説明

ターゲット分子の精製方法

【課題】ターゲット分子をより特異的に精製する方法が望まれている。
【解決手段】リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を精製する方法であって、式(1m)で示される化合物に由来する構造単位を含み、リガンドが前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂に、ターゲット分子を含む混合物を接触させる工程を含むことを特徴とする方法[式(1m)中の各記号の意味は、明細書に記載した通りである]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子の精製方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ターゲット分子に対して特異的な相互作用を有するリガンドを適当な樹脂(固相担体)に固定化したアフィニティー樹脂に、ターゲット分子を特異的に吸着させることによって、ターゲット分子を精製する方法に注目が集まっている。
【0003】
アフィニティー樹脂としては、アガロース誘導体が多用されている。このアガロース誘導体は親水性が高いために、これを用いた精製方法では、タンパク質の非特異的吸着が少ないと言われている。しかし、アガロース誘導体は変性しやすいという欠点を有する。そのため、アガロース誘導体以外の様々なアフィニティー樹脂が研究されている。
【0004】
例えば非特許文献1には、メタクリレート樹脂を用いたターゲット分子の精製方法に関する研究が報告されている。詳しくは、該文献に記載された研究では、(i)合成した新規なメタクリレート樹脂、又は市販のトヨパール(メタクリレート樹脂)若しくは市販のAffigel(アガロース誘導体)にリガンドとしてベンゼンスルホンアミド誘導体を結合させてアフィニティー樹脂を調製し、(ii)得られたアフィニティー樹脂に、酵素タンパク質の1種であるカルボニックアンハイドラーゼ2(CA2)を吸着させている。しかし、非特許文献1の精製方法で得られた精製物には依然としてCA2以外のタンパク質も含まれていることが、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】E. Iwaoka et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19 (2009) 1469-1472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、ターゲット分子をより特異的に精製する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の本発明を見い出した。
【0008】
[1] リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を精製する方法であって、
式(1m):
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含み、リガンドが前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂に、ターゲット分子を含む混合物を接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
[2] ポリビニルエーテル樹脂が、さらに、2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物に由来する構造単位を含むことを特徴とする上記[1]記載の方法。
[3] 2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、式(2m):
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R4とR5とが結合して環を形成していてもよく、R5とR6とが結合して環を形成していてもよく、R7とR8とが結合して環を形成していてもよく、R8とR9とが結合して環を形成していてもよい。
pは、0以上の整数を表す。
qおよびrは、それぞれ独立に、2以上の整数を表す。]
で示される化合物であることを特徴とする上記[2]記載の方法。
[4] ポリビニルエーテル樹脂が、さらに、式(3m):
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、
10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R10とR11とが結合して環を形成していてもよく、R11とR12とが結合して環を形成していてもよい。
13は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。
sおよびtは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。但し、R13が水素原子である場合、sおよびtの少なくとも一つは1以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含むことを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5] ポリビニルエーテル樹脂が、アミノ基に結合し得る官能基を有するリガンドと、式(1m)で示される化合物に由来する構造単位とが、直接、結合しているポリビニルエーテル樹脂であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6] ポリビニルエーテル樹脂が、アミノ基に結合し得る官能基を有するスペーサーを介して、式(1m)で示される化合物に由来する構造単位とリガンドとが結合しているポリビニルエーテル樹脂であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の方法。
[7] アミノ基に結合し得る官能基が、カルボキシ基、カルボキシ基から誘導される基またはオキシラニル基であることを特徴とする上記[5]または[6]記載の方法。
[8] ポリビニルエーテル樹脂が、式(1a):
【0015】
【化4】

【0016】
[式中、
1〜R3、mおよびnは、前記と同じ意味を表す。
kは、2〜12の整数を表す。
*は、他の構造単位との結合部を表す。
**は、リガンドまたはスペーサーとの結合部を表す。]
で示される構造単位を含むことを特徴とする[7]記載の方法。
[9] ターゲット分子が、生体分子であることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10] 式(1m):
【0017】
【化5】

【0018】
[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含み、
ターゲット分子に対して特異的な相互作用を有するリガンドが、前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂であることを特徴とするターゲット分子吸着剤。
[11] 式(1m):
【0019】
【化6】

【0020】
[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含み、
ターゲット分子に対して特異的な相互作用を有するリガンドが、前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂の、ターゲット分子を精製するための使用。
[12] 式(1b):
【0021】
【化7】

【0022】
[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。
kは、2〜12の整数を表す。
*は、他の構造単位との結合部を表す。]
で示される構造単位を含むことを特徴とするポリビニルエーテル樹脂。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を、より特異的に精製する方法が提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1(カルボニックアンハイドラーゼ2(CA2)の吸着実験)で得られたSDSゲルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を精製する方法であって、式(1m)で示される化合物に由来する構造単位とリガンドとを含むポリビニルエーテル樹脂(以下、「本樹脂」と略記することがある)にターゲット分子を接触させる工程を含むことを特徴とする方法;本樹脂であるターゲット分子吸着剤;およびターゲット分子を精製するための本樹脂の使用;である。なお以下では、「式(1m)で示される化合物」を、「化合物(1m)」と略記することがある。同様に、他の式で表される化合物、構造単位、リガンドおよびスペーサーなども同様に略記することがある。
【0026】
化合物(1m)に由来する構造単位は、式(1)で示される。
【0027】
【化8】

【0028】
式(1)中、R1〜R3、m、nおよび*は、前記と同じ意味を表す。
構造単位(1)は、*にて、それ自身と同一の構造単位と結合していてもよく、異なる構造単位と結合していてもよい。
【0029】
本樹脂において非特異的吸着が抑制されるのは、構造単位(1)にエーテル結合(−O−)が含まれており、本樹脂が高い親水性を示すからであると考えられる。
さらに、本樹脂を構成するエーテル結合と本樹脂の主鎖のオレフィン結合とは、構造単位(1)とリガンドとの結合反応、構造単位(1)とスペーサーとの結合反応、およびリガンドとスぺーサーとの結合反応を妨げない。
【0030】
さらに、本樹脂は、前記エーテル結合と主鎖のオレフィン結合とから主に形成されており、これらの結合が、酸、塩基および有機溶媒等に対して安定であることから、本樹脂は、酸、塩基および有機溶媒に対する安定性に優れる傾向がある。このため、ターゲット分子が、酸、塩基および有機溶媒等に溶解されたものであっても、精製が可能である。
【0031】
なお、「式(1)および式(1m)」を、文脈上そうではないことが明らかである場合を除いて、まとめて「式(1)」と呼ぶ。以下、式(1)中のR1等について順に説明する。
【0032】
式(1)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0033】
1、R2およびR3のアルキル基は、鎖状または環状のいずれでもよい。即ち、本発明における「アルキル基」には、環状アルキル基であるシクロアルキル基が含まれる。鎖状アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1〜50、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6である。なお、この炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基等が挙げられる。
【0034】
1、R2およびR3のアリール基の炭素数は、例えば6〜14である。なお、この炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基および2−ナフチル基等が挙げられる。
【0035】
1、R2およびR3のアルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、化合物(1m)の重合反応およびターゲット分子の精製方法のいずれにも悪影響を及ぼさないものであればよい。そのような置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;フェノキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数2〜10のアシル基;アセトキシ基等の炭素数2〜10のアシルオキシ基;およびベンジル基等の炭素数7〜15のアラルキル基;などが挙げられる。
【0036】
1とR2とは、結合して環を形成していてもよく、同様にR2とR3とは、結合して環を形成していてもよい。化合物(1m)において、R1とR2とが結合して形成される環としては、例えば、下記式で示されるようなシクロペンテン環およびシクロヘキセン環などが挙げられ、R2とR3とが結合して形成される環としては、例えば、下記式で示されるようなシクロペンタン環およびシクロヘキサン環が挙げられる。なお、下記式は、化合物(1m)に含まれるR23C=C(R1)−O−の部分を表す。
【0037】
【化9】

【0038】
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。R1、R2およびR3の好ましい組合せとしては、R1が炭素数1〜10のアルキル基(より好ましくはメチル基)であり、R2およびR3が水素原子である組合せ、並びにR1〜R3が全て水素原子である組合せなどが挙げられる。
【0039】
式(1)において、mは、0以上の整数を表す。mは、好ましくは1以上である。また、重合反応における化合物(1m)の反応の容易さの観点から、mは、100以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。
【0040】
式(1)において、nは、2以上の整数を表す。化合物(1m)の原料の入手の容易さの観点から、nは、30以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。
【0041】
mが0〜10の整数であり、且つnが2〜10の整数であることが好ましく、mが0〜10の整数であり、且つnが2〜6の整数であることがより好ましく、mが1〜5の整数であり、且つnが2〜4の整数であることがさらに好ましい。
【0042】
1〜R3、mおよびnの組合せとしては、例えば、以下のものが挙げられる:
1が水素原子であり、mが0〜10の整数であり、nが2〜10の整数である組合せ;
1が炭素数1〜10のアルキル基であり、mが0〜10の整数であり、nが2〜10の整数である組合せ;
1がメチル基であり、mが0〜10の整数であり、nが2〜10の整数である組合せ;
1、R2およびR3が水素原子であり、mが0〜10の整数であり、nが2〜10の整数である組合せ;
1が炭素数1〜10のアルキル基であり、R2およびR3が水素原子であり、mが0〜10の整数であり、nが2〜10の整数である組合せ;
1がメチル基であり、R2およびR3が水素原子であり、mが0〜10の整数であり、nが2〜10の整数である組合せ。
【0043】
化合物(1m)の具体例を、下記(1)〜(6)に列挙する:
(1)2−ビニルオキシエチルアミン、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、3−ビニルオキシプロピルアミン、2−(3−ビニルオキシプロポキシ)エチルアミン、4−ビニルオキシブチルアミン、2−(4−ビニルオキシブトキシ)エチルアミン。
【0044】
(2)2−(1−メチルビニルオキシ)エチルアミン、2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、3−(1−メチルビニルオキシ)プロピルアミン、2−[3−(1−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エチルアミン、4−(1−メチルビニルオキシ)ブチルアミン、2−[4−(1−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エチルアミン。
【0045】
(3)2−(2−メチルビニルオキシ)エチルアミン、2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、3−(2−メチルビニルオキシ)プロピルアミン、2−[3−(2−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エチルアミン、4−(2−メチルビニルオキシ)ブチルアミン、2−[4−(2−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エチルアミン。
【0046】
(4)2−(1−フェニルビニルオキシ)エチルアミン、2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、3−(1−フェニルビニルオキシ)プロピルアミン、2−[3−(1−フェニルビニルオキシ)プロポキシ]エチルアミン、4−(1−フェニルビニルオキシ)ブチルアミン、2−[4−(1−フェニルビニルオキシ)ブトキシ]エチルアミン。
【0047】
(5)2−(2−フェニルビニルオキシ)エチルアミン、2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、3−(2−フェニルビニルオキシ)プロピルアミン、2−[3−(2−フェニルビニルオキシ)プロポキシ]エチルアミン、4−(2−フェニルビニルオキシ)ブチルアミン、2−[4−(2−フェニルビニルオキシ)ブトキシ]エチルアミン。
【0048】
(6)2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エチルアミン、2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルアミン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)−エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチルアミン、3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロピルアミン、2−[3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロポキシ]エチルアミン、4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブチルアミン、2−[4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブトキシ]エチルアミン。
【0049】
本樹脂の製造には、上述したような遊離アミノ基を有する化合物(1m)だけでなく、保護基で保護されたアミノ基(以下「保護アミノ基」と略記することがある)を有する化合物(1m)の誘導体(以下「誘導体(1m)」と略記することがある)を使用してもよい。保護基としては、例えば、Protective Groups in Orgnic Chemistry (Greene et al., John Wiley & Sons, Inc.) 等に記載されているような公知の保護基を使用することができる。公知の保護基の中では、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。化合物(1m)の保護(即ち、誘導体(1m)の製造)、誘導体(1m)を用いて製造した本樹脂の脱保護は、前記文献に記載されているような公知の方法によって行うことができる。なお、誘導体(1m)を用いて本樹脂を製造し、次いで保護アミノ基を脱保護することによって形成される構造単位も、本発明の構造単位(1)に含まれる。なお以下では、「化合物(1m)および誘導体(1)」を、文脈上そうではないことが明らかである場合を除いて、まとめて「化合物(1)」と呼ぶ。
【0050】
化合物(1m)は、市販品を使用してもよく、公知の方法によって製造したものを使用してもよい。化合物(1m)は、例えば、式(m1−1)で示される化合物と式(m1−2)で示される化合物とを反応させて、式(m1−3)で示される化合物を得、式(m1−3)で示される化合物のイミド部分をアミノ基に変換することによって、製造することができる。以下では、前者の反応を反応Aと、後者の反応を反応Bと呼ぶ。
【0051】
【化10】

