説明

ダイオキシン類の採取方法及び分析方法

【課題】 ごみ焼却炉等の焼却施設の解体時に発生する煙道、EP板等の金属廃棄物に付着したダイオキシン類量を高精度に分析するために、これらのダイオキシン類を効率的に採取する。
【解決手段】 金属材を酸洗浄した後、乾燥し、その後有機溶媒を用いて超音波抽出する。酸洗浄液と有機溶媒の抽出液中に採取されたダイオキシン類量を分析する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ごみ焼却炉等の解体時等に発生する煙道、EP板(電気集塵機の集塵板)等の金属廃棄物に付着したダイオキシン類量の測定のために、これらの金属廃棄物に付着しているダイオキシン類を採取する方法及び採取したダイオキシン類を分析する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ごみ焼却炉、廃棄物焼却炉等の焼却施設においては、焼却により、ポリ塩化パラジベンゾダイオキシン類(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDF)、コプラナーポリクロロビフェニル(Co−PCB)等の有機塩素化合物(以下、これらを併せて「ダイオキシン類」と称する。)が生成する。
【0003】生成したダイオキシン類は排ガス、焼却灰、集塵灰、排水等に含有されて、焼却炉から排出されるが、一部は炉壁、煙突内壁等のレンガ、煙道配管内面、EP板等の金属材に付着して焼却炉内に残留する。
【0004】このため、焼却施設内作業におけるダイオキシン類曝露防止対策が、平成13年4月27日基発第401号「ダイオキシン類による健康障害防止の為の対策について」及び平成12年9月7日基発第561号の2「廃棄物焼却施設解体工事におけるダイオキシン類による健康障害について」により指導されている。
【0005】ところで、廃棄物焼却炉等の焼却施設が老朽化した場合、あるいは広域化のために統合される場合、更には周辺設備を更新する場合等においては、既存の焼却施設を除染・解体することが必要になる。この除染・解体に当っては、上記通達に従って、発塵防止のために、例えば、高圧水による洗浄で、焼却炉設備内の付着物を除去することが義務づけられている。そして、上記通達では、付着物除去結果の確認は、付着物除去前後の写真撮影を入念に行い、その結果を保存すると記されている。
【0006】しかし、このような写真撮影では、十分に除染がなされたか否かを確認することは困難であり、解体後の廃棄物処理作業の安全性をより確実なものとするためには、除染前後のダイオキシン類付着量を分析して除染の程度を定量的に把握することが必要となる。
【0007】従来、ダイオキシン類分析の手法としては、平成4年厚生省告示第192号「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法別表第一」、平成9年に厚生省から示された「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」がある。これを元に標準化が行われ、平成11年にはJIS K0311「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法」、JIS K 0312「工業用水・工場排水中のダイオキシン類およびコプラナーPCBの測定方法」としてJIS化された。
【0008】JIS法やその他の方法においては、ダイオキシン類の抽出工程には、液液抽出法(試料が液体の場合)、ソックスレー抽出法(試料が固体の場合)又は加速溶媒抽出法(ASE)が用いられ、得られた抽出液を硫酸処理、シリカゲルクロマトグラフィー、アルミナクロマトグラフィー等の前処理によって精製した後、ガスクロマトグラフィーと解像度10000以上の質量分析計(HRMS)によってダイオキシン類を定量する(GC/MS法)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、JIS法等が想定したダイオキシン類の抽出対象となる固形物は焼却灰、飛灰、或いは土壌であり、廃棄塵板や煙道配管等の構造物を対象とするものではない。これらの金属製の構造物をソックスレー抽出やASE抽出にかけるためには、抽出装置の構造上、微小な破片に破砕する必要があるが、金属材を微粉砕することは非常に困難な作業である。また、焼却炉の金属材表面には、多くの場合、錆こぶ等が発生して金属材表面を覆っている場合があり、このような場合には抽出溶媒が十分に浸透しないために、抽出効率が悪いという問題もある。
