す。図2Aは、種々の修飾mRNAおよび未修飾mRNAの発現の持続期間がプロットされた図を表す。データは、本発明に従って二重修飾したRNAが高い安定性と低い免疫原性との組み合わせを示すことを表す。
【図2B】図2は、多重修飾mRNAについての発現の高い安定性および長い持続期間を表す。図2Bは、種々の修飾mRNAおよび未修飾mRNAの発現の持続期間がプロットされた図を表す。データは、本発明に従って二重修飾したRNAが高い安定性と低い免疫原性との組み合わせを示すことを表す。
【図2C】図2は、多重修飾mRNAについての発現の高い安定性および長い持続期間を表す。図2Cは、未修飾RNA、一重修飾RNAおよび多重修飾RNAについてのRNA免疫沈降のデータを表す。データは、本発明に従って二重修飾したRNAが高い安定性と低い免疫原性との組み合わせを示すことを表す。
【図2D】図2は、多重修飾mRNAについての発現の高い安定性および長い持続期間を表す。図2Dは、種々のmRNAのin vivo静脈内投与後の免疫原性をプロットした図を表す。データは、本発明に従って二重修飾したRNAが高い安定性と低い免疫原性との組み合わせを示すことを表す。
【図3A】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Aは、未修飾RNAおよび多重修飾RNAで処理したマウスの肺の生物発光画像を表す。本発明に従って修飾したRNAによってのみ5日後も充分な量のタンパク質が依然として発現しており、一方で未修飾RNAを用いた発現は3日後すでに低下していることを明らかに示すことができる。
【図3B】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Bは、トランスフェクション後の時間に対する流量(フラックス)のプロット図を表す。本発明の修飾は発現の持続期間を延長することを明らかに理解することができる。
【図3C】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Cは、SP−BmRNAの投与計画を表す。
【図3D】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Dは、コントロールmRNAで処理したマウスと比較した修飾mRNAで処理したマウスの生存率を表し、本発明のRNAで処理したマウスにおける生存率が顕著に長いことを示している。
【図3E】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Eは、SP−Bをコードする本発明のRNAを用いてSP−B欠損マウスでSP−Bを再構成できたことを示すことができる免疫染色を表す。
【図3F】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Fは、細胞を含まないBALF上清中のタンパク質の分布を解析する半定量的ウエスタンブロットの結果を表す。
【図3G】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Gは、図3Cに従って処理したマウス由来の肺組織検査標本および気管支肺胞洗浄標本の画像を表す。コントロールRNAを与えられたマウス由来の肺標本および洗浄標本はSP−B欠損のために通常の肺損傷を示したが、本発明のRNAで処理したマウス由来の標本は病的でなかった。
【図3H】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Hは、図3Cに従って処理したマウス由来の肺組織検査標本および気管支肺胞洗浄標本の画像を表す。コントロールRNAを与えられたマウス由来の肺標本および洗浄標本はSP−B欠損のために通常の肺損傷を示したが、本発明のRNAで処理したマウス由来の標本は病的でなかった。
【図3I】図3は、SP−B条件的欠損マウスにおける修飾SP−BmRNAの気管内エアゾール散布後に得られた種々のテスト結果を表す。図3Iは、経時的な肺の耐性に関する図を表す。本発明のRNAでの処理に対して長期間にわたり肺機能が保持されていたが、一方、コントロールRNAで処理した動物では肺損傷が見られた。
【図4】図4は、未修飾mRNAおよび様々に修飾したmRNAについて、産生したRFPの蛍光強度を時間に対するプロット図を表す。修飾mRNAは、未修飾mRNAと比較して、遅れて弱く翻訳される。
【図5】図5は、異なるmRNAで処理したマウスの炎症マーカーをプロットした3つの図を示す。本発明に従って修飾したRNAは炎症反応を引き起こさないが、一方で未修飾RNAは強い免疫反応をもたらすことを明らかに理解することができる。
【図6】図6は、本発明の異なるmRNAで処理したマウスの異なる種類の肺標本がプロットされた図を表す。パラメータは、組織弾性(HL)、組織減衰(tissue damping)(GL)、組織慣性 (tissue inertia)、気道抵抗(Rn)および肺組織組成Eta(GL/HL)である。本発明のRNAについて、ポジティブコントロール群と比較して悪化したパラメータはなかった。
【図7】図7は、異なる含量の修飾ヌクレオチドを有するmRNAについてRFP陽性細胞の含有率をプロットした図で、異なる含量の修飾ヌクレオチドを有するmRNAの発現能力を表す。この比較は、本発明に従って修飾したmRNAのみが長期にわたる発現をもたらし、一方、本発明に従って修飾していないmRNAはヒト細胞でもマウス細胞でもより少ない程度で発現することを示している。
【図8】図8は、様々に修飾したヌクレオチドを有するmRNAについてRFP陽性細胞の含有率をプロットした図で、様々に修飾したmRNAの発現能力を表す。この比較は、本発明に従って修飾したmRNAのみが長期にわたる発現をもたらし、一方で、本発明に従って修飾していないmRNAはヒト細胞でもマウス細胞でもより少ない程度で発現することを示している。
【図9】図9は、凍結乾燥した本発明のmRNAの安定性を表す。
【図10A】図10Aは、種々の修飾ヌクレオチドについてトランスフェクション効率をプロットした図を表す。最高のトランスフェクション効率は10%のウリジンヌクレオチドと10%のシチジンヌクレオチドと任意により5%のさらなるヌクレオチドも修飾したRNAで実現されることが明らかに理解できる。
【図10B】図10Bは、免疫反応のマーカーとしてのTNF−α産生を様々に修飾したヌクレオチドを有するRNAについてプロットした図を表す。これらは、各々5μgのmRNAでトランスフェクションしたヒトPBMCのELISAの結果である。他に明記しない限り、各々における修飾率は10%であった。5%〜50%のウリジンヌクレオチドおよびシチジンヌクレオチドが修飾されたRNAは未修飾RNAと比較して顕著に低下した免疫原性を有することが明らかに理解できる。
【図11A】図11は、本発明に従って修飾したEPOをコードするmRNAの安定性および免疫原性を測定した種々の試験結果を表す。図11(a)は、異なる方法で修飾したEPOをコードするmRNAの投与後14日目に検出可能なエリスロポエチンの含量を表す。本発明に従って修飾したmRNAを注射したマウスでの14日後のEPO含量は、未処理マウスにおけるよりも4.8倍高いが、未修飾RNAで処理したマウスにおけるよりも4.8倍高く且つ一重修飾RNAで処理したマウスにおけるよりも依然として2.5倍高いことが明らかに理解できる。
【図11B】図11は、本発明に従って修飾したEPOをコードするmRNAの安定性および免疫原性を測定した種々の試験結果を表す。図11(b)は、異なる修飾を有するEPOコードmRNAの投与後14日目および28日目のヘマトクリット値を表す。この図は、本発明に従って修飾したmRNAで処理したマウスがかなり高いヘマトクリット値を有することを明らかに示している。
【図11C】図11は、本発明に従って修飾したEPOをコードするmRNAの安定性および免疫原性を測定した種々の試験結果を表す。図11(c)の図において、免疫反応に典型的な因子の産生をプロットする。未修飾mRNAの投与で4つの炎症マーカーがすべて上昇しているが、一方で、本発明に従って修飾したRNAでは免疫反応がほとんど検出不可能であったことが分かる。
【図11D】図11は、本発明に従って修飾したEPOをコードするmRNAの安定性および免疫原性を測定した種々の試験結果を表す。図11(d)の図は、炎症マーカーでもあるIFN−αおよびIL−12についての対応する値を表す。ここで、本発明に従って修飾したmRNAは、未修飾mRNAと対照的に、ほとんど免疫反応を引き起こさないことも分かる。
【図12】図12は、本発明に従って修飾されたSP−B mRNAを1週間で2回(B)もしくは28日間のうち1週間あたり2回(C)与えられた、または修飾EGFPLuc mRNAを与えられた比較群(A)の3群のマウスの生存率をプロットした図を表す。SP−B mRNAを与えられた間のみマウスが生存していることが分かる(B、C)。SP−B mRNAの供給がなければ、マウスは死亡する(A)。
【図13】図13は、未修飾SP−B mRNA、本発明に従って修飾したSP−B mRNAまたはSP−BプラスミドDNAの投与8時間後のマウスの気管支肺胞洗浄でのサイトカインレベルを表す。この結果は、各々が炎症マーカーIFNγおよびIL−12の顕著な上昇をもたらす未修飾mRNAまたはプラスミドDNAの気管内投与と対照的に、本発明に従って修飾したSP−B mRNAの投与ではそれらの炎症マーカーは、パーフルオロカーボン処理群または未処理群と比較して実際には上昇しなかったことを示している。
【図14】図14は、本発明に従って修飾したmEPO mRNAの反復投与後に得られたヘマトクリット値を表す。この結果は、本発明に従って修飾したmEPO mRNAの反復投与が充分に許容され、ヘマトクリットの長期持続的な上昇をもたらすことを示している。
【図15】図15は、本発明に従って修飾した異なる形態のRNAを含有するコーティングが与えられたチタンインプラントと共にインキュベーションした細胞のルシフェラーゼ発現を表す。チタンプレート上に塗布された遅延放出ポリマーのコーティング中に含まれ且つ前記コーティングから徐々に放出された本発明に従って修飾したRNAは、その活性を失わなかったことが分かった。
【図16】図16は、チタンインプラント上に塗布したコーティングに含まれる修飾mRNAのルシフェラーゼ発現を表す。本発明に従って修飾したmRNAのタンパク質発現は未処理RNAのタンパク質発現よりもはるかに多かったが、またプラスミドDNAのタンパク質発現よりも多かったことが分かった。
【図17A】図17Aおよびそれぞれ、マイクロRNA142−3pに対するマイクロRNA結合部位を有するmRNAについてのRFP陽性細胞の相対含量を表す。マイクロRNA結合部位を有するRNAについてRFP陽性細胞の含量が低かったことが分かった。
【図17B】図17Bは、マイクロRNA142−3pに対するマイクロRNA結合部位を有するmRNAの相対RFP発現を表す。対応するマイクロRNA142−3pを含有する細胞でのコードタンパク質の発現がかなり低かったことが分かった。
【図18】図18は、マイクロRNA結合部位の組み込みによって修飾した、RFPをコードするRNAの配列を表す。RFP配列は、灰色の背景で示す。スペーシング配列を有するマイクロRNA142−3pに対するマイクロRNA結合部位(薄灰色の背景を有する)の4回縦列反復に下線を引く。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によると、部分的に多重修飾したヌクレオチドを有するポリリボヌクレオチド分子、部分的に修飾したmRNA、IVT mRNA、および 欠損遺伝子もしくは欠陥遺伝子による疾患の治療用または因子、刺激物質、誘導物質または酵素などのタンパク質のin vivo供給により緩和もしくは治癒することができる疾患の治療用薬剤の製造のためのRNA分子の使用が提供される。さらなる態様において、本発明のmRNAは、関連する細胞においてのみ所望のmRNAの作用を可能にするために、標的結合部位、標的とする配列および/またはマイクロRNA結合部位と組み合わされる。さらなる態様において、本発明のRNAは、3’ポリA尾部の下流のマイクロRNAまたはshRNAと組み合わされる。さらなる態様において、さらに特異的な修飾によって、作用の持続期間が調節されたまたは延長されたRNAが提供される。
【0021】
このように、本発明の主題は、上昇した安定性と低下した免疫原性とを有するRNAである。本発明のRNAは、それ自体が既知の様式で作製することができる。概して、前記RNAは、病気に影響を与えることができるか、またはその不足もしくは欠損形態が疾患を引き起こす、無傷のタンパク質または所望のタンパク質をコードするDNAの転写によって作製される。
【0022】
本発明の文脈上、RNAとは、細胞内へ入った場合に、タンパク質もしくはタンパク質断片の発現に適するか、またはタンパク質もしくはタンパク質断片へ翻訳可能である、ポリリボヌクレオチド分子を意味すると理解すべきである。本明細書中の用語「タンパク質」は、いずれもの種類のアミノ酸配列、すなわち、各々がペプチド結合を介して連結された2個以上のアミノ酸の鎖を包含し、ペプチドおよび融合タンパク質も含む。
【0023】
本発明のRNAは、細胞内または細胞の近傍で機能が必要とされるか、もしくは有益である、タンパク質またはタンパク質断片、例えば、細胞内もしくは細胞の近傍で、その不足もしくは欠陥形態が疾患もしくは病気を引き起こすタンパク質、または身体にとって有益な過程を促進することができるタンパク質、をコードするリボヌクレオチド配列を含む。概して、本発明のRNAは、完全なタンパク質またはその機能性変異体の配列を含む。さらに、前記リボヌクレオチド配列は、因子、誘導物質、刺激物質もしくは酵素またはそれらの機能性断片として働くタンパク質であって、疾患、特には代謝性疾患を治療するためまたは新しい血管の形成などのin vivoの過程などを開始するためにその機能が必要なものであるタンパク質をコードすることができる。本明細書中、機能性変異体とは、細胞内での機能が必要とされるか、またはその不足もしくは欠陥形態が病理的であるタンパク質の機能を、細胞内で発揮できる断片を意味すると理解される。加えて、本発明のRNAは、さらなる機能性領域および/または3’もしくは5’非コード領域も有することができる。前記3’および/または5’非コード領域は、コードタンパク質に天然に隣接する領域またはRNAの安定化に貢献するその他の人工配列とすることができる。当業者であれば、各事例においてこの目的に適切な配列をありふれた実験によって発見することができる。
【0024】
好ましい態様において、RNAは、特に翻訳を向上させるために、m7GpppGキャップ、内部リボソーム進入部位(IRES)および/または3’末端のポリA尾部を含む。RNAは、翻訳を促進する領域をさらに含むことができる。本発明のRNAにとって重要なのは、その修飾ヌクレオチドの含量である。
【0025】
上昇した安定性と低下した免疫原性とを有する本発明のRNAは、その生産のために修飾シチジンヌクレオチドおよび修飾ウリジンヌクレオチドの含量が設定されたヌクレオチド混合物を用いることによって得られる。本発明のRNAは、好ましくは、未修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドとの両方を含むヌクレオチド混合物を用いて生成し、該ヌクレオチド混合物においては、5%〜50%のシチジンヌクレオチドおよび5%〜50%のウリジンヌクレオチドが修飾されている。アデノシン含有ヌクレオチドおよびグアノシン含有ヌクレオチドを用いることもできる。いくらかのATPおよび/またはGTPをも修飾されたヌクレオチド混合物を用いることもできるが、、その修飾が存在する場合、その含量は20%を超えるべきでなく、好ましくは0.5%〜10%の範囲内とすべきである。
【0026】
従って、好ましい態様において、5%〜50%の修飾シチジンヌクレオチドおよび5%〜50%のウリジンヌクレオチドおよび50%〜95%の未修飾シチジンヌクレオチドおよび50%〜95%の未修飾ウリジンヌクレオチドを有するmRNAが提供され、アデノシンヌクレオチドおよびグアノシンヌクレオチドは、未修飾であってもまたは部分的に修飾されていてもよく、好ましくは 未修飾形態で存在する。
【0027】
