説明

タール様不純物含有ガスの改質方法

本発明は、燃料をガス化することによって得られるガス化ガス等のタール様不純物を含有するガスの改質方法に関する。本方法においては、酸素又は酸素系ガス(10)をガス流(8)に添加し、その後、ガスを高温で固体触媒(11、12)と接触させる。本発明によれば、例えば、最初の事前改質段階でガスを酸化ジルコニウム等のジルコニウム系触媒(11)と接触させ、さらに次の段階で金属ニッケル等の金属触媒(12)と接触させることで改質を段階的に行う。二段階改質は、金属触媒の不活性化及び改質反応器内における炭素堆積物の形成を防止するために用いられる。本発明はまた、タール含有ガスを事前改質して上記目的を達成するためのジルコニウム化合物の使用方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素又は酸素含有ガスを添加したガス流を固体触媒と接触させることからなるタール様不純物含有ガスの改質方法に関する。本発明はまた、かかる不純物を含有するガスを改質する際の触媒の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主成分が一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水素、水蒸気及び窒素である燃料をガス化させることによって得られるガスは、典型的には少量のタール様有機化合物を不純物として含有している。さらに、ガス化ガスは燃料中の窒素化合物から生成されるアンモニアを不純物として含有している。
【0003】
ガス化ガス中に含有されるタール様不純物は、例えば、エンジン若しくはタービンによる電気の生成のために、又はメタノール合成用の合成ガスの生成のために該ガスを使用する場合に不都合をもたらす。ガスを燃焼させるとアンモニアが環境に有害な酸化窒素へとさらに変換される。結果的に、燃焼させる前、またはさらなる処理の前に有害成分のガス化ガスを精製する必要がある。
【0004】
タール様不純物及びアンモニア双方を含むガス化ガスを精製する有効な方法は、触媒を用いた高温で起こる改質である。ガス化ガス中に含有されるタールを分解するのに好適な既知の触媒としては、ニッケル触媒及びドロマイトが挙げられ、その動作温度は800℃〜900℃である。このような条件下では、ニッケル触媒はアンモニアも分解する。ニッケル触媒及びドロマイト触媒によって行う実験において必要とされる高い反応温度はガス化ガスの部分燃焼によって達成される。
【0005】
特に、ニッケル触媒を使用する場合に必要とされる高温は問題をもたらし、また、ニッケル触媒によって触媒ガスコンディショニングにおいて煤を形成しやすい傾向がある。煤は反応器内で触媒上に炭素堆積物を生成し、最終的に、反応器全体を閉塞させるおそれがある。またニッケル触媒及び他の金属触媒はガス化プロセスの開始時に問題をもたらし、それにより、精製反応器内の温度は比較的低い700℃未満となる。このような開始に関連して、ガス化装置の操作は場合によっては不安定となり、そのため、生成ガスのタール含有量が極端に高くなって、触媒上に炭素が蓄積し、触媒の不活性化及び反応器の閉塞が促されることがある。
【0006】
上述の問題は、軽質炭化水素も改質しなければならない合成ガス用途においてさらに大きなものとなる。このため金属触媒はより高い温度で使用しなければならず、触媒に対し高い金属含有量が要求されることになる。このように、触媒上における炭素の蓄積を防止することは発電用途におけるものよりもさらに困難になっている。
【0007】
フィンランド特許明細書第110691号は、酸化ジルコニウムZrO等のジルコニウム化合物を触媒として使用する、ガス化ガスの触媒による精製を記載している。このようなジルコニウム触媒は、タール、特に重炭化水素を分解する際に効率的に作用する。ジルコニウム触媒は、ニッケル触媒よりもかなり広い温度範囲、例えば約600℃〜900℃での使用が可能である。実験では、ジルコニウム触媒は約600℃の温度において60%〜80%のタール変換率をもたらした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、タール様不純物含有ガスの改質方法を提供することで現行のニッケル触媒又は他の金属触媒に関連する欠点を有することなくタール様不純物の高い変換率を達成することである。特に、本発明の目的は、現行のニッケル触媒よりも低い温度で機能し、またこの触媒を不活性化し且つニッケル触媒に関連して反応器を閉塞させるという問題を回避する解決策を提供することである。本発明による方法は、最初の段階でガスをジルコニウム系触媒と接触させ、次の段階で金属触媒と接触させることで改質を段階的に行うことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明は、酸素又は酸素系ガスと混合した、燃料から得られるガス化ガス等の改質すべきガス流を、酸化ジルコニウムZrO又は他のジルコニウム化合物等のジルコニウム系触媒を用いる最初の事前改質段階へ導き、その後、触媒が金属ニッケル又は貴金属である次の改質段階へと導くことを含んでいる。必要であれば、上記の連続的な改質段階の間にも酸素又は酸素系ガスを上記ガス流に添加することができる。
【0010】
ジルコニウム系触媒は、酸化アルミニウムAl等の別の金属酸化物と合金化された酸化ジルコニウムによって構成されていてもよい。したがって、合金中の酸化ジルコニウム又は他のジルコニウム化合物の割合が50%を超えることが好ましい。ジルコニウム化合物は不活性担体の表面上に存在させてもよく、又は担体中に含浸させてもよい。最初の事前改質段階のジルコニウム化合物及び次の改質段階の金属触媒は双方とも、担体として機能するセラミックハニカム又は金属ハニカムの被膜を含んでいてもよい。両改質段階の各触媒を同じ反応器内に配置して改質すべきガスの流れ方向の連続的な層又は帯域として構成してもよい。他方、事前改質段階のジルコニウム触媒及び続く改質段階の金属触媒を別個の反応器内に設けて、ガスの流れ方向に両反応器を連続的に配置することも可能である。
