説明

タービン用弁制御装置およびタービン設備

【課題】サーボ弁中立点バイアスの変動によるタービン制御弁の実開度の変動を補正し、安定的運転を維持する。
【解決手段】タービン用弁制御装置100は、流量指令値を演算する流量制御回路110と、タービン用制御弁開度を検出する弁開度検出器からの制御弁開度フィードバック信号および制御弁開度指令信号を入力としサーボ弁10に開度指令信号を出力する開度制御回路120と、補正制御部130とを有する。補正制御部130は、制御弁実開度信号を入力とし、流量相当信号に変換し実流量相当信号を出力する開度流量変換部131と、実流量相当信号に基づく補正回路部150とを有する。補正回路部150により、サーボ弁10内の異常時に付加される中立点バイアス分の変動を補償するための補正信号を、流量制御回路110および開度制御回路120に加算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンの作動流体の流量を制御する高圧制御油駆動のタービン用弁の制御装置およびタービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
火力および原子力などの発電用のタービンとしては、蒸気タービン、ガスタービン、あるいはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせてガスタービンの廃熱を回収使用しプラント効率を上昇させたコンバインドサイクル用タービン等がある。特に近年のエネルギーの高効率化の観点から、いずれも大容量化したサイクルが主体となってきている。
【0003】
何れのタービンサイクルの場合でも、各タービンには、その回転数(タービン速度)および負荷を制御する為に、タービンの作動流体の流量を制御する制御弁が設置される。
【0004】
即ち、ボイラー、原子炉あるいは蒸気発生器で発生した蒸気が蒸気タービンに到達すると、蒸気タービンの蒸気加減弁にて蒸気流量を制御する事により、蒸気タービンの速度・負荷が制御される。また、ガスタービンにおいては、ガス燃料制御弁によりガス燃料流量を制御することによりガスタービンの速度・負荷が制御される。
【0005】
タービン設備の弁では、速度・負荷制御用以外にも、起動時・過渡時等制御用、緊急遮断用或いはその他各運転モードで要求される制御用等、蒸気加減弁及び燃料制御弁以外の弁も種々の制御機能を有している事が多い。
【0006】
例えば、蒸気タービンにおいては、当該蒸気加減弁以外にも、主蒸気止め弁によって起動時の蒸気流量を制御している。また、ガスタービンにおいては、ガス燃料制御弁以外にも環境対策および燃焼効率の向上を目的として、低NO燃焼器の燃料の分配制御の為のガス燃料分配制御が行われる。
【0007】
制御用の弁の中でもこれらの蒸気用の制御弁およびガス燃料用の制御弁のように、高い精度と応答性を要求される制御弁は、高圧制御油を用いて、サーボ弁により駆動される油筒、弁開度検出手段及び制御装置より構成されている。
【0008】
火力プラントあるいは原子力プラントの蒸気用あるいはガス用の制御弁においては、このようなサーボ弁を使用した電気油圧制御方式の制御弁が用いられている。
【0009】
これら制御弁は、弁棒と直結した油筒に高圧制御油が供給され油圧により駆動される。
【0010】
油筒内の高圧制御油の油量の制御は、サーボ弁により行われる。即ち、サーボ弁から、油筒への制御油の供給、油筒からの制御油の排出により、制御弁の開度が制御される。
【0011】
サーボ弁による開度制御は、制御回路における制御弁開度指令値が制御弁の実開度と一致する様に常にフィードバック制御が行われる。
【0012】
さてここで、サーボ弁にはいわゆるフェイルセーフの考え方が適用され、制御回路での何らかの異常発生を想定して、制御信号喪失の場合には、制御弁を安全な方向に動作させるべくサーボ弁には中立点バイアスが内蔵されている。
【0013】
このように、フェイルセーフ機能、即ち制御信号喪失時には油筒を安全側(一般的には閉方向。但し弁の用途によっては開方向)に動作させるべく、サーボ弁に中立点バイアスを内蔵させている。油筒を開閉動作させる時にはこの中立点バイアス分を補償すべく、開度制御回路中の加算器においてサーボ弁の中立点バイアスを打ち消す量だけ中立点バイアス補償信号が付加される。
【0014】
サーボ弁に内蔵される中立点バイアスは、サーボ弁定格電流に対し10%ないし20%程度の値が一般的である。
【0015】
即ち、通常運転中は、前記の加算器の出力である偏差がゼロとなるまで制御が行われるが、その場合でもサーボ弁には、弁開度を所定の開度に保持する為に、常に加算器経由で前記バイアス分を補償する中立点バイアス補償電流が加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−211669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述したサーボ弁は、直径数mm〜数10mm程度のスプールがミクロン単位の間隙の中で、かつスプールのストロークもミクロン単位で動く精密機器なので、中立点バイアス値の変動が発生し易い。
【0018】
ここで、弁開度設定値が一定にも拘わらず、サーボ弁に内蔵している中立点バイアスが変動すると、制御回路で付加されている中立点バイアス補償値は一定であることより、結局、弁の実開度が変化してしまう事になる。このとき、実際の弁開度の変動量は、サーボ弁での中立点バイアス変動量をアンプゲインで除した値となる。
【0019】
中立点バイアス変動発生の要因としては、スプールとブッシュの位置関係が何らかの原因によりずれる等の機械的要因、油温或いは周囲温度変化によるドリフトあるいはサーボ弁コイル等電気部品の温度ドリフト等、種々の要因が挙げられるが、そのメカニズムは完全には解明されていない。
【0020】
蒸気加減弁を例にとると、蒸気タービンの速度或いは負荷を制御する場合においては、タービンの速度・負荷制御を行うフィードバックループが設置されるのが一般的である。
【0021】
このため、たとえサーボ弁において中立点バイアス変動が発生したとしても、蒸気加減弁開度は、タービンから要求される別のフィードバックループにより所定の開度となる様補正される為、問題は発生しない。
【0022】
ところが、プラント側からの要求により速度・負荷制御ではなく、弁開度一定制御(リミッタ運転)が求められる様な場合には、サーボ弁中立点バイアス変動に相当する分、弁開度がずれる事になり、意図した蒸気流量が得られない事になる。
【0023】
更に、例えば昨今のガスタービンプラント特にコンバインドサイクルプラントにおいては、低NOx燃焼器が使用される事が多いが、この燃焼器は、低NOx化を達成すべく、複雑で且つ非常に木目細かな燃料流量制御及び燃料分配制御が要求され、1%未満程度の燃料弁開度のずれすらも許容されない負荷帯等が存在する。
