説明

タンパク質精製

【課題】ポリペプチド(例えば、抗体)を精製する方法を提供すること。
【解決手段】ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物から該ポリペプチドを精製するための方法であって、該方法は、以下の一連の工程:(a)該組成物を、第1塩濃度を有する平衡化緩衝液とともにイオン交換樹脂にローディングする工程;(b)該イオン交換樹脂を、素通り画分中に所定のタンパク質濃度が測定されるまで、洗浄緩衝液で洗浄する工程であって、該洗浄緩衝液の塩濃度は、該平衡化緩衝液の塩濃度よりも高い最初の第2塩濃度から、最終的な第3塩濃度へと上昇する、工程;(c)該最終的な第3塩濃度において、一定体積の洗浄緩衝液を、陽イオン交換樹脂に通過させる工程;および(d)該ポリペプチドを、該洗浄緩衝液の最終塩濃度よりも高い塩濃度を有する溶出緩衝液を用いて、該イオン交換樹脂から溶出させる工程を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般に、タンパク質精製に関する。特に、本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを用いて、ポリペプチドおよび少なくとも1種類の夾雑物を含む組成物から、ポリペプチド(例えば、抗体)を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
タンパク質の大規模な、経済的精製は、バイオテクノロジー産業にとって、ますます重要な問題になりつつある。一般的に、タンパク質は、真核生物細胞系および原核生物細胞系のいずれかを用いて、細胞培養物によって生成される。この真核生物細胞系および原核細胞系は、組み換えプラスミドの挿入によって、目的のタンパク質を生成するように操作され、この組み換えプラスミドは、そのタンパク質の遺伝子を含む。代表的に使用される細胞は、生きた組織であり、これらは、複合増殖培地(動物血清の調製物から供給される糖、アミノ酸、および成長因子を含む)を与えられなければならない。細胞に与えられた化合物の混合物からおよび細胞自身の副産物から、ヒト用治療剤として使用するために十分な純度への所望のタンパク質の分離は、大変な課題をもたらす。
【0003】
細胞残屑からのタンパク質の精製手順は、初めに、タンパク質の発現部位に依存する。いくつかのタンパク質は、細胞から周辺の増殖培地へと直接的に分泌されるようにされ得る;他は、細胞内に生成される。後者のタンパク質に関しては、精製プロセスの第一の工程は、細胞溶解に関する。この工程は、種々の方法によって行われ得、これらの方法としては、機械的剪断、浸透圧性ショック、もしくは酵素処理が挙げられる。このような破壊は、全細胞内容物をホモジネート中に放出し、加えて細胞下(subcellular)フラグメントを生成する。これらの細胞下フラグメントは、その小さな大きさのため、除去が困難である。これらは、一般的に分画遠心分離(differential centrifugation)によってかもしくは濾過によって除去される。同じ問題が、より小規模であるが、直接的に分泌されるタンパク質によって生じる。これは、細胞の自然死、およびタンパク質生成実行の過程における宿主細胞タンパク質の放出に起因する。
【0004】
一旦目的のタンパク質を含む浄化された溶液が得られた場合、細胞により生成された他のタンパク質からのその分離は、通常、異なるクロマトグラフィー技術の組合せを用いて試みられる。これらの技術は、タンパク質の混合物を、それらの電荷、疎水性の程度、または大きさに基づいて分離する。いくつかのクロマトグラフィー樹脂は、これらの技術の各々に対して利用可能であり、精製スキームを正確に調整して特定のタンパク質が含まれるようにすることを可能にする。これらの分離方法の各々の本質は、タンパク質が長いカラムを異なる速度で動き、物理的分離(それらがカラムをさらに通過していくのに従って増大する)を達成するか、またはタンパク質が選択的に分離媒体に接着し、次いで異なる溶媒によって差次的に溶出されるかのいずれかとされ得ることである。いくつかのケースでは、不純物がカラムに特異的に接着し、目的のタンパク質が接着しない(つまり、目的のタンパク質が「素通り画分(flowthrough)」に存在する)場合に、所望のタンパク質が不純物から分離される。
【0005】
イオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質精製のために一般に使用されるクロマトグラフィー技術である。イオン交換クロマトグラフィーでは、溶質表面上の荷電したパッチ(patch)が、クロマトグラフィーマトリックスに結合された反対電荷によって引きつけられ、周辺の緩衝液のイオン強度は低くなる。溶出は、一般的に、緩衝液のイオン強度(すなわち伝導率)を上昇させて、イオン交換マトリックスの荷電部位に対して溶質と競合させることによって実現される。pHを変化させ、それによって溶質の電荷を変化させることは、溶質の溶出を実現するための別の方法である。伝導率またはpHの変化は、連続的(勾配溶出)または段階的(段階溶出)であり得る。過去において、これらの変化は、進行性であった;すなわち、pHまたは伝導率は、1つの方向に増加または減少される。
【0006】
特許文献1および特許文献2(Baseyら)は、ポリペプチドを精製するためのイオン交換クロマトグラフィーを記載した。
【0007】
特許文献3および特許文献4(Blank,G.)は、プロテインAクロマトグラフィーによるタンパク質精製(例えば、抗HER2抗体精製)を記載した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,339,142号明細書
【特許文献2】米国特許第6,417,355号明細書
【特許文献3】米国特許第6,127,526号明細書
【特許文献4】米国特許第6,333,398号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物からポリペプチドを精製するための方法を提供する。この組成物は、第1塩濃度を有する平衡化緩衝液とともにイオン交換樹脂にローディングされる。このイオン交換樹脂は、素通り画分中に所定のタンパク質濃度が測定されるまで、洗浄緩衝液で洗浄される。洗浄中、洗浄緩衝液の塩濃度は、平衡化緩衝液の塩濃度よりも高い最初の第2塩濃度から、最終的な第3塩濃度へと上昇する。次いで、最終的な第3塩濃度において、一定の体積の洗浄緩衝液を、樹脂に通過させる。最後に、ポリペプチドが、洗浄緩衝液の最終塩濃度よりも高い塩濃度を有する溶出緩衝液を用いて、イオン交換樹脂から溶出される。
【0010】
1つの実施形態において、イオン交換樹脂は、陰イオン交換樹脂である。別の実施形態において、イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂である。好ましくは、陽イオン交換樹脂は、アガロースに固定されたスルホプロピルを含む。
【0011】
別の実施形態において、溶出緩衝液は、平衡化緩衝液よりも高い伝導率を有する。特定の実施形態において、溶出緩衝液は、約145mMのNa/HOAcを含み、平衡化緩衝液は、約70mMのNa/HOAcを含む。別の実施形態において、溶出緩衝液は、約100mMのNaClを含み、平衡化緩衝液は、約45mMのNaClを含む。
【0012】
洗浄緩衝液は、好ましくは、平衡化緩衝液と溶出緩衝液との混合物を含む。したがって、1つの実施形態において、工程(b)の間の洗浄緩衝液の塩濃度の上昇は、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率を上げることによって達成される。洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率は、一定の割合で上昇され得る。1つの実施形態において、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率の上昇は、洗浄緩衝液中の塩濃度を、1カラム体積の洗浄緩衝液あたり約1mM〜約3mMの一定の割合で上昇させる。
【0013】
別の実施形態において、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージは、工程(b)の洗浄過程の間、2以上の異なる割合で上昇する。例えば、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージは、洗浄の第1セグメントについて第1の割合で上昇し、洗浄の第2セグメントについて第2の割合で上昇し、そして洗浄の第3セグメントについて第3の割合で上昇する。
【0014】
1つの実施形態において、精製されるポリペプチドは、抗体である。この場合では、夾雑物は、この抗体の脱アミド化改変体である。特定の実施形態において、この抗体は、HER2を結合する。1つの実施形態において、イオン交換樹脂にローディングされる組成物中の抗体の量は、陽イオン交換樹脂1mLあたり、約15mg〜約45mgである。
【0015】
1つの実施形態において、所定のタンパク質濃度は、280nmにおいて測定した0.6ODに相当する。別の実施形態において、約0.4〜約1カラム体積の洗浄緩衝液が、工程(c)においてイオン交換樹脂に通される。さらなる実施形態において、平衡化緩衝液、洗浄緩衝液および溶出緩衝液のpHは、ほぼ同じであリ、好ましくは約5.5である。
【0016】
別の実施形態において、このポリペプチドを精製する方法は、ポリペプチドを含む組成物を、1以上のさらなる精製工程に供し、その結果、このポリペプチドの均質な調製物を得る工程をさらに包含する。さらなる実施形態において、このポリペプチドの均質な調製物と薬学的に受容可能なキャリアとを合わせることにより、薬学的組成物が調製される。別の実施形態において、精製されたポリペプチドは、異種分子(例えば、ポリエチレングリコール、標識または細胞傷害性剤)と結合される。
【0017】
別の局面において、本発明は、本明細書中で提供される方法に従って精製されたポリペプチドを提供する。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物から抗体を精製するための方法を提供する。この抗体は、第1伝導率の平衡化緩衝液とともに陽イオン交換材料に結合される。この陽イオン交換材料は、洗浄緩衝液によって洗浄され、この洗浄緩衝液の伝導率は、洗浄の間、第1伝導率よりも高い第2伝導率から、第3伝導率へと上昇する。一定の体積の、第3伝導率の洗浄緩衝液を、陽イオン交換材料に通過させ、そして抗体が、第3伝導率よりも高い第4伝導率の溶出緩衝液によって、陽イオン交換材料から溶出される。陽イオン交換樹脂は、好ましくは、アガロースに固定されたスルホプロピルを含む。1つの実施形態において、陽イオン交換材料を通過する洗浄緩衝液の、この一定の体積は、約0.4カラム体積〜約1.0カラム体積の間である。この方法はまた、抗体の溶出に続いて、再生緩衝液によってイオン交換材料を洗浄する工程を含む。
【0019】
1つの実施形態において、洗浄緩衝液の伝導率は、第2伝導率から第3伝導率へと一定の割合で上昇し、一方、別の実施形態において、洗浄緩衝液の伝導率は、第2伝導率から第3伝導率へと2以上の異なる割合で上昇する。特定の実施形態において、洗浄緩衝液の伝導率は、洗浄の第1セグメントについて第1の割合で上昇し、洗浄の第2セグメントについて第2の割合で上昇し、そして洗浄の第3セグメントについて第3の割合で上昇する。
【0020】
好ましくは、洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液と溶出緩衝液との混合物を含む。この場合では、洗浄緩衝液の伝導率は、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率に従って上昇され得る。1つの実施形態において、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率は、第1セグメント間は約6%の一定の割合で上昇し、第2セグメント間は約3.5%の一定の割合で上昇し、および第3セグメント間は約2%の一定の割合で上昇する。別の実施形態において、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率は、第1セグメント間は約26%から約54%へと上昇し、第2セグメント間は約54%から約61%へと上昇し、および第3セグメント間は約61%から約74%へと上昇する。
【0021】
さらなる実施形態において、陽イオン交換材料は、第1セグメントにおいて約5カラム体積の洗浄緩衝液によって、第2セグメントにおいて約2カラム体積の洗浄緩衝液によって、そして第3セグメントにおいて約6カラム体積の洗浄緩衝液によって、洗浄される。
【0022】
洗浄緩衝液の伝導率は、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率を上昇させることによって、上昇され得る。別の実施形態において、洗浄緩衝液の伝導率は、その塩濃度を上昇させることによって上昇される。
【0023】
さらなる局面において、本発明は、抗体および夾雑物を含む組成物から抗体を精製するための方法を提供する。好ましくは、この組成物は、陽イオン交換樹脂にローディングされ、この陽イオン交換樹脂は、第1伝導率から第2伝導率へと第1の割合で上昇し、第2伝導率から第3伝導率へと第2の割合で上昇し、および第3伝導率から第4伝導率へと第3の割合で上昇する伝導率を有する洗浄緩衝液によって洗浄され、そして抗体が、イオン交換材料から溶出される。陽イオン交換材料にローディングされる組成物中の抗体の量は、好ましくは、陽イオン交換材料1mlあたり、約15mg〜約45mgの抗体である。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物からポリペプチドを精製するための方法を提供し、この方法は、この組成物をイオン交換材料にローディングする工程、この陽イオン交換材料を、素通り画分中に所定のタンパク質濃度が測定されるまで、複数の傾きの勾配(multi−slope gradient)を用いて洗浄緩衝液で洗浄する工程、およびこのイオン交換材料からポリペプチドを溶出する工程、を包含する。
【0025】
1つの実施形態において、この複数の傾きの勾配は、2以上のセグメントを含む。好ましくは、この複数の傾きの勾配の各セグメントは、より浅い傾斜を有する。
【0026】
別の実施形態において、本方法は、0.4〜1カラム体積の洗浄緩衝液で、複数の傾きの勾配洗浄の後およびポリペプチドを溶出する前にカラムを洗浄する工程を、さらに包含する。好ましくは、この付加的な工程において、使用される洗浄緩衝液は、複数の傾きの勾配の最後での洗浄緩衝液の組成を有する。
好ましい実施形態では、本発明は例えば以下の方法などを提供する:
