説明

ダイシングフレーム

【課題】吸着パッドによる吸着の際、略確実に吸着することのできるダイシングフレームを提供する。
【解決手段】樹脂を含む成形材料により射出成形された中空のフレーム1内に半導体ウェーハを収容し、フレーム1が真空吸着パッド20により着脱自在に真空吸着されるダイシング用のフレーム1であり、フレーム1の表面4にザグリ部30を凹み形成し、フレーム1の表面4とザグリ部30の底面31とを傾斜辺32により接続してその傾斜角度を略30°以下とする。ザグリ部30を断面略皿形に凹み形成してその傾斜辺32の傾斜角度を略30°以下とするので、ザグリ部30と真空吸着パッド20との間に大きな隙間が生じたり、真空吸着パッド20が位置ズレしたり、あるいは空気が漏れて真空吸着に支障を来たすことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハのダイシング作業等で使用されるダイシングフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のダイシングフレームは、図6に示すように、半導体ウェーハWを収容する中空のフレーム1と、このフレーム1に貼着されて収容された半導体ウェーハWを粘着保持するダイシングテープ10とを備えて形成されている(特許文献1参照)。
フレーム1は、例えばSUS等の材料を使用して平面略リング形に形成され、図示しない略漏斗形の複数の真空吸着パッドにより着脱自在に真空吸着されて移送されたり、搬送される。また、ダイシングテープ10は、例えば平面円形を呈する軟質塩化ビニル樹脂フィルムの表面にアクリル系の粘着剤が塗布して積層されることにより形成されている。
【0003】
係るダイシングフレーム1は、図6に示すように、ダイシングテープ10に粘着保持された半導体ウェーハWがダイヤモンドブレード40により複数のダイDにダイシングされ、図示しないエキスパンド装置にセットされてダイシングテープ10が半径外方向に延伸されるとともに、ダイDとダイDとの間隔が相互に接触しないよう拡大され、その後、ダイシングテープ10から複数のダイDが個々にピックアップして移送される。
【0004】
ところで、ダイシングフレームのフレーム1は、SUS等の材料を使用して形成されてきたが、近年の軽量化の要求を満たすため、樹脂材料を使用して成形され、図7に示すように表面に平面矩形のザグリ部30Aが形成されており、このザグリ部30Aに、バーコードあるいはRFIDシステムのRFタグ34が接着剤等を介して貼着される(特許文献2参照)。
ザグリ部30Aは、バーコードやRFタグ34の大きさ、厚さに応じて直線的で角ばった断面略U字形に凹み形成され、バーコードやRFタグ34よりも大きく、深く形成される。
【特許文献1】特開2006−299226号公報
【特許文献2】特開2007−62333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来におけるダイシングフレームは、以上のように構成され、フレーム1の表面に角ばったザグリ部30Aが凹み形成され、このザグリ部30Aに、バーコードあるいはRFタグ34が嵌入して貼着されるので、真空吸着パッドによる真空吸着の際、真空吸着の部位(ザグリ部30Aやその周縁部)によっては、ザグリ部30Aと真空吸着パッドとの間に隙間が生じ、この隙間から空気が漏れて真空吸着に支障を来たすという問題がある。
【0006】
係る問題を解消する手段としては、柔軟性の材料により真空吸着パッドを形成して隙間を埋めるという方法が考えられるが、材料の変更だけでは確実性に欠け、しかも、経年の材料劣化により真空吸着パッドが硬質化して真空吸着できないおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、吸着パッドによる吸着の際、略確実に吸着することのできるダイシングフレームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、樹脂を含む成形材料により成形された中空のフレーム内に半導体ウェーハを収容し、フレームが吸着パッドにより着脱自在に吸着されるものであって、
フレームの表裏面のうち少なくともいずれか一方の面に凹部を形成し、フレームの一方の面と凹部の底面とを傾斜辺により接続してその傾斜角度を略30°以下としたことを特徴としている。
【0009】
なお、凹部内に、バーコードとRFIDシステムのRFタグのいずれか一方を取り付けることができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲におけるフレームは、リング形や枠形等を特に問うものではない。また、半導体ウェーハは、口径200mm、300mm、450mm等のタイプがあるが、特に問うものではない。吸着パッドも単数複数を問うものではない。また、フレームの一方の面、凹部の底面、及び傾斜辺の間は、コーナ部を形成することなく、曲線で接続することが好ましい。凹部は、平面円形、楕円形、矩形、多角形等を問うものではなく、又フレームの表面に単数複数形成しても良いし、フレームの裏面に単数複数形成しても良い。さらに、フレームの表裏面にそれぞれ必要数形成することも可能である。
