Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
ダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤
説明

ダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤

【課題】 生産性の低下や作業環境の悪化を招くことなく、燃焼も抑えられ、且つ優れた潤滑性を発揮するダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤を提供すること。
【解決手段】 鉱物油、合成炭化水素、油脂、脂肪酸エステルから選ばれる1または2以上の化合物である成分(a)と、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である成分(b)と、合成スルホン酸のアルカリ金属塩または石油スルホン酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である成分(c)と、微粒子シリカと、水とを含む、ダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムなどの金属材料の溶湯(溶融金属)をダイカスト型内に射出するためのプランジャーと、このプランジャーが進退するスリーブとの間に供給される潤滑剤であるダイカスト用プランジャー潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム等の金属材料のダイカストにおいては、ダイカスト型内に溶湯を射出するためのプランジャーとそのプランジャーが進退するスリーブとの摺動面でのスリーブの摩耗を低減するとともにプランジャーの射出速度を安定化させるため、プランジャーとスリーブとの間(特にスリーブの内壁)にプランジャー潤滑剤が供給される。潤滑剤として、黒鉛粉末やタルク等の固体を油に分散した油性潤滑剤が良く使用される。このような固体を分散した油性潤滑材は潤滑性に優れる。
【0003】
しかしながら、固体分散した油性潤滑剤を使用した場合、残渣物(特に黒色残渣物)がダイカスト装置周りに付着する。この残渣物は油分および黒鉛等を多量に含むために洗浄性が悪く、それ故作業環境が悪化するという問題があった。また油性潤滑剤という特性上、スリーブ内にこの油性潤滑剤を供給した後に溶湯をスリーブ内に注ぐと、油性潤滑剤が高温に晒され、油成分が燃焼するおそれがある。この場合、ダイカスト装置のプランジャーやスリーブ等を傷める可能性がある。また、油成分の燃焼によりガスが発生し、このガスが溶湯内に混入した場合には、鋳物製品に鋳巣等の内部欠陥が発生し、鋳物製品の品質低下を招く。
【0004】
油性潤滑剤による上記問題点を解決するために、燃焼が抑えられた潤滑剤が求められる。斯かる潤滑剤として、油性潤滑剤に水を含有させた水溶性潤滑剤が提案される。特許文献1は、基油として用いられる鉱物油、油脂等を界面活性剤でW/O型エマルションとした潤滑剤を提案する。また、特許文献2は、主剤として用いられる高級脂肪酸金属塩を界面活性剤で分散させた水溶性潤滑剤を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−15419号公報
【特許文献2】特開平6−65590号公報
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、特許文献1に示す潤滑剤(鉱物油、油脂等を界面活性剤でW/O型エマルションとした潤滑剤)は、油分が多いので依然として燃焼を十分に抑えることができない。また、特許文献2に示す潤滑剤(高級脂肪酸金属塩を界面活性剤で分散させた水溶性潤滑剤)は、燃焼をある程度抑えることができるものの、油性潤滑剤と比較して潤滑性が不足するという問題があった。
【0007】
このように、ダイカストに用いられるプランジャー潤滑剤として、黒鉛を分散させた油性潤滑剤と同等の潤滑性を有し、且つ溶湯に接したときに燃焼が十分に抑えられた水溶性潤滑剤が見出されていないのが現状である。
【0008】
本発明は、生産性の低下や作業環境の悪化を招くことなく、燃焼も抑えられ、且つ優れた潤滑性を発揮するダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤を提供することを目的とする。
【0009】
(課題を解決するための手段)
本発明は、鉱物油、合成炭化水素、油脂、脂肪酸エステルから選ばれる1または2以上の化合物である成分(a)と、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である成分(b)と、合成スルホン酸のアルカリ金属塩または石油スルホン酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である成分(c)と、微粒子シリカと、水とを含む、ダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤を提供する。
【0010】
本発明のダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤は、優れた潤滑性を示すので、鋳造時においてスリーブの摩耗を低減することができるとともに、プランジャーの射出速度を低下させることもない。したがって、この潤滑剤をプランジャーの潤滑に用いることにより生産性を低下させることなく高品質の製品をダイカストにより製造することができる。また、本発明のダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤は可燃性が低いので、溶湯に接したときに燃焼を十分に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤(以下、単に「潤滑剤」ということがある)は、少なくとも以下に示す成分(a)〜成分(c)、微粒子シリカおよび水を含む。
【0012】
<成分(a)>
