説明

ターゲット、ターゲットの製造方法、磁気記録媒体の製造方法

【課題】グラニュラ構造の垂直磁性層をスパッタリング法で形成するに際し、形成する磁性粒子を微細化し、また磁性粒子の粒界幅を広げ、今まで以上に高記録密度化に対応可能な電磁変換特性に優れた磁性層を形成可能とするターゲットを提供する。
【解決手段】磁気記録媒体のCo系磁性層をスパッタリング法で形成するために用いるターゲットを、CrまたはCr合金を5モル%以上含み、CoOを5モル%以上含み、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜20モル%の範囲内で含み、気孔率が7%以下とする。またターゲットに、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる何れか1種を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体を構成する磁性層のスパッタリングに使用されるターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)は、現在その記録密度が年率50%以上増えており、今後も増加傾向が続くと言われている。それに伴って高記録密度化に適した磁気記録媒体の開発が進められている。
【0003】
現在市販されている磁気記録再生装置には、磁気記録媒体として、磁性膜内の磁化容易軸が主に垂直に配向した、いわゆる垂直磁気記録媒体が搭載されている。垂直磁気記録媒体は、高記録密度化した際にも記録ビット間の境界領域における反磁界の影響が小さく、鮮明なビット境界が形成されるため、ノイズの増加が抑えられる。しかも、垂直磁気記録媒体は、高記録密度化に伴う記録ビット体積の減少が少なくて済むため、熱揺らぎ特性優れている。
【0004】
また、垂直磁気記録媒体の記録再生特性を向上させるために、配向制御層を用い、多層の磁性層をスパッタリング法で形成して、それぞれの磁性層の結晶粒子を連続した柱状晶とし、これにより磁性層の垂直配向性を高めることが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また垂直磁気記録媒体にはグラニュラ構造の磁性層が用いられる場合が多い。グラニュラ構造の磁性層は、磁性粒子の周りを非磁性材料が覆った構造を有し、磁性粒子間の磁気的相互作用が非磁性材料により低減されて磁性粒子が磁気的に分離するため媒体ノイズを低減することが可能となる。
【0006】
グラニュラ構造を形成する非磁性材料には主に酸化物が使用されている。酸化物としては、より安定した酸化物を形成し、確実に酸化物のまま磁性粒子間に偏析させることが可能な、Ti,Si,Cr,Ta,W,Nb等が用いられる。例えば、特許文献2には、グラニュラ磁性層を形成するスパッタリングターゲットとして、Co合金と、第1の酸化物を形成するTi酸化物及びSi酸化物と、第2の酸化物を形成するCo酸化物を含むものを用いることが記載されている。
【0007】
ここでグラニュラ構造の磁性層では、磁性粒子およびその周りを覆う非磁性材料の両方にCrを含有させる場合がある。例えば、非磁性材料にはCrとして含有させ、磁性粒子には例えばCoCrPt系磁性合金として含有させる。
【0008】
このグラニュラ構造の磁性層のCrの含有量が5原子%未満であると、Cr偏析によって磁性粒子間に形成される粒界層の厚さが薄くなるため、磁性粒子間の磁気的な粒子間相互作用が大きくなり、また磁性粒子自体の粒径も肥大化しやすくなる。その結果、記録再生時におけるノイズが増大し、より高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N)が得られなくなる。また、Cr含有量が28原子%を超えると、Crが粒界層へ偏析しきれず磁性粒子内部に残留する割合が増加する。その結果として垂直方向の保磁力、および残留磁化(Mr)と飽和磁化(Ms)の比(Mr/Ms)が低下しやすくなる。さらに、磁性粒子の結晶配向性が損ねられて、垂直方向の保磁力(Hc−v)と面内方向の保磁力(Hc−i)の比(Hc−v)/(Hc−i)が小さくなってしまうおそれがある。(特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−310910号公報
【特許文献2】特開2009−238357号公報
【特許文献3】特開2006−351055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、垂直磁気記録媒体にグラニュラ構造の磁性層が用いることで、磁性粒子間の磁気的相互作用を低減して媒体ノイズを低減することが可能となったが、磁気記録媒体に対する高記録密度化の要求はとどまることがなく、今まで以上に高記録密度化が可能な磁気記録媒体が求められている。そのため、今まで以上に磁性粒子を微細化し、また磁性粒子を覆う非磁性材料の幅(磁性粒子の粒界幅)を広げたグラニュラ構造の磁性層が求められている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて提案されたものであり、グラニュラ構造の磁性層をスパッタリング法で形成するに際し、形成する磁性粒子を微細化し、また磁性粒子の粒界幅を広げ、今まで以上に高記録密度化に対応可能な電磁変換特性に優れた磁性層を形成可能とするターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために、グラニュラ構造の磁性層の形成方法について、以下に示すように、鋭意検討を行った。
