説明

ターボ分子ポンプ装置

【課題】ターボ分子ポンプに一体的に取り付けられる制御ユニットを小型化し、または製造コストを低減する。
【解決手段】上ケース12はフランジ12aの貫通孔51に挿通された締結部材61により外部装置の第1の取付部材91に締結される。上ケース12に締結された第1のベース14はフランジ14bの貫通孔52に挿通された締結部材63により外部装置の第2の取付部材92に締結される。制御ユニット70は締結部材65により第2のベース15に締結される。締結部材65にはロータ30の破壊時のトルクが作用しないので、締結部材65および制御ユニット70のケースを、強度が小さいものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボ分子ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプ装置は、半導体装置、液晶等の製造装置に取り付けられ、内蔵するロータを高速に回転し、気体分子を吸気口から引込み、排気口から排出して製造装置内部を高真空にする。ターボ分子ポンプ装置には、ロータを内蔵するターボ分子ポンプに、このターボ分子ポンプを駆動制御する制御ユニット(電源装置)が締結部材により固定された一体型の構造を有するものがある。制御ユニットをターボ分子ポンプに一体化すると、ターボ分子ポンプのモータや、磁気軸受に接続するケーブルの引き回しが簡素となり、接続作業の効率が向上する。このため、このようなターボ分子ポンプと制御ユニットが一体化されたターボ分子ポンプ装置は、多数のターボ分子ポンプ装置が必要とされる大型の製造装置用には、特に、好ましい。
【0003】
ターボ分子ポンプのロータは、高速で回転するため、外乱等によりロータが破壊する場合がある。ロータが破壊すると、ロータの破片がケース部材に衝突し、ケース部材に大きな破壊トルク(急停止トルク)を与える。ターボ分子ポンプは、吸気口の周縁部にフランジを設け、締結部材によりこのフランジを製造装置に締結して製造装置に固定される。
制御ユニットは、製造装置に固定されたターボ分子ポンプに締結部材により締結されて固定される。ロータが破壊した場合、ロータの破片によりケース部材に与えられた破壊トルクは制御ユニットにも伝達される。
【0004】
制御ユニットとターボ分子ポンプとを締結する締結部材の強度を破壊トルクに耐えられるようにするためには、締結部材のサイズを大きいものにする必要があるが、これによって、制御ユニットが大型化される。
このため、ターボ分子ポンプのケースの底面に八角形の環状凹部を形成し、制御ユニットのケースに環状凹部に嵌合する環状凸部を設けたターボ分子ポンプ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このターボ分子ポンプ装置では、両ケースを環状凹部と環状凸部の角部で当接させることにより破壊トルクを吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−236469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御ユニットをターボ分子ポンプに締結する構造においては、ロータの破壊トルクは、制御ユニットにも伝達される。従って、特許文献1に示されたターボ分子ポンプと制御ユニットのケースにより吸収する構造の場合には、制御ユニットのケースに破壊トルクに対して耐えられる強度が必要とされる。このため、制御ユニットのケースを、肉厚を大きくしたり、強度が大きい材料により形成したりする必要があり、装置が大型化され、または製造コストが上昇する要因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のターボ分子ポンプ装置は、ケース部材と、ケース部材内に収容されたロータとを有し、ロータを高速に回転してケース部材の吸気口から排気口側に気体分子を移送するターボ分子ポンプと、ターボ分子ポンプを駆動制御する制御ユニットとを具備し、ケース部材には、吸気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第1の取付部と、排気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第2の取付部とが形成され、ターボ分子ポンプと制御ユニットとは、ターボ分子ポンプと制御ユニットとを固定する締結部材により固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ケース部材に作用する破壊トルクは、ケース部材の第1、第2の取付部から外部装置に伝達される。このため、ターボ分子ポンプと制御ユニットとを締結する締結部材および制御ユニットのケースの強度を小さくすることが可能となり、制御ユニットを小型化し、および/または製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明に係るターボ分子ポンプ装置の一実施の形態を示す断面図。
