説明

ダイヘッドユニット

【課題】本発明は、スリット間隙のテーパ率調整のための分解が不要となるダイヘッドユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】塗布液が流入される塗布液流入口10と塗布液流入口10からマニホールド部6が形成されたマニホールド板1と、マニホールド板1との間に塗布液が押し出されるスリット部7が形成されるとともにマニホールド部6が覆われる平板2とを有するダイヘッドユニットUにおいて、塗布液が押し出されるスリット部7の開口部7aと異なる面において、マニホールド板1および平板2を支持する土台板3と、平板2を土台板3の面上で回転可能とする回転軸13とを備えることを特徴とする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を塗布する装置に適用されるダイヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止用フィルム等の光学フィルムの製造には、ダイコーティング方式が採用される場合が多い。ダイヘッドでは膜厚精度の確保が可能であるものの、塗布幅の拡大に伴って、単位幅あたりの膜厚の要求精度が厳しくなっている。
【0003】
そこで従来技術では、ダイヘッド流路形状の調整を繰返し行っていた。ダイヘッド方式においては、塗布液は入口から注入され、マニホールドによりスリットへ分配され吐出する。分配において、スリットからの流出があるためにマニホールド内において内圧が管軸方向に徐々に低下し、その結果マニホールド入口側に比べて終端側への分配量が小さくなってしまう。終端側の分配量不足を補正するために、膜厚・液粘度等に応じて、終端側のスリット間隙を広げた流路形状(直線テーパ)を形成する。実際には、平板とマニホールド板の間に金属製シムを挿入することにより、スリット間隙のテーパ率(終端側/入口側)を調整し膜厚精度を確保していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−9342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、調整が正しいかどうかはシム挿入後の塗布時に判明するため、精度不足時にはダイヘッドを分解して再度シム厚さを変更する必要があった。結果として、適切なシム厚さを選定するためには数回の実機検証が必要とあり、多大なコストおよび時間を要するという問題を抱えていた。
【0005】
そこで、本発明は上記事情を考慮してなされたもので、膜厚調整(スリット間隔のテーパ率の調整)のための分解が不要となるダイヘッドユニットを提供することを目的とする。特に、インラインにおける膜厚の調整においてラインを停止することなく膜厚調整ができるダイヘッドおよび液品種の変更や高速化等の塗布条件の変更における実機検証にも有効なダイヘッドユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、塗布液が流入される塗布液流入口(10)と前記塗布液流入口(10)からマニホールド部(6)が形成されたマニホールド板(1)と、前記マニホールド板(1)との間に前記塗布液が押し出されるスリット部(7)が形成されるとともに前記マニホールド部(6)が覆われる平板(2)とを有するダイヘッドユニット(U)において、前記塗布液が押し出される前記スリット部(7)の開口部(7a)と異なる面において、前記マニホールド板(1)および前記平板(2)を支持する土台板(3)と、前記平板(2)を前記土台板(3)の面上で回転可能とする回転軸(13)とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のダイヘッドユニット(U)において、
前記平板(2)に接し、前記スリット部(7)のスリット間隔を変更するスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)を更に備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記回転軸(13)は、前記平板(2)の底面の中心近辺に形成されることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記土台板(3)には前記土台板(3)の長手方向と交差する方向に前記回転軸(13)が移動可能な長穴(18)が形成され、前記回転軸(13)が前記長穴(18)に沿って移動することにより前記開口部(7a)の開口面積およびテーパ率の少なくとも何れか一方が変更可能となることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に係る発明は、請求項4に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記回転軸(13)を有さない前記マニホールド板(1)が前記土台板(3)上を水平方向に移動可能であることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項6に係る発明は、請求項2乃至5の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)における前記回転軸(13)の位置に対し、前記接点部分(U)とは反対側の前記平板(2)の一部にストッパ(36)の一部が押圧され、前記ストッパ(36)は前記土台板(3)に形成された支持部(15、25)に支持され、前記ストッパ(36)と前記スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の前記接点部分(24)とは前記回転軸(13)を中心に回転する前記平板(2)を互いに押圧することを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項7に係る発明は、請求項2乃至5の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)における前記回転軸(13)の位置に対し、前記接点部分(24)とは反対側の前記平板(2)の一部に弾性体(14)の一端が押圧され、前記弾性体(14)の他端は前記土台板(3)に形成された支持部(15、25)に押圧され、前記弾性体(14)と前記スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の前記接点部分(24)とは前記回転軸(13)を中心に回転する前記平板(2)を互いに押圧することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項8に係る発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)と前記マニホールド板(1)との端面は、前記平板(2)または前記マニホールド板(1)から前記塗布液が漏れ出さないように前記塗布液流入口(10)および前記開口部(7a)を除き、シール材(28、29)によってシールされていることを