タービンのハニカムシール構造
【課題】ハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張量の違う材料の組み合わせとした場合においても、製作上の信頼性、強度信頼性を損なわずに、ハニカム材の周方向の間隙からシール空気の漏れを防止することができるハニカムシール構造を提供する。
【解決手段】リング形状のダイヤフラム8の内周側に周方向に少なくとも2分割以上の複数個に分割されたハニカム材81を取り付け、さらに、軸方向に少なくとも2分割以上の複数個とし、円周方向に分割された複数のハニカム材の円周方向分割面81aは、隣接する軸方向に分割された複数のハニカム材の円周方向の分割面とずらして配置され、ハニカム材81の円周方向分割面81aの隙間から、圧力の高いシール空気の漏れG3が生じないように取り付ける。
【解決手段】リング形状のダイヤフラム8の内周側に周方向に少なくとも2分割以上の複数個に分割されたハニカム材81を取り付け、さらに、軸方向に少なくとも2分割以上の複数個とし、円周方向に分割された複数のハニカム材の円周方向分割面81aは、隣接する軸方向に分割された複数のハニカム材の円周方向の分割面とずらして配置され、ハニカム材81の円周方向分割面81aの隙間から、圧力の高いシール空気の漏れG3が生じないように取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンなどのハニカムシール構造に関し、詳細には、ハニカム材を分割しても分割面のシール性を保つことができ、ハニカム固定部材からハニカム材が脱落しないように配置固定したハニカムシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術の一例として、発電用に利用されているガスタービンのタービン部で使用されているハニカムシールを例として説明する。
【0003】
発電用に利用されるガスタービンのタービン部は、ロータとともに回転する動翼と、ケーシングまたは、シュラウドに固定された静翼を備え、動翼は、ロータに結合されるプラットホームと翼部とからなり、静翼は、翼部とこの翼部の両端に固定された内周エンドウォールおよび外周エンドウォールからなる。内周エンドウォールには、リング構造あるいは、分割された環状のダイヤフラムが固定されている。
【0004】
静翼の翼面と内周エンドウォール、外周エンドウォールは、タービン部を流れる高温ガスの流路を構成し、動翼の翼面とプラットホームもまた、高温ガスの流路を構成している。静翼の内周エンドウォールに固定されているダイヤフラムは、ハニカム固定部材であり、ダイヤフラム内周にハニカム材を固定し、ロータに取り付けられた複数の回転シールフィンとでハニカムシールを構成する。ハニカムシールは、高温ガスが静翼、動翼を通過せずに漏れるのを防止するために、ハニカムシールの上流側と下流側に圧力・流量が調整されたシール空気を流すことによって、高温ガスが静翼、動翼で構成される流路を通過するようにしている。
【0005】
一方、後段側の動翼には、回転シールフィンと分割環状の流路壁から構成されるチップシュラウドが外周端に固定されている。さらに、動翼の外周には、ケーシングに固定され、分割された環状の静止シュラウドにより、ハニカムシールを構成する。この場合、静止シュラウドがハニカム材を固定するハニカム固定部材となる。この静止シュラウドとチップシュラウドとで構成されるハニカムシールによって、高温ガスが静翼、動翼で構成される流路を通過せずにリークするのを防いでいる。ハニカムシールのシール性能が低下することにより、高温ガスの流出量が増加し、ガスタービンの効率の低下に繋がる。
【0006】
動翼や静翼は、製造上の理由、熱変形を吸収するため等の理由によって、周方向に複数個の部分に分割されており、動翼の翼部に固定されているプラットホームや静翼の翼部に固定されている内周エンドウォール、外周エンドウォールも、翼の配列方向に複数個分割されている。静翼内周側に固定されている、ハニカム固定部材であるダイヤフラムもまた、製造上の理由によって、周方向に複数個に分割された円弧状の形状をなしている。
【0007】
ここで、ダイヤフラムについて、図12および、図12のD−D方向から見た図13、E−E方向から見た図14を用いて詳しく説明する。分割されたダイヤフラム50には、分割されたハニカム材51が固定されており、ダイヤフラム50を周方向に連結する場合、ダイヤフラム50の周方向の熱膨張を考慮して周方向分割面52に間隙を確保する必要がある。ダイヤフラム50の周方向の連結部には、プレート状シール部材53が配設されており、周方向分割面52の間隙から軸方向下流に圧力の高いシール空気が流出するのを防いでいる。ダイヤフラム50の周方向の間隙、ダイヤフラム内周に配設されているハニカム材51の周方向の間隙を完全に塞ぐことは困難であり、周方向の間隙を圧力の高いシール空気が軸方向下流側に通過することにより、シール空気の漏れG3が生じ、シール性能が低下する要因となっている。
【0008】
以下に、従来技術として、特許文献1に記載されているハニカム部材を備えたガスタービンの静翼シュラウドについて説明する。特許文献1に記載の静翼シュラウドは、ガスタービンの静翼シュラウドに取り付けるハニカム部材の取り付け構造であり、その目的は、静翼シュラウドの分割面の間隙から、半径方向外側に漏れるシール空気を防止するために、前記ハニカム部材が前記静翼シュラウドの分割面の間隙を塞ぐように周方向にずらして配設されることを特徴としており、ハニカム材の分割面の間隙から軸方向下流側に漏れるシール空気については、防止することができない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−235504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図12〜14で説明した従来技術の例では、ハニカム材を固定するダイヤフラム50の周方向分割面の間には、プレート状シール部材53が取り付けられているが、半径方向外周側及び、軸方向下流側へのシール空気の漏れG3を完全に防止することが困難であり、シール空気の漏れG3を完全に防止するためには、ダイヤフラム50の構造を一体リング構造とすることが望ましい。
【0011】
ダイヤフラム50の構造が分割環状の場合には、静翼に固定された箇所がダイヤフラム50の熱膨張の基点となり、回転軸に対して半径方向の内周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間の隙間が小さくなる。しかしながら、ダイヤフラム50の構造を一体リング構造とした場合には、回転軸に対して半径方向の外周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間に半径方向の隙間が生じることになり、ダイヤフラム50に選定した材料の線膨張係数の違いによって、半径方向に生じる隙間が異なり、ガスタービンの効率に影響を与える。このため、半径方向の隙間を小さくし、ガスタービンの効率を向上させるためには、ダイヤフラムの材料を熱膨張係数の小さい材料(低膨張材料)を選択することが望ましい。
【0012】
また、ハニカム材51の周方向の間隙を完全に塞ぐことは困難であり、周方向の間隙を圧力の高いシール空気が軸方向下流側に通過することにより、シール空気の漏れG3が生じ、シール性が損なわれ、ガスタービンの効率低下に繋がる。
【0013】
ハニカム材51の材料としては、動翼やロータに配設されている複数の回転シールフィンがハニカム材51と接触しても、回転シールフィンが破壊されないように、動翼やロータの材料に比べて、強度の低い材料を選定している。このハニカム材51は、回転シールフィンとハニカム材の間の半径方向ギャップを可能な限り小さくするために、回転シールフィンによって削り取られることを許容し、ハニカム材51を交換することによって元の状態に戻すことができる。コスト上昇を抑えるために、ハニカム材51には高価な材料ではなく、安価な材料を選定することが望ましい。
【0014】