【0052】
式(m1−1)中のR1〜R3、mおよびnは、前記と同じ意味を表す。式(m1−2)中のR14は、1,2−エチレン基、1,2−フェニレン基または1,3−プロピレン基を表す。
【0053】
化合物(m1−1)としては、市販品を使用してもよく、公知の方法、例えば、J. Polym. Sci. Polym. Chem. Ed., 20, 2731-2734 (1982) に記載の方法に従って製造したものを使用してもよい。例えば、mが1以上の整数である化合物(m1−1)(以下「化合物(m1−1*)」と呼ぶ)は、式(m1−4)で示される化合物と式(m1−5)で示される化合物とを、塩基の存在下で反応させることによって製造することができる。なお、このようなエーテル化反応は有機合成の分野で周知であり、その反応条件等は周知のものを採用すればよい。
【0054】
【化11】

【0055】
式(m1−4)、式(m1−5)および式(m1−1*)中、R1〜R3およびnは、前記と同じ意味を表し、Tsは、トシル基(トルエンスルホニル基)を表し、aは、0以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、mは、aおよびbの和、即ち1以上の整数を表す。
【0056】
化合物(m1−1)の具体例を、下記(1)〜(6)に列挙する:
(1)2−ビニルオキシエタノール、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、3−ビニルオキシプロパノ−ル、2−(3−ビニルオキシプロポキシ)エタノール、4−ビニルオキシブタノ−ル、2−(4−ビニルオキシブトキシ)エタノール。
【0057】
(2)2−(1−メチルビニルオキシ)エタノール、2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、3−(1−メチルビニルオキシ)プロパノール、2−[3−(1−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エタノール、4−(1−メチルビニルオキシ)ブタノール、2−[4−(1−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エタノール。
【0058】
(3)2−(2−メチルビニルオキシ)エタノール、2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、3−(2−メチルビニルオキシ)プロパノール、2−[3−(2−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エタノール、4−(2−メチルビニルオキシ)ブタノール、2−[4−(2−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エタノール。
【0059】
(4)2−(1−フェニルビニルオキシ)エタノール、2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、3−(1−フェニルビニルオキシ)プロパノ−ル−2−[3−(1−フェニルビニルオキシ)プロポキシ]エタノール、4−(1−フェニルビニルオキシ)ブタノ−ル−2−[4−(1−フェニルビニルオキシ)ブトキシ]エタノール。
【0060】
(5)2−(2−フェニルビニルオキシ)エタノール、2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、3−(2−フェニルビニルオキシ)プロパノール、2−[3−(2−フェニルビニルオキシ)プロポキシ]エタノール、4−(2−フェニルビニルオキシ)ブタノール、2−[4−(2−フェニルビニルオキシ)ブトキシ]エタノール。
【0061】
(6)2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エタノール、2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エタノール、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エタノール、3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロパノール、2−[3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロポキシ]エタノール、4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブタノール、2−[4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブトキシ]エタノール。
【0062】
化合物(m1−2)としては、例えば、スクシンイミド、フタルイミドおよびグルタルイミドなどが挙げられる。これらは、市販品を使用することができる。反応Aにおける化合物(m1−2)の使用量は、化合物(m1−1)1モルに対して、例えば1モル以上、好ましくは1〜5モルである。
【0063】
化合物(m1−1)と化合物(m1−2)との反応Aは、ホスフィン化合物および式(m1−6)で示される化合物の存在下で行われる。ホスフィン化合物および化合物(m1−6)のいずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
【化12】

【0065】
式(m1−6)中、R15およびR16は、それぞれ独立に、メトキシ基、イソプロポキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、ジメチルアミノ基またはピペリジニル基を表す。
【0066】
ホスフィン化合物としては、通常、市販品が使用される。市販のホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ブチルホスフィン、tert−ブチルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、4−(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、4−ジフェニルホスフィノポリスチレンおよび4−ジフェニルホスフィノメチルポリスチレンなどが挙げられる。反応Aにおけるホスフィン化合物の使用量は、化合物(m1−1)1モルに対して、例えば1モル以上、好ましくは1〜5モルである。
【0067】
化合物(m1−6)としては、例えば、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボン酸ジベンジル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピルおよびアゾジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。これらは、市販品を使用することができる。反応Aにおける化合物(m1−6)の使用量は、化合物(m1−1)1モルに対して、例えば1モル以上、好ましくは1〜5モルである。
【0068】
化合物(m1−1)と化合物(m1−2)との反応Aは、1種または2種以上の溶媒の存在下で行うことが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンおよびアニソール等のエーテル溶媒;クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;などが挙げられる。これらの中で、エーテル溶媒が好ましい。溶媒の使用量は、化合物(m1−1)、化合物(m1−2)、ホスフィン化合物および化合物(m1−6)の種類および使用量に応じて、適宜調整すればよい。
【0069】
反応Aの反応温度は、例えば−10℃以上および用いる溶媒の沸点以下、好ましくは0℃〜40℃である。反応Aの反応時間は、化合物(m1−1)、化合物(m1−2)、ホスフィン化合物および化合物(m1−6)の種類および使用量によって異なるが、例えば3分〜15時間である。
【0070】
反応Aで得られる化合物(m1−3)の具体例を、下記(1)〜(4)に列挙する:
(1)N−(2−ビニルオキシエチル)フタルイミド、N−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル]フタルイミド、N−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)フタルイミド、N−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]フタルイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]フタルイミド、N−(3−ビニルオキシプロピル)フタルイミド、N−[2−(3−ビニルオキシプロポキシ)エチル]フタルイミド、N−(4−ビニルオキシブチル)フタルイミド、N−[2−(4−ビニルオキシブトキシ)エチル]フタルイミド。
【0071】
(2)N−(2−ビニルオキシエチル)スクシンイミド、N−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル]スクシンイミド、N−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エチル}スクシンイミド、N−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)スクシンイミド、N−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]スクシンイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}スクシンイミド、N−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]スクシンイミド、N−(3−ビニルオキシプロピル)スクシンイミド、N−[2−(3−ビニルオキシプロポキシ)エチル]スクシンイミド、N−(4−ビニルオキシブチル)スクシンイミド、N−[2−(4−ビニルオキシブトキシ)エチル]スクシンイミド。
【0072】
(3)N−(2−ビニルオキシエチル)グルタルイミド、N−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル]グルタルイミド、N−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エチル}グルタルイミド、N−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)グルタルイミド、N−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]グルタルイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}グルタルイミド、N−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]グルタルイミド、N−(3−ビニルオキシプロピル)グルタルイミド、N−[2−(3−ビニルオキシプロポキシ)エチル]グルタルイミド、N−(4−ビニルオキシブチル)グルタルイミド、N−[2−(4−ビニルオキシブトキシ)エチル]グルタルイミド。
【0073】
(4)N−[2−(1−メチルビニルオキシ)エチル]フタルイミド、N−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)フタルイミド、N−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]フタルイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)フタルイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−[3−(1−メチルビニルオキシ)プロピル]フタルイミド、N−{2−[3−(1−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エチル}フタルイミド、N−[4−(1−メチルビニルオキシ)ブチル]フタルイミド、N−{2−[4−(1−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エチル}フタルイミド、N−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エチル]フタルイミド、N−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)フタルイミド、N−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]フタルイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]エチル}フタルイミド、N−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル)フタルイミド、N−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エチル}フタルイミド、N−[3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロパニル]フタルイミド、N−{2−[3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロポキシ]エチル}フタルイミド、N−[4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブチル]フタルイミド、N−{2−[4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブトキシ]エチル}フタルイミド。
【0074】
反応Aの終了後、得られた反応混合物を分離操作に供することによって、化合物(m1−3)を取り出した後、取り出した化合物(m1−3)を次の反応Bに用いてもよい。また、取り出した化合物(m1−3)を、さらに精製操作に供してから、次の反応Bに用いてもよい。分離および精製操作に特に限定は無く、公知の操作、例えば抽出、再結晶、各種クロマトグラフィー等を使用することができる。また、化合物(m1−3)を含む反応混合物を精製せずに、そのまま次の反応Bに用いてもよい。
【0075】
反応B、即ち、化合物(m1−3)のイミド部分のアミノ基への変換は、公知の方法、例えば、Protective Groups in Orgnic Chemistry (Greene et al., John Wiley & Sons, inc.) 等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0076】
反応Bは、化合物(m1−3)と式(m1−7):
17−NH2 (m1−7)
[式中、R17は、水素原子、アミノ基、アルキル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはアリール基を表す。]
で示される化合物とを反応させることによって、行うことが好ましい。
【0077】
化合物(m1−7)としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アニリンおよびナフチルアミンなどが挙げられる。これらは市販されており、化合物(m1−7)として市販品を使用することができる。反応Bにおける化合物(m1−7)の使用量は、化合物(m1−3)1モルに対して、例えば1モル以上、好ましくは1〜50モルである。
【0078】
化合物(m1−3)および化合物(m1−7)の反応は、1種または2種以上の溶媒の存在下で行うことが好ましい。この溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等のエーテル溶媒;およびクロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;などが挙げられる。これらの中で、アルコール溶媒、エーテル溶媒、およびこれらの混合溶媒が好ましく、アルコール溶媒とエーテル溶媒との混合溶媒がより好ましい。化合物(m1−3)および化合物(m1−7)の反応において、溶媒の使用量は制限されず、化合物(m1−3)および化合物(m1−7)の種類および使用量に応じて、適宜調節すればよい。
【0079】
化合物(m1−3)および化合物(m1−7)の反応温度は、例えば−10℃以上および用いる溶媒の沸点以下、好ましくは25〜80℃である。この反応時間は、化合物(m1−3)および化合物(m1−7)の種類および反応温度によって異なるが、例えば3分〜15時間である。
【0080】
反応B(特に、化合物(m1−3)および化合物(m1−7)の反応)の終了後に、得られた反応混合物から、以下の操作の工程(a)〜(c)を行うことによって、化合物(1m)を取り出すことができる:
(a)反応終了後、得られた反応混合物を濃縮し、濃縮残渣を、弱溶出溶媒を用いて、順相シリカゲルカラムにチャージし、化合物(1m)をシリカゲルに吸着させるとともに、弱溶出溶媒で低極性不純物を溶出除去する工程、
(b)シリカゲルに吸着した化合物(1m)を強溶出溶媒で溶出する工程、および
(c)得られた化合物(1m)を含む溶液を濃縮する工程。
【0081】
「弱溶出溶媒」とは、反応Bで得られた反応混合物の一部を順相薄層シリカゲルクロマトグラフィーで分析した結果、化合物(1m)のRf値が0.1以下である展開溶媒を意味する。弱溶出溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素化炭化水素溶媒;およびヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;などが挙げられる。弱溶出溶媒には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;またはアセトニトリル、アセトン、メチルtert−ブチルケトン等の非プロトン性極性溶媒;などを混合してもよい。
【0082】
「強溶出溶媒」とは、反応Bで得られた反応混合物の一部を順相薄層シリカゲルクロマトグラフィーにより分析した結果、化合物(1m)のRf値が0.3以上である展開溶媒を意味する。強溶出溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;およびアセトニトリル、アセトン、メチルtert−ブチルケトン等の非プロトン性極性溶媒;などが挙げられる。強溶出溶媒には、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素化炭化水素溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;またはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;などを混合してもよい。
【0083】
また、反応Bの終了後、得られた反応混合物を、分離操作に供することによっても、化合物(1m)を取り出すことができる。さらに、取り出した化合物(1m)を精製操作に供してもよい。分離および精製操作に特に限定は無く、公知の操作、例えば、抽出、再結晶、各種クロマトグラフィー等を使用することができる。
【0084】
本樹脂は、さらに、2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(以下「多不飽和化合物」と略記することがある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。ここで「炭素−炭素不飽和結合」には、芳香環の便宜的な構造式として表される二重結合は含まれない。炭素−炭素不飽和結合は、二重結合でも、三重結合でもよいが、好ましくは二重結合である。モノマーとして多不飽和化合物を使用することによって、得られる本樹脂中に架橋を生じさせることができる。この架橋によって、本樹脂は有機溶媒にさらに溶解しがたくなり、本発明の精製方法に使用し得る溶媒の種類を増やすことができる。
【0085】
多不飽和化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリールイソシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレ−ト、ブチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストールトリメタクリレート、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、エチレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリストールトリビニルエーテルおよびジアリールフタレートなどが挙げられる。これらは市販されており、多不飽和化合物として市販品を使用することができる。
【0086】
本樹脂の製造に多不飽和化合物を使用する場合、多不飽和化合物とそれ以外の化合物の合計(化合物(1)を含む)とのモル比(即ち、多不飽和化合物:それ以外の化合物の合計)としては、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲を挙げることができ、好ましくは1:99〜99:1の範囲が挙げられ、より好ましくは3:7〜7:3の範囲が挙げられる。多不飽和化合物の使用量を適宜調整することにより、本樹脂の溶媒への溶解性を調整することができる。なお、多不飽和化合物とそれ以外の化合物の合計との上記モル比は、本樹脂中の多不飽和化合物に由来する構造単位とそれ以外の化合物に由来する構造単位の合計とのモル比に対応する。
【0087】
多不飽和化合物の中でも、化合物(2m)が好ましい。化合物(2m)に由来する構造単位は、式(2−1)〜式(2−3)で示される。
【0088】
【化13】