【図2】この発明に係るターボ分子ポンプ装置の実施形態2の断面図。
【図3】この発明に係るターボ分子ポンプ装置の実施形態3の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、図を参照して本発明に係るターボ分子ポンプ装置の一実施の形態について説明する。
図1は、この発明に係るターボ分子ポンプ装置の一実施の形態を示す断面図である。
図1に図示されたターボ分子ポンプ装置1は、ターボ分子ポンプ10と、このターボ分子ポンプ10の底部に取り付けられた制御ユニット70とを備えている。
ターボ分子ポンプ10は、上ケース12とベース13からなるケース部材11を備えている。上ケース12とベース13はシール部材42を介して密着して固定され、外部から密封された構造を有している。
【0011】
ケース部材11の中心軸上には、ロータ軸5が配置されている。ロータ軸上にはロータ軸5と同軸に取り付けられたロータ30が配置されている。ロータ軸5とロータ30とは、ボルト等の締結部材68により強固に固定されている。
ロータ軸5は、ラジアル方向の磁気軸受31(2箇所)およびスラスト方向の磁気軸受32(上下一対)によって非接触で支持される。ロータ軸5の浮上位置は、ラジアル変位センサ33a、33bおよびアキシャル変位センサ33cによって検出される。磁気軸受31、32によって回転自在に磁気浮上されたロータ軸5は、モータ35により高速に回転駆動される。
【0012】
ロータ軸5の下面には、メカニカルベアリング34を介してロータディスク38が取り付けられている。また、ロータ軸5の上部側にはメカニカルベアリング36が設けられている。メカニカルベアリング34、36は非常用のメカニカルベアリングであり、磁気軸受31、32が作動していない時にはメカニカルベアリング34、36によりロータ軸5が支持される。
【0013】
ロータ30は、上部側と下部側の二段構造を有し、上部側には複数段のロータ翼6が設けられている。最下段のロータ翼6から下方が下段側とされ、下段側にはロータ円筒部9が設けられている。
ロータ30の上部側は上ケース12により覆われている。上ケース12のロータ30の上部側に対応する内面にはステータ翼7とスペーサ21とが交互に配置されている。ロータ翼6とステータ翼7とは、リング状のスペーサ21を間に挟んで、ポンプの軸方向に交互に積層されている。上ケース12の内面において、ベース13の上面上にスペーサ21とステータ翼7とを交互に積層し、上ケース12を上方からベース13に被せて固定すると、ステータ翼7とロータ翼6とがポンプの軸方向に沿って交互に配置される。
【0014】
ロータ30のロータ円筒部9の外周側には、リング状のネジステータ8がボルト41によりベース13に固定されている。ネジステータ8は螺旋状突部8aを有し、螺旋状突部8a間にはネジ溝部8bが形成されている。ロータ30のロータ円筒部9の外周面とネジステータ8の内周面との間は、ロータ30が高速に回転したときに、気体分子を上方から下方に移送することができるような間隙が設けられている。
【0015】
上ケース12の上面には吸気口25が設けられている。
ベース13には排気口45が設けられ、この排気口45にバックポンプが接続される。ロータ30を磁気浮上させ、この状態でモータ35によりロータ30を高速に回転駆動することにより、吸気口25側の気体分子が排気口45側へと排気される。
【0016】
このターボ分子ポンプ10は、上ケース12の内部空間に翼排気部2を有し、ベース13の内部空間にネジ溝排気部3を有する。翼排気部2は複数段のロータ翼6と複数段のステータ翼7とで構成され、ネジ溝排気部3はロータ円筒部9とネジステータ8とで構成されている。
【0017】
モータ35によりロータ30を回転駆動すると半導体製造装置等の外部装置の真空チャンバ内の気体分子が吸気口25から流入する。吸気口25から流入した気体分子は翼排気部2において、下流側へと叩き飛ばされる。図示はしないが、ロータ翼6とステータ翼7とは翼の傾斜の向きが逆であり、且つ、傾斜角度は、高真空側である前段側から下流側である後段側に向けて、気体分子が逆行しにくい角度に変化して形成されている。気体分子は、翼排気部2において圧縮されて図示下方のネジ溝排気部3へ移送される。
【0018】
ネジ溝排気部3においては、ネジステータ8に対してロータ円筒部9が高速回転すると粘性流による排気機能が発生し、翼排気部2からネジ溝排気部3へと移送された気体は圧縮されながら排気口45へ移送されて排気される。
【0019】
ベース13は、第1のベース14と第2のベース15から構成されている。上ケース12には、第1のベース14が固定され、第1のベース14に第2のベース15が固定されている。