ダイヤフラム50とハニカム材51は、一般的に、Niロウ材を用いたロウ付けにより接合している。Niロウ材は、約1000℃の高温で溶着し、ダイヤフラム50とハニカム材51が接合固定される。ダイヤフラム50とハニカム材51との間で熱収縮量が極端に違う場合、冷却過程において、ダイヤフラム50とハニカム材51との間で過大な熱応力が発生し、ハニカム材51がハニカム固定部材へ固定される際のロウ付け等の接合欠陥が生じ、ロウ付接合部の強度低下に繋がる。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ガスタービン等のハニカムシール構造において、固定側部材であるハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張量の違う材料の組み合わせとした場合においても、製作上の信頼性、強度信頼性を損なわずに、ハニカム材の周方向の間隙からシール空気の漏れを防止することができるタービンのハニカムシール構造を提供することにある。
【0016】
また、製作過程におけるハニカム材とハニカム固定部材との熱収縮の差で生じる熱応力によって、ハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が発生することがなく、ロウ付け部の強度低下を防止し、コスト上昇を伴わずに、ハニカム材の脱落を防止できるハニカムシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成すべく、本発明に係るタービンのハニカムシール構造は、タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、前記複数に分割されたハニカム材は、複数のハニカム材の円周方向の分割面と、隣接する軸方向に分割された複数のハニカム材の円周方向の分割面とをずらして配置すると共に、軸方向に相互に接触させて配置することを特徴としている。
【0018】
前記のごとく構成された本発明のタービンのハニカムシール構造は、ハニカム固定部材にハニカム材を取り付ける場合に、ハニカム材を円周方向及び、軸方向に少なくとも2分割とし、ハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張係数の違う材料の組み合わせでロウ付け等により接合した場合においても、製作時、ハニカム固定部材とハニカム材との熱収縮量の差で生じる熱応力を軽減することができ、ハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が生じることによる接合部の強度低下を防止し、製作上の信頼性、強度信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るハニカムシール構造によれば、ハニカム固定部材に、周方向及び軸方向に少なくとも2分割としたハニカム材の配置を、ハニカム材の周方向分割面の隙間を塞ぐように、円周方向の位相をずらして取り付けることにより、ハニカム材の周方向分割面の隙間から、軸方向下流側に圧力の高いシール空気が流出することを防止することができる。この結果、シール空気の漏れを防止してシール性能を向上させることができ、ガスタービンエンジンに用いると効率を向上させることができる。
【0020】
本発明に係るタービンのハニカムシール構造の他の態様としては、タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、前記固定側部材は、その内周部に円周状のリブを突出形成してあり、前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、前記軸方向に分割されたハニカム部材の分割面を、前記リブに接触させて配置することを特徴としている。
【0021】
このように構成された本発明のタービンのハニカムシール構造によれば、ハニカム固定部材の内周に、リブを設けて、軸方向に分割されたハニカム材をそれぞれ、軸方向上流側、下流側にハニカム固定部材のリブを挟み込むように隙間なく、配置することにより、周方向分割面の隙間から流入する圧力の高いシール空気が軸方向下流側に流出することを防止できる。このように、ハニカム固定部材の内周にリブがあれば、円周方向に分割されたハニカム材の配置の位相が同じでも、シール空気の流出を防止できる。また、ハニカム固定部材とハニカム材との熱収縮量の差で生じる熱応力を軽減することができ、製作上の信頼性、強度信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係るタービンのハニカムシール構造の好ましい具体的な態様としては、前記回転シールフィンは、複数のリング状のフィンを所定の間隔で平行に立ち上げて形成してあり、前記回転シールフィンの回転や熱膨張により前記フィンが固定側の前記ハニカム部材に接近したとき、該回転シールフィンと前記ハニカム材の軸方向分割面の接触面あるいは前記円周状のリブとの接触を防止するべく、前記間隔が設定されていることを特徴としている。
【0023】
このように構成されたタービンのハニカムシール構造によれば、ガスタービンの起動、停止に伴うロータの軸移動によって、1枚のフィンがハニカム材と接触し、削り取りながら移動した場合にも、ハニカム材が削り取られた軸方向分割面の接触面あるいは円周状のリブと周方向分割面からなるリーク経路が形成されることがなく、圧力の高いシール空気が前記リーク経路を通って下流側に流出してシール性能が低下することを防止できる。すなわち、ガスタービンの起動、停止に伴うロータの軸移動が発生しても、1枚のフィンがハニカム材の軸方向分割面の接触面やリブを跨がないような適切なフィン同士の間隔が設定されているため、ハニカムシール構造のシール性能が低下することなく、タービンの効率低下を防止することができる。
【0024】
さらに、本発明に係るタービンのハニカムシール構造の好ましい具体的な他の態様としては、前記固定側部材は、低膨張材より形成されることを特徴としている。具体的には、低膨張材としては、例えば、500℃における熱膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼の熱膨張係数の55%以下であることが好ましい。500℃における熱膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼の55%以下の材料とは、具体的には、10×10−6[mm/mm℃]以下の熱膨張係数を有する材料である。
【0025】
このように構成されたタービンのハニカムシール構造によれば、例えば、固定側部材を構成するハニカム固定部材に、低膨張材として、500℃における熱膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼の55%以下の材料を用いた場合に、ハニカム固定部材と回転シールフィンとの間の半径方向の隙間を小さくできるため、ガスタービン効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上に説明したように、本発明に係るタービンのハニカムシール構造によれば、ハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張量の違う材料の組み合わせとした場合においても、製作過程におけるハニカム材とハニカム固定部材との熱収縮の差で生じる熱応力によって、ハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が発生することによるロウ付け部の強度低下を防止し、コスト上昇を抑えて信頼性を向上させることができる。また、シール空気の漏れを防止して、タービンの効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係るタービンのハニカムシール構造の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るハニカムシール構造をガスタービンエンジンに用いた要部断面図、図2は、図1のタービン部の要部拡大断面図、図3は、図1,2で用いられる固定側部材を構成するハニカム固定部材の斜視図である。なお、以下の実施の形態によって、これら本願の発明が限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態であるタービンのハニカムシール構造を説明するための一例として、ガスタービン1の全体構成を示す要部断面図であり、図1は中心線から半分の断面を示している。このガスタービン1は、導入された空気を圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2で圧縮された空気と燃料を噴射して燃焼させ、高温ガスを作り出す燃焼器3と、燃焼器3で作られた高温ガスによって回転動力を発生させるタービン4から構成される。また、タービン4は、圧縮機2の途中から圧縮空気の一部を抽気し、この抽気した圧縮空気を、タービン4を構成する動翼6、静翼7の冷却に使用し、ダイヤフラム8、静止シュラウド9のシール空気として使用する。
