説明

ターゲット供給装置

【課題】ターゲット供給装置の絶縁破壊を抑制する。
【解決手段】このターゲット供給装置は、ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられ、ノズル部を覆うように設けられるカバーと、カバーによって画定される空間を排気するための排気機構と、を備えてもよい。ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、ノズル部に対向して配置された電極と、ターゲット物質と電極との間に電圧を印加するための電圧生成器と、少なくともノズル部と電極との間の空間を排気するための排気機構と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、例えば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/192145号明細書
【概要】
【0005】
本開示の第1の観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、前記ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられ、前記ノズル部を覆うように設けられるカバーと、前記カバーによって画定される空間を排気するための排気機構と、を備えてもよい。
【0006】
本開示の第2の観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、前記ノズル部に対向して配置された電極と、前記ターゲット物質と前記電極との間に電圧を印加するための電圧生成器と、少なくとも前記ノズル部と前記電極との間の空間を排気するための排気機構と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の第3の観点に係るターゲット供給装置は、ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、前記ターゲット物質の出力方向に配置される複数の電極と、前記複数の電極を保持するための絶縁部材と、前記複数の電極間に電圧を印加するための少なくとも1つの電圧生成器と、前記ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられ、前記ノズル部、前記複数の電極、及び前記絶縁部材を覆うように設けられるカバーと、前記カバーによって画定される空間を排気するための排気機構と、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【図2】図2は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。
【図3】図3は、図2に示すターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図5】図5は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図6】図6は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図7】図7は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図8】図8は、偏向電極を用いたターゲットの方向制御について説明するための図である。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.概要
2.用語の説明
3.極端紫外光生成システムの全体説明
3.1 構成
3.2 動作
4.静電引出し型のターゲット供給装置が搭載されたチャンバ
4.1 構成
4.2 動作
5.静電引出し型のターゲット供給装置
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用
6.加速電極を含むターゲット供給装置
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.リザーバの一部とノズル部とを遮蔽するカバーが設けられたターゲット供給装置
7.1 構成
7.2 動作及び作用
8.リザーバの全体とノズル部とを遮蔽するカバーが設けられたターゲット供給装置
8.1 構成
8.2 動作及び作用
9.カバーの位置調整が可能なターゲット供給装置
9.1 構成
9.2 動作及び作用
10.偏向電極を用いたターゲットの方向制御
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
LPP式のEUV光生成装置においては、ターゲット供給装置から、ターゲット物質がドロップレットの形状でチャンバ内のプラズマ生成領域に供給されてもよい。ターゲット物質がプラズマ生成領域に到達した時点で、パルスレーザ光をターゲット物質に照射することで、ターゲット物質がプラズマ化し、このプラズマからEUV光が放射され得る。ターゲット物質をプラズマ生成領域に安定して供給するためには、ターゲット供給装置内のターゲット物質とターゲット供給装置のノズル部に対向して設けられた電極との間に高電圧を印加することによりターゲット物質を帯電した状態で出力させて、電界を作用させることで、帯電したターゲット物質の軌道を制御することが好ましい。
【0012】
しかしながら、ターゲット物質と電極との間に絶縁耐圧を超える高い電圧が印加されると、絶縁破壊(火花放電)が発生する場合がある。絶縁破壊が発生すると、チャンバ内の絶縁が破壊されてリーク電流が流れ、ターゲット物質と電極との間の電圧が安定しなくなるおそれがある。その結果、ターゲット物質に与えられる電荷にばらつきが生じ、帯電したターゲット物質の軌道を制御することが困難となる場合がある。その結果、帯電したターゲット物質をプラズマ生成領域に安定して供給できなくなる場合がある。
