説明

ダイレータ及びダイレータを用いたカテーテル組立体

【課題】
本発明は、カテーテルをスムーズに体内に挿入できるダイレータと、ダイレータを用いたカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【解決手段】
ダイレータ40は、カテーテル20内に挿入され、カテーテル20の先端から外部に向けて延出する先端部44を有するダイレータ本体部42と、ダイレータ本体部42の先端部44に取り付けられた線状のガイドワイヤ部50と、ダイレータ本体部42に設けられ、薬液等の液体を放出する液体供給口47aを有するダイレータルーメン47とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータと、このダイレータとカテーテルからなるカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、診断や治療に用いられるカテーテルを血管等に挿入する場合には、シースイントロデューサと呼ばれるカテーテルを挿入するための補助具が用いられる。シースイントロデューサの内部には、ダイレータと呼ばれる器具が装着されている(例えば、下記特許文献1、2、3参照)。シースイントロデューサを用いてカテーテルを体内に挿入する際には、体表面から血管等に向かって形成した孔をダイレータによって拡張し、シースイントロデューサを体内へ挿入する。ダイレータがシースイントロデューサから抜去された後、シースイントロデューサ内にカテーテルが挿入されることにより、カテーテルは血管内に挿入される。
【0003】
このような手技では、シースイントロデューサの外径の分だけ血管に大きな孔を体表面に形成する必要があるため、最近では、シースイントロデューサを用いることなく、カテーテルを血管に挿入できるカテーテル組立体が提案されている(例えば、下記特許文献4、5参照)。
【0004】
このようなカテーテル組立体は、体内で診断や治療を行うためのガイディングカテーテル等の診断治療用カテーテル(以下、単にカテーテルと言う)と、このカテーテル内に挿入されるダイレータからなる。ダイレータは、カテーテルの先端から突出する先端部を有している。そして、予め血管内に挿入されたガイドワイヤに沿ってダイレータは先端部から体内へ進入し、ダイレータと共にカテーテルは血管内に誘導されるようになっている。所定の長さだけカテーテルが体内に挿入されるとダイレータはカテーテルを残して体外へ除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−225035号公報
【特許文献2】特開平6−335531号公報
【特許文献3】特開2008−11867号公報
【特許文献4】特開2002−143318号公報
【特許文献5】特開2002−143319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなカテーテル組立体は、シースイントロデューサを用いないために、体表面に形成する孔を小さくすることができるため、患者の負担を減少させることができる。
しかし、最近では更なる手技の簡易化と患者への負担の軽減が求められている。
【0007】
一方、シースイントロデューサを用いた通常のカテーテルの挿入の場合は、体表面に形成する孔が大きくなるため、患者への負担は、一般的にシースイントロデューサを用いない場合よりも大きくなる。また、ガイドワイヤとカテーテルの間にダイレータが存在しないため、ガイドワイヤとカテーテルの間に段差が生じる。この段差がシースイントロデューサ内の止血弁等を介してカテーテルをシースイントロデューサ内に挿入する際の抵抗となり、カテーテルのシースイントロデューサへの挿入を阻害したり、シースイントロデューサ内の止血弁等によりカテーテルの先端部であるチップを変形させたりする可能性があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、カテーテルをスムーズに体内に挿入できるダイレータと、ダイレータを用いたカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の発明者等は、ガイドワイヤとダイレータとの間の段差がダイレータを体内に進入させる際の抵抗となることに着目し、この段差を可及的に低減することにより、患者への負担を軽減し、手技を容易できる医療器具を発明するに至った。本願発明では、上記の課題は以下の手段により解決がなされる。
【0010】
<1>管状のカテーテル内に挿入されるダイレータであって、ダイレータ本体部と、前記ダイレータ本体部の先端部に取り付けられた線状のガイドワイヤ部と、前記ダイレータ本体部に設けられ、薬液等の液体を放出する液体供給口を有するダイレータルーメンとを備えることを特徴とするダイレータ。
