説明

ターンバックル付属金具及びそれを用いた張力センサ付きターンバックル

【課題】安価な張力センサ付きターンバックルを容易に得ることを可能にする。
【解決手段】緊結用中央回転部6と、その両側の互いに逆ネジである雌ネジ部4、5にそれぞれ螺合する第1の締結ボルト11及び第2の締結ボルト12とからなるターンバックル2を利用する。本発明のターンバックル付属金具1は、棒状をなしその片側に雄ネジ部16を有し他側に雌ネジ部15を有して、緊結用中央回転部6と2つの締結ボルト11、12の一方の締結ボルトとを連結する。例えば、付属金具1の雄ネジ部16を緊結用中央回転部6の一方の雌ネジ部4と螺合させ、付属金具1の雌ネジ部15に第1の締結ボルト11の雄ネジ部7を螺合させる。付属金具1の外周面に凹部18を形成し、この凹部18に歪ゲージ19を貼り付け、歪ゲージ19を保護する保護部材20を設ける。汎用のターンバックル2を安価に張力センサ付きターンバックル3に変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤロープなどの線状体に張力を付与するためのターンバックルに取り付けられて前記線状体の張力を測定可能な張力センサ付きターンバックルを構成するためのターンバックル付属金具及びそれを用いた張力センサ付きターンバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばワイヤロープ等の線状体に張力を付与する要がある場合、ターンバックルがしばしば用いられる。そして、その線状体の張力を測定する必要がある場合、ターンバックルに歪センサを取り付けることも行われている。
例えば特許文献1のターンバックルは、架空電線の延線や緊線時などに用いることを想定しているものであるが、特許文献1の第1図、第2図に示されたターンバックルは、かなり複雑な構成であり、駆動軸22を回すことにより、両端側の雄ネジ部6が互いに逆ねじである回転軸5を回し、この回転軸5と螺合する、スライドナット回り止めスリーブ18で回り止めされたスライドナット9をスライドさせて、張力調整を行う構成である。このスライドナット9に取り付けられたクレビスジョイント金具12に歪ゲージ27が貼り付けられている。歪ゲージ27は歪ゲージ式張力検出器4のセンサ部分である。
また、特許文献1の第4図に示されたターンバックルは、中央の回転部(回転スリーブ33)の両側の伸長する部分(フックボルト34)に歪ゲージ27(歪ゲージ式張力検出器4の歪ゲージ)を直接貼り付けたものである。
【0003】
特許文献2のターンバックル(張力可変装置)は、やはり架空電線の延線や緊線時などに用いることを想定しているものであるが、ターンバックルを構成する回転筒(回転部)5の両側に螺合する接続部材(伸長する部分)1、2の一方の接続部材1の軸部12に直接、歪ゲージ又は磁歪式の張力センサ6を設けた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−31954
【特許文献2】特開平6−323369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のターンバックルはいずれも、ターンバックル自体に張力センサを内蔵したものである。
なお、一般的なターンバックルでは、特許文献1の第4図のものや特許文献2のものと同様に、中央の回転部がその両側に雌ネジ部を有し、回転部の両側に設ける伸長する部分が雄ネジとなっている構成であるのに対して、特許文献1の第1図、第2図のターンバックルは、それとは逆に、中央の回転部が両側に雄ネジ部を有し、回転部の両側に設ける伸長する部分(スライドナット9)が雌ネジとなっている点で異なるが、ターンバックルにおける回転部の両側の伸長する部分に直接張力センサを取り付ける、という点では、特許文献1の第4図のものや特許文献2第4図のものと同様である。
【0006】
上記従来の張力センサ付きのターンバックルはいずれも、ターンバックル自体に直接張力センサを取り付ける構成なので、ターンバックル自体を特別な構造とする必要がある。したがって、コスト的に高いものとなる。特に特許文献1の第1図、第2図のものは非常に複雑で高価なものとなる。