【0013】
本発明者は、スパッタリング法によりグラニュラ構造のCo系磁性層を形成するに際し、ターゲットとしてCoOを含む材料を用いると、Co系磁性粒子を微細化し、また磁性粒子の粒界幅を広げ、その界面を鮮明(シャープ)なものとすることが可能であることを見いだした。すなわち、ターゲットに含まれるCoOがスパッタリングに際して分離し、分離したCoはCo系磁性粒子の微細化と孤立化に作用し、他方のOは磁性粒子の粒界幅を広げる作用を有することを解明した。しかしながら、ターゲット中に含まれるCoOはターゲットの焼成等の製造工程において分離しやすく、特にターゲット中に金属CrまたはCr合金が含まれると、これがCoOから奪った酸素と結合して、前述のCo系磁性粒子を微細化し、孤立化し、また磁性粒子の粒界幅を広げる効果がなくなることを見いだした。
【0014】
そこで本願発明者は、CoOとCrとの反応を防ぐため、CoOとCrとの反応温度以下、具体的には800℃以下での焼成を試み、CoOとCrが共存するターゲットを製造し、磁気記録媒体の磁性層の形成を試みた。しかしながら、得られたターゲットでスパッタ成膜を行った場合、スパッタダストが発生してディスクに付着し、平滑性の高い磁気記録媒体を得ることができなかった。その原因として発明者は、低温焼成で得られたターゲットは焼結密度が真密度(理論値)の75%程度と低く(気孔率は25%)、このターゲットを用いてスパッタ成膜を行うと、プラズマ放電が不安定になり、ターゲット部において異常放電(スパーク)が発生し、これがダストを発生させるためと考えている。
【0015】
以上の知見に基づき本願発明者はさらに鋭意検討した結果、Co系の粉体の混合物に800℃以下の融点を持つ酸化物を添加することで、CoOとCrとが反応しない温度で、気孔率が低く、焼結密度が真密度に近いターゲットを製造できることを見いだし本願発明を完成させた。
【0016】
すなわち本願発明は下記に関する。
(1)磁気記録媒体のCo系磁性層をスパッタリング法で形成するために用いるターゲットであって、前記ターゲットはCrまたはCr合金を5モル%以上含み、CoOを5モル%以上含み、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜20モル%の範囲内で含み、気孔率が7%以下であることを特徴とするターゲット。
(2)前記ターゲットが、さらに、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする(1)に記載のターゲット。
(3)前記ターゲットが、Coを55モル%〜75モル%の範囲内で含み、CrまたはCr合金を5モル%〜28モル%の範囲内で含み、Ptを5モル%〜25モル%の範囲内で含み、CoOを5モル%〜15モル%の範囲内で含み、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜15モル%の範囲内で含み、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる酸化物を合計で5モル%〜25モル%の範囲内で含むことを特徴とする(1)または(2)に記載のターゲット。
(4)融点が800℃以下の酸化物が、酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化テルル、酸化モリブテン、低融点ガラスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載のターゲット。
(5)Coを55モル%〜75モル%の範囲内、CrまたはCr合金を5モル%〜28モル%の範囲内、Ptを5モル%〜25モル%の範囲内、CoOを5モル%〜15モル%の範囲内、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜15モル%の範囲内、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる酸化物を合計で5モル%〜25モル%の範囲内とした粉体を混合後、予備成形し、その後、430℃〜800℃の範囲内で気孔率を7%以下として焼結させることを特徴とする磁気記録媒体の磁性層を成膜するためのターゲットの製造方法。
(6)融点が800℃以下の酸化物が、酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化テルル、酸化モリブテン、低融点ガラスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(5)に記載のターゲットの製造方法。
(7)(1)〜(4)の何れか1項に記載のターゲットを用いてスパッタリング法で基板上に磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、CoOと、CrまたはCr合金を含む気孔率の低いターゲットを提供できるため、スパッタリングに際してCoOの分離が促進されて、Co系磁性粒子の微細化と粒界幅の拡大が得られ、またその界面を鮮明(シャープ)なものとできる。よって書き込み特性に優れ、またノイズも低い磁性層を形成可能となり、この磁性層を含む磁気記録媒体を磁気記録再生装置に用いることで高記録密度化に対応可能な装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明のターゲットを用いて成膜した磁気記録媒体の一例を示したものである。