【0011】
<2>前記ダイレータ本体部の前記先端部は、先端に向けて細径化されたテーパ状の先端進入部を有することを特徴とする態様1に記載のダイレータ。
【0012】
<3>前記ダイレータ本体部の外周面と前記ガイドワイヤ部の外周面は、それぞれ樹脂によって形成されていることを特徴とする態様1又は2に記載のダイレータ。
【0013】
<4>前記ダイレータ本体部と前記ガイドワイヤ部の内部に、連続した一本のコアシャフトを有し、前記コアシャフトが前記樹脂によって被覆されていることを特徴とする態様3に記載のダイレータ。
【0014】
<5>前記液体供給口は、前記ダイレータ本体部の前記先端部に形成されていることを特徴とする態様1から4の何れか1項に記載のダイレータ。
【0015】
<6>態様1から5の何れか1項に記載の前記ダイレータと、前記ダイレータが挿入された際に、前記ダイレータの前記先端部が先端から外部に向けて延出する前記カテーテルとからなるカテーテル組立体。
【発明の効果】
【0016】
<1>本発明のダイレータは、ダイレータ本体部の先端部にガイドワイヤ部が取り付けられた、ダイレータとガイドワイヤが一体的となった構成となっている。このため、従来のダイレータが備える、ダイレータにガイドワイヤを挿入するためのルーメンが存在しないため、ダイレータのルーメンの内径とガイドワイヤの外径の間の間隙が生じることはない。従って、ダイレータ本体部とガイドワイヤ部の間の段差を可及的に小さくすることができる。
【0017】
シースイントロデューサを用いることなく、カテーテルを体内に挿入する手技の場合では、ガイドワイヤ部の体内への挿入に続き、ダイレータ本体部の先端部の体内への挿入をスムーズに行うことができる。そして、ダイレータ本体部の先端部が体内に挿入され、体表面に形成された孔が拡張された後は、カテーテルをダイレータ本体部の先端部に沿って体内に進入させることができる。即ち、ガイドワイヤとダイレータの先端との間の段差によって生じる体内にダイレータを挿入される際の抵抗が低減されると共に、このような段差によって体内、例えば、血管の内表面等を損傷することが防止できる。このため、患者への負担が少ない手技が実現できると共に、手技が容易となる。
【0018】
また、シースイントロデューサを用いて、カテーテルを体内に挿入する場合であっても、ガイドワイヤ部のシースイントロデューサへの挿入に続き、ダイレータ本体部の先端部をシースイントロデューサへの挿入する際、ダイレータ本体部の先端部とガイドワイヤ部の間の段差が可及的に小さくされているため、
カテーテルはスムーズにシースイントロデューサに挿入され、シースイントロデューサ内の止血弁等によってカテーテルのチップを損傷させることを防止できる。また、ガイドワイヤ部に続きダイレータの先端部が止血弁を通過する際の抵抗も低減されるため、手技が容易となる。更に、カテーテルを体内に挿入した後も、上記したように、段差が生じることが防止されているため、体内、例えば、血管の内表面等を損傷することが防止でき、患者への負担が少ない手技が実現できる。
【0019】
<2>本発明の態様2では、ダイレータ本体部の先端部は、先端に向けて細径化されたテーパ状の先端進入部を有している。このため、ダイレータ本体部の先端部とガイドワイヤ部の間の段差を一層小さくすることができる。このため、ダイレータを体内に進入し易くなるため、患者への負担が少ない手技が実現できると共に、手技が容易となる。また、シースイントロデューサを使用する場合であっても、シースイントロデューサ内の止血弁等により、カテーテルのチップを損傷させることを一層効果的に防止できる。
【0020】
<3>本発明の態様3では、ダイレータ本体部の外周面とガイドワイヤ部の外周面の両方が樹脂によって形成されているために、ガイドワイヤ部とダイレータ本体部の先端部との間を溶着等により滑らかに接続したり、一体的に形成することができる。従って、より患者への負担を少なくすることができると共に、手技を容易とすることができる。また、シースイントロデューサを使用する場合であっても、シースイントロデューサ内の止血弁等により、カテーテルのチップを損傷させることを一層効果的に防止できる。
【0021】
<4>本発明の態様4では、ダイレータ本体部とガイドワイヤ部の内部に、連続した一本のコアシャフトを有している。このため、医師等の手技者がダイレータの手元側でダイレータ本体部に回転操作や軸方向の押し込み操作を行った場合に、その回転トルクや押し込みトルクがコアシャフトを介してガイドワイヤ部の先端側へ効果的に伝達される。従って、ダイレータのトルク伝達性が向上するため、ガイドワイヤ部を有するダイレータの操作性が向上する。