特許文献1や特許文献2のように、張力センサ付きのターンバックルを例えば架空電線の延線時や緊線時に使用するなどのように、線状体設置時にのみ使用する用途であれば、特別構造とすることにコスト的な面での問題はないが、例えば、斜面安定化工法などにおいて敷設した多くのワイヤロープの張力を維持管理するなどの恒久的な用途に用いる場合には、ターンバックル自体に直接張力センサを取り付ける構造では、コスト高になって採用できないなどの問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、安価な張力センサ付きのターンバックルを容易に得ることができるターンバックル付属金具及びそれを用いた張力センサ付きターンバックルを提供可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1の発明は、ターンバックルに連結される線状体の張力を測定する張力センサを備えたターンバックル付属金具であって、
前記ターンバックル付属金具は、一端に雄ネジ部、他端に雌ネジ部を有する棒状であり、前記金具の外周面に凹部が形成されて、前記凹部に歪ゲージを取り付けるとともに、この歪ゲージを保護する保護部材を設けられており、
前記金具の雄ネジ部は、ターンバックルの緊結用中央回転部に設けられた雌ネジ部と連結可能にネジ切りされ、
前記金具の雌ネジ部は、線状体と連結する線状体連結部を備える締結ボルトに設けられた雄ネジ部と連結可能にネジ切りされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2は、請求項1のターンバックル付属金具において、対象とする前記ターンバックルが汎用のターンバックルであり、前記汎用のターンバックルとは、両端部に互いに逆ネジである雌ネジ部を有する緊結用中央回転部と、前記両端部の雌ネジ部へそれぞれ連結可能な雄ネジ部を一端側に有するとともに他端側に線状体連結部を有する第1及び第2の締結ボルトと、からなるターンバックルであることを特徴とする。
【0010】
請求項3は、請求項1又は2のターンバックル付属金具において、当該ターンバックル付属金具を備えた張力センサ付きターンバックルが、恒久的に線状体の張力を測定可能なように、歪みゲージを取り付けた張力センサ部又は/及び保護部材に防水処理を施したものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具において、
対象とする前記ターンバックルが、斜面に配置した多数のアンカーの頭部にそれぞれ支圧板を取り付けて斜面安定化を図る斜面安定化工法において、一部のアンカー間を緊張力を付与しない態様でロープで連結する場合における前記ロープに介在させるターンバックルであることを特徴とする。
【0012】
請求項5は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具において、
対象とする前記ターンバックルが、斜面に配置した多数のアンカーの頭部にそれぞれ支圧板を取り付けるとともに各アンカー頭部間をロープで連結しかつ緊張力を付与して斜面安定化を図る斜面安定化工法において、アンカー間を連結する前記ロープに介在させるターンバックルであることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具において、
前記凹部が周溝であることを特徴とする。
【0014】
請求項7は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具において、
前記凹部を前記雌ネジ部の外周面に形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、両端部に互いに逆ネジである雌ネジ部を有する緊結用中央回転部と、前記両端部の雌ネジ部へそれぞれ連結可能な雄ネジ部を一端側に有するとともに他端側に線状体連結部を有する第1及び第2の締結ボルトとからなるターンバックルに請求項1のターンバックル付属金具を取り付けてなる張力センサ付きターンバックルであって、
