ターフェニレン誘導体の製造方法
【課題】優れた大気安定性を有する半導体活性相形成が可能な、ターフェニレン誘導体を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法であり、テトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化した後、銅化合物と反応させることを特徴とするターフェニレン誘導体の製造方法。
(ここで、置換基R1〜R14は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を示す。l、n、mは整数である。)
【解決手段】一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法であり、テトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化した後、銅化合物と反応させることを特徴とするターフェニレン誘導体の製造方法。
(ここで、置換基R1〜R14は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基を示す。l、n、mは整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体等の電子材料への展開が可能なターフェニレン誘導体の製造方法に関する。さらに本発明は、該ターフェニレン誘導体の前駆化合物であるテトラハロターフェニル誘導体からの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも電荷のキャリアー移動を担う有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。この有機半導体活性相を構成する有機材料のキャリアー移動能により有機半導体デバイス性能が左右される。
【0003】
例えば、ペンタセン等の結晶性材料はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(例えば非特許文献1参照)。又、ペンタセン等のポリアセンを溶解させ塗布法でデバイスを製造する試みも報告されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、ペンタセンを半導体とする有機薄膜トランジスタは大気中での安定性が低いことから実用的ではなかった。また、ポリ−(3,3’’’−ジドデシル−クォーターチオフェン)等の自己組織化材料は溶媒に可溶であり、塗布によるデバイス作製が報告されているが、キャリアー移動度が結晶性化合物より1桁低いことから(例えば非特許文献2参照)、得られた有機半導体デバイスの特性が低いという問題があった。
【0004】
一方、ターフェニレン誘導体は剛直な棒状分子であり、ペンタセンに似た構造を有すことが知られているが、大気中で安定であるという特徴を有しており、その製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。本発明は、特許文献2の方法よりもさらに高収率でターフェニレン誘導体を製造する方法を提案する。
【0005】
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライドフィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー」、(米国)、2004年、126巻、3378−3379頁
【特許文献1】WO2003/016599号パンフレット
【特許文献2】WO2006/109569号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記の従来技術が有する問題点に鑑み、優れた大気安定性を有する半導体活性相形成が可能なターフェニレン誘導体を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、本発明の新規なターフェニレン誘導体の製造方法を見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
以下に本発明の下記一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法について説明する。
【0009】
【化1】
【0010】
(ここで、置換基R1〜R14は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基を示す。
なお、R1〜R6の内、任意の二以上のものは互いに結合することができ、R8〜R13の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。
l及びnは、各々0〜2の整数であり、mは0又は1の整数である。)
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、下記一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化した後、銅化合物と反応させることにより製造することができる。
【0011】
【化2】
【0012】
(ここで、置換基X1〜X4は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を示す。一般式(2)の置換基R1〜R14、並びに記号l、m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
なお、一般式(2)の表記は、一般式(2)が下記一般式(3)及び一般式(4)で示されるパラ位置異性体及びメタ位置異性体を総称するものである。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
(ここで、一般式(3)及び一般式(4)の置換基R1〜R14及びX1〜X4、並びに記号l、m及びnは一般式(2)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
なお、ここでテトラリチオ化とは、一般式(2)における4個のハロゲンX1〜X4をそれぞれリチウムに置換することを意味する。
【0016】
本発明の一般式(1)の置換基について述べる。
【0017】
置換基R1〜R14における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル等の炭素と水素のみから成るアルキル基;トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフロオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロドデシル基等のハロゲン化アルキル基を挙げることができる。
【0018】
置換基R1〜R14における、炭素数4〜30のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−(n−オクチル)フェニル基、m−(n−オクチル)フェニル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、p−(n−パーフルオルオクチル)フェニル基、2−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−パーフルオロナフチル基、アントラセニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、1−ビフェニレノ基、2−ビフェニレノ基、ターフェニル基、2−ピリジル基、テトラフルオロピリジル基、ビピリジル基、(ジフェニルアミノ)フェニル基、(ジフェニルアミノ)ビフェニル基等を挙げることができる。
【0019】
置換基R1〜R14における、炭素数2〜20のアルキニル基は特に限定されず、例えばエチニル基、メチルエチニル基、イソプロピルエチニル基、tert−ブチルエチニル基、(n−オクチル)エチニル基、トリフルオロメチルエチニル基、フェニルエチニル基、{4−(n−オクチル)フェニル}エチニル基、ナフチルエチニル基、アントラセニルエチニル基、ビフェニルエチニル基、ターフェニルエチニル基、ベンジルエチニル基、ビフェニレノエチニル基、パーフルオロフェニルエチニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル基、(n−パーフルオロオクチル)エチニル基、(n−パーフルオロドデシル)エチニル基、{4−(n−パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基等を挙げることができる。
【0020】
置換基R1〜R14における、炭素数2〜30のアルケニル基は特に限定されず、例えばエテニル基、メチルエテニル基、イソプロピルエテニル基、tert−ブチルエテニル基、(n−オクチル)エテニル基、(トリフルオロメチル)エテニル基、フェニルエテニル基、{4−(n−オクチル)フェニル}エテニル基、ナフチルエテニル基、アントラセニルエテニル基、パーフルオロフェニルエテニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニル基、(n−パーフルオロオクチル)エテニル基、(n−パーフルオロドデシル)エテニル基、ビフェニルエテニル基、ターフェニルエテニル基、ベンジルエテニル基、ビフェニレノエテニル基、フェニル(メチル)エテニル基、(トリメチルシリル)エテニル基、(トリエチルシリル)エテニル基、(トリイソプロピルシリル)エテニル基等を挙げることができる。なお、該炭素数2〜20のアルケニル基はトランス体及びシス体が存在する場合は、トランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
【0021】
置換基R1〜R6における任意の二以上のものが互いに結合する場合、及び置換基R8〜R13における任意の二以上のものが互いに結合する場合に形成される結合置換基の内、好ましい置換基例である不飽和環基としては次のものが挙げられる。
【0022】
該不飽和環の例として、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいテトラフェニレン環、又は置換基を有してもよいチオフェン環等を挙げることができる。置換基を有してもよいベンゼン環の例として、ベンゼン環、ジメチルベンゼン環、ジ(n−ヘキシル)ベンゼン環、ジ(n−オクチル)ベンゼン環、ジ(n−ドデシル)ベンゼン環、ナフタレン環、メチルナフタレン環、ジメチルナフタレン環、フェニルナフタレン環、ジ(パーフルオロ−n−オクチル)ベンゼン環、ジ(パーフルオロ−n−ドデシル)ベンゼン環等を挙げることができる。置換基を有していてもよいテトラフェニレン環の例として、テトラフェニレン環、フェニルテトラフェニレン環等を挙げることができる。置換基を有してもよいチオフェン環の例として、チオフェン環、メチルチオフェン環、(n−オクチル)チオフェン環、フェニルチオフェン環等を挙げることができる。
【0023】
該不飽和環として、好ましくは置換基を有してもよいベンゼン環又は置換基を有してもよいチオフェン環であり、特に好ましくは、ベンゼン環、ジ(n−オクチル)ベンゼン環、(n−オクチル)チオフェン環である。
【0024】
置換基R1〜R14は、好ましくは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、又は炭素数2〜30のアルケニル基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基である。
【0025】
一般式(1)において、置換基R1〜R6の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合において、好ましい結合として置換基R3とR4との結合を挙げることができる。置換基R8〜R13の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合において、好ましい結合として置換基R10とR11との結合を挙げることができる。さらに、置換基R1〜R6の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合と、置換基R8〜R13の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合において、これらの結合が、双方の場合に同時に形成されていても、若しくはいずれか一方の場合にのみに形成されていても、いずれでも構わない。
【0026】
本発明の一般式(1)のl、m及びnの値において、好ましい組合わせはmが0である場合、l及びnが共に2である場合、lが2、m及びnが共に0である場合を挙げることができる。
【0027】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の環構造は特に限定されず、環構造の両端が左右対称である、若しくは左右非対称であることのいずれの構造も可能である。ここで環構造の両端が左右対称とは、l及びnが同じ値であり、左右の環構造の対応する位置に配置された置換基が一致する場合、即ち、R1=R13,R2=R12,R3=R11,R4=R10,R5=R9,R6=R8である場合を意味する。一方、左右非対称とは、例えば、lとnが異なる値の場合、l及びnが同じ値ではあるが左右の環構造の対応する位置に配置された置換基が一致しない場合等を挙げることができる。
【0028】
本発明の一般式(2)の置換基について述べる。
【0029】
置換基X1〜X4は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子であり、好ましく臭素原子である。
【0030】
置換基R1〜R14、並びに記号l、m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。
【0031】
なお、一般式(2)の表記は、一般式(2)が一般式(3)及び一般式(4)で示されるパラ位置異性体及びメタ位置異性体を総称するものである。
【0032】
そして、具体的な一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体としては、特に限定はなく、例えば以下の化合物を挙げることができ、
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
特に以下の化合物が好ましい。
【0041】
【化12】
【0042】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法の原料として用いられる一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体は、例えばテトラハロアレーンと2−ハロアリール試薬を、パラジウム触媒及び/又はニッケル触媒存在下で反応させる(WO2006/109569号パンフレット)ことにより合成することができる。
【0043】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法について述べる。
【0044】
一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をテトラリチオ化する場合、用いるリチオ化剤は、一般式(2)におけるハロゲンX1〜X4をリチウムに置換することができるものである限り特に限定されず、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;フェニルリチウム、p−tert−ブチルフェニルリチウム、p−メトキシフェニルリチウム、p−フルオロフェニルリチウム等のアリールリチウム;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のリチウムアミド;リチウムパウダー等のリチウム金属を挙げることができ、好ましくはアルキルリチウムであり、特に好ましくはsec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムである。
【0045】
該リチオ化剤の使用量は一般式(2)のテトラハロターフェニル誘導体に対し、6〜10当量が好ましく、特に好ましくは7〜9当量の範囲で使用することができる。
【0046】
該テトラリチオ化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。
【0047】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法における該テトラリチオ化反応は、一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化することで収率良く達成することができる。即ち、リチオ化剤としてはアルキルリチウムが好ましく用いられ、アルキルリチウムにて一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化すると、ハロゲン−金属交換反応によりアルキルハライドが同時に生成する。該アルキルハライドはさらにリチオ化剤若しくは生成したテトラハロターフェニル誘導体のリチオ化物と反応し、プロトンの引き抜きによるβ−水素脱離が起き、ハロゲン化リチウム及びアルカンを生成する。従ってテトラハロターフェニル誘導体のリチオ化物がβ−水素脱離を起こした場合は、テトラハロターフェニル誘導体のテトラリチオ体が生成できなくなり、収率低下の原因となる。従って、反応剤として用いるアルキルリチウムに生成したアルキルハライドの該β−水素脱離を起こさせた方が、テトラハロターフェニル誘導体のテトラリチオ体の収率が向上することが考えられる。そこで、本発明者らは、アルキルリチウムが過剰に存在できる条件をできるだけ長く保つことが重要と考え、テトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入することでテトラリチオ化の収率が向上し、さらには目的のターフェニレン誘導体の収率が向上することを見出した。
【0048】
テトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入する方法は特に制限はなく、リチオ化剤と上記で挙げた溶媒の混合物に、テトラハロターフェニル誘導体を投入することが好ましい。この場合、テトラハロターフェニル誘導体は該溶媒から成る溶液であっても何ら差し支えることはない。テトラハロターフェニル誘導体を投入する時の温度は、−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃である。テトラハロターフェニル誘導体を投入する時間は、投入時の温度にもより、1〜60分が好ましく、特に好ましくは3〜40分である。
【0049】
テトラハロターフェニル誘導体を投入した後は、テトラリチオ化を充分に進行させるため、熟成時間を設定することが好ましい。該熟成時間は1〜120分が好ましく、特に好ましくは5〜60分である。なお、該熟成時間中の温度は−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃である。テトラリチオ化反応の進行は、反応液の一部を取り出し、水で反応を停止させた後、ガスクロマトグラフィーで分析することで監視することができる。
【0050】
該テトラリチオ化反応により生成したテトラリチウム塩は、次いで銅化合物と反応させる。係る銅化合物との反応は、前記テトラリチオ化反応により生成したテトラリチウム塩を含む反応混合物に銅化合物を直接用いて反応させる方法;生成したテトラリチウム塩を一度単離した後、銅化合物と反応させる方法のいずれを用いてもよい。
【0051】
テトラリチウム塩と銅化合物との反応に用いられる銅化合物は特に限定されず、例えば塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)、アセチルアセトナート銅(II)等の2価銅;塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、酢酸銅(I)等の1価銅等を挙げることができる。好ましくは2価銅であり、特に好ましくは塩化銅(II)である。
【0052】