【0089】
式(2−1)〜式(2−3)中、R4〜R9、p、q、rおよび*は、前記と同じ意味を表す。
構造単位(2−1)〜構造単位(2−3)は、いずれも、*にて、それら自身と同一の構造単位と結合していてもよく、異なる構造単位と結合していてもよい。
【0090】
構造単位(2−1)によって、本樹脂は架橋構造を有し、溶媒にさらに溶解しがたくなる。なお、構造単位(2−2)または構造単位(2−3)のように、化合物(2m)の一つの二重結合のみが結合し、もう一方の二重結合が本樹脂中に残っていてもよい。但し、化合物(2m)に由来する構造単位の全てが、実質上、構造単位(2−1)であることが好ましい。以下では、「式(2−1)〜式(2−3)」および「構造単位(2−1)〜構造単位(2−3)」を、文脈上そうではないことが明らかである場合を除いて、まとめて、それぞれ「式(2)」および「構造単位(2)」と呼ぶ。また、「式(2)および式(2m)」を、文脈上そうではないことが明らかである場合を除いて、まとめて「式(2)」と呼ぶ。
【0091】
式(2)において、R4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。R4〜R9のアルキル基、アリール基およびそれらの置換基としては、R1〜R3において説明したものと同様のものが挙げられる。また、R4とR5とが結合して環を形成していてもよく、R7とR8とが結合して環を形成していてもよい。これらの環としては、R1およびR2が結合して形成される環と同様のものが挙げられる。さらに、R5とR6とが結合して環を形成していてもよく、R8とR9とが結合して環を形成していてもよい。これらの環としては、R2およびR3が結合して形成される環と同様のものが挙げられる。なお、R4とR7、R5とR8、R6とR9は、同じものであることが好ましい。
【0092】
式(2)において、pは、0以上の整数を表す。pは、好ましくは1以上である。また、pが大きすぎると、重合反応における化合物(2m)の反応性が低下し易くなる傾向がある。そこで、pは、好ましくは1000以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。
【0093】
式(2)において、qおよびrは、それぞれ独立に、2以上の整数を表す。化合物(2m)を製造するための原料の入手の容易さの観点から、qおよびrは、それぞれ独立に、、例えば30以下を挙げることができ、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。なお、qおよびrは、同じものであることが好ましい。
【0094】
pが0〜10の整数であり、且つqおよびrが2〜10の整数であることが好ましく、pが0〜10の整数であり、且つqおよびrが2〜6の整数であることがより好ましく、pが1〜5の整数であり、且つqおよびrが2〜4の整数であることがさらに好ましい。
【0095】
化合物(2m)の具体例を、下記(1)〜(6)に列挙する:
(1)2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エテン、3−[2−(3−ビニルオキシプロポキシ)エトキシ]プロポキシエテン、4−[2−(4−ビニルオキシブトキシ)エトキシ]ブトキシエテン。
【0096】
(2)2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシエテン−2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、3−{2−[3−(1−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エトキシ}プロポキシエテン、4−{2−[4−(1−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エトキシ}ブトキシエテン。
【0097】
(3)2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−メチルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、3−{2−[3−(2−メチルビニルオキシ)プロポキシ]エトキシ}プロポキシエテン、4−{2−[4−(2−メチルビニルオキシ)ブトキシ]エトキシ}ブトキシエテン。
【0098】
(4)2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシエテン、2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(1−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、3−{2−[3−(1−フェニルビニルオキシ)プロポキシ]エトキシ}プロポキシエテン、4−{2−[4−(1−フェニルビニルオキシ)ブトキシ]エトキシ}ブトキシエテン。
【0099】
(5)2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−フェニルビニルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、3−{2−[3−(2−フェニルビニルオキシ)プロポキシ]エトキシ}プロポキシエテン、4−{2−[4−(2−フェニルビニルオキシ)ブトキシ]エトキシ}ブトキシエテン。
【0100】
(6)2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシエテン、2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエテン、2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエテン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエテン、3−{2−[3−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)プロポキシ]エトキシ}プロポキシエテン、4−{2−[4−(シクロヘキセン−1−イルオキシ)ブトキシ]エトキシ}ブトキシエテン。
【0101】
化合物(2m)は、市販品を使用してもよく、公知の方法によって製造したものを使用してもよい。例えば、pが1以上の整数である化合物(2m)(以下「化合物(2m*)」と呼ぶ)は、例えば、式(m2−1)で示される化合物、式(m2−2)で示される化合物、および式(m2−3)で示される化合物を、塩基の存在下で反応させることによって、製造することができる。なお、このようなエーテル化反応は有機合成の分野で周知であり、その反応条件等は周知のものを採用すればよい。
【0102】
【化14】

【0103】
式(m2−1)、式(m2−3)および式(2m*)中、R4〜R9、q、rおよびTsは、前記と同じ意味を表し、pは、1以上の整数を表す。
【0104】
本樹脂は、さらに、化合物(3m)に由来する構造単位を含んでいてもよい。化合物(3m)に由来する構造単位は、式(3)で示される。
【0105】
【化15】

