ダイオード
【課題】 電流容量が大きいダイオードを提供する。
【解決手段】 ダイオードであって、半導体基板を有している。半導体基板の一方の表面にアノード電極が形成されている。半導体基板に、前記一方の表面に露出しており、アノード電極と導通しているp型のアノード領域と、アノード領域に接しているn型のカソード領域が形成されている。前記一方の表面にアノード領域が露出している露出範囲内に、アノード電極とアノード領域が導通しているコンタクト領域と、アノード電極とアノード領域が導通していない非コンタクト領域が存在している。コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、露出範囲の外周部よりも露出範囲の中央部で大きい。
【解決手段】 ダイオードであって、半導体基板を有している。半導体基板の一方の表面にアノード電極が形成されている。半導体基板に、前記一方の表面に露出しており、アノード電極と導通しているp型のアノード領域と、アノード領域に接しているn型のカソード領域が形成されている。前記一方の表面にアノード領域が露出している露出範囲内に、アノード電極とアノード領域が導通しているコンタクト領域と、アノード電極とアノード領域が導通していない非コンタクト領域が存在している。コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、露出範囲の外周部よりも露出範囲の中央部で大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、縦型のダイオードが開示されている。ダイオードに電流を流すと、ダイオードが発熱する。したがって、ダイオードを使用する際には、ダイオードの温度が定格温度(半導体基板が耐え得る最大温度)を超えないようにダイオードに流す電流を制限する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−326900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流容量が大きいダイオードに対するニーズが高まっている。したがって、本明細書では、従来よりも電流容量が大きいダイオードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するダイオードは、半導体基板を有する。半導体基板の一方の表面には、アノード電極が形成されている。半導体基板には、前記一方の表面に露出しており、アノード電極と導通しているp型のアノード領域と、アノード領域に接しているn型のカソード領域が形成されている。前記一方の表面にアノード領域が露出している露出範囲内に、アノード電極とアノード領域が導通しているコンタクト領域と、アノード電極とアノード領域が導通していない非コンタクト領域が存在している。コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、露出範囲の外周部よりも露出範囲の中央部で大きい。
【0006】
なお、本明細書において「半導体基板の表面に露出している」とは、半導体基板の表面に形成されている半導体以外の部分(電極や絶縁層等)を無視したときに対象の領域が半導体基板の表面に露出していることを意味する。したがって、対象の領域が電極や絶縁層に覆われている場合でも、「半導体基板の表面に露出している」に該当する。
【0007】
このダイオードでは、アノード領域が半導体基板の表面に露出している露出範囲内において、その外周部よりもその中央部で比率Sc/Snが大きい。すなわち、外周部では非コンタクト領域の比率が大きい。このため、外周部では、非コンタクト領域によってアノード領域からアノード電極への電子の流れが阻害され、外周部近傍のカソード領域の電子濃度が上昇する。すると、これに応じて外周部近傍のカソード領域のホール濃度が上昇する。これによって、外周部において伝導度変調現象が顕著に生じ、外周部の電流密度が高くなる。外周部は中央部よりも放熱が生じ易いので、中央部よりも温度が上昇し難い。したがって、外周部の電流密度が高くても、外周部の温度上昇は抑制される。また、外周部の電流密度が高くなることによって、このダイオードでは、中央部の温度が定格温度に達したときに、外周部に流れる電流が従来よりも大きくなる。したがって、このダイオードは、電流容量が大きい。
【0008】
上述したダイオードは、非コンタクト領域内の半導体基板の表面に絶縁膜が形成されていることが好ましい。また、前記絶縁膜が、アノード電極に覆われていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ダイオード10の縦断面図(図2のI−I線における断面図)。