第1のベース14は、ネジステータ8の外周を囲む大略円筒形状を有し、底部の中央部に貫通孔を有する。第2のベース15は、ロータ軸5、およびロータ軸の周囲に配置されたモータ35、磁気軸受31、32、ラジアル・アキシャル変位センサ33a〜33c、メカニカルベアリング34、35およびロータディスク38等を収納する中空部を有する筒部と、第1のベース14の底部に対応する平坦部とを有し、大略、断面逆T字形状に形成されている。第2のベース15の筒部は、第1のベース14の底部の中央部に設けられた貫通孔を貫通してロータ軸5とロータ円筒部9の間の空間に配置されている。
第1のベース14および第2のベース15の筒部の中心は、ロータ軸5の中心と同軸である。
【0020】
上ケース12には、上部の吸気口25側に周縁部から外周側に張り出す第1のフランジ12a(第1の取付部)が形成され、下部側に周縁部から外周側に張り出す第2のフランジ12bが形成されている。第1のフランジ12aには複数の貫通孔51が形成されている。第1のフランジ12aの貫通孔51にボルト等の締結部材61を挿通し、締結部材61を締結することにより、上ケース12が二点鎖線で図示する半導体製造装置等の外部装置の第1の取付部材91に取り付けられる。
【0021】
第1のベース14には、上部側に周縁部から外周側に張り出す第3のフランジ14aが形成され、下部の排気口側に周縁部から外周側に張り出す第4のフランジ14bが形成されている。第4のフランジ14b(第2の取付部)には複数の貫通孔52が形成されている。第4のフランジ14bの貫通孔52にボルト等の締結部材62を挿通し、締結部材62を締結することにより、第1のベース14が二点鎖線で図示する半導体製造装置等の外部装置の第2の取付部材92に取り付けられる。
【0022】
第1のベース14の第3のフランジ14aには、複数の貫通孔53が形成されている。第3のフランジ14aの貫通孔53にボルト等の締結部材63を挿通し、締結部材63を上ケース12に形成されたタップ(図示せず)に締結することにより、第1のベース14と上ケース12とが固定される。
【0023】
第2の取付部材92には貫通孔92aが形成される。第2のベース15は、第2の取付部材92の貫通孔92aに挿通される。
第2のベース15には、周縁部近傍に複数の溝54が形成され、下部側に周縁部から外周側に張り出す第5のフランジ15aが形成されている。溝54にボルト等の締結部材64を挿通し、第1のベース14に設けられたタップ(図示せず)に締結部材64を締結することにより第2のベース15が第1のベース14に取り付けられる。
【0024】
第2のベース15には制御ユニット70が取り付けられている。
第5のフランジ15aには複数の貫通孔(図示せず)が形成されており、各貫通孔にボルト等の締結部材65を挿通し、締結部材65を制御ユニット70に形成されたタップ(図示せず)に締結することにより、制御ユニット70が第2のベース15に固定される。
【0025】
制御ユニット70は、図示しない電源部と制御回路部、およびこれらを収容するケースとを備えている。
電源部では、一次電源から供給される交流電力をAC/DCコンバータにより直流電力に変換する。直流電力は、3相インバータとDC/DCコンバータを介して制御回路部に入力される。制御ユニット70の制御回路部は、コネクタを介してケーブル(共に図示せず)により、ターボ分子ポンプ10内のモータ35および磁気軸受31、32等に接続され、モータ35および磁気軸受31、32等を駆動制御する。
【0026】
ターボ分子ポンプ10においては、外乱により、ロータ翼6が上ケース12に接触したり、ロータ翼6が破壊したりする等、幾つかの要因によりケース部材11に破壊トルクが与えられる。中でも、ロータ円筒部9に亀裂が生じ、この亀裂がロータ翼6に伝達されてロータ円筒部9およびロータ翼6が破壊し、これらの破片がケース部材11に衝突した場合の破壊トルク(急停止トルク)が非常に大きな値となる。
ロータ円筒部9およびロータ翼6が破壊すると、破壊した破片がケース部材11に衝突し、破片の回転方向の衝撃がケース部材11に伝達される。このため、ケース部材11に破片の運動量に対応するトルクが作用する。
【0027】
従来、ターボ分子ポンプ10は、上ケース12の第1のフランジ12a(第1の取付部)においてのみ外部装置に取り付けられており、制御ユニット70はターボ分子ポンプのベースのみに締結されていた。
このため、ケース部材11に働くロータ破壊時のトルクは、外部装置に締結された第1の取付部に作用すると共に、制御ユニット取付部にも作用する。
従って、ケース部材11と制御ユニット70のケースとの取付を締結部材のみで行う場合には、締結部材の強度を、ケース部材11に作用するロータ破壊時のトルクによって与えられる剪断力に耐えられる強度を有するようにする必要がある。このため、締結部材のサイズが大きくなり、これに伴い、制御ユニットのサイズが大きくなる。