【0013】
本開示の1つの観点によれば、ターゲット物質を出力するためのノズル部と電極との間の空間を排気してもよい。これにより、絶縁耐圧を高くすることが可能となり、絶縁破壊を抑制することができる。
【0014】
2.用語の説明
本願において使用される幾つかの用語を以下に定義する。「チャンバ」は、EUV光生成装置において、プラズマの生成が行われる空間を外部から隔絶するための容器である。「ターゲット供給装置」は、EUV光を生成するために用いられる溶融したスズ等のターゲット物質をドロップレットの形状でチャンバ内に供給するための装置である。「EUV集光ミラー」は、プラズマから放射されるEUV光を反射してチャンバ外に出力するためのミラーである。「デブリ」は、チャンバ内に供給されたターゲット物質のうち、プラズマ化されなかった中性粒子、プラズマから放出される荷電粒子等を含み、EUV集光ミラー等の光学素子を汚染又は損傷する原因となる物質である。
【0015】
3.極端紫外光生成システムの全体説明
3.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい。本願においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2、ターゲット供給装置26を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。ターゲット供給装置26は、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられてもよい。ターゲット供給装置26から供給されるターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0016】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔には、ウインドウ21が設けられてもよく、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過してもよい。チャンバ2の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF)292に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が設けられていてもよく、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過してもよい。
【0017】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御部5、ターゲットセンサ4等を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよく、ターゲットの存在、軌道、位置、速度等を検出するよう構成されてもよい。
【0018】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と露光装置6の内部とを連通させる接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0019】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0020】
3.2 動作
図1を参照に、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射されてもよい。
【0021】
ターゲット供給装置26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力するよう構成されてもよい。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。パルスレーザ光が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射され得る。放射光251に含まれるEUV光252は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射されてもよい。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252は、中間集光点292で集光され、露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0022】
EUV光生成制御部5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括するよう構成されてもよい。EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理するよう構成されてもよい。また、EUV光生成制御部5は、例えば、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御するよう構成されてもよい。さらに、EUV光生成制御部5は、例えば、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御するよう構成されてもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0023】
4.静電引出し型のターゲット供給装置が搭載されたチャンバ
4.1 構成
図2は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。図2に示すように、チャンバ2の内部には、レーザ光集光光学系22aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収部28と、EUV集光ミラーホルダ41と、プレート42及び43と、ビームダンプ44と、ビームダンプ支持部材45とが設けられてもよい。
【0024】
チャンバ2は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)からなる部材(導電性部材)を含んでもよい。さらに、チャンバ2は、電気絶縁性を有する部材を含んでもよい。その場合には、例えば、チャンバ2の外壁自体は導電性部材で構成され、外壁の内側に電気絶縁性を有する部材が配置されるように構成されてもよい。チャンバ2には、プレート42が固定され、プレート42には、プレート43が固定されてもよい。EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ41を介してプレート42に固定されてもよい。
【0025】
レーザ光集光光学系22aは、軸外放物面ミラー221と、平面ミラー222と、それらのミラーを保持するためのホルダとを含んでもよい。軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222は、それぞれのミラーで反射されたレーザ光がプラズマ生成領域25で集光するように、それぞれのホルダを介してプレート43に固定されてもよい。ビームダンプ44は、レーザ光の光路の延長線上に位置するように、ビームダンプ支持部材45を介してチャンバ2に固定されてもよい。ターゲット回収部28は、プラズマ生成領域25のターゲット物質進行方向下流側(図中下側)において、ターゲット27の軌道の延長線上に配置されてもよい。
【0026】
チャンバ2には、ウインドウ21(レーザ光ポート)と、ターゲット供給装置26とが取り付けられてもよい。ターゲット供給装置26の詳細については後で説明する。ターゲット物質としては、導電性を有する液体金属等が用いられてもよいが、以下の実施形態においては、融点が232℃であるスズ(Sn)が用いられる場合を例として説明する。また、チャンバ2には、ガス供給装置46と、排気装置47と、圧力センサ48とが接続されてもよい。
【0027】
チャンバ2の外部には、ビームステアリングユニット34aと、EUV光生成制御部5とが設けられてもよい。ビームステアリングユニット34aは、高反射ミラー341及び342と、それらのミラーを保持するためのホルダと、ホルダが配置される筐体とを含んでもよい。EUV光生成制御部5は、EUV光生成制御装置51と、ターゲット制御装置52と、チャンバ圧力制御装置56とを含んでもよい。チャンバ圧力制御装置56は、ガス供給装置46と、排気装置47と、圧力センサ48とに、信号ラインを介して接続されてもよい。
【0028】
4.2 動作
チャンバ2内には、ターゲット物質にレーザ光が照射された際に発生するデブリがEUV集光ミラー23に付着するのを抑制するためのバッファガスや、EUV集光ミラー23等に付着したデブリをエッチングするためのエッチングガスが導入されてもよい。バッファガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)等が用いられてもよい。また、エッチングガスとしては、例えば、水素(H)、臭化水素(HBr)、塩化水素(HCl)等が用いられてもよい。
【0029】
ガス供給装置46は、例えば、水素ガスを、EUV集光ミラー23の反射面に沿って供給するよう構成されてもよい。その場合には、次式の反応によって、EUV集光ミラー23の表面に付着したスズ(Sn)をエッチングすることができる。
Sn(固体)+2H(気体)→SnH(気体)
【0030】
一方、排気装置47は、水素(H)、スズがエッチングされて発生した水素化スズ(SnH)等のチャンバ2内のガスを排気するよう構成されてもよい。チャンバ圧力制御装置56は、EUV光生成制御装置51から出力される制御信号と圧力センサ48から出力される検出信号とに基づいてガス供給装置46及び排気装置47を制御するよう構成されてもよい。これにより、チャンバ圧力制御装置56は、チャンバ2内のバッファガス、エッチングガス等のガス圧を所定の値に保つよう構成されてもよい。
【0031】
ターゲット供給装置26は、ターゲット物質を帯電させてチャンバ2内のプラズマ生成領域25に供給するよう構成されてもよい。また、レーザ装置3から出力されるパルスレーザ光は、高反射ミラー341及び342によって反射されて、ウインドウ21を介してレーザ光集光光学系22aに入射してもよい。レーザ光集光光学系22aに入射したパルスレーザ光は、軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222によって反射されてもよい。
【0032】
EUV光生成制御装置51は、ターゲット制御装置52にターゲット出力信号を出力し、レーザ装置3にパルスレーザ光出力信号を出力するよう構成されてもよい。これにより、ターゲット供給装置26から出力されたターゲット物質がプラズマ生成領域25に到達するタイミングに合わせて、ターゲット物質にパルスレーザ光が照射され得る。その結果、ターゲット物質がプラズマ化し、このプラズマからEUV光が放射され得る。放射されたEUV光は、EUV集光ミラー23によって中間集光点292に集光され、露光装置に導入されてもよい。
【0033】
5.静電引出し型のターゲット供給装置
5.1 構成
図3は、図2に示すターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。図3に示すように、ターゲット供給装置26は、リザーバ61と、ノズル部(ターゲット出力部)62と、リザーバ内電極63と、ヒータ64と、電気絶縁部材65と、引出電極66と、孔あき部材67と、排気装置71と、圧力センサ72とを含んでもよい。リザーバ61及びノズル部62は、一体的に形成されてもよいし、別個に形成されてもよい。
