説明

ダイエット組成物及びそれを用いるダイエット食品及びペットフードの製造方法

【課題】 生活習慣病に対して優れた効果を発揮するように水溶性食物繊維と不溶性食物繊維からなるダイエット組成物とダイエット食品及びペットフードを提供する。
【解決手段】 イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末に対しふすま、ぬか、又はおからから選ばれる不溶性食物繊維粉末を2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなり、1食分100キロカロリ前後換算で、食物繊維を合計少なくとも10グラム前後、食物繊維中少なくともイヌリン1gを含む優れたダイエット食品組成物を提供する。イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維を予め水と油脂によりホイップ組成物としておくことにより全体の水分バランスを調整でき、良好な味覚の焼き上がりとすることができる。グルテンを配合する時はグルテン組織を形成した後、このグルテン組織を不溶性食物繊維粉末に配合するので、グルテン組織が破壊されることなく、均一発酵され、良好な発泡食品を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を主成分とするダイエット食品、特に水溶性食物繊維として菊科根茎、例えば菊芋粉を原料として用いる、いわゆる生活習慣病を改善し得るダイエット食品組成物及びそれを用いるダイエット食品の製造方法に関する。
また、本発明は動物用ペットフードにも適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
近時、肥満、高血糖、高中性脂肪等、いわゆる生活習慣病患者の増加に伴い、菊芋等の菊科根茎(以下、単に「菊芋」と称することもある)に含まれるイヌリンなどの水溶性食物繊維がこれら症状の予防、改善に有効であると報告され始めたことから、注目されるようになった(非特許文献1)。
【0003】
例えば、菊芋を破砕し、ペースト状にしたものを小麦粉、そば粉、米粉等の粉製品に加えて練合し、麺類を得ることが知られている(特許文献1)。
【0004】
ところで、菊芋は、アクが強く美味と言うわけにはいかないし、その主要成分であるイヌリンが、加工中に、菊芋自体に含まれる酵素により分解し、含有量が減少するおそれがある。そこで、イヌリン含量を減少させることなく、風味を緩和した種々の加工食品に適用しうる材料とする試みが種々提案されている。
【0005】
例えば、菊芋を一旦塩漬けにしてから塩分を除去し、乾燥し焙煎したのち粉末化して食用とする(特許文献2)、菊芋の乾燥粉末、菊芋の抽出エキスの乾燥粉末、桑葉の乾燥粉末及び桑葉の抽出エキスの乾燥粉末を配合して加工食品とする(特許文献3)、菊芋の熱風乾燥粉末にクエン酸とビタミンEを加え、これに賦形剤を添加し打錠して加工食品とする(特許文献4)などがある。
【0006】
【特許文献1】特開平07ー155131号公報
【特許文献2】特公平06ー18514号公報
【特許文献3】特開2003ー180293号公報
【特許文献4】特開2002ー216号公報
【非特許文献1】矢澤一良著;死の四重奏から身を守る/キクイモの「イヌリン」,株式会社ハート出版発行 2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜4記載の方法は操作が煩雑であったり、添加物が高価であったり、得られた製品の食品材料としての適用範囲が限られたものであったりして、かならずしも適当なものとは言い得ない。
【0008】
本件発明者らはパンやケーキ、うどんやパスタ等の麺類、菓子類、ピザ、お好み焼き、たこ焼きなどの広範囲の粉物食品に菊芋を活用することを種々検討し試作を繰り返したところ、菊芋から得られるイヌリン及びそれを含む粉末は水溶性食物繊維であって、不溶性食物繊維であるふすま、おから、ぬか等と組み合わせて使用すると、いずれか一方の食物繊維だけを摂取するより生活習慣病に対して優れた効果を発揮することがわかった。その要因は明らかではないが、腸壁では水溶性食物繊維によって糖の吸収・分解を抑制され、不溶性食物繊維とともに腸外に放出される結果、両者の組合せが単独使用の場合に比して高血糖や高中性脂肪や肥満などの生活習慣病に対して優れた効果を発揮するものと思われる。便秘にも有効であることがわかった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑み、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維との組み合わせにより生活習慣病に対して優れた効果を発揮するようにしたダイエット食品組成物を提供することを第1の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末に対しふすま、ぬか又はおから等から選ばれる不溶性食物繊維粉末を2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなるダイエット食品組成物を提供することにある。