(項目1)
ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物から該ポリペプチドを精製するための方法であって、該方法は、以下の一連の工程:
(a)該組成物を、第1塩濃度を有する平衡化緩衝液とともにイオン交換樹脂にローディングする工程;
(b)該イオン交換樹脂を、素通り画分中に所定のタンパク質濃度が測定されるまで、洗浄緩衝液で洗浄する工程であって、該洗浄緩衝液の塩濃度は、該平衡化緩衝液の塩濃度よりも高い最初の第2塩濃度から、最終的な第3塩濃度へと上昇する、工程;
(c)該最終的な第3塩濃度において、一定体積の洗浄緩衝液を、陽イオン交換樹脂に通過させる工程;および
(d)該ポリペプチドを、該洗浄緩衝液の最終塩濃度よりも高い塩濃度を有する溶出緩衝液を用いて、該イオン交換樹脂から溶出させる工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記イオン交換樹脂が、陰イオン交換樹脂である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記イオン交換樹脂が、陽イオン交換樹脂である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記陽イオン交換樹脂が、アガロースに固定されたスルホプロピルを含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記溶出緩衝液が、前記平衡化緩衝液よりも高い伝導率を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記溶出緩衝液が、約145mMのNa/HOAcを含み、前記平衡化緩衝液が、約70mMのNa/HOAcを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記溶出緩衝液が、約100mMのNaClを含み、前記平衡化緩衝液が、約45mMのNaClを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記洗浄緩衝液が、平衡化緩衝液と溶出緩衝液との混合物を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
工程(b)の間の前記洗浄緩衝液の塩濃度の上昇が、該洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率を上げることによって達成される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記洗浄緩衝液中の前記溶出緩衝液の比率が、一定の割合で上昇する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記溶出緩衝液の比率の前記上昇が、1カラム体積の洗浄緩衝液あたり約1mM〜約3mMの一定の割合で、前記洗浄緩衝液の塩濃度を上昇させる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージが、工程(b)の洗浄過程の間、2以上の異なる割合で上昇する、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージが、前記洗浄の第1セグメントについて第1の割合で上昇し、該洗浄の第2のセグメントについて第2の割合で上昇し、そして該洗浄の第3のセグメントについて第3の割合で上昇する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記ポリペプチドが、抗体である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記抗体が、HER2を結合する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記夾雑物が、前記抗体の脱アミド化改変体である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記イオン交換樹脂にローディングされる前記組成物中の抗体の量が、陽イオン交換樹脂1mLあたり、約15mg〜約45mgである、項目14に記載の方法。
(項目18)
工程(b)における前記所定のタンパク質濃度が、280nmにおいて測定された0.6ODに相当する、項目1に記載の方法。
(項目19)
約0.4〜約1カラム体積の洗浄緩衝液が、工程(c)において前記イオン交換樹脂に通される、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記平衡化緩衝液、前記洗浄緩衝液および前記溶出緩衝液のpHが、ほぼ同じである、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記平衡化緩衝液、前記洗浄緩衝液および前記溶出緩衝液のpHが、ほぼ5.5である、項目23に記載の方法。
(項目22)
前記ポリペプチドを含む前記組成物を、工程(a)〜工程(d)の前、間または後のいずれかで1以上のさらなる精製工程に供し、その結果、該ポリペプチドの均質な調製物を得る工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記ポリペプチドの均質な前記調製物と、薬学的に受容可能なキャリアとを合わせることにより薬学的組成物を調製する工程をさらに包含する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記精製されたポリペプチドを、異種分子と結合させる工程をさらに包含する、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記異種分子が、ポリエチレングリコール、標識または細胞傷害性剤である、項目24に記載の方法。
(項目26)
項目1に記載の方法に従って精製された、ポリペプチド。
(項目27)
ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物から抗体を精製するための方法であって、該方法は、順次実施される以下の工程:
(a)該抗体を、第1伝導率の平衡化緩衝液を用いて陽イオン交換材料に結合させる工程;
(b)該陽イオン交換材料を、洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程であって、該洗浄緩衝液の伝導率が、該洗浄の間に、該第1伝導率よりも高い第2伝導率から、第3伝導率へと上昇する、工程;
(c)一定体積の、該第3伝導率の洗浄緩衝液を、該陽イオン交換材料に通す工程;および
(d)該抗体を、該第3伝導率よりも高い第4伝導率の溶出緩衝液を用いて該陽イオン交換材料から溶出させる工程
を包含する、方法。
(項目28)
前記陽イオン交換樹脂が、アガロース上に固定されたスルホプロピルを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記洗浄緩衝液の前記伝導率が、前記第2伝導率から前記第3伝導率へと一定の割合で上昇する、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記洗浄緩衝液の伝導率が、前記第2伝導率から前記第3伝導率へと2以上の異なる割合で上昇する、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記洗浄緩衝液の伝導率が、前記洗浄の第1セグメントについては第1の割合で上昇し、該洗浄の第2セグメントについては第2の割合で上昇し、そして該洗浄の第3セグメントについては第3の割合で上昇する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記洗浄緩衝液が、平衡化緩衝液と溶出緩衝液との混合物を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記洗浄緩衝液の前記伝導率が、該洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率が上昇することにより上昇する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の前記比率が、前記第1セグメントの間は約6%の一定の割合で上昇し、前記第2セグメントの間は約3.5%の一定の割合で上昇し、そして前記第3セグメントの間は約2%の一定の割合で上昇する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記洗浄緩衝液中の溶出緩衝液の比率が、前記第1セグメントの間は約26%から約54%へと上昇し、前記第2セグメントの間は約54%から約61%へと上昇し、そして前記第3セグメントの間は約61%から約74%へと上昇する、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記陽イオン交換材料が、前記第1セグメントにおいて約5カラム体積の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、前記第2セグメントにおいて約2カラム体積の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、そして前記第3セグメントにおいて約6カラム体積の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、項目31に記載の方法。
(項目37)
前記洗浄緩衝液の伝導率が、該洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージを上昇させることにより上昇される、項目27に記載の方法。
(項目38)
前記洗浄緩衝液の伝導率が、該洗浄緩衝液中の塩濃度を上昇させることにより上昇される、項目27に記載の方法。
(項目39)
工程(c)において前記陽イオン交換材料に通される洗浄緩衝液の前記一定体積が、約0.4カラム体積と約1.0カラム体積との間である、項目27に記載の方法。
(項目40)
工程(d)の後に再生緩衝液を用いて前記イオン交換材料を洗浄する工程をさらに包含する、項目27に記載の方法。
(項目41)
抗体および夾雑物を含む組成物から該抗体を精製するための方法であって、該方法は、順次実施される以下の工程:
(a)該組成物を、陽イオン交換材料にローディングする工程;
(b)該陽イオン交換材料を、第1伝導率から第2伝導率へと第1の割合で上昇し、該第2伝導率から第3伝導率へと第2の割合で上昇し、そして該第3伝導率から第4伝導率へと第3の割合で上昇する伝導率を有する洗浄緩衝液で洗浄する工程;および
(c)該抗体を、該イオン交換材料から溶出させる工程であって、該陽イオン交換材料にローディングされる該組成物中の抗体の量が、陽イオン交換材料1mlあたり約15mg〜約45mgの抗体である、工程
を順次実施する工程を包含する、方法。
(項目42)
ポリペプチドおよび夾雑物を含む組成物から該ポリペプチドを精製するための方法であって、該方法が、順次実施される以下の工程:
(a)該組成物をイオン交換材料にローディングする工程;
(b)陽イオン交換材料を、所定のタンパク質濃度が素通り画分中に測定されるまで、複数の傾きの勾配を用いて洗浄緩衝液で洗浄する工程;および
(c)該ポリペプチドを、該イオン交換材料から溶出させる工程
を包含する、方法。
(項目43)
前記複数の傾きの勾配が、2以上のセグメントを含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記複数の傾きの勾配の各セグメントが、より浅い傾きを有する、項目43に記載の方法。
(項目45)
工程(b)と工程(c)との間に、0.4カラム体積〜1カラム体積の洗浄緩衝液を用いて前記カラムを洗浄する工程をさらに包含する、項目42に記載の方法。
(項目46)
前記洗浄緩衝液が、工程(b)の終わりに前記洗浄緩衝液の組成を有する、項目45に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】図1Aは、humMAb4D5−8軽鎖(配列番号1)のアミノ酸配列を示す。
【図1B】図1Bは、humMAb4D5−8重鎖(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、線形勾配洗浄工程によるクロマトグラフィープロセスを図示するグラフである。
【図3】図3は、複数の傾きの勾配での洗浄によるクロマトグラフィープロセスを図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
(定義:)
本明細書中で精製される「組成物」は、目的のポリペプチドおよび1種類以上の夾雑物を含む。この組成物は、「部分的精製物」であり得る(すなわち、1以上の精製工程(例えば、プロテインAクロマトグラフィー)に供された)か、または宿主細胞もしくはポリペプチドを生成する組織から直接的に得られ得る(例えば、組成物は、収集された細胞培養液を含み得る)。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」とは、一般的に、10以上のアミノ酸を有するポリペプチドおよびタンパク質を指す。好ましくは、ポリペプチドは、哺乳動物タンパク質であり、例えば、以下が挙げられる:レニン;成長ホルモン(ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンが挙げられる);成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−アンチトリプシン;インシュリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子(例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子(例えば、プロテインC);心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性物質;プラスミノゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼもしくはヒト尿もしくは組織型プラスミノゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;組織壊死因子−αおよび−β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T− cell
