説明

ダイシング・ダイアタッチフィルム、半導体装置、及びダイシング・ダイアタッチ方法

【課題】ウエハーへの熱ラミネートの経時安定性、ダイアタッチ埋め込み性能に優れ、ワイヤボンディング工程及び樹脂封止工程で特別な熱管理を必要としないダイシング・ダイアタッチフィルムを提供する。
【解決手段】接着剤層15が第1の接着剤シート13及び第2の接着剤シート14からなり、第1接着剤層組成物は、(A)カルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム、(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミンを含み、第2接着剤層組成物は、(D)重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基及び化学式(1)で示される構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂、(B)、(C)を含むダイシング・ダイアタッチフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングフィルムとダイボンド材とを兼ねたダイシング・ダイアタッチフィルム、該ダイシング・ダイアタッチフィルムを使用して製造された半導体装置、及び該ダイシング・ダイアタッチフィルムを用いたダイシング・ダイアタッチ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、例えば、(i)IC回路が形成された大径のシリコンウェハーを粘着フィルム上に固定し、ダイシング(切断)工程で半導体チップに切り分け、(ii)該半導体チップを硬化性の液状接着剤等(ダイボンド材)でリードフレームに熱圧着し、該接着剤を硬化させて該チップを固定(マウント)し、(iii)電極間のワイヤボンディングの後、(iv)ハンドリング性の向上及び外部環境からの保護のため、封止することにより製造される。封止の形態としては、樹脂によるトランスファーモールド法が、量産性に優れかつ安価なため、最も一般的に用いられている。
【0003】
近年、半導体装置の高機能化に伴い、半導体チップ搭載のための支持基板(基板)にも高密度化、微細化が要求されている。このような状況で、上記ダイボンド材として液状の接着剤を使用すると、半導体チップ搭載時に接着剤がチップ端からはみ出して電極の汚染を生じやすく、また、接着剤層の厚みの不均一によるチップの傾斜によりワイヤボンディングの不具合が生じやすい。そこで、これらの欠点を改善すべく、接着剤のフィルム化が望まれている。
【0004】
一方、基板には配線等の回路要素による凹凸部が存在し、そのような基板に半導体チップを熱圧着するときに、ダイボンド材としての接着フィルム、即ち、ダイアタッチフィルムが凹部を完全には埋めることができないと、その埋められなかった部分がボイドとして残り、これがリフロー炉での加熱によって膨張し、接着剤硬化物層を破壊して半導体装置の信頼性を損ねる場合がある。特に、近年、鉛フリーはんだに対応した高温(265℃)において耐リフロー性が要求されるようになっており、ボイドの形成を防止することの重要性が高まっている。
【0005】
上記問題を解決するための第1の方法として、封止樹脂によるモールドが高温高圧で行われることから、残存したボイドを樹脂封止工程で加熱、圧縮して、ボイドの体積を小さくした状態で更にダイアタッチフィルム中に吸収させる、または、ボイドの体積を小さくしたままダイアタッチフィルムを加熱硬化させることによって、ボイドを抜く方法がある。この方法は、特別な工程を必要とせず、製造面で有利である。
【0006】
ところで、従来、ダイボンドのための上記接着剤として、具体的には、接着性に優れた樹脂であるアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、その硬化剤であるフェノール樹脂及び触媒を含む低弾性率材料が開発されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0007】
しかし、これらの材料は、接着性に優れるものの、該材料を用いた接着フィルムはダイアタッチ工程でボイドを完全に抜き去ることができない。また、該材料は樹脂封止工程でボイドを抜き去るために低弾性率材料となっているにもかかわらず、該材料を用いた接着フィルムは、硬化反応の進行が速いため、樹脂封止工程前のワイヤボンディング工程での加熱によりフィルム溶融粘度の上昇速度が大きくなるので、樹脂封止工程でボイドを抜くことも困難である。即ち、溶融粘度が大きくなる結果、ボイドの体積を十分には小さくできず、また、樹脂中にボイドを吸収させることができない。更に、これらは、低弾性率材料であるため、ワイヤボンディング工程での接合信頼性に悪い影響を与える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−163391号公報
【特許文献2】特開平11−12545号公報
【特許文献3】特開2000−154361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、粘着フィルム(ダイシングフィルム)とダイボンド材とを兼ねたダイシング・ダイアタッチ用接着フィルムが使用されているが、本発明者らは、このダイシング・ダイアタッチフィルムの接着層として、特願2008−166968において、アクリル系樹脂及びエポキシ樹脂を含む接着剤組成物を用いたダイシング・ダイアタッチフィルムを提案した。この接着剤組成物を用いたダイシング・ダイアタッチフィルムを使用した半導体装置の製造工程においては、ウエハーへの熱ラミネートの経時安定性が非常に優れているが、上記に記したようなボイドの形成の問題があった。
【0010】
上記のボイドの形成の問題を解決するための第2の方法として、半導体チップをダイアタッチフィルムで基板に熱圧着するときに、ボイドを極力形成させないようにする方法がある。この方法によれば、ダイアタッチ工程以後の工程で半導体チップと基板との間にボイドが存在せず、また、ワイヤボンディング工程で加熱履歴を監視する必要がないため、この方法は工程管理および製造面で有利である。
【0011】
また、本発明者らは、この第2の方法に適したダイシング・ダイアタッチフィルムの接着層として、特願2009−258820において、上記提案とは異なったアクリル系樹脂およびエポキシ樹脂を含む接着剤組成物を用いたダイシング・ダイアタッチフィルムを提案した。しかしながら、この接着剤組成物を用いたダイシング・ダイアタッチフィルムは、長期保管後のパッケージ信頼性は優れているが、上記の製造工程のウエハーへの熱ラミネート性の経時安定性に劣る欠点があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ダイシング・ダイアタッチフィルムを用いた半導体装置製造工程において、ウエハーへの熱ラミネートの経時安定性に優れ(長期保管においても安定したウェーハへの熱ラミネート性を有する)、即ち、経時保管後も低温で熱ラミネートが可能であり、また、ダイアタッチ工程での半導体チップの基板への加熱圧着時にボイドを抜くことができるため、ダイアタッチ工程において基板上の凹部を埋める性能(以下「ダイアタッチ埋め込み性能」という)に優れると共に、ワイヤボンディング工程および樹脂封止工程で特別な熱管理を必要とせず、信頼性の高い半導体装置を与えるダイシング・ダイアタッチフィルム、該ダイシング・ダイアタッチフィルムを使用して製造された半導体装置、ならびに該ダイシング・ダイアタッチフィルムを使用したダイシング・ダイアタッチ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、基材、該基材上の粘着剤層、該粘着剤層上の接着剤層を含むダイシング・ダイアタッチフィルムであって、前記接着剤層は、第1の接着剤シート、及び該第1の接着剤シート上に積層される第2の接着剤シートからなり、前記第1接着剤シートを形成するための第1接着剤層組成物は、少なくとも、
(A)カルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム、
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、及び
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
を含み、前記第2接着剤シートを形成するための第2接着剤層組成物は、少なくとも、
(D)重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基及び下記式(1)
【化1】

で示される構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂、
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、及び
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
を含むことを特徴とするダイシング・ダイアタッチフィルムを提供する。
【0014】
