説明

ダクトユニット及びこれを有する環境試験装置

【課題】風向きを偏向させる。
【解決手段】環境試験装置1は、上部孔3a及び下部孔3bが形成され、筐体2を仕切る仕切り壁3と、仕切り壁3によって分離され且つ上部孔3a及び下部孔3bを介して互いに連通した試験室5及び空調室8と、仕切り壁3に取り付けられたダクトユニット10とを含んでいる。ダクトユニット10は、板状部材11と、板状部材11の水平方向の一端部に形成された複数の孔21と、板状部材11の水平方向の他端部に形成された複数の孔22と、一方の面11aから突出し板状部材11を2つの領域14a,14bに区切る仕切り板15とを有している。そして、ダクトユニット10は、上部孔3aと領域14aとが、下部孔3bと領域14bとが対向するように仕切り壁3に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置の試験室内において空気の循環方向を偏向するダクトユニット及びこれを有する環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な環境状況下における製品の動作信頼性を確認するための環境試験において、例えば特許文献1に示されているような、仕切り壁によって分離され且つ上下2箇所の開口を介して互いに連通した試験室及び空調室を有する環境試験装置が用いられる。当該環境試験装置では、空調室内において加湿装置、冷却装置等によって空気を所定の温湿度に調整し、当該調整された空気を空調室の最上方に設けられた送風機を介して上部開口から試験室へと供給することにより、試験室内の空気を所定の温湿度に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−349914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に係る環境試験装置において、単に上部開口を介して試験室に流入した空気は、試験室内において上から下に流れる気流となり、下部開口から吸引される。そのため、例えば、試験室に水平な棚を上下に複数段設けて、各棚上に試料を載置した場合、棚の下段に載置した試料には空気流が当たりにくくなり、棚の上段にある試料と、棚の下段にある試料とで条件が異なってしまう。さらに、試料には様々な形状や種類があり、それぞれの試料に最適な環境付与方法がある。このうち、試料に対する空気流の当て方は非常に重要な要素であるが、上記特許文献1に係る環境試験装置においては試験室内の空気の循環方向が決まっているため、試料に対する最適な風向きと空気の循環方向とが合うように試料の置き方を考慮して試験室に載置する必要がある。しかし、試料によってはその置き方を変えることができないものもあるため、この場合は風向きが最適でない状態で環境試験を行うしかないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、風向きを偏向させるダクトユニット及びこれを有する環境試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダクトユニットは、仕切り壁によって分離され且つ当該仕切り壁に形成された上部孔及び下部孔を介して互いに連通した試験室及び空調室を有する環境試験装置に取り付け可能なダクトユニットにおいて、板状部材と、前記板状部材の水平方向の一端部に形成された第1貫通孔と、前記板状部材の前記水平方向の他端部に形成された第2貫通孔と、前記板状部材の一方の面から突出し、前記板状部材を前記第1貫通孔が形成された第1領域と前記第2貫通孔が形成された第2領域とに区切る仕切り板とを備えている。
【0007】
これによると、例えば、空気を吹き出す上部孔(又は下部孔)と第1領域とを、空気を吸引する下部孔(又は上部孔)と第2領域とを対向させつつダクトユニットを環境試験装置に取り付けたときに、上部孔(又は下部孔)から吹き出された空気が仕切り壁と第1領域との間の第1空間内で均圧化され、当該均圧化された空気が第1貫通孔から試験室内に排出される。このとき、試験室内の空気が第2貫通孔から仕切り壁と第2領域との間の第2空間を通して下部孔(又は上部孔)に吸い込まれるとともに、試験室内には第1貫通孔から第2貫通孔に向かう水平方向の気流が生じる。こうして、試験室内において上下方向に生じる気流を水平方向に偏向することが可能になり、試験室に載置された試料に対する風向きが最適な状態で環境試験を行わせることが可能になる。
【0008】