【0034】
リザーバ61は、合成石英、アルミナ等の電気絶縁体で構成されてもよい。リザーバ61は、ターゲット物質であるスズを溶融した状態で内部に貯蔵してもよい。ヒータ64は、リザーバ61の外周に取り付けられて、ターゲット物質であるスズが溶融状態に維持されるようにリザーバ61を加熱してもよい。また、ヒータ64は、リザーバ61の温度を検出するための図示しない温度センサ、ヒータ64に加熱用の電流を供給するための図示しないヒータ電源、温度センサによって検出された温度に基づいてヒータ電源を制御するための図示しない温度制御装置等と共に用いられてもよい。
【0035】
ノズル部62を介して、チャンバ内のプラズマ生成領域に向けてターゲット物質が出力されてもよい。ノズル部62には、ターゲット物質が通過するための貫通孔(オリフィス)が形成され、その貫通孔とリザーバ61の内部とが連通していてもよい。また、ノズル部62は、ターゲット物質に電界を集中させるために、出力側に突き出た先端部を有してもよい。貫通孔はこの先端部に設けられていてもよい。
【0036】
ノズル部62には、円筒形状の電気絶縁部材65が固定されてもよい。電気絶縁部材65の内側には、引出電極66が保持されていてもよい。電気絶縁部材65によって、ノズル部62と引出電極66との間が電気的に絶縁されてもよい。引出電極66は、ノズル部62のオリフィスからターゲット物質を引き出すために、ノズル部62の出力側の面に対向して配置されてもよい。引出電極66には、帯電したターゲット27を通過させるための貫通孔66aが形成されていてもよい。
【0037】
孔あき部材67は、ターゲット27の軌道において、引出電極66より下流側の位置に配置され、電気絶縁部材65に固定されていてもよい。孔あき部材67には、ノズル部62を介して出力されたターゲット物質が通過するための貫通孔67aが形成されていてもよい。
【0038】
電気絶縁部材65のノズル部62に固定された部分と孔あき部材67に固定された部分との間には、排気ポート65aが形成されていてもよい。排気ポート65aは、排気管65bに接続されていてもよい。排気管65bには、チャンバ2の外部において排気装置71が接続されていてもよい。また、電気絶縁部材65には、電気絶縁部材65の内側に連通する別途の連通路65cを介して、圧力センサ72が接続されていてもよい。圧力センサ72は、チャンバ2の外側に配置されていてもよい。
【0039】
ターゲット供給装置26は、ターゲット圧力調節器53と、不活性ガスボンベ54と、高電圧生成器55とをさらに含んでもよい。不活性ガスボンベ54は、不活性ガスを供給するための配管によってターゲット圧力調節器53に接続されていてもよい。ターゲット圧力調節器53は、さらに、不活性ガスを供給するための配管によってリザーバ61の内部と連通してもよい。
【0040】
5.2 動作
ヒータ64によって、スズ(Sn)が溶融する温度である232℃以上の温度にリザーバ61が加熱されてもよい。これにより、リザーバ61の中にターゲット物質が溶融状態で貯蔵され得る。
【0041】
ターゲット制御装置52は、高電圧生成器55にターゲット生成信号を出力するよう構成されてもよい。高電圧生成器55は、ターゲット生成信号に従って、パルス状の電圧をターゲット物質と引出電極66との間に印加するよう構成されてもよい。これによって、ターゲット物質と引出電極66との間にクーロン力が発生し、ノズル部62の先端部からターゲット物質が引き出されて、帯電したターゲット27が出力され得る。
【0042】
ターゲット圧力調節器53は、必要に応じて、不活性ガスボンベ54から供給される不活性ガスの圧力を調整して、ターゲット物質を加圧するよう構成されてもよい。不活性ガスでターゲット物質を加圧することにより、ノズル部62の先端部からターゲット物質を僅かに突出させ、ターゲット物質に電界を集中させてもよい。これにより、ターゲット物質と引出電極66との間により強力にクーロン力を作用させることができる。ターゲット制御装置52は、EUV光生成制御装置51から与えられるタイミングでターゲット27が出力されるように、ターゲット圧力調節器53及び高電圧生成器55を制御するよう構成されてもよい。
【0043】
高電圧生成器55の一方の出力端子に接続された配線は、リザーバ61に設けられた気密端子(フィードスルー)を介して、ターゲット物質に接触しているリザーバ内電極63に接続されてもよい。高電圧生成器55の他方の出力端子に接続された配線は、例えば、チャンバ2に設けられたフィードスルーおよび電気絶縁部材65に設けられた貫通孔を介して、引出電極66に接続されてもよい。高電圧生成器55は、ターゲット制御装置52の制御の下で、ターゲット物質と引出電極66との間にクーロン力を作用させるためのパルス電圧を生成するよう構成されてもよい。
【0044】
例えば、高電圧生成器55は、基準電位(0V)と、基準電位よりも高い電位P1との間でパルス状に変化するパルス電圧V1を生成するよう構成されてもよい。このとき、引出電極66には、基準電位(0V)を電位P2として与えてもよい。その場合には、ターゲット物質と引出電極66との間に、リザーバ内電極63を介してパルス電圧V1が印加されてもよい。
【0045】
あるいは、基準電位(0V)<電位P1<電位P2として、高電圧生成器55は、電位P1と電位P2との間でパルス状に変化するパルス電圧V1を生成するよう構成されてもよい。その場合には、ターゲット物質には、リザーバ内電極63を介してパルス電圧V1が印加されてもよい。このとき、高電圧生成器55は、引出電極66に対しては、電位P2を印加してもよい。
【0046】