該銅化合物との反応は好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHFである。用いる銅化合物の量は、一般式(2)のテトラハロターフェニル誘導体に対し、4〜20当量が好ましく、特に好ましくは6〜15当量である。該銅化合物との反応温度は−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃であり、反応時間は1〜30時間が好ましく、特に好ましくは1〜18時間である。
【0053】
該銅化合物はそのまま用いることもできるし、あるいは上記で挙げた溶媒に溶解した溶液を用いることもできる。
【0054】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造は、好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で実施する。
【0055】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法では、一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をテトラリチオ化した後、塩化亜鉛と反応させ、その後に銅化合物と反応させることもできる。
【0056】
かくして得られた、本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定されず、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
【0057】
本発明の製造方法で製造することのできる一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、特に限定はなく、例えば以下の化合物を挙げることができ、
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
【化20】
【0066】
特に以下の化合物が好ましい。
【0067】
【化21】
【0068】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法における原料として用いられる一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体は、その構造として一般式(3)で示されるパラ型と、一般式(4)で示されるメタ型を有する。しかし、一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の原料としては、これらパラ及びメタ型の2種類の異性体の何れをも用いることができるし、さらにこれら2種類の異性体の任意の割合の混合物であっても何ら差し支えなく原料として使用することができる。
【0069】
本発明の製造方法で製造することのできる一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、平面剛直性の高い分子構造を有することから、優れた半導体特性を与えることが期待できる。又、該ターフェニレン誘導体はトルエン等のハロゲンを含まない溶媒に溶解し、溶液状態にあっても容易に空気酸化されることはない。従って、塗布法により半導体薄膜を容易に作製できる。したがって、本発明の製造方法で製造することのできる一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、又はICタグ用等のトランジスタの有機半導体活性相用途、さらに有機ELディスプレイ材料、有機半導体レーザー材料、有機薄膜太陽電池材料、又は有機メモリー材料等に利用することができる。
【発明の効果】
【0070】
優れた大気安定性を有する半導体活性相形成が可能なターフェニレン誘導体を効率よく製造する方法を提供する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、断りのない限り試薬等は市販品を用いた。
【0072】
生成物の同定には1H NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、1H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて、マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)で測定した。
【0073】
反応の進行の確認等はガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析を用いた。
【0074】
ガスクロマトグラフィー分析
装置 島津GC14B
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30m
ガスクロマトグラフィー−マススペクトル分析
装置 パーキンエルマーオートシステムXL(MS部;ターボマスゴールド)
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30
反応用の溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。
【0075】
合成例1 (1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンの合成)
1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンはジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー、1997年、119巻、4578−4593頁に記載されている方法を参考に次のように合成を行った。
【0076】
メカニカルスターラー付き1lの三口フラスコに過ヨウ素酸16.7g(73.0mmol)及び硫酸525mlを加えた。過ヨウ素酸が溶解した後、ヨウ化カリウム36.4g(219mmol)を少しずつ添加した。その内容物の温度を−30℃に冷却し、1,4−ジブロモベンゼン34.5g(146mmol)を5分間かけて添加した。得られた混合物を−25℃で36時間撹拌した。反応混合物を氷(2Kg)中へ注いだ後、濾過し固体を取り出した。その固体をクロロホルムに溶解させ、5%苛性ソーダ水溶液及び水で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をクロロホルムから再結晶化し、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンの白色結晶を得た(36.0g、収率50%)。
1H NMRスペクトルは文献値と一致した。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.02(s,2H)。
【0077】
合成例2 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン4.39g(9.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)974mg(0.84mmol)、及び2−ブロモフェニルボロン酸(シグマ−アルドリッチ製)4.16g(20.7mmol)を添加した。さらにトルエン72ml、エタノール18ml、及び炭酸ナトリウム5.72g(54.0mmol)と水22mlからなる水溶液を添加した。85℃のオイルバスに浸し、15時間撹拌した。室温まで冷却後、ジクロロメタン及び飽和食塩水を添加し分相した。有機相を減圧濃縮し、残渣をトルエンから再結晶化した。2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル白色針状晶を得た(4.18g、収率85%)。
融点:230−231℃。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=7.70(d,J=8.0Hz,2H),7.55(d,J=1.5Hz,2H),7.45−7.23(m,6H)。
1H NMRスペクトルを図1に示した。
MS m/z:546(M+,92%),466(M+−Br,45),386(M+−2Br,53),226(M+−4Br,100)。
【0078】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの構造式を下記に示す。
【0079】
【化22】
【0080】
実施例1 (ターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF23mlを添加し、−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液5.0ml(4.9mmol)を添加した。−73℃下で、合成例2で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル272mg(0.498mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)828mg(6.2mmol)を一気に投入し、一晩かけて室温まで温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、ターフェニレンの赤色の板状結晶を得た(43mg、収率38%)。
1H NMRスペクトル(重ベンゼン、30℃):δ=6.46(AA’,J=4.8Hz,2.9Hz,4H),6.20(BB’,J=4.6Hz,2.9Hz,4H),5.93(s,2H)。
1H NMRスペクトルを図2に示した。
MS m/z:226(M+,100%),113(M+/2,29)。
【0081】
得られたターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0082】
【化23】
【0083】
参考例1 (ターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例2で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル280mg(0.512mmol)及びTHF23mlを添加した。この溶液を−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液5.0ml(4.9mmol)を滴下した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)828mg(6.2mmol)を一気に投入し、一晩かけて室温まで温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、ターフェニレンの赤色の板状結晶を得た(16mg、収率14%)。
【0084】
合成例3 (2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニル及び2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に1,2,4,5−テトラブロモベンゼン(東京化成工業製)1.70g(4.31mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)253mg(0.218mmol)、及び2−ブロモフェニルボロン酸(シグマ−アルドリッチ製)1.99g(9.90mmol)を添加した。さらにトルエン34ml、エタノール9ml、及び炭酸ナトリウム2.75g(25.9mmol)と水10mlからなる水溶液を添加した。85℃のオイルバスに浸し、8時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和食塩水を添加し分相した。得られた有機相にターシャーリーブチルハイドロパーオキサイド(70重量%含量)1mlを室温で添加し、2時間撹拌した。飽和食塩水を添加し、分相し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0085】
まず2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルを主体とする成分をヘキサン/トルエン=1/1で溶出し、その溶出物をフラクション1とし、次に2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルを主体とする成分をトルエンのみで溶出し、その溶出物をフラクション2とした。各フラクションをそれぞれに減圧濃縮した。その結果、フラクション2(0.32g)は全体が固体となった。一方、フラクション1(1.97g)は一部が固体となったことから、油状部分と固体部分に分けた。この油状部分をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(溶媒、ヘキサン)。その結果、無色透明な油状物が得られた。この無色透明な油状物は時間の経過と共に固化した。
【0086】
1H NMRスペクトルより、この無色透明な油状物は2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルであった(1.37g、収率58%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=7.99(d,J=1.9Hz,1H),7.68(dd,J=7.8Hz,1.7Hz,2H),7.42−7.19(m,6H),7.15(s,1H)。
1H NMRスペクトルを図3に示した。
MS m/z:546(M+,75%),466(M+−Br,41),386(M+−2Br,51),226(M+−4Br,100)。
【0087】
得られた2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルの構造式を下記に示す。
【0088】
【化24】
【0089】
一方、先のフラクション1から分離された固体部分とフラクション2を合わせ、トルエンから再結晶化を行った。白色針状結晶が得られた。
【0090】
1H NMRスペクトルより、この白色針状結晶は合成例2で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルと一致した(0.47g、収率20%)。
【0091】
実施例2 (ターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF17mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液2.9ml(2.8mmol)を添加した。−73℃下で、合成例3で合成した2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニル188mg(0.344mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)462mg(3.44mmol)を一気に投入し、一晩かけて室温まで温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、ターフェニレンの赤色の板状結晶を得た(24mg、収率31%)。1H NMRスペクトル(重ベンゼン、30℃)は、実施例1で得られたものと一致した。
【0092】
合成例4 (2−ブロモ−3−ヨードナフタレンの合成)
2−ブロモ−3−ヨードナフタレンはシンセティック コミュニュケーションズ、2003年、33巻、2751−2756頁に記載されている方法を参考に次のように合成を行った。なお、原料の2−ブロモ−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレンはシグマ−アルドリッチから購入したものをそのまま使用した。
【0093】
窒素雰囲気下、500mlの3口フラスコ反応容器にメタンスルホン酸200ml及びオルト過ヨウ素酸1.31g(5.74mmol)を加えた。30分間撹拌後、ヨウ素4.36g(17.2mmol)を加えた。この混合物を2時間撹拌した後、2−ブロモ−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレン30.1g(40.0mmol)を少しずつ加えた。この混合物を30℃で3日間撹拌した。反応混合物を氷水中に注ぎ、生成した固体を濾過した。さらにこの固体を水で洗浄し、減圧乾燥した後、2−ブロモ−3−ヨード−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレンの白色粉体を得た(34.8g、収率99%)。
【0094】
ガラス製昇華管の末端に上記で得た2−ブロモ−3−ヨード−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレン8.05g(9.16mmol)を加えた。末端を210℃に加熱し、1.5パスカルに減圧した。発生した2−ブロモ−3−ヨードナフタレンは減圧側のガラス管に付着し、ヘキサクロロシクロペンタジエンは減圧側の底に溜まった。1時間後昇華操作を中断し、ガラス管の付着物を取り出し、再度同じ操作を繰り返した。1時間の昇華操作後、2−ブロモ−3−ヨードナフタレンを得た(2.29g、収率75%)。
1H NMRスペクトルは文献値と一致した。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.41(s,1H),8.14(s,1H),7.75−7.65(m,2H),7.54−7.45(m,2H)。
【0095】
合成例5 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例4で合成した2−ブロモ−3−ヨードナフタレン2.03g(6.10mmol)及びTHF12mlを添加した。この溶液を−65℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液9.9ml(6.4mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液6.4ml(6.4mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮した。得られた白色固体に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン1.41g(2.89mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)285mg(0.247mmol)、及びTHF31mlを添加した。60℃で4時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸4mlを添加することで反応を停止させた。全体を減圧濃縮し、溶媒を留去した。析出した固体を濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにクロロホルムとTHFで洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥後、2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの白色結晶を得た(1.20g,収率64%)。
DSC測定による融点:331℃。
1H NMR(CDCl3,60℃):δ=8.22(s,2H),7.90−7.75(m,4H),7.85(s,2H),7.67(s,2H),7.60−7.48(m,4H)。
1H NMRスペクトルを図4に示した。
MS m/z:646(M+,64%),566(M+−Br,8),486(M+−2Br,34),406(M+−3Br,6),326(M+−4Br,92),163((M+−4Br)/2,100)。
【0096】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの構造式を下記に示す。
【0097】
【化25】
【0098】
実施例3 (ジベンゾターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF28mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液4.4ml(4.3mmol)を添加した。−73℃下で、合成例5で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニル401mg(0.621mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)740mg(5.50mmol)を一気に投入した。一晩かけて室温まで反応温度を上げた。飽和食塩水を添加した後、生成した固体を濾過した。さらにこの得られた固体を3N塩酸、水及びTHFで洗浄した後、減圧乾燥しジベンゾターフェニレンの黄−オレンジ色固体を得た。さらにこの固体をo−ジクロロベンゼンから再結晶化することで金色の金属光沢を有する板状のジベンゾターフェニレンの固体を得た(97mg、収率48%)。
