説明

ダイズペプチド含有麺類

【課題】ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、さらに、麺の外観や弾力性が変化しない、ダイズペプチドを含有する麺類、及び該麺類の製造方法を提供すること。
【解決手段】ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物及び穀物粉を含有してなる、麺類、及びダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を穀物粉を含む麺類の原料と混合して麺類を製造する、麺類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイズペプチド含有麺類に関する。さらに詳しくは、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物及び穀物粉を含有する麺類、及び該麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥ダイズタンパク質は食品の増量や品質改良(脂肪の乳化安定化、保水性改善等)の目的で広く食品に使用されている。例えば、特許文献1では、栄養の強化という観点から、大豆粉を配合した中華麺が開示されている。
【特許文献1】特開2004−242609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の中華麺は、ダイズ由来の成分による麺の変色が起こるため、変色を抑えるために色素成分をさらに配合する必要があり、その結果、麺の弾力性を容易に調整することができない。また、乾燥ダイズタンパク質はダイズ特有の不快な風味を有しており、この風味は、乾燥直後は弱いが経時的に強くなることから、市販のダイズタンパク質を配合させた麺類は不快な風味を有しやすく、乾燥麺はその傾向がより強くなりやすい。
【0004】
本発明の課題は、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、さらに、麺の外観や弾力性が変化しない、ダイズペプチドを含有する麺類、及び該麺類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、ダイズペプチドとして、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を麺類に含有させることにより、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減されて、風味が良好になることや、麺の外観や弾力性が変化しないことも判明したことから、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物及び穀物粉を含有してなる、麺類、
(2)ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物及び穀物粉の総重量中、0.01〜20重量%である、前記(1)記載の麺類、
(3)麺類が、中華麺、うどん、素麺、冷麦、日本そば、マカロニ、又はスパゲッティーである、前記(1)又は(2)記載の麺類、
(4)麺類が生麺である、前記(1)〜(3)いずれか記載の麺類、
(5)麺類が加熱処理、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理が施された麺類である、前記(1)〜(3)いずれか記載の麺類、並びに
(6)ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を穀物粉を含む麺類の原料と混合して麺類を製造する、前記(1)〜(5)いずれか記載の麺類の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の麺類は、ダイズペプチドを含有しても、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減されることから、風味を低下させずに維持することができ、また、外観や食感も良好であるという優れた効果を奏する。また、麺の外観や弾力性が変化しないことから、他の原料との配合性が制限されないという優れた効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の麺類は、ダイズペプチド及び穀物粉を含有するものであり、前記ダイズペプチドとして、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物(以下、サーモリシン加水分解物という)を含有することに大きな特徴を有する。