【図2】ダイオード10の平面図。
【図3】変形例1のダイオードの図1に対応する縦断面図。
【図4】変形例2のダイオードの図2に対応する平面図。
【図5】変形例3のダイオードの図2に対応する平面図。
【図6】変形例4のダイオードの図2に対応する平面図。
【図7】変形例5のダイオードの図2に対応する平面図。
【図8】変形例6のダイオードの図2に対応する平面図。
【図9】変形例7のダイオードの図2に対応する平面図。
【図10】変形例8のダイオードの図2に対応する平面図。
【図11】変形例9のダイオードの図1に対応する縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係るダイオード10の縦断面図を示しており、図2は、ダイオード10の平面図を示している。なお、図2は、後述するアノード領域20、絶縁膜50及びガードリング40の間の位置関係を示すために、後述するアノード電極80、絶縁膜60及びガードリング電極62の図示を省略している。また、図2では、図の見易さを考慮して、絶縁膜50とガードリング40をハッチングにより示している。図示するように、ダイオード10は、半導体基板12を備えている。半導体基板12の内部には、p型のアノード領域20とn型のカソード領域30が形成されている。アノード領域20は、半導体基板12の略中央であって、半導体基板12の上面14に露出する範囲に形成されている。アノード領域20は、高濃度にp型不純物を含有するp型領域である。カソード領域30は、ドリフト領域32と高濃度カソード領域34を備えている。ドリフト領域32は、アノード領域20の下方及び側方に形成されている。ドリフト領域32は、低濃度にn型不純物を含有するn型領域である。高濃度カソード領域34は、ドリフト領域32の下方に形成されている。高濃度カソード領域34は、半導体基板12の下面16に露出する範囲に形成されている。高濃度カソード領域34は、高濃度にn型不純物を含有するn型領域である。また、アノード領域20の側方には、3つのガードリング40が形成されている。ガードリング40は、p型領域である。各ガードリング40は、半導体基板12の上面14に露出するように形成されている。図2に示すように、各ガードリング40は、アノード領域20の周囲を一巡する様に形成されている。ガードリング40は、ドリフト領域32によって互いに分離されている。また、ガードリング40は、ドリフト領域32によってアノード領域20から分離されている。
【0011】
アクティブ領域100は、アノード領域20が半導体基板12の上面14に露出している露出領域である。通電時には、アクティブ領域100内の半導体基板12に主に電流が流れる。アクティブ領域100の外側の外周領域110内の半導体基板12には、通電時にほとんど電流が流れない。
【0012】
半導体基板12の上面14のうちの、アクティブ領域100の外周部100aには、複数の絶縁膜50が形成されている。各絶縁膜50は、互いに分離されている。また、各絶縁膜50は、外周領域110内の絶縁膜60から分離されている。半導体基板12の上面14には、アクティブ領域100全体に亘ってアノード電極80が形成されている。アノード電極80は、各絶縁膜50を覆っている。アノード電極80とアノード領域20とが接している領域は、アノード電極80がアノード領域20に対してオーミック接続されているコンタクト領域である。絶縁膜50が形成されている領域は、非コンタクト領域である。アクティブ領域100の中央部100bには、絶縁膜50(すなわち、非コンタクト領域)が形成されていない。
【0013】
半導体基板12の上面14のうちの、外周領域110には、絶縁膜60が形成されている。絶縁膜60は、ガードリング40の上部を除く領域を覆うように形成されている。ガードリング40の上部には、ガードリング電極62が形成されている。
【0014】
半導体基板12の下面16には、カソード電極82が形成されている。カソード電極82は、高濃度カソード領域34に対してオーミック接続されている。
【0015】
次に、ダイオード10の動作について説明する。アノード電極80とカソード電極82の間にアノード電極80がプラスとなる電圧を印加すると、電子が、カソード電極82から、高濃度カソード領域34、ドリフト領域32、及び、アノード領域20を通って、アノード電極80へ流れる。また、ホールが、アノード電極80から、アノード領域20、ドリフト領域32、及び、高濃度カソード領域34を通って、カソード電極82へ流れる。このため、電流が、アノード電極80からカソード電極82へ流れる。ドリフト領域32は、電子とホールが多量に存在する状態となる。このため、伝導度変調現象によってドリフト領域32の電気抵抗が小さくなる。このため、ドリフト領域32で生じる損失が抑制され、電流が低損失でダイオード10を流れることができる。