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項9に係る発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記回転軸(13)はネジ(16)であることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項10に係る発明は、塗布液が流入される塗布液流入口(10)と前記塗布液流入口(10)からマニホールド部(6)が形成されたマニホールド板(1)と、前記マニホールド板(1)との間に前記塗布液が押し出されるスリット部(7)が形成されるとともに前記マニホールド部(6)が覆われる平板(2)とを有するダイヘッドユニット(U)において、前記マニホールド板(1)に接し、前記スリット部(7)のスリット間隔を変更するスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)と、前記塗布液が押し出される前記スリット部(7)の開口部(7a)と異なる面において、前記マニホールド板(1)および前記平板(2)を支持する土台板(3)と、前記マニホールド板(1)を前記土台板(3)の面上で回転可能とする回転軸(13)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明は、塗布液が流入される塗布液流入口(10)と前記塗布液流入口(10)からマニホールド部(6)が形成されたマニホールド板(1)と、前記マニホールド板(1)との間に前記塗布液が押し出されるスリット部(7)が形成されるとともに前記マニホールド部(6)が覆われる平板(2)とを有するダイヘッドユニット(U)において、前記塗布液が押し出される前記スリット部(7)の開口部(7a)と異なる面において、前記マニホールド板(1)および前記平板(2)を支持する土台板(3)と、前記平板(2)を前記土台板(3)の面上で回転可能とする回転軸(13)とを備えることを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、前記平板(2)を回転軸(13)を中心に回転することで前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))を、前記マニホールド板1および前記平板2を含むダイヘッドを分解することなく任意に連続的に変更可能とすることができる(インラインにおいて前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率を変更することが可能である)。従って、塗液や塗布巾等により大きくことなるものの、テーパ率の調整一回あたり、シム製作費用の削減、組立て分解時間の短縮および生産停止時間の短縮が可能となる。従ってタクトタイムを短縮することができる。また、ダイヘッドの検証時間の短縮により、ダイヘッドユニットやその製造物である光学フィルム等の開発納期の短縮が可能となる。さらに、ダイヘッド製作後にスリット間隔のテーパ率(特に直線テーパ)を変更できるため、ダイヘッド形状の初期設計時間の短縮、液物性の変更への対応や分配量以外の要因による膜厚精度不足の修正等にも応用できる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)に接し、前記スリット部(7)のスリット間隔を変更するスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)を更に備えることを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、前記平板(2)をユーザが直接手等を用いて移動させるよりも精密に前記平板(2)を前記回転軸(13)の周りに回転させることができ、前記スリット部(7)のスリット間隔H1およびスリット間隔H2を数ミクロン単位で変更することが可能となる。従って、前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))を精密に制御できるので、様々な種類(濃度の変化も含む)の塗布液に対して前記スリット部(7)から吐出される塗布液の量をマニホールド部6の長手方向(管軸方向)に対して均一な量に調節することが的確に素早くできるようになる。
【0019】
請求項3に記載されるように、請求項1または2に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記回転軸(13)は、前記平板(2)の底面の中心近辺に形成されることを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))を精密に制御できるので、様々な種類(濃度の変化も含む)の塗布液に対して前記スリット部(7)から吐出される塗布液の量をマニホールド部6の長手方向(管軸方向)に対して均一な量に調節することが的確に素早くできるようになる。
【0020】
さらに、請求項4に記載されるように、請求項1乃至3の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記土台板(3)には前記土台板(3)の長手方向と交差する方向に前記回転軸(13)が移動可能な長穴(18)が形成され、前記回転軸(13)が前記長穴(18)に沿って移動することにより前記開口部(7a)の開口面積およびテーパ率の少なくとも何れか一方が変更可能であることを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))を可変にするばかりではなく、本発明のダイヘッドユニット(U)を使用して適応できる塗布液の種類が広がり、様々な種類(濃度の変化も含む)の塗布液に対して前記スリット部(7)から吐出される塗布液の量をマニホールド部6の長手方向(管軸方向)に対して均一な量に調節することが的確に素早くできるようになる。
【0021】
さらに、請求項5に記載されるように、請求項4に記載のダイヘッドユニット(U)において、 前記回転軸(13)を有さない前記マニホールド板(1)が前記土台板(3)上を水平方向に移動可能であるから、本発明のダイヘッドユニット(U)を使用して適応できる塗布液の種類が広がり、様々な種類(濃度の変化も含む)の塗布液に対して前記スリット部(7)から吐出される塗布液の量をマニホールド部6の長手方向(管軸方向)に対して均一な量に調節することが的確に素早くできるようになる。
【0022】
さらに、請求項6に記載されるように、請求項2乃至5の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)における前記回転軸(13)の位置に対し、前記接点部分(U)とは反対側の前記平板(2)の一部にストッパ(36)の一部が押圧され、前記ストッパ(36)は前記土台板(3)に形成された支持部(15、25)に支持され、前記ストッパ(36)と前記スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の前記接点部分(24)とは前記回転軸(13)を中心に回転する前記平板(2)を互いに押圧することを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、簡易な構成で前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率を正確に設定することが可能である。
