説明

ダイオードの取付構造

【課題】ダイオードの位置ずれを防止する。
【解決手段】ダイオード30は、互いに隣接する第1、第2端子板13,14に接続される。ダイオード30の本体部31は、第1端子板13に形成された第1位置決め部15に位置決めされた状態で嵌め込まれ、第1位置決め部15内に供給された半田40によって第1位置決め部15に固定される。ダイオード30のリード部32は、第2端子板14に形成された第2位置決め部16に位置決めされた状態で嵌め込まれ、第2位置決め部16内に供給された半田40によって第2位置決め部16に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽電池モジュールに取り付けられる端子ボックスが開示されている。端子ボックスのボックス本体内には複数の端子板が収容され、各端子板が逆流防止用のダイオードを介して相互に接続されている。ダイオードは、発熱部を有するブロック状の本体部と、本体部から延びるピン状の一対のリード部とを有している。本体部は、隣接する端子板のうちの一方の端子板にねじ締めして固定されている。また、両リード部のうちの片方は一方の端子板に半田付けにより接続され、もう片方は他方の端子板に半田付けにより接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−251962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のダイオードの取付構造では、ねじ締め工程と半田付け工程とを別々に行わねばならず、作業負担が大きいという問題がある。これに鑑み、本体部の固定作業も半田で行えば、ダイオード全体の取り付けが半田付け工程に統合されて、作業負担が軽減される。またこの場合に、リフロー半田によれば、実装工程が自動化され、さらなる作業性の改善を図ることが可能となる。しかし、例えば、リフロー半田を行う際に、ダイオードの本体部が一方の端子板の表面における所定位置に留まらずに位置ずれするおそれがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ダイオードの位置ずれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ダイオードの周りを取り囲むことにより、前記ダイオードを位置決めし、かつ内部に半田が供給される位置決め部を有する放熱板を備えたダイオードの取付構造であるところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記位置決め部が前記ダイオードの底部の外周と対向する囲い壁を有し、前記半田が前記底部の外周及び前記囲い壁に付着しているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記位置決め部が前記放熱板の表面において前記ダイオードの底部を嵌め込み可能な凹状の形態をなしているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ダイオードが、発熱部を有する本体部と、前記本体部から延びるリード部とからなり、前記放熱板が前記ダイオードを介して互いに接続される少なくとも2つの端子板によって構成され、前記2つの端子板のうち、一方の端子板に、前記本体部を位置決めする前記位置決め部が設けられ、他方の端子板に、前記リード部の先端部を位置決めする別の位置決め部が設けられているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記位置決め部が、前記本体部の底部の外周を全周に亘って取り囲む形態とされているところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記別の位置決め部が、前記リード部の先端部の外周を、前記本体部と対向する側を除いて取り囲む形態とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
放熱板の位置決め部にダイオードを載せると、ダイオードの周りが位置決め部によって取り囲まれて、ダイオードが位置決めされるため、半田付け工程等でダイオードが位置ずれするのが防止される。
【0013】
<請求項2の発明>
位置決め部がダイオードの底部の外周と対向する囲い壁を有し、半田が底部の外周及び囲い壁に付着するため、良好な半田フィレットが形成され、半田接続強度が向上する。
【0014】
<請求項3の発明>
位置決め部が放熱板の表面においてダイオードの底部を嵌め込み可能な凹状の形態をなしているため、位置決め部を容易に成形することができる。
【0015】
<請求項4の発明>
位置決め部が一方の端子板において本体部を位置決めし、別の位置決め部が他方の端子板においてリード部を位置決めするため、ダイオードの位置ずれが確実に防止される。
【0016】
<請求項5の発明>
