ターボチャージャのシール装置
【課題】簡単な構成によってタービンハウジングと排気ノズルとの間の隙間を閉塞できるようにしたターボチャージャのシール装置を提供する。
【解決手段】スクロール通路8を有するタービンハウジング1と排気ノズル10の後部排気導入壁9aとの間に隙間15を有しているターボチャージャのシール装置であって、タービンハウジング1におけるスクロール通路8に面して形成した段部22に気密に嵌合して固定される嵌合固定部25と、後部排気導入壁9aの外周部23にクリアランスSを有して対峙するクリアランス対峙部27とを有して環状に形成され、スクロール通路8の流体圧力とクリアランスSにおける流体の流路抵抗とによりクリアランス対峙部27を後部排気導入壁9aの外周部23に圧着するようにしたシール体24を備える。
【解決手段】スクロール通路8を有するタービンハウジング1と排気ノズル10の後部排気導入壁9aとの間に隙間15を有しているターボチャージャのシール装置であって、タービンハウジング1におけるスクロール通路8に面して形成した段部22に気密に嵌合して固定される嵌合固定部25と、後部排気導入壁9aの外周部23にクリアランスSを有して対峙するクリアランス対峙部27とを有して環状に形成され、スクロール通路8の流体圧力とクリアランスSにおける流体の流路抵抗とによりクリアランス対峙部27を後部排気導入壁9aの外周部23に圧着するようにしたシール体24を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成によってタービンハウジングと排気ノズルとの間の隙間を閉塞できるようにしたターボチャージャのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の可変容量型のターボチャージャのシール装置の一例を示している。このターボチャージャは、タービンハウジング1とコンプレッサハウジング2とを軸受ハウジング3を介して締結ボルト3a,3bにより一体構造に組立てられ、タービンハウジング1内のタービンインペラ4とコンプレッサハウジング2内のコンプレッサインペラ5とを、軸受ハウジング3内に軸受6によって回転自在に支承されたタービン軸7により連結している。
【0003】
又、上記軸受ハウジング3の後部(タービンハウジング1側)には、図5のA部を拡大した図6にも示す如く、タービンハウジング1のスクロール通路8に導入される流体(排ガス)を前記タービンインペラ4に導くための複数のベーン9を後部排気導入壁9aと前部排気導入壁9b間に放射方向に備えた排気ノズル10(シュラウド)が配置されており、排気ノズル10は、図5のタービンハウジング1と軸受ハウジング3で挟み込むようにして締結ボルト3aにより固定されている。図6中、10a,10bは、排気ノズル10の後部排気導入壁9aと前部排気導入壁9bを貫通して各ベーン9を回転可能に支持するためのベーン軸であり、各ベーン9はベーン軸10a,10bによって両持ちの状態に支持されている。又、上記両持ちの状態で支持する場合において、各ベーン9の後部のベーン軸10aは後部排気導入壁9aに貫通させずに短い軸によって後部排気導入壁9aの前面(右側面)に没入させた形状のものもある。又、左側のベーン軸10aを備えずに、前部排気導入壁9bを貫通するベーン軸10bのみを備えてベーン9を片持ちの状態に支持するようにしたものもある。図5中、11は排気ノズル10組立て時の位置決めピン、12はコンプレッサハウジング2のスクロール通路、13a,13b,13c,13dは前記ベーン軸10bを介してベーン9の開閉角度を調節するためのリンク式の伝達機構である。
【0004】
前記スクロール通路8を形成しているタービンハウジング1には、前記排気ノズル10の後部排気導入壁9aに対峙するノズル対峙部14が形成してあり、排気ノズル10とノズル対峙部14との間には半径方向に延びてスクロール通路8に開口した環状の隙間15が形成されている。又、前記排気ノズル10を構成している後部排気導入壁9a内方端には、ノズル対峙部14の内周面に形成した段部16内に向かいタービンインペラ4に沿って延びた延設部17が形成してあり、従って、前記隙間15は延設部17と段部16との間を後方に伸びた後ノズル対峙部14の内周面に開口する隙間部15'を形成している。
【0005】
前記隙間15は本来不要なものであるが、タービンハウジング1が冷間時と熱間時との間で熱変形を起すこと、及び組み立て部品に精度上のばらつきがあること等のために設けられている。
【0006】
しかし、前記隙間15が存在すると該隙間15を通してスクロール通路8のガスが高圧側から低圧側へリークする問題があり、ガスがリークするとターボチャージャの低速側の性能が大きく変化し、エンジン性能が不安定になる等の問題を生じる。
【0007】
