説明

ターボ機械の動作温度を推定するためのシステム及び方法

【課題】ターボ機械の動作温度を推定するためのシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】ターボ機械の部品に取り外し可能に取り付けられた本体210は、1種以上の化学種406と、1種以上の化学種406の初期の第1の濃度440を有する第1の材料402と、第1の材料402からの1種以上の化学種406の移動を可能にするよう構成された第2の材料404とを含む。化学種406は、ターボ機械の作動中に第1の材料402から第2の材料404に移動し、第1の材料402及び第2の材料404における1種以上の化学種406の最終濃度を決定し、第1の材料402と第2の材料404との間の1種以上の化学種406の過渡濃度を決定することにより濃度プロファイルを取得し、濃度プロファイルをシステムの対応する動作温度に相関付けることにより、作動中の温度を推定できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体的に、ターボ機械の部品が受ける動作温度を推定するためのシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示のシステム及び方法は、本体に対する金属的変質の分析を利用して、ターボ機械の部品が露出され又は受けている温度を推定し、これから部品の残りの作動寿命及び累積損傷を評価できるようになる。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械の部品(すなわち、ブレード、ベーン、ロータ、ホイール、ケーシング、ボルト、バケット、ノズル、燃焼ハードウェア、及び/又はシュラウド)が露出され又は受けている温度を推定することは、ターボ機械の設計を検証する上で重要である。温度の測定はまた、部品の金属的変質を推定し、部品の残りの作動寿命を推定し、検査間隔を最適化し、作動状態を調整するのに有効である。ターボ機械は、限定ではないが、ガスタービン、蒸気タービン、ジェットタービン、及び他のタービン組立体を含む。極めて厳しい環境に曝される部品は、劣化の影響を特に受けやすく、その範囲は、とりわけ、クリープ速度、破断応力、繰り返し荷重の応力/歪み振幅、腐食及び/又は浸食率、及び熱機械的疲労などの幾つかの要因によって決まる。部品が長い期間にわたって高温に曝される場合など、一部の場合では、部品の材料は、金属的変質(例えば、化学的性質、微細構造、その他)を受けて、部品の信頼性及び耐久性を低下させる。これらの要因の作用の程度は、部品の作動上の使用温度に依存することができる。従って、部品が受ける温度は、これらの温度で費やされる時間と同様に、このような部品の寿命を規定する重要なパラメータである。寿命評価手順は、このような部品が曝されてきた又は受けている動作温度及びこれらの部品が作動に費やした時間に基づいて、このような部品の残りの作動寿命を推定するために開発されている。
【0003】
現在では、ターボ機械の作動中に部品が曝され又は受けている温度を推定するための破壊的システム及び方法と非破壊的なシステム及び方法の両方がある。破壊的システム及び方法は、部品の特性上の金属的変質を調査して、これから時間と温度の関係を推定できるように部品の切断及び破壊を伴う。ガスタービンの高温ガス経路の部品が曝され又は受けている温度を推定するのに使用されてきた非破壊的システム及び方法は、とりわけ、熱電対、パイロメータ、渦電流センサ、及び/又は温度プローブの使用を含む。
【0004】
温度を推定する現行のシステム及び方法は、以下の重大な欠点がある。
【0005】
1)多くのシステムが面倒な手順を必要とする。
【0006】
2)多くのシステムが複雑なセンサ構成を用いている。
【0007】
3)多くのシステムが、ターボ機械圧縮機が受ける高温で長時間持続できない部品を必要とする。
【0008】
4)多くのシステムが、部品が受ける過酷な環境(例えば、酸化、腐食)に耐えることができない部品を含む。
【0009】
5)多くのシステムが、部品自体に対して破壊的である。
【0010】
6)多くのシステムが、可動部品に好適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6466309号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、上述の欠点がなく、部品が曝される温度を測定できる、より簡単で、より信頼性があり、使いやすく、非破壊的なシステム及び方法が当該技術分野において望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0014】