DSC測定による分析(密閉容器使用):500℃で炭化による発熱を観測した。
MS m/z:326(M+,100%),163(M+/2,25)。
【0099】
得られたジベンゾターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0100】
【化26】
【0101】
参考例2 (ジベンゾターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例5で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニル389mg(0.602mmol)及びTHF28mlを添加した。この懸濁溶液を−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製0.98M)のシクロヘキサン溶液4.4ml(4.3mmol)を滴下した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)726mg(5.40mmol)を一気に投入した。一晩かけて室温まで反応温度を上げた。飽和食塩水を添加した後、生成した固体を濾過した。さらにこの得られた固体を3N塩酸、水及びTHFで洗浄した後、減圧乾燥しジベンゾターフェニレンの黄−オレンジ色固体を得た。さらにこの固体をo−ジクロロベンゼンから再結晶化することで金色の金属光沢を有する板状のジベンゾターフェニレンの固体を得た(55mg、収率28%)。
【0102】
合成例6 (4,5,4”,5”−テトラフルオロ−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼン(和光純薬工業製)2.53g(9.30mmol)及びTHF15mlを添加した。この溶液を−40℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液15ml(9.7mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液9.8ml(9.8mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮した。得られた白色固体に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン2.15g(4.41mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)408mg(0.353mmol)、及びTHF30mlを添加した。60℃で6時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸(8ml)を添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩を添加後、分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去した。この得られた残渣をトルエン10mlに溶解させ、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.5ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。有機相をトルエン:ヘキサン=1:1に溶解させ、シリカゲルを充填したカラムを通過させた。溶出液を減圧濃縮し、得られた固体をヘキサン:トルエン=3:1の混合溶媒を用いて再結晶化を行い、目的物の白色固体を得た(1.48g,収率54%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=7.58−7.45(m,2H),7.53(s,2H),7.23−7.09(m,2H)。
MS m/z:618(M+,73%),538(M+−Br,32),458(M+−2Br,45),378(M+−3Br,4),298(M+−4Br,100)。
【0103】
得られた4,5,4”,5”−テトラフルオロ−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの構造を下記に示す。
【0104】
【化27】
【0105】
実施例4 (2,3,7,8−テトラフルオロターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF28mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製0.98M)のシクロヘキサン溶液5.9ml(5.8mmol)を添加した。−73℃下で、合成例6で合成した4,5,4”,5”−テトラフルオロ−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル510mg(0.825mmol)を4分間かけて投入した。−73℃から−68℃で20分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)985mg(7.33mmol)を一気に投入した。徐々に昇温し、7時間かけて−20℃まで反応温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後、分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後、静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、2,3,7,8−テトラフルオロターフェニレンの赤色結晶を得た(81mg,収率33%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=6.33(t,J=7.3Hz,4H),6.14(s,2H)。
MS m/z:298(M+,100%),149(M+/2,38)。
【0106】
得られた2,3,7,8−テトラフルオロターフェニレンの構造を下記に示す。
【0107】
【化28】
【0108】
合成例7 (1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンの合成)
1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンを「シンレット」、2003年、29−34頁に従い次のように合成した。
【0109】
メカニカルスターラー付き1lの三口フラスコに過ヨウ素酸36.9g(162mmol)及び硫酸150mlを加えた。過ヨウ素酸が溶解した後、ヨウ化カリウム80.7g(486mmol)を少しずつ添加した。その内容物の温度を0℃に冷却し、1,2−ジブロモベンゼン75.0g(318mmol)を添加した。得られた混合物を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を氷へ注いだ後、濾過し固体を取り出した。その固体をTHF/メタノールから2回再結晶化し、1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンの白色結晶を得た(76.2g、収率49%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.03(s,2H)。
【0110】
合成例8 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフェニルベンゼンの合成)
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例7で合成した1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼン3.074g(6.30mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)600mg(0.519mmol)、及びフェニルボロン酸(和光純薬工業製)1.920mg(15.7mmol)を添加した。さらにトルエン50ml、エタノール13ml、及び炭酸ナトリウム4.007g(37.8mmol)と水16mlからなる水溶液を添加した。82℃に加熱し、24時間撹拌した。室温まで冷却後、トルエン及び水を添加し分相した。有機相を濃縮し、得られた残渣をトルエン26mlに溶解後、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)1.0mlを添加し、室温で2時間撹拌した。このトルエン溶液を水で2回洗浄後、有機相を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後(溶媒、ヘキサン)、1,2−ジブロモ−4,5−ジフェニルベンゼンの白色固体を得た(1.953g、収率80%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=7.67(s,2H),7.24−7.13(m,6H),7.12−6.90(m,4H)。
MS m/z:388(M+,100%),308(M+−Br,23),228(M+−2Br,53)。
【0111】
合成例9 (2−フェニル−5−ブロモ−4−ビフェニルボロン酸の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例8で合成した1,2−ジブロモ−4,5−ジフェニルベンゼン755mg(1.95mmol)及びTHF12mlを添加した。この溶液を−100℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液1.3ml(2.1mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度でホウ酸トリイソプロピル(東京化成工業製)472mg(2.51mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、3N塩酸を添加し、分相した。有機相を減圧濃縮し、770mgの白色固体を得た。
【0112】
合成例10 (4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例4で合成した2−ブロモ−3−ヨードナフタレン333mg(1.00mmol)及びTHF20mlを添加した。この溶液を−65℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(東京化成工業、0.80M)のTHF溶液1.3ml(1.04mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液1.1ml(1.1mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮した。得られた白色固体に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン488mg(1.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)83mg(0.072mmol)、及びTHF3mlを添加した。60℃で6時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸4mlを添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩を添加後、分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去した。さらに加熱真空乾燥した後、得られた残渣に合成例9で合成した2−フェニル−5−ブロモ−4−ビフェニルボロン酸222mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)41mg(0.035mmol)、トルエン5.2ml、及びエタノール1.2mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム349mg(3.29mmol)と水1.7mlからなる溶液を添加し、この混合物を85℃で6時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた粗固体をヘキサンで洗浄し、目的物を得た(292mg,収率62.1%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=8.22(s,0.45H),8.20(s,0.55H),7.87−7.80(m,2H),7.85(s,1H),7.77(s,1H),7.69(s,0.55H),7.68(s,0.45H),7.66(s,1H),7.59−7.53(m,2H),7.42(s,0.55H),7.38(s,0.45H),7.28−7.13(m,10H)。
1H NMRスペクトルを図5に示した。
MS m/z:748(M+,100%),668(M+−Br,10%),588(M+−2Br,24%),508(M+−3Br,14%),428(M+−4Br,29%)。
【0113】
得られた4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニルの構造式を下記に示す。
【0114】
【化29】
【0115】
実施例5 (2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF6mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製0.98M)のシクロヘキサン溶液0.95ml(0.93mmol)を添加した。−73℃下で、合成例10で合成した4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニル98mg(0.131mmol)を2分間かけて投入した。−73℃から−68℃で20分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)188mg(1.40mmol)を一気に投入した。徐々に昇温し、14時間かけて0℃まで反応温度を上げた。3N塩酸及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンのオレンジ色結晶を得た(19mg、収率34%)。
1H NMR(重ベンゼン,22℃):δ=7.26−7.19(m,4H),7.12−6.92(m,10H),6.50(s,2H),6.49(s,2H),6.21(s,2H)。
1H NMRスペクトルを図6に示した。
MS m/z:428(M+,100%),213((M+/2)−1,34%)。
【0116】
得られた2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンの構造を下記に示す。
【0117】
【化30】
【0118】
合成例11 (2,3−ジブロモアントラセンの合成)
2,3−ジブロモアントラセンは、「シンセシス」、1988年、628−630頁に従い次のように合成した。
【0119】
窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に6,7−ジブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン0.5g(1.49mmol)をベンゼン100mlに溶解させた。ジクロロジシアノベンゾキノン0.60g(2.51mmol)を添加し、還流条件下4時間撹拌した。生成した不溶のハイドロキノンを熱時濾過し溶液から取り除いた。得られた溶液を室温まで冷却すると、2,3−ジブロモアントラセンの黄色固体が析出した。濾過、乾燥、減圧濃縮後、180mgの黄色固体を得た(180mg、収率48%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=8.33(s,2H),8.31(s,2H),7.98(dd,J=6.6Hz,3.2Hz,2H),7.50(dd,J=6.6Hz,3.2Hz,2H)。
1H NMRスペクトルを図7に示した。
【0120】
合成例12 (3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例11で得た2,3−ジブロモアントラセン299mg(0.890mmol)及びTHF31mlを添加した。この溶液を−76℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液1.7ml(2.7mmol)を滴下した。20分間熟成後、その温度でトリ(イソプロポキシ)ホウ素(東京化成工業製)595mg(3.16mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、3N塩酸を添加し、分相した。有機相を減圧濃縮し、ヘキサン洗浄した。得られた残渣を真空乾燥し、250mgの黄色固体を得た。
【0121】
得られた3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸の構造式を下記に示す。
【0122】
【化31】
【0123】
合成例13 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に2−ブロモフェニルボロン酸(シグマ−アルドリッチ製)1.21g(6.02mmol)、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン1.95g(4.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)231mg(0.200mmol)、トルエン31ml、及びエタノール7mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム2.54g(24.0mmol)と水9mlからなる水溶液を添加し、この混合物を75℃で20時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加後分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をトルエンに溶解し、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.36ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで濾過し(溶媒;ヘキサン)、固体1.62gを得た。窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、この固体の787mg、合成例12で合成した3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸526mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)101mg(0.087mmol)、トルエン12.2ml、及びエタノール2.5mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム967mg(9.12mmol)と水3.7mlから成る水溶液を添加し、この混合物を80℃で15時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加した。析出した固体を濾別し取り出し、クロロホルム/ヘキサンから再沈殿を2回繰り返すことで黄色固体を得た(546mg)。
1H NMR(CDCl3,60℃):δ=8.40−8.34(m,3H),8.05−7.91(m,3H),7.74−7.66(m,2H),7.59(s,1H),7.54−7.46(m,2H),7.43−7.27(m,3H)。
1H NMRスペクトルを図8に示した。
【0124】
MS m/z:646(M+,100%),566(M+−Br,2),486(M+−2Br,27),406(M+−3Br,5),326(M+−4Br,50)。
【0125】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの構造式を下記に示す。