これにより、ターゲット物質と引出電極66との間に、パルス電圧V1が印加され得る。あるいは、ノズル部62が金属等の導電性材料で形成される場合には、高電圧生成器55は、ノズル部62と引出電極66と間にパルス電圧V1を印加してもよい。
【0047】
排気装置71は、電気絶縁部材65の内周側の空間を、排気ポート65a及び排気管65bを介して排気するよう構成されてもよい。電気絶縁部材65の内周側の空間の雰囲気圧力は、圧力センサ72によって計測され、その計測値データがチャンバ圧力制御装置56に入力されてもよい。チャンバ圧力制御装置56は、圧力センサ72から入力された計測値データに基づいて、排気装置71の動作を制御するよう構成されてもよい。
【0048】
5.3 作用
一般に、ターゲット27の直径、出力タイミング、帯電量を安定させてターゲット27を出力するためには、電極間に印加される電圧が安定していることが好ましい。ところが、チャンバ内にバッファガスやエッチングガスが存在すると、電極間の絶縁耐圧が低くなり、絶縁破壊が発生し易くなる場合がある。絶縁破壊が発生すると、電極間に所定の電圧が印加されなくなり、ターゲット27の直径、出力タイミング、帯電量の内の少なくとも1つのパラメータが不安定となり得る。あるいは、ドロップレットそのものが出力されなくなり得る。
【0049】
火花放電は、電界によって加速された電子が、気体分子と衝突して気体を電離させることによって起こり得る。従って、気体分子が少なくなると衝突が起こり難くなり、逆に、気体分子が多くなると電子が衝突するまでに充分加速され難くなるので、どちらの場合も火花放電が起こり難くなり得る。但し、チャンバ2内に気体分子が多いと、EUV光の透過率が低下し、EUV光生成装置の効率が低下してしまう場合がある。そこで、チャンバ内の空間を排気することにより、絶縁破壊を抑制することが好ましい。
【0050】
しかし、チャンバ内にバッファガスやエッチングガスが供給され、チャンバ内の空間全体を高真空に保つことは困難な場合がある。そこで、第1の実施形態においては、チャンバ内の空間を所定のガス圧に維持しつつ、チャンバ内の空間のうち、引出電極66の周囲の空間を局所的に排気することにより、この空間内の気体分子を低減して、絶縁破壊を抑制してもよい。
【0051】
第1の実施形態によれば、電気絶縁部材65の内周側の空間を排気することにより、絶縁破壊を抑制することができる。その結果、ターゲット物質と引出電極66との間に印加される電圧が安定し、ターゲット27を安定してチャンバ内に供給することが可能となる。
【0052】
6.加速電極を含むターゲット供給装置
6.1 構成
図4は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。第2の実施形態においては、孔あき部材67に所定の電位を印加することによって、孔あき部材67を加速電極として機能させてもよい。
【0053】
チャンバ2の導電性部材は、高電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されるか、あるいは、接地されてもよい。加速電極としての孔あき部材67は、導電性を有し、基準電位(0V)に電気的に接続されてもよい。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様でよい。
【0054】
6.2 動作
高電圧生成器55は、引出電極66を所定の電位(例えば、10kV)に維持してもよい(電位P2)。また、高電圧生成器55は、初期状態において、ターゲット物質に印加される電位を電位P1に維持してもよい。ターゲット物質を引き出す際に、高電圧生成器55は、ターゲット物質に与えられる電位を、電位P1から所定の電位(例えば、20kV)に上昇させてもよい。これによって、正に帯電したターゲット27が、ノズル部62から引き出され得る。
【0055】
ターゲット27は、リザーバ61内のターゲット物質に与えられた電位より低い電位が印加された引出電極66に向かって引き出され、引出電極66の貫通孔66aを通過し得る。その後、ターゲット27は、さらに低い電位(基準電位0V)が与えられた加速電極としての孔あき部材67に向かって加速され得る。
【0056】
このように、ターゲット27は、ノズル部62から引出電極66を経て孔あき部材67に至る経路上に形成される電位勾配により、加速され、孔あき部材67の貫通孔67aを通過し得る。孔あき部材67の貫通孔67aを通過した後のターゲット27の経路上においては、チャンバ2の導電性部材が基準電位(0V)に接続されていることから、電位勾配が緩やかであり得る。従って、ターゲット27は、孔あき部材67の貫通孔67aを通過した後、主に貫通孔67aを通過した時点での運動量によってチャンバ2内を移動し得る。
【0057】
6.3 作用
第2の実施形態によれば、孔あき部材67と引出電極66との間にも電圧が存在するが、電気絶縁部材65の内部を排気することにより、絶縁破壊の発生が抑制され得る。これにより、ターゲット27の速度がより正確に制御され得る。
【0058】
7.リザーバの一部とノズル部とを遮蔽するカバーが設けられたターゲット供給装置
7.1 構成
図5は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。第3の実施形態においては、チャンバ2の内部において、カバー81がチャンバ2の壁に取り付けられてもよい。カバー81は、ターゲット供給装置26の少なくとも電気絶縁部材65を含む先端部を覆うように配置されてもよい。カバー81には、ターゲット27を通過させるための貫通孔81aが形成されてもよい。
【0059】