前記緊結用中央回転部の一端側に第1又は第2の締結ボルトの一方の締結ボルトの雄ネジ部が連結され、緊結用中央回転部の他端側に前記ターンバックル付属金具の雄ネジ部が連結され、このターンバックル付属金具の雌ネジ部に他方の締結ボルトの雄ネジ部が連結されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のターンバックル付属金具は、その雄ネジ部を、ターンバックルの緊結用中央回転部の第1又は第2の締結ボルトの一方の締結ボルトが連結されるべき雌ネジ部に連結し、ターンバックル付属金具の雌ネジ部に前記一方の締結ボルトの雄ネジ部を連結することで、汎用のターンバックルにおける緊結用中央回転部と一方の締結ボルトとの間に取り付けることができる。
そして、金具外周面に歪ゲージを貼り付けているので、汎用のターンバックルに本発明のターンバックル付属金具を取り付けるだけで、線状体の張力を測定可能な張力センサ付きターンバックルとすることができる。したがって、市販のターンバックルから容易に安価な張力センサ付きターンバックルを得ることができる。市販のターンバックルを直ちに張力センサ付きターンバックルに変えることができる本発明のターンバックル付属金具の利用価値は高い。
【0017】
請求項3によれば、歪みゲージを取り付けた張力センサ部又は/及び保護部材に防水処理を施しているので、恒久的に線状体の張力を測定する必要のある場合に適用できるが、そのような場合は安価であることが特に要求されるので、安価な張力センサ付きターンバックルを得ることができるという本発明の効果が強く発揮される。
【0018】
請求項4や請求項5のターンバックル付属金具は、対象とする前記ターンバックルが斜面安定化工法におけるロープに介在させるターンバックルであるが、実際上斜面に多数をかつ恒久的に配置することになるので、安価であることが必須であり、本発明のターンバックル付属金具が有効に活用される。
また、現場の状況に応じて使用するターンバックルの仕様が異なることは通常であるが、ターンバックル自体に歪ゲージを取り付ける構造の専用の張力センサ付きターンバックルでは特殊なため異なる仕様ごとに製造するのは時間がかかり、そのような専用部品の調達が困難となる事態が考えられる。しかし、構造の簡単なターンバックル付属金具のみを例えば雄ネジや雌ネジの寸法を変えて準備(そのような部品の準備は容易である)しておけば、市販の様々な仕様のターンバックルを利用して直ちに張力センサ付きターンバックルにすることができるので、部品の調達が困難となる事態が生じることは少ない。
【0019】
請求項6のように、歪ゲージを貼り付ける凹部が周溝であれば、その歪ゲージの出力はターンバックル付属金具に作用する荷重を正確に反映し易い。また、歪ゲージを保護する保護部材を、例えば筒状あるいは二つ割り筒状とするなどして、脱落しにくい態様で設けることが容易になる。
【0020】
請求項7によれば、凹部をターンバックル付属金具の雌ネジ部の外周面に形成したので、歪ゲージ配置部分が緊結用中央回転部と干渉する場合を考慮する必要がなく、適切である。
【0021】
請求項8の発明の張力センサ付きターンバックルは、ターンバックル付属金具を用意しておくだけで、上記の通り安価に製作することができかつ容易に多数個を調達することができるので、恒久的な使用をする場合あるいは多数設ける必要がある場合に、極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、ターンバックル付属金具及びそれを取り付けた張力センサ付きターンバックルの斜視図である。
【図2】図1の張力センサ付きターンバックルの平面図である。
【図3】図2の分解図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図1の張力センサ付きターンバックルにおけるターンバックル付属金具とこれに取り付けられた一方の締結ボルトのみを示した斜視図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】図1の張力センサ付きターンバックルを、斜面安定化工法においてワイヤロープに緊張力を付与するターンバックルとして用いた場合を説明するもので、(イ)は斜面安定化工法を施工した斜面の平面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図である。
【図9】図8における1箇所のアンカー部分についての詳細構造を示すもので、(イ)は平面図((ロ)のD−D断面で見た平面図)、(ロ)は縦断面図である。