【0022】
<5>本発明の態様5では、液体供給口がダイレータ本体部の先端部に形成されているため、ダイレータ本体部が例えば血管内に挿入された手技の早い段階で、抗血栓剤や血管拡張剤等の薬剤を血管内に供給することができる。よって、手技の安全性を高めることができる。
【0023】
<6>本発明の態様6は、ガイドワイヤ部を有するダイレータがカテーテルに挿入された際に、ダイレータの先端部がカテーテルの先端から外部に向けて延出するカテーテル組立体である。このため、ガイドワイヤを必要とすることなく、カテーテルを体内に挿入する手技を実現できる。また、カテーテルに特別な改良を加える必要も無い。従って、手技が容易で、且つ、患者への負担が少ない低侵襲なカテーテル組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本実施の形態のカテーテル組立体におけるカテーテルの全体図である。
【図2】図2は、本実施の形態のダイレータの全体図である。
【図3】図3は、本実施の形態のダイレータをカテーテルに装着した状態を示した図である。
【図4】図4は、本実施の形態のカテーテル組立体におけるダイレータとカテーテルの先端部分の拡大図である。
【図5】図5は、本実施の形態の作用を説明するための図である。
【図6】図6は、ダイレータの第2の実施の形態を示した図である。
【図7】図7は、ダイレータの第3の実施の形態を示した図である。
【図8】図8は、カテーテル組立体の更に他の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施の形態のダイレータと、これを用いたカテーテル組立体を図1から図5を参照しつつ説明する。
図1から図4において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(手元側、基端側)である。
カテーテル組立体10は、全長が約500mm〜約1500mmのものである。
【0026】
カテーテル組立体10は、図3及び図4に示す様に、カテーテル20及びダイレータ40とからなる。図1及び図2は、それぞれカテーテル20及びダイレータ40を示している。図3は、ダイレータ40がカテーテル20に挿入された状態を示している。図4は、カテーテル20にダイレータ40が挿入された際の各構成要素の位置関係を示したものである。
尚、図3及び図4では、理解を容易にするために、後述するカテーテル20の第1屈曲部28及び第2屈曲部30は直線状に伸ばした状態で示されているか、又は省略されている。また、理解を容易にするために、一部の要素の寸法は誇張されて記載されている。
【0027】
カテーテル20は、診断用のカテーテルであり、本実施の形態の場合、心臓の血管の狭窄部等を治療するためのバルーンカテーテル等を案内するためのガイディングカテーテルである。カテーテル20の全長は、本実施の形態の場合、約1000mmである。
【0028】
図1に示すカテーテル20は、一例として、左冠状動脈用のジャドキンス(Judkins)型を示している。しかし、カテーテル20の形状は、左冠状動脈用のジャドキンス型に限定されるものでは無く、右冠状動脈用のジャドキンス型、左又は右冠状動脈用のアンプラッツ(Amplatz)型等の各種の屈曲した形状を有するものの他、屈曲を有しない直線状のもの等、特に限定されない。
カテーテル20は、主にカテーテルシャフト21、チップ33、及びコネクタ35からなる。
【0029】
カテーテルシャフト21は、内部にカテーテルルーメン22を有する断面が円形の管状の部材である。カテーテルシャフト21は、図4(B)に示すように、カテーテルルーメン22の壁面を構成し、樹脂からなる内層23と、内層23の外表面に配置された編組24と、この編組24の外表面を被覆する樹脂からなる外層25とを備えた構成からなる。カテーテルシャフト21の内層及び外層を構成する樹脂は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等が用いられる。編組24は、ステンレス、タングステン等の金属製の線材が網目状に巻回された公知の構成からなる。
【0030】
本実施の形態のカテーテルシャフト21は、2つの屈曲部を有している。即ち、カテーテルシャフト21は、先端から順に、第1直線シャフト部27、第1屈曲部28、第2直線シャフト部29、第2屈曲部30、本体シャフト部31からなる。
【0031】
第1直線シャフト部27は、先端に後述するチップ33が取り付けられる直線状の部分である。
【0032】