【0106】
式(3)中、R10〜R13、s、tおよび*は、前記と同じ意味を表す。
構造単位(3)は、*にて、それ自身と同一の構造単位と結合していてもよく、異なる構造単位と結合していてもよい。
【0107】
なお、「式(3)および式(3m)」を、文脈上そうではないことが明らかである場合を除いて、まとめて「式(3)」と呼ぶ。
【0108】
式(3)において、R10〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。R10〜R12のアルキル基、アリール基およびそれらの置換基としては、R1〜R3において説明したものと同様のものが挙げられる。また、R10およびR11が結合して環を形成していてもよい。この環としては、R1およびR2が結合して形成される環と同様のものが挙げられる。さらに、R11およびR12が結合して環を形成していてもよい。この環としては、R2およびR3が結合して形成される環と同様のものが挙げられる。
【0109】
式(3)において、R13は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R13のアルキル基、アリール基およびそれらの置換基としては、R1〜R3において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0110】
13のアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜10である。なお、この炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。アルコキシ基に含まれるアルキル基は、鎖状でも環状でもよく、好ましくは鎖状、即ち直鎖状または分枝鎖状である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−プロポキシ基、ブトキシ基、2−ブトキシ基およびtert−ブトキシ基などが挙げられる。アルコキシ基の置換基としては、例えば、フェニル基および9H−フルオレン−9−イル基などが挙げられる。置換されたアルコキシ基としては、例えば、フェニルメトキシ基および9H−フルオレン−9−イルメトキシ基などが挙げられる。
【0111】
13のアリールオキシ基の炭素数は、好ましくは6〜14である。なお、この炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基および2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。アリールオキシ基の置換基としては、メチル基などの炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基:ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。置換基を有するアリールオキシ基としては、例えば、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基;2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基;2−ニトロフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、4−ニトロフェノキシ基;4−クロロフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基、4−ヨードフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、2−ヨードフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、3−ブロモフェノキシ基、3−ヨードフェノキシ基;などが挙げられる。
【0112】
式(3)において、sは、0以上の整数を表す。sは、好ましくは1以上である。また、重合反応における化合物(3m)の反応性の観点から、sは、例えば100以下を挙げることができ、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。
【0113】
式(3)において、tは、0以上、より好ましくは2以上の整数を表す。化合物(3m)を製造するための原料の入手の容易さの観点から、tは、例えば30以下を挙げることができ、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。なお、R13が水素原子である場合、sおよびtの少なくとも一つは1以上の整数であることが必要である。
【0114】
sが0〜10の整数であり、且つtが2〜10の整数であることが好ましく、sが0〜10の整数であり、且つtが2〜6の整数であることがより好ましく、sが1〜5の整数であり、且つtが2〜4の整数であることがさらに好ましい。
【0115】
化合物(3m)の具体例を、下記(1)〜(4)に列挙する:
(1)3−ビニルオキシプロポキシメタン、4−ビニルオキシブトキシメタン、5−ビニルオキシペンチルオキシメタン、6−ビニルオキシヘキシルオキシメタン、7−ビニルオキシヘプチルオキシメタン、8−ビニルオキシオクチルオキシメタン、2−ビニルオキシエトキシメタン、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシメタン、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシメタン、2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシメタン、2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシメタン、2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシメタン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシメタン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシメタン、3−[2−(3−メトキシプロポキシ)エトキシ]プロポキシエテン、4−[2−(4−メトキシブトキシ)エトキシ]ブトキシエテン。
【0116】
(2)3−ビニルオキシプロポキシエタン、4−ビニルオキシブトキシエタン、5−ビニルオキシペンチルオキシエタン、6−ビニルオキシヘキシルオキシエタン、7−ビニルオキシヘプチルオキシエタン、8−ビニルオキシオクチルオキシエタン、2−ビニルオキシエトキシエタン、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシエタン、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシエタン、2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシエタン、2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエタン、2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエタン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}−エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシエタン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシエタン、3−[2−(3−エトキシプロポキシ)エトキシ]プロポキシエテン、4−[2−(4−エトキシブトキシ)エトキシ]ブトキシエテン。
【0117】
(3)3−ビニルオキシプロポキシベンゼン、4−ビニルオキシブトキシベンゼン、5−ビニルオキシペンチルオキシベンゼン、6−ビニルオキシヘキシルオキシベンゼン、7−ビニルオキシヘプチルオキシベンゼン、8−ビニルオキシオクチルオキシベンゼン、2−ビニルオキシエトキシベンゼン、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシベンゼン、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシベンゼン、2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシベンゼン、2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシベンゼン、2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシベンゼン、2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシベンゼン、2−[2−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシベンゼン、3−[2−(3−フェノキシプロポキシ)エトキシ]プロポキシエテン、4−[2−(4−フェノキシブトキシ)エトキシ]ブトキシエテン。
【0118】
(4)エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、2−プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、ヘプチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ウンデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ペンタデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、ヘプタデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル。
【0119】
本樹脂の製造における化合物(3m)の使用量を、化合物(1m)と化合物(3m)とのモル比(即ち、化合物(1m):化合物(3m))で表すと、例えば0.0001:100〜100:0の範囲を挙げることができ、好ましくは1:99〜99:1の範囲が挙げられ、より好ましくは1:10〜6:4の範囲が挙げられる。化合物(3m)の使用量を適宜調整することにより、本樹脂中のアミノ基の含有量を調整することができる。なお、化合物(1m)と化合物(3m)との上記モル比は、本樹脂中の構造単位(1)と構造単位(3)とのモル比に対応する。
【0120】
構造単位(1)、並びに必要に応じて含まれる構造単位(2)および構造単位(3)は、いずれも、1種のみでも、2種以上でもよい。本樹脂は、構造単位(1)、構造単位(2)および構造単位(3)の全てを含み、且つ架橋構造を有するものが好ましい。本樹脂は、構造単位(1)〜構造単位(3)以外の構造単位を含んでいてもよいが、構造単位(1)〜構造単位(3)の合計が、本樹脂を構成する全構成単位100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、本樹脂が、構造単位(1)〜構造単位(3)のみからなることがより好ましい。
【0121】
本樹脂中の構造単位(1)および構造単位(3)の合計と構造単位(2)とのモル比(即ち、構造単位(1)および構造単位(3)の合計:構造単位(2))としては、例えば0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲を挙げることができ、好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは3:7〜7:3の範囲が挙げられる。
【0122】
構造単位(2)を含まず、架橋構造を有さない本樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上100万以下、より好ましくは5,000以上50万以下、さらに好ましくは1万以上10万以下である。このような重量平均分子量は、例えばGPCなどによって測定することができる。なお、構造単位(2)を含み、架橋構造を有する本樹脂の重量平均分子量は測定できないため、この範囲を特定することはできない。
【0123】
化合物(3m)は、市販品を使用してもよく、公知の方法によって製造したものを使用してもよい。例えば、sおよびtが1以上の整数である化合物(3m)(以下「化合物(3m*)」と呼ぶ)は、例えば、式(m3−1)で示される化合物および式(m3−2)で示される化合物を、塩基の存在下で反応させることによって製造することができる。なお、このようなエーテル化反応は有機合成の分野で周知であり、その反応条件等は周知のものを採用すればよい。
【0124】
【化16】

【0125】
式(m3−1)、式(m3−2)および式(3m*)中、R10〜R13およびTsは、前記と同じ意味を表し、tは、1以上の整数を表し、cは、0以上の整数を表し、dは、1以上の整数を表し、sは、cおよびdの和、即ち1以上の整数を表す。
【0126】
本樹脂は、ヒドロキシ基を実質的に含有していない樹脂であることが好ましい。ここで「ヒドロキシ基を実質的に含有していない」とは、ヒドロキシ基を含有する構造単位の含有量が、本樹脂の全構造単位100質量部に対して、0.1質量部以下であることを意味する。ヒドロキシ基を含有する構造単位の含有量は、本樹脂の全構造単位100質量部に対して、0.01質量部以下であることがより好ましく、0質量部であること(即ち、ヒドロキシ基を含有しないこと)がさらに好ましい。
【0127】
本樹脂は、化合物(1m)、並びに必要に応じて化合物(2m)および化合物(3m)を重合させることによってポリビニルエーテル樹脂を製造し、このポリビニルエーテル樹脂の構造単位(1)にリガンドを結合させることによって製造することができる。ポリビニルエーテル樹脂の製造において、化合物(1m)〜化合物(3m)は、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。化合物(1m)に替えて、保護アミノ基を有する誘導体(1m)を使用して保護アミノ基を有する樹脂を製造し、これを公知の方法によって脱保護して、遊離アミノ基を有するポリビニルエーテル樹脂を製造することが好ましい。誘導体(1m)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお以下では、化合物(1m)または誘導体(1m)、並びに必要に応じて化合物(2m)および化合物(3m)を、まとめて「化合物(1m)等」と略記することがある。
【0128】
ポリビニルエーテル樹脂は、公知の付加重合法によって製造することができる。付加重合法としては、例えば、ラジカル重合、カチオン重合およびアニオン重合などが挙げられ、これらの中でラジカル重合が好ましく、ラジカル重合での懸濁重合(以下「懸濁重合」と略記する)がより好ましい。懸濁重合によれば、略球形粒子状のポリビニルエーテル樹脂を容易に製造することができる。このような略球形粒子状のポリビニルエーテル樹脂は、精製方法に行う際にカラムに充填しやすいという利点を有する。以下、懸濁重合によるポリビニルエーテル樹脂の製造方法について説明する。
【0129】
懸濁重合では、化合物(1m)等を水に懸濁させ、水中でこれらをラジカル重合させる。ここで「懸濁」とは、化合物(1m)等が水中に分散され、分散滴を形成することを意味する。懸濁重合は、公知の方法、例えば J. Sep. Sci., 2005, 28, 1855-1875 等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0130】
懸濁重合では、分散安定剤を用いることが好ましい。分散安定剤として、市販品を用いることができる。分散安定剤の中でも、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ヒドロキシアルキルセルロース、天然ガムなどの高分子系分散安定剤が好ましい。分散安定剤の使用量は、水および分散安定剤の合計質量中、例えば0.1〜10質量%、好ましくは1〜3質量%である。
【0131】
化合物(1m)等が溶解しない、または溶解し難い、且つ水溶性である有機溶媒を水に添加してもよい。また、化合物(1m)等が溶解し、且つ非水溶性または難水溶性である有機溶媒(以下「ポロゲン(porogen)」と呼ぶ)を水に添加してもよい。ポロゲンを用いることによって、多孔性表面を有する略球形粒子状のポリビニルエーテル樹脂を得ることができる。ポロゲンとしては、トルエン、ポリスチレンが溶解したトルエン、シクロヘキサノール、ドデカノール、テトラデカノールおよびヘキサデカノールなどが挙げられる。ポロゲンの使用量は、化合物(1m)等の合計100体積部に対して、例えば0〜300体積部である。
【0132】
水および化合物(1m)等を混合し、これらを充分に攪拌することにより、分散滴として化合物(1m)等が水中に分散する。攪拌は、マグネチックスターラー、攪拌モーター等の通常の攪拌手段を用いることができる。攪拌手段としてマグネチックスターラーを用いる場合、その攪拌速度は、通常10〜1500rpmである。攪拌速度が10rpm以上であると、分散滴の分散性が良好になる傾向があることから好ましい。また、攪拌速度が1500rpm以下であると、エネルギーコストを抑制し、得られる略球形粒子状のポリビニルエーテル樹脂の粒径が大きくなる傾向があることから好ましい。また、樹脂の粒径を所望の範囲に調整するために、化合物(1m)等の種類および使用量、分散安定剤の種類および使用量、水の使用量、水溶性有機溶媒の種類および使用量、並びにポロゲンの種類および使用量などが適宜調整される。
【0133】
懸濁重合では、通常、ラジカル重合開始剤が使用される。ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤(即ち、加熱によってラジカルを発生する開始剤)または光重合開始剤(即ち、光照射、特に紫外線照射によってラジカルを発生する開始剤)のいずれでもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤の使用量は、所望の分子量を有するポリビニルエーテル樹脂が得られるように適宜調整すればよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、化合物(1)等の合計100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部である。
【0134】
懸濁重合における水の使用量は、水、化合物(1m)等および必要に応じて使用するポロゲンの合計100体積部に対して、例えば、99〜10体積部である。
【0135】
次に、一般的な重合手順について説明する。化合物(1m)等およびラジカル重合開始剤、並びに必要に応じてポロゲン等を混合して有機相を調製する。有機相は、さらに、増粘剤および防腐剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、必要に応じて分散安定剤を含有する水を一定速度で攪拌しながら、調製した有機相を加えることにより、有機相が水相中に分散し、分散滴を形成する。次いで、分散滴を含む分散液を、所定の重合温度に調整する。ラジカル重合開始剤は、前述のように、予め有機相中に溶解させおいてもよいが、ラジカル重合開始剤を含まない有機相および水から分散液を調製し、該分散液を所定の重合温度に調整する途中で、または、所定の重合温度に調整した後に、ラジカル重合開始剤を分散液に加えてもよい。
【0136】
化合物(1m)等およびラジカル重合開始剤などから分散滴が水中に形成された後、加熱または光照射によって重合を開始する。重合温度(即ち、分散液の温度)は、用いたラジカル重合開始剤の種類に応じて適宜調整される。重合温度は、例えば20〜100℃を挙げることができ、好ましくは60〜80℃である。重合時間は、用いる化合物(1m)等およびラジカル重合開始剤の種類および使用量、並びに必要に応じて使用するポロゲンの種類および使用量によって異なるが、通常3分〜72時間の範囲である。重合反応の途中の反応混合物から、分析用の試料を採取し、適切な分析手段で該試料を分析することによって、重合反応の進行の程度を確認し、重合反応の終了を判定することもできる。
【0137】
懸濁重合の終了後、例えば、得られた反応混合物をろ過することにより、略球形粒子状のポリビニルエーテル樹脂を取り出すことができる。取り出したポリビニルエーテル樹脂は、必要に応じて溶媒で洗浄してもよい。洗浄に用いる溶媒としては、水、アルコール溶媒(例えばメタノール)が挙げられる。
【0138】
本樹脂には、ターゲット分子に対して特異的な相互作用を有するリガンドが、構造単位(1)のアミノ基を介して結合している。本発明において「特異的な相互作用」とは、特定のリガンドが特定のターゲット分子のみを特異的に結合するような相互作用を意味する。特異的な相互作用としては、例えば、アゴニストまたはアンタゴニストと特異的受容体との相互作用、基質と酵素との相互作用、ステロイドホルモンとステロイドホルモン受容体との相互作用、より詳しくは、例えば、免疫抑制剤FK506とFK506結合タンパク質との相互作用、dexamethason と glucocorticoid receptor との相互作用、抗がん剤 trapoxin とヒストン脱アセチル酵素(HDAC:histone Deacetylase)との相互作用、サリドマイドとタンパク質セレブロン(CRBN)との相互作用などが挙げられる。
【0139】
リガンドとターゲット分子とは相対的な関係にある。例えば、互いに特異的な相互作用を有する分子Aと分子Bとは、分子Aをリガンドとすれば、分子Bがターゲット分子になり、分子Bをリガンドとすれば、分子Aがターゲット分子になる。例えば、ターゲット分子が生体分子であり、リガンドが該生体分子に対して特異的な相互作用を有する分子である組合せを挙げることができる。本発明において「生体分子」とは、生物中で形成される有機分子を意味し、例えばタンパク質などが挙げられる。ターゲット分子は、好ましくは高分子量の生体分子(即ち、生体高分子)である。
【0140】
好ましいリガンドおよびターゲット分子の具体的な組合せを以下に列挙する。但し、本発明は、これらの組合せに限定されない。まず、ターゲット分子としてはカルボニックアンハイドラーゼ2(CA2)が挙げられ、これに対応するリガンドとしては、ベンゼンスルホンアミド誘導体、例えば式(L1)で示されるp−カルボキシベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0141】
【化17】