好ましくは10%〜35%のシチジンヌクレオチドおよびウリジンヌクレオチドが修飾され、特に好ましくは修飾シチジンヌクレオチドの含量が7.5%〜25%の範囲内であり、修飾ウリジンヌクレオチドの含量が7.5%〜25%の範囲内である。本発明の修飾が存在する前提条件下で、相対的に低い含量の、例えば各10%のみの修飾シチジンおよびウリジンヌクレオチドは実際に所望の特性を達成できることが見出された。
【0028】
ヌクレオシドの修飾の性質は安定性に対する効果を有し、従って、mRNAの存続期間および生物学的活性に効果を有する。適切な修飾を下記の表に提示する。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明のRNAについて、ウリジンヌクレオチドとシチジンヌクレオチドのいずれか一方の全てを、同じ形態へと各々修飾することもでき、各々について、修飾ヌクレオチドの他の混合物を用いることもできる。修飾ヌクレオチドは、天然に存在する修飾を有することもでき、または天然に存在しない修飾を有することもできる。種々の修飾ヌクレオチドの混合物を用いることができる。このように、例えば、修飾ヌクレオチドのある部分が天然の修飾を有することもでき、一方で別の部分が天然に存在しない修飾を有するか、または天然に存在する修飾ヌクレオチドおよび/もしくは天然に存在しない修飾ヌクレオチドの混合物を用いることができる。また、修飾ヌクレオチドの一部が塩基修飾を有することができ、別の部分が糖修飾を有することもできる。同様に、全ての修飾が塩基修飾である、または全ての修飾が糖修飾である、またはそれらの適切な混合物のいずれかであることが可能である。修飾のバリエーションによって、本発明のRNAの作用の安定性および/または持続期間を選択的に調節することができる。
【0031】
本発明の一態様において、少なくとも2つの異なる修飾が1つの種類のヌクレオチドに用いられ、その1つの種類の修飾ヌクレオチドは官能基を有し、該官能基を介してさらなる基が付着される。異なる基の付着のための結合部位を提供するために、異なる官能基を有するヌクレオチドを用いることもできる。従って、例えば、一部の修飾ヌクレオチドが、アジド基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基または所定の条件下での反応に適切な他の反応基を持つことができる。官能基は、天然に存在する結合可能な基をある種の条件下で活性化することができるものであって、よって機能を有する分子を結合することができるものとしてもよい。結合部位を提供するように修飾されたヌクレオチドを、アデノシンまたはグアノシン修飾として導入することもできる。特定の適切な修飾の選択および利用可能となる結合部位の選択は、どのような基が導入されるか、およびどのような頻度で存在するかに依存する。従って、官能基および/または活性化基を提供されるヌクレオチドの含量は、結合される基がどの程度高い含量で存在するかに依存し、当業者が容易に決定することができる。概して、官能基および/または活性化基で修飾されたヌクレオチドの含量は、存在するならば、修飾ヌクレオチドの1%〜25%である。当業者であれば、必要に応じて、各事例における最も適切な基およびその最適含量を、通常なし得る実験によって決定することができる。
【0032】
本発明のRNAが、修飾ウリジン含有ヌクレオチドとして2’-チオウリジンを用いた場合に特に良好な結果を達成することができることが見出された。さらに、本発明のRNAは、修飾シチジンヌクレオチドとして、5’-メチルシチジンを含有することが好ましい。従って、これら2つのヌクレオチドが好適である。また、これら2つの修飾の組み合わせが好ましい。特に好ましい態様においては、これら2つのヌクレオチドが、各々10%〜30%の含量で存在する。修飾ヌクレオチドの総含量が特定のヌクレオチド種の50%を超えない限りは、別の方法で修飾したヌクレオチドが任意に存在してもよい。
【0033】
5%〜50%。特に好ましくは5%〜30%、特には7.5%〜25%のウリジンヌクレオチドが2’−チオウリジンヌクレオチドであり、5%〜50%、特に好ましくは5%〜30%、特には7.5%〜25%のシチジンヌクレオチドが5’−メチルシチジンヌクレオチドであり、アデノシンヌクレオチドおよびグアノシンヌクレオチドは未修飾または部分的に修飾されたヌクレオチドとして存在し得るポリリボヌクレオチドが好ましい。好ましい態様において、この本発明のmRNAはさらに7’−メチルグアノシンキャップおよび/またはポリ(A)末端を有する。従って、好ましい態様において、前記mRNAは、その成熟形態で、すなわちGppGキャップ、IRESおよび/またはポリA尾部を有して生成される。
【0034】
特定のRNAに対する修飾ウリジンヌクレオチドおよび修飾シチジンヌクレオチドの最適な種類および含量は、通常なし得る実験を用いて決定することができる。この文脈上、その免疫原性が非常に低くて処置した生物がストレスを受けず、所定の安定性を有し従って所定の発現持続期間を有するmRNAを、最適なものとして記載する。これらの特性を試験および測定するための方法は、当業者に知られており、下記および実施例において記載されている。
【0035】
本発明のRNAは、それ自体既知の様式で生成することができる。本発明のmRNAは、例えば5%〜50%、好ましくは5%〜30%、特には7.5%〜25%のシチジンヌクレオチドおよび5%〜50%、好ましくは5%〜30%、特には7.5%〜25%のウリジンヌクレオチドが修飾されて残りが未修飾であるATP、CTP、GTPおよびUTPの混合物からin vitro転写によって生成される方法を好適に採用できる。グアノシンヌクレオシドおよびアデノシンヌクレオシド、特にアデノシンを任意に修飾することもできる。しかしながら、UTPおよびCTPの規定した範囲内の修飾が本発明には必須である。修飾UTPおよび/または修飾CTPの含量が低いまたは高い場合、有利な特性はもはや達成されない。このように、主張した範囲外のmRNAはもはやそれほど安定でないことが見出された。さらに、低い含量の修飾では免疫反応が予想される。未修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドとの適切な比率を設定するために、ヌクレオチド混合物を用いてRNAが適切に作製され、前記ヌクレオチド混合物のヌクレオシド含量は、本発明に従って少なくとも5%のウリジンヌクレオシドおよび少なくとも5%のシチジンヌクレオシドが修飾されているが、全部でウリジンヌクレオチドおよびシチジンヌクレオシドのそれぞれ50%以下が修飾されている所望の比率に従って部分的に修飾され部分的に未修飾である。さらに、ヌクレオシド、すなわちアデノシンおよびグアノシンは修飾することができ、しかしながら、また、これらのヌクレオシドについて修飾が50%の上限、好ましくは20%を超えるべきでない。好ましくは、ウリジンヌクレオシドおよびシチジンヌクレオシドの適切な含量のみを修飾する。
【0036】
修飾されるヌクレオシドは、天然に存在するヌクレオシドに見出されるような修飾、例えばメチル化または結合変異を有することができるが、「合成的な」、すなわち天然に存在しない修飾も有することができ、あるいは天然のおよび/または合成的な修飾を有するヌクレオチドの混合物を用いることができる。従って、少なくとも1種類の天然に修飾されたヌクレオシドを、同じ種類もしくは別の種類の合成的に修飾されたヌクレオシドと、または別の種類の天然に修飾されたヌクレオシドのみと、別の種類の合成的に修飾されたヌクレオシドのみともしくは別の種類の天然に/合成的に修飾された混合ヌクレオシドと組み合わせることができる。ここで、本明細書中「種類」とはヌクレオシドの種類、すなわち、ATP、GTP、CTPまたはUTPを指す。数多くの事例において、上で明記するように、免疫原性および安定性の改良のため、または特性の調整のため、結合部位を供給する官能基を有する修飾ヌクレオシドと機能的に修飾されていないヌクレオシドとを組み合わせることが有益であり得る。もっとも適切な種類または組み合わせは、例えば下にも記載するような実験などの、通常なし得る実験によって、当業者が容易に見出すことができる。特に好ましくは、修飾ヌクレオシドとして2−チオウリジンおよび5−メチルシチジンが用いられる。機能的に修飾したヌクレオシドが所望される場合は、2’−アジドヌクレオシドおよび2'−アミノヌクレオシドが好ましいと考えられる。
【0037】
本発明で用いるmRNAの長さは、供給される、または補充される遺伝子産物、またはタンパク質もしくはタンパク質断片に依存する。従って、mRNAは非常に短く、例えば20〜30ヌクレオチドのみを有するものであってもよく、あるいは数千ヌクレオチドを有する遺伝子の長さに対応するものであってもよい。当業者であれば、その都度、通常の手法で適切な配列を選択することができる。
【0038】
用いるmRNAにとって必須であるのは、疾患を引き起こすタンパク質、疾患を緩和するもしくは予防するタンパク質、または有益な特性を制御するタンパク質の機能を提供できることである。
【0039】
本発明のRNAの生成のため、修飾ウリジン含有ヌクレオチドとして、好ましくは2'−チオウリジンが用いられる。さらに、修飾シチジンヌクレオチドとして、5’−メチルシチジンを用いることが好ましい。従って、本発明のRNAの生成のため、好ましくはATPおよびGTPに加えて95%〜50%の未修飾CTPおよび95%〜50%の未修飾UTPおよび5%〜50%の2'−チオウリジンヌクレオチドおよび5%〜50%のメチルシチジンヌクレオチドをそれぞれ含むヌクレオチド混合物を用いる。従って、5%〜50%、好ましくは5%〜30%、特には7.5%〜25%のウリジンヌクレオチドが2’−チオウリジンヌクレオチドであり、5%〜50%、好ましくは5%〜30%、特には7.5%〜25%のシチジンヌクレオチドが5’−メチルシチジンヌクレオチドであり、アデノシンヌクレオチドおよびグアノシンヌクレオチドは未修飾ヌクレオチドであるポリリボヌクレオチドが特に好ましい。このような組み合わせは、特に高い安定性によって特徴づけられる部分的修飾RNAの生成をもたらす。CTPおよびUTPとしてそれぞれ5%〜50%の2−チオウリジンヌクレオチドおよび5−メチルシチジンヌクレオチドを含んだヌクレオチド混合物を用いて生成したRNAが、特に安定である、すなわち、未修飾RNAまたは既知の様式で修飾したRNAと比較して最大10倍までの長い存続期間を有することが示された。
【0040】
さらに好ましい態様において、5%〜50%の修飾ウリジンヌクレオチドまたは修飾シチジンヌクレオチドのうちの1%〜50%、好ましくは2%〜25%が修飾として結合部位作製基または活性化基を有するヌクレオチドである、すなわち、0.5%〜20%、好ましくは1%〜10%のシチジンヌクレオチドおよび/またはウリジンヌクレオチドが、例えばアジド基、NH基、SH基またはOH基などの結合部位を作製する修飾を有することができる。この組み合わせを通じて、特に安定であり多用途でもあるRNAが提供される。
【0041】
さらに、未修飾ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドからできているポリリボヌクレオチド分子は、7'−メチルグアノシンキャップおよび/またはポリ(A)尾部を有することが好ましい。加えて、RNAは、当業者に周知の付加的な配列など、例えば、非翻訳領域および機能性核酸を有することもできる。
【0042】
本発明のRNAは、好ましくはin vitro転写RNA(IVT RNA)として提供される。In vitro転写を行うために必要な材料、具体的には緩衝液、酵素およびヌクレオチド混合物は、当業者に既知であり、市販されている。本発明のRNAの生成のために使用されるDNAの性質も重要でなく、一般にはクローン化DNAである。
【0043】
上に明記したように、所望の含量の修飾ウリジンヌクレオシドおよび修飾シチジンヌクレシチドを有するRNA、具体的にはmRNAが提供される。特異的mRNAについての修飾ウリジンヌクレオシドおよび修飾シチジンヌクレオシドの最適含量は、当業者に周知のありふれた実験によって決定することができる。
【0044】
本発明のRNAは、好ましくは、疾患の治療のためまたは身体にとって有益なタンパク質の供給のために使用される。疾患の治療のために本発明のRNAが用いられる場合、本発明のRNAは、好ましくは、その欠陥もしくは不足が疾患状態をもたらす、またはその供給が病気の緩和をもたらす、タンパク質またはタンパク質断片のin vitro転写を有する。本発明のRNAの生成のために、好ましくは、その欠陥もしくは不足が疾患をもたらす、または病気と関係のある、タンパク質またはタンパク質断片をコードするDNAが用いられる。一態様において、その欠陥または欠如により疾患または病気が生じる遺伝子のDNAが、本発明のRNAの生成のために用いられる。別の態様において、その存在(おそらくは一時的な)が生物にとって有益であるまたは治癒をもたらすタンパク質をコードするDNAが、本発明のRNAの生成のために用いられる。本明細書において、身体的なおよび/もしくは精神的/心理的な障害もしくは変化が主観的におよび/もしくは客観的に存在するか、または身体的、精神的もしくは心理的な過程の異常な経過が医療を必要とし働けないことをもたらす、いずれもの状態を疾患または病気と呼ぶ。
【0045】
本明細書において、その存在が病気を緩和することができる、または身体にとって有益もしくは支援的であり得る、タンパク質またはタンパク質断片とは、ある種類の障害のため、もしくは自然環境のために失われることから、またはある種の条件下、例えば欠陥の治療もしくは埋込みという状況で身体にとって有益であり得ることから、身体にとって完全にまたは一時的に遺伝的な欠陥が存在することなく利用可能とされる、タンパク質またはタンパク質断片を意味すると理解される。これらは、変化した形態のタンパク質またはタンパク質断片、すなわち代謝の経過で変化するタンパク質の形態、例えば、タンパク質の成熟形態なども含む。成長過程の一部および血管形成を担い、例えば制御された再生に必要であり、そして本発明のmRNAの導入によって特異的に形成することができるタンパク質も提供できる。これは、例えば成長過程において、または骨欠損、組織欠損の治療に、また埋込みおよび移植の状況において、有用であり得る。
【0046】
埋込み型プロテーゼの内殖を促進するために、本発明に従って修飾したmRNAを有利に用いることができることを見出した。歯のインプラント、股関節内部プロテーゼ、膝関節内部プロテーゼまたは脊椎椎体固定物(vertebral fusion body)などの挿入されるプロテーゼの表面上に適用する場合、本発明のmRNAは、内殖、血管の新生、および新たに挿入されたプロテーゼに必要なその他の機能を促進することができる因子を放出することができる。このように、例えば、プロテーゼの埋め込みの状況下またはその後において、BMP-2などの増殖因子または血管形成因子などの生物学的活性物質の投与が知られている。生体物質は極端に短い半減期を有することが非常に多いことから、患者に重篤な副作用を生ぜしめる、非常に高い用量を予め使用する必要があった。本発明によれば、本発明のRNAを使用して所望のおよび/または必要なタンパク質が選択的に使用され適切に投与されることから、この欠点が回避される。これは、副作用を低減するか、あるいは患者に副作用を与えない。この態様において、増殖因子、血管形成因子その他などの所望のおよび/または必要な物質をコードする本発明のRNAは、規則的な様式でRNAを放出するコーティングとしてインプラント上に施すことができ、次いで規則的な様式で前記コーティングから放出することができ、前記インプラントの近傍の細胞は、所望の因子を連続的にまたは断続的に産生する、または必要に応じて放出することができる。その放出特性が特異的に調節できる担体、通常は生体適合性である、合成、天然または天然−合成混合のポリマーは周知であるため、本明細書中でより詳細な説明は省略する。例えばポリラクチドポリマーまたはポリラクチド/グリコリドポリマーが用いられる。このようにして、所望の部位に、より長い時間またはより短い時間をかけて、連続的または断続的に所望の因子を選択的に放出することが可能である。
【0047】
本発明の文脈上、欠損遺伝子もしくは欠陥遺伝子または欠損もしくは欠如とは、発現されない、不正確に発現される、または適切な量で発現されず、結果として、例えば代謝障害を引き起こすことによって、疾患または病気を引き起こす遺伝子を意味すると理解される。