このようなダイシング・ダイアタッチフィルム中の接着剤層は、半導体装置の製造工程における初期工程、ウエハーへの熱ラミネートの経時安定性に優れ、更に次工程の半導体チップを基板に熱圧着するダイアタッチ工程において、容易にかつ十分にボイドを抜くことができるため、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルム中の接着剤層は優れた熱ラミネート経時安定性と優れたダイアタッチ埋め込み性能の両性能を兼ね備えることができる。
また、このようなダイシング・ダイアタッチフィルム中の接着剤層は、加熱硬化により、各種基材に対して高い接着力を有するとともに耐熱性に優れる接着剤硬化物層を与える。更に、該接着剤層は、加熱硬化されて、ワイヤボンディング工程において十分な弾性率を有する接着剤硬化物層を与える。このため、このような接着剤層を有するダイシング・ダイアタッチフィルムを用いることにより、安定性の高いワイヤボンディングを行うことができる。加えて、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムは、該ダイシング・ダイアタッチフィルム中の接着剤層の特性安定化が図られているため、半導体装置の製造プロセスで、長期にわたって安定した特性を維持したままで好適に用いることができる。
従って、このようなダイシング・ダイアタッチフィルムは、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0015】
また、前記(A)成分であるカルボキシル基含有エチレン−アクリルゴムが、高圧ラジカル重合により合成されたものであることが好ましい。
【0016】
このように、(A)成分を高圧ラジカル重合により合成すれば、副生成物の発生が少なく、乳化剤等の添加の必要がないため、好ましい。
【0017】
また、前記(C)成分が、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、及びこれらの組み合わせのいずれかであることが好ましい。
【0018】
このように、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、及びこれらの組み合わせのいずれかでれば、工業的に好適に用いることができる。
【0019】
また、前記第1接着剤層組成物中の前記(B)成分及び前記(C)成分の合計の割合が、前記第1接着剤層組成物中の前記(A)〜(C)成分の合計に対して20質量%以上90質量%未満であることが好ましい。
【0020】
このように、前記第1接着剤層組成物中の前記(B)成分及び前記(C)成分の合計の割合が、前記第1接着剤層組成物中の前記(A)〜(C)成分の合計に対して20質量%以上90質量%未満であると、第1接着剤層組成物が良好な塗布性を示し、更に、当該第1接着剤層組成物から得られる第1接着剤シートは、より確実に十分なダイアタッチ埋め込み性能を示すことができるため好ましい。
【0021】
また、前記第1接着剤層組成物及び/又は前記第2接着剤層組成物は、更に、(E)シリカ系無機充填剤を含むことが好ましい。
【0022】
このように、第1接着剤層組成物及び/又は第2接着剤層組成物が(E)成分としてシリカ系無機充填剤を含むことにより、接着剤層の溶融粘度を適度に増加させて、樹脂封止工程におけるチップ流れを抑制し、得られる接着剤硬化物層の吸湿率及び線膨張率を低下させることができる。
【0023】
また、前記第1接着剤層組成物及び/又は前記第2接着剤層組成物は、更に、(F)接着助剤を含むことが好ましい。
【0024】
このように、第1接着剤層組成物及び/又は第2接着剤層組成物が(F)成分として接着助剤を含むことにより、得られる接着剤硬化物層の接着性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明は、前記ダイシング・ダイアタッチフィルムを使用して製造された半導体装置を提供する。
【0026】
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを使用して半導体装置を製造する場合、ダイアタッチ工程で十分に埋め込みがなされてボイドが残存せず、ダイアタッチ工程以後の半導体チップと基板との間のボイド発生が抑制されるため、得られる半導体装置は優れた信頼性を有するものとなる。
【0027】
また、本発明は、前記ダイシング・ダイアタッチフィルム上にウェーハをラミネートし、該ラミネートされたウェーハをダイシングし、その後ダイシングされたダイを基板にアタッチすることを特徴とするダイシング・ダイアタッチ方法を提供する。
【0028】
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを用いてウェーハのダイシングを行うと、ダイシング・ダイアタッチフィルムの接着剤層とウェーハとの密着力が強く、即ち優れた熱ラミネート性を発揮し、その経時安定性にも優れるために好ましい。更に、ウェーハのダイシング後には、チップの裏面に接着剤層が付着した状態で安定にピックアップすることができるため、良好にダイをマウントすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムの接着剤層は、低温での熱ラミネート性に優れ、また、ダイアタッチ埋め込み性能にも優れ、加熱硬化により、各種基材に対して高い接着力を有するとともに耐熱性に優れる接着剤硬化物層を与える。また、該接着剤層は、加熱硬化されて、ワイヤボンディング工程において十分な弾性率を有する硬化物を与えるので、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを用いることにより、安定性の高いワイヤボンディングを行うことができる。さらに、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムは、長期に保管した後であっても、特性安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムの一例を示す図である。
【図2】本発明の方法のダイシング工程の説明図である。
【図3】本発明の方法によって得られたチップをピックアップし、半導体装置樹脂基板にダイアタッチする工程の一例を示す説明図である。
【図4】埋め込み性能試験におけるシリコンチップの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明についてより具体的に説明する。なお、本発明において、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。また、「軟化温度」はJIS K 7234に規定の環球法で測定される値である。
【0032】
前述のように、熱ラミネート経時安定性と優れたダイアタッチ埋め込み性能の両性能を兼ね備えることができるダイシング・ダイアタッチフィルムが求められていた。
【0033】
本発明者らは、少なくとも、基材、該基材上の粘着剤層、該粘着剤層上の接着剤層を含むダイシング・ダイアタッチフィルムであって、前記接着剤層は、第1の接着剤シート、及び該第1の接着剤シート上に積層される第2の接着剤シートからなり、前記第1接着剤シートを形成するための第1接着剤層組成物は、少なくとも、
(A)カルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム、
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、及び
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
を含み、前記第2接着剤シートを形成するための第2接着剤層組成物は、少なくとも、
(D)重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基及び下記式(1)
【化2】

で示される構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂、
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、及び
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
を含むことを特徴とするダイシング・ダイアタッチフィルムであれば、ダイシング・ダイアタッチフィルムを用いた半導体装置製造工程において、ウエハーへの熱ラミネートの経時安定性に優れ、また、ダイアタッチ工程での半導体チップの基板への加熱圧着時にボイドを抜くことができるため、ダイアタッチ埋め込み性能に優れることを見出した。
【0034】
第1の接着剤シート
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムの第1の接着剤シートを形成するための第1接着剤層組成物は、少なくとも上記(A)〜(C)を含み、任意成分として(E)シリカ系無機充填剤、(F)接着助剤、その他の成分を含み、室温では形状を保つため、例えば、フィルム状薄膜を形成することができ、一方、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを半導体製造工程に使用した場合、第1の接着剤シートは、ダイアタッチ工程において、ダイアタッチされる基板面に対面し、加熱により可塑状態となり、さらにこの可塑状態でダイアタッチを行うことにより基板に対して優れたダイアタッチ埋め込み性能を発揮する。該ダイシング・ダイアタッチフィルムを用いて半導体装置を製造した場合、ダイアタッチ工程以後の半導体チップと基板との間のボイド発生が抑制される。また、該接着剤層から得られる接着剤硬化物層は、基材に対して高い接着性を有し、かつ、優れた耐熱性を有する。このように、本発明は、背景技術についての説明中で示した第2の方法でボイド形成の問題を解決するものである。