【0142】
また、ターゲット分子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR:Dihydrofolate reductase)が挙げられ、これに対応するリガンドとしては、式(L2)で示されるメトキサレート(抗がん剤、抗リウマチ薬)、またはその誘導体、例えば式(L3)で示される誘導体が挙げられる。
【0143】
【化18】

【0144】
また、ターゲット分子としては、FK506結合タンパク質(例えば、FKBP12)が挙げられ、これに対応するリガンドとしては、式(L4)で示されるFK506(免疫抑制剤)が挙げられる。
【0145】
【化19】

【0146】
また、ターゲット分子としては、redox-related factor(Ref−1)が挙げられ、これに対応するリガンドとしては、式(L5)で示されるE3330(肝炎治療剤)、またはその誘導体、例えば式(L6)で示される化合物が挙げられる。
【0147】
【化20】

【0148】
リガンドがアミノ基に結合し得る官能基(以下「連結基」と略記することがある)を有する場合、リガンドは、その連結基によって、構造単位(1)と直接結合していてもよい。またリガンドは、連結基を有するスペーサーを介して、構造単位(1)と結合していてもよい。ここで「スペーサー」とは、リガンドと構造単位(1)との間に介在する基を形成し得る化合物を意味する。スペーサーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、(i)スペーサーをリガンドと結合させてから、スペーサーが結合したリガンドを、構造単位(1)と結合させてもよく、(ii)スペーサーを構造単位(1)と結合させてから、スペーサーが結合した構造単位(1)を、リガンドと結合させてもよく、(iii)スペーサーをリガンドと結合させ、さらに前記スペーサーと同種または別種のスペーサーを構造単位(1)と結合させて、スペーサーが結合したリガンドを、スペーサーが結合した構造単位(1)と結合させてもよい。
【0149】
連結基としては、アミノ基に結合し得るものであれば、あらゆる官能基を使用することができる。リガンドに存在する連結基は、1種でも2種以上でもよいが、1種であることが好ましい。スペーサーに存在する連結基も、1種でも2種以上でもよいが、1種であることが好ましい。連結基は、好ましくはカルボキシ基、カルボキシ基から誘導される基、またはオキシラニル基(即ち、エポキシ基)であり、より好ましくはカルボキシ基またはカルボキシ基から誘導される基である。なお、以下では「カルボキシ基またはカルボキシ基から誘導される基」を「カルボキシ基等」と略記することがある。
【0150】
「カルボキシ基から誘導される基」とは、エステル化反応などによってカルボキシ基から形成される基であって、アミノ基と反応し得る基を意味する。カルボキシ基から誘導される基としては、例えば、式:RO−CO−(式中、Rは、アリール基またはアルキル基を表す)で示されるアルコキシカルボニル基およびアリールオキシカルボニル基(これらはまとめて「カルボン酸エステル基」と呼ばれることがある)、式:−CO−O−CO−で示されるカルボニルオキシカルボニル基(「酸無水物基」と呼ばれることがある)、並びに式:X−CO−(式中、Xはハロゲン原子を表す)で示されるハロカルボニル基(「酸ハロゲン化物基」と呼ばれることがある)などが挙げられる。なお、式:RO−CO−OR’(式中、RおよびR’、アリール基またはアルキル基を表す)で示される炭酸エステルに含まれるRO−CO−およびR’O−CO−のいずれも、本発明でいうカルボキシ基から誘導される基に含まれる。
【0151】
本発明において、連結基(特に、カルボキシ基等またはオキシラニル基)とアミノ基との反応条件に特に限定は無く、有機合成の分野で周知の反応条件を使用することができる。
【0152】
連結基を有するリガンドを、スペーサーを介して構造単位(1)と結合するためには、例えば、(i)二つのアミノ基を有するスペーサーをリガンドと結合させ、(ii)一方で、二つの連結基を有するスペーサーを構造単位(1)と結合させて、(iii)スペーサーが結合したリガンドと、スペーサーが結合した構造単位(1)とを結合させればよい。
【0153】
二つのアミノ基を有するスペーサー、即ち、ジアミンは、芳香族ジアミン(例えば、p−フェニレンジアミン)または脂肪族ジアミンのいずれでもよく、好ましくは脂肪族ジアミンである。二つの連結基を有するスペーサーとしては、例えば、ジカルボン酸、および二つのオキシラニル基を有するビスオキシランが挙げられる。ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)および脂肪族ジカルボン酸のいずれでもよく、好ましくは脂肪族ジカルボン酸である。ビスオキシランも、芳香環を有する芳香族ビスオキシランであってもよく、芳香環を有さない脂肪族ビスオキシランであってもよい。脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ビスオキシランの炭素骨格は、いずれも、鎖状でも環状でもよく、好ましくは鎖状(即ち、直鎖状または分枝鎖状)であり、より好ましくは直鎖状である。また、これらの炭素骨格において、メチレン鎖(−CH2−)が酸素原子(−O−)で置き換えられていてもよい。例えば、脂肪族ジアミンとしては式(S1)で示される化合物が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては式(S2)で示される化合物が挙げられ、脂肪族ビスオキシランとしては式(S3)で示される化合物が挙げられる。
【0154】
【化21】

【0155】
式(S1)〜式(S3)中、eおよびhは、それぞれ独立に、0〜10の整数、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは2〜6の整数を表し、f、g、iおよびjは、それぞれ独立に、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数を表し、kは、2〜12の整数、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは2〜6を表す。化合物(S1)〜化合物(S3)は、いずれも市販品を使用することができる。
【0156】
また、二つの連結基を有するスペーサーの中では、化合物(S2)が好ましい。化合物(S2)としては、例えば、コハク酸(k=2)、アジピン酸(k=4)、スベリン酸(k=6)、セバシン酸(k=8)、ドデカン二酸(k=10)およびテトラデカン二酸(k=12)などが挙げられる。また、化合物(S2)の代わりに、この酸無水物、例えば無水コハク酸およびアジピン酸無水物などをスペーサーとして使用することができる。
【0157】
化合物(S2)またはその酸無水物と構造単位(1)とを結合させることによって、構造単位(1b)を含むポリビニルエーテル樹脂を製造することができ、この構造単位(1b)とさらにリガンドまたはスペーサーとを結合させることによって、構造単位(1a)を含む本樹脂を製造することができる。
【0158】
【化22】

【0159】
式(1b)中、R1〜R3、m、n、kおよび*は、前記と同じ意味を表す。
構造単位(1b)は、*にて、それ自身と同一の構造単位と結合していてもよく、異なる構造単位と結合していてもよい。
【0160】
【化23】

【0161】
式(1a)中、R1〜R3、m、n、k、*および**は、前記と同じ意味を表す。
構造単位(1a)は、*にて、それ自身と同一の構造単位と結合していてもよく、異なる構造単位と結合していてもよい。
【0162】
ジアミンを使用して、連結基を有するリガンドと構造単位(1)とを結合する際には、(i)まずジアミンの一つのアミノ基を保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル基)で保護し、(ii)遊離アミノ基および保護アミノ基を有するジアミンを、リガンドと結合させ、(iii)次いで保護アミノ基を脱保護することが好ましい。なお、アミノ基の保護および脱保護は、例えば、Protective Groups in Orgnic Chemistry (Greene et al., John Wiley & Sons, Inc.) 等に記載されているような公知の技術を使用すればよい。また、市販の遊離アミノ基および保護アミノ基を有するジアミンを使用してもよい。
【0163】
連結基を有するリガンドと構造単位(1)とを結合するためには、例えば、連結基およびアミノ基の両方を有するスペーサーを使用してもよい。このようなスペーサーとしては、カルボキシ基およびアミノ基を有する化合物(以下「カルボキシ基−アミノ基含有化合物」と略記する)が好ましい。カルボキシ基−アミノ基含有化合物は、芳香族化合物でも脂肪族化合物でもよい。この脂肪族化合物の炭化水素骨格は、鎖状でも環状でもよく、好ましくは鎖状(即ち、直鎖状または分枝鎖状)であり、より好ましくは直鎖状である。また、この炭素骨格において、メチレン鎖(−CH2−)が酸素原子(−O−)で置き換えられていてもよい。カルボキシ基−アミノ基含有化合物としては、例えば、式(S4)または式(S5)で示される化合物が挙げられる。
【0164】
【化24】

【0165】
式(S4)中、wは、それぞれ独立に、0〜30の整数、好ましくは2〜28の整数、より好ましくは2〜26の整数を表し、xおよびyは、それぞれ独立に、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数を表す。
式(S5)中、uは、2〜12の整数、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは2〜6を表す。化合物(S4)および化合物(S5)は、いずれも市販品を使用することができる。
【0166】
カルボキシ基−アミノ基含有化合物を使用して、連結基を有するリガンドと構造単位(1)とを結合する際には、(i)カルボキシ基−アミノ基含有化合物のアミノ基を保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル基)で保護し、(ii)得られたカルボキシ基−保護アミノ基含有化合物を構造単位(1)と結合させ、(iii)保護アミノ基を脱保護することが好ましい。なお、アミノ基の保護および脱保護は、例えば、Protective Groups in Orgnic Chemistry (Greene et al., John Wiley & Sons, Inc.) 等に記載されているような公知の技術を使用すればよい。また、市販のカルボキシ基−保護アミノ基含有化合物を使用してもよい。
【0167】
連結基を有するリガンドと構造単位(1)とを結合させるために、カルボキシ基−アミノ基含有化合物の代わりに、これらが環化することによって得られるラクタム(即ち、環内アミドを有する化合物)を使用してもよい。或いは、カルボキシ基−アミノ基含有化合物の代わりに、アミド部分(−CO−NR19−)と酸無水物部分(−CO−O−CO−)とを併せ持つ環状化合物、例えば式(S6)で示される化合物を使用してもよい。
【0168】
【化25】