【0016】
上述したように、アクティブ領域100の外周部100aには、絶縁膜50が形成されている。このため、外周部100aでは、電子がアノード領域20からアノード電極80へ流れることが阻害される。これにより、絶縁膜50近傍のドリフト領域32内の電子濃度が高くなる。すると、中性条件を満たすようにアノード領域20から外周部100a内のドリフト領域32にホールが流入し、外周部100a内のドリフト領域32内のホール濃度が高くなる。このため、外周部100a内のドリフト領域32の電気抵抗がより低くなる。一方、中央部100bには絶縁膜50が形成されていないので、中央部100b内のドリフト領域32ではこのような効果は得られない。すなわち、外周部100a内のドリフト領域32の電気抵抗は、中央部100b内のドリフト領域32の電気抵抗よりも小さくなる。したがって、外周部100aでは、中央部100bよりも電流密度が高くなる。
【0017】
以上に説明したように、実施形態のダイオード10では、アクティブ領域100の外周部100aに絶縁膜50が形成されており、アクティブ領域100の中央部100bに絶縁膜50が形成されていない。すなわち、コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、外周部100aよりも中央部100bで大きい。このため、外周部100a内の電流密度が、中央部100b内の電流密度よりも高くなる。外周部100aは、通電時に中央部100bよりも温度上昇し難いので、外周部100aの電流密度が高くても温度の問題は生じない。また、このように中央部100bよりも外周部100aの電流密度を高くすることで、電流容量を従来よりも増大させることができる。例えば、アクティブ領域の中央部が定格温度にあるときのダイオードの動作を実施形態のダイオードと従来のダイオードとで比較すると、中央部を流れる電流は何れのダイオードでも略等しいが、外周部を流れる電流は実施形態のダイオードの方が従来のダイオードよりも大きくなる。したがって、ダイオード全体に流すことができる電流は、実施形態のダイオードの方が従来のダイオードよりも大きくなる。
【0018】
なお、上述した実施形態では、絶縁膜50がアノード電極80に覆われていたが、図3に示すように絶縁膜50がアノード電極80に覆われていなくてもよい。
【0019】
また、上述した実施形態では、外周部100a内に長方形の絶縁膜50が形成されていたが、図4に示すように円形の絶縁膜50が形成されていてもよい。このように、より細かい絶縁膜50を多数形成することで、アクティブ領域100の外周部100aにおける電流密度の偏りを抑制することができる。また、図5に示すように長いストライプ状の絶縁膜50が形成されていてもよい。また、また、図6に示すように、アクティブ領域100の角部にのみ絶縁膜50が形成されていてもよい。
【0020】
また、上述した実施形態では、中央部100b内に絶縁膜50が形成されていなかったが、図7に示すように、中央部100b内に絶縁膜50が形成されていてもよい。この場合にも、コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、外周部100aよりも中央部100bで大きければ、実施形態のダイオード10と同様の効果を得ることができる。
【0021】
また、上述した実施形態では、アクティブ領域100が略正方形であったが、図8に示すようにアクティブ領域100が長方形であってもよい。また、図9に示すように、半導体基板12内においてアクティブ領域100が偏った位置に形成されていてもよい。この場合、ガードリング40の外側の領域は、無効領域であってもよいし、半導体素子が形成されている領域であってもよい。
【0022】
また、ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられると、順電圧印加時にドリフト領域内に存在していたキャリアが各電極に排出される。このため、その切り換えのタイミングにおいて、ダイオードに瞬間的に逆電流が流れる。この逆電流は、アクティブ領域の角部に集中し易い。また、逆電流は、順電圧印加時に電流密度が高い領域ほど流れ易い。したがって、図10に示すように、アクティブ領域100の角部を避けて絶縁膜50を形成してもよい。すなわち、アクティブ領域100の角部における比率Sc/Snを、その角部以外の外周部100aにおける比率Sc/Snより大きくしてもよい。このように、アクティブ領域100の角部を避けて絶縁膜50を形成すると、順電圧印加時における角部の電流密度が低くなる。このため、逆電圧印加時に角部に逆電流が流れ難くなる。これによって、角部に極端に大きい逆電流が流れることが抑制される。
