説明

ダイキャスト成形型

【課題】置き中子と固定型内部の位置決め部との接触面に鉄系の固い鋳バリが発生しても、置き中子を傷つけずに円滑に抜くことができるダイキャスト成形型を提供する。
【解決手段】鉄系部品をダイキャスト成形するためのダイキャスト成形型2では、置き中子5が固定型12の第1凹部の内部に配置されている。置き中子5は、ダイキャスト成形後に固定型12から可動型11が離れる際に成型品に挟まった状態で可動型11とともに固定型12から離れる。複数の位置決め部14は、固定型12内部における置き中子5の位置決めを行うために置き中子5と接触する。位置決め部14と置き中子5とが接触する接触面5a、14a、5b、14bは、固定型12に対する置き中子5の抜き方向に対して置き中子5の外形寸法を拡大する方向へ傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置き中子を有するダイキャスト成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の成型品を型成形する場合に溶融金属を型内部に射出して成形を行うダイキャスト成形が行われている。ダイキャストマシンでは、成型品を射出成形した後に可動型を固定型から離すことによって固定型と可動型が分割面で分かれて成型品を取り出すことができる状態になる。
【0003】
この時、成型品を分割面側に引き抜く必要上、成型品の形状が分割面を考慮しても成型品を引き出せない形状になる場合には、置き中子等を使用してその成型品を成形する場合がある(特許文献1(特開平7−16844号公報)および特許文献2(特開2001−212850号公報)参照)。
【0004】
このような置き中子を用いてダイキャスト成形する場合、まず、置き中子を固定型内部の所定位置に位置決めし、ついで固定型と可動型とを合わせて型締めした後、型内部のキャビティに溶融金属を射出してダイキャスト成形を行う。成形後、固定型から可動型を分離して型開きする。
【0005】
型開きする時、置き中子は、成型品とともに固定型から抜け出て、可動型とともに固定型から分離される。これにより、成型品および置き中子を成形型から取り出すことができる(特許文献2参照)。
【0006】
このように、可動型の移動とともに置き中子が固定型内部から抜け出すために、置き中子と固定型内部の位置決め部との接触面は、置き中子の抜き方向と平行に延びている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
置き中子を用いたダイキャスト成形は、アルミニウムなどの非鉄金属材料を用いたダイキャスト成形の分野では以前より行われた技術である。このようなアルミニウムなどの非鉄金属材料は、鉄系材料からなる置き中子およびその周囲の固定型内部の位置決め部等よりも硬度が小さい。このため、成型時に発生する鋳バリが固定型と置き中子との隙間に形成しても、型開き時に非鉄金属材料の鋳バリによって置き中子や位置決め部等が傷つくことはなかった。
【0008】
しかし、成型品として、硬質の鉄系部品をダイキャスト成形する場合、置き中子として使用する置き中子及び固定型本体の硬度と鉄系材料の鋳バリの硬度が近くなる。このため、溶融金属の射出時に固定型内部の位置決め部と置き中子との接触面に鋳バリが発生することにより、その鋳バリに置き中子が引っかかって固定型内部の位置決め部と置き中子との接触面に傷がつくおそれがある。
【0009】
また、このように、固定型内部の位置決め部と置き中子との接触面に傷が発生すれば、置き中子およびそれに嵌合している射出後の成型品が固定型内部から抜けなくなってしまうおそれがある。
【0010】
さらに、固定型内部の位置決め部と置き中子との接触面に生じた傷を研磨等して多少修繕を行っても、射出毎に傷が深くなっていくので成形型の交換が必要となり、金型寿命が短くなるという問題がある。
【0011】