本発明において、前記板状部材が矩形平面形状を有しており、前記仕切り板が、前記板状部材の対角にある2つの角を結ぶように傾斜していることが好ましい。これにより、水平方向に関して、第1領域と仕切り壁との間の第1空間、及び、第2領域と仕切り壁との間の第2空間の上部及び下部のいずれか一方を大きくすることが可能となる。このため、第1空間が上部孔(又は下部孔)、第2空間が下部孔(又は上部孔)の全体を覆いやすくなる。また、第1空間の水平方向の幅が上から下(又は下から上)に向かって狭まるため、鉛直方向に関して、第1貫通孔から吹き出す風圧が均等になり易くなる。
【0009】
また、本発明において、前記板状部材の前記第2領域には、前記第2貫通孔近傍から延在した偏向板が突出していることが好ましい。これにより、空気を吹き出す上部孔(又は下部孔)と第1空間(第1領域と仕切り壁との間)とが、空気を吸引する下部孔(又は上部孔)と第2空間(第2領域と仕切り壁との間)とが連通するようにダクトユニットが環境試験装置に取り付けられたときに、第2貫通孔から試験室内の空気を効果的に吸引することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記仕切り板は、前記第1領域よりも前記第2領域が大きくなるように湾曲していることが好ましい。これにより、空気を吹き出す上部孔(又は下部孔)と第1空間(第1領域と仕切り壁との間)とが、空気を吸引する下部孔(又は上部孔)と第2空間(第2領域と仕切り壁との間)とが連通するようにダクトユニットが環境試験装置に取り付けられたときに、第1空間の水平方向の幅が上から下(又は下から上)に向かってさらに狭まるため、鉛直方向に関して、第1貫通孔から吹き出す風圧がより一層均等になり易くなる。
【0011】
また、本発明において、前記板状部材には、厚み方向に貫通した複数の孔が形成された整流板が前記第1貫通孔の少なくとも上部分を覆うように設けられていることが好ましい。これにより、空気を吹き出す上部孔と第1空間(第1領域と仕切り壁との間)とが、空気を吸引する下部孔と第2空間(第2領域と仕切り壁との間)とが連通するようにダクトユニットが環境試験装置に取り付けられたときに、第1貫通孔の上部分の抵抗が大きくなり、鉛直方向に関して、第1貫通孔から吹き出す風圧がより一層均等になるよう調整することができる。
【0012】
本発明の環境試験装置は、筐体と、上部孔及び下部孔が形成され、前記筐体内の空間を仕切る仕切り壁と、前記仕切り壁によって分離され且つ前記上部孔及び下部孔を介して互いに連通した試験室及び空調室と、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダクトユニットとを備えている。そして、前記ダクトユニットは、前記上部孔及び下部孔のいずれか一方の孔と前記第1領域とが、他方の孔と前記第2領域とが対向するように、前記筐体及び前記仕切り壁の少なくともいずれかに取り付けられている。
【0013】
これによると、例えば、上部孔(又は下部孔)から吹き出された空気が仕切り壁と第1領域との間の第1空間内で均圧化され、当該均圧化された空気が第1貫通孔から試験室内に排出される。このとき、試験室内の空気が第2貫通孔から仕切り壁と第2領域との間の第2空間を通して下部孔(又は上部孔)に吸い込まれるとともに、試験室内には第1貫通孔から第2貫通孔に向かう水平方向の気流が生じる。こうして、試験室内において上下方向に生じる気流を水平方向に偏向することが可能になり、試験室に載置された試料に対する風向きが最適な状態で環境試験を行わせることが可能になる。
【0014】
本発明において、前記空調室及び前記ダクトユニットの幅が、前記筐体の幅よりも小さく、前記試験室は、前記ダクトユニットの前記空調室側とは反対側に配置された第1室と、前記第1室と繋がり、前記空調室及び前記ダクトユニットと幅方向に関して隣接し前記第1室よりも幅が小さい第2室とを有しており、前記第1室との間において前記第2室を挟む前記筐体の壁には、前記第2室と外部とを連通させる少なくとも1以上の孔が形成されていることが好ましい。これにより、外部からケーブルなどを試験室内に通すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のダクトユニットによると、例えば、空気を吹き出す上部孔(又は下部孔)と第1領域とを、空気を吸引する下部孔(又は上部孔)と第2領域とを対向させつつダクトユニットを環境試験装置に取り付けたときに、上部孔(又は下部孔)から吹き出された空気が仕切り壁と第1領域との間の第1空間内で均圧化され、当該均圧化された空気が第1貫通孔から試験室内に排出される。このとき、試験室内の空気が第2貫通孔から仕切り壁と第2領域との間の第2空間を通して下部孔(又は上部孔)に吸い込まれるとともに、試験室内には第1貫通孔から第2貫通孔に向かう水平方向の気流が生じる。こうして、試験室内において上下方向に生じる気流を水平方向に偏向することが可能になり、試験室に載置された試料に対する風向きが最適な状態で環境試験を行わせることが可能になる。
