説明

タービンの保守管理システム、方法、及びプログラム

【課題】より現実に近い応力腐食割れの進展を定量的に予測し、定期検査の実施計画を効果的に策定することができるタービンの保守管理技術を提供する。
【解決手段】タービンの保守管理システム10は、境界係数KI-IIを保存する演算パラメータ保存部23と、第1き裂進展速度bIの演算部11と、き裂長さaI(tn)の演算部12と、応力拡大係数K(tn)の演算部13と、応力拡大係数K(tn)及び境界係数KI-IIの大小関係を判定する領域判定部14と、第2き裂進展速度bIIの演算部15と、前記判定において応力拡大係数K(tn)が境界係数KI-IIより大なりを示したところでき裂長さaII(tn)を演算する演算部16と、き裂長さaII(tn)が限界き裂サイズayに到達したか否かを判定する限界判定部17と、このき裂長さaII(tn)が限界き裂サイズayに到達するまでの時間tyを出力する到達時間出力部18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン構造物の応力腐食割れの進展を定量的に予測してその寿命を評価するためのタービンの保守管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンは、原子力、火力、地熱等に由来する蒸気エネルギーを、翼の設けられたロータ軸(回転軸)で回転エネルギーに変換するものである。この回転エネルギーは、発電機により電気エネルギーに変換される。
発電プラントにおけるタービンの構成は、高圧タービン及び低圧タービンが直列に配列して複合化されている。これにより蒸気エネルギーは、最初に高圧タービンを駆動し、その排蒸気が低圧タービンを駆動して、高効率で回転エネルギーに変換される。
【0003】
ところで、蒸気は、高圧タービンにおける膨張過程で、乾き状態から湿り状態へと遷移し、低圧タービンに導入される時点で、湿り度が高くなる。そして、湿り環境におかれているロータ軸や翼植え込み部は、乾湿交番によって蒸気中の不純物が凝縮水膜中に濃縮し、応力腐食割れの発生及びその進展が加速し易い状態となっている。
【0004】
そこで、タービンは、定期的に超音波探傷試験等の非破壊検査を実施して、存在する欠陥を検出し、応力腐食割れに起因する構造物の破壊リスクを定量的に予測し、長期的な寿命管理を行っている(例えば、特許文献1)。
ここで、応力腐食割れ(SCC;Stress Corrosion Cracking)とは、腐食環境におかれた金属材料に応力が加わった場合に、電気化学的作用により金属がイオン化して溶出し、急速にき裂が発生・成長して、この金属材料が破断にいたる現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−306131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タービン構造物には、施工完了後に運転を開始した直後であっても、将来的に進展するき裂の起点となる微細な欠陥が内在している。後述する数式(1)や図2に示すように、このような欠陥長さaが小さな初期領域Iでは、応力拡大係数Kが小さくき裂進展速度bは低速である。
【0007】
しかし、従来のタービンの寿命管理は、初期領域Iにおけるき裂進展速度bをプラトー領域IIのき裂進展速度bと同値とみなして、過度に保守的なき裂の進展予測を行っていた。
そして、このような保守的なき裂の進展予測結果に基づいて、タービンの定期的な非破壊検査の実施計画が策定されていた。このために、タービンの施工が完了して運転を開始した初期段階においては、実質的に不要な検査が強いられており、タービン運用に支障をきたす可能性があった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、現実に近い応力腐食割れの進展を定量的に予測し、定期検査の実施計画を効果的に策定することができるタービンの保守管理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタービンの保守管理システムは、応力拡大係数の関数として示されるSCCき裂速度線図の初期領域及びプラトー領域の境界を示す境界係数を保存する演算パラメータ保存部と、前記初期領域における第1き裂進展速度を演算する第1き裂進展速度演算部と、前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さを演算する第1き裂長さ演算部と、前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さに基づいて応力拡大係数を演算する応力拡大係数演算と、前記演算された応力拡大係数及び前記境界係数の大小関係を判定する領域判定部と、前記プラトー領域における第2き裂進展速度を演算する第2き裂進展速度演算部と、前記判定において前記応力拡大係数が前記境界係数より大なりを示したところで前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づくき裂長さを演算する第2き裂長さ演算部と、前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づいて演算されたき裂長さが限界き裂サイズに到達したか否かを判定する限界判定部と、前記き裂長さが限界き裂サイズに到達するまでの時間を出力する到達時間出力部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、現実に近い応力腐食割れの進展を定量的に予測し、定期検査の実施計画を効果的に策定することができるタービンの保守管理技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るタービンの保守管理システムの第1実施形態を示すブロック図。
【図2】応力拡大係数の関数として示されるSCCき裂速度線図。
【図3】き裂長さに対する構造材の破壊強度特性を示すグラフ。
【図4】第1実施形態に係るタービンの保守管理システムの動作を説明するフローチャート。
【図5】第3実施形態に係るタービンの保守管理システムを示すブロック図。
【図6】第3実施形態に係るタービンの保守管理システムの動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、タービンの保守管理システム10は、応力拡大係数Kの関数として示されるSCCき裂進展速度線図(図2)の初期領域I及びプラトー領域IIの境界を示す境界係数KI-IIを保存する演算パラメータ保存部23と、この初期領域Iにおける第1き裂進展速度bIを演算する第1き裂進展速度演算部11と、この第1き裂進展速度bIに基づくき裂長さaI(tn)を演算する第1き裂長さ演算部12と、この第1き裂進展速度bIに基づくき裂長さaI(tn)に基づいて応力拡大係数K(tn)を演算する応力拡大係数演算部13と、演算された応力拡大係数K(tn)及び境界係数KI-IIの大小関係を判定する領域判定部14と、プラトー領域IIにおける第2き裂進展速度bIIを演算する第2き裂進展速度演算部15と、前記判定において応力拡大係数K(tn)が境界係数KI-IIより大なりを示したところで第1き裂進展速度bI及び前記第2き裂進展速度bIIに基づくき裂長さaII(tn)を演算する第2き裂長さ演算部16と、第1き裂進展速度bI及び第2き裂進展速度bIIに基づいて演算されたき裂長さaII(tn)が限界き裂サイズay(図3)に到達したか否かを判定する限界判定部17と、このき裂長さaII(tn)が限界き裂サイズayに到達するまでの時間tyを出力する到達時間出力部18と、を備える。
【0013】
図2のSCCき裂速度線図について説明する。
低圧タービンの構成部材は、湿り状態と乾き状態が交互に切り替わる乾湿交番によって、表面に不純物が濃縮し易い環境に置かれているために、応力腐食割れの発生及びその進展が加速し易い。SCCき裂速度線図は、そのような過酷な環境と同じ環境で、低圧タービンの構成部材を試験することにより作成される。
【0014】
ここで、応力拡大係数Kは、数式(1)に示されるように、評価時点tnにおけるき裂長さa(t)、評価部位の負荷応力σ、き裂と部材との相対寸法で決まる相対係数Mによって規定される。
K = K(tn) = M・σ・√a(t) (1)
【0015】
SCCき裂速度線図は、応力拡大係数Kの範囲に応じ、初期領域I(KISCC< K < KI-II),プラトー領域II(KI-II< K < Kc),急速破断領域III( Kc< K )の三領域に分類される。
初期領域Iの下限界応力拡大係数KISCCは、この値以下では、実質的にき裂が進展しないことを意味している。
応力拡大係数Kが大きくなるに従い、初期領域Iにおける第1き裂進展速度bIは増加し、プラトー領域IIにおける第2き裂進展速度bIIは一定値を示し、急速破断領域IIIにおけるき裂進展速度bは急速に増加して部材は破断に至る。
【0016】
本実施形態においては、評価時点tnが始点t0において、下限界応力拡大係数KISCCを与えるき裂長さa(t0)が初生していることを想定している。そして、この初生しているき裂長さa(t0)は、時間経過とともに初期領域Iにおいて成長し、tmにおいてプラトー領域IIに入り、tcを経過したところで部材を破壊させる。
【0017】
なお、第1き裂進展速度bIは、数式(2)に示すように、応力拡大係数Kの任意関数として記述される。なお、この数式(2)は、実験に基づいて作成される予測式である。
bI = f{K(tn)} ; {KISSC< K(tn) < KI-II} (2)
【0018】
また、第2き裂進展速度bIIは、応力拡大係数Kに対して依存性を示さないが、数式(3)に示すように、部材の耐力σy及び温度Tの関数として表される。
logbII = c - (7302/T)+0.0278σy ; {KI-II< K(tn) < Kc} (3)
(c;定数、-4.968(平均)、標準偏差0.587)
【0019】