【0011】
本発明方法においては、プロセスに必要とされるガスの部分酸化及び熱生成を、主として最初の事前改質段階において行う。これに伴って、最も重いタール様化合物も略完全にガスへと分解する。ジルコニウム触媒上での炭素の如何なる形成もほとんど起こらないため、反応器の閉塞のリスクは存在しない。改質プロセスの動作温度は500℃〜900℃であり、ジルコニウム触媒によって行われる最初の改質段階の温度は、金属触媒によって行われる次の改質段階の温度より低くてもよい。事前改質段階における温度は好ましくは600℃〜800℃であり、金属触媒を使用する次の改質段階では700℃〜900℃であり得る。これらの条件下ではまた、金属触媒を含む上記の後段の改質段階の方が、ニッケル触媒のみを使用する既知の改質よりも低い温度でより効率的に作用する。改質器内の温度レベルを下げると、ガス化プロセス全体の効率が上がり、電気生成の動作効率が改善される。汚染物によって引き起こされる不活性化を回避することによって金属触媒の有効寿命がさらに延びる。
【0012】
本発明はまた、金属触媒による改質に先立ち、最初にタール様不純物含有ガスを改質する事前改質段階における触媒としてのジルコニウム化合物の使用方法を含んでいる。ジルコニウム化合物は、好ましくは酸化ジルコニウムであり、金属触媒は、例えば触媒担体に含浸させることによって又は触媒担体を被覆することによって該触媒担体に付加された、金属ニッケル又はPt、Pd、Rh若しくはRu等の貴金属から構成され得る。特にジルコニウム化合物の使用は、ニッケル触媒の不活性化及び改質反応器内における炭素堆積物の形成を防止する。
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示す設備は、木材チップ又は破砕木材2のような燃料をガス化するために使用される固定床ガス化装置1を備えている。図中、燃料2の供給は矢印3によって示され、空気又はガス化ガスの供給は矢印4によって示され、ガス化装置1を出る灰は矢印5によって示される。ガス化装置1内で生成する、主に一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水素、水蒸気及び窒素から成り、かつ有機タール様化合物及びアンモニアを不純物として含有するガス化ガスは、パイプ6を通ってダスト除去用サイクロン7に達し、そこからパイプ8を通って改質反応器9に入る。改質のために、酸素、又は空気等の酸素系ガスをパイプ8に供給する。図中、これを矢印10で示す。反応器内における処理中のガスの空間速度は500リットル毎時〜10000リットル毎時、好ましくは1000リットル毎時〜5000リットル毎時であり得る。空気又は他の添加ガス10の量はガス化装置1から入ってくるガス化ガスの0%〜20%であり得る。
【0015】
改質反応器9内において、ガスの触媒改質は好ましくは約600℃〜800℃の温度で起こる。反応器9はガスの流れ方向の2つの連続的な改質帯域11及び改質帯域12を備えており、この最初の事前改質反応器11では酸化ジルコニウム等のジルコニウム系触媒を使用し、次の改質帯域12では金属ニッケル又は酸化ニッケル等の金属触媒を使用する。双方の帯域11及び12における触媒は、セラミックハニカムの被膜を含み得る。あるいは、これらの帯域内の触媒を固定担体床中に含浸させてもよい。反応器内の連続的な改質帯域11と改質帯域12との間で酸素又は酸素系ガスを添加する。図中、これを矢印13で示す。ジルコニウム触媒を使用する事前改質帯域11においてガスの部分燃焼が起こり、改質に必要な反応熱が発生する。燃焼の結果、反応器9内のガスの温度が上昇し、例えば事前改質帯域11の温度は約600℃〜700℃となり、ニッケル触媒を使用する次の帯域12では約700℃〜800℃となる。主としてタール様不純物及びアンモニアを除去された精製改質ガスが反応器9を出てパイプ14へと入る。
【0016】
図2に示す本発明の実施形態は図1に示される実施形態と、連続的な改質段階がガスの流れ方向に相互に連続する別個の反応器15及び反応器16において行われるように構成されている点においてのみ異なる。最初の反応器15はガスを事前改質するのに用いられるジルコニウム触媒11を含有しており、次の反応器16は、第2の改質段階を行うのに用いられるニッケル触媒12を含有している。
【0017】
本発明の機能性を以下の実施例に従って試験した。
【実施例1】
【0018】
本発明の機能を試験反応器によって試験し、固定床ガス化装置で生成したガスを供給ガスとして用いた。ガス化装置の燃料は破砕された粉砕木材を含むものとした。ガスの体積流量は約1.5m毎時であり、このガスを、第1の層が酸化ジルコニウム触媒を含み、且つ第2の層が貴金属触媒を含む多層改質器内へと導入した。これらの触媒はセラミックハニカムであり、これにそれぞれ酸化ジルコニウム及び貴金属を含有する被膜を付加してある。改質器に入る前のガスの温度は約600℃であり、5%〜20%の量の空気をそのガスと混合した。供給物中のガスの組成は、H 6〜8体積%、CO 10〜12体積%、CO 9〜11体積%、CH 1.5〜2体積%、C 1.5〜2体積%、HO 18〜28体積%、及びN(残余分)であった。供給ガス中のタール含有量は6g/mnであり、排出ガス中では0.3〜1.3g/mnであったため、タール変換率は70%〜90%であった。ジルコニウム帯域の動作温度は600℃〜700℃であり、貴金属触媒帯域の動作温度は700℃〜800℃であった。試験中、改質器内における炭素の蓄積を示す圧力損失の増大は観察されなかった。試験後の触媒の検査でも、触媒上への炭素の蓄積は見られなかった。