【図2】図2は、磁気記録媒体の配向制御層と垂直磁性層との積層構造を説明するための拡大模式図であり、各層の柱状晶が基板面に対して垂直に成長した状態を示す断面図である。
【図3】図3は、磁気記録媒体の垂直磁性層を構成する磁性層の積層構造を拡大して示した断面図である。
【図4】図4は、本発明の磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置の一例を示すものである。
【図5】図5は、酸化ホウ素を添加して製造したターゲットの気孔率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明は、磁気記録媒体のCo系磁性層をスパッタリング法で形成するために用いるターゲットに関し、このターゲットはCrまたはCr合金、およびCoOを5モル%以上含み、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜20モル%の範囲内で含み、気孔率が7%以下であることを特徴とする。ここで、気孔率とは、焼結体体積に占める焼結体中の全気孔の体積の割合をいう。そして気孔率は次の式で示され、焼結密度はJIS Z 2505等を用いた公知の方法で算出できる。また、気孔率を直接的に算出する方法として、得られた焼結体の断面を観察して気孔の面積を測定し、その面積から気孔の体積を算出する方法がある。
気孔率(%)=(1−(焼結密度/真密度))×100
【0020】
スパッタリング法に用いられるターゲットは、金属粉末を所定の組成比に混合後、これを圧縮成形し、これを不活性ガス雰囲気または真空中で高温焼結し製造される。金属粉末は一般的にはガスアトマイズ法により製造される。すなわち、原料を不活性ガス雰囲気中または真空中で溶解し、アルゴンガスまたは窒素ガスの不活性ガスでアトマイズを行う。このとき原料は溶融状態から直接、急速凝固されるため、凝固組織が非常に微細で、組成的にも均一性の高い、平均粒径が数μmの球状粉末が作製できる。
【0021】
金属粉末の固化成形法には、古くから行われている焼結法やホットプレス法のほかに、高密度化を狙った熱間等方圧プレス(HIP)法、熱間押出法などがある。特に磁気記録媒体用途のターゲットの場合は、組成分布の高い均質性、前述のメカニズムによるパーティクル発生が少ないことが求められるため真空中または不活性雰囲気中での高温焼結が必要となり、これに際して前述のCoOとCrとの反応が発生する。すなわち、本願発明者は、ターゲットにCoOを含有させると、これがスパッタリングに際して分離し、分離したCoはCo系磁性粒子の微細化に作用し、他方のOは磁性粒子の粒界幅を広げる作用を有することを見いだしたが、ターゲット中に含まれるCoOはターゲットの高温焼結工程において金属CrまたはCr合金と反応し、具体的には、CoCr、Cr等を形成し、スパッタリング工程に際してCoとOが分離しにくくなり、前述の効果を失う。
【0022】
そこで本願発明では、ターゲットを製造するための粉体中に、CrまたはCr合金、およびCoOを5モル%以上含有させ、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜20モル%の範囲内で含有させ、これを焼結させてターゲットの気孔率を7%以下とすることで、上記の問題を解決できることを見いだした。これについて詳細に説明する。
【0023】
本願発明者は、CoOとCrの粉末を混合し、アルゴン雰囲気中で焼結させる実験を700℃〜900℃の温度域で行い表1に示す結果を得た。なお、この実験での焼結時間は1時間とした。この結果から、CoOとCrの粉末を含む粉体の焼結に際し、その焼結温度を800℃以下とすることで、粉体に含まれるCoOの73モル%以上を焼結後のターゲット中に残存可能とできることを解明した。
【0024】
【表1】

【0025】
また発明者は、CoOを8モル%、Crを7モル%、SiOを7モル%とし、融点が800℃以下の酸化物としてB(融点:430℃)を0〜6モル%の範囲内で変化させ、残部を84Co16Ptとした粉体を混合し、これを800℃、1時間で焼結させる実験を行った。その結果を図5に示す。この結果から、Bを3モル%以上含有させることにより、得られた焼結体の気孔率を7%以下とできることが明らかになった。これは、融点が800℃以下の酸化物を混ぜてターゲットの焼結を行うと、この酸化物が焼結時に融液となり、これが毛細管現象により他の粉末の間を埋め、焼結体の気孔率を低下させたものと考えられる。
【0026】
また本願発明者の検討によると、融点が800℃以下の酸化物としては、磁気記録媒体の磁性層に混入しても影響の少ない物質が採用可能であり、この中で特に、酸化ホウ素(融点:430℃)、酸化バナジウム(融点:690℃)、酸化テルル(融点:733℃)、酸化モリブテン(融点:795℃)、低融点ガラス(融点:800℃以下)を用いるのが好ましいことが明らかになった。ここで低融点ガラスとしては、SiO主成分とした、NaO、MgO、CaO、B、P等との混合物の他、PbO−SiO−B、PbO−P−SnF等が例示できる。