カバー81は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより導電性を有し、直接的にチャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。あるいは、カバー81はワイヤ等の導電性接続部材によって、チャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。チャンバ2の導電性部材は、高電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されるか、あるいは、接地されてもよい。カバー81は、チャンバ2の内部において、リザーバ61の一部、ノズル部62、電気絶縁部材65、及び引出電極66をカバーしてもよく、さらに、加速電極としての孔あき部材67をカバーしてもよい。このとき、孔あき部材67は電気絶縁部材65の貫通孔を介して、チャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。
【0060】
リザーバ61は、フランジ84を介してチャンバ2に固定されてもよい。フランジ84は絶縁性材料で構成されてもよい。カバー81とチャンバ2の壁(或いは、これらとフランジ84)とによって囲まれた空間は、チャンバ2の外部に設けられた排気装置71と連通してもよい。その他の点に関しては、第2の実施形態と同様でよい。
【0061】
7.2 動作及び作用
カバー81は、プラズマ生成領域において生成されるプラズマより放出される荷電粒子から、電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物を保護してもよい。カバー81とチャンバ2の壁(或いは、これらとフランジ84)とによって囲まれた空間は、排気装置71によって排気されてもよい。これにより、引出電極66及び加速電極としての孔あき部材67の周辺における絶縁破壊の発生が抑制され得る。また、リザーバ61が導電性材料によって構成されている場合でも、フランジ84が絶縁性材料であればリザーバ61とチャンバ2との間における絶縁破壊の発生が抑制され得る。
【0062】
8.リザーバの全体とノズル部とを遮蔽するカバーが設けられたターゲット供給装置
8.1 構成
図6は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。第4の実施形態においては、カバー85がリザーバ61の全体、ノズル部62、電気絶縁部材65、及び引出電極66をカバーしてもよい。カバー85は、さらに、孔あき部材67(加速電極)、後述の偏向電極70及び温度センサ73をカバーしてもよい。
【0063】
図6に示すように、ターゲット供給装置26の主要な構成要素(リザーバ61等)は、カバー85と、カバー85に取り付けられた蓋86とによって構成される遮蔽容器に収容されてもよい。カバー85は、チャンバ2の壁に取り付けられてもよい。カバー85には、ターゲット27を通過させるための貫通孔85aが形成されてもよい。蓋86は、チャンバ2の外部において、カバー85の開口を密封してもよい。リザーバ61は、蓋86を介してカバー85に取り付けられてもよい。
【0064】
カバー85は、導電性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより導電性を有し、直接的にチャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。あるいは、カバー85はワイヤ等の導電性接続部材によって、チャンバ2の導電性部材(壁)に電気的に接続されてもよい。チャンバ2の導電性部材は、高電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されるか、あるいは、接地されてもよい。また、蓋86の材料としては、例えば、ムライト等の電気絶縁材料が用いられてもよい。
また、孔あき部材67のドロップレット進行方向下流側に、複数(例えば、2対)の偏向電極70が配置されてもよい。偏向電極70は、電気絶縁部材65によって保持されてもよい。
【0065】
ヒータ64は、リザーバ61の外周に取り付けられてもよい。また、ヒータ64は、リザーバ61の温度を検出するための温度センサ73、ヒータ64に加熱用の電流を供給するためのヒータ電源58、及び、温度センサ73によって検出された温度に基づいてヒータ電源58を制御するための温度制御装置59と共に用いられてもよい。
【0066】
引出電極66の配線及び偏向電極70の配線は、電気絶縁部材65の貫通孔と蓋86に設けられた中継端子90aとを介して、高電圧生成器55及び偏向電極電圧生成器57にそれぞれ接続されてもよい。孔あき部材67(加速電極)の配線は、電気絶縁部材65の貫通孔を介して、カバー85に電気的に接続されてもよいし、図示しない配線及び中継端子90aを介して、高電圧生成器55に接続されてもよい。
【0067】
また、ターゲット物質に電圧を印加するためのリザーバ内電極63の配線は、蓋86に設けられた中継端子90bを介して、高電圧生成器55に接続されてもよい。加熱用のヒータ64の配線及び温度センサ73の配線は、蓋86に設けられた中継端子90cを介して、ヒータ電源58及び温度制御装置59にそれぞれ接続されてもよい。
【0068】
カバー85と蓋86とによって囲まれた空間の内部であってリザーバ61の外部の空間は、接続ポート71aを介してチャンバ2の外部に設けられた排気装置71に連通してもよい。電気絶縁部材65には、その内部の排気を容易にするための開口65dが形成されてもよい。図示を省略するが、第1〜第3の実施形態同様、不活性ガスボンベが、不活性ガスを供給するための配管を介してターゲット圧力調節器53と接続されてもよい。その他の点に関しては、第2の実施形態と同様でよい。
【0069】
8.2 動作及び作用