ここで、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維は、経口投与によりインスリンと同様の効果が得られることは知られているが、ふすま等の不溶性食物繊維との相乗効果を発揮することについては明らかでなかった。特に、両者の相乗効果によって生活習慣病の改善に優れた効果を発揮するものと考えられ、好ましい作用効果は通常イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維に対し2倍重量部以上、好ましくは3〜10倍重量部の不溶性食物繊維を使用する場合に発揮され、イヌリンの適用量とそれが添加される食品の摂取量とを考慮すると、20倍重量部までが限度である。
【0011】
本発明の組成物は、60〜65kg体重の人間に対し1食分100キロカロリ前後を見当に、食物繊維少なくとも合計10グラム前後を含み、食物繊維中イヌリン少なくとも1gを含む加工食品用組成物を提供することができるので好ましい。本発明の組成物を用いて作成される食品は生活習慣病にかかっている人またはかかる兆候のある人を対象に提供されるものであるため、1食100キロカロリ前後の熱量であって、1食10グラムの食物繊維を与えると同時に1食1グラム以上のイヌリンからなる水溶性食物繊維に対しその2倍重量部以上の不溶性食物繊維を同時に与えることができる理想的な原料粉を提供することができる。1日あたりの標準適用量は2000〜2500キロカロリを摂取する大人1人あたり2.5〜10グラムまでであるから、かかる適用量を目算に1日の食品での摂取量を考えるからである。菊芋の市販粉末はおよそ40〜50%がイヌリンであるが、イヌリン以外にミネラル分を豊富に含むから菊芋粉末を使用するのが好ましい。また、両者の相乗効果は、患者によっては便秘が改善され、肌艶がよくなり、又排便の臭気が少なくなり、生理の周期が安定することが報告された。
本発明は動物用ダイエットペットフードとしても有効であり、動物の体重を考慮し、体重換算で有効量を与えるようにするのがよい。
【0012】
イヌリンを主成分とする食用粉末(水溶性食物繊維)とふすま粉等の不溶性食物繊維だけではぱさついて調理し難い。そこで、不溶性食物繊維に対しその15重量%以上等量までのグルテンをつなぎの目的の為に配合するのが好ましい。その他のつなぎ材としては小麦粉、米粉、そば粉豆粉、トウモロコシ粉、芋粉又は大豆タンパクをつなぎとして添加してもよい。つなぎ材中に糖質を含む場合、それに応じてイヌリン量を増量するのが好ましく、糖質10グラムに対しイヌリン1〜2グラム程度が好ましい。
【0013】
ところが、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維からなるダイエット食品にとって最大の難点は味覚である。グルテンをつなぎとして配合する場合、なぜかグルテン成分が小麦粉中に介在する場合と異なり、不溶性食物繊維と共存すると、イースト又は酵母菌の発酵により組織がなぜか均一に発泡しないことが見出された。本発明者らは鋭意研究の結果、これは発泡の段階で気泡が不溶性食物繊維によって破損し、成長しないことが原因となっており、発酵製品の組織に均一気泡が形成されないと発酵製品の食感と味覚を著しく阻害するものとなるとの知見を得た。そこで、本発明は、第2の目的として味覚に優れたダイエット食品の製造方法を提供するもので、グルテンをつなぎとして配合する場合、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維に対しふすま、ぬか又はおから等から選ばれる不溶性食物繊
維を2倍重量部以上20倍重量部以下配合して形成した生地に対し、グルテン粉にイースト又は酵母菌を配合して形成したグルテン組織を不溶性食物繊維の15重量%以上等量部までを上記生地に配合し、発酵させることを特徴とする加工食品の製造方法を提供するものでもある。その他のつなぎを併用する場合は通常、食物繊維からなる生地側に混合して使用するが、グルテンの形成を通常阻害しないのでグルテン側において混合してから生地側と混ぜるようにしてもよい。
【0014】
他方、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維はいきなり不溶性食物繊維とともに水等を加えて混練すると、全体の水分バランスが崩れ、均一に気泡を形成できない結果、食品の味覚を害するという現象が発現した。そこで、本発明は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とを混合する場合、水溶性食物繊維と少なくとも水及び油脂を用いて予め攪拌混合して不溶性食物繊維と混合すると、水溶性食物繊維が油膜を形成して不溶性食物繊維中に分散し、不溶性食物繊維側の水分移動が防止されている結果、加工された食品の気泡がほぼ均一に形成されることを見出した。そこで、本発明は、第3の目的として水溶性食物繊維と不溶性食物繊維から味覚に優れたダイエット食品を製造する方法を提供するもので、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維に対しふすま、ぬか、又はおからから選ばれる不溶性食物繊維を2倍重量部以上20倍重量部以下配合して生地を形成するにあたり、水溶性食物繊維の一部又は全部を適量の水又は油脂と攪拌混合してホイッピング組成物を形成し、このホイッピング組成物に不溶性食物繊維を配合し、焼成することを特徴とするダイエット食品の製造方法を提供するものである。ここで、ホイッピング組成物とは適量の水を含んだ水溶性食物繊維の粒子の外側に油膜が形成され、気泡とともに混在している状態をいい、油膜は内部の水溶性食物繊維が不溶性食物繊維側から水分を過剰吸収して全体の水分バランスが崩れないように保持する役目を果たし、混在する気泡は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とからなる生地を焼き上げるときの水分の逃散路となる機能を有するものと思われる。また、イヌリンを主成分とする食物繊維には菊芋根茎の粉末又はこれから抽出したイヌリンを用いることができるが、乾物食品にはチコリから抽出したイヌリン、パンなどの水分をある程度保有するものに対しては菊芋粉末を用いるのがよい(以下、「イヌリンを主成分とする食用粉末」を単に「菊芋粉」ということがある)。この菊芋粉は菊芋の粉砕物を凍結乾燥した粉末(以下、凍結乾燥芋粉と言う)が好ましい。