本開示の例示的な実施形態によれば、ターボ機械の部品に取り外し可能に取り付けられた本体を有するシステムが提供される。本体は、1種以上の化学種と、1種以上の化学種の初期の第1の濃度を有する第1の材料と、第1の材料からの1種以上の化学種の移動を可能にするよう構成された第2の材料とを含む。1種以上の化学種がターボ機械の作動中に第1の材料から第2の材料に移動する。本体は、作動中のターボ機械の温度を推定するよう構成される。
【0015】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、ターボ機械の部品の動作温度を推定する方法が提供される。本方法は、部品に取り外し可能に取り付けられた本体を準備するステップを含む。本体は、1種以上の化学種と、1種以上の化学種の初期の第1の濃度を有する第1の材料と、第1の材料からの1種以上の化学種の移動を可能にするよう構成された第2の材料とを含む。1種以上の化学種がターボ機械の作動中に第1の材料から第2の材料に移動し、該本体が、作動中のターボ機械の温度を推定するよう構成される。本方法は、ターボ機械を作動させるステップと、ターボ機械の作動を停止するステップとを含む。本方法は、本体を部品から取り外すステップと、第1の材料及び第2の材料における1種以上の化学種の最終濃度を決定し、第1の材料と第2の材料との間の1種以上の化学種の過渡濃度を決定することにより濃度プロファイルを取得するステップとを含む。本方法は、濃度プロファイルをターボ機械の対応する動作温度に相関付けることにより、動作温度を決定するステップを含む。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、例証として本発明の原理を示す添付図面を参照しながら、以下の好ましい実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本開示のターボ機械の断面図。
【図2】本開示のターボ機械の部品の断面図。
【図3】本開示の例示的な本体の概略図。
【図4】本開示のターボ機械の動作前の本体の第1及び第2の材料の概略図。
【図5】本開示のターボ機械の動作後の本体の第1及び第2の材料の概略図。
【図6】本開示の本体の1種以上の化学種の濃度プロファイルのチャート。
【図7】本開示のターボ機械の部品の動作温度を推定する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
可能な限り、同じ要素を示すために図面全体を通じて同じ参照符号が使用される。
【0019】
ターボ機械において部品が曝される温度をより正確に、高い信頼で、好都合に且つ容易に測定又は推定可能にするより簡単な非破壊的システム及び方法が提供される。本開示の実施形態の1つの利点は、ターボ機械部品の残りの作動寿命及び/又は累積損傷を評価できるシステム及び方法を含む。別の利点は、本システム及び方法がターボ機械及びターボ機械部品自体に対して非破壊的であることである。更に別の利点は、本システム及び方法が、ターボ機械部品が曝され又は受けている温度を推定するために本体を使用することである。別の利点は、システム及び方法が本体の原子拡散特性の変化に基づいて、ターボ機械部品が曝され又は受けている温度を推定することである。更に別の利点は、システム及び方法が、ターボ機械の空力及び機械的設計と干渉しないように構成されることである。
【0020】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。本明細書に開示した特定の構造及び機能は、限定としてではなく、単に及び本発明を様々に利用する当業者への教示するための代表的根拠となる特許請求の範囲の根拠として解釈すべきである。図示したシステム及び方法のあらゆる変更形態又は変形形態、並びに当業者が通常想起されることになる本明細書に示す本発明の原理のこのような別の用途は、本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【0021】
本発明の様々な実施形態の部品について紹介する際、単数形で記載したものは、その部品が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した部品以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0022】
ターボ機械システムは、限定ではないが、ガスタービン、蒸気タービン、ジェットエンジンタービン、及び他のタービン組立体を含むことができる。特定の用途において、ターボ機械部品(例えば、タービン、圧縮機、及びポンプ)は、極めて厳しい環境及び激しい損耗条件に曝される。例えば、ブレード、ケーシング、ロータホイール、シャフト、ノズルなどの特定のターボ機械部品は、高熱環境及び高回転環境で作動する可能性がある。極めて厳しい環境での動作条件の結果として、部品の表面上に亀裂、溝、キャビティ、又はギャップが生じる場合がある。
【0023】