【0126】
【化32】
【0127】
実施例6 (ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF22mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液3.2ml(3.2mmol)を添加した。−73℃下で、合成例13で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル310mg(0.480mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)603mg(4.48mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。析出した固体を濾別し、さらに固体をトルエンと水で洗浄した。得られた固体をo−ジクロロベンゼンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(62mg、収率39%)。
MS m/z:326(M+,100%),163(M+/2,21)。
【0128】
得られたナフトターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0129】
【化33】
【0130】
合成例14 (1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼンの合成)
1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼンは、「オルガニック シンセシス」、1978年、58巻、127−133頁の方法を参考に1,2−ジクロロベンゼンとn−ヘキシルマグネシウムブロマイドから次のように合成した。
【0131】
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に1,2−ジクロロベンゼン2.7ml(24.1mmol)、塩化ニッケル{ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン}66mg(0.12mmol)、及びジエチルエーテル18mlを添加した。0℃に冷却し、n−ヘキシルマグネシウムブロマイド(シグマ−アルドリッチ製、2.0M)のジエチルエーテル溶液30ml(60mmol)を滴下した。35℃で6時間反応後、3N塩酸を加えて反応を停止させた。ジエチルエーテルで抽出し、有機相を水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。塩化カルシウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留し(0.15mmHg、100℃)、1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼンの液体を得た(5.43g、収率91%)。
【0132】
合成例15 (1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼン2.95g(12.0mmol)、過ヨウ素酸・2水和物684mg(3.00mmol)、ヨウ素1.62g(6.36mmol)、酢酸6.9ml、水1.4ml、及び硫酸0.21mlを添加した。65℃で6時間撹拌後、室温まで冷却後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応を停止させた。ジクロロメタンで抽出し、有機相を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン)、3.73gの液体を得た。この液体の3.47gにジクロロメタン20mlを添加し、0℃に冷却した。鉄粉(シグマ−アルドリッチ製)67mg及びヨウ素10mg(0.04mmol)を添加後、臭素0.48ml(9.37mmol)を滴下した。0℃で2時間撹拌後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応を停止させた。有機相を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルを用いて濾過し、濾液を濃縮後、−78℃下でヘキサン再結晶精製を行い、1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンを得た(3.14g、収率75%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=7.59(s,1H),7.37(s,1H),2.58−2.40(m,4H),1.57−1.45(m,4H),1.42−1.23(m,12H),0.90(t,J=6.6Hz,6H)。
1H NMRスペクトルを図9に示した。
MS m/z:451(M+,98%),450(M+−1,100),309(M+−2C5H11,71),183(M+−2C5H11−I+1,17),103(M+−2C5H11−I−Br+1,8)。
【0133】
合成例16 (4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例15で得た1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼン1804mg(4.00mmol)及びTHF30mlを添加した。この溶液を−81℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(東京化成工業、0.80M)のTHF溶液10.5ml(8.40mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度でトリ(メトキシ)ホウ素(和光純薬工業製)1.18ml(10.6mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、3N塩酸を添加し、分相した。有機相を減圧濃縮し、1637mgの粘性物を得た。得られた粘性物に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン1854mg(3.80mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)220mg(0.190mmol)、トルエン45ml、及びエタノール12mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム1611mg(15.2mmol)と水15mlからなる水溶液を添加し、この混合物を80℃で13時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加後分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をトルエンに溶解し、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.34ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン:クロロホルム=10:1)、液体2227mgを得た。窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、この液体の826mg、合成例12で合成した3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸425mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)90mg(0.078mmol)、トルエン15ml、及びエタノール2.6mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム513mg(4.84mmol)と水4.8mlから成る水溶液を添加し、この混合物を80℃で16時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をトルエンに溶解し、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.14ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで濾過し(溶媒;ヘキサン:クロロホルム=5:2)、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄、真空乾燥後、目的物の黄色固体を得た(705mg)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=8.44(s,0.7H),8.41(s,0.7H),8.38(s,1H),8.33(s,0.3H),8.32(s,0.3H),8.08−7.96(m,2H),8.00(s,0.7H),7.93(s,0.3H),7.68(s,0.3H),7.67(s,0.3H),7.60(s,0.7H),7.54−7.47(m,2H),7.46(s,0.7H),7.28−7.20(m,1.4H),7.12(s,0.3H),7.08(s,0.3H),2.60(m,4H),1.62(m,4H),1.38(m,12H),0.92(m,6H)。
1H NMRスペクトルを図10に示した。
MS m/z:814(M+,100%),734(M+−Br,13),673(M++1−2C5H11,14),432(M+−2C5H11−3Br,7),352(M+−2C5H11−4Br,11)。
【0134】
得られた4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの構造式を下記に示す。
【0135】
【化34】
【0136】
実施例7 (2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF8mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液1.4ml(1.4mmol)を添加した。−73℃下で、合成例16で合成した4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル143mg(0.176mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)222mg(1.65mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(37mg、収率43%)。
1H NMR(重トルエン,100℃):δ=7.61−7.55(m,2H),7.58(s,2H),7.22−7.14(m,2H),6.56(s,2H),6.36(s,2H),6.29(s,2H),2.42(t,J=7.6Hz,4H),1.50(m,4H),1.33(m,12H),0.89(t,J=7.1Hz,6H)。
1H NMRスペクトルを図11に示した。
MS m/z:494(M+,100%),353(M+−2C5H11+1,41),247(M+/2,6)。
【0137】
得られた2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0138】
【化35】
【0139】
参考例3 (2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例16で合成した4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル134mg(0.165mmol)及びTHF8mlを添加した。この溶液を−74℃に冷却後、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液1.3ml(1.3mmol)を滴下した。−74℃から−68℃で30分間撹拌後、塩化銅(II)(和光純薬工業製)218mg(1.62mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(15mg、収率18%)。
【0140】
実施例8 (2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF8mlを添加した。−73℃に冷却し、tert−ブチルリチウム(関東化学製、1.46M)のペンタン溶液0.81ml(1.18mmol)を添加した。−73℃下で、合成例16で合成した4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル121mg(0.146mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)177mg(1.31mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(25mg、収率35%)。
【0141】
合成例17 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジナフトターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン299mg(0.614mmol)、合成例12で合成した3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸425mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)50mg(0.043mmol)、トルエン9ml、及びエタノール1.5mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム390mg(3.68mmol)と水2.7mlからなる水溶液を添加し、この混合物を80℃で18時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加した。析出した固体を濾別し、濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにクロロホルムとTHFで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで目的物の黄色固体を得た(330mg、収率72%)。
MS m/z:746(M+,71%),666(M+−Br,7),586(M+−2Br,36),506(M+−3Br,5),426(M+−4Br,100),373(M+/2,63)。
【0142】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジナフトターフェニルの構造式を下記に示す。
【0143】
【化36】
【0144】
実施例9 (ジナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF10mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液2.0ml(2.0mmol)を添加した。−73℃下で、合成例17で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジナフトターフェニル189mg(0.253mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)306mg(2.28mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(50mg、収率46%)。
MS m/z:426(M+,100%),213(M+/2,21)。
【0145】
得られたジナフトターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0146】
【化37】
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】合成例2の2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図2】実施例1のターフェニレンの1H NMRスペクトル(重ベンゼン,30℃)
【図3】合成例3の2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図4】合成例5の2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,60℃)
【図5】合成例10の4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図6】実施例5の2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンの1H NMRスペクトル(重ベンゼン,22℃)
【図7】合成例11の2,3−ジブロモアントラセンの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図8】合成例13の2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,60℃)
【図9】合成例15の1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図10】合成例16の4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図11】実施例7の2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの1H NMRスペクトル(重トルエン,100℃)
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体等の電子材料への展開が可能なターフェニレン誘導体の製造方法に関する。さらに本発明は、該ターフェニレン誘導体の前駆化合物であるテトラハロターフェニル誘導体からの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも電荷のキャリアー移動を担う有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。この有機半導体活性相を構成する有機材料のキャリアー移動能により有機半導体デバイス性能が左右される。
【0003】
例えば、ペンタセン等の結晶性材料はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(例えば非特許文献1参照)。又、ペンタセン等のポリアセンを溶解させ塗布法でデバイスを製造する試みも報告されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、ペンタセンを半導体とする有機薄膜トランジスタは大気中での安定性が低いことから実用的ではなかった。また、ポリ−(3,3’’’−ジドデシル−クォーターチオフェン)等の自己組織化材料は溶媒に可溶であり、塗布によるデバイス作製が報告されているが、キャリアー移動度が結晶性化合物より1桁低いことから(例えば非特許文献2参照)、得られた有機半導体デバイスの特性が低いという問題があった。
【0004】
一方、ターフェニレン誘導体は剛直な棒状分子であり、ペンタセンに似た構造を有すことが知られているが、大気中で安定であるという特徴を有しており、その製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。本発明は、特許文献2の方法よりもさらに高収率でターフェニレン誘導体を製造する方法を提案する。
【0005】
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライドフィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー」、(米国)、2004年、126巻、3378−3379頁
【特許文献1】WO2003/016599号パンフレット
【特許文献2】WO2006/109569号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記の従来技術が有する問題点に鑑み、優れた大気安定性を有する半導体活性相形成が可能なターフェニレン誘導体を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、本発明の新規なターフェニレン誘導体の製造方法を見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