【0015】
イヌリンを主成分とする食用粉末とふすま粉の配合割合はイヌリンを主成分とする食用粉末5〜35重量%、ふすま粉95〜65重量%の範囲にあって、不溶性食物繊維を水溶性食物繊維の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなり、水溶性食物繊維が不溶性食物繊維と相乗して効果を発揮するから、生活習慣病の種類や病状等に応じて上記の範囲で適宜選択するのがよい。イヌリンを主成分とする食用粉末は原料粉に対して5重量%以上、ふすま粉は原料粉に対して50重量%以上含まれていれば生活習慣病の改善に効果を奏し、不溶性食物繊維を水溶性食物繊維の2倍重量部以上20倍重量部以下含むことにより優れた相乗効果を発揮する。
【0016】
加工食料品、例えばパン、ケーキ(パンケーキを含む)、シリアル、洋菓子、焼き菓子(例えば、クッキー、おかき)などを製造する場合、菊芋粉とふすま粉の原料粉100重量%に対し、小麦粉1〜50重量%、食塩 適量を選ぶのが好ましい。なお、この場合、グルテン、還元麦芽糖、サラダ油、バター、たまご、イースト、バニラエッセンスなどを適宜配合してもよく、グルテンは原料粉100重量%に対して25重量%以下、還元麦芽糖は原料粉100重量%に対して20%重量以下がよく、その他の成分は適量でよい。
【0017】
また、うどん、パスタ、そば等の麺類を製造する場合、菊芋粉とふすま粉の原料粉100重量%に対し、小麦粉又はそば粉は10〜80重量%がよい。そのほか、グルテンを配合してもよく、その場合はグルテンを別途形成し、食物繊維を含む生地に対し、不溶性食物繊維100重量%に対し、15%重量以上とするのがよい。
【0018】
さらに、ピザ、お好み焼き、たこ焼きなどを製造する場合、菊芋粉とふすま粉の原料粉100重量%に対し、小麦粉5〜80重量%、食塩 適量がよい。ホットケーキ、コーンカップなどを製造する場合、菊芋粉とふすま粉の原料粉100重量%に対し、小麦粉は混合せずともよく、混合するとしても5〜80重量%がよい。さらに、グルテン、還元麦芽糖、たまご、バニラエッセンス、調味料を配合してもよく、これらを配合する場合は、原料粉100重量%に対し、別途形成したグルテンを25重量%以下、還元麦芽糖30重量%以下がよく、その他の成分は適量でよい。
【0019】
上述の配合材料は、各目的に応じて、常法によって適量の水と練合し、要すれば、生地作り、熟成(発酵処理を含む)、成型、冷凍、具材の混合後、焼き上げ、茹で上げ等による加熱処理に付し、菊芋成分含有食品とする。
【0020】
例えば、パン類やピザの場合、グルテン以外の配合材料に水を加えて練合し生地を作り、別途形成したグルテン組織と混合後、発酵させ、成型後、焼き上げて製品とする。
【0021】
シリアルの場合、配合材料に水を加えて練合して生地を作り焼き上げ、シリアル30グラム当たり100キロカロリ前後で、水溶性食物繊維に対し2倍重量部以上20倍重量部以下の不溶性食物繊維を含み、全食物繊維を10グラム以上、小麦粉を含まない場合イヌリン1グラム以上を含み、小麦粉を含む場合はイヌリン2グラム以上を含むシリアル製品とすることができる。
【0022】
ケーキ、焼き菓子の場合、配合材料に水を加えて練合し、生地を作り、これを型に流し込み、焼き上げて1食当たり100キロカロリ前後の製品とする。例えば、1)イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維5〜35重量%、及びふすまを主成分とする不溶性食物繊維95〜65重量%からなり、水溶性食物繊維に対し2倍重量部以上20倍重量部以下の不溶性食物繊維を含む加工食品用原料粉に、油脂、麦芽糖、豆乳又はおから、膨張剤、香料を添加して製造してなり、1食100kcal前後を見当に食物繊維少なくとも10グラム、イヌリンをすくなくとも2グラムを付与できるクッキー、2)イヌリンを主成分とする食用粉末5〜35重量%、及びふすま粉末95〜65重量%からなり、水溶性食物繊維に対し2倍重量部以上20倍重量部以下の不溶性食物繊維を含む加工食品用原料粉に、小麦粉、麦芽糖、膨張剤、油脂、卵、香料を添加して製造してなり、1食分100kcal前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンをすくなくとも2グラムを付与できるケーキ、3)イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%に不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維を水溶性食物繊維の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉を配合してなる生地に対し、別途形成したグルテンにイースト又は酵母菌を混合して発酵させ、焼成してなるパン素材を油揚げしてなり、パン素材1食100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも2グラム付与できるドーナツ菓子を調製することができる。