本開示は、センサとして動作し且つ作動中にターボ機械の部品が曝され又は受けている温度を推定するのに有用な本体を含む。ターボ機械の作動時に部品が費やした時間は既知のパラメータであるので、部品が曝され又は受けている温度を推定することができ、これを用いて所与の部品にどれほどの作動寿命が残されているかを決定することができる。これらの推定温度はまた、所与の部品によりどれほどの損傷が蓄積しているかを決定するのに用いることもできる。
【0024】
ここで図1を参照すると、ガスタービンシステムとして図1に示されたターボ機械10の部品は、作動状態時に機械的及び熱的応力を受け、特定の部品の定期的な保守整備を必要とする場合がある。ターボ機械10の作動時には、天然ガス又はシンガスのような燃料は、1以上のノズル12を通じて燃焼器16に送ることができる。空気は、入口18を通ってターボ機械10に流入し、圧縮機14により加圧することができる。圧縮機14は、空気を加圧する一連の圧縮機ホイール20、22、及び24を含むことができる。各段は、固定ベーン26とロータブレード28の1以上のセットを含むことができる。ロータブレード28は、回転して圧力を漸次的に増大させ、加圧空気を提供し、該ロータブレード28は、圧縮機締め付けボルト32に接続された圧縮機ホイール30に取り付けることができる。圧縮機14からの加圧された吐出空気は、ディフューザセクション36を通って圧縮機14から流出し、燃焼器16に配向されて燃料と混合することができる。特定の実施形態において、ターボ機械10は、環状配列で配置された複数の燃焼器16を含むことができる。各燃焼器16は、高温の燃焼ガスをタービン34に配向することができる。
【0025】
図1に示すように、タービン34は、タービンシェル56によって囲まれた3つの独立した一連のタービンホイール40、42、及び44を含む。各一連のタービンホイール40、42、及び44は、前方タービンシャフト54に取り付けられたそれぞれのタービンホイール48、50及び52に結合されたタービンブレード又はタービンバケット46のセットを含む。高温燃焼ガスによりタービンブレード46の回転が生じると、シャフト54が回転して、圧縮機14及び発電器などの他の何れかの好適な負荷を駆動する。最終的には、ターボ機械10は、排気セクション60を通じて燃焼ガスを拡散し排出する。限定ではないが、ノズル12、吸気口18、圧縮機14、ベーン26、ブレード28、ホイール30、シャフト32、ディフューザ36、段40、42、44、ブレード46、シャフト54、シェル56、及び排気口60などのターボ機械部品200は、以下で詳細に説明するように、作動時にターボ機械システム10の部品が曝され又は受けている温度を推定するのに有用なセンサとして作動する少なくとも1つの本体210を含む。
【0026】
図2は、ターボ機械10の部品200の概略断面図である。この実施形態では、例証の目的で、部品200はガスタービンのロータホイール202である。ロータホイール202の後方側面204と前方側面206とが図示されている。ロータホイール202は、ボルト又はシャフト(図示せず)を受けるためのボルト円230を含む。ロータホイール202にブレードのダブテール220が隣接している。例示的な実施形態において、本体210は、ロータホイール202に前方側面206上で取り付けられる。本体210は、ロータホイール202のバランシングウェイト316である。加えて、本体210は、ガスタービン又は蒸気タービンのようなターボ機械10の作動時にロータホイール202の温度を測定するよう作動する。
【0027】
図3に示すように、本体210は、限定ではないが、ロータホイールバランス316(図2を参照)、ボルト312、ナット310、ロックワイヤ、シム、シール314、パッチリング、及びこれらの組み合わせなど、ターボ機械10の何らかの2次部品である。本体210は、2次部品として、ターボ機械10の部品200の固定、バランス、シール、又はこれらの組み合わせを行うと共に、ターボ機械10の作動時の部品200の温度の測定をも行うよう動作する。
【0028】
図4及び5に示すように、本体210の組成は、ターボ機械10の作動時の部品200の温度の測定を可能にする。図4に示すように、ターボ機械10の作動の前に、本体210は、1種以上の化学種406と、1種以上の化学種406の初期の第1の濃度を有する第1の材料402と、1種以上の化学種406の第1の材料402からの移動を可能にするよう構成された第2の材料404とを含む。本体210は、任意選択的に、第1の材料402と第2の材料404との間に境界部408を含むが、境界部408は必須ではなく、一般に、ターボ機械10の作動の前における、1種以上の化学種406の第1の材料402と第2の材料404との間の濃度差を示すのに用いられる。
【0029】
図5に示すように、1種以上の化学種406は、ターボ機械10の作動中に第1の材料402から第2の材料404に移動する。本体210は、作動時のターボ機械10の温度を推定するよう構成される。1種以上の化学種406の第1の材料402から第2の材料404への移動及びその結果として得られる濃度により、ターボ機械10の作動中の動作温度を計算することが可能になる。