【0027】
また本願発明では、Crほどではないが、同じくCoOと僅かに反応する可能性のある、SiO(融点:1550℃)、TiO(融点:1750℃)、TiO(融点:1812℃)、ZrO(融点:2700℃)、Cr(融点:2435℃)、Ta(融点:1468℃)、Nb(融点:1520℃)、Al(融点:2046℃)、CeO(融点:1950℃)をターゲット中に含有させることが好ましい。これらの酸化物は、何れも、グラニュラ構造の磁性層の非磁性粒界を形成するために有用であるため、本願発明のターゲットはこれらの酸化物を含有させることにより電磁変換特性の優れた磁性層を形成することができる。
【0028】
特に本願発明は、Coを55モル%〜75モル%範囲内で含み、CrおよびCr合金を5モル%〜28モル%範囲内で含み、Ptを5モル%〜25モル%範囲内で含み、CoOを5モル%〜15モル%範囲内で含み、酸化ホウ素を3モル%〜15モル%範囲内で含み、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeOからなる群から選ばれる酸化物を合計で5モル%〜25モル%範囲内で含有させたターゲットとすることで、電磁変換特性の優れたCoCrPtB系のグラニュラ磁性層をスパッタリングで形成可能となり好ましい。
【0029】
電磁変換特性の優れたCoCrPtB系のグラニュラ磁性層の具体例としては、CoCrPtB−SiO、CoCrPtB−TiO、CoCrPtB−TiO−SiO、CoCrPtB−TiO−SiO−TiO、CoCrPtB−SiO−TiO、CoCrPtB−ZrO、CoCrPtB−Cr、CoCrPtB−Nb、CoCrPtB−Alなどが例示できる。
【0030】
以下、本発明のターゲットを用いた磁気記録媒体の製造方法及びこれにより製造された磁気記録媒体を内蔵する磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0031】
(磁気記録媒体の製造)
本発明のターゲットを用いた磁気記録媒体の製造は、例えば、非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とをスパッタリング法を用いて行う。
【0032】
図1は、本発明で製造された磁気記録媒体の一例を示したものである。以下、本発明の磁気記録媒体の一例として、図1に示す磁気記録媒体を例に挙げて説明する。図1に示す磁気記録媒体は、非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2と、配向制御層3と、垂直磁性層4と、保護層5と、潤滑層6とが順次積層された構造を有している。このうち、軟磁性下地層2と配向制御層3とが下地層を構成している。
【0033】
「非磁性基板」
非磁性基板1としては、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよいし、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、非磁性基板1としては、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタリング法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いてもよい。
【0034】
ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどを用いることができ、アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラスや、アルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラスなどを用いることができる。セラミック基板としては、例えば、汎用の酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体、又はこれらの繊維強化物などを用いることができる。
【0035】
「軟磁性下地層」
非磁性基板の上には、軟磁性下地層2が形成される。軟磁性下地層2の形成方法は特に限られるものではなく、例えば、スパッタリング法などを用いることができる。
【0036】
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
【0037】
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含む軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど)、FeMg系合金(FeMgOなど)、FeZr系合金(FeZrNなど)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
【0038】
「配向制御層」
軟磁性下地層2の上には、配向制御層3が形成されている。配向制御層3は、垂直磁性層4の結晶粒を微細化し、記録再生特性を改善するものである。図1に示すように、本実施形態の配向制御層3は、軟磁性下地層2側に配置された第1配向制御層3aと、第1配向制御層3aの垂直磁性層4側に配置された第2配向制御層3bとからなる。