【0024】
例えば燃料分配弁にて弁開度設定値一定信号にて運転中に、中立点バイアスが変動すると燃料分配弁開度にずれが発生し、燃焼器の燃焼振動を発生させたり、逆火或いは吹き消え等を起こす等、タービンを緊急停止させたり、更にはタービンの損傷の可能性が生ずる。
【0025】
上記においては、サーボ弁に内蔵している中立点バイアスの例にて説明したが、他にも、LVDTの周囲温度変化による温度ドリフト(夏季と冬季等)、あるいは、LVDT自身の発熱等に起因する温度ドリフト或いは制御回路自体の周囲温度変化(夏季と冬季等)等によっても、上記サーボ弁の中立点変動にて説明した理由により、弁の実開度が変動し得る。
【0026】
また、中立点変動がサーボ弁のスプール等構成部品の摺動部に於ける異物詰り、腐食、損傷等に起因している場合には、運転長期化に伴ないサーボ弁のスプールスティック等も発生し得る。
【0027】
何れにしても上記不具合が発生すると、タービンの安全性・信頼性を著しく損なうことになり、その補修の為に長期停止を余儀なくされる等エネルギーの安定供給に支障を来たす事にもなり、社会的に与える影響も甚大になるという問題があった。
【0028】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、タービン運転中にサーボ弁中立点バイアスが変動した場合でも、制御弁の実開度の変動を補正し、安定的運転を維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上述の目的を達成するため、本発明は、タービン速度信号および負荷信号に基づいて流量指令値を演算しタービン用制御弁の制御弁開度指令信号を出力する流量制御回路と、タービン用制御弁開度を検出する弁開度検出器からの制御弁開度フィードバック信号および前記制御弁開度指令信号を入力とし前記タービン用制御弁駆動用の油筒内油量を調節するサーボ弁に開度指令信号を出力する開度制御回路と、補正制御部と、を有し、高圧制御油圧により駆動されるタービン用制御弁を制御するタービン用弁制御装置であって、前記流量制御回路は、前記タービン速度信号および負荷信号に基づいて前記タービン用制御弁の流量指令値を演算し流量指令信号を出力する要求流量演算部と、前記流量指令信号に基づき制御弁開度指令信号を演算する制御弁開度指令信号演算部と、を備え、前記開度制御回路は、前記制御弁開度指令信号から前記制御弁開度フィードバック信号を減して偏差信号を演算する減算器と、前記偏差信号を増幅するサーボ増幅器と、前記サーボ弁内で正常時に付加される中立点バイアス分を補償するための中立点バイアス補償値を出力する定数発生器と、前記中立点バイアス補償値と前記サーボ増幅器出力との合計値を演算し、サーボ弁開度指令信号を出力するサーボ回路加算部と、を備え、前記補正制御部は、前記制御弁実開度信号を入力として、この前記制御弁実開度信号を流量相当信号に変換し実流量相当信号を出力する開度流量変換部と、前記実流量相当信号に基づく補正回路部と、を有し、前記補正回路部により、前記サーボ弁内の異常時に付加される中立点バイアス分を補償するための補正信号を、前記流量制御回路および前記開度制御回路の少なくとも一つにフィードバックする、ことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係るタービン設備は、タービンと、前記タービンの作動流体の流量を制御するタービン用制御弁と、前記タービン用制御弁を駆動するタービン用制御弁油筒装置と、前記油筒用の作動油を供給する高圧制御油発生装置と、前記高圧制御油発生装置から前記油筒に送油する高圧油ポンプと、前記油筒内の油量を調節するサーボ弁と、前記タービン用制御弁の開度を検出する弁開度検出器と、前記タービンの回転数を測定しタービン速度信号を発する回転数測定器と、前記タービンの負荷を測定し負荷信号を発する負荷測定装置と、前記タービン速度信号および負荷信号に基づいて流量指令値を演算し前記タービン用制御弁の制御弁開度指令信号を出力する流量制御回路と、前記弁開度検出器からの制御弁開度フィードバック信号および前記制御弁開度指令信号を入力とし前記サーボ弁に開度指令信号を出力する開度制御回路と、補正制御部と、を有し、前記タービン用制御弁を制御するタービン用弁制御装置と、を有するタービン設備であって、前記流量制御回路は、前記タービン速度信号および負荷信号に基づいて前記タービン用制御弁の流量指令値を演算し流量指令信号を出力する要求流量演算部と、前記流量指令信号に基づき制御弁開度指令信号を演算する制御弁開度指令信号演算部と、を備え、前記開度制御回路は、前記制御弁開度指令信号から前記制御弁開度フィードバック信号を減して偏差信号を演算する減算器と、前記偏差信号を増幅するサーボ増幅器と、前記サーボ弁内で正常時に付加される中立点バイアス分を補償するための中立点バイアス補償値を出力する定数発生器と、前記中立点バイアス補正値と、前記サーボ増幅器出力との合計値を演算し、サーボ弁開度指令信号を出力するサーボ回路加算部と、を備え、前記補正制御部は、前記制御弁実開度信号を入力とし、流量相当信号に変換し実流量相当信号を出力する開度流量変換部と、前記実流量相当信号に基づく補正回路部と、を有し、前記補正回路部により、前記サーボ弁内の異常時に付加される中立点バイアス分を補償するための補正信号を、前記流量制御回路および前記開度制御回路の少なくとも一つにフィードバックする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、タービン運転中にサーボ弁中立点バイアスが変動した場合でも、制御弁の実開度の変動を補正し、安定的運転を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るタービン弁制御装置の第1の実施形態の火力プラントあるいは原子力プラントにおける関係を示す概念図である。
【図2】本発明に係るタービン弁制御装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るタービン弁制御装置の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係るタービン弁制御装置の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るタービン弁制御装置の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係るタービン弁制御装置の第5の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るタービン弁制御装置の第6の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係るタービン弁制御装置の第7の実施形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明に係るタービン弁制御装置の実施形態について説明する。ここで、同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0034】