【0030】
第1の材料402は、限定ではないが、ニッケル、鉄、コバルト、これらの合金、及びこれらの組み合わせを含む材料から選択される。第2の材料404は、ニッケル、鉄、コバルト、これらの合金、及びこれらの組み合わせから選択される。1種以上の化学種406は、ターボ機械10の作動中に拡散体としての役割を果たす安定原子から選択される。1種以上の化学種406用材料の好適な実施例は、限定ではないが、炭素、窒素、酸素、ヘリウム、水素、リン、硫黄、チタニウム、アルミニウム、ホウ素、及びこれらの組み合わせなどの原子を含む。理論には制約されないが、1種以上の化学種406は、第1の材料402のベースメタル原子による格子間拡散を通じて作用すると考えられる。
【0031】
図4に示すように、本体210は、発電用ガスタービン又は蒸気タービンのようなターボ機械10の作動の前に1種以上の化学種406の第1の濃度440を有する第1の材料402を含む。一般に、第2の材料404は、ターボ機械10の作動の前には1種以上の化学種406を含有しておらず、これは第2の濃度442として示されている。ターボ機械10の作動の前では、時間t=0において、1種以上の化学種406の第1の濃度440と第2の濃度442(通常はゼロ)とが本体210において測定される。第1の濃度440と第2の濃度442の値が確認される。
【0032】
図5に示すように、tに等しい作動時間を有するターボ機械10の動作後、本体210は、第1の材料402における1種以上の化学種406の最終原子濃度450と、第2の材料404における1種以上の化学種406の第2の原子濃度452とを含む。作動時間tは、発電システム10及び要件に応じて、約10,000時間〜約80,000時間の間、又は約10,000時間〜約60,000時間の間、或いは、約15,000時間〜約30,000時間の間である。ターボ機械10の動作温度は、約500°F〜約2600°Fの間、又は約600°F〜約1500°Fの間、或いは、約700°F〜約1000°Fの間である。
【0033】
ターボ機械10内の本体210の構造及び配置に応じて、本体210は、ターボ機械10における高温ガス流路又は高温ガス流路の外部にある部品200の動作温度を推定するよう構成される。
【0034】
1つの実施形態において、図4及び5に示すように、本体210の一部は、保護コーティング420を含む。保護コーティング420は、任意選択的に本体210に施工され、ターボ機械10の過酷な動作条件から第1の材料402及び第2の材料404を保護する。保護コーティング420は、限定ではないが、クロム、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、タンタル、タングステン、ハフニウム、イットリウム、これらの合金及びこれらの組み合わせなどの材料から選択される。保護コーティング420は、限定ではないが、物理的気相成長法(PVD)、スパッタリング、溶射、スラリー噴霧、イオン注入及び同様のものなどのあらゆる好適な堆積技法を用いて本体210に施工される。
【0035】
図6に示すように、第1の材料402及び第2の材料404を含む本体210の濃度プロファイルC(x、t)が提供され、ここでxは境界部408からの距離、tは発電システム10の作動時間である。t=0において、ターボ機械10の作動前では、第1の材料402は、1種以上の化学種406の第1の濃度440を有する(図4を参照)。1種以上の化学種406が、ターボ機械10の作動中に第1の材料402から第2の材料404に移動又は拡散すると、本体210の濃度プロファイルが変化し、これは406’(図5を参照)で表記される曲線で示されている。第1の材料402及び第2の材料404における1種以上の化学種406の最終原子濃度450は、時間=tの時点であり、ここでtはターボ機械10の作動時間である。時間tにおける第1の材料402及び第2の材料404間の1種以上の化学種406の過渡濃度は、濃度プロファイルと呼ばれ、ターボ機械10の動作温度を決定するのに使用される。
【0036】
図7に示すように、ターボ機械10の部品200の動作温度を推定する方法700が提供される。ターボ機械の実施例は、限定ではないが、ガスタービン、蒸気タービン、ジェットエンジンタービン、及び他のタービン組立体を含む。方法700は、部品200に取り外し可能に取り付けられた本体210を提供する段階を含む(ステップ701)。本体210は、1種以上の化学種406と、1種以上の化学種406の初期の第1の濃度440を有する第1の材料402と、1種以上の化学種406の第1の材料402からの移動を可能にするよう構成された第2の材料404とを含む。1種以上の化学種406は、ターボ機械10の作動中第1の材料402から第2の材料404に移動する。本体210は、作動中のターボ機械10の温度を推定するよう構成される。方法700は、ターボ機械10を作動させる段階を含む(ステップ703)。