先端側の第1屈曲部28は、第1直線シャフト部27の後方に設けられ、C1で示す範囲に亘って屈曲している。範囲C1の後端は、例えば、カテーテル20の先端から約30mmの範囲内に設定されている。ダイレータ40がカテーテル20内に挿入されていない状態において、第1屈曲部28は、カテーテルシャフト21を約90度に湾曲させている。
【0033】
第2直線シャフト部29は、第1屈曲部28の後方に設けられた直線状の部分である。
【0034】
第2屈曲部30は、第2直線シャフト部29の後方に設けられ、C2で示す範囲に亘って屈曲している。ダイレータ40がカテーテル20内に挿入されていない状態において、第2屈曲部30は、カテーテルシャフト21を約180度に湾曲させている。
【0035】
本体シャフト部31は、第2屈曲部30より後方のカテーテルシャフト21の残りの部分であり、略直線状の部分である。
【0036】
チップ33は、カテーテルシャフト21の第1直線シャフト部27の先端に取り付けられている。チップ33は、カテーテルルーメン22の先端部分を構成する孔部を有する円筒状の部材であり、先端にカテーテルルーメン22の開口部22aを有する。チップ33の軸方向の長さは約3.0mmである。本実施の形態の場合、チップ33及びカテーテルシャフト21の先端部分の外径DCは、約2.8mmである。
【0037】
チップ33は、カテーテルシャフト21を構成する樹脂と同様の樹脂で構成されているが、通常、カテーテルシャフト21の樹脂よりも柔軟な樹脂が用いられている。また、チップ33を構成する樹脂は、放射線透視下においてカテーテル20の位置を確認するために、放射線不透過性の材料からなる粉末を含有している。
【0038】
チップ33の先端には、先端に向かって先細りとなるテーパ部33aが設けられている。テーパ部33aは、後述するダイレータ40の先端部44との段差を可及的に小さくするためのものである。
【0039】
尚、カテーテル20のカテーテルシャフト21とチップ33の外表面には、親水性コーティングが施されている。
【0040】
コネクタ35は、カテーテルシャフト21の後端に取り付けられている。コネクタ35は、内部にカテーテルシャフト21のカテーテルルーメン22に連通する孔部を有している。コネクタ35の後端には、後述するダイレータ40のコネクタ60の回転部61と螺合する螺合部36が取り付けられている。
【0041】
ダイレータ40は、テーパ状の先端進入部44aを有するダイレータ本体部42と、ダイレータ本体部42のおける先端進入部44aの先端に取り付けられたガイドワイヤ部50と、ダイレータ本体部42の後端に取り付けられたコネクタ60とからなる。ダイレータ40の全長は、ダイレータ40がカテーテル20に挿入され、ダイレータ40のコネクタ60をカテーテル20のコネクタ35に接続した状態において(以下、ダイレータがカテーテルに装着された状態と呼ぶ)、後述する先端部44がカテーテル20の先端から突出するように、カテーテル20の全長よりも所定の長さ長く設定されている。
【0042】
ダイレータ本体部42は、内部にダイレータルーメン47を有する円筒状の部材である。
ダイレータ本体部42は、ダイレータ40がカテーテル20に装着された状態において、カテーテル20の先端から延出する先端部44とカテーテル20の内部に位置する内挿部45に分けられる。先端部44は、上記した先端進入部44aを含んでいる。即ち、先端部44は、先端進入部44aと、先端進入部44aの後端側に設けられた直線部44bからなる。直線部44bは、内挿部45と同じ外径を有する円筒状の部分である。直線部44bと内挿部45の外径DDは、本実施の形態の場合、約1.4mm〜約2.3mmの範囲に設定されており、約2.2mmとされている。
【0043】
先端部44の先端進入部44aは、先端に向かって外径が小さくなるように傾斜した形状を有する。先端進入部44aの先端には、ガイドワイヤ部50の後端が取り付けられている。この構成によって、先端進入部44aは、カテーテル組立体10が体内に侵入することを容易にするものである。先端進入部44aの軸方向長さL1は、本実施の形態の場合、約15mm〜約20mmの範囲に設定されており、約15mmとされている。
【0044】
直線部44bは、外径が一定の円筒状の部分である。直線部44bの軸方向長さL2は、本実施の形態の場合、約30mm以下の範囲に設定されており、約10mmとされている。
尚、直線部44bは、必ずしも必要ではない。即ち、カテーテル20のチップ33の先端から直接的にテーパ状の先端進入部44aが延出する構成としても良い。
【0045】
ダイレータルーメン47は、ダイレータ本体部42の後端から先端進入部44aの先端部まで軸方向に延びている。ダイレータルーメン47の内径は、本実施の形態の場合、約1.0mm〜約1.5mmの範囲に設定されており、約1.0mmとされている。