このために、図6に示すように、タービンハウジング1のノズル対峙部14の内周側に形成した段部16と排気ノズル10の延設部17との間に形成される隙間部15'に、シール用ピストンリングを配置することによって、ガスリークを防止すると共に熱変形を吸収するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−125588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、図6に示すように、排気ノズル10の延設部17の外周面に環状の凹溝18を設けてこの凹溝18に通常2本のシール用ピストンリング19,20を挿入することによりシール装置を構成し、前記シール用ピストンリング19,20の弾撥力によってその外周面を段部16の内周面に圧着させることによりガスリークを防止するようにしている。
【0009】
しかし、上記したように隙間部15'にシール用ピストンリング19,20を配置してガスリークを防止しようとしても、ガスリークの防止には限界があるという問題を有していた。即ち、前記シール用ピストンリング19,20には、図7に示す如く合口21を設ける必要があって連続したリングとすることができないため、2本のシール用ピストンリング19,20の合口21の位置をずらして配置しても、合口21を通してガスがリークしてしまうという問題がある。
【0010】
更に、ノズル対峙部14の段部16の内周面を高い真円度で加工しても、シール用ピストンリング19,20の真円度が僅かでも狂っていると、ノズル対峙部14の内周面に均一の圧着力で圧着することができないため、シール用ピストンリング19,20の外周部からガスがリークしてしまう問題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、簡単な構成によってタービンハウジングと排気ノズルとの間の隙間を閉塞できるようにしたターボチャージャのシール装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、スクロール通路を有するタービンハウジングと排気ノズルの後部排気導入壁との間に隙間を有しているターボチャージャのシール装置であって、タービンハウジングにおけるスクロール通路に面して形成した段部と後部排気導入壁の外周部との一方に気密に嵌合して固定される嵌合固定部と、前記段部と後部排気導入壁の外周部との他方にクリアランスを有して対峙するクリアランス対峙部とを有して環状に形成され、スクロール通路の流体圧力とクリアランスにおける流体の流路抵抗とにより前記クリアランス対峙部が段部と後部排気導入壁の外周部との他方に圧着されるようにしたシール体を備えたことを特徴とするターボチャージャのシール装置、に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のターボチャージャのシール装置によれば、タービンハウジングにおけるスクロール通路に面して形成した段部と後部排気導入壁の外周部との一方に嵌合固定部を気密に嵌合してシール体を設置すると、嵌合固定部はその気密の嵌合によってシールされ、クリアランス対峙部は段部と後部排気導入壁の外周部との他方との間にクリアランスを有して対峙することになるが、スクロール通路の流体圧力とクリアランスにおける流体の流路抵抗とにより前記クリアランスを閉じるようにクリアランス対峙部が段部と後部排気導入壁の外周部との他方に圧着されることによって、前記隙間は効果的にシールされるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、図5のターボチャージャに適用した本発明の形態の一例を示すもので、タービンハウジング1のノズル対峙部14におけるスクロール通路8に面した位置に段部22を形成し、該段部22と排気ノズル10を構成する後部排気導入壁9aの外周部23との間にシール体24を設置する。
【0016】
図1に示すシール体24は、図2、図3に示すように環状を有しており、シール体24の内周端は、前記段部22の鉛直壁22a沿って延びる内方鉛直部25aと、該内方鉛直部25aの内周端から水平壁22bに沿って前部(後部排気導入壁9a方向)へ延設される内方水平部25bとを有する嵌合固定部25を形成している。嵌合固定部25の内方水平部25bは段部22の水平壁22bに気密に嵌合する口径を有して予め形成されており、従って、嵌合固定部25を圧入等によって段部22に嵌合させることによりシール体24は気密に固定されるようになっている。
【0017】
