説明

タール成分濃度の計測方法及びタール成分濃度の計測装置

【課題】タール成分濃度の計測速度を低コストで向上させることができるタール成分濃度の計測方法及びタール成分濃度の計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置1は、濾過部材3と、濾過部材3によりすすなどの固形物を除去された生成ガスからタール成分を溶出するための有機溶媒を貯留する有機溶媒貯留槽4と、有機溶媒貯留槽4中の有機溶媒を透過した光に基づいて吸収量を計測する分光光度計7と、生成ガスに含まれるタール成分の濃度を、分光光度計7により計測された計測値と、予め定められた生成ガスのタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係と、に基づいて演算する演算装置8と、濾過部材3に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、濾過部材3の濾紙20を有機溶媒に浸し、超音波を用いて溶出させる超音波式抽出装置22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタール成分濃度の計測方法及びタール成分濃度の計測装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスをガス化炉でガス化して得られる生成ガス中には、熱分解により生成されたタールが一成分として含まれる。タールは、高温域では気体として存在しているが、低温域では液体に相変化してガス利用設備(例えばガスエンジン、ガスタービンなどの発電機や燃料電池)に障害を与える原因となる。そこで、タール成分の少ない生成ガスを作り出す過程において、生成ガス中のタール成分を計測する必要がある。
【0003】
従来、生成ガス中のタール成分を計測する計測方法は多数公知となっている。
例えば、非特許文献1に開示される計測方法は、生成ガスを取り込むサンプリングプローブと、サンプリングプローブの後端部に接続されたフィルタとを設け、フィルタによってガス中のダスト及び粒子状タール成分を捕集する。フィルタを通過した生成ガス中のガス状タール成分を冷却された複数の有機溶媒トラップ内の捕集液(プロピルアルコールなどの有機溶媒)により捕集し、捕集されずに有機溶媒トラップを通過したタール成分を固形吸着剤によって捕集する。このようにフィルタ及び固形吸着剤に捕集したタール成分を、ソクスレー方式の抽出器を用いて有機溶媒中に抽出する。そして、この抽出液と有機溶媒トラップ内の捕集液とを混合し、所定の温度・圧力条件下にて有機溶媒を蒸発させてその蒸発残渣の重量を秤量することで生成ガス中のタール成分の量を計測する。
【0004】
また、特許文献1に開示される計測方法は、一定量の生成ガスを空気で希釈して分離カラムに導入し、この分離カラムにて生成ガス中のタール成分を分離して、その分離カラム内に吸着保持させる。次いで、空気を分離カラムに通過させて、吸着保持されたタール成分を空気とともに分離カラムから流出させる。そして、流出させたタールを酸化触媒の作用により燃焼させ、その燃焼により生成される二酸化炭素量を計測することで生成ガス中のタール成分の量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−14644号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.P.A.Neeftほか、“Guideline for Sampling and Analysis of Tar and Particles in Biomass Producer Gases”、Energy project EEN5−1999−00507、p.1−46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に開示されるような計測方法を採用する場合には、フィルタ及び固形吸着剤に捕集したタール成分をソクスレー方式の抽出器により抽出するという手順を踏む必要があるため、計測に時間がかかり、ガス中のタール成分の量、ひいてはタール成分濃度を迅速に得ることができなかった。
また、特許文献1に開示されるような計測方法を採用する場合には、生成ガス中のタール成分の量を計測に必要な時間を非特許文献1に開示されるような計測方法に比べて短縮化することが可能となる。