【0023】
また、上述した実施形態では、アノード領域20の周囲にガードリング40が形成されていたが、図11に示すように、リサーフ領域22が形成されていてもよい。なお、半導体基板12の上面14に露出しているp型領域のうち、アノード電極80にオーミック接続されている領域(アノード電極80に対してオーミック接続される濃度のp型不純物を有する領域)がアノード領域20であるので、リサーフ領域22が形成されている領域は外周領域110内に存在する。
【0024】
また、アクティブ領域の中央部と外周部の境界は任意に定めることができるが、半導体基板内の温度に基づいて定めてもよい。例えば、アクティブ領域の表面温度分布を測定し、その中の最高温度と最低温度の中間値よりも高い温度の領域を中央部としてもよい。また、アクティブ領域の寸法に基づいて、中央部を定めてもよい。例えば、アクティブ領域の端部よりもアクティブ領域の中心に近い位置を中央部としてもよい。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
10:ダイオード
12:半導体基板
14:上面
16:下面
20:アノード領域
22:リサーフ領域
30:カソード領域
32:ドリフト領域
34:高濃度カソード領域
40:ガードリング
50:絶縁膜
60:絶縁膜
62:ガードリング電極
80:アノード電極
82:カソード電極
100:アクティブ領域
100a:外周部
100b:中央部
110:外周領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、縦型のダイオードが開示されている。ダイオードに電流を流すと、ダイオードが発熱する。したがって、ダイオードを使用する際には、ダイオードの温度が定格温度(半導体基板が耐え得る最大温度)を超えないようにダイオードに流す電流を制限する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−326900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流容量が大きいダイオードに対するニーズが高まっている。したがって、本明細書では、従来よりも電流容量が大きいダイオードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するダイオードは、半導体基板を有する。半導体基板の一方の表面には、アノード電極が形成されている。半導体基板には、前記一方の表面に露出しており、アノード電極と導通しているp型のアノード領域と、アノード領域に接しているn型のカソード領域が形成されている。前記一方の表面にアノード領域が露出している露出範囲内に、アノード電極とアノード領域が導通しているコンタクト領域と、アノード電極とアノード領域が導通していない非コンタクト領域が存在している。コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、露出範囲の外周部よりも露出範囲の中央部で大きい。
【0006】
なお、本明細書において「半導体基板の表面に露出している」とは、半導体基板の表面に形成されている半導体以外の部分(電極や絶縁層等)を無視したときに対象の領域が半導体基板の表面に露出していることを意味する。したがって、対象の領域が電極や絶縁層に覆われている場合でも、「半導体基板の表面に露出している」に該当する。
【0007】
このダイオードでは、アノード領域が半導体基板の表面に露出している露出範囲内において、その外周部よりもその中央部で比率Sc/Snが大きい。すなわち、外周部では非コンタクト領域の比率が大きい。このため、外周部では、非コンタクト領域によってアノード領域からアノード電極への電子の流れが阻害され、外周部近傍のカソード領域の電子濃度が上昇する。すると、これに応じて外周部近傍のカソード領域のホール濃度が上昇する。これによって、外周部において伝導度変調現象が顕著に生じ、外周部の電流密度が高くなる。外周部は中央部よりも放熱が生じ易いので、中央部よりも温度が上昇し難い。したがって、外周部の電流密度が高くても、外周部の温度上昇は抑制される。また、外周部の電流密度が高くなることによって、このダイオードでは、中央部の温度が定格温度に達したときに、外周部に流れる電流が従来よりも大きくなる。したがって、このダイオードは、電流容量が大きい。
【0008】
