説明

ダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型

【課題】簡易な手段で鋳バリ噴きを防止でき、鋳バリ噴きを複数段のバックアップ構造で堰き止めることができ、また堤防部が溶損してもその補修を簡便・迅速に終わらせることができるダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型を提供すること。
【解決手段】可動金型10(又は固定金型)のPL面11より盛り上がりかつ該盛り上がり面が平面加工とされた複数条の堤防部21,22,23が、PL面11の、キャビティ12、エアベント13及びランナ14の全部又は一部を取り囲んで形成され、堤防部21,22,23の高さが、可動金型と固定金型とを重ね合わせたときに、可動金型のPL面と固定金型のPL面との、堤防部に起因して生じる隙間が鋳バリ噴きが生じない限度以下の寸法となるように、設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳バリ噴きが防止できるように可動金型と固定金型とを簡易に合わせられる鋳バリ噴き防止手段を備えたダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造や高圧鋳造等において、型絞め力を大きくしても、金型の熱膨張変形が均等ではない、あるいは型め異常が生じる場合がある等に起因して、鋳込み中の可動金型のPL面と固定金型のPL面との間に隙間が生じ、この隙間に溶湯が侵入することでバリが発生する。アルミニウム合金等のダイカスト鋳造や射出鋳造等において、固定金型のPL面と可動金型のPL面との隙間を0.2mm未満に抑えることができればキャビティやランナ内の溶湯がこの隙間に進入できない。このPL面間の隙間が0.2mm以上に大きくなると、溶湯がPL面間に侵入しバリが発生する。従って、エアベントは一般に0.2mm未満の隙間となるように設計されている。
【0003】
一旦小さなバリが発生すると、鋳込みを繰り返す毎に徐々に大きなバリが発生し、PL面は大きく損傷していき、劣化し、また、型締め力を受けていること等から型合わせ面が多様に褶曲し、また凹凸になり易く、鋳造品は製品とはならない。従来の鋳造金型において、鋳バリ噴きは、特にランナやエアベント(チルベントを含む)、キャビティの周辺で多様な形態で発生しており、バリの発生を抑え込む金型の補修や修正に多大な時間を必要とするために、不稼動時間が増加し稼動率が低下する。従って、小さなバリが発生した時点で早急かつ迅速にバリが発生を抑え込むようにPL面の補修が必要である。従来、PL面のひび割れや溶損部を埋め戻す肉盛溶接が行われているが、バリの発生を抑え込む抜本的な対策にはなっていない。
【0004】
他方、バリの発生を抑え込む抜本的な対策・技術の1つとして、特許文献1に示す鋳造用金型構造が提案されている。この鋳造用金型構造によれば、チルベント、ゲート、又はキャビティの外周に、一方のPL面に例えば高さ6mm、幅10mmの凸条部、他方のPL面に高さ6mm、幅10mmの溝条部を形成し、この凸条部と溝条部を嵌合する構成であり、溶湯がPL面同士の隙間に入り込むのを防止できる、としている。この鋳造用金型構造によれば、PL面がゆがむことによりPL面間の隙間が多少開いても凸条部と溝条部との嵌合寸法がはるかに大きいからこの嵌合部を通過して鋳バリ噴きが発生することはなく、また、外部への鋳バリ噴きを無くすことができるから、オペレータが火傷する事故を皆無にできる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−301558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の鋳造用金型構造によれば、凸条部と溝条部との嵌合構造としたことによりPL面が熱変形等に起因してゆがむことを抑制できるものでないから、凸条部と溝条部とがゆがみによって嵌合できなくなることが皆無ではない。このため、凸条部と溝条部との嵌合部の内側でPL面間の隙間が大きく開くゆがみや溶損が発生したときは、この嵌合部よりも内側のPL面間の隙間に大きなバリが発生することを回避できないから、製品となりうる鋳造を行うためにはPL面の嵌合部の内側にバリ発生を防止する肉盛溶接による修理が依然として必要である。また、凸条部と溝条部との嵌合構造は寸法が大きいので、製作が大掛かりになり、コストが高くつき、PL面に大きな余白スペースを必要とする、という問題がある。