〔第1の実施形態〕
(構成の説明)
図1は、本発明に係るタービン弁制御装置の第1の実施形態の火力プラントあるいは原子力プラントにおける関係を示す概念図である。
【0035】
図1ではタービン方式は蒸気タービンの場合を示している。したがって、タービン用制御弁が、蒸気加減弁6の場合である。
【0036】
蒸気発生器1で生成された蒸気は、主蒸気止め弁5および蒸気加減弁6を経由して蒸気タービン2に流入し、この熱的エネルギーが機械的エネルギーに変換され、さらに発電機7において電気的エネルギーに変換される。
【0037】
ここで、流入する蒸気量は、蒸気加減弁6の開度により調節される。蒸気タービン2で仕事をした蒸気は、復水器3に流入し、冷却されて復水となる。復水は、給水加熱器(図示していない。)で加熱され、給水ポンプ4により、再び蒸気発生器1に送られる。
【0038】
蒸気加減弁6の開度は、蒸気タービン2の回転数あるいは出力すなわち負荷に直接影響するものであり、高い精度と応答性が要求される。このため、高圧の油圧系を使用した駆動装置が使用される。すなわち、蒸気加減弁6に直結した駆動軸と駆動軸に直結したピストンと、ピストンを収納するシリンダからなる装置(以下「加減弁油筒装置8」という。)により駆動される。
【0039】
加減弁油筒装置8の作動油は、油圧発生装置11および高圧油ポンプ12により高圧油配管13を経由して加減弁油筒装置8に送られる。この際、加減弁油筒装置8内のピストン8a上下の油量を調節するために、サーボ弁10が、加減弁油筒装置8のシリンダの上部および下部に接続されている。
【0040】
サーボ弁10は、蒸気加減弁制御装置100からの信号により開度が制御され、この結果、加減弁油筒装置8内のピストン上下の油量が変化し、蒸気加減弁6の開度が制御される。なお、蒸気加減弁6の開度が一定値に終息したときには、サーボ弁10は中立位置となっている。
【0041】
蒸気加減弁制御装置100は、弁開度検出器9からの蒸気加減弁6の開度信号、および回転数測定器14および負荷測定装置15からのタービン速度信号cおよび負荷信号dをフィードバック信号として使用する。負荷測定装置15は、具体的には、発電機出力を測定する電力計などである。
【0042】
図2は、本発明に係るタービン弁制御装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。図に示すように、蒸気加減弁制御装置100は、大きく分けて、流量制御回路110、開度制御回路120および補正制御部130に区分される。
【0043】
ここで、流量制御回路110は、タービン速度信号cおよび負荷信号dに基づき、タービン速度、負荷の設定値の偏差を算定しこれにゲインを乗じて要求流量信号を出力する要求流量演算部111と、要求流量演算部111からの要求流量信号を、蒸気加減弁6の開度に換算し、蒸気加減弁開度指令信号eを出力する制御弁開度指令信号演算部112とを有する。
【0044】
開度制御回路120は、サーボ回路減算部121、サーボ増幅器122、定数発生器123およびサーボ回路加算部124とを有する。
【0045】
サーボ回路減算部121は、制御弁開度指令信号演算部112からの出力である蒸気加減弁開度指令信号eと弁開度検出器9からの蒸気加減弁6の開度フィードバック信号bを入力として、蒸気加減弁開度指令信号eから開度フィードバック信号bを減じて、偏差信号を出力する。この偏差信号は、サーボ増幅器122により増幅される。定数発生器123は、サーボ弁10の中立点バイアス分を補償するため、中立点バイアスをキャンセルするに相当する一定電流を加えるものである。
【0046】
サーボ回路加算部124は、サーボ増幅器122により増幅された偏差信号に、定数発生器123からの一定電圧を加算し、その結果を、サーボ弁10の開度指令信号であるサーボ弁開度指令信号aとしてサーボ弁10に出力する。
【0047】
サーボ弁開度指令信号aを受けてサーボ弁10の開度が変化することにより、蒸気加減弁6は最終的に流量制御回路110からの開度指令信号eに対応した開度に移行する。この結果、蒸気タービン2には、図2に示すような蒸気加減弁流量特性により、蒸気加減弁6の開度に対応した蒸気が流れる。
【0048】
補正制御部130は、図2に示すように、開度流量変換部131および補正回路部150を備える。補正回路部150は、開度流量変換部131の出力を処理する部分であり、補正回路減算部132および第1の補正回路加算部133を有する。
【0049】
開度流量変換部131は、弁開度検出器9からの蒸気加減弁6の開度フィードバック信号bを入力とし、蒸気加減弁6の開度と流量との関係、すなわち前述の蒸気加減弁流量特性を模擬した特性により、開度信号に対応する流量信号を出力する。補正回路減算部132は、この出力を、流量制御回路110の要求流量演算部111の出力である要求流量信号から減じ流量相当の補正値信号を出力する。
【0050】
第1の補正回路加算部133は、補正回路減算部132からの流量相当の補正値信号に、流量制御回路110の要求流量演算部111の出力である要求流量信号を加え、制御弁開度指令信号演算部112を介して、開度制御回路120への蒸気加減弁開度指令信号eとする。
【0051】
(作用の説明)
本実施形態は、サーボ弁10の中立点変動が発生した場合でも弁の実開度を補正することを主眼としたものである。図2に示す通り、実運転時のサーボ弁10の中立点バイアス変動を検出する手段として、蒸気加減弁6の実開度を流量相当信号に換算する開度流量変換部131を設けている。この開度流量変換部131で換算した流量信号と、流量信号設定値(要求流量演算部111の出力である要求流量信号)との差を補正回路減算部132にて計算する。さらに第1の補正回路加算部133にて、この偏差と、流量信号設定値(要求流量演算部111の出力である要求流量信号)とを加算する。これにより、弁の実開度を補正し、流量設定信号にて本来設定していた蒸気加減弁6の設定開度に見合う開度を得ることを可能とする。
【0052】
ここで、本実施形態が効果を発揮するのは、開度制御回路120の上位の制御回路である流量制御回路110による制御が実質行われていない場合である。このような場合というのは、蒸気タービンの場合では、たとえば、リミッタ運転と呼ばれる弁開度一定制御の状態の場合である。
【0053】
何らかの原因により、サーボ弁10において中立点バイアス変動が発生した場合、蒸気加減弁6の流量は、中立点バイアス変動分に相当する蒸気加減弁6の開度分の相違により、開度流量変換部131にて設定した流量と相違が発生したものと推定される。