さらに、固定型内部の位置決め部および置き中子の傷を修繕するために時間がかかり、生産サイクルタイムを満足することができなくなるおそれがある。または、修繕のための生産ラインの停止が発生するおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、置き中子と固定型内部の位置決め部との接触面に鉄系の固い鋳バリが発生しても、置き中子を傷つけずに円滑に抜くことができるダイキャスト成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明のダイキャスト成形型は、鉄系部品をダイキャスト成形するためのダイキャスト成形型である。ダイキャスト成形型は、固定型と、可動型と、置き中子と、複数の位置決め部とを備えている。固定型は、第1凹部を有する。第1凹部は、成型品の外形形状に対応するキャビティの一部を形成する。可動型は、第2凹部を有している。第2凹部は、キャビティの他の部分を形成する。可動型は、固定型に近づく方向および固定型から離れる方向へ往復移動可能である。置き中子は、固定型の第1凹部の内部に配置されている。置き中子は、ダイキャスト成形後に固定型から可動型が離れる際に成型品に挟まった状態で可動型とともに固定型から離れる。複数の位置決め部は、固定型内部における置き中子の位置決めを行うために置き中子と接触する。位置決め部と置き中子とが接触する接触面は、固定型に対する置き中子の抜き方向に対して置き中子の外形寸法を拡大する方向へ傾斜している、
ここでは、固定型内部における位置決め部と置き中子とが接触する接触面は、固定型に対する前記置き中子の抜き方向に対して前記置き中子の外形寸法を拡大する方向へ傾斜しているので、置き中子と位置決め部との接触面に鉄系の固い鋳バリが発生しても、置き中子を傷つけずにスムーズに抜くことができ、生産性が向上する。
【0014】
第2発明のダイキャスト成形型は、第1発明のダイキャスト成形型であって、複数の位置決め部は、複数のインサートブロックからなる。複数のインサートブロックは、固定型に着脱自在に取り付けられている。複数のインサートブロックの各々は、少なくとも1つの接触面を有している。
【0015】
ここでは、複数の位置決め部が固定型に着脱自在に取り付けられた複数のインサートブロックからなり、複数のインサートブロックの各々は、少なくとも1つの接触面を有している。このようにインサートブロックの接触面によって置き中子を位置決めするので、磨耗や損傷が発生した場合でも、インサートブロックのみの交換で済むため、修理やメンテナンス等のコストが安くすむ。
【0016】
第3発明のダイキャスト成形型は、第2発明のダイキャスト成形型であって、接触面は、互いに交差する第1接触面および第2接触面を有している。第1接触面および第2接触面は、固定型に対する置き中子の抜き方向に対して置き中子の外形寸法を拡大する方向へそれぞれ傾斜している。
【0017】
ここでは、接触面が互いに交差する第1接触面および第2接触面を有しており、第1接触面および第2接触面が固定型に対する置き中子の抜き方向に対して置き中子の外形寸法を拡大する方向へそれぞれ傾斜しているので、各インサートブロックには、2つの接触面を有しているので、1つのインサートブロックで2面を位置決めすることでインサートブロック段替時の調整時間が少なく済む。また、それにより、インサートブロックを全て、別々にした場合に比べて、取り付け個数も減ることで段替時間を減らすことができる。しかも、置き中子を所定位置に正確に位置決めすることができる。
【0018】
第4発明のダイキャスト成形型は、第2発明のダイキャスト成形型であって、インサートブロックは、固定型よりも硬い材料で製造されている。
【0019】
ここでは、インサートブロックが固定型よりも硬い材料で製造されているので、固定型の大部分又は全てを硬い材料にするとコスト的に高くなるが、インサートブロックを別体物にして高硬度材料を使用することで製造等のコストが安くすむ。しかも、インサートブロックの寿命を延ばすことが可能である。
【発明の効果】
【0020】
第1発明によれば、成型後に置き中子と位置決め部との接触面に鉄系の硬い鋳バリが発生しても、置き中子を傷つけずにスムーズに抜くことができる。また、鋳バリによる傷の発生を抑えることができるので、置き中子および固定型の寿命が延びる。また、これにより、成型品の生産性が向上する。
【0021】
第2発明によれば、磨耗や損傷が発生した場合でも、インサートブロックのみの交換で済むため、修理やメンテナンス等のコストが安くすむ。
【0022】
第3発明によれば、各インサートブロックには、2つの接触面を有しているので、1つのインサートブロックで2面を位置決めすることでインサートブロック段替時の調整時間が少なく済む。また、それにより、インサートブロックを全て、別々にした場合に比べて、取り付け個数も減ることで段替時間を減らすことができる。しかも、置き中子を所定位置に正確に位置決めすることができる。
【0023】
第4発明によれば、固定型の大部分又は全てを硬い材料にするとコスト的に高くなるが、インサートブロックを別体物にして高硬度材料を使用することで製造等のコストが安くすむ。しかも、インサートブロックの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係わるダイキャスト成形型の構成図。