成分(a)は、鉱物油、合成炭化水素、油脂、もしくは脂肪酸エステルから選ばれる1または2以上の化合物である。成分(a)を構成する鉱物油の例は、マシン油、タービン油、スピンドル油、プロセスオイル油等である。成分(a)を構成する合成炭化水素の例は、ポリアルファオレフィンである。成分(a)を構成する油脂の例は、大豆油、菜種油、ひまし油、椰子油、パーム油、牛脂などの動植物油である。成分(a)を構成する脂肪酸エステルの例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸等の脂肪酸と、1価または多価アルコールを反応させて生成したエステルである。1価または多価アルコールの例は、2−エチルヘキサノール、イソデカノール、トリデカノールなどの炭素数1〜18までの1価アルコール、またはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ジペンタエリスリトール等である。
【0013】
成分(a)の種類は上記記載の例示に限定されない。成分(a)の動粘度は、潤滑剤での使用を考慮すると、40℃で5〜500mm/sec.の範囲であるのが好ましい。動粘度が上記範囲未満であると、潤滑剤の潤滑性が不十分になる(潤滑能力が低い)。動粘度が上記範囲を越えると、プランジャーによる溶湯の射出後に飛び散った潤滑剤の残渣物を除去し難い(汚染洗浄性が悪い)ので使用環境が悪化する。
【0014】
成分(a)の引火点は、潤滑剤の使用を考慮すると、200℃以上であるのが好ましい。引火点が200℃未満であると、潤滑剤が燃焼しやすくなる。
【0015】
成分(a)の含有量は、潤滑剤全量に対して0.1〜20重量%であるのが良い。好ましくは0.5〜18重量%であり、より好ましくは1〜16重量%である。成分(a)の含有量が0.1重量%未満であると、潤滑剤の潤滑性が不十分になる。成分(a)の含有量が20重量%を越えると、潤滑剤が溶湯に接したときに潤滑剤の燃焼を十分に抑えることができない。成分(a)の含有量が0.5〜18重量%であれば、潤滑性が十分であり(潤滑能力が高く)、且つ燃焼が十分に抑えられる。成分(a)の含有量が1〜16重量%であれば、潤滑性がより良好であり、且つより一層燃焼が抑えられる。成分(a)は、鉱物油、合成炭化水素、油脂、もしくは脂肪酸エステルから選ばれる1つの化合物でも良いし、2以上の化合物でも良い。2以上の化合物は、鉱物油、合成炭化水素、油脂、脂肪酸エステルの内の1種類の中から選ばれても良いし、複数種類の中から選ばれても良い。成分(a)が2以上の化合物である場合、それらの合計の含有量が上記範囲内であれば良い。
【0016】
<成分(b)>
成分(b)は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である。成分(b)を構成する高級脂肪酸の例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸である。好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸であり、より好ましくはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸である。成分(b)を構成する脂肪族ヒドロキシ酸の例は、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、リシノレイン酸などであり、好ましくはリシノレイン酸である。
【0017】
そのような高級脂肪酸または脂肪族ヒドロキシ酸とともに成分(b)を構成するアルカリ金属の例は、ナトリウム、リチウム、カリウム等であり、好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0018】
成分(b)は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩であるが、潤滑剤成分として水に可溶であれば、高級脂肪酸、脂肪族ヒドロキシ酸、アルカリ金属の種類は特に限定されない。
【0019】
成分(b)の含有量は、潤滑剤全量に対して0.1〜30重量%であるのが良い。好ましくは1〜27重量%であり、より好ましくは2〜24重量%である。成分(b)の含有量が0.1重量%未満であると、潤滑剤の潤滑性および汚染洗浄性(装置周辺に付着した潤滑剤を洗浄する能力)のいずれかもしくは両方が不十分になる。成分(b)の含有量が30重量%を越えると、潤滑剤が溶湯に接したときに潤滑剤の燃焼を十分に抑えることができない。成分(b)の含有量が1〜27重量%であれば、潤滑性および汚染洗浄性がいずれも十分であり、且つ燃焼を十分抑えることができる。成分(b)の含有量が2〜24重量%であれば、潤滑性および汚染洗浄性がより一層良好であり、且つより一層燃焼を抑えることができる。成分(b)は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる1つの化合物でも良いし、2以上の化合物でも良い。2以上の化合物は、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩のうちの1種類の中から選ばれても良いし、複数種類の中から選ばれても良い。成分(b)が2以上の化合物である場合、それらの合計の含有量が上記範囲内であれば良い。
【0020】
<成分(c)>
成分(c)は、合成スルホン酸のアルカリ金属塩または石油スルホン酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である。成分(c)を構成するスルホン酸としては特に制限されないが、石油留分に由来する石油スルホン酸、または芳香族化合物のアルキル化に由来する合成スルホン酸、および石油スルホン酸又は合成スルホン酸の混合物成分が、スルホン酸として例示される。
【0021】
そのような石油スルホン酸または合成スルホン酸とともに成分(c)を構成するアルカリ金属の例は、ナトリウム、リチウム、カリウム等であり、好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0022】
成分(c)は、石油スルホン酸のアルカリ金属塩または合成スルホン酸のアルカリ金属塩であるが、潤滑剤成分として水に可溶であれば、その種類は特に限定されない。
【0023】