又、シール体24の外周端は、外方に向かい前記鉛直壁22aから離反して後部排気導入壁9aに近接するように形成された傾斜部26を有しており、該傾斜部26の外周端は後部排気導入壁9aに沿って外方に延設される外方鉛直部27aと、該外方鉛直部27aの外周端から後部排気導入壁9aの外周端面23'に沿って延設された外方水平部27bとを有してクリアランス対峙部27を形成しており、クリアランス対峙部27は後部排気導入壁9aの外周部23との間に所要のクリアランスSを有して対峙するようになっている。尚、28は、後部排気導入壁9aの外周端面23'の後部コーナ部を避けるように前記外方鉛直部27aと外方水平部27bとの間に突設させた凸部である。なお、図1では、排気ノズル10のベーン軸10a,10bが後部排気導入壁9aと前部排気導入壁9bを貫通して各ベーン9を両持ちの状態で回転可能に支持するようにした場合を示しているが、ベーン軸10aが後部排気導入壁9aを貫通せずに短い軸が後部排気導入壁9aに没入されて両持ちの状態に支持されるようにしたもの、或いはベーン軸10aを備えずにベーン軸10bのみを備えて片持ちの状態に支持するようにしたもの等にも適用することができる。
【0018】
図1に示した形態では次のように作動する。
【0019】
タービンハウジング1におけるスクロール通路8に面して形成した段部22には、シール体24の嵌合固定部25を圧入等にて気密に嵌合させることにより予め固定しておくようにする。この時、シール体24の内方水平部25bは段部22の水平壁22bに気密に嵌合する口径に予め形成されているので、内方水平部25bは水平壁22bに気密に固定される。
【0020】
上記したように、タービンハウジング1の段部22にシール体24を固定した状態において、図5に示すように、排気ノズル10を挟持するようにしてタービンハウジング1と軸受ハウジング3の組み立て固定を行うと、前記排気ノズル10の後部排気導入壁9aが、前記シール体24のクリアランス対峙部27に対して所要のクリアランスSを有して対峙するようになる。
【0021】
上記シール体24の内周端側の嵌合固定部25は、段部22に気密に嵌合されたことによってこの部分におけるシールは確保される。
【0022】
一方、外周端側のクリアランス対峙部27は、後部排気導入壁9aの外周部23との間にクリアランスSを有して対峙することになる。しかし、ターボチャージャが運転されると、スクロール通路8の流体による圧力がシール体24に作用することと、クリアランスSにおける流体の流路抵抗が大きいことによって、シール体24は、クリアランス対峙部27を後部排気導入壁9aの外周部23に圧着して前記クリアランスSを閉じるように変形するようになり、よって、クリアランス対峙部27によるシールが自動的に行われるようになり、従って、前記隙間15は効果的にシールされるようになる。
【0023】
図4は、本発明の形態の他の例を示すもので、図2、図3に示すように環状を有しているシール体24の外周端は、後部排気導入壁9aの外周部23の後面に沿って外方に延びる外方鉛直部29aと、該外方鉛直部29aの外周端から後部排気導入壁9aの外周端面23'に沿って延設された外方水平部29bとを有して嵌合固定部29を形成している。嵌合固定部29の外方水平部29bは後部排気導入壁9aの外周端面23'に気密に嵌合する口径を有して予め形成されており、従って、嵌合固定部29を圧入等にて後部排気導入壁9aの外周端面23'に嵌合させることによりシール体24は気密に固定されるようになっている。尚、30は、後部排気導入壁9aの外周端面23'の後部コーナ部を避けるように前記外方鉛直部29aと外方水平部29bとの間に突設させた凸部である。
【0024】
又、シール体24の内周端は、内方に向かい前記後部排気導入壁9aから離反して段部22に向かうように形成された傾斜部31を有しており、該傾斜部31の内周端は前記段部22の水平壁22bに沿いクリアランスSを有して後部に延設された内方水平部32aによりクリアランス対峙部32を形成している。又、クリアランス対峙部32は、図4中破線で示すように、内方水平部32aの後端から段部22の鉛直壁22aに沿って外方に延長された内方鉛直部32bを有していてもよく、この場合にも内方鉛直部32bと鉛直壁22aとの間には所要のクリアランスSが形成されて対峙するようになっている。
【0025】
図4に示した形態においては、排気ノズル10における後部排気導入壁9aの外周部23には、シール体24の嵌合固定部25を圧入等にて気密に嵌合させることにより予め固定しておくようにする。この時、シール体24の外方水平部29bは後部排気導入壁9aの外周端面23'に気密に嵌合する口径に予め形成されているので、外方水平部29bは外周端面23'に気密に固定される。
【0026】
上記したように、排気ノズル10にシール体24を固定した状態において、図5に示すように、排気ノズル10を挟持するようにしてタービンハウジング1と軸受ハウジング3の組み立て固定を行うと、シール体24のクリアランス対峙部32が段部22の水平壁22bに所要のクリアランスSを有して対峙するようになる。
【0027】
上記シール体24の外周端側の嵌合固定部29は、後部排気導入壁9aの外周部23に気密に嵌合されたことによってこの部分におけるシールは確保される。