【0054】
この時の蒸気加減弁6を実際に流れていると推定する流量と、流れるべき流量との相違量は、蒸気加減弁6の実開度相当信号である開度フィードバック信号bに基づき逆算した流量と流量設定信号である要求流量演算部111の出力である要求流量信号との差から求められ、補正回路減算部132からの補正値信号はこの流量の差に相当する。
【0055】
従って、この流量相当の補正値信号を、第1の補正回路加算部133にて流量設定信号と加算することにより、蒸気加減弁開度を当初設定した開度に補正するための必要分に相当する流量指令信号が出力される。この流量指令信号が、制御弁開度指令信号演算部112において、蒸気加減弁開度指令信号eに変換される。この蒸気加減弁開度指令信号eは、蒸気加減弁開度を当初設定した開度に補正するための必要分に相当する開度指令信号であり、この信号が、開度制御回路120への蒸気加減弁開度指令信号eとなる。
【0056】
(効果の説明)
以上のように、本実施形態により、蒸気タービン2の運転中にサーボ弁10の中立点変動が発生した場合でも、蒸気加減弁6の開度フィードバック信号bから開度流量変換部131にて加減弁流量相当信号へ変換され流量設定信号の補正が行われる。これにより、所定の蒸気加減弁6の開度を維持することが可能となる。
【0057】
〔第2の実施形態〕
(構成の説明)
図3は、本発明に係るタービン弁制御装置の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0058】
本実施形態と第1の実施形態とは、流量制御回路110および開度制御回路120については共通であり、補正制御部130が開度流量変換部131および補正回路部150を備える点でも同様であるが、補正回路部150の構成を異にする。
【0059】
本実施形態の補正回路部150は、補正回路減算部132、補正回路演算部134および第2の補正回路加算部135を有する。
【0060】
第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態における補正回路部150は、流量制御回路110に流量信号を出力するが、本実施形態における補正回路部150は、開度制御回路120に開度補正信号を出力する点である。
【0061】
補正回路減算部132は、開度流量変換部131の流量信号を、流量制御回路110の要求流量演算部111の出力である要求流量信号から減じた補正値信号を出力する。
【0062】
この補正値信号は、流量と線形の関係を有する値であり流量相当信号といえる。
【0063】
補正回路演算部134は、補正回路減算部132からの流量相当の補正値信号を、サーボ弁10の中立点バイアス補正値に変換する演算を行う。
【0064】
第2の補正回路加算部135は、この中立点バイアス補正値を、定数発生器123の出力である中立点バイアス補償値に加算し、新たな中立点バイアス補償値を出力する。
【0065】
(作用の説明)
何らかの原因により、サーボ弁10において中立点バイアス変動が発生した場合、蒸気加減弁6の流量は、中立点バイアス変動分に相当する蒸気加減弁6の開度分の相違により、開度流量変換部131にて設定した流量と相違が発生したものと推定される。
【0066】
この時の蒸気加減弁の流量と制御上目標とする流量との相違量は、蒸気加減弁6の実開度相当信号である開度フィードバック信号bに基づき逆算した流量と、流量設定信号である要求流量演算部111の出力である要求流量信号との差、すなわち、補正回路減算部132からの信号から推定される。したがって、補正回路減算部132からの信号が、流量に線形的な信号であり、流量相当の補正値信号といえる。
【0067】
この流量相当の補正値信号が、補正回路演算部134により、中立点バイアス補正値に変換される。この中立点バイアス補正値は、第2の補正回路加算部135により、定数発生器123から出力された中立点バイアス補償値に加算され、新たな中立点バイアス補償値となる。
【0068】
サーボ回路加算部124は、サーボ増幅器122により増幅された偏差信号に、この新たな中立点バイアス補償値を加算し、その結果を、サーボ弁10の開度指令信号であるサーボ弁開度指令信号aとしてサーボ弁10に出力する。
【0069】
サーボ弁10の中立点バイアス値が一定の場合は、サーボ弁10への指令信号に定数発生器123の出力が加えられることにより、この中立点バイアス値を補償しているが、中立点バイアス値が変動した場合にも、その変動分に見合った分を補正した新たな中立点バイアス補償値が加えられることにより、開度制御回路120の出力を、所期の開度要求値に維持することができ、所定の加減弁開度を得る事が可能となる。
【0070】
(効果の説明)
以上のように、本実施形態により、タービン運転時、サーボ弁10に中立点変動が発生した場合でも、蒸気加減弁6の開度フィードバック信号bから開度流量変換部131を用いてサーボ弁10の中立点バイアス補償値の補正が行われるので、所定の加減弁開度を維持することが可能となる。
【0071】
〔第3の実施形態〕
(構成の説明)
図4は、本発明に係るタービン弁制御装置の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0072】
本実施形態は、第2の実施形態と、流量制御回路110および開度制御回路120は共通であり、補正制御部130が開度流量変換部131および補正回路部150を備える点でも同様であるが、補正回路部150の構成を異にする。
【0073】
本実施形態の補正回路部150は、補正回路減算部132、補正回路演算部134、補正回路判定部136、第2の補正回路加算部135および警報発生器137を有する。
【0074】
本実施形態では、補正回路演算部134の後段に補正回路判定部136および警報発生器137を設けている点が異なる。
【0075】
補正回路演算部134は、補正回路減算部132からの流量相当の補正値信号を、サーボ弁10の中立点バイアス補正値に変換する演算を行う点で第2の実施形態と同様である。
【0076】
補正回路判定部136は、補正回路演算部134から出力された中立点バイアス補正値信号が、所定の範囲にあるか否かを判定し、所定の範囲にある場合は、この中立点バイアス補正値をそのまま第2の補正回路加算部135に出力する。
【0077】
所定の上限値以上あるいは所定の下限値以下となった場合には、補正回路判定部136は、サーボ弁10の中立点バイアスの変動の程度が異常であると判定し、異常判定信号を警報発生器137に出力する。
【0078】