方法700は、ターボ機械10の作動を停止する段階を含む(ステップ705)。方法700は、部品200から本体210を取り外す段階を含む(ステップ707)。部品200から本体210を取り外すステップ707は、部品200から本体210を完全に又は部分的に取り外す段階を含む。方法700は、第1の材料402及び第2の材料404における1種以上の化学種406の最終原子濃度450を決定し、第1の材料402と第2の材料404との間の1種以上の化学種406の過渡濃度を決定する(図6を参照)ことにより濃度プロファイルを取得する段階を含む(ステップ709)。方法700は、第1の材料402から第2の材料404への1種以上の化学種406の濃度プロファイルをターボ機械10の対応する動作温度に相関付けることにより、動作温度を決定する段階を含む(ステップ711)。
【0037】
1種以上の化学種406、第1の材料402、第2の材料404、及び任意選択的に境界部408を含む本体210は、複数の技法を用いて構成することができる。融解−凝固プロセスを用いて本体210を形成することができ、ここで第1の材料402が最初に融解されて所望の形態に凝固され、第2の材料404が最初に融解されて所望の形態に凝固され、次いで、第1の材料402及び第2の材料404が、限定ではないが、溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、又は拡散結合のようなあらゆる好適な接合方法を用いて接合される。任意選択的に、境界部408は、第1の材料402と第2の材料404との間の接合材料とすることができる。本体210はまた、堆積プロセスを用いて第2の材料404を第1の材料402に施工することにより形成することができる。堆積プロセスは、スパッタリング、溶射、イオンプラズマ蒸着、化学メッキ、電着、イオン注入、スラリーコーティング、物理的気相成長法又は同様のものなどのプロセスを含む。堆積プロセスはまた、1種以上の化学種406を第1の材料402に施工するのに用いることができる。これらの技法の何れもが、限定ではないが、ロータホイールバランス316(図2を参照)、ボルト312、ナット310、ロックワイヤ、シム、シール314、パッチリング、及びこれらの組み合わせ(図3を参照)など、所望の本体210形状を形成するのに用いることができる。
【0038】
本体210を形成する1つの例示的な方法は、誘導融解、アーク融解、又は同様のものを用いて第1の材料402の合金インゴットを鋳造する段階と、高温アニールを実施して第1の材料402の合金インゴットを均質化する段階と、合金インゴットを、本体210の一部を形成することになる適切なサイズの合金ベース形態に区分化する段階とを含む。第2の材料404が同様の方法で生成され、第1の材料と接合されて本体210を形成することができる。本体210は、形状及び所望の用途に応じて、部品200に取り付け、部品200を固定し、又は部品200を平衡化することができる。
【0039】
本体210を形成する別の例示的な方法は、直接書刻法、スタンピング、レーザ蒸着、物理的気相成長法、化学蒸着、又は同様のものを用いて第2の材料404の層を第1の材料402上に堆積する段階と、必要に応じて第2の材料404の追加層を第1の材料402上に堆積して所望の本体210を達成する段階とを含む。第2の材料404を第1の材料402に施工した後、限定ではないが、物理的気相成長法、イオン注入、電着、スパッタリング、溶射、又は同様のものなどのあらゆる好適な堆積法を用いて1種以上の化学種406が第1の材料402に導入される。
【0040】
本体210は、第1の材料402及び第2の材料404の縁部を電子ビーム溶接した後、所定時間の間所定温度で静水圧プレス成形することにより形成することができる。第1の材料402及び第2の材料404を接合した後、スパッタリング、溶射、イオンプラズマ蒸着、又は同様のものなどの堆積プロセスを用いて、1種以上の化学種406を本体210の第1の材料402に導入することができる。
【0041】
本体210を形成する1つの例示的な方法は、冷間静水圧プレス、高温静水圧プレス、又は同様のものを用いて第1の材料402及び第2の材料404の薄箔を共にプレスして拡散結合された本体210を形成する段階と、次いで、1種以上の化学種406を第1の材料402に導入する段階とを含む。次に、本体210は、シール314(図3を参照)のような所望の2次部品に成形することができる。
【0042】
本体210を形成する上述の方法は、限定ではなく例証であり、どのように本体210を形成できるかに関する実施例を意味する。当業者であれば理解されるように、本体210を形成する他の多くの方法も実施可能である。
【0043】