【0028】
一方、内周端側のクリアランス対峙部32は、段部22との間にクリアランスSを有して対峙することになる。しかし、ターボチャージャが運転されると、スクロール通路8の流体による圧力がシール体24に作用することと、クリアランスSにおける流体の流路抵抗が大きいことによって、シール体24は、クリアランス対峙部32を段部22の水平壁22bに圧着して前記クリアランスSを閉じるように変形するようになり、よって、クリアランス対峙部32によるシールが自動的に行われるようになり、従って、前記隙間15は効果的にシールされるようになる。ここで、図4中破線で示したように、内方水平部32aの後端から段部22の鉛直壁22aに沿って外方に延長された内方鉛直部32bを備えておくと、クリアランスSの長さが延長されるために流体の流路抵抗が更に増加し、これによってクリアランス対峙部32によるシール性が更に高められるようになる。
【0029】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、嵌合固定部とクリアランス対峙部を備えたシール体の形状は種々変更し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の形態の一例を示す排気ノズル近傍の切断側面図である。
【図2】図1におけるシール体の全体断面図である。
【図3】図2のシール体をIII−III方向から見た正面図である。
【図4】本発明の形態の他の例を示す排気ノズル近傍の切断側面図である。
【図5】従来のターボチャージャのシール装置の一例を示す切断側面図である。
【図6】図5のA部の拡大図である。
【図7】従来備えているシール用ピストンリングの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 タービンハウジング
8 スクロール通路
9a 後部排気導入壁
10 排気ノズル
15 隙間
22 段部
23 外周部
24 シール体
25 嵌合固定部
27 クリアランス対峙部
29 嵌合固定部
32 クリアランス対峙部
S クリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成によってタービンハウジングと排気ノズルとの間の隙間を閉塞できるようにしたターボチャージャのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の可変容量型のターボチャージャのシール装置の一例を示している。このターボチャージャは、タービンハウジング1とコンプレッサハウジング2とを軸受ハウジング3を介して締結ボルト3a,3bにより一体構造に組立てられ、タービンハウジング1内のタービンインペラ4とコンプレッサハウジング2内のコンプレッサインペラ5とを、軸受ハウジング3内に軸受6によって回転自在に支承されたタービン軸7により連結している。
【0003】
又、上記軸受ハウジング3の後部(タービンハウジング1側)には、図5のA部を拡大した図6にも示す如く、タービンハウジング1のスクロール通路8に導入される流体(排ガス)を前記タービンインペラ4に導くための複数のベーン9を後部排気導入壁9aと前部排気導入壁9b間に放射方向に備えた排気ノズル10(シュラウド)が配置されており、排気ノズル10は、図5のタービンハウジング1と軸受ハウジング3で挟み込むようにして締結ボルト3aにより固定されている。図6中、10a,10bは、排気ノズル10の後部排気導入壁9aと前部排気導入壁9bを貫通して各ベーン9を回転可能に支持するためのベーン軸であり、各ベーン9はベーン軸10a,10bによって両持ちの状態に支持されている。又、上記両持ちの状態で支持する場合において、各ベーン9の後部のベーン軸10aは後部排気導入壁9aに貫通させずに短い軸によって後部排気導入壁9aの前面(右側面)に没入させた形状のものもある。又、左側のベーン軸10aを備えずに、前部排気導入壁9bを貫通するベーン軸10bのみを備えてベーン9を片持ちの状態に支持するようにしたものもある。図5中、11は排気ノズル10組立て時の位置決めピン、12はコンプレッサハウジング2のスクロール通路、13a,13b,13c,13dは前記ベーン軸10bを介してベーン9の開閉角度を調節するためのリンク式の伝達機構である。
【0004】
前記スクロール通路8を形成しているタービンハウジング1には、前記排気ノズル10の後部排気導入壁9aに対峙するノズル対峙部14が形成してあり、排気ノズル10とノズル対峙部14との間には半径方向に延びてスクロール通路8に開口した環状の隙間15が形成されている。又、前記排気ノズル10を構成している後部排気導入壁9a内方端には、ノズル対峙部14の内周面に形成した段部16内に向かいタービンインペラ4に沿って延びた延設部17が形成してあり、従って、前記隙間15は延設部17と段部16との間を後方に伸びた後ノズル対峙部14の内周面に開口する隙間部15'を形成している。