【0029】
図2にタービン4の詳細な断面図を示す。静翼7の内周には、ダイヤフラム8が固定されており、このダイヤフラム8の内周にハニカム材81が回転軸周りに複数個接合されている。ハニカムシールは、ダイヤフラム8をハニカム固定部材として、ハニカム材81とロータ5に取り付けられた回転シールフィン82によって構成される。ダイヤフラム8は、動翼6と静翼7で構成される流路から、高温ガスG1が漏れ込まないように、圧力・流量を調整されたシール空気G3を流している。
【0030】
「圧力・流量が調整されたシール空気」とは、高温ガスG1が動翼・静翼を通過することによって、高温ガスのエネルギーが動翼6の回転力に変換され、温度、圧力が低下するため、ハニカムシールの上流側と下流側では、空気を漏らす量が異なる。ハニカムシールの周方向の分割面を通過して下流側に漏れた場合には、上流側のシール空気G3が不足し、高温ガスの漏れG2が発生する恐れがあるため、シール空気量を必要以上に増やしているが、シール空気が想定以上に高温ガスに漏れ込んだ場合には、高温ガスG1の温度が低下し、ガスタービンの性能の低下に繋がる。圧力の高いシール空気G3が下流側に漏れ込み、高温ガスに混入した場合にも同様に高温ガスの温度が低下し、ガスタービンの性能の低下に繋がる。
【0031】
図3〜5に本発明にかかるハニカムシール構造の実施の形態を示す。図3はハニカム固定部材であるダイヤフラムにハニカム材を固定した状態の第1の実施形態の斜視図、図4(a)は図3のA−A線に沿う要部矢視図、図4(b)は図3のB−B線に沿う要部矢視図、図5は第2の実施形態の要部矢視図である。なお、図4,5で示されるハニカム材は網目状に略記されているが、詳細には蜂の巣状、すなわち多数の六角形が連続した形状である。
【0032】
ハニカムシール構造は、リング形状のダイヤフラム8の内周側に周方向に、少なくとも2分割以上の複数個に分割されたハニカム材81を取り付け、さらに、ハニカム材81を軸方向に少なくとも2分割とし、周方向分割面81aの隙間を塞ぐように、周方向の位相をずらして取り付ける。詳しくは、図3のA−A方向から見た図4(a)、B−B方向から見た図4(b)に示すように、軸方向に2分割されたハニカム材81の上流側の周方向分割面81aと下流側の周方向分割面81aとを相互に接触させ周方向の位相をずらして配置し、ハニカム材81の周方向分割面81aの隙間から、圧力の高いシール空気の漏れG3が生じないように取り付けたものである。すなわち、シール空気の漏れG3は、軸方向に隣接するハニカム材に阻まれて次の周方向分割面81aに流れることはできない。軸方向に分割されたハニカム材の軸方向分割面は、ロウ付け等により隙間ができないように固定され、シール空気の漏れを確実に阻止することができる。
【0033】
また、本発明の他の実施形態として、図5に示すように、ダイヤフラム8の内周面から円周状のリブ83を一体的に平行に突出形成し、軸方向に分割されたハニカム材の分割面をリブ83に接触させて隙間なく配置する。ハニカム材81は、円周方向分割面81aを流れるシール空気G3が軸方向分割面81bでリブ83に突き当たり、次の軸方向分割面に流れることができず、シール空気の漏れG3が生じない。すなわち、ハニカム材81の円周方向分割面81aと軸方向分割面81bが繋がった場合には、圧力の高いシール空気の漏れG3が生じ、シール性能が低下し、ガスタービンの効率低下に繋がるため、軸方向に分割したハニカム材81をそれぞれ、軸方向上流側、下流側にダイヤフラム8に設けられたリブ83を挟み込むように隙間なく、取り付けることにより、圧力の高いシール空気が流出することを防止している。
【0034】
図6に、ハニカム材81の周方向分割数とガスタービン効率低下率の関係を示す。また、図7には、本発明の実施形態と比較するために、製作上の理由から、ハニカム材81を周方向にのみ複数個分割した構造の比較例の斜視図、図8は、図7のC−C線に沿う断面の構造を示す。図7,8に示すように、一体リング構造のダイヤフラム8とハニカム材81は、ロウ付けにより固定されるため、ハニカム材81を周方向にのみ複数個分割した場合には、周方向分割面81aの隙間を完全に塞ぐことが困難であり、周方向分割面81aの隙間から圧力の高いシール空気の漏れG3が生じる。
【0035】
このシール空気の漏れG3は、ハニカム材の分割数により増加し、図6に示すように、図7,8の構造のガスタービン効率低下率11は、ハニカム材81を周方向に分割する分割数を増やすことによってシール空気の漏れG3が増加するため、シール性が損なわれ、ガスタービン効率の低下に繋がる。本発明のガスタービン効率低下率10は、ハニカム材81を周方向に分割する分割数を増やしても、周方向分割面の位相をずらした第1の実施形態や、ダイヤフラムに突出形成した円周状のリブに分割されたハニカム材を接触させて配置する第2の実施形態のように、シール空気の漏れG3が生じないため、シール性が損なわれることはない。本発明のハニカムシール構造を適用することにより、ハニカム材81を周方向に複数個分割しても、ガスタービン効率の低下を防止することができる。
【0036】
本発明のハニカムシール構造では、ハニカム材81を周方向及び、軸方向に少なくとも2分割とする構造のため、製作上や組立の都合上、1枚のハニカム材81がダイヤフラム8の周方向の分割面を跨いで取り付けることが困難であり、ダイヤフラム8は、一体リング構造、もしくは、最小限の分割数とすることが望ましい。ダイヤフラム8の構造が分割環状の場合には、静翼に固定された箇所がダイヤフラム8の熱膨張の基点となり、回転軸に対して半径方向の内周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間の隙間が小さくなるため、回転シールフィンとの間の間隙設計が可能であったが、一体リング形状のダイヤフラム8の場合、回転軸に対して半径方向の外周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間に半径方向の隙間が生じることになり、図9に示すように、ダイヤフラム8に選定した材料の線膨張係数の違いによって、半径方向に生じる隙間が異なり、ガスタービンの効率に影響を与える。このため、半径方向の隙間を小さくし、ガスタービンの効率を向上させるためには、ダイヤフラム8の材料を熱膨張量の小さい材料(低膨張材料13)を選択することが望ましい。なお、図9は、ハニカム材の線膨張係数を1とした場合の、ハニカム固定部材の線膨張係数と、ガスタービンの効率向上値との関係を示している。
【0037】
本実施形態では、ダイヤフラム8の材料を低膨張材、例えばオーステナイト系ステンレス鋼12の熱膨張係数の55%以下とすることにより、ガスタービンの効率を相対値で0.2から0.6%向上させることが可能である。前記した低膨張材の熱膨張係数は、具体的には、10×10−6[mm/mm℃]以下であることが好ましい。低膨張材13として、航空機材料として使用されるNi−Fe合金である、INCOLOY(インコロイ)等を用いると最適である。
【0038】
また、ハニカム材の材料としては、動翼やロータに配設されている回転シールフィンがハニカム材と接触しても、回転シールフィンが破壊されないように、ハニカム材は、動翼やロータの材料に比べて、強度の低い材料を選定している。このハニカム材は、回転シールフィンとハニカム材の間の半径方向ギャップを可能な限り小さくするために、回転シールフィンによって削り取られることを許容し、ハニカム材を交換することによって元の状態に戻すことができる。コスト上昇を抑えるために、ハニカム材には高価な材料ではなく、安価な材料(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼12など)を選定することが望ましい。
【0039】
ダイヤフラム8とハニカム材81は、一般的に、Niロウ材を用いたロウ付けにより接合している。Niロウ材は、約1000℃の高温で溶着し、ダイヤフラム8とハニカム材81が接合固定される。例えば、ダイヤフラム8の材料のみに低膨張材料を使用した場合など、ダイヤフラム8とハニカム材81との間で熱収縮量の違いが生じる場合には、冷却過程で過大な熱応力が発生し、ハニカム材81がハニカム固定部材へ固定される際のロウ付け等の接合欠陥が生じ、ロウ付接合部の強度低下に繋がる。