以下に各成分を説明する。
【0035】
(A)カルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム
(A)成分は、分子中にカルボキシル基を含有するエチレン−アクリルゴムである。このエチレン−アクリルゴムとしては、高圧ラジカル重合により合成されたもの、乳化重合により合成されたもの等が例示されるが、副生成物の発生が少なく、乳化剤等の添加の必要のない高圧ラジカル重合により合成されたものが好ましい。高圧ラジカル重合の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。(A)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(A)成分としては、例えば、エチレン単量体単位と、アクリル酸エステル単量体単位及びメタクリル酸エステル単量体単位のいずれか一方または両方と、カルボキシル基含有単量体単位とを含む、高圧ラジカル重合により合成されたエチレン−アクリルゴムを用いることができる。アクリル酸エステル単量体単位としては、例えば、アクリル酸メチル単量体単位、アクリル酸エチル単量体単位、アクリル酸ブチル単量体単位等が挙げられる。メタクリル酸エステル単量体単位としては、例えば、メタクリル酸メチル単量体単位、メタクリル酸エチル単量体単位、メタクリル酸ブチル単量体単位等が挙げられる。カルボキシル基含有単量体単位としては、例えば、アクリル酸単量体単位、メタクリル酸単量体単位、マレイン酸単量体単位等が挙げられる。
【0037】
(A)成分はカルボキシル基を有するため、得られる第1接着剤層組成物はダイアタッチ埋め込み性能に優れる。また、(A)成分は、後述する(B)成分のエポキシ樹脂および(C)成分の芳香族ポリアミン化合物との反応を考慮して、1分子中に2個以上のカルボキシル基を含有することがより望ましい。
【0038】
更に、(A)成分中におけるカルボキシル基の割合(即ち、(A)成分100g当たりのカルボキシル基のモル数)は、特に限定されないが、(A)成分100g当たり好ましくは0.001〜0.5モル、より好ましくは0.005〜0.1モルである。この割合が0.001〜0.5モルであると、第一に、第1接着剤層組成物の流動性をコントロールしやすいため該第1接着剤層組成物から得られる第1の接着剤シートはより良好なダイアタッチ埋め込み性を発揮し、第二に、(A)成分が室温で徐々に(B)成分及び(C)成分のいずれか一方または両方と反応するのを効果的に抑制することができるため、得られる第1の接着剤シートの保存安定性を良好に維持することが容易である。
【0039】
(A)成分の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは50,000〜1,000,000、より好ましくは80,000〜500,000、特に好ましくは100,000〜400,000である。
【0040】
(A)成分の具体的な例としては、商品名で、ベイマックG、ベイマックGXF、ベイマックGLS、ベイマックHVG(いずれもデュポンエラストマー社製、高圧ラジカル重合により合成されたカルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム)等が挙げられる。
【0041】
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂
(B)成分は、重量平均分子量が5000以下、好ましくは150〜3000である室温、即ち、通常5〜40℃、特に15〜30℃で固体状のエポキシ樹脂である。また、(B)成分は1分子中にエポキシ基を少なくとも2個有するものが好ましい。(B)成分の重量平均分子量が5000を超えると、(B)成分の(A)成分への溶解および分散のいずれか一方または両方が不十分となり、両成分が分離する恐れがある。(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0042】
(B)成分としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン又はそれらのハロゲン化物のジグリシジルエーテル及びこれらの縮重合物(いわゆるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等);ブタジエンジエポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;1,2−ジヒドロキシベンゼンのジグリシジルエーテル、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ジフェニルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキセン等のジグリシジルエーテル;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;多価フェノール又は多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂又はハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシノボラック(即ち、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂);過酸化法によりエポキシ化したエポキシ化ポリオレフィン又はエポキシ化ポリブタジエン;ナフタレン環含有エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(即ち、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂)などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物である。
【0043】
中でも、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂又はその組み合わせが好ましい。これら好ましいエポキシ樹脂を含む接着剤組成物を第1接着剤層組成物として適用したダイシング・ダイアタッチフィルムは、該第1接着剤層組成物からなる第1の接着剤シートからダイシングフィルム(粘着剤層が形成された基材)への成分の移行が特に少なく、該第1接着剤層組成物からなる第1の接着剤シートはダイアタッチ工程における熱圧着時のダイアタッチ埋め込み性がより良好となりやすい。
【0044】
なお、本発明において「ジシクロペンタジエン骨格」とは、下記式:
【化3】

で表される骨格、および、上記式で表される骨格から一部または全部の水素原子を除いた残りの骨格をいう。後者の骨格において、除かれる水素原子の数および位置に制限はない。中でも、上記式で表される骨格が好ましい。
【0045】
また、本発明の特性を損なわない範囲で、(B)成分以外のエポキシ樹脂を(B)成分と組み合わせて用いてもよい。(B)成分以外のエポキシ樹脂としては、例えば、(B)成分に属さない公知のエポキシ樹脂が挙げられ、(B)成分に属さない市販のエポキシ樹脂を使用することができる。(B)成分と組み合わせて用いることができる(B)成分以外のエポキシ樹脂の配合量は、(B)成分100質量部に対して、好ましくは0〜50質量部であり、より好ましくは0〜20質量部である。該配合量が0〜50質量部であると、ダイアタッチ埋め込み性を損なう恐れがないために好ましい。
【0046】
また、特に、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムに貼り付けるシリコンウェハーが薄いときに、クラックの発生及び反りを防止すべく、接着剤層をより低温及びより低圧で圧着できるように、(B)成分は、5〜40℃(室温)で固体状であるが、更に、軟化温度が100℃以下であることが好ましい。第1接着剤層組成物中のエポキシ樹脂が5〜40℃(室温)で液体状であると(即ち、低分子量体を多く含むと)、該第1接着剤層組成物から形成される第1の接着剤シートはタックを発現しやすく、また、ダイシングフィルム(粘着剤層が形成された基材)と該ダイシングフィルム上に積層された前記接着剤層とを含むダイシング・ダイアタッチフィルムを用いてダイシングを行った後にチップを取り出す(ピックアップする)ことが困難となりやすい。
【0047】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは5〜500質量部であり、より好ましくは10〜200質量部である。上記配合量が5〜500質量部の範囲内であると、第1接着剤層組成物から形成される第1の接着剤シートのダイアタッチ埋め込み性が効果的に向上し、該第1接着剤層組成物から形成される第1の接着剤シートの柔軟性が十分となりやすく、該接着剤層組成物から得られる接着剤硬化物層の接着力が特に優れ、接着剤層が裏面に付着したチップをダイシングフィルムから容易にピックアップすることができる。
【0048】
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