【0005】
前記隙間15は本来不要なものであるが、タービンハウジング1が冷間時と熱間時との間で熱変形を起すこと、及び組み立て部品に精度上のばらつきがあること等のために設けられている。
【0006】
しかし、前記隙間15が存在すると該隙間15を通してスクロール通路8のガスが高圧側から低圧側へリークする問題があり、ガスがリークするとターボチャージャの低速側の性能が大きく変化し、エンジン性能が不安定になる等の問題を生じる。
【0007】
このために、図6に示すように、タービンハウジング1のノズル対峙部14の内周側に形成した段部16と排気ノズル10の延設部17との間に形成される隙間部15'に、シール用ピストンリングを配置することによって、ガスリークを防止すると共に熱変形を吸収するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−125588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、図6に示すように、排気ノズル10の延設部17の外周面に環状の凹溝18を設けてこの凹溝18に通常2本のシール用ピストンリング19,20を挿入することによりシール装置を構成し、前記シール用ピストンリング19,20の弾撥力によってその外周面を段部16の内周面に圧着させることによりガスリークを防止するようにしている。
【0009】
しかし、上記したように隙間部15'にシール用ピストンリング19,20を配置してガスリークを防止しようとしても、ガスリークの防止には限界があるという問題を有していた。即ち、前記シール用ピストンリング19,20には、図7に示す如く合口21を設ける必要があって連続したリングとすることができないため、2本のシール用ピストンリング19,20の合口21の位置をずらして配置しても、合口21を通してガスがリークしてしまうという問題がある。
【0010】
更に、ノズル対峙部14の段部16の内周面を高い真円度で加工しても、シール用ピストンリング19,20の真円度が僅かでも狂っていると、ノズル対峙部14の内周面に均一の圧着力で圧着することができないため、シール用ピストンリング19,20の外周部からガスがリークしてしまう問題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、簡単な構成によってタービンハウジングと排気ノズルとの間の隙間を閉塞できるようにしたターボチャージャのシール装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、スクロール通路を有するタービンハウジングと排気ノズルの後部排気導入壁との間に隙間を有しているターボチャージャのシール装置であって、タービンハウジングにおけるスクロール通路に面して形成した段部と後部排気導入壁の外周部との一方に気密に嵌合して固定される嵌合固定部と、前記段部と後部排気導入壁の外周部との他方にクリアランスを有して対峙するクリアランス対峙部とを有して環状に形成され、スクロール通路の流体圧力とクリアランスにおける流体の流路抵抗とにより前記クリアランス対峙部が段部と後部排気導入壁の外周部との他方に圧着されるようにしたシール体を備えたことを特徴とするターボチャージャのシール装置、に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のターボチャージャのシール装置によれば、タービンハウジングにおけるスクロール通路に面して形成した段部と後部排気導入壁の外周部との一方に嵌合固定部を気密に嵌合してシール体を設置すると、嵌合固定部はその気密の嵌合によってシールされ、クリアランス対峙部は段部と後部排気導入壁の外周部との他方との間にクリアランスを有して対峙することになるが、スクロール通路の流体圧力とクリアランスにおける流体の流路抵抗とにより前記クリアランスを閉じるようにクリアランス対峙部が段部と後部排気導入壁の外周部との他方に圧着されることによって、前記隙間は効果的にシールされるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、図5のターボチャージャに適用した本発明の形態の一例を示すもので、タービンハウジング1のノズル対峙部14におけるスクロール通路8に面した位置に段部22を形成し、該段部22と排気ノズル10を構成する後部排気導入壁9aの外周部23との間にシール体24を設置する。
【0016】
図1に示すシール体24は、図2、図3に示すように環状を有しており、シール体24の内周端は、前記段部22の鉛直壁22a沿って延びる内方鉛直部25aと、該内方鉛直部25aの内周端から水平壁22bに沿って前部(後部排気導入壁9a方向)へ延設される内方水平部25bとを有する嵌合固定部25を形成している。嵌合固定部25の内方水平部25bは段部22の水平壁22bに気密に嵌合する口径を有して予め形成されており、従って、嵌合固定部25を圧入等によって段部22に嵌合させることによりシール体24は気密に固定されるようになっている。