以下に本発明の下記一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法について説明する。
【0009】
【化1】
【0010】
(ここで、置換基R1〜R14は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基を示す。
なお、R1〜R6の内、任意の二以上のものは互いに結合することができ、R8〜R13の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。
l及びnは、各々0〜2の整数であり、mは0又は1の整数である。)
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、下記一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化した後、銅化合物と反応させることにより製造することができる。
【0011】
【化2】
【0012】
(ここで、置換基X1〜X4は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を示す。一般式(2)の置換基R1〜R14、並びに記号l、m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
なお、一般式(2)の表記は、一般式(2)が下記一般式(3)及び一般式(4)で示されるパラ位置異性体及びメタ位置異性体を総称するものである。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
(ここで、一般式(3)及び一般式(4)の置換基R1〜R14及びX1〜X4、並びに記号l、m及びnは一般式(2)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
なお、ここでテトラリチオ化とは、一般式(2)における4個のハロゲンX1〜X4をそれぞれリチウムに置換することを意味する。
【0016】
本発明の一般式(1)の置換基について述べる。
【0017】
置換基R1〜R14における、炭素数1〜20のアルキル基は特に限定されず、例えばメチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル等の炭素と水素のみから成るアルキル基;トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフロオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロドデシル基等のハロゲン化アルキル基を挙げることができる。
【0018】
置換基R1〜R14における、炭素数4〜30のアリール基は特に限定されず、例えばフェニル基、p−トリル基、p−(n−オクチル)フェニル基、m−(n−オクチル)フェニル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、p−(n−パーフルオルオクチル)フェニル基、2−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−パーフルオロナフチル基、アントラセニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、1−ビフェニレノ基、2−ビフェニレノ基、ターフェニル基、2−ピリジル基、テトラフルオロピリジル基、ビピリジル基、(ジフェニルアミノ)フェニル基、(ジフェニルアミノ)ビフェニル基等を挙げることができる。
【0019】
置換基R1〜R14における、炭素数2〜20のアルキニル基は特に限定されず、例えばエチニル基、メチルエチニル基、イソプロピルエチニル基、tert−ブチルエチニル基、(n−オクチル)エチニル基、トリフルオロメチルエチニル基、フェニルエチニル基、{4−(n−オクチル)フェニル}エチニル基、ナフチルエチニル基、アントラセニルエチニル基、ビフェニルエチニル基、ターフェニルエチニル基、ベンジルエチニル基、ビフェニレノエチニル基、パーフルオロフェニルエチニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル基、(n−パーフルオロオクチル)エチニル基、(n−パーフルオロドデシル)エチニル基、{4−(n−パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基等を挙げることができる。
【0020】
置換基R1〜R14における、炭素数2〜30のアルケニル基は特に限定されず、例えばエテニル基、メチルエテニル基、イソプロピルエテニル基、tert−ブチルエテニル基、(n−オクチル)エテニル基、(トリフルオロメチル)エテニル基、フェニルエテニル基、{4−(n−オクチル)フェニル}エテニル基、ナフチルエテニル基、アントラセニルエテニル基、パーフルオロフェニルエテニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニル基、(n−パーフルオロオクチル)エテニル基、(n−パーフルオロドデシル)エテニル基、ビフェニルエテニル基、ターフェニルエテニル基、ベンジルエテニル基、ビフェニレノエテニル基、フェニル(メチル)エテニル基、(トリメチルシリル)エテニル基、(トリエチルシリル)エテニル基、(トリイソプロピルシリル)エテニル基等を挙げることができる。なお、該炭素数2〜20のアルケニル基はトランス体及びシス体が存在する場合は、トランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
【0021】
置換基R1〜R6における任意の二以上のものが互いに結合する場合、及び置換基R8〜R13における任意の二以上のものが互いに結合する場合に形成される結合置換基の内、好ましい置換基例である不飽和環基としては次のものが挙げられる。
【0022】
該不飽和環の例として、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいテトラフェニレン環、又は置換基を有してもよいチオフェン環等を挙げることができる。置換基を有してもよいベンゼン環の例として、ベンゼン環、ジメチルベンゼン環、ジ(n−ヘキシル)ベンゼン環、ジ(n−オクチル)ベンゼン環、ジ(n−ドデシル)ベンゼン環、ナフタレン環、メチルナフタレン環、ジメチルナフタレン環、フェニルナフタレン環、ジ(パーフルオロ−n−オクチル)ベンゼン環、ジ(パーフルオロ−n−ドデシル)ベンゼン環等を挙げることができる。置換基を有していてもよいテトラフェニレン環の例として、テトラフェニレン環、フェニルテトラフェニレン環等を挙げることができる。置換基を有してもよいチオフェン環の例として、チオフェン環、メチルチオフェン環、(n−オクチル)チオフェン環、フェニルチオフェン環等を挙げることができる。
【0023】
該不飽和環として、好ましくは置換基を有してもよいベンゼン環又は置換基を有してもよいチオフェン環であり、特に好ましくは、ベンゼン環、ジ(n−オクチル)ベンゼン環、(n−オクチル)チオフェン環である。
【0024】
置換基R1〜R14は、好ましくは水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、又は炭素数2〜30のアルケニル基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基である。
【0025】
一般式(1)において、置換基R1〜R6の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合において、好ましい結合として置換基R3とR4との結合を挙げることができる。置換基R8〜R13の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合において、好ましい結合として置換基R10とR11との結合を挙げることができる。さらに、置換基R1〜R6の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合と、置換基R8〜R13の内、任意の二以上のものが互いに結合する場合において、これらの結合が、双方の場合に同時に形成されていても、若しくはいずれか一方の場合にのみに形成されていても、いずれでも構わない。
【0026】
本発明の一般式(1)のl、m及びnの値において、好ましい組合わせはmが0である場合、l及びnが共に2である場合、lが2、m及びnが共に0である場合を挙げることができる。
【0027】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の環構造は特に限定されず、環構造の両端が左右対称である、若しくは左右非対称であることのいずれの構造も可能である。ここで環構造の両端が左右対称とは、l及びnが同じ値であり、左右の環構造の対応する位置に配置された置換基が一致する場合、即ち、R1=R13,R2=R12,R3=R11,R4=R10,R5=R9,R6=R8である場合を意味する。一方、左右非対称とは、例えば、lとnが異なる値の場合、l及びnが同じ値ではあるが左右の環構造の対応する位置に配置された置換基が一致しない場合等を挙げることができる。
【0028】
本発明の一般式(2)の置換基について述べる。
【0029】
置換基X1〜X4は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子であり、好ましく臭素原子である。
【0030】
置換基R1〜R14、並びに記号l、m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。
【0031】
なお、一般式(2)の表記は、一般式(2)が一般式(3)及び一般式(4)で示されるパラ位置異性体及びメタ位置異性体を総称するものである。
【0032】
そして、具体的な一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体としては、特に限定はなく、例えば以下の化合物を挙げることができ、
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
特に以下の化合物が好ましい。
【0041】
【化12】
【0042】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法の原料として用いられる一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体は、例えばテトラハロアレーンと2−ハロアリール試薬を、パラジウム触媒及び/又はニッケル触媒存在下で反応させる(WO2006/109569号パンフレット)ことにより合成することができる。
【0043】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法について述べる。
【0044】
一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をテトラリチオ化する場合、用いるリチオ化剤は、一般式(2)におけるハロゲンX1〜X4をリチウムに置換することができるものである限り特に限定されず、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;フェニルリチウム、p−tert−ブチルフェニルリチウム、p−メトキシフェニルリチウム、p−フルオロフェニルリチウム等のアリールリチウム;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のリチウムアミド;リチウムパウダー等のリチウム金属を挙げることができ、好ましくはアルキルリチウムであり、特に好ましくはsec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムである。
【0045】
該リチオ化剤の使用量は一般式(2)のテトラハロターフェニル誘導体に対し、6〜10当量が好ましく、特に好ましくは7〜9当量の範囲で使用することができる。
【0046】
該テトラリチオ化反応は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHFである。又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。
【0047】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法における該テトラリチオ化反応は、一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化することで収率良く達成することができる。即ち、リチオ化剤としてはアルキルリチウムが好ましく用いられ、アルキルリチウムにて一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化すると、ハロゲン−金属交換反応によりアルキルハライドが同時に生成する。該アルキルハライドはさらにリチオ化剤若しくは生成したテトラハロターフェニル誘導体のリチオ化物と反応し、プロトンの引き抜きによるβ−水素脱離が起き、ハロゲン化リチウム及びアルカンを生成する。従ってテトラハロターフェニル誘導体のリチオ化物がβ−水素脱離を起こした場合は、テトラハロターフェニル誘導体のテトラリチオ体が生成できなくなり、収率低下の原因となる。従って、反応剤として用いるアルキルリチウムに生成したアルキルハライドの該β−水素脱離を起こさせた方が、テトラハロターフェニル誘導体のテトラリチオ体の収率が向上することが考えられる。そこで、本発明者らは、アルキルリチウムが過剰に存在できる条件をできるだけ長く保つことが重要と考え、テトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入することでテトラリチオ化の収率が向上し、さらには目的のターフェニレン誘導体の収率が向上することを見出した。
【0048】
テトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入する方法は特に制限はなく、リチオ化剤と上記で挙げた溶媒の混合物に、テトラハロターフェニル誘導体を投入することが好ましい。この場合、テトラハロターフェニル誘導体は該溶媒から成る溶液であっても何ら差し支えることはない。テトラハロターフェニル誘導体を投入する時の温度は、−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃である。テトラハロターフェニル誘導体を投入する時間は、投入時の温度にもより、1〜60分が好ましく、特に好ましくは3〜40分である。
【0049】
テトラハロターフェニル誘導体を投入した後は、テトラリチオ化を充分に進行させるため、熟成時間を設定することが好ましい。該熟成時間は1〜120分が好ましく、特に好ましくは5〜60分である。なお、該熟成時間中の温度は−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃である。テトラリチオ化反応の進行は、反応液の一部を取り出し、水で反応を停止させた後、ガスクロマトグラフィーで分析することで監視することができる。
【0050】
該テトラリチオ化反応により生成したテトラリチウム塩は、次いで銅化合物と反応させる。係る銅化合物との反応は、前記テトラリチオ化反応により生成したテトラリチウム塩を含む反応混合物に銅化合物を直接用いて反応させる方法;生成したテトラリチウム塩を一度単離した後、銅化合物と反応させる方法のいずれを用いてもよい。
【0051】
テトラリチウム塩と銅化合物との反応に用いられる銅化合物は特に限定されず、例えば塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)、アセチルアセトナート銅(II)等の2価銅;塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、酢酸銅(I)等の1価銅等を挙げることができる。好ましくは2価銅であり、特に好ましくは塩化銅(II)である。
【0052】
該銅化合物との反応は好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定されず、例えばTHF、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHFである。用いる銅化合物の量は、一般式(2)のテトラハロターフェニル誘導体に対し、4〜20当量が好ましく、特に好ましくは6〜15当量である。該銅化合物との反応温度は−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃であり、反応時間は1〜30時間が好ましく、特に好ましくは1〜18時間である。
【0053】
該銅化合物はそのまま用いることもできるし、あるいは上記で挙げた溶媒に溶解した溶液を用いることもできる。
【0054】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造は、好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で実施する。
【0055】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法では、一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をテトラリチオ化した後、塩化亜鉛と反応させ、その後に銅化合物と反応させることもできる。
【0056】
かくして得られた、本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定されず、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
【0057】
本発明の製造方法で製造することのできる一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、特に限定はなく、例えば以下の化合物を挙げることができ、
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
【化20】
【0066】
特に以下の化合物が好ましい。
【0067】
【化21】
【0068】
本発明の一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法における原料として用いられる一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体は、その構造として一般式(3)で示されるパラ型と、一般式(4)で示されるメタ型を有する。しかし、一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の原料としては、これらパラ及びメタ型の2種類の異性体の何れをも用いることができるし、さらにこれら2種類の異性体の任意の割合の混合物であっても何ら差し支えなく原料として使用することができる。
【0069】
本発明の製造方法で製造することのできる一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は、平面剛直性の高い分子構造を有することから、優れた半導体特性を与えることが期待できる。又、該ターフェニレン誘導体はトルエン等のハロゲンを含まない溶媒に溶解し、溶液状態にあっても容易に空気酸化されることはない。従って、塗布法により半導体薄膜を容易に作製できる。したがって、本発明の製造方法で製造することのできる一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体は電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、又はICタグ用等のトランジスタの有機半導体活性相用途、さらに有機ELディスプレイ材料、有機半導体レーザー材料、有機薄膜太陽電池材料、又は有機メモリー材料等に利用することができる。
【発明の効果】
【0070】
優れた大気安定性を有する半導体活性相形成が可能なターフェニレン誘導体を効率よく製造する方法を提供する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、断りのない限り試薬等は市販品を用いた。