成分(c)の含有量は、潤滑剤全量に対して0.1〜20重量%であるのが良い。好ましくは0.5〜18重量%であり、より好ましくは1〜16重量%である。成分(c)の含有量が0.1重量%未満であると汚染洗浄性が低下する。成分(c)の含有量が20重量%を越えると、潤滑剤が溶湯に接したときに潤滑剤の燃焼を十分に抑えることができない。成分(c)の含有量が0.5〜18重量%であれば、汚染洗浄性が十分であるとともに燃焼を十分抑えることができる。成分(c)の含有量が1〜16重量%であれば、製品がより一層汚染洗浄性が向上するとともに、より一層燃焼を抑えることができる。成分(c)は、石油スルホン酸のアルカリ金属塩または合成スルホン酸のアルカリ金属塩から選ばれる1つの化合物でも良いし、2以上の化合物でも良い。成分(c)が2以上の化合物である場合、それらの合計の含有量が上記範囲内であれば良い。
【0024】
<微粒子シリカ>
微粒子シリカは製法により湿式、乾式等の種類に分類されるが、いずれの製法により得られても良い。
【0025】
微粒子シリカの粒子径は、本発明の目的を達成する限り特に制限されるものではない。好ましくは、微粒子シリカの粒子径は、コールターカウンターで測定した場合において、溶媒に分散された微粒子シリカの最大2次凝集粒子径で20μm以下、より好ましくは10μm以下である。最大2次凝集粒子径が20μm以下であれば、潤滑剤中での微粒子シリカの分散性が良い。最大2次凝集粒子径が10μm以下であれば、潤滑剤中での微粒子シリカの分散性がより一層向上する。
【0026】
微粒子シリカの含有量は、潤滑剤全量に対して0.1〜5重量%であるのが良い。好ましくは0.2〜3重量%である。微粒子シリカの含有量が0.1重量%未満であると潤滑剤の耐焼き付き性が損なわれる。微粒子シリカの含有量が5重量%を越えると、性能(耐焼き付き性)の向上が図れない上に、微粒子シリカが十分に分散しないため、微粒子シリカが沈殿しやすくなり、使用し難く且つ残渣物が増加する。このため汚染洗浄性(装置周辺に付着した潤滑剤を洗浄する能力)が不十分になり、ダイカスト装置周辺が汚れるといった問題を引き起こす。微粒子シリカの含有量が0.2〜3重量%であれば、耐焼き付き性が十分であり、且つ潤滑剤の安定性、汚染洗浄性も十分である。
【0027】
潤滑剤のうち上記した成分(a)、成分(b)、成分(c)および微粒子シリカの残部が水である。水の含有量は、潤滑剤の全量から潤滑剤中の固形分濃度を除いた部分により表わされ、例えば潤滑剤全量に対して50重量%以上、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは55〜85重量%である。水の含有量が多いので、本実施形態の潤滑剤の形態は、O/W型エマルションの形態をなす。水の含有量が50重量%未満であると油分が多いので十分に燃焼を抑えることができない。また、潤滑剤の製品形態がO/W型エマルションからW/O型エマルションに転相して粘度が増加するため、スリーブ内へ潤滑剤を供給する際における作業性が悪化する。一方、水の含有量が90重量%を越えると、潤滑成分が相対的に減少するので十分な潤滑性・耐焼き付き性を発揮せず、潤滑剤としての使用に適さない。なお、固形分濃度とは、潤滑剤全量に対する成分(a)〜成分(c)、微粒子シリカならびに後述の添加剤の合計量である。
【0028】
本実施形態の潤滑剤には、ダイカスト用潤滑剤の分野で従来より潤滑剤に添加されている添加剤、例えば、いわゆる増粘剤、防腐剤、防錆剤、イオン封鎖剤、界面活性剤等が含有されていても良い。また、本実施形態の潤滑剤は、対象部位(スリーブ)に対していかなる方法で供給されてもよい。例えばスリーブの内壁に噴霧することにより潤滑剤を供給することができる。
【0029】
本実施形態の潤滑剤においては、各成分の含有量が上記した範囲内に入るように、それぞれの成分の含有量が調節される。
【0030】
また、成分(a)、成分(b)、成分(c)、微粒子シリカ、および水の含有量が上記に示した範囲である場合に、各成分の持つ機能に各成分間での相互作用により得られる機能が加えられることにより、潤滑剤として良好な潤滑性が発揮されるとともに、溶湯に接したときに燃焼が十分に抑えられる。
【0031】
以上のように構成される本実施形態の潤滑剤は、原液で使用することもできる。また、経済面や運送方法を考慮して、予め固形分を多く含有させたものを潤滑剤の安定性を損なわない範囲で作製しておき、使用前に上記した範囲内でこれを希釈して使用しても良い。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は当該実施例に限定的に解釈されるべきではないことは明らかである。
【0033】
本発明のダイカスト用水溶性潤滑剤の性能を明らかにするために、表1〜11(実施例)及び表12(比較例)に示す組成を有する潤滑剤について、以下に示す試験を行い、その性能を評価した。試験に際し、潤滑剤は希釈せずにそのまま用いた。また、表1〜12に示す成分中、菜種油は日清オイリオ製、トリメチロールプロパントリオレエートエステルは日油製、鉱物油は出光興産製のダイアナフレシア(登録商標)U−46、ポリアルファオレフィンはエクソンモービル製のSpectraSyn(登録商標)6を使用した。オレイン酸は花王製、リシノレイン酸は小倉合成工業製のものを用い、それぞれアルカリ金属で当量中和の塩とした。石油スルホン酸ナトリウム塩はモレスコ製のスルホール(登録商標)430A、合成スルホン酸ナトリウム塩はモレスコ製のモレスコアンバーSN−60、微粒子シリカはトクヤマ製のファインシール(登録商標)X−45、タルクは富士タルク製のSP−40を使用した。
【0034】
なお、菜種油の粘度は37mm/sec.(40℃)、引火点は300℃以上である。トリメチロールプロパントリオレートエステルの粘度は48mm/sec.(40℃)、引火点は314℃以上である。ダイアナフレシア(登録商標)U−46の粘度は46mm/sec.、引火点は100℃以上200℃以下である。SpectraSyn(登録商標)6の粘度は31mm/sec.、引火点は230℃である。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
【表8】