【0017】
又、シール体24の外周端は、外方に向かい前記鉛直壁22aから離反して後部排気導入壁9aに近接するように形成された傾斜部26を有しており、該傾斜部26の外周端は後部排気導入壁9aに沿って外方に延設される外方鉛直部27aと、該外方鉛直部27aの外周端から後部排気導入壁9aの外周端面23'に沿って延設された外方水平部27bとを有してクリアランス対峙部27を形成しており、クリアランス対峙部27は後部排気導入壁9aの外周部23との間に所要のクリアランスSを有して対峙するようになっている。尚、28は、後部排気導入壁9aの外周端面23'の後部コーナ部を避けるように前記外方鉛直部27aと外方水平部27bとの間に突設させた凸部である。なお、図1では、排気ノズル10のベーン軸10a,10bが後部排気導入壁9aと前部排気導入壁9bを貫通して各ベーン9を両持ちの状態で回転可能に支持するようにした場合を示しているが、ベーン軸10aが後部排気導入壁9aを貫通せずに短い軸が後部排気導入壁9aに没入されて両持ちの状態に支持されるようにしたもの、或いはベーン軸10aを備えずにベーン軸10bのみを備えて片持ちの状態に支持するようにしたもの等にも適用することができる。
【0018】
図1に示した形態では次のように作動する。
【0019】
タービンハウジング1におけるスクロール通路8に面して形成した段部22には、シール体24の嵌合固定部25を圧入等にて気密に嵌合させることにより予め固定しておくようにする。この時、シール体24の内方水平部25bは段部22の水平壁22bに気密に嵌合する口径に予め形成されているので、内方水平部25bは水平壁22bに気密に固定される。
【0020】
上記したように、タービンハウジング1の段部22にシール体24を固定した状態において、図5に示すように、排気ノズル10を挟持するようにしてタービンハウジング1と軸受ハウジング3の組み立て固定を行うと、前記排気ノズル10の後部排気導入壁9aが、前記シール体24のクリアランス対峙部27に対して所要のクリアランスSを有して対峙するようになる。
【0021】
上記シール体24の内周端側の嵌合固定部25は、段部22に気密に嵌合されたことによってこの部分におけるシールは確保される。
【0022】
一方、外周端側のクリアランス対峙部27は、後部排気導入壁9aの外周部23との間にクリアランスSを有して対峙することになる。しかし、ターボチャージャが運転されると、スクロール通路8の流体による圧力がシール体24に作用することと、クリアランスSにおける流体の流路抵抗が大きいことによって、シール体24は、クリアランス対峙部27を後部排気導入壁9aの外周部23に圧着して前記クリアランスSを閉じるように変形するようになり、よって、クリアランス対峙部27によるシールが自動的に行われるようになり、従って、前記隙間15は効果的にシールされるようになる。
【0023】
図4は、本発明の形態の他の例を示すもので、図2、図3に示すように環状を有しているシール体24の外周端は、後部排気導入壁9aの外周部23の後面に沿って外方に延びる外方鉛直部29aと、該外方鉛直部29aの外周端から後部排気導入壁9aの外周端面23'に沿って延設された外方水平部29bとを有して嵌合固定部29を形成している。嵌合固定部29の外方水平部29bは後部排気導入壁9aの外周端面23'に気密に嵌合する口径を有して予め形成されており、従って、嵌合固定部29を圧入等にて後部排気導入壁9aの外周端面23'に嵌合させることによりシール体24は気密に固定されるようになっている。尚、30は、後部排気導入壁9aの外周端面23'の後部コーナ部を避けるように前記外方鉛直部29aと外方水平部29bとの間に突設させた凸部である。
【0024】
又、シール体24の内周端は、内方に向かい前記後部排気導入壁9aから離反して段部22に向かうように形成された傾斜部31を有しており、該傾斜部31の内周端は前記段部22の水平壁22bに沿いクリアランスSを有して後部に延設された内方水平部32aによりクリアランス対峙部32を形成している。又、クリアランス対峙部32は、図4中破線で示すように、内方水平部32aの後端から段部22の鉛直壁22aに沿って外方に延長された内方鉛直部32bを有していてもよく、この場合にも内方鉛直部32bと鉛直壁22aとの間には所要のクリアランスSが形成されて対峙するようになっている。
【0025】
図4に示した形態においては、排気ノズル10における後部排気導入壁9aの外周部23には、シール体24の嵌合固定部25を圧入等にて気密に嵌合させることにより予め固定しておくようにする。この時、シール体24の外方水平部29bは後部排気導入壁9aの外周端面23'に気密に嵌合する口径に予め形成されているので、外方水平部29bは外周端面23'に気密に固定される。