この数式(3)を得るにあたり、さまざまな温度環境において、材料強度(耐力)の異なる複数のタービンロータ材料のき裂進展速度bの測定を実施している。そして、材料強度(耐力)、温度、プラトー領域IIの第2き裂進展速度bIIの組み合わせ値を抽出し、フィットするように数式(3)の定数及び係数が決定されている。
【0020】
図3のグラフは、き裂長さa(tn)に対する構造材の破壊強度特性を示している。
ここでは、き裂の有無にかかわらず耐力σyを超える負荷がかかると部材は破壊することを表わしている。そして、き裂長さa(tn)が限界き裂サイズayに到達するまでは、耐力σyに相当する負荷が付与されていても部材は破壊しない。さらに、耐力σyよりも小さな負荷応力σの場合は、き裂長さa(tn)が破断き裂サイズacに到達するまでは、部材は破壊しない。
【0021】
各実施形態においては、構造材料に初生しているき裂長さa(t0)が、限界き裂サイズayに到達するまでの時間tyを構造部材の寿命とする(図2)。この限界き裂サイズayの到達時間tyは、実験的に導かれるものである。
なお、限界き裂サイズayについては、種々の定義方法が考えられるが、いずれの定義方法を採用した場合でも、その到達時間tyは、少なくとも数式(4)の関係を満たす(図2参照)。
tm< ty< tc (4)
【0022】
演算パラメータ保存部23は、限界き裂サイズayの他に、部材の耐力σy、評価対象部位の温度Tや負荷応力σ、相対係数M、下限界応力拡大係数KISCC、境界係数KI-IIといった限界き裂サイズayへの到達時間tyを演算するのに必要なパラメータを保存している。
パラメータ計算部22では、設計データを所定の計算式にあてはめて相対係数Mや負荷応力σ等のパラメータを計算する。
そして、これらパラメータ計算部22や演算パラメータ保存部23の処理において必要な情報は、入力手段21から入力される。
【0023】
第1き裂進展速度演算部11は、応力拡大係数K(tn)を入力して前記数式(2)に基づいて、初期領域I(t0< tn< tm)における第1き裂進展速度bIを演算するものである。ここで、始点t0においては、入力する応力拡大定数Kとして下限界応力拡大係数KISCCを採用する。
【0024】
第1き裂長さ演算部12は、次の数式(5)に基づいて、初期領域I(t0< tn< tm)におけるき裂長さaI(tn)を演算するものである。ここで、数式(5)の[t:0 → tn]は、積分区間が0からtnであることを意味する。
aI(tn)=∫[t:0 → tn] bI dt (5)
【0025】
応力拡大係数演算部13は、き裂長さaI(tn)を入力して、前記数式(1)に基づいて評価時点tnにおける応力拡大係数K(tn)を求めるものである。
【0026】
領域判定部14は、応力拡大係数K(tn)が、境界係数KI-II以下であれば、SCCき裂速度線図(図2)において、評価時点tnは、初期領域Iに含まれると認定し、境界係数KI-IIよりも大きければ、評価時点tnは、プラトー領域IIに移行したと認定する。
そして、数式(6)に示すようにK(tn)がKI-IIに等しくなるtnをtmとして出力する。
K(tm) = KI-II (6)
【0027】
第2き裂進展速度演算部15は、部材の耐力σy及び温度Tを入力し、前記数式(3)に基づいて、プラトー領域II(tm< tn< tc)における第2き裂進展速度bIIを演算する。なお、前述したとおり、第2き裂進展速度bIIは、応力拡大係数K(t)及びき裂長さa(t)に依存しないので、一定値を示す。
【0028】
第2き裂長さ演算部16は、第2き裂進展速度bII及び境界係数KI-IIの到達時間tmを入力し、次の数式(7)に基づいてプラトー領域II(tm< tn< tc)におけるき裂長さaII(tn)を演算する。ここで、数式(7)の[t:0 → tm]は、積分区間が0からtmであることを意味する。
aII(tn)=∫[t:0 → tm] bI dt + bII ×(tn - tm) (7)
【0029】
限界判定部17は、プラトー領域IIにおけるき裂長さaII(tn)が、限界き裂サイズay以下であれば、構成部材は健全であると判定し、限界き裂サイズayよりも大きければ、評価時点tnにおいて、寿命を迎えたと判定する。
そして到達時間出力部18は、数式(8)に示すようにき裂長さaII(tn)が限界き裂サイズayに等しくなるtnを寿命の到達時間tyとして出力する。
aII(ty) = ay (8)
【0030】
図4のフローチャートに基づいて第1実施形態に係るタービンの保守管理システムの動作を説明する。
まず、動作のスタート時点を寿命の始点とするために、初期化(tn= t0)を行い(S11)、演算パラメータ(ay,σy,T,σ,M,KISCC,KI-II)を取得する(S12)。
【0031】
tn= t0においては、応力拡大係数K(tn)を下限界応力拡大係数KISCCに設定し(S13)、数式(2)に基づいて初期領域Iにおける第1き裂進展速度bIを演算する(S14)。さらに、この演算した第1き裂進展速度bIから、数式(5)に基づき、評価時点tn(t0< tn< tm)におけるき裂長さaI(tn)を演算する(S15)。
【0032】