【0010】このように、従来技術では、金属材に付着したダイオキシン類を十分にかつ効率的に採取することができず、このために金属材に付着しているダイオキシン類量の分析が非常に困難なものとなっていた。
【0011】本発明は上記従来の問題点を解決し、ごみ焼却炉等の焼却施設の解体時に発生する煙道、EP板等の金属廃棄物に付着したダイオキシン類を効率的に採取する方法と、採取したダイオキシン類を分析する方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のダイオキシン類の採取方法は、金属材表面に付着したダイオキシン類を採取する方法において、該金属材を酸洗浄する酸洗浄工程及び酸洗浄した金属材を乾燥する乾燥工程を有する第1の採取工程と、該第1の採取工程を経た金属材を有機溶媒を用いて超音波抽出する第2の採取工程とを備えることを特徴とする。
【0013】本発明では、まず金属材を酸洗浄することにより、金属材の表面に生成している錆こぶ等を除去するため、その後の有機溶媒による超音波抽出で、金属材表面に付着しているダイオキシン類を効率的に抽出・回収することができる。
【0014】本発明においては、酸洗浄後は好ましくは水洗を行った後、乾燥する。この場合、酸洗浄液及び水洗に用いた洗浄水中には金属材に付着していたダイオキシン類が移行しているため、これらを回収して有機溶媒でダイオキシン類を抽出するのが好ましい。
【0015】本発明のダイオキシン類の分析方法は、このようにして金属材から採取したダイオキシン類を既存のダイオキシン類分析方法により分析する方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に本発明のダイオキシン類の採取方法及び分析方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】本発明においては、まず、ダイオキシン類が付着した金属材を酸洗浄液中に浸漬するなどして、酸洗浄する。この酸洗浄に用いる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられるが、これらのうち、特に錆こぶの溶解除去作用に優れることから、塩酸が好ましい。
【0018】塩酸等の酸の使用量は、洗浄する金属材の状態(錆こぶの発生状況等)によっても異なるが、一般的には、面積10cm×10cmの金属板当たり、4〜12モル程度用いることが好ましい。酸洗浄液の酸濃度は、洗浄効果及び取り扱い性等を考慮した場合2〜6モル/L程度であることが好ましく、従って、酸洗浄に当っては、このような濃度の酸洗浄液を処理対象の金属材の大きさに応じて、金属材を十分に浸漬させることができる範囲で適当量を用いて洗浄を行うことが好ましい。
【0019】酸洗浄時間は、用いる酸洗浄液の酸濃度や金属材の状態等によっても異なるが、一般的には金属材を酸洗浄中に0.5〜24時間程度浸漬して行うことが好ましい。
【0020】酸洗浄後は、酸洗浄液中から金属材を取り出し、洗浄水中に浸漬して水洗する。
【0021】なお、上記酸洗浄時及び水洗時には超音波を照射しても良く、これにより洗浄効果を高めることができる。
【0022】上記水洗は、金属材の表面が十分に表出するまで行い、従って、酸洗浄及び水洗後も、金属材表面に錆こぶ等が残留し、表面が十分に表出しない場合には、適宜酸洗浄及び水洗を繰り返す。錆こぶ等が十分に除去され金属材の表面が表出した後は、金属材に付着した酸が十分に除去されるまで、即ち、洗浄水に酸が検出されなくなるまで(例えば、洗浄水のpHが6〜7程度であることをpH試験紙等で確認する)更に水洗して第1の採取工程を終了する。
【0023】この第1の採取工程で用いる酸洗浄液及び洗浄水は、不純物を含まない高純度なものであることが好ましく、例えば塩酸としてはJIS−K−8180に規定する特級又は同等の品質のものが好ましい。また、洗浄水としては、JIS−K−0557に規定するA4又はA3の水や蒸留水、超純水等をヘキサンで十分に洗浄したものを用いることが好ましい。
【0024】上記水洗後は、金属材を乾燥(風乾)する。この乾燥時に、金属材の表面に酸が残留していると、例えば塩酸の場合には腐食性の塩化水素ガスが発生するため、乾燥前の水洗により、酸は十分に除去しておくことが好ましい。