【図10】図1の張力センサ付きターンバックルを、他の斜面安定化工法において、緊張力を付与しないワイヤロープに取り付けるターンバックルとして用いた場合を説明するもので、斜面安定化工法を施工した斜面の平面図であり、(イ)及び(ロ)はそれぞれアンカー、ワイヤロープ及びターンバックルの配置のパターンが異なる場合を示す。
【図11】本発明のターンバックル付属金具を装着するターンバックルが枠式ターンバックルである場合の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施したターンバックル付属金具及びそれを用いた張力センサ付きターンバックルについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明のターンバックル付属金具1及びそれを用いた張力センサ付きターンバックル3の斜視図、図2は図1の張力センサ付きターンバックル3の平面図、図3は図2の分解図、図4は図2のA−A断面図である。
この張力センサ付きターンバックル3は、ターンバックル2に本発明の一実施例のターンバックル付属金具1を取り付けた構成である。
ターンバックル2は、両端部に互いに逆ネジである雌ネジ部4、5を有する緊結用中央回転部6と、その一方の端部の雌ネジ部(右雌ネジ部)4に螺合可能な雄ネジ部(右雄ネジ部)7を一端側に有し他端側にリング状の線状体連結部9を有するアイボルトである第1の締結ボルト11と、緊結用中央回転部6の他方の端部の雌ネジ部(左雌ネジ部)5に螺合可能な雄ネジ部(左雄ネジ部)8を一端側に有し他端側にリング状の線状体連結部10を有するアイボルトである第2の締結ボルト12とを備えた構成である。実施例のターンバックル2は汎用品である。但し、第1の締結ボルト11は雄ネジ部7を短く切断している。
前記緊結用中央回転部6は、全体として概ね円筒状をなし、中央部の外面の四方に平端部6aを有して断面が四角形をなす回転駆動部6bを備えており、この回転駆動部6bと両端部の雌ネジ部4、5の部分を除く部分の内径は、若干大径になっている。なお、ここで雌ネジ部4、5という場合、ネジ孔を指すとともにネジ孔のある筒状部分をも指す。
【0025】
図5〜図7は前記張力センサ付きターンバックル3におけるターンバックル付属金具1と第1の締結ボルト11とのみを示したもので、図5は斜視図、図6は平面図、図7は図6のB−B断面図である。
これらの図に示すように、このターンバックル付属金具1は、ターンバックル2の第1の締結ボルト11の雄ネジ部7に螺合する雌ネジ部15を一端側に有し、前記緊結用中央回転部6における前記第1の締結ボルト11側の雌ネジ部4に螺合する雄ネジ部16を他端側に有する棒状の金具本体17を有する。この金具本体17の前記雌ネジ部15は外径が大となっており、この大径の雌ネジ部15の外周面に図示例では周溝である凹部18を形成し、前記凹部18に歪ゲージ19を貼り付けるとともに、この歪ゲージ19を保護する保護部材20を設けている。歪ゲージ19を貼り付けた凹部18の部分を張力センサ部21と呼ぶ。なお、ここで雌ネジ部15という場合、ネジ孔を指すとともにネジ孔のある筒状部分をも指す。
【0026】
図示例の保護部材20は、外部からの衝撃に対し歪みゲージ19を保護するために使用し、周溝である凹部18の部分を含めて雌ネジ部15の外周に被せた円筒状の金属製又は樹脂製のカバーであり、ビス22で雌ネジ部15の外周に固定している。この場合、凹部18に錆止めのオイルないしグリスを充填することができる。
歪ゲージ19を保護する保護部材としては、実施例のような、周溝である凹部18を含めた雌ネジ部15の外周の広い範囲に被せた円筒状の保護部材20に限らず、2つの半円筒体を合せた二つ割円筒状の保護部材、あるいは、凹部18の部分のみに被せた円筒状又は二つ割円筒状の保護部材、あるいは、凹部18に樹脂を充填硬化させたもの、その他種々の保護手段が考えられる。
【0027】
前記張力センサ部21において、図7のように、雌ネジ部15の外周面の歪ゲージ19に接続されたリード線25aは、凹部18にあけた孔18aから雌ネジ部15の内部空間に引き入れられたのち、外部に引き出されて図6に示すようにリードケーブル25として図示せぬ歪測定装置に接続されている。
なお、歪検出部を、歪ゲージに接続した無線ICタグや、ワイヤレスセンサーノードを備えた構成として、無線ICタグから離れた場所に配置した、受信装置付きの歪測定装置に無線発信する構成とすることもできる。