ヒータ電源58からヒータ64に電流を流すことによって、リザーバ61及びその内部のターゲット物質が加熱され得る。温度制御装置59は、EUV光生成制御装置51から出力される制御信号と温度センサ73から出力される検出信号とを受信し、ヒータ電源58からヒータ64に流す電流値を制御するよう構成されてもよい。リザーバ61の温度は、ターゲット物質であるスズ(Sn)が溶融状態を維持するように、スズの融点(232℃)以上に制御されてもよい。
【0070】
ターゲット制御装置52は、高電圧生成器55にターゲット生成信号を出力するよう構成されてもよい。これにより、ノズル部62から帯電したターゲット27が引き出されて、引き出されたターゲット27が引出電極66の貫通孔を通過し得る。引出電極66の貫通孔を通過したターゲット27は、基準電位(0V)が印加された加速電極としての孔あき部材67と引出電極66との間の電界の作用によって加速され、孔あき部材67の貫通孔を通過し得る。
【0071】
2対の偏向電極70は、孔あき部材67の貫通孔を通過した帯電したターゲット27に電界を作用させて、その進行方向を変更してもよい。ターゲット27を偏向することが必要な場合には、ターゲット制御装置52が、偏向電極70の各対間での電位差を制御するための制御信号を偏向電極電圧生成器57に出力するよう構成されてもよい。偏向電極電圧生成器57は、偏向電極70の各対間に偏向電極電圧を印加するよう構成されてもよい。
【0072】
ターゲット27の偏向は、EUV光生成制御装置51からの制御信号に基づいて行われてもよい。EUV光生成制御装置51とターゲット制御装置52との間では、種々の信号が送受信されてもよい。たとえば、EUV光生成制御装置51は図示しないターゲットセンサからターゲット27の軌道情報を取得し、理想的な軌道との差分を算出するよう構成されてもよい。また、EUV光生成制御装置51は、その差分が小さくなるように偏向電極70に印加される電圧を制御するための信号を、ターゲット制御装置52に送出するよう構成されてもよい。なお、2対の偏向電極70それぞれの間を通過したターゲット27は、カバー85の貫通孔85aを通過してもよい。
【0073】
カバー85は、プラズマ生成領域において生成されるプラズマから放出される荷電粒子から電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物を保護してもよい。カバー85と蓋86とによって囲まれた空間は、排気装置71によって排気されてもよい。これにより、引出電極66、加速電極としての孔あき部材67、及び偏向電極70の周辺における絶縁破壊の発生が抑制され得る。また、リザーバ61が導電性材料によって構成されている場合でも、リザーバ61の周辺における絶縁破壊の発生が抑制され得る。
【0074】
9.カバーの位置調整が可能なターゲット供給装置
9.1 構成
図7は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット供給装置及びその周辺部を示す一部断面図である。第5の実施形態においては、カバー85が、XY移動ステージ88を介してチャンバ2に固定されてもよい。
【0075】
図7に示すように、チャンバ2の壁には貫通孔2aが形成されてもよい。リザーバ61、ノズル部62、電気絶縁部材65等を収容したカバー85は、貫通孔2aを貫通していてもよい。ターゲット27が通過する貫通孔85aはチャンバ2の内部に位置し、排気装置71と連通する接続ポート71aや蓋86はチャンバ2の外部に位置してもよい。カバー85には、貫通孔85aが位置する部分と、接続ポート71aや蓋86が位置する部分との間に、フランジ部85bが設けられてもよい。
【0076】
チャンバ2の外部において、チャンバ2の壁と、カバー85のフランジ部85bとはフレキシブル管89を介して接続されてもよい。より詳しくは、フレキシブル管89の一端は、貫通孔2aの周囲において、チャンバ2の壁に気密に固定されてもよい。また、フレキシブル管89の他端は、フランジ部85bに気密に固定されてもよい。このように、フレキシブル管89は、チャンバ2の壁とフランジ部85bとの間に接続されて、チャンバ2を密閉してもよい。また、フレキシブル管89は、チャンバ2内外の圧力差による応力に耐え得る蛇腹構造を有してもよい。こうして、チャンバ2の気密性が維持されつつ、カバー85とチャンバ2の壁とが相対的に移動可能に接続されてもよい。
【0077】
XY移動ステージ88は、フレキシブル管89の外側において、チャンバ2の壁と、フランジ部85bとの間に接続されてもよい。図示を省略するが、第1〜第3の実施形態同様、不活性ガスボンベが、不活性ガスを供給するための配管によってターゲット圧力調節器53と接続されてもよい。その他の点に関しては、第4の実施形態と同様でよい。
【0078】
9.2 動作及び作用
以上のような構成により、チャンバ2内の低圧状態が維持されるとともに、カバー85がXY移動ステージ88によって位置調整可能に保持され得る。また、カバー85と蓋86とによって囲まれた空間の内部であってリザーバ61の外部の空間は、排気装置71によって排気されてもよい。これにより、引出電極66、加速電極としての孔あき部材67、及び偏向電極70の周辺における絶縁破壊の発生が抑制され得る。また、リザーバ61が導電性材料によって構成されている場合でも、リザーバ61の周辺における絶縁破壊の発生が抑制され得る。
【0079】
10.偏向電極を用いたターゲットの方向制御
図8は、偏向電極を用いたターゲットの方向制御について説明するための図である。ここでは、Z軸方向に移動している帯電したターゲット27の移動方向を、一対の平板電極で構成された偏向電極を用いて、X軸方向の電界によって偏向させる場合について説明する。
【0080】