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑み案出したもので、簡易な手段で鋳バリ噴きを防止でき、鋳バリ噴きを複数段のバックアップ構造で堰き止めることができ、また堤防部が溶損してもその補修を簡便・迅速に終わらせることができるダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型は、可動金型と固定金型のいずれかのPL面より盛り上がりかつ該盛り上がり面が平面加工とされた複数条の堤防部が、固定金型又は可動金型の前記PL面の、キャビティ、エアベント及びランナの全部又は一部を取り囲んで形成され、前記複数条の堤防部の前記平滑加工面の前記PL面からの高さが、可動金型と固定金型とを重ね合わせたときに、可動金型のPL面と固定金型のPL面との、前記の堤防部に起因して生じる隙間がアルミニウム合金やマグネシウム合金の鋳造において鋳バリ噴きが生じる隙間未満の寸法となるように、設定されている、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、バリ噴き防止手段である複数条の堤防部が、最初から設ける金型に適用される。複数条の堤防部は、可動金型と固定金型のいずれかのPL面に削り出し加工又は溶接して平面加工することにより設けられる。
【0010】
本発明の修理金型の範疇であるダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型は、複数回鋳造を行った使用済の金型であって、可動金型と固定金型のいずれかのPL面より盛り上がりかつ該盛り上がり面が平面加工とされた複数条の堤防部が、固定金型又は可動金型の前記PL面の、キャビティ、エアベント及びランナの少なくともいずれかの部分を取り囲んで肉盛溶接を線状に施してから溶接面が平面加工され形成された複数条の堤防部を備えている、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、PL面に堤防部が設けられていない金型であって、鋳バリ噴きが発生した箇所のPL面間の隙間を肉盛溶接により埋める補修が必要な金型、及びPL面に堤防部が設けられている金型であって、堤防部とPL面との隙間より溶湯が流れ出てバリが生じため、あるいは鋳バリ噴きが生じたため、該箇所の堤防部の隙間を埋める一層高い肉盛溶接による補修が必要な金型とが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型によれば、PL面の、キャビティ、エアベント又はランナの部分を取り囲んで複数条の堤防部を設ける構成であるので、簡易な手段で鋳バリ噴きを防止でき、鋳バリ噴きを複数段のバックアップ構造で堰き止めることができ、また堤防部が溶損してもその補修を簡便・迅速に終わらせることができ、金型の補修による非稼働時間を大幅に短縮でき、装置の稼働効率を向上できるから生産コストの低減に大きく寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
〔実施の形態1〕
図1に示すダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型は、可動金型10(固定金型であっても良い)のPL面11を示す(なお、固定金型のPL面であっても良い)。10aは入れ子型である。
【0014】
〔堤防部を設ける位置と本数〕
図1中、符号12はキャビティ、符号13はランナ、符号14はエアベント、符号15はチルベントを示す。図1に示すように、第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dが、キャビティ12、ランナ13、エアベント14、チルベント15を取り囲んで形成されている。この実施の形態では、エアベント14とチルベント15との境界領域の基端において、第一の堤防部21a又は21bと第二の堤防部22a又は22bとの間に、短尺な二条の堤防部24a, 25a又は24b, 25bが設けられている。この領域では、堤防部24a, 25a又は24b, 25bが第二及び第三の堤防部である。堤防部は、3条に限らず2条又は4条以上設けられていても良い。
また、第一、第二、第三の堤防部が、キャビティ、ランナ、エアベント、又はチルベントの一部を取り囲んで形成されていても良い。さらに、可動金型10が、複数回鋳造を行った使用済のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型に係り、堤防部に生じた鋳バリ噴きによる溶損部が生じ、また堤防部以外にひび割れ部や溶損部が生じている場合に、堤防部に修理が行われると共に、堤防部以外に生じているひび割れ部や溶損部に埋め合わせのための目張り溶接が施されている場合も、この形態に含まれる。