しかし、複雑な構造の分離カラムを用意しなければならず、ガス中のタール成分の量、ひいてはタール成分濃度を得るためのコストが嵩むという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、タール成分濃度の計測速度を低コストで向上させることができるタール成分濃度の計測方法及びタール成分濃度の計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、気体に含まれるタール成分の濃度を計測するタール成分濃度の計測方法であって、気体に含まれる固形物を濾過部材により除去する過程と、前記濾過部材により固形物を除去された気体からタール成分を有機溶媒に溶出する過程と、前記濾過部材に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程と、タール成分を溶出させた前記有機溶媒に光を照射して、当該有機溶媒を透過した光を分光光度計により計測する過程と、気体に含まれるタール成分の濃度を、前記分光光度計により計測された計測値と、予め定められた気体のタール成分濃度と分光光度計の計測値との関係と、に基づいて演算する過程と、を備え、前記濾過部材に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、前記濾過部材の濾紙を有機溶媒に浸し、超音波を用いて溶出させるものである。
【0011】
請求項2においては、気体に含まれるタール成分の濃度を計測するタール成分濃度の計測装置であって、気体に含まれる固形物を除去する濾過部材と、前記濾過部材により固形物を除去された気体からタール成分を溶出するための有機溶媒を貯留する有機溶媒貯留槽と、前記有機溶媒貯留槽中の有機溶媒を透過した光を計測する分光光度計と、気体に含まれるタール成分の濃度を、前記分光光度計により計測された計測値と、予め定められた気体のタール成分濃度と分光光度計の計測値との関係と、に基づいて演算する演算装置と、濾過部材に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、前記濾過部材の濾紙を有機溶媒に浸し、超音波を用いて溶出させる超音波式抽出装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、気体中のタール成分を濾過部材に付着させずに有機溶媒に溶出させて、気体中に含まれるタール成分濃度を気体のサンプリング直後に迅速に計測することが可能となる。したがって、タール成分濃度の計測速度を低コストで向上させることができる。
【0014】
請求項2においては、気体中のタール成分を濾過部材に付着させずに有機溶媒に溶出させて、気体中に含まれるタール成分濃度を気体のサンプリング直後に迅速に計測することが可能となる。したがって、タール成分濃度の計測速度を低コストで向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るタール成分濃度の計測装置の概略構成を示す図。
【図2】ガス流路及びプローブの位置関係を示す図。
【図3】濾過装置の構成を示す図。(a)斜視図。(b)断面図。
【図4】超音波式抽出装置の構成を示す断面図。
【図5】有機溶媒貯留槽の構成を示す斜視図。
【図6】生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計の計測値との関係を示すグラフ図。
【図7】タール成分濃度の計測方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係るタール成分濃度の計測装置1について説明する。
タールは、有機物の熱分解により得られる黒褐色の不純物の総称であり、例えばバイオマスをガス化するガス化炉で生成され、その後高温の生成ガス中にその一成分として気体状態で存在する。
【0018】
タール成分濃度の計測装置1は、ガス化炉(バイオマスガス化炉など)10にて生成された生成ガスがガス流路11を通じて流出する際に、その生成ガスの一部をサンプリングし、サンプリングした生成ガスから生成ガス中に含まれるタール成分の濃度を計測する装置である。なお、図1、図2及び図3の矢印A方向はそれぞれ生成ガスが流れる方向(ガス流通方向)を示す。
【0019】
なお、このガス流路11においては、スクラバ12が中途部に設けられ、ガス利用設備13がスクラバ12よりもガス流通方向下流側に設けられる。スクラバ12は生成ガスから不要な成分を除去するものであり、ガス利用設備13は生成ガスを利用するガスエンジンなどである。
【0020】
図1に示すように、タール成分濃度の計測装置1は、プローブ2と、濾過部材3と、有機溶媒貯留槽4と、ポンプ5と、ガスメータ6と、分光光度計7と、演算装置8と、超音波式抽出装置22と、を備える。プローブ2、ポンプ5、濾過部材3、有機溶媒貯留槽4、ガスメータ6は、この順に生成ガスの流れの上流側(ガス流路11に近い方)から下流側に向かって配置され、ガス通路15を介して連通される。ガス通路15は、ガス管25やガス管26やガス管27やガス管28などを含む複数のガス管から構成される。
【0021】
プローブ2は、ガス化炉10から放出される生成ガスを取り込む部材である。プローブ2は、ガス通路15の上流端部に設けられている。プローブ2は、管状に形成される。プローブ2の一端部は、ガス流路11の任意箇所において、ガス流路11の内部に貫入されて、ガス流路11と接続される。プローブ2の他端部は、ガス管25の一端部と接続される。このプローブ2においては、生成ガスがガス流路11の任意箇所から取り込まれ、その後にガス管25内にその一端部から流れ込んで、プローブ2の外部に出る。