【0011】
本発明によれば、凹部の傾斜辺の傾斜角度を略30°以下とするので、凹部の周縁部が直立することがなく、吸着パッドによる吸着の際、フレームの凹部と吸着パッドとの間で気体の漏れることが少ない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸着パッドによる吸着の際、略確実に吸着することのできるダイシングフレームを提供することができるという効果がある。
また、凹部内に、バーコードとRFIDシステムのRFタグのいずれか一方を取り付ければ、バーコードあるいはRFタグを使用してフレームや半導体ウェーハに関する情報を容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係るダイシングフレームの好ましい実施形態を説明すると、本実施形態におけるダイシングフレームは、図1ないし図4に示すように、成形材料により成形された中空のフレーム1内に半導体ウェーハWを可撓性のダイシングテープ10を介し収容し、フレーム1が複数の真空吸着パッド20により着脱自在に真空吸着されるダイシング用のフレーム1であり、フレーム1の表面4後部に凹部であるザグリ部30を凹み形成するようにしている。
【0014】
フレーム1は、樹脂を含む成形材料により半導体ウェーハWよりも一回り大きい厚さ2〜3mmの平面略リング形の板に射出成形され、成形用の金型の複数の突き出しピンにより脱型される。このフレーム1の成形材料は、所定の樹脂に繊維状のフィラーや不定形のフィラーが配合されることにより調製される。例えば成形材料は、流動性、寸法安定性、精密成形に優れるポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂やナイロン系の樹脂に、強度、剛性を確保するカーボンファィバーや炭酸カルシウム、耐薬品性、補強効果に優れるホウ酸アルミニウムウィスカー等が混合混練されることにより調製される。
【0015】
フレーム1は、図1ないし図3に示すように、内周面2が傾斜形成あるいは断面略く字形(日本語のくの字)に形成され、外周面の左右両側部がそれぞれ前後方向に直線的に切り欠かれており、外周面の前部左右には、位置決め用のノッチ3がそれぞれ切り欠かれる。
【0016】
半導体ウェーハWは、図1に示すように、例えば口径300mmのタイプからなり、フレーム1の中空部を裏面側から覆うダイシングテープ10の表面に着脱自在に粘着保持されており、ダイヤモンドブレード40により複数のダイDにダイシングされた後、ダイシングテープ10から複数のダイDが個々にピックアップして移送される。
【0017】
ダイシングテープ10は、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)等からなるポリオレフィン系フィルムの表面にUV系の粘着剤が塗布して積層されることにより薄い平面円板形に形成され、フレーム1の裏面に粘着されており、使用後にフレーム1の裏面から剥離されることによりフレーム1がリサイクルに供される。フィルムの表面には、UV光の照射により粘着性を喪失するUV系の粘着剤が積層されるのが好ましいが、必要に応じ、アクリル系の粘着剤が代わりに塗布して積層される。
【0018】
ザグリ部30は、図1、図2、図4に示すように、バーコードやRFIDシステム33のRFタグ34の大きさ、厚さに応じて平面略長方形の断面略皿形に凹み形成され、バーコードやRFタグ34よりも大きく、深く形成されており、本実施形態においてはRFタグ34が接着剤等を介し嵌入接着される。
【0019】
ザグリ部30は、例えばRFタグ34の厚さが一般的に0.2〜0.4mmであることから、0.3〜0.5mm、好ましくは0.3〜0.4mmの深さに形成される。ザグリ部30は、真空吸着の際の空気漏れを抑制防止する観点から、底面31の周縁部とフレーム1の略平坦な表面4とがテーパ状の傾斜辺32により接続され、この傾斜辺32の傾斜角度が略30°以下とされる(図4参照)。
【0020】
RFIDシステム33は、図1に示すように、電波により内部メモリがアクセスされ、フレーム1と共に移動するRFタグ34と、このRFタグ34との間で電波や電力を送受信するアンテナユニット35と、RFタグ34との交信を制御するリーダ/ライタ36と、このリーダ/ライタ36を制御するコンピュータ37とを備えて構成される。アンテナユニット35とリーダ/ライタ36とは、必要に応じ、別々に構成されたり、一体化される。また、リーダ/ライタ36の制御に支障を来たさなければ、コンピュータ37の代わりに各種のコントローラが使用される。