【0040】
このため、ハニカム材を周方向に複数個に分割し、周方向に隙間を設けることにより、製作過程で生じる熱応力を緩和することができ、製作時に起こるハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が生じることによるロウ付部の強度低下を防止し、製作上の信頼性、強度信頼性を確保することができる。そして、第1の実施形態のように、複数のハニカム材の周方向分割面の位相をずらして配置することにより、また第2の実施形態のように、ハニカム部材の分割面をリブに接触させて配置することにより、シール空気の漏れを防止して、タービンの効率を向上させることができる。
【0041】
つぎに、本発明の第3の実施形態について、図10,11を参照して説明する。図10において、固定側部材でありハニカム固定部材であるリング状のダイヤフラム8にはハニカム材81が溶着等により固定されている。ハニカム材81は前記の実施形態と同様に、円周方向に複数に分割されると共に、軸方向にも複数に分割されている。ダイヤフラム8には、その内周部に円周状のリブ83が突出形成されている。そして、軸方向に分割されたハニカム材81,81がリブ83に接触した状態で固定されている。
【0042】
一方、ハニカムシール構造の他方を構成する回転側部材として回転シールフィン82は、リング状のダイヤフラム8の内周に所定の間隙を有して対向している。回転シールフィン82には複数のリング状のフィン82aが所定の間隔85aを有して平行に立ち上げて形成されている。フィン82aはハニカム材に向けて先細となるように形成されている。図示の例では、回転シールフィン82は複数のロータ5に挟まれたディスクの外周側に一体的に形成されているが、ディスクの外周部に別体の回転シールフィンを固定するように構成してもよい。なお、図10,11では、軸方向に分割されたハニカム材をリブ83に接触させて配置した第2の実施形態について説明するものであるが、リブがなく、軸方向に分割されたハニカム材を、周方向分割面をずらして配置する第1の実施形態の構成でもよい。この場合は、リブ83の代わりは、ハニカム材が相互に接触する軸方向分割面81bとなる。
【0043】
図10は、ガスタービンの起動、停止に伴う回転シールフィン82の軸移動の動作状態を示している。ガスタービンの起動、停止に伴うロータの軸移動によって、1枚あるいは複数枚のフィン82aがハニカム材81と接触し、ハニカム材81を削り取りながら軸方向分割面81bあるいはリブ82を跨いで移動した場合には、ハニカム材が削り取られた部分と周方向分割面からなるリーク経路が形成され、圧力の高いシール空気が前記リーク経路を通って下流側に流出し、シール性が損なわれ、ガスタービンの効率低下に繋がる。このため、ガスタービンの起動、停止に伴うようなロータの軸移動によっても、1枚のフィン82aがハニカム材81の軸方向分割面81bあるいはリブ83を跨がないように、適切な回転シールフィンの82aどうしの間隔85aを設ける必要がある。この実施形態では、前記の間隔85aは、ガスタービンの起動、停止時に回転シールフィンの軸移動が発生しても、回転シールフィン82と円周状のリブ83とが接触しないような間隔に設定されている。
【0044】
本実施形態では、ハニカム材81を軸方向2分割として説明しており、図11に示すハニカムシール構造のように、シール性能の向上を目的として、リブ83あるいは軸方向分割面81bを跨ぐ可能性のある回転シールフィン82の間隔85bのみを拡大し、その他の回転シールフィン83の間隔85cを狭めてフィン枚数を増やしてもよい。図11の場合も、ガスタービンの起動、停止時に回転シールフィンの軸移動が発生しても、回転シールフィン82と円周状のリブ83とが接触しない。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、軸方向に複数に分割される例として、軸方向に2つに分割される例を示したが、軸方向に3つ以上に分割されるように構成してもよいのは勿論である。
【0046】
また、ハニカム材を固定する固定部材であるダイヤフラムは、内周側にロータが位置するリング状であれば、例えば円筒状や、内周に段差面のあるリング状でもよい。この場合は、内周の段差面のそれぞれに、ハニカム材を固定して高温ガスの漏れやシール空気の漏洩を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ガスタービンなどのハニカムシール部のリークを低減するための構造に利用できる。また、本発明の活用例として、蒸気タービンの固定側部材と回転側部材との間のリークを低減するハニカムシール構造の用途にも適用できる。また、本発明は航空機用のガスタービンエンジンにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るタービンのハニカムシール構造を用いたガスタービンの概略構成を示す要部断面図。
【図2】図1のガスタービンの要部拡大断面図。
【図3】図1,2のハニカムシール構造で用いるハニカム材を固定したダイヤフラムの斜視図。
【図4】(a)は図3のA−A線に沿う要部矢視図、(b)は図3のB−B線に沿う要部矢視図。
【図5】本発明の他の実施形態の要部矢視図。
【図6】ハニカム材の分割数とガスタービン効率の低下量を説明する図。
【図7】ハニカム材を周方向のみ分割した比較例のハニカム材を固定したダイヤフラムの斜視図。
【図8】図7のC−C線に沿う要部矢視図。
【図9】ダイヤフラムに使用する材料の線膨張係数とガスタービン効率の向上量を説明する図。
【図10】本発明の他の実施形態であるハニカムシール構造における回転シールフィンの軸移動量によりハニカム材に接近したとき動作を説明する配置状態を示す断面図。
【図11】本発明のさらに他の実施形態であるハニカムシール構造における回転シールフィンとハニカム材との配置状態を示す断面図。
【図12】従来のハニカムシール構造で用いるハニカム材を固定したダイヤフラムの斜視図。
【図13】図12のD−D線に沿う要部矢視図。
【図14】図12のE−E線に沿う要部矢視図。
【符号の説明】
【0049】
1:ガスタービン、2:圧縮機、3:燃焼器、4:タービン、5:ロータ、6:動翼、7:静翼、8:ダイヤフラム(固定側部材、ハニカム固定部材)、9:静止シュラウド(固定側部材、ハニカム固定部材)、10:本発明のガスタービン効率低下率、11:図7,8の構造のガスタービン効率低下率、12:オーステナイト系ステンレス鋼、13:低膨張材料、81:ハニカム材、81a:周方向分割面、81b:軸方向分割面、82:回転シールフィン(回転側部材)、83:リブ、85a:回転シールフィンの間隙、85b:回転シールフィンの間隙、91:チップシュラウド(回転側部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンなどのハニカムシール構造に関し、詳細には、ハニカム材を分割しても分割面のシール性を保つことができ、ハニカム固定部材からハニカム材が脱落しないように配置固定したハニカムシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術の一例として、発電用に利用されているガスタービンのタービン部で使用されているハニカムシールを例として説明する。
【0003】
発電用に利用されるガスタービンのタービン部は、ロータとともに回転する動翼と、ケーシングまたは、シュラウドに固定された静翼を備え、動翼は、ロータに結合されるプラットホームと翼部とからなり、静翼は、翼部とこの翼部の両端に固定された内周エンドウォールおよび外周エンドウォールからなる。内周エンドウォールには、リング構造あるいは、分割された環状のダイヤフラムが固定されている。
【0004】
静翼の翼面と内周エンドウォール、外周エンドウォールは、タービン部を流れる高温ガスの流路を構成し、動翼の翼面とプラットホームもまた、高温ガスの流路を構成している。静翼の内周エンドウォールに固定されているダイヤフラムは、ハニカム固定部材であり、ダイヤフラム内周にハニカム材を固定し、ロータに取り付けられた複数の回転シールフィンとでハニカムシールを構成する。ハニカムシールは、高温ガスが静翼、動翼を通過せずに漏れるのを防止するために、ハニカムシールの上流側と下流側に圧力・流量が調整されたシール空気を流すことによって、高温ガスが静翼、動翼で構成される流路を通過するようにしている。
