説明

ダイシングシートおよび半導体チップの製造方法

【課題】突起状電極(貫通電極)間に粘着剤層の残渣が残留せず、チップを破損せずにダイシングおよびピックアップ可能なダイシングシートを提供する。
【解決手段】基材と、その片面に設けられた中間層2と、中間層の上に設けられた厚みが8〜30μmの粘着剤層1とからなり、粘着剤層が、エネルギー線硬化性二重結合を分子内に有する化合物を含有し、粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’が中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の4倍よりも大きく、高さ15μm、直径15μmの円柱型電極が40μmのピッチで等間隔に3行3列に形成されたウエハに、粘着剤層を介して貼付した場合に、3行3列に形成された円柱型電極の中心の電極において、該電極の高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層が接触しない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを回路毎に個片化し、半導体チップを作成する際に、半導体ウエハを固定するために使用されるダイシングシートに関する。また、本発明は該ダイシングシートを使用した半導体チップの製造方法に関する。特に本発明のダイシングシートは、表面に突起状電極を有する半導体ウエハ、たとえばいわゆる貫通電極(TSV)を有する半導体ウエハを固定、切断し、チップを製造する際に好ましく用いられる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは表面に回路が形成された後、ウエハの裏面側に研削加工を施し、ウエハの厚さを調整する裏面研削工程およびウエハを所定のチップサイズに個片化するダイシング工程が行われる。また裏面研削工程に続いて、さらに裏面にエッチング処理などの発熱を伴う加工処理や、裏面への金属膜の蒸着のように高温で行われる処理が施されることがある。チップサイズに個片化された半導体ウエハ(半導体チップ)は、ピックアップされ、次の工程に移送される。
【0003】
近年のICカードの普及にともない、その構成部材である半導体チップの薄型化が進められている。このため、従来350μm程度の厚みであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。
【0004】
また、電子回路の大容量化、高機能化に対応して、複数の半導体チップを立体的に積層した積層回路の開発が進んでいる。このような積層回路においては、従来は半導体チップの導電接続をワイヤボンディングにより行うことが一般的であったが、近年の小型化・高機能化の必要性により、ワイヤボンディングをすることなく、半導体チップに回路形成面から裏面に貫通する電極(貫通電極)を設けて、直接上下のチップ間を導電接続する方法が効果的な手法として開発されている。
【0005】
このような貫通電極付チップの製造方法としては、例えば、半導体ウエハの所定の位置にプラズマ等により貫通孔を設け、この貫通孔に銅等の導電体を流し込んだ後、エッチング等を施して半導体ウエハの表面に回路と貫通電極とを設ける方法等が挙げられる。回路及び貫通電極が設けられた半導体ウエハは、基材フィルム上に粘着剤層が形成されたダイシングシートを用いてダイシングされ、個々の貫通電極付チップが得られる。
【0006】
上記のような貫通電極付チップを得るためのダイシング工程においては、基材フィルム上に形成された粘着剤層が貼付面に突出した貫通電極に押し当てられることで変形し、電極の突出部と略同形状の粘着剤層の陥没部に電極を埋め込むことで、貫通電極が形成された半導体ウエハをダイシングシートに貼付・固定し、次いでダイシングを行い、個々のチップを得る方法が提案されている(特許文献1,2)。しかしながら、特許文献1,2に記載のダイシングシートでは、貫通電極を粘着剤層が埋め込むため、貫通電極間に粘着剤層の残渣が残留するおそれがあった。該残渣により、チップ表面は汚染され、半導体チップの信頼性が低下することがある。特許文献1、2の方法においてもこのような残渣残留の低減手段が提案されているが、残渣残留の可能性を完全に払拭できるとは言い切れなかった。また、特許文献1,2に記載のダイシングシートでは、貫通電極を埋め込むためにダイシング時の弾性は低く調整する必要がある。このため、ダイシング時の振動によりチップ欠け(チッピング)が発生しやすいという問題も抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−202926号公報
【特許文献2】特開2010−135494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、突起状電極(貫通電極)間に粘着剤層の残渣が残留せず、チップを破損せずにダイシングおよびピックアップ可能なダイシングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕基材と、その片面に設けられた中間層と、中間層の上に設けられた厚みが8〜30μmの粘着剤層とからなり、
粘着剤層が、エネルギー線硬化性二重結合を分子内に有する化合物を含有し、粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’が中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の4倍よりも大きく、
高さ15μm、直径15μmの円柱型電極が40μmのピッチで等間隔に3行3列に形成されたウエハに、粘着剤層を介して貼付した場合に、3行3列に形成された円柱型電極の中心の電極において、該電極の高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層が接触しないことを特徴とするダイシングシート。
【0010】
〔2〕エネルギー線硬化性二重結合を分子内に有する化合物が、重合体の主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型粘着性重合体を含む〔1〕に記載のダイシングシート。
【0011】
〔3〕中間層の23℃における貯蔵弾性率G’が10Pa以上10Pa未満である〔1〕または〔2〕に記載のダイシングシート。
【0012】