【0023】
さらに、請求項7に記載されるように、請求項2乃至5の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)における前記回転軸(13)の位置に対し、前記接点部分(24)とは反対側の前記平板(2)の一部に弾性体(14)の一端が押圧され、前記弾性体(14)の他端は前記土台板(3)に形成された支持部(15、25)に押圧され、前記弾性体(14)と前記スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の前記接点部分(24)とは前記回転軸(13)を中心に回転する前記平板(2)を互いに押圧することを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、簡易な構成で前記スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の動きに対して正確に素早く平板(2)が追随して回転することが可能である。従って、前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率を連続的に正確に設定することが可能である。また、弾性体(14)としてコイルバネ等のバネを使用すれば耐久性が非常に高いので、一端組み立てれば半永久的にそのまま使用し続けることが可能になる。
【0024】
さらに、請求項8に記載されるように、請求項1乃至7の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記平板(2)と前記マニホールド板(1)との端面は、前記平板(2)または前記マニホールド板(1)から前記塗布液が漏れ出さないように前記塗布液流入口(10)および前記開口部(7a)を除き、シール材(28、29)によってシールされていることを特徴とするダイヘッドユニット(U)である。本発明のダイヘッドの基本構成は、平板(2)、マニホールド板(1)および土台板(3)からなり、板の組み合わせは、土台板(3)上にマニホールド板をねじにて数点を固定し、平板(2)も支点となる回転軸(13)(好ましくは中央部)のみ固定する。次に、微動送り装置(微動装置)である前記スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)を土台板(3)の片側端部に固定しもう一方側端部にはバネ等の弾性体(14)を設置する。微動送り装置により平板のうち片側端部を微動させ、平板の支点を中心に回転させる。マニホールド板と平行な位置をゼロ点として微動量から形成したスリット間隙のテーパ率を確認できる。確認後、平板は土台板の長孔を用いて固定されシール材(28、29)によってシールされているので、塗布液の液漏れは完全に解消される。
【0025】
さらに、請求項9に記載されるように、請求項1乃至7の何れか一項に記載のダイヘッドユニット(U)において、前記回転軸(13)はネジ(16)であることを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、簡易な構成で前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率を連続的に正確に設定することが可能である。
【0026】
さらに、請求項10記載されるように、塗布液が流入される塗布液流入口(10)と前記塗布液流入口(10)からマニホールド部(6)が形成されたマニホールド板(1)と、前記マニホールド板(1)との間に前記塗布液が押し出されるスリット部(7)が形成されるとともに前記マニホールド部(6)が覆われる平板(2)とを有するダイヘッドユニット(U)において、前記マニホールド板(1)に接し、前記スリット部(7)のスリット間隔を変更するスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)と、前記塗布液が押し出される前記スリット部(7)の開口部(7a)と異なる面において、前記マニホールド板(1)および前記平板(2)を支持する土台板(3)と、前記マニホールド板(1)を前記土台板(3)の面上で回転可能とする回転軸(13)とを備えることを特徴とするダイヘッドユニット(U)であるから、前記マニホールド板(1)を回転軸(13)を中心に回転することで前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))を、前記マニホールド板1および前記平板2を含むダイヘッドを分解することなく任意に連続的に変更可能とすることができる(インラインにおいて前記スリット部(7)のスリット間隔のテーパ率を変更することが可能である)。従って、塗液や塗布巾等により大きくことなるものの、テーパ率の調整一回あたり、シム製作費用の削減、組立て分解時間の短縮および生産停止時間の短縮が可能となる。従ってタクトタイムを短縮することができる。また、ダイヘッドの検証時間の短縮により、開発納期の短縮が可能となる。さらに、ダイヘッド製作後にスリット間隔のテーパ率(特に直線テーパ)を変更できるため、ダイヘッド形状の初期設計時間の短縮、液物性の変更への対応や分配量以外の要因による膜厚精度不足の修正等にも応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
<実施の形態1>
図1は、本実施形態に係わるダイヘッドユニットの正面を示す正面図である。
【0029】
本実施形態に係わるダイヘッドユニットは、マニホールド板1、平板2、土台板3およびスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)である微動装置(4、20、22)と駆動軸(5、21、23)を含んで構成される。
【0030】
マニホールド板1と平板2は土台板3と接触している。マニホールド板1と平板2および土台板3とは金属であることが好ましいがこれに限定されるわけではない。
【0031】
マニホールド板1は土台板3上においてネジにて固定されている。土台板3とマニホールド板1との位置関係がずれないようにネジは複数であることが好ましい。
【0032】
また、マニホールド板1の底面(土台板3との接触面である)および土台板3の表面(マニホールド板1との接触面である)は互いに鏡面加工されているので接触面の密着度が非常に高くなりマニホールド板1と土台板3とは密封された状態となる。従って、マニホールド部6に注入された塗布液はマニホールド板1と土台板3との界面から外部に漏れることなくスリット部7から外部に吐出される。
【0033】
平板2は土台板3と、回転軸13においてネジにて固定されている(押さえつけられている。)。従って、平板2は回転軸13を中心にして土台板3の表面を水平方向に回転する。