判定の取り方等は、前記の警報発生以外にも種々取り得る。例えば、上限値、下限値を表示用とし、更に、上限値より高い所定の値、下限値より低い所定の値を、インターロック用に使用してもよい。また、異常発生の場合の補正回路演算器134の出力である中立点バイアス補正値の処理についても、中立点バイアス補正値は生かしたまま使用する方法、あるいは、図示しないスイッチング回路も設けて、所定の値以上の変動の場合には、弁開度補正を中止したり、あるいはタービンをトリップさせる等の処理部を設けてもよい。
【0079】
(作用の説明)
サーボ弁10に中立点バイアス変動が発生した場合、第2の実施形態と同様に、補正回路演算部134からサーボ弁中立点バイアス補正信号が出力される。もしこの値が予め定めた上限値以上あるいは下限値以下の場合には、補正回路演算器134の出力値に基づき補正回路判定部136にて異常判定信号を出力し、警報発生器137は、異常判定信号を受けて警報を発し、運転員等に異常状態である旨の注意を喚起する。
【0080】
前述の通り、サーボ弁に内蔵されている中立点バイアスは、通常定格電流の10%〜20%程度で有り、この変動が異常に大きい場合、例えば数10%を超えてしまう様な時は、前述の様な単なる変動ではなく、異物詰り、損傷、スティック等サーボ弁に致命的な異常が発生した可能性が高い。即ちかかる事態の時には、補正を実施しても正常な弁開度制御を続行できる可能性が小さい。
【0081】
従って、警報が発せられた場合は、サーボ弁に通常発生する以上の中立点バイアス変動が生じた可能性が高いため、運転員は、このような事態に相応しい対応操作あるいは対応処置をとることができる。
【0082】
(効果の説明)
以上のように、本実施形態により、蒸気タービン2の運転中にサーボ弁10に中立点変動が発生した場合でも、蒸気加減弁6の開度フィードバック信号bから補正回路演算器134を用いて、中立点バイアス補償信号の補正が行われ所定の蒸気加減弁6の開度が維持される。さらに、警報発生器137により運転員が対応操作、対応処置をとることが可能である。
【0083】
〔第4の実施形態〕
(構成の説明)
図5は、本発明に係るタービン弁制御装置の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0084】
本実施形態は、第3の実施形態と、補正回路部の一部を変形したものであり、その他においては、第3の実施形態と同様である。
【0085】
本実施形態は、第3の実施形態と、流量制御回路110および開度制御回路120は共通であり、補正制御部130が開度流量変換部131および補正回路部150を備える点でも同様であるが、補正回路部150の構成を異にする。
【0086】
本実施形態の補正回路部150は、補正回路減算部132、補正回路演算部134、補正回路判定部136、第2の補正回路加算部135、補正回路関数発生器138および第3の補正回路加算部139を有する。すなわち、第3の実施形態では警報発生器137を設けているが、本実施形態ではこれに代えて補正回路判定部136の後段に補正回路関数発生器138および第3の補正回路加算部139を設けている点が異なる。
【0087】
補正回路判定部136は、補正回路演算部134から出力された中立点バイアス補正値信号が、所定の範囲にあるか否かを判定し、所定の範囲にある場合は、この中立点バイアス補正値をそのまま第2の補正回路加算部135に出力する。
【0088】
所定の上限値以上あるいは所定の下限値以下となった場合には、補正回路判定部136は、第2の補正回路加算部135へ出力するとともに、サーボ弁10に所定の処置信号の入力が必要として関数発生指令信号を補正回路関数発生器138に出力する。
【0089】
補正回路関数発生器138は、関数発生指令信号を受けて、時間的に変化する処置信号を出力し、第3の補正回路加算部139は、この処置信号を、第2の補正回路加算部135の出力に加算し、開度制御回路120のサーボ回路加算部124に出力する。
【0090】
サーボ回路加算部124は、この第3の補正回路加算部139の出力を、サーボ増幅器122により増幅された偏差信号に加算し、その結果を、サーボ弁10の開度指令信号であるサーボ弁開度指令信号aとしてサーボ弁10に出力する。
【0091】
一般的に、サーボ弁10単体での応答可能な周波数f1は、加減弁油筒装置8を含んだ系の応答可能な周波数f2より十分に大きい。すなわち、f1より小さくf2より大きな周波数領域が存在し、この領域の周波数fの信号が開度制御回路120の出力信号に含まれると、サーボ弁10はこれに応答するが、蒸気加減弁6は応答せずタービンの回転数や負荷には影響しない。
【0092】
従って、上記の時間的に変化する信号は、上記のf1より小さくf2より大きな周波数fで微小振幅の信号(ディザ信号)とする。
【0093】
なお、サーボ弁10を含む油圧制御系機器・配管等を保護し、且つサーボ弁への高周波信号を有効に働かせる手段として、サーボ弁10への高周波信号入力は、下記のうち何れか、あるいはその組み合わせとすることでもよい。
【0094】
(a)サーボ弁10単体での応答可能な周波数の上限以下で加減弁油筒装置8を含んだ系の応答可能な周波数の上限より十分に大きい範囲内の周波数であって周期的に変化する周波数あるいは周期的に大きさが変化する電流値あるいは周波数と電流値の何れもが周期的に変化する入力。
【0095】
(b)油圧の脈動に及ぼす影響を最小化すべく、矩形波ではなくサインカーブ等滑らかに連続した波形を有する入力。
【0096】
(c)上記(a)または(b)において、サーボ弁への高周波信号は一定時間間隔であって断続的あるいは単発的な入力。
【0097】
(作用の説明)
サーボ弁10に中立点バイアス変動が発生した場合、第3の実施形態と同様に、補正回路演算部134からサーボ弁中立点バイアス補正信号が出力される。補正回路判定部136は、この中立点バイアス補正信号を、第2の補正回路加算部135に出力するとともに、この値が予め定めた値以上あるいは以下の場合には、補正回路判定部136は、サーボ弁10に所定の処置信号の入力が必要として関数発生指令信号を補正回路関数発生器138に出力する。補正回路関数発生器138からは、サーボ弁10は応答するが蒸気加減弁6は応答しない周波数の微小振幅の信号(ディザ信号)が出力され、第3の補正回路加算部139、サーボ回路加算部124を介してサーボ弁10に出力され、サーボ弁10はこれに応答するため、サーボ弁10の微小な開度変化が生ずる。
【0098】
サーボ弁10の中立点変動が発生した場合、サーボ弁10のスプール等内部部品の摺動抵抗増大による中立点バイアス変動、サーボ弁10内の動的部分のスティック等の可能性がある。
【0099】
したがって、特に上記事象が内部摺動抵抗大等に起因している場合には、前記のようなディザ信号を加えることにより、動的部分がスティックから解放される等、その要因が排除され、サーボ弁の中立点バイアスの変動を修復できる。また、この間、加減弁油筒装置8側は周波数応答特性上応答しないため、蒸気タービン2の制御性にも影響を及ぼすこと無くタービンの良好な運転が継続される。