【0026】
上記したように、排気ノズル10にシール体24を固定した状態において、図5に示すように、排気ノズル10を挟持するようにしてタービンハウジング1と軸受ハウジング3の組み立て固定を行うと、シール体24のクリアランス対峙部32が段部22の水平壁22bに所要のクリアランスSを有して対峙するようになる。
【0027】
上記シール体24の外周端側の嵌合固定部29は、後部排気導入壁9aの外周部23に気密に嵌合されたことによってこの部分におけるシールは確保される。
【0028】
一方、内周端側のクリアランス対峙部32は、段部22との間にクリアランスSを有して対峙することになる。しかし、ターボチャージャが運転されると、スクロール通路8の流体による圧力がシール体24に作用することと、クリアランスSにおける流体の流路抵抗が大きいことによって、シール体24は、クリアランス対峙部32を段部22の水平壁22bに圧着して前記クリアランスSを閉じるように変形するようになり、よって、クリアランス対峙部32によるシールが自動的に行われるようになり、従って、前記隙間15は効果的にシールされるようになる。ここで、図4中破線で示したように、内方水平部32aの後端から段部22の鉛直壁22aに沿って外方に延長された内方鉛直部32bを備えておくと、クリアランスSの長さが延長されるために流体の流路抵抗が更に増加し、これによってクリアランス対峙部32によるシール性が更に高められるようになる。
【0029】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、嵌合固定部とクリアランス対峙部を備えたシール体の形状は種々変更し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の形態の一例を示す排気ノズル近傍の切断側面図である。
【図2】図1におけるシール体の全体断面図である。
【図3】図2のシール体をIII−III方向から見た正面図である。
【図4】本発明の形態の他の例を示す排気ノズル近傍の切断側面図である。
【図5】従来のターボチャージャのシール装置の一例を示す切断側面図である。
【図6】図5のA部の拡大図である。
【図7】従来備えているシール用ピストンリングの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 タービンハウジング
8 スクロール通路
9a 後部排気導入壁
10 排気ノズル
15 隙間
22 段部
23 外周部
24 シール体
25 嵌合固定部
27 クリアランス対峙部
29 嵌合固定部
32 クリアランス対峙部
S クリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール通路を有するタービンハウジングと排気ノズルの後部排気導入壁との間に隙間を有しているターボチャージャのシール装置であって、タービンハウジングにおけるスクロール通路に面して形成した段部と後部排気導入壁の外周部との一方に気密に嵌合して固定される嵌合固定部と、前記段部と後部排気導入壁の外周部との他方にクリアランスを有して対峙するクリアランス対峙部とを有して環状に形成され、スクロール通路の流体圧力とクリアランスにおける流体の流路抵抗とにより前記クリアランス対峙部が段部と後部排気導入壁の外周部との他方に圧着されるようにしたシール体を備えたことを特徴とするターボチャージャのシール装置。
【請求項1】
スクロール通路を有するタービンハウジングと排気ノズルの後部排気導入壁との間に隙間を有しているターボチャージャのシール装置であって、タービンハウジングにおけるスクロール通路に面して形成した段部と後部排気導入壁の外周部との一方に気密に嵌合して固定される嵌合固定部と、前記段部と後部排気導入壁の外周部との他方にクリアランスを有して対峙するクリアランス対峙部とを有して環状に形成され、スクロール通路の流体圧力とクリアランスにおける流体の流路抵抗とにより前記クリアランス対峙部が段部と後部排気導入壁の外周部との他方に圧着されるようにしたシール体を備えたことを特徴とするターボチャージャのシール装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−112195(P2010−112195A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283277(P2008−283277)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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