【0022】
プローブ2の接続箇所は、ガス化炉10とガス利用設備13とを接続するガス流路(配管)11の任意の1箇所又は複数箇所である。本実施形態においては、図2に示すように、プローブ2は、ガス流路11とそのガス化炉10とスクラバ12との間の位置P1、若しくは、ガス流路11とそのスクラバ12とガス利用設備13との間の位置P2で接続可能に構成されている。こうして、計測装置1は、生成ガスをガス流路11の複数箇所からサンプリングするようになっている。また、P1での計測結果とP2での計測結果を比較することによりスクラバ12において除去されたタールの量を算出することが可能となる。したがって、スクラバ12の性能を評価することができる。
【0023】
濾過部材3は、プローブ2からの生成ガスに含まれるすすなどの固形物を除去するための部材である。図3に示すように、濾過部材3は、濾紙20と、容器21とから構成される。
【0024】
濾紙20は、ガス流通方向を長手方向として一つの開口を有する袋状に構成される。濾紙20は、開口をガス管25の他端部に対向させ、この開口からプローブ2からの生成ガスが流れ込むように配置される。開口は、ガス流通方向から見て円形状となるように形成される。また、濾紙20のガス流通方向と直交する断面直径は、ガス流通方向において前記開口からガス流通方向下流側の閉塞端に向かうに従って小さくなるように設定される。そして、濾紙20は、生成ガスが通過させると同時に、生成ガスに含まれるすすなどの固形物を捕集することができるように構成される。
容器21は、ガス流通方向を長手方向とする円筒状に構成される。容器21には、濾紙20が収容される。容器21の長手方向一側(入口側・上流側)の開口部には、環状のフランジ部が設けられる。このフランジ部には、濾紙20の開口端が固定されるとともに、ガス管25の他端部が接続される。容器21の長手方向他側(出口側・下流側)の開口部には、集気部21aが設けられる。集気部21aは、略漏斗状に構成されて出口側の開口面積が徐々に小さくされており、先端がガス管26の一端部と接続される。
【0025】
この濾過部材3においては、プローブ2から流れてくる生成ガスは、ガス管25の他端部から容器21(濾紙20)の内部に流れ込み、濾紙20をガス流通方向上流側から下流側に向かって通過する。この通過の際、生成ガスが濾紙20により濾過され、生成ガスに含まれるすすなどの固形物が濾紙に20に捕集される。そして、すすなどの固形物を除去された濾過後の生成ガスが、集気部21aにて集められながらガス管26内にその一端部から流れ込み、濾過部材3の外部に出る。
【0026】
ここで、ガス通路15のプローブ2と濾過部材3との間、即ちガス管25の中途部には、ポンプ5及び弁16(図1参照)が設けられる。ポンプ5は、生成ガスを吸引する装置である。ポンプ5の設けられたガス通路15にはバイパスが設けられており、バイパスの中途部に弁16が設けられている。弁16は、バイパスの開閉を行う弁であり、例えばニードルバルブである。ポンプ5及び弁16により吸引量を調節することにより、ガス通路15をプローブ2から濾過部材3へ流れる生成ガスの流量が調節可能となっている。
【0027】
超音波式抽出装置22は、図4に示すように、濾過部材3の濾紙20を有機溶媒に浸し、超音波を用いてタール成分を溶出させる装置である。
超音波式抽出装置22は、超音波を発生させる超音波発生装置23aが埋め込まれた貯水槽23と、貯水槽23内に貯溜した水中に入れる有機溶媒貯留容器24とから構成される。
貯水槽23は、直方体の容器であり、上面が開放されている。貯水槽23の内部には水が貯留されている。また、貯水槽23の底部には超音波発生装置23aが設けられている。
有機溶媒貯留容器24は、円筒状の容器であり、その高さは濾紙20の長手方向の長さよりも高い。また、有機溶媒貯留容器24の上部に嵌合するための蓋24aが設けられている。但し、超音波発生装置23aの配置位置は限定するものではなく、超音波の伝搬方向(振動方向)が濾紙20の方向に向くように配設する構成であれば、貯水槽23の側部や上方等に配置する構成であってもよい。または、貯水槽23をなくして有機溶媒貯留容器24の底部または側部に超音波発生装置23aを配置して濾紙20に向かって超音波を伝搬させる構成であってもよい。
【0028】
有機溶媒貯留槽4は、図5に示すように、一つ又は複数(本実施例では2個)の有機溶媒貯留タンク36a・36bと、冷却水槽37とから構成される。各有機溶媒貯留タンク36a・36b内には、有機溶媒が貯留される。この有機溶媒は、生成ガスに含まれるタール成分を溶出させることができる液体であり、例えばプロピルアルコールやイソプロパノールである。冷却水槽37内には、冷却水が貯留される。有機溶媒貯留タンク36a・36bは、一部分(下部)が冷却水中に沈められるように、冷却水槽37内に配置される。
【0029】