【0005】
一方、後段側の動翼には、回転シールフィンと分割環状の流路壁から構成されるチップシュラウドが外周端に固定されている。さらに、動翼の外周には、ケーシングに固定され、分割された環状の静止シュラウドにより、ハニカムシールを構成する。この場合、静止シュラウドがハニカム材を固定するハニカム固定部材となる。この静止シュラウドとチップシュラウドとで構成されるハニカムシールによって、高温ガスが静翼、動翼で構成される流路を通過せずにリークするのを防いでいる。ハニカムシールのシール性能が低下することにより、高温ガスの流出量が増加し、ガスタービンの効率の低下に繋がる。
【0006】
動翼や静翼は、製造上の理由、熱変形を吸収するため等の理由によって、周方向に複数個の部分に分割されており、動翼の翼部に固定されているプラットホームや静翼の翼部に固定されている内周エンドウォール、外周エンドウォールも、翼の配列方向に複数個分割されている。静翼内周側に固定されている、ハニカム固定部材であるダイヤフラムもまた、製造上の理由によって、周方向に複数個に分割された円弧状の形状をなしている。
【0007】
ここで、ダイヤフラムについて、図12および、図12のD−D方向から見た図13、E−E方向から見た図14を用いて詳しく説明する。分割されたダイヤフラム50には、分割されたハニカム材51が固定されており、ダイヤフラム50を周方向に連結する場合、ダイヤフラム50の周方向の熱膨張を考慮して周方向分割面52に間隙を確保する必要がある。ダイヤフラム50の周方向の連結部には、プレート状シール部材53が配設されており、周方向分割面52の間隙から軸方向下流に圧力の高いシール空気が流出するのを防いでいる。ダイヤフラム50の周方向の間隙、ダイヤフラム内周に配設されているハニカム材51の周方向の間隙を完全に塞ぐことは困難であり、周方向の間隙を圧力の高いシール空気が軸方向下流側に通過することにより、シール空気の漏れG3が生じ、シール性能が低下する要因となっている。
【0008】
以下に、従来技術として、特許文献1に記載されているハニカム部材を備えたガスタービンの静翼シュラウドについて説明する。特許文献1に記載の静翼シュラウドは、ガスタービンの静翼シュラウドに取り付けるハニカム部材の取り付け構造であり、その目的は、静翼シュラウドの分割面の間隙から、半径方向外側に漏れるシール空気を防止するために、前記ハニカム部材が前記静翼シュラウドの分割面の間隙を塞ぐように周方向にずらして配設されることを特徴としており、ハニカム材の分割面の間隙から軸方向下流側に漏れるシール空気については、防止することができない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−235504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図12〜14で説明した従来技術の例では、ハニカム材を固定するダイヤフラム50の周方向分割面の間には、プレート状シール部材53が取り付けられているが、半径方向外周側及び、軸方向下流側へのシール空気の漏れG3を完全に防止することが困難であり、シール空気の漏れG3を完全に防止するためには、ダイヤフラム50の構造を一体リング構造とすることが望ましい。
【0011】
ダイヤフラム50の構造が分割環状の場合には、静翼に固定された箇所がダイヤフラム50の熱膨張の基点となり、回転軸に対して半径方向の内周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間の隙間が小さくなる。しかしながら、ダイヤフラム50の構造を一体リング構造とした場合には、回転軸に対して半径方向の外周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間に半径方向の隙間が生じることになり、ダイヤフラム50に選定した材料の線膨張係数の違いによって、半径方向に生じる隙間が異なり、ガスタービンの効率に影響を与える。このため、半径方向の隙間を小さくし、ガスタービンの効率を向上させるためには、ダイヤフラムの材料を熱膨張係数の小さい材料(低膨張材料)を選択することが望ましい。
【0012】
また、ハニカム材51の周方向の間隙を完全に塞ぐことは困難であり、周方向の間隙を圧力の高いシール空気が軸方向下流側に通過することにより、シール空気の漏れG3が生じ、シール性が損なわれ、ガスタービンの効率低下に繋がる。
【0013】
ハニカム材51の材料としては、動翼やロータに配設されている複数の回転シールフィンがハニカム材51と接触しても、回転シールフィンが破壊されないように、動翼やロータの材料に比べて、強度の低い材料を選定している。このハニカム材51は、回転シールフィンとハニカム材の間の半径方向ギャップを可能な限り小さくするために、回転シールフィンによって削り取られることを許容し、ハニカム材51を交換することによって元の状態に戻すことができる。コスト上昇を抑えるために、ハニカム材51には高価な材料ではなく、安価な材料を選定することが望ましい。
【0014】
ダイヤフラム50とハニカム材51は、一般的に、Niロウ材を用いたロウ付けにより接合している。Niロウ材は、約1000℃の高温で溶着し、ダイヤフラム50とハニカム材51が接合固定される。ダイヤフラム50とハニカム材51との間で熱収縮量が極端に違う場合、冷却過程において、ダイヤフラム50とハニカム材51との間で過大な熱応力が発生し、ハニカム材51がハニカム固定部材へ固定される際のロウ付け等の接合欠陥が生じ、ロウ付接合部の強度低下に繋がる。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ガスタービン等のハニカムシール構造において、固定側部材であるハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張量の違う材料の組み合わせとした場合においても、製作上の信頼性、強度信頼性を損なわずに、ハニカム材の周方向の間隙からシール空気の漏れを防止することができるタービンのハニカムシール構造を提供することにある。
【0016】
また、製作過程におけるハニカム材とハニカム固定部材との熱収縮の差で生じる熱応力によって、ハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が発生することがなく、ロウ付け部の強度低下を防止し、コスト上昇を伴わずに、ハニカム材の脱落を防止できるハニカムシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成すべく、本発明に係るタービンのハニカムシール構造は、タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、前記複数に分割されたハニカム材は、複数のハニカム材の円周方向の分割面と、隣接する軸方向に分割された複数のハニカム材の円周方向の分割面とをずらして配置すると共に、軸方向に相互に接触させて配置することを特徴としている。
【0018】
前記のごとく構成された本発明のタービンのハニカムシール構造は、ハニカム固定部材にハニカム材を取り付ける場合に、ハニカム材を円周方向及び、軸方向に少なくとも2分割とし、ハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張係数の違う材料の組み合わせでロウ付け等により接合した場合においても、製作時、ハニカム固定部材とハニカム材との熱収縮量の差で生じる熱応力を軽減することができ、ハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が生じることによる接合部の強度低下を防止し、製作上の信頼性、強度信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るハニカムシール構造によれば、ハニカム固定部材に、周方向及び軸方向に少なくとも2分割としたハニカム材の配置を、ハニカム材の周方向分割面の隙間を塞ぐように、円周方向の位相をずらして取り付けることにより、ハニカム材の周方向分割面の隙間から、軸方向下流側に圧力の高いシール空気が流出することを防止することができる。この結果、シール空気の漏れを防止してシール性能を向上させることができ、ガスタービンエンジンに用いると効率を向上させることができる。