【0100】
(効果の説明)
以上のように、本実施形態により、蒸気タービン2の運転中にサーボ弁10に中立点変動が発生した場合でも、蒸気加減弁6の開度フィードバック信号bから開度流量変換部131を用いて、中立点バイアス設定信号の補正が行われ所定の蒸気加減弁6の開度が維持される。さらに、補正回路関数発生器138から処置信号が出力されることにより、サーボ弁10内の中立点バイアス発生要因の除去動作がなされ、安定な運転が可能となる。
【0101】
〔第5の実施形態〕
(構成の説明)
図6は、本発明に係るタービン弁制御装置の第5の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0102】
本実施形態は、第4の実施形態と、流量制御回路110および開度制御回路120は共通であり、補正制御部130が開度流量変換部131および補正回路部150を備える点でも同様であるが、補正回路部150の構成を異にする。
【0103】
本実施形態の補正回路部150は、補正回路減算部132、補正回路演算部134、補正回路判定部136、第2の補正回路加算部135、補正回路弁開度設定部140および第4の補正回路加算部141を有する。すなわち、第4の実施形態では補正回路判定部136の後段に補正回路関数発生器138および第3の補正回路加算部139を設けているが、本実施形態では、補正回路弁開度設定部140および第4の補正回路加算部141を設けており、流量制御回路110から開度制御回路120への出力である開度指令信号に加算される点が異なる。
【0104】
補正回路判定部136は、補正回路演算部134から出力された中立点バイアス補正値信号が、所定の範囲にあるか否かを判定し、所定の範囲にある場合は、この中立点バイアス補正値をそのまま第2の補正回路加算部135に出力する。
【0105】
所定の上限値以上あるいは所定の下限値以下となった場合には、補正回路判定部136は、第2の補正回路加算部135へ出力するとともに、蒸気加減弁6の動作が必要として弁開度変化発生指令信号を補正回路弁開度設定器140に出力する。
【0106】
補正回路弁開度設定器140は、補正回路判定部136からの弁開度変化発生指令信号を受けて、蒸気加減弁6が弁テスト動作を行うような時間的に変化する信号を第4の補正回路加算部141に出力する。第4の補正回路加算部141は、流量制御回路110の制御弁開度指令信号演算部112から開度制御回路120への出力信号である蒸気加減弁6の蒸気加減弁開度指令信号eに、補正回路弁開度設定部140からの時間的に変化する出力を加えて、新たな蒸気加減弁6の開度指令信号とするものである。
【0107】
前記の時間的に変化する信号は、蒸気加減弁6の通常の弁テスト時の開度変化に対応する程度の時間に対する蒸気加減弁6の開度変化の信号である。具体的には、蒸気加減弁を微閉、半閉あるいは全閉させ、元の弁開度に復帰する開度設定を出力する。
【0108】
(作用の説明)
サーボ弁10に中立点バイアス変動が発生した場合、第4の実施形態と同様に、補正回路演算部134からサーボ弁中立点バイアス補正信号が出力される。補正回路判定部136は、この中立点バイアス補正信号を、第2の補正回路加算部135に出力するとともに、この値が予め定めた値以上あるいは以下の場合には、補正回路判定部136は、蒸気加減弁6の動作が必要として弁開度変化発生指令信号を補正回路弁開度設定部140に出力する。
【0109】
補正回路弁開度設定部140からは、蒸気加減弁を微閉、半閉あるいは全閉させ、元の弁開度に復帰する開度設定が第4の補正回路加算部141に出力される。第4の補正回路加算部141は、補正回路弁開度設定部140からの開度設定を、制御弁開度指令信号演算部112の出力に加算し、新たな開度指令信号として開度制御回路に出力する。
【0110】
サーボ弁の中立点変動が発生した場合、補正回路弁開度設定部140から開度設定信号が第4の補正回路加算部141に出力されることにより、サーボ弁10が動作し、この結果、蒸気加減弁6も実動作する。特に中立点バイアスの変動がサーボ弁10の内部摺動抵抗の増大等に起因している場合には、その要因が排除され、サーボ弁10の中立点バイアスの変動を修復できる。この場合、油筒側も応答するため、サーボ弁10および蒸気加減弁6の双方の動作確認が可能である。
【0111】
(効果の説明)
以上のように、本実施形態により、タービン運転時、サーボ弁10に中立点変動が発生した場合でも、開度流量変換部131を用いて流量設定信号の補正が行われる。これにより、蒸気加減弁6の所定の開度を維持できるとともに、サーボ弁10および蒸気加減弁6の実動作により中立点バイアスの変動の要因の除去が可能となる。
【0112】
〔第6の実施形態〕
(構成の説明)
図7は、本発明に係るタービン弁制御装置の第6の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0113】
本実施形態は、第5の実施形態の変形であり、以下に説明する部分を除いては、第5の実施形態と同一の構成である。
【0114】
第5の実施形態では、補正回路判定部136で、補正回路演算部134の出力である中立点バイアス補正値が所定の範囲内にないと判定した場合は、補正回路弁開度設定部140に弁開度変化発生指令信号を出力し、補正回路弁開度設定器140は、補正回路判定部136からの弁開度変化発生指令信号を受けて、蒸気加減弁6が弁テスト動作を行うような時間的に変化する信号を第4の補正回路加算部141に出力する構成である。
【0115】
これに対し、本実施形態では、補正回路タイマー142およびOR回路143が備えられている。補正回路判定部136で、補正回路演算部134の出力である中立点バイアス補正値が所定の範囲内にないと判定した場合に、ただちに補正回路弁開度設定部140に弁開度変化発生指令信号を出力するのではなく、一旦、OR回路143に入力される。また、あらかじめ設定されている補正回路タイマー142で、設定時刻に達した場合も、その旨の信号が発せられ、OR回路143に入力される。OR回路143では、補正回路タイマー142から出力された弁開度変化発生指令信号と補正回路タイマー142の出力とのいずれかが入力されたときに、補正回路弁開度設定部140に弁開度変化発生指令信号を出力する。
【0116】
これ以降の構成は第5の実施形態と同様である。
【0117】
(作用の説明)
サーボ弁10に中立点バイアス変動が発生した場合、第5の実施形態と同様に、補正回路演算部134からサーボ弁中立点バイアス補正信号が出力される。補正回路判定部136は、この中立点バイアス補正信号を、第2の補正回路加算部135に出力するとともに、この値が予め定めた値以上あるいは以下の場合には、蒸気加減弁6の動作が必要として関数発生指令信号をOR回路143に出力する。
【0118】