【0048】
本発明のRNAは、タンパク質が、身体内に天然に存在するはずであるが、遺伝子の欠陥または疾患のために存在しないか、または欠損型もしくは不足量で存在して身体に供給される、いずれもの事例において、適切に使用することができる。その欠損または欠陥が疾患と関連しているタンパク質およびそれらをコードするDNAが既知である。その欠如の事例に本発明のRNAを使用することができる種々のタンパク質および遺伝子を以下に列挙する。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
欠陥遺伝子に基づく他の疾患を下記に明記する。
【0052】
【表4】

【0053】
このように、上記の表は、その欠陥により生じる疾患が、本発明のRNAを用いる転写置換療法によって治療可能である、遺伝子の例を示す。特に本明細書において、例えば、SPB欠損症、ABCA3欠損症、嚢胞性線維症およびα1−アンチトリプシン欠損症などの肺に影響を与える遺伝性疾患、血漿タンパク質に影響を与えて凝固不能および補体不全を引き起こす遺伝性疾患、例えばSCIDなどの免疫不全、肺血性肉芽腫、ならびに蓄積症を挙げることができる。これらの疾患すべてにおいて、タンパク質、例えば酵素が、欠陥性であり、欠陥遺伝子によってコードされるタンパク質、またはその機能性断片を利用可能にする本発明のRNAを用いる療法によって治療することができる。
【0054】
このように、本発明のRNAによってコードすることができるタンパク質の例は、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン(ソマトトロピン、hGH)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、GM−SCF、G−CSF、MPS、プロテインC、ヘプシジン、ABCA3およびサーファクタントタンパク質Bなどの増殖因子類である。本発明のRNAを用いて治療することができる疾患のさらなる例は、血友病A/B、ファブリー病、CGD、ADAMTS13、ハーラー病、X染色体仲介性A−γ−グロブリン血症、アデノシンデアミナーゼ関連免疫不全症、およびSP−Bに関連する新生児の呼吸窮迫症候群である。特に好ましくは、本発明のmRNAがサーファクタントタンパク質B(SP−B)またはエリスロポエチンについての配列を含む。本発明に従って修飾されたRNAによってコードすることができるタンパク質のさらなる例は、BMP−2などの増殖因子または血管形成因子である。
【0055】
本発明のRNAのさらなる使用分野は、例えば臓器不全のために、タンパク質が身体内にもはや存在しない、または身体内で形成されない疾患または病気について生じる。現在のところ、そのような疾患において、置換のために組み換えタンパク質が投与される。本発明によると、存在しないタンパク質の置換が転写レベルで生じることができるようにRNAが直ちに提供される。これはいくつもの利点を有する。そして、タンパク質がグリコシル化を有する場合、前記転写レベルでの置換は、典型的にはヒトのグリコシル化が身体内で行われるという効果を有する。組み換え体である、すなわち、微生物内で正常に産生されたタンパク質を用いると、通常、そのグリコシル化は、置換が達成される身体内でのものとは異なる。これは、副作用をもたらし得る。一般に、本発明のRNAから発現されたタンパク質は、構造およびグリコシル化に関して内因性タンパク質と同一であることが予想でき、これは組み換えタンパク質を用いる事例では一般的でない。
【0056】
置換または導入が所望され得るタンパク質の例は、エチスロポエチンなどの機能性タンパク質類ならびにソマトトロピン(hGH)、G−CSFおよびトロンボポエチンなどの増殖因子類である。
【0057】
本発明のRNAを用いることができるさらなる分野は再生医療の分野である。疾患過程を通じてまたは老化を通じて生じる変性疾患は、疾患または老化の過程のために不足量のみ生産される、または全く生産されないタンパク質の導入によって、治療することおよび緩和することができる、または治癒するもできる。これらのタンパク質をコードする関連RNAの導入によって、変性過程を停止させることができるか、または再生を開始することもできる。その例としては、成長障害において、骨粗鬆症、関節症または障害性創傷治癒などの変性疾患において用いることができる組織再生のための増殖因子類である。ここで、本発明のRNAは、存在しないタンパク質を選択的に且つ正確な用量で供給することができるという利点だけでなく、更に時間窓でタンパク質を供給することが可能であるという利点も提供する。従って、例えば障害性創傷治癒に対して、RNAの用量設定した(dosed)投与によって、関連する治癒因子または増殖因子を限られた時間の間に供給することができる。加えて、後で説明する機序を介して、RNAがその所望される作用の部位に選択的に運ばれるようにアレンジすることができる。
【0058】
本発明のRNAを用いて再生作用を有するように発現され得る因子の例は、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、例えばFGF−1−23、形質転換増殖因子(TGF)、例えばTGF-αおよびTGF−β、BMP(骨形成タンパク質)、例えばBMP1〜BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP10およびBMP15、血小板由来増殖因子(PDGF)、例えばPDGF−A、PDGF−B、PDGF−CおよびPDGF−D、上皮増殖因子(EGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血管内皮増殖因子(VEGF−A〜VEGF−FおよびPIGF)、インシュリン様増殖因子、例えばIgF1およびIgF2、肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン類、例えばインターロイキン−1B、IL−8およびIL−1〜IL−31、神経増殖因子(NGF)、ならびに赤血球、好中球、血管などの形成を刺激する他の因子である。
【0059】
本発明のRNAは、腫瘍疾患の分野で選択的に用いることもできる。特異的な腫瘍関連抗原を認識するTリンパ球におけるテーラーメイドT細胞レセプターの発現を通じて、本発明のRNAは一層効果的となり得る。原理上は、この分野においてmRNAをうまく使用することができることはすでに示されている。しかしながら、現在まで、その使用は、すでに上述した免疫原性効果によって妨げられていた。本発明によって供給される低免疫原性且つ高安定性のRNAを用いて、T細胞レセプターを適切に発現することが可能となる。
【0060】
本発明のRNAは、体細胞が胚性幹細胞へ再プログラムされるのを確実にする転写因子を発現することにも使用することができる。そのような転写因子の例は、O−cp3/4、Sox2、KLF4およびc−MYCである。従って、これらの転写因子をコードする本発明の安定なRNA、特にmRNAは、以前に考えられたウイルス性または非ウイルス性のベクターを介する遺伝子導入で起こり得る副作用を引き起こすことなく、幹細胞の生成をもたらすことができる。
【0061】
本発明のRNAを使用することの利点は、DNAベクターの使用とは対照的に、処理の持続期間が調節可能であることである。幹細胞の誘導の事例においては、概して、体細胞を幹細胞へ再プログラムするために転写因子が一時的にのみ活性であることが望まれる。転写因子をコードする関連するRNAの用量設定した投与を通じて、活性を経時的に制御することができる。これと対照的に、以前の既知の方法を用いると、投与された遺伝子の組み込みの危険性が存在し、合併症、例えば腫瘍形成をもたらし、さらには持続期間の制御を不可能にする。
【0062】
ワクチン分野においても、本発明のRNAは、新たな可能性を提案する。ワクチンの標準的な開発は、殺した病原体または弱体化させた病原体に依存する。より近年では、病原体のタンパク質をコードするDNAも検討されてきた。これらのワクチンの生産は、骨が折れ、非常に時間がかかる。頻繁に副作用が生じ、ワクチン接種において拒絶を生じる。本発明のmRNAを用いると、病原体またはDNAに関連する問題を有さないワクチンを提供することが可能である。加えて、そのようなワクチンは、病原体の抗原配列が分かり次第非常に素早く生産することができる。これは世界的流行病の治療下で特に有利である。このように、本発明の一態様において、疾患病原体の抗原性部分、例えば表面抗原をコードするRNAが提供される。任意によりスペーサー部分によって連結された、数個のエピトープの組み合わせを有するアミノ酸配列をコードするmRNAを提供することも可能である。融合タンパク質をコードするRNAを通じて、または核酸の組み合わせとして、免疫調節物質との組み合わせも可能である。
【0063】
さらに、本発明のRNAは、因子、刺激物質、誘導物質などとして疾患の経過に影響を与えるタンパク質をコードすることもできる。そのような疾患の例は、遺伝子欠陥に直接に起因しないがmRNA発現によって疾患過程がプラスに影響され得る疾患である。例としては、赤血球の形成の刺激のためのエリスロポエチン、好中球の形成のためのG−CSFまたはGM−SCF、新たな欠陥の形成のための増殖因子類、骨および創傷治療のための「生体組織工学」用因子としての増殖因子類、アポトーシスの導入によるまたはタンパク質性細胞毒、例えばジフテリア毒素Aの形成によるまたは多能性幹細胞(iPS)などの誘導による腫瘍の治療のための増殖因子類である。
【0064】
所定の含量の修飾ヌクレオチドおよび未修飾ヌクレオチドを有する本発明のポリリボヌクレオチドのみが高い安定性と低い免疫原性とを同時に有することを見出した。ある種のポリリボヌクレオチドについて最適な修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドとの組み合わせを決定することを可能にするために、それ自体既知の様式で免疫原性および安定性を決定することができる。RNAの免疫原性の決定のため、当業者に周知の種々の方法を用いることができる。非常に適切な方法は、RNAの投与に対する反応としての細胞内の炎症マーカーの測定である。そのような方法は、実施例に記載する。例えばTNF-α、IFN-α、IFN-β、IL−8、IL−6、IL−12または当業者に既知の他のサイトカイン類などの炎症に関連するサイトカイン類が普通に測定される。DC活性化マーカーの発現も免疫原性の評価のために用いることができる。免疫反応のさらなる指標は、Toll様レセプター類TLR−3、TLR−7およびTLR−8に対する結合ならびにヘリカーゼRIG−1に対する結合の検出である。
【0065】
免疫原性は一般にコントロールとの関連で決定される。通常の方法において、本発明のRNAと未修飾RNAもしくは別の手法で修飾したRNAのいずれかを細胞に投与して、規定した時間間隔での炎症マーカーの分泌がRNAの投与に対する反応として測定される。比較のために使用される標準物として、未修飾RNAが用いられ得る場合は、免疫応答が低いであろうし、少しの免疫応答を引き起こすか、または免疫応答を引き起こさないことが知られているRNAが用いられ得る場合は、本発明のRNAに対する免疫応答が同じ範囲内にあるかまたは上昇しないであろう。本発明のRNAを用いると、未修飾RNAと比較して免疫応答を少なくとも30%、一般的には少なくとも50%または70%低下させることが可能であり、あるいは免疫応答を完全に防ぐことさえ可能である。
【0066】
免疫原性は、上述の因子の測定によって、具体的にはTNF−αレベル、IL−8レベル、TLR−3、TLR−7、TLR−8およびヘリカーゼRIG−1に対する結合能力の測定によって決定することができる。これによって、mRNAが所望の低い免疫原性を有するかどうかを立証するために、関係するポリリボヌクレオチドの投与後に1以上の上述の因子の量を測定することができる。従って、例えば、ある量の試験するmRNAを尾静脈またはi.p.を介してマウスに投与することができ、次いで所定の期間後、例えば7または14日後に1以上の上述の因子を血液で測定することができる。そして、その因子の量は、未処理動物の血液中に存在する因子の量と相関している。免疫原性の決定について、TLR−3、TLR−7、TLR−8および/またはヘリカーゼRIG−1に対する結合能力を測定することが非常に有益であることを見出した。TNF−αレベルおよびIL−8レベルも非常に良好な指標を提供する。本発明のmRNAを用いると、TLR−3、TLR−7、TLR−8およびヘリカーゼRIG−1に対する結合能力を未修飾RNAと比較して少なくとも50%低下させることが可能である。概して、これらの因子に対する結合を少なくとも75%低下させまたは80%低下させることまでも可能である。好ましい態様において、TLR−3、TLR−7、TLR−8およびRIG−1に対する結合能力は、本発明のmRNAについてと、またはmRNAが全く投与されていない動物についてと同じ範囲である。言い換えると、本発明のmRNAは、炎症反応または免疫反応を事実上引き起こさない。
【0067】
各事例において、本発明のRNAはそのような非常に低い免疫原性を有し、患者の全身状態に影響しない。従って、上述の因子の僅かな増加は、その結果として全身状態が悪化しない限りは許容することができる。本発明のmRNAのさらなる特性は、その効率および安定性である。このために、転写効率、トランスフェクション効率、翻訳効率およびタンパク質発現の持続期間が、重要であり、それ自体既知の方法によって決定することができる。
【0068】
転写効率は、DNAからどの程度効率的にRNAを産生することができるかを示す。ここで、高含量の修飾ヌクレオチドの使用により問題が生じ得る。本発明に従って修飾したRNAは、高い転写効率で生成することができる。
【0069】
RNAによってコードされるタンパク質の安定かつ適切な発現を得るため、充分なRNAが所望の細胞に到達することが重要である。これは、標識したRNAの投与後、標識の測定によって細胞まで到達したRNAの含量を測定することによって決定することができる。標識の測定のためにフローサイトメトリーを用いることができる。標識が蛍光分子を用いて達成される場合、転写効率は、例えば、PBSでのみ処理したコントロール細胞と比較して蛍光強度が高い細胞集団のパーセンテージとして算出することができる。本発明に従って修飾したRNAは、2つ以上の種類のヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで100%置き換えたRNAとは対照的に、効率的に産生することができ、一部のヌクレオチドのみが修飾された本発明のRNAの転写効率がいずれか1種類のヌクレオチドを100%修飾したRNAを用いるよりもはるかに高いことを見出した。
【0070】
翻訳効率は、RNAがタンパク質へ翻訳される効率を示す。翻訳効率が高くなるにつれて、治療のために使用しなければならないRNAの用量を低減することができる。翻訳効率は、本発明に従って修飾したRNAの翻訳の割合を未修飾RNAの翻訳率と比較することによって決定することができる。一般に、本発明のRNAでの翻訳効率は、未修飾RNAでのものよりもいくらか低い。しかしながら、これは、タンパク質発現の持続期間に現れる、はるかに高い安定性によって補償されて余りある。
【0071】
本発明のRNAは、長期持続的なタンパク質発現をもたらす高い安定性を特に提供する。特に本発明に従って修飾したRNAが遺伝子欠陥による疾患の治療を提供するよう意図される場合、細胞内に長くとどまるほど、より有益となる。RNAが急速に分解されるほど、タンパク質発現は急速に終了し、RNAをさらに頻繁に投与しなければならない。反対に、細胞内に長時間とどまる安定なRNAを用いると、投与の頻度を大いに減らすことができる。本発明に従って修飾したRNAは最高4週間まで安定に発現されたことを見出した。
【0072】
他の態様について、すなわち、RNAが一時的な発現についてのみ意図される場合、タンパク質発現の持続期間は、安定性に影響を与えることによって調節することができる。
【0073】