(C)成分のジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミンは、ジフェニルスルホン骨格構造を有し、かつ、芳香環に直結した少なくとも2個のアミノ基を有する化合物であり、エポキシ樹脂用硬化剤及び触媒としての機能を有するものである。(C)成分の芳香族ポリアミンは、ジフェニルスルホン骨格構造中にベンゼン環を有するが、更に他の芳香環を有してもよい。少なくとも2個のアミノ基は、(C)成分中の芳香環がジフェニルスルホン骨格構造中のベンゼン環のみである場合には該ベンゼン環に直結し、(C)成分中の芳香環がジフェニルスルホン骨格構造中のベンゼン環と該ベンゼン環以外の芳香環である場合には該ベンゼン環および該ベンゼン環以外の芳香環のいずれか一方または両方に直結する。
【0049】
(C)成分の芳香族ポリアミンは、170℃を超える融点を有し、ワイヤボンディング工程での加熱下では反応性が小さいため、(C)成分を含む組成物では硬化反応が緩やかに進行する。このため、該組成物では加熱硬化による溶融粘度の上昇を有効に抑えることができる。また、(C)成分の芳香族ポリアミンを含む組成物を加熱硬化させて得られる硬化物は耐熱性に優れる。よって、(C)成分の芳香族ポリアミンを含む組成物は、従来のものと比較して、埋め込み性能が改善され、かつ、硬化後の耐熱性に優れたものとなる。(C)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0050】
本発明において「ジフェニルスルホン骨格構造」とは、ジフェニルスルホンから一部または全部の水素原子を除いた残りの構造をいい、除かれる水素原子の数および位置に制限はない。中でも、下記構造式:
【0051】
【化4】

で示されるジフェニルスルホン骨格構造が好ましい。
【0052】
(C)成分がジフェニルスルホン骨格構造中のベンゼン環と該ベンゼン環以外の芳香環とを有する場合、該ベンゼン環以外の芳香環は芳香族炭化水素環であっても芳香族複素環であってもよい。芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環等が挙げられる。
【0053】
(C)成分の具体例としては、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等が挙げられる。これらの中でも、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンを工業的に好適に用いることができる。これらの芳香族ポリアミンは、エポキシ樹脂硬化剤として公知のものであり、市販品を使用することができる。
【0054】
(C)成分の配合量は、第1接着剤層組成物中の全エポキシ基に対する(C)成分中のアミノ基のモル比が0.6〜1.4となる量であることが好ましく、0.8〜1.2となる量であることが更に好ましい。上記モル比が0.6〜1.4となる量の(C)成分を第1接着剤層組成物に配合すると、該組成物は架橋が十分に行われるため、得られる硬化物は、硬化特性が良好となりやすく、接着性および耐半田リフロー性が効果的に向上する。また、(C)成分が該硬化物中に未反応物として残りにくく無駄となりにくいため、省資源化を図りやすく、経済的である。
【0055】
第1接着剤層組成物には(B)成分のエポキシ樹脂以外にも、エポキシ基含有成分(例えば、(F)成分の接着助剤として配合しうるエポキシ基含有シランカップリング剤)を配合することができるので、第1接着剤層組成物中の全エポキシ基とは、(B)成分中のエポキシ基と、(B)成分以外のエポキシ基含有成分中のエポキシ基との合計を意味する。第1接着剤層組成物中の全エポキシ基に対する(B)成分中のエポキシ基のモル比は好ましくは0.8〜1.0、より好ましくは0.9〜1.0である。ここで、第1接着剤層組成物中に(B)成分以外のエポキシ基含有成分が含まれない場合には、(C)成分の配合量は、(B)成分中のエポキシ基に対する(C)成分中のアミノ基のモル比が0.2〜2.0となる量であることが好ましく、0.5〜1.5となる量であることが更に好ましい。
【0056】
第1接着剤層組成物中の(B)成分及び(C)成分の合計の割合が、第1接着剤層組成物中の(A)〜(C)成分の合計に対して20質量%以上90質量%未満の範囲であることが好ましく、50質量%以上90質量%未満の範囲であることがより好ましい。該割合が20質量%以上90質量%未満の範囲であると、得られる第1接着剤層組成物は、良好な塗工性および十分なダイアタッチ埋め込み性を示しやすく、得られる硬化物は十分な接着力を発現しやすい。
【0057】
(E)シリカ系無機充填剤
(E)成分のシリカ系無機充填剤は第1接着剤層組成物に添加しうる任意成分である。無機充填剤の中でも、(E)成分のシリカ系無機充填剤は汎用であり、工業的に好ましい。(E)成分は、第1接着剤層組成物からなる第1の接着剤シートの溶融粘度を適度に増加させて、樹脂封止工程におけるチップ流れを抑制し、得られる接着剤硬化物層の吸湿率及び線膨張率を低下させる。(E)成分には特に制限はなく、公知のものを使用することができる。(E)成分は、得られる組成物の流動性の点から、オルガノアルコキシシラン、オルガノクロロシラン、オルガノシラザン、低分子量シロキサン等の有機ケイ素化合物などで表面処理されたものが好ましい。(E)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0058】
(E)成分の平均粒径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。該平均粒径が10μm以下であると、第1接着剤層組成物からなる第1の接着剤シートは表面の平滑性を維持しやすい。また、(E)成分の最大粒径は20μm以下であることが好ましい。なお、本発明において、「平均粒径」とは、レーザー光回折法を用いた粒度分布測定装置により求めた累積分布の50%に相当する体積基準の平均粒径をいう。また、「最大粒径」とは、上記で平均粒径を求めたときに測定された累積分布における粒径の最大値である。
【0059】
(E)成分としては、例えば、シリカ微粉末が挙げられ、具体的には、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等の補強性シリカ;石英等の結晶性シリカが挙げられる。より具体的には、日本アエロジル社製のAerosil R972、R974、R976;(株)アドマテックス社製のSE−2050、SC−2050、SE−1050、SO−E1、SO−C1、SO−E2、SO−C2、SO−E3、SO−C3、SO−E5、SO−C5;信越化学工業社製のMusil120A、Musil130Aなどが例示され、これらの混合物であってもよい。
【0060】
(E)成分を使用する場合、その配合量は、第1接着剤層組成物総質量に対して好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜60質量%である。上記配合量が5〜80質量%の範囲であると、得られる接着剤硬化物層の吸湿率及び線膨張率を効果的に低下させることができ、また、該接着剤硬化物層の弾性率が上昇しすぎるのを容易に抑制することができる。
【0061】
(F)接着助剤
第1接着剤層組成物には、得られる接着剤硬化物層の接着性を向上させるために、(F)成分の接着助剤を添加してもよい。(F)成分には特に制限はなく、公知の接着助剤を使用することができる。(F)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。(F)成分としては、例えば、ケイ素を含むカップリング剤(シランカップリング剤)を使用することができる。
【0062】
(F)成分の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤が挙げられる。
商品名で表すと(F)成分の具体例としては、信越化学工業社製のKBM−403、KBM−402、KBM−803、KBM−802、KBM−903、KBM−902、KBM−503、KBM5103もしくはX−12−414またはこれらの部分加水分解物等が挙げられる。
【0063】
(F)成分を使用する場合、その配合量は、使用する硬化剤の種類等によって異なるが、第1接着剤層組成物総質量に対して好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%程度である。
【0064】
その他の成分
第1接着剤層組成物には、上記(A)〜(C)、任意成分(E)、(F)成分に加えて、該組成物の特性を損なわない程度にその他の成分を配合してよい。その他の成分としては、例えば、(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒;(E)成分以外の無機充填剤;有機充填剤;顔料、染料等の着色剤;濡れ向上剤;酸化防止剤;熱安定剤;溶媒等が挙げられる。その他の成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0065】
(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒としては、例えば、エポキシ樹脂用硬化剤または触媒として公知のフェノール系化合物が挙げられる。(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒の量は、(C)成分の芳香族ポリアミン化合物の効果を妨げない程度である。
【0066】