expressed and secreted);ヒト、マクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン);ミューラー管阻害物質;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレニン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質(例えば、β−ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞障害性Tリンパ球関連抗体(CTLA)(例えば、CTLA−4);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンもしくは成長因子のレセプター;プロテインAもしくはプロテインD;リウマチ因子;神経栄養因子(例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5、もしくはニューロトロフィン−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)、または神経成長因子(例えば、NGF−β);血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子(例えば、aFGFおよびbFGF;上皮成長因子(EGF);トランスフォーミング成長因子(TGF)(例えば、TGF−αおよびTGF−β(TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、もしくはTGF−β5を含む));インシュリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);デス(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質(例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、およびCD20);エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、およびインターフェロン−γ);コロニー刺激因子(CSF)(例えば、M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF;インターロイキン(IL)(例えば、IL−1〜IL−10);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原(例えば、AIDSエンベロープの一部など);輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節性タンパク質;インテグリン(例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4、およびVCAM);腫瘍関連抗原(例えば、HER2、HER3、もしくはHER4)レセプター;ならびに、上記に列挙されたポリペプチドのいずれかのフラグメントおよび/もしくは改変体。最も好ましいものは、ヒトHER2に結合する全長抗体である。
【0030】
「夾雑物」は、所望のポリペプチド産物とは異なる物質である。夾雑物は、限定されることなく、所望のポリペプチドの改変体、フラグメント、凝集体、もしくは誘導体(例えば、脱アミド化改変体もしくはアミノ−アスパラギン酸改変体)、別のポリペプチド、核酸、エンドトキシンなどであり得る。
【0031】
出発ポリペプチド(starting polypeptide)の「改変体」または「アミノ酸配列改変体」は、出発ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。一般的に、改変体は、天然ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有し、好ましくは、少なくとも90%の配列同一性を有し、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を有し、そして最も好ましくは、少なくとも98%の配列同一性を有する。パーセンテージ配列同一性は、例えば、配列を最大のホモロジーを提供するように整列させた後、Fitchら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:1382−1386(1983)(これは、Needlemanら、J.Mol.Biol.48:443−453(1970)によって記載されたアルゴリズムの変形である)によって決定される。ポリペプチドのアミノ酸配列改変体は、そのポリペプチドをコードするDNAに適切なヌクレオチド変化を導入することによってか、またはペプチド合成によって調製され得る。このような改変体としては、例えば、目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/もしくは目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基への挿入、および/もしくは目的のポリペプチドのアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせが、最終構築物に到達するために作製され、この組み合わせは、最終構築物が所望の特徴を有するようにする。アミノ酸変化はまた、ポリペプチドの翻訳後プロセシングを(例えば、グリコシル化部位の数もしくは位置を変化させることによって)変化させ得る。他の翻訳後修飾としては、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基、スレオニル残基、もしくはチロシル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖のαアミノ酸基のメチル化が挙げられる(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W. H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79−86(1983))。ポリペプチドのアミノ酸配列改変体を生成するための方法は、米国特許第5,534,615号に記載され、これは、例として、本明細書中で参考として明確に援用される。
【0032】
「酸性改変体」は、目的のポリペプチドの改変体であり、(例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーによって決定されるように)目的のポリペプチドよりも酸性である。酸性改変体は、発現されたポリペプチドへの組み換え宿主細胞の作用によって生成され得る。酸性改変体の例は、脱アミド化改変体である。グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、しばしば翻訳後に、対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基へと脱アミド化される。
【0033】
ポリペプチド分子の「脱アミド化」改変体は、もとのポリペプチドの1つ以上のアスパラギン残基がアスパラギン酸に変換された(すなわち、中性アミド側鎖が、全体として酸性の特徴を有する残基へ変換された)ポリペプチドである。例えば、本明細書中で使用される場合、「脱アミド化ヒトDNase」は、アスパラギン残基において脱アミド化されたヒトDNaseを意味する(この脱アミド化は、天然成熟ヒトDNaseのアミノ酸配列において74位に生じる)(米国特許第5,279,823号;本明細書中で参考として明確に援用される)。以下の実施例に由来する脱アミド化huMAb4D5抗体は、CDR1中にAsn30を有し、そのいずれかもしくは両方のV領域がアスパラギン酸に変換されている。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、組み換えポリペプチドである。「組み換えポリペプチド」は、このポリペプチドをコードする核酸によって形質転換もしくはトランスフェクションされた宿主細胞内で生成されたか、または相同的組み換えの結果としてこのポリペプチドを生成する宿主細胞内で生成されたものである。「形質転換」および「トランスフェクション」は、交換可能に使用されて、核酸を細胞に導入するプロセスを指す。形質転換もしくはトランスフェクションに続いて、核酸は、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得るか、または染色体外エレメントとして存在し得る。「宿主細胞」としては、インビトロにおける細胞培養物中の細胞、および宿主動物内の細胞が挙げられる。ポリペプチドの組み換え体作製の方法は、米国特許第5,534,615号(これは、例として、本明細書中で参考として明確に援用される)に記載される。
【0035】
用語「抗体」とは、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメント(それらが所望の生物学的活性を示す限り)を網羅する。
【0036】
本明細書中における抗体は、目的の「抗原」に指向する。好ましくは、この抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、そして疾患もしくは障害に罹患する哺乳動物への抗体の投与は、その哺乳動物に治療的利益をもたらし得る。しかし、非ポリペプチド抗原(例えば、腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5,091,178号を参照のこと)に指向する抗体もまた、考えられる。抗原がポリペプチドである場合、これは、膜貫通分子(例えば、レセプター)、またはリガンド(例えば、成長因子)であり得る。例示的抗原としては、上記で議論されたそれらのポリペプチドが挙げられる。本発明によって含まれる抗体に対する好ましい分子標的としては、CDポリペプチド(例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20およびCD34);HERレセプターファミリーのメンバー(例えば、EGFレセプター、HER2レセプター、HER3レセプター、またはHER4レセプター);細胞接着因子(例えば、LFA−1、Mac1、p150,95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、およびav/b3インテグリン(それらのαもしくはβサブユニットのいずれかを含む;例えば、抗CD11a、抗CD18もしくは抗CD11b抗体));成長因子(例えば、VEGF);IgE;血液型群抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA−4;ポリペプチドC、などが挙げられる。可溶性抗原もしくはそれらのフラグメントは、必要に応じて他の分子に結合され、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。レセプターのような膜貫通分子に対して、それらのフラグメント(例えば、レセプターの細胞外ドメイン)は、免疫原として使用され得る。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。このような細胞は。天然の供給源(例えば、癌細胞株)に由来し得るか、または組み換え技術によって形質転換されて膜貫通分子を発現する細胞であり得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体(すなわち、少量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて、同一である集団を含む個々の抗体)の集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に指向される。さらに、従来の(ポリクローナル)抗体調製物(代表的に、異なる決定基(エピトープ)に指向される異なる抗体を含む)に対して、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向される。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体として、抗体の特徴を示し、そして任意の特定の方法による抗体の生成を必要とするとは解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(最初にKohlerら、Nature 256:495(1975)によって記載された)によって作製され得るか、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製され得る。さらなる実施形態において、「モノクローナル抗体」は、McCaffertyら、Nature,48:552−554(1990)に記載された技術を用いて生成された、抗体ファージライブラリから単離され得る。Clacksonら、Nature,352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)は、ファージライブラリを用いたマウス抗体およびヒト抗体の単離を記載した。その後の刊行物は、以下を記載する:鎖混合(chain shuffling)による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生成(Marksら、Bio/Technology,10:779−783(1992))、ならびに、非常に大きなファージライブラリを構築するためのストラテジーとしての、組み合わせ感染およびインビボでの組み換え(Waterhouseら、Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する、実行可能な代替案である。あるいは、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが、現在では可能である。このトランスジェニック動物は、免疫化によって、内的な免疫グロブリン生成なしでヒト抗体の完全なレパートリーを作製し得る。例えば、キメラマウスおよび生殖細胞変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域(J)遺伝子のホモ接合型の欠失は、内的抗体生成の完全な阻害をもたらす。このような生殖細胞変異マウスへのヒト生殖細胞免疫グロブリン遺伝子配列の転移は、抗原誘発によってヒト抗体の生成をもたらす。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature,362:255−258(1993);Bruggermannら、Year in Immuno.,7:33(1993);およびDuchosalら、Nature 355:258(1992)を参照のこと。
【0038】