【0039】
第1配向制御層3aは、配向制御層3の核発生密度を高めるためのものであり、配向制御層3を構成する柱状晶の核となる結晶を含むものである。本実施形態の第1配向制御層3aでは、図2に示すように、核となる結晶が成長してなる柱状晶S1の頂部に、ドーム状の凸部が形成されている。
【0040】
「垂直磁性層」
本願発明の垂直磁性層は、本願発明のターゲットを用いた、少なくとも1層以上のスパッタリング工程により形成されたグラニュラ磁性層を有し、このグラニュラ磁性層はCo合金を含む複数の磁性粒子及び前記複数の磁性粒子を分離する酸化物から構成される。そしてこのグラニュラ磁性層の形成に際しては酸化コバルトを含むターゲットを用いるため、磁性粒子の微細化、孤立化が図られ、また磁性粒子の粒界の拡大が図られている。
【0041】
本願発明で形成された垂直磁性層を図1により説明する。本願発明の垂直磁性層4は例えば第2配向制御層3bの上に形成されている。図1に示すように、垂直磁性層4は、例えば非磁性基板1側から、第1の磁性層4a、第2の磁性層7a、第3の磁性層4b、第4の磁性層7b、第5の磁性層4cを含むものである。この内、第1の磁性層4a、第2の磁性層7a、第3の磁性層4b、第4の磁性層7bの少なくとも1層は、CrおよびCoOを5モル%以上含み、酸化ホウ素を3モル%〜20モル%の範囲内で含み、気孔率が7%以下であるターゲットを用いて成膜することが好ましく、例えば、CoPt−SiO(第1の磁性層4a)、CoCrPtB−SiO(第2の磁性層7a)、CoPt−SiO(第3の磁性層4b)、CoCrPtB−SiO(第4の磁性層7b)とすることができる。この積層構造の場合、第2の磁性層7aと第4の磁性層7bが本願発明のターゲットを用いて成膜した層である。この2つの磁性層では微細化したCo系磁性粒子と、その磁性粒子の粒界幅を広げる非磁性酸化物が形成している。なお、第5の磁性層4cの好ましい構成については後述する。
【0042】
各磁性層4a、4b、7a、7bを構成する結晶粒子は、配向制御層3の第1配向制御層3aおよび第2配向制御層3bの柱状晶と連続した柱状晶として、配向制御層3上にエピタキシャル成長している。
【0043】
図3は、垂直磁性層を構成する磁性層の積層構造を拡大して示した断面図である。図3に示すように、垂直磁性層4を構成する磁性層は、グラニュラ構造の磁性層であり、Co、Cr、Pt等を含む磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42と、酸化物41とを含むものであることが好ましい。
【0044】
酸化物41としては、例えばSi、Ta、Al、Ti、Mg、Co、Ceなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO、SiOなどを好適に用いることができる。また、磁性層は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
【0045】
磁性粒子42は、磁性層中に分散していることが好ましい。また、磁性粒子42は、磁性層4a、4b、7a、7b更には磁性層4cを上下に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を有することにより、磁性層の配向及び結晶性が良好なものとなり、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られる。
【0046】
柱状構造の磁性粒子42を有する垂直磁性層4を得るためには、磁性層に含まれる酸化物41の含有量及び磁性層の成膜条件が重要となる。磁性層に含まれる酸化物41の含有量は、磁性粒子42を構成する、例えばCo、Pt等の合金を1つの化合物として算出したモル総量に対して、3モル%以上18モル%以下であること
が好ましく、6モル%以上13モル%以下であることがより好ましい。
【0047】
磁性層中の酸化物41の含有量として上記範囲が好ましいのは、磁性層を形成した際に磁性粒子42の周りに酸化物41が析出し、磁性粒子42の孤立化及び微細化が可能となるためである。一方、酸化物41の含有量が上記範囲を超えた場合には、酸化物41が磁性粒子42中に残留し、磁性粒子42の配向性及び結晶性を損ねたり、磁性粒子42の上下に酸化物41が析出して、磁性粒子42が磁性層4a〜4cを上下に貫いてなる柱状構造が形成されなくなったりするため好ましくない。また、酸化物41の含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
磁性層中のPtの含有量は、5原子%以上25原子%以下であることが好ましい。
【0048】
Ptの含有量が5原子%未満であると、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るために垂直磁性層4に必要な磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。Ptの含有量が25原子%を超えると、磁性粒子42の内部に積層欠陥が生じ、その結果、磁気異方性定数Kuが低くなる。また、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合、磁性粒子42中にfcc構造の層が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。