【0028】
上記の張力センサ付きターンバックル3は、その両側の締結ボルト11、12の線状体連結部9、10に線状体を連結し、緊結用中央回転部6をその回転駆動部6bに工具をかけて回すと、互いに逆ネジである両側の締結ボルト11、12は同様に縮小又は伸長する。縮小することにより線状体に張力が付与される。
その張力により張力センサ付きターンバックル3に引張り力が作用し、ターンバックル付属金具1に貼り付けた歪ゲージ19によりターンバックル付属金具1の伸び歪が検出され、リードケーブル25で接続された図示略の歪測定装置により、ターンバックル付属金具1に作用する引張り力、すなわち線状体に生じている張力が測定される。
【実施例2】
【0029】
上記の張力センサ付きターンバックル3は種々の用途に用いることができるが、例えば、図8に示すように、斜面に配置した多数のアンカー31の頭部にそれぞれ支圧板32を取り付けるとともに各アンカー31の頭部間をワイヤロープ33で連結しかつ緊張力を付与して斜面安定化を図る斜面安定化工法において、ワイヤロープ33の緊張力を施工時だけでなく恒久的に検出する目的で使用することができる。
図9に示すように、支圧板32は、四角形の底板34の中心部に穴34aをあけ、この穴34aに合わせて円筒35を溶接固定し、円筒の三方に補強リブ36を溶接固定した構造である。補強リブ36にはワイヤロープ33を通す穴36aをあけている。
アンカー31の先端は地盤40の不動層40aに埋め込まれ、アンカー31のネジが形成された頭部は、支圧板32の底板34の穴34a及び円筒35内を通って上に突出し、突出部に座金37を被せナット38をアンカー31のネジ部に螺合させ締め付けて、アンカー31の頭部に支圧板32を係合させている。これにより、ナット38を締め付けた時、アンカー31に作用する張力で支圧板32が地盤を押圧し、地盤安定化に寄与する。
また、施工時に緊張力を付与されたワイヤロープ33は、斜面移動時にアンカー31が変形する際には、アンカー31を引き留める効果や、局所的にアンカーに作用する荷重を分散させる荷重分散効果等を奏するので、斜面の崩壊を抑止ないし軽減することができる。
【0030】
ワイヤロープ33には、上記の張力センサ付きターンバックル3が取り付けられている。張力センサ付きターンバックル3の両側の締結ボルト11、12の線状体連結部(リング状部)9、10にワイヤロープ33が連結されて、その緊張力を測定可能である。
施工時にワイヤロープ33に緊張力を付与する際には、上記の張力センサ付きターンバックル3のターンバックル付属金具1に貼り付けられた歪ゲージ19によりワイヤロープ33の緊張力を検出して、適切な緊張力に設定することができる。
また、この張力センサ付きターンバックル3を、恒久的にワイヤロープの緊張力を検出する目的で設けた場合、歪ゲージ19は施工後もワイヤロープ33の緊張力を検出しリードケーブル25を経て、離れた監視部に設けられた歪測定装置に伝達することができる。これにより、斜面安定化工法を施工した斜面の維持管理のために、施工後のワイヤロープの緊張力を監視する機能を果たす。
【0031】
また、ワイヤロープ33の緊張力を監視することで、斜面の土塊の移動を検知し、斜面変状の警報を発する斜面安定化システムを構築することが可能となる。すなわち、移動層40bの土塊が移動すると、先端が不動層40a中にあるアンカーが曲がり、これに伴ってワイヤロープ33の緊張力が増大または減少するので、斜面変状を検知できる。斜面変状の際に警報を発するシステムの具体例については省略する。
なお、前述したように歪検出部21が無線ICタグを備える構成とした場合には、受信装置付きの歪測定装置に無線発信する警報システムを構築できる。
【実施例3】
【0032】
上述した斜面安定化工法は、アンカー31及び支圧板32とともに、各アンカー31の頭部間をワイヤロープ33で連結しかつ緊張力を付与して斜面安定化を図る斜面安定化工法であるが、基本的に図8におけるワイヤロープを省略した斜面安定化工法にも適用できる。すなわち、アンカーの頭部間が緊張力を付与された状態のワイヤロープで連結されていない斜面安定化工法にも適用できる。
図10(イ)に示した斜面安定化工法は、斜面に多数のアンカー31を設置し各アンカー31の頭部にそれぞれ支圧板32を取り付け締着することで、斜面安定化を図るものである。