【0169】
式(S6)中、R18は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R19は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環基を表し、R18とR19とが結合して環を形成していてもよい。R18がメチレン基であり、R19が水素原子であることが好ましい。化合物(S6)は、特開2010−260832号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0170】
化合物(S6)の具体例を、下記(1)〜(6)に列挙する:
(1)アラニン−N−カルボキシ無水物、β−アラニン−N−カルボキシ無水物、2−アミノブチル酸−N−カルボキシ無水物、4−アミノブチル酸−N−カルボキシ無水物、6−アミノカプロン酸−N−カルボキシ無水物、α−アミノイソブチル酸−N−カルボキシ無水物、グリシン−N−カルボキシ無水物、4−クロロフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、シクロヘキシルアラニン−N−カルボキシ無水物、シスチン−N、N’−ビス(カルボキシ無水物)、3,4−デヒドロプロリン−N−カルボキシ無水物、2−フルオロフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、3−フルオロフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、4−フルオロフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、2−ピリジルアラニン−N−カルボキシ無水物、3−ピリジルアラニン−N−カルボキシ無水物、4−ピリジルアラニン−N−カルボキシ無水物、1−ナフタレニルアラニン−N−カルボキシ無水物、2−ナフタレニルアラニン−N−カルボキシ無水物、イソロイシン−N−カルボキシ無水物、tert−ロイシン−N−カルボキシ無水物、メチオニン−N−カルボキシ無水物、メチオニンスルホキシド−N−カルボキシ無水物、メチオニンスルホン−N−カルボキシ無水物、4−ニトロフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、ノルロイシン−N−カルボキシ無水物、ノルバリン−N−カルボキシ無水物、フェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、フェニルグリシン−N−カルボキシ無水物、プロリン−N−カルボキシ無水物、サクロシン−N−カルボキシ無水物、β−(2−チエニル)アラニン−N−カルボキシ無水物、バリン−N−カルボキシ無水物、α−メチルフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、ベンゾチアゾールアラニン−N−カルボキシ無水物、N−β−キサントニルアスパラギン−N−カルボキシ無水物、N−β−(3,4,6−トリ−O−アセチル−2−アセチルアミノ−デオキシ−2−β−グルコピラノシル)アスパラギン−N−カルボキシ無水物、N−β−(1−シクロプロピル−1−メチルエチル)アスパラギン−N−カルボキシ無水物、N−β−トリチルアスパラギン−N−カルボキシ無水物、N−γ−キサントニルグルタミン−N−カルボキシ無水物、N−γ−(3,4,6−トリ−O−アセチル−2−アセチルアミノ−デオキシ−2−β−グルコピラノシル)グルタミン−N−カルボキシ無水物、N−γ−(1−シクロプロピル−1−メチルエチル)グルタミン−N−カルボキシ無水物、N−γ−トリチルグルタミン−N−カルボキシ無水物、システイン−N−カルボキシ無水物、ペニシラミン−N−カルボキシ無水物。
【0171】
(2)S−アセトアミドメチルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−tert−ブチルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−tert−ブチルチオシステイン−N−カルボキシ無水物、S−p−メトキシトリチルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−トリチルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−ベンジルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−p−メトキシベンジルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−p−メチルベンジルシステイン−N−カルボキシ無水物、S−アセトアミドメチルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−tert−ブチルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−tert−ブチルチオペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−p−メトキシトリチルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−トリチルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−ベンジルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−p−メトキシベンジルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、S−p−メチルベンジルペニシラミン−N−カルボキシ無水物、3,5−ジヨードチロシン−N−カルボキシ無水物、ホモセリン−N−カルボキシ無水物、ヒドロキシプロリン−N−カルボキシ無水物、β−ヒドロキシバリン−N−カルボキシ無水物、スタチン−N−カルボキシ無水物、セリン−N−カルボキシ無水物、チロシン−N−カルボキシ無水物、トレオニン−N−カルボキシ無水物、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン−N−カルボキシ無水物−アセトアミド、O−トリチルホモセリン−N−カルボキシ無水物、O−tert−ブチルヒドロキシプロリン−N−カルボキシ無水物、O−(2−アセトアミノ−2−デオキシ−3,4,6−トリ−O−アセチル−α−D−ガラクトピラノシル)セリン−N−カルボキシ無水物、O−tert−ブチルセリン−N−カルボキシ無水物、O−メチルセリン−N−カルボキシ無水物、O−ベンジルセリン−N−カルボキシ無水物、O−ベンジルホスホセリン−N−カルボキシ無水物、O−トリチルセリン−N−カルボキシ無水物、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸−N−カルボキシ無水物、O−(2−アセトアミノ−2−デオキシ−3,4,6−トリ−O−アセチル−α−D−ガラクトピラノシル)トレオニン−N−カルボキシ無水物、O−tert−ブチルトレオニン−N−カルボキシ無水物、O−ベンジルトレオニン−N−カルボキシ無水物、O−ベンジルホスホトレオニン−N−カルボキシ無水物、O−トリチルトレオニン−N−カルボキシ無水物、O−(2−ブロモ)ベンジルオキシカルボニルチロシン−N−カルボキシ無水物、O−tert−ブチルチロシン−N−カルボキシ無水物。
【0172】
(3)O−2−クロロトリチルチロシン−N−カルボキシ無水物、O−メチルチロシン−N−カルボキシ無水物、O−ホスホ−チロシン−N−カルボキシ無水物、O−ベンジルホスホチロシン−N−カルボキシ無水物、O−(ビス−ジメチルアミノ−ホスホノ)チロシン−N−カルボキシ無水物、O−ベンジルチロシン−N−カルボキシ無水物、O−2,6−ジクロロベンジルチロシン−N−カルボキシ無水物、ヒスチジン−N−カルボキシ無水物、トリプトファン−N−カルボキシ無水物、N−im−ブトキシカルボニルヒスチジン−N−α−カルボキシ無水物、N−im−トリチルヒスチジン−N−α−カルボキシ無水物、N−im−メチルトリチルヒスチジン−N−α−カルボキシ無水物、N−in−ブトキシカルボニルトリプトファン−N−α−カルボキシ無水物、N−in−トリチルトリプトファン−N−α−カルボキシ無水物、N−in−メチルトリチルトリプトファン−N−α−カルボキシ無水物、N−im−2,4−ジニトロフェニルヒスチジン−N−α−カルボキシ無水物、N−im−トシルヒスチジン−N−α−カルボキシ無水物、N−in−ホルミルトリプトファン−N−α−カルボキシ無水物、リジン−N−α−カルボキシ無水物、リジン−N−ε−カルボキシ無水物、オルニチン−N−α−カルボキシ無水物、オルニチン−N−δ−カルボキシ無水物、O−アミノセリン−N−カルボキシ無水物、ジアミノ酪酸−N−α−カルボキシ無水物、ジアミノ酪酸−N−γ−カルボキシ無水物、N−γ−tert−ブトキシカルボニルジアミノ酪酸−N−α−カルボキシ無水物、N−γ−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルジアミノ酪酸−N−α−カルボキシ無水物、N−γ−4−メチルトリチルジアミノ酪酸−N−α−カルボキシ無水物、N−α−tert−ブトキシカルボニルジアミノ酪酸−N−γ−カルボキシ無水物、N−α−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルジアミノ酪酸−N−γ−カルボキシ無水物、N−α−4−メチルトリチルジアミノ酪酸−N−γ−カルボキシ無水物、ジアミノプロピオン酸−N−β−カルボキシ無水物、ジアミノプロピオン酸−N−β−カルボキシ無水物、N−α−tert−ブトキシカルボニルジアミノプロピオン酸−N−β−カルボキシ無水物、N−α−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルジアミノプロピオン酸−N−β−カルボキシ無水物、N−α−4−メチルトリチルジアミノプロピオン酸−N−β−カルボキシ無水物、N−β−tert−ブトキシカルボニルジアミノプロピオン酸−N−α−カルボキシ無水物。
【0173】
(4)N−β−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルジアミノプロピオン酸−N−α−カルボキシ無水物、N−β−4−メチルトリチルジアミノプロピオン酸−N−α−カルボキシ無水物、0−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)セリン−N−カルボキシ無水物、N−ε−2−クロロベンジルカルボニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−アセチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−アリルオキシカルボニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−tert−ブトキシカルボニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−2,4−ジニトロフェニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)エチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−(9H−フルオレン−9−イル)メトキシカルボニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−7−メトキシクマリン−4−アセチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−メチル−N−ε−tert−ブトキシカルボニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−ジメチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、塩化N−ε−トリメチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−4−メトキシトリチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−4−メチルトリチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−ベンジルオキシカルボニルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−トリフルオロアセチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−ε−トリチルリジン−N−α−カルボキシ無水物、N−α−2−クロロベンジルカルボニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−アセチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−アリルオキシカルボニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−tert−ブトキシカルボニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−2,4−ジニトロフェニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)エチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−(9H−フルオレン−9−イル)メトキシカルボニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−7−メトキシクマリン−4−アセチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物。
【0174】
(5)N−α−メチル−N−α−tert−ブトキシカルボニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−ジメチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、塩化N−α−トリメチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−4−メトキシトリチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−4−メチルトリチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−ベンジルオキシカルボニルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−トリフルオロアセチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−α−トリチルリジン−N−ε−カルボキシ無水物、N−δ−tert−ブトキシカルボニルオルニチン−N−α−カルボキシ無水物、N−δ−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルオルニチン−N−α−カルボキシ無水物、N−δ−メチル−N−δ−tert−ブトキシカルボニルオルニチン−N−α−カルボキシ無水物、N−δ−ベンジルオキシカルボニルオルニチン−N−α−カルボキシ無水物、N−α−tert−ブトキシカルボニルオルニチン−N−δ−カルボキシ無水物、N−α−1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシ−1−イリデン)−3−メチルブチルオルニチン−N−δ−カルボキシ無水物、N−α−メチル−N−α−tert−ブトキシカルボニルオルニチン−N−δ−カルボキシ無水物、N−α−ベンジルオキシカルボニルオルニチン−N−δ−カルボキシ無水物、α−アミノスベリン酸−N−カルボキシ無水物、α−アミノスベリン酸−N−α−カルボキシ無水物−tert−ブチルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−アリルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−ベンジルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−シクロヘキシルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−tert−ブチルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−4−(N−(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシキロヘキシリデン)−3−メチルブチル)−アミノ)ベンジルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−2−フェニルイソプロピルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−3−メチルペンタ−3−イルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−β−アリルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−β−ベンジルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−β−tert−ブチルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−α−tert−ブチルエステル。
【0175】
(6)アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−β−4−(N−(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシキロヘキシリデン)−3−メチルブチル)−アミノ)ベンジルエステル、アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物−β−2−フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−α−アリルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−α−ベンジルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−α−tert−ブチルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−α−4−(N−(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシキロヘキシリデン)−3−メチルブチル)−アミノ)ベンジルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−α−2−フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−3−メチルペンタ−3−イルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−アリルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−ベンジルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−tert−ブチルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−tert−ブチルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−4−(N−(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシキロヘキシリデン)−3−メチルブチル)−アミノ)ベンジルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−2−フェニルイソプロピルエステル、グルタミン酸−N−カルボキシ無水物−γ−2−トリメチルシリルエチルエステル、アルギニン−N−カルボキシ無水物、N−ω,N−ω’−ビス−tert−ブトキシカルボニルアルギニン−N−カルボキシ無水物、N−ω,N−ω’−ビス−ベンジルオキシカルボニルアルギニン−N−カルボキシ無水物、N,N’−ω−ジメチル−N,N’−ω−ジ−tert−ブトキシカルボニルアルギニン−N−カルボキシ無水物、N,N−ω−ジメチル−N−ω’−(2,2,4,6,7−ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル)アルギニン−N−カルボキシ無水物、N−ω−メチル−N−ω’−(2,2,4,6,7−ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル)アルギニン−N−カルボキシ無水物、NG−(2,2,4,6,7−ペンタジメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル)アルギニン−N−カルボキシ無水物、NG−(2,2,5,7,8−ペンタジメチルクロマン−5−スルホニル)アルギニン−N−カルボキシ無水物、NG−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル)アルギニン−N−カルボキシ無水物、NG−トシルアルギニン−N−カルボキシ無水物。
【0176】
リガンドが連結基を有さないが、アミノ基を有する場合、上述したような二つの連結基を有するスペーサーを使用して、このリガンドと構造単位(1)とを結合させればよい。また、リガンドが連結基を有さないが、ヒドロキシ基を有する場合には、このリガンドと、式:COCl2で示されるホスゲンまたは式:CO(OCCl32で示されるトリホスゲンとを反応させて、炭酸エステルを製造すればよい。この炭酸エステルは、連結基であるカルボン酸エステル基を有するリガンドに相当し、これは、上述のようにして構造単位(1)と結合させることができる。ヒドロキシ基含有化合物とホスゲンまたはトリホスゲンとの反応は、有機合成の分野で周知の装置および条件で行うことができる。
【0177】
本発明は、本樹脂にターゲット分子を含む混合物を接触させる工程を含むターゲット分子の精製方法を提供する。該方法では、詳しくは、(i)本樹脂にターゲット分子を含む混合物を接触させることで、リガンドとターゲット分子との特異的な相互作用によって、混合物からターゲット分子のみを本樹脂を吸着させ、(ii)ターゲット分子を吸着した本樹脂と前記混合物とを分離し、(iii)本樹脂からターゲット分子を脱着させることによって、ターゲット分子を精製させることができる。
【0178】
本樹脂と、ターゲット分子を含む混合物とを接触させる方法に特に限定は無く、精製方法で通常使用されている方法を使用することができる。接触方法としては、例えば、溶媒中で本樹脂と混合物とを分散および混合させる方法(バッチ法)、または混合物を溶媒に溶かして溶液を調製し、本樹脂を充填したカラムに前記溶液を通過させる方法(カラム法)のいずれを使用してもよい。バッチ法およびカラム法において、溶媒の種類、分散および混合の手段、温度および時間、カラムに溶液を通過させる手段、通過させる溶液の量および流束、通過させる溶液およびカラムの温度、通過時間などの条件は、目的のターゲット分子に応じて、精製方法で通常採用されている条件を採用すればよい。また、本樹脂からターゲット分子を脱着させる手段および条件にも特に限定は無く、目的のターゲット分子に応じて、精製方法で通常採用されている手段および条件を採用すればよい。
【0179】
本樹脂は、ターゲット分子の精製方法だけでなく、ターゲット分子のスクリーニング方法およびターゲット分子の測定方法にも使用することができる。
【0180】
リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子をスクリーニングする方法としては、例えば、
(i)ターゲット分子を含むかまたは含まない試料を、本樹脂に接触させる工程(以下「接触工程(i)」と略記する)、
(ii)リガンドに特異的な相互作用を示したか、または示さなかった分子を解析する工程(以下「解析工程(ii)」と略記する)、および
(iii)解析結果に基づいて、リガンドに対して特異的な相互作用を有する分子を、ターゲット分子であると同定する工程(以下「同定工程(iii)」と略記する)
を含む方法が挙げられる。
【0181】
リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を測定する方法としては、例えば
(iv)ターゲット分子を含むかまたは含まない試料を、本樹脂に接触させる工程(以下「接触工程(iv)」と略記する)、
(v)リガンドに特異的な相互作用を示したか、または示さなかった分子を解析する工程(以下「解析工程(v)」と略記する)、および
(vi)解析結果に基づいて、リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を測定する工程(以下「測定工程(vi)」と略記する)
を含む方法が挙げられる。
【0182】
前記スクリーニング方法および測定方法における接触工程(i)および(iv)における接触方法は、上述した精製方法と同じ方法を採用することができる。解析工程(ii)および(v)における解析手段としては、公知の手段、例えば、電気泳動法、免疫学的反応を用いたイムノブロッティングおよび免疫沈降法、クロマトグラフィー、マススペクトラム、アミノ酸シーケンス、NMR、並びにこれらの組合せを採用することができる。解析工程(ii)および(v)は、自動化してもよい。次に、これらの解析結果に基づき、同定工程(iii)および測定工程(vi)が行われる。一般に「同定」とは、単離した目的物が何であるかを明らかにすることを意味し、上記スクリーニング方法における「同定」とは、リガンドとの特異的な相互作用によって思料から単離した分子がターゲット分子であると判断することを意味する。また、上記測定方法における「測定」とは、試料中のターゲット分子およびその他の分子の量、性状の変化等を調べることを意味する。上記スクリーニング方法の用途としては、医薬の開発等が挙げられる。また、上記測定方法の用途としては、例えば、癌マーカーの検出等が挙げられる。
【0183】
本発明の精製方法は、ターゲット分子(特に生体分子)を特異的に精製することができる。そのため、本発明の精製方法は、医薬およびバイオ関連の分野で有用である。
【実施例】
【0184】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0185】
また、実施例で使用する略号の意味は、以下の通りである。
Ac:アセチル基
Boc:tert−ブトキシカルボニル基
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Et:エチル基
HATU:1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イウム3−オキシド ヘキサフルオロホスファート
HCl:塩酸
i−Pr:イソプロピル基
Me:メチル基
Tris:トリスヒドロキシメチルアミノメタン
【0186】
製造例1:保護アミノ基を有する誘導体(1m−1)の製造
(1)N−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル]フタルイミドの製造
2−(2−ビニルオキシエトキシ)エタノール(2.5g)、フタルイミド(3.1g)およびトリフェニルホスフィン(5.5g)を含むテトラヒドロフラン溶液(30mL)に、40質量%のアゾジカルボン酸ジイソプロピルのトルエン溶液(10.8mL)を室温で滴下した。得られた混合物を室温で2時間攪拌し、混合物を得た。混合物の一部を分取薄層クロマトグラフィーに供し、生成物の構造をNMRにより確認したところ、生成物は、標題化合物であることが分かった。
1H-NMR(CDCl3, 270MHz) δ7.85(dd, J=3.1, 5.6Hz, 2H), 7.71(dd, J=3.3, 5.6Hz, 2H), 6.39(dd, J=6.8, 14.3Hz, 1H), 4.12(dd, J=2.1, 14.3Hz, 1H), 3.70-3.94(m, 9H)
【0187】
(2)2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミンの製造
上記(1)で得られたN−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル]フタルイミドを含む混合物に、40質量%のメチルアミンのメタノール溶液(3mL)を室温で滴下した。得られた混合物を60℃で3時間攪拌した後、室温で放冷した。析出したN−メチルフタルイミドを濾過により除去した後、ろ液を濃縮した。濃縮残渣をクロロホルムに溶解して得られた溶液を、シリカゲルカラムにチャージし、クロロホルムで用いた混合物中のトリフェニルホスフィンオキサイドを溶出させた後、クロロホルム/メタノール(1/1、体積比)溶液で目的物を溶出させた。得られた溶液を濃縮し、標題化合物(1.5g)を得た。
収率:60%(2−(2−ビニルオキシエトキシ)エタノール基準)
ESI(+)-MS:132 [M+H+ calcd. for C6H14NO2: 132.10]
【0188】
(3)N−tert−ブトキシカルボニル−2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミンの製造
上記(2)で得られた2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミン(1.5g)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)に、二炭酸ジ−tert−ブチル(4.5g)を室温で加えた。得られた混合物を室温で3時間攪拌した。得られた反応混合物を濃縮した後、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1、体積比)により精製し、標題化合物(2.64g)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 270MHz)δ6.50(dd, J=6.9, 14.3Hz, 1H), 4.96(br. s,1H), 4.21(dd, J=2.1, 14.3Hz, 1H), 4.03(dd, J=2.1, 6.8Hz, 1H), 3.84(d, J=6.4Hz, 1H), 3.83(d, J=4.8Hz, 1H), 3.71(d, J=4.8Hz, 1H), 3.69(d, J=6.4Hz, 1H), 3.56(t, J=5.3Hz, 2H), 3.33(q, J=5.03, 2H), 1.45(s,9H)
【0189】
製造例2:ポリビニルエーテル樹脂の製造
(1)樹脂E1の製造
式(1m−1)で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミン(0.46g)、式(2m−1)で示される2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシエテン(「トリエチレングリコールジビニルエーテル」ともいう)(2.00g)、式(3m−1)で示される2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシメタン(「2−(2−メトキシエトキシ)エトキシエテン」ともいう)(1.16g)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(200mg)を混合し、均一の溶液(有機相)を調製した。2質量%のポリビニルアルコール(重合度(構造単位数):2000、鹸化度:約80%)水溶液(水相)を、マグネチックスターラーによって攪拌速度200rpmで攪拌しながら、調製した有機相を加えた。得られた混合物を、室温(約23℃)で、さらに30分間攪拌し、有機相の分散滴が水相中に分散した分散液を得た。分散液の内温を70℃まで徐々に上げ、70℃で20時間分散液を攪拌した。その後、得られた反応混合物の内温を室温まで下げた後、攪拌を停止し、得られた懸濁液をろ過した。得られた固体を、温水(200mL)およびメタノール(200mL)で洗浄した後、減圧乾燥して、N−tert−ブトキシカルボニル−2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミン、2−[2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシエテンおよび2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシメタンに由来する構造単位を含むポリビニルエーテル樹脂(2.0g)を得た。得られたポリビニルエーテル樹脂を、樹脂E1と略記する。
【0190】
【化26】