【0025】この乾燥後も金属材に水分が残留する場合には、金属材をアセトンやメタノール等の水溶性の有機溶媒で洗浄することにより水分を除去した後、更に風乾することが好ましい。この水分の除去に用いる有機溶媒も十分に高純度であることが好ましく、例えば、アセトンであればJIS−K−8040に規定する高純度品又は同等の品質のものが好ましく、メタノールであればJIS−K−8891に規定する高純度品又は同等の品質のものが好ましい。
【0026】金属材を酸洗浄、水洗及び乾燥する第1の採取工程においては、酸洗浄に用いた酸洗浄液、水洗に用いた洗浄水、更に、乾燥時に水溶性有機溶媒で水分の除去を行った場合には、この有機溶媒中には金属材に付着していたダイオキシン類が含まれているため、これらを回収して、ジクロロメタン、トルエン等の有機溶媒でダイオキシン類を液−液抽出する。なお、以下において酸洗浄に用いた酸洗浄液を回収したものを「酸洗浄回収液」、水洗に用いた洗浄水を回収したものを「水洗回収液」、乾燥時の水分の除去に用いた有機溶媒を回収したものを「後処理回収液」と称し、これらの回収液を合わせて「第1採取工程回収液」と称す。
【0027】抽出に用いる有機溶媒量は、第1採取工程回収液に対して1/10体積倍にし約20分間振り混ぜて抽出する。溶媒としてジクロロメタンを使う場合は3回抽出、トルエンを使う場合は10回抽出を行い、いずれの場合も硫酸ナトリウムで脱水する。この抽出に用いる有機溶媒も十分に高純度なものであることが好ましく、例えば、ジクロロメタンであればJIS−K−8117、トルエンであればJIS−K−8680に規定する高純度品又は同等の品質のものが好ましい。
【0028】なお、抽出に当たり、各回収液に懸濁物質が存在する場合には、これを予め濾過して除去した後抽出を行うことが好ましい。この場合、濾取した濾過残渣についてもトルエン−ソックスレー抽出等でダイオキシン類の抽出を行う。
【0029】以下、第1採取工程回収液を液−液抽出して得られた抽出液(回収液の濾過を行った場合には、この濾過残渣について抽出を行って回収した抽出液も含む)を「第1採取工程抽出液」と称す。
【0030】第2の採取工程においては、第1の採取工程で乾燥した後の金属材を有機溶媒で超音波抽出する。ここで用いる有機溶媒としては、トルエン、アセトン等が挙げられ、特に先の濾過残渣のトルエン−ソックスレー抽出液と混合して濃縮でき、効率が良いことから、トルエンが好適である。
【0031】超音波抽出に用いる有機溶媒量は、金属材を十分に浸漬させて超音波抽出することができるような量であれば良く、通常の場合、10cm×10cmの金属板当たり1〜2L程度が好ましい。
【0032】この超音波抽出に用いる有機溶媒も、十分に高純度であることが好ましく、例えばトルエンであれば、JIS−K−8680に規定する高純度品又は同等の品質のものが好ましい。
【0033】超音波抽出時に照射する超音波の強度及び超音波抽出時間には特に制限はないが、42〜44KHz程度で30〜90分程度行うことが好ましい。以下、この超音波抽出で得られた抽出液を「第2採取工程抽出液」と称す。
【0034】このようにして第2の採取工程を終了した後は、第1採取工程抽出液と第2採取工程抽出液とを合わせて、ロータリーエバポレーター等で濃縮し、精製、分析に供す。
【0035】本発明のダイオキシン類の分析方法は、このようにして得られた抽出濃縮液中のダイオキシン類量を測定する方法である。この分析は公知のいかなる方法を用いても良く、例えば、得られた抽出濃縮液を、必要に応じて、硫酸処理、シリカゲルクロマトグラフィー、アルミナクロマトグラフィー等の前処理を施した後、GC/MS法等でダイオキシン類を定量分析する方法が挙げられる。また、ごみ焼却炉等の焼却施設の除染・解体作業中のように、分析結果が早急に必要な場合は、ダイオキシン類分析に要する時間を短縮するために、抗体によるイムノアッセイ、肝細胞を用いたバイオアッセイ、低分解能質量分析計を直列につないで分解能を確保したGC/MS/MS法等の簡易分析法を組み合わせて分析を行うことができる。
【0036】本発明において、処理対象となる金属材は、ごみ焼却炉等の焼却施設の解体時等に発生する煙道配管、EP板等の金属材であり、これらの金属材は、一般には鋼、軟鋼、ステンレス鋼等で構成されるものであるが、本発明は何らこのような解体廃棄物に限らず、ダイオキシン類が付着した金属材であれば、いずれも有効に適用可能である。