(E)成分以外の無機充填剤としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、導電性粒子等が挙げられる。
【0067】
第1接着剤層組成物には、各成分の混合のしやすさ、得られる組成物の塗布のしやすさ等の観点から、溶媒を添加してもよい。溶媒は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0068】
第1接着剤層組成物の調製
第1接着剤層組成物は、上記(A)〜(C)、任意成分(E)、(F)成分、及び所望によりその他の成分を慣用の混合手段により室温で混合することにより調製することができる。
【0069】
第2の接着剤シート
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムの第2の接着剤シートを形成するための第2接着剤層組成物は、少なくとも(D)、(B)、(C)成分を含み、任意成分として(E)、(F)、その他の成分を含み、第1接着剤層組成物と同様に室温では形状を保つため、例えば、フィルム状薄膜を形成することができ、一方、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを半導体製造工程に使用した場合、第2の接着剤シートは、ウエハーに熱ラミネートされる面となり、加熱により可塑状態となり、優れた熱ラミネート性を発揮し、その経時安定性にも優れる。また、該接着剤シートの硬化物は、基材に対して高い接着性を有し、かつ、優れた耐熱性を有する。このように、本発明は、従来問題となっていた熱ラミネート性を改善するものである。以下に各成分を説明する。
【0070】
(D)重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基及び下記式(1)
【化5】

で示される構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂
即ち、(D)成分は、重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基および上記式(1)で表されるアクリロニトリル由来の構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂である。本発明において(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸およびメタクリル酸誘導体からなる(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を含む重合体をいう。(D)成分は、一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。二種以上を組み合わせて使用する場合、(D)成分は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系樹脂とエポキシ基を有しない(メタ)アクリル系樹脂との混合物であってもよい。
【0071】
(D)成分としては、例えば、上記(メタ)アクリル系単量体の単独重合体もしくは共重合体または該(メタ)アクリル系単量体とその他の単量体との共重合体であって、重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基および上記式(1)で表される構造単位を有する重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体とその他の単量体との共重合体において、その他の単量体に由来する構造単位の含有量は、(D)成分の全構造単位中、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜30モル%である。(メタ)アクリル系単量体とその他の単量体との共重合体において、これらの単量体はおのおの、一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
上記アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル;ジメチルアクリル酸アミド等のアクリル酸アミド;アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル酸エステル;アクリロニトリルが挙げられる。
【0073】
上記メタクリル酸誘導体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル;ジメチルメタクリル酸アミド等のメタクリル酸アミド;メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステルが挙げられる。
【0074】
上記のその他の単量体としては、例えば、スチレン、ブタジエン、アリル誘導体(アリルアルコール、酢酸アリル等)が挙げられる。
【0075】
(D)成分は、得られる接着剤硬化物層の接着性の点から、エポキシ基を有する。このエポキシ基は(B)および(C)成分と反応する。エポキシ基は、例えば、(D)成分の原料として用いる単量体の一部として、エポキシ基を含有する単量体を用いて(D)成分を合成することにより、(D)成分中に導入することができる。エポキシ基を含有する単量体としては、例えば、エポキシ基を含有するアクリル酸誘導体、エポキシ基を含有するメタクリル酸誘導体が挙げられ、より具体的には、アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル酸エステル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有メタクリル酸エステルが挙げられる。
【0076】
(D)成分中のエポキシ基の含有量は、(D)成分100g当たり好ましくは0.002〜0.1モルであり、より好ましくは0.005〜0.05モルである。該含有量が0.002〜0.1モルの範囲内であると、十分な埋め込み性能を有する組成物および十分な接着力を有する接着剤硬化物層を容易に得ることができる。
【0077】
上記式(1)で表される構造単位は、例えば、(D)成分の原料として用いる単量体の一部として、アクリロニトリルを用いて(D)成分を合成することにより、(D)成分中に導入することができる。(D)成分において、アクリロニトリル由来の構造単位の含有量(共重合させる全単量体中のアクリロニトリルの割合)は好ましくは5〜50質量%であり、特には10〜40質量%とすることが好ましい。
【0078】
(D)成分の重量平均分子量は、50,000〜1,500,000、好ましくは100,000〜1,000,000である。上記分子量が50,000未満であると、得られる接着剤硬化物層の接着性および強度が低下する場合がある。上記分子量が1,500,000を超えると、得られる組成物は粘度が高すぎて取り扱い性に劣る場合がある。
【0079】
また、(D)成分の(メタ)アクリル系樹脂は、熱機械分析(TMA)で測定されたガラス転移点(Tg)が好ましくは−40℃〜100℃であり、より好ましくは−10〜70℃である。
【0080】
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂
(B)成分は、前記第1接着剤層組成物と同様のものを挙げることができる。
第2接着剤層組成物中の(B)成分の配合量は、(D)成分100質量部に対して好ましくは5〜100質量部であり、より好ましくは10〜60質量部である。上記配合量が5〜100質量部の範囲内であると、より確実に経時安定性の良い熱ラミネート性を有する接着剤層を得ることができるため好ましい。
【0081】
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
(C)成分のジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミンは、前記第1接着剤層組成物と同様のものを挙げることができる。
(C)成分の配合量は、第2接着剤層組成物中の全エポキシ基に対する(C)成分中のアミノ基のモル比が0.6〜1.4となる量であることが好ましく、0.8〜1.2となる量であることが更に好ましい。上記モル比が0.6〜1.4となる量の(C)成分を第2接着剤層組成物に配合すると、該組成物は架橋が十分に行われるため、得られる接着剤硬化物層は、硬化特性が良好となりやすく、接着性および耐半田リフロー性が効果的に向上する。また、(C)成分が該硬化物中に未反応物として残りにくく無駄となりにくいため、省資源化を図りやすく、経済的である。
【0082】
第2接着剤層組成物には、(B)成分のエポキシ樹脂以外にも、エポキシ基を含有する成分として、(D)成分と、エポキシ基を含有するその他の成分とを配合することができるので、第2接着剤層組成物中の全エポキシ基とは、(B)成分中のエポキシ基と、(D)成分中のエポキシ基と、エポキシ基を含有するその他の成分中のエポキシ基との合計を意味する。第2接着剤層組成物の全エポキシ基に対する(B)成分中のエポキシ基と(D)成分中のエポキシ基との合計のモル比は好ましくは0.5〜1.0、より好ましくは0.7〜1.0である。また、第2接着剤層組成物中の全エポキシ基に対する(B)成分中のエポキシ基のモル比は好ましくは0.5〜1.0、より好ましくは0.6〜0.9である。ここで、第2接着剤層組成物に(B)成分および(D)成分以外にエポキシ基を有する成分が含まれない場合には、(C)成分の配合量は、(B)成分中のエポキシ基と(D)成分中のエポキシ基との合計に対する(C)成分中のアミノ基のモル比が0.6〜1.4となる量であることが好ましく、0.8〜1.2となる量であることが更に好ましい。