図1に示すように、第一の有機溶媒貯留タンク36aは、ガス通路15の中途部であって濾過部材3よりもガス流通方向下流側に設けられている。また、図5に示すように、第一の有機溶媒貯留タンク36aの内部には、ガス管26の他端部が集気カバー38を介して差し込まれている。集気カバー38はドーム状に形成されており、第一の有機溶媒貯留タンク36aの上面を被覆する。集気カバー38の上部には、ガス管27が貫設される。
第一の有機溶媒貯留タンク36aの内部においては、ガス管26の他端部が有機溶媒の液面よりも下方に配置されるとともに、ガス管27の一端部が有機溶媒の液面よりも上方に配置される。そして、有機溶媒が冷却水槽37内の冷却水により冷却される。
【0030】
この第一の有機溶媒貯留タンク36aにおいて、濾過部材3から流れてくる生成ガスは、ガス管26の他端部から第一の有機溶媒貯留タンク36a内の有機溶媒中に気泡となって出る。この際、この生成ガス中に気体状態となって存在しているタール成分が冷却されて液化し、有機溶媒内に溶出する。生成ガスは有機溶媒中を通過した後、集気カバー38により集められながらガス管27内にその一端部から流れ込み、第一の有機溶媒貯留タンク36aの外部に出る。
【0031】
第二の有機溶媒貯留タンク36bは、ガス通路15の中途部であって第一の有機溶媒貯留タンク36aよりもガス流通方向下流側に設けられている。第二の有機溶媒貯留タンク36bの内部には、ガス管27の他端部が集気カバー38を介して差し込まれている。集気カバー38はドーム状に形成されており、第二の有機溶媒貯留タンク36bの上面を被覆する。集気カバー38の上部には、ガス管28が貫設される。
第二の有機溶媒貯留タンク36bの内部においては、ガス管27の他端部が有機溶媒の液面よりも下方に配置されるとともに、ガス管28の一端部が有機溶媒の液面よりも上方に配置される。そして、有機溶媒が冷却水槽37内の冷却水により冷却される。
【0032】
この第二の有機溶媒貯留タンク36bにおいて、第一の有機溶媒貯留タンク36aから流れてくる生成ガスは、ガス管27の他端部から第二の有機溶媒貯留タンク36b内の有機溶媒中に気泡となって出る。この際、この生成ガス中に気体状態となって存在しているタール成分、即ち第一の有機溶媒貯留タンク36aの有機溶媒内に溶出されなかったタール成分が冷却されて液化し、有機溶媒内に溶出する。生成ガスは有機溶媒中を通過した後、集気カバー38により集められながらガス管28内にその一端部から流れ込み、第二の有機溶媒貯留タンク36bの外部に出る。
【0033】
ガスメータ6は、生成ガスの流量を計測する装置である。ガスメータ6は、ガス通路15の下流端部に設けられている。ガスメータ6は、ガス通路15を介して送られてくる生成ガスの積算流量値を計測する。
【0034】
分光光度計7は、有機溶媒貯留槽4の有機溶媒貯留タンク36a又は有機溶媒貯溜タンク36b中の有機溶媒に対して選択的に単色光を照射し、この有機溶媒を透過した光から単色光の光吸収量を計測する装置である。
分光光度計7は、光源7a、ノッチフィルタ7b、計測部7c等から構成されるものであり、公知の装置である。
分光光度計7による単色光の吸収量の計測は、生成ガスに含まれるタール成分が溶出した各有機溶媒貯留タンク36a・36bを冷却水槽37から取り出して、所定の位置に設置した状態で行う。
【0035】
演算装置8は、分光光度計7により実際に計測された計測値と、予め定められた生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係とに基づいて演算する装置である。演算装置8は分光光度計7と接続されている。演算装置8は、CPU等からなる演算処理部、RAMやROM等からなる記憶部等で構成されている。
【0036】
記憶部には、予め定められた生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係を示すデータベースが記憶されている。このデータベースは、例えば、図6で示すように、縦軸を分光光度計7の計測値、横軸を生成ガスに含まれるタール成分濃度とする二次元のマップである。
【0037】
ここで、図6の実線で表された曲線は、ガス流路11の位置P1で取り出された生成ガスにおける生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係を示す。
また、図6の点線で表された曲線は、ガス流路11の位置P2で取り出された生成ガスにおける生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係を示す。
【0038】
次に、タール成分濃度の計測方法について図7を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、タール成分濃度の計測装置1において、ガス通路15の弁16を開いて、ポンプ5を駆動することによって、まず、ガス化炉10から放出された生成ガスの一部をプローブ2にガス流路11の位置P1又は位置P2から取り込む(ステップS10)。取り込んだ生成ガスを、濾過部材3へガス通路15を介して送る。計測時以外は、弁16を閉じることによって、生成ガスの濾過部材3以降への流入を防ぐ。