従って、本発明のRNAのさらなる有益な特性は、作用の持続期間が安定性を介して選択的に調節することができ、タンパク質発現を所望の時間窓で行うようにタンパク質発現の持続期間を調整することができるということである。第二に、必要な場所で非常に長く作用するRNAを用いることができる。本発明に従って修飾したRNAは、その発現が最長4週間持続でき、従って、4週間ごとにのみ与える必要があるから、慢性疾患の治療に理想的に適している。RNAが疾患を緩和する、または予防するために長期間にわたり身体に供給される因子をコードする態様について、例えばエリスロポエチンをコードするRNAの使用については、高い安定性および長期持続的なタンパク質発現も有利である。本発明のRNAは、血友病の治療にも特に有利に用いることができる。ここで、以前は、欠如している因子を毎週投与することが必要であった。本発明のRNAの提供で、投与の頻度を低減することができ、これからは因子をコードするRNAを2週間ごとにのみまたはさらには4週間ごとにのみ与える必要があるようになる。
【0074】
本発明のmRNAの安定性は、それ自体既知の方法によって決定することができる。特に適切なのは、未修飾RNAまたは完全修飾RNAを含む細胞と比較して、例えば未修飾のまたは既知の様式で修飾したRNAと比較して、本発明に従って修飾したRNAを含む細胞の生存能力を決定する方法である。コードタンパク質の産生を経時的にモニターすることもできる。本発明において、RNAの安定性とは、そのRNAが、細胞内に導入された場合に、所望のタンパク質を発現できるまたは所望のタンパク質またはその機能性断片へ翻訳可能であり、長期間にわたる発現が可能であり、直ちに分解されず不活性化されないことを意味するものと理解される。
【0075】
従って、細胞内におけるRNAの安定性および生存時間を試験するための方法は、そのRNAによってコードされたタンパク質が、どのくらいの期間細胞内で検出可能であるか、またはその機能を果たすかを決定することにある。そのための方法は実施例に記載する。よって、例えばレポーター分子をコードする配列を有するmRNAを、任意により所望のタンパク質をコードするRNAと一緒に、細胞内に導入することができ、次いで所定の期間の後、レポーター分子および任意のタンパク質の存在を決定する。適切なレポーター分子は本技術分野の現状で周知であり、それらは本発明についても一般的に用いることができる。好ましい態様において、RFP、すなわち赤色蛍光タンパク質がレポーター分子として用いられる。
【0076】
上述するように、本発明のRNAは、そのRNAが導入される細胞内において、自然には所望の程度には発現されない、または全く発現されないタンパク質を形成することができるようにして、治療に用いることができる。本発明において、本発明のRNAは、タンパク質が遺伝子の欠損のせいで形成されない場合と、疾患のせいでタンパク質が形成されない事例またはタンパク質の導入が身体にとって有益である事例との両方で用いることができる。本発明のRNAは、適切な程度に発現されないタンパク質を補充するためにも用いることができる。各事例において使用する用量は、RNAが果たす機能に依存する。上述するように、本発明のRNAの作用の持続期間は、意図的に調節することができる。治療の持続期間は、具体的な適応症に依存する。欠損遺伝子による疾患の長期治療のためにRNAが使用される場合は、作用の持続期間は可能な限り長くなるであろうし、一方で他の適応症については意図的に時間窓に合わせることができる。
【0077】
特に好ましい態様について、サーファクタントタンパク質BをコードするIVT mRNAをRNAとして用いる。このタンパク質が哺乳動物において欠損している場合、早産児および新生児の呼吸窮迫症候群の発生をもたらす。新生児においては、この症候群は、肺疾患による死亡につながることが多い。5%〜50%のウリジンヌクレオチドおよび5%〜50%のシチジンヌクレオチドが修飾されているSP−Bをコードする複数のin vitro転写した修飾mRNAの使用は、タンパク質を形成し、疾患を緩和または治癒することをもたらす。
【0078】
さらに好ましい態様によると、エリスロポエチンをコードするIVT mRNAをRNAとして用いる。エリスロポエチンは、身体にとって非常に重要なタンパク質であり、例えば腎臓疾患においてもはや適切な量で利用できず、したがって補充しなければならない。このために、現時点では、微生物または動物細胞で産生され従って天然に存在しないグリコシル化を有する組み換えエリスロポエチンが用いられる。この組み換えEPOの使用には、稀な事例において、例えば赤血球無形成症といった重篤な副作用が存在した。
【0079】
本発明に従って提供されるIVT mRNAは、エリスロポエチンをコードし5%〜50%のウリジンヌクレオチドおよび5%〜50%のシチジンヌクレオチドが修飾されているリボ核酸を含む。特に好ましい態様において、15%〜25%のウリジンヌクレオチドおよび15%〜25%のシチジンヌクレオチドが修飾されているEPOコードmRNAが提供される。このmRNAは未修飾RNAと比較して顕著に低下した免疫原性を有することを見出した。同時に、このmRNAは90%を超えるトランスフェクション効率と14日後も依然としてヘマトクリット値が高められる安定性を示す。本発明のRNAによって身体内で生成したEPOは、グリコシル化が正しく、副作用が予測されない。本発明に従って修飾したEPOコードmRNAの標的化した断続的な投与により、ヘマトクリット値を長期間所望のレベルで維持することができた。
【0080】
本発明によると、哺乳動物においてin vivoで使用可能であり、天然に存在する内因性タンパク質と同一ではないが非常に類似する形態であって特に内因性グリコシル化を有する形態で必要なタンパク質を提供する、非免疫原性で安定なRNAが提供される。
【0081】
本発明のmRNAは、このようにして直接的に用いることができる。しかしながら、さらに有益な特性を導入するために、mRNAのさらなる修飾の可能性も存在する。第一に、コード鎖に他のコード配列または非コード配列を付け加えることによって、mRNAを修飾することができる。第二に、修飾ヌクレオチドに提供される官能基にさらなる分子を結合することによっても、mRNAを修飾することができる。
【0082】
一態様において、本発明のmRNAは、標的細胞に特異的な表面レセプターと結合するターゲティングリガンドと組み合わせることができ、よって標的細胞のレセプター介在性トランスフェクションが可能である。第一にこの媒体は細胞内へのmRNAの導入に適しており、あるいはmRNA自体がリガンドを用いて修飾することができる。細胞内へのmRNAの導入に適切な媒体の例は、カチオン剤である。カチオン剤としては、カチオン資質、カチオンポリマー、またはナノ粒子、ナノカプセル、磁性ナノ粒子およびナノエマルジョンが挙げられる。適切な媒体は、当業者に知られており、専門書に記載されている。適切なリガンドも、当業者に周知であり、専門書に記載されており、利用可能である。リガンドとして、例えば、トランスフェリン、ラクトフェリン、クレンブテロール、糖、ウロン酸、抗体、アプタマーなどを用いることができる。
【0083】
しかしながら、mRNA自体もリガンドを用いて修飾することができる。このために、リボースの2’位に一級アミノ基またはアジド基を持つ修飾ヌクレオシドを有するmRNAが好まれる。その例は、上記表に見出すことができる。そのような修飾が、生物学的活性に貢献するために、特に好まれる。これらの修飾を介して、アミド形成または「クリック」ケミストリー、例えばバイオコンジュゲートによって、リガンドを容易に組み込むことができる。
【0084】
更なる態様において、タンパク質、例えばレセプターと結合することができるRNA配列(アプタマー)が、mRNAの5’末端に導入される。この手段は、リガンドを予めDNAレベルで基質へ直接的に導入してクローニングしIVTによってmRNAへ導入することができるという利点を有する。従って、リガンドを有するmRNAの後に続く修飾は、もはや必要でない。
【0085】
更なる態様において、mRNAは、不活性なポリマー類、例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いる付加的な修飾によって修飾される。この方法は当業者に周知であり、用いることができるリガンドについてのそのようなプロセスは既知である。従って、例えば、転写の後にポリエチレングリコールが結合されるPEG用の結合部位を、本発明のmRNAに使用される修飾ヌクレオチドの小部分で提供することができる。ポリエチレングリコールはmRNAの細胞外安定化に役立つ、すなわち、ポリエチレングリコールは細胞内に到達するまでポリリボヌクレオチド分子を保護する。細胞内に侵入すると、PEGは切断される。従って、好ましくは、PEGとRNAの間の結合は、細胞内への侵入時の切断が容易にされるように設計される。これについて、例えば、pH依存的に切断される官能基を提供することができる。RNAを安定化する他の分子を、修飾ヌクレオチド上の適切な活性部位を介して提供することもできる。この方法では、mRNAを、酵素分解に対する立体安定性および体液の構成成分との相互作用の防止によって保護することができる。このように修飾したmRNAを、「ステルス」mRNAと呼ぶことができる。
【0086】
RNAの保護および安定化のために好まれる方法は、欧州特許第1198489号明細書に記載されており、前記明細書の内容を本明細書に明確に援用する。好ましくは、本発明のRNAは、欧州特許第1198489号明細書に記載された方法によって保護される。第一に、この方法によって本発明に従って修飾したRNAも有利に安定化および保護することができたこと、第二に、このように処理した本発明のRNAの活性が制限されないか、または実質的に制限されないことを見出した。従って、本発明の好ましい態様において、本発明に従って修飾したRNAを欧州特許第1198489号明細書に従って処理する。
【0087】
細胞特異的制御の例は造血細胞で発現されるが、他の起源の細胞では発現されない、マイクロRNA142−3pのためのマイクロRNA結合部位の組み込みである。結果として、発現は、造血細胞内でのmRNA翻訳が他の細胞と比較して顕著に減少するように制御される。同様に、他の細胞腫での発現は、当業者に既知の関連する適切なマイクロRNA結合部位の組み込みによって、選択的に制御することができる。
【0088】
更なる態様において、本発明のmRNAは、健康な細胞にのみ存在し、疾患により影響された細胞には存在しない、少なくとも1つのマイクロRNAの標的、または結合部位と組み合わされる。結果として、mRNAによってコードされたタンパク質は、そのタンパク質を必要とする細胞でのみ産生される。適切な標的の選択は、当業者に周知のありふれた方法によって行われる。DNAレベルで行われる一般的な方法は、マイクロRNA結合部位の3’UTRへのクローニングである(GU et al, Nat Struct Mol Biol. 2009 Feb; 1416(2); 144−50, Brown et al, Nat Biotechnol. 2007 Dec; 25(12): 1457−67, Brown et al, Nat Med. 2006 May; 12(5); 585−91, 国際公開第2007/000668号)。好ましい態様において、RNAが細胞毒素をコードする場合は、マイクロRNAの結合部位を備えたRNAが用いられる。この事例において、毒性タンパク質がその作用を配備することが意図された細胞にのみ運ばれることが特に望ましい。この態様については、RNAをその安定性が所定の時間窓で存在するように特異的に修飾することによって、RNAの作用の持続期間を調節することも有利であり得る。
【0089】
更に、本発明のRNAは、3’ポリA尾部の下流でマイクロRNAまたはshRNAと組み合わせることができる。これは、mRNA−マイクロRNA/shRNAハイブリッドをダイサーによって細胞内で切断することができ、これによって、異なる病理的カスケードに干渉する2つの活性分子を放出することができる。そのようなハイブリッドを、癌や喘息などの疾患の治療のために提供することができる。従って、本発明のRNAは、欠損mRNAを補完することおよび欠陥マイクロRNAカスケードで干渉することに対し同時に適切である。
【0090】
このように、本発明によると、レポータータンパク質、例えば赤色蛍光タンパク質(RFP)をコードする配列が用いられるスクリーニング方法を用いて試験することができる、有利な特性を有するRNAが提供される。未修飾のヌクレオチド、一重修飾ヌクレオチドまたは異なる複数の修飾を有する多重修飾ヌクレオチドを有するレポーター遺伝子の配列の毒性および安定性を、その免疫原性およびトランスフェクション効率について試験すると、本発明のmRNA、すなわちウリジンヌクレオシドおよびシチジンヌクレオシドのそれぞれ少なくとも5%が修飾ヌクレオチドによって置き換えられた多重に修飾されたmRNAは、血液中のヒト初代単球に対して顕著に低下した免疫原性をもたらすと同時に、80%を超える高いトランスフェクション率を得られることを見出した。これは、例えばヒトまたはマウスのII型肺胞上皮細胞で試験することができる。更に、本発明に従って修飾したRNAについてのRNA発現の持続期間は、既知のRNAを用いるよりも著しく長い。主として本発明に従って修飾したmRNAの高い安定性および低い免疫原性のために、その発現は既知の標本を用いるよりも長く持続する。定量的評価において、本発明に従って修飾した誘導体では、トランスフェクションから10日後に、未修飾RNAまたは一重修飾のみのRNAよりも10倍高い発現量の生成物が見られた。
【0091】
本発明の更なる主題は、免疫原性および発現量を試験するためのヌクレオチド配列のスクリーニング方法であって、その方法では、TLR3、TLR3、TLR8およびヘリカーゼRIG−1から選択される少なくとも1つのレセプターとmRNA配列を接触させて、その結合能力をコントロール配列と比較して測定する。コントロール配列としては、結合能力が既知の配列を用いる。少なくとも1つのこれらのレセプターとの結合が弱いほど、その配列は有望である。
【0092】
本発明のmRNA、特にIVT mRNAの特性は、レポータータンパク質を発現するRNAに対するスクリーニング方法を用いて試験することができる。赤色蛍光タンパク質(RFP)がレポータータンパク質として好ましい。このタンパク質をコードする異なる修飾を有する配列を、その免疫原性およびトランスフェクション効率について試験することができる。従って、mRNAの種々の修飾を試験のために用いることができ、例えばウリジンヌクレオシドを2−チオウリジンヌクレオシド(以下でs2Uとも呼ぶ)によって部分的に置き換えることができ、シチジンヌクレオシドを5−メチルシチジンヌクレオシド(以下でm5Cとも呼ぶ)によって部分的に置き換えることができる。
【0093】
図1A、1B、1C、2Aおよび2Bは、そのようなスクリーニング方法を行って得られた結果を表す。より詳細な事項は、実施例で見出される。これらの図で示される結果は、RFP RNAについて行った実験に基づき、少なくとも5%のウリジンヌクレオシドおよび少なくとも5%のシチジンヌクレオシドがそれぞれ修飾されている多重修飾mRNAのみが血液中のヒト初代単球に対してex vivoとin vivoの両方で顕著に低下した免疫原性をもたらすと同時にヒトとマウスの両方のII型肺胞上皮細胞で80%を超える高いトランスフェクション率をもたらすことができることを示す。さらに、本発明に従って修飾したmRNAの発現の持続期間は未修飾mRNAの場合よりも著しく長い。
【0094】
さらなる態様において、mRNA免疫沈降試験(RIP)の使用により、検討中のRNAが治療に適するか否かを試験するための方法を提供する。適切なRIP試験は、実施例でより詳細に記載する。この研究は、Toll様レセプター(TLR)3、TLR7、TKR8およびヘリカーゼRIG−1に対するRNA結合を介して、未修飾レポーターmRNAによって免疫系の細胞が活性化されることを示している。この結果が、試験したmRNAのTLR3、TLR7、TLR8および/またはRIG−1に対する結合が未修飾mRNAと比較して顕著に減少したことを示す場合には、減少した免疫原性の指標である。この点で、本発明に従って用いる多重修飾が一重s2U修飾よりも著しく効果的であることが示された。実施例において、RNAをマウスへ静脈内注射した後に、IFN−γ、IL−12およびIFN−αのレベルについてRNAの影響を調べた。多重修飾s2U(0.25)m5C(0.25) RFP mRNAが免疫応答を防いだことを見出した。この実施例で得られた結果は、多重修飾mRNAがTLRおよびRIG−1結合を著しく減少させ、従って高い且つ持続した発現を有すると同時に免疫応答を低下させることを、一緒に示す。従って、多重修飾RNA、特にIVT mRNAは、欠損遺伝子による疾患のin vivo治療のための適切な候補である。特に有望な候補は、以下で簡単に説明し、実施例でより詳細に記載する。