【図2】図1の固定型、置き中子およびインサートブロックを可動型側から見た図。
【図3】図1の置き中子の斜視図。
【図4】図1の置き中子の上面図。
【図5】図1の置き中子の側面下端の拡大図。
【図6】図1の置き中子と固定型の接触面の拡大断面図であって、置き中子を抜く前の状態の図。
【図7】図1の置き中子と固定型の接触面の拡大断面図であって、置き中子を抜いている途中の状態の図。
【図8】図1の成型後のスクロール部材、置き中子、ランナーおよび材料残部が一体になったものを渦巻き状の部分の正面側から見た図。
【図9】図1の成型後のスクロール部材、置き中子、ランナーおよび材料残部が一体になったものを側方から見た図。
【図10】図1の成型後のスクロール部材、置き中子、ランナーおよび材料残部が一体になったものを渦巻き状の部分に対して背面側から見た図。
【図11】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって初期状態の図。
【図12】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって型締め過程の図。
【図13】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって材料注入過程の図。
【図14】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって充填過程の図。
【図15】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって充填完了の状態の図。
【図16】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって型開き過程の図。
【図17】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって押出し過程の図。
【図18】図1の成型装置を用いたダイキャスト成形方法の工程図であって成型品取出し過程の図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに本発明のダイキャスト成形型の実施形態として、ダイキャスト成形型2およびそれを備えたダイキャスト成型装置1を、図面を参照しながら説明する。
<ダイキャスト成型装置1の構成>
図1に示されるダイキャスト成型装置1(以下、成型装置1という)は、鉄系部品のダイキャスト成形する成形装置である。この成型装置1は、鉄系部品として、例えば、スクロール圧縮機の可動スクロール、すなわち、図8〜10に示されるように、渦巻き状の部分51、渦巻き状の部分51の根元側に形成された板状の鏡板52、および鏡板52における渦巻き状の部分51の反対側に形成された円柱状のボス53を有するスクロール部材50を成形する。
【0026】
成型装置1は、鉄系部品であるスクロール部材50をダイキャスト成形するためのダイキャスト成形型2(以下、成形型2という)と、渦巻き用押出ピン3と、材料充填機構6と、押出ピン駆動機構7と、可動型駆動ステージ8とを備えている。
【0027】
この成型装置1では、材料充填機構6によって鉄系の半溶融あるいは半凝固金属材料である半溶融・半凝固金属材料Cを成形型2内部に圧力をかけて充填することにより、スクロール部材50をダイキャスト成形することが可能である。
【0028】
スクロール部材50を成形した後には、成形型2を構成する一方の可動型11は、可動型駆動ステージ8上をスライドして他方の固定型12から引き離される(図16参照)。その後、渦巻き用押出ピン3およびその他の押出ピン9が可動型11内部に押出ピン駆動機構7によって押し込まれることにより、可動型11内部からスクロール部材50を置き中子5と挟まった状態で取り出すことができる(図17参照)。
【0029】
以下、成形型2および渦巻き用押出ピン3について、別項目でさらに詳細に説明する。
<ダイキャスト成形型2の構成>
成形型2は、図1に示されるように、可動型駆動ステージ8に沿って往復移動する可動型11と、可動型駆動ステージ8上に固定された固定型12と、置き中子5と、インサートブロック14とを有している。
【0030】
可動型11は、図1に示されるように、スクロール部材50を形成するためのキャビティ13のうち、本発明の第2凹部として、渦巻き状の部分51を形成するための渦巻き状溝13aと、鏡板52を形成するための平板状溝13bとを有している。