また、本発明の環境試験装置によると、例えば、上部孔(又は下部孔)から吹き出された空気が仕切り壁と第1領域との間の第1空間内で均圧化され、当該均圧化された空気が第1貫通孔から試験室内に排出される。このとき、試験室内の空気が第2貫通孔から仕切り壁と第2領域との間の第2空間を通して下部孔(又は上部孔)に吸い込まれるとともに、試験室内には第1貫通孔から第2貫通孔に向かう水平方向の気流が生じる。こうして、試験室内において上下方向に生じる気流を水平方向に偏向することが可能になり、試験室に載置された試料に対する風向きが最適な状態で環境試験を行わせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による環境試験装置の平面図である。
【図2】(a)は図1に示すIIA−IIA線に沿った断面図であり、(b)は図1に示すIIB−IIB線に沿った断面図である。
【図3】(a)は図1に示すダクトユニットの正面図であり、(b)は図3(a)に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるダクトユニットの一変形例を示す正面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるダクトユニットの他の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本発明の一実施形態における環境試験装置1は、図1及び図2に示すように、種々の環境試験において用いられるものであって、内部に空間2aを有する略直方体形状の筐体2と、筐体2内の空間2aを仕切る断面L字状の仕切り壁3と、仕切り壁3によって分離され且つ仕切り壁3に形成された上部孔3a及び下部孔3bを介して互いに連通した試験室5及び空調室8と、試験室5に配置されたダクトユニット10とを含んでいる。ダクトユニット10は、上部孔3a及び下部孔3bを覆いつつ、後述の環状突起12と仕切り壁3とを接触させて仕切り壁3にネジ止めされている。上部孔3aは、仕切り壁3のダクトユニット10と対向する部分であってその上部に形成されている。一方、下部孔3bは、仕切り壁3のダクトユニット10と対向する部分であってその下部に形成されている。これら上部孔3a及び下部孔3bは、図2(b)に示すように、水平方向であって図中左右方向に延在している。
【0019】
空調室8は、図1中左右方向に関して、筐体2の幅よりも小さい幅を有している。ダクトユニット10は、図1中左右方向に関して、空調室8とほぼ同じ幅を有している。試験室5は、所定の温度及び湿度の空気を内包し、環境試験に係る試料が配置される空間である。また、試験室5は、主に試料が配置される部屋であってダクトユニット10の空調室8側とは反対側に配置されたメイン室(第1室)5aと、メイン室5aに繋がったサブ室(第2室)5bとを有している。サブ室5bは、図1に示すように、空調室8及びダクトユニット10と幅方向(図1中左右方向)に関して隣接して配置されており、当該幅方向に関して、メイン室5aよりも幅が小さくなっている。
【0020】
空調室8内には、図2(a)に示すように、上方から順に、送風機31、例えばシーズヒータ等の電熱ヒータからなる空気ヒータ32、冷却装置33、及び、容器内の水を内蔵ヒータで加熱して加湿を行う加湿装置34が設けられている。下部孔3bから空調室8に流入した空気は、順次、加湿装置34、冷却装置33、及び空気ヒータ32によってその温度及び湿度を調整されつつ上昇し、所定の温度及び湿度となった状態で送風機31により上部孔3a及びダクトユニット10を介して再び試験室5に流入する。
【0021】
筐体2の空間2aを取り囲む6つの壁のうち、メイン室5aとの間においてサブ室5bを挟む壁には、図2(b)に示すように、6つの孔2bが形成されている。これら孔2bは鉛直方向に沿って配列されており、サブ室5bと外部とを連通させている。なお、孔2bには、図示しないシール手段が設けられ、孔2bにケーブルが通されても外気が試験室5内に侵入するのを防止する。このように孔2bが設けられていることで、例えば、試験室5内に載置された試料に電力を供給するためのケーブルなどを、外部から試験室5内に通すことが可能となる。
【0022】
また、筐体2の6つの壁のうち、ダクトユニット10との間においてメイン室5aを挟む壁は、試験室5の扉を構成し、開閉可能となっている。このような環境試験装置1を扉が同じ方向となるように複数台並べ、さらにこれらの上に環境試験装置1を積んでも、扉とは反対となる壁に孔2bが形成されていることで、孔2bに通したケーブルが隣接する環境試験装置1と干渉しなくなる。このため、多くの環境試験装置1を並べて配置することが可能となる。
【0023】