上述したダイオードは、非コンタクト領域内の半導体基板の表面に絶縁膜が形成されていることが好ましい。また、前記絶縁膜が、アノード電極に覆われていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ダイオード10の縦断面図(図2のI−I線における断面図)。
【図2】ダイオード10の平面図。
【図3】変形例1のダイオードの図1に対応する縦断面図。
【図4】変形例2のダイオードの図2に対応する平面図。
【図5】変形例3のダイオードの図2に対応する平面図。
【図6】変形例4のダイオードの図2に対応する平面図。
【図7】変形例5のダイオードの図2に対応する平面図。
【図8】変形例6のダイオードの図2に対応する平面図。
【図9】変形例7のダイオードの図2に対応する平面図。
【図10】変形例8のダイオードの図2に対応する平面図。
【図11】変形例9のダイオードの図1に対応する縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係るダイオード10の縦断面図を示しており、図2は、ダイオード10の平面図を示している。なお、図2は、後述するアノード領域20、絶縁膜50及びガードリング40の間の位置関係を示すために、後述するアノード電極80、絶縁膜60及びガードリング電極62の図示を省略している。また、図2では、図の見易さを考慮して、絶縁膜50とガードリング40をハッチングにより示している。図示するように、ダイオード10は、半導体基板12を備えている。半導体基板12の内部には、p型のアノード領域20とn型のカソード領域30が形成されている。アノード領域20は、半導体基板12の略中央であって、半導体基板12の上面14に露出する範囲に形成されている。アノード領域20は、高濃度にp型不純物を含有するp型領域である。カソード領域30は、ドリフト領域32と高濃度カソード領域34を備えている。ドリフト領域32は、アノード領域20の下方及び側方に形成されている。ドリフト領域32は、低濃度にn型不純物を含有するn型領域である。高濃度カソード領域34は、ドリフト領域32の下方に形成されている。高濃度カソード領域34は、半導体基板12の下面16に露出する範囲に形成されている。高濃度カソード領域34は、高濃度にn型不純物を含有するn型領域である。また、アノード領域20の側方には、3つのガードリング40が形成されている。ガードリング40は、p型領域である。各ガードリング40は、半導体基板12の上面14に露出するように形成されている。図2に示すように、各ガードリング40は、アノード領域20の周囲を一巡する様に形成されている。ガードリング40は、ドリフト領域32によって互いに分離されている。また、ガードリング40は、ドリフト領域32によってアノード領域20から分離されている。
【0011】
アクティブ領域100は、アノード領域20が半導体基板12の上面14に露出している露出領域である。通電時には、アクティブ領域100内の半導体基板12に主に電流が流れる。アクティブ領域100の外側の外周領域110内の半導体基板12には、通電時にほとんど電流が流れない。
【0012】
半導体基板12の上面14のうちの、アクティブ領域100の外周部100aには、複数の絶縁膜50が形成されている。各絶縁膜50は、互いに分離されている。また、各絶縁膜50は、外周領域110内の絶縁膜60から分離されている。半導体基板12の上面14には、アクティブ領域100全体に亘ってアノード電極80が形成されている。アノード電極80は、各絶縁膜50を覆っている。アノード電極80とアノード領域20とが接している領域は、アノード電極80がアノード領域20に対してオーミック接続されているコンタクト領域である。絶縁膜50が形成されている領域は、非コンタクト領域である。アクティブ領域100の中央部100bには、絶縁膜50(すなわち、非コンタクト領域)が形成されていない。
【0013】
半導体基板12の上面14のうちの、外周領域110には、絶縁膜60が形成されている。絶縁膜60は、ガードリング40の上部を除く領域を覆うように形成されている。ガードリング40の上部には、ガードリング電極62が形成されている。
【0014】
半導体基板12の下面16には、カソード電極82が形成されている。カソード電極82は、高濃度カソード領域34に対してオーミック接続されている。
【0015】