【0031】
固定型12は、図1に示されるように、スクロール部材50を形成するためのキャビティ13のうち、円柱状のボス53を形成するための円柱状溝13cを有している。さらに固定型12は、ランナー54を形成するためのランナー溝13d、および置き中子5が挿入される挿入凹部13eを有している。
【0032】
ここで、円柱状溝13c、ランナー溝13dおよび挿入凹部13eは、本発明の第1凹部に対応する。
【0033】
図2に示されるように、本実施形態の固定型12は、外側部分12aと、内側部分12bとが分割可能になっている。内側部分12bは、高熱の半溶融・半凝固金属Mに接触するので、耐熱性の高い材料で製造されている。なお、固定型12の外側部分12aと内側部分12bとを一体にしてもよい。
【0034】
可動型11は、図1に示されるように、可動プラテン21に固定されており、可動プラテン21とともに可動型駆動ステージ8上を固定型12に近づく方向および固定型12から離れる方向へ往復移動する。固定型12は、固定プラテン22に固定されており、ステージ8上で静止している。
【0035】
置き中子5は、可動型11と固定型12とが結合したときに形成されるスクロール部材50の形状をした鋳造空間、すなわちキャビティ13に半溶融あるいは半凝固金属材料を充填するための流路であるランナー54を形成するために、キャビティ13内部に配置される。
【0036】
置き中子5は、キャビティ13とランナー54との間に配置され、固定型12に着脱自在に取り付けられる。すなわち、置き中子5は、固定型12に対して、図1の左方向から挿入される。
【0037】
置き中子5は、平板部分である鏡板52における突出部分である渦巻き状の部分51が突出した第1表面52aとは反対側の第2表面52bから鏡板52の板厚方向に半溶融あるいは半凝固金属を充填するための流路であるランナー54を形成するために、キャビティ13とランナー54との間に配置される。
【0038】
置き中子5は、固定型12の挿入凹部13eの内部に配置され、ダイキャスト成形後に固定型12から可動型11が離れる際にスクロール部材50に挟まった状態で可動型11とともに固定型12から離れる。
【0039】
置き中子5の半円形断面の溝5cは、図1に示される円柱状のボス53を形成するために、図2〜3に示される固定型12の円柱状溝13cの一部を形成している。
【0040】
インサートブロック14は、固定型12内部における置き中子5の位置決めを行うために置き中子5と接触する左右一対の位置決め部である。一対のインサートブロック14は、断面L字状の角柱であり、置き中子5と接触する第1接触面14aおよび第2接触面14bを有している。一対のインサートブロック14の間隔は、置き中子5の全幅を支持できるように、置き中子5の幅と同じかそれ以上である。
【0041】
図2に示されるインサートブロック14と置き中子5とが接触する縦方向に延びる第1接触面5a、14aおよび第2接触面5b、14bは、固定型12に対する置き中子5の抜き方向(図2の紙面に対して垂直手前側の方向)に対して置き中子5の外形寸法を拡大する方向へ傾斜している(図4〜7参照)。
【0042】
例えば、置き中子5の縦に延びる第1接触面5aは、図4に示されるように、置き中子5の抜き方向Dへθ1(0.5〜5度、好ましくは2度程度)傾斜している(傾斜角度が0.5度より小さいと本発明の効果が十分に得られなかったり、5度より大きいと置き中子が落下する可能性があるため)。また、これに対応して、インサートブロック14の縦に延びる接触面14aも置き中子5の第1接触面5aと面接触できるように、同一の方向へ傾斜している。一方、置き中子5の横に延びる第2接触面5bは、図5に示されるように、置き中子5の抜き方向Dへθ2(0.5〜5度、好ましくは2度程度)傾斜している(傾斜角度が0.5度より小さいと本発明の効果が十分に得られなかったり、5度より大きいと置き中子が落下する可能性があるため)。また、これに対応して、インサートブロック14の横に延びる接触面14bも置き中子5の第2接触面5bと面接触できるように、同一の方向へ傾斜している。
【0043】
これにより、置き中子5と位置決め部(例えば、インサートブロック)との接触面に鉄系の固い鋳バリが発生しても、置き中子5とインサートブロック14がテーパ形状であることにより、図6〜7に示されるように置き中子5が引き抜かれることで隙間t1がt1よりも十分に大きいt2へ広がっていくため、インサートブロック14と置き中子5とが接触する縦方向に延びる第1接触面5a、14aおよび横方向に延びる第2接触面5b、14bには、鋳バリによって傷がつきにくくなり、また、発生した傷によってさらに新たな傷を形成することもない。