このように斜面安定化工法において、一部のアンカー頭部間を、緊張力を付与しない状態のワイヤロープ33で連結している。
この場合のワイヤロープ33は、土塊が移動しない通常の状態では斜面安定化に寄与していない。しかし、土塊が移動した時には、ワイヤロープ33に緊張力が発生し、ワイヤロープ33に取り付けられた張力センサ付きターンバックル3の歪ゲージ19が斜面の変状を検知できる。
すなわち、この場合の張力センサ付きターンバックル3は、斜面の変状を検知する目的でワイヤロープ33に取り付けられるものである。
図10(ロ)は、(イ)と同じく、基本的に図8におけるワイヤロープを省略した斜面安定化工法であって、アンカーの頭部間が緊張力を付与された状態のワイヤロープで連結されていない斜面安定化工法に適用した場合である。 図示例では、アンカー31が斜面上下方向に千鳥に配列されて、横並びのアンカー31が斜面上下方向に交互に横にずれているアンカー配置パターンであり、横にずれた上下のアンカー31間にワイヤロープ33が斜めに連結され、各ワイヤロープ33に張力センサ付きターンバックル3が取り付けられている。
【実施例4】
【0033】
斜面上の浮石・転石等の落下防止を図るために、ロープで形成した落石防止ネットを斜面に敷設する場合にも、落石防止ネットを構成するロープに上記の張力センサ付きターンバックル3を取り付けることで、落石発生の可能性が高くなっていることなどを検知することができる。この場合、落石防止を兼ねた斜面安定化工法として施工する場合もある。
また、斜面に間隔をあけて支柱に立て、支柱間にロープによる落石防止ネットを張設して落石防護柵を構築する場合にも、落石防止ネットを構成するロープに上記の張力センサ付きターンバックル3を取り付けることで、落石の発生を検知することができる。
また、斜面に間隔をあけて支柱に立て、支柱間にロープによる落石防止ネットを張設して落石防護柵を構築する場合にも、落石防止ネットを構成するロープに上記の張力センサ付きターンバックル3を取り付けることで、落石の発生を検知することができる。
また、長いワイヤケーブルの両端を路側に設置した端末支柱に固定し、中間部の複数箇所を、道側に間隔をあけて設置した複数の支柱に取り付けたガードケーブルを設置する場合、ワイヤケーブルの張力を適切に設定するが、このガードケーブルに上記の張力センサ付きターンバックル3を取り付けることもできる。この場合も、単にガードケーブル施工時のワイヤケーブル張力設定に利用できるだけでなく、施工後のワイヤケーブルの張力を管理することができる。
また、建物の柱と柱の間に対角線に配置して変形を防ぐブレースにおいて、その張力付与部として設けるターンバックルとしても使用することもできる。この場合、地震などの際に実際にどの程度の荷重が作用したかを記録でき、その時の変形の有無など合せて判断することなどで、建物の耐震性などを管理することができる。
【0034】
なお、本発明のターンバックル付属金具を装着するターンバックルは、実施例では筒状の緊結用中央回転部6を有するパイプ式ターンバックル2であるが、ターンバックルの構造は実施例のものに限らず、種々のタイプのものを使用できる。
適用するターンバックルが例えば図11に示すように、枠体6c’の両側に互いに逆ネジである雌ネジ部4’、5’を設けた緊結用中央回転部6’を有する枠式ターンバックル2’であってもよい。前記両側の雌ネジ部4’、5’に、互いに逆ネジの雄ネジ部7’、8’を有する締結ボルト11’、12’がそれぞれ螺合する。その他、適用するターンバックルのタイプは特に限定されない。
また、線状体を連結する線状体連結部の形状も、実施例のリング状のものに限らず、フックその他、適宜設計変更できる。
【符号の説明】
【0035】
1 ターンバックル付属金具
2、2’ ターンバックル
3、3’ 張力センサ付きターンバックル
4、5、4’、5’ 雌ネジ部
6、6’ 緊結用中央回転部
6a 平坦部
6b 回転駆動部
7、8、7’、8’ 雄ネジ部
9、10 線状体連結部
11、11’ 第1の締結ボルト
12、12’ 第2の締結ボルト
15 雌ネジ部
16 雄ネジ部
17 金具本体
18 凹部
19 歪ゲージ
20 保護部材
21 張力センサ部
22 ビス
25 リードケーブル