使用の前に、本体210の温度固有の特性の関係を最初に確立して纏めることが必要な場合がある。例えば、少なくとも第1の材料402及び第2の材料404についての化学的性質、格子パラメータ/相比率、硬度/弾性、電気特性及び/又は磁気特性、及び/又は種々の温度での拡散距離を確立し、発電システム10の適用可能な動作温度範囲に対応して較正することができる。あらゆる好適な方法を利用して、本体210の温度固有の特性を測定又は決定することができる。
【0044】
例えば、1種以上の化学種406を含む第1の材料402と、第2の材料404とを有する本体210の化学的特性は、波長分散型分光法(WDS)、或いは、エネルギー分散分光法(EDS)、蛍光X線分光法、レーザプラズマ分光法、又は同様のものを用いて電子顕微分析により測定又は決定することができる。第1の材料402及び第2の材料404の格子パラメータ/相比率は、X線回折、高エネルギーX線回折、中性子回折、画像分析統合光学及び/又は電子顕微鏡法、又は同様のものにより測定又は決定することができる。第1の材料402及び第2の材料404の硬度/弾性は、ナノインデーション、微小堅さ試験、超音波弾性測定法、又は同様のものによって測定又は決定することができる。本体210の第1の材料402又は第2の材料404の電気的特性(抵抗率及び/又は導電率を単位として)は、渦電流プローブによって測定又は決定することができる。本体210の第1の材料又は第2の材料の磁気特性(磁界を単位として)は、渦電流プローブによって測定又は決定することができる。本体210の1種以上の化学種406の拡散特性(すなわち、種々の温度での拡散距離)は、波長分散型分光法(WDS)又はエネルギー分散分光法(EDS)、もしくはナノインデーションの何れかを用いて電子マイクロプローブ分析により測定又は決定することができる。最終的に、本体210の第1の材料402又は第2の材料404の表面マイクロ電圧は、熱電ユニット測定により測定することができる・
運転条件が同じであり、本体210の温度固有特性の関係が確立されると、2次部品として動作する本体210は、ターボ機械10の部品200に取り付けられ、又は直接付加され、固定され、平衡化され、又はこれをシールすることができる。本体210は、部品200(図2を参照)の空力又は機械的設計と干渉しない。本体210は、ナット310、ボルト312、金属シール314、バランシングウェイト316、ロックワイヤ、シム、パッチリング、及びこれらの組み合わせとして本明細書で説明されているが、ターボ機械10のあらゆる2次部品とすることができる。本体210は、部品200自体と同じ動作温度及びシャットダウンサイクルに曝され又は受けている。
【0045】
ターボ機械10の作動中、部品200及び本体210は通常、所与の時間期間の間動作温度に曝され又は受けて、次いでシャットダウンされる。シャットダウンプロセスは、クエンチプロセスと同様であり、ここで部品200は、動作温度から迅速に冷却される。本体210は、動作温度の変化に費やされる時間により1種以上の化学種406の第1の材料402から第2の材料404への移動が生じ、シャットダウンプロセス中の部品200と本体210の迅速な冷却が本体210における温度微細構造を維持するように設計される。本体の金属特性の変質並びに1種以上の化学種406の第1の材料402から第2の材料404への拡散/移動により、発電システム10の部品の最終温度及び/又は平均温度をこれから正確に推定できるようになる。
【0046】
温度推定は、第1の材料402における第2の材料404への1種以上の化学種406の拡散プロセス、及び動作において費やされる本体210の時間に依存する。本体210の曝露又は動作温度は、1種以上の化学種406の第1の材料402から第2の材料404への拡散動力学を分析することにより推定することができる。発電システム10の運転中、第1の材料402における1種以上の化学種406は、第2の材料404に相互作用して拡散し、種々の温度による金属間化合物又は相互拡散ゾーンを形成するよう設計される。金属間化合物又は相互拡散ゾーンの形成並びにゾーンの厚みにより、本体210の露出又は動作温度を評価できるようになる。エネルギー分散分光法(EDS)検出器又は波長分散型分光法(WDS)検出器と結合した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、本体210(図5)の第1の材料402と第2の材料404との間の1種以上の化学種406の相互拡散を決定することができる。本体210及び部品200が動作中である時間は既知であるので、観測される本体210の1種以上の化学種406、すなわち第1の材料402及び第2の材料404の拡散特性の変化から動作温度を逆算することができる。
【0047】
ターボ機械10のシャットダウン中、又は他の好適な時点において、本体210を部品200から分離することができ、本体210の拡散動力学を分析することができる。或いは、本体210は、部品200上で、又は取り付けられて、又は固定されて、或いは平衡化されながら分析することができる。この分析は、破壊的(すなわち、マイクロプローブ分析又はナノインデーション、その他により)、又は非破壊的(すなわち、X線回折又は中性子回折分析、その他)に行うことができる。本体210は、部品200から容易に分離できるので、分析は、非破壊的又は破壊的分析を用いた何れの方法でも実施することができる。