【0020】
本発明に係るタービンのハニカムシール構造の他の態様としては、タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、前記固定側部材は、その内周部に円周状のリブを突出形成してあり、前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、前記軸方向に分割されたハニカム部材の分割面を、前記リブに接触させて配置することを特徴としている。
【0021】
このように構成された本発明のタービンのハニカムシール構造によれば、ハニカム固定部材の内周に、リブを設けて、軸方向に分割されたハニカム材をそれぞれ、軸方向上流側、下流側にハニカム固定部材のリブを挟み込むように隙間なく、配置することにより、周方向分割面の隙間から流入する圧力の高いシール空気が軸方向下流側に流出することを防止できる。このように、ハニカム固定部材の内周にリブがあれば、円周方向に分割されたハニカム材の配置の位相が同じでも、シール空気の流出を防止できる。また、ハニカム固定部材とハニカム材との熱収縮量の差で生じる熱応力を軽減することができ、製作上の信頼性、強度信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係るタービンのハニカムシール構造の好ましい具体的な態様としては、前記回転シールフィンは、複数のリング状のフィンを所定の間隔で平行に立ち上げて形成してあり、前記回転シールフィンの回転や熱膨張により前記フィンが固定側の前記ハニカム部材に接近したとき、該回転シールフィンと前記ハニカム材の軸方向分割面の接触面あるいは前記円周状のリブとの接触を防止するべく、前記間隔が設定されていることを特徴としている。
【0023】
このように構成されたタービンのハニカムシール構造によれば、ガスタービンの起動、停止に伴うロータの軸移動によって、1枚のフィンがハニカム材と接触し、削り取りながら移動した場合にも、ハニカム材が削り取られた軸方向分割面の接触面あるいは円周状のリブと周方向分割面からなるリーク経路が形成されることがなく、圧力の高いシール空気が前記リーク経路を通って下流側に流出してシール性能が低下することを防止できる。すなわち、ガスタービンの起動、停止に伴うロータの軸移動が発生しても、1枚のフィンがハニカム材の軸方向分割面の接触面やリブを跨がないような適切なフィン同士の間隔が設定されているため、ハニカムシール構造のシール性能が低下することなく、タービンの効率低下を防止することができる。
【0024】
さらに、本発明に係るタービンのハニカムシール構造の好ましい具体的な他の態様としては、前記固定側部材は、低膨張材より形成されることを特徴としている。具体的には、低膨張材としては、例えば、500℃における熱膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼の熱膨張係数の55%以下であることが好ましい。500℃における熱膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼の55%以下の材料とは、具体的には、10×10−6[mm/mm℃]以下の熱膨張係数を有する材料である。
【0025】
このように構成されたタービンのハニカムシール構造によれば、例えば、固定側部材を構成するハニカム固定部材に、低膨張材として、500℃における熱膨張係数がオーステナイト系ステンレス鋼の55%以下の材料を用いた場合に、ハニカム固定部材と回転シールフィンとの間の半径方向の隙間を小さくできるため、ガスタービン効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上に説明したように、本発明に係るタービンのハニカムシール構造によれば、ハニカム固定部材とハニカム材を熱膨張量の違う材料の組み合わせとした場合においても、製作過程におけるハニカム材とハニカム固定部材との熱収縮の差で生じる熱応力によって、ハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が発生することによるロウ付け部の強度低下を防止し、コスト上昇を抑えて信頼性を向上させることができる。また、シール空気の漏れを防止して、タービンの効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係るタービンのハニカムシール構造の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るハニカムシール構造をガスタービンエンジンに用いた要部断面図、図2は、図1のタービン部の要部拡大断面図、図3は、図1,2で用いられる固定側部材を構成するハニカム固定部材の斜視図である。なお、以下の実施の形態によって、これら本願の発明が限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態であるタービンのハニカムシール構造を説明するための一例として、ガスタービン1の全体構成を示す要部断面図であり、図1は中心線から半分の断面を示している。このガスタービン1は、導入された空気を圧縮する圧縮機2と、この圧縮機2で圧縮された空気と燃料を噴射して燃焼させ、高温ガスを作り出す燃焼器3と、燃焼器3で作られた高温ガスによって回転動力を発生させるタービン4から構成される。また、タービン4は、圧縮機2の途中から圧縮空気の一部を抽気し、この抽気した圧縮空気を、タービン4を構成する動翼6、静翼7の冷却に使用し、ダイヤフラム8、静止シュラウド9のシール空気として使用する。
【0029】
図2にタービン4の詳細な断面図を示す。静翼7の内周には、ダイヤフラム8が固定されており、このダイヤフラム8の内周にハニカム材81が回転軸周りに複数個接合されている。ハニカムシールは、ダイヤフラム8をハニカム固定部材として、ハニカム材81とロータ5に取り付けられた回転シールフィン82によって構成される。ダイヤフラム8は、動翼6と静翼7で構成される流路から、高温ガスG1が漏れ込まないように、圧力・流量を調整されたシール空気G3を流している。
【0030】
「圧力・流量が調整されたシール空気」とは、高温ガスG1が動翼・静翼を通過することによって、高温ガスのエネルギーが動翼6の回転力に変換され、温度、圧力が低下するため、ハニカムシールの上流側と下流側では、空気を漏らす量が異なる。ハニカムシールの周方向の分割面を通過して下流側に漏れた場合には、上流側のシール空気G3が不足し、高温ガスの漏れG2が発生する恐れがあるため、シール空気量を必要以上に増やしているが、シール空気が想定以上に高温ガスに漏れ込んだ場合には、高温ガスG1の温度が低下し、ガスタービンの性能の低下に繋がる。圧力の高いシール空気G3が下流側に漏れ込み、高温ガスに混入した場合にも同様に高温ガスの温度が低下し、ガスタービンの性能の低下に繋がる。
【0031】
図3〜5に本発明にかかるハニカムシール構造の実施の形態を示す。図3はハニカム固定部材であるダイヤフラムにハニカム材を固定した状態の第1の実施形態の斜視図、図4(a)は図3のA−A線に沿う要部矢視図、図4(b)は図3のB−B線に沿う要部矢視図、図5は第2の実施形態の要部矢視図である。なお、図4,5で示されるハニカム材は網目状に略記されているが、詳細には蜂の巣状、すなわち多数の六角形が連続した形状である。
【0032】
ハニカムシール構造は、リング形状のダイヤフラム8の内周側に周方向に、少なくとも2分割以上の複数個に分割されたハニカム材81を取り付け、さらに、ハニカム材81を軸方向に少なくとも2分割とし、周方向分割面81aの隙間を塞ぐように、周方向の位相をずらして取り付ける。詳しくは、図3のA−A方向から見た図4(a)、B−B方向から見た図4(b)に示すように、軸方向に2分割されたハニカム材81の上流側の周方向分割面81aと下流側の周方向分割面81aとを相互に接触させ周方向の位相をずらして配置し、ハニカム材81の周方向分割面81aの隙間から、圧力の高いシール空気の漏れG3が生じないように取り付けたものである。すなわち、シール空気の漏れG3は、軸方向に隣接するハニカム材に阻まれて次の周方向分割面81aに流れることはできない。軸方向に分割されたハニカム材の軸方向分割面は、ロウ付け等により隙間ができないように固定され、シール空気の漏れを確実に阻止することができる。