【0037】ごみ焼却炉等の焼却施設の解体廃棄物等について、ダイオキシン類の採取及び分析を行う場合、7×7cm〜10×10cm程度の大きさの金属片を切り出して試料とすることが好ましい。また可能であれば、試料の表面積、質量を測定しておくことが好ましい。
【0038】本発明の採取方法及び分析方法は、特に、ごみ焼却炉等の焼却施設の除染・解体作業前の汚染度評価及び除染中又は除染後の効果の確認に有効である。
【0039】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0040】なお、以下の実施例において、洗浄及び抽出等に用いた試薬は次の通りである。
[試薬]
塩酸:JIS−K−8180に規定する特級又同等の品質のもの水:JIS−K−0557に規定するA4の水をヘキサンで十分洗浄したものトルエン:JIS−K−8680に規定するもの、又は同等の品質のものジクロロメタン:JIS−K−8117に規定するもの、又は同等の品質のものアセトン:JIS−K−8040に規定するもの、又は同等の品質のもの無水硫酸ナトリウム:JIS−K−8987に規定するもの、又は同等の品質のものまた、試料としては、ダイオキシン類で汚染された10cm×10cm×0.3cm厚さの鋼材(軟鋼:SS)を用いた。
【0041】実施例1次の手順でダイオキシン類の採取を行った。
(1) 試料を3Lビーカーにとり、6モル/L塩酸(水:濃塩酸=1:1(体積比))約1Lを十分浸すように加えた。
(2) 1時間放置した後試料を引上げ、洗浄水約1L中に1時間浸漬して水洗した。
(3) 錆こぶ等が大量に存在し、地金が見えないため(1),(2)を3回繰り返した。
(4) 次に、試料を塩酸が無くなるまで水1Lで十分に洗浄した後、風乾した。風乾後も水分が残っていたため、アセトン0.1Lで洗浄除去し、更に風乾した。
(5) 乾燥させた試料を3Lのビーカーにとり、トルエン1Lに浸漬し、44KHz程度の強度で60分間超音波を照射した。照射後、試料を抜き取りトルエンをロータリーエバポレーターで約10mLまで濃縮した。
(6) (1)の塩酸洗浄液は、(2),(4)の洗浄水及びアセトンと合わせ、ジクロロメタン0.7Lで3回、液−液抽出を行った。ただし、抽出に先立ち、孔径0.6μm程度のガラス繊維濾紙で懸濁物質を除去し、濾液について抽出を行った。濾紙残留物は水洗して十分に塩酸を除去した後アセトンで洗浄して水分を除去し、その後一晩風乾した後、トルエン0.3Lで16時間ソックスレー抽出を行った。濾紙残留物の塩酸洗浄液及びアセトン洗浄液は濾液と合わせて上記ジクロロメタンによる抽出を行った。
(7) (6)のジクロロメタン抽出液2.1Lは無水硫酸ナトリウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターで約5mLまで濃縮し、トルエン約10mLを加え、60℃に加温してジクロロメタンを留去して溶媒をトルエンに変えた。
(8) (6)のソックスレー抽出液0.3L、(5)の濃縮液約10mL及び(7)のトルエン溶液約5mLを合わせ、ロータリーエバポレーターで約10mLに濃縮した。
(9) (8)の濃縮液10mLを50mL全量フラスコに移しトルエンで定容した。これを正確に20mL分取しクリンアップスパイク(内標準物質)としてダイオキシン類はシー・アイ・エルジャパン社製EDF957を10ng、コプラナーPCB類はWellington Laboratories社製NK−LCSP−Aを2ng加えロータリーエバポレーターで約5mLに濃縮し、さらに窒素気流によってトルエンを除去し約500μLとした。これを多層シリカゲルカラムに注ぎ入れヘキサン200mLを約2.5mL/分の速度で流下させた。流下させた液(以下溶出液とする)を10mLに濃縮し正確に半分にわけ、それぞれを以下に記すダイオキシン類測定試料調整操作とコプラナーPCB類測定試料調整操作を行った。
【0042】i) ダイオキシン類測定試料調整操作溶出液をアルミナカラムに移し入れ、ジクロロメタン(2vol%)を含むヘキサン100mLを約2.5mL/分で流し第1画分を得る。次にジクロロメタン(50vol%)を含むヘキサン溶液150mLを約2.5mL/分で流し第2画分を得る。第2画分を約5mLにロータリーエバポレーターで濃縮し更に窒素気流によって溶媒を揮散除去し約500μLとした後シリンジスパイクとしてシー・アイ・エルジャパン社製ED911を5ng加え、再度窒素気流によって100μLとした。これを測定試料とした。