位置決め部が本体部の底部の外周を全周に亘って取り囲む形態とされているため、ダイオードが本体部の表面に沿って位置ずれするのが確実に防止される。
【0017】
<請求項6の発明>
別の位置決め部がリード部の先端部の外周を本体部と対向する側を除いて取り囲む形態とされているため、リード部の位置ずれも確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係るダイオードの取付構造を含む太陽電池モジュール用端子ボックスの平面図である。
【図2】ダイオードの取付構造の断面図である。
【図3】ダイオードの取付構造の平面図である。
【図4】放熱板にダイオードを載せる前の状態をあらわす断面図である。
【図5】第1、第2位置決め部の平面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るダイオードの取付構造における第1位置決め部の平面図である。
【図7】参考例に係るダイオードの取付構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。本実施形態に係るダイオードの取付構造は、太陽電池モジュール用端子ボックス60に形成されている。太陽電池モジュール用端子ボックス60は、図1に示すように、ボックス本体61と、ボックス本体61内に収容される複数の端子板10(放熱板)と、ボックス本体61内に収容され、かつ各端子板10に支持される複数のダイオード30とを備えている。
【0020】
ボックス本体61は合成樹脂製であって、図示しない太陽電池モジュールの裏面(非受光面)に取り付けられる矩形板状の基壁62と、基壁62の外周から立ち上がる枠板状の周壁63とを有している。基壁62の前端と周壁63との間には開口部64が区画して形成されている。ボックス本体61内には、開口部64を通して太陽電池モジュール側から図示しないインターコネクタが挿入され、インターコネクタの先端部が各端子板10に半田付けにより接続されるようになっている。本実施形態の場合、開口部64の開口面積は基壁62の表面積よりも大きくされている。
【0021】
周壁63の左右両側には、一対の筒部65が両側方に突出して形成されている。両筒部65には、ケーブル80を挿入可能な挿入孔66が貫通して形成されている。ケーブル80は両筒部65の挿入孔66内に外側から挿入され、挿入されたケーブル80の先端部はボックス本体61内の開口部64に臨むようになっている。ケーブル80の先端部には、被覆部81の除去によって芯線部82が露出して配置されている。
【0022】
基壁62には、4つの端子板10が横並びで載置されている。各端子板10は周知の固定手段を介して基壁62に固定され、かつ各端子板10の略前半部は開口部64内に突出して配置されている。各端子板10のうち、左右両端部に位置するものは、ケーブル80が接続されるケーブル接続端子10Aとされ、両ケーブル接続端子10Aの間に位置するものは、ケーブル80が接続されない中継端子10Bとされている。両ケーブル接続端子10Aの側縁には、バレル部11が側方に突出して形成されている。バレル部11は、オープンバレル状をなし、筒部65と対向して配置される。また、バレル部11は、筒部65を貫通したケーブル80の芯線部82に圧着して接続される。
【0023】
各端子板10の略後半部には、図示向かって右端のケーブル接続端子10Aを除いて、幅方向に拡張された拡張部12が形成されている。拡張部12には、ダイオード30の本体部31(後述する)が設置されるようになっている。
【0024】
ダイオード30は、逆バイアスの電流をバイパスするバイパスダイオードであって、図2及び図3に示すように、矩形ブロック状の本体部31と、本体部31の側面から側方に突出するピン状の一対のリード部32とからなる。本体部31は、発熱部分となる整流素子の周りをモールド樹脂で被覆してなるものである。本体部31の底面には平板部33が露出しており、本体部31を挟んで両リード部32が突出する側とは反対側に、平板部33の端部が突出して配置されている。そして、両リード部32の先端部35は、本体部31の側面から離間した位置で、かつ本体部31の底面とほぼ同じ高さ位置に配置されている。なお、平板部33及び両リード部32は、ダイオード30の電極を構成している。
【0025】
さて、互いに隣接する端子板10のうち、一方の端子板を第1端子板13とし、他方の端子板を第2端子板14とした場合に、第1端子板13には、ダイオード30の本体部31を位置決めする第1位置決め部15が設けられ、第2端子板14には、ダイオード30の両リード部32を位置決めする第2位置決め部16が設けられている。第1位置決め部15は、第1端子板13の拡張部12に形成され、第2位置決め部16は、第2端子板14において隣接する第1端子板13の拡張部12と対向する端部17に形成されている。
【0026】