【0083】
その他の成分
第2接着剤層組成物には、上記(D)、(B)、(C)成分に加えて、該組成物の特性を損なわない範囲でその他の成分を配合してよい。その他の成分としては、例えば、(B)成分以外のエポキシ樹脂;(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒;充填剤;接着助剤;顔料、染料等の着色剤;濡れ向上剤;酸化防止剤;熱安定剤;溶媒等が挙げられる。
【0084】
(B)成分以外のエポキシ樹脂
第2接着剤層組成物においては、ジシクロペンタジエン骨格構造以外の骨格構造を有するエポキシ樹脂を(B)成分のエポキシ樹脂と組み合わせて用いてもよい。(B)成分以外のこのようなエポキシ樹脂は公知であり、市販品を使用することができる。また、(B)成分のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられ、好ましくはノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの(B)成分は組み合わせて用いることができ、また、(B)成分以外のエポキシ樹脂とも組み合わせて用いても良い。(B)成分以外のエポキシ樹脂の配合量は、(B)成分100質量部に対して、0〜50質量部、好ましくは0〜20質量部である。該配合量が50質量部を超えると、ラミネート性、接着性、パッケージ信頼性が損なわれる場合がある。
【0085】
(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒
(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒としては、例えば、エポキシ樹脂用硬化剤または触媒として公知のフェノール系化合物が挙げられる。(C)成分以外のエポキシ樹脂用硬化剤及び触媒の量は、(C)成分の芳香族ポリアミンの効果を妨げない程度である。
【0086】
充填剤
第2接着剤層組成物には充填剤を配合してもよい。充填剤には特に制限はなく、前記第1接着剤層組成物で述べた(E)シリカ系無機充填剤のものを挙げることができる。充填剤は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。充填剤の配合量は、(D)、(B)、(C)成分の合計100質量部に対して好ましくは0〜900質量部、より好ましくは0〜500質量部である。
シリカ粒子の配合量は、充填剤全体の配合量を上記の範囲内で調整しつつ、第2接着剤層組成物総質量の5〜80質量%とすることが好ましく、特に10〜60質量%とすることが好ましい。上記配合量が5〜80質量%の範囲であると、得られる接着剤硬化物層は、吸湿率及び線膨張率を効果的に低下させることができ、また、弾性率の上昇を抑制しやすい。
【0087】
(F)接着助剤
第2接着剤層組成物には、接着性を向上させるために、接着助剤(F)を添加してもよい。接着助剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。接着助剤としては、例えば、ケイ素を含むカップリング剤(シランカップリング剤)を使用することができる。接着助剤の例としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤等が例示され、商品名で信越化学工業社製のKBM−403、KBM−402、KBM−803、KBM−802、KBM−903、KBM−902、KBM−503、KBM5103もしくはX−12−414またはこれらの部分加水分解物等を挙げることができる。
【0088】
溶媒
第2接着剤層組成物には、各成分の混合のしやすさ、得られる組成物の塗布のしやすさ等の観点から、溶媒を添加してもよい。溶媒は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン(NMP)などの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0089】
第2接着剤層組成物の調製
第2接着剤層組成物は、上記(D)、(B)、(C)、及び所望によりその他の成分を慣用の混合手段により室温で混合することにより調製することができる。
【0090】
<第1・第2接着用シートの製造>
第1・第2接着用シートは、それぞれ第1接着剤層組成物、第2接着剤層組成物を溶媒に適当な濃度で溶解して接着剤シート形成用基材上に塗布し乾燥させることにより得ることができる。溶媒としては、上記で例示した溶媒を用いることができる。乾燥の条件は、特に限定されないが、常温〜200℃、特に80〜150℃で1分〜1時間、特に3〜10分間行うことができる。
【0091】
接着剤層の膜厚は、特に制限がなく、目的に応じ選択することができるが、第1の接着剤シートの膜厚は、5〜100μmであることが好ましく、特に10〜50μmであることが好ましい。また、第2の接着剤シートの膜厚は、1〜10μmであることが好ましく特に3〜7μmであることが好ましい。
特に、第2の接着剤シートが、1〜10μmであると、より確実に熱ラミネート性の経時安定性を得ることができ、ワイヤーボンド不良を招く恐れないために好ましい。
【0092】
前記接着剤シート形成用基材は、通常、フィルム状であり、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、紙、金属箔等の基材、または表面を離型処理した前記接着剤シート形成用基材を用いることができる。接着剤シート形成用基材の厚さは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは25〜50μmである。
【0093】
<ダイシング・ダイアタッチフィルム>
以下、上記第1・第2の接着剤シートを用いた本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムについて、図1を参照して詳述する。
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルム10は、基材11とその上に設けられた粘着剤層12とを有するダイシングフィルム16上に、第1の接着剤シート13、第2の接着剤シート14から成る接着剤層15が順次設けられたダイシング・ダイアタッチフィルムである。
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルム10は、上記の方法等で製造した第1の接着剤シート13及び第2の接着剤シート14を、例えば0〜100℃で積層し、積層した第1の接着剤シート及び第2の接着剤シートを、ダイシングフィルム上に常温、又は低温で積層することにより製造することができる。
【0094】
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルム10で使用するダイシングフィルム16は、ベースとなるフィルム状の基材11と粘着剤層12の少なくとも2層からなるものであることが好ましい。
【0095】
前記基材11は一般にダイシングフィルムにおいて用いられているものであれば特に限定されない。該基材11としては、例えば、(I)ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー等のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体、(II)ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、(III)ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテン系共重合体、スチレン−エチレン−ペンテン系共重合体等の熱可塑性エラストマー、等の合成樹脂などを用いることができる。
【0096】
前記基材11の厚みは、60〜200μmであることが好ましい。該基材11の厚みが60〜200μmの範囲内であると、接着剤層15からダイシングフィルム16へのエポキシ樹脂の移行量が抑制される傾向があるため接着剤層の特性を維持しやすく、また、ダイシングフィルムにウェハーをマウントする作業が容易であり、更に、ダイシング時の切削熱によって該基材がチャックテーブルに融着するのを効果的に防ぐことができる。
【0097】
粘着剤層12は、前記基材11の少なくとも一方の面に設けられていればよい。前記粘着剤層12を形成する粘着剤は、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを用いてウェハーをダイシングして個片化したチップを、該チップの裏面に接着剤層が付着したまま、ダイシングフィルムから良好にピックアップすることができるものであれば特に限定されず、通常のダイシングテープとして使用されている、感圧型の粘着剤、紫外線(UV)硬化型の粘着剤を使用することができる。より具体的には、粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、またはシリコーン系の感圧型粘着剤等が挙げられる。好ましくは、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が使用される。粘着剤層の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜10μmである。粘着剤層は、ダイシング工程においてチップ飛びが生じない程度に基材との粘着性が強いことが好ましく、接着剤層との間の180度剥離力が0.01〜0.7N/25mmであることが好ましく、0.1〜0.4N/25mmであることがより好ましい。