ダクトユニット10は、図3に示すように、板状部材11と、板状部材11の一方の面11aにおいて全周に亘って形成された環状突起12と、一方の面11aから突出し板状部材11を2つの領域14a,14bに区切る仕切り板15とを有している。板状部材11には、水平方向の一端部において、鉛直方向に沿って配列された6つの貫通孔(第1貫通孔)21が形成されている。また、板状部材11の水平方向の他端部において、鉛直方向に沿って配列された6つの貫通孔(第2貫通孔)22が形成されている。これら貫通孔21,22は、鉛直方向に沿って長尺に形成されている。なお、貫通孔21,22は、鉛直方向に沿って複数配列されているが、板状部材11の各端部において、6つの貫通孔21,22が鉛直方向に連続した1つの長尺な貫通孔を構成していてもよい。また、貫通孔21,22は、鉛直方向に長尺に形成されていなくてもよく、他の形状を有していてもよい。
【0024】
仕切り板15は、貫通孔21が形成された領域(第1領域)14aと、貫通孔22が形成された領域(第2領域)14bとに板状部材11を区切るように形成されている。また、仕切り板15は、図3(a)に示すように、板状部材11の対角にある2つの角(図中右斜め上の角と左斜め下の角)を結ぶように傾斜しており、環状突起12によって取り囲まれた空間であって貫通孔21と連通する第1空間13aと、貫通孔22と連通する第2空間13bとに仕切っている。第1空間13aは、ダクトユニット10が仕切り壁3に取り付けられたときに領域14aと仕切り壁3との間にできる空間である。第2空間13bは、ダクトユニット10が仕切り壁3に取り付けられたときに領域14bと仕切り壁3との間にできる空間である。また、仕切り板15は、板状部材11の対角線上に沿って延在している。このように仕切り板15が形成されていることで、水平方向に関して、第1空間13aの上部及び第2空間13bの下部を大きくすることが可能となる。このため、ダクトユニット10を仕切り壁3に取り付けた際に、第1空間13aが上部孔3a、第2空間13bが下部孔3bの全体を覆いやすくなるとともに均圧がとり易くなる。本実施形態においては、第1空間13aが上部孔3a、第2空間13bが下部孔3bの全体を覆った状態で、ダクトユニット10が仕切り壁3に取り付けられている。
【0025】
板状部材11は、一方の面11aから突出した5枚の偏向板16a〜16eを有している。偏向板16a〜16eは、板状部材11の領域14bに形成されている。また、偏向板16a〜16eは、貫通孔22の上部角近傍から、ダクトユニット10が仕切り壁3に固定されたときに板状部材11の下部孔3bと対向する位置まで仕切り板15と平行に延在している。このように偏向板16a〜16eを有していることで、上部孔3aと第1空間13aとが、下部孔3bと第2空間13bとが連通するようにダクトユニット10が仕切り壁3に取り付けられたときに、各貫通孔22から試験室5内の空気を均一に吸引することが可能となる。つまり、これら偏向板16a〜16eが設けられていない場合では、下方にある貫通孔22から試験室5内の空気が主に吸引されてしまうが、偏向板16a〜16eが設けられていることで、下部孔3bからの吸引力が上方の貫通孔22にも効果的に作用する。このため、これら貫通孔22からの吸引力が均一になり、貫通孔21から排出された空気が水平方向の気流を生じさせやすくなる。
【0026】
続いて、環境試験装置1の試験室5における気流について説明する。本実施形態における環境試験装置1には、ダクトユニット10が取り付けられているので、所定の温度及び湿度となった空気が空調室8の上部孔3aから排出されると、第1空間13aに一時的に溜められる。そして、上部孔3aから排出された空気が第1空間13aで均圧化されて6つの孔21からメイン室5aに排出される。この排出された空気は、図1中太矢印で示すように、孔21から孔22に向かって水平に流れる。具体的には、最も上に配置された孔21から排出された空気は、最も上に配置された孔22から主に吸い込まれる。このように孔21から排出された空気は、当該孔21に水平方向に沿って並ぶ対応する孔22に吸い込まれ、メイン室5a内に水平方向の気流を生じさせる。つまり、ダクトユニット10が設けられていない場合では、上部孔3aから排出された空気は、試験室5内において上から下に向かって流れる気流を生じるが、本発明においてはダクトユニット10が試験室5内における気流が水平となるように偏向させる。そして、試験室5内の空気は、孔22、第2空間13b及び下部孔3bを通して空調室8に吸引される。
【0027】