4)また、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%および不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも1グラム付与できるダイエットアイスクリームの主成分とすることもでき、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%および不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも1グラム付与できるダイエットドリンクの主成分とすることもできる。
【0023】
うどん、そば、パスタ等の麺類の場合は、グルテン以外の配合材料に水を加えて練合し、生地を作り、別途形成したグルテン組織と混合後、これを引き延ばしたり、裁断したりして成型後、茹で上げて製品とする。
【0024】
なお、上記の諸工程において、菊芋を使用する場合は必要に応じて冷凍処理を行うようにすると、菊芋特有のえぐ味や苦味が適度に押さえられる。
【0025】
ペット用おやつとしては人間用のクッキーと略同等組成で、甘味を減じて生成したものが好ましい。ペットフードとしては人間用シリアル組成又はクッキーにペットフード製造規約に基づいて種々の味覚及び必要成分を添加して調製されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
以上で明らかなように、本発明においては、イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とを一定の比率で混合して用いるので、例えば菊芋粉にふすま粉を配合することにより、菊芋特有のえぐ味や苦味が適度に緩和され、しかも水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とが共存することによりイヌリンを主成分とする水溶性食物繊維は、経口投与によりインスリンと同様の効果と、ふすま等の不溶性食物繊維との相乗効果を発揮し、両者の相乗効果によって生活習慣病の改善に優れた効果を発揮するので、生活習慣病の予防に好適なダイエット食品が得られる。
また、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とで構成されるダイエット食品において、水溶性食物繊維を予め水及び油脂と攪拌混合してホイッピング組成物とし、不溶性食物繊維と混合することにより、全体の水分バランスが良好となって仕上がりのよい食品を製造することができる。あるいはグルテンをつなぎとして使用する場合は予めグルテンを発酵させてグルテン組織を形成して不溶性食物繊維と混合することにより、グルテン組織の気泡が全体に程良く形成され、仕上がりのよい食品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
凍結乾燥菊芋粉15重量部、ふすま粉55重量部、胚芽5重量部からなる生地を調製する一方、グルテン粉15重量部、小麦粉10重量部、還元麦芽糖5重量部を配合し、パン用のグルテン材料を得た。
【0029】
得られた生地材料100重量部に対し、食塩0.1重量部、バター10重量部、及び適量の水を加えて練り、生地を作る一方、グルテン材料にイーストを混合してグルテン組織を形成した後、生地とグルテンとを混合し、常法により、成型し35〜40°Cで40〜60分間発酵させ、190°Cで焼き上げてパンを得た。このパンは100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいた。他方、凍結乾燥菊芋粉15重量部、ふすま粉55重量部、胚芽5重量部、グルテン粉15重量部、小麦粉10重量部、還元麦芽糖5重量部、食塩0.1重量部、バター10重量部及び適量の水を配合してパン生地を得て、常法により、成型し35〜40°Cで40〜60分間発酵させ、190°Cで焼き上げてパンを得た。このパンは100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいたが、両者を比較すると、前者はグルテン組織がイーストによりきれいに均一発泡したパン組織が得られる(図1)のに対し、後者はグルテン組織の発泡が一部破れて大小様々な発泡組織のパンが得られた(図2)。そのため、前者の食感は後者の食感に勝るものとなった。
本発明のパンは冷凍保存により長期間保存することができる。冷凍保存したパンは電子レンジで、解凍しそのまま食することができる。また電子レンジで解凍した後軽くトーストするようにしてもよい。
【実施例2】
【0030】
小麦粉25重量部、凍結乾燥菊芋粉15重量部、ふすま粉60重量部を配合し、シリアル用の配合材料を得た。
【0031】
得られた配合材料に、常法により適量の水を加えて練り、生地を作り、成型後、230°Cで3分間焼き上げてシリアルを得た。このシリアルは100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいた。
【実施例3】
【0032】
小麦粉5重量部、凍結乾燥菊芋粉15重量部およびふすま粉80重量部を配合し、スポンジケーキ用の配合材料を得た。