先端進入部44aの内部に位置するダイレータルーメン47の遠位端部分は、先端進入部44aの側面に向かって形成された2つの液体供給口47aを有している。液体供給口47aの直径は、本実施の形態の場合、約0.8mmとされている。
【0046】
ダイレータ本体部42は、単一の樹脂からなる。樹脂は、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂の他、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン等が用いられる。ダイレータ40は体内に最初に進入する先端部44を有するため、通常、カテーテルシャフト21やチップ33を構成する樹脂よりも硬質の樹脂によって形成されている。
【0047】
ガイドワイヤ部50は、ダイレータ本体部42の先端に取り付けられたワイヤ状の部材である。ガイドワイヤ部50の長さ、即ち、ダイレータ本体部42の先端からガイドワイヤ部50の先端までの長さは、本実施の形態の場合、約50mm〜約150mmの範囲に設定されており、約100mmとされている。ガイドワイヤ部50の外径DGは、本実施の形態の場合、約0.64mm〜約0.90mmの範囲に設定されており、約0.64mmとされている。
【0048】
ガイドワイヤ部50の後端は、ダイレータ本体部42の先端進入部44aの内部に挿入され、固着されている。即ち、上記したダイレータルーメン47は、ダイレータ本体部42を貫通するように形成された後、ガイドワイヤ部50の後端部分がダイレータルーメン47に挿入されて固着される。従って、ダイレータルーメン47の先端部分は、ガイドワイヤ部50の後端によって液密に封鎖されている。
【0049】
ガイドワイヤ部50は、内部に金属製の線状の部材からなるコアシャフト51を有すると共に、このコアシャフト51が樹脂からなる被覆層52によって被覆された構成となっている。
【0050】
コアシャフト51は、先端に向かって細径化された構成とされている。コアシャフト51の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。これ以外の材料として、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が用いられる。
【0051】
被覆層52は、コアシャフト51の全体を被覆している。被覆層52の後端部分は、ダイレータ本体部42の先端進入部44aの先端と滑らかに接続されるように、溶着等によって互いの樹脂が融合するように接合されている。このため、先端進入部44aの先端とガイドワイヤ部50の後端との間には、段差が殆ど存在しないようになっている。
被覆層52を構成する樹脂は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ダイレータ本体部42と同じ樹脂を用いている。即ち、PTFE等のフッ素系樹脂の他、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン等が用いられている。
以上のような構成によって、ガイドワイヤ部50は先端に向かって柔軟になるように構成されている。
【0052】
コネクタ60の内部には、ダイレータ本体部42のダイレータルーメン47に連通する孔部を有している。コネクタ60の先端側には、カテーテル20のコネクタ35の螺合部36と螺合する回転部61が設けられている。また、コネクタ60の後端には、ダイレータルーメン47に向けて抗血栓剤や血管拡張剤等の薬剤を供給するための図示しないシリンジが取り付けられる後端開口部62を有する。
【0053】
以上の構成のダイレータ40をカテーテル20に装着した場合、カテーテル20の先端からダイレータ40の先端部44がガイドワイヤ部50を伴って外部に延出するようになっている。即ち、ガイドワイヤ部50、先端進入部44a、及び直線部44bがカテーテル20の先端から露出するようになっている。
【0054】
以上の構成に基づいて、本実施の形態のカテーテル組立体10を心臓の大動脈に挿入する手技に用いる場合について図5に基づいて説明する。尚、上述した通り、本実施の形態のカテーテル20は、左冠状動脈用のジャドキンス型を例としているため、カテーテル20は左冠状動脈に係合するものとする。
【0055】
カテーテル組立体10は、カテーテル20にダイレータ40を装着した図3に示す状態で、手首部の橈骨動脈から挿入される。本実施の形態のカテーテル組立体10は、カテーテル20の外表面に親水性コーティングに施され、先端にガイドワイヤ部50を有するダイレータ40を備える。このため、通常のカテーテルの手技で必要な、カテーテルを血管内に導入するためのガイドワイヤと、カテーテルの外径より大きい内径を有するシースイントロデューサを必要としない構成となっている。このようなカテーテルを挿入するためのシースイントロデューサを用いない手技は、シースイントロデューサを挿入するための比較的大きな孔を患者の体表面に穿孔する必要がないため、患者の負担を軽減すると共に、手技を簡易化することができる。