ケース部材11と制御ユニットのケースとの取り付けを特許文献1のように、一方および他方に八角形の環状凹部と、環状凹部に嵌合する環状凸部を設ける構造とすると、構造が複雑となり、組み立てが面倒となる。
【0028】
また、ケース部材11と制御ユニット70のケースとの取付を締結部材により行う場合および両ケースの嵌合部を多角形状にする場合のいずれにおいても、制御ユニット70のケースには、ケース部材11に作用するロータ破壊時のトルクが伝達される。このため、制御ユニット70のケースをロータ破壊時のトルクに耐えられる強度にする必要がある。これには、制御ユニット70のケースを、肉厚を大きくしたり、強度の大きい高価な材料を使用したりすることが必要となり、装置が大型化し、または製造コストを上昇する要因となる。
【0029】
これに対し、本発明の一実施の形態におけるターボ分子ポンプ装置1では、上ケース12の第1のフランジ12a(第1の取付部)が外部装置の第1の取付部材91に取り付けられると共に、第1のベース14の第4のフランジ14b(第2の取付部)が外部装置の第2の取付部材92に取り付けられる。上ケース12と第1のベース14とは、第3のフランジ14aと第4のフランジ14bにおいて固定される。
【0030】
この構造では、上ケース12に衝突するロータ30の破片の衝撃は、主に、上ケース12→第2、第3のフランジ12b、14aを締結する締結部材63→第1のベース14→第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材62の経路で伝達される。
つまり、ケース部材11が受けるロータ30の破片の衝撃は、第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材62から、外部装置の第2の取付部材92に伝達されて吸収されるため、基本的には、制御ユニット70に伝達されることはない。
【0031】
すなわち、第2のベース15を第1のベース14に締結する締結部材64および制御ユニット70を第2のベース15に締結する締結部材65には、基本的には、ロータ30の破片の衝撃によりケース部材11が受けるトルクは作用しない。このため、締結部材64は、第2のベース15と制御ユニット70との合計の自重に耐えられる強度を有するものであればよく、締結部材65は、制御ユニット70の自重に耐えられる強度を有するものであればよい。
【0032】
また、制御ユニット70には、ロータ30の破片の衝撃によりケース部材11が受けるトルクは作用しないため、制御ユニット70のケースは、制御ユニット70単体として必要とされる強度を有する程度のものであればよい。
制御ユニット70のケースの材料の一例として、ターボ分子ポンプと制御ユニットとが別体のタイプにおいて、通常、使用されているアルミニウム鋳造品(AC4C)、アルミニウムダイカスト材(ADC12)等を用いることができる。また、ポリカーボネート等の耐衝撃性・耐熱性・難燃性などにおいて高い物性を示すエンジニアリングプラスチックスを用いることもできる。
【0033】
このように、締結部材64、65は、従来よりも、強度が小さいものとすることができ、制御ユニット70のケースは、安価で肉厚の小さい部材とすることができる。
よって、本発明の一実施の形態によれば、制御ユニット70のサイズを小型化し、および/あるいは製造コストを低減することが可能となる。
【0034】
(実施形態2)
図2は、この発明に係るターボ分子ポンプ装置の実施形態2の断面図である。
実施形態2が実施形態1と相違する点は、実施形態1における第1のベース14と第2のベース15とが、実施形態2においては一体化されたベース13とされている点である。
以下は、実施形態1と相違する点を中心に説明することとし、実施形態1と同じ部材には同一の図面番号を付して説明を省略する。
すなわち、図2に図示されたベース13は、ロータ軸5、モータ35等の外周を囲む中央側の円筒部とネジステータ8の外周を囲む周縁側の円筒部とが連結されたベース上部13aと、このベース上部13aの下面に一体に設けられたベース下部13bとを有する。
ベース上部13aには、第4のフランジ14bが形成されており、実施形態1と同様、第4のフランジ14bに形成された貫通孔52に締結部材62を挿通して、締結部材62によりベース13を外部装置の第2の取付部材92に締結する。
また、ベース下部13bには、フランジ15aが形成されており、実施形態1と同様、フランジ15aに形成された貫通孔に締結部材65を挿通して、締結部材65により制御ユニット70をベース13に締結する。
【0035】