【0039】
ここで、プローブ2にガス流路11の位置P1から取り込まれた生成ガスは、スクラバ12を通過しておらず、多量のタール成分を含む。また、プローブ2にガス流路11の位置P2から取り込まれた生成ガスは、スクラバ12を通過しており、ガス流路11の位置P1からの生成ガスに比べて少量のタール成分を含む。
【0040】
次に、プローブ2からの生成ガスに含まれるすすなどの固形物を濾過部材3により除去する(ステップS20)。
プローブ2からの生成ガスには、すすなどの固形物や高温度下で気化しているタール成分が含まれている。濾過部材3、特に濾紙20の温度がタール成分が液化する温度よりも低い場合、生成ガスが濾紙20を通過するときに、生成ガスに含まれるタール成分が液化してしまい、濾紙20の内側(ガス流通方向上流側)に付着する。
【0041】
そこで、濾過部材3に付着したタール成分を超音波式抽出装置22を用いて、有機溶媒貯留容器24中の有機溶媒に溶出させる(ステップS25)。有機溶媒貯留容器24内に有機溶媒と濾紙20とを入れ、蓋24aで封をする。また、貯水槽23には有機溶媒貯留容器24の蓋24a以外の部分が水中に沈む程度の高さまで水を入れる。そして、有機溶媒貯留容器24を貯水槽23内に入れ、超音波発生装置23aから超音波を発生させる。超音波は、貯水槽23内の水及び有機溶媒貯留容器24を伝播し、有機溶媒貯留容器24内の有機溶媒に届く。有機溶媒に超音波を当てることにより、有機溶媒内に多数の細かい気泡を作り出し、多数の気泡が、濾紙20に付着したタール成分を遊離させることにより、タール成分を溶出させる。
【0042】
次に、濾過部材3によりすすなどの固形物を除去した生成ガスを有機溶媒貯留槽4に送り、タール成分を生成ガスから有機溶媒貯留槽4の有機溶媒貯留タンク36a・36b内に貯留された有機溶媒に溶出させる(ステップS30)。
生成ガスは、複数の有機溶媒貯留タンク36a・36b内の有機溶媒中を順に通過していく。具体的には、生成ガスは、第一の有機溶媒貯留タンク36a内の有機溶媒中を通過し、続いて第二の有機溶媒貯留タンク36b内の有機溶媒中を通過する。生成ガスが各有機溶媒貯留タンク36a・36b内の有機溶媒中を通過する際に、生成ガス中のタール成分が冷却されて液化し、有機溶媒中に溶出する。
【0043】
次に、分光光度計7によって、タール成分を溶出させた有機溶媒を入れた有機溶媒貯留容器24、有機溶媒貯留タンク36a、又は有機溶媒貯留タンク36bに単色光を照射して単色光の吸収量を計測する(ステップS40)。有機溶媒中に溶出したタール成分が多ければ多いほど、単色光の吸収量は増加する。
【0044】
次に、演算装置8によって、生成ガスに含まれるタール成分の濃度を、分光光度計7により計測された実際の計測値と、予め定められたタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係とに基づいて演算する(ステップS50)。
【0045】
演算装置8は、記憶部から生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係を呼び出す。ここで、ガス流路11の位置P1でサンプリングされた生成ガスであるのか、ガス流路11の位置P2でサンプリングされた生成ガスであるのかが、手動又は自動で選択される。演算装置8は、選択された生成ガスに対応する、生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係を記憶部から呼び出す。そして、演算装置8は、分光光度計7により計測された実際の計測値と、生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係と、に基づいて分光光度計7の計測値と対応する生成ガスに含まれるタール成分濃度を算出する。
【0046】
最後に、演算装置8によって、有機溶媒貯留容器24、有機溶媒貯留タンク36a、及び有機溶媒貯留タンク36bにおいて算出された生成ガスに含まれるタール成分濃度とガスメータ6により計測された生成ガスの積算流量値とから、ガス流路11の位置P1又は位置P2でサンプリングした生成ガスに含まれる全タール成分量を算出する(ステップS60)。
【0047】
以上のように、計測装置1は、生成ガスに含まれるタール成分の濃度を計測するタール成分濃度の計測装置1であって、生成ガスに含まれるすすなどの固形物を除去する濾過部材3と、濾過部材3によりすすなどの固形物を除去された生成ガスからタール成分を溶出するための有機溶媒を貯留する有機溶媒貯留槽4と、有機溶媒貯留槽4中の有機溶媒を透過した光に基づいて吸収量を計測する分光光度計7と、生成ガスに含まれるタール成分の濃度を、分光光度計7により計測された計測値と、予め定められた生成ガスのタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係と、に基づいて演算する演算装置8と、濾過部材3に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、濾過部材3の濾紙20を有機溶媒に浸し、超音波を用いて溶出させる超音波式抽出装置22と、を備えるものである。