【0009】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンにより加水分解することにより得られるものであるが、サーモリシンのペプチド切断特性により、得られる加水分解物における加水分解により生じる遊離アミノ酸の総含有量が少ないことから、麺類に含有させた場合に、ダイズタンパク質やペプチド特有の苦味や異臭が低減されると推定される。なお、該アミノ酸はそのまま、もしくは分解されてアンモニアに変化することにより臭い成分の元になりやすいため、それらの含有量が少ないサーモリシン加水分解物を用いることに本発明は基づくものである。また、詳細な理由は不明なるも、サーモリシン加水分解物に含まれるペプチドが小麦粉等の穀物粉由来タンパク質との相互作用を起こしにくいことから、得られる麺類の外観や弾力性が変化しないと推定される。
【0010】
以下に、サーモリシン加水分解物の調製方法、即ち、ダイズタンパク質をサーモリシンにより加水分解する方法を説明する。
【0011】
ダイズタンパク質は、ダイズ植物に由来するタンパク質であれば特に限定されないが、ダイズ植物の種子に由来するタンパク質であることが好ましい。
【0012】
従って、本発明においては、ダイズ植物そのものやダイズ植物の種子そのもの、あるいは該植物や該種子の破砕物又は粉砕物等を、ダイズタンパク質として用いてもよいが、好ましくはダイズ植物中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したもの、より好ましくはダイズ植物の種子中の全成分からタンパク質成分を分離、精製したものが用いられる。このように分離、精製して得られたダイズタンパク質は、ダイズ植物又はダイズ植物の種子中に含まれる実質的に全種類のタンパク質を含むものでもよく、また、一部の種類のタンパク質を含むものであってもよい。
【0013】
ダイズタンパク質としては、市販品も好適に用いられ得、例えば、日清コスモフーズ(株)、ADMファーイースト(株)、昭和産業(株)、不二製油(株)、(株)光洋商会等の製造業者又は供給業者から容易に入手可能である。
【0014】
なお、本明細書において、ダイズ植物の種子とは、ダイズ種子と通常呼ばれる構造物全体を指すのみならず、例えば、脱皮ダイズ種子、脱脂ダイズ種子(粉末)、ダイズ種子全体より得られる雪花菜(オカラ)等でもあり得る。
【0015】
サーモリシン(EC3.4.24.27)は、Bacillus thermoproteolyticusという耐熱性菌によって生産される耐熱性のプロテアーゼである。サーモリシンは一般に、大きな側鎖をもった疎水性のアミノ酸残基(例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン等)のアミノ基側のペプチド結合を切断することが知られている。
【0016】
サーモリシンは、市販品も好適に用いられ得、大和化成(株)等の製造業者から容易に入手可能である。また、本発明においては、サーモリシンと同等のペプチド切断特性(切断配列特異性等)を有するプロテアーゼとして当該分野で公知のプロテアーゼを、サーモリシンとして用いることができる。
【0017】
なお、本発明では、ダイズタンパク質を加水分解する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、サーモリシン以外の他のプロテアーゼを使用してもよい。他のプロテアーゼとしては、特に限定されず、例えば、パパイン、ブロメライン、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、スブリチン等が挙げられる。これらは、1種類又は2種以上を組み合わせてサーモリシンと併用してもよい。
【0018】
ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解する場合に用いられる反応条件は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、市販のサーモリシンを使用する場合には、その使用説明書に従って使用することができる。具体的な例としては、水等の溶媒に、ダイズタンパク質濃度が、好ましくは0.1〜30%(w/v)、より好ましくは1〜10%(w/v)程度となるようにダイズタンパク質又はダイズタンパク質を含む原料を懸濁し、この懸濁液に、好ましくは0.001〜3%(w/v)、より好ましくは0.01〜0.125%(w/v)程度となるようにサーモリシンを加えて加水分解反応を行う態様が挙げられる。反応温度としては、30〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましく、50〜60℃がさらに好ましい。また、反応時間としては、2〜30時間が好ましく、3〜24時間がより好ましく、10〜20時間がさらに好ましく、12〜18時間がさらに好ましい。反応液のpHとしては、サーモリシンの至適pHであるpH7.0〜8.5付近であることが好ましい。
【0019】
反応の停止手段についても、特に制限はなく、公知の手段を用いることができる。かかる手段としては、例えば、加熱処理等が挙げられる。具体的には、上記反応物を80〜100℃程度の温度で好ましくは3〜20分間、より好ましくは5〜15分間加熱処理すればよく、85℃で15分間の加熱処理や100℃で5分間の加熱処理により、反応物中に含まれるサーモリシンを失活させることができる。
【0020】