25a リード線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンバックルに連結される線状体の張力を測定する張力センサを備えたターンバックル付属金具であって、
前記ターンバックル付属金具は、一端に雄ネジ部、他端に雌ネジ部を有する棒状であり、前記金具の外周面に凹部が形成されて、前記凹部に歪ゲージを取り付けるとともに、この歪ゲージを保護する保護部材を設けられており、
前記金具の雄ネジ部は、ターンバックルの緊結用中央回転部に設けられた雌ネジ部と連結可能にネジ切りされ、
前記金具の雌ネジ部は、線状体と連結する線状体連結部を備える締結ボルトに設けられた雄ネジ部と連結可能にネジ切りされていることを特徴とするターンバックル付属金具。
【請求項2】
対象とする前記ターンバックルが汎用のターンバックルであり、前記汎用のターンバックルとは、両端部に互いに逆ネジである雌ネジ部を有する緊結用中央回転部と、前記両端部の雌ネジ部へそれぞれ連結可能な雄ネジ部を一端側に有するとともに他端側に線状体連結部を有する第1及び第2の締結ボルトと、からなるターンバックルであることを特徴とする請求項1記載のターンバックル付属金具。
【請求項3】
当該ターンバックル付属金具を備えた張力センサ付きターンバックルが、恒久的に線状体の張力を測定可能なように、歪みゲージを取り付けた張力センサ部又は/及び保護部材に防水処理を施したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の記載のターンバックル付属金具。
【請求項4】
対象とする前記ターンバックルが、斜面に配置した多数のアンカーの頭部にそれぞれ支圧板を取り付けて斜面安定化を図る斜面安定化工法において、一部のアンカー間を緊張力を付与しない態様でロープで連結する場合における前記ロープに介在させるターンバックルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具。
【請求項5】
対象とする前記ターンバックルが、斜面に配置した多数のアンカーの頭部にそれぞれ支圧板を取り付けるとともに各アンカー頭部間をロープで連結しかつ緊張力を付与して斜面安定化を図る斜面安定化工法において、アンカー間を連結する前記ロープに介在させるターンバックルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具。
【請求項6】
対象とする前記ターンバックルが、斜面に配置した多数のアンカーの頭部をロープで連結し、かつ緊張力を付与して浮石や転石を押さえ斜面安定化を図る斜面安定化工法において、アンカー間を連結する前記ロープに介在させるターンバックルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具。
【請求項7】
前記凹部が周溝であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記載のターンバックル付属金具。
【請求項8】
前記凹部を前記雌ネジ部の外周面に形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のターンバックル付属金具。
【請求項9】
両端部に互いに逆ネジである雌ネジ部を有する緊結用中央回転部と、前記両端部の雌ネジ部へそれぞれ連結可能な雄ネジ部を一端側に有するとともに他端側に線状体連結部を有する第1及び第2の締結ボルトとからなるターンバックルに請求項1のターンバックル付属金具を取り付けてなる張力センサ付きターンバックルであって、
前記緊結用中央回転部の一端側に第1又は第2の締結ボルトの一方の締結ボルトの雄ネジ部が連結され、緊結用中央回転部の他端側に前記ターンバックル付属金具の雄ネジ部が連結され、このターンバックル付属金具の雌ネジ部に他方の締結ボルトの雄ネジ部が連結されてなることを特徴とする張力センサ付きターンバックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−255472(P2012−255472A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128022(P2011−128022)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】