【0044】
なお、本実施形態の置き中子5は、図2および図5に示される置き中子5の下面において、テーパ状の突起17が設けられている。このテーパ状の突起17が可動型11の突起18(図1参照)に接触することにより、型締め時に置き中子5が上へ押し上げられる。
【0045】
インサートブロック14は、固定型12にネジなどにより着脱自在に取り付けられているので、固定型12を解体せずにインサートブロック14の交換が可能である。
【0046】
インサートブロック14は、固定型12よりも硬い材料で製造されている。例えば、固定型12が金型用鋼としてプリハードン鋼などを用いた場合には、インサートブロック14は、プリハードン鋼より硬いダイス鋼などが用いられる。これにより、インサートブロック14の寿命が延びる。
<渦巻き用押出ピン3の構成>
図1に示される渦巻き用押出ピン3は、可動型11に形成された貫通孔15を通って、キャビティ13の渦巻き状溝13aの先端に出没できるように押出ピン駆動機構7に取り付けられている。
【0047】
渦巻き用押出ピン3は、スクロール部材50の成形後にスクロール部材50の渦巻き状の部分51の先端51aを押して、スクロール部材50を可動型11から押し出すことが可能である。
<ダイキャスト成形法の概要>
本実施形態において成型されるスクロール部材50は、可動スクロールであり、鏡板52における渦巻き状の部分51が突出した第1表面52aと反対側の第2表面52bに突出した柱状のボス53を有している。したがって、キャビティ13に半溶融あるいは半凝固金属を充填するための流路であるランナー54を通して、スクロール部材50の成形型2のキャビティ13へ、鏡板52の中心に位置するボス53の部分から半溶融あるいは半凝固金属を充填する。
【0048】
なお、成型後のランナー54の一端は、ボス53とつながっており、一方、その他端は、材料充填機構6側の材料残部55につながっている。したがって、成型後のスクロール部材50は、図13に示されるように成形型2から取り出された後に、ランナー54および材料残部55が切除される。
【0049】
また、材料充填機構6から出た直後の半溶融・半凝固金属材料C表面のスケールを除去するため、材料充填機構6は、ボス53の真後ろに配置せずにランナー54の分だけ離間して配置されている。これにより、半溶融・半凝固金属材料C表面から除去されたスケールは、主に材料残部55にたまるので、スクロール部材50へのスケールの混入が少なくなる。
<ダイキャスト成形法の手順>
つぎに、実施形態の成形装置1を用いたダイキャスト成形法について、図11〜18を参照しながら説明する。
【0050】
まず、図11に示される初期状態では、置き中子5は、挿入凹部13eに挿入される。この図11に示される初期状態から、図12に示されるように、可動型駆動ステージ8に沿って可動型11を移動させて、可動型11と固定型12と連結させてキャビティ13を形成する(型締め過程)。
【0051】
ついで、図13に示されるように、材料充填機構6に半溶融・半凝固金属材料Cを投入する(材料注入過程)。
【0052】
ついで、図14に示されるように、材料充填機構6のプランジャー6aを油圧または空気圧によって移動させて半溶融・半凝固金属材料Cを成形型2内部に圧力をかけて充填する(充填過程)。このとき、充填される途中の半溶融・半凝固金属Mは、ランナー溝13dを通ってキャビティ13に充填される。
【0053】
ついで、図15に示されるように、半溶融・半凝固金属Mがキャビティ13の全体に充填が完了し、その後、半溶融・半凝固金属Mが冷却して固化したとき、キャビティ13内部には成型後のスクロール部材50が成型される(充填完了)。成型後のスクロール部材50は、ランナー溝13d内部に形成されたランナー54および材料残部55につながっている。
【0054】
ついで、図16に示されるように、可動型駆動ステージ8に沿って可動型11を移動させて、可動型11を固定型12から離して、成形型2を開く(型開き過程)。このとき、置き中子5は、スクロール部材50とランナー54との間に挟まった状態で可動型11側へ移動する。また、この型開き過程では、材料充填機構6のプランジャー6aは、スクロール部材50、ランナー54および置き中子5が一体になったものが固定型12から離れて可動型11側へ移動しやすいように、少し押し出される。
【0055】