次に、ダイオード10の動作について説明する。アノード電極80とカソード電極82の間にアノード電極80がプラスとなる電圧を印加すると、電子が、カソード電極82から、高濃度カソード領域34、ドリフト領域32、及び、アノード領域20を通って、アノード電極80へ流れる。また、ホールが、アノード電極80から、アノード領域20、ドリフト領域32、及び、高濃度カソード領域34を通って、カソード電極82へ流れる。このため、電流が、アノード電極80からカソード電極82へ流れる。ドリフト領域32は、電子とホールが多量に存在する状態となる。このため、伝導度変調現象によってドリフト領域32の電気抵抗が小さくなる。このため、ドリフト領域32で生じる損失が抑制され、電流が低損失でダイオード10を流れることができる。
【0016】
上述したように、アクティブ領域100の外周部100aには、絶縁膜50が形成されている。このため、外周部100aでは、電子がアノード領域20からアノード電極80へ流れることが阻害される。これにより、絶縁膜50近傍のドリフト領域32内の電子濃度が高くなる。すると、中性条件を満たすようにアノード領域20から外周部100a内のドリフト領域32にホールが流入し、外周部100a内のドリフト領域32内のホール濃度が高くなる。このため、外周部100a内のドリフト領域32の電気抵抗がより低くなる。一方、中央部100bには絶縁膜50が形成されていないので、中央部100b内のドリフト領域32ではこのような効果は得られない。すなわち、外周部100a内のドリフト領域32の電気抵抗は、中央部100b内のドリフト領域32の電気抵抗よりも小さくなる。したがって、外周部100aでは、中央部100bよりも電流密度が高くなる。
【0017】
以上に説明したように、実施形態のダイオード10では、アクティブ領域100の外周部100aに絶縁膜50が形成されており、アクティブ領域100の中央部100bに絶縁膜50が形成されていない。すなわち、コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、外周部100aよりも中央部100bで大きい。このため、外周部100a内の電流密度が、中央部100b内の電流密度よりも高くなる。外周部100aは、通電時に中央部100bよりも温度上昇し難いので、外周部100aの電流密度が高くても温度の問題は生じない。また、このように中央部100bよりも外周部100aの電流密度を高くすることで、電流容量を従来よりも増大させることができる。例えば、アクティブ領域の中央部が定格温度にあるときのダイオードの動作を実施形態のダイオードと従来のダイオードとで比較すると、中央部を流れる電流は何れのダイオードでも略等しいが、外周部を流れる電流は実施形態のダイオードの方が従来のダイオードよりも大きくなる。したがって、ダイオード全体に流すことができる電流は、実施形態のダイオードの方が従来のダイオードよりも大きくなる。
【0018】
なお、上述した実施形態では、絶縁膜50がアノード電極80に覆われていたが、図3に示すように絶縁膜50がアノード電極80に覆われていなくてもよい。
【0019】
また、上述した実施形態では、外周部100a内に長方形の絶縁膜50が形成されていたが、図4に示すように円形の絶縁膜50が形成されていてもよい。このように、より細かい絶縁膜50を多数形成することで、アクティブ領域100の外周部100aにおける電流密度の偏りを抑制することができる。また、図5に示すように長いストライプ状の絶縁膜50が形成されていてもよい。また、また、図6に示すように、アクティブ領域100の角部にのみ絶縁膜50が形成されていてもよい。
【0020】
また、上述した実施形態では、中央部100b内に絶縁膜50が形成されていなかったが、図7に示すように、中央部100b内に絶縁膜50が形成されていてもよい。この場合にも、コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、外周部100aよりも中央部100bで大きければ、実施形態のダイオード10と同様の効果を得ることができる。
【0021】
また、上述した実施形態では、アクティブ領域100が略正方形であったが、図8に示すようにアクティブ領域100が長方形であってもよい。また、図9に示すように、半導体基板12内においてアクティブ領域100が偏った位置に形成されていてもよい。この場合、ガードリング40の外側の領域は、無効領域であってもよいし、半導体素子が形成されている領域であってもよい。
【0022】