〔4〕粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’が3×10Pa以上であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のダイシングシート。
【0013】
〔5〕粘着剤層が、反応性官能基を有するアクリル重合体および架橋剤を含有し、
アクリル重合体100質量部に対して、架橋剤を5質量部以上含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のダイシングシート。
【0014】
〔6〕架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする〔5〕に記載のダイシングシート。
【0015】
〔7〕突起状電極が設けられたウエハに貼付して用いることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のダイシングシート。
【0016】
〔8〕突起状電極が、貫通電極である〔7〕に記載のダイシングシート。
【0017】
〔9〕中間層が、突起状電極の高さの0.5〜1.5倍の厚みであることを特徴とする〔7〕または〔8〕に記載のダイシングシート。
【0018】
〔10〕突起状電極を有する半導体ウエハの電極が形成された面に、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のダイシングシートを貼付する工程、該半導体ウエハを回路ごとに個片化して半導体チップを作製する工程、半導体チップをピックアップする工程を含む半導体チップの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るダイシングシートは、半導体ウエハに貼着される際に、粘着剤層が突起状電極間に追従せず、突起状電極の形成された領域(電極形成領域)の外周部に追従する。その結果、突起状電極間に粘着剤層の残渣は残留せず、かつ重合不全による電極形成領域の外周部における残渣残留も抑制される。また、電極形成領域の外周部において粘着剤層を半導体ウエハに貼着し、かつ粘着剤層が過度に柔軟化していないため、ダイシング時における水の侵入を防ぎ、ダイシング性に優れ、チッピングの発生を防止できる。また、粘着剤層をエネルギー線硬化することにより、その粘着力を制御できるため、チップのピックアップが容易であると共に、チップの破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るダイシングシートの概略断面図である。
【図2】本発明に係るダイシングシートを円柱型電極が形成されたウエハに貼付した状態を示す概略断面図である。
【図3】円柱型電極が形成された半導体ウエハの回路形成面の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るダイシングシートについて、具体的に説明する。図1に示すように、本発明に係るダイシングシート10は、基材3と、その片面に設けられた中間層2と、中間層2の上に設けられた粘着剤層1とからなる。
【0022】
(粘着剤層1)
粘着剤層の硬化前(エネルギー線照射前)の23℃における貯蔵弾性率G’は、中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の4倍よりも大きく、好ましくは中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の5倍よりも大きい。このように低弾性率の中間層2を覆う形で、比較的弾性の高い粘着剤層が存在することで、突起状電極間に粘着剤層が追従することを好適に抑制し、突起状電極間における粘着剤層の残渣の発生や、ピックアップ時におけるチップの破損を防止できる。また、粘着剤層と中間層の積層体において、粘着剤層が中間層の低弾性を補強するので、低弾性率の層の一層のみが存在する場合に比べて、ダイシング時のウエハの振動が抑制され、チッピングが発生しにくくなる。粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’は、具体的には好ましくは3×10Pa以上、より好ましくは3.5×10Pa〜1×10Paである。粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’を上記範囲とすることで、粘着剤の突起状電極間への追従を抑制する効果等がより確実に得られる。
【0023】
粘着剤層の厚みは、8〜30μmであり、より好ましくは8〜25μmの範囲である。粘着剤層の厚みが上記範囲にあることで、ダイシング性が向上し、チッピングの発生を抑制できる。また、突起状電極間に粘着剤層が追従することを好適に抑制し、突起状電極間における粘着剤層の残渣の発生や、ピックアップ時におけるチップの破損を防止でき、かつ後述する突起状電極の形成された領域(電極形成領域)の外周部におけるダイシングシートの追従性が維持される。
【0024】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性二重結合を分子内に有する化合物および粘着性を発現させるための物質からなる成分(以下、「エネルギー線硬化型粘着成分」と記載することがある。)を含有する。
【0025】
粘着剤層は、エネルギー線硬化型粘着成分と必要に応じ光重合開始剤とを配合した粘着剤組成物とを用いて形成される。さらに、上記粘着剤組成物には、各種物性を改良するため、必要に応じ、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては架橋剤が好ましい。
【0026】
以下、エネルギー線硬化型粘着成分について、アクリル系粘着剤を例として具体的に説明する。
【0027】
アクリル系粘着剤は、粘着剤組成物に十分な粘着性および造膜性(シート形成性)を付与するためにアクリル重合体(A)を含有し、またエネルギー線硬化性化合物(B)を含有する。エネルギー線硬化性化合物(B)は、エネルギー線重合性基を含み、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化し、粘着剤組成物の粘着力を低下させる機能を有する。また、上記成分(A)および(B)の性質を兼ね備えるものとして、主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型粘着性重合体(以下、成分(AB)と記載する場合がある)を用いることが好ましい。このようなエネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)は、粘着性とエネルギー線硬化性とを兼ね備える性質を有する。