【0033】
得られた配合材料に、常法により適量の水を加えて練り、生地を作り、型に流し込み、210°Cで20分間焼き上げてスポンジケーキを得た。このスポンジケーキは100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいた。
【実施例4】
【0034】
ふすま粉65重量部を用意し、等量の水又は牛乳でふすまペーストを調整する。他方、凍結乾燥菊芋粉15重量部に、還元麦芽糖15〜20重量部、バター25重量部および水30重量部を加えて良く攪拌してホイップ組成物を得、これにふすまペーストを添加し、再びよくホイップする。そして、常法により成型、210°Cで 30分間焼き上げてクッキーを得た。このクッキーは100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいた。
【実施例5】
【0035】
市販のうどん粉30重量部、凍結乾燥菊芋粉15重量部、ふすま粉50重量部を混練して生地を調整する一方、グルテン15重量部でグルテン組織を形成し、生地とグルテン組織を混練し、うどん用の配合材料を得た。
【0036】
得られた配合材料100重量部に対し、食塩と適量の水を加えて練り、生地を作り、常法により成型、茹で上げて、茹でうどんを得た。この茹でうどんは100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいた。
【実施例6】
【0037】
小麦粉35重量部、凍結乾燥菊芋粉15重量部、ふすま粉45重量部、山芋粉5重量部を配合し、お好み焼き用の配合材料を得た。得られた配合材料に適量の水を加えて練り、常法により焼き上げ、その間、適宜の時期に好みの具、調味料、トッピングを加えてお好み焼きを得た。このお好み焼素材は100キロカロリ当たり食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含んでいた。
【実施例7】
【0038】
凍結乾燥菊芋粉20重量部を沸騰した水20mlに加えて攪拌し、クリーム状とする。他方、バター又はマーガリン60重量部を溶かし、そこに還元麦芽糖70重量部と凍結乾燥菊芋粉30重量部を加え、真っ白になるまで攪拌してホイップ組成物を得る。ここにおからペースト250重量部を添加し、気泡が十分取り入れられるように攪拌する。最後に、これに最初で作ったクリーム状となった菊芋水溶液を添加し、再びよくホイップし、これを成形して焼き上げ、おからクッキーとした。
このおからクッキーは全体に気泡が均一に形成され、良好な味覚を有していた。
【0039】
上記各実施例で得られた100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む60グラムパン、100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む30グラムクッキー又は100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む30グラムシリアルを、栄養コントロールされた日常の食事に代えて又は栄養コントロールされた、日常の食事とともに生活習慣病患者に与えたところ、下記のように生活習慣病の改善が確認された。なお、これらの食品は約一食分で、厚生省の定める一日の食物繊維の摂取量目安の100%〜30%を補うものとする。
【0040】
年齢40歳の男性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに1食100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む60グラムパン、100キロカロリ、食物
繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む30グラムクッキー又は100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む30グラムシリアルを2食与えたところ、中性脂肪178mg/dL、血糖値121であったのが、6カ月後には中性脂肪80mg/dL、血糖値82に改善された。
【0041】
同様に、年齢57歳の女性に与えたところ、225の血糖値が、7日後には136まで低下した。
【0042】
年齢78歳の女性に与えたところ、160の血糖値が、7日後には100前後まで低下した。
【0043】
年齢37歳の女性に朝夕に上記1個のパンを日常の食事とともに与えたところ、32%の体脂肪率が2カ月後には28%まで低下し、5カ月後には26.5%まで低下した。また、便秘が改善され、肌の色がよくなった。さらに、生理の周期が安定してきた。
【0044】
年齢66歳の女性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む30グラムシリアルを2食与えたところ、32%の体脂肪率が45日後には23%まで低下した。
【0045】
年齢40歳の男性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに、100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む60グラムパンを2食与えたところ、2〜3カ月すると、善玉コレステロールが増加し、コレステロール値も下がって正常な値になりました。
【0046】