【0034】
また、平板2の土台板3との接触面および土台板3の平板2との接触面は互いに鏡面加工されているので接触面の密着度は高いが、前述したように平板2が回転軸13を中心に土台板3の上を水平方向に回転することができる程度の密着度となっている。従って、平板2と土台板3との界面の密着度が高いので、マニホールド部6に注入された塗布液は平板2と土台板3との界面から外部に漏れることなくスリット部7から外部に吐出される。
【0035】
マニホールド板1と平板2とは向かい合っており、マニホールド部6はマニホールド板1に形成された凹部を平板2が覆うようになっている。また、図1のF方向へマニホールド部6に注入された塗布液(ニュートン流体および非ニュートン流体(擬塑性(pseudo-plastic)流体、ダイラタント(dilatant)流体、ビンガム(Bingham)流体等を含む))を吐出するためのスリット部7が、向かい合ったマニホールド板1と平板2との間に形成されている。
【0036】
マニホールド部6には図1の手前側から塗布液が注入され、塗布液はマニホールド部6を図1の奥に向かって(マニホールド部6の長手方向(管軸方向)に)流れ、スリット部7からF方向に向かって(図1の奥方向(マニホールド部6の長手方向(管軸方向))に沿って)均一な流量の分布となる塗布液が吐出される。
【0037】
スリット部7は、平板2が回転軸13を中心に水平方向に回転することによりスリット間隔のテーパ率が変化する(詳細は図2において説明する)。
【0038】
スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の一部である微動装置4はネジ等の固定具によって土台板3に固定されている。従って、微動装置4の駆動機構によって平板2に接触する駆動軸5を平板2方向(D1方向)へ押し出し、または引き込む(D2方向)ことによって平板2を、回転軸13を中心に土台板3の表面上を水平方向に回転させる。微動装置4の構成については後述する。
【0039】
また、図1においては図示されていないが、マニホールド板1と平板2との境界面を含む端面は、塗布液が注入されるマニホールド部6の図1における手前側の塗布液流入口10(図2参照)を除いてゴム等の弾性体(シール材28、29)および金属等のカバー(シール材28を覆うフタ材33、シール材29を覆うフタ材34)で覆われて(シールされて)おり、マニホールド部6に注入された塗布液がマニホールド板1と平板2との境界面から外部に漏れることなくスリット部7から外部に吐出される構造となっている。
【0040】
次にマニホールド部6の詳細について図2を用いて説明する。
【0041】
図2はマニホールド部6の詳細を示す概略斜視図であり、図2の上部がマニホールド板1であり図2の下部が平板2である。塗布液は12方向からマニホールド部6の塗布液流入口10を通ってマニホールド部6内に注入される。マニホールド部6のもう一端である塗布液流入終端面11は前述したようにゴム等の弾性体で覆われ密閉されているので、マニホールド部6に注入された塗布液は、スリット部7から外部に吐出される。
【0042】
塗布液流入口10に近い位置の塗布液は12a方向からスリット部7を通って12b方向に向かって外部に吐出される。12c方向からスリット部7に流入した塗布液はスリット部7を通って12d方向に向かって外部に吐出される。12b方向に向かって外部に吐出される塗布液の量と12d方向に向かって外部に吐出される塗布液の量とは均一になるようにスリット部7のスリット間隔が調整される(調整方法は後述する。)。
【0043】
また、12e方向からスリット部7に流入した塗布液はスリット部7を通って12f方向に向かって外部に吐出され、12g方向からスリット部7に流入した塗布液はスリット部7を通って12h方向に向かって外部に吐出される。12f方向に向かって外部に吐出される塗布液の量と12h方向に向かって外部に吐出される塗布液の量とは均一になるようにスリット部7のスリット間隔が調整される。従って、12b方向に向かって外部に吐出される塗布液の量、12d方向に向かって外部に吐出される塗布液の量、12f方向に向かって外部に吐出される塗布液の量、および12h方向に向かって外部に吐出される塗布液の量とは均一になるように(均一吐出)スリット部7のスリット間隔が調整される。
【0044】
塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1と塗布液流入終端面11側のスリット部7のスリット間隔H2とは、回転軸13を中心に図2の下部の平板2が回転することによりスリット間隔が連続的に自由に変化する。平板2は微動装置4の駆動軸5に押されまたは引かれることにより回転軸13を中心に回転する(矢印L)ので、スリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))をマニホールド板1および平板2を含むダイヘッドを分解することなく任意に連続的に変更可能とすることができる。スリット部7の任意の開口部7aにおいてテーパ率が一定となるがこれを直線テーパと呼ぶ。
【0045】
スリット間隔H1とスリット間隔H2はおおよそ数ミクロンから数100ミクロンの間で変化する。通常、塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1よりも塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2の値の方が大きく、塗布液の液粘度・塗布液が塗布される面の塗布液の膜圧等に応じて変化するが、塗布液流入終端面11側のスリット部7のスリット間隔H2は数100ミクロンとなる。好ましくは100ミクロン前後となる。
【0046】
微動装置4の駆動軸5に押されまたは引かれることにより回転軸13を中心に回転する平板2は、ミクロン単位またはサブミクロン単位で連続的にスリット間隔H1およびスリット間隔H2を変化させることができる。
【0047】
次に図3のダイヘッドユニットの平面図を用いてスリット部7のスリット間隔が変化する機構について説明する。
【0048】
平板2は回転軸である回転軸13を中心にL方向(図3における紙面上(土台板3の表面とほぼ平行な面上)に回転する。
【0049】
微動装置4に駆動されて図3において上下方向(D2方向およびD1方向)に移動する駆動軸5は平面2と接点(接点部分)24において接触し、平板2をL方向(L4方向およびL3方向)に回転させる。
【0050】
支持部15は土台板3上に形成され、バネ等の弾性体14を介して平板2と結合している(詳細は後述する)。平板2とマニホールド板1とで形成されるスリット部7の塗布液流入口10側のスリット間隔H1が広い場合に(一例として数百ミクロンの場合に)、支持部15と平板2との間に設置された弾性体14が縮んだ状態である場合には、スリット部7における通常のテーパ率の範囲内において、弾性体14は平板2をD3方向に押圧し続ける。従って、回転軸13の反対側にある接点(接点部分)24には常にD2方向(微動装置4側)に押す力が平板2を介して働くので、駆動軸5と平板2とを結合させるための構造体を形成する必要がない。