【0028】
アクリル重合体(A)としては、従来公知のアクリル重合体を用いることができる。アクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。また、アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70〜30℃、さらに好ましくは−60〜20℃の範囲にある。
【0029】
アクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体が挙げられる。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリレート;
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
また、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が共重合されていてもよい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、本発明におけるアクリル重合体(A)は反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基は、本発明における粘着剤層を構成する粘着剤組成物に好ましく添加される架橋剤の反応性官能基と反応して三次元網目構造を形成し、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’を所定範囲に調整することが容易になる。アクリル重合体(A)の反応性官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等が挙げられるが、架橋剤と選択的に反応させやすいことから、水酸基であることが好ましい。反応性官能基は、上述した水酸基含有(メタ)アクリレートやアクリル酸等の反応性官能基を有する単量体を用いてアクリル重合体(A)を構成することで、アクリル重合体(A)に導入できる。
【0031】
アクリル重合体(A)は、その構成する全単量体中、反応性官能基を有する単量体を5〜30質量%含むことが好ましく、10〜25質量%含むことがさらに好ましい。反応性官能基を有する単量体の配合割合をこのような範囲とすることで、架橋剤によりアクリル重合体(A)が効率的に架橋され、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’を所定範囲に調整することが容易になる。また、アクリル重合体(A)の反応性官能基(例えば水酸基)当量は、架橋剤の反応性官能基(例えばイソシアネート基)当量の0.17〜2.0倍であることが好ましい。アクリル重合体(A)の反応性官能基当量と、架橋剤の反応性官能基当量との関係を上記範囲にすることで、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’を所定範囲に調整することがさらに容易になる。
【0032】
エネルギー線硬化性化合物(B)は、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物である。このエネルギー線硬化性化合物の例としては、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物(単官能、多官能のモノマーおよびオリゴマー)が挙げられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどのアクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、イソボルニルアクリレートなどの環状脂肪族骨格含有アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が用いられる。このような化合物は、分子内にエネルギー線硬化性二重結合を有し、通常は、分子量が100〜30000、好ましくは300〜10000程度である。
【0033】
一般的には成分(A)(後述するエネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)を含む)100質量部に対して、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物は好ましくは0〜200質量部、より好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは、1〜30質量部程度の割合で用いられる。エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物は、その分子量の低さから、添加することによりエネルギー線硬化前の粘着剤層を軟化させる。すると、後述するような突起状電極間に粘着剤層が追従しにくくなるという本発明の効果が十分に得られなくなるおそれがある。このため、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物の使用量は少なく制限することが好ましい。
【0034】
上記成分(A)および(B)の性質を兼ね備えるエネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)は、重合体の主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなる。上述のとおり、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物の使用量は少なく制限することが好ましいが、この場合にはエネルギー線の照射による粘着剤層の硬化が不十分となり、粘着剤層の被着体への残渣の抑制という効果が低下する可能性がある。そこで、エネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)を粘着剤層に適用することで、エネルギー線照射前の粘着剤層を軟化させることなく、かつ、エネルギー線の照射により粘着剤層の硬化を十分に進行させることができる。
また、エネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)は分子内にエネルギー線重合性基を有し、かつ反応性官能基をも有することが可能であるため、一分子が他の分子と結合する確率が高い。このため、エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた後、低分子成分が三次元網目構造に取り込まれずに残存する可能性が低い。したがって、三次元網目構造に取り込まれずに残存した低分子成分に起因した残渣の発生が抑制される。