【0072】
生成物の同定には1H NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、1H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて、マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)で測定した。
【0073】
反応の進行の確認等はガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析を用いた。
【0074】
ガスクロマトグラフィー分析
装置 島津GC14B
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30m
ガスクロマトグラフィー−マススペクトル分析
装置 パーキンエルマーオートシステムXL(MS部;ターボマスゴールド)
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30
反応用の溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。
【0075】
合成例1 (1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンの合成)
1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンはジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー、1997年、119巻、4578−4593頁に記載されている方法を参考に次のように合成を行った。
【0076】
メカニカルスターラー付き1lの三口フラスコに過ヨウ素酸16.7g(73.0mmol)及び硫酸525mlを加えた。過ヨウ素酸が溶解した後、ヨウ化カリウム36.4g(219mmol)を少しずつ添加した。その内容物の温度を−30℃に冷却し、1,4−ジブロモベンゼン34.5g(146mmol)を5分間かけて添加した。得られた混合物を−25℃で36時間撹拌した。反応混合物を氷(2Kg)中へ注いだ後、濾過し固体を取り出した。その固体をクロロホルムに溶解させ、5%苛性ソーダ水溶液及び水で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をクロロホルムから再結晶化し、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンの白色結晶を得た(36.0g、収率50%)。
1H NMRスペクトルは文献値と一致した。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.02(s,2H)。
【0077】
合成例2 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン4.39g(9.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)974mg(0.84mmol)、及び2−ブロモフェニルボロン酸(シグマ−アルドリッチ製)4.16g(20.7mmol)を添加した。さらにトルエン72ml、エタノール18ml、及び炭酸ナトリウム5.72g(54.0mmol)と水22mlからなる水溶液を添加した。85℃のオイルバスに浸し、15時間撹拌した。室温まで冷却後、ジクロロメタン及び飽和食塩水を添加し分相した。有機相を減圧濃縮し、残渣をトルエンから再結晶化した。2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル白色針状晶を得た(4.18g、収率85%)。
融点:230−231℃。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=7.70(d,J=8.0Hz,2H),7.55(d,J=1.5Hz,2H),7.45−7.23(m,6H)。
1H NMRスペクトルを図1に示した。
MS m/z:546(M+,92%),466(M+−Br,45),386(M+−2Br,53),226(M+−4Br,100)。
【0078】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの構造式を下記に示す。
【0079】
【化22】
【0080】
実施例1 (ターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF23mlを添加し、−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液5.0ml(4.9mmol)を添加した。−73℃下で、合成例2で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル272mg(0.498mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)828mg(6.2mmol)を一気に投入し、一晩かけて室温まで温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、ターフェニレンの赤色の板状結晶を得た(43mg、収率38%)。
1H NMRスペクトル(重ベンゼン、30℃):δ=6.46(AA’,J=4.8Hz,2.9Hz,4H),6.20(BB’,J=4.6Hz,2.9Hz,4H),5.93(s,2H)。
1H NMRスペクトルを図2に示した。
MS m/z:226(M+,100%),113(M+/2,29)。
【0081】
得られたターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0082】
【化23】
【0083】
参考例1 (ターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例2で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル280mg(0.512mmol)及びTHF23mlを添加した。この溶液を−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液5.0ml(4.9mmol)を滴下した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)828mg(6.2mmol)を一気に投入し、一晩かけて室温まで温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、ターフェニレンの赤色の板状結晶を得た(16mg、収率14%)。
【0084】
合成例3 (2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニル及び2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に1,2,4,5−テトラブロモベンゼン(東京化成工業製)1.70g(4.31mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)253mg(0.218mmol)、及び2−ブロモフェニルボロン酸(シグマ−アルドリッチ製)1.99g(9.90mmol)を添加した。さらにトルエン34ml、エタノール9ml、及び炭酸ナトリウム2.75g(25.9mmol)と水10mlからなる水溶液を添加した。85℃のオイルバスに浸し、8時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和食塩水を添加し分相した。得られた有機相にターシャーリーブチルハイドロパーオキサイド(70重量%含量)1mlを室温で添加し、2時間撹拌した。飽和食塩水を添加し、分相し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0085】
まず2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルを主体とする成分をヘキサン/トルエン=1/1で溶出し、その溶出物をフラクション1とし、次に2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルを主体とする成分をトルエンのみで溶出し、その溶出物をフラクション2とした。各フラクションをそれぞれに減圧濃縮した。その結果、フラクション2(0.32g)は全体が固体となった。一方、フラクション1(1.97g)は一部が固体となったことから、油状部分と固体部分に分けた。この油状部分をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(溶媒、ヘキサン)。その結果、無色透明な油状物が得られた。この無色透明な油状物は時間の経過と共に固化した。
【0086】
1H NMRスペクトルより、この無色透明な油状物は2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルであった(1.37g、収率58%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=7.99(d,J=1.9Hz,1H),7.68(dd,J=7.8Hz,1.7Hz,2H),7.42−7.19(m,6H),7.15(s,1H)。
1H NMRスペクトルを図3に示した。
MS m/z:546(M+,75%),466(M+−Br,41),386(M+−2Br,51),226(M+−4Br,100)。
【0087】
得られた2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルの構造式を下記に示す。
【0088】
【化24】
【0089】
一方、先のフラクション1から分離された固体部分とフラクション2を合わせ、トルエンから再結晶化を行った。白色針状結晶が得られた。
【0090】
1H NMRスペクトルより、この白色針状結晶は合成例2で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルと一致した(0.47g、収率20%)。
【0091】
実施例2 (ターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF17mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液2.9ml(2.8mmol)を添加した。−73℃下で、合成例3で合成した2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニル188mg(0.344mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)462mg(3.44mmol)を一気に投入し、一晩かけて室温まで温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、ターフェニレンの赤色の板状結晶を得た(24mg、収率31%)。1H NMRスペクトル(重ベンゼン、30℃)は、実施例1で得られたものと一致した。
【0092】
合成例4 (2−ブロモ−3−ヨードナフタレンの合成)
2−ブロモ−3−ヨードナフタレンはシンセティック コミュニュケーションズ、2003年、33巻、2751−2756頁に記載されている方法を参考に次のように合成を行った。なお、原料の2−ブロモ−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレンはシグマ−アルドリッチから購入したものをそのまま使用した。
【0093】
窒素雰囲気下、500mlの3口フラスコ反応容器にメタンスルホン酸200ml及びオルト過ヨウ素酸1.31g(5.74mmol)を加えた。30分間撹拌後、ヨウ素4.36g(17.2mmol)を加えた。この混合物を2時間撹拌した後、2−ブロモ−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレン30.1g(40.0mmol)を少しずつ加えた。この混合物を30℃で3日間撹拌した。反応混合物を氷水中に注ぎ、生成した固体を濾過した。さらにこの固体を水で洗浄し、減圧乾燥した後、2−ブロモ−3−ヨード−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレンの白色粉体を得た(34.8g、収率99%)。
【0094】
ガラス製昇華管の末端に上記で得た2−ブロモ−3−ヨード−ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエン)ナフタレン8.05g(9.16mmol)を加えた。末端を210℃に加熱し、1.5パスカルに減圧した。発生した2−ブロモ−3−ヨードナフタレンは減圧側のガラス管に付着し、ヘキサクロロシクロペンタジエンは減圧側の底に溜まった。1時間後昇華操作を中断し、ガラス管の付着物を取り出し、再度同じ操作を繰り返した。1時間の昇華操作後、2−ブロモ−3−ヨードナフタレンを得た(2.29g、収率75%)。
1H NMRスペクトルは文献値と一致した。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.41(s,1H),8.14(s,1H),7.75−7.65(m,2H),7.54−7.45(m,2H)。
【0095】
合成例5 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例4で合成した2−ブロモ−3−ヨードナフタレン2.03g(6.10mmol)及びTHF12mlを添加した。この溶液を−65℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液9.9ml(6.4mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液6.4ml(6.4mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮した。得られた白色固体に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン1.41g(2.89mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)285mg(0.247mmol)、及びTHF31mlを添加した。60℃で4時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸4mlを添加することで反応を停止させた。全体を減圧濃縮し、溶媒を留去した。析出した固体を濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにクロロホルムとTHFで洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥後、2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの白色結晶を得た(1.20g,収率64%)。
DSC測定による融点:331℃。
1H NMR(CDCl3,60℃):δ=8.22(s,2H),7.90−7.75(m,4H),7.85(s,2H),7.67(s,2H),7.60−7.48(m,4H)。
1H NMRスペクトルを図4に示した。
MS m/z:646(M+,64%),566(M+−Br,8),486(M+−2Br,34),406(M+−3Br,6),326(M+−4Br,92),163((M+−4Br)/2,100)。
【0096】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの構造式を下記に示す。
【0097】
【化25】
【0098】
実施例3 (ジベンゾターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF28mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、0.98M)のシクロヘキサン溶液4.4ml(4.3mmol)を添加した。−73℃下で、合成例5で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニル401mg(0.621mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)740mg(5.50mmol)を一気に投入した。一晩かけて室温まで反応温度を上げた。飽和食塩水を添加した後、生成した固体を濾過した。さらにこの得られた固体を3N塩酸、水及びTHFで洗浄した後、減圧乾燥しジベンゾターフェニレンの黄−オレンジ色固体を得た。さらにこの固体をo−ジクロロベンゼンから再結晶化することで金色の金属光沢を有する板状のジベンゾターフェニレンの固体を得た(97mg、収率48%)。
DSC測定による分析(密閉容器使用):500℃で炭化による発熱を観測した。
MS m/z:326(M+,100%),163(M+/2,25)。
【0099】
得られたジベンゾターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0100】
【化26】
【0101】
参考例2 (ジベンゾターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、合成例5で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニル389mg(0.602mmol)及びTHF28mlを添加した。この懸濁溶液を−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製0.98M)のシクロヘキサン溶液4.4ml(4.3mmol)を滴下した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)726mg(5.40mmol)を一気に投入した。一晩かけて室温まで反応温度を上げた。飽和食塩水を添加した後、生成した固体を濾過した。さらにこの得られた固体を3N塩酸、水及びTHFで洗浄した後、減圧乾燥しジベンゾターフェニレンの黄−オレンジ色固体を得た。さらにこの固体をo−ジクロロベンゼンから再結晶化することで金色の金属光沢を有する板状のジベンゾターフェニレンの固体を得た(55mg、収率28%)。
【0102】
合成例6 (4,5,4”,5”−テトラフルオロ−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に1,2−ジブロモ−4,5−ジフルオロベンゼン(和光純薬工業製)2.53g(9.30mmol)及びTHF15mlを添加した。この溶液を−40℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(関東化学製、0.65M)のTHF溶液15ml(9.7mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液9.8ml(9.8mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮した。得られた白色固体に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン2.15g(4.41mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)408mg(0.353mmol)、及びTHF30mlを添加した。60℃で6時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸(8ml)を添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩を添加後、分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去した。この得られた残渣をトルエン10mlに溶解させ、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.5ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。有機相をトルエン:ヘキサン=1:1に溶解させ、シリカゲルを充填したカラムを通過させた。溶出液を減圧濃縮し、得られた固体をヘキサン:トルエン=3:1の混合溶媒を用いて再結晶化を行い、目的物の白色固体を得た(1.48g,収率54%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=7.58−7.45(m,2H),7.53(s,2H),7.23−7.09(m,2H)。