【0051】
次に、駆動軸5がD1方向に移動すると、駆動軸5は接点(接点部分)24において平面2を押圧し、回転軸13から図3において左側(回転軸13から微動装置4側)にある平板2をL3方向へ回転させる。一方、駆動軸5が接点(接点部分)24において平面2を押圧することで、回転軸13から図3において右側(回転軸13から微動装置4と反対側)にある平板2をL1方向へ回転させる。
【0052】
従って、平板2は図3を上側から見て、反時計方向に回転するので微動装置4に近い側(塗布液流入口10側)のスリット間隔H1は小さく(狭まく)なり、微動装置4から遠い側(塗布液流入終端面11側)のスリット間隔H2は大きく(広く)なる。このように平板2のスリット間隔H1を狭くすることで、スリット部7における塗布液流入口10に近い開口部7a(マニホールド部6の長手方向(管軸方向)における塗布液流入口10に近いスリット部の開口部7a)から外部に吐出される塗布液の量を少なくするように調整できる。また、塗布液流入終端面11に近い開口部7a(マニホールド部6の長手方向(管軸方向)における塗布液流入終端面11に近いスリット部7の開口部7a)から外部に吐出される塗布液の量を多くするように調整できる。
【0053】
駆動軸5がD2方向に移動すると、駆動軸5は接点(接点部分)24において弾性体14の弾性力(伸びる力)によって平面2から押圧されるので、回転軸13から図3において左側(回転軸13から微動装置4側)にある平板2は弾性体14の弾性力によってL4方向に回転する。一方、回転軸13から図3において右側(回転軸13から微動装置4と反対側)にある平板2はL2方向に回転する。
【0054】
従って、平板2は図3を上側から見て、時計方向に回転するので微動装置4に近い側(塗布液流入口10側)のスリット間隔H1は大きく(広く)、微動装置4から遠い側(塗布液流入終端面11側)のスリット間隔H2は小さく(狭まく)なる。このように平板2のスリット間隔H1を広くすることで、スリット部7における塗布液流入口10に近い開口部7a(マニホールド部6の長手方向(管軸方向)における塗布液流入口10に近いスリット部の開口部7a)から外部に吐出される塗布液の量を大きくするように調整できる。また、塗布液流入終端面11に近い開口部7a(マニホールド部6の長手方向(管軸方向)における塗布液流入終端面11に近いスリット部の開口部7a)から外部に吐出される塗布液の量を少なくするように調整できる。
【0055】
以上述べてきたように、平板2を回転させることによって、スリット間隔のテーパ率(終端側(塗布液流入終端面11側のスリット間隔H2)/入り口側(塗布液流入口10側のスリット部7のスリット間隔H1))を精密に制御することが可能となる。
【0056】
なお、図3においてシール材28を覆うフタ材33はネジ34がマニホールド板1の取り付け穴(図示せず)に挿入され、シール材28を押圧してマニホールド板1に固定される。また、同様に、シール材29を覆うフタ材32はネジ35がマニホールド板1の取り付け穴(図示せず)に挿入されることによってシール材29を押圧してマニホールド板1に固定される。
【0057】
この場合、フタ材33に設けられるネジは一つとは限らず、複数のネジが(例えば、マニホールド板1の高さ方向に)フタ材33からシール材28を介してマニホールド板1に取り付けられることによって、マニホールド板1とフタ材33がしっかりと固定され、シール材28による密閉性が高まる。同様に、複数のネジが(例えば、マニホールド板1の高さ方向に)フタ材32からシール材29を介してマニホールド板1に取り付けられることによって、マニホールド板1とフタ材32がしっかりと固定され、シール材29による密閉性が高まる。
【0058】
次に図4を用いて、回転軸13を土台板3の表面におおよそ水平な方向(管軸方向)に移動させる方法について説明する。
【0059】
図4(A)は図3のA−A線における断面図である。図4(B)はダイヘッドユニットの底面図である。
【0060】
図4(A)において、回転軸13にはネジ16が設置され、平板2はネジ16を回転の中心として土台板3の表面をL方向に回転する。土台板3にはネジ16のネジ部分の直径よりも大きい長穴18が形成されており、土台部3の長穴18と平板2とをネジ16で止める。またネジ16と長穴18との間にワッシャー17を備えてもよく、この場合にはワッシャー17が回転による摩擦力を軽減するのでネジ16だけを用いて平板2と土台板3とを固定した場合よりも、平板2は土台板3上において滑らかに回転することが可能となる。
【0061】
長穴18は、スリット部7の長手方向(管軸方向)(マニホールド部6の長手方向(管軸方向))と交差する方向(好ましくは直交する方向)に形成されており、長穴18の任意の位置においてネジ16を用いて平板2と土台板3とを固定することが可能である。
【0062】
長穴18は、平板2の底面における長手方向(管軸方向)の中心点近辺を含み、長手方向(管軸方向)と交差する方向(好ましくは直交する方向)に形成されている。平板2を長穴18の長穴方向に移動させ(回転軸13が長穴18に沿って移動する)、平板2と土台板3とをネジ16を用いて押し合わせると、スリット部7の開口部7aの面積が変化する。従って、ネジ16の長穴18における取り付け位置は、塗布液の種類、濃度、粘度、および膜厚等によって変化し、スリット部7から吐出される塗布液の量がマニホールド部6の長手方向(管軸方向)において均一になるようにスリット間隔のテーパ率とともに調節される。
【0063】
例えば、スリット部7の長手方向の各位置における塗布液の排出量は、マニホールド部6の塗布液の内圧とスリット部7の開口部7aにおける塗布液の圧力との差で決定されるが、粘度が高い塗布液の場合には開口部7aのスリットギャップを広げる(開口部7aの面積が大きくなる)ことによって塗布量を大きくすることができる。
【0064】
一方、この場合にはスリット部7において発生する壁面せん断による圧力損失が減少することになる。スリット部7において発生する壁面せん断による圧力損失が減少すると、スリット部7の長手方向の圧力偏差が大きくなり、吐出分布が悪化するが、テーパ率を高めることによって吐出分布の悪化を防ぐことができる。
【0065】
また、長穴18は平板2の重心から平板2の底面へ下ろした垂線と平板2の底面とが交差する点またはその近辺を含むように形成してもよい。
【0066】
図4(B)はダイヘッドユニットの底面図であり、長穴18がマニホールド部6の長手方向(管軸方向)と交差する方向(好ましくは直交する方向)に形成されていることを示している。またネジ16がマニホールド部6の長手方向(管軸方向)と交差する方向(方向D5)に形成されている長穴18の任意の位置で平板2と土台板3とを締め込んで固定される(押圧される)ことが可能であることが示されている。
【0067】