【0035】
エネルギー線硬化型粘着性重合体の主骨格は特に限定はされず、粘着剤として汎用されているアクリル共重合体であってもよい。
【0036】
エネルギー線硬化型粘着性重合体の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線硬化性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介してエネルギー線硬化型粘着性重合体に結合していてもよい。
【0037】
エネルギー線重合性基が結合されたエネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。また、エネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−70〜30℃、より好ましくは−60〜20℃の範囲にある。
【0038】
エネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル粘着性重合体と、該官能基と反応する置換基とエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を1分子毎に1〜5個を有する重合性基含有化合物とを反応させて得られる。アクリル粘着性重合体は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体と、前述した成分(A)を構成するモノマーとからなる共重合体であることが好ましい。該重合性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0039】
上記のようなアクリル重合体(A)およびエネルギー線硬化性化合物(B)又は、エネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)を含むアクリル系粘着剤は、エネルギー線照射により硬化する。エネルギー線としては、具体的には、紫外線、電子線等が用いられる。
【0040】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。エネルギー線として紫外線を用いる場合に、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
【0041】
光重合開始剤の含有量は、理論的には、粘着剤層中に存在する不飽和結合量(エネルギー線硬化性二重結合量)やその反応性及び使用される光重合開始剤の反応性に基づいて決定されるべきであるが、複雑な混合物系においては必ずしも容易ではない。一般的な指針として、光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化性化合物(B)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が前記範囲を下回ると光重合の不足で満足なピックアップ性が得られないことがあり、前記範囲を上回ると光重合に寄与しない残留物が生成し、粘着剤層の硬化性が不充分となることがある。
【0042】
架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられ、有機多価イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましい。
【0043】
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0044】
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0045】
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
【0046】
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0047】
架橋剤はアクリル重合体(A)(エネルギー線硬化型粘着性重合体(AB)を含む)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8〜35質量部、特に好ましくは12〜30質量部の比率で用いられる。架橋剤の配合量を上記範囲とすることで、粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’を好ましい範囲に調整することが容易となる。
【0048】
また、他の成分として、架橋剤のほかに染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等を添加してもよい。
【0049】
また、粘着剤層のエネルギー線照射前における粘着力は、好ましくは500mN/25mm以上であり、より好ましくは800〜30000mN/25mmである。また、エネルギー線照射後における粘着力は、好ましくは10〜500mN/25mmであり、より好ましくは10〜300mN/25mmである。粘着剤層の粘着力を上記範囲とすることで、ダイシング性とピックアップ性に優れる。
【0050】
また、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0051】
(中間層2)
中間層2は、たとえば従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。エネルギー線硬化(紫外線硬化、電子線硬化等)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
【0052】
上述のとおり、粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’は、貯蔵弾性率G’の4倍よりも大きく、好ましくは中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の5倍よりも大きい。粘着剤層に対して所定の程度弾性率が低い中間層を粘着剤層と基材の間に具備することで、本発明のダイシングシートは、通常比較的弾性の高い粘着剤層のみを設けた場合と比べて、電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が向上する。一方で、突起状電極間においては粘着剤層が追従しやすくなる傾向は見られないが、これは、電極間においては比較的弾性の高い粘着剤層が突起状電極を支柱として伸展された状態にあり、粘着剤層が形状を維持しようとする力と、中間層が電極間に侵入しようとする力とが拮抗するためと考察する。
粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’が中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の4倍以下である場合には、電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が低下し、突起状電極が形成されたウエハに本発明のダイシングシートを貼付する際に、電極形成領域の外周部において、ウエハとダイシングシートとの間に噛み込む空気の量が多くなるため、空気中の酸素によりエネルギー線硬化性化合物等の活性が一部失われ、エネルギー線照射時に粘着剤層が重合不全を起こすことがある。その結果、電極形成領域の外周部において糊残りが発生するおそれがある。
中間層の23℃における貯蔵弾性率G’は、具体的には好ましくは10Pa以上10Pa未満であり、より好ましくは10〜9×10Pa、さらに好ましくは10〜8×10Paである。中間層の23℃における貯蔵弾性率G’をこのような範囲に調整することで、電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性を向上させる効果がより確実に得られる。
中間層の23℃における貯蔵弾性率G’が低すぎると、突起状電極間に粘着剤層が追従し、突起状電極間に粘着剤層の残渣が発生することがある。
なお、中間層がエネルギー線照射により硬化する性質を有する場合には、中間層の23℃における貯蔵弾性率G’は、エネルギー線照射前の貯蔵弾性率である。
【0053】
また、中間層の厚みは、後述する突起状電極の高さの0.5〜1.5倍であることが好ましく、1.0〜1.5倍であることがより好ましい。中間層の具体的な厚みは、上記の好ましい範囲から選択し、適用されるウエハの突起状電極の高さから計算して定めればよい。中間層の厚みが上記範囲にあることで、突起状電極間におけるダイシングシートの非追従性及び電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性に優れ、ダイシング性が向上し、チッピングの発生を抑制できる。
【0054】
(基材3)
基材3としては、特に限定はされないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム、およびその水添加物または変性物等からなるフィルムが用いられる。またこれらの架橋フィルム、共重合体フィルムも用いられる。上記の基材は1種単独でもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた複合フィルムであってもよい。
【0055】
また、粘着剤層および/または中間層を硬化するために照射するエネルギー線として紫外線を用いる場合には、紫外線に対して透過性を有する基材が好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には基材に光線透過性は必要はない。被着体面の視認性が求められる場合、基材は透明であることが好ましい。基材は着色されていてもよい。
【0056】
また、基材の上面、すなわち中間層が設けられる側の基材表面には中間層との密着性を向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー層を設けてもよい。また、中間層とは反対面に各種の塗膜を塗工してもよい。本発明に係るダイシングシートは、上記のような基材の片面に中間層を形成し、該中間層の上に粘着剤層を設けることで製造される。基材の厚みは、好ましくは20〜200μm、より好ましくは25〜110μm、特に好ましくは50〜90μmの範囲にある。基材の厚みが大きいと、基材の曲げに対抗する力が大きくなり、ピックアップ時の剥離角度が大きくなりにくい。このため、ピックアップに要する力が増加し、ピックアップ性に劣る場合がある。基材の厚みが小さい場合には、材料によっては製膜が困難となる場合がある。
【0057】
上記基材の表面に中間層を設ける方法は、中間層を構成する中間層用組成物を剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布して中間層を形成し、上記基材の表面に転写しても構わないし、上記基材の表面に中間層用組成物を直接塗布して中間層を形成しても構わない。中間層の上に粘着剤層を設ける方法は、粘着剤組成物を用い、基材上に中間層を設ける方法と同様である。このようにして本発明に係るダイシングシートが得られる。
【0058】
このような本発明に係るダイシングシートは、高さ15μm、直径15μmの円柱型電極が40μmのピッチで等間隔に3行3列に形成されたウエハに、その粘着剤層を介して貼付した場合に、3行3列に形成された円柱型電極の中心の電極において、該電極の高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層が接触しないものである。つまり、図2及び図3に示すように、本発明に係るダイシングシート10は、高さ15μm、直径15μmの円柱型電極20(20a〜20i)が40μmのピッチで等間隔に3行3列に形成された領域(電極形成領域)の内周部25(図3における破線の内側)においては、粘着剤層1が電極20間に追従せず、電極20eの高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層1が接触しない。突起状電極の代表例としての上記の寸法および配列の円柱型電極の電極間の根元部分(電極の高さ7.5μm以下の部分)に粘着剤層が接触しないように調整することにより、突起状電極の電極間に粘着剤層が追従しにくいという本発明の効果を得ることができる。このような特性は、特定厚みの粘着剤層および中間層をダイシングシートが有し、貼付時においての中間層と粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’に差を設けることにより調整可能である。
また、電極形成領域の外周部26(図3における破線の外側)において、粘着剤層1が電極20に追従しウエハ30に貼着する。このため、ダイシング時における水の侵入を防ぎ、ダイシング性に優れ、チッピングの発生を防止できる。また、粘着剤層1をエネルギー線硬化することにより、その粘着力を制御できるため、チップのピックアップが容易であると共に、チップの破損を防止できる。