【0043】
【表9】

【0044】
【表10】

【0045】
【表11】

【0046】
【表12】

【0047】
(潤滑性試験)
トライボテスター(キョーシン製)を用いて表1〜表12に示す各潤滑剤の潤滑試験を行い、摩擦係数を測定した。試験条件を以下に示す。
荷重;500g
鋼球;SUJ−2
鋼板;JISG3141 SPCC−SB
測定時間;5分間
表面温度;300℃
摺動速度;30回/分
摺動距離;5mm
試料;0.03g
【0048】
潤滑性試験により得られた試験結果(摩擦係数)に基づいて、耐焼き付き性および潤滑性を評価した。耐焼き付き性については以下に示す基準に基づいて評価した。
○:5分間内に急激な摩擦係数の上昇が発生しない
×:5分間内に急激な摩擦係数の上昇が発生する
また、潤滑性については以下に示す基準に基づいて評価した。
○:5分間内に摩擦係数測定値が0.05以下で推移する(実用上優れている)
△:5分間内に摩擦係数測定値が0.10以下で推移する(実用上問題なし)
×:5分間内に摩擦係数測定値が0.10以上となる(実用上問題あり)
【0049】
(燃焼性試験)
予め260℃に加熱した鋼板に表1〜表12に示す組成の潤滑剤を3ml滴下し、塗り広げた後、その表面上に800℃に加熱した鋼片を置き、そのときにおける煙の発生状態や潤滑剤の燃焼状態を観察した。観察結果に基づいて、以下の基準に基づき潤滑剤の燃焼性を評価した。
○:発煙も少なく、燃焼しない
△:発煙は多いが、燃焼しない
×:発煙が多く、燃焼する。
【0050】
(汚染洗浄性試験)
予め260℃に加熱した鋼板に表1〜表12に示す組成の潤滑剤を3ml滴下し、滴下した部分を乾燥させる。そして、乾燥させた部分を水で洗い流すときにおける洗浄性(潤滑剤の除去具合)を観察した。観察結果に基づいて、以下の基準に基づき汚染洗浄性を評価した。
○:鋼板上の潤滑剤が洗い流される(周辺汚染度が低い)
×:鋼板上の潤滑剤が洗い流されない(周辺汚染度が高い)
【0051】
表1〜11に示す組成を持つ本実施例の潤滑剤についての評価結果を表13〜表23にそれぞれ示し、表12に示す組成を持つ比較例の潤滑剤についての評価結果を表24に示す。
【0052】
【表13】