なお、長穴18を、マニホールド板1の底面における長手方向(管軸方向)の中心点近辺を含み、長手方向(管軸方向)と交差する方向(好ましくは直交する方向)に形成することも可能である(図示せず)。この場合にはマニホールド板1を長穴18の長穴方向に移動させ(回転軸13が長穴18に沿って移動する)、マニホールド板1と土台板3とをネジ16を用いて押し合わせ、スリット部7の開口部7aの面積を変化させる。
【0068】
次に図5(A)および(B)を用いて、コイルバネ等の弾性体14が土台板3に形成された支持部15と平板2とに押圧される実施例について、ダイヘッドユニットの背面図を用いて説明する。
【0069】
図5(A)に示す実施例1では、支持部15は土台板3の上面に形成された金属等の壁板であり、土台板3とはネジ等の固定具によって固定される。弾性体14はその両端において平板2および支持部15とに押圧されることで固定される。
【0070】
この場合、平板2の側面には弾性体14の一端14aの内側に挿入されるバネガイドとなる凸部2aを形成し、支持部15の側面には弾性体14の一端14bの内側に挿入されるバネガイドとなる凸部15aを形成する。そして、弾性体14の一端14aの内側に平板2に形成されたバネガイドとなる凸部2aを挿入し、弾性体14の他端14bの内側に支持部15に形成されたバネガイドとなる凸部15aを挿入して平板2と支持部15との間で弾性体14を押圧して固定する。弾性体14の一端14aにおけるバネの円周の中心位置と他端14bにおけるバネの円周の中心位置とを結ぶ線が平板2の移動方向D3およびD4とおおよそ平行に近づくと弾性体14の伸縮力を効率良く利用することができる。また、凸部2aおよび凸部15aの長さは弾性体14がはずれない程度の任意の値とすることができる。また、平板2に形成された凸部2aおよび支持部15に形成された凸部15aに弾性体14の一端14aと弾性体14の他端14bとをそれぞれ嵌合させてもよい。
【0071】
図5(B)における実施例2においても、弾性体14はその両端において平板2および支持部15とに押圧されることで固定される。
【0072】
図5(B)では、平板2の側面に弾性体14の一端14aをそのまま挿入するためのバネガイドとなる凹部2bを形成し、支持部15の側面に弾性体14の一端14bをそのまま挿入するためのバネガイドとなる凹部15bを形成する。
【0073】
弾性体14の一端14aを平板2に形成されたバネガイドとなる凹部2bに挿入し、弾性体14の他端14bを支持部15に形成されたバネガイドとなる凹部15bに挿入して平板2と支持部15との間で弾性体14を押圧して固定する。図5(A)における実施例1と同様に図5(B)における実施例の場合にも弾性体14の一端14aにおける円周の中心位置と他端14bにおける円周の中心位置とを結ぶ線が平板2の移動方向D3およびD4とおおよそ平行に近づくと弾性体14の伸縮力を効率良く用いることができる。また、弾性体14が支持される凹部2aおよび凹部15aの長さは弾性体14がずれない程度の任意の深さとすることができる。
【0074】
また、弾性体14の引っ張り力を利用する場合には、平板2および支持部15にフック部(図示せず)を形成して、弾性体14の一端14aと他端14bのバネの先端を引っかけて弾性体14を平板2と支持部15との間で固定することも可能である。
【0075】
また、弾性体14の固定の仕方はこれらに限定されるわけではなく、図示しないが、弾性体14の弾性力を失うことなく弾性体14の一端14aが平板2に、弾性体14の他端14bが支持部15に固定されればどのような止め方でも可能である。
【0076】
また、弾性体14の伸縮方向が土台板3の上面とおおよそ平行(平板2および支持部15とおおよそ垂直方向)になるように固定されれば、弾性体14の伸縮力が効率的に平板2の回転方向に伝わるが、平板2を回転することが可能であれば弾性体14の伸縮方向は土台板3の上面との角度を任意に設定して取り付けることができる。すなわち、土台板3から弾性体14の一端14aが固定される平板2側の固定点および他端14bが固定される支持部15側の固定点までの高さをそれぞれ独立して任意に設定することが可能である。
【0077】
さらに、支持部15を土台板3と一体化して形成し、弾性体14を固定する構成とすることも可能である。
【0078】
次に図5(C)では、弾性体14の代わりに、ネジ等のストッパ36を使用して平板2を押圧する構成を示す。
【0079】
ストッパ36は、土台板3に形成された支持部15に支持され、ストッパ36の一部が平板2に押圧されるので、ストッパ36とスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の接点部分24とで回転軸13を中心に回転する前記平板2を互いに押圧する。例えば、支持部15にネジ穴を形成し、ストッパ36としてのネジを嵌入させる。
【0080】
図5(C)に示すように、ストッパ36としてネジを使用した場合には、ネジを回転させることによって土台板3上をD4方向またはD3方向にネジが移動するので、ネジに接触する平板2もネジの移動に伴って回転軸13を中心に回転することが可能になる。
【0081】
この場合、ネジに対して、平板2の回転軸13の反対側にスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)があるので、ネジを回転させて平板2の位置を決定することで、ネジとスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)とで平板2を押圧し、平板2の位置を固定することができる。
【0082】
次に図6を用いて、微動装置4の実施例について説明する。
【0083】
図6(A)は、微動装置4にモータ19を使用した場合の実施例3を示す。モータ19の回転軸に螺合するように歯車19の溝が形成され、さらに歯車19は駆動軸5の一端5aに形成された螺旋溝と螺合し、モータ19の回転運動が駆動軸5の直線運動に変換される。
【0084】
駆動軸5がD1方向に移動した場合には、駆動軸5と平板2とが接する接点(接点部分)24は駆動軸5に押圧され、平板2をD1方向に移動させる。その結果、平板2は回転軸13を中心に図3におけるL3方向に回転する。
【0085】
また、モータ19が逆転し、駆動軸5がD2方向に移動した場合には、駆動軸5と平板2とが接する接点(接点部分)24では弾性体14の伸びる力(図3におけるD3方向の力)が回転軸13を介して平板2を押圧している(図3において平板2をL2方向およびL4方向に回転させる力が働いている)ので、平板2をD2方向に移動させる。
【0086】
また、歯車19は円形状でも楕円形状でもよく、特に楕円形状の場合にはカムとして機能し、曲率の小さい面を駆動軸5と螺合させることによって、駆動軸5の直線運動を細かく制御することが可能である。
【0087】
このようにして微動装置4におけるモータ19が正方向または反対方向に回転することにより駆動軸5を直線運動させ、回転軸13を中心に平板2を回転させる。
【0088】
図5(B)はマイクロメータヘッド21と等価な機構を簡略化して示した微動装置4に係る実施例4である。
【0089】