そして、第1位置決め部15は、図4及び図5に示すように、第1端子板13の拡張部12の表面を叩いて凹状に形成され、第1端子板13の板厚範囲で形成されている。第1位置決め部15内には、本体部31の底部34が位置決め状態で嵌め込まれるようになっている。具体的には、第1位置決め部15は、本体部31の底部34の外形状に沿った角凹状をなし、平面視四角形の底壁18と底壁18の4辺から立ち上がる囲い壁19とで区画されている。底壁18はほぼ水平面とされ、囲い壁19はほぼ垂直面とされている。底壁18には本体部31の底面が当接して配置され、底壁18の表面積は本体部31の底面の表面積より若干大きくされている。また、囲い壁19には本体部31の底部34の外周4面が対面して配置され、囲い壁19と本体部31の外周4面との間に若干隙間があくように設定されている。
【0027】
第2位置決め部16は、第2端子板14の端部17の表面を叩いて凹状に形成され、第2端子板14の板厚範囲で形成されている。第2位置決め部16内には、両リード部32の先端部35が位置決め状態で嵌め込まれるようになっている。具体的には、第2位置決め部16は、両リード部32の先端部35の外形状に沿った幅方向に細長い形状をなし、前後一対の凹溝21によって形成されている。両凹溝21は、幅方向に延びて第2端子板14の端面に開口する形態とされ、第2位置決め部16と幅方向で対向して配置されている。そして、凹溝21は、リード部32の先端部35の底面が当接して配置される内底面22と、両リード部32の先端部35の外周のうち第1位置決め部15側を除く外周3面が対面して配置される内側面23とで区画されている。
【0028】
なお、本実施形態の場合、図1に示すように、中継端子10Bには、第1、第2位置決め部15、16がいずれも設けられ、図示向かって左端のケーブル接続端子10Aには、第1位置決め部15のみが設けられ、図示向かって右端のケーブル接続端子10Aには、第2位置決め部16のみが設けられている。そして、各第1、第2位置決め部15、16は、幅方向に同軸上に並んで配置されている。また、図4に示すように、第1、第2位置決め部15、16内には半田40が供給され、半田40を介して、本体部31が第1位置決め部15内に接続固定されるとともに、両リード部32が第2位置決め部16内に接続固定されるようになっている。
【0029】
次に、本実施形態に係るダイオード30の取付構造の作用を説明する。
各端子板10には、ダイオード30が支持され、第1位置決め部15内には、ダイオード30の本体部31の底部34が位置決め状態で収容され、かつ、第2位置決め部16内にはダイオード30の両リード部32が位置決め状態で収容される。これにより、本体部31の底部34の外周が第1位置決め部15の囲い壁19に全周に亘って取り囲まれ、かつ、両リード部32の先端部35の外周が第1位置決め部15側を除いて第2位置決め部16の内側面23に取り囲まれる。また、各端子板10にダイオード30が支持されるに先立ち、第1位置決め部15の底壁18及び第2位置決め部16の内底面22には、予めペースト半田40が塗布される。
【0030】
次いで、図示しないリフロー炉に上記の各端子板10を通し、ペースト半田40を融解させる。リフロー炉に各端子板10を通す際には、第1、第2位置決め部15、16によって各ダイオード30の位置ずれが阻止される。また、ペースト半田40が融解されると、図2に示すように、第1位置決め部15では、囲い壁19及び本体部31の底部34の外周に沿って半田40が上がり、囲い壁19と本体部31の底部34の外周との間に充分な半田40が確保される。同様に、第2位置決め部16内でも、内側面23及び両リード部32の先端部35の外周に沿って半田40が上がり、内側面23と両リード部32の先端部35の外周との間に充分な半田40が確保される。
【0031】
一方、仮に、各端子板10に第1、第2位置決め部15、16が形成されていないと、図7に示すように、ダイオード30の周りを取り囲むものがないため、半田上がりが悪く、各端子板10に対するダイオード30の半田付け強度を確保できないおそれがある。その点、本実施形態のように、ダイオード30の周りが第1、第2位置決め部15、16によって取り囲まれていれば、半田上がりが改善され、ダイオード30の半田付け強度が高められる。
【0032】
なお、本実施形態の場合、各端子板10はボックス本体61の基壁62に載置固定され、両ケーブル接続端子10Aのバレル部11には両ケーブル80の芯線部82が圧着接続される。そして、ボックス本体61は、太陽電池モジュールの裏面に載せられ、それに伴い開口部64を通してインターコネクタが引き込まれ、各端子板10の前端部にインターコネクタの先端部が半田接続される。また、ボックス本体61は太陽電池モジュールの裏面に接着材等の周知の固定手段を介して固定される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、端子板10の第1位置決め部15にダイオード30の本体部31を載せると、本体部31の周りが第1位置決め部15によって取り囲まれて、ダイオード30が位置決めされるため、半田付け工程でダイオード30が位置ずれするのが防止される。この場合に、第1位置決め部15が本体部31の底部34の外周と対向する囲い壁19を有し、半田40が本体部31の底部34の外周及び囲い壁19に付着するため、良好な半田フィレットが形成され、半田接続強度が向上する。しかも、第1位置決め部15が本体部31の底部34の外周を全周に亘って取り囲む形態とされているため、ダイオード30が本体部31の表面に沿って位置ずれするのが確実に防止される。