【0033】
また、本発明の他の実施形態として、図5に示すように、ダイヤフラム8の内周面から円周状のリブ83を一体的に平行に突出形成し、軸方向に分割されたハニカム材の分割面をリブ83に接触させて隙間なく配置する。ハニカム材81は、円周方向分割面81aを流れるシール空気G3が軸方向分割面81bでリブ83に突き当たり、次の軸方向分割面に流れることができず、シール空気の漏れG3が生じない。すなわち、ハニカム材81の円周方向分割面81aと軸方向分割面81bが繋がった場合には、圧力の高いシール空気の漏れG3が生じ、シール性能が低下し、ガスタービンの効率低下に繋がるため、軸方向に分割したハニカム材81をそれぞれ、軸方向上流側、下流側にダイヤフラム8に設けられたリブ83を挟み込むように隙間なく、取り付けることにより、圧力の高いシール空気が流出することを防止している。
【0034】
図6に、ハニカム材81の周方向分割数とガスタービン効率低下率の関係を示す。また、図7には、本発明の実施形態と比較するために、製作上の理由から、ハニカム材81を周方向にのみ複数個分割した構造の比較例の斜視図、図8は、図7のC−C線に沿う断面の構造を示す。図7,8に示すように、一体リング構造のダイヤフラム8とハニカム材81は、ロウ付けにより固定されるため、ハニカム材81を周方向にのみ複数個分割した場合には、周方向分割面81aの隙間を完全に塞ぐことが困難であり、周方向分割面81aの隙間から圧力の高いシール空気の漏れG3が生じる。
【0035】
このシール空気の漏れG3は、ハニカム材の分割数により増加し、図6に示すように、図7,8の構造のガスタービン効率低下率11は、ハニカム材81を周方向に分割する分割数を増やすことによってシール空気の漏れG3が増加するため、シール性が損なわれ、ガスタービン効率の低下に繋がる。本発明のガスタービン効率低下率10は、ハニカム材81を周方向に分割する分割数を増やしても、周方向分割面の位相をずらした第1の実施形態や、ダイヤフラムに突出形成した円周状のリブに分割されたハニカム材を接触させて配置する第2の実施形態のように、シール空気の漏れG3が生じないため、シール性が損なわれることはない。本発明のハニカムシール構造を適用することにより、ハニカム材81を周方向に複数個分割しても、ガスタービン効率の低下を防止することができる。
【0036】
本発明のハニカムシール構造では、ハニカム材81を周方向及び、軸方向に少なくとも2分割とする構造のため、製作上や組立の都合上、1枚のハニカム材81がダイヤフラム8の周方向の分割面を跨いで取り付けることが困難であり、ダイヤフラム8は、一体リング構造、もしくは、最小限の分割数とすることが望ましい。ダイヤフラム8の構造が分割環状の場合には、静翼に固定された箇所がダイヤフラム8の熱膨張の基点となり、回転軸に対して半径方向の内周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間の隙間が小さくなるため、回転シールフィンとの間の間隙設計が可能であったが、一体リング形状のダイヤフラム8の場合、回転軸に対して半径方向の外周側に熱膨張し、回転シールフィンとの間に半径方向の隙間が生じることになり、図9に示すように、ダイヤフラム8に選定した材料の線膨張係数の違いによって、半径方向に生じる隙間が異なり、ガスタービンの効率に影響を与える。このため、半径方向の隙間を小さくし、ガスタービンの効率を向上させるためには、ダイヤフラム8の材料を熱膨張量の小さい材料(低膨張材料13)を選択することが望ましい。なお、図9は、ハニカム材の線膨張係数を1とした場合の、ハニカム固定部材の線膨張係数と、ガスタービンの効率向上値との関係を示している。
【0037】
本実施形態では、ダイヤフラム8の材料を低膨張材、例えばオーステナイト系ステンレス鋼12の熱膨張係数の55%以下とすることにより、ガスタービンの効率を相対値で0.2から0.6%向上させることが可能である。前記した低膨張材の熱膨張係数は、具体的には、10×10−6[mm/mm℃]以下であることが好ましい。低膨張材13として、航空機材料として使用されるNi−Fe合金である、INCOLOY(インコロイ)等を用いると最適である。
【0038】
また、ハニカム材の材料としては、動翼やロータに配設されている回転シールフィンがハニカム材と接触しても、回転シールフィンが破壊されないように、ハニカム材は、動翼やロータの材料に比べて、強度の低い材料を選定している。このハニカム材は、回転シールフィンとハニカム材の間の半径方向ギャップを可能な限り小さくするために、回転シールフィンによって削り取られることを許容し、ハニカム材を交換することによって元の状態に戻すことができる。コスト上昇を抑えるために、ハニカム材には高価な材料ではなく、安価な材料(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼12など)を選定することが望ましい。
【0039】
ダイヤフラム8とハニカム材81は、一般的に、Niロウ材を用いたロウ付けにより接合している。Niロウ材は、約1000℃の高温で溶着し、ダイヤフラム8とハニカム材81が接合固定される。例えば、ダイヤフラム8の材料のみに低膨張材料を使用した場合など、ダイヤフラム8とハニカム材81との間で熱収縮量の違いが生じる場合には、冷却過程で過大な熱応力が発生し、ハニカム材81がハニカム固定部材へ固定される際のロウ付け等の接合欠陥が生じ、ロウ付接合部の強度低下に繋がる。
【0040】
このため、ハニカム材を周方向に複数個に分割し、周方向に隙間を設けることにより、製作過程で生じる熱応力を緩和することができ、製作時に起こるハニカム材のハニカム固定部材へのロウ付け等の接合欠陥が生じることによるロウ付部の強度低下を防止し、製作上の信頼性、強度信頼性を確保することができる。そして、第1の実施形態のように、複数のハニカム材の周方向分割面の位相をずらして配置することにより、また第2の実施形態のように、ハニカム部材の分割面をリブに接触させて配置することにより、シール空気の漏れを防止して、タービンの効率を向上させることができる。
【0041】
つぎに、本発明の第3の実施形態について、図10,11を参照して説明する。図10において、固定側部材でありハニカム固定部材であるリング状のダイヤフラム8にはハニカム材81が溶着等により固定されている。ハニカム材81は前記の実施形態と同様に、円周方向に複数に分割されると共に、軸方向にも複数に分割されている。ダイヤフラム8には、その内周部に円周状のリブ83が突出形成されている。そして、軸方向に分割されたハニカム材81,81がリブ83に接触した状態で固定されている。
【0042】
一方、ハニカムシール構造の他方を構成する回転側部材として回転シールフィン82は、リング状のダイヤフラム8の内周に所定の間隙を有して対向している。回転シールフィン82には複数のリング状のフィン82aが所定の間隔85aを有して平行に立ち上げて形成されている。フィン82aはハニカム材に向けて先細となるように形成されている。図示の例では、回転シールフィン82は複数のロータ5に挟まれたディスクの外周側に一体的に形成されているが、ディスクの外周部に別体の回転シールフィンを固定するように構成してもよい。なお、図10,11では、軸方向に分割されたハニカム材をリブ83に接触させて配置した第2の実施形態について説明するものであるが、リブがなく、軸方向に分割されたハニカム材を、周方向分割面をずらして配置する第1の実施形態の構成でもよい。この場合は、リブ83の代わりは、ハニカム材が相互に接触する軸方向分割面81bとなる。
【0043】
図10は、ガスタービンの起動、停止に伴う回転シールフィン82の軸移動の動作状態を示している。ガスタービンの起動、停止に伴うロータの軸移動によって、1枚あるいは複数枚のフィン82aがハニカム材81と接触し、ハニカム材81を削り取りながら軸方向分割面81bあるいはリブ82を跨いで移動した場合には、ハニカム材が削り取られた部分と周方向分割面からなるリーク経路が形成され、圧力の高いシール空気が前記リーク経路を通って下流側に流出し、シール性が損なわれ、ガスタービンの効率低下に繋がる。このため、ガスタービンの起動、停止に伴うようなロータの軸移動によっても、1枚のフィン82aがハニカム材81の軸方向分割面81bあるいはリブ83を跨がないように、適切な回転シールフィンの82aどうしの間隔85aを設ける必要がある。この実施形態では、前記の間隔85aは、ガスタービンの起動、停止時に回転シールフィンの軸移動が発生しても、回転シールフィン82と円周状のリブ83とが接触しないような間隔に設定されている。