つば部21aおよび21bはマイクロメータヘッド21の回転軸に対して同心円上に形成されているので、マイクロメータヘッド21を回転させるとマイクロメータヘッド21のつば部21aおよび21bも同時に回転する。つば部21aおよびつば部21bの周囲にはカバー部26が、つば部21aおよびつば部21bに接合するように形成されている。カバー部26は土台板3とネジ等の固定具で固定されている。また、カバー部の図6(B)における上方部分26aの内側面がつば部21aと嵌合し、カバー部の図6(B)における下方部分26bの内側面がつば部21bと嵌合しているので、マイクロメータヘッド21が回転してもマイクロメータヘッド21は土台板3上をD1方向またはD2方向に移動することなくその場で回転する。
【0090】
また、マイクロメータヘッド21の内周に設けられたネジ溝21cは、駆動軸20に形成されたネジ山20aと係合するようになっている。従って、マイクロメータヘッド21を回転させると駆動軸20はD1方向またはD2方向に移動する。
【0091】
このように微動装置4としてマイクロメータヘッド21を用いたので、平板2をミクロン単位またはサブミクロン単位で移動させることが可能となり、マニホールド部6のスリット間隔H1およびスリット間隔H2(スリット間隔のテーパ率)を精密に制御することが可能となる。
【0092】
また、図5(C)は微動装置4としてネジによる作動装置23を用いた実施例5である。ネジによる作動装置23はカバー部27の上カバー部27aと下カバー部27bによって土台部3へネジ等の固定具で固定されている。またネジによる作動装置23の回転軸には駆動軸22が設けられているので、駆動軸22をD1方向またはD2方向に精密に移動することが可能となる。ネジによる作動装置23を用いれば平板2をミクロン単位またはサブミクロン単位で移動することが可能となるので、マニホールド部6のスリット間隔H1およびスリット間隔H2(スリット間隔のテーパ率)を精密に制御することが可能となる。
【0093】
また、上記実施の形態1において、実機検証の間にもスリット間隙のテーパ率を調整できる機構を設けるべく、本発明のダイヘッドでは平板とマニホールド板の両底面を、新たに設置する土台板により支持して、その平板の底面には回転軸を一点設けているので、平板は、支点を中心にして水平方向に回転するため、実機検証中でもスリット間隙のテーパ率を調整できる(液漏れ量は最小限)。また、調整にはダイヘッドの分解が必要なく、実機検証中であれば膜厚測定装置の出力値をモニタしながらスリット間隙のテーパ率を調整(調整のインライン化)できるため、本発明のダイヘッドは従来に比べて実機運転開始までの検証費用の節約および検証時間の短縮に優れる。また、本ダイヘッドは、調整のインライン化に限らずに、液品種の変更や高速化等の塗布条件の変更における実機検証にも有効である。
【0094】
<実施の形態2>
図7は本発明の実施の形態2に係るダイヘッドユニットの平面を示す平面図である。なお、前記実施の形態1と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して説明をする。
【0095】
本実施形態に係わるダイヘッドユニットは、マニホールド板1、平板2、土台板3およびスリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の一部である微動装置4を含んで構成される。
【0096】
マニホールド板1と平板2は土台板3と接触している。マニホールド板1と平板2および土台板3とは金属であることが好ましいがこれに限定されるわけではない。
【0097】
平板2は土台板3上とネジ等の固定具を使用して固定されている。土台板3と平板2との位置関係がずれないようにネジは複数であることが好ましい。
【0098】
また、平板2の底面(土台板3との接触面である)および土台板3の表面(平板2との接触面である)は互いに鏡面加工されているので接触面の密着度が非常に高くなり平板2と土台板3とは密封された状態となる。従って、マニホールド部6に注入された塗布液は平板2と土台板3との界面から外部に漏れることなくスリット部7(図2参照)の開口部7aから外部に吐出される。
【0099】
マニホールド板1は土台板3と、回転軸13の一点においてネジ(ネジ)にて固定されている。従って、マニホールド板1は回転軸13を中心にして土台板3の表面を水平方向に回転する。
【0100】
また、マニホールド板1の土台板3との接触面および土台板3のマニホールド板1との接触面は互いに鏡面加工されているので接触面の密着度は高いが、前述したようにマニホールド板1が回転軸13を中心に土台板3の上を水平方向に回転することができる程度の密着度となっている。従って、マニホールド板1と土台板3との界面の密着度が高いので、マニホールド部6に注入された塗布液はマニホールド板1と土台板3との界面から外部に漏れることなくスリット部7(図2参照)の開口部7aから外部に吐出される。
【0101】
マニホールド板1と平板2とは向かい合っており、マニホールド部6はマニホールド板1に形成された凹部を平板2が覆うようになっている。また、図7の紙背から紙面へマニホールド部6に注入された塗布液を吐出するためのスリット部7(図2参照)が、向かい合ったマニホールド板1と平板2との間に形成されている。
【0102】
マニホールド部6には図7中左側から塗布液が注入され、塗布液はマニホールド部6を図7中左側から右側に向かって(マニホールド部6の長手方向(管軸方向)に)流れ、スリット部7(図2参照)を通り開口部7aから(図7中左側から右側(マニホールド部6の長手方向(管軸方向))に沿って)均一な流量の分布となる塗布液が吐出される。
【0103】
スリット部7(図2参照)は、平板2が回転軸13を中心に水平方向に回転することによりスリット間隔のテーパ率が変化する。
【0104】
スリット間隔変更機構(4、5および19、20および21、22および23)の一部である微動装置4はネジ等の固定具によって土台板3に固定されている。従って、微動装置4の駆動機構によってマニホールド板1に(接点(接点部分)30において)接触する駆動軸5をマニホールド板1方向(D1方向)へ押し出し、または引き込む(D2方向)ことによって、マニホールド板1を回転軸13を中心に土台板3の表面上を水平方向に回転させる。
【0105】
また、図7においては図示されていないが、マニホールド板1と平板2との境界面を含む端面は、塗布液が注入されるマニホールド部6の図7中左側における塗布液流入口10(図2参照)を除いてゴム等の弾性体(シール材28、29)で覆われて(シールされて)おり、マニホールド部6に注入された塗布液がマニホールド板1と平板2との境界面から外部に漏れることなくスリット部7(図2参照)の開口部7aから外部に吐出される構造となっている。
【0106】
その他、図7において実施の形態1の場合と同じ構成及び作用効果についてはその説明を省略する。
【0107】