【0053】
【表14】

【0054】
【表15】

【0055】
【表16】

【0056】
【表17】

【0057】
【表18】

【0058】
【表19】

【0059】
【表20】

【0060】
【表21】

【0061】
【表22】

【0062】
【表23】

【0063】
【表24】

【0064】
以上の性能試験結果によれば、本実施例の潤滑剤は、耐焼き付き性、潤滑性、および汚染洗浄性について良好であり、これを使用する上で実用上の問題はないということがわかる。一方、比較例に係る潤滑剤は、耐焼き付き性、潤滑性、汚染洗浄性の何れかについて不十分(不良)であり、全ての評価項目を満足することは無かった。
【0065】
(実機試験)
本発明に係る水溶性潤滑剤と従来の油性潤滑剤を実機(ダイカスト装置)に用いて実機試験を行い、両者の性能を比較した。本発明に係る水溶性潤滑剤として、上記実施例20に示す潤滑剤組成物を用い、以下の条件でアルミニウム金属を鋳造したときの射出速度の変化、製品品質、燃焼の発生度合いを評価した。
射出速度(設定速度);3.0m/sec.
材質;ADC12
溶湯温度;650℃
供給方法;スリーブ内にスプレー
【0066】
また、従来の油性潤滑剤として黒鉛含有油性潤滑剤(商品名「プランジャーハイト TG−YA2」(日本黒鉛株式会社製))を用い、同様の条件でアルミニウム金属を鋳造した。
【0067】
上記した実機試験によれば、本実施例20の潤滑剤組成物を使用した場合は、従来の黒鉛含有油性潤滑剤を使用した場合と同様に、ほとんどプランジャーの射出速度が変化(低下)せず、十分な潤滑性が得られた。また、溶湯へのガスの混入量も少なく、鋳造製品に内部欠陥がほとんど発生しない。さらに、スリーブ内での潤滑剤の燃焼も抑えることができた。また、黒鉛含有油性潤滑剤を使用した場合と異なり、実機周辺の黒鉛粉塵、油汚れも無いので、作業環境が改善された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の潤滑剤はアルミニウム等の金属材料のダイカストに用いる潤滑剤として有用である。特に本発明の潤滑剤は直接溶湯と接触するプランジャーの潤滑剤として用いる場合において優れた潤滑性を示すとともに燃焼が抑えられるため、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物油、合成炭化水素、油脂、脂肪酸エステルから選ばれる1または2以上の化合物である成分(a)と、高級脂肪酸のアルカリ金属塩または脂肪族ヒドロキシ酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である成分(b)と、合成スルホン酸のアルカリ金属塩または石油スルホン酸のアルカリ金属塩から選ばれる1または2以上の化合物である成分(c)と、微粒子シリカと、水とを含む、ダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤。
【請求項2】
前記成分(a)の含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜20重量%であり、前記成分(b)の含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜30重量%であり、前記成分(c)の含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜20重量%であり、前記微粒子シリカの含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜5重量%であり、前記水の含有量が残部として潤滑剤全量に対して50重量%以上である、請求項1に記載のダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤。
【請求項3】
前記成分(a)の動粘度が、40℃で5〜500mm/sec.である、請求項1または2に記載のダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤。
【請求項4】
前記微粒子シリカは、粒子径をコルターカウンターで測定した場合において、最大二次粒子径で10μm以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤。
【請求項5】
前記成分(a)は、引火点が200℃以上である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダイカスト用水溶性プランジャー潤滑剤。

【公開番号】特開2012−224818(P2012−224818A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96083(P2011−96083)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(390002152)日本クエーカー・ケミカル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】