ついで、図17に示されるように、押出ピン駆動機構7を駆動させて渦巻き用押出ピン3を可動型11の渦巻き状溝13a内部に突出させることにより、渦巻き用押出ピン3はスクロール部材50の渦巻き状の部分51を押す。また、その他の押出ピン9も、押出ピン駆動機構7の駆動により、可動型11から突出して成形品の渦巻以外の部分を押す。これにより、可動型11から、成型されたスクロール部材50、ランナー54、材料残部55、および置き中子5の一体になったものを可動型11内部から押し出すことが可能である(押出し過程)。また、押出しと同時に、プランジャー6aは、初期位置に戻される。
【0056】
ついで、図18に示されるように、成型されたスクロール部材50、ランナー54、材料残部55、および置き中子5の一体になったものを、成形型2内部から取り出す(成型品取出し過程)。置き中子5は、スクロール部材50およびランナー54に嵌合している。このとき、渦巻き用押出ピン3およびその他の押出ピン9は、図11の初期状態まで戻される。
【0057】
成型されたスクロール部材50は、ランナー54とボス53との境界部分で切断され、ランナー54および材料残部55から分離される。それとともに、スクロール部材50とランナー54との間に挟まっている置き中子5も分離される。
【0058】
スクロール部材50の最後の仕上げは、機械加工によって表面仕上げを施すことにより、スクロール部材50の完成品に要求される寸法および表面粗さに仕上げることができる。
<実施形態の特徴>
(1)
従来の置き中子ではインサートブロックとの隙間が一定であるので、傷がつくとその傷がまた金型を傷つけて引抜方向に直線状の傷がついてしまっていた。しかし、本実施形態では、図2および図4〜7に示されるように、インサートブロック14と置き中子5とが接触する縦方向に延びる第1接触面5a、14aおよび第2接触面5b、14bは、固定型12に対する置き中子5の抜き方向(図2の紙面に対して垂直手前側の方向)に対して置き中子5の外形寸法を拡大する方向へ傾斜している。
【0059】
これにより、図6〜7に示されるように置き中子5が引き抜かれることで隙間が広がっていくため、インサートブロック14と置き中子5とが接触する縦方向に延びる第1接触面5a、14aおよび横方向に延びる第2接触面5b、14bには、鋳バリによって傷がつきにくくなり、また、発生した傷によってさらに新たな傷を形成することもなくなる。
【0060】
その結果、成型後に置き中子5を固定型12からスムーズに抜くことが可能になり、固定型12から抜けなくなるなどの不具合が無くなる。また、鋳バリによってインサートブロック14および置き中子5の接触面5a、14aおよび5b、14bの傷の発生を抑えることができるので、置き中子5およびインサートブロック14その他の金型寿命が延びる。さらに、置き中子5およびインサートブロック14の傷の発生を抑えることができるので、傷の修繕による生産ラインの停止の回数を大幅に減らすことができ、スクロール部材50等の成型品の生産性が向上する。
(2)
実施形態の成形型2では、複数の位置決め部が固定型12に着脱自在に取り付けられた複数のインサートブロック14からなり、複数のインサートブロック14の各々は、少なくとも1つの接触面14aおよび14bを有している。このようにインサートブロック14の接触面14aおよび14bによって置き中子5を位置決めするので、磨耗や損傷が発生した場合でも、インサートブロック14のみの交換で済むため、修理およびメンテナンス等のコストが安くすむ。
(3)
実施形態の成形型2では、インサートブロック14の接触面は、互いに直交またはそれに近い角度で交差する第1接触面14aおよび第2接触面14bを有しており、第1接触面14aおよび第2接触面14bは、固定型12に対する置き中子5の抜き方向Dに対して置き中子5の外形寸法を拡大する方向へそれぞれ傾斜している。各インサートブロック14は、2つの接触面14aおよび14bを有しているので、1つのインサートブロック14で2面を位置決めすることでインサートブロック14の段替時の調整時間が少なく済む。また、それにより、インサートブロック14を全て、別々にした場合に比べて、取り付け個数も減ることで段替時間を減らすことができる。しかも、置き中子5を所定位置に正確に位置決めすることができる。
(4)
実施形態の成形型2では、インサートブロック4は、ネジ止めなどによって固定型12に着脱自在に取り付けられている。これにより、インサートブロック14の交換が可能なので、固定型12の寿命が延びる。
(5)