MS m/z:618(M+,73%),538(M+−Br,32),458(M+−2Br,45),378(M+−3Br,4),298(M+−4Br,100)。
【0103】
得られた4,5,4”,5”−テトラフルオロ−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの構造を下記に示す。
【0104】
【化27】
【0105】
実施例4 (2,3,7,8−テトラフルオロターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF28mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製0.98M)のシクロヘキサン溶液5.9ml(5.8mmol)を添加した。−73℃下で、合成例6で合成した4,5,4”,5”−テトラフルオロ−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニル510mg(0.825mmol)を4分間かけて投入した。−73℃から−68℃で20分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)985mg(7.33mmol)を一気に投入した。徐々に昇温し、7時間かけて−20℃まで反応温度を上げた。飽和食塩水及びトルエンを添加した後、分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後、静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、2,3,7,8−テトラフルオロターフェニレンの赤色結晶を得た(81mg,収率33%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=6.33(t,J=7.3Hz,4H),6.14(s,2H)。
MS m/z:298(M+,100%),149(M+/2,38)。
【0106】
得られた2,3,7,8−テトラフルオロターフェニレンの構造を下記に示す。
【0107】
【化28】
【0108】
合成例7 (1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンの合成)
1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンを「シンレット」、2003年、29−34頁に従い次のように合成した。
【0109】
メカニカルスターラー付き1lの三口フラスコに過ヨウ素酸36.9g(162mmol)及び硫酸150mlを加えた。過ヨウ素酸が溶解した後、ヨウ化カリウム80.7g(486mmol)を少しずつ添加した。その内容物の温度を0℃に冷却し、1,2−ジブロモベンゼン75.0g(318mmol)を添加した。得られた混合物を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を氷へ注いだ後、濾過し固体を取り出した。その固体をTHF/メタノールから2回再結晶化し、1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼンの白色結晶を得た(76.2g、収率49%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=8.03(s,2H)。
【0110】
合成例8 (1,2−ジブロモ−4,5−ジフェニルベンゼンの合成)
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例7で合成した1,2−ジブロモ−4,5−ジヨードベンゼン3.074g(6.30mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)600mg(0.519mmol)、及びフェニルボロン酸(和光純薬工業製)1.920mg(15.7mmol)を添加した。さらにトルエン50ml、エタノール13ml、及び炭酸ナトリウム4.007g(37.8mmol)と水16mlからなる水溶液を添加した。82℃に加熱し、24時間撹拌した。室温まで冷却後、トルエン及び水を添加し分相した。有機相を濃縮し、得られた残渣をトルエン26mlに溶解後、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)1.0mlを添加し、室温で2時間撹拌した。このトルエン溶液を水で2回洗浄後、有機相を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後(溶媒、ヘキサン)、1,2−ジブロモ−4,5−ジフェニルベンゼンの白色固体を得た(1.953g、収率80%)。
1H NMR(CDCl3,21℃):δ=7.67(s,2H),7.24−7.13(m,6H),7.12−6.90(m,4H)。
MS m/z:388(M+,100%),308(M+−Br,23),228(M+−2Br,53)。
【0111】
合成例9 (2−フェニル−5−ブロモ−4−ビフェニルボロン酸の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例8で合成した1,2−ジブロモ−4,5−ジフェニルベンゼン755mg(1.95mmol)及びTHF12mlを添加した。この溶液を−100℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液1.3ml(2.1mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度でホウ酸トリイソプロピル(東京化成工業製)472mg(2.51mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、3N塩酸を添加し、分相した。有機相を減圧濃縮し、770mgの白色固体を得た。
【0112】
合成例10 (4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例4で合成した2−ブロモ−3−ヨードナフタレン333mg(1.00mmol)及びTHF20mlを添加した。この溶液を−65℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(東京化成工業、0.80M)のTHF溶液1.3ml(1.04mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度で塩化亜鉛(シグマ−アルドリッチ製、1.0M)のジエチルエーテル溶液1.1ml(1.1mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、生成した白色スラリー液を減圧濃縮した。得られた白色固体に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン488mg(1.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)83mg(0.072mmol)、及びTHF3mlを添加した。60℃で6時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸4mlを添加することで反応を停止させた。トルエン及び食塩を添加後、分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去した。さらに加熱真空乾燥した後、得られた残渣に合成例9で合成した2−フェニル−5−ブロモ−4−ビフェニルボロン酸222mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)41mg(0.035mmol)、トルエン5.2ml、及びエタノール1.2mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム349mg(3.29mmol)と水1.7mlからなる溶液を添加し、この混合物を85℃で6時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた粗固体をヘキサンで洗浄し、目的物を得た(292mg,収率62.1%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=8.22(s,0.45H),8.20(s,0.55H),7.87−7.80(m,2H),7.85(s,1H),7.77(s,1H),7.69(s,0.55H),7.68(s,0.45H),7.66(s,1H),7.59−7.53(m,2H),7.42(s,0.55H),7.38(s,0.45H),7.28−7.13(m,10H)。
1H NMRスペクトルを図5に示した。
MS m/z:748(M+,100%),668(M+−Br,10%),588(M+−2Br,24%),508(M+−3Br,14%),428(M+−4Br,29%)。
【0113】
得られた4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニルの構造式を下記に示す。
【0114】
【化29】
【0115】
実施例5 (2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF6mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製0.98M)のシクロヘキサン溶液0.95ml(0.93mmol)を添加した。−73℃下で、合成例10で合成した4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニル98mg(0.131mmol)を2分間かけて投入した。−73℃から−68℃で20分間熟成後、−75℃で塩化銅(II)(和光純薬工業製)188mg(1.40mmol)を一気に投入した。徐々に昇温し、14時間かけて0℃まで反応温度を上げた。3N塩酸及びトルエンを添加した後分相し、さらに有機相を飽和食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し、得られた残渣にヘキサンを添加し撹拌後静置し、上澄み液を取り除き、減圧乾燥した。残渣をトルエンから再結晶化し、2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンのオレンジ色結晶を得た(19mg、収率34%)。
1H NMR(重ベンゼン,22℃):δ=7.26−7.19(m,4H),7.12−6.92(m,10H),6.50(s,2H),6.49(s,2H),6.21(s,2H)。
1H NMRスペクトルを図6に示した。
MS m/z:428(M+,100%),213((M+/2)−1,34%)。
【0116】
得られた2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンの構造を下記に示す。
【0117】
【化30】
【0118】
合成例11 (2,3−ジブロモアントラセンの合成)
2,3−ジブロモアントラセンは、「シンセシス」、1988年、628−630頁に従い次のように合成した。
【0119】
窒素雰囲気下、300mlシュレンク反応容器に6,7−ジブロモ−1,4−ジヒドロアントラセン0.5g(1.49mmol)をベンゼン100mlに溶解させた。ジクロロジシアノベンゾキノン0.60g(2.51mmol)を添加し、還流条件下4時間撹拌した。生成した不溶のハイドロキノンを熱時濾過し溶液から取り除いた。得られた溶液を室温まで冷却すると、2,3−ジブロモアントラセンの黄色固体が析出した。濾過、乾燥、減圧濃縮後、180mgの黄色固体を得た(180mg、収率48%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=8.33(s,2H),8.31(s,2H),7.98(dd,J=6.6Hz,3.2Hz,2H),7.50(dd,J=6.6Hz,3.2Hz,2H)。
1H NMRスペクトルを図7に示した。
【0120】
合成例12 (3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例11で得た2,3−ジブロモアントラセン299mg(0.890mmol)及びTHF31mlを添加した。この溶液を−76℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.59M)のヘキサン溶液1.7ml(2.7mmol)を滴下した。20分間熟成後、その温度でトリ(イソプロポキシ)ホウ素(東京化成工業製)595mg(3.16mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、3N塩酸を添加し、分相した。有機相を減圧濃縮し、ヘキサン洗浄した。得られた残渣を真空乾燥し、250mgの黄色固体を得た。
【0121】
得られた3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸の構造式を下記に示す。
【0122】
【化31】
【0123】
合成例13 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に2−ブロモフェニルボロン酸(シグマ−アルドリッチ製)1.21g(6.02mmol)、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン1.95g(4.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)231mg(0.200mmol)、トルエン31ml、及びエタノール7mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム2.54g(24.0mmol)と水9mlからなる水溶液を添加し、この混合物を75℃で20時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加後分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をトルエンに溶解し、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.36ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで濾過し(溶媒;ヘキサン)、固体1.62gを得た。窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、この固体の787mg、合成例12で合成した3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸526mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)101mg(0.087mmol)、トルエン12.2ml、及びエタノール2.5mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム967mg(9.12mmol)と水3.7mlから成る水溶液を添加し、この混合物を80℃で15時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加した。析出した固体を濾別し取り出し、クロロホルム/ヘキサンから再沈殿を2回繰り返すことで黄色固体を得た(546mg)。
1H NMR(CDCl3,60℃):δ=8.40−8.34(m,3H),8.05−7.91(m,3H),7.74−7.66(m,2H),7.59(s,1H),7.54−7.46(m,2H),7.43−7.27(m,3H)。
1H NMRスペクトルを図8に示した。
【0124】
MS m/z:646(M+,100%),566(M+−Br,2),486(M+−2Br,27),406(M+−3Br,5),326(M+−4Br,50)。
【0125】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの構造式を下記に示す。
【0126】
【化32】
【0127】
実施例6 (ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF22mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液3.2ml(3.2mmol)を添加した。−73℃下で、合成例13で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル310mg(0.480mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)603mg(4.48mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。析出した固体を濾別し、さらに固体をトルエンと水で洗浄した。得られた固体をo−ジクロロベンゼンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(62mg、収率39%)。
MS m/z:326(M+,100%),163(M+/2,21)。
【0128】
得られたナフトターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0129】
【化33】
【0130】
合成例14 (1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼンの合成)
1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼンは、「オルガニック シンセシス」、1978年、58巻、127−133頁の方法を参考に1,2−ジクロロベンゼンとn−ヘキシルマグネシウムブロマイドから次のように合成した。
【0131】
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に1,2−ジクロロベンゼン2.7ml(24.1mmol)、塩化ニッケル{ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン}66mg(0.12mmol)、及びジエチルエーテル18mlを添加した。0℃に冷却し、n−ヘキシルマグネシウムブロマイド(シグマ−アルドリッチ製、2.0M)のジエチルエーテル溶液30ml(60mmol)を滴下した。35℃で6時間反応後、3N塩酸を加えて反応を停止させた。ジエチルエーテルで抽出し、有機相を水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。塩化カルシウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮した。残渣を減圧蒸留し(0.15mmHg、100℃)、1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼンの液体を得た(5.43g、収率91%)。
【0132】