年齢40歳の女性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに100キロカロリ、食物繊維10グラム、イヌリン2グラムを含む60グラムパン(1食当たり)を2食与えたところ、3カ月が経過した頃から、白髪が目立たなくなってきた。
【0047】
年齢56歳の男性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに2食の上記パンを与えたところ、3カ月が経過した頃から、白髪が目立たなくなってきた。
【0048】
年齢49歳の男性に、日常の食事に代え又は日常の食事とともに2食の上記パンを与え、3カ月〜4カ月が経過したが、体調がよく、ヘモグロビンAlcが正常値近くまで下がった。
【0049】
年齢50歳の男性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに2食の上記シリアルを与えたところ、中性脂肪175mg/dLが2カ月で58mg/dLまで低下した。
【0050】
年齢29歳の男性に毎日1個の上記パンを夕食時に与えたところ、85.5kgあった体重が特別な運動をしなくても1カ月で81.4kgまで減少した。
【0051】
人工透析をしていた女性に、毎食上記パンを与えたところ、6カ月が経過した現在、透析の必要がなくなり、体調もよくなった。
【0052】
糖尿病でインシュリンを使用していた78歳の女性に、日常の食事とともに2食の上記パンを与えたところ、一週間もしないうちに血糖値が低下し、現在も低下した血糖値に安定している。
【0053】
同じく、57歳の男性に日常の食事に代え又は日常の食事とともに2食の上記パンを与えたところ、一週間もしないうちに血糖値に顕著な改善がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
肥満、高血糖等の生活習慣病の予防並びに改善を目的として、水溶性食物繊維食材である菊芋と各種水不溶性食物繊維とを所定の割合で配合することにより、パン、ケーキ、焼き菓子、うどん、パスタ、ピザ、お好み焼き、たこ焼き等粉物の素材だけでなく、ダイエットアイスクリーム、ダイエットドリンクなど広範囲の食品に適用しうる基礎的粉末素材を提供でき、産業上の利用可能性は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】グルテン組織がイーストによりきれいに均一発泡したパン組織が得られる本発明製品の断面写真。
【図2】グルテン組織の発泡が一部破れて大小様々な発泡組織のパン組織を有する比較例の断面写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末に対しふすま、ぬか、又はおからから選ばれる1種又は2種以上の不溶性食物繊維粉末を2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなることを特徴とするダイエット食品及びペットフード組成物。
【請求項2】
前記水溶性食物繊維粉末の一部又は全部を予め少なくとも水及び油脂と攪拌混合し、気泡を含んだホイッピング組成物として配合される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
100キロカロリ前後換算で、食物繊維を合計少なくとも10グラム前後、食物繊維中少なくともイヌリン1gを含ませる請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
不溶性食物繊維粉末に対しつなぎとして小麦粉、グルテン、米粉、そば粉、豆粉、トウモロコシ粉、芋粉又は大豆タンパクの一種又は二種以上が不溶性食物繊維粉末の15重量%以上等量部まで添加され、糖質分の増加に応じて食物繊維中のイヌリンを増量する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
グルテンを必須成分とし、発酵後の気泡を含んだグルテン組織の形態として配合される請求項3記載の組成物。
【請求項6】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維が、チコリから抽出したイヌリン又は菊芋根茎の粉末から抽出したイヌリンである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末に対しふすま、ぬか、又はおからから選ばれる不溶性食物繊維粉末を2倍重量部以上20倍重量部以下配合して生地を形成する一方、グルテン粉にイースト又は酵母菌を配合して練り合わせてグルテン組織を形成した後、このグルテン組織を不溶性食物繊維の15重量%以上等量部までを上記生地に配合し、均一発酵させることを特徴とするダイエット食品及びペットフードの製造方法。
【請求項8】
グルテン組織を不溶性食物繊維の30重量%以上等量部までを配合する請求項7記載のダイエット食品及びペットフードの製造方法。
【請求項9】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末に対しふすま、ぬか、又はおからから選ばれる不溶性食物繊維粉末を2倍重量部上20倍重量部以下配合して生地を形成するにあたり、水溶性食物繊維粉末の一部又は全部を適量の水又は油脂と攪拌混合してホイッピング組成物を形成し、このホイッピング組成物に不溶性食物繊維粉末を配合し、焼成することを特徴とするダイエット食品及びペットフードの製造方法。