電荷Qを有する帯電したターゲット27は、電界Eによって、次式で表されるクーロン力Fを電界方向に受け得る。
F=QE
ここで、電界Eは、平板電極70aに与えられる電位Paと平板電極70bに与えられる電位Pbとの間の電位差(Pa−Pb)と、それらの電極間のギャップ長Gとによって、次式で表され得る。
E=(Pa−Pb)/G
【0081】
ターゲット27が初速度Vで電界中に入射すると、進行方向に直交する方向にクーロン力Fを受けることによって、ターゲット27の進行方向が偏向され得る。ターゲット27は、Z軸方向速度成分Vz(Vz=V)でZ軸方向に移動しながら、クーロン力FによってX軸方向に加速され得る。クーロン力Fは、電界中を移動している間中受け続け得る。このときのX軸方向の加速度aは、ターゲット27の質量mが既知であれば、次式から導かれ得る。
F=ma (m:ターゲットの質量、a:加速度)
【0082】
ターゲット27が電界から脱出するときの速度Vは、Z軸方向速度成分VzとX軸方向速度成分Vxとによって、次式で表され得る。
V=(Vz+Vx1/2
このように、電位差(Pa−Pb)を与えてターゲット27の軌道の一部に電界を作用させることによって、ターゲット27の進行方向を偏向させてもよい。また、電位差(Pa−Pb)を調節することによって、偏向量を制御してもよい。電界から脱出したターゲット27は、速度Vで移動して、レーザ光が照射される位置に到達するように制御されてもよい。同様に、Y軸方向に関しても、Y軸方向に一対の平板電極を配置することによって、ターゲット27の進行方向を制御することが可能である。
【0083】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0084】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0085】
1…EUV光生成装置、11…EUV光生成システム、2…チャンバ、2a…貫通孔、21…ウインドウ、22…レーザ光集光ミラー、22a…レーザ光集光光学系、221…軸外放物面ミラー、222…平面ミラー、23…EUV集光ミラー、24…貫通孔、25…プラズマ生成領域、251、252…EUV光、26…ターゲット供給装置、27…ターゲット、28…ターゲット回収部、29…接続部、291…壁、292…中間集光点、3…レーザ装置、31〜33…パルスレーザ光、34…レーザ光進行方向制御部、34a…ビームステアリングユニット、341、342…高反射ミラー、4…ターゲットセンサ、41…EUV集光ミラーホルダ、42、43…プレート、44…ビームダンプ、45…ビームダンプ支持部材、46…ガス供給装置、47…排気装置、48…圧力センサ、5…EUV光生成制御部、51…EUV光生成制御装置、52…ターゲット制御装置、53…ターゲット圧力調節器、54…不活性ガスボンベ、55…高電圧生成器、56…チャンバ圧力制御装置、57…偏向電極電圧生成器、58…ヒータ電源、59…温度制御装置、6…露光装置、61…リザーバ、62…ノズル部、63…リザーバ内電極、64…ヒータ、65…電気絶縁部材、65a…排気ポート、65b…排気管、65c…連通路、66…引出電極、66a…貫通孔、67…孔あき部材、67a…貫通孔、70…偏向電極、70a、70b…平板電極、71…排気装置、71a…接続ポート、72…圧力センサ、73…温度センサ、81…カバー、81a…貫通孔、84…フランジ、85…カバー、85a…貫通孔、85b…フランジ、86…蓋、88…XY移動ステージ、89…フレキシブル管、90a、90b、90c…中継端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、
前記ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられ、前記ノズル部を覆うように設けられるカバーと、
前記カバーによって画定される空間を排気するための排気機構と、
を備えるターゲット供給装置。
【請求項2】
ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、
前記ノズル部に対向して配置された電極と、
前記ターゲット物質と前記電極との間に電圧を印加するための電圧生成器と、
少なくとも前記ノズル部と前記電極との間の空間を排気するための排気機構と、
を備えるターゲット供給装置。
【請求項3】
前記ターゲット物質が通過するための貫通孔及び前記排気機構に接続するための排気ポートが設けられ、前記ノズル部と前記電極との間の空間を覆うように設けられるカバーをさらに備える請求項2記載のターゲット供給装置。
【請求項4】
前記カバーは、絶縁性材料で構成される、請求項3記載のターゲット供給装置。
【請求項5】
前記カバーの少なくとも前記貫通孔周辺は、導電性材料で形成される、請求項4記載のターゲット供給装置。
【請求項6】
ターゲット物質を出力するための貫通孔が形成されたノズル部と、
前記ターゲット物質の出力方向に配置される複数の電極と、
前記複数の電極を保持するための絶縁部材と、
前記複数の電極間に電圧を印加するための少なくとも1つの電圧生成器と、
前記ターゲット物質が通過するための貫通孔が設けられ、前記ノズル部、前記複数の電極、及び前記絶縁部材を覆うように設けられるカバーと、
前記カバーによって画定される空間を排気するための排気機構と、
を備えるターゲット供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51349(P2013−51349A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189316(P2011−189316)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】