【0056】
このようなカテーテル組立体10は、ダイレータ40のガイドワイヤ部50によって、血管内に案内され、カテーテル20とダイレータ40が、上腕及び鎖骨付近に位置する血管を経て大動脈へ挿入される。その後、ダイレータ40は抜去されて、カテーテル20のみが、左冠状動脈孔に係合することになる。このような状態でカテーテル20のカテーテルルーメン22内には、図示しないバルーンカテーテル等の治療用カテーテル等が挿通されて、冠状動脈内の狭窄部等に対して治療が行われる。
【0057】
このような手技を行うためには、まず、図5(A)に示す様に、ガイドワイヤ部50を橈骨動脈90に挿入するための微小な孔92aが手首部の体表面91から橈骨動脈90に向かって形成される。この手技は、公知の穿刺針を備えたイントロデューサを用いることができる。本実施の形態のカテーテル組立体10は、上記したように、カテーテルの外径より大きい内径を有するシースイントロデューサを必要としない構成となっているため、ガイドワイヤ部50を挿入するのに必要且つ十分な大きさの孔を体表面に形成すれば足りる。このような場合に使用されるイントロデューサは、小型のものを用いることができる。特に、ガイドワイヤ部50を挿入した後、分離して除去できる、所謂、ピールアウェイ(PEEL AWAY)型のイントロデューサを用いることが好ましい。このようなイントロデューサには、例えば、特表平2008−509782号に示されているものがある。
【0058】
このようなイントロデューサは、通常、ガイドワイヤを挿入するための筒状の外筒95と、外筒95内に挿入され、穿刺用の針体が取り付けられている図示しない内筒からなる。外筒95は、一対の羽部95aを医師等の手技者が摘んで軸方向に裂くことにより、2つに分離可能となっている。
【0059】
まず、手技者により、内筒が外筒95に挿入された状態のイントロデューサによって、手首部の体表面91から橈骨動脈90に向けて穿刺が行われる。これによって、動脈90に微小な孔92aが形成された後、外筒95を残した状態で、内筒のみが外筒95から抜き取られて除去される。この時形成される孔92aは、ガイドワイヤ部50が挿入できる程度の大きさである。残った外筒95にガイドワイヤ部50が挿入される(図5(A))。
【0060】
この後、イントロデューサの外筒95が羽部95aを用いて2つに裂かれて分離され、除去される(図5(B))。これによって、カテーテル組立体10のガイドワイヤ部50のみが、体内に挿入された状態となる。
【0061】
次に、ガイドワイヤ部50に先導されてダイレータ40の先端部44の先端進入部44aが体表面91に形成された孔92aへ進入する(図5(C))。この際、ダイレータ本体部42の先端進入部44aの先端とガイドワイヤ部50の後端とは段差が無いように滑らかに接続されているため、先端進入部44aは、スムーズに体内に進入することができる。そして、先端進入部44aの進入によって、孔92aは拡張されて孔92bとなる。
【0062】
更に、孔92bに向けて、カテーテル組立体10を体内に進入させる。ダイレータ40の先端部44に続いて、カテーテル20の先端部分が、体内に進入する。この際、カテーテル20のチップ33の先端には、テーパ部33aが設けられているため、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の先端部44との間は、滑らかに接続されており、カテーテル20が体内に進入し易くなっている。
【0063】
カテーテル20のチップ33が体内に挿入されると、これに続いて第1直線シャフト部27、第1屈曲部28、第2直線シャフト部29、第2屈曲部30、及び本体シャフト部31が順次、体内に挿入される。
【0064】
この際、カテーテル20の先端が所定長さ動脈90内に挿入されると、ダイレータ本体部42の後端に取り付けられている図示しないシリンジからダイレータルーメン47に向けて抗血栓剤や血管拡張剤等の薬剤を供給される。薬剤は、先端進入部44aの側面に開口する2つの液体供給口47aから動脈90内に放出される(図5(D))。液体供給口47aは、ダイレータ本体部42の先端進入部44aに設けられているため、ダイレータ40の先端進入部44aが動脈90に挿入された手技の早い段階で、薬液を放出することができる。このため、手技の安全性を高めることができる。
【0065】