上記のような加水分解反応により得られるサーモリシン加水分解物は、必要に応じて、当業者に公知の任意の方法によりさらに処理され得る。例えば、ろ過等の処理により、該加水分解物中の大きな固体粒子を取り除くことが好ましい。ろ過条件等は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。例えば、ろ紙が目詰まりを起こしやすい場合等には、ろ過助剤等も好適に用いられ得る。
【0021】
また、前記加水分解物を減圧濃縮し、次いで凍結乾燥することにより、粉末化することもできる。減圧濃縮及び凍結乾燥の際に使用される条件や機器類は、特に制限されず、技術常識に従って当業者により適宜選択され得る。このようにして粉末化された加水分解物は、そのまま又は水等の溶媒に溶かして、用いることができる。
【0022】
サーモリシン加水分解物は、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解することにより生じた多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態であってもよいし、又は、そのような多種多様なペプチドを、公知の方法で、さらに分画、精製して得られる一部分であってもよい。しかし簡便には、ダイズタンパク質をサーモリシンで加水分解して得られる、多種多様なペプチドを実質的に全て含んだ状態でそのまま用いる。
【0023】
本発明におけるサーモリシン加水分解物の平均分子量は、好ましくは300〜10000である。該平均分子量は、臭い成分の元になる遊離アミノ酸が少ないという観点から、より好ましくは400〜5000であり、さらに好ましくは500〜3500であり、さらにより好ましくは550〜3200である。サーモリシン加水分解物の平均分子量は、当業者に公知の任意の方法によりに測定され得、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定され得る。本明細書において、GPC法により測定される平均分子量は「ピーク平均分子量」を意味し、「ピーク平均分子量」とは、クロマトグラムのピークトップ(最も強い強度のピーク)の溶出時間に対応する分子量を意味する。
【0024】
本発明におけるサーモリシン加水分解物は、臭い成分の元になる遊離アミノ酸の総含有量が少ないため、麺類に含有されてもダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭を低減することが可能である。サーモリシン加水分解物の遊離アミノ酸の総含有量は、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%、さらに好ましくは0.01〜0.2重量%である。本明細書において、遊離アミノ酸の総含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
なお、本発明では、サーモリシン加水分解物として、市販品である「コラプラスTMN」(ピーク平均分子量:711、遊離アミノの総含有量:0.15重量%、ロート製薬社製)を用いることができる。
【0026】
麺類中のサーモリシン加水分解物の含有量は、麺類の苦味、異臭、外観及び弾力性の観点から、麺類中に含まれる小麦粉等の穀物粉及びサーモリシン加水分解物の総重量中、0.01〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、0.01〜5重量%がさらに好ましい。
【0027】
穀物粉としては、小麦(小麦胚芽を含む)、大麦、ライ麦等の麦類;米、うるち米、もち米、発芽玄米等の米類;ダイズ等の豆類;とうもろこし、そば、あわ、きび、ひえ等の穀物を製粉することにより得られる粉が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いてもよいが、これらの中では強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉等の小麦粉を主成分として用いることが好ましい。なお、本明細書において、穀物粉の「主成分」とは、穀物粉中の含有量が50重量%以上である成分のことをいう。
【0028】
本発明の麺類中の穀物粉の合計含有量は、50〜80重量%が好ましく、55〜75重量%がより好ましい。
【0029】
本発明の麺類は、前記サーモリシン加水分解物及び穀物粉を含有していれば、特に限定はなく、麺類の原料として、さらに塩類を含有し、必要により、かんすい、卵、油脂類(オリーブ油など)、活性グルテン、各種澱粉類、食物繊維、豆類、野菜(ヨモギ粉など)、イモ類、ビタミン類、ゴマ、イカ墨、トマトピューレ、ハーブ類等を含有することができる。
【0030】
本発明の麺類を製造する方法としては、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を穀物粉を含む麺類の原料と混合して麺類を製造する工程を含むものであれば特に限定はなく、前記工程以外には、公知の方法を使用することができる。
【0031】