したがって、高密度記録に適した熱揺らぎ特性及び記録再生特性を得るためには、磁性層中Ptの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0049】
磁性層の磁性粒子42には、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素が含まれていてもよい。この中でBは、ターゲットに含まれる酸化ホウ素の分解物からも供給される。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得る
ことができる。
【0050】
また、磁性粒子42中に含まれるCo、Ptの他の上記元素の合計の含有量は、10原子%以下であることが好ましい。上記元素の合計の含有量が10原子%を超えると、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
【0051】
垂直磁性層4を構成する磁性層4cは、本願発明のターゲットを用いて形成された層ではなく、図3に示すように、Coを含む磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42を含み、酸化物41を含まないものであることが好ましい。磁性層4c中の磁性粒子42は、磁性層4a中の磁性粒子42から柱状にエピタキシャル成長しているものであることが好ましい。この場合、磁性層4a〜4cの磁性粒子42が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、磁性層4bの磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42からエピタキシャル成長していることで、磁性層4bの磁性粒子42が微細化され、さらに結晶性及び配向性が向上したものとなる。
【0052】
磁性層4c中のCrの含有量は、10原子%以上24原子%以下であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲とすることで、データの再生時における出力を十分確保でき、更に良好な熱揺らぎ特性を得ることができる。一方、Crの含有量が上記範囲を超える場合、磁性層4cの磁化が小さくなり過ぎるため好ましくない。また、Cr含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が十分に生じず、記録再生時のノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
【0053】
垂直磁性層4の垂直保磁力(Hc)は、3000[Oe]以上とすることが好ましい。保磁力が3000[Oe]未満である場合には、記録再生特性、特に周波数特性が不良となり、また、熱揺らぎ特性も悪くなるため、高密度記録媒体として好ましくない。 垂直磁性層4の逆磁区核形成磁界(−Hn)は、1500[Oe]以上であることが好ましい。逆磁区核形成磁界(−Hn)が1500[Oe]未満である場合には、熱揺らぎ耐性に劣るため好ましくない。
【0054】
垂直磁性層4を構成する磁性粒子42の平均粒径は3〜12nmの範囲内、粒界幅は0.5〜4nmの範囲内であることが好ましく、特に本願発明では平均粒径を6nm以下、Co系磁性粒子の粒界幅は1.5nm以上とし、かつその磁性粒子の界面を鮮明(シャープ)なものとすることができる。前述のように、本願発明ではグラニュラ磁性層を形成するに際し、CoOを含むターゲットを用いているので、CoOの分離が促進されて、Co系磁性粒子の微細化、孤立化と粒界幅の拡大が得られ、その界面を鮮明(シャープ)なものとできる。磁性粒子42の平均粒径、粒界幅、磁性粒子の界面の鮮明さは、例えば垂直磁性層4をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、観察像を画像処理することにより求めることができる。
【0055】
「保護層」
垂直磁性層4上には保護層5が形成される。保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが磁気記録媒体に接触したときの媒体表面の損傷を防ぐためのものである。保護層5としては、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO、ZrOを含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1〜10nmとすることが、磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。保護層5は、例えば、CVD(化学気相成長)法などを用いて形成される。
【0056】
「潤滑層」
保護層5上には潤滑層6が形成される。潤滑層6には、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。潤滑層6は、例えば、ディッピング法などを用いて形成される。
【0057】
(磁気記録再生装置)
図4は、本発明を適用した磁気記録再生装置の一例を示すものである。