【請求項10】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末に対しふすま、ぬか、又はおからから選ばれる不溶性食物繊維粉末を3倍重量部以上10倍重量部以下配合する請求項9記載のダイエット食品及びペットフードの製造方法。
【請求項11】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及び不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維粉末を水溶性食物繊維粉末の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉を配合してなる生地に対し、別途形成したグルテンにイースト又は酵母菌を混合して発酵させ、焼成してなることを特徴とするダイエットパン。
【請求項12】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及び不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維粉末を水溶性食物繊維粉末の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉に、別途形成したグルテン組織を混合してなることを特徴とするダイエットパスタ。
【請求項13】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及びふすまを主成分とする不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維粉末を水溶性食物繊維粉末の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉に小麦粉を添加せず、又は添加して製造し、30グラム当たり100キロカロリ前後に調整してなることを特徴とするダイエットシリアル。
【請求項14】
シリアル30グラムに対して少なくとも食物繊維合計10グラムを含み、食物繊維中イヌリンが小麦粉を添加しない場合、少なくとも1グラム、小麦粉を添加する場合、少なくとも2グラム含む請求項10記載のダイエットシリアル。
【請求項15】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及びふすま又はおからを主成分とする不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維粉末を水溶性食物繊維粉末の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉に、油脂、麦芽糖、乳成分、膨張剤、香料を添加して製造してなり、100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも2グラム付与できることを特徴とするダイエットクッキー。
【請求項16】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及びふすま粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維粉末を水溶性食物繊維粉末の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉に、小麦粉、麦芽糖、膨張剤、油脂、卵、香料を添加して製造してなり、100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも2グラムを付与できることを特徴とするダイエットケーキ。
【請求項17】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及び不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、不溶性食物繊維粉末を水溶性食物繊維粉末の2倍重量部以上20倍重量部以下配合してなる加工食品用原料粉を配合してなる生地に対し、別途形成したグルテンにイースト又は酵母菌を混合して発酵させ、焼成してなるパン素材を油揚げしてなり、パン素材100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも2グラム付与できることを特徴とするダイエットドーナツ菓子。
【請求項18】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及び不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも1グラム付与できることを特徴とするダイエットアイスクリーム。
【請求項19】
イヌリンを主成分とする水溶性食物繊維粉末5〜35重量%、及び不溶性食物繊維粉末95〜65重量%からなり、100キロカロリ前後を見当に食物繊維を少なくとも10グラム、イヌリンを少なくとも1グラム付与できることを特徴とするダイエットドリンク。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−207484(P2009−207484A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260350(P2008−260350)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(506292088)
【Fターム(参考)】