【0044】
本実施形態では、ハニカム材81を軸方向2分割として説明しており、図11に示すハニカムシール構造のように、シール性能の向上を目的として、リブ83あるいは軸方向分割面81bを跨ぐ可能性のある回転シールフィン82の間隔85bのみを拡大し、その他の回転シールフィン83の間隔85cを狭めてフィン枚数を増やしてもよい。図11の場合も、ガスタービンの起動、停止時に回転シールフィンの軸移動が発生しても、回転シールフィン82と円周状のリブ83とが接触しない。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、軸方向に複数に分割される例として、軸方向に2つに分割される例を示したが、軸方向に3つ以上に分割されるように構成してもよいのは勿論である。
【0046】
また、ハニカム材を固定する固定部材であるダイヤフラムは、内周側にロータが位置するリング状であれば、例えば円筒状や、内周に段差面のあるリング状でもよい。この場合は、内周の段差面のそれぞれに、ハニカム材を固定して高温ガスの漏れやシール空気の漏洩を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ガスタービンなどのハニカムシール部のリークを低減するための構造に利用できる。また、本発明の活用例として、蒸気タービンの固定側部材と回転側部材との間のリークを低減するハニカムシール構造の用途にも適用できる。また、本発明は航空機用のガスタービンエンジンにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るタービンのハニカムシール構造を用いたガスタービンの概略構成を示す要部断面図。
【図2】図1のガスタービンの要部拡大断面図。
【図3】図1,2のハニカムシール構造で用いるハニカム材を固定したダイヤフラムの斜視図。
【図4】(a)は図3のA−A線に沿う要部矢視図、(b)は図3のB−B線に沿う要部矢視図。
【図5】本発明の他の実施形態の要部矢視図。
【図6】ハニカム材の分割数とガスタービン効率の低下量を説明する図。
【図7】ハニカム材を周方向のみ分割した比較例のハニカム材を固定したダイヤフラムの斜視図。
【図8】図7のC−C線に沿う要部矢視図。
【図9】ダイヤフラムに使用する材料の線膨張係数とガスタービン効率の向上量を説明する図。
【図10】本発明の他の実施形態であるハニカムシール構造における回転シールフィンの軸移動量によりハニカム材に接近したとき動作を説明する配置状態を示す断面図。
【図11】本発明のさらに他の実施形態であるハニカムシール構造における回転シールフィンとハニカム材との配置状態を示す断面図。
【図12】従来のハニカムシール構造で用いるハニカム材を固定したダイヤフラムの斜視図。
【図13】図12のD−D線に沿う要部矢視図。
【図14】図12のE−E線に沿う要部矢視図。
【符号の説明】
【0049】
1:ガスタービン、2:圧縮機、3:燃焼器、4:タービン、5:ロータ、6:動翼、7:静翼、8:ダイヤフラム(固定側部材、ハニカム固定部材)、9:静止シュラウド(固定側部材、ハニカム固定部材)、10:本発明のガスタービン効率低下率、11:図7,8の構造のガスタービン効率低下率、12:オーステナイト系ステンレス鋼、13:低膨張材料、81:ハニカム材、81a:周方向分割面、81b:軸方向分割面、82:回転シールフィン(回転側部材)、83:リブ、85a:回転シールフィンの間隙、85b:回転シールフィンの間隙、91:チップシュラウド(回転側部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、
前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、
前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、
前記複数に分割されたハニカム材は、複数のハニカム材の円周方向の分割面と、隣接する軸方向に分割された複数のハニカム材の円周方向の分割面とをずらして配置すると共に、軸方向に相互に接触させて配置することを特徴とするタービンのハニカムシール構造。
【請求項2】
タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、
前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、
前記固定側部材は、その内周部に円周状のリブを突出形成してあり、
前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、
前記軸方向に分割されたハニカム部材の分割面を、前記リブに接触させて配置することを特徴とするタービンのハニカムシール構造。
【請求項3】
前記回転シールフィンは、複数のリング状のフィンを所定の間隔で平行に立ち上げて形成してあり、
前記回転シールフィンの回転や熱膨張により前記回転シールフィンが固定側の前記ハニカム部材に接近したとき、該回転シールフィンと前記ハニカム材の軸方向分割面の接触面あるいは前記円周状のリブとの接触を防止するべく、前記間隔が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタービンのハニカムシール構造。
【請求項4】
前記固定側部材は、低膨張材より形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタービンのハニカムシール構造。
【請求項1】
タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、
前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、
前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、
前記複数に分割されたハニカム材は、複数のハニカム材の円周方向の分割面と、隣接する軸方向に分割された複数のハニカム材の円周方向の分割面とをずらして配置すると共に、軸方向に相互に接触させて配置することを特徴とするタービンのハニカムシール構造。
【請求項2】
タービンの回転側部材と該回転側部材の外周に位置するリング状の固定側部材との間のシール構造であって、
前記固定側部材の内周に取り付けられたリング状のハニカム材と、該ハニカム材と対向し前記回転側部材に取り付けられた回転シールフィンとから構成され、
前記固定側部材は、その内周部に円周状のリブを突出形成してあり、
前記ハニカム材は、円周方向に少なくとも2分割以上の複数に分割されると共に、軸方向にも少なくとも2分割以上の複数に分割され、
前記軸方向に分割されたハニカム部材の分割面を、前記リブに接触させて配置することを特徴とするタービンのハニカムシール構造。
【請求項3】
前記回転シールフィンは、複数のリング状のフィンを所定の間隔で平行に立ち上げて形成してあり、
前記回転シールフィンの回転や熱膨張により前記回転シールフィンが固定側の前記ハニカム部材に接近したとき、該回転シールフィンと前記ハニカム材の軸方向分割面の接触面あるいは前記円周状のリブとの接触を防止するべく、前記間隔が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタービンのハニカムシール構造。
【請求項4】
前記固定側部材は、低膨張材より形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタービンのハニカムシール構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−113458(P2007−113458A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304587(P2005−304587)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】
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