次に、この演算したき裂長さaI(tn)から、数式(1)に基づき、評価時点tn(t0< tn< tm)における応力拡大係数K(tn)を演算する(S16)。この演算した応力拡大係数K(tn)が境界係数KI-II以下であれば(S17;No)、応力拡大係数K(tn)を再設定して(S13)、S14〜S17のフローを繰り返す。
【0033】
そして、演算した応力拡大係数K(tn)が境界係数KI-IIを超えたところで(S17;Yes)、数式(3)に基づいて演算されたプラトー領域IIの第2き裂進展速度bIIから、数式(7)に基づいてプラトー領域IIにおけるき裂長さaII(tn)を演算する(S18,S19)。この演算したき裂長さaII(tn)が限界き裂サイズay以下であれば(S20;No)、評価時点tnを更新し(n→n+1)、プラトー領域IIにおけるき裂長さaIIを再演算する(S19)。
【0034】
そして、演算したき裂長さaII(tn)が限界き裂サイズayを超えたところで(S20;Yes)、部材の健全性が損なわれると判断し、到達時間tyを出力して部材の寿命を評価する(S21)。
【0035】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るタービンの保守管理システムは、前記数式(2)で表わされる第1き裂進展速度bIが、応力拡大係数K(tn)の一次関数として示されることとした。
つまり、図2に示すSCCき裂速度線図の初期領域Iにおいて、次の数式(9)が成立し、第1き裂進展速度演算部11は、この数式(9)に基づく演算を実行することとした。
bI = α・K(tn) + β ; {KISSC< K(tn) < KI-II} (9)
(α,β; 定数)
【0036】
(第3実施形態)
図5に基づいて、第3実施形態に係るタービンの保守管理システムを説明する。なお、図5において図1と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0037】
第3実施形態に係るタービンの保守管理システム10は、第1き裂進展速度bIを、第2き裂進展速度bIIに1未満の係数xを乗算して演算されることとした。
つまり、図2に示すSCCき裂速度線図の初期領域Iにおいて、第1き裂進展速度bIは第2き裂進展速度bIIよりも小さな定数をとることとし、第1き裂進展速度演算部11は、次の数式(10)に基づく演算を実行することとした。
bI=x・bII {0 < x < 1} (10)
【0038】
その結果、第1き裂長さ演算部12は、前記数式(5)を簡素化した次の数式(11)に基づいて、初期領域I(t0< tn< tm)におけるき裂長さaI(tn)を演算する。
aI(tn) = bI × tn (11)
【0039】
さらに、第2き裂長さ演算部16は、前記数式(7)を簡略化した次の数式(12)に基づいて、プラトー領域II(tm< tn< tc)におけるき裂長さaII(tn)を演算する。
aII(tn) = bI × tm + bII ×(tn - tm) (12)
【0040】
図6のフローチャートに基づいて第3実施形態に係るタービンの保守管理システムの動作を説明する。
まず、(S31,S32)は、第1実施形態(図4)の(S11,S12)と同じである。次に、数式(3)に基づいてプラトー領域IIの第2き裂進展速度bIIを演算し(S33)、続いて数式(10)に基づいてプラトー領域Iの第1き裂進展速度bIを演算する(S34)。
【0041】
そして、この演算した第1き裂進展速度bIから、数式(11)に基づき、初期領域In(t0< tn< tm)におけるき裂長さaI(tn)を演算する(S35)。
(S36,S37)は、第1実施形態(図4)の(S16,S17)と同様であり、次に数式(12)に基づいてプラトー領域IIにおけるき裂長さaII(tn)を演算する(S38)。そして、(S39,S40)は、第1実施形態(図4)の(S20,S21)と同様である。
【0042】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のタービンの保守管理システムによれば、き裂長さa(tn)に対応したき裂進展速度bを考慮することにより、より現実に近い応力腐食割れの進展を定量的に予測することができ、過度の保守性を排除して寿命を正確に評価することができる。
【0043】
本発明は前記した実施形態に限定されるものでなく、共通する技術思想の範囲内において、適宜変形して実施することができる。そして、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0044】