【0191】
(2)樹脂E2の製造(保護アミノ基の脱保護)
樹脂E1(30mg)に、トリフルオロ酢酸を含む水溶液(0.5mL、トリフルオロ酢酸/水=80/20、質量比)を加え、得られた混合物を15分間、室温で攪拌した。得られた反応混合物をろ過し、得られた固体をメタノール(5mL)で洗浄し、さらに飽和重曹水(10mL)で洗浄した。さらに、水(10mL)およびメタノール(10mL)で洗浄した後、減圧乾燥して、顆粒状のポリビニルエーテル樹脂(25mg)を得た。得られたポリビニルエーテル樹脂を、樹脂E2と略記する。次いで樹脂E2にアセトニトリルを加えて、樹脂E2をアセトニトリルで膨潤させた粒状物として保存した。
【0192】
樹脂E2(10mg)、ニンヒドリン(10mg)およびメタノール(0.1mL)を、1.5mLマイクロチューブ内で混合した。マイクロチューブを80℃で15分間加熱し、発色試験を行ったところ、内容物の色が青色に変化した。なお、樹脂E1を用いて同様に発色試験を行っても、内容物の色は青色に変化しなかった。これらの結果から、樹脂E1中のN−tert−ブトキシカルボニル−2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミンに由来する構造単位が、樹脂E2では、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアミンに由来する構造単位に変換されていたことが分かる。
【0193】
製造例3:スペーサーと結合したリガンドの製造
【0194】
【化27】