【0098】
以下、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを用いて半導体装置を製造する方法について詳述する。
図2のように、上記本発明のダイシング・ダイアタッチフィルム20をシリコンウェーハ等のウェーハ21に貼り合わせ(ラミネート)し(図2(a))、ウェーハ21をダイシングし、チップ22を得る(図2(b))。
この際、ウエハー21へのダイシング・ダイアタッチフィルム20の熱ラミネート温度は、好ましくは40〜80℃、特に50〜70℃が好ましい。
【0099】
上記のダイシングにより得られたチップ22を接着剤層がついたまま取り出し(ピックアップ)(図3(a))、半導体装置樹脂基板(基板)32にダイアタッチし(ダイアタッチ工程)(図3(b))、ワイヤボンディング工程および封止工程を経て半導体装置を製造する。
【0100】
この場合、ダイアタッチ工程で埋め込みされなかった部分がその後もボイドとして残存すると、得られる半導体装置は信頼性の低いものになってしまう。
したがって、得られる半導体装置が信頼性を有するためには、上記ダイアタッチ工程で十分に埋め込みがなされてボイドが残存せず、更に、以後の熱履歴のかかる工程を経ても接着フィルムの内部および該接着フィルムに隣接する領域でボイドが発生も拡大もしないことが必要である。
【0101】
ここで、接着剤層は、ダイアタッチ後にボイドが発生も拡大もしない条件で半硬化ないし完全硬化がなされ、その後、ワイヤボンディング工程の条件下で加熱がなされることが必要である。
【0102】
十分なダイアタッチ埋め込み性が発現するためのダイアタッチ条件は、例えば、0.01〜5MPa、特に0.01〜1MPaの圧力で100〜150℃、特に110〜140℃の温度にて0.1秒〜10秒、特に0.1〜1秒である。接着フィルムの半硬化ないし完全硬化の条件は特に定められたものではないが、一般に、100〜200℃、特に110〜150℃の温度で30分〜8時間、特に1〜3時間である。ワイヤボンディング工程での加熱条件は種々あるが、一般的に170℃で30分以上である。
【0103】
本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムを使用して上述のように半導体装置を製造することができる。このようにして得られる半導体装置は、優れた信頼性を有する。
【0104】
尚、本発明のダイシング・ダイアタッチフィルムは、半導体装置などの電子部品の製造においてだけでなく、接着工程及びダイシング工程を含む種々の製品の製造、例えば、LED部品、センサー、液晶部品などの製造においても用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0106】
(第1接着剤層組成物の調製)
下記(A)、(B)、(C)、(E)、(F)成分を表1に示す量(各成分の固形分(不揮発分)の量であり、単位は質量部)で自転・公転方式の混合機((株)シンキー社製)に仕込み、更に、これら成分の合計の固形分濃度が20〜45質量%となるようにメチルエチルケトン、トルエンまたはシクロヘキサノンを加え、混合して、第1接着剤組成物溶液を調製した。用いた(A)、(B)、(C)、(E)、(F)成分を以下に示す。
【0107】
(A)成分のエチレン−アクリルゴム
VAMAC−GLS:高圧ラジカル重合により合成されたカルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム(デュポンエラストマー社製)、0.056モル/100gのカルボキシル基を含有
(B)成分のエポキシ樹脂
HP−7200:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ社製)、重量平均分子量5000以下、室温で固体状、軟化温度=62℃
EOCN−1020:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)、重量平均分子量5000以下、室温で固体状、軟化温度=55℃
(C)成分の芳香族ポリアミン化合物
3,3'−DDS:3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(小西化学社製)、ジフェニルスルホン骨格を有する芳香族ポリアミン化合物
4,4'−DDS:4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製)、ジフェニルスルホン骨格を有する芳香族ポリアミン化合物
(E)成分のシリカ系無機充填剤
シリカ粒子:SC−2050(アドマテックス社製)、球状シリカ、平均粒径0.5μm
(F)成分の接着助剤
シランカップリング剤:X−12−414(信越化学工業社製)、メルカプト系シランカップリング剤
【表1】

【0108】
(第2接着剤層組成物の調製)
下記(D)、上記第1接着剤層組成物の調製で用いたものと同じ(B)、(C)、(E)、(F)成分を表2に示す量(各成分の固形分(不揮発分)の量であり、単位は質量部)で自転・公転方式の混合機((株)シンキー社製)に仕込み、更に、これら成分の合計の固形分濃度が20〜45質量%となるようにメチルエチルケトン、トルエンまたはシクロヘキサノンを加え、混合して、第2接着剤組成物溶液を調製した。用いた(D)成分を以下に示す。
【0109】
(D)(メタ)アクリル系樹脂
SG−P3:エポキシ基を有するアクリロニトリル系樹脂(ナガセケムテックス社製)、0.021モル/100gのエポキシ基を含有、Tg=12℃、重量平均分子量=85万
【0110】
【表2】

【0111】
(第1・第2の接着剤シートの作製)
次いで、表1、表2に示す接着剤組成物溶液を離型処理された厚さ38μmのPETフィルム上に塗布し、110℃で10分間加熱乾燥し、厚さ約20μm及び25μmの第1の接着剤シート、厚さ約5μm及び25μmの第2の接着剤シートを作製した。
【0112】
(ダイシング・ダイアタッチフィルムの作製)
上記で作製した厚さ20μmの第1層の接着用シートと厚さ約5μmの第2層の接着用シートを60℃でラミネートし、総厚25μmの積層された接着シートを作成した。次いで下記のダイシングフィルムとを、第1の接着剤用シートがダイシングフィルムの粘着剤層面と接触するように室温で貼り合わせてダイシング・ダイアタッチフィルムを作製した。
また、上記で作製した厚さ約25μmの第1の接着剤シート単独、第2の接着剤シート単独を同様にして貼り合わせて各層、単層のダイシング・ダイアタッチフィルムを作製した。

ダイシングフィルム
感圧型ダイシングフィルム:SD85TA(電気化学工業社製)、厚さ85μm
【0113】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
得られたダイシング・ダイアタッチフィルムについて、下記試験を行なった。結果を表3に示す。
【0114】
熱ラミネート性試験
下記、(i)接着剤層(接着剤シート)の剥離力試験及び(ii)ピックアップ性試験から熱ラミネート性を評価した。下記(i)接着剤層の剥離力が2.0N/20mmを超えるものは、接着剤層の剥離力試験結果が○、この値以下は×とした。(ii)ピックアップ性試験で全てのシリコンチップを接着剤層付きで安定して取り出せた場合は○、ピックアップできないシリコンチップが1個でもあった場合は×とした。
【0115】
(i)接着剤層の剥離力試験
上記で得られたダイシング・ダイアタッチフィルムを60℃で接着剤層面を725μmのシリコンウエハーの鏡面側に熱ラミネートし、次いで接着剤層面よりダイシングフイルムを剥離した。残った接着剤層面上に強粘着テープUPH−110B(電気化学工業(株)社製)を張り付け、幅20mmでテープ状にシリコンウエハー面に達するように切り込んだ。この粘着テープと接着剤層が一体となった幅20mmのテープ状サンプルを、ウエハー界面からの180°のピール剥離強度を測定した。剥離速度は、300mm/minである。熱ラミネート性の経時変化の評価として、ダイシング・ダイアタッチフィルム作製直後、及び40℃で1ヶ月保管後のピール剥離強度を測定した。
【0116】
(ii)ピックアップ性試験
上記で得られたダイシング・ダイアタッチフィルム(初期・保管後)を60℃で接着シート面を75μmのシリコンウエハーの裏面側に熱ラミネートした。
このシリコンウェハーを、下記ダイシング条件にて、9mm角のチップにダイシングした。次いで、こうして得られた9mm角のシリコンチップ100個を、NECマシナリー社製のダイボンダー装置(BESTEM−D02−TypeB)を用いてダイシングフィルムからピックアップした。
ダイシング条件:
ダイシング装置:DAD−341(ディスコ社製)
切断方式:シングルカット
スピンドル回転数:40000rpm
ダイシングブレード:NBC−ZH 104F 27HEEE(ディスコ社製)
送り速度:50mm/sec
【0117】
接着性試験
上記で作製したダイシング・ダイアタッチフィルムに直径8インチ、厚さ725μmのシリコンウェハーを60℃で熱ラミネートし、3mm×3mmのチップにダイシングした。