このように構成することにより、生成ガス中のタール成分の略全量(十分な計測精度を得ることができる量)を有機溶媒貯留容器24及び有機溶媒貯留槽4の各有機溶媒貯留タンク36a・36b内の有機溶媒に溶出させ、その有機溶媒を用いてタール成分濃度を分光光度計7及び演算装置8により計測することが可能となる。つまり、従来のソクスレー方式の抽出器を用いる抽出過程を省いて、生成ガス中に含まれるタール成分濃度を生成ガスのガス流路11からのサンプリング直後に迅速に計測することが可能となる。同時に、従来の複雑な構造の分離カラムの代わりに超音波式抽出装置22を用意するだけでよいため、生成ガス中に含まれるタール成分濃度を安価な構成で計測することが可能となる。したがって、タール成分濃度の計測速度を低コストで向上させることができる。
【0048】
また、生成ガスに含まれるタール成分の濃度を計測するタール成分濃度の計測方法は、濾過部材3の温度を気体に含まれるタール成分の付着を回避する温度に維持しながら、この生成ガスに含まれるすすなどの固形物を濾過部材3により除去する過程と、濾過部材3に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程と、濾過部材3によりすすなどの固形物を除去された生成ガスからタール成分を有機溶媒に溶出する過程と、タール成分を溶出させた有機溶媒に光を照射して、分光光度計7により有機溶媒を透過した光から吸収量を計測する過程と、生成ガスに含まれるタール成分の濃度を、分光光度計7により計測された計測値と、予め定められた生成ガスに含まれるタール成分濃度と分光光度計7の計測値との関係と、に基づいて演算する過程と、を備え、濾過部材3に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、濾過部材3の濾紙20を有機溶媒に浸し、超音波を用いて溶出させるものである。
このように構成することにより、従来のソクスレー方式では必要であったタールの抽出過程を省くことができるなどして、生成ガス中のタール成分濃度を生成ガスのサンプリング直後に安価に計測することが可能となる。したがって、タール成分濃度の計測精度および計測速度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 計測装置
2 プローブ
3 濾過部材
4 有機溶媒貯留槽
7 分光光度計
8 演算装置
20 濾紙
22 超音波式抽出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれるタール成分の濃度を計測するタール成分濃度の計測方法であって、
気体に含まれる固形物を濾過部材により除去する過程と、
前記濾過部材に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程と、
前記濾過部材により固形物を除去された気体からタール成分を有機溶媒に溶出する過程と、
タール成分を溶出させた前記各有機溶媒に光を照射して、当該各有機溶媒を透過した光を分光光度計により計測する過程と、
気体に含まれるタール成分の濃度を、前記分光光度計により計測された計測値と、予め定められた気体のタール成分濃度と分光光度計の計測値との関係とに基づいて演算する過程と、を備え、
前記濾過部材に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、前記濾過部材の濾紙を有機溶媒に浸し、超音波を用いてタール成分を溶出させる、
タール成分濃度の計測方法。
【請求項2】
気体に含まれるタール成分の濃度を計測するタール成分濃度の計測装置であって、
気体に含まれる固形物を除去する濾過部材と、
前記濾過部材により固形物を除去された気体からタール成分を溶出するための有機溶媒を貯留する有機溶媒貯留槽と、
前記有機溶媒貯留槽中の各有機溶媒を透過した光を計測する分光光度計と、
気体に含まれるタール成分の濃度を、前記分光光度計により計測された計測値と、予め定められた気体のタール成分濃度と分光光度計の計測値との関係とに基づいて演算する演算装置と、
濾過部材に付着したタール成分を有機溶媒に溶出する過程において、前記濾過部材の濾紙を有機溶媒に浸し、超音波を用いてタール成分を溶出させる超音波式抽出装置と、
を備える、
タール成分濃度の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−252859(P2011−252859A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128250(P2010−128250)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】