なお、上記の特性の評価の際には、ウエハへの貼付は、23℃、貼付圧0.3MPa、貼付速度5mm/秒の条件下で行われる。
【0059】
本発明に係るダイシングシートは、突起状電極を有する半導体ウエハの電極が形成された面に貼付されることに用いられることが好ましい。突起状電極としては、円柱型電極、球状電極等が挙げられる。本発明に係るダイシングシートは特に近年使用の増えている貫通電極を有するウエハに好適に用いることができる。半導体ウエハへのダイシングシートの貼付方法は特に限定されない。
【0060】
次いで、ダイシングブレードなどの切断手段を用いて、半導体ウエハを回路毎に個片化して半導体チップを作製する。この際の切断深さは、半導体ウエハの厚みと、粘着剤層と中間層の厚みとの合計およびダイシングブレードの摩耗分を加味した深さにする。
【0061】
ダイシング後、必要に応じて本発明に係るダイシングシートをエキスパンドして各半導体チップの間隔を離間させた後、吸引コレット等の汎用手段により各半導体チップのピックアップを行うことで、半導体チップが製造される。また、粘着剤層にエネルギー線を照射し、粘着力を低下させた後、エキスパンド、ピックアップを行うことが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例における「追従性」、「ダイシング性」、「ピックアップ性」、「粘着剤層の残渣」および「貯蔵弾性率G’」は下記のように評価した。
【0063】
<追従性>
3行3列に40μmのピッチで等間隔に、両面に円柱型電極(高さ15μm、直径15μm)がそれぞれ突出して形成されたシリコンウエハ(直径8インチ、厚み50μm)の片面に、ダイシングシートを貼付(23℃、貼付圧0.3MPa、貼付速度5mm/秒)した。次いで、紫外線照射装置(リンテック社製 RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて紫外線を照射し(照度230mW/cm、光量190mJ/cm)、粘着剤層を硬化した。ウエハからダイシングシートを剥離した後、1行1列目の円柱型電極(図3の20aの円柱型電極)の痕の中心と、3行3列目の円柱型電極(図3の20iの円柱型電極)の痕の中心を結ぶ直線に沿って、剥離したダイシングシートを切断した。切断面をデジタル顕微鏡を用いて観察し、円柱型電極の頭頂部が接していた点と、粘着剤層がウエハ表面に最も接近した点の、ウエハ表面からの距離の差を求め、この差が7.5μmよりも小さくなっているか否かを確認することで、円柱型電極の高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層が接触したか否かを判断した。
円柱型電極間に粘着剤層が追従していない場合(電極の高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層が接触していない場合)を「A」、円柱型電極間に追従した場合を「B」と評価した。
【0064】
<ダイシング性>
シリコンウエハをダイシングしてチップを得、10個の該チップにおける端部を観察し、端部において30μmより大きいチッピング(チップ端部の欠け)がない場合を「A」、30μm超、50μm以下のチッピングがある場合を「B」、50μmより大きいチッピングがある場合を「C」と評価した。なお、ダイシング条件は以下の通りである。
【0065】
ダイシング条件
両面に円柱型電極(高さ15μm、直径15μm)が形成されたシリコンウエハ(直径8インチ、厚み50μm)の片面に、ダイシングシートを貼付(23℃、貼付圧0.3MPa、貼付速度5mm/秒)した。ダイシング装置(ディスコ社製 DFD651)を用い、切断速度20mm/分、ダイシングシートの基材への切り込み深さ20μmでシリコンウエハのダイシングを行い、チップ(サイズ:5mm×5mm)を得た。なお、ダイシングブレードとしては、ディスコ社製ダイシングブレード(27HECC)を用い、ブレードの回転数を40000rpmとした。また、円柱型電極は40μmのピッチで等間隔に形成され、1mm当たり400個であった。
【0066】
<ピックアップ性>
シリコンウエハをダイシングしてチップを得、紫外線照射装置(リンテック社製 RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて紫外線を照射した(照度230mW/cm、光量190mJ/cm)。次いで、ピックアップ装置(キャノンマシナリー社製 BESTEM D02)を用いて、チップをピックアップした。チップのピックアップが可能であった場合を「A」、ピックアップできなかった場合を「B」と評価した。なお、ダイシング条件は上記の通りである。
【0067】
<粘着剤層の残渣>
ピックアップ後のチップの表面を観察し、円柱型電極間および円柱型電極形成領域の外周部における粘着剤層の残渣の有無を確認した。残渣が発生しなかった場合を「A」、残渣がわずかに発生した場合を「B」、残渣が発生した場合を「C」と評価した。
【0068】
<貯蔵弾性率G’>
硬化前の中間層および粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性装置(レオメトリクス社製 RDAII)により、周波数1Hz、ねじり量0.5%で測定した。
【0069】
(実施例1)
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=62/10/28(質量比)を反応させて得られたアクリル粘着性重合体と、該アクリル粘着性重合体100g当たり30.2g(アクリル粘着性重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型粘着性重合体(重量平均分子量:60万)100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び、架橋剤(多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL))8.6質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。なお、重量平均分子量は、市販の分子量測定機(本体製品名「HLC−8220GPC」、東ソー(株)製;カラム製品名「TSKGel SuperHZM-M」、東ソー(株)製;展開溶媒 テトラヒドロフラン)を用いて得た値である(以下、同様。)。また、質量部数は溶媒希釈された荷姿のものであっても、すべて固形分換算の値である(以下、同様。)。