本明細書中におけるモノクローナル抗体は、具体的に、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(この抗体では、重鎖および/もしくは軽鎖の一部は、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りの部分は、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同である)、およびこのような抗体のフラグメントを(これらが所望の生物学的活性を示す限り)含む(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。
【0039】
用語「超可変領域」は、本明細書中で使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。この超可変領域は、以下を含む:「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基24−34(L1)、残基50−56(L2)、および残基89−97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける残基31−35(H1)、残基50−65(H2)、および残基95−102(H3);Kabatら、Sequences of polypeptides of Immunological Interest(第5版)Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda MD.(1991))、ならびに/または「超可変ループ」由来のそれらの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基26〜32(L1)、残基50〜52(L2)、および残基91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける残基26〜32(H1)、残基53〜55(H2)、および残基96〜101(H3);ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。「フレームワーク」または「FR」は、本明細書中で定義されるような超可変領域残基以外の、可変ドメイン残基である。以下の例のrhuMAb HER2 抗体のCDRおよびFR残基(humAb4D5−8)は、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)において同定される。
【0040】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分に関して、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。このヒト化抗体では、レシピエントの超可変領域に由来する残基は、非ヒト種(例えば、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、もしくは非ヒト霊長類)の超可変領域に由来する残基(ドナー抗体)によって置換される。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてかまたはドナー抗体において見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、そして代表的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てもしくは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、そしてFR領域の全てもしくは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)(代表的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域)の少なくとも一部を含む。
【0041】
ヒト化抗体を作製するのに使用されるヒト可変ドメイン(重鎖および軽鎖の両方)の選択は、抗原性を減少させるために重要である。「最良一致(best−fit)」法と呼ばれる方法に従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリに対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として認められる(Simsら、J Immunol.,151:2296(1993);Chothiaら、J MoL Biol,196:901(1987))。
【0042】
別の方法は、軽鎖もしくは重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体の共通配列に由来する特別なフレームワークを使用した。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用され得る(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Prestaら、J.Imnnol.,151:2623(1993))。
【0043】
抗体が、抗原に対する高親和性および他の好ましい生物学的性質を保持した状態でヒト化されることは、さらに重要である。この目標を実現するため、好ましい方法に従って、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の3次元モデルを用いた親配列および種々の概念的なヒト化産物の分析のプロセスによって調製される。3次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、そして当業者に周知である。コンピュータプログラムが利用可能であり、これは、選択された候補免疫グロブリン配列の、有望な3次元立体構造を図解し、そして表示する。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における、この残基の可能性のある役割の分析(すなわち、候補免疫グロブリンの抗原に結合する能力に影響する残基の分析)を可能にする。この方法で、FR残基がレシピエントから選択されて組み合わせられ、そして配列を読み込み、それによって、所望の抗体の特徴(例えば、標的抗原に対する親和性の増加)が達成され得る。一般的に、CDR残基は直接的に、そしてほぼ実質的に、抗原結合への影響に関与する。
【0044】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部(一般的には、それらの抗原結合領域もしくは可変領域)を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖抗体(linear antibody);単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。種々の技術が、抗体フラグメントの生成のために開発されてきた。伝統的には、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質消化を介して誘導された。(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)、およびBrennanら、Science,229:81(1985))。しかし、これらのフラグメントは、今は組み換え宿主細胞によって直接的に生成され得る。例えば、抗体フラグメントは、上記で議論された抗体ファージライブラリから単離され得る。あるいは、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接的に回収され、化学的に結合されて、F(ab’)フラグメントを形成し得る(Carterら、Bio/Technology 10:163−167(1992))。別の実施形態において、F(ab’)は、ロイシンジッパーGCN4を用いて形成されて、F(ab’)分子の構築を促進する。別のアプローチに従って、F(ab’)フラグメントは、組み換え宿主細胞培養物から直接的に単離され得る。抗体フラグメントの生成のための他の技術は、当業者に明らかである。
【0045】
他の実施形態において、選択する抗体は、単鎖Fvフラグメント(scFv)である。WO93/16185を参照のこと。「単鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVドメインおよびVドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にし得る。sFvの概説として、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore(編)Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照のこと。
【0046】
用語「ダイアボディ(diabody)」は、2つの抗原結合部位を含む小さな抗体フラグメントを指す。このフラグメントは、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む(V−V)。非常に短いため同じ鎖の上で2つのドメイン間を組み合わせることができないリンカーを使用することによって、このドメインは、別の鎖の相補的ドメインと強制的に組み合わせられて、2つの抗原結合部位を作る。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollingerら。Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)において、より詳細に記載される。
【0047】
本出願を通じて使用される場合、「直鎖抗体」という表現は、Zapataら、Polypeptide Eng.8(10):1057−1062(1995)に記載される抗体を指す。手短に言うと、これらの抗体は、一対のタンデムFdセグメント(V−C1−V−C1)を含む。このタンデムFdセグメントは、一対の抗原結合領域を形成する。直鎖抗体は、二重特異性もしくは単一特異性である。
【0048】
「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、このエピトープは、通常、異なる抗原に由来する。このような分子は、通常2つの抗原に結合するのみである(すなわち、二重特異性抗体、BsAbs)が、さらなる特異性を含む抗体(例えば、三重特異性抗体)が、本明細書中において、この表現に含まれる。BsAbsの例としては、以下が挙げられる:腫瘍細胞抗原に指向する一本の腕、および細胞障害性誘発分子に指向する他方の腕を有するもの(例えば、抗FcγRI/抗CD15、抗pl85HER2/FcγRIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B細胞(1D10)、抗CD3/抗pl85HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR−3、抗CD3/L−Dl(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラノサイト刺激ホルモンアナログ、抗EGFレセプター/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗汎腫瘍性(pan carcinoma)関連抗原(AMOC−31)/抗CD3);腫瘍細胞抗原に特異的に結合する一本の腕、および毒素に結合する一本の腕を有するBsAbs(例えば、抗サポリン/抗Id−1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロン−α(IFN−α)/抗ハイブリドーマイディオタイプ、抗CEA/抗ビンカアルカロイド);抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(この酵素は、リン酸マイトマイシンプロドラッグの、マイトマイシンアルコールへの変換を触媒する)のような酵素活性化プロドラッグを網羅するBsAbs;線維素溶解剤として使用され得るBsAbs(例えば、抗フィブリン/抗組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA));細胞表面レアセプターに対する免疫複合体を標的化するためのBsAbs(例えば、抗低比重リポタンパク質(LDL)/抗Fcレセプター(例えば、FcγRIもしくはFcγRIII));感染症の治療に使用するためのBsAbs(例えば、抗CD3/抗単純ヘルペスウイルス(HSV)、抗T細胞レセプター:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗FcγR/抗HIV);インビトロでの腫瘍検出のためのBsAbs(例えば、抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗pl85HER2/抗ハプテン);ワクチンアジュバントとしてのBsAbs;ならびに、診断手段としてのBsAbs(例えば、抗ウサギIgG/抗フェリチン、抗西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/抗サブスタンスP、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗β−ガラクトシダーゼ)。三重特異性抗体の例としては、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37、および抗CD3/抗CD8/抗CD37。二重特異性抗体は、全長抗体もしくは抗体フラグメント(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製され得る。
【0049】
二重特異性抗体を作製する方法は、当該分野で公知である。全長二重特異性抗体の伝統的な生成は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(ここで、2つの鎖は異なる特異性を有する)の同時発現に基づく(Millsteinら、Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせに起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種類の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その中の1種類のみが、妥当な二重特異性構造を有する。この妥当な分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われ、かなり面倒であり、かつ生成物の収量は低い。同様の手順が、WO93/08829およびTrauneckerら、EMBO J,10:3655−3659(1991)に開示される。
【0050】