【0021】
上記構成によれば、ザグリ部30を直線的な断面略U字形とするのではなく、断面略皿形に凹み形成してその傾斜辺32の傾斜角度を略30°以下とするので、ザグリ部30の周縁部が起立することがなく、真空吸着パッド20による真空吸着の際、ザグリ部30と真空吸着パッド20との間に大きな段差や隙間が生じたり、隙間から空気が漏れて真空吸着に支障を来たしたり、あるいは真空吸着パッド20が位置ズレすることがない。したがって、確実な真空吸着が期待でき、真空吸着パッド20の吸着位置の自由度を著しく向上させたり、ダイシングフレームを円滑に移送したり、搬送することができる。
【0022】
また、柔軟性の材料により真空吸着パッド20を形成する必要が全くないので、経年の材料劣化により真空吸着パッド20が硬質化して真空吸着できなくなるおそれをも排除することができる。また、空気漏れを防止する観点から、吸着力に欠ける小径の真空吸着パッド20や専用の真空吸着パッド20を使用する必要が全くないので、フレーム1や真空吸着パッド20、マウンタ等の汎用性を大幅に向上させることが可能になる。さらに、フレーム1が金属製ではなく、樹脂製であるので、RFタグ34の通信特性に悪影響を及ぼすこともない。
【0023】
次に、図5は本発明の他の実施形態を示すもので、この場合には、フレーム1の表面4、ザグリ部30の底面31、及び傾斜辺32の間を段差の生じ易い直線で接続するのではなく、滑らかに連続する曲線で接続し、これらの間に角ばったコーナ部が生じるのを規制するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0024】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、フレーム1の表面4、ザグリ部30の底面31、及び傾斜辺32の間を連続する曲線で接続して面取りするので、ザグリ部30と真空吸着パッド20との間に大きな隙間が生じないのは明らかである。
【0025】
なお、本発明に係るダイシングフレームは、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではフレーム1のザグリ部30内にRFIDシステム33のRFタグ34を貼着したが、ザグリ部30内に、バーコードを貼着しても良い。また、フレーム1のザグリ部30を、RFタグ34やバーコードの取り付け用とするのではなく、成形時における金型の突き出しピンの近傍に発生する縦バリ回避用としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るダイシングフレームの実施形態を模式的に示すシステム全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係るダイシングフレームの実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係るダイシングフレームの実施形態を模式的に示す裏面説明図である。
【図4】本発明に係るダイシングフレームの実施形態におけるザグリ部を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係るダイシングフレームの他の実施形態におけるザグリ部を模式的に示す断面説明図である。
【図6】従来のダイシングフレームを示す斜視説明図である。
【図7】樹脂材料を使用して成形されたダイシングフレームを示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フレーム
4 表面
10 ダイシングテープ
30 ザグリ部(凹部)
30A ザグリ部
31 底面
32 傾斜辺
33 RFIDシステム
34 RFタグ
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む成形材料により成形された中空のフレーム内に半導体ウェーハを収容し、フレームが吸着パッドにより着脱自在に吸着されるダイシングフレームであって、
フレームの表裏面のうち少なくともいずれか一方の面に凹部を形成し、フレームの一方の面と凹部の底面とを傾斜辺により接続してその傾斜角度を略30°以下としたことを特徴とするダイシングフレーム。
【請求項2】
凹部内に、バーコードとRFIDシステムのRFタグのいずれか一方を取り付けた請求項1記載のダイシングフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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