また、カテーテル組立体10が動脈90内を進行する際にも、ダイレータ本体部42の先端進入部44aの先端とガイドワイヤ部50の後端との間は滑らかに接続されているため、ダイレータ40が血管の内壁等を損傷することが防止できる。このため、カテーテル組立体10は、スムーズに体内を進行することができる。
【0066】
この後、カテーテル組立体10は、更に動脈90に挿入され、ガイドワイヤ部50の先端は、鎖骨近傍に位置する血管を経由して上行大動脈の内部に至る。
【0067】
この後、ダイレータ40がガイドワイヤ部50と共にカテーテル20から引き抜かれ、体外へ除去される。そして、手技者はカテーテル20を操作して、カテーテル20の先端を左冠状動脈孔に係合させる。
尚、ダイレータ40を抜去するタイミングは手技者によって異なり、このような手技に限定されるものでは無い。
【0068】
以上のように、カテーテル40が左冠状動脈孔に係合されると、目的部位である左冠状動脈内の狭窄部等を治療するために、ガイドワイヤやバルーンカテーテル等がカテーテル40内に挿入されて、心臓の治療が行われる。
【0069】
以上述べたガイディングカテーテルの使用手順は、シースイントロデューサを使用すること無しにカテーテル20を体内に挿入する場合であるが、本実施の形態のカテーテル組立体10は、シースイントロデューサを使用する場合にも適用することができる。このような場合でも、ガイドワイヤ部50のシースイントロデューサへの挿入に続き、ダイレータ本体部42の先端部44をシースイントロデューサへの挿入を行う際、ダイレータ本体部42とガイドワイヤ部50とが滑らかに接続されているために、シースイントロデューサに設けられた止血弁等をカテーテル20が通過する際に、カテーテル20のチップ33が損傷することを防止できる。また、ガイドワイヤ部50に続きダイレータ40の先端部44が止血弁を通過する際の抵抗も低減されるため、手技が容易となる。更に、このようにシースイントロデューサを用いて、カテーテルを体内に挿入する場合も、血管の内表面等を損傷することが防止できるため、患者への負担が少ない手技が実現できると共に、手技が容易となる。
【0070】
以上述べた実施の形態におけるダイレータ40のガイドワイヤ部50は、金属製のコアシャフト51が樹脂からなる被覆層52によって被覆された構成となっている。しかし、図6に示すダイレータ140のガイドワイヤ部150の様に、樹脂にて被覆されていない金属製のコアシャフト151の先端にコイル152を有する構成としても良い。この場合も、コアシャフト151は、先端に向かって細径化されていることが好ましい。
【0071】
また、上記した実施の形態のダイレータ40では、樹脂製のダイレータ本体部42の先端にコアシャフト51を備えたガイドワイヤ部50を固着した構成となっている。しかし、図7に示すダイレータ240の様に、ダイレータ本体部242とガイドワイヤ部250の内部に連続した一体的なコアシャフト251を有し、このコアシャフト251が樹脂からなる被覆層252によって一体的に被覆されている構成としても良い。
【0072】
図7において、コアシャフト251は、先端側から順に、コア細径部261、コアテーパ部262、及びコア本体部263からなる金属製の部材である。この部材は、中空の金属管を絞り加工すること等によって形成される。
【0073】
コア細径部261は、ガイドワイヤ部250を形成するための線状で直径が略一定の部分である。コアテーパ部262とコア本体部263は、ダイレータ本体部242を形成する部分である。コアテーパ部262は、先端に向かって先細化されたダイレータ本体部242の先端進入部244aに対応する部分であり、コアテーパ部262は、先端に向かって先細りに加工されている。コア本体部263は、ダイレータ本体部242の先端進入部244a以外の部分に対応する部分であり、コア本体部263の直径は略一定である。
【0074】
コアテーパ部262とコア本体部263とは、中空となっており、ダイレータルーメン247が形成されている。ダイレータルーメン247の先端部分には、先端進入部244aの側面に向かって2つの液体供給口247aが形成されている。
【0075】
このダイレータ240によれば、ダイレータ本体部242とガイドワイヤ部250を一体的に形成することができる。このため、ダイレータ本体部242とガイドワイヤ部250の間に段差が形成されることを一層防止することができる。従って、ガイドワイヤ部250からダイレータ本体部242へスムーズに体内に挿入させることができるため、患者の負担を減少させることができると共に、手技を簡易化することができる。
【0076】