合成例15 (1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に1,2−ジ(n−ヘキシル)ベンゼン2.95g(12.0mmol)、過ヨウ素酸・2水和物684mg(3.00mmol)、ヨウ素1.62g(6.36mmol)、酢酸6.9ml、水1.4ml、及び硫酸0.21mlを添加した。65℃で6時間撹拌後、室温まで冷却後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応を停止させた。ジクロロメタンで抽出し、有機相を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン)、3.73gの液体を得た。この液体の3.47gにジクロロメタン20mlを添加し、0℃に冷却した。鉄粉(シグマ−アルドリッチ製)67mg及びヨウ素10mg(0.04mmol)を添加後、臭素0.48ml(9.37mmol)を滴下した。0℃で2時間撹拌後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応を停止させた。有機相を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルを用いて濾過し、濾液を濃縮後、−78℃下でヘキサン再結晶精製を行い、1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンを得た(3.14g、収率75%)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=7.59(s,1H),7.37(s,1H),2.58−2.40(m,4H),1.57−1.45(m,4H),1.42−1.23(m,12H),0.90(t,J=6.6Hz,6H)。
1H NMRスペクトルを図9に示した。
MS m/z:451(M+,98%),450(M+−1,100),309(M+−2C5H11,71),183(M+−2C5H11−I+1,17),103(M+−2C5H11−I−Br+1,8)。
【0133】
合成例16 (4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例15で得た1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼン1804mg(4.00mmol)及びTHF30mlを添加した。この溶液を−81℃に冷却し、イソプロピルマグネシウムブロマイド(東京化成工業、0.80M)のTHF溶液10.5ml(8.40mmol)を滴下した。30分間熟成後、その温度でトリ(メトキシ)ホウ素(和光純薬工業製)1.18ml(10.6mmol)を滴下した。徐々に室温まで昇温した後、3N塩酸を添加し、分相した。有機相を減圧濃縮し、1637mgの粘性物を得た。得られた粘性物に、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン1854mg(3.80mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)220mg(0.190mmol)、トルエン45ml、及びエタノール12mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム1611mg(15.2mmol)と水15mlからなる水溶液を添加し、この混合物を80℃で13時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加後分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をトルエンに溶解し、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.34ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン:クロロホルム=10:1)、液体2227mgを得た。窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に、この液体の826mg、合成例12で合成した3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸425mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)90mg(0.078mmol)、トルエン15ml、及びエタノール2.6mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム513mg(4.84mmol)と水4.8mlから成る水溶液を添加し、この混合物を80℃で16時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加分相し、有機相を食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮し溶媒を留去し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をトルエンに溶解し、70%tert−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(和光純薬工業製)(0.14ml)を添加し、室温で2時間撹拌した。この溶液を水洗浄し、有機相を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーで濾過し(溶媒;ヘキサン:クロロホルム=5:2)、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄、真空乾燥後、目的物の黄色固体を得た(705mg)。
1H NMR(CDCl3,22℃):δ=8.44(s,0.7H),8.41(s,0.7H),8.38(s,1H),8.33(s,0.3H),8.32(s,0.3H),8.08−7.96(m,2H),8.00(s,0.7H),7.93(s,0.3H),7.68(s,0.3H),7.67(s,0.3H),7.60(s,0.7H),7.54−7.47(m,2H),7.46(s,0.7H),7.28−7.20(m,1.4H),7.12(s,0.3H),7.08(s,0.3H),2.60(m,4H),1.62(m,4H),1.38(m,12H),0.92(m,6H)。
1H NMRスペクトルを図10に示した。
MS m/z:814(M+,100%),734(M+−Br,13),673(M++1−2C5H11,14),432(M+−2C5H11−3Br,7),352(M+−2C5H11−4Br,11)。
【0134】
得られた4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの構造式を下記に示す。
【0135】
【化34】
【0136】
実施例7 (2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF8mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液1.4ml(1.4mmol)を添加した。−73℃下で、合成例16で合成した4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル143mg(0.176mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)222mg(1.65mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(37mg、収率43%)。
1H NMR(重トルエン,100℃):δ=7.61−7.55(m,2H),7.58(s,2H),7.22−7.14(m,2H),6.56(s,2H),6.36(s,2H),6.29(s,2H),2.42(t,J=7.6Hz,4H),1.50(m,4H),1.33(m,12H),0.89(t,J=7.1Hz,6H)。
1H NMRスペクトルを図11に示した。
MS m/z:494(M+,100%),353(M+−2C5H11+1,41),247(M+/2,6)。
【0137】
得られた2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0138】
【化35】
【0139】
参考例3 (2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例16で合成した4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル134mg(0.165mmol)及びTHF8mlを添加した。この溶液を−74℃に冷却後、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液1.3ml(1.3mmol)を滴下した。−74℃から−68℃で30分間撹拌後、塩化銅(II)(和光純薬工業製)218mg(1.62mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(15mg、収率18%)。
【0140】
実施例8 (2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF8mlを添加した。−73℃に冷却し、tert−ブチルリチウム(関東化学製、1.46M)のペンタン溶液0.81ml(1.18mmol)を添加した。−73℃下で、合成例16で合成した4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニル121mg(0.146mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)177mg(1.31mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(25mg、収率35%)。
【0141】
合成例17 (2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジナフトターフェニルの合成)[テトラハロターフェニル誘導体の合成]
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン299mg(0.614mmol)、合成例12で合成した3−ブロモ−2−アントラセニルボロン酸425mg、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)50mg(0.043mmol)、トルエン9ml、及びエタノール1.5mlを添加した。さらに炭酸ナトリウム390mg(3.68mmol)と水2.7mlからなる水溶液を添加し、この混合物を80℃で18時間反応を実施した。室温まで冷却させた後、トルエン及び食塩水を添加した。析出した固体を濾別し、濾液が中性になるまで水で洗浄し、さらにクロロホルムとTHFで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで目的物の黄色固体を得た(330mg、収率72%)。
MS m/z:746(M+,71%),666(M+−Br,7),586(M+−2Br,36),506(M+−3Br,5),426(M+−4Br,100),373(M+/2,63)。
【0142】
得られた2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジナフトターフェニルの構造式を下記に示す。
【0143】
【化36】
【0144】
実施例9 (ジナフトターフェニレンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF10mlを添加した。−73℃に冷却し、sec−ブチルリチウム(関東化学製、1.0M)のシクロヘキサン/ヘキサン溶液2.0ml(2.0mmol)を添加した。−73℃下で、合成例17で合成した2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジナフトターフェニル189mg(0.253mmol)を3分間かけて投入した。−73℃から−68℃で30分間熟成後、−75℃下で塩化銅(II)(和光純薬工業製)306mg(2.28mmol)を添加した。16時間かけて室温までゆっくり昇温し、3N塩酸及びトルエンを添加した。分相し、有機相をさらに飽和炭酸水素ナトリウム水及び水で洗浄し、減圧濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、目的物のオレンジ色固体を得た(50mg、収率46%)。
MS m/z:426(M+,100%),213(M+/2,21)。
【0145】
得られたジナフトターフェニレンの構造式を下記に示す。
【0146】
【化37】
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】合成例2の2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図2】実施例1のターフェニレンの1H NMRスペクトル(重ベンゼン,30℃)
【図3】合成例3の2,2’,4’,2”−テトラブロモ−1,1’,5’,1”−ターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図4】合成例5の2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ジベンゾターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,60℃)
【図5】合成例10の4,5−ジフェニル−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ベンゾターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図6】実施例5の2,3−ジフェニルベンゾターフェニレンの1H NMRスペクトル(重ベンゼン,22℃)
【図7】合成例11の2,3−ジブロモアントラセンの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図8】合成例13の2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,60℃)
【図9】合成例15の1,2−ジ(n−ヘキシル)−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図10】合成例16の4,5−ジ(n−ヘキシル)−2,2’,5’,2”−テトラブロモ−1,1’,4’,1”−ナフトターフェニルの1H NMRスペクトル(CDCl3,22℃)
【図11】実施例7の2,3−ジ(n−ヘキシル)ナフトターフェニレンの1H NMRスペクトル(重トルエン,100℃)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法であり、下記一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化した後、銅化合物と反応させることを特徴とするターフェニレン誘導体の製造方法。
【化1】
(ここで、置換基R1〜R14は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基を示す。
なお、R1〜R6の内、任意の二以上のものは互いに結合することができ、R8〜R13の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。
l及びnは、各々0〜2の整数であり、mは0又は1の整数である。)
【化2】
(ここで、置換基X1〜X4は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を示す。一般式(2)の置換基R1〜R14、並びに記号l、m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
なお、一般式(2)の表記は、一般式(2)が下記一般式(3)及び一般式(4)で示されるパラ位置異性体及びメタ位置異性体を総称するものである。
【化3】
【化4】
(ここで、一般式(3)及び一般式(4)の置換基R1〜R14及びX1〜X4、並びに記号l、m及びnは一般式(2)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
【請求項2】
リチオ化剤がアルキルリチウムであることを特徴とする請求項1に記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項3】
リチオ化剤を一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体に対し6〜10当量用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項4】
置換基R1〜R14が、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、又は炭素数2〜30のアルケニル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項5】
mが0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項6】
l及びnが共に2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項7】
lが2、m及びnが共に0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるターフェニレン誘導体の製造方法であり、下記一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体をリチオ化剤へ投入しテトラリチオ化した後、銅化合物と反応させることを特徴とするターフェニレン誘導体の製造方法。
【化1】
(ここで、置換基R1〜R14は同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜20のアルキニル基、又は炭素数2〜30のアルケニル基を示す。
なお、R1〜R6の内、任意の二以上のものは互いに結合することができ、R8〜R13の内、任意の二以上のものは互いに結合することができる。
l及びnは、各々0〜2の整数であり、mは0又は1の整数である。)
【化2】
(ここで、置換基X1〜X4は臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を示す。一般式(2)の置換基R1〜R14、並びに記号l、m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
なお、一般式(2)の表記は、一般式(2)が下記一般式(3)及び一般式(4)で示されるパラ位置異性体及びメタ位置異性体を総称するものである。
【化3】
【化4】
(ここで、一般式(3)及び一般式(4)の置換基R1〜R14及びX1〜X4、並びに記号l、m及びnは一般式(2)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
【請求項2】
リチオ化剤がアルキルリチウムであることを特徴とする請求項1に記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項3】
リチオ化剤を一般式(2)で示されるテトラハロターフェニル誘導体に対し6〜10当量用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項4】
置換基R1〜R14が、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、又は炭素数2〜30のアルケニル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項5】
mが0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項6】
l及びnが共に2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【請求項7】
lが2、m及びnが共に0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のターフェニレン誘導体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−247853(P2008−247853A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93333(P2007−93333)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]