また、タービンの保守管理システムは、コンピュータによって各手段を各機能プログラムとして実現することも可能であり、各機能プログラムを結合したタービンの保守管理プログラムにより動作させることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…保守管理システム、11…第1き裂進展速度演算部、12…第1き裂長さ演算部、13…応力拡大係数演算部、14…領域判定部、15…第2き裂進展速度演算部、16…第2き裂長さ演算部、17…限界判定部、18…到達時間出力部、21…入力手段、22…パラメータ計算部、23…演算パラメータ保存部、I…初期領域、II…プラトー領域、bI…第1き裂進展速度、bII…第2き裂進展速度、aI(tn),aII(tn)…き裂長さ、ay…限界き裂サイズ、K(tn)…応力拡大係数、KI-II…境界係数、ty…到達時間、σ…負荷応力、σy…部材の耐力、M…相対係数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力拡大係数の関数として示されるSCCき裂速度線図の初期領域及びプラトー領域の境界を示す境界係数を保存する演算パラメータ保存部と、
前記初期領域における第1き裂進展速度を演算する第1き裂進展速度演算部と、
前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さを演算する第1き裂長さ演算部と、
前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さに基づいて応力拡大係数を演算する応力拡大係数演算部と、
前記演算された応力拡大係数及び前記境界係数の大小関係を判定する領域判定部と、
前記プラトー領域における第2き裂進展速度を演算する第2き裂進展速度演算部と、
前記判定において前記応力拡大係数が前記境界係数より大なりを示したところで前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づくき裂長さを演算する第2き裂長さ演算部と、
前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づいて演算されたき裂長さが限界き裂サイズに到達したか否かを判定する限界判定部と、
前記き裂長さが限界き裂サイズに到達するまでの時間を出力する到達時間出力部と、を備えることを特徴とするタービンの保守管理システム。
【請求項2】
前記第1き裂進展速度は、前記応力拡大係数の一次関数として示されることを特徴とする請求項1に記載のタービンの保守管理システム。
【請求項3】
前記第1き裂進展速度は、前記第2き裂進展速度に1未満の係数を乗算して演算されることを特徴とする請求項1に記載のタービンの保守管理システム。
【請求項4】
応力拡大係数の関数として示されるSCCき裂速度線図の初期領域及びプラトー領域の境界を示す境界係数を保存するステップと、
前記初期領域における第1き裂進展速度を演算するステップと、
前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さを演算するステップと、
前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さに基づいて応力拡大係数を演算するステップと、
前記演算された応力拡大係数及び前記境界係数の大小関係を判定するステップと、
前記プラトー領域における第2き裂進展速度を演算するステップと、
前記判定において前記応力拡大係数が前記境界係数より大なりを示したところで前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づくき裂長さを演算するステップと、
前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づいて演算されたき裂長さが限界き裂サイズに到達したか否かを判定するステップと、
前記き裂長さが限界き裂サイズに到達するまでの時間を出力するステップと、を含むことを特徴とするタービンの保守管理方法。
【請求項5】
コンピュータに、
応力拡大係数の関数として示されるSCCき裂速度線図の初期領域及びプラトー領域の境界を示す境界係数を保存させ、
前記初期領域における第1き裂進展速度を演算させ、
前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さを演算させ、
前記第1き裂進展速度に基づくき裂長さに基づいて応力拡大係数を演算させ、
前記演算された応力拡大係数及び前記境界係数の大小関係を判定させ、
前記プラトー領域における第2き裂進展速度を演算させ、
前記判定において前記応力拡大係数が前記境界係数より大なりを示したところで前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づくき裂長さを演算させ、
前記第1き裂進展速度及び前記第2き裂進展速度に基づいて演算されたき裂長さが限界き裂サイズに到達したか否かを判定させ、
前記き裂長さが限界き裂サイズに到達するまでの時間を出力させることを特徴とするタービンの保守管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19842(P2013−19842A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154909(P2011−154909)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】