【0015】
〔機械加工により堤防部を最初から形成する場合〕
PL面11を機械加工する際に、削り出し加工(例えば放電加工やMCセンター加工など)により第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dを一体形成する場合は、PL面11からの高さが0.15mm〜0.20mmとなるように平面加工して堤防部を形成し、かつ、堤防部の幅を例えば3mm〜5mmとし、堤防部と堤防部との間隔を例えば10mm〜30mmとする。堤防部と堤防部との間には離型剤が乗り易く、バリの離型性が向上する。
【0016】
ここで、堤防部の高さは、可動金型と固定金型とを重ね合わせたときに、可動金型のPL面と固定金型のPL面との、前記の堤防部に起因して生じる隙間が鋳バリ噴きが生じない限度以下の寸法となるように、設定する。具体的には、0.15mm〜0.20mmの高さとするのが良い。
【0017】
機械加工により堤防部を最初から形成する場合には、堤防部を設ける必要がある箇所を、金型のPL面の配置と鋳バリ噴きとの発生率の分析等の実績から割り出すことで、金型設計段階のCADデータに堤防部となるラインを入力し、金型加工において適切な箇所に堤防部を一体に自動形成することができ、堤防部を設けるコストがかからない。堤防部を形成する際に熱が加わらないので、PL面に熱歪みが生じないから、堤防部とこれに対向するPL面とを精密に密着させる機械加工が容易に行える。また、堤防部は線状であるから、堤防部の全長に紅明丹を塗って対向するPL面とすり合わせて当たらない個所を検出し、全箇所がすり合わさるように、機械加工で修正することが容易であり、精密な堤防部を設けることが容易である。
【0018】
〔PL面に堤防部を後から形成する場合〕
PL面11を機械加工する際には第一、第二及び第三の堤防部を形成しないで、堤防部を除いたPL面11を形成し、該PL面11に後から第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dを形成する場合は、肉盛高さがほぼ均一で滑らかな連続線となるように肉盛溶接を行ってから表面を機械加工(例えば研磨加工あるいは放電加工)する。溶接によって形成する堤防部については、該堤防部の幅を溶接幅のままとし、PL面11からの高さを0.15mm〜0.20mmとなるように平面加工する。堤防部と堤防部との間隔は例えば10mm〜30mmとする。肉盛溶接方法の種類については特に限定はないが、材質・熱膨張係数が金型の母材とほぼ同一である肉盛溶接とするのが良い。
肉盛溶接し平面加工することにより堤防部を設けることは、いくらでも所望の位置に堤防部を設けることができて、最も簡便にかつ低コストで実現でき、機械加工により形成した堤防部の補修にも適用できる利便性がある。
なお、PL面11からの高さが0.20mmを超えないように、第一、第二及び第三の堤防部の溶損箇所をリフォームする場合にはこの形態に含まれる。
【0019】
〔堤防部の役割〕
まず、PL面同士の広い面による密着に代わり、PL面11と、第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dとの小さな面積による密着となることで、極めて高い密着圧力が得られる。第二の堤防部22a〜22dは、第一の堤防部21a〜21dが溶損し決壊しPL面間へ侵入した溶湯を堰き止められなかったときにバックアップして溶湯の鋳バリ噴きを堰き止める役目を果たし、第三の堤防部23a〜23dは、第二の堤防部22a〜22dが溶損し決壊しPL面間へ侵入した溶湯を堰き止められなかったときにバックアップして溶湯の鋳バリ噴きを堰き止める役目を果たす。
【0020】
従来では、PL面とPL面との密着が行われ、熱歪みにより、PL面とPL面との隙間が0.2mmを超えると鋳バリ噴きが生じる。これに対し、第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dと、これに対向するPL面との密着では、PL面とPL面との隙間が0.15mm〜0.20mmに規制されていて、熱歪みにより、第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dと、これに対向するPL面との隙間が、0.2mmを超える箇所が生じた場合に鋳バリ噴きが生じる。第一の堤防部21a〜21dがひび割れや溶損により決壊すると、溶湯が決壊箇所から外方へ流出するが、各堤防部とPL面の隙間が0であった(密着していた)ものが開かれるのであり、第二の堤防部22a〜22dは第一の堤防部21a〜21dと同時には決壊しない、さらに第三の堤防部23a〜23dは、第二の堤防部22a〜22dと同時には決壊しないから直ちに鋳バリ噴きが生じるものでない。