【0095】
本発明に従って修飾したRNAを肺内の治療に使用することが可能か否かを試験するために、高感度緑色蛍光タンパク質およびルシフェラーゼ(EGFPLuc)の融合タンパク質をコードする多重修飾mRNAを、マウスの肺に直接導入して、未修飾EGFPLucと比較して、ルシフェラーゼが発現するか否かについて試験した。未修飾EGFPLucのルシフェラーゼの発現は肺内で3時間後に最大に達したが、総発光量は、処理後24時間後に急速に下降し、処理後5日には非常に低い比率にまで下降した。これと対照的に、多重修飾EGFPLuc mRNAで処理したマウスでは処理後最大5日まで高発現値が観察された。
【0096】
特に好ましい態様において、治療可能性がSP−B欠損に起因する疾患の治療を可能にするRNA、すなわちs2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAが提供される。SP−Bは、単独遺伝子によってコードされている比較的小型の両親媒性ペプチドであり、II型肺胞上皮細胞内でタンパク質分解プロセッシングを通じて381アミノ酸を有する前駆体を作り出して、肺胞を覆う。これは、肺胞内の表面張力の低減に必要な表面脂質の分布、吸着および安定性を改善する。SP−Bの欠損で、肺胞壁の肥厚化、細胞浸潤および間質浮腫などの症状が引き起こされる。この肺損傷は、鬱血、すなわち、気管支肺胞洗浄液における赤血球数の増加、マクロファージおよび好中球の数の増加、それに対応する割合の炎症性サイトカインを伴う。ヒトの先天性欠損症およびトランスジェニックマウスでの研究は、SP−Bが誕生後の生存に必須の役割を果たすことを証明している。SP−B遺伝子の突然変異を通じて起こる先天性SP−B欠損症は、サーファクタントの交換にとって重要であり、寿命の最初の数ヶ月間に新生児の気道の致命的な欠陥をもたらす。従って、肺移植が現在利用可能な唯一の治療的介入である。従って、本発明のRNAで可能にされるSP−B欠損症のmRNA治療は、重要な代替療法である。
【0097】
本発明のRNAは、この疾患の治療のために、好ましくは媒体としてのパーフルオロカーボンと共に、用いることができる。従って、好ましい態様において、パーフルオロカーボンおよびs2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAを含む医薬品が提供される。この組み合わせは、SP−B欠損を有する患者の肺でSP−Bを再構成することを可能にし、よって生存の可能性が増す。本発明のRNAの高い安定性のため、この患者については一定間隔で、例えば1週間に1〜3回の投与で充分である。好ましくは、SP−B mRNAが、高圧でスプレーすることによってエアゾールとしてこの患者の気管内に投与される。本発明のmRNAは上記症状を寛解させて肺機能を向上させることができることが見出され、このことは、実施例で詳細に記載するように、肺のパラメータを試験することによって実証することができた。
【0098】
本発明のmRNAは、治療的手法に効果的に用いることができ、欠如したタンパク質または欠陥タンパク質による疾患の治療を可能にする。多重修飾mRNAの全身投与が可能である。例えば、望ましくない副作用が起こるために、遺伝子欠陥の影響を受けない細胞でのmRNA翻訳が望ましくない事例があり得る。コードタンパク質を必要とする細胞、例えば遺伝子欠陥が存在する細胞でのみ本発明のmRNAを選択的に発現させるために、いずれか対応するベクターに、例えばリガンドを介して、罹患した組織に宛てることが可能な配列を補うことができる。更なる態様において、標的細胞では発現されない内因性マイクロRNAが結合する配列を本発明のmRNAを含有するベクターに付加することができ、よって本発明のmRNAは、関連する内因性マイクロRNAを含有する全ての細胞において分解され、一方で標的細胞では保持される。従って副作用を最小限にすることができる。
【0099】
本発明のRNAは、例えば欠損遺伝子による疾患を有するために、RNAにコードされるタンパク質またはタンパク質断片を必要とする患者に、それ自体既知の様式で投与することができる。このために、本発明のRNAは、通常の薬剤として許容される添加剤を用いて、医薬品として調剤される。その医薬品の形態は、投与の場所および性質に依存する。本発明のRNAは、特に高い安定性によって特徴づけられるため、用いられる場所および形態に依存して、数多くの方法で調剤することができる。本発明のRNAは、非常に安定で、凍結乾燥して、その形態で加工、例えば破砕または粉砕して保存することができ、その後必要とされるときに再構成することができ、その生物学的活性を保持することができることを見出した。
【0100】
本発明のRNAが全身に投与される場合、大抵は、浸透圧を調節する薬剤および安定化剤などの通常の添加剤と共に注射液として、好ましくは単位剤形として調剤される。安定化剤としては、例えば、脂質、ポリマーおよびナノシステムまたはリポソームなどの通常知られているものが用いられる。好ましい態様において、EPOをコードする本発明に従って修飾したRNAを含有する、非経口投与に適した組成物が提供される。
【0101】
好ましい態様において、特にRNAがSP−Bタンパク質をコードする場合は、本発明のRNAが肺による取り込みに適切な形態で、例えば吸入で提供される。このために適切な配合は、当業者に既知である。この事例において、医薬品は、通常のネブライザーまたはインヘイラーによって気道へ導入することができる形態、例えば噴霧用液剤や散剤である。液材として投与するために装置は既知であり、ノズルジェットネブライザーと比較して低いせん断力で動作する超音波ネブライザーまたは穴あき振動膜を有するネブライザーが適切である。粉末エアゾール剤も適切である。カチオン脂質と複合したmRNAと裸のmRNAの両方とも、糖スクロースと共に凍結乾燥した後、次いで呼吸できるサイズに破砕することができ更に生物学的活性を示す粉末として利用可能である。
【0102】
好ましい態様において、肺内投与用の薬剤組成物は、トランスフェクション効率を増加させるために、薬剤組成物に先立って、または薬剤組成物と同時に投与されるパーフルオロカーボンと組み合わされる。
【0103】
さらに好ましい態様において、本発明に従って修飾したRNAは、インプラントのコーティング用の担体としての遅延放出ポリマーに含まれて提供される。このために、本発明に従って修飾したRNAは、コーティングポリマーおよび/またはポリマー複合体で保護されたRNA、それ自体としてまたはそのようなRNAと共に用いることができる。
【0104】
本発明の更なる主題は、インプラントの内殖に有益な因子をコードするRNAを含有する遅延放出ポリマーのコーティングが表面上に存在するインプラントである。本発明によると、1つの因子のみをコードするmRNAを含有するコーティングと、いくつかの因子、例えば種々の増殖因子、または増殖因子と血管形成因子、または内殖を促進する更なる因子、をコードするmRNAを含有するコーティングの両方ともがここで可能である。種々の複数の因子は、それらが時差間隔をおいて放出される形態で提供することもできる。
【0105】
さらに、「1つ以上の増殖因子および1つ以上の血管形成因子をコードするRNA」という表現は、2つ以上のタンパク質を一つずつまたは融合タンパク質としてコードするRNAと、各RNA配列が1つのタンパク質をコードしている異なるタンパク質をコードする異なるRNA配列の混合物との両方を意味することが理解されるべきである。
【0106】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0107】
IVT mRNAの治療的有用性を評価することができるように、in vivo用途のために非免疫原性IVT mRNAを得ることができるか否かを評価した。従って、第一段階において、修飾ヌクレオシドと共に赤色蛍光タンパク質(RFP)についてin vitro転写したmRNAを免疫原性およびトランスフェクション効率に関して調べた。この結果は、25%のウリジンが2−チオウリジン(s2U)によって置き換えられ25%のシチジンが5−メチルシチジン(m5C)によって置き換えられた多重修飾mRNAが、図1Aに示すようにヒト初代単核血球に対して顕著に低下した免疫原性を有し、ヒト(図1B)とマウス(図1C)の両方のII型肺胞上皮細胞で80%を超える高いトランスフェクション率を有するs2U(0.25)m5C(0.25) IVT mRNAを生じることを示す。さらに、そのmRNA発現の持続期間は著しく延長した(図2A)。この結果は、この延長した発現が、主として、本発明に従って多重修飾したmRNAの高い安定性によるものであることを示す。絶対量評価は、トランスフェクション後7日目におよそ10倍多い両のs2U(0.25)m5C(0.25) RFP mRNAを示した(図2B)。修飾RFP mRNAのトランスフェクション効率はいくらか低下し、従って高く長い活性に貢献できなかった(図4)。
【0108】
次の段階において、修飾RNA免疫沈降試験(RIPアッセイ)を用いて、低下した免疫応答の基礎となるメカニズムを調べた。この研究により、Toll様レセプター(TLR)3(2)、TLR7(3)、TLR8(4)およびヘリカーゼRIG−1(5)に対するRNA結合により、未修飾レポーターmRNA(1)によって免疫系の細胞が活性化されることが示された。この結果は、本発明の多重修飾RFP mRNAのTLR3、TLR7、TLR8およびRIG−1に対する結合が未修飾RFP mRNAと比較して顕著に低下したことを示す。この点において、多重修飾は一重s2U修飾よりもかなり効果的であった(図2C)。結合研究から予測されたように、未修飾RFP mRNAはマウスへ静脈内注射されたときにかなりの程度までIFN−γ、IL−12およびIFN−αを増加させたが、一方で多重修飾s2U(0.25)m5C(0.25) RFP mRNAは免疫応答を防いだ(図2D)。全体として、これらの結果は、本発明に従って多重修飾したmRNAがTLRおよびRIG−1結合を顕著に減少させることによって免疫応答を顕著に減少させると同時に発現を増加および延長させ、そのようなmRNAがin vivo試験にとって非常に有望な候補であることを示す。
【0109】
従って、高感度緑色蛍光タンパク質およびルシフェラーゼ(EGFPLuc)の融合タンパク質をコードさせたs2U(0.25)m5C(0.25) mRNAをマウスの肺へ直接導入して未修飾EGFPLuc mRNAと比較してin vivoでルシフェラーゼ発現を強化し延長させることができるか否かを試験した。この目的のために、例えば(6)に記載されるようなそれ自体既知の高圧スプレー装置を用い、トランスフェクション効率を増加させるためにパーフルオロカーボン(フッ素化FC−77)を予め投与した(7)。3時間後にin vivoで肺内のルシフェラーゼ発現は最大に達したが、総発光量は処理後24時間で急速に減少し処理後5日目で低レベルまで減少した(図3Aおよび3B)。これと対照的に、s2U(0.25)m5C(0.25) EGFPLuc mRNAで処理したマウスでは処理後最長5日目まで高い発現値が観察された。
【0110】
これは、治療用の本発明の多重修飾mRNAの治療可能性が非常に有望であることを示す。従って、本発明に従って多重修飾したs2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAをSP−B欠損マウスの治療について試験した。SP−Bは、単独遺伝子によってコードされている比較的小型の両親媒性ペプチドであり、II型肺胞上皮細胞内でタンパク質分解プロセッシングによって381アミノ酸を有する前駆体へ転換されて、肺胞を覆う(8、9)。これは、肺胞内の表面張力の低減に必要な表面脂質の分布、吸着および安定性を改善する。このタンパク質の遺伝子が欠損していると、誕生後に気道内に疾患が引き起こされ急速に死に至り得る。ヒトおよびトランスジェニックマウスにおいて、遺伝性欠陥は事後生存に重要な役割を果たすことが観察されている(10)。遺伝性SP−B欠損症は、SP−B遺伝子の突然変異を通じて生じ、表面活性脂質の形成を妨げ、誕生後の最初の数ヶ月間に呼吸不全をもたらす(11)。肺移植が現在利用可能な唯一の治療的介入である(12)。従って、SP−B欠損症のmRNA治療は、この欠損症で生存能力を確保する代替治療となるであろう。
【0111】
従って、本発明のSP−Bの多重修飾mRNAでの遺伝子治療を試験するために、SP−B欠損症のノックアウトマウスモデルを選択した。このために、SP−B−/−ノックアウトマウスで外因性ドキシサイクリンマウスの制御下でSP−B cDNAを発現したマウスモデルを選択した。成体SP−B−/−マウスでのドキシサイクリンの使用中止は、肺のSP−B含量の減少をもたらし、SP−B濃度が正常レベルの25%未満に下がったときに呼吸不全をもたらした。ドキシサイクリンを投与した条件付きトランスジェニックマウスは正常に生存した(13、14)。用いた治療ストラテジーは、次のことを含んでいた:(i)SP−B mRNAの導入前のパーフルオロカーボンでのマウスの前処理、および(ii)4週間 、3日毎または4日毎の週2回のSP−B mRNAの反復使用(図3C)。この原理を実証する実験を行うため、高圧ネブライザーを用いて、s2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAをエアゾールとして条件付きSP−B−/−マウスへ気管内投与した。この処理は、マウスを呼吸不全から救い、マウスの平均寿命を28.8±1.1日まで延ばし(図3D)、最長で規定した研究終了まで延ばした。これと対照的に、ドキシサイクリンの使用中止後、未処理SP−B−/−マウスは3〜4日以内に急性の呼吸障害の症状を呈した。これは、パーフルオロカーボン単独、またはコントロールとしてのs2U(0.25)m5C(0.25) EGFPLuc mRNAと一緒のパーフルオロカーボンの投与後にも観察され、そのときマウスは3.8±0.4日以内に死亡した(図3D、データは示さず)。さらに、s2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAで処理したマウスの肺におけるSP−Bの再構成の成功を、SP−Bについての免疫染色(図3E)および半定量的ウエスタンブロット分析(図3F)によって確かめた。4週間s2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAで処理したマウスにおける肺組織像は正常であったが、一方でs2U(0.25)m5C(0.25) EGFPLucコントロールmRNAを投与したマウスの肺は4日後に肺胞壁の肥厚化、細胞浸潤および間質浮腫を呈した(図3G)。この肺損傷は、鬱血(赤血球数の増加)、気管支肺胞洗浄液(BALF)におけるマクロファージおよび
好中球の数の増加、ならびに炎症性サイトカインレベルの上昇を伴ったが(図3Hおよび図S4)、一方でSP−B mRNAで処理したマウスではこの肺損傷を広範に防いだ。ドキシサイクリンの使用中止は処置なしで肺機能を悪化させたことが示されている(14、15)。s2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAでのSP−B−/−マウスの持続的処理は、ドキシサイクリンを投与したSP−B−/−マウスのように、正常な肺機能を維持したことを観察した(図3Iおよび図S5)。
【0112】
まとめると、これらの結果は、肺におけるSP−B欠損症の全ての機能的および病理的パラメータが実質的に改善し、ドキシサイクリンを投与した条件付きSP−B−/−マウスに匹敵したことを示す。
【0113】