次いで、接着剤層とダイシングフイルム面の界面から剥離し、接着剤層が付いたシリコンチップを取りだした。次いで、ソルダーレジストAUS308((株)太陽インキ社製)が塗布硬化された10mm×10mmのBT基板上に、得られた接着剤層付きシリコンチップを、接着剤層が付着した面が接触するように載せ、170℃、0.1MPaの条件で2秒間熱圧着して固定させた。このようにしてシリコンチップが固定された基板を175℃で6時間加熱して接着剤層を硬化させて試験片(接着試験片)を作製した。この接着試験片を用いて、ボンドテスター(DAGE社製、4000PXY)により、260℃において接着剤硬化物層と基板との間のせん断接着力を測定した(初期の接着性)。
上記と同じ接着試験片を85℃/60%RHの条件下で168時間保持し、次いで260℃のリフロー炉に3回通した後、上記と同様に260℃においてせん断接着力を測定した(湿熱後の接着性)。
【0118】
ダイアタッチ埋め込み性能試験
上記で作成したダイシング・ダイアタッチフィルムに直径8インチ、厚さ75μmのシリコンウェハーを60℃で熱ラミネートした。このシリコンウェハーを、下記ダイシング条件にて、9mm角のチップにダイシングした。次いで、こうして得られた9mm角のシリコンチップを裏面に接着剤層が付いたまま前記感圧ダイシングフィルムの粘着剤層から剥離させた。このシリコンチップを、NECマシナリー社製のダイボンダー装置(BESTEM−D02−TypeB)により、5〜15μm幅のストライプ状回路パターンが形成された50mm×50mm×厚さ250μmの樹脂基板(ソルダーレジストAUS308が塗布硬化されたBT基板)上に接着剤層が接触するように配置し、130℃、0.1MPaの条件で1秒間熱圧着した。この点を図4(埋め込み性能試験におけるシリコンチップの配置を示す図である。)に基づいて具体的に説明すると、1辺9mmの正方形のシリコンチップ41を1辺50mmの正方形の樹脂基板42上に3mmの間隔で4行4列に16個配置し、最も外側に配置されたシリコンチップ41と樹脂基板42の外縁との間隔を2.5mmとした。このようにしてシリコンチップが熱圧着された樹脂基板を超音波画像測定装置で観察して、該シリコンチップと該樹脂基板との間の領域におけるボイドの有無を調べた(初期ダイアタッチ埋め込み性能)。
ダイシング条件:
ダイシング装置:DAD−341(ディスコ社製)
切断方式:シングルカット
スピンドル回転数:40000rpm
ダイシングブレード:NBC−ZH 104F 27HEEE(ディスコ社製)
送り速度:50mm/sec
【0119】
接着剤層の加熱硬化中に相分離、発ガス等のいずれによってもボイドが発生していないことを確認するために、以下の観察を行った。即ち、上記のようにしてシリコンチップが熱圧着された樹脂基板を130℃で120分加熱して接着剤層を硬化させ、更に該基板をワイヤボンディング工程での加熱温度に相当する170℃で120分加熱した後、超音波画像測定装置で観察して、該シリコンチップと該樹脂基板との間の領域におけるボイドの有無を調べた(加熱後ダイアタッチ埋め込み性能)。
【0120】
超音波画像測定装置での上記観察によりにボイドが確認されなかった場合、ダイアタッチ埋め込み性能が十分であると評価した。一方、超音波画像測定装置での上記観察によりボイドが確認された場合、ダイアタッチ埋め込み性能が不十分であると評価した。表1で、「○」は埋め込み性能が十分であったことを、「×」は埋め込み性能が不十分であったことを表す。
【0121】
パッケージの信頼性試験
上記で加熱後ダイアタッチ埋め込み性の試験のために超音波画像測定装置による観察に用いられたのと同様の樹脂基板を該基板表面から600μmの厚さでモールド材KMC2500LM1B(信越化学工業社製)により樹脂封止(175℃、封止圧力6.9MPa、90秒間)し、該モールド材を175℃で4時間加熱硬化させた。このようにして樹脂封止されたシリコンチップを切断して個片化し、得られたパッケージ合計16個を85℃/60%RHの条件下で168時間保持し、次いで最高到達温度260℃の半田リフロー炉に3回通した後、超音波画像測定装置によりシリコンチップと基板との間の剥離の有無を観察した。表1で、「○」は16個のパッケージいずれでも剥離が観察されなかったことを表し、「×」は16個のパッケージ中1個でも剥離が観察されたことを表す。
【0122】
【表3】

※剥離試験サンプル作製時、接着剤層とウェーハとの密着力が弱過ぎたため、ウェーハから接着剤層が剥離し、測定が不可能であった。
【0123】
表3に示すように、本発明の積層した接着剤層(第1の接着剤シート、第2の接着剤シート)を用いたダイシング・ダイアタッチフィルム(実施例1〜4)は、単層の接着シートから成るダイシング・ダイアタッチフィルム(比較例1〜2)に比べ、経時での熱ラミネート性に優れ、また、単層の接着シートから成るダイシング・ダイアタッチフィルム(比較例3)に比べ、加熱後ダイアタッチ埋め込み性能に優れる。更に、本発明の組成物から得られる接着剤硬化物層を含むパッケージは、ボイドを含まないので、吸湿下でのパッケージ信頼性が高い。
【0124】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0125】
10…ダイシング・ダイアタッチフィルム、 11…基材、 12…粘着剤層 13…第1の接着剤シート、 14…第2の接着剤シート、 15…接着剤層、 16…ダイシングフィルム、 20…ダイシング・ダイアタッチフィルム、 21…ウェーハ、 22…チップ、 32…半導体装置樹脂基板(基板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材、該基材上の粘着剤層、該粘着剤層上の接着剤層を含むダイシング・ダイアタッチフィルムであって、前記接着剤層は、第1の接着剤シート、及び該第1の接着剤シート上に積層される第2の接着剤シートからなり、
前記第1接着剤シートを形成するための第1接着剤層組成物は、少なくとも、
(A)カルボキシル基含有エチレン−アクリルゴム、
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、及び
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
を含み、
前記第2接着剤シートを形成するための第2接着剤層組成物は、少なくとも、
(D)重量平均分子量が50,000〜1,500,000であり、エポキシ基及び下記式(1)
【化1】

で示される構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂、
(B)重量平均分子量が5000以下である5〜40℃で固体状のエポキシ樹脂、及び
(C)ジフェニルスルホン骨格構造を有する芳香族ポリアミン
を含むことを特徴とするダイシング・ダイアタッチフィルム。
【請求項2】
前記(A)成分であるカルボキシル基含有エチレン−アクリルゴムが、高圧ラジカル重合により合成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のダイシング・ダイアタッチフィルム。
【請求項3】
前記(C)成分が、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、及びこれらの組み合わせのいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイシング・ダイアタッチフィルム。
【請求項4】
前記第1接着剤層組成物中の前記(B)成分及び前記(C)成分の合計の割合が、前記第1接着剤層組成物中の前記(A)〜(C)成分の合計に対して20質量%以上90質量%未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のダイシング・ダイアタッチフィルム。
【請求項5】
前記第1接着剤層組成物及び/又は前記第2接着剤層組成物は、更に、(E)シリカ系無機充填剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のダイシング・ダイアタッチフィルム。
【請求項6】
前記第1接着剤層組成物及び/又は前記第2接着剤層組成物は、更に、(F)接着助剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のダイシング・ダイアタッチフィルム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のダイシング・ダイアタッチフィルムを使用して製造された半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のダイシング・ダイアタッチフィルム上にウェーハをラミネートし、該ラミネートされたウェーハをダイシングし、その後ダイシングされたダイを基板にアタッチすることを特徴とするダイシング・ダイアタッチ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−151125(P2011−151125A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10102(P2010−10102)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】