【実施例2】
【0019】
比較のために、ニッケル系触媒で被覆されたハニカム内における炭素の蓄積を検査する実験室試験を行った。ハニカム触媒を反応器内に配置し、その供給物はガス化ガスに対応する組成を有するガス混合物からなるものとした(ガス混合物は、ガスの主成分としてのH、CO、CO、CH、C、HOとHS(100ppm)と、タールモデルとしてのトルエン/ナフタレン混合物(15g/mn)とを含む)。反応器の温度は700℃〜900℃の間で変化し、ガス流は2〜3dm毎分であり、反応器の圧力は1barであった。ニッケル触媒上のタールモデルの転換率は900℃の温度では略100%であった。何回かの反復試験を通じて、炭素はニッケル触媒の表面上に容易に蓄積されることが観測され、ハニカムを閉塞させることさえあった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるガス化及びそれに続くガス化ガスの改質のための設備を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による設備内に備えられる改質反応器を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素又は酸素系ガス(10)を添加したガス流(8)を固体触媒(11、12)と接触させることを含むタール様不純物含有ガスの改質方法であって、最初の段階において該ガスをジルコニウム系触媒(11)と接触させ、さらに次の段階において金属触媒(12)と接触させることで改質を段階的に行うことを特徴とするタール様不純物含有ガスの改質方法。
【請求項2】
改質すべき前記ガスがタール様不純物含有ガス化ガスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属触媒(12)が金属ニッケル又は貴金属を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジルコニウム系触媒(11)が、酸化ジルコニウム(ZrO)のようなジルコニウム化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ジルコニウム系触媒(11)が、酸化アルミニウム(Al)のような別の金属酸化物と合金化した酸化ジルコニウムによって構成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ジルコニウム化合物を不活性担体の表面上に存在させるか又は該担体中に含浸させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ジルコニウム系触媒及び前記金属触媒を、改質すべき前記ガスの流れ方向の連続的な層又は帯域(11、12)中に配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ジルコニウム系触媒及び前記金属触媒(11、12)を、前記ガスの流れ方向の別個の反応器(15、16)内に配置することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒の改質前に、酸素、空気、又は酸素と空気との混合物(10)を、改質すべき前記ガス流(8)に添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸素、または空気のような酸素系ガス(13)を、前記金属触媒(12)上での改質前の前記ジルコニウム系触媒(11)上で起こる事前改質後に、前記ガス流にさらに添加することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記改質温度が500℃〜900℃であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジルコニウム系触媒(11)上での事前改質を600℃〜800℃の温度範囲内のようなより低い温度で行い、かつ前記金属触媒(12)上での改質を700℃〜900℃の温度範囲内のようなより高い温度で行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
金属触媒上での改質に先立ち、最初にタール様不純物含有ガスを改質する事前改質段階における触媒としてのジルコニウム化合物の使用方法。
【請求項14】
前記ジルコニウム化合物が酸化ジルコニウムであり、前記金属触媒が金属ニッケル又は貴金属によって構成される請求項13に記載の使用方法。
【請求項15】
前記改質反応器内における炭素堆積物の形成を防止するための請求項13又は14に記載のジルコニウム化合物の使用方法。
【請求項16】
前記ニッケル又は貴金属触媒の不活性化を防止するための請求項13又は14に記載のジルコニウム化合物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−533514(P2009−533514A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504767(P2009−504767)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000090
【国際公開番号】WO2007/116121
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(301036984)
【Fターム(参考)】