サーボ弁10の中立点バイアスの変動が内部摺動抵抗大等に起因している場合には、その要因が補正回路タイマー142の作用により、更に早期に排除され、サーボ弁の中立点バイアスの変動を修復できる。
【0119】
(効果の説明)
以上のように、本実施形態により、タービン運転時、サーボ弁10に中立点変動が発生した場合でも、開度流量変換部131を用いて流量設定信号の補正が行われるので、所定の加減弁開度を維持することが可能となる。
【0120】
また更に第5の実施形態の構成に加え、補正回路タイマー142とOR回路143を構成に加えることにより更に予防保全を強化させる事が可能となる。
【0121】
〔第7の実施形態〕
(構成の説明)
図8は、本発明に係るタービン弁制御装置の第7の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0122】
本実施形態は、第4の実施形態の変形であり、補正回路判定部136と補正回路関数発生器138との間に、スイッチ部144が存在する。
【0123】
スイッチ部144は、補正回路判定部136からの処置信号を保持する。スイッチ部144は、保持している補正回路判定部136からの処置信号と外部信号との2つの信号を入力とし、これらのAND条件で、補正回路関数発生器138に指令信号を出力する。外部信号は、入力運転員等の操作入力でもよいし、プラントが停止した旨の信号の入力によってもよい。
【0124】
(作用の説明)
補正回路判定部136が、補正回路演算部134からの中立点バイアス補正値が所定の範囲内にないと判断した場合に、ただちに補正回路関数発生器138に処置信号出力の指令を出力するのではなく、一旦、スイッチ部144に出力され、指令信号はスイッチ部144にて保持される。
【0125】
その後、プラントが停止し、プラント停止を意味する信号がスイッチ部に入力された場合、あるいは、運転員が入力した場合は、スイッチ部144でのAND条件が成立し、この結果、タービン停止中に連続的或いは断続的に信号が発せられる。このように、タービン停止中のみにサーボ弁10への高周波信号入力がなされるため、蒸気加減弁6およびサーボ弁10を含む油圧制御系機器・配管等に及ぼす影響が最小化される。
【0126】
作用については、第4の実施形態と同様である。
【0127】
(効果の説明)
サーボ弁10への高周波信号入力をタービン運転中に実施した場合は、加減弁油筒装置8は動かないので制御上は問題無いが、油圧系に対し影響を及ぼす可能性が有る場合(例えば油圧配管系と高周波信号が共振にて脈動発生)には非常に有効である。
【0128】
即ち、サーボ弁10のスプールのみを実動作させるべくパルス上の波形が入力された場合には、油圧も急峻化する可能性が有る。最悪の場合、油撃等の衝撃波により、サーボ弁10等の油圧機器や油圧配管に損傷を与えてしまう可能性があるが、上記方法に拠れば、油圧が急峻化しにくくなるので、この問題点を解決できる。
【0129】
以上のように、本実施形態により、タービン運転時、サーボ弁10に中立点変動が発生した場合でも、開度流量変換部131を用いて流量設定信号の補正が行われるので、前記問題点を解決でき所定の加減弁開度を得る事が可能となる。また、処置によるサーボ弁10の動作はプラント停止後に行われることから機器等への影響が最小化される。
【0130】
〔その他の実施形態〕
以上の実施形態では、蒸気加減弁の場合を説明したが、主蒸気止め弁の副弁、ガスタービンやコンバインドサイクルにおけるタービン作動流体の流量を制御する燃料制御弁や燃料の分配制御弁についても、同様である。
【0131】
また、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0132】
たとえば、補正動作は、第1の実施形態における流量制御回路110に流量相当信号をフィードバックするもの、第5及び第6の実施形態のように開度指令信号にフィードバックするもの、あるいは第2〜第4の実施形態のようにサーボ弁開度指令信号aにフィードバックするもののように、フィードバック箇所がそれぞれ単独の部分だけではなく、これらを組み合わせてもよい。
【0133】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0134】
1 蒸気発生器
2 蒸気タービン
3 復水器
4 給水ポンプ
5 主蒸気止め弁
6 蒸気加減弁(タービン用制御弁)
7 発電機
8 加減弁油筒装置(タービン用制御弁油筒装置)
8a ピストン
9 弁開度検出器
10 サーボ弁
11 油圧発生装置
12 高圧油ポンプ
13 高圧油配管
14 回転数測定器
15 負荷測定装置
100 蒸気加減弁制御装置(タービン用弁制御装置)
110 流量制御回路
111 要求流量演算部
112 制御弁開度指令信号演算部
120 開度制御回路
121 サーボ回路減算部
122 サーボ増幅器
123 定数発生器
124 サーボ回路加算部
130 補正制御部
131 開度流量変換部
132 補正回路減算部
133 第1の補正回路加算部
134 補正回路演算部
135 第2の補正回路加算部
136 補正回路判定部
137 警報発生器
138 補正回路関数発生器
139 第3の補正回路加算部
140 補正回路弁開度設定部
141 第4の補正回路加算部
142 補正回路タイマー
143 OR回路
144 スイッチ部
150 補正回路部
a サーボ弁開度指令信号
b 開度フィードバック信号(制御弁実用度信号)
c タービン速度信号
d 負荷信号
e 蒸気加減弁開度指令信号(制御弁開度指令信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン速度信号および負荷信号に基づいて流量指令値を演算しタービン用制御弁の制御弁開度指令信号を出力する流量制御回路と、タービン用制御弁開度を検出する弁開度検出器からの制御弁開度フィードバック信号および前記制御弁開度指令信号を入力とし前記タービン用制御弁駆動用の油筒内油量を調節するサーボ弁に開度指令信号を出力する開度制御回路と、補正制御部と、を有し、高圧制御油圧により駆動されるタービン用制御弁を制御するタービン用弁制御装置であって、
前記流量制御回路は、
前記タービン速度信号および負荷信号に基づいて前記タービン用制御弁の流量指令値を演算し流量指令信号を出力する要求流量演算部と、
前記流量指令信号に基づき制御弁開度指令信号を演算する制御弁開度指令信号演算部と、
を備え、
前記開度制御回路は、
前記制御弁開度指令信号から前記制御弁開度フィードバック信号を減して偏差信号を演算する減算器と、
前記偏差信号を増幅するサーボ増幅器と、
前記サーボ弁内で正常時に付加される中立点バイアス分を補償するための中立点バイアス補償値を出力する定数発生器と、
前記中立点バイアス補償値と前記サーボ増幅器出力との合計値を演算し、サーボ弁開度指令信号を出力するサーボ回路加算部と、
を備え、