異なるアプローチに従って、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、免疫グロブリン重鎖定常ドメインを用い、この免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む。軽鎖結合のために必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)を有し、これが少なくとも1つの融合物中に存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物(および、所望される場合、免疫グロブリン軽鎖)をコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物体に同時トランスフェクトされる。これは、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の不均等な割合が最適な収量をもたらす場合での実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相互比率の調節に高い柔軟性を提供する。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい割合での発現が高い収量をもたらす場合か、またはこの割合が特定の意義を有さない場合、2つもしくは3つ全てのポリペプチド鎖に関するコード配列を、1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0051】
このアプローチの好ましい実施形態において、二重特異性抗体は、1つの腕における第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他の腕におけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)からなる。二重特異性分子の半数のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、容易な分離手段を提供するように、この非対称構造が、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは、WO94/04690に開示される。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細に関しては、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照のこと。
【0052】
WO96/27011に記載される別のアプローチに従って、一対の抗体分子間の界面(interface)は、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロダイマーのパーセンテージを最大化するように操作され得る。好ましい界面は、抗体定常領域のCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面由来の、1つ以上の小アミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えば、チロシンもしくはトリプトファン)に置換される。大側鎖に対して同一もしくは同様の大きさの代償性の「窩(cavity)」は、大アミノ酸側鎖を類似の側鎖(例えば、アラニンもしくはスレオニン)で置換することによって、第2抗体分子の界面上に形成される。これは、ヘテロダイマーの収量を、他の望ましくない最終産物(例えば、ホモダイマー)以上に増加させる機構を提供する。
【0053】
二重特異性抗体は、架橋抗体もしくは「ヘテロ結合」抗体を含む。例えば、ヘテロ結合中の抗体の1つは、アビジンに結合され、他はビオチンに結合され得る。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対する免疫系細胞を標的するため(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置のため(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)に提示される。ヘテロ結合抗体は、任意の都合良い架橋法を使用して作製され得る。適切な架橋剤が当該分野で周知であり、多くの架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示される。
【0054】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成する技術もまた、文献に記載される。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製され得る。Brennanら、Science,229:81(1985)は、インタクトな抗体が、タンパク分解性に切断されて、F(ab’)フラグメントを生成する手順を記載する。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤、亜ヒ酸ナトリウムの存在下で減少して、隣接するジチオールを安定化し、分子内のジスルフィド形成を防止する。次いで、生成されたFab’フラグメントは、チオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つが、メルカプトエチルアミンによる還元によってFab’−チオールへ再転換され、そして等量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0055】
近年の進歩は、E.coliからのFab’−SHフラグメントの直接的回収を容易にした。このフラグメントは、化学的に結合して二重特異性抗体を形成し得る。Shalabyら、J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子の生成について記載する。各Fab’フラグメントは、E.coliから個別に分泌され、インビトロでの指向性化学結合に供されて、二重特異性抗体を形成する。
【0056】
組み換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作製し、単離するための種々の技術が記載された。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成された。Kostelnyら、J;Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のこのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に連結される。抗体ホモダイマーは、ヒンジ領域で還元されてモノマーを形成し、次いで再酸化されて、抗体へテロダイマーを形成する。この方法はまた、抗体ホモダイマーの生成のために利用され得る。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)によって記載されている。この「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替機構を提供した。フラグメントは、リンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に接続される、重鎖可変ドメイン(V)を含む。このリンカーは、非常に短いため同じ鎖の上で2つのドメイン間を組み合わせることができない。したがって、1つのフラグメントのVドメインおよびVドメインは、別のフラグメントの相補的VドメインおよびVドメインと強制的に組み合わせられて、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用することによって二重特異性抗体フラグメントを作製するための、別のストラテジーもまた、報告されている。Gruberら、J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと。
【0057】
2以上の結合価を有する抗体が考えられる。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuttら、J.Immunol.,147:60(1991)。
【0058】
用語「イオン交換材料」とは、負に荷電した固相(すなわち、陽イオン交換樹脂)、または正に荷電した固相(すなわち、陰イオン交換樹脂)を指す。この荷電は、1つ以上の荷電したリガンドを(例えば、共有結合によって)固相に結合させることによって提供される。あるいは、または加えて、この電荷は、固相の内在的性質であり得る(例えば、全体として負電荷を有するシリカの場合のように)。
【0059】
「固相」によって、1つ以上の荷電したリガンドが接着し得る非水性マトリックスを意味する。この固相は、精製カラム、個々の粒子の非連続的な相、膜、またはフィルターなどであり得る。固相を形成するための材料の例としては、多糖類(例えば、アガロースおよびセルロース)、および他の機械的に安定なマトリックス(例えば、シリカ(例えば、制御された孔を有するガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、および上記のいずれかの誘導体)が挙げられる。
【0060】
「陽イオン交換樹脂」は、負に荷電した固相を指し、固相上を通るかもしくは固相を通過する水溶液中の陽イオンと交換するための、遊離陽イオンを有する。固相に結合されて陽イオン交換樹脂を形成する負に荷電したリガンドは、例えば、カルボキシレートまたはスルホネートであり得る。市販の陽イオン交換樹脂としては、カルボキシ−メチル−セルロース、BAKERBOND ABXTM、アガロース上に固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、Pharmaciaからの、SP−SEPHAROSE FAST FLOWTM、SP−SEPHAROSE FAST FLOW XLTM、またはSP−SEPHAROSE HIGH PERFORMANCETM)、およびアガロース上に固定化されたスルホニル(例えば、Pharmaciaからの、S−SEPHAROSE FAST FLOWTM)が挙げられる。
【0061】
「陰イオン交換樹脂」は、正に荷電した(例えば、固相に結合された4級アミノ基のような、1つ以上の正に荷電したリガンドを有する)固相を指すために本明細書中で使用される。市販の陰イオン交換樹脂としては、DEAEセルロース、QAE SEPHADEXTM、およびFAST Q SEPHAROSETM(Pharmacia)が挙げられる。
【0062】
「緩衝液」は、その酸−塩基結合成分の作用によって、pHの変化に抵抗する溶液である。種々の緩衝液(例えば、緩衝液の望ましいpHに依存して利用され得る)は、Buffers.A Guide for the Preparation and Use
of Buffers in Biological Systems,Gueffroy,D.(編)Calbiochem Corporation(1975)中に記載される。1つの実施形態において緩衝液は、(例えば、以下の実施例1のように)約5〜約7の範囲のpHを有する。この範囲でpHを制御する緩衝液の例としては、MES、MOPS、MOPSO、ホスフェート、アセテート、シトレート、スクシネート、およびアンモニウム緩衝液、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。開示される方法に使用される緩衝液は、代表的に、塩(例えば、NaCl、KCl、またはNaHOAc)をまた含む。
【0063】
「平衡化緩衝液」は、イオン交換樹脂を平衡化するために使用される緩衝液である。平衡化緩衝液はまた、目的のポリペプチド分子、および1種類以上の夾雑物を含む組成物をイオン交換樹脂にローディングするために使用され得る。平衡化緩衝液は、好ましくは、目的のポリペプチド分子がイオン交換樹脂に結合するような伝導率および/もしくはpHを有する。
【0064】
用語「洗浄緩衝液」は、目的のタンパク質のローディング後および溶出前にイオン交換樹脂を通る緩衝液を指すために、本明細書中で使用される。洗浄緩衝液は、1種類以上の夾雑物をイオン交換樹脂から溶出させるように働き得る。洗浄緩衝液の伝導率および/もしくはpHは、夾雑物はイオン交換樹脂から溶出されるが、有意な量の目的のポリペプチドは溶出されないような、伝導率および/もしくはpHである。洗浄緩衝液は、好ましくは、平衡化緩衝液と溶出緩衝液との混合物を含み、所定の体積に含まれる溶出緩衝液のパーセンテージで記述され得る。
【0065】
「溶出緩衝液」は目的のポリペプチドを固相から溶出するために使用される。溶出緩衝液の伝導率および/もしくはpHは、目的のポリペプチドがイオン交換樹脂から溶出されるような伝導率および/もしくはpHである。
【0066】
「再生緩衝液」は、イオン交換樹脂を再生して、再利用され得るようにするために使用され得る。再生緩衝液は、イオン交換樹脂から実質的に全ての夾雑物および目的のポリペプチドを除去するために必要とされるような、伝導率および/もしくはpHを有する。
【0067】
用語「伝導率」は、水溶液の、2つの電極間に電流を伝導する能力を指す。溶液では、イオン輸送によって電流が流れる。したがって、水溶液中に存在するイオンの量の増加によって、その溶液はより高い伝導率を有する。伝導率を測定する単位は、mmhos(mS/cm)であり、伝導率計(例えばOrionによって販売される)を用いて測定される。溶液の伝導率は、その中のイオン濃度を変化させることによって変化され得る。例えば、溶液中の緩衝剤の濃度および/もしくは塩(例えば、Na/HOAc、NaCl、またはKCl)濃度は、所望の伝導率を達成するために変化され得る。好ましくは、種々の緩衝液の塩濃度は、所望の伝導率を達成するために改変される。
【0068】
ポリペプチドおよび1種類以上の夾雑物を含む組成物からポリペプチドを「精製する」ことは、この組成物から少なくとも1種類の夾雑物を除去することによって、その組成物中のポリペプチドの純度の程度を増加させることを意味する。「精製工程」は、「均質」な組成物をもたらす全精製プロセスの一部であり得る。「均質」とは、組成物の全重量に基づいて、少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、なおより好ましくは少なくとも約95重量%の目的のポリペプチドを含む組成物を指すために、本明細書中で使用される。
【0069】
他に示されない限り、本明細書中で使用される場合、用語「HER2」とは、ヒトHER2タンパク質を指し、そして「HER2(イタリック)」とは、ヒトHER2遺伝子を指す。ヒトHER2(イタリック)遺伝子およびHER2タンパク質は、例えば、Sembaら、PNAS(USA)82:6497−6501(1985)、およびYamamotoら、Nature 319:230−234(1986)(Genebank登録番号X03363)に記載される。
【0070】