【0021】
金型を作る段階で、PL面11と第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dとの密着が確保されない箇所がある場合、密着できるようにする修正をPL面としての一平面に対する修正ではなく、堤防部という線状の面積の一部に対する修正を行うことで容易に実現でき、最も簡便な手段・低コスト手段でキャビティ12、ランナ13、エアベント14、チルベント15等の外周部を完全密閉できることにある。
【0022】
堤防部は、対向するPL面と当接してPL面同士の隙間規制を果たす。具体的には、堤防部がPL面同士の隙間を0.15mm〜0.20mmに規制すると、PL面間の隙間にアルミニウム合金あるいはマグネシウム合金等の溶湯が入り込む。しかしながら、極めて薄くバリができ除去が容易である。堤防部は、こうした小さなバリの発生を容認するが、対向するPL面との密着力を従来に比して頗る大きく高めることができるので鋳バリ噴きを抑える役割が大きい。
【0023】
ある箇所の第一の堤防部とPL面との隙間が0.2mmを超えると、同一箇所の第二及び第三の堤防部とPL面との隙間も0.2mm前後に大きくなるが、溶湯は、1番目の堤防部を超えると、1番目と2番目の堤防部間の溝方向に広がり流れ出る溶湯圧力を下げてから2番目の堤防部を超え、2番目と3番目の堤防部間の溝方向に広がり流れ出る溶湯圧力をさらに下げる。第一、第二及び第三の堤防部が一度に全部ではなく、内側から順に決壊していくので、大きなバリが発生しない段階で堤防部の溶接補修が行い易い。すなわち、第一の堤防部21a〜21d、第二の堤防部22a〜22d、第三の堤防部23a〜23dを設けると、PL面に比して、型を開いたときに、バリが第一の堤防部21を超えたか否かを確認することが容易にできる。従って、大きなバリが発生しないうちに堤防部を溶接補修する判断を容易にできる。
【0024】
〔実施の形態2〕
図2に示す金型は修理金型であり、複数回鋳造を行った使用済のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型に係る可動金型30(固定金型であっても良い)のPL面31に対し、第一の堤防部41a〜41d、第二の堤防部42a〜42d、第三の堤防部43a〜43dが、キャビティ32、ランナ33、エアベント34、チルベント35を取り囲んで形成されている。堤防部は、3条に限らず2条又は4条以上設けられていても良い。
【0025】
さらに、堤防部に対し、修理のための堤防部をさらに高く積層形成すると共に、PL面31に生じたひび割れ部及び溶損部に埋め合わせのための目張り溶接44,45が施されている場合も、この形態に含まれる。なお、キャビティ12、ランナ13、エアベント14、チルベント15の全部を取り囲んで複数条の堤防部がPL面に設けられても良い。
【0026】
以前に製造され使用された堤防部を備えていない金型について、鋳バリ噴きを防止するため、複数条の堤防部を溶接・平面加工により備えた場合にはこの形態に含まれる。すなわち、この形態の堤防部は、一方の金型の堤防部を設けていないPL面31と、他方の金型の堤防部を設けていないPL面(不図示)との間に隙間が開く箇所があり、この箇所から、鋳バリ噴きが生じた使用済のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型に係る可動金型30と固定金型のいずれかの修理に適用される。例えば、可動金型30のPL面31の鋳バリ噴きが生じる箇所(キャビティ32、ランナ33、エアベント34、又はチルベント35)を取り囲むように、複数条の堤防部が形成される。
【0027】
第一の堤防部41a〜41d、第二の堤防部42a〜42d、第三の堤防部43a〜43dは、上述した実施の形態1の使用前に堤防部を設ける場合とは相違し、PL面とPL面との隙間が0.2mmを超え鋳バリ噴きが生じる隙間を埋めるために設けられる。従って、第一の堤防部41a〜41d、第二の堤防部42a〜42d、第三の堤防部43a〜43dは、上述した実施の形態1の使用前に堤防部を設ける場合とは相違し、PL面31からの高さを0.15mm〜0.20mmとなるように限定されることはなく、鋳バリ噴きが生じる隙間を埋めるために鋳バリ噴きが生じた箇所を取り巻いて高さが0.2mmを超えて形成される。
【0028】