また、ダイレータ本体部242とガイドワイヤ部250の間に連続した一本のコアシャフト251を有しているため、医師等の手技者がダイレータ240の手元側でダイレータ本体部242に回転操作や軸方向の押し込み操作を行った場合に、これらの回転トルクや押し込みトルクをコアシャフト251を介してガイドワイヤ部250の先端側へ伝えることができるため、ダイレータ240のトルク伝達性が向上する。従って、ダイレータ240の操作性を向上させることができる。
【0077】
更に、上記した実施の形態のカテーテル組立体10のダイレータ40では、ダイレータ本体部42の先端進入部44aの側面に向けて2つの液体供給口47aを形成し、カテーテル20から延出した先端進入部44aから薬液を放出する構成となっている。しかし、図8に示すカテーテル組立体300の様に、カテーテル320が、その側面にカテーテルルーメン322からカテーテルシャフト321の外表面へ貫通する薬液等を放出するための側孔303を有する場合には、これを利用してダイレータ340から薬液を放出する構成としても良い。
【0078】
図8に示すカテーテル320はカテーテルシャフト321の先端部分に2つの側孔303を有している。これ以外は、上記したカテーテル20の構成と基本的に同じである。
【0079】
ダイレータ340は、カテーテル320に装着した際に、側孔303に対応する部分に円周溝345を有している。円周溝345は、ダイレータ本体部342の外周面に形成されている。この円周溝345に向けてダイレータルーメン347から2つの液体供給口347aが形成されている。
【0080】
この構成によって、ダイレータルーメン347から供給される薬液は、液体供給口347aを通過して円周溝345に流出し、更に、カテーテル320の側孔303から外部へ放出されるようになっている。
【0081】
尚、図6、図7、及び図8に示した実施の形態では、図1〜図5に示した実施の形態と同じ構成については、基本的に同じ符号を付して記載して詳細な説明を省略している。
【0082】
以上述べた実施の形態は、カテーテル組立体10のカテーテル20を心臓用のガイディングカテーテルとした場合について述べたが、マイクロカテーテル等の他のカテーテルにも適用できる。
また、カテーテルが適用される器官も、心臓の血管に限られず、他の器官にも用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
10,300 カテーテル組立体
20,320 カテーテル
40,140,240,340 ダイレータ
42,242,342 ダイレータ本体部
44 先端部
44a,244a 先端進入部
47,247,347 ダイレータルーメン
47a,247a,347a 液体供給口
50,150,250 ガイドワイヤ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のカテーテル内に挿入されるダイレータであって、
ダイレータ本体部と、
前記ダイレータ本体部の先端部に取り付けられた線状のガイドワイヤ部と、
前記ダイレータ本体部に設けられ、薬液等の液体を放出する液体供給口を有するダイレータルーメンと
を備えることを特徴とするダイレータ。
【請求項2】
前記ダイレータ本体部の前記先端部は、先端に向けて細径化されたテーパ状の先端進入部を有することを特徴とする請求項1に記載のダイレータ。
【請求項3】
前記ダイレータ本体部の外周面と前記ガイドワイヤ部の外周面は、それぞれ樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記ダイレータ本体部と前記ガイドワイヤ部の内部に、連続した一本のコアシャフトを有し、前記コアシャフトが前記樹脂によって被覆されていることを特徴とする請求項3に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記液体供給口は、前記ダイレータ本体部の前記先端部に形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のダイレータ。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の前記ダイレータと、
前記ダイレータが挿入された際に、前記ダイレータの前記先端部が先端から外部に向けて延出する前記カテーテルと
からなるカテーテル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5963(P2013−5963A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141427(P2011−141427)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】