【0034】
また、第1位置決め部15が端子板10の表面において本体部31の底部34を嵌め込み可能な凹状の形態をなしているため、プレス加工で第1位置決め部15を容易に成形することができる。
【0035】
また、第1位置決め部15が第1端子板13において本体部31を位置決めし、第2位置決め部16が第2端子板14において両リード部32を位置決めするため、ダイオード30の位置ずれがより確実に防止される。
【0036】
<実施形態2>
図6は、本発明の実施形態2をあらわす。実施形態2では、第1位置決め部15Aの底壁18Aの内部形状が実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0037】
第1位置決め部15Aの底壁18Aには、ガス抜き孔27が形成されている。ガス抜き孔27は、底壁18において前後方向にスリット状に細長く延びて、第1端子板13を板厚方向に貫通する形態とされている。
【0038】
実施形態2によれば、リフロー過程で溶融状態の半田40内に発生したガスがガス抜き孔27を通して外部に抜けるため、ボイドが発生し難く、半田付けの信頼性が向上する。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)第1端子板の表面に囲繞壁が立設され、ダイオードの本体部の周りが囲繞壁によって取り囲まれる形態であってもよい。
(2)ダイオードの両リード部を位置決めする第2位置決め部は省略されてもよい。
(3)ダイオードは、端子機能を有さず、放熱機能のみを有する放熱板に支持されるものであってもよい。
(4)ダイオードは、整流素子の周りを樹脂封止しないベアチップタイプのものであってもよい。
(5)実施形態2のガス抜き孔は、第1位置決め部の底壁に複数設けられていてもよい。
(6)本発明は、太陽電池モジュール用端子ボックスに限定されず、放熱板にダイオードを半田付けする構造のものに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…端子板
13…第1端子板(一方の端子板)
14…第2端子板(他方の端子板)
15…第1位置決め部(位置決め部)
16…第2位置決め部(別の位置決め部)
19…囲い壁
30…ダイオード
31…本体部
32…リード部
34…底部
35…先端部(リード部の先端部)
40…半田
60…太陽電池モジュール用端子ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードの周りを取り囲むことにより、前記ダイオードを位置決めし、かつ内部に半田が供給される位置決め部を有する放熱板を備えたダイオードの取付構造。
【請求項2】
前記位置決め部が前記ダイオードの底部の外周と対向する囲い壁を有し、前記半田が前記底部の外周及び前記囲い壁に付着していることを特徴とする請求項1記載のダイオードの取付構造。
【請求項3】
前記位置決め部が前記放熱板の表面において前記ダイオードの底部に沿って凹む形態とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のダイオードの取付構造。
【請求項4】
前記ダイオードが、発熱部を有する本体部と、前記本体部から延びるリード部とからなり、前記放熱板が前記ダイオードを介して互いに接続される2つの端子板によって構成され、前記2つの端子板のうち、一方の端子板に、前記本体部を位置決めする前記位置決め部が設けられ、他方の端子板に、前記リード部の先端部を位置決めする別の位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のダイオードの取付構造。
【請求項5】
前記位置決め部が、前記本体部の底部の外周を全周に亘って取り囲む形態とされていることを特徴とする請求項4記載のダイオードの取付構造。
【請求項6】
前記別の位置決め部が、前記リード部の先端部の外周を、前記本体部と対向する側を除いて取り囲む形態とされていることを特徴とする請求項5記載のダイオードの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115338(P2013−115338A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262148(P2011−262148)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】