本明細書中で使用される場合、用語「huMAb4D5−8」は、配列番号1の軽鎖アミノ酸配列および配列番号2の重鎖アミノ酸配列、またはそれらのアミノ酸配列改変体(これらは、HER2に結合する能力、およびHER2を過剰発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する能力を保持する)を含む、ヒト化抗HER2抗体を指す(米国特許第5,677,171号を参照のこと;本明細書中で参考として明確に援用される)。
【0071】
ポリペプチドの「pI」または「等電点」とは、ポリペプチドの正電荷がその負電荷と釣り合うpHを指す:pIは、ポリペプチドのアミノ酸残基の正味の電荷から計算され得るか、または等電点フォーカシング(isoelectric focussing)によって決定され得る。
【0072】
イオン交換材料に対する分子の「結合」とは、適切な条件(pH/伝導率)下でイオン交換物にその分子を曝露することによって、その分子が、その分子とイオン交換材料の荷電した基とのイオン相互作用によって、可逆的にイオン交換材料中、もしくはイオン交換材料上に固定化されることを意味する。
【0073】
イオン交換材料を「洗浄する」とは、適切な緩衝液を、イオン交換材料に通過させるかまたはイオン交換材料上に通すことを意味する。
【0074】
イオン交換材料から分子(例えば、ポリペプチドまたは夾雑物)を「溶出する」とは、イオン交換材料周辺の緩衝液のイオン強度を変化させて、イオン交換材料上の荷電部位に関して緩衝液と分子とを競合させることによって、イオン交換材料から分子を除去することを意味する。
【0075】
「処置」とは、治療的処置、および予防的(prophylactic)もしくは予防的(preventative)措置を指す。処置の必要な人々としては、障害を有する人々、および障害を予防されるべき人々が挙げられる。
【0076】
「障害」とは、本明細書中に記載されるような精製されたポリペプチドによる処置から利益を受ける、あらゆる状態である。これは、慢性および急性の両方の障害および疾患、ならびにそれらの、哺乳動物を問題の障害に罹患させる病理学的状態を含む。
【0077】
本明細書中で使用される場合、語句「標識」とは、直接的または間接的にポリペプチドに結合される、検出可能な化合物または組成物(composition)を指す。標識は、それ自身が検出可能であり得(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物もしくは基質組成物の化学変化を触媒し得る。
【0078】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞障害剤」は、細胞の機能を阻害もしくは防止する基質、および/または細胞の破壊を引き起こす基質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、I131、I125、Y90、およびRe186)、化学療法剤、および毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性のある毒素、またはそのフラグメント)を含むことが意図される。
【0079】
「化学療法剤」は、がんの処置に有用な化学的物質である。化学療法剤の例としては、以下が挙げられる:アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソイド(例えば、パクリタキセル(TAXOLTM、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、NJ)、およびドキセタキセル)、トキソテーレ(toxotere)、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4、675、187号を参照のこと)、メルファラン、および他の関連するナイトロジェンマスタード。この定義にまた含まれるものとしては、腫瘍へのホルモン作用を調節もしくは阻害するホルモン剤(例えば、タモキシフェンおよびオナプリストン)が挙げられる。
【0080】
(発明を実施するための形態)
本明細書中の発明は、ポリペプチドおよび1種類以上の夾雑物を含む組成物(例えば、水溶液)から、ポリペプチドを精製するための方法を提供する。この組成物は、一般的に、ポリペプチドの組み換え産物から得られた組成物であるが、ペプチド合成によるポリペプチド産物から得られた組成物であり得る。もしくはこのポリペプチドは、そのポリペプチドの天然供給源から精製され得る。好ましくは、ポリペプチドは、抗体(例えば、HER2抗原に結合する抗体)である。
【0081】
ポリペプチドの組み換え産生のため、それをコードする核酸は、単離されて、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためか、もしくは発現のため、複製可能なベクター中に挿入される。ポリペプチドをコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えばポリペプチドが抗体である場合、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離されて、配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの構成要素としては、一般的に(限定ではないが)、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列が挙げられる(例えば、米国特許第5,534,615号、本明細書中で、特に参考として援用される)。
【0082】
本明細書中における、ベクターにおいてDNAをクローニングもしくは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物細胞、酵母細胞、またはより高次な真核生物細胞である。この目的に適切な原核生物としては、グラム陰性生物またはグラム陽性生物のような真正細菌であり、例えば以下である:腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(例えば、Escherichia(例えば、E.coli)Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella(例えば、Salmonella typhimurium)、Serratia(例えば、Serratia marcescans)、およびShigella)、ならびにBacilli(例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公開された、DD266,710に記載されるB.licheniformis 41P))、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)、およびStreptomyces。他の系統(例えば、E.coli B、E.coli X1776(ATCC 31,537)、およびE.coli W3110(ATCC 27,325)は適切であるが、1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli294(ATCC 31,446)である。これらの例は、限定ではなく、例示である。
【0083】
原核生物に加えて、真核生物の微生物(例えば、糸状菌または酵母)が、ポリペプチドをコードするベクターのためのクローニングまたは発現宿主に適切である。Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的なパン酵母は、真核生物系の宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかし、多くの他の属、種、および系統が、一般的に、本明細書中で利用可能かつ有用である(例えば、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主(例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.burgaricus(ATCC
16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianusなど);yarrowia(EP402,226);Pichia pastoris(EP183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces(例えば、Schwanniomyces occidentails);ならびに糸状菌(例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium)、およびAspergillus宿主(例えば、A.nidulansおよびA.niger))。
【0084】
グリコシル化ポリペプチドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。Spodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(カ)、Aedes albopictus(カ)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)およびBombyx moriのような宿主由来の、多くのバキュロウイルス株および改変体、ならびに対応する許容性昆虫宿主細胞が、同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株が、公的に入手可能である。例えば、Autographa californica NPVのL−1改変体およびBombyx mori NPVのBm−5株、これらのウイルスは、本明細書中で、本発明に従うウイルスとして、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、使用され得る。植物細胞(ワタ、コーン、ポテト、ダイズ、ペチュニア、トマト、およびタバコ)培養物もまた、宿主として利用され得る。
【0085】
しかし、関心は脊椎動物において最も高い。そして、培養物(組織培養)中における脊椎動物細胞の増殖は、慣用的な手順になった。有用な哺乳動物宿主細胞の例としては、限定ではないが、以下が挙げられる:SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎細胞(293細胞または懸濁培養物中で増殖するためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎細胞(BHK、ATCC
CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR (CHO、 Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトーリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーム細胞(Hep
G2)。
【0086】
宿主細胞は、ポリペプチド生成のための上記の発現ベクターまたはクローニングベクターによって形質転換されて、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に改変された、従来の栄養培地中で培養される。
【0087】
この発明のポリペプチドを生成するために使用される宿主細胞は、種々の培地中で培養され得る。市販の培地(例えば、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞を培養するために適切である。加えて、以下に記載される任意の培地が、宿主細胞のための培養培地として使用され得る:Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再発行特許第30,985号。これらの培地のいずれもが、必要な場合、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えば、インシュリン、トランスフェリンもしくは上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェート)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗体(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(μM範囲の最終濃度で通常存在する、無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補充され得る。その他の必要なサプリメントもまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれ得る。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のために選択された宿主細胞によって以前に使用された条件であり、当業者に明らかである。
【0088】
組み換え技術を用いる場合、ポリペプチドは、細胞内で、細胞膜周辺腔において生成され得るか、または直接的に培地中に分泌され得る。ポリペプチドが細胞内で生成される場合、第1の工程として、粒子状の細片、宿主細胞もしくは溶解された細胞(例えば、ホモジェナイズの結果として得られる)のいずれかが、例えば、遠心もしくは限外濾過によって除去される。ポリペプチドが培地中に分泌される場合、このような発現系からの上清は、一般的に、市販のタンパク質濃縮用フィルター(例えば、AmiconもしくはMillipore Pellicon限界濾過ユニット)を用いて、最初に濃縮される。
【0089】
次いで、ポリペプチドは、1つ以上の精製工程に供される。この工程としては、本明細書中で記載されるイオン交換クロマトグラフィー法が挙げられる。イオン交換クロマトグラフィーの前、中、後に実施され得る、さらなる精製手順の例としては、疎水性相互作用クロマトグラフィー上(例えば、フェニルセファロース上)での分画、エタノール沈殿、等電点フォーカシング、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、HEPARIN SEPHAROSETM上でのクロマトグラフィー、さらなる陰イオン交換クロマトグラフィーおよび/もしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫安塩析、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA、プロテインG、抗体、特異的基質、捕獲試薬(capture reagent)のようなリガンドもしくは抗原を用いる)が挙げられる。
【0090】