本発明の麺類の好適例としては、中華麺、うどん、素麺、冷麦、日本そば、マカロニ、又はスパゲッティー等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の麺類は、上記麺類の生麺(即ち、後述の処理を施さない麺類)の他、加熱処理(α化処理ともいい、例えば、油揚げ処理、蒸し処理、茹で処理)、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理が施された麺類も包含する。これら処理された麺類としては、半生麺類、乾麺類、冷凍麺類、油揚げ即席麺類、α化後乾燥即席麺類、LL麺等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0034】
〔ダイズペプチドの分子量〕
ダイズペプチドを25mM Tris-HCl緩衝液(150mM NaCl含有、pH7.5)に溶解し、1mg/mLの被験溶液を調製する。HPLCカラム Superdex peptide HR(10mm I.D.×30cm、Amersham Biosciences社製)を同じ緩衝液で平衡化し、このカラムに被験溶液を100μL注入する。カラムの流速は0.5mL/分、カラム温度は室温、ペプチドの検出は214nmで行い、溶出時間から分子量分布及びピーク平均分子量を推定する。なお、分子量既知のペプチド標品として、Cytochrome C(シグマ社製、分子量12327)、Aprotinin(シグマ社製、分子量6518)、Hexaglycine(シグマ社製、分子量360)、Triglycine(シグマ社製、分子量189)、及びGlycine(シグマ社製、分子量75)を用いた。
【0035】
〔ダイズペプチドにおける遊離アミノ酸の総含有量〕
ダイズペプチドをトリクロロ酢酸で除タンパク後、日立L-8800型高速アミノ酸分析計を用いて、生体液分析法で測定する。
【0036】
実施例1、比較例1及び参考例1
表1に示す配合割合の原料を混合し、中華麺生地を調製した後、乾燥しないようにビニール袋に保存し1時間熟成を行った。熟成後、麺棒にて圧延し、作製した麺帯をさらに熟成した。このように調製した麺帯を包丁にて表1に示す切り幅で裁断し、実施例1、比較例1及び参考例1の生中華麺を製造した。なお、実施例及び比較例と同様にして製造した参考例を対照参考例という。
【0037】
試験例1〔官能試験〕
実施例1、比較例1及び参考例1の麺を3分間茹でた後、試作した麺の食感を比較した。即ち、上記麺を試食したパネラー10名により、硬さ、粘弾性、食感、外観及び風味の5項目の特性について、以下の評価基準に従って評価を行い、その平均値を算出した。結果を表1に示す。なお、各項目における平均値がそれぞれ2.5以上であれば、対照参考例と比べて遜色ない特性を維持しているものと判断する。
【0038】
〔硬さの評価基準〕
3:対照参考例と同じ
2:対照参考例よりやや硬い
1:対照参考例よりかなり硬い
【0039】
〔粘弾性の評価基準〕
3:対照参考例と同じ
2:対照参考例よりやや弾力が弱い
1:対照参考例よりかなり弱い
【0040】
〔食感の評価基準〕
3:対照参考例と同じ
2:対照参考例よりやや劣る
1:対照参考例より劣る
【0041】
〔外観の評価基準〕
3:対照参考例と同じ
2:対照参考例よりやや劣る
1:対照参考例より劣る
【0042】
〔風味の評価基準〕
3:対照参考例と同じ
2:対照参考例よりやや劣る
1:対照参考例より劣る
【0043】
【表1】

【0044】
表1より、実施例1の麺は、比較例1に比べて、麺質、食感(腰)、外観、及び風味が優れており、また、参考例1の麺と同等のものであることが分かる。
【0045】
実施例2、比較例2及び参考例2
表2に示す配合割合の原料を混合し、生うどん生地を調製した後、乾燥しないようにビニール袋に保存し1時間熟成を行った。熟成後、麺棒にて圧延し、作成した麺帯をさらに熟成した。このように調製した麺帯を包丁にて表2に示す切り幅で裁断し、実施例2、比較例2及び参考例2の生うどんを製造した。
【0046】
得られた実施例2、比較例2及び参考例2の生うどんを12分間茹でた後、試験例1と同様にして官能試験を行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2より、実施例2の麺は、比較例2に比べて、麺質、食感(腰)、外観、及び風味が優れており、また、参考例2の麺と同等のものであることが分かる。
【0049】
実施例3、比較例3及び参考例3
表3に示す配合割合の原料を混合し、生うどん生地を調製した後、乾燥しないようにビニール袋に保存し1時間熟成を行った。熟成後、麺棒にて圧延し、作成した麺帯をさらに熟成した。このように調製した麺帯を包丁にて表3に示す切り幅で裁断した後、茹上げの他に、蒸し処理、茹上げ処理と蒸し処理の併用などによりα化を行い、さらに酸液に浸漬し麺を酸性域に調整を行い、実施例3、比較例3及び参考例3の長期保存用うどん(LLうどん)を製造した。
【0050】
得られた実施例3、比較例3及び参考例3のLLうどんを3分間茹でた後、試験例1と同様にして官能試験を行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3より、実施例3の麺は、比較例3に比べて、麺質、食感(腰)、外観、及び風味が優れており、また、参考例3の麺と同等のものであることが分かる。