【0070】
〔中間層組成物の作製〕
ブチルアクリレート/アクリル酸=91/9(質量比)を反応させてアクリル重合体(重量平均分子量:80万)を得た。
また、水酸基から算出した分子量700のポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートとを重合させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーの末端に、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを反応させ、重量平均分子量が4000の2官能ウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
【0071】
上記アクリル重合体100質量部、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー80質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))2.4質量部、及び、架橋剤(多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL))1質量部を溶媒中で混合し、中間層組成物を得た。
【0072】
〔ダイシングシートの作製〕
剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET3811(S))に、上記中間層組成物を、乾燥後の厚みが15μmとなるように塗布・乾燥(乾燥条件:100℃、1分間)して、剥離フィルム上に形成された中間層を得た。次いで、中間層と基材(エチレンメタクリル酸共重合フィルム 80μm厚)とを貼り合わせて、中間層上から剥離フィルムを剥離し、中間層を基材上に転写した。
【0073】
また、剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET3811(S))に、上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布・乾燥(乾燥条件:100℃、1分間)して、剥離フィルム上に形成された粘着剤層を得た。
【0074】
その後、基材付き中間層と剥離フィルム付き粘着剤層とを貼り合わせて、ダイシングシートを得、剥離フィルムを除去して各評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例2)
中間層の厚みを20μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例3)
基材として、厚み60μmのエチレンメタクリル酸共重合フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例4)
粘着剤層の厚みを20μmとしたこと以外は実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例5)
以下の中間層組成物を用い、中間層の厚みを20μmとしたこと以外は実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
〔中間層組成物の作製〕
ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=85/15(質量比)を反応させて得られたアクリル粘着性重合体と、該アクリル粘着性重合体100g当たり16.2g(アクリル粘着性重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型粘着性重合体(重量平均分子量:60万)100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び、架橋剤(多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL))0.1質量部を溶媒中で混合し、中間層組成物を得た。
【0080】
(実施例6)
以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
〔粘着剤組成物の作製〕
2−エチルヘキシルアクリレート/酢酸ビニル/2−ヒドロキシエチルアクリレート=40/40/20(質量比)を反応させて得られたアクリル粘着性重合体と、該アクリル粘着性重合体100g当たり21.6g(アクリル粘着性重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化型粘着性重合体(重量平均分子量:55万)100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び、架橋剤(多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL))7.0質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0082】
(実施例7)
粘着剤層の厚みを15μmとしたこと以外は実施例6と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例8)
以下の中間層組成物を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
〔中間層組成物の作製〕
2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=90/10(質量比)を重合させて得たアクリル重合体(重量平均分子量:78万)100質量部、及び、架橋剤(多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL))0.5質量部を溶媒中で混合し、中間層組成物を得た。
【0085】
(実施例9)
中間層の厚みを25μmとしたこと以外は実施例5と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例10)
中間層の厚みを10μmとしたこと以外は実施例5と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1)
中間層を用いなかったこと以外は実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例2)