この磁気記録再生装置は、図1に示す構成を有する磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に情報を記録再生する磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。
【0058】
記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。本発明を適用した磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
【0059】
図4に示す磁気記録再生装置は、本発明の磁気記録媒体の一例である図1に示す磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッド52とを備えるものであるので、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)、記録特性(OW)が得られる磁気記録媒体を備えた優れたものとなる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0061】
(実施例のターゲットの製造)
次の方法にて、CoCrPtB−SiOからなる組成のターゲットを製造した。
【0062】
先ず、ガスアトマイズ法により、Co16Pt、CoO、Cr、B、SiO粉末を製造した。粉末の平均粒径は約5μmとした。この粉末を、CoOを8モル%、Crを7モル%、SiOを7モル%とし、Bを0〜6モル%の範囲内で変化させ、残部をCo16Ptとして混合し、モールドに入れ予備成形した後、800℃、圧力200Kgf/cm、アルゴン雰囲気中で1時間のホットプレス処理し、その焼結体をターゲット形状に切り出しターゲットを製造した。得られたターゲットの気孔率を図5に示すが、酸化ホウ素を3モル%以上含有させることで、気孔率が7%以下のターゲットを製造できた。なお別途、酸化ホウ素を20モル%含有させる実験を行ったところ気孔率2%未満が達成された。
【0063】
(実施例)
以下に示す製造方法により、実施例の磁気記録媒体を作製し、評価した。なお、本実施例のグラニュラ磁性層は、上記のターゲットの製造において、Bを5.5モル%として得られた気孔率2%のターゲットを用いた。
【0064】
まず、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて層厚10nmの密着層を成膜した。
【0065】
このようにして得られた密着層の上に、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20原子%、Zr含有量5原子%、Ta含有量5原子%、残部Co}のターゲットを用いて100℃以下の基板温度で、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上にRu層を層厚0.7nmで成膜し、さらにCo−20Fe−5Zr−5Taの軟磁性層を層厚25nmで成膜し、これを軟磁性下地層とした。
【0066】
次に、軟磁性下地層の上にスパッタリング法により配向制御層を形成した。配向制御層としては、軟磁性下地層側に配置されたRuからなる第1配向制御層と、第1配向制御層の垂直磁性層側に配置されたRuからなる第2配向制御層をスパッタリング法により形成した。なお、第1配向制御層のスパッタリングガス圧は3Pa、第2配向制御層のスパッタリングガス圧は10Paとした。
【0067】
その後、配向制御層上に、上記のターゲットを用いたグラニュラ構造の垂直磁性層を形成した。スパッタリングガス圧を2Paとして層厚4nmで成膜した。なお、成膜されたグラニュラ構造の垂直磁性層の組成は、92(Co10Cr14Pt5B)−8(SiO)であった。
【0068】
次に、グラニュラ構造の磁性層の上に、Ruからなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した。
【0069】
次に、非磁性層の上に、Co20Cr14Pt3B{Cr含有量20原子%、Pt含有量14原子%、B含有量3原子%、残部Co}からなるターゲットを用いて、スパッタリングガス圧を0.6Paとして磁性層を層厚7nmで成膜した。
【0070】
次に、CVD法により層厚3.0nmの保護層を成膜し、次いで、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を成膜し磁気記録媒体を作製した。
【0071】
このようにして得られた磁気記録媒体について、米国GUZIK社製のリードライトアナライザRWA1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、記録再生特性として信号/ノイズ比(S/N比)、記録特性(OW)の評価を行った。
【0072】
なお、磁気ヘッドには、書き込み側にシングルポール磁極を用い、読み出し側にTMR素子を用いたヘッドを使用した。
【0073】
信号/ノイズ比(S/N比)については、記録密度750kFCIとして測定した。
【0074】
記録特性(OW)については、先ず、750kFCIの信号を書き込み、次いで100kFCIの信号を上書し、周波数フィルターにより高周波成分を取り出し、その残留割合によりデータの書き込み能力を評価した。その結果、S/N比は14.10dB、OWは42.4dBと電磁変換特性に優れていた。また評価後、グラニュラ磁性層のTEM観察を行ったところ、磁性粒子の平均粒径は5.5nm、粒界幅は1.6nmであり、磁性粒子の界面は鮮明であった。