また、上記実施の形態2においても、実機検証の間にもスリット間隙のテーパ率を調整できる機構を設けるべく、本発明のダイヘッドでは平板とマニホールド板の両底面を、新たに設置する土台板により支持して、そのマニホールド板の底面には回転軸を一点設けているので、マニホールド板は、支点を中心にして水平方向に回転するため、実機検証中でもスリット間隙のテーパ率を調整できる(液漏れ量は最小限)。また、調整にはダイヘッドの分解が必要なく、実機検証中であれば膜厚測定装置の出力値をモニタしながらスリット間隙のテーパ率を調整(調整のインライン化)できるため、本発明のダイヘッドは従来に比べて実機運転開始までの検証費用の節約および検証時間の短縮に優れる。また、本ダイヘッドは、調整のインライン化に限らずに、液品種の変更や高速化等の塗布条件の変更における実機検証にも有効である。
【0108】
なお、本発明は上記実施の形態1及び2に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。
【0109】
本明細書に記載および図示されている実施形態は具体例としてのものであるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないと理解すべきである。本発明の精神および範囲にしたがって上述以外の変更および修正を施すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態1に係るダイヘッドユニットの正面を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るダイヘッドユニットのマニホールド部およびスリット部の概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るダイヘッドユニットの平面を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るダイヘッドユニットを示し、(A)はA−A線切断面、(B)は裏面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るダイヘッドユニットの背面図を示し、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(B)は実施例3である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るダイヘッドユニットの左側面図を示し、(A)は実施例4、(B)は実施例5、(C)は実施例6である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るダイヘッドユニットの平面を示す平面図である。
【符号の説明】
【0111】
1…マニホールド板
2…平板
3…土台板
4、21、23…微動装置
5、20、22…駆動軸
6…マニホールド部
7…スリット部
10…塗布液流入口
11…塗布液流入終端面
14…弾性体
15…支持部
18…長穴
24…接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が流入される塗布液流入口と前記塗布液流入口からマニホールド部が形成されたマニホールド板と、前記マニホールド板との間に前記塗布液が押し出されるスリット部が形成されるとともに前記マニホールド部が覆われる平板とを有するダイヘッドユニットにおいて、
前記塗布液が押し出される前記スリット部の開口部と異なる面において、前記マニホールド板および前記平板を支持する土台板と、
前記平板を前記土台板の面上で回転可能とする回転軸と、
を備えることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記平板に接し、前記スリット部のスリット間隔を変更するスリット間隔変更機構を更に備えることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記回転軸は、前記平板の底面の中心近辺に形成されることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記土台板には前記土台板の長手方向と交差する方向に前記回転軸が移動可能な長穴が形成され、前記回転軸が前記長穴に沿って移動することにより前記開口部の開口面積およびテーパ率の少なくとも何れか一方が変更可能となることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記回転軸を有さない前記マニホールド板が前記土台板上を水平方向に移動可能であることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記平板における前記回転軸の位置に対し、前記接点部分とは反対側の前記平板の一部にストッパの一部が押圧され、前記ストッパは前記土台板に形成された支持部に支持され、前記ストッパと前記スリット間隔変更機構の前記接点部分とは前記回転軸を中心に回転する前記平板を互いに押圧することを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項7】
請求項2乃至5の何れか一項に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記平板における前記回転軸の位置に対し、前記接点部分とは反対側の前記平板の一部に弾性体の一端が押圧され、前記弾性体の他端は前記土台板に形成された支持部に押圧され、前記弾性体と前記スリット間隔変更機構の前記接点部分とは前記回転軸を中心に回転する前記平板を互いに押圧することを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記平板と前記マニホールド板との端面は、前記平板または前記マニホールド板から前記塗布液が漏れ出さないように前記塗布液流入口および前記開口部を除き、シール材によってシールされていることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のダイヘッドユニットにおいて、
前記回転軸は平板と土台板とを押さえるネジであることを特徴とするダイヘッドユニット。
【請求項10】
塗布液が流入される塗布液流入口と前記塗布液流入口からマニホールド部が形成されたマニホールド板と、前記マニホールド板との間に前記塗布液が押し出されるスリット部が形成されるとともに前記マニホールド部が覆われる平板とを有するダイヘッドユニットにおいて、
前記塗布液が押し出される前記スリット部の開口部と異なる面において、前記マニホールド板および前記平板を支持する土台板と、
前記マニホールド板を前記土台板の面上で回転可能とする回転軸と、
を備えることを特徴とするダイヘッドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−75860(P2010−75860A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247794(P2008−247794)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】