中間層を用いず、粘着剤層の厚みを25μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例3)
以下の中間層組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
〔中間層組成物の作製〕
ブチルアクリレート/アクリル酸=90/10(質量比)を重合させて得たアクリル重合体(重合平均分子量:85万)100質量部、及び、架橋剤(多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL))2質量部を溶媒中で混合し、中間層組成物を得た。
【0091】
(比較例4)
中間層の厚みを20μmとし、粘着剤層を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例5)
粘着剤層の厚みを5μmとしたこと以外は実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例6)
粘着剤層の厚みを40μmとしたこと以外は実施例3と同様にしてダイシングシートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例9のダイシングシートでは、中間層が円柱型電極の高さの1.67倍の厚みであったため、30μm超50μm以下のチッピングが発生したが実用上問題のない程度であった。また、実施例10のダイシングシートでは、中間層が円柱型電極の高さの0.67倍の厚みであったため、電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が低下し、わずかに粘着剤層の残渣が発生したが実用上問題のない程度であった。
【0096】
比較例1及び2のダイシングシートでは、中間層がないため、電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が低く、粘着剤層の残渣が発生した。また、比較例3のダイシングシートでは、中間層の23℃における貯蔵弾性率G’と粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’との差が小さいため、電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が低く、粘着剤層の残渣が発生した。また、比較例4及び5のダイシングシートでは、円柱型電極間および電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が良好であるため、電極間における粘着剤層の残渣が発生し、ピックアップできなかった。特に比較例4のダイシングシートでは、粘着剤層が設けられておらず、中間層の貯蔵弾性率G’が低いため、中間層が円柱型電極間に入り込み、粘着剤層の残渣が発生すると共に、ピックアップできなかった。また、中間層(本例では、半導体ウエハに直接接触し、粘着剤層としての機能を兼ねている。)の貯蔵弾性率G’が低いため、ダイシングにおいて50μmより大きいチッピングが発生した。比較例6のダイシングシートでは、粘着剤層が厚すぎるために、中間層と粘着剤層の積層による電極形成領域の外周部におけるダイシングシートの追従性が不十分となり、粘着剤層の残渣が発生した。
【符号の説明】
【0097】
10:ダイシングシート
1 :粘着剤層
2 :中間層
3 :粘着剤層
20(20a〜20i):円柱型電極
30:半導体ウエハ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その片面に設けられた中間層と、中間層の上に設けられた厚みが8〜30μmの粘着剤層とからなり、
粘着剤層が、エネルギー線硬化性二重結合を分子内に有する化合物を含有し、粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’が中間層の23℃における貯蔵弾性率G’の4倍よりも大きく、
高さ15μm、直径15μmの円柱型電極が40μmのピッチで等間隔に3行3列に形成されたウエハに、粘着剤層を介して貼付した場合に、3行3列に形成された円柱型電極の中心の電極において、該電極の高さ7.5μm以下の部分に粘着剤層が接触しないことを特徴とするダイシングシート。
【請求項2】
エネルギー線硬化性二重結合を分子内に有する化合物が、重合体の主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型粘着性重合体を含む請求項1に記載のダイシングシート。
【請求項3】
中間層の23℃における貯蔵弾性率G’が10Pa以上10Pa未満である請求項1または2に記載のダイシングシート。
【請求項4】
粘着剤層の硬化前の23℃における貯蔵弾性率G’が3×10Pa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイシングシート。
【請求項5】
粘着剤層が、反応性官能基を有するアクリル重合体および架橋剤を含有し、
アクリル重合体100質量部に対して、架橋剤を5質量部以上含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイシングシート。
【請求項6】
架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項5に記載のダイシングシート。
【請求項7】
突起状電極が設けられたウエハに貼付して用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイシングシート。
【請求項8】
突起状電極が、貫通電極である請求項7に記載のダイシングシート。
【請求項9】
中間層が、突起状電極の高さの0.5〜1.5倍の厚みであることを特徴とする請求項7または8に記載のダイシングシート。
【請求項10】
突起状電極を有する半導体ウエハの電極が形成された面に、請求項1〜9のいずれかに記載のダイシングシートを貼付する工程、該半導体ウエハを回路ごとに個片化して半導体チップを作製する工程、半導体チップをピックアップする工程を含む半導体チップの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−98408(P2013−98408A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241020(P2011−241020)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】