イオン交換クロマトグラフィーは、本明細書中で記載されるように実施される。陰イオン交換樹脂を利用すべきか、または陽イオン交換樹脂をを利用すべきかに関して、1つの判断が最初になされる。一般的に、陽イオン交換樹脂は、pIが約7より大きいポリペプチドに対して使用され得、そして陰イオン交換樹脂は、pIが約7より小さいポリペプチドに対して使用され得る。
【0091】
陰イオン交換樹脂または陽イオン交換樹脂は、公知の方法によって、製造者の指示書に従って、調製される。通常、平衡化緩衝液は、目的のポリペプチドおよび1種類以上の夾雑物を含む組成物を樹脂上にローディングする前に、イオン交換樹脂を通される。都合の良いことには、平衡化緩衝液は、ローディング緩衝液と同一であるが、これは必要ない。クロマトグラフィーのために使用される種々の緩衝液の組成は、陰イオン交換樹脂が利用されるかまたは陰イオン交換樹脂が利用されるかということに、部分的に依存し得る。
【0092】
平衡化に続いて、目的のポリペプチドおよび夾雑物を含む水溶液が、緩衝液を用いて、陽イオン交換樹脂にローディングされる(この緩衝液は、そのポリペプチドおよび夾雑物がその陽イオン交換樹脂に結合するような、pHおよび/もしくは伝導率である)。上記で議論されるように、平衡化緩衝液が、ローディングのために使用され得る。好ましい実施形態において、平衡化緩衝液は、ローディングの間、第1の低い伝導率(例えば、約4mmhos〜約5mmhos)である。この平衡化緩衝液のための例示的なpHは、約5.5である。
【0093】
樹脂上にローディングされる目的のポリペプチドの量は、種々の因子に依存し得る。この因子としては、例えば、樹脂の容量、所望の収量、および所望の純度が挙げられる。好ましくは、タンパク質約1mg/樹脂1ml〜タンパク質約100mg/樹脂1mlが、イオン交換樹脂にローディングされる。より好ましくは、約10mg/ml〜約75mg/mlが、イオン交換樹脂にローディングされる。なおより好ましくは、ポリペプチド(例えば、全長抗体のポリペプチド)約15mg/ml〜約45mg/mlが、イオン交換樹脂にローディングされる。
【0094】
ローディング後、陽イオン交換樹脂は洗浄される。洗浄プロセスの間、洗浄緩衝液が、樹脂に通される。洗浄緩衝液の組成は、代表的に、実質的な量の目的のポリペプチドが溶出されることなく可能な限り多くの夾雑物が樹脂から溶出するように、選択される。これは、平衡化緩衝液と比較して伝導率もしくはpH、またはその両方が上昇した洗浄緩衝液を用いることによって、達成され得る。洗浄緩衝液の組成は、以下に記載されるように、洗浄プロセスにわたって一定であり得るか、または可変であり得る。
【0095】
1つの実施形態において、洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液を含む。この平衡化緩衝液では、塩濃度が上昇されている。この塩濃度は、当該分野で公知の任意の方法によって上昇され得る。好ましい実施形態において、洗浄緩衝液は、平衡化緩衝液と溶出緩衝液との混合物であり得る。この場合において、洗浄緩衝液中の所望の塩濃度は、洗浄緩衝液中での、より高い塩濃度の緩衝液のパーセンテージを上昇させることによって達成される。溶出緩衝液は、代表的に、平衡化緩衝液よりも高い塩濃度および伝導率を有する。例えば、好ましい実施形態において、溶出緩衝液は、好ましくは、約8mS/cmと約10mS/cmとの間の伝導率を有する。より好ましくは、約8.5mS/cmと約9.5mS/cmとの間の伝導率を有する。一方、平衡化緩衝液は、約4mS/cmと約6mS/cmとの間の伝導率を有する。より好ましくは、約4.5mS/cmと約5.5mS/cmとの間の伝導率を有する。したがって、溶出緩衝液のパーセンテージが上昇するにしたがって、塩濃度および洗浄緩衝液の伝導率が上昇する。
【0096】
平衡化緩衝液から、最初の洗浄緩衝液への塩濃度の上昇は、所望に従って、段階的もしくは連続的であり得る。最初の上昇量は、洗浄プロセスの開始時での洗浄緩衝液の所望の伝導率に依存する。
【0097】
好ましくは、塩濃度の最初の上昇は、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージの段階的上昇によって達成される。当業者は、平衡化緩衝液の塩濃度および所望の伝導率に基づいて、溶出緩衝液の増加量を決定し得る。増加は、好ましくは、約0%溶出緩衝液から、約10%溶出緩衝液と約50%溶出緩衝液との間の最初のパーセンテージまでであり、より好ましくは、約20%溶出緩衝液と約30%溶出緩衝液との間までであり、さらにより好ましくは、約25%溶出緩衝液までである。好ましい実施形態において、この最初の増加は、約26%溶出緩衝液の最初のパーセンテージまでである。
【0098】
一定の塩濃度の洗浄緩衝液が、洗浄全体に対して使用され得る。この場合において、洗浄緩衝液の組成は、洗浄期間の間、最初の組成から有意に変動しない。しかし好ましくは、勾配洗浄(gradient wash)が使用される、この勾配洗浄では、洗浄緩衝液の組成は、洗浄プロセスの過程にわたって変化する。
【0099】
1つの実施形態において、線形塩濃度勾配が使用される。この洗浄プロセスでは、洗浄緩衝液の塩濃度は、一定の割合で変化し、一般的に、洗浄の進行に従って、第1の最初の濃度からより高い第2濃度まで上昇する。線形塩濃度勾配は、好ましくは、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージを一定の割合で上昇させることによって、作られる。洗浄緩衝液の塩濃度の上昇の割合は、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージをカラムを通った洗浄緩衝液のカラム体積に対してプロットすることで形成される線の傾きによって、記載され得る。
【0100】
例示的な線形勾配洗浄は、図2に示される。この場合では、1つの傾きは、線形塩濃度勾配を規定しており、したがって、洗浄の間の塩濃度の変化の割合を規定する。変化の割合、したがって傾きは、最も高純度で、最も高い収量の目的のポリペプチドを得るように選択される。当業者は、特定のポリペプチドおよびローディング量に対して最適な傾きを決定し得る。一般的に、所定のタンパク質に関する所望の収量および純度を実現するため、より高いタンパク質濃度でのローディングは、より急な傾きを必要とし、一方、より少量のローディングは、より浅い傾きを必要とする。
【0101】
別の実施形態において、複数の傾きの勾配での洗浄が使用される。この洗浄プロセスでは、異なる傾きを有する多くの線形塩勾配が連続的に実行される。したがって、カラムを通る洗浄緩衝液の塩濃度は、洗浄の第1の部分、もしくはセグメントのための第1の割合、および洗浄の他の規定された部分、もしくはセグメントのための1以上のさらなる割合で増加する。3セグメントの塩勾配が図3に図示され、そして以下により詳細に記載される。
【0102】
各線形塩勾配セグメントは、樹脂を通る全洗浄体積の画分に相当する。各特定の勾配セグメントによって占められる全洗浄体積の比率は、セグメントの数および持続時間に依存して変動する。
【0103】
当業者は、セグメント数が決して限定されないこと、そして特定の状況に基づいて選択されることを認識する。好ましいセグメント数に影響を与える因子としては、例えば、溶出されるべきタンパク質の性質、全洗浄体積、および予測されるローディング範囲が挙げられる。例えば、複数の傾きの勾配での洗浄は、単回洗浄プロトコールが幅広いカラムローディング範囲にわたって有効であるようにさせる。したがって、種々の異なるローディング量が同じ洗浄プロトコールを用いて生成される場合、多セグメントは、そのローディング範囲にわたってより一定の収量および純度をもたらす。
【0104】
多セグメント洗浄の各セグメントは、好ましくは、所定の状態が満たされた場合に終了する。例えば、素通り画分中のタンパク質の濃度が所定のレベルに達した場合、または洗浄緩衝液が所望の伝導率に達した場合に終了する。好ましい実施形態において、各セグメントは、洗浄緩衝液が所定のパーセンテージの溶出緩衝液を含む場合、したがって所望の伝導率を有する場合に、終了する。
【0105】
加えて、洗浄が1より多くのセグメントを含む場合、傾きは、好ましくは、他のさらなるセグメントにおいてよりも、第1セグメントにおいて、より大きい。結果として、洗浄緩衝液の伝導率の増加は、後に続くセグメントにおいてよりも、第1セグメントにおいて、より大きい。塩濃度が、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージの増加によって変動される場合、カラム体積あたりの溶出緩衝液のパーセンテージの増加は、後に続くセグメントにおいてよりも、第1セグメントにおいて、より大きい。
【0106】
勾配洗浄は、好ましくは、所定量のタンパク質が素通り画分中で検出される場合に終了する。好ましい実施形態において、勾配洗浄は、素通り画分中のタンパク質濃度は、280nmで0.6の吸光度測定値に対応するレベルに達する場合に終了する。
【0107】
洗浄プロセスは、必要に応じて一定量の洗浄緩衝液をカラムに通すことによって完了される。これは、「最終洗浄遅延体積(end−wash delay volume)」と呼ばれる。最後の線形勾配セグメントに続いて、勾配洗浄上最も高い伝導率を有する一定体積の洗浄緩衝液をカラムに通す。より大きい最終洗浄遅延体積は溶出タンパク質の純度を増加させるが、ある程度の収量の減少をもたらす可能性がある。逆に、この一定体積の減少は、収量の増加をもたらすが、回収されたタンパク質の純度のわずかな減少をもたらす可能性がある。したがって、この一定体積は、当業者によって、所望の収量および純度を達成するように選択され得る。好ましくは、この最終洗浄遅延体積は、0〜2カラム体積の最終洗浄緩衝液であり、好ましくは、0.2〜1カラム体積の最終洗浄緩衝液である。
【0108】
好ましい実施形態において、3セグメントを有する複数の傾きの勾配での洗浄が使用される。この実施形態は、図3に図示される。第1セグメントは、好ましくは、全洗浄体積の約1/3を占め、このセグメント間に、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージは、約26%の最初のパーセンテージから約50%に、より好ましくは約54%に、増加して、それに応じて塩濃度および伝導率の増加を引き起こす。約5カラム体積の洗浄緩衝液が、第1の線形勾配セグメント間にカラムに通される。これは、図3の第1セグメントの傾きで見られ得るように、約5%溶出緩衝液/カラム体積と約6%溶出緩衝液/カラム体積との間で変化を示す。
【0109】
第2勾配セグメントは、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージの変化の割合を改変することによって開始される。好ましい実施形態において、溶出緩衝液のパーセンテージの変化の割合は、約3.5%/カラム体積へと減少する。第2セグメントは、好ましくは、全洗浄体積の約1/6に対して継続する。したがって、約2カラム体積が、第2セグメント間にカラムに通される。好ましくは、第2セグメントは、溶出緩衝液のパーセンテージが、約60%、好ましくは約61%、に増加した場合に、終了する。
【0110】
第3セグメントにおいて、溶出緩衝液の増加の割合は、好ましくは約2%/カラム体積、より好ましくは約2.13%/カラム体積に、さらに減少する。第3セグメントは、3つのセグメントの中で最も長く、全洗浄体積の約半分を占め、約6カラム体積の洗浄緩衝液がカラムを通る。第3セグメントは、0.6ODが素通り画分で測定される場合に終了する。全勾配洗浄にわたって、0.6ODが達成された場合、溶出緩衝液のパーセンテージは、約75%、好ましくは約74%、に上昇している。
【0111】
洗浄プロセスに続いて、所定量の平衡化緩衝液が、必要に応じてカラムに通される。好ましくは、0〜2カラム体積の平衡化緩衝液がカラムに通される。より好ましくは、1カラム体積の平衡化緩衝液がカラムに通される。
【0112】
続いて、所望のポリペプチド分子が、イオン交換樹脂から溶出される。これは、所望のポリペプチドがもはやイオン交換樹脂に結合せず、したがってそこから溶出されるようなpHおよび/もしくは伝導率を有する溶出緩衝液を用いて、実現される。好ましい実施形態において、溶出緩衝液の伝導率は、平衡化緩衝液の伝導率を超える。あるいは、もしくは加えて、溶出緩衝液のpHは、平衡化緩衝液に対して増加され得る(例えば、溶出緩衝液のpHは、約6.0であり得る)。洗浄緩衝液から溶出緩衝液への伝導率および/もしくはpHの変化は、所望に従って、段階的もしくは連続的であり得る。上記で議論されるように、溶出緩衝液は、好ましくは、約8mS/cmと約10mS/cmとの間の伝導率を有し、より好ましくは、約8.5mS/cmと約9.5mS/cmとの間の伝導率を有する。したがって、所望のポリペプチドは、本方法のこの段階で陽イオン交換樹脂から回収される。
【0113】
伝導率の変化は、一般的に、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の両方に関して、上記に記載されるとおりである。当業者は、いずれかの型の樹脂の対して本方法を最適化し得る。
【0114】
本発明の好ましい実施形態において、1つのパラメーター(すなわち、伝導率もしくはpHのいずれか)は、ポリペプチドおよび夾雑物両方の溶出が達成されるように変化される。一方他のパラメーター(すなわち、それぞれpHもしくは伝導率)は、ほぼ一定のままである。例えば、種々の緩衝液の伝導率が異なる一方で、それらのpHは本質的に同じであり得る。
【0115】
本発明の最適な実施形態において、イオン交換樹脂は、そのカラムが再利用され得るように、ポリペプチドの溶出後に再生緩衝液によって再生される。一般的に、再生緩衝液の伝導率および/もしくはpHは、実質的に全ての夾雑物および目的のポリペプチドがイオン交換樹脂から溶出されるような伝導率および/もしくはpHである。一般的に、再生緩衝液は、イオン交換樹脂から夾雑物およびポリペプチドを溶出するために、非常に高い伝導率を有する。
【0116】
本明細書中における方法は、夾雑物および目的のポリペプチド分子がイオン電荷においてわずかしか異ならない場合に、少なくとも1種類の夾雑物から目的のポリペプチド分子を分離するために、特に有用である。本方法はまた、例えば、ポリペプチドを、それらのグリコシル化改変体から分離するために使用され得る。例えば、非改変体ポリペプチドと比較して、異なる分布のシアル酸を有するポリペプチドの改変体を分離するために使用され得る。
【0117】
本明細書中におけるイオン交換クロマトグラフィー法に従って得られたポリペプチド調製物は、必要な場合、付加的な精製工程に供され得る。例示的な付加的精製工程は、上記で議論された。
【0118】