【0053】
実施例4、比較例4及び参考例4
表4に示す配合割合の原料を混合し、生地を調製した後、乾燥しないようにビニール袋に保存し1時間熟成を行った。熟成後、麺棒にて圧延し、作成した麺帯をさらに熟成した。このように調製した麺帯を包丁にて表4に示す切り幅で裁断し、実施例4、比較例4及び参考例4の生ラーメンを製造した。
【0054】
得られた実施例4、比較例4及び参考例4の生ラーメンを3分間茹でた後、試験例1と同様にして官能試験を行った。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
表4より、実施例4の麺は、比較例4に比べて、麺質、食感(腰)、外観、及び風味が優れており、また、参考例4の麺と同等のものであることが分かる。
【0057】
以下に示す配合例に基づき、常法に従って、本発明の麺類を作製することができる。
【0058】
配合例1〜59 サーモリシン加水分解物含有うどん、冷麦、素麺の作製
表5に示す原料を用い、当業者に公知の方法に従って麺生地を作製し、当業者に公知の方法に従って、サーモリシン加水分解物含有うどん、冷麦、又は素麺を作製する。このようにして作製された麺は、所望により、加熱処理(α化処理ともいい、例えば、油揚げ処理、蒸し処理、茹で処理等)、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理に供することができる。
【0059】
【表5】


【0060】
配合例60〜84 サーモリシン加水分解物含有中華麺の作製
表6に示す原料を用い、当業者に公知の方法に従って、サーモリシン加水分解物含有中華麺を作製する。このようにして作製された麺は、所望により、加熱処理(α化処理ともいい、例えば、油揚げ処理、蒸し処理、茹で処理等)、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理に供することができる。
【0061】
【表6】

【0062】
配合例85〜127 サーモリシン加水分解物含有スパゲッティー、マカロニの作製
表7に示す原料を用い、当業者に公知の方法に従って、麺生地を作製し、当業者に公知の方法に従って、サーモリシン加水分解物含有スパゲッティー、又はマカロニを作製する。このようにして作製された麺は、所望により、加熱処理(α化処理ともいい、例えば、油揚げ処理、蒸し処理、茹で処理等)、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理に供することができる。
【0063】
【表7】


【0064】
配合例128〜144 サーモリシン加水分解物含有日本そばの作製
表8に示す原料を用い、当業者に公知の方法に従って、サーモリシン加水分解物含有日本そばを作製する。このようにして作製された麺は、所望により、加熱処理(α化処理ともいい、例えば、油揚げ処理、蒸し処理、茹で処理等)、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理に供することができる。
【0065】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の麺類は、ダイズペプチドを含有するものであっても、ダイズタンパク質やペプチド由来の苦味や異臭が低減され、さらに、麺の外観や弾力性が変化しないことから、食品分野に好適に使用される。また、本発明の麺類は、健康効果の高いダイズ由来のペプチドを含有することから、必須アミノ酸の補給用としても好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物及び穀物粉を含有してなる、麺類。
【請求項2】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物の含有量が、ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物及び穀物粉の総重量中、0.01〜20重量%である、請求項1記載の麺類。
【請求項3】
麺類が、中華麺、うどん、素麺、冷麦、日本そば、マカロニ、又はスパゲッティーである、請求項1又は2記載の麺類。
【請求項4】
麺類が生麺である、請求項1〜3いずれか記載の麺類。
【請求項5】
麺類が加熱処理、冷凍処理、乾燥処理、及び酸処理からなる群より選択される一種以上の処理が施された麺類である、請求項1〜3いずれか記載の麺類。
【請求項6】
ダイズタンパク質のサーモリシン加水分解物を穀物粉を含む麺類の原料と混合して麺類を製造する、請求項1〜5いずれか記載の麺類の製造方法。

【公開番号】特開2009−153413(P2009−153413A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333051(P2007−333051)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】