【0043】ii) コプラナーPCB類測定試料調整操作溶出液をアルミナカラムに移し入れ、ヘキサン40mLを約2.5mL/分で流し第1画分を得る。次にジクロロメタン(5vol%)を含むヘキサン溶液120mLを約2.5mL/分で流し第2画分を得る。この第2画分にはコプラナーPCBが含まれる。さらにジクロロメタン(50vol%)を含むヘキサン溶液150mLを約2.5mL/分で流し第3画分を得る。第2画分をロータリーエバポレーターで濃縮し更に窒素気流によって溶媒を揮散させ除去して500μLとした後シリンジスパイクとしてWellington Laboratories社製MBP−70を1ng加え再度窒素気流によって100μLとした。これを測定試料とした。
【0044】なお、i)及びii)において、第2画分に対象物が含まれないことがあり得るので、第1画分、第3画分を保存したおき、再分析に供与できるようにしておくのが望ましい。
【0045】(10) (9)の濃縮液について、JIS法であるGC/MS法と、簡易分析法であるGC/MS/MS法によりダイオキシン類濃度の測定を行い、各々測定された濃度から試料に付着したダイオキシン類量を算出し、結果を表1に示した。なお、GC/MS分析装置としては、日本電子社製「二重収束形質量分析計」を用い、GC/MS/MS分析装置としては、Varian社製「タンデム四重極質量分析計」を用いた。
【0046】比較例1実施例1において、酸洗浄、水洗及び乾燥を行わす、試料を直接有機溶媒で超音波抽出したこと以外は、同様にしてダイオキシン類の採取及び分析を行い、結果を表1に示した。
【0047】
【表1】


【0048】実施例2予めダイオキシン類付着量が約150pg−TEQであることが判明している金属片(10cm×10cm×0.3cm厚さの鋼材(SS)片)を試料として、実施例1と同様にしてダイオキシン類の採取及び分析を行ったところ、GC/MS法では150pg−TEQ、GC/MS/MS法では170pg−TEQと、いずれもほぼ正確な値を求めることができた。
【0049】以上の結果から、酸洗浄、乾燥及び有機溶媒による超音波抽出を行う本発明の方法によれば、試料に付着しているダイオキシン類を確実に採取することができ、これにより、ダイオキシン類付着量を正確に測定することができることがわかる。
【0050】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のダイオキシン類の採取方法及び分析方法によれば、金属材に付着しているダイオキシン類を効率的にかつ確実に採取してこれを分析することができる。従って、本発明によれば、ごみ焼却炉等の焼却施設の除染・解体作業に当って、作業の開始前、或いは作業中に、煙道配管、EP板等の汚染度(ダイオキシン類付着量)を正確に把握して、最適な作業手順を選択したり、作業方法に反映させてより一層効果的な除染作業を行ったりすることができ、作業効率を高めると共に、安全性を十分に確保することが可能となる。また、作業終了後においては、除染効果を正確に確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属材表面に付着したダイオキシン類を採取する方法において、該金属材を酸洗浄する酸洗浄工程及び酸洗浄した金属材を乾燥する乾燥工程を有する第1の採取工程と、該第1の採取工程を経た金属材を有機溶媒を用いて超音波抽出する第2の採取工程とを備えることを特徴とするダイオキシン類の採取方法。
【請求項2】 請求項1の方法において、第1の採取工程において、金属材を酸洗浄した後水洗し、その後乾燥するようにした方法であって、この酸洗浄液及び洗浄水中のダイオキシン類を有機溶媒で抽出することを特徴とするダイオキシン類の採取方法。
【請求項3】 請求項1又は2の方法に従って採取したダイオキシン類を分析することを特徴とするダイオキシン類の分析方法。

【公開番号】特開2003−177082(P2003−177082A)
【公開日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−377451(P2001−377451)
【出願日】平成13年12月11日(2001.12.11)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】