【0048】
本発明を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その要素を様々に変化させることができ、均等物で置換することができることは当業者には明らかであろう。さらに、特定の状況又は材料に適応させるために、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0049】
10 発電システム
12 燃料ノズル
14 圧縮機
16 燃焼器
18 入口
20、22、24 一連の圧縮機ホイール
26 固定ベーン
28 ロータブレードy
30 圧縮機ホイール
32 圧縮機タイボルト
34 タービン
36 ディフューザセクション
40,42,44 一連のタービンホイール
46 タービンバケット(ブレード)
48,50,52 タービンホイール
54 前方タービンシャフト
56 タービンシェル
60 排気セクション
200 部品
202 ロータホイール
204 ロータホイールの後方側面
206 ロータホイールの前方側面
210 本体(センサ)
220 ダブテール
230 ロータホイールのボルト円
310 六角ナット
312 ボルト
314 シール
316 ロータバランスウェイト
402 第1の材料
404 第2の材料
406 1種以上の化学種(原子)
406’ 1種以上の化学種406の変化
408 第1の材料と第2の材料との間の境界部
420 本体の保護コーティング
440 本体(第1の材料)における1種以上の化学種の第1の濃度(t=0)
442 本体(第2の材料)における1種以上の化学種の第2の濃度(t=0)
450 最終の原子濃度(第1の材料)
452 第2の濃度(第2の材料)
700 温度を推定する方法
701 本体を準備する
703 発電システムを作動させる
705 発電システムの作動を停止させる
707 本体を部品から取り外す
709 濃度プロファイルを取得する
711 動作温度を決定する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の部品(200)に取り外し可能に取り付けられた本体(210)を有するシステム(10)であって、
前記本体が、
1種以上の化学種(406)と、
前記1種以上の化学種(406)の初期の第1の濃度(440)を有する第1の材料(402)と、
前記第1の材料(402)からの前記1種以上の化学種(406)の移動を可能にするよう構成された第2の材料(404)と、
を備え、前記1種以上の化学種(406)が前記ターボ機械の作動中に前記第1の材料(402)から前記第2の材料(404)に移動し、前記本体(210)が、作動中の前記ターボ機械の温度を推定するよう構成される、システム(10)。
【請求項2】
前記部品(200)が、ロータホイール(202)である、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記本体(210)が、ガスタービン(34)のロータホイール(202)を平衡化するよう構成される、請求項2記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記本体(210)が、ボルト(312)、ナット(310)、ロックワイヤ、シム、シール(314)、パッチリング、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記本体(210)が、保護コーティング(420)を含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記保護コーティング(420)が、クロム、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、タンタル、タングステン、ハフニウム、イットリウム、これらの合金及びこれらの組み合わせなどの材料から選択される、請求項5記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記第1の材料(402)が、ニッケル、鉄、コバルト、その合金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記第2の材料(404)が、ニッケル、鉄、コバルト、その合金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記1種以上の化学種(406)が、炭素、窒素、酸素、ヘリウム、水素、リン、硫黄、チタニウム、アルミニウム、ホウ素、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記本体(210)