必要に応じて、ポリペプチドは、所望される場合、1つ以上の異種分子に結合される。異種分子は、例えば、ポリペプチドの血清半減期を増加させる分子であり得る(例えば、ポリエチレングリコール、PEG)か、または細胞障害性分子(例えば、毒素、化学療法薬、もしくは放射性同位体など)であり得る。
【0119】
必要に応じて異種分子と結合されたポリペプチドを含む治療用処方物は、所望の純度を有するポリペプチドと任意の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、もしくは安定剤とを混合することによって、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で調製され得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版)Osol,A.(編)(1980))。「薬学的に受容可能」なキャリア、賦形剤もしくは安定剤は、利用される投薬量および濃度においてレシピエントに無毒性であり、そして以下が挙げられる:ホスフェート、シトレート、および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメチオニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基より小さい)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン);疎水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン);単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール);ナトリウムのような塩形成化対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM、PLURONICSTMもしくはポリエチレングリコール(PEG))。本明細書中において特に関心のあるhumMAb4D5−8抗体は、例えば、WO97/04801(本明細書中で参考として明確に援用される)に記載されるように、凍結乾燥処方物として調製され得る。
【0120】
本明細書中における処方物はまた、処置されるべき特定の徴候(indication)に対して必要な場合、1種類以上の活性化合物(好ましくは、互いに有害に作用しない相補的な活性を有する)を含有し得る。このような分子は、意図される目的のために有効な量での組み合わせで、適切に存在する。例えば、抗HER2抗体に対して、化学療法剤(例えば、タキソイドもしくはタモキシフェン)が、その処方物に添加され得る。
【0121】
活性成分はまた、マイクロカプセルに取り込まれ得る。このマイクロカプセルは、例えば、コアセルベーション技術かまたは界面重縮合(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース、またはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate)マイクロカプセル)によって、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョン中に調製される。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版)Osol,A.(編)(1980)に開示される。
【0122】
インビボ投与に使用されるべき処方物は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成される。
【0123】
持続放出性調製物が、調製され得る。持続放出性調製物の適切な例としては、ポリペプチド改変体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクッスが挙げられ、このマトリックスは、成形品(例えば、フィルムもしくはマイクロカプセル)の形態である。持続放出性マトリックスの例としては、以下が挙げられる:ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)もしくはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレンビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注入用ミクロスフェア)、ならびにポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸。
【0124】
本明細書中で開示されたように精製されたポリペプチド、またはこのポリペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物は、次いで、このようなポリペプチドおよび組成物に関して公知の種々の診断用途、治療用途、または他の用途に使用される。例えば、このポリペプチドは、治療学的有効量のポリペプチドを哺乳動物に投与することによって、哺乳動物の障害を処置するために使用され得る。
【0125】
以下の実施例は、限定のためではなく、説明のために提供される。本明細書中における全ての引用の開示は、参考のため、本明細書中において明確に援用される。
【実施例】
【0126】
全長ヒトIgG rhuMAb HER2(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.89:4285−4289(1992)におけるhumAb4D5−8、配列番号1の軽鎖アミノ酸配列および配列番号2の重鎖アミノ酸配列を含む)を、CHO細胞において組み換えによって生成した。タンパク質生成および細胞培養物中への分泌に続いて、CHO細胞を、クロスフロー濾過(tangential flow filtration)(PROSTACKTM)によって、細胞培養培地から分離した。次いで、CHO細胞由来の収集細胞培養物液(HCCF)を、直接的に平衡化されたPROSEP ATMカラム(Bioprocessing,Ltd)へ適用することによって、プロテインAクロマトグラフィーを行った。
【0127】
プロテインAクロマトグラフィーに続いて、スルホプロピル(SP−SEPHAROSE FAST FLOW XLTM(SPXLFF))カラム(Pharmacia)を用いて陽イオン交換クロマトグラフィーを行い、所望の抗HER2抗体分子をさらに分離した。SPXLFFTMカラムを充填した。この寸法は、直径100cmおよび吸着高35cmであった。このプールの伝導率は、等量の注入用滅菌水(SWFI)の添加に従って低下した。
【0128】
これらの研究のためのクロマトグラフィーランを、PharmaciaのUNICORNTM FPLCシステムを用いて実施した。多くのクロマトグラフィーランを、SPXLFF樹脂1mLあたり15、30、および45mgのrhuMAb HER2でのローディング密度/mLで実施した。加えて、勾配洗浄後の遅延体積を変動させた。勾配に続いて1.0カラム体積、0.8カラム体積、0.6カラム体積、および0.4カラム体積の遅延体積をテストした。
【0129】
各サンプルの分光光度計走査によって、走査各クロマトグラフィー画分のタンパク質濃度を決定した。この結果は、生成物の回収量を計算するために使用された。rhuMAb
HER2の吸光係数は、1.45である。結果を求めるために使用された計算は、以下である:
タンパク質濃度(mg/mL)=280nm/1.45×希釈係数;
各画分のタンパク質質量(mg)=タンパク質濃度(mg/mL)×画分体積(mL);
収量(%)=画分質量(mg)/全質量(mg)×100。
【0130】
抗体が組み換えDNA技術によって作製される場合、rhuMAb HER2の脱アミド化改変体および他の酸性改変体を生成した。各研究のクロマトグラフィーからの画分を、Dionex HPIECクロマトグラフィーによって、改変体抗体の相対量について調べた。脱アミド化改変体および他の酸性改変体は、最初のプロテインAクロマトグラフィーから得られた組成物の約15%〜約20%であった。以下に記載されるイオン交換法が、抗HER2組成物中の脱アミド化改変体および他の酸性改変体の量を実質的に(代表的に、約50%以上)減少させるために使用され得ることが、発見された。
【0131】
(実施例1)
ローディングのために、再生緩衝液(0.5N NaOH)、続いて平衡化緩衝液(30mM MES/45mM NaCl、pH5.6)による一連の洗浄によって、SPXLFFカラムを調製した。次いで、このカラムに、pH5.60±0.05および伝導率5.8±0.2mmhosに調整したプロテインAプールをローディングした。このカラムを線形塩勾配を用いて、実質的に図2に示されるように、洗浄した。線形勾配を開始する前に、溶出緩衝液(30mM MES、100mM NaCl、pH5.6)と平衡化緩衝液とを混合して、約26%の溶出緩衝液を含む最初の洗浄緩衝液を作製した。1mM
NaCl/カラム体積(CV)、2mM/CV、および3mM/CVの塩濃度上昇率を用いて、線形勾配の傾きを異なる実験で変動させた。素通り画分において280nmで0.6ODが測定されるまで、線形勾配を継続した。次いで、このカラムを1CVの最終洗浄緩衝液で洗浄した。
【0132】
次いで、rhuMAb HER2を、溶出緩衝液(30mM MES/100mM NaCl、pH5.6)を用いてカラムから溶出させた。溶出に続いて、再生緩衝液(0.5N NaOH)を用いて、このカラムを再生した。
【0133】
表1に見られ得るように、工程収量は、傾きとローディング量の結果として変動した。
【0134】
(表1:勾配の傾きおよびローディング量の関数としての工程収量)
【0135】
【表1】

Dionex HPIECによって、酸性改変体の観点から純度を測定した。表1に見られ得るように、純度は、一般的に、勾配の傾きの増加に従って増加した。全ての場合において、ローディング物は17%の酸性改変体を含んだ。
【0136】
(表2:Dionex HPIEC純度結果;%酸性改変体)
【0137】
【表2】

(実施例2)
ローディングのために、再生緩衝液(0.5N NaOH)、続いて平衡化緩衝液(30mM MES/70mM Na/HOAc、pH5.5)による一連の洗浄によって、上記のようにSPXLFFカラムを調製した。次いで、このカラムに、pH5.60±0.05および伝導率5.8±0.2mmhosに調整したプロテインAプールをローディングした。
【0138】
ローディングに続いて、このカラムを3つの別個のセグメントを含む複数の傾きの勾配を用いて洗浄した。各セグメントは、本質的に図3に示されるように、徐々により浅い傾きを有した。勾配のパラメーターを以下の表3に示す。
【0139】
洗浄は、最初の洗浄緩衝液を形成するための平衡化緩衝液の塩濃度の最初の段階的増加によって始まった。最初の洗浄緩衝液を、溶出緩衝液(30mM MES、145mM Na/HOAc、pH5.5)と平衡化緩衝液とを混合して26%の溶出緩衝液を含む緩衝液を作製することによって作製した。第1の線形勾配セグメントの間、このカラムは約4.9カラム体積の洗浄緩衝液によって洗浄され、この間、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージは、約5.71%/カラム体積の割合で上昇した。したがって、第1の線形勾配セグメントの終りでは、この洗浄緩衝液は、54%の溶出緩衝液を含んだ。
【0140】
第2線形勾配セグメントの間、2.0カラム体積の洗浄緩衝液がカラムを通過した。このセグメントの間、溶出緩衝液のパーセンテージは、3.5%の割合で上昇した。したがって、第2線形勾配セグメントの終りでは、この洗浄緩衝液は、61%の溶出緩衝液を含んだ。
【0141】
最後に、第3線形勾配セグメントの間、6.1カラム体積の洗浄緩衝液がカラムを通過し、洗浄緩衝液中の溶出緩衝液のパーセンテージは、2.13%/カラム体積の割合で上昇した。第3線形勾配セグメントは、素通り画分において280nmで0.6ODが測定された場合に終了した。この時点で、洗浄緩衝液は、74%の溶出緩衝液を含んだ。
【0142】
第3線形勾配セグメントに続いて、一定体積の最終洗浄緩衝液(すなわち、74%溶出緩衝液)をカラムに通した。異なる実験において、0.8カラム体積、0.6カラム体積、および0.4カラム体積の一定体積を使用した。
【0143】
次いで、溶出緩衝液(30mM MES/145mM Na/HOAc、pH5.5)を用いてrhuMAb HER2をカラムから溶出した。溶出に続いて、カラムを再生緩衝液(0.5N NaOH)で再生した。
【0144】
(表3:勾配のパラメーター)
【0145】
【表3】

rhuMAb HER2のローディングおよび最終洗浄遅延体積が生成物の回収率ならびに生成物の純度に及ぼす影響を、評価した。表4および表5に示された結果は、複数の傾きの勾配洗浄を用いることによって、幅広いローディング範囲にわたって一貫した収量および酸性改変体の除去を達成し得ることを示す。加えて、この結果は、0.6ODが達成された後に最終洗浄遅延体積を調整することによって、収量と純度との間の関係を、所望されるように微調整し得ることを示した。
【0146】
表4に見られ得るように、所定の最終洗浄遅延体積に対して、工程収量が有意に変動した。より大きな最終洗浄遅延体積は、全てのローディング量においてある程度収量を減少させる。しかし、表5に示すように、最終洗浄遅延体積の増加は、溶出されたタンパク質の純度を増加させた。したがって当業者は、所望の収量および純度を達成する最終洗浄遅延体積を選択し得る。
【0147】
(表4:洗浄遅延体積およびローディング量の関数としての工程収量)
【0148】
【表4】

(表5:Dionex HPIEC純度結果;%酸性改変体)
【0149】
【表5】

19%酸性改変体のローディングに基づく。
【0150】
3セグメントを含む複数の傾きの勾配(各セグメントは、徐々により浅い傾きを有する)を使用することによって、幅広いローディング範囲にわたって一貫した収量および純度が達成され得る。樹脂1mLあたり抗体15mg〜45mgの範囲の間で、所定のカラム洗浄遅延体積に対して、溶出プールで回収されたrhuMAb HER2の収量もしくは質にはほとんど変動がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載された発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214523(P2012−214523A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181141(P2012−181141)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2009−279954(P2009−279954)の分割
【原出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】