前記補正制御部は、
制御弁実開度信号を入力として、該制御弁実開度信号を流量相当信号に変換し実流量相当信号を出力する開度流量変換部と、
前記実流量相当信号に基づく補正回路部と、
を有し、前記補正回路部により、前記サーボ弁内の異常時に付加される中立点バイアス分を補償するための補正信号を、前記流量制御回路および前記開度制御回路の少なくとも一つにフィードバックする、
ことを特徴とするタービン用弁制御装置。
【請求項2】
前記補正回路部は、
前記流量指令信号と前記実流量相当信号とを入力とし、前記流量指令信号から前記実流量相当信号を減じる補正回路減算部と、
前記補正回路減算部出力と前記流量指令信号とを入力とし、これらの合計値を出力する第1の補正回路加算部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項3】
前記補正回路部は、
前記流量指令信号と前記実流量相当信号とを入力とし、前記流量指令信号から前記実流量相当信号を減じる補正回路減算部と、
前記補正回路減算部出力を入力とし、前記中立点バイアス補償値補正信号を出力する補正回路演算部と、
前記中立点バイアス補償値補正信号を前記定数発生器出力に加算し、前記サーボ回路加算部に出力する第2の補正回路加算部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項4】
前記補正回路部は、
前記中立点バイアス補償値補正信号が所定の範囲にあるか否かを判定し、所定の範囲にある場合は前記中立点バイアス補償値補正信号の値を前記第2の補正回路加算部に出力し、所定の範囲にない場合は異常判定信号を発生する、補正回路判定部と、
前記異常判定信号を受けて警報を発する警報発生器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項5】
前記補正回路部は、
前記中立点バイアス補償値補正信号が所定の範囲にあるか否かを判定し、所定の範囲にある場合は前記中立点バイアス補償値補正信号の値を前記第2の補正回路加算部に出力し、所定の範囲にない場合は異常判定信号を発生する、補正回路判定部と、
前記異常判定信号を受けて、前記サーボ弁単体では応答可能な周波数より低く、前記タ−ビン用制御弁の油筒装置を含んだ系の応答可能な周波数より十分に大きい領域の周波数信号を発する補正回路関数発生器と、
前記補正回路関数発生器からの出力を前記第2の補正回路加算部出力に加算する第3の補正回路加算部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項6】
前記補正回路関数発生器は、タービン停止中のみに前記高周波信号を発生することを特徴とする請求項5に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項7】
前記補正回路関数発生器は、周波数および電流値の少なくとも一方が予め規定した範囲内で周期的に変化し、一定時間間隔で断続的な前記高周波信号を発生することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項8】
前記補正回路関数発生器は、サイン波状の連続的な波形で、一定時間間隔で断続的な前記高周波信号を発生することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項9】
前記補正回路部は、
前記中立点バイアス補償値補正信号が所定の範囲にあるか否かを判定し、所定の範囲にある場合は前記中立点バイアス補償値補正信号の値を前記第2の補正回路加算部に出力し、所定の範囲にない場合は異常判定信号を発生する、補正回路判定部と、
前記異常判定信号を受けて時刻変化に対する弁開度要求値を発する補正回路弁開度設定部と、
前記補正回路弁開度設定部からの出力を前記制御弁開度指令信号に加算する第4の補正回路加算部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項10】
前記補正回路部は、
前記異常判定信号とタイマー出力を入力として、それらのOR条件により出力するOR回路をさらに備え、
前記補正回路弁開度設定部は、前記OR回路からの出力を入力とする、
ことを特徴とする請求項9に記載のタービン用弁制御装置。
【請求項11】
タービンと、
前記タービンの作動流体の流量を制御するタービン用制御弁と、
前記タービン用制御弁を駆動するタービン用制御弁油筒装置と、
前記油筒用の作動油を供給する油圧発生装置と、
前記油圧発生装置から前記油筒に送油する高圧油ポンプと、
前記油筒内の油量を調節するサーボ弁と、
前記タービン用制御弁の開度を検出する弁開度検出器と、
前記タービンの回転数を測定しタービン速度信号を発する回転数測定器と、
前記タービンの負荷を測定し負荷信号を発する負荷測定装置と、
前記タービン速度信号および負荷信号に基づいて流量指令値を演算し前記タービン用制御弁の制御弁開度指令信号を出力する流量制御回路と、前記弁開度検出器からの制御弁開度フィードバック信号および前記制御弁開度指令信号を入力とし前記サーボ弁に開度指令信号を出力する開度制御回路と、補正制御部と、を有し、前記タービン用制御弁を制御するタービン用弁制御装置と、
を有するタービン設備であって、
前記流量制御回路は、
前記タービン速度信号および負荷信号に基づいて前記タービン用制御弁の流量指令値を演算し流量指令信号を出力する要求流量演算部と、
前記流量指令信号に基づき制御弁開度指令信号を演算する制御弁開度指令信号演算部と、
を備え、
前記開度制御回路は、
前記制御弁開度指令信号から前記制御弁開度フィードバック信号を減して偏差信号を演算する減算器と、
前記偏差信号を増幅するサーボ増幅器と、
前記サーボ弁内で正常時に付加される中立点バイアス分を補償するための中立点バイアス補償値を出力する定数発生器と、
前記中立点バイアス補正値と前記サーボ増幅器出力との合計値を演算し、サーボ弁開度指令信号を出力するサーボ回路加算部と、
を備え、
前記補正制御部は、
前記制御弁実開度信号を入力とし、流量相当信号に変換し実流量相当信号を出力する開度流量変換部と、
前記実流量相当信号に基づく補正回路部と、
を有し、前記補正回路部により、前記サーボ弁内の異常時に付加される中立点バイアス分を補償するための補正信号を、前記流量制御回路および前記開度制御回路の少なくとも一つにフィードバックする、
ことを特徴とするタービン設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53550(P2013−53550A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191880(P2011−191880)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】