実施の形態1の堤防部を備えて製造使用された金型について、鋳バリ噴きを防止するための既存の複数条の堤防部の上に堤防部を嵩積み溶接し平面加工し、PL面31からの高さが0.20mmを超えてリフォームする場合にはこの形態に含まれる。
【0029】
PL面に堤防部が設けられていない複数回鋳造を行った使用済の金型であって、鋳バリ噴きが一度も発生していない金型について、PL面の、キャビティ、エアベント及びランナの少なくともいずれかの部分を取り囲んで肉盛溶接を線状に施してから溶接面が平面加工され形成された複数条の堤防部を備える場合は、この実施の形態に含まれる。
【0030】
堤防部が最初からはPL面に設けられていない金型については、鋳バリ噴きが発生した時点では事故につながる危険が高いので、成型品にバリが出始めた早い時点で複数条の堤防部を備えた修理を行い、この実施の形態の金型とするのが好ましい。
【0031】
本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1に係るダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型のPL面を示す図である。
【図2】実施の形態2に係るダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型のPL面を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10,30 可動金型
11,31 PL面
12,32 キャビティ
13,33 ランナ
14,34 エアベント
15,35 チルベント
21,41,44 第一の堤防部
22,42,45 第二の堤防部
23,43,46 第三の堤防部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型と固定金型のいずれかのPL面より盛り上がりかつ該盛り上がり面が平面加工とされた複数条の堤防部が、固定金型又は可動金型の前記PL面の、キャビティ、エアベント及びランナの全部又は一部を取り囲んで形成され、
前記複数条の堤防部の前記平滑加工面の前記PL面からの高さが、可動金型と固定金型とを重ね合わせたときに、可動金型のPL面と固定金型のPL面との、前記の堤防部に起因して生じる隙間がアルミニウム合金やマグネシウム合金の鋳造において鋳バリ噴きが生じる隙間未満の寸法となるように、設定されている、
ことを特徴とするダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型。
【請求項2】
前記堤防部が、製造当初金型の前記PL面に削り出し加工により形成された、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型。
【請求項3】
前記堤防部が、製造当初金型の前記PL面に対し肉盛溶接を線状に施してから平面加工され形成された、ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型。
【請求項4】
前記堤防部の前記PL面からの盛り上がり高さが0.15mm〜0.2mmであるように形成された、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型。
【請求項5】
複数回鋳造を行った使用済の金型であって、可動金型と固定金型のいずれかのPL面より盛り上がりかつ該盛り上がり面が平面加工とされた複数条の堤防部が、固定金型又は可動金型の前記PL面の、キャビティ、エアベント及びランナの少なくともいずれかの部分を取り囲んで肉盛溶接を線状に施してから溶接面が平面加工され形成された複数条の堤防部を備えている、ことを特徴とするダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型。
【請求項6】
請求項5に記載の前記堤防部に生じた鋳バリ噴き又は溶損部に、修理のための新しい堤防部が積層形成されていると共に、前記PL面に生じたひび割れ部及び溶損部に埋め合わせのための目張り溶接が施されている、
ことを特徴とするダイカスト鋳造用又は射出鋳造用金型。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−178735(P2009−178735A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19357(P2008−19357)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】