が、tに等しい作動時間において、前記第1の材料(402)における前記1種以上の化学種(406)の最終の第1の原子濃度(450)と、前記第2の材料(404)における前記1種以上の化学種(406)の最終の第2の原子濃度(452)とを含み、前記tは約10,000時間と約80,000時間の間である、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記本体(210)が、前記ターボ機械の高温ガス流路における前記部品(200)の動作温度を推定するよう構成される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記本体(210)が、前記ターボ機械の高温ガス流路の外部の前記部品(200)の動作温度を推定するよう構成される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項13】
ターボ機械の部品(200)の動作温度を推定する方法(700)であって、
前記部品(200)に取り外し可能に取り付けられた本体(210)を準備するステップ(701)を含み、前記本体が、
1種以上の化学種(406)と、
前記1種以上の化学種(406)の初期の第1の濃度(440)を有する第1の材料(402)と、
前記第1の材料(402)からの前記1種以上の化学種(406)の移動を可能にするよう構成された第2の材料(404)と、
を備え、前記1種以上の化学種(406)が前記ターボ機械の作動中に前記第1の材料(402)から前記第2の材料(404)に移動し、前記本体(210)が、作動中の前記ターボ機械の温度を推定するよう構成され、
前記方法が更に、
前記ターボ機械を作動させるステップ(703)と、
前記ターボ機械の作動を停止するステップ(705)と、
前記本体(210)を前記部品から取り外すステップ(707)と、
前記第1の材料(402)及び前記第2の材料(404)における前記1種以上の化学種(406)の最終濃度(450)を決定し、前記第1の材料(402)と前記第2の材料(404)との間の前記1種以上の化学種(406)の過渡濃度を決定することにより濃度プロファイルを取得するステップ(709)と、
前記濃度プロファイルを前記ターボ機械の対応する動作温度に相関付けることにより、動作温度を決定するステップと、
を含む、方法(700)。
【請求項14】
前記本体(210)が、保護コーティング(420)を含む、請求項13記載の方法(700)。
【請求項15】
前記保護コーティング(420)が、クロム、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、タンタル、タングステン、ハフニウム、イットリウム、これらの合金及びこれらの組み合わせなどの材料から選択される、請求項13記載の方法(700)。
【請求項16】
前記相関付けステップの後で、前記部品(200)の残りの作動寿命を推定するステップを更に含む、請求項13記載の方法(700)。
【請求項17】
前記決定ステップが、オージェ電子分光法、電子マイクロプローブ分析、波長分散型分光法、エネルギー分散分光法、ラザフォード後方散乱スペクトル法(RBS)、蛍光X線分光法、X線光電子分光法、二次イオン質量分析法、レーザプラズマ分光法、高エネルギーX線回折分析、中性子回折分析、画像分析統合光学顕微鏡法、画像分析統合電子顕微鏡法、ナノインデーション、微小堅さ試験、超音波弾性測定法、渦電流プロービング、及び熱電ユニット測定の少なくとも1つを含む、請求項13記載の方法(700)。
【請求項18】
前記本体(210)が、発電システム(10)のロータホイール(202)を平衡化するよう構成される、請求項13記載の方法(700)。
【請求項19】
前記本体(210)の第1の材料(402)が、ニッケル、鉄、コバルト、その合金、及びこれらの組み合わせから選択され、炭素、窒素、酸素、ヘリウム、水素、リン、硫黄、チタニウム、アルミニウム、ホウ素、及びこれらの組み合わせから選択された1種以上の化学種(406)を含む、請求項13記載の方法(700)。
【請求項20】
前記本体(210)が、tに等しい作動時間において、前記第1の材料(402)における前記1種以上の化学種(406)の最終の第1の原子濃度(450)と、前記第2の材料(404)における前記1種以上の化学種(406)の最終の第2の原子濃度(452)とを含み、前記tは約10,000時間と約80,000時間の間である、請求項13記載の方法(700)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108494(P2013−108494A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249806(P2012−249806)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】