この結果は、致命的な肺疾患のマウスモデルでの多重修飾mRNAの治療有効性を示す。しかしながら、mRNA治療の更なる適用は、依然として次の点について改善することができる:(i)非罹患組織の細胞での望ましくないmRNA翻訳が標的領域外部で望ましくない効果をもたらすこと、(ii)多重修飾mRNAが非罹患組織に到達した場合も、適切な量のmRNAが提供されてしまうこと、(iii)短い持続期間のmRNA活性については反復した投薬が必要であること。これを改善するために、罹患していない細胞内での望ましくないmRNA翻訳を防ぐために、マイクロRNAバイオロジーを利用することができる。標的細胞では発現されていない内因性マイクロRNAの標的配列を組み込むことによって、疾患に冒されていない細胞でmRNA分解を選択的に引き起こすことができ、しかしながら、その間に本発明のmRNAは標的細胞内に保持され、結果として副作用を最小限にする(16、17)。
【0114】
更なるアプローチにおいて、放出システムや、細胞表面の特異的レセプターに結合するターゲティングリガンドを組み合わせることができ、標的細胞のレセプター介在性トランスフェクションが可能とされる。今日ではmRNAを大量に生成することができて(18)多重修飾mRNAについてすら大規模な生成のための効率的な生成プロセスが可能であることから、本発明のmRNAの臨床的使用が可能であり、それは各疾患について特異的にテーラーメイドしたmRNAシステムを開発することを可能にし(19、20)、よって投薬頻度および短期間活性を最小限とすることができ、これは現在既知の治療では不可能である。このように、本発明によると、遺伝子欠損による疾患の治療のための効果的な分子療法が提供される。
【実施例2】
【0115】
SP−B欠損マウスの病状の改善または平均寿命の増加が、SP−Bをコードする本発明の修飾mRNAの使用によってのみ達成されることを示すために、更なる実験を行った。実施例1に記載したマウスモデルおよび条件を用いた。
【0116】
3群のマウスを用意した。1群のSP−B欠損マウスに本発明に従って修飾したmRNAを2回1週間にわたって投与し(B)、第2群に本発明に従って修飾したmRNAを1週間に2回28日間にわたって投与し(C)、比較のための第3群のマウスに修飾EGFP−Luc mRNAを投与した(A)。
【0117】
本発明に従って修飾したSPB mRNAを投与しなかったマウスは短期間の後に死亡したことが分かった。本発明のRNAを投与したマウスは、本発明のSP−B mRNAを与えた間だけは生存した。これは、本発明のRNAが、生物学的に活性であり、必要なタンパク質と置き換わることができることを証明する。
【0118】
詳細には、この実験は次のように行った。実施例1で記載したSP−B KOマウスに、2回1週間にわたって修飾EGFP−Luc mRNA(A)(n=10)もしくは修飾SP−B mRNA(B)(n=4)、または1週間に2回28日間にわたって修飾SP−B mRNA(C)(n=4)を投与した。カプラン-マイヤー生存曲線をプロットし、ウィルコクソン-ゲーハン試験を行った。飲料水中のドキシサイクリンの添加によって、SP−B遺伝子を制御していたトランスジェニックSP−Bマウスの肺への1週間以内2回の二重修飾SP−B mRNAの気管内投与(B)は、処理開始前の飲料水からのドキシサイクリンの使用中止後マウスの平均生存期間を、EGFP−LucコントロールmRNAの投与後3.4±0.2日と比較して、10.2±0.5日まで延長した(B)ことが分かった。
【0119】
この結果は図12の図に表してある。本発明の二重修飾SP−B mRNAの気管内投与が実際に救命することが分かる。本発明のmRNAの添加なしでは、マウスは短期間の後に死亡する。この実験は、第一にSP−B mRNAがin vivoで生存に必要なSP−Bを生成したこと、第二に実験動物を死から守るためにはSP−B mRNAを連続的に投与しなければならないことも示す。
【実施例3】
【0120】
更なる実験において、全てドキシサイクリンを投与している実施例1で記載したマウスを用いて、本発明のRNAが投与後の初期に炎症反応を引き起こすか否かを調べた。このために、5群を用意して、異なる調製物の投与から8時間後のマウスの気管支肺胞洗浄でサイトカインレベル、IENγおよびIL−12を測定した。6つの群に次の調製物を投与した(n=4):(a)コントロール群、未処理、すなわちパーフルオロカーボンもRNAも投与せず、(b)コントロール群、パーフルオロカーボン、(c)コントロール群、パーフルオロカーボンおよび未修飾SP−B mRNA、(d)本発明群、パーフルオロカーボンおよびs2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNA、(e)コントロール群、パーフルオロカーボンおよびSP−BプラスミドDNA。各事例で20μg(50μL)の調製物を投与した。この結果を図13に示す。図13では、平均値±標準誤差を示す。図13では次の略称を用いる:Doxy−ドキシサイクリン、Pfc−パーフルオロカーボン、pDNA−プラスミドDNA(未処理群と比較してP<0.05)
【0121】
この結果は、未修飾mRNAまたはプラスミドDNAの気管内投与に対し気管支肺胞洗浄液の炎症マーカーIL−12が顕著に上昇し、一方で二重修飾mRNAの投与は未処理マウスと比較してIL−12の上昇をもたらさないことを示す。二重修飾mRNAの投与は炎症マーカーIFNγのレベルを著しく増加させたが、それはパーフルオロカーボンの投与後に限ってのみ観察された。これに対して、未修飾mRNAの投与またはプラスミドDNAの投与もIFNγレベルの顕著な増加をもたらす。よって、本発明に従って修飾したmRNAの使用で炎症反応は予測されず、一方で未修飾mRNAの投与またはプラスミドDNAの投与でさえ炎症反応を非常に急速に引き起こす。
【実施例4】
【0122】
本発明に従って修飾したmRNAの使用の可能性を実証するために、さまざまな種類の修飾ならびにそれらのトランスフェクションおよび翻訳効率に対する効果について研究した。各事例において200ngのmRNAでA459細胞をトランスフェクションして、何個の細胞がトランスフェクションされたか、そのうち何個の細胞で蛍光タンパク質が翻訳されたか、について調べた。これは、平均蛍光強度(MFI)を用いて評価した。この結果を図10Aに示す。2つの異なるウリジン修飾を用いた本発明に従っていない修飾mRNAおよび未修飾mRNAと比較して、本発明に従って修飾したmRNAを試験した。本発明に従って修飾したmRNA分子は、次の通りである。
【0123】
s2U/m5Cおよびs4U/m5Cでは各修飾ヌクレオチドが10%の含量であり、RNA分子は10%/10%のs2U/m5Cおよびs2U/5mCに加えて、各々更なる5%の修飾ヌクレオチド、すなわち1つはC’NHおよび1つは5%G’Nを含んでいた。その結果は、本発明に従って修飾したmRNAが非常に高いトランスフェクション効率を示し、一方で未修飾mRNAおよび本発明に従わない修飾mRNAが各々遥かに低いトランスフェクションおよび翻訳効率を示すことを示している。
【0124】
先に記載した修飾mRNAについて、5μgの各mRNAの投与後のヒトPBMCでのTNF−αレベルを調べることにより、免疫原性も試験した。その結果を図10Bに示す。明らかに示されるように、未修飾mRNAまたは2種類の修飾ウリジンヌクレオチドを用いたmRNAの投与についてTNF−αレベルが顕著に上昇している。本発明に従って修飾したRNAでのTNF−αレベルは、未修飾RNAよりも少なくとも50%低かった。
【実施例5】
【0125】
本発明の多重修飾mRNAの生成方法
【0126】
[(a) in vitro転写用コンストラクト]
RFP cDNA(678bp)のin vitro転写のため、SP6プロモーターを含むプラスミドpCS2+DsRedT4を用いた。SP−B cDNA(1146bp)のin vitro転写のため、T7プロモーターを含むpVAX1プラスミド(インビトロジェン社)を用いた。EGFPLucのin vitro転写用ベクターを作製するため、T7プロモーターを含むpST1−2β−globin−UTR−A−(120)コンストラクト(19)を用いた。標準的な分子生物学的手法を用いて、これらのコンストラクトをクローニングした。
【0127】
[修飾mRNAの生成]
in vitro転写用の鋳型を作製するために、XbaIでpCS2+DsRed.T4、EGFPLucおよびSP−Bプラスミドを線状化した。線状化したベクターDNAを、NucleoSpin Extract IIキット(Macherey−Nagel社)で精製して、分光光度法により評価した。mMESSAGE−mMACHINE SP6またはT7ウルトラキット(Ambion社)を用いてin vitro転写を行った。前記SP6キットは7−メチルGpppGでmRNAをキャッピングし、一方前記T7キットは転写反応中にアンチリバースキャップアナログ(ARCA;7−メチル−(3’−O−メチル))GpppGm7G(5’)ppp(5’)Gを超高収率で作り出した。RNA修飾体を生成するために、次の修飾リボ核酸三リン酸を、規定した比率で反応系に添加した:2'−チオウリジン5'−三リン酸、5’−メチルシチジン5’−三リン酸、偽ウリジン5'−三リン酸およびN−メチルアデノシン5’−三リン酸(全てTriLink BioTechnologies社から入手し、HPLCおよび31P NMRで純度をチェックした)。in vitro転写の後、poly(A)tailキット(Ambion社)を用いてpVAX1 SP−Bプラスミド由来のRNAを酵素的にポリアデニル化した。そのポリ(A)尾部はおよそ200ntの長さであった。キャッピングしたmRNA(RFP、EGFPLucおよびSP−B)全てを、MEGAclearキット(Ambion社)で精製して、Aglient RNA 6000 Nano Assayを用いてBioanalysis Instrument 2100(Agilent Technologie社)でサイズおよび純度を分析した。
【0128】
[細胞トランスフェクション]
[肺細胞トランスフェクション]
ヒト由来およびマウス由来のII型肺胞上皮細胞株、それぞれA549およびMLE12を、10%ウシ胎児血清(FCS)、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび0.5%ゲンタマイシンを補充した最小必須培地(インビトロジェン社)中で増殖させた。トランスフェクション1日前、1ウェルあたり80,000個の細胞を24ウェルプレートに蒔いた。その細胞(90%コンフルエントを超える)を、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を製造者の指示に従って使用して、200ngのmRNAでトランスフェクションした。4時間後、その細胞をPBSで洗浄し、血清含有培地を加えた。長期発現の分析のため、その細胞を規則的に再分配した(コンフルエンスが90%を超える場合)。
【0129】
[ヒトPBMCトランスフェクション]
液体窒素中で凍結保存したヒトPBMC(CTL−Europe GmbH)を、37℃でCTL Anti−Aggregate Wash Supplementを用いて注意深く解凍し、その間に滅菌ろ過したRPMI−1640(インビトロジェン社)をゆっくり添加した。データを再現可能にするために、記載した全ての実験について、単一特徴のバッチのPBMCを用いた。
【0130】
[フローサイトメトリー]
上述したようにRFP mRNAでトランスフェクションしたA549細胞およびMLE12細胞に対して、フローサイトメトリー分析を行った。FACSキャリバー(BD Bioscience社)を用いて蛍光を測定するために、これらの細胞を、0.25%トリプシン/EDTAで取り外して、PBSで3回洗浄して、PBS中に再懸濁させた。トランスフェクション効率は、PBSでのみ処理したコントロール細胞の蛍光強度を超えた細胞集団のパーセンテージから算出した。1本のチューブあたり少なくとも2500個の細胞が数えられた。このデータをCellquest Proで分析した。
【0131】
[サイトカイン検出]
ヒトIL−8およびTNF−αキット(RayBio社)、マウスIFN−γおよびIL−12(P40/P70)キット(RayBio社)、マウスIFN−αキット(RbD System社)を用いて、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を行った。
【0132】
[リアルタイムin vitro転写]
Retic Lysate IVT(Ambion社)を用いて、500ngのRFP mRNAをin vitro転写した。メチオニンを最終濃度50μMで添加した。この混合物を水浴中で30℃にてインキュベーションして、サンプルを種々の時間で取り出して、Wallac Victor 1420 Multilabel Counter(パーキンエルマー社)で590nmにて蛍光強度を測定した。
【0133】
[定量的RT−PCT]
RNeasyミニキット(キアゲン社)を用いてA549細胞またはヒトPBMCから総RNAを抽出して(下記RIPプロトコールを参照)、製品マニュアルに従いiScript cDNA synthesisキット(バイオ・ラッド社)を用いて、20μLのバッチで逆転写(RT)を行った。iQ SYBR Green SupermixおよびiCycler(バイオ・ラッド社)を用いて、2つのバッチ内で次のプライマーを用いてcDNAを増幅した。RFP:5’−GCACCCAGACCGCCAAGC(フォワードプライマー)、およびRFP:5’−ATCTCGCCCTTCAGCACGC(リバースプライマー)。iCycler IQ software 3.1(バイオ・ラッド社)を用いて、ベースラインサイクルおよび閾値を自動的に計算して、C値を得た。
【0134】
[RNA免疫沈降(RIP)]
12.8μLのLipofectamin 2000を含む1mLのOptiMEM 1を用いて、5μgのmRNAで1×10個のヒトPBMC(CTL−Europe GmbH)をトランスフェクションした。4時間後、培地に10%FCSを補充した。24時間後、その細胞懸濁液をチューブに移し、10分間の350rpmでの遠心分離によって細胞をペレットにした。次に、RIPを行うために、ChIP−IT Expressプロトコール(アクティブ・モティフ社)の変形バージョンを用いた。全ての必要な試薬の調製のために、DEPC処理水(Serva Electrophoresis社)を用いた。ChIP−ITマニュアルに従って、細胞に固定液を添加し、次いでグリシン停止-固定液および氷冷した1×PBCを加えて、その細胞を4℃にてペレットにした。次に、細胞を溶解緩衝液に再懸濁してプロテアーゼインヒビターPICおよびPMSFを添加し、30分間氷上でインキュベーションした。10分間、4℃にて2400rpmでの遠心分離の後、上清に捕獲反応を行った。ChIP−IT Expressマニュアルに記載された通り、8連PCRストリップチューブ内で一晩TLR−mRNA/RIG−mRNA複合体を磁気ビーズに捕獲した。更に、SUPERase RNaseインヒビター(アプライドバイオシステムズ/Ambion社)を最終濃度1U/μLで添加した。抗体として、抗ヒトTLR3マウスIgG1、TLR7ウサギIgG1およびTLR8マウスIgG1(これらはすべてImgenex社から入手)ならびにRIG−1ウサギIgG1(ProSci社)を用いた。ChIP−IT Expressプロトコールに従って、磁気ビーズの洗浄後に、TLR−mRNA/RIG−mRNA抗体複合体を溶離して、逆交差結合(reverse cross−link)させて、プロテイナーゼKで処理した。最後に、溶離したmRNAに、上述したように、逆転写および定量RT−PCRを行った。
【0135】
[In vivo生物発光]
濃度が30mg/mLに達するように、D−ルシフェリン基質を水に溶解して、pHを7に調整し、最終容積を調整した。この溶液50μLを、麻酔したマウスの鼻孔に塗布し、鼻呼吸により吸収させた(1.5mgルシフェリン/マウス)。10分後、次のカメラ設定を用いて、(21)に記載されたようにIVIS100 imaging system(Xenogen社)で生物発光を測定した:視野10、f1 f−stop、高分解能、照明時間1〜10分。Living Image Software Version 2.50(Xenogen社)を用いてバックグラウンドを差し引き、肺領域でのシグナルを定量的に評価および分析した。
【0136】
[動物実験]