【0195】
(1)リガンド(L1−1)の製造(リガンド(L1)とスペーサー(S1−1)との結合)
式(L1)で示されるリガンド(p−カルボキシベンゼンスルホンアミド、285mg、1.42mmol)、式(S1−1)で示される化合物(QUANTA BIODESIGN 社製:「Mono-N-t-Boc-amido-dPEG3TM-amine」、500mg、1.56mmol)をDMF(3mL)に溶かし、氷冷下で攪拌した。ジイソプロピルエチルアミン(297μL、1.70mmol)、HATU(渡辺化学工業社製、cat. No.: A01695、648mg、1.70mmol)を加え、氷冷下で3時間攪拌した。クロロホルム(200mL)を加え、有機層を、水(50mL)、飽和食塩水(100mL)にて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、式(L1−1)で示されるリガンド(536mg)を収率77%で得た。
HR MS-ESI(m/z): [M+H]+ calcd(for C22H38O3N3S): 504.2374;found: 504.2374.
1H-NMR(CDCl3)δ 1.41(s, 9H), 1.68(quin, J=6.3Hz, 2H), 1.92(quin, J=5.6Hz, 2H), 3.13(q, J=6.3Hz, 2H), 3.45(t, J=6.3Hz, 2H), 3.48(m, 2H), 3.57(m, 2H), 3.63(m, 2H), 3.66(s, 4H), 3.70(t, J=5.6Hz, 2H), 4.90(br s, 1H), 5.46(br s, 2H), 7.56(br s, 1H), 7.95(m, 4H)
【0196】
(2)リガンド(L1−2)の製造(保護アミノ基の脱保護)
得られたリガンド(L1−1)(419mg、0.86mmol)を、酢酸エチル(30mL)に溶かし、4MのHCl/酢酸エチル(国産化学製、5mL)を加え、室温にて6時間攪拌した。反応完結後、溶媒を留去し、クロロホルム(30mL)を加え、減圧下で溶媒を留去した。この操作を3回繰り返した。真空ポンプにて溶媒を完全に留去し、(L1−2)で示されるリガンドを定量的に得た。
【0197】
製造例4:リガンドが結合したポリビニルエーテル樹脂(本樹脂)の製造
【0198】
【化28】

【0199】
(1)樹脂E3の製造(樹脂E2と無水コハク酸との結合)
アセトニトリルで膨潤した粒状の樹脂E2(190μL、13.68μmol)と、その約10倍容量のDMFとを混合し、遠心分離して、過剰のDMFをデカンテーションによって除去した。この操作を5回繰り返して、樹脂E3に含まれていたアセトニトリルをDMFにて置換した。次に無水コハク酸(2.7mg、27.36μmol)、ジイソプロピルエチルアミン(6.9μL、41.04μmol)を加え、室温にて5時間攪拌した。樹脂をDMFにて洗浄した後にニンヒドリンテストを行って、カルボキシ基を有する樹脂、即ち、樹脂E2に無水コハク酸が結合した樹脂(13.68μmol)が定量的に得られたことを確認した。この樹脂を、樹脂E3と略記する。引き続き、樹脂E3を20質量%の無水酢酸のDMF溶液にて室温で30分間攪拌した後、樹脂E3をDMFで5回洗浄した。
【0200】
(2)樹脂E4の製造(樹脂E3とリガンド(L1−2)との結合)
樹脂E3(7.2μmol)にDMF(1mL)を加え、リガンド(L1−2)(2.85mg、6.48μmol)、エタノールアミン(0.043mg、0.72μmol)、HATU(3mg、7.92μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(3μL、17.28μmol)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMFにて洗浄した後、引き続き20質量%のエタノール水溶液にて洗浄し、樹脂E3にリガンド(L1−2)が結合した樹脂を得た。この樹脂を、樹脂E4と略記する。
【0201】
比較製造例1:比較樹脂C1の製造
製造例4と同様にして、アミノ基を有するAffi-Gel 102Gel(BIO-RAD社製、cat. No.: 153-2401)にリガンド(L1−2)が結合した樹脂を得た。この樹脂を、比較樹脂C1と略記する。なお、Affi-Gel 102Gelはアガロース誘導体であり、モノマー(即ち、ガラクトース)に由来するヒドロキシ基を有する。以下、比較樹脂C1の製造を詳しく説明する。
【0202】
市販の膨潤した Affi-Gel 102Gel(12mL、144μmol)に含まれていた溶媒を、樹脂E3の製造の項で記載したのと同様にして、DMFにて置換した。次に無水コハク酸(28.8mg、288mol)およびジイソプロピルエチルアミン(75μL、432μmol)を加え、室温にて5時間攪拌した。樹脂をDMFにて洗浄した後にニンヒドリンテストを行って、カルボキシ基を有する樹脂(144μmol)が定量的得られたことを確認した。引き続き、この樹脂を20質量%の無水酢酸のDMF溶液にて室温で30分間攪拌し、樹脂をDMFで5回洗浄した。得られたカルボキシ基を有する樹脂(36μmol)にDMF10mLを加え、リガンド(L1−2)(14.3mg、32.4μmol)、エタノールアミン(0.22mg、3.6μmol)、HATU(15mg、39.6μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(15μL、86.4μmol)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMFにて洗浄した後、引き続き20質量%のエタノール水溶液にて洗浄し、比較樹脂C1を得た。
【0203】
比較製造例2:比較樹脂C2の製造
製造例4と同様にして、アミノ基を有すトヨパールAF-Amino-650M(東ソー社製、cat. No.: 08039)にリガンド(L1−2)が結合した樹脂を得た。この樹脂を、比較樹脂C2と略記する。なお、トヨパールAF-Amino-650Mは、モノマーに由来するヒドロキシ基を有するメタクリレート樹脂である。以下、比較樹脂C2の製造を詳しく説明する。
【0204】
市販の膨潤したトヨパールAF-Amino-650M(1mL、100μmol)に含まれていた溶媒を、樹脂E3の製造の項で記載したのと同様にして、DMFにて置換した。次に無水コハク酸(20mg、200μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(51μL、300μmol)を加え、室温にて5時間攪拌した。樹脂をDMFにて洗浄した後ニンヒドリンテストを行って、カルボキシ基を有する樹脂(100μmol)が定量的に得られたことを確認した。引き続き、この樹脂を20質量%の無水酢酸のDMF溶液にて30分間室温で攪拌し、樹脂をDMFで5回洗浄した。得られたカルボキシ基を有する樹脂(10μmol)にDMF1mLを加え、リガンド(L1−2)(4mg、9μmol)、エタノールアミン(0.061mg、1μmol)、HATU(4.2mg、11μmol)およびジイソプロピルエチルアミン(4.2μL、24μmol)を加え、室温にて一昼夜攪拌した。樹脂をDMFにて洗浄した後、引き続き20質量%のエタノール水溶液にて洗浄し、比較樹脂C2を得た。
【0205】
実施例1:カルボニックアンハイドラーゼ2(CA2)の吸着
(1)ラット脳ライゼート(lysate)の調製
マウス全脳(1個、2g)を、20mLのバッファー(Tris:50mM、pH7.5、スクロース:0.25M、MgCl:2mM、NaCl:100mM、1質量%の1−O−n−オクチル−β−D−グルコピラノシド+プロテアーゼインヒビター(proteaseinhibitor))中でホモジナイズした。得られたホモジネートを遠心分離した(回転数:1000×g、10分間)。得られた上清を、さらに遠心分離した(回転数10,000×g、30分間)。こうして得られた上清、即ち、ラット脳ライゼートを、結合実験に使用した。この上清のタンパク質濃度は2.0mg/mLであった。
【0206】
(2)結合実験(拮抗実験)
正確に秤りとった樹脂E4、比較樹脂C1または比較樹脂C2(それぞれ1μmol相当)と上記(1)で得られたラット脳ライゼート(200μL)とを用いて、4℃で90分間、拮抗実験を実施した。拮抗(+)実験では、ライゼートに100mMのベンゼンスルホンアミド(2μL、最終濃度1mM)を加えて4℃にて90分間インキュベーションした後、樹脂を混ぜて、同温度にて90分間インキュベーションした。一方、拮抗(−)実験は、ライゼートにDMSO(2μL)を加えて4℃にて90分間インキュベーションした後、樹脂を混ぜて、同温度にて90分間インキュベーションした。これらの結合実験の終了後、樹脂を12,000×gにて遠心分離し、上清を捨て、残った樹脂を、800μLの洗浄バッファー(Tris:50mM、pH7.5、スクロース:0.25M、MgCl:2mM、NaCl:100mM、1質量%の1−O−n−オクチル−β−D−グルコピラノシド+プロテアーゼインヒビター)にて3回洗浄した。樹脂にSDS用ローディングバッファー(ナカライテスク社製、cat. No.: 30566-22、2−ME(2−メルカプトエタノール)含有電気泳動サンプルバッファー溶液(2×)、30μL)を加え、結合タンパクを溶出した。こうして得られたサンプル液を市販のSDSゲル(タカラバイオ社製、Bio Rad ready Gel J、SDS:5〜20質量%、cat. No.: 161-J371V)で分離し、銀染色後、そのSDSゲルを解析した。SDSゲルの写真を図1に示す。
【0207】
図1に示されるように、樹脂E4を用いる本発明の方法では、比較樹脂C1(Affi-Gel 102Gelをベースとする樹脂)および比較樹脂C2(トヨパールAF-Amino-650Mをベースとする樹脂)を用いる方法に比べて、CA2以外の非特異的タンパク質の吸着量が明らかに低減されている。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明によれば、リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を、より特異的に精製する方法が提供可能である。
【符号の説明】
【0209】
1 比較樹脂C1を用いたCA2の吸着実験
2 比較樹脂C2を用いたCA2の吸着実験
3 樹脂E4を用いたCA2の吸着実験

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドに対して特異的な相互作用を有するターゲット分子を精製する方法であって、
式(1m):
【化1】

[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含み、リガンドが前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂に、ターゲット分子を含む混合物を接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリビニルエーテル樹脂が、さらに、2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物に由来する構造単位を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
2個以上の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、式(2m):
【化2】

[式中、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R4とR5とが結合して環を形成していてもよく、R5とR6とが結合して環を形成していてもよく、R7とR8とが結合して環を形成していてもよく、R8とR9とが結合して環を形成していてもよい。
pは、0以上の整数を表す。
qおよびrは、それぞれ独立に、2以上の整数を表す。]
で示される化合物であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポリビニルエーテル樹脂が、さらに、式(3m):
【化3】

[式中、
10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R10とR11とが結合して環を形成していてもよく、R11とR12とが結合して環を形成していてもよい。
13は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基または置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。
sおよびtは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。但し、R13が水素原子である場合、sおよびtの少なくとも一つは1以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ポリビニルエーテル樹脂が、アミノ基に結合し得る官能基を有するリガンドと、式(1m)で示される化合物に由来する構造単位とが、直接、結合しているポリビニルエーテル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ポリビニルエーテル樹脂が、アミノ基に結合し得る官能基を有するスペーサーを介して、式(1m)で示される化合物に由来する構造単位とリガンドとが結合しているポリビニルエーテル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
アミノ基に結合し得る官能基が、カルボキシ基、カルボキシ基から誘導される基またはオキシラニル基であることを特徴とする請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
ポリビニルエーテル樹脂が、式(1a):
【化4】

[式中、
1〜R3、mおよびnは、前記と同じ意味を表す。
kは、2〜12の整数を表す。
*は、他の構造単位との結合部を表す。
**は、リガンドまたはスペーサーとの結合部を表す。]
で示される構造単位を含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
ターゲット分子が、生体分子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
式(1m):
【化5】

[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含み、
ターゲット分子に対して特異的な相互作用を有するリガンドが、前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂であることを特徴とするターゲット分子吸着剤。
【請求項11】
式(1m):
【化6】

[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。]
で示される化合物に由来する構造単位を含み、
ターゲット分子に対して特異的な相互作用を有するリガンドが、前記構造単位と結合しているポリビニルエーテル樹脂の、ターゲット分子を精製するための使用。
【請求項12】
式(1b):
【化7】

[式中、
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R1とR2とが結合して環を形成していてもよく、R2とR3とが結合して環を形成していてもよい。
mは、0以上の整数を表す。
nは、2以上の整数を表す。
kは、2〜12の整数を表す。
*は、他の構造単位との結合部を表す。]
で示される構造単位を含むことを特徴とするポリビニルエーテル樹脂。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144477(P2012−144477A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3985(P2011−3985)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】