以上のように、本実施形態のダクトユニット10によると、空気を吹き出す上部孔3aと領域14aとが、空気を吸い込む下部孔3bと領域14bとが対向するようにダクトユニット10が仕切り壁3に取り付けられたときに、上部孔3aから吹き出された空気が第1空間13a内で均圧化され、当該均圧化された空気が6つの孔21からメイン室5a内に排出される。このとき、メイン室5a内の空気が孔22から第2空間13bを通して下部孔3bに吸い込まれるとともに、メイン室5a内には孔21から孔22に向かう水平方向の気流が生じる。こうして、試験室5内において上下方向に生じる気流を水平方向に偏向することが可能となり、試験室5に載置された試料に対する風向きが最適な状態で環境試験を行わせることが可能になる。つまり、メイン室5aにおいて、例えば、水平な棚を上下に複数段設けて、各棚上に試料を載置してもメイン室5a内の気流が水平方向の気流なので各棚上の試料に空気流を当てることが可能となり、最適な状態で環境試験を行わせることができる。
【0028】
本実施形態においては、上部孔3aから空気を吹き出し下部孔3bから試験室5内の空気を吸い込んでいるが、これらが逆であってもよい。つまり、下部孔から空気を吹き出し、上部孔から試験室内の空気を吸い込んでもよい。この場合には、ダクトユニット10を180度回転させ、上下を逆にすればよい。具体的には、領域14aと下部孔とを対向させ第1空間13aと下部孔とを連通させ、領域14bと上部孔とを対向させ第2空間13bと上部孔とを連通させればよい。こうしても下から上に流れる気流を、上述と同様に水平方向に流れる気流に偏向することが可能となる。
【0029】
本実施形態においては、仕切り板15が直線上に延在していたが、仕切り板は図4に示すように湾曲していてもよい。この第1変形例におけるダクトユニット210は、仕切り板215の形状が上述の仕切り板15と異なるだけで、これ以外はダクトユニット10と同様の構成を有している。仕切り板215は、板状部材11の対角にある2つの角近傍を結ぶように傾斜している。また、仕切り板215は、領域(第1領域)214aよりも領域(第2領域)214bが大きくなるように湾曲している。これにより、空気を吹き出す上部孔3aと領域214aとが、空気を吸引する下部孔3bと領域214bとが対向するようにダクトユニット210が仕切り壁3に取り付けられたときに、仕切り壁3と領域214aとの間の第1空間213aの水平方向の幅が上から下に向かってさらに狭まるため、鉛直方向に関して、6つの孔21から吹き出す風圧がより一層均等になる。これは、上部孔3aから吹き出した空気が、上部孔3aから最も離れた孔21から優先的に排出されにくくして、各孔21から吹き出す風圧を均圧化させている。なお、仕切り壁3と領域214bとの間の第2空間213bは、下から上に向かってさらに広がっている。
【0030】
別の変形例として、板状部材11には、ダクトユニット310が仕切り壁3に取り付けられたときに上部孔3aと距離の近い孔21から順に、開口率が大きくなる整流板331,332が設けられていてもよい。つまり、本変形例におけるダクトユニット310は、図5に示すように、厚み方向に貫通した複数の孔331aが形成された整流板331が最も上方にある孔21を覆うように設けられており、複数の孔332aが形成された整流板332が上から2番目の孔21を覆うように設けられている。これら整流板331,332はいずれも、孔21の開口率よりも小さい開口率を有しており、整流板332は整流板331よりも開口率が大きくなっている。このような整流板331,332が設けられていることで、最も上方にある孔21からの空気の排出抵抗が最も大きくなり、次いで上から2番目の孔21からの排出抵抗が大きくなり、上から下に向かって孔21からの排出抵抗が小さくなる。このため、空気を吹き出す上部孔3aと領域14aとが、空気を吸引する下部孔3bと領域14bとが対向するようにダクトユニット310が仕切り壁3に取り付けられたときに、上部孔3aに近い孔21ほど排出抵抗が大きくなり、鉛直方向に関して、孔21から吹き出す風圧がより一層均等になる。これは、上部孔3aと近い孔21ほど空気が優先的に排出されやすい場合に効果的であり、この場合においては整流板331,332を設けることで、上部孔3aに最も近い孔21及び2番目に近い孔21からの排出抵抗が他の孔21よりも大きくなって、空気が優先的に排出されにくくなる。こうして、これら6つの孔21から吹き出す風圧を均圧化させている。
【0031】