6〜8週齢のメスのBALB/Cマウス(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ)を、特定の病原体非存在条件下で維持し、12時間照明12時間消灯サイクルで個別の換気したケージ内で維持し、適宜に食糧および水を補給した。実験の開始前少なくとも7日間、実験動物を気候順化させた。全ての動物の操作は、地方倫理委員会によって承認および点検され、ドイツ動物保護法のガイドラインに従って行った。尾静脈への注射を除くすべての実験について、実験動物を、メデトミジン(0.5mg/kg)、ミダゾラム(5mg/kg)およびフェンタニル(50μg/kg)の混合物でi.p.(腹腔内)麻酔した。各実験の後、アチパメゾール(50μg/kg)、フルマゼニル(10μg/kg)およびナロキソン(24μg/kg)からなる解毒剤を実験動物にs.c.(皮下)投与した。ELISA試験のための血液は、へパリン処置した1.3mmキャピラリー(Marienfeld社)を用いて、眼球後方静脈の穿刺によって、様々なときに得た。
【0137】
[尾静脈への注射]
25μgのRFP mRNAを、Megafectin(MPバイオメディカルヨーロッパ)とmRNAの脂質に対する比率0.25でin vivoで混合し、製造者の推奨に従ってEnhancer−3を添加した。注射複合物の完全性および粒子サイズは、Zeta−PALS/zeta potential analyzer(Brookhaven Instrument社)を用いて動的光散乱(DLS)で決定した。マウスを固定器に置いて、27ゲージ針および1mLシリンジを用いて、100μLのmRNA/megafectin溶液(5μgのmRNAに相当)を30秒間以内に尾静脈へ注射した。
【0138】
[高圧噴霧による気管内投与]
BALB/cマウスおよびSP−B−/−マウスを、(14)に記載されたように麻酔し、プレートシステム(Halowell EMC)上に固定して、上側の歯を45°の角度にした。咽頭を最適に照らすために、改良冷光オトスコープBeta 200(Heine Optotechnik社)を用いた。小型のスパチュラでマウスの下あごを開けて、尖っていない鉗子を用いて舌を横へよけて中咽頭を最大に露出させた。FMJ−250型高圧シリンジに接続した1A−1C型ミクロ噴霧機(両方ともPennCentury社から入手)を気管内に挿入し、25μLのフロリナートFC−77(シグマ社)および25μLのルシフェラーゼmRNA溶液(10μg)または50μLのSP−B mRNA溶液(20μg)をうまく投与した。5秒後にミクロ噴霧機を引き抜き、5分後にはマウスを支持台から外した。
【0139】
[肺機能測定]
上に記載したように、ホモ接合型SP−B−/−マウス±ドキシサイクリン±修飾mRNAを麻酔した。自発呼吸を予防するため、臭化ベクロニウム(0.1mg/kg)を腹腔内に注射した。(22)に記載されるように、肺機能測定を行った。簡単に言うと、尖っていないスチールカニューレ(外径1mm)を気管切開術で気管内へ挿入した。ピストンポンプレスピレーターがレスピレーターとしても測定装置としても役立った(flexiVent、SAV)。周期的な換気の間、レスピレーターは、制御した容積および圧力の制限換気(Vt=10μL/g、Pmax=30cmHO、2.5HzでのPEEP2〜3cmHO、100%酸素)に設定した。用いたVtは、ドキシサイクリンを投与していた動物1匹あたり8.4±1.4μL/gであり、ドキシサイクリンおよびmRNA(N.S.)を投与していた動物1匹あたり8.9±0.4μL/gであった。標準換気量履歴を作成するために、1秒間に2回の15μL/gの送気の後、5分間隔で呼吸器系の動的機械的特性および肺エントリーインピーダンスを測定した。振動測定のために、PEEPレベルで換気を停止した。8秒の疑似ランダム振動シグナルで構成される強制振動(FOT)により呼吸器系のインピーダンス(Zrs)を決定するために、3mL/gの振幅を用いた。強制シグナルは1.75〜19.6Hzの間の振動数を有していた(23、24)。データは、256Hzで収集し、66%オーバーラップを有する4秒のウインドウで分析した。肺インピーダンスデータは、周波数領域内で呼吸器系の抵抗(実数部)および反応性(虚数部)として表された。Hantonsら(25)によって提案されたように、肺の定位相モデルを用いて肺インピーダンスデータ(Zrs)を再分割した。このモデルでは、Zrsが、次の方程式に従って、呼吸抵抗(Rn)、気道慣性(慣性)、組織弾性(HL)および組織減衰(G)で構成される:
Zrs = Raw + jωlaw + (G−jH)/ωα
(式中、ωは角周波数であり、ωはZrsの周波数依存である(ω=(2/ωtan−1(1/ω))) )。肺ヒステリシス性(hsterisivity)(eta=G/H)は、組織減衰および組織弾性の両方が含まれる肺組織組成の尺度である(26、27)。各測定について、定位相モデルを適合について自動的に試験した。適合の質は測定の干渉性(COD)として表され、CODが0.85未満の場合にデータは拒否される。
【0140】
[サーファクタントタンパク質の分析]
Bio−Rasタンパク質アッセイキット(バイオ・ラッド社)で、気管支肺胞洗浄上清の総タンパク質含量を測定した。NOVEX Xcell IIミニセルシステム(Novex社)を用いてNuPage10%ビス-トリスゲル上で非還元条件下10μgの総タンパク質を分離した。電気泳動の後、タンパク質をNuPageブロットモジュール(Novex社)でPVDFメンブレン(イモビロンP)上に移した。SP−B(c329、Altana AG社のW.Steinhilber博士より供与)に対して検出されたポリクローナルウサギ抗血清でサーファクタントタンパク質B(SP−B)を検出し、次に西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートポリクロナルヤギ抗ウサギ抗IgG(1:10,000、Dianova社)で改良化学発光試験(アマシャムバイオサイエンス社)を行った。これらの条件下で、この試験は1気道あたり約2.5ngのSP−Bを検出できた(28)。化学発光検出システムとして、AdinaイメージアナライザーでDIANA III dev.1.0.54(Ray test Isotopenmessageraete GmbH)を用い、データはQuantity One 4.6.7(バイオ・ラッド社)で定量的に評価した。
【0141】
[蛍光顕微鏡分析]
固定(3%パラホルムアルデヒド)してパラフィンワックス中に包埋した切片に、製造者(Abcam社、www.abcam.com/technica)に推奨される通りに、免疫組織化学検査を行った。スライドを、抗ヒト抗マウスSP−B抗体およびテキサスレッドコンジュゲート抗ウサギIgG抗体(両方ともAbcam社から入手、1:500)と共にインキュベーションして、DAPIで対比染色した。Zeiss Axiovert 135により蛍光像を得た。
【0142】
[統計]
複数群の間のmRNA発現の差は、REST2005ソフトウエアを用いてペアワイズ固定再分配無作為化検定(pairwise fixed reallocation randomization test)によって分析した(29)。生物発光の減衰の半減期は、Prism 5.0で算出した。他の分析は全て、SPSS 15(SPSS社)でウィルコクソン-マン-ホイットニー検定を用いて行った。データは、平均値±SEM(平均値の標準偏差)または中央値±IQR(四分位範囲)として示し、P<0.05(両側)を統計的有意とみなした。
【実施例6】
【0143】
本発明にしたがってEPOをコードするmRNAを多重修飾した。
【0144】
実施例3に記載した方法を本質的に用いて、EPOコード部分を含有する修飾mRNAを生成した。このmRNAの発現効率を試験した。このために、5μgの本発明に従って修飾したmRNAまたは未修飾mRNAをマウスへ筋肉内(i.m.)注射した。マウスの各群は4匹であった。RNAの投与後14日目と28日目に、血清中のEPOの含量をELISA法で定量的に評価した。同じ実験でマウスの全血中のヘマトクリット値を評価した。添付した図11に示すデータは其々平均値±SEMを表す。スキャッターブロットは、個々のヘマトクリット値を示す。バーは中央値を示す。P<0.05:各時点で未処理群と比較;+P<0.05:各時点で未修飾mEPO群と比較。
【0145】
(c)データは、平均値±SEMを示す。ヒトPBMCを5μgの未修飾RFP mRNAまたは修飾RFP mRNAでトランスフェクションし、回収率をTLR−3、TLR−7およびTLR−8に特異的な抗体を用いてRIPで測定した。四角形は平均値±IQRを示す。線は、最小値および最大値を示す。未修飾mEPO群と比較してP<0.5、**P<0.01、***P<0.001。
【0146】
(d)5μgの未修飾mEPO mRNAおよび修飾mEPO mRNAをマウスへ静脈内注射した(各群につきn=4)。24時間後、血清中のインターフェロン−γ、IL−12およびインターフェロン−αのレベルをELISAによって評価した。
【0147】
図からわかるように、本発明に従って修飾したRNAについては炎症マーカーが非病的な範囲内であり、一方で未修飾RNAまたは修飾ウリジンヌクレオチドのみを有する修飾RNAについては炎症マーカーが顕著に上昇した。
【0148】
このように、本発明によると、非常に安定であると同時に免疫反応を少し引き起こすかまたは全く引き起こさない、EPOをコードするmRNAが提供される。このようなmRNAは、エリスロポエチン欠損症の治療のために有利に用いることができる。その高い安定性のため、投与は2〜4週間ごとのみ必要である。
【実施例7】
【0149】
本発明に従って修飾したEPOコードmRNAの反復投与がヘマトクリット値にどのように影響するかを調べた。これは、本発明に従って修飾したmRNAが、身体へ投与された場合にも長期間にわたり活性なままでいるか否かを示すものであった。本発明のmRNAに対する免疫反応は、例えばその活性を低下させるであろう。
【0150】
従って、10μgの修飾EPO mRNA(実施例6に記載)を0日目、21日目および34日目にマウスに筋肉内投与した(n=10)。次いで、0日目、21日目、34日目、42日目および51日目にマウスから採取した全血中のヘマトクリット値を測定した。その結果を図14に示す。図のデータは平均値±標準偏差を示す。*P<0.05:0日目のヘマトクリット値と比較。
【0151】
これらの結果は、本発明に従って修飾したmRNAの反復投与がヘマトクリット値の長期にわたる上昇をもたらすことを裏付けている。このことは、前記mRNAが、多数回投与された場合でも活性なままであることを示している。
【実施例8】
【0152】
本発明に従って修飾したmRNAは、治癒またはインプラントの近傍への内殖を促進することによって治癒過程または内殖を促進するためのタンパク質を運ぶことにも適する。本発明に従って修飾したmRNAがコーティングの形態でのチタン表面に塗布された場合に安定且つ持続的に発現されることを示すため、ルシフェラーゼをコードするmRNAを含有するコーティングをチタンプレート上に塗布した。次いで、ルシフェラーゼが細胞の近傍、細胞の非存在下または細胞内で検出可能か否か、またどの位の長さ検出可能かについて調べた。
【0153】
細胞の近傍へ放出されるタンパク質、例えば増殖因子または血管形成因子などのモデルとして、異なるタンパク質をコードする2つの配列、すなわち、発現している細胞から分泌されるルシフェラーゼのRNAを実験のために用いた。さらに、分泌されないが細胞内にとどまるルシフェラーゼをコードするRNAを、細胞内でいくつかの種類の効果を有することとなるタンパク質のモデルとして用いた。分泌モデルのために、メトリジア(Metridia)ルシフェラーゼをコードし、野生型と比較して25%のウリジン単位がs2Uで置き換えられ25%のシチジン単位がm5Cで置き換えられたRNAを用いた。非分泌タンパク質モデルのために、同様に、25%のウリジン単位がs2Uで置き換えられ25%のシチジン単位がm5Cで置き換えられたホタルルシフェラーゼコードmRNAを用いた。
【0154】
本発明のmRNA調製物は、ポリマーとの複合体として保護され、コーティング材料からの放出後も活性なままであり長期間にわたり発現したことが分かった。本発明に従って修飾したmRNAによってコードされた個々のタンパク質は、長期間にわたり検出可能であったことが分かった。
【0155】
この試験のため、本発明に従って修飾したmRNAを、ポリマー複合体によって保護し、チタンプレート上の層として施した担体材料中に組み込んだ。担体材料は、この目的のために周知の材料であり、含有したmRNAを徐々に選択的に放出することができるポリラクチド(PDLLA)であった。このようなコーティングの利点は、放出を特異的に調節することができることである。この結果は、分解に伴って放出されたポリラクチド断片がmRNAの活性を損なわず、このシステムが非常に適切であることを示している。mRNA自体は、コーティングポリマーによって安定化されている。
【0156】
この実験のため、メトリジアルシフェラーゼコードプラスミドDNA(pDNA)または修飾mRNAを用いた。200μLのHO中のそれぞれ9μgのメトリジアルシフェラーゼpDNAまたは二重修飾s2U(0.25)m5C(0.25) mRNA(+必要に応じて500μgのラクトース)を、200μLのHO中の9.4μgのL−PEI(L−ポリエチレンイミン)と複合体を形成させた。この後、この複合体を100μLのコーティングポリマー溶液(409.1mMのP6YE5C、2.4μL)へ導入して、一晩凍結乾燥させた(コーティングポリマーP6YE5Cは、欧州特許第1198489号明細書に記載された通りに調製した)。この後、この複合体を氷上で72μLのPDLLA(ポリ−DLラクチド)/EtOAc(50mg/mL PDLLA)混合物に懸濁させ、マイクロポッター(micropotter)によって分散させた。96ウェルプレート中の高圧滅菌チタンプレート(r=3mm、それぞれ18μL)をこの分散液でコーティングした。もう一晩の凍結乾燥の後、A549細胞を含む200μLのRPMI−1640培地を添加した(5000細胞/200μL)。2日目から、各ウェルにつき50μLの上清を取り、培地を変えて、メトリジアルシフェラーゼ発現を各々につき100μLのセレンテラジン溶液(最終濃度0.003mM)の手法によって翌日から測定した。
【0157】
更なる実験において、リン酸カルシウム粒子上に付着させてその形態でコーティングへ導入した場合の、本発明に従って修飾したメトリジアルシフェラーゼコードmRNAの活性を試験した。このために、4μgのメトリジアルシフェラーゼs2U(0.25)m5C(0.25) mRNAを含む600μLの1×HBSを、毎回33μLの2.5M CaClと混合した。30分後、96ウェルプレート中の高圧滅菌チタンプレート(r=3mm、それぞれ18μL)をこの溶液でコーティングした。一晩の凍結乾燥の後、A549細胞を含む200μLのRPMI−1640培地を添加した(5000細胞/200μL)。2日目から、50μLの各上清をとり、培地を変えて、メトリジアルシフェラーゼ発現を各々につき100μLのセレンテラジン溶液(最終濃度0.003mM)の手法によって翌日から測定した。
【0158】
この結果は図15の図にみることができる。この結果は、本発明に従って修飾したmRNAが、ポリマーコーティングによって保護され、遅延放出マトリックスへ導入されて、チタンインプラント上に塗布された場合でも活性を有したままでいることを明らかに示している。さらに、本発明に従って修飾したmRNAは、生物学的に活性なままであり、連続してコードタンパク質へ翻訳される。分泌能力も保持されており、それはメトリジアルシフェラーゼが細胞培養液中で(例えばBMP−2などの分泌型骨増殖因子のモデルとして)検出することができる事実からわかる。加えて、この結果は驚くべきことに、修飾mRNAを含むコーティングが、類似プラスミドDNAを含むチタンインプラントコーティングよりも高いタンパク質発現を生じたことを示している。mRNA/PEI複合体がチタンインプラントコーティングへの組み込みの前にコーティングポリマーと共に提供される場合、コーティングポリマー無しで同じ複合体を使用する場合(図では、修飾mRNA/IPEI−P6YE5C)よりも依然として高いタンパク質発現が得られる。さらに、修飾mRNAがその生物学的活性を失うことなく、添加剤としてのラクトースの添加が可能であることが分かった。