【0075】
(比較例のターゲットの製造)
次の方法にて、92(71Co10Cr14Pt5B)−8(SiO)からなる組成のターゲットを製造した。
【0076】
先ず、ガスアトマイズ法により、Co、Cr、Pt粉末を製造した。粉末の平均粒径は約5μmとした。この粉末に平均粒径約5μmの、B、SiO粉末を加え、92(71Co10Cr14Pt5B)−8(SiO)の組成比とし、この混合粉末をモールドに入れ予備成形した後、1200℃、圧力200Kgf/cm、真空中で3時間のホットプレス処理し、その焼結体をターゲット形状に切り出しターゲットを製造した。得られたターゲットの気孔率は2%であった。
【0077】
(比較例)
実施例と同様に磁気記録媒体を製造したが、グラニュラ構造の垂直磁性層の成膜には、92(71Co10Cr14Pt5B)−8(SiO)からなる組成の前述の比較例のターゲットを用いた。
【0078】
得られた磁気記録媒体の電磁変換特性は、S/N比は13.60dB、OWは41.5dBであり実施例より劣っていた。また評価後、グラニュラ磁性層のTEM観察を行ったところ、磁性粒子の平均粒径は6.1nm、粒界幅は1.9nmであった。
【符号の説明】
【0079】
1…非磁性基板、2…軟磁性下地層、3…配向制御層、3a…第1配向制御層、3b…第2配向制御層、4…垂直磁性層、7…垂直磁性層、4a…第1の磁性層、7a…第2の磁性層、4b…第3の磁性層、7b…第4の磁性層、4c…第5の磁性層、5…保護層、6…潤滑層、15…酸化物、S1、S2、S3…柱状晶、S1a…凹凸面、41…酸化物、42…磁性粒子、50…磁気記録媒体、51…媒体駆動部、52…磁気ヘッド、53…ヘッド駆動部、54…記録再生信号処理系。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体のCo系磁性層をスパッタリング法で形成するために用いるターゲットであって、前記ターゲットはCrまたはCr合金を5モル%以上含み、CoOを5モル%以上含み、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜20モル%の範囲内で含み、気孔率が7%以下であることを特徴とするターゲット。
【請求項2】
前記ターゲットが、さらに、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる何れか1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のターゲット。
【請求項3】
前記ターゲットが、Coを55モル%〜75モル%の範囲内で含み、CrまたはCr合金を5モル%〜28モル%の範囲内で含み、Ptを5モル%〜25モル%の範囲内で含み、CoOを5モル%〜15モル%の範囲内で含み、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜15モル%の範囲内で含み、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる酸化物を合計で5モル%〜25モル%の範囲内で含むことを特徴とする請求項1または2に記載のターゲット。
【請求項4】
融点が800℃以下の酸化物が、酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化テルル、酸化モリブテン、低融点ガラスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のターゲット。
【請求項5】
Coを55モル%〜75モル%の範囲内、CrまたはCr合金を5モル%〜28モル%の範囲内、Ptを5モル%〜25モル%の範囲内、CoOを5モル%〜15モル%の範囲内、融点が800℃以下の酸化物を合計で3モル%〜15モル%の範囲内、SiO、TiO、TiO、ZrO、Cr、Ta、Nb、Al、CeO2からなる群から選ばれる酸化物を合計で5モル%〜25モル%の範囲内とした粉体を混合後、予備成形し、その後、430℃〜800℃の範囲内で気孔率を7%以下として焼結させることを特徴とする磁気記録媒体の磁性層を成膜するためのターゲットの製造方法。
【請求項6】
融点が800℃以下の酸化物が、酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化テルル、酸化モリブテン、低融点ガラスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のターゲットの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載のターゲットを用いてスパッタリング法で基板上に磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33247(P2012−33247A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174208(P2010−174208)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】