なお、先の変形例におけるように、下方にある孔21から空気を排出する際の排出抵抗を増大させる場合は、整流板を下方の孔21又は全部の孔21に設け、下から上に行くほど整流板の開口率が大きくなるようにしてもよい。これにおいても先の変形例における効果を得ることができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、偏向板16a〜16eは設けられていなくてもよい。また、偏向板は1〜3又は5以上設けられていてもよい。また、空調室8及びダクトユニット10,210,310の幅が筐体2とほぼ同じであってもよい。また、ダクトユニット10,210,310の幅は、空調室8よりも小さくても大きくてもよい。また、筐体2の壁に孔2bを設けなくてもよい。また、孔21,22は、板状部材11に設けられていたが、環状突起12の各端部に沿う部分に設けられていてもよい。また、環状突起12が板状部材11に形成されていなくてもよい。この場合、板状部材11を仕切り壁と対向させつつ板状部材11の外周端面全体を筐体と密着させて、当該板状部材11を筐体に取り付ければよい。また、図1に示す環状突起12のうち一部を板状部材11に形成しなくてもよい。例えば、筐体2の左側壁と対向する部分であって鉛直方向に延在する突起部分だけを板状部材11に形成しなくてもよい。この場合、板状部材11の左端面と筐体2の左側壁とを密着させた状態でダクトユニットを筐体2に取り付ければよい。
【符号の説明】
【0033】
1 環境試験装置
2 筐体
2a 空間
2b 孔
3 仕切り壁
3a 上部孔
3b 下部孔
5 試験室
8 空調室
10,210,310 ダクトユニット
11 板状部材
11a 一方の面
12 環状突起
13a,213a 第1空間
13b,213b 第2空間
14a,214a 領域(第1領域)
14b,214b 領域(第2領域)
15,215 仕切り板
16a〜16e 偏向板
21 孔(第1貫通孔)
22 孔(第2貫通孔)
331,332 整流板
331a,332a 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り壁によって分離され且つ当該仕切り壁に形成された上部孔及び下部孔を介して互いに連通した試験室及び空調室を有する環境試験装置に取り付け可能なダクトユニットにおいて、
板状部材と、
前記板状部材の水平方向の一端部に形成された第1貫通孔と、
前記板状部材の前記水平方向の他端部に形成された第2貫通孔と、
前記板状部材の一方の面から突出し、前記板状部材を前記第1貫通孔が形成された第1領域と前記第2貫通孔が形成された第2領域とに区切る仕切り板とを備えていることを特徴とするダクトユニット。
【請求項2】
前記板状部材が矩形平面形状を有しており、
前記仕切り板が、前記板状部材の対角にある2つの角を結ぶように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のダクトユニット。
【請求項3】
前記板状部材の前記第2領域には、前記第2貫通孔近傍から延在した偏向板が突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のダクトユニット。
【請求項4】
前記仕切り板は、前記第1領域よりも前記第2領域が大きくなるように湾曲していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のダクトユニット。
【請求項5】
前記板状部材には、厚み方向に貫通した複数の孔が形成された整流板が前記第1貫通孔の少なくとも上部分を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダクトユニット。
【請求項6】
筐体と、
上部孔及び下部孔が形成され、前記筐体内の空間を仕切る仕切り壁と、
前記仕切り壁によって分離され且つ前記上部孔及び下部孔を介して互いに連通した試験室及び空調室と、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のダクトユニットとを備えており、
前記ダクトユニットは、前記上部孔及び下部孔のいずれか一方の孔と前記第1領域とが、他方の孔と前記第2領域とが対向するように、前記筐体及び前記仕切り壁の少なくともいずれかに取り付けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項7】
前記空調室及び前記ダクトユニットの幅が、前記筐体の幅よりも小さく、
前記試験室は、前記ダクトユニットの前記空調室側とは反対側に配置された第1室と、前記第1室と繋がり、前記空調室及び前記ダクトユニットと幅方向に関して隣接し前記第1室よりも幅が小さい第2室とを有しており、
前記第1室との間において前記第2室を挟む前記筐体の壁には、前記第2室と外部とを連通させる少なくとも1以上の孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145187(P2011−145187A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6490(P2010−6490)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】