また、ダイオードに印加される電圧が順電圧から逆電圧に切り換えられると、順電圧印加時にドリフト領域内に存在していたキャリアが各電極に排出される。このため、その切り換えのタイミングにおいて、ダイオードに瞬間的に逆電流が流れる。この逆電流は、アクティブ領域の角部に集中し易い。また、逆電流は、順電圧印加時に電流密度が高い領域ほど流れ易い。したがって、図10に示すように、アクティブ領域100の角部を避けて絶縁膜50を形成してもよい。すなわち、アクティブ領域100の角部における比率Sc/Snを、その角部以外の外周部100aにおける比率Sc/Snより大きくしてもよい。このように、アクティブ領域100の角部を避けて絶縁膜50を形成すると、順電圧印加時における角部の電流密度が低くなる。このため、逆電圧印加時に角部に逆電流が流れ難くなる。これによって、角部に極端に大きい逆電流が流れることが抑制される。
【0023】
また、上述した実施形態では、アノード領域20の周囲にガードリング40が形成されていたが、図11に示すように、リサーフ領域22が形成されていてもよい。なお、半導体基板12の上面14に露出しているp型領域のうち、アノード電極80にオーミック接続されている領域(アノード電極80に対してオーミック接続される濃度のp型不純物を有する領域)がアノード領域20であるので、リサーフ領域22が形成されている領域は外周領域110内に存在する。
【0024】
また、アクティブ領域の中央部と外周部の境界は任意に定めることができるが、半導体基板内の温度に基づいて定めてもよい。例えば、アクティブ領域の表面温度分布を測定し、その中の最高温度と最低温度の中間値よりも高い温度の領域を中央部としてもよい。また、アクティブ領域の寸法に基づいて、中央部を定めてもよい。例えば、アクティブ領域の端部よりもアクティブ領域の中心に近い位置を中央部としてもよい。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
10:ダイオード
12:半導体基板
14:上面
16:下面
20:アノード領域
22:リサーフ領域
30:カソード領域
32:ドリフト領域
34:高濃度カソード領域
40:ガードリング
50:絶縁膜
60:絶縁膜
62:ガードリング電極
80:アノード電極
82:カソード電極
100:アクティブ領域
100a:外周部
100b:中央部
110:外周領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードであって、
半導体基板を有しており、
半導体基板の一方の表面にアノード電極が形成されており、
半導体基板には、
前記一方の表面に露出しており、アノード電極と導通しているp型のアノード領域と、
アノード領域に接しているn型のカソード領域、
が形成されており、
前記一方の表面にアノード領域が露出している露出範囲内には、アノード電極とアノード領域が導通しているコンタクト領域と、アノード電極とアノード領域が導通していない非コンタクト領域が存在しており、
コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、露出範囲の外周部よりも露出範囲の中央部で大きい、
ことを特徴とするダイオード。
【請求項2】
非コンタクト領域内の半導体基板の表面に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
前記絶縁膜が、アノード電極に覆われていないことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項1】
ダイオードであって、
半導体基板を有しており、
半導体基板の一方の表面にアノード電極が形成されており、
半導体基板には、
前記一方の表面に露出しており、アノード電極と導通しているp型のアノード領域と、
アノード領域に接しているn型のカソード領域、
が形成されており、
前記一方の表面にアノード領域が露出している露出範囲内には、アノード電極とアノード領域が導通しているコンタクト領域と、アノード電極とアノード領域が導通していない非コンタクト領域が存在しており、
コンタクト領域の面積Scと非コンタクト領域の面積Snとの比率Sc/Snが、露出範囲の外周部よりも露出範囲の中央部で大きい、
ことを特徴とするダイオード。
【請求項2】
非コンタクト領域内の半導体基板の表面に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
前記絶縁膜が、アノード電極に覆われていないことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−16652(P2013−16652A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148531(P2011−148531)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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