実施形態2においては、上ケース12に衝突するロータ30の破片の衝撃は、主に、上ケース12→第2、第3のフランジ12b、14aを締結する締結部材63→ベース13の第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材62の経路で伝達される。
この構造においても、ケース部材11が受けるロータ30の破片の衝撃は、第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材62から外部装置の第2の取付部材92に伝達されて吸収されるため、基本的には、制御ユニット70に伝達されることはない。
【0036】
従って、制御ユニット70をケース部材11に締結する締結部材67には、基本的には、ロータ30の破片の衝撃によりケース部材11が受けるトルクは作用しない。このため、締結部材65は、制御ユニット70の自重に耐えられる強度を有するものであればよい。
また、制御ユニット70には、ロータ30の破片の衝撃によりケース部材11が受けるトルクは作用しないため、制御ユニット70のケースは、制御ユニット70単体として必要とされる強度を有する程度のものであればよい。
従って、実施形態1と同様に、制御ユニット70のサイズを小型化し、および/あるいは製造コストを低減することが可能となる。
また、ベース13が1つの部材であるので、実施形態1に比し、組み立てが効率的となる。
【0037】
(実施形態3)
図3は、この発明に係るターボ分子ポンプ装置の実施形態3の断面図である。
実施形態3においても実施形態1と同様、第1、第2のベース14、15が一体化されたベース13を有する。実施形態2との相違は、実施形態2においてベース上部13aに形成されていた第4のフランジ14bを実施形態3では有していない点である。
以下は、実施形態2と相違する点を中心に説明することとし、実施形態2と同じ部材には同一の図面番号を付して説明を省略する。
すなわち、図3に図示されたベース13も、ロータ軸5、モータ35等の外周を囲む中央側の円筒部とネジステータ8の外周を囲む周縁側の円筒部を連結するベース上部13aと、このベース上部13aの下面に一体に設けられたベース下部13bとを有する。
ベース下部13bの幅は、ベース上部13aの底部の幅よりも小さく、ベース上部13aの底部の周縁部には複数のタップ(図示せず)が形成されている。
【0038】
ベース下部13bには、第2の取付部材92の貫通孔92aの周囲に、ベース上部13aの底部の周縁部に設けられた各タップに対応する貫通孔92bが形成されている。ベース下部13bを第2の取付部材92の貫通孔92aに挿通し、各貫通孔92bに締結部材66を挿通してベース上部13aに設けられた各タップに締結することにより、ケース部材11が外部装置の第2の取付部材92に取り付けられる。制御ユニット70は、ベース下部13bの底面に設けられたタップ(図示せず)に締結部材67を締結することにより、ベース13に取り付けられる。
【0039】
実施形態3においては、上ケース12に衝突するロータ30の破片の衝撃は、主に、上ケース12→第2、第3のフランジ12b、14aを締結する締結部材63→ベース13の第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材66の経路で伝達される。
この構造では、ケース部材11が受けるロータ30の破片の衝撃は、第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材66から外部装置の第2の取付部材92に伝達されて吸収されるため、基本的には、制御ユニット70に伝達されることはない。
【0040】
従って、制御ユニット70をケース部材11に締結する締結部材67には、基本的には、ロータ30の破片の衝撃によりケース部材11が受けるトルクは作用しない。このため、締結部材67は、制御ユニット70の自重に耐えられる強度を有するものであればよい。
また、制御ユニット70には、ロータ30の破片の衝撃によりケース部材11が受けるトルクは作用しないため、制御ユニット70のケースは、制御ユニット70単体として必要とされる強度を有する程度のものであればよい。
従って、実施形態1と同様に、制御ユニット70のサイズを小型化し、および/あるいは製造コストを低減することが可能となる。
また、実施形態2と同様、ベース13が1つの部材であるので、実施形態1に比し、組み立てが効率的となる。
【0041】
以上説明した通り、本発明のターボ分子ポンプ装置の各実施形態によれば、ベース13、14に外部装置への第2の取付部を設けることにより、ロータ30の破壊時のトルクを、主に、第4のフランジ14bと外部装置の第2の取付部材92を締結する締結部材62、66で受けるようにした。
つまり、制御ユニット70をベース13に締結する締結部材64、65には、ロータ30の破壊時のトルクが作用しない構造とした。このため、締結部材64、65として強度が小さいものを用いることができ、また、制御ユニット70のケースは、安価で肉厚の小さい部材とすることができる。