実施形態の成形型2では、インサートブロック14は、固定型12よりも硬い材料で製造されているので、固定型12の大部分又は全てを硬い材料にするとコスト的に高くなるが、インサートブロック14を別体物にして高硬度材料を使用することで製造等のコストが安くすむ。しかも、インサートブロック14の寿命が延びる。
<変形例>
上記実施形態では、置き中子5を固定型12内部に位置決めするための位置決め部の一例として、固定型12とは別体のインサートブロック14を設けた例をあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の変形例として、インサートブロック14を設けずに固定型12の内壁に段差を位置決め部として形成して、その段差を用いて置き中子5を位置決めしてもよい。
【0061】
この場合も、置き中子5と位置決め部との接触面に鉄系の固い鋳バリが発生しても、置き中子5を傷つけずにスムーズに抜くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、鉄系部品をダイキャスト成形するためのダイキャスト成形型に広く適用することが可能である。したがって、溶融、半溶融あるいは半凝固の鉄系材料などの種々の鉄系材料を用いたダイキャスト成形をするためのダイキャスト成形型に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ダイキャスト成型装置(成型装置)
2 ダイキャスト成形型(成形型)
3 渦巻き用押出ピン
5 置き中子
11 可動型
12 固定型
13 キャビティ(13a渦巻き状溝、13b平板状溝、13c円柱状溝、13dランナー溝、13e挿入凹部)
14 インサートブロック
5a、14a 第1接触面
5b、14b 第2接触面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開平7−16844号公報
【特許文献2】特開2001−212850号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系部品をダイキャスト成形するためのダイキャスト成形型(2)であって、
成型品の外形形状に対応するキャビティ(13)の一部を形成する第1凹部を有する固定型(12)と、
前記キャビティ(13)の他の部分を形成する第2凹部を有しており、前記固定型(12)に近づく方向および前記固定型(12)から離れる方向へ往復移動可能な可動型(11)と、
前記固定型(12)の第1凹部の内部に配置され、ダイキャスト成形後に前記固定型(12)から前記可動型(11)が離れる際に前記成型品に挟まった状態で前記可動型(11)とともに前記固定型(12)から離れる置き中子(5)と、
前記固定型(12)内部における前記置き中子(5)の位置決めを行うために前記置き中子(5)と接触する複数の位置決め部と、
を備えており、
前記位置決め部と前記置き中子(5)とが接触する接触面(5a、5b、14a、14b)は、前記固定型(12)に対する前記置き中子(5)の抜き方向に対して前記置き中子(5)の外形寸法を拡大する方向へ傾斜している、
ダイキャスト成形型(2)。
【請求項2】
前記複数の位置決め部は、前記固定型(12)に着脱自在に取り付けられた複数のインサートブロック(14)からなり、
前記複数のインサートブロック(14)の各々は、少なくとも1つの前記接触面(14a、14b)を有している、
請求項1に記載のダイキャスト成形型(2)。
【請求項3】
前記接触面(14a、14b)は、互いに交差する第1接触面(14a)および第2接触面(14b)を有しており、
前記第1接触面(14a)および第2接触面(14b)は、前記固定型(12)に対する前記置き中子(5)の抜き方向に対して前記置き中子(5)の外形寸法を拡大する方向へそれぞれ傾斜している、
請求項2に記載のダイキャスト成形型(2)。
【請求項4】
前記インサートブロック(14)は、前記固定型(12)よりも硬い材料で製造されている、
請求項2に記載のダイキャスト成形型(2)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−62705(P2011−62705A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212805(P2009−212805)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(000125842)虹技株式会社 (26)
【Fターム(参考)】