【0159】
この結果は、リン酸カルシウム粒子上に沈着した修飾mRNAが、その活性を保持し、チタンインプラントコーティングでその有利な特性を発揮できることも示している。その生物学的活性は保持されている。リン酸カルシウムは骨へ直接組み込むことができるため、これは非常に重要である。
【0160】
上で示したように、ホタルルシフェラーゼをコードするDNAまたはRNAを用いて、更なる実験を行った。このために、200μLのHO中のそれぞれ9μgのホタルルシフェラーゼpDNAまたは修飾s2U(0.25)m5C(0.25) mRNAを、200μLのHO中の9.4μgのL−PEIと複合体を形成させた。この後、この複合体を100μLのコーティングポリマー溶液(409.1mMのP6YE5C、2.4μL)へ導入して、一晩凍結乾燥させた。次に、この複合体を氷上で72μLのポリ−DL−乳酸(PDLLA)/酢酸エチル(EtOAc)(50mg/mL PDLLA)混合物に溶解させ、マイクロポッターによって分散させた。96ウェルプレート中の高圧滅菌チタンプレート(r=3mm、それぞれ18μL)をこの分散液でコーティングした。もう一晩の凍結乾燥の後、A549細胞を含む200μLのRPMI−1640培地を添加した(5000細胞/200μL)。2日目から、各ウェルにつき10μLの350μM D−ルシフェリンを添加し、20分間インキュベーションして、バイオイメージングによりルシフェラーゼ発現を測定した。その結果を図16に示す。図16の図からわかるように、チタンインプラントを本発明に従って修飾したmRNAでコーティングした間も、そのmRNAはさらに生物学的活性を保持してコードタンパク質を翻訳することができる。形成したタンパク質は細胞内にとどまり、細胞内で検出することができる。加えて、この結果は、修飾mRNAを含むコーティングが類似プラスミドDNAを含むチタンインプラントコーティングよりも高いタンパク質発現をもたらすことを示している。
【実施例9】
【0161】
本発明に従って修飾したmRNAの発現を、コードタンパク質が必要とされる細胞内でのみ発現されて他の細胞では発現されないように制御するために、前記mRNA発現の細胞特異的調節を可能にするためのマイクロRNA結合部位を前記mRNA中に組み込んだ。
【0162】
このために、10%FCSおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含むMEM中でHEK293細胞を培養した。トランスフェクションの24時間前、24ウェルプレートへ1ウェルあたり100,000個の細胞を蒔いた。トランスフェクション直前、培地を400μLのOptimem(インビトロジェン社)で置き換えた。10%FCSおよび1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地中でU937細胞を培養した。トランスフェクション直前、24ウェルプレートへ1ウェルあたり800,000個のU937細胞を含む400μLのOptimem培地(インビトロジェン社)を播いた。各ウェルのために、100ngのEGFP mRNAおよび250ngのRFP miRNA−BS mRNA(下記を参照)をOptimemで50μLに希釈した。2μLのリポフェクトアミン2000をOptimemで50μLとし、室温で5分間インキュベーションした。次に、mRNA溶液をピペットでリポフェクトアミン2000溶液へ移し、さらに20分間室温でインキュベーションした。得られた溶液をピペットで細胞と共にウェルへ移し、4時間後にペニシリン−ストレプトマイシン(5μL)を添加して、インキュベーター内で一晩インキュベーションを続けた。この後、HEK293細胞を、PBSで洗浄し、トリプシンの添加によってウェルの底からはがした後、300Gにて5分間遠心分離を行った。U937細胞も300Gにて5分間遠心分離を行った。上清を除去した後、それぞれの細胞をPBSで2回洗浄した。次に、FACS分析のために、細胞を500μLのPBSに再懸濁させた。図17の2つの図では、EGFP発現のRFP発現に対する比率が、陽性細胞の数として(図17a)および平均RFP蛍光強度として(図17b)示されている。
【0163】
この結果は、in vitro転写mRNAへのマイクロRNA結合部位への組み込みによって、mRNAの発現を細胞特異的に調節できることを示している。RFP miRNA−BS mRNAにおいて、互いに短いスペーシング配列によって隔てられているマイクロRNA結合部位の4回反復の非翻訳配列が、RFP配列の3’末端側でポリA尾部の5’末端側に位置している(配列番号1)。マイクロRNA142−3pに結合するマイクロRNA結合部位を用いた。このマイクロRNAは、U937細胞などの造血細胞で発現されるが、HEK−293細胞などのその他起源の細胞では発現されない。マイクロRNA142−3pがRFP miRNA−BS mRNAと結合する(例えばU937細胞において)場合、mRNAの分解はRNA干渉によって開始される。結果としてRFPの形成は低減され、すなわち、少ない細胞が、マイクロRNA142−3pが存在しない細胞よりも低い強度でRFPを発現する。本発明に従って修飾したmRNAでこの原理も充分に機能していることを示すため、U937細胞およびHEK−293細胞をそれぞれEGFP mRNA(マイクロRNA結合部位が無い)およびRFP miRNA−BS mRNA(マイクロRNA142−3pに対するマイクロRNA結合部位の4回縦列反復を有する)でコトランスフェクションし、次いでEGFPおよびRFPの発現をFACSによって測定した。RFP miRNA−BS mRNAはRNA干渉のためにHEK−293細胞よりもU937細胞においてより急速に分解されたがEGFP mRNAは両方の細胞内で同等に安定であることから、EGFPのRFPに対する比率はU937細胞よりもHEK−293細胞において高いであろうことが予測される。これは、行った実験で確かめることができた。その図は、EGFP陽性細胞数に対する標準化の後のRFP陽性U937細胞数が、HEK−293細胞のものよりも顕著に低いことを明らかに示している。1細胞あたりで形成されたRFPの量についても同じことが当てはまる。従って、この結果は、マイクロRNA結合部位の組み込みにより、in vitro転写mRNAの生物学的活性の規模を細胞へのトランスフェクション後に制御できることも明らかに示している。このように、mRNA翻訳は、mRNA翻訳が望ましくない細胞内で抑制することができる。これにより、副作用も低減することができる。
【0164】
この実施例で実験のために用いたmRNAは、次の配列(配列番号1)を有する。RFP配列は、灰色の背景で示される。下線付き配列は、スペーシング配列を有するマイクロRNA142−3pに対するマイクロRNA結合部位の4回縦列反復を示している。合成語に、この配列をBamHI−EcoRvを用いてベクターpVAX1へクローニングした。
【0165】

【0166】
[参考文献]



【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質またはタンパク質断片をコードする配列を有するポリリボヌクレオチドであって、未修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの組み合わせを含有し、ウリジンヌクレオチドの5〜50%およびシチジンヌクレオチドの5〜50%がそれぞれ修飾ウリジンヌクレオチドおよび修飾シチジンヌクレオチドである、ポリリボヌクレオチド。
【請求項2】
ヌクレオチドATP、GTP、CTPおよびUTPのヌクレオチド混合物から得ることができ、シチジンヌクレオチドの5%〜50%およびウリジンヌクレオチドの5%〜50%が修飾されている、タンパク質またはタンパク質断片をコードする配列を有するポリリボヌクレオチド。
【請求項3】
ポリリボヌクレオチドがmRNAであることを特徴とする、請求項1または2記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項4】
mRNAが生体外(in vitro)で転写されたmRNA(IVT mRNA)であることを特徴とする、請求項3記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項5】
前記RNAが、その欠陥または不足が疾患を引き起こし、病気を緩和、予防もしくは治療することができる、または有益なもしくは必要な機能に貢献することができる、タンパク質またはタンパク質断片をコードすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項6】
15%〜30%、好ましくは7.5%〜25%のウリジンヌクレオシド、および15%〜30%、好ましくは7.5%〜25%のシチジンヌクレオシドが修飾されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項7】
少なくとも2種類の修飾ウリジンヌクレオシドおよび/または少なくとも2種類の修飾シチジンヌクレオシドを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項8】
少なくとも1種の修飾ウリジンヌクレオシドおよび/またはシチジンヌクレオシドが、1つ以上の機能運搬体の付着のための官能基を修飾として有することを特徴とする、請求項7記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項9】
修飾ウリジンが、2−チオウリジン、5−メチルウリジン、偽ウリジン、5−メチルウリジン5’−三リン酸(m5U)、5−ヨードウリジン5’−三リン酸(I5U)、4−チオウリジン5’−三リン酸(S4U)、5−ブロモウリジン5’−三リン酸(Br5U)、2’−メチル−2’−デオキシウリジン5’−三リン酸(U2’m)、2’−アミノ−2’−デオキシウリジン5’−三リン酸(U2’NH2)、2’−アジド−2’−デオキシウリジン5’−三リン酸(U2’N3)および2’−フルオロ−2’−デオキシウリジン5’−三リン酸(U2’F)から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項10】
修飾シチジンが、5−メチルシチジン、3−メチルシチジン、2−チオシチジン、2’−メチル−2’−デオキシシチジン5’−三リン酸(C2'm)、2’−アミノ−2’−デオキシシチジン5’−三リン酸(C2'NH2)、2’−フルオロ−2’−デオキシシチジン5’−三リン酸(C2'F)、5−ヨードシチジン5’−三リン酸(I5U)、5−ブロモシチジン5'−三リン酸(Br5U)および2’−アジド−2’−デオキシシチジン5’−三リン酸(C2'N3)から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項11】
m7GpppGキャップおよび/または少なくとも1つのIRESおよび/またはポリA尾部を5’末端に有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項12】
転写置換療法の使用のための請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項13】
一般的な状況または特異的な状況において、身体に有益且つ支援的な少なくとも1つの因子をコードするmRNA配列を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項14】
増殖因子、血管形成因子、刺激物質、誘導物質、酵素または他の生物学的活性分子をコードするRNAを含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項15】
サーファクタントタンパク質B(SP−B)、EPO、ABCA3、BMP−2またはそれらの断片をコードするmRNA配列を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項16】
新生児における呼吸窮迫症候群の治療に使用するための、SP−Bをコードする配列を含む請求項13記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項17】
EPO欠損症の治療に使用するための、EPOをコードする配列を含む、請求項13記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項18】
インプラントのコーティングに使用するための、増殖因子、血管形成因子、刺激物質、誘導物質または酵素をコードする少なくとも1つの配列を含む、請求項13記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項19】
標的細胞内で発現されない内因性マイクロRNAの少なくとも1つの標的配列またはターゲティング配列をさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項20】
機能運搬体が、標的配列、PEG群および/またはターゲティングリガンドである、請求項8記載のポリリボヌクレオチド。
【請求項21】
薬剤として許容される添加剤と一緒に、請求項1〜20のいずれか1項に記載のRNAを少なくとも1つ含有する、薬剤組成物。
【請求項22】
気管内投与用および/もしくは経肺投与用の形態またはインプラントへの塗布用形態である、請求項21記載の薬剤組成物。
【請求項23】
RNA含有組成物の投与前または投与の間に投与するための少なくとも1つのパーフルオロカーボンを付加的に含む、請求項22記載の薬剤組成物。
【請求項24】
パーフルオロカーボンおよびs2U(0.25)m5C(0.25) SP−B mRNAを含有する、請求項23記載の薬剤組成物。
【請求項25】
担体としての遅延放出ポリマーに含まれる請求項1〜20のいずれか1項に記載の修飾RNAのコーティングを有する、インプラント。
【請求項26】
歯のインプラント、股関節内部プロテーゼ、膝関節内部プロテーゼまたは脊椎椎体固定物である、請求項25記載のインプラント。
【請求項27】
担体ポリマーが少なくとも1種の修飾RNAを含有する、請求項25または26記載のインプラント。
【請求項28】
担体ポリマーが、埋め込み術に関連して有益な少なくとも1つのタンパク質をコードするRNAを含有する、請求項25〜27のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項29】
担体ポリマーが、1以上の増殖因子および1以上の血管形成因子をコードするRNAを含有する、請求項25〜28のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項30】
TLR3、TLR3、TLR8およびヘリカーゼRIG−1から選択される少なくとも1つのレセプターとRNA配列を接触させて、その結合能力を測定する、免疫原性および発現品質を試験するためのヌクレオチド配列のスクリーニング方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図3F】
image rotate

【図3G】
image rotate

【図3H】
image rotate

【図3I】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図11D】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2013−500704(P2013−500704A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522031(P2012−522031)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004681
【国際公開番号】WO2011/012316
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512024886)エスリス ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】ethris GmbH
【Fターム(参考)】