従って、制御ユニット70のサイズを小型化し、および/あるいは製造コストを低減することが可能となる、という効果を奏する。
【0042】
なお、上記各実施形態において、締結部材62、66としてボルトを用いる場合で例示した。しかし、締結部材62、66としてピンを用い、圧入またはピン頭部をかしめることにより固定するようにしてもよい。
【0043】
また、上記各実施形態では、ターボ分子ポンプを冷却する冷却装置の説明を省略したが、通常、ベース13の下部には冷却装置が装着されており、本発明は、当然、冷却装置を備えたターボ分子ポンプ装置に適用することができるものである。
【0044】
その他、本発明は、発明の趣旨の範囲において種々変形して適用することが可能であり、要は、ケース部材と、ケース部材内に収容されたロータとを有し、ロータを高速に回転してケース部材の吸気口から排気口側に気体分子を移送するターボ分子ポンプと、ターボ分子ポンプを駆動制御する制御ユニットとを具備し、ケース部材には、吸気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第1の取付部と、排気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第2の取付部とが形成され、ターボ分子ポンプと制御ユニットとは、ターボ分子ポンプと制御ユニットとを固定する締結部材により固定されているものであればよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ターボ分子ポンプ装置
2 翼排気部
3 ネジ溝排気部
6 ロータ翼
7 ステータ翼
10 ターボ分子ポンプ
12 上ケース
12a 第1のフランジ
12b 第2のフランジ
13 ベース
13a ベース上部
13b ベース下部
14 第1のベース
14a 第3のフランジ
14b 第4のフランジ
15 第2のベース
25 吸気口
30 ロータ
45 排気口
61〜68 締結部材
70 制御ユニット
91 第1の取付部材
92 第2の取付部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、ケース部材内に収容されたロータとを有し、前記ロータを高速に回転して前記ケース部材の吸気口から排気口側に気体分子を移送するターボ分子ポンプと、
前記ターボ分子ポンプを駆動制御する制御ユニットとを具備し、
前記ケース部材には、前記吸気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第1の取付部と、前記排気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第2の取付部とが形成され、
前記ターボ分子ポンプと前記制御ユニットとは、前記ターボ分子ポンプと前記制御ユニットとを固定する締結部材により固定されていることを特徴とするターボ分子ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ分子ポンプ装置において、前記ロータは、ロータ翼とロータ円筒部を有し、前記ケース部材は、前記ロータ翼の外周を覆い内周側にステータ翼が配置された上ケースと、前記ロータ円筒部の外周を覆い、周縁部において前記上ケースに締結されたベースとを有し、前記第2の取付部は、前記ベースの周縁部に設けられた、外周側に張り出すフランジを含むことを特徴とするターボ分子ポンプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のターボ分子ポンプ装置において、前記ベースは、前記第2の取付部を有する第1のベースと、前記第1のベースに取り付けられ、前記制御ユニットとの取付部を有する第2のベースとを有することを特徴とするターボ分子ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のターボ分子ポンプ装置において、前記ロータは、ロータ翼とロータ円筒部を有し、前記ケース部材は、前記ロータ翼の外周を覆い内周側にステータ翼が配置された上ケースと、前記ロータ円筒部の外周を覆い、周縁部で前記上ケースに締結されたベースとを有し、前記第2の取付部は、前記ベースの低部における前記制御ユニットの周縁部に設けられていることを特徴とするターボ